(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101945
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240723BHJP
G01L 5/167 20200101ALI20240723BHJP
G01L 1/26 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
G01L5/167
G01L1/26 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006192
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】廣田 道泰
(72)【発明者】
【氏名】竪山 光普
【テーマコード(参考)】
2F051
3C707
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051DA03
2F051DB03
3C707AS01
3C707AS06
3C707AS12
3C707BS12
3C707DS01
3C707ES03
3C707HS27
3C707KS21
3C707KS23
3C707KS29
3C707KS33
3C707KT01
3C707KT06
3C707KV01
3C707KW03
3C707KX07
3C707LU06
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】回転工具に加わった力を正確に検出することができるロボットシステムを提供すること。
【解決手段】先端部を有するロボットアームと、前記ロボットアームの前記先端部に設置され、外力を検出する力検出部と、前記力検出部に設置され、回転軸回りに回転する加工部を有する回転工具を支持する支持部材と、前記加工部の回転位置を検出する回転位置検出部と、前記回転位置検出部が検出した回転位置に基づいて、前記力検出部が出力した検出値を補正する補正部と、を備えることを特徴とするロボットシステム。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部を有するロボットアームと、
前記ロボットアームの前記先端部に設置され、外力を検出する力検出部と、
前記力検出部に設置され、回転軸回りに回転する加工部を有する回転工具を支持する支持部材と、
前記加工部の回転位置を検出する回転位置検出部と、
前記回転位置検出部が検出した回転位置に基づいて、前記力検出部が出力した検出値を補正する補正部と、を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記補正部は、前記回転位置に加え、前記回転工具の重心および前記回転軸から前記重心までの距離に基づいて、前記検出値を補正する請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記補正部は、前記加工部の回転の遠心力に起因する力の成分を前記検出値から除去する補正を行う請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記補正部は、前記支持部材の振動に起因する力の成分を除去する第1の補正と、前記加工部の回転の遠心力に起因する力の成分を前記検出値から除去する第2の補正とを行う請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記力検出部が検出する前記検出値は、前記回転軸を法線とする面内で互いに直交するα軸およびβ軸を設定したとき、前記α軸に沿った力の成分Fαと、前記β軸に沿った力の成分Fβとを含み、
前記第2の補正は、前記α軸に沿った補正成分Fα1および前記β軸に沿った補正成分Fβ1の値を求め、前記成分Fαから前記補正成分Fα1を減算し、前記成分Fβから前記補正成分Fβ1を減算することにより行われる請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記回転軸は、前記力検出部の中心軸と離間している請求項1ないし5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているロボットは、基台と、基台に接続されたロボットアームと、ロボットアームの先端部に接続されたエンドエフェクターと、エンドエフェクターに加わった力を検出する力覚センサーと、を備えている。また、エンドエフェクターは、回転することにより作業対象物に対し加工を行う回転工具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のロボットでは、エンドエフェクターの回転によりエンドエフェクターに遠心力が生じるが、この遠心力に起因して力覚センサーの検出精度が低下してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のロボットシステムは、先端部を有するロボットアームと、
前記ロボットアームの前記先端部に設置され、外力を検出する力検出部と、
前記力検出部に設置され、回転軸回りに回転する加工部を有する回転工具を支持する支持部材と、
前記加工部の回転位置を検出する回転位置検出部と、
前記回転位置検出部が検出した回転位置に基づいて、前記力検出部が出力した検出値を補正する補正部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
【
図7】力センサーおよび慣性センサーの配置を示す模式図である。
【
図9】慣性センサーの内部に収容された基板を示す斜視図である。
【
図10】力検出回路の回路構成を示すブロック図である。
【
図11】回転工具および支持部材を示す側面図である。
【
図13】力検出部が検出した回転工具の回転により生じる遠心力の波形を示す図であって、α軸の並進力成分Fαを経時的に示すグラフである。
【
図14】力検出部が検出した回転工具の回転により生じる遠心力の波形を示す図であって、β軸の並進力成分Fβを経時的に示すグラフである。
【
図15】本発明の第2実施形態に係わる回転位置検出部の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明のロボットシステムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、本発明の好適な実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
図1中、回転工具および支持部材の記載は省略されている。
図2は、力検出部を示す斜視図である。
図3は、力検出部を示す縦断面図である。
図4は、力検出部を示す横断面図である。
図5は、力センサーを示す縦断面図である。
図6は、力検出素子を示す縦断面図である。
図7は、力センサーおよび慣性センサーの配置を示す模式図である。
図8は、慣性センサーを示す分解斜視図である。
図9は、慣性センサーの内部に収容された基板を示す斜視図である。
図10は、力検出回路の回路構成を示すブロック図である。
図11は、回転工具および支持部材を示す側面図である。
図12は、
図11中の矢印B方向から見た図である。
図13は、力検出部が検出した回転工具の回転により生じる遠心力の波形を示す図であって、α軸の並進力成分Fαを経時的に示すグラフである。
図14は、力検出部が検出した回転工具の回転により生じる遠心力の波形を示す図であって、β軸の並進力成分Fβを経時的に示すグラフである。
【0009】
図1に示すロボットシステム1は、例えば、精密機器やこれを構成する部品等の対象物の給材、除材、搬送、加工および組立等の作業を行うことができる。ロボットシステム1は、単腕の6軸垂直多関節ロボットであるロボット2と、ロボット2の駆動を制御するロボット制御装置20と、を有する。
【0010】
ロボット2は、基台21と、基台21に対し回転自在に連結されたロボットアーム22と、ロボットアーム22に装着された力検出部3と、
図11に示すエンドエフェクターである回転工具23と、回転工具23を支持する支持部材24とを有する。
【0011】
なお、以下の説明では、ロボットアーム22について、
図1中の基台21側を「基端」または「基端部」とも言い、その反対側すなわち力検出部3側を「先端」または「先端部」とも言う。
【0012】
基台21は、ロボットアーム22の基端側に位置し、例えば、床、壁、天井および移動可能な台車上等に固定されている。ロボットアーム22は、基端から先端に向かって順次配置されたアーム221、222、223、224、225、226を有し、隣接するアーム同士が回転自在に連結されたロボティックアームである。ロボットアーム22の隣接するアーム間には、関節J1、J2、J3、J4、J5およびJ6が設置されている。このうち、関節J2、J3、J5は、曲げ関節であり、関節J1、J4、J6は、ねじり関節である。ただし、ロボットアーム22としては、特に限定されず、作業内容に合わせて適宜選択することができる。また、ロボットアーム22の先端には、制御点TCPが設置されている。
【0013】
関節J1、J2、J3、J4、J5およびJ6には、それぞれ、モーターMとエンコーダーEとが設置されている。ロボット制御装置20は、ロボットシステム1の運転中、各エンコーダーEの出力が示す関節J1~J6の回転角度と制御目標である目標回転角度とを一致させるフィードバック制御を実行する。これにより、各関節J1~J6を目標回転角度に保つことができ、ロボットアーム22を所望の位置および姿勢とすることができる。よって、ロボット2を所望の動作で駆動することができる。
【0014】
ロボット制御装置20は、ロボット2の駆動を制御する。ロボット制御装置20は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。なお、ロボット制御装置20の構成要素の一部または全部は、ロボット2の筐体の内側に配置されてもよい。また、ロボット制御装置20は、複数のプロセッサーにより構成されてもよい。
【0015】
図11に示すように、ロボットアーム22の先端部すなわちアーム226の先端には、力検出部3が設置されており、力検出部3の先端すなわち
図11中下端には、支持部材24が設置されている。力検出部3の構成に関しては、後に詳述する。支持部材24は、回転工具23を支持する部材であり、長尺な板状部材で構成されている。支持部材24は、その厚さ方向が、関節J6の回転軸に沿った向きで設置されている。
【0016】
支持部材24の
図11中右側の端部は、力検出部3の先端に固定されている。支持部材24の
図11中左側の端部には、貫通孔241が設けられており、貫通孔241内に回転工具23が挿入、固定されている。
【0017】
なお、支持部材24の形状は、上記に限定されず、平面視で正方形をなしていてもよく、円形をなしていてもよい。また、支持部材24は、図示のような板状部材に限定されず、例えば、棒状部材、枠状部材であってもよい。さらに、支持部材24は、接近・離間する一対の爪を有するハンドであってもよい。この場合、回転工具23は、ハンドの一対の爪により把持される。
【0018】
回転工具23は、回転軸O回りに回転する加工部231と、加工部231を回転駆動するモーター232と、モーター232の回転位置を検出するエンコーダー233と、を有する。ここで、「回転位置」とは、基準位置P0からの回転角度のことを言う。
【0019】
加工部231は、回転部とも言い、所定の方向および速度で回転軸O回りに回転することにより、作業対象物であるワークに対し所望の加工を行うものである。加工部231としては、例えば、ドライバー、ポリッシャー、研磨または研削砥石、ドリル、フライス等が挙げられる。
【0020】
モーター232は、ロボット制御装置20と電気的に接続されており、図示しないモータードライバーを介してロボット制御装置20により通電条件が制御されることで駆動が制御される。モーター232としては、交流モーターであってもよく、直流モーターであってもよい。
【0021】
エンコーダー233は、モーター232の回転角度、すなわち回転位置情報を検出するものであり、本実施形態では、いわゆるロータリーエンコーダーが用いられる。エンコーダー233は、力検出回路7と電気的に接続されており、検出したモーター232の回転位置情報を、力検出回路7に送信する。なお、この構成に限定されず、エンコーダー233は、検出したモーター232の回転位置情報を、ロボット制御装置20に送信し、ロボット制御装置20が力検出回路7に送信する構成であってもよい。
【0022】
エンコーダー233としては、例えば、ロータリーエンコーダー、リニアエンコーダーが挙げられる。本実施形態では、ロータリーエンコーダーが用いられる。エンコーダー233の検出方式は、特に限定されず、例えば、光学式、電気式、磁気式のもの等が挙げられる。エンコーダー233が光学式のロータリーエンコーダーである場合、反射式、透過式のいずれのものでもよい。
【0023】
次に、力検出部3について
図2~
図11を参照しつつ説明する。
【0024】
力検出部3は、力検出部3に加えられた外力の6軸成分を検出可能な6軸力覚センサーである。なお、互いに直交する3つの軸であるα軸、β軸およびγ軸を設定したとき、6軸成分は、α軸、β軸およびγ軸のそれぞれの方向の並進力(せん断力)成分と、これら3軸のそれぞれの軸回りの回転力(モーメント)成分と、からなる。
【0025】
図2に示すように、力検出部3は、その中心軸A1回りに略90°間隔に配置された4つの力センサー4と、4つの力センサー4に対応して配置された4つの慣性センサー6と、各力センサー4および各慣性センサー6からの信号に基づいて外力を検出する力検出回路7と、これら各部を収納しているケース5と、を有する。力検出部3では、各力センサー4からの出力信号を、それに対応する慣性センサー6からの出力信号に基づいて補正し、補正した4つの補正信号に基づいて力検出部3に加えられた外力を検出する。
【0026】
図2、
図3および
図11に示すように、ケース5は、第1ケース部材51と、第1ケース部材51に対して間隔を隔てて配置されている第2ケース部材52と、第1ケース部材51および第2ケース部材52の外周部に設けられた側壁部材53と、を有する。このような構成のケース5では、第1ケース部材51の
図3中の上面510が支持部材24を取り付ける支持部材用取付面として機能し、第2ケース部材52の
図3中の下面520がロボットアーム22に取り付けるアーム用取付面として機能する。ただし、これに限定されず、逆であってもよい。
【0027】
図3および
図4に示すように、第1ケース部材51は、天板511と、天板511の下面に設けられ、中心軸A1回りに等間隔(90°間隔)に配置された4つの与圧部512と、を有する。また、天板511には、その中央部に中心軸A1に沿った貫通孔511aが形成されている。また、各与圧部512には、後述する与圧ボルト50が挿通される複数の貫通孔512aが形成されている。
【0028】
また、第2ケース部材52は、底板521と、底板521の
図3中の上面に設けられ、前述した4つの与圧部512と対向するように中心軸A1回りに等間隔(90°間隔)に配置された4つの与圧部522と、を有する。また、底板521には、その中央部に中心軸A1に沿った貫通孔521aが形成されている。また、各与圧部522には、与圧ボルト50の先端部が螺合する雌ネジ孔522aが複数形成されている。
【0029】
また、側壁部材53は、円筒状をなし、
図3中の上端部および下端部がそれぞれ第1ケース部材51および第2ケース部材52に対して、例えば、ネジ止め、嵌合等によって固定されている。また、側壁部材53と前述した天板511と底板521とで囲まれた内部空間S1には4つの力センサー4、4つの慣性センサー6および力検出回路7が収納されている。
【0030】
図4に示すように、4つの力センサー4は、平面視で、中心軸A1を通りβ軸に平行な線分CLに対して対称となるように配置されている。また、各力センサー4は、対をなす与圧部512、522との間に位置し、これら与圧部512、522によって挟持されている。与圧ボルト50は、与圧部512、522を連結し、第1ケース部材51と第2ケース部材52とを固定している。また、与圧ボルト50を締め込むことにより、与圧部512、522の間に位置する力センサー4が与圧されている。与圧ボルト50は、各力センサー4に対して一対設けられており、一対の与圧ボルト50が力センサー4の両側に位置している。
【0031】
次に、力センサー4について説明する。4つの力センサー4は、互いに同様の構成であるため、以下では、1つの力センサー4について代表して説明し、他の3つについては、その説明を省略する。また、以下では、説明の便宜上、力センサー4に対して、互いに直交する3つの軸であるA軸、B軸およびC軸を設定する。さらに、各軸を示す矢印の先端側を「プラス側」とし、基端側を「マイナス側」とする。また、A軸に沿う方向を「A軸方向」、B軸に沿う方向を「B軸方向」、C軸に沿う方向を「C軸方向」という。
【0032】
図5に示すように、力センサー4は、パッケージ41と、パッケージ41に収納された力検出素子42と、を有する。力センサー4は、与圧部512、522に挟まれており、与圧ボルト50によって、力検出素子42が矢印Pで示す方向に与圧されている。力センサー4に加わる外力、具体的にはA軸方向のせん断力およびB軸方向のせん断力は、パッケージ41を介して力検出素子42に伝わり、受けた外力に基づく信号が力検出素子42から出力される。このように、力検出素子42を与圧しておくことにより、外力を精度よく検出することができる。なお、与圧ボルト50の締結力を適宜調整することにより、力検出素子42に加わる与圧を調整することができる。
【0033】
また、パッケージ41は、基体411と、基体411に接合された蓋体412と、を有する。パッケージ41の内側には気密な収納空間Sが形成され、収納空間Sに力検出素子42が収納されている。パッケージ41に力検出素子42を収納することにより、力検出素子42を外界から保護すなわち防塵、防水することができる。収納空間Sの雰囲気としては、特に限定されないが、真空状態またはそれに近い減圧状態であることが好ましい。
【0034】
力検出素子42は、力検出素子42に加えられた外力のA軸方向の成分に応じた電荷QaおよびB軸方向の成分に応じた電荷Qbを出力する。また、力検出素子42は、圧電素子420と、圧電素子420をC軸方向から挟む一対の中間基板423、424と、を有する。また、圧電素子420は、A軸方向のせん断力に応じて電荷Qaを出力する第1圧電素子421と、B軸方向のせん断力に応じて電荷Qbを出力する第2圧電素子422と、を有する。
【0035】
図6に示すように、第1圧電素子421は、C軸方向マイナス側から、グランド電極層421A、圧電体層421B、出力電極層421C、圧電体層421D、グランド電極層421E、圧電体層421F、出力電極層421G、圧電体層421H、グランド電極層421Iが順に積層した構成となっている。また、第2圧電素子422は、第1圧電素子421上に積層されており、C軸方向マイナス側から、グランド電極層422A、圧電体層422B、出力電極層422C、圧電体層422D、グランド電極層422E、圧電体層422F、出力電極層422G、圧電体層422H、グランド電極層422Iが順に積層した構成となっている。なお、本実施形態では、グランド電極層421I、422Aが一体化されている。
【0036】
また、圧電体層421B、421D、421F、421H、422B、422D、422F、422Hは、それぞれ、Yカット水晶板すなわち水晶の結晶軸であるY軸(機械軸)を厚さ方向とする水晶板で構成されている。これにより、高感度、広いダイナミックレンジ、高い剛性等の優れた特性を有する力検出素子42となる。圧電体層421B、421Fでは、水晶の結晶軸であるX軸(電気軸)がA軸方向プラス側を向き、圧電体層421D、421Hでは、水晶のX軸がA軸方向マイナス側を向いている。また、圧電体層422B、422Fでは、水晶のX軸がB軸方向プラス側を向き、圧電体層422D、422Hでは、水晶のX軸がB軸方向マイナス側を向いている。
【0037】
ただし、圧電体層421B、421D、421F、421H、422B、422D、422F、422Hは、水晶以外の圧電材料を用いた構成であってもよい。水晶以外の圧電材料としては、例えば、トパーズ、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等が挙げられる。
【0038】
また、グランド電極層421A、421E、421I、422A、422E、422Iは、それぞれ、グランド電位GNDに電気的に接続されている。また、出力電極層421C、421GからA軸方向の成分に応じた電荷Qaが出力され、出力電極層422C、422GからB軸方向の成分に応じた電荷Qbが出力される。電荷Qa、Qbは、それぞれ、基体411に設けられた端子413を介して力検出回路7に送られる。
【0039】
一対の中間基板423、424は、圧電素子420をC軸方向両側から挟み込むように配置されている。これにより、中間基板423、424によってグランド電極層421A、422Iを覆うことができ、これらを保護することができると共に、これらとパッケージ41との意図しない導通を抑制することができる。また、C軸方向の与圧を圧電素子420の全域に均一に伝えることができる。
【0040】
中間基板423、424は、水晶で構成されている。これにより、高い機械的強度を有する中間基板423、424となり、外力を力検出素子42に的確に伝達することができる。さらに、中間基板423は、隣接する圧電体層422Hと同じ構成となっている。すなわち、中間基板423は、Yカット水晶板であり、水晶のX軸がB軸方向マイナス側を向いている。同様に、中間基板424は、隣接する圧電体層421Bと同じ構成となっている。すなわち、中間基板424は、Yカット水晶板であり、水晶のX軸がA軸方向プラス側を向いている。このように、中間基板423、424の結晶軸を隣接する圧電体層422H、421Bの結晶軸と一致させることにより、これらの熱膨張係数を揃えることができ、熱膨張に起因する出力ドリフトを効果的に低減することができる。
【0041】
以上、力センサー4について説明した。ここで、4つの力センサー4を力センサー4A、4B、4C、4Dとしたとき、これら4つの力センサー4A、4B、4C、4Dの向きは、
図7に示す通りである。力センサー4Aは、A軸がγ軸プラス側を向き、B軸がβ軸に対して+45°傾斜している。また、力センサー4Bは、A軸がγ軸マイナス側を向き、B軸がβ軸に対して-45°傾斜している。また、力センサー4Cは、A軸がγ軸プラス側を向き、B軸がβ軸に対して-135°傾斜している。また、力センサー4Dは、A軸がγ軸マイナス側を向き、B軸がβ軸に対して+135°傾斜している。
【0042】
このような配置では、力センサー4A、4Cの力検出軸であるB軸と、力センサー4B、4Dの力検出軸であるB軸と、がγ軸からの平面視で、互いに交差している。このように、複数の力センサー4の力検出軸が互いに同一とならず交差していることにより、外力の6軸成分を検出することができる。特に、本実施形態では、力センサー4A、4CのB軸と、力センサー4B、4DのB軸と、が直交しているため、外力の6軸成分をより精度よく検出することができる。
【0043】
次に、慣性センサー6について説明するが、4つの慣性センサー6は、互いに同様の構成であるため、以下では、1つの慣性センサー6について代表して説明する。また、以下では、説明の便宜上、慣性センサー6の慣性検出軸として、互いに直交する3つの軸であるa軸、b軸およびc軸を設定し、さらに、各軸を示す矢印の先端側を「プラス側」とし、基端側を「マイナス側」とする。また、a軸に沿う方向を「a軸方向」、b軸に沿う方向を「b軸方向」、c軸に沿う方向を「c軸方向」という。
【0044】
慣性センサー6は、慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)とも呼ばれ、a軸、b軸およびc軸の各軸回りの角速度および各軸方向の加速度を独立して検出することができる6軸センサーである。
図8に示すように、慣性センサー6は、アウターケース61と、アウターケース61に挿入されたセンサーモジュール62と、これらを接合する接合部材63と、を有する。アウターケース61の外形は、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれ取り付け用のネジ穴611が形成されている。
【0045】
センサーモジュール62は、インナーケース621と、基板622と、を有する。インナーケース621は、基板622を支持する部材であり、アウターケース61の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース621には後述するコネクター64を露出させるための開口621aが形成されている。このようなインナーケース621は、接合部材63を介してアウターケース61に接合されている。
【0046】
図9に示すように、基板622の上面には、コネクター64、c軸回りの角速度を検出する角速度センサー65c、a軸、b軸およびc軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサー66などが実装されている。また、基板622の側面には、a軸回りの角速度を検出する角速度センサー65aおよびb軸回りの角速度を検出する角速度センサー65bが実装されている。
【0047】
また、基板622の下面には、制御IC67が実装されている。制御IC67は、MCU(Micro Controller Unit)であり、慣性センサー6の各部を制御する。制御IC67は、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能なプログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラムを読み込んで実行する。このような制御IC67は、角速度センサー65a、65b、65cおよび加速度センサー66からの出力信号に基づいてa軸、b軸およびc軸の各軸回りの角速度および各軸方向の加速度をそれぞれ独立して検出する。
【0048】
以上、慣性センサー6について説明した。ここで、4つの慣性センサー6を慣性センサー6A、6B、6C、6Dとしたとき、これら4つの慣性センサー6A、6B、6C、6Dの配置は、
図7に示す通りである。
【0049】
慣性センサー6Aは、力センサー4Aと対をなし、力センサー4Aと同じ与圧部522に固定され、力センサー4Aの近傍に配置されている。また、慣性センサー6Bは、力センサー4Bと対をなし、力センサー4Bと同じ与圧部522に固定され、力センサー4Bの近傍に配置されている。また、慣性センサー6Cは、力センサー4Cと対をなし、力センサー4Cと同じ与圧部522に固定され、力センサー4Cの近傍に配置されている。また、慣性センサー6Dは、力センサー4Dと対をなし、力センサー4Dと同じ与圧部522に固定され、力センサー4Dの近傍に配置されている。このように、対をなすセンサー同士を近接して配置することにより、対をなす慣性センサー6によって力センサー4の検出軸に加わった加速度および角速度を精度よく検出することができる。
【0050】
また、慣性センサー6A、6B、6C、6Dの向きは、
図7に示す通りである。慣性センサー6Aのa軸およびb軸は、それぞれ、対をなす力センサー4AのA軸およびB軸に沿っている。また、慣性センサー6Bのa軸およびb軸は、それぞれ、対をなす力センサー4BのA軸およびB軸に沿っている。また、慣性センサー6Cのa軸およびb軸は、それぞれ、対をなす力センサー4CのA軸およびB軸に沿っている。また、慣性センサー6Dのa軸およびb軸は、それぞれ、対をなす力センサー4DのA軸およびB軸に沿っている。
【0051】
このように、対をなす慣性センサー6と力センサー4とで慣性検出軸と力検出軸とを揃えることにより、各慣性センサー6によって、対をなす力センサー4から出力される信号(電荷Qa、Qb)に含まれる加速度成分および角速度成分を精度よく検出することができる。なお、前記「a軸がA軸に沿う」とは、a軸とA軸とが平行または同一直線状に位置している場合のみならず、例えば、技術上許容される誤差、製造上生じ得る誤差等を有する場合を含む意味である。前記「b軸がB軸に沿う」についても同様であり、b軸とB軸とが平行または同一直線状に位置している場合のみならず、例えば、技術上許容される誤差、製造上生じ得る誤差等を有する場合を含む意味である。
【0052】
ロボットシステム1は、以上述べたような力検出部3より得られる情報に基づいて、ロボットアーム22の力制御を行うことができる。
【0053】
正確な力制御を行うためには、本来、力検出部3では、回転工具23が作業対象物に接触することにより受ける反力、すなわち外力F0だけを検出したい。しかしながら、実際には、回転工具23が作動すると、力検出部3は、回転工具23に加わる外力F0に加え、支持部材24の振動に起因する慣性成分である外力F1と、回転工具23の加工部231の回転により生じる加工部231の遠心力FTに起因する外力F2と、を受ける。力センサー4からの信号だけでは外力F0、F1、F2を区別することができず、これらの合力F3(=F0+F1+F2)として力を検出することとなる。そのため、検出対象である外力F0を精度よく検出することができない。そこで、本発明では、力検出部3は、力検出回路7により、外力F1および外力F2の値を求め、外力F1および外力F2を合力F3から除去することにより、外力F0を優れた精度で検出できるように構成されている。
【0054】
具体的には、力検出回路7は、慣性センサー6の検出値に基づいて外力F1を算出し、力センサー4の検出値に基づいて外力F2を算出する。
【0055】
以下、力検出回路7について説明するが、合力F3から外力F1を除去する補正を第1補正と言い、合力F3から外力F2を除去する補正を第2補正と言う。なお、回転工具23を作業対象物と接触せずに回転させた状態について説明する。すなわち、外力F0=0として説明する。
【0056】
図10に示すように、力検出回路7は、力センサー4からの信号に基づいて力すなわち合力F3を算出する第1処理部71と、第1処理部71で算出された力から慣性成分すなわち外力F1を除去する第2処理部72と、第2処理部で処理された情報に基づいて外力F0+F2を算出する第3処理部73と、外力F0+F2から加工部231の回転により受ける力すなわち外力F2を除去する第4処理部74と、を有する。これらのうち、第2処理部72および第3処理部73が第1補正部であり、第4処理部74が第2補正部である。
【0057】
まず、第1の補正について説明する。
第1処理部71は、力センサー4Aからの電荷Qa、Qbに基づいて力センサー4Aに加わった力(A軸方向のせん断力FAaおよびB軸方向のせん断力FAb)を算出し、力センサー4Bからの電荷Qa、Qbに基づいて力センサー4Bに加わった力(A軸方向のせん断力FBaおよびB軸方向のせん断力FBb)を算出し、力センサー4Cからの電荷Qa、Qbに基づいて力センサー4Cに加わった力(A軸方向のせん断力FCaおよびB軸方向のせん断力FCb)を算出し、力センサー4Dからの電荷Qa、Qbに基づいて力センサー4Dに加わった力(A軸方向のせん断力FDaおよびB軸方向のせん断力FDb)を算出する。
【0058】
ここで、前述したように、第1処理部71で算出したA軸方向のせん断力FAa~FDaには、支持部材24の駆動に起因して回転工具23に加わるA軸方向の加速度成分およびA軸回りの角速度成分が含まれており、B軸方向のせん断力FAb~FDbには、支持部材24の駆動に起因して回転工具23に加わるB軸方向の加速度成分およびB軸回りの角速度成分が含まれている。そこで、第2処理部72では、第1処理部71で算出したA軸方向のせん断力FAa~FDaからA軸方向の加速度成分およびA軸回りの角速度成分を除去し、B軸方向のせん断力FAb~FDbからB軸方向の加速度成分およびB軸回りの角速度成分を除去する。
【0059】
第2処理部72は、慣性センサー6Aで検出されたa軸方向の加速度AAaに基づいてA軸方向の加速度に起因して力センサー4Aが受けたせん断力FAAaを算出し、慣性センサー6Aで検出されたb軸方向の加速度AAbに基づいて、B軸方向の加速度に起因して力センサー4Aが受けたせん断力FAAbを算出し、慣性センサー6Aで検出されたa軸回り角速度ωAaに基づいて、A軸回りの角速度に起因して力センサー4Aが受けたせん断力FωAaを算出し、慣性センサー6Aで検出されたb軸回り角速度ωAbに基づいて、B軸回りの角速度に起因して力センサー4Aが受けたせん断力FωAbを算出する。
【0060】
せん断力FAAa、FAAbは、例えば、回転工具23の質量等から算出される係数と加速度AAa、AAbとの乗算により算出することができる。また、せん断力FωAa、FωAbは、例えば、回転工具23の質量等から算出される係数と角速度ωAa、ωAbとの乗算により算出することができる。ただし、せん断力FAAa、FAAb、FωAa、FωAbの算出方法は、特に限定されない。
【0061】
同様に、第2処理部72は、慣性センサー6B、6C、6Dで検出されたa軸方向およびb軸方向の加速度ABa、ABb、ACa、ACb、ADa、ADbに基づいて、A軸方向およびB軸方向の加速度に起因して力センサー4B、4C、4Dが受けたせん断力FABa、FABb、FACa、FACb、FADa、FADbを求め、慣性センサー6B、6C、6Dで検出されたa軸回りおよびb軸回りの角速度ωBa、ωBb、ωCa、ωCb、ωDa、ωDbに基づいて、A軸回りおよびB軸回りの角速度に起因して力センサー4B、4C、4Dが受けたせん断力FωBa、FωBb、FωCa、FωCb、FωDa、FωDbを求める。
【0062】
次に、第2処理部72は、せん断力FAaからせん断力FAAa、FωAaを減算することにより補正せん断力FAa0を算出し、せん断力FAbからせん断力FAAb、FωAbを減算することにより補正せん断力FAb0を算出する。つまり、FAa0=FAa-(FAAa+FωAa)であり、FAb0=FAb-(FAAb+FωAb)である。これにより、せん断力FAa、FAbから力センサー4Aが受けた角速度および角速度に起因する力成分である外力F1が除去された補正せん断力FAa0、FAb0が得られる。
【0063】
同様に、第2処理部72は、せん断力FBaからせん断力FABa、FωBaを減算することにより補正せん断力FBa0を算出し、せん断力FBbからせん断力FABb、FωBbを減算することにより補正せん断力FBb0を算出する。また、せん断力FCaからせん断力FACa、FωCaを減算することにより補正せん断力FCa0を算出し、せん断力FCbからせん断力FACb、FωCbを減算することにより補正せん断力FCb0を算出する。また、せん断力FDaからせん断力FADa、FωDaを減算することにより補正せん断力FDa0を算出し、せん断力FDbからせん断力FADb、FωDbを減算することにより補正せん断力FDb0を算出する。
【0064】
第3処理部73は、第2処理部72により算出された8つの補正せん断力FAa0、FAb0、FBa0、FBb0、FCa0、FCb0、FDa0、FDb0に基づいて、外力F0+F2(α軸方向の並進力成分Fα、β軸方向の並進力成分Fβ、γ軸方向の並進力成分Fγ、α軸周りの回転力成分Mα、β軸周りの回転力成分Mβ、γ軸周りの回転力成分Mγ)を算出する。
【0065】
このような第2処理部72および第3処理部73が、第1の補正を行う第1補正部である。
【0066】
次に、第2の補正について説明する。
外力F0+F2のうち、α軸方向の並進力成分Fαおよびβ軸方向の並進力成分Fβには、
図11および
図12に示す、回転軸Oからずれた重心Gを有する加工部231の回転により生じる遠心力FTに起因する外力F2が含まれている。第4処理部74は、α軸方向の並進力成分Fαから、加工部231の遠心力FTのα軸方向の並進力成分FTαを除去して、並進力成分Fαxを算出する補正を行うとともに、β軸方向の並進力成分Fβから、加工部231の遠心力FTのβ軸方向の並進力成分FTβを除去して、並進力成分Fβxを算出する補正を行う。このようにして得られたFαxおよびFβxは、ロボット制御装置20へ送信され、信号処理がなされる。
【0067】
外力F0=0であるため、外力F2は、加工部231の遠心力FTの大きさと同じであるとみなすことができる。すなわち、α軸方向の並進力成分Fαおよびβ軸方向の並進力成分Fβを経時的な波形で示したとき、その波形の振幅は、加工部231の遠心力FTの大きさとみなすことができる。
【0068】
回転工具23の加工部231およびモーター232のローターの重心(以下、単に「重心G」とも言う)は、回転軸Oと一致していることが理想であるが、加工部231等の形状、組立精度、組付け誤差等の影響で、回転軸Oから偏心した位置にあることが多い。回転軸Oから重心Gまでの距離をrとし、加工部231およびモーター232のローターの重心Gでの質量をmとし、加工部231の回転速度(回転数)をωとしたとき、回転工具23に作用する遠心力FTは、mω2rで表すことができる。ωは、エンコーダー233からの出力値から求めることができる。すなわち、ωは、エンコーダー233が検出した位置情報と時間とに基づいて算出することができる。また、重心G、および、回転軸Oから重心Gまでの距離rは、何らかの方法で算出し、例えば第4処理部74に記憶させておく。
【0069】
遠心力FTが回転工具23に作用する方向は、モーター232の回転位置(回転角度)に応じて変わってくる。
図12に示すように、
図11中矢印B方向から見たとき、例えば、重心Gが基準位置P0から反時計回りに60°の位置にあるときには、基準位置P0から反時計回りに60°の方向の遠心力FT(=mω
2r)が生じる。この遠心力FTは、支持部材24を介して力検出部3に伝達され、力検出部3の力センサー4には、遠心力FTと同じ大きさ、同じ方向の力である外力F2が加わる。この遠心力FTおよび外力F2の方向は、時間の経過と共に、すなわち回転軸O回りの重心Gの位置(角度ωt+φ)の変化に伴って随時変化する。なお、本実施形態では、基準位置P0は、
図12中、回転軸Oを中心として3時の位置としている。
【0070】
時間tのときの基準位置P0に対する重心Gの角度は、ωt+φで表すことができる。φは、初期角度であり、基準位置P0からの回転角度である。
【0071】
このため、遠心力FTのα軸方向の並進力成分FTαは、
FTα=mω2r×sin(ωt+φ)・・・(式1)
となり、遠心力FTのβ軸方向の並進力成分FTβは、
FTβ=mω2r×cos(ωt+φ)・・・(式2)
となる。
【0072】
図13および
図14に示すように、力検出部3が受ける力で見ると、外力F2のα軸方向の並進力成分Fαは、
Fα=mω
2r×sin(ωt+φ)・・・(式1’)
となり、外力F2のβ軸方向の並進力成分Fβは、
Fβ=mω
2r×cos(ωt+φ)・・・(式2’)
となる。
【0073】
力センサー4が検出したα軸方向の並進力成分Fαの大きさをω2で除算することにより、m×rを求めることができる。β軸方向の並進力成分Fβの大きさをω2で除算してもm×rを求めることができる。
【0074】
このようにして、m、rおよび初期角度φを求めておくと、ロボット2の作業中に、前記式1および式2に時間tおよび回転速度ωを代入するという簡単な方法によって、そのときの遠心力FTの大きさと方向を把握することができる。すなわち並進力成分FTαおよびFTβを把握することができる。
【0075】
同様に、前記式1’および式2’を用いて外力F2のα軸方向の並進力成分Fαを求めることができるとともに、外力F2のβ軸方向の並進力成分Fβを求めることができる。
【0076】
よって、遠心力FTのα軸方向の並進力成分Fαx(=Fα-FTα)を求めることができるとともに、遠心力FTのβ軸方向の並進力成分Fβx(=Fβ-FTβ)を求めることができる。
【0077】
そして、これらの値(並進力成分Fαx、並進力成分Fβx)を、α軸方向の並進力成分Fαおよびβ軸方向の並進力成分Fβからそれぞれ減算することにより、回転工具23の加工部231の回転により生じる加工部231の遠心力FTに起因する外力F2を外力F0から除去することができる。
【0078】
このようにして算出された外力F0は、より正確な値であり、ロボット制御装置20に送信される。そして、ロボット制御装置20は、外力F0に基づいてロボット2のロボットアーム22の駆動を制御し、ロボットアーム22の移動および回転工具23を用いた作業対象物への作業を行うことができる。これにより、ロボット2をより精度よく制御することができる。
【0079】
特に、回転速度ωを一定の値とし、作業中に回転速度ωをリアルタイムで検出せずに、定められた値を代入する方法も考えられるが、このような方法であると、リアルタイムの回転速度ωの変化に対応することができず、正確な補正が難しい。よって、本発明は、作業中に回転速度ωが随時変化した場合であっても、より正確な補正が可能となる。その結果、ロボットアーム22の駆動に際し、より適正な制御、特に力検出部3の検出値に基づく力制御をより適正に行うことができる。
【0080】
以上、第2の補正について整理すると、下記表1に示すようになる。
【0081】
【0082】
FT…遠心力成分
FTα:並進力成分
FTβ:並進力成分
Fα:並進力成分
Fβ:並進力成分
F0:外力(加工部231が作業対象物から受ける反力)
F1:慣性成分
Fα1:補正成分
Fβ1:補正成分
Fαx:並進力成分(補正後の成分)
Fβx:並進力成分(補正後の成分)
m:加工部231の重心Gでの質量
ω:加工部231の回転速度
φ:初期角度
r:回転軸Oから重心Gまでの距離
【0083】
以上説明したように、ロボットシステム1は、先端部を有するロボットアーム22と、ロボットアーム22の先端部に設置され、外力を検出する力検出部3と、力検出部3に設置され、回転軸O回りに回転する加工部231を有する回転工具23を支持する支持部材24と、加工部231の回転位置を検出する回転位置検出部の一例であるエンコーダー233と、エンコーダー233が検出した回転位置に基づいて、力検出部3が出力した検出値を補正する補正部としての第4処理部74と、を備える。これにより、エンドエフェクターの一例である回転工具23に実際に加わった力(例えば、F0)をより正確に検出することができる。よって、ロボット2のロボットアーム22をより適正に制御し、駆動することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、力検出回路7が補正、すなわち、第1の補正および第2の補正を行う構成であったが、本発明ではこれに限定されず、ロボット制御装置20が第1の補正および第2の補正を行う構成であってもよい。
【0085】
補正部である第4処理部74は、加工部231の回転の遠心力FTに起因する力の成分を検出値から除去する補正を行う。検出値のノイズの大半を占める加工部231の回転の遠心力FTに起因する力を除去することにより、力検出部3の検出精度をより高めることができる。
【0086】
補正部である第4処理部74は、支持部材24の振動に起因する力の成分を除去する第1の補正と、加工部231の回転の遠心力FTに起因する力の成分を検出値から除去する第2の補正とを行う。これにより、力検出部3の検出精度をさらに高めることができる。なお、本発明では、第1の補正を行うのを省略し、あるいは簡略化してもよい。
【0087】
力検出部3が検出する検出値は、回転軸Oを法線(γ軸)とする面(α-β面)内で互いに直交するα軸およびβ軸を設定したとき、α軸に沿った力の成分Fαと、β軸に沿った力の成分Fβとを含み、第2の補正は、α軸に沿った補正成分Fα1および前記β軸に沿った補正成分Fβ1値を求め、成分Fαから補正成分Fα1を減算し、成分Fβから補正成分Fβ1を減算することにより行われる。これにより、力検出部3の検出精度をさらに高めることができる。
【0088】
支持部材24は、ロボットアーム22の先端部に設定された制御点TCPから、回転軸Oと直交する方向に離間した位置で回転工具23を支持する。すなわち、回転軸Oは、力検出部3の中心軸A1と離間している。このような構成であると、制御点TCPと回転軸Oとが一致している場合と比較して、制御点TCPと作業対象物であるワークに対し加工部231が加工する加工点との距離を短くすることができるため、加工の精度を向上することができる。また、力検出部3は、回転工具23の遠心力FTの影響をより大きく受けやすく本発明の効果をより有効に発揮することができる。
【0089】
図11に示すように、制御点TCPと回転軸Oとの離間距離Lは、特に限定されないが、例えば、2mm以上500mm以下とするのが好ましく、5mm以上300mm以下とするのがより好ましい。なお、ここでの直交とは、技術上許容される誤差、製造上生じ得る誤差等を有する場合を含む意味である。
【0090】
なお、支持部材24は、ロボットアーム22の先端に設定された制御点TCPと、回転軸Oとが重なる位置で回転工具23を支持する構成であってもよい。すなわち、制御点TCPと、回転軸Oとが一致している(離間距離L=0)構成であってもよい。
【0091】
<第2実施形態>
図15は、本発明の第2実施形態に係わる回転位置検出部の構成を示す側面図である。
【0092】
以下、
図15を参照しつつ本発明のロボットシステムの第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0093】
前記第1実施形態では、回転位置検出部の一例としてエンコーダー233について説明したが、本発明ではこれに限定されない。すなわち、第2実施形態における回転位置検出部は、加工部231に設けられたマーカー234と、撮像部としてのモーションキャプチャーカメラ235とを有する。マーカー234は、重心Gの位置に設置することができるが、これに限定されない。また、撮像部は、モーションキャプチャーカメラ235に限定されず、他の電子式カメラであってもよい。
【0094】
モーションキャプチャーカメラ235は、回転している加工部231のマーカー234を撮像する。モーションキャプチャーカメラ235は、ロボット制御装置20と電気的に接続されており、モーションキャプチャーカメラ235で撮像された画像データは、ロボット制御装置20へ随時送信され、信号処理がなされる。
【0095】
ロボット制御装置20では、モーションキャプチャーカメラ235の画像データから、マーカー234の回転位置情報を作成し、このマーカー234の回転位置情報に基づいて、加工部231の回転位置(角度ωt+φ)および回転速度(ω)等を求めることができる。求めた加工部231の回転位置等に基づいて、前記と同様の第1の補正および第2の補正を行う。
【0096】
第2実施形態における前述した第1の補正および第2の補正の方法は、第1実施形態と同様である。第2実施形態のロボットシステムにおいても、第1実施形態で述べたのと同様の効果が得られる。
【0097】
以上、本発明のロボットシステムを、図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、各実施形態のロボットシステムは、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…ロボットシステム、2…ロボット、3…力検出部、4…力センサー、4A…力センサー、4B…力センサー、4C…力センサー、4D…力センサー、5…ケース、6…慣性センサー、6A…慣性センサー、6B…慣性センサー、6C…慣性センサー、6D…慣性センサー、7…力検出回路、20…ロボット制御装置、21…基台、22…ロボットアーム、23…回転工具、24…支持部材、41…パッケージ、42…力検出素子、50…与圧ボルト、51…第1ケース部材、52…第2ケース部材、53…側壁部材、61…アウターケース、62…センサーモジュール、63…接合部材、64…コネクター、65a…角速度センサー、65b…角速度センサー、65c…角速度センサー、66…加速度センサー、67…制御IC、71…第1処理部、72…第2処理部、73…第3処理部、74…第4処理部、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、231…加工部、232…モーター、233…エンコーダー、234…マーカー、235…モーションキャプチャーカメラ、241…貫通孔、411…基体、412…蓋体、413…端子、420…圧電素子、421…第1圧電素子、421A…グランド電極層、421B…圧電体層、421C…出力電極層、421D…圧電体層、421E…グランド電極層、421F…圧電体層、421G…出力電極層、421H…圧電体層、421I…グランド電極層、422…第2圧電素子、422A…グランド電極層、422B…圧電体層、422C…出力電極層、422D…圧電体層、422E…グランド電極層、422F…圧電体層、422G…出力電極層、422H…圧電体層、422I…グランド電極層、423…中間基板、424…中間基板、510…上面、511…天板、511a…貫通孔、512…与圧部、512a…貫通孔、520…下面、521…底板、521a…貫通孔、522…与圧部、522a…雌ネジ孔、611…ネジ穴、621…インナーケース、621a…開口、622…基板、A1…中心軸、AAa…加速度、AAb…加速度、ABa…加速度、ABb…加速度、ACa…加速度、ACb…加速度、ADa…加速度、ADb…加速度、CL…線分、E…エンコーダー、F0…外力、F2…外力、FAAa…せん断力、FAAb…せん断力、FABa…せん断力、FABb…せん断力、FACa…せん断力、FACb…せん断力、FADa…せん断力、FADb…せん断力、FAa…せん断力、FAa0…補正せん断力、FAb…せん断力、FAb0…補正せん断力、FBa…せん断力、FBa0…補正せん断力、FBb…せん断力、FBb0…補正せん断力、FCa…せん断力、FCa0…補正せん断力、FCb…せん断力、FCb0…補正せん断力、FDa…せん断力、FDa0…補正せん断力、FDb…せん断力、FDb0…補正せん断力、FT…遠心力、FTα…並進力成分、FTβ…並進力成分、Fα…並進力成分、Fαx…並進力成分、Fβ…並進力成分、Fβx…並進力成分、Fγ…並進力成分、FωAa…せん断力、FωAb…せん断力、FωBa…せん断力、FωBb…せん断力、FωCa…せん断力、FωCb…せん断力、FωDa…せん断力、FωDb…せん断力、G…重心、GND…グランド電位、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、M…モーター、Mα…回転力成分、Mβ…回転力成分、Mγ…回転力成分、O…回転軸、P…矢印、P0…基準位置、Qa…電荷、Qb…電荷、S…収納空間、S1…内部空間、TCP…制御点