(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101947
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】難燃性織布壁基材及び難燃性織布壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
D06M 11/79 20060101AFI20240723BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
D06M11/79
E04F13/07 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006195
(22)【出願日】2023-01-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 株式会社日経BPが2022年11月24日付で発行した「NIKKEI ARCHITECTURE」第37頁に、「デニムの端材をリユースできる繊維壁」の記事が掲載されている。
(71)【出願人】
【識別番号】301074735
【氏名又は名称】日本エムテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 征也
(72)【発明者】
【氏名】吉成 典子
【テーマコード(参考)】
4L031
【Fターム(参考)】
4L031AA02
4L031AB01
4L031AB21
4L031AB31
4L031BA19
4L031BA24
4L031DA16
(57)【要約】
【課題】デニムの織布の端材等を原料として、難燃性を有する、難燃性織布壁基材を提供する。
【解決手段】 繊維端材1と、増粘剤2と、鉱物由来無機材料3と、防カビ材4と、顔料5とで構成されている。繊維端材1としてはデニム生地の端材を8mm程度に裁断したデニム繊維を55.2%の比率で用い、増粘剤2としては、日本製紙グループのCMCサンローズ(登録商標)の原料品番SN-60Cと、原料品番SLD-F1との混合物を用い、鉱物由来無機材料3としては、マイカの200メッシュのものを25.7%の比率で用い、防カビ材4としては、株式会社タイショーテクノスのビオサイド(登録商標)の原料品番R-ZPTを0.3%の比率で用い、顔料5としては、青と黒の混合物が用いられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
35~75重量部の繊維端材と、
5~25重量部の増粘剤と、
10~40重量部の鉱物由来無機材料とを含有することを特徴とする、難燃性織布壁基材。
【請求項2】
35~75重量部の繊維端材と、
5~25重量部の増粘剤と、
10~40重量部の鉱物由来無機材料と、
1.7~5.7重量部の顔料とを含有し、
該顔料について、黒色成分と青色成分との比率が、1:2~1:4であることを特徴とする、難燃性織布壁基材。
【請求項3】
35~75重量部の繊維端材と、
5~25重量部の増粘剤と、
10~40重量部の鉱物由来無機材料と、
1.7~5.7重量部の顔料とを含有し、
該増粘剤が、粘度600~800(mPa・s1%,25℃)の高粘度増粘剤と、粘度10~200(mPa・s1%,25℃)の低粘度増粘剤との混合物であり、高粘度増粘と低粘度増粘剤との比率が、1:0.55~0.80であることを特徴とする、難燃性織布壁基材。
【請求項4】
35~75重量部の繊維端材と、
5~25重量部の増粘剤と、
10~40重量部の鉱物由来無機材料と、
1.7~5.7重量部の顔料とを含有し、
該増粘剤が、粘度600~800(mPa・s1%,25℃)の高粘度増粘剤と、粘度10~200(mPa・s1%,25℃)の低粘度増粘剤との混合物であり、高粘度増粘と低粘度増粘剤との比率が、1:0.55~0.80であり、
該顔料について、黒色成分と青色成分との比率が、1:2~1:4であることを特徴とする、難燃性織布壁基材。
【請求項5】
0.1~0.5重量部の防カビ材を含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の難燃性織布壁基材。
【請求項6】
前記請求項1~4のいずれか一つに記載の難燃性織布壁基材を用いた難燃性織布壁の施工方法であり、
施工対象壁に対して、粉末樹脂を混入した下地処理剤による下地処理をした後に、
難燃性織布壁基材に水を加えて練り上げたものを、塗り付けることを特徴とする、難燃性織布壁基材を用いた難燃性織布壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性織布壁基材及び難燃性織布壁の施工方法に関し、詳細には、例えば、デニムの織布の端材等を原料として、難燃性以上の不燃性や準不燃性等の防火性能を付与することを可能とした、難燃性織布壁基材及び難燃性織布壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料にデニムを用いた壁紙として、特許文献1には、インジゴ染めした綿糸を主体に綾織りしたデニム地裏面に、紙又は不織布を裏打ちしたデニム壁紙が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のデニム壁紙は、防火性能を考慮したものではないため、難燃性を有するものではない。
したがって、本発明は、例えば、デニムの織布の端材等を原料として、難燃性を有する、難燃性織布壁基材及び難燃性織布壁の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0006】
第1に、
35~75重量部、好ましくは45~65重量部、より好ましくは50~60重量部の繊維端材と、
5~25重量部、好ましくは10~20重量部、より好ましくは12~17重量部の増粘剤と、
10~40重量部、好ましくは15~35重量部、より好ましくは20~30重量部の鉱物由来無機材料とを含有することを特徴とする、難燃性織布壁基材。
【0007】
第2に、
35~75重量部、好ましくは45~65重量部、より好ましくは50~60重量部の繊維端材と、
5~25重量部、好ましくは10~20重量部、より好ましくは12~17重量部の増粘剤と、
10~40重量部、好ましくは15~35重量部、より好ましくは20~30重量部の鉱物由来無機材料と、
1.7~5.7重量部、好ましくは2.7~4.7重量部、より好ましくは3.3~4.2重量部の顔料とを含有し、
該顔料について、黒色成分と青色成分との比率が、1:2~1:4、好ましくは1:2.5~1:3.5、より好ましくは1:2.7~1:3.3であることを特徴とする、難燃性織布壁基材。
【0008】
第3に、
35~75重量部、好ましくは45~65重量部、より好ましくは50~60重量部の繊維端材と、
5~25重量部、好ましくは10~20重量部、より好ましくは12~17重量部の増粘剤と、
10~40重量部、好ましくは15~35重量部、より好ましくは20~30重量部の鉱物由来無機材料と、
1.7~5.7重量部、好ましくは2.7~4.7重量部、より好ましくは3.3~4.2重量部の顔料とを含有し、
該増粘剤が、粘度600~800(mPa・s1%,25℃)の高粘度増粘剤と、粘度10~200(mPa・s1%,25℃)の低粘度増粘剤との混合物であり、高粘度増粘と低粘度増粘剤との比率が、1:0.55~0.80、好ましくは1:0.60~0.75、より好ましくは1:0.65~0.70であることを特徴とする、難燃性織布壁基材。
【0009】
第4に、
35~75重量部、好ましくは45~65重量部、より好ましくは50~60重量部の繊維端材と、
5~25重量部、好ましくは10~20重量部、より好ましくは12~17重量部の増粘剤と、
10~40重量部、好ましくは15~35重量部、より好ましくは20~30重量部の鉱物由来無機材料と、
1.7~5.7重量部、好ましくは2.7~4.7重量部、より好ましくは3.3~4.2重量部の顔料とを含有し、
該増粘剤が、粘度600~800(mPa・s1%,25℃)の高粘度増粘剤と、粘度10~200(mPa・s1%,25℃)の低粘度増粘剤との混合物であり、高粘度増粘と低粘度増粘剤との比率が、1:0.55~0.80、好ましくは1:0.60~0.75、より好ましくは1:0.65~0.70であり、
該顔料について、黒色成分と青色成分との比率が、1:2~1:4、好ましくは1:2.5~1:3.5、より好ましくは1:2.7~1:3.3であることを特徴とする、難燃性織布壁基材。
【0010】
第5に、
更に、0.1~0.5重量部、好ましくは0.2~0.4重量部の防カビ材を含有することを特徴とする、前記第1~第4のいずれか一つに記載の難燃性織布壁基材。
【0011】
第6に、
前記第1~第5のいずれか一つに記載の難燃性織布壁基材を用いた難燃性織布壁の施工方法であり、
施工対象壁に対して、粉末樹脂を混入した下地処理剤による下地処理をした後に、
難燃性織布壁基材に水を加えて練り上げたものを、塗り付けることを特徴とする、難燃性織布壁基材を用いた難燃性織布壁の施工方法。
【0012】
ここで、繊維端材とは、洋服に用いる繊維を細かく裁断したものである。
例えば、デニムの端材を、4~12mm、好ましくは6~10mm、より好ましくは7~9mmに裁断したものを用いることができる。
【0013】
顔料として、黒色と青色とを用い、黒色成分と青色成分との比率が、1:2~1:4、好ましくは1:2.5~1:3.5、より好ましくは1:2.7~1:3.3の範囲で用いることで、特に繊維端材としてデニムを用いた場合には、原料のデニム繊維の濃淡に多少バラつきが出たとしても、差異を少なくすることができ、また、デニム繊維の元々の色と質感を大きく損なわず、かつほぼ均一な色の濃淡でデニム特有の色のムラがある仕上がり色とすることが可能となる。
【0014】
増粘剤は、「のり」として機能するものであり、天然セルロースを原料として得られるアニオン系水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロースを用いることができる。
該増粘剤として、粘度600~800(mPa・s1%,25℃)の高粘度増粘剤と、粘度10~200(mPa・s1%,25℃)の低粘度増粘剤との混合物を、高粘度増粘と低粘度増粘剤との比率が、1:0.55~0.80、好ましくは1:0.60~0.75、より好ましくは1:0.65~0.70の範囲で用いることで、粘度を上げずに、保水性のみを向上させることができるので、作業性が良好で、乾燥後の皮膜も比較的柔らかくなり、特に繊維端材としてデニムを用いた場合には、デニム繊維の質感を損なわない仕上がり肌とする事が可能となる。
ここで、粘度600~800(mPa・s1%,25℃)の高粘度増粘剤のみを用いて施工した場合であっても施工は可能であるが、練り水が垂れてこない程度の保水力を付与する位の量を配合する必要があるので、混練り後の粘度が非常に上がるため、作業性が悪くなり、かつ乾燥後の仕上がり肌もかなり硬いものとなることを確認している。
【0015】
鉱物由来無機材料としては、100~300メッシュ、好ましくは150~250メッシュ、より好ましくは180~220メッシュのマイカ(雲母)を用いることができる。
ここで、特に繊維端材としてデニムを用いた場合には、マイカ(雲母)を用いることで、デニム繊維の比重に出来るだけ近く、かつデニム繊維の質感を損なわないことができる。
すなわち、特に繊維端材としてデニムを用いた場合には、軽くて、細かく、色も目立たない鉱物由来無機材料として、100~300メッシュ、好ましくは150~250メッシュ、より好ましくは180~220メッシュのマイカ(雲母)が適していることを確認している。
【0016】
防カビ材としては、有機窒素及び有効硫黄を有効成分とするものを用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0018】
繊維端材、増粘剤、鉱物由来無機材料を、特定の比率で混合しているので、難燃性を有する壁材の基材として有効である。
【0019】
特に、繊維端材としてデニムを用いた場合には、顔料として、黒色と青色とを特定の範囲で用いることで、原料のデニム繊維の濃淡に多少バラつきが出たとしても、差異を少なくすることができ、また、デニム繊維の元々の色と質感を大きく損なわず、かつほぼ均一な色の濃淡でデニム特有の色のムラがある仕上がり色とすることが可能となる。
加えて、特定範囲のマイカを用いることで、デニム繊維の質感を損なわないものとすることができる。
また、増粘剤として、高粘度増粘剤と低粘度増粘剤との混合物を、特定の比率範囲で用いることで、作業性が良好で、乾燥後の皮膜も比較的柔らかくなり、デニム繊維の質感を損なわない仕上がり肌とする事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1による難燃性織布壁基材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
なお、ここでの説明は本発明が実施される一形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【実施例0022】
本実施例1の難燃性織布壁基材は、
図1の説明図に示すとおり、繊維端材1と、増粘剤2と、鉱物由来無機材料3と、防カビ材4と、顔料5とで構成されている。
【0023】
繊維端材1としては、デニム生地の端材を8mm程度に裁断した、デニム繊維が用いられている。
増粘剤2としては、日本製紙グループのCMCサンローズ(登録商標)の原料品番SN-60Cと、原料品番SLD-F1との混合物が用いられている。
鉱物由来無機材料3としては、マイカの200メッシュのものが用いられている。
防カビ材4としては、株式会社タイショーテクノスのビオサイド(登録商標)の原料品番R-ZPTが用いられいてる。
顔料5としては、青と黒の混合物が用いられている。
【0024】
配合は、デニム繊維が120.00kg(55.2%)、SN-60Cが19.60kg(9.0%)、SLD-F1が13.23kg(6.1%)、マイカが56.00kg(25.7%)、R-ZPTが0.70kg(0.3%)、顔料の青が6.00kg(2.8%)、顔料の黒が2.00kg(0.9%)である。
【0025】
次に、上記の難燃性織布壁基材を用いた難燃性織布壁の施工方法について説明する。
【0026】
石膏ボードのような平滑な施工対象壁に対して、下地処理として、粉末樹脂を混入した一材タイプの株式会社シンコーのコテガード(商品名)を、施工する。
コテガードの施工は、コテガード1袋(5.5kg)につき、4~4.5リットルの混水量を標準とするが、標準水量より少なめの水を徐々に加えながら十分練り合せ後、残りの水を加え塗りやすい状態に調整する。
混練り後、約30分位放置してから塗り始めることで、下地処理が完了する。
【0027】
前記コテガードによる下地処理をすることで、本実施例の難燃性織布壁基材を石膏ボードのような平滑な施工対象壁に施工する場合であっても、施工性が非常に良好になる。
すなわち、コテガードによる下地処理を行わず、石膏ボードのような平滑な施工対象壁に施工すると、下地に引っ掛かりが無い為、デニム繊維に滑りが発生し、施工面に透けや、繊維の偏りが発生し、施工が非常に困難な状況となることを確認している。
【0028】
前記配合した難燃性織布壁基材が700gに対して、5リットルの水を加えて練り上げ、下地処理が完了した壁面に、コテを使用して塗り付けることで、施工が完了する。
難燃性織布壁基材を施工した壁面は、デニムの肌触りを残しつつも難燃性であり、難燃認証RM-9364、不燃認証NM-8575、準不燃認証QM-9815を取得している。
【0029】
本実施例の難燃性織布壁基材を施工したデニム端材を用いた壁面は、キズや穴ができた場合でも、水を噴霧することで柔らかくなるので、補修が簡単である。
また、撤去する際にも、水を噴霧することで、容易に剥がれるので、簡単に除去することができる。
さらに、除去した難燃性織布壁基材は、水を加えて練り上げることで、再利用することが可能であり、循環型の左官材として機能することができる。