(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101949
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01N27/409 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006197
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】牧 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】片桐 康太
(72)【発明者】
【氏名】矢板 航平
(72)【発明者】
【氏名】清家 雄也
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BC02
2G004BF01
2G004BF27
2G004BH04
2G004BH09
2G004BH11
(57)【要約】
【課題】外筒の後端側をテーパー状に加締めることなく、外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生などの各リスクを抑制したガスセンサを提供する。
【解決手段】本発明の一側面に係るガスセンサにおいて、筒状体の後端側に形成され、弾性体を加締める縮径部の径は、軸方向に一定であり、前記弾性体の変形を評価する指標である総合パラメータの値は、0.038以上、0.171以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスの特定ガス濃度を検出可能なガスセンサであって、
軸方向に延び、先端側に検出部を有すると共に、後端側に素子電極を有するセンサ素子と、
前記センサ素子が内部に配置され、開口端が形成された筒状体と、
前記軸方向に延びる端子金具を介して前記素子電極と電気的に接続し、前記開口端から外方に延びるリード線と、
前記開口端を封止するよう配置され、前記リード線が挿入される弾性体と、
前記弾性体の、前記軸方向における先端側の端面である第1端面と接して、該第1端面の前記軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部と、
を備え、
前記筒状体の後端側には、前記弾性体の一部を周囲から加締める縮径部が形成され、
前記縮径部における前記筒状体の径は、前記軸方向において一定であり、
前記弾性体の、前記縮径部によって加締められている部分である被加締め部分の直径である加締め後直径Dbは、前記軸方向において一定であり、
以下の数式(1)を満たす、
ガスセンサ。
0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171
・・・数式(1)
ここで、前記数式(1)において、
「Da」は、前記縮径部によって周囲から加締められる前の、前記弾性体の直径である加締め前直径Daを表し、
「Db」は、前記加締め後直径Dbを表し、
「Lc」は、前記縮径部の、前記軸方向の長さである縮径部長Lcを表し、
「Ld」は、前記弾性体の、前記軸方向において前記被加締め部分よりも先端側の部分である非加締め部分の長さである非加締め長Ldを表し、
「Ae」は、前記第1端面の面積である第1面積Aeを表し、
「Af」は、前記第1端面と接する、前記位置固定部の、前記軸方向における後端側の端面である第2端面の面積である第2面積Afを表す。
【請求項2】
前記弾性体の前記加締め前直径Da、前記弾性体の前記加締め後直径Db、前記縮径部の前記縮径部長Lc、前記弾性体の前記非加締め長Ld、前記弾性体の前記第1端面の面積である前記第1面積Ae、および、前記位置固定部の前記第2端面の面積である前記第2面積Afは、以下の数式(2)を満たす、
請求項1に記載のガスセンサ。
0.050≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.094
・・・数式(2)
【請求項3】
前記弾性体の材料はフッ素ゴムである、
請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記非加締め部分の径は、前記軸方向において変化する、
請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記非加締め部分の径は、前記軸方向において先端側ほど小さい、
請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記非加締め部分の前記軸方向における先端側の端部には、面取り加工が施されている、
請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記位置固定部は、
前記素子電極と、前記端子金具の、前記素子電極と電気的に接続する素子接触部と、を収容したセラミックハウジング、
前記軸方向において前記セラミックハウジングよりも後端側に配置され、前記セラミックハウジングによって前記軸方向における先端側への移動が制限されたスペーサ、
および、
前記スペーサと一体に形成された前記セラミックハウジング、
の何れかである、
請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記筒状体の後端側には、前記縮径部が複数形成され、
前記加締め前直径Da、前記非加締め長Ld、前記第1面積Ae、および、前記第2面積Afは、それぞれ、複数の前記縮径部について共通であり、
複数の前記縮径部のそれぞれの前記加締め後直径Db、前記縮径部長Lcを用いて、複数の前記縮径部のそれぞれについて算出した、{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)の合計が、0.038以上、0.171以下である、
請求項1または2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気ガス等の被測定ガスにおける酸素やNOxなどの特定ガスの濃度を検出するガスセンサについて、例えば以下の構成を備えるものが知られている。すなわち、センサ素子を収容した外筒と、前記外筒の開口部を封止する弾性体と、前記弾性体に挿入されるリード線と、前記センサ素子と前記リード線とを電気的に接続するコネクタとを備え、前記外筒を加締めることで前記弾性体が固定されたガスセンサが知られている。係る構成を備えるガスセンサについて、前記外筒内の気密性を確保するための様々な試みがなされている。例えば、下掲の特許文献1には、前記外筒をテーパー状に加締めることで、前記外筒内の気密性を確保しようとするガスセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者らは、センサ素子を収容し、後端開口部が弾性体によって封止された外筒の後端側をテーパー状に加締めたガスセンサについて、以下の問題が発生し得ることを見出した。すなわち、上述の構成を備えるガスセンサにおいては、弾性体の一部に応力が集中するため、弾性体が破断するリスクが上昇する。また、応力が集中する部分は摩耗が進みやすく、結果として、前記外筒内の気密性が早期に悪化しやすい。さらに、弾性体の、外筒によって加締められている部分である被加締め部分がテーパー状となって軸方向において径が変化すると、前記外筒内の気密性を確保するために必要な前記被加締め部分の径寸法の管理が困難となる。その結果、弾性体によって実現される外筒内の気密性が安定しなくなるというリスクが発生する。加えて、テーパー状に加締めた場合、弾性体に加わる圧縮力が大きいため、弾性体の軸方向の変形、移動が大きく、コネクタとリード線との電気的な接続が失われる(つまり、接点ずれが発生する)リスクが高い。
【0005】
以上に説明してきた通り、本件発明者らは、外筒の後端側をテーパー状に加締めた場合、弾性体において応力が軸方向に集中しやすく、その結果、前記外筒内の気密性の悪化、前記弾性体の破断、前記接点ずれの発生などの各リスクが上昇することを見出した。
【0006】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、外筒の後端側をテーパー状に加締めることなく、外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生などの各リスクを抑制したガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の観点に係るガスセンサは、被測定ガスの特定ガス濃度を検出可能なガスセンサであって、軸方向に延び、先端側に検出部を有すると共に、後端側に素子電極を有するセンサ素子と、前記センサ素子が内部に配置され、開口端が形成された筒状体と、前記軸方向に延びる端子金具を介して前記素子電極と電気的に接続し、前記開口端から外方に延びるリード線と、前記開口端を封止するよう配置され、前記リード線が挿入される弾性体と、前記弾性体の、前記軸方向における先端側の端面である第1端面と接して、該第1端面の前記軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部と、を備え、前記筒状体の後端側には、前記弾性体の一部を周囲から加締める縮径部が形成され、前記縮径部における前記筒状体の径は、前記軸方向において一定であり、前記弾性体の、前記縮径部によって加締められている部分である被加締め部分の直径である加締め後直径Dbは、前記軸方向において一定であり、以下の数式(1)を満たす。
0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171
・・・数式(1)
【0009】
ここで、前記数式(1)において、「Da」は、前記縮径部によって周囲から加締められる前の、前記弾性体の直径である加締め前直径Daを表し、「Db」は、前記加締め後直径Dbを表し、「Lc」は、前記縮径部の、前記軸方向の長さである縮径部長Lcを表し、「Ld」は、前記弾性体の、前記軸方向において前記被加締め部分よりも先端側の部分である非加締め部分の長さである非加締め長Ldを表し、「Ae」は、前記第1端面の面積である第1面積Aeを表し、「Af」は、前記第1端面と接する、前記位置固定部の、前記軸方向における後端側の端面である第2端面の面積である第2面積Afを表す。
【0010】
当該構成では、前記ガスセンサについて、前記縮径部における前記筒状体(従来の「外筒」に相当する)の径は、前記軸方向に一定であり、前記弾性体の、前記被加締め部分の直径である前記加締め後直径Dbは、前記軸方向に一定である。そのため、前記ガスセンサは、「外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることで、外筒内の気密性を確保するのが困難となったり、また、弾性体が破断したり、接点ずれを発生させたりするリスクが高くなる」といった従来のガスセンサの課題を解決できる。すなわち、前記ガスセンサは、外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることで上昇する、「外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、縮径部における筒状体の径を軸方向に一定とすることで抑制できるとの効果を奏する。
【0011】
ここで、前記筒状体について良好な気密性を得るためには、前記弾性体(前記筒状体の開口端を封止し、前記リード線が挿入される前記弾性体)を周囲から加締めて、前記弾性体に適切な応力を与えることが重要となる。そして、一般的に、前記弾性体の、前記筒状体によって周囲から加締められる部分(前記被加締め部分)において、前記弾性体に過剰な軸方向の応力が加わらない範囲で、前記縮径部の径を小さくすることで、前記筒状体内の気密性を向上できることが知られている。ただし、前記縮径部の径を小さくして前記弾性体の圧縮率を上げ過ぎると、前記弾性体の軸方向の変形が大きくなり過ぎ、前記弾性体の、前記軸方向における先端側の端面である第1端面の位置を、前記位置固定部によって許容範囲に保つことが困難となる。例えば、前記位置固定部によって、前記第1端面の位置を、接点ずれを発生させない範囲に保つことが困難となる。
【0012】
そこで、前記ガスセンサは、前記弾性体の前記非加締め部分に適切な応力を与えることで、前記縮径部における前記筒状体の径および前記加締め後直径Dbが前記軸方向に一定であっても、前記筒状体内の気密性を良好なものとする。すなわち、前記ガスセンサは、前記縮径部の縮径部長Lcと前記弾性体の圧縮量とに応じて発生する、前記弾性体の前記軸方向の変形を、前記位置固定部により、径方向の変形(気密性に寄与する変形)へと変換することで、前記筒状体内の良好な気密性を実現する。特に、前記ガスセンサは、前記数式(1)を満たすように各部材のサイズ等を調整することで、前記弾性体の軸方向の変形が大きくなり過ぎるのを防いで、前記位置固定部によって、前記弾性体の前記第1端面の位置を許容範囲に保つことができる。
【0013】
具体的には、前記弾性体の圧縮率Rcは、前記弾性体の前記加締め前直径Daと、前記弾性体(前記被加締め部分)の前記加締め後直径Dbとを用いて、「Rc=1-Db/Da」と表される。そのため、前記弾性体の前記軸方向の変形量(特に、先端側への変形量)Δ[mm]は、前記弾性体の材料により決定される定数k、前記縮径部の前記縮径部長Lc、および、前記弾性体の圧縮率Rcを用いて、「Δ=k×Lc×Rc」と表すことができる。なお、前記弾性体は、前記被加締め部分の前記軸方向における中央の位置から、前記軸方向の両側に変形する。そのため、前記軸方向の先端側への前記弾性体の変形量Δは、前記軸方向の両側(先端側および後端側の両方)への前記弾性体の変形量の、例えば、半分(「1/2」)となる。ただし、定数kは「1/2」を含むものとして、「Δ=k×Lc×Rc」と表されるΔによって、前記弾性体の、前記軸方向の先端側への変形量を表すことができる。したがって、前記軸方向の変形量Δに対する、前記弾性体の前記非加締め長Ldの割合である第1パラメータPfは、「Pf=Δ/Ld」と表すことができる。そして、前述のとおり、「Δ=k×Lc×Rc」であり、「Rc=1-Db/Da」であるから、前記第1パラメータPfは、「Pf={k×Lc×(1-Db/Da)}/Ld」と表すことができる。前記第1パラメータPfは、前記弾性体に加わる応力を、前記軸方向の変形へと変換する効率(変換効率)を評価する指標であり、前記第1パラメータPfの値が大きい程、前記弾性体に加わる応力を、前記軸方向の変形へと変換する変換効率は高いことになる。
【0014】
また、前記弾性体において、前記軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率を評価する指標である第2パラメータPsは、以下のように表わすことができる。すなわち、前記第2パラメータPsは、前記弾性体の先端側の端面(前記第1端面)の面積である前記第1面積Aeと、前記位置固定部の後端側の端面(前記第2端面)の面積である前記第2面積Afとの比として表すことができる。具体的には、「Ps=Af/Ae」と表すことができる。前記第2パラメータPsの値が大きい程、前記弾性体において、前記軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率は、高いことになる。
【0015】
上述のとおり、前記第1パラメータPfが大きい程、前記弾性体に加わる応力を、前記軸方向の変形へと変換する変換効率は高く、また、前記第2パラメータPsが大きい程、前記弾性体において、前記軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率は、高い。そのため、前記弾性体の変形(前記軸方向の変形量、径方向の変形量、および、両者のバランスなど)を評価する指標である総合パラメータPcは、「Pc=Pf×Ps」と表すことができる。そして、「Pf={k×Lc×(1-Db/Da)}/Ld」であり、「Ps=Af/Ae」であるから、「Pc=k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」と表すことができる。
【0016】
本件発明者らは、実験により、前記弾性体によって実現される前記筒状体(従来の外筒に相当する)の気密性を確保するには、前記総合パラメータPcの値は「0.038k」以上とすることが必要であることを確認した。
【0017】
また、本件発明者らは、実験により、「前記弾性体の前記軸方向の変形、移動が大きくなって接点ずれを発生させる」事態を回避するためには、前記総合パラメータPcの値は「0.171k」以下とすることが必要であることを確認した。具体的には、前記ガスセンサにおいて、「前記弾性体の前記軸方向における変形が過大となって、前記軸方向の変形を前記位置固定部によって径方向の変形へと変換しきれなくなる」と、前記位置固定部自体が、前記軸方向に(特に、先端側に)移動することになる。そこで、本件発明者らは、「前記位置固定部が、前記弾性体の前記軸方向における変形を、径方向の変形へと変換できる」範囲の前記総合パラメータPcの値を、実験により求めた。具体的には、本件発明者らは、前記弾性体の前記第1端面の位置移動(先端側への移動)を許容範囲に保つ前記総合パラメータPcの値を、実験により求めた。その結果、本件発明者らは、前記総合パラメータPcの値を「0.171k」以下とすることで、前記弾性体の前記第1端面の位置移動を許容範囲に保つことができることを確認した。
【0018】
以上に説明してきた通り、本件発明者らは、実験により、前記総合パラメータPcの値が以下の範囲にある場合、前記筒状体(外筒)内の気密性を確保し、かつ、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。すなわち、本件発明者らは、前記総合パラメータPcの値を、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下とすることで、気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。ここで、「Pc=k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」であるから、「0.038k≦k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171k」と整理できる。この関係式の各辺においては「定数k」が共通するため、この定数kを各辺から除くと、「0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171」となる。
【0019】
そして、前記ガスセンサは、前記数式(1)を満たし、つまり、「0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171」を満たす。したがって、前記ガスセンサは、外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることなく、外筒内の気密性を確保することができ、また、接点ずれの発生を効果的に防止することができるとの効果を奏する。
【0020】
なお、本件発明者らは、実験により、前記位置固定部の前記第2端面の面積である前記第2面積Afを、前記弾性体の前記第1端面の面積である前記第1面積Aeよりも大きくしても、前記第2パラメータPsは改善されないことを確認した。
【0021】
また、本件発明者らは、実験により、前記弾性体の圧縮率Rc(=1-Db/Da)の上限は、前記弾性体の材料に応じて決定されることを確認した。例えば、前記弾性体の材料をフッ素ゴムとした場合、圧縮率Rcの上限(圧縮限界)は「0.25」である。そして、本件発明者らは、前記弾性体の圧縮率Rcが、前記弾性体の材料に応じて決定される圧縮限界(例えば、「0.25」)以下の範囲にある場合、前記弾性体が破断することはない(つまり、前記弾性体の破断リスクを抑制できる)ことも確認した。
【0022】
第2の観点に係るガスセンサは、上記第1の観点に係るガスセンサにおいて、前記弾性体の前記加締め前直径Da、前記弾性体の前記加締め後直径Db、前記縮径部の前記縮径部長Lc、前記弾性体の前記非加締め長Ld、前記弾性体の前記第1端面の面積である前記第1面積Ae、および、前記位置固定部の前記第2端面の面積である前記第2面積Afは、以下の数式(2)を満たしてもよい。
0.050≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.094
・・・数式(2)
【0023】
当該構成では、前記ガスセンサは、前記数式(2)を満たし、つまり、「0.050≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.094」を満たす。本件発明者らは、実験により、前記総合パラメータPcの値を、「0.050k」以上、かつ、「0.094k」以下とすることで、前記筒状体内の気密性が著しく向上し、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになることを確認した。したがって、「0.050≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.094」を満たす前記ガスセンサは、前記筒状体内の気密性を著しく良好なものとし、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになるとの効果を奏する。
【0024】
第3の観点に係るガスセンサは、上記第1または上記第2の観点に係るガスセンサにおいて、前記弾性体の材料はフッ素ゴムであってもよい。当該構成では、前記弾性体の材料は、耐性、強度などのさまざまな面で優れた特性を有し、特に耐熱性および耐油性に優れたフッ素ゴムである。そのため、前記ガスセンサは、例えば、高温環境下でも前記弾性体のシール性を確保して、ガス濃度の検出精度を維持、向上させることができるとの効果を奏する。
【0025】
第4の観点に係るガスセンサは、上記第1から上記第3の何れかの観点に係るガスセンサにおいて、前記非加締め部分の径は、前記軸方向において変化してもよい。当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記非加締め部分の径は、前記軸方向において変化する。したがって、前記ガスセンサは、前記非加締め部分の径が前記軸方向において変化する前記弾性体を用いて、「外筒(筒状体)内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、抑制することができるとの効果を奏する。
【0026】
第5の観点に係るガスセンサは、上記第4の観点に係るガスセンサにおいて、前記非加締め部分の径は、前記軸方向において先端側ほど小さくてもよい。当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記非加締め部分の径は、前記軸方向において先端側ほど小さい。したがって、前記ガスセンサは、前記非加締め部分の径が前記軸方向において先端側ほど小さい前記弾性体を用いて、「外筒(筒状体)の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、抑制することができるとの効果を奏する。
【0027】
第6の観点に係るガスセンサは、上記第4または上記第5の観点に係るガスセンサにおいて、前記非加締め部分の前記軸方向における先端側の端部には、面取り加工が施されていてもよい。当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記非加締め部分の前記軸方向における先端側の端部には、面取り加工が施されている。したがって、前記ガスセンサは、前記非加締め部分の前記軸方向における先端側の端部に面取り加工の施された前記弾性体を用いて、「外筒(筒状体)の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、抑制することができるとの効果を奏する。
【0028】
第7の観点に係るガスセンサは、上記第1から上記第6の何れかの観点に係るガスセンサにおいて、前記位置固定部は、(1)前記素子電極と、前記端子金具の、前記素子電極と電気的に接続する素子接触部と、を収容したセラミックハウジング、(2)前記軸方向において前記セラミックハウジングよりも後端側に配置され、前記セラミックハウジングによって前記軸方向における先端側への移動が制限されたスペーサ、および、(3)前記スペーサと一体に形成された前記セラミックハウジング、の何れかであってもよい。当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記位置固定部は、前記セラミックハウジング、前記スペーサ、および、前記スペーサと一体に形成された前記セラミックハウジングの何れかである。したがって、前記ガスセンサは、前記セラミックハウジング、前記スペーサ、および、両者を一体成形した部材の何れかを用いて、「外筒(筒状体)の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、抑制することができるとの効果を奏する。
【0029】
第8の観点に係るガスセンサは、上記第1から上記第7の何れかの観点に係るガスセンサにおいて、前記筒状体の後端側には、前記縮径部が複数形成され、前記加締め前直径Da、前記非加締め長Ld、前記第1面積Ae、および、前記第2面積Afは、それぞれ、複数の前記縮径部について共通であり、複数の前記縮径部のそれぞれの前記加締め後直径Db、前記縮径部長Lcを用いて、複数の前記縮径部のそれぞれについて算出した、{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)の合計が、0.038以上、0.171以下であってもよい。
【0030】
当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記筒状体の後端側には、前記縮径部が複数形成されている。また、前記ガスセンサにおいて、前記加締め前直径Da、前記非加締め長Ld、前記第1面積Ae、および、前記第2面積Afは、それぞれ、複数の前記縮径部について共通である。そして、前記ガスセンサにおいて、複数の前記縮径部のそれぞれの前記加締め後直径Db、前記縮径部長Lcを用いて、複数の前記縮径部のそれぞれについて算出した総合パラメータPc(ただし、定数kを除く)の合計は、0.038以上、0.171以下である。
【0031】
本件発明者らは、前記筒状体に前記縮径部を複数形成したガスセンサを用いて実験を行ない、各構成要素のサイズ等が以下の条件を満たすと、前記筒状体内の気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。すなわち、複数の前記縮径部のそれぞれについて算出した前記総合パラメータPcの合計が、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下である場合、前記筒状体内の気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。
【0032】
そして、前記ガスセンサは、前記筒状体の後端側に前記縮径部が複数形成され、複数の前記縮径部のそれぞれについて算出した「{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」の合計は、「0.038」以上、「0.171」以下である。したがって、前記ガスセンサは、前記筒状体の後端側に前記縮径部が複数形成され、前記筒状体内の気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できるとの効果を奏する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、外筒の後端側をテーパー状に加締めることなく、外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生などの各リスクを抑制したガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るガスセンサの主要な構成の一例を概略的に示す部分断面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のガスセンサの要部を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、変形例1~3に係る弾性体を模式的に示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、変形例4に係るガスセンサの要部を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0036】
本件発明者らは、センサ素子を収容し、後端開口部が弾性体によって封止される筒状体(外筒)の後端側をテーパー状に加締めた従来のガスセンサについて、以下の問題が発生し得ることを見出した。すなわち、筒状体の後端側をテーパー状に加締めた場合、弾性体において応力が軸方向に集中しやすく、その結果、筒状体内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生などの各リスクが上昇することを見出した。
【0037】
そこで、本発明の一側面に係るガスセンサは、筒状体の後端側に形成され、弾性体を加締める縮径部の径を、前記ガスセンサ(センサ素子)の軸方向に一定とした。縮径部の径を軸方向に一定とすることで、本発明の一側面に係るガスセンサは、従来のガスセンサについて見出された上述の問題を解決する。すなわち、本発明の一側面に係るガスセンサは、「筒状体の後端側をテーパー状に加締めることで、筒状体内の気密性の確保が困難となり、また、弾性体の破断、接点ずれの発生などのリスクが高くなる」という従来のガスセンサの問題を解決する。本発明の一側面に係るガスセンサは、外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることで上昇する、「外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、縮径部における筒状体の径を軸方向に一定とすることで抑制する。
【0038】
さらに、本発明の一側面に係るガスセンサにおいて、縮径部によって加締められることで弾性体に加わる応力が好適なものとなるよう、各部材のサイズ等は調整され、所定の関係式(具体的には、後述する数式(1))を満たす。詳細は後述するが、各部材のサイズ等が数式(1)を満たすガスセンサは、軸方向の応力を緩和することで、弾性体が軸方向に移動するなどのリスクを抑制でき、また、径方向に好適な大きさの応力を発生させることで、筒状体内の良好な気密性を実現する。
【0039】
具体的には、本発明の一側面に係るガスセンサは、筒状体の開口端を封止する弾性体の、軸方向における先端側の端面である第1端面と接して、該第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部を備えている。そして、本発明の一側面に係るガスセンサは、数式(1)を満たすように各部材のサイズ等が調整されることで、前述の位置固定部によって、弾性体の軸方向の変形を、筒状体内の気密性に寄与する径方向の変形へと、好適に変換する。そのため、本発明の一側面に係るガスセンサは、筒状体内の良好な気密性を実現するとともに、接点ずれの発生を効果的に防止することができるとの効果を奏する。
【0040】
以上に説明したように、本発明の一側面に係るガスセンサは、弾性体を固定するために筒状体の後端側に形成される縮径部の径を、軸方向に一定とする。係る構成を採用することで、本発明の一側面に係るガスセンサは、「外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることで、気密性確保が困難となり、弾性体の破断および接点ずれのリスクが高くなる」という従来のガスセンサの課題を解決する。さらに、本発明の一側面に係るガスセンサは、「弾性体の先端面(第1端面)と接して、該第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」を備え、各部材のサイズ等が数式(1)を満たすように調整されている。係る構成を採用することで、本発明の一側面に係るガスセンサは、筒状体内の気密性を許容可能な範囲に確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止することができる。以下では先ず、
図1および
図2を用いて、本発明の一側面に係るガスセンサの一例として、スペーサを、「弾性体の先端面(第1端面)と接して、該第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」とするガスセンサ1について説明する。
【0041】
なお、本発明の一側面に係るガスセンサにとって、上述の位置固定部としてスペーサを備えることは必須ではない。本発明の一側面に係るガスセンサは、スペーサを備えずに、セラミックハウジング(具体的には、センサ素子の素子電極と、端子金具の素子接触部とを収容したセラミックハウジング)を、位置固定部として備えていてもよい。また、本発明の一側面に係るガスセンサは、上述のスペーサと一体に形成されたセラミックハウジングを、位置固定部として備えてもよい。つまり、スペーサとセラミックハウジングとは一体成形されてもよく、本発明の一側面に係るガスセンサは、係る一体成形された部材を、位置固定部として備えてもよい。スペーサに代えて、セラミックハウジングを、位置固定部として備えるガスセンサの例については、
図4を用いて後述する。
【0042】
[構成例]
<ガスセンサの全体概要>
図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。すなわち、
図1は、ガスセンサ1の、長手方向の軸(軸線、図の左右方向に沿う線)に平行でかつ軸に接する断面の構成を、模式的に示す。ガスセンサ1は、本発明の「ガスセンサ」の一例であり、自動車の排気ガス等の被測定ガスにおける酸素やNO
xなどの特定ガスの濃度(特定ガス濃度)を検出可能なガスセンサである。
図1に例示するように、ガスセンサ1は、軸を有し、長手方向(軸方向)に沿って延びるように構成されており、長手方向のそれぞれの端として先端および後端を有している。長手方向の一方の端が先端、他方の端が後端である。
図1の例では、ガスセンサ1は、ガスセンサ1の先端が左方向を向き、ガスセンサ1の後端が右方向を向くように配置されている。すなわち、
図1の左右方向が、長手方向(軸方向)に相当する。本実施形態では、ガスセンサ1は、センサ素子10、筒状体20、端子金具30、リード線40、弾性体50、セラミックハウジング60、スペーサ70、および、保護カバー80を備える。ガスセンサ1においてセンサ素子10は、筒状体20と、保護カバー80とによって囲繞され、筒状体20と、保護カバー80とは、全体として、センサ素子10を内部に収容する収容部材(ケーシング)を構成している。センサ素子10は、筒状体20および保護カバー80と同軸に配置されており、係るセンサ素子10の中心軸の延在方向は、ガスセンサ1の軸方向と一致している。
【0043】
(センサ素子)
センサ素子10は、本発明の「センサ素子」の一例であり、軸方向(
図1の左右方向)に沿って延びるように構成される。
図1に例示するセンサ素子10は、細長な平板状の(長尺板状の)素子である。センサ素子10は、先端側に不図示の検出部を有すると共に、後端側に不図示の素子電極を有する。
図1に例示するセンサ素子10は、先端側が外側多孔質層によって被膜されており、係る外側多孔質層は、例えば被測定ガス中の水分等が付着してセンサ素子10の素子本体にクラックが生じるのを抑制する保護層としての役割を果たしている。
【0044】
ガスセンサ1においてセンサ素子10は、先端側がガスセンサ1の先端の方を向くように配置されている。例えば、センサ素子10の一態様においては、センサ素子10の内部に導入された被測定ガスがセンサ素子10の内部で還元ないしは分解されて酸素イオンが発生する。このようなセンサ素子10を備えるガスセンサ1においては、センサ素子10の内部を流れる酸素イオンの量が被測定ガス中における検知対象ガスである特定ガスの濃度に比例することに基づいて、当該特定ガスの濃度が求められる。
【0045】
図1に示す例においてセンサ素子10の先端側は、保護カバー80によって囲繞されており、後端側は、外筒22内に突出しており、両者の間の略中央部分は、環装部品90により、両端部間を気密に封止する態様にて主体金具21の内部に固定されている。
【0046】
(環装部品)
環装部品90は、
図1に示す例では、第1セラミックサポータ91と、圧粉体92と、第2セラミックサポータ93とからなる。第1セラミックサポータ91および第2セラミックサポータ93は、セラミックス製の碍子である。より詳細には、第1セラミックサポータ91および第2セラミックサポータ93の軸中心位置には、センサ素子10の断面形状に応じた形状の貫通孔(図示省略)が設けられており、当該貫通孔にセンサ素子10が挿通されることによって、第1セラミックサポータ91および第2セラミックサポータ93はセンサ素子10に環装されている。なお、第1セラミックサポータ91は、図面左側において主体金具21のテーパー面に係止されている。
【0047】
一方、圧粉体92は、タルクなどのセラミックス粉末を成型したものである。圧粉体92は、第1セラミックサポータ91および第2セラミックサポータ93と同様に、貫通孔にセンサ素子10が挿通されることによって、センサ素子10に環装されていた2つの成型体(不図示)が、センサ素子10の周囲に環装された状態で主体金具21の内部に配置された後、さらに圧縮されて一体となったものである。より詳細には、圧粉体92をなすセラミックス粒子は、第1セラミックサポータ91および第2セラミックサポータ93と主体金具21とに囲繞され、かつ、主体金具21の内部の、センサ素子10が貫通する空間に、密に充填されている。圧粉体92の圧縮充填により、センサ素子10の先端側と、後端側との間の気密封止が、実現される。
【0048】
図1には、環装部品90を第1セラミックサポータ91と、圧粉体92と、第2セラミックサポータ93とによって構成する例を示した。しかしながら、ガスセンサ1において、環装部品90を第1セラミックサポータ91と、圧粉体92と、第2セラミックサポータ93とによって構成することは必須ではない。
図1に例示するガスセンサ1は、主体金具21の内部においてセンサ素子10を固定するとともに、センサ素子10の先端側と後端側との間を気密封止する環装部品90を備えている。
【0049】
(筒状体)
筒状体20は、本発明の「筒状体」の一例である。筒状体20は、例えば、金属製の筒状(例えば、円筒状)の部材であり、開口端が形成されている。筒状体20の内部にはセンサ素子10が配置されている。
図1に示す例では、筒状体20は、それぞれが金属製の部材である、筒状の主体金具21と、筒状の外筒22と、固定ボルト23とを含む。
【0050】
主体金具21は、金属製の筒状(例えば、円筒状)の部材である。主体金具21の内部には、センサ素子10と、該センサ素子10に環装された固定用の環装部品90とが、収容される。つまり、主体金具21は、センサ素子10の周りに環装された環装部品90の周囲に、さらに環装される。
図1に例示する主体金具21は、軸方向(長手方向)に沿ってセンサ素子10を囲むように構成され、特に、センサ素子10の先端側および後端側のそれぞれの一部を除く範囲を囲うように構成されている。
【0051】
外筒22は、金属製の筒状(例えば、円筒状)の部材であり、
図1に例示する外筒22は、センサ素子10の後端、セラミックハウジング60(端子金具30)、および、スペーサ70の周囲を覆っている。
【0052】
外筒22の先端側の端部(開口端)は、主体金具21の後端側の外周端部に溶接固定されている。また、外筒22の後端側の開口端には、係る開口端を封止するように弾性体50が配置されている。外筒22の後端側には、後端側の開口端を封止するための弾性体50の一部を周囲から加締める縮径部221が、形成されている。縮径部221は、本発明の「縮径部」の一例である。縮径部221において外筒22がその周方向全体にわたって縮径状に外側から加締められることにより、弾性体50に径方向外側へと向かう反力を生じさせることによって、外筒22は封止されている。
【0053】
また、弾性体50によって封止された外筒22の後端側の開口端からは、リード線40が、弾性体50の内部に形成された貫通孔(不図示)を通って、外部に引き出されている。リード線40の被膜と金属線(導体)との間(言い換えれば、被膜の内側)を通って、外筒22の内部空間には外気(大気)が導入され、外筒22の内部空間は、基準ガス(大気)雰囲気となっている。センサ素子10の後端は、基準ガスで満たされた外筒22の内部空間内に配置されている。
【0054】
固定ボルト23は、ガスセンサ1を測定位置(取り付け位置)に固定する際に用いられる環状の部材であり、主体金具21と同軸に固定されている。固定ボルト23は、ねじ切りがされたボルト部と、係るボルト部を螺合する際に保持される保持部とを備えている。固定ボルト23のボルト部は、ガスセンサ1の取り付け位置に設けられたナットと螺合する。例えば、自動車の排気管に設けられたナット(ナット部)に、固定ボルト23のボルト部が螺合されることで、ガスセンサ1は、保護カバー80の側が排気管内に露出する態様にて該排気管に固定される。
【0055】
これまでに説明してきた通り、
図1に例示する筒状体20は、主体金具21と、外筒22と、固定ボルト23とを含み、全体として筒状(例えば、円筒状)の部材として、特に、軸方向に延びる筒状の部材として構成されている。すなわち、
図1に例示する筒状体20は、筒状の主体金具21と、主体金具21の後端側の外周端部に溶接固定される筒状の外筒22と、主体金具21の先端側の外周に配置される固定ボルト23とを含む、軸方向に延びる円筒状の部材である。例えば、筒状体20とガスセンサ1(センサ素子10)とは同軸であり、筒状体20は、軸方向(長手方向)のそれぞれの端として先端および後端を有しており、筒状体20の先端がガスセンサ1の先端の方を向くように配置されている。そして、筒状体20の内部には、センサ素子10と、該センサ素子10に環装された固定用の環装部品90と、セラミックハウジング60(端子金具30)と、スペーサ70とが収容され、後端側の開口端を弾性体50によって封止されている。筒状体20(外筒22)の後端側には、筒状体20の開口端を封止するための弾性体50を固定するための縮径部221が形成され、縮径部221は、弾性体50の一部を周囲から加締めている。
【0056】
なお、ガスセンサ1において、筒状体20が、主体金具21と、外筒22と、固定ボルト23とを含むことは必須ではない。筒状体20は、固定ボルト23を含んでいなくてもよいし、主体金具21と外筒22とは一体的に形成された部材であってもよい。ガスセンサ1において、筒状体20は、センサ素子10が内部に配置され、開口端が形成された、筒状の部材であればよい。
【0057】
(端子金具)
端子金具30は、本発明の「端子金具」の一例である。端子金具30は、軸方向に延びる金属製の部材(接点部材)である。ガスセンサ1において、センサ素子10(特に、その素子電極)と、リード線40とは、端子金具30を介して、電気的に接続されている。詳細は
図2において説明するが、端子金具30は、センサ素子10の素子電極と電気的に接続する素子接触部31を先端側に有し、また、リード線40を圧着して保持するリード線保持部32を後端側に有する。
【0058】
(セラミックハウジング)
セラミックハウジング60は、本発明の「セラミックハウジング」の一例である。セラミックハウジング60は、センサ素子10の後端側(具体的には、センサ素子10の後端側に設けられた素子電極)と、端子金具30の先端側(具体的には、
図2において説明する素子接触部31)と、を収容したセラミック製の部材である。つまり、
図1に例示するガスセンサ1において、センサ素子10(特に、素子電極)と端子金具30(特に、素子接触部31)とは、セラミックハウジング60内で、電気的に接続されている。
【0059】
例えば、端子金具30の先端側(素子接触部31)を収容したセラミックハウジング60に、素子電極が設けられたセンサ素子10の後端側が挿入されている。係る挿入状態において、センサ素子10の後端側に設けられた素子電極と、端子金具30の先端側(素子接触部31)とは、互いに接することになる。素子電極が設けられたセンサ素子10の後端側とセラミックハウジング60との間に、端子金具30の先端側(素子接触部31)が挟持固定されることで、センサ素子10の素子電極と端子金具30とが電気的に接続されていてもよい。
【0060】
セラミックハウジング60は、筒状体20内での位置(例えば、軸方向における位置)を固定されており、特に、先端側への移動を抑制されている。セラミックハウジング60は、例えば、不図示のセラハウ固定部材によって、筒状体20内での軸方向における位置を固定され、特に、先端側への移動を抑制されている。係るセラハウ固定部材は、例えば、筒状体20の内部でセラミックハウジング60を径方向内側に押圧するバネ部材と、係るバネ部材を押さえつけることによりバネ力を発揮させるカシメリングとにより構成されていてもよい。
【0061】
(リード線)
リード線40は、本発明の「リード線」の一例である。リード線40は、端子金具30を介してセンサ素子10の素子電極と電気的に接続し、筒状体20の開口端から外方に延びている。具体的には、リード線40は、その先端側において端子金具30の後端側(具体的には、
図2において説明するリード線保持部32)と電気的に接続されており、また、リード線40の後端側は、筒状体20の開口端から外方に延びている。そして、上述のとおり、リード線40と筒状体20(外筒22)との隙間は弾性体50によって封止されている。
【0062】
例えば、リード線40は、弾性体50およびスペーサ70に連続的に設けられた貫通穴(不図示)に挿通されている。リード線40の先端側の端部は、端子金具30の後端側(リード線保持部32)に圧着固定され、また、リード線40の後端側の端部は、外部の装置(コントローラ)、電源等に接続されている。これにより、センサ素子10(特に、センサ素子10の素子電極)と、外部の装置、電源等とが、端子金具30およびリード線40を通じて電気的に接続される。なお、
図1には、端子金具30とリード線40とがそれぞれ2つである例を示しているが、これはあくまで図示の簡単のためである。実際には、ガスセンサ1は、上記の電気的な接続に必要な数の端子金具30およびリード線40を備えている。
【0063】
(弾性体)
弾性体50は、本発明の「弾性体」の一例である。弾性体50は、弾性を有する部材であり、例えばゴム製である。弾性体50は、筒状体20の開口端(
図1に示す例では、後端側の開口端)を封止するよう配置され、リード線40が挿入される。具体的には、弾性体50の内部には、軸方向に延びる貫通孔が形成されており、例えば、軸方向に延びる貫通孔が複数形成されている。弾性体50の内部に形成された貫通孔には、リード線40が収容され(挿入され)、例えば、弾性体50の内部に形成された複数の貫通孔のそれぞれに、複数のリード線40のそれぞれが、収容されている(挿入されている)。
【0064】
弾性体50の材料は、例えば、フッ素ゴムである。フッ素ゴムは、耐性、強度などのさまざまな面で優れた特性を有し、特に耐熱性および耐油性に優れている。そのため、ガスセンサ1は、フッ素ゴムからなる弾性体50を利用することで、例えば、高温環境下でも弾性体50のシール性を確保して、ガス濃度の検出精度を維持、向上させることができるとの効果を奏する。ただし、ガスセンサ1にとって、弾性体50の材料をフッ素ゴムとすることは必須ではなく、ガスセンサ1は、弾性を有する素材を適宜、弾性体50の材料に用いてもよい。
【0065】
(スペーサ)
スペーサ70は、本発明の「位置固定部」の一例であり、つまり、「弾性体の先端面(第1端面)と接して、係る第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」の一例である。すなわち、ガスセンサ1は、位置固定部としてスペーサ70を備え、スペーサ70は、弾性体50の先端面53(第1端面)と接して、先端面53の軸方向における先端側への移動を制限する。
【0066】
スペーサ70は、ガスセンサ1(センサ素子10)の軸方向においてセラミックハウジング60よりも後端側に配置され、セラミックハウジング60によって軸方向の移動(特に、先端側への移動)を制限されている。具体的には、
図1に例示するスペーサ70は、ガスセンサ1(センサ素子10)の軸方向において、セラミックハウジング60と弾性体50との間に配置されている。つまり、スペーサ70は、筒状体20(外筒22)の内部において、セラミックハウジング60と弾性体50とに挟み込まれて(介在して)いる。すなわち、スペーサ70の先端側の端面(先端面)は、セラミックハウジング60の後端側の端面(後端面)に接しており、上述のとおり、セラミックハウジング60は、軸方向における位置を固定されており、特に、先端側への移動を抑制されている。そのため、スペーサ70は、セラミックハウジング60によって、先端側への移動を抑制されている。詳細は
図2を用いて後述するが、弾性体50の先端側の端面である先端面53は、スペーサ70の後端側の端面である後端面71に接しており、つまり、先端面53は、スペーサ70によって、軸方向の移動を、特に先端側への移動を、制限されている。
【0067】
図1に例示するスペーサ70には、リード線40が挿入されている。例えば、
図1に示す例では、スペーサ70の内部に、リード線40と、端子金具30(特に、リード線40と電気的に接続された、端子金具30の後端)とが収容されている。
【0068】
スペーサ70は、例えば、耐熱性の材料によって構成される。耐熱性の材料によってスペーサ70を構成することで、軸方向において弾性体50よりも先端側に配置されるスペーサ70が、ガスセンサ1の先端側にある熱源から発せられる熱によって溶損を起こすといった事態が発生するのを防止できる。例えば、弾性体50とセラミックハウジング60との間にスペーサ70を介在させることにより、ガスセンサ1の使用時等における弾性体50の過剰な昇温を防ぐことができる。つまり、弾性体50への伝熱を抑えるという観点からは、スペーサ70の熱伝導率は低い方が望ましい。ただし、スペーサ70によって弾性体50の温度上昇が抑えられる一方で、スペーサ70は高温度となるため、スペーサ70自体には十分な耐熱性が必要となる。そこで、スペーサ70を耐熱性の材料によって構成することで、上述の熱源から弾性体50への伝熱を抑えつつ、スペーサ70自体が熱源から発せられる熱によって溶損を起こすといった事態が発生するのを防止することができる。
【0069】
なお、
図1には、スペーサ70を1つの部材とする例を示しているが、スペーサ70は、複数の構成要素(構成部材)によって構成されていてもよい。例えば、スペーサ70は、軸方向において先端側に配置されるスペーサ先端側部分と、後端側に配置されるスペーサ後端側部分とを有していてもよい。すなわち、スペーサ70を、スペーサ先端側部分とスペーサ後端側部分とを含む多段構成(例えば、2段構成)としてもよい。
【0070】
スペーサ70を利用して、ガスセンサ1の使用時における弾性体50の昇温を抑制する場合、上述のスペーサ先端側部分およびスペーサ後端側部分は、それぞれ、以下にように構成されてもよい。すなわち、軸方向において先端側に配置されるスペーサ先端側部分の材質としては、スペーサ後端側部分よりも優れた耐熱性を具備するという点から、樹脂よりも高融点である、セラミックスが選択される。好ましくは、耐熱性に加え断熱性の点からも好適な、熱伝導率が32W/m・K以下であるセラミックスが選択され、より好ましくはアルミナ(熱伝導率:32W/m・K)またはステアタイト(熱伝導率:2W/m・K)が選択される。これに対して、弾性体50と接するスペーサ後端側部分の材質としては、低熱伝導性を具備するという点から、セラミックス等よりも樹脂が選択される。好ましくは、スペーサ後端側部分に用いる樹脂は、何れもフッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、融点327°C)またはPFA(パーフルオロアルコキシアルカン、融点310°c)である。これらの樹脂は、低熱伝導性に加え、ゴム製の弾性体50よりも高い耐熱性を有している。例えば、PTFEについていえば、その熱伝導率は0.2W/m・Kであり、連続最高使用温度(最高温度での使用が連続する場合の当該最高温度)は260°Cである。
【0071】
また、
図1には、セラミックハウジング60とスペーサ70とが別々の部材である例を示したが、セラミックハウジング60とスペーサ70とは一体に形成されてもよい。例えば、ガスセンサ1は、「弾性体50の先端面53(第1端面)と接して、先端面53の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」として、セラミックハウジング60とスペーサ70とが一体成形された部材を備えていてもよい。ガスセンサ1において、セラミックハウジング60は、スペーサ70と一体に形成されていてもよい。
【0072】
(保護カバー)
保護カバー80は、センサ素子10のうち、使用時に被測定ガスに直接に接触する部分である先端側の所定範囲を保護する、略円筒状の外装部材である。
図1に例示する保護カバー80は、軸方向(長手方向)に沿って、筒状体20(主体金具21)の先端側の少なくとも一部の周りを囲み、センサ素子10の先端を越えて延びるように構成されている。例えば、保護カバー80は、センサ素子10および筒状体20の先端側の一部を軸周りに囲うように構成される。保護カバー80は、軸方向のそれぞれの端として先端および後端を有しており、保護カバー80の先端がセンサ素子10の先端よりもガスセンサ1の先端側に配置されている。
【0073】
保護カバー80には、気体が通過可能な複数の貫通孔(不図示)が設けられている。係る貫通孔を通じて保護カバー80内に流入した被測定ガスが、センサ素子10における直接の検知対象となる。なお、保護カバー80に設けられる貫通孔の種類、配置個数、配置位置、形状などは、保護カバー80の内部への被測定ガスの流入態様を考慮して、適宜に定められてよい。
【0074】
図1に示す例では、保護カバー80は、センサ素子10の先端を覆う有底筒状の内側カバー81と、内側カバー81を覆う有底筒状の外側カバー82とを備えている。内側カバー81は、第1部材81Bおよび第2部材81Aを備え、センサ素子10および筒状体20(主体金具21)の先端側の少なくとも一部の周囲を覆うように構成されている。第1部材81Bは、筒状体20の先端部の外壁から軸方向に沿って延び、筒状体20の先端を越えた辺りで軸方向に垂直な方向に径が小さくなった後に、軸方向に沿ってさらに延びるように構成されている。第2部材81Aは、第1部材81Bの先端側の一部の周囲を覆うように構成されている。外側カバー82は、内側カバー81の周囲を覆うように構成されている。
【0075】
内側カバー81によって囲まれた空間としてセンサ素子室が形成されており、センサ素子10の先端は、このセンサ素子室内に配置されている。内側カバー81の第1部材81B、第2部材81Aおよび外側カバー82には、開口が適宜設けられており、これにより、センサ素子室は、保護カバー80の外側の空間と接続している。ただし、保護カバー80の構成および形状は、このような例に限定されなくてよい。保護カバー80の構成および形状は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
【0076】
保護カバー80の材料には、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS)等の金属材料が用いられてよい。保護カバー80は、金属材料を適宜成形することで、製造されてよい。なお、この保護カバー80は、ガスセンサ1の構成から省略されてもよい。
【0077】
<ガスセンサの後端側の詳細>
図2は、ガスセンサ1の要部を模式的に示す拡大断面図である。具体的には、
図2は、ガスセンサ1の後端側の詳細を示す。
図2において、紙面左右方向が、ガスセンサ1(センサ素子10)の軸方向(長手方向)であり、紙面左側が先端側、紙面右側が後端側である。
【0078】
(縮径部の形状について)
図2に例示するように、弾性体50は、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51と、軸方向において被加締め部分51よりも先端側の部分である非加締め部分52とを含む。非加締め部分52は、軸方向において被加締め部分51よりも先端側の、縮径部221によって加締められていない部分と捉えることもできる。弾性体50の先端面53(第1端面)は、弾性体50の、軸方向において先端側の端面であり、被加締め部分51の先端側の端面と捉えることもできる。
【0079】
上述のとおり、ガスセンサ1は、「弾性体の先端面(第1端面)と接して、係る先端面の軸方向における先端側への移動を制限する」位置固定部として、スペーサ70を備える。すなわち、
図2に例示するようにガスセンサ1において、スペーサ70は、弾性体50の先端面53(第1端面)と接して、先端面53が軸方向に移動するのを、特に、先端側へ移動するのを制限している。具体的には、
図2に示す例では、スペーサ70の、軸方向における後端側の端面である後端面71(第2端面)は、弾性体50の先端面53(第1端面)と接している。そして、スペーサ70は、セラミックハウジング60によって、軸方向の移動(特に、先端側への移動)を制限されており、また、セラミックハウジング60は、筒状体20内での位置を固定されており、特に、軸方向の位置を固定されている。そのため、弾性体50の先端面53は、スペーサ70(特に、スペーサ70の後端面71)によって、軸方向の移動(特に、先端側への移動)を制限されている。
【0080】
スペーサ70にはリード線40が挿入されており、
図2に例示するスペーサ70の内部には、リード線40と、端子金具30のリード線保持部32とが収容されている。例えば、スペーサ70の内部には、軸方向に延びる貫通孔が形成されている。スペーサ70の内部には、弾性体50の内部と同様に、軸方向に延びる貫通孔が複数形成されていてもよい。スペーサ70の内部に形成された貫通孔に、リード線40と、端子金具30のリード線保持部32とは収容されている(挿入されている)。例えば、スペーサ70の内部に形成された複数の貫通孔のそれぞれに、複数のリード線40およびリード線保持部32のそれぞれが、収容されている(挿入されている)。
【0081】
端子金具30は、センサ素子10の素子電極(センサ素子10の後端側の素子電極)と電気的に接続する素子接触部31を先端側に有し、また、リード線40を圧着して保持するリード線保持部32を後端側に有する。例えば、端子金具30の先端側の素子接触部31は、セラミックハウジング60に掛止された状態でセンサ素子10の素子電極に接しており、また、端子金具30の後端側のリード線保持部32は、リード線40を圧着して保持している。端子金具30において、素子接触部31とリード線保持部32との間の部分は、板バネ状をなしていてもよい。
図2に示す例では、端子金具30のリード線保持部32は、スペーサ70内に収容されており、つまり、ガスセンサ1において、リード線保持部32とリード線40とは、スペーサ70内で、電気的に接続されている。また、端子金具30の素子接触部31は、セラミックハウジング60に収容されており、つまり、素子接触部31とセンサ素子10の素子電極とは、セラミックハウジング60で、電気的に接続されている。
【0082】
図2に例示するように、縮径部221における筒状体20(外筒22)の径は、軸方向において一定である。また、弾性体50の、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51の直径である加締め後直径Dbは、軸方向において一定である。
【0083】
前述のとおり、外筒(ガスセンサ1の「筒状体20」に相当)の後端側をテーパー状に加締めた従来のガスセンサは、弾性体において応力が軸方向に集中しやすく、外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生などの各リスクが上昇する。これに対して、ガスセンサ1において、筒状体20の後端側に形成され、弾性体50を加締める縮径部221の径は、軸方向に一定であり、また、被加締め部分51の加締め後直径Dbも、軸方向において一定である。そのため、ガスセンサ1は、「筒状体の後端側をテーパー状に加締めることで、筒状体内の気密性の確保が困難となり、また、弾性体の破断、接点ずれの発生などのリスクが高くなる」という従来のガスセンサの問題を解決することができる。ガスセンサ1は、外筒の後端側をテーパー状に加締めることで上昇する、「外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」等の従来のガスセンサが直面する各リスクを、縮径部221における筒状体20の径を軸方向に一定とすることで抑制する。
【0084】
(各部材のサイズ等について)
ガスセンサ1は、外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることで上昇する、「外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、縮径部221における筒状体20の径を軸方向において一定とすることで、抑制することができる。さらに、ガスセンサ1は、各部材のサイズ等を所定の関係式(具体的には、以下の数式(1))を満たすように調整することで、筒状体20内の気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止することができる。
【0085】
具体的には、ガスセンサ1において、加締め前直径Da、加締め後直径Db、縮径部長Lc、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afは、以下の数式(1)を満たす。すなわち、ガスセンサ1は、
0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171
・・・数式(1)
を満たす。
【0086】
「加締め前直径Da(単位:[mm])」は、縮径部221によって周囲から加締められる前の、弾性体50の直径を表す。
図2に示す例では、加締め前直径Daは、弾性体50の後端面(軸方向において後端側の端面)の直径である。「加締め後直径Db(単位:[mm])」は、弾性体50の、縮径部221によって加締められている部分の直径を表し、つまり、弾性体50の被加締め部分51の直径を表す。「縮径部長Lc(単位:[mm])」は、縮径部221の軸方向の長さを表す。「非加締め長Ld(単位:[mm])」は、弾性体50の「軸方向において被加締め部分51よりも先端側の部分」の軸方向の長さを表し、つまり、弾性体50の非加締め部分52の軸方向の長さを表す。「第1面積Ae(単位:[mm
2])」は、弾性体50の「軸方向における先端側の端面である先端面53(第1端面)」の面積を表す。上述のとおり、ガスセンサ1において、「弾性体の第1端面と接して、該第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」は、スペーサ70である。弾性体50の先端面53は、「位置固定部の、軸方向における後端側の端面である第2端面」に接しており、
図2に示す例では、スペーサ70の後端面71に接している。係る先端面53の面積が、第1面積Aeである。「第2面積Af(単位:[mm
2])」は、「位置固定部の、軸方向における後端側の端面である第2端面」の面積を表し、ガスセンサ1においては、位置固定部であるスペーサ70の後端面71の面積を表す。なお、以下の説明においては、加締め前直径Da、加締め後直径Db、縮径部長Lc、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afのそれぞれの単位については省略する。
【0087】
ここで、筒状体20について良好な気密性を得るためには、弾性体50(筒状体20の開口端を封止し、リード線40が挿入される弾性体50)を周囲から加締めて、弾性体50に適切な応力を与えることが重要となる。そして一般的に、弾性体50の、筒状体20によって周囲から加締められる部分(被加締め部分51)において、弾性体50に過剰な軸方向の応力が加わらない範囲で、縮径部221の径を小さくすることで、筒状体20内の気密性を向上できることが知られている。ただし、縮径部221の径を小さくして弾性体50の圧縮率を上げ過ぎると、弾性体50の軸方向の変形が大きくなり過ぎ、弾性体50の先端面53の位置を、位置固定部(ガスセンサ1においてはスペーサ70)によって許容範囲に保つことが困難となる。例えば、スペーサ70(位置固定部)によって、先端面53の位置を、接点ずれを発生させない範囲に保つことが困難となる。
【0088】
そこで、ガスセンサ1は、弾性体50の非加締め部分52に適切な応力を与えることで、縮径部221における筒状体20の径および加締め後直径Dbが、それぞれ、軸方向に一定であっても、筒状体20内の気密性を良好なものとする。すなわち、ガスセンサ1は、縮径部221の縮径部長Lcと弾性体50の圧縮量とに応じて発生する、弾性体50の軸方向の変形を、スペーサ70により、径方向の変形(気密性に寄与する変形)へと変換することで、筒状体20内の良好な気密性を実現する。特に、ガスセンサ1は、数式(1)を満たすように各部材のサイズ等を調整することで、弾性体50の軸方向の変形が大きくなり過ぎるのを防いで、スペーサ70によって、弾性体50の先端面53の位置を許容範囲に保つことができる。
【0089】
具体的には、弾性体50の圧縮率Rcは、弾性体50の加締め前直径Daと、弾性体50(被加締め部分51)の加締め後直径Dbとを用いて、「Rc=1-Db/Da」と表される。そのため、弾性体50の軸方向の変形量(特に、先端側への変形量)Δ[mm]は、弾性体50の材料により決定される定数k、縮径部221の縮径部長Lc、および、弾性体50の圧縮率Rcを用いて、「Δ=k×Lc×Rc」と表すことができる。なお、弾性体50は、被加締め部分51の軸方向における中央の位置から、軸方向の両側に変形する。そのため、軸方向の先端側への弾性体50の変形量Δは、軸方向の両側(先端側および後端側の両方)への弾性体50の変形量の、例えば、半分(「1/2」)となる。ただし、定数kは「1/2」を含むものとして、「Δ=k×Lc×Rc」と表されるΔによって、弾性体50の軸方向の先端側への変形量を表すことができる。したがって、軸方向の変形量Δに対する、弾性体50の非加締め長Ldの割合である第1パラメータPfは、「Pf=Δ/Ld」と表すことができる。そして、前述のとおり、「Δ=k×Lc×Rc」であり、「Rc=1-Db/Da」であるから、第1パラメータPfは、「Pf={k×Lc×(1-Db/Da)}/Ld」と表すことができる。第1パラメータPfは、弾性体50に加わる応力を、軸方向の変形へと変換する効率(変換効率)を評価する指標であり、第1パラメータPfの値が大きい程、弾性体50に加わる応力を、軸方向の変形へと変換する変換効率は高いことになる。
【0090】
また、弾性体50において、軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率を評価する指標である第2パラメータPsは、以下のように表わすことができる。すなわち、第2パラメータPsは、弾性体50の先端側の端面(先端面53)の面積である第1面積Aeと、スペーサ70の後端側の端面(後端面71)の面積である第2面積Afとの比として表すことができる。具体的には、「Ps=Af/Ae」と表すことができる。第2パラメータPsの値が大きい程、弾性体50において、軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率は、高いことになる。
【0091】
上述のとおり、第1パラメータPfが大きい程、弾性体50に加わる応力を、軸方向の変形へと変換する変換効率は高く、また、第2パラメータPsが大きい程、弾性体50において、軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率は、高い。そのため、弾性体50の変形(軸方向の変形量、径方向の変形量、および、両者のバランスなど)を評価する指標である総合パラメータPcは、「Pc=Pf×Ps」と表すことができる。そして、「Pf={k×Lc×(1-Db/Da)}/Ld」であり、「Ps=Af/Ae」であるから、「Pc=k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」と表すことができる。
【0092】
本件発明者らは、実験により、弾性体50によって実現される筒状体20(従来のガスセンサにおける「外筒」に相当する)の気密性を確保するには、総合パラメータPcの値は「0.038k」以上とすることが必要であることを確認した。
【0093】
また、本件発明者らは、実験により、「弾性体50の軸方向の変形、移動が大きくなって接点ずれを発生させる」事態を回避するためには、総合パラメータPcの値は「0.171k」以下とすることが必要であることを確認した。具体的には、ガスセンサ1において、「弾性体50の軸方向における変形が過大となって、軸方向の変形をスペーサ70(位置固定部)によって径方向の変形へと変換しきれなくなる」と、スペーサ70自体が、軸方向に(特に、先端側に)移動することになる。そこで、本件発明者らは、「位置固定部(ガスセンサ1においては、スペーサ70)が、弾性体50の軸方向における変形を、径方向の変形へと変換できる」範囲の総合パラメータPcの値を、実験により求めた。具体的には、本件発明者らは、弾性体50の先端面53の位置移動(先端側への移動)を許容範囲に保つ総合パラメータPcの値を、実験により求めた。実験に際しては、スペーサ70(より正確には、セラミックハウジング60)の軸方向の位置を、「(一般的なガスセンサにおいて採用されている)所定範囲の大きさの力で」固定したガスセンサ1を用いた。実験について、詳細は後述する。その結果、本件発明者らは、総合パラメータPcの値を「0.171k」以下とすることで、弾性体50の先端面53の位置移動を許容範囲に保つことができることを確認した。
【0094】
以上に説明してきた通り、本件発明者らは、実験により、総合パラメータPcの値が以下の範囲にある場合、筒状体20(従来のガスセンサの「外筒」)内の気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。すなわち、本件発明者らは、総合パラメータPcの値を、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下とすることで、気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。ここで、「Pc=k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」であるから、「0.038k≦k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171k」と整理できる。この関係式の各辺においては「定数k」が共通するため、この「定数k」を各辺から除くと、「0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171」となる。
【0095】
そして、ガスセンサ1は、数式(1)を満たし、つまり、「0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171」を満たす。したがって、ガスセンサ1は、筒状体20の後端側をテーパー状に加締めることなく、筒状体20内の気密性を確保することができ、また、接点ずれの発生を効果的に防止することができるとの効果を奏する。
【0096】
なお、本件発明者らは、実験により、さらに以下の点についても確認した。すなわち、位置固定部の第2端面(ガスセンサ1においては、スペーサ70の後端面71)の面積である第2面積Afを、弾性体50の先端面53の面積である第1面積Aeよりも大きくしても、第2パラメータPsは改善されないことを確認した。
【0097】
また、本件発明者らは、実験により、弾性体50の圧縮率Rc(=1-Db/Da)の上限は、弾性体50の材料に応じて決定されることを確認した。例えば、弾性体50の材料をフッ素ゴムとした場合、圧縮率Rcの上限(圧縮限界)は「0.25」である。そして、本件発明者らは、弾性体50の圧縮率Rcが、弾性体50の材料に応じて決定される圧縮限界(例えば、「0.25」)以下の範囲にある場合、弾性体50が破断することはない(つまり、弾性体50の破断リスクを抑制できる)ことも確認した。
【0098】
さらに、本件発明者らは、実験により、加締め前直径Da、加締め後直径Db、縮径部長Lc、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afの関係について、以下の事象を確認した。すなわち、加締め前直径Da、加締め後直径Db、縮径部長Lc、非加締め長Ld、第1面積Ae、第2面積Afが、以下の数式(2)を満たす場合、筒状体20内の気密性が著しく向上し、また、先端面53の移動を著しく良好に抑制できることを確認した。例えば、
0.050≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.094
・・・数式(2)
を満たすガスセンサ1は、筒状体20内の気密性が著しく良好であり、また、先端面53の移動を著しく良好に抑制することができる。
【0099】
ここで、例えば、ガスセンサ1において、弾性体50の先端面53が軸方向に移動する(特に、先端側に移動する)と、スペーサ70も軸方向に移動することになり、その結果、セラミックハウジング60も軸方向に移動することになる。そして、上述のとおり、端子金具30(特に、素子接触部31)とセンサ素子10の素子電極とは、セラミックハウジング60において、電気的に接続されている。そのため、セラミックハウジング60が軸方向に移動すると、端子金具30とセンサ素子10の素子電極との電気的接続が失われやすくなり、つまり、接点ずれが発生しやすくなる。そこで、接点ずれの発生を防止するには、弾性体50の先端面53の移動(軸方向の移動。特に、先端側への移動)を抑制するのが有用である。そのため、上述の数式(2)を満たすガスセンサ1は、弾性体50の先端面53の移動(特に、軸方向の移動)を著しく良好に抑制することで、接点ずれの発生を極めて効果的に防止することができる。
【0100】
以上に説明してきたとおり、数式(2)を満たすガスセンサ1は、筒状体20内の気密性を著しく良好なものとし、また、弾性体50の先端面53の移動を極めて良好に抑制して、接点ずれの発生を極めて効果的に防止することができる。
【0101】
<弾性体についての考察>
これまで説明してきたとおり、本発明に係るガスセンサは、「外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めるため、外筒内の気密性悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生などの各リスクが上昇する」という従来のガスセンサの課題を、以下の構成により解決する。すなわち、本発明に係るガスセンサは、縮径部における筒状体(外筒)の径を、軸方向において一定とすることで、「外筒(筒状体)内の気密性悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生など」の各リスクを抑制する。そのため、本発明に係るガスセンサにおいて、縮径部における筒状体の径は軸方向に一定であり、また、弾性体の被加締め部分(縮径部によって加締められている部分)の直径(加締め後直径Db)は、軸方向に一定である。例えば、
図1および
図2を用いて説明してきたガスセンサ1は、縮径部221における径が軸方向において一定である筒状体20と、被加締め部分51の加締め後直径Dbが軸方向において一定である弾性体50とを備える。
【0102】
これに対して、本発明に係るガスセンサにおいて、弾性体の非加締め部分(軸方向において被加締め部分よりも先端側の部分。つまり、縮径部によって加締められていない部分)の直径は、軸方向において変化してもよい。以下、本発明の一側面に係る、「非加締め部分の径が、軸方向において変化する」弾性体を備えるガスセンサについて、
図3を用いて説明する。
【0103】
図3は、変形例1~3に係る弾性体を模式的に示す拡大断面図である。具体的には、
図3の(A)~(C)は、それぞれ、変形例1~3に係る弾性体50(A)~50(C)を模式的に示す拡大断面図である。
図3(
図3の(A)~(C)のそれぞれ)において、紙面上下方向が、ガスセンサ1(A)~1(C)のそれぞれの軸方向(長手方向)であり、紙面下側が先端側、紙面上が後端側である。
【0104】
(軸方向において先端側ほど径の小さな非加締め部分の例)
図3の(A)は、「筒状体20の開口端を封止するよう配置され、リード線40が挿入される弾性体」として、
図1および
図2を用いて説明してきた弾性体50に代えて、弾性体50(A)を備えるガスセンサ1(A)の後端側を模式的に示す拡大断面図である。ガスセンサ1(A)において、弾性体50(A)は、筒状体20(外筒22)の後端側の開口端を封止するよう配置され、リード線40が挿入される。なお、ガスセンサ1(A)は、弾性体50に代えて弾性体50(A)を備える点を除いて、ガスセンサ1と同様であるため、弾性体50(A)以外の構成についての説明は省略する。
【0105】
図3の(A)に例示する弾性体50(A)は、弾性体50と同様に、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51(A)と、軸方向において被加締め部分51(A)よりも先端側の部分である非加締め部分52(A)とを含む。弾性体50(A)の、軸方向において先端側の端面(先端面)は、スペーサ70の、軸方向において後端側の端面(後端面)と接して、係る後端面によって、軸方向の移動(特に、先端側への移動)を制限されている。
【0106】
ガスセンサ1と同様に、ガスセンサ1(A)において、弾性体50(A)の、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51(A)の直径である加締め後直径Dbは、軸方向において一定である。また、縮径部221における筒状体20(外筒22)の径は、軸方向において一定である。
【0107】
弾性体50(A)の非加締め部分52(A)の径は、軸方向において変化しており、具体的には、非加締め部分52(A)の径は、軸方向において先端側ほど小さい。ただし、非加締め部分52(A)の径が軸方向において先端側ほど小さい点を除いて、ガスセンサ1(A)が備える構成は、
図1および
図2を用いて説明してきたガスセンサ1の構成と同様である。したがって、ガスセンサ1(A)は、非加締め部分52(A)の径が軸方向において先端側ほど小さい弾性体50(A)を用いて、筒状体20内の気密性の悪化、弾性体50(A)の破断、接点ずれの発生などの各リスクを、抑制することができる。
【0108】
(軸方向の先端側の端部に面取り加工の施された非加締め部分の例1)
図3の(B)は、「筒状体20の開口端を封止するよう配置され、リード線40が挿入される弾性体」として、
図1および
図2を用いて説明してきた弾性体50に代えて、弾性体50(B)を備えるガスセンサ1(B)の後端側を模式的に示す拡大断面図である。ガスセンサ1(B)において、弾性体50(B)は、筒状体20(外筒22)の後端側の開口端を封止するよう配置され、リード線40が挿入される。なお、ガスセンサ1(B)は、弾性体50に代えて弾性体50(B)を備える点を除いて、ガスセンサ1と同様であるため、弾性体50(B)以外の構成についての説明は省略する。
【0109】
図3の(B)に例示する弾性体50(B)は、弾性体50と同様に、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51(B)と、軸方向において被加締め部分51(B)よりも先端側の部分である非加締め部分52(B)とを含む。弾性体50(B)の、軸方向において先端側の端面(先端面)は、スペーサ70の、軸方向において後端側の端面(後端面)と接して、係る後端面によって、軸方向の移動(特に、先端側への移動)を制限されている。
【0110】
ガスセンサ1と同様に、ガスセンサ1(B)において、弾性体50(B)の、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51(B)の直径である加締め後直径Dbは、軸方向において一定である。また、縮径部221における筒状体20(外筒22)の径は、軸方向において一定である。
【0111】
弾性体50(B)の非加締め部分52(B)の径は、軸方向において変化しており、具体的には、非加締め部分52(B)の軸方向における先端側の端部(先端)には、面取り加工が施されている。
図3の(B)に示す例では、非加締め部分52(B)の先端には面取り加工が施され、非加締め部分52(B)の先端は軸方向において径が連続的に変化している。ただし、非加締め部分52(B)の先端に面取り加工が施されている点を除いて、ガスセンサ1(B)が備える構成は、
図1および
図2を用いて説明してきたガスセンサ1の構成と同様である。したがって、ガスセンサ1(B)は、非加締め部分52(B)の先端に面取り加工が施された弾性体50(B)を用いて、筒状体20内の気密性の悪化、弾性体50(B)の破断、接点ずれの発生などの各リスクを、抑制することができる。
【0112】
(軸方向の先端側の端部に面取り加工の施された非加締め部分の例2)
図3の(C)は、「筒状体20の開口端を封止するよう配置され、リード線40が挿入される弾性体」として、
図1および
図2を用いて説明してきた弾性体50に代えて、弾性体50(C)を備えるガスセンサ1(C)の後端側を模式的に示す拡大断面図である。ガスセンサ1(C)において、弾性体50(C)は、筒状体20(外筒22)の後端側の開口端を封止するよう配置され、リード線40が挿入される。なお、ガスセンサ1(C)は、弾性体50に代えて弾性体50(C)を備える点を除いて、ガスセンサ1と同様であるため、弾性体50(C)以外の構成についての説明は省略する。
【0113】
図3の(C)に例示する弾性体50(C)は、弾性体50と同様に、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51(C)と、軸方向において被加締め部分51(C)よりも先端側の部分である非加締め部分52(C)とを含む。弾性体50(C)の、軸方向において先端側の端面(先端面)は、スペーサ70の、軸方向において後端側の端面(後端面)と接して、係る後端面によって、軸方向の移動(特に、先端側への移動)を制限されている。
【0114】
ガスセンサ1と同様に、ガスセンサ1(C)において、弾性体50(C)の、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51(C)の直径である加締め後直径Dbは、軸方向において一定である。また、縮径部221における筒状体20(外筒22)の径は、軸方向において一定である。
【0115】
弾性体50(C)の非加締め部分52(C)の径は、軸方向において変化しており、具体的には、非加締め部分52(C)の軸方向における先端側の端部(先端)には、面取り加工が施されている。
図3の(C)に示す例では、非加締め部分52(C)の先端には面取り加工が施され、非加締め部分52(C)の先端は軸方向において径が非連続的に変化している。ただし、非加締め部分52(C)の先端に面取り加工が施されている点を除いて、ガスセンサ1(C)が備える構成は、
図1および
図2を用いて説明してきたガスセンサ1の構成と同様である。したがって、ガスセンサ1(C)は、非加締め部分52(C)の先端に面取り加工が施された弾性体50(C)を用いて、筒状体20内の気密性の悪化、弾性体50(C)の破断、接点ずれの発生などの各リスクを、抑制することができる。
【0116】
図3(
図3の(A)~(C))を用いて説明してきたとおり、ガスセンサ1(A)~1(C)において、弾性体50(A)~50(C)の非加締め部分52(A)~52(C)の直径は、軸方向において変化する。本発明に係るガスセンサは、「縮径部における径が、軸方向において一定である」筒状体と、「軸方向において径が一定である」被加締め部分(弾性体の、縮径部によって加締められている部分)とを備えればよく、弾性体の非加締め部分の形状は特に限られない。
図3(
図3の(A)~(C))に例示するように、本発明に係るガスセンサにおいて、弾性体の非加締め部分(軸方向において、被加締め部分よりも先端側の部分、縮径部によって加締められていない部分)の径(直径)は、軸方向において変化してもよい。本発明に係るガスセンサは、非加締め部分の径が軸方向において変化する弾性体を用いて、筒状体内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生などの各リスクを、抑制することができるとの効果を奏する。
【0117】
これまでに説明してきたとおり、本発明に係るガスセンサは、非加締め部分の径が軸方向において変化する弾性体を備えてもよい。例えば、本発明に係るガスセンサにおいて、非加締め部分の径は、軸方向において先端側ほど小さくてもよいし、また、非加締め部分の軸方向における先端側の端部(先端)には、面取り加工が施されていてもよい。
【0118】
ここで、上述のとおり、本発明に係るガスセンサにおいて、弾性体の非加締め部分は、「弾性体の、縮径部によって加締められている部分である被加締め部分」よりも、軸方向において先端側の部分である。そして、本発明に係るガスセンサは、「弾性体の先端面(第1端面)と接して、係る第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する」位置固定部を備えている。そのため、本発明に係るガスセンサにおいて、非加締め部分の先端側の端面である先端面(つまり、弾性体の第1端面)は、位置固定部(特に、位置固定部の後端側の端面である後端面(第2端面))に接している。
【0119】
したがって、本発明に係るガスセンサは、非加締め部分の先端面(第1端面)と、位置固定部(特に、位置固定部の後端面(第2端面))との接触面積を小さくすることによって、以下の効果を実現することができる。すなわち、本発明に係るガスセンサは、ガスセンサの先端側にある熱源から位置固定部を介して弾性体へと熱が伝わるのを抑制し、つまり、位置固定部から弾性体への伝熱を抑制することができるとの効果を奏する。本発明に係るガスセンサは、弾性体の先端側の非加締め部分と位置固定部との接触面積を小さくすることで、位置固定部から弾性体への伝熱を抑制し、弾性体の熱劣化を抑制することができる。本発明に係るガスセンサは、例えば、非加締め部分の径を、軸方向において先端側ほど小さくしたり、非加締め部分の先端に面取り加工を施したりすることで、弾性体の先端側の非加締め部分と位置固定部との接触面積を小さくしてもよい。
【0120】
<位置固定部についての考察>
図1~
図3を用いて説明してきたガスセンサ1、1(A)~1(C)は、何れも、「弾性体の、軸方向における先端側の端面である第1端面と接して、該第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」として、スペーサ70を備えていた。しかしながら、本発明に係るガスセンサにとって、上述の位置固定部としてスペーサ70を備えることは必須ではない。本発明に係るガスセンサは、セラミックハウジング(具体的には、センサ素子の素子電極と、端子金具の素子接触部とを収容したセラミックハウジング)を、上述の位置固定部として利用してもよい。以下、本発明の一側面に係るガスセンサとして、スペーサに代えてセラミックハウジングを位置固定部とするガスセンサの例を、
図4を用いて説明する。
【0121】
図4は、変形例4に係るガスセンサ1(D)の要部を模式的に示す拡大断面図である。具体的には、
図4は、ガスセンサ1(D)の後端側の詳細を示す。
図4において、紙面左右方向が、ガスセンサ1(D)の軸方向(長手方向)であり、紙面左側が先端側、紙面右側が後端側である。
図4に例示するガスセンサ1(D)は、以下の点を除いて、ガスセンサ1と同様である。すなわち、ガスセンサ1(D)は、セラミックハウジング60、筒状体20、弾性体50に代えて、セラミックハウジング60(D)、筒状体20(D)、弾性体50(D)を備える点を除いて、ガスセンサ1と同様である。そのため、以下の説明においては、セラミックハウジング60(D)、筒状体20(D)、弾性体50(D)以外の構成については、説明を省略する。
【0122】
図4に例示するように、ガスセンサ1(D)は、ガスセンサ1が備えていたスペーサ70を備えていない。ガスセンサ1(D)は、スペーサ70に代えて、セラミックハウジング60(D)を、「弾性体の、軸方向における先端側の端面である第1端面と接して、該第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」として備える。すなわち、ガスセンサ1(D)は、「弾性体50(D)の先端面53(D)(第1端面)と接して、先端面53(D)の軸方向における先端側への移動を制限する」セラミックハウジング60(D)を、備える。セラミックハウジング60(D)は、本発明の「位置固定部」の一例である。
【0123】
具体的には、
図4に例示するガスセンサ1(D)において、弾性体50(D)の先端面53(D)(第1端面)は、セラミックハウジング60(D)の後端面61(D)(軸方向における後端側の端面、第2端面)に接している。そして、セラミックハウジング60(D)は、セラミックハウジング60と同様に、筒状体20(D)内での位置(例えば、軸方向における位置)を固定されており、特に、先端側への移動を抑制されている。例えば、セラミックハウジング60(D)は、不図示のセラハウ固定部材によって、筒状体20(D)内での軸方向における位置を固定され、特に、先端側への移動を抑制されている。係るセラハウ固定部材は、例えば、筒状体20(D)の内部でセラミックハウジング60(D)を径方向内側に押圧するバネ部材と、係るバネ部材を押さえつけることによりバネ力を発揮させるカシメリングとにより構成されていてもよい。
【0124】
そのため、弾性体50(D)の先端面53(D)は、セラミックハウジング60(D)の後端面61(D)によって、軸方向の移動(特に、先端側への移動)を制限されている。つまり、ガスセンサ1(D)は、弾性体50(D)の先端面53(D)(弾性体の、軸方向における先端側の端面である第1端面)と接して、先端面53(D)の軸方向における先端側への移動を制限するセラミックハウジング60(D)を備える。
【0125】
ガスセンサ1(D)は、上述の数式(1)を満たすように各部材のサイズ等を調整することで、位置固定部としてのセラミックハウジング60(D)により、弾性体50(D)の軸方向の変形を、径方向の変形へと好適に変換する。それゆえ、ガスセンサ1(D)は、筒状体20(D)内の気密性を確保することができ、また、接点ずれの発生を効果的に防止できるとの効果を奏する。ガスセンサ1(D)の各部材のサイズ等が満たす数式(1)について、詳細は後述する。
【0126】
<縮径部の個数についての考察>
図1~
図3を用いて説明してきたガスセンサ1、1(A)~1(C)は、何れも、「筒状体の後端側の開口端を封止するための弾性体の一部を周囲から加締める縮径部」が「1つ」形成された筒状体を備えていた。しかしながら、本発明に係るガスセンサにとって、筒状体に形成する「筒状体の後端側の開口端を封止するための弾性体の一部を周囲から加締める縮径部」を「1つ」とすることは必須ではない。本発明に係るガスセンサは、「筒状体の後端側の開口端を封止するための弾性体の一部を周囲から加締める縮径部」が「複数」形成された筒状体を備えていてもよい。
【0127】
すなわち、
図4に例示するガスセンサ1(D)において、筒状体20(D)(具体的には、外筒22(D))の後端側には、弾性体50(D)の一部を周囲から加締める縮径部が複数形成され、具体的には、縮径部221(1)~221(3)が形成されている。そして、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれにおける筒状体20(D)の径は、軸方向において一定である。すなわち、縮径部221(1)における筒状体20(D)の径は軸方向において一定であり、縮径部221(2)における筒状体20(D)の径は軸方向において一定であり、縮径部221(3)における筒状体20(D)の径は軸方向において一定である。
【0128】
弾性体50(D)は、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれによって加締められている部分である被加締め部分51(1)~51(3)と、軸方向において被加締め部分51(1)~51(3)よりも先端側の部分である非加締め部分52とを含む。
【0129】
被加締め部分51(1)~51(3)は、それぞれ、弾性体50(D)の、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれによって加締められている部分である。具体的には、被加締め部分51(1)は、弾性体50(D)の、縮径部221(1)によって周囲から加締められた部分である。被加締め部分51(2)は、弾性体50(D)の、縮径部221(2)によって周囲から加締められた部分である。被加締め部分51(3)は、弾性体50(D)の、縮径部221(3)によって周囲から加締められた部分である。
【0130】
非加締め部分52は、軸方向において被加締め部分51(1)~51(3)の何れよりも先端側の部分であり、
図4に示す例では、被加締め部分51(1)~51(3)のうち、最も先端側に配置された被加締め部分51(1)よりも、先端側の部分である。非加締め部分52は、軸方向において被加締め部分51(1)~51(3)よりも先端側の、縮径部によって加締められていない部分と捉えることもできる。
【0131】
被加締め部分51(1)~51(3)のそれぞれの直径である加締め後直径Db(1)~Db(3)は、それぞれ、軸方向において一定である。すなわち、被加締め部分51(1)の直径である加締め後直径Db(1)は、軸方向において一定である。被加締め部分51(2)の直径である加締め後直径Db(2)は、軸方向において一定である。被加締め部分51(3)の直径である加締め後直径Db(3)は、軸方向において一定である。
【0132】
これまでに説明してきたとおり、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれにおける筒状体20(D)の径は、軸方向において一定である。また、被加締め部分51(1)~51(3)のそれぞれの直径である加締め後直径Db(1)~Db(3)は、それぞれ、軸方向において一定である。そのため、ガスセンサ1(D)は、「外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることで、外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生などの各リスクが上昇する」という従来のガスセンサが直面する課題を解決することができる。すなわち、ガスセンサ1(D)は、上述の各リスクを、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれにおける筒状体20(D)の径を軸方向に一定とすることで抑制することができるとの効果を奏する。
【0133】
また、ガスセンサ1(D)は、セラミックハウジング60(D)を、「弾性体の、軸方向における先端側の端面である第1端面と接して、該第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」として備える。そして、ガスセンサ1(D)において、複数の縮径部221(つまり、縮径部221(1)~221(3))のそれぞれについて算出される総合パラメータPcの合計は、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下である。
【0134】
具体的には、縮径部221(1)、221(2)、221(3)のそれぞれについて算出される総合パラメータPc(1)、Pc(2)、Pc(3)の合計は、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下である。つまり、総合パラメータPc(1)と、総合パラメータPc(2)と、総合パラメータPc(3)との和は、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下である。
【0135】
縮径部221(1)について算出される総合パラメータPc(1)は、加締め前直径Da、加締め後直径Db(1)、縮径部長Lc(1)、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afを用いて、以下のように表わされる。すなわち、「Pc(1)=k×{(Lc(1)×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db(1)/Da)」と表される。
【0136】
加締め前直径Daは、ガスセンサ1と同様に、縮径部221によって周囲から加締められる前の、弾性体50(D)の直径を表す。
図4に示す例では、加締め前直径Daは、弾性体50(D)の後端面(軸方向において後端側の端面)の直径である。加締め後直径Db(1)は、弾性体50(D)の、縮径部221(1)によって加締められている部分の直径を表し、つまり、弾性体50(D)の被加締め部分51(1)の直径を表す。縮径部長Lc(1)は、縮径部221(1)の軸方向の長さを表す。非加締め長Ldは、弾性体50(D)の「軸方向において、被加締め部分51(1)~51(3)の何れよりも先端側の部分」の軸方向の長さを表し、つまり、弾性体50の(D)の非加締め部分52(D)の軸方向の長さを表す。第1面積Aeは、弾性体50(D)の「軸方向における先端側の端面」である先端面53(D)の面積を表す。第2面積Afは、「位置固定部の、軸方向における後端側の端面である第2端面」の面積を表し、ガスセンサ1(D)においては、位置固定部であるセラミックハウジング60(D)の後端面61(D)の面積を表す。
【0137】
同様に、縮径部221(2)について算出される総合パラメータPc(2)は、加締め前直径Da、加締め後直径Db(2)、縮径部長Lc(2)、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afを用いて、以下のように表わされる。すなわち、「Pc(2)=k×{(Lc(2)×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db(2)/Da)」と表される。加締め後直径Db(2)は、弾性体50(D)の、縮径部221(2)によって加締められている部分の直径を表し、つまり、弾性体50(D)の被加締め部分51(2)の直径を表す。縮径部長Lc(2)は、縮径部221(2)の軸方向の長さを表す。
【0138】
また、縮径部221(3)について算出される総合パラメータPc(3)は、加締め前直径Da、加締め後直径Db(3)、縮径部長Lc(3)、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afを用いて、以下のように表わされる。すなわち、「Pc(3)=k×{(Lc(3)×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db(3)/Da)」と表される。加締め後直径Db(3)は、弾性体50(D)の、縮径部221(3)によって加締められている部分の直径を表し、つまり、弾性体50(D)の被加締め部分51(3)の直径を表す。縮径部長Lc(3)は、縮径部221(3)の軸方向の長さを表す。
【0139】
なお、上述のとおり、縮径部221(1)、221(2)、221(3)(言い換えれば、被加締め部分51(1)、51(2)、51(3))について、以下の各サイズ等は共通である。すなわち、弾性体50(D)の加締め前直径Da、非加締め部分52(D)の非加締め長Ld、弾性体50(D)の先端面53(D)の面積(第1面積Ae)、および、セラミックハウジング60(D)の後端面61(D)の面積(第2面積Af)は、共通である。
【0140】
本件発明者らは、「筒状体の後端側の開口端を封止するための弾性体の一部を周囲から加締める縮径部」を筒状体に複数形成したガスセンサを用いて実験を行ない、以下の事象を確認した。すなわち、係るガスセンサの各部材のサイズ等が以下の条件を満たすと、前記筒状体内の気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。すなわち、複数の前記縮径部のそれぞれについて算出した総合パラメータPcの合計が、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下である場合、前記筒状体内の気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。
【0141】
そして、ガスセンサ1(D)は、筒状体20(D)の後端側に縮径部221(1)~221(3)が形成され、総合パラメータPc(1)、Pc(2)、Pc(3)の合計は、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下である。つまり、ガスセンサ1(D)において、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれについて算出した「{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」の合計は、「0.038」以上、「0.171」以下である。
【0142】
したがって、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれについて算出される総合パラメータPc(1)~Pc(3)の合計が、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下であるガスセンサ1(D)は、以下の効果を奏する。すなわち、ガスセンサ1(D)は、筒状体20(D)内の気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できるとの効果を奏する。
【0143】
なお、筒状体20(D)の後端側に縮径部221(1)~221(3)が形成されたガスセンサ1(D)において、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれについて算出される総合パラメータPc(1)~Pc(3)の合計は、以下の範囲にあってもよい。すなわち、総合パラメータPc(1)~Pc(3)の合計は、「0.050k」以上、かつ、「0.094k」以下であってもよい。
【0144】
筒状体の後端側に複数の縮径部を設けたガスセンサは、係る複数の縮径部のそれぞれの総合パラメータPcの値の合計を以下の範囲とすることで、筒状体内の気密性を著しく良好なものとし、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになる。すなわち、複数の縮径部のそれぞれの総合パラメータPcの値の合計を、「0.050k」以上、かつ、「0.094k」以下とすることで、ガスセンサは、筒状体内の気密性を著しく良好なものとし、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになる。したがって、ガスセンサ1(D)は、総合パラメータPc(1)~Pc(3)の合計を、「0.050k」以上、かつ、「0.094k」以下とすることで、筒状体内の気密性を著しく良好なものとし、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになる。
【0145】
[特徴]
以上のとおり、本発明に係るガスセンサは、被測定ガスの特定ガス濃度を検出可能なガスセンサであって、センサ素子と、筒状体と、端子金具と、リード線と、弾性体とを備える。例えば、ガスセンサ1は、センサ素子10と、筒状体20と、端子金具30と、リード線40と、弾性体50とを備える。センサ素子10は、軸方向(長手方向)に延び、先端側に検出部を有すると共に、後端側に素子電極を有するセンサ素子である。筒状体20の内部にはセンサ素子10が配置され、筒状体20には開口端が形成されている。リード線40は、軸方向に延びる端子金具30を介して、センサ素子10の素子電極と電気的に接続する。また、リード線40は、筒状体20の開口端(例えば、後端側の開口端)から外方に延びる。弾性体50は、筒状体20の開口端(例えば、後端側の開口端)を封止するよう配置され、リード線40が挿入される。
【0146】
本発明に係るガスセンサは、さらに、「弾性体の、軸方向における先端側の端面(第1端面)と接して、係る第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」を備える。
【0147】
例えば、ガスセンサ1は、「弾性体の第1端面と接して、係る第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」として、スペーサ70を備える。すなわち、ガスセンサ1は、弾性体50の先端面53(第1端面)と接して、先端面53の軸方向における先端側への移動を制限するスペーサ70を備える。具体的には、ガスセンサ1において、スペーサ70は、軸方向においてセラミックハウジング60よりも後端側に配置され、セラミックハウジング60によって軸方向における先端側への移動が制限されている。そして、セラミックハウジング60は、センサ素子10の素子電極と、端子金具30の素子接触部31とを収容している。そのため、ガスセンサ1において、弾性体50の先端面53は、スペーサ70と接して、スペーサ70によって、軸方向における先端側への移動を制限されている。
【0148】
なお、ガスセンサ1において、セラミックハウジング60とスペーサ70とは一体の部材であってもよく、その場合、弾性体50の先端面53は、係る一体の部材と接して、係る一体の部材によって、軸方向における先端側への移動を制限されることになる。すなわち、ガスセンサ1は、スペーサ70と一体に形成されたセラミックハウジング60を、上述の位置固定部として備えていてもよい。
【0149】
ただし、本発明に係るガスセンサにとって、「弾性体の第1端面(先端面)と接して、係る第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」として、スペーサ70を備えることは必須ではない。本発明に係るガスセンサは、スペーサ70を備えていなくてもよく、スペーサ70に代えて、「センサ素子10の素子電極と、端子金具30の素子接触部31と、を収容したセラミックハウジング」を、位置固定部として備えていてもよい。
【0150】
例えば、ガスセンサ1(D)は、「弾性体の、軸方向における先端側の端面(第1端面)と接して、係る第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」として、セラミックハウジング60(D)を備える。すなわち、ガスセンサ1(D)は、弾性体50(D)の軸方向における先端側の端面である先端面53(D)(第1端面)と接して、先端面53(D)の軸方向における先端側への移動を制限するセラミックハウジング60(D)を備える。セラミックハウジング60(D)は、ガスセンサ1におけるセラミックハウジング60と同様に、センサ素子10の素子電極と、端子金具30の素子接触部31とを収容している。そして、セラミックハウジング60(D)は、筒状体20(D)内での位置(例えば、軸方向における位置)を固定されており、特に、先端側への移動を抑制されている。
【0151】
本発明に係るガスセンサにおいて、筒状体の後端側には、弾性体の一部を周囲から加締める縮径部が形成され、係る縮径部における筒状体の径は、軸方向において一定である。また、本発明に係るガスセンサにおいて、弾性体の、縮径部によって加締められている部分である被加締め部分の直径である加締め後直径Dbは、軸方向において一定である。
【0152】
例えば、ガスセンサ1において、筒状体20(外筒22)の後端側には、弾性体50の一部を周囲から加締める縮径部221が形成され、縮径部221における筒状体20の径は、軸方向において一定である。また、ガスセンサ1において、弾性体50の、縮径部221によって加締められている部分である被加締め部分51の直径である加締め後直径Dbは、軸方向において一定である。
【0153】
同様に、ガスセンサ1(D)において、筒状体20(D)の後端側には、弾性体50(D)の一部を周囲から加締める縮径部221(1)~221(3)が形成されている。そして、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれにおける筒状体20の径は、軸方向において一定である。また、弾性体50(D)の被加締め部分51(1)~51(3)のそれぞれの直径である加締め後直径Db(1)~Db(3)は、それぞれ、軸方向において一定である。被加締め部分51(1)~51(3)は、それぞれ、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれによって加締められている部分である。
【0154】
本発明に係るガスセンサにおいて、「加締め前直径Da」、「加締め後直径Db」、「縮径部長Lc」、「非加締め長Ld」、「第1面積Ae」、および、「第2面積Af」は、以下の数式(1)を満たす。すなわち、本発明に係るガスセンサは、
0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171
・・・数式(1)
を満たす。
【0155】
数式(1)において、「加締め前直径Da」は、「筒状体の後端側に形成された、弾性体の一部を周囲から加締める縮径部」によって周囲から加締められる前の、弾性体の直径を表す。例えば、ガスセンサ1において加締め前直径Daは、縮径部221によって周囲から加締められる前の、弾性体50の直径を表す。「加締め後直径Db」は、「弾性体の、縮径部によって加締められている部分である被加締め部分」の直径を表し、例えば、ガスセンサ1において加締め後直径Dbは、弾性体50の被加締め部分51の直径を表す。「縮径部長Lc」は、「筒状体の後端側に形成され、弾性体の一部を周囲から加締める縮径部」の軸方向の長さを表し、例えば、ガスセンサ1において縮径部長Lcは、縮径部221の軸方向の長さを表す。「非加締め長Ld」は、「弾性体の、軸方向において被加締め部分よりも先端側の部分である非加締め部分」の長さ(軸方向の長さ)を表し、例えば、ガスセンサ1において非加締め長Ldは、弾性体50の非加締め部分52の長さ(軸方向の長さ)を表す。
【0156】
「第1面積Ae」は、「弾性体の、軸方向における先端側の端面(第1端面)」の面積を表す。例えば、ガスセンサ1において第1面積Aeは、弾性体50の先端面53の面積を表す。また、ガスセンサ1(D)において第1面積Aeは、弾性体50(D)の先端面53(D)の面積を表す。
【0157】
「第2面積Af」は、「弾性体の第1端面と接する、位置固定部の、軸方向における後端側の端面(第2端面)」の面積を表す。前述のとおり、ガスセンサ1において位置固定部はスペーサ70であるから、ガスセンサ1において第2面積Afは、スペーサ70の後端面71(第2端面)の面積を表す。また、ガスセンサ1(D)において位置固定部はセラミックハウジング60(D)であるから、ガスセンサ1(D)において第2面積Afは、セラミックハウジング60(D)の後端面61(D)(第2端面)の面積を表す。
【0158】
以上に説明してきた通り、本発明に係るガスセンサにおいて、縮径部における筒状体(従来のガスセンサの「外筒」に相当する)の径は、軸方向に一定であり、また、弾性体の、被加締め部分の直径である加締め後直径Dbは、軸方向に一定である。
【0159】
そのため、本発明に係るガスセンサは、「外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることで、外筒内の気密性を確保するのが困難となったり、また、弾性体が破断したり、接点ずれを発生させたりするリスクが高くなる」といった従来のガスセンサの課題を解決できる。すなわち、本発明に係るガスセンサは、外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることで上昇する、「外筒内の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、縮径部における筒状体の径を軸方向に一定とすることで抑制できる。
【0160】
ここで、筒状体について良好な気密性を得るためには、弾性体(筒状体の開口端を封止し、リード線が挿入される弾性体)を周囲から加締めて、弾性体に適切な応力を与えることが重要となる。そして、一般的に、弾性体の、筒状体によって周囲から加締められる部分(被加締め部分)において、弾性体に過剰な軸方向の応力が加わらない範囲で、縮径部の径を小さくすることで、筒状体内の気密性を向上できることが知られている。ただし、縮径部の径を小さくして弾性体の圧縮率を上げ過ぎると、弾性体の軸方向の変形が大きくなり過ぎ、弾性体の、軸方向における先端側の端面である第1端面の位置を、位置固定部によって許容範囲に保つことが困難となる。例えば、位置固定部によって、第1端面の位置を、接点ずれを発生させない範囲に保つことが困難となる。
【0161】
そこで、本発明に係るガスセンサは、弾性体の非加締め部分に適切な応力を与えることで、縮径部における筒状体の径および加締め後直径Dbが軸方向に一定であっても、筒状体内の気密性を良好なものとする。すなわち、本発明に係るガスセンサは、縮径部の縮径部長Lcと弾性体の圧縮量とに応じて発生する、弾性体の軸方向の変形を、位置固定部により、径方向の変形(気密性に寄与する変形)へと変換することで、筒状体内の良好な気密性を実現する。特に、本発明に係るガスセンサは、数式(1)を満たすように各部材のサイズ等を調整することで、弾性体の軸方向の変形が大きくなり過ぎるのを防いで、位置固定部によって、弾性体の第1端面の位置を許容範囲に保つことができる。
【0162】
例えば、ガスセンサ1は、数式(1)を満たすように各部材のサイズ等を調整することで、弾性体50の軸方向の変形が大きくなり過ぎるのを防いで、スペーサ70によって、弾性体50の先端面53の位置を許容範囲に保つことができる。同様に、ガスセンサ1(D)は、数式(1)を満たすように各部材のサイズ等を調整することで、弾性体50(D)の軸方向の変形が大きくなり過ぎるのを防いで、セラミックハウジング60(D)によって、弾性体50(D)の先端面53(D)の位置を許容範囲に保つことができる。
【0163】
具体的には、弾性体の圧縮率Rcは、弾性体の加締め前直径Daと、弾性体(被加締め部分)の加締め後直径Dbとを用いて、「Rc=1-Db/Da」と表される。そのため、弾性体の軸方向の変形量(特に、先端側への変形量)Δ[mm]は、弾性体の材料により決定される定数k、縮径部の縮径部長Lc、および、弾性体の圧縮率Rcを用いて、「Δ=k×Lc×Rc」と表すことができる。なお、弾性体は、被加締め部分の軸方向における中央の位置から、軸方向の両側に変形する。そのため、軸方向の先端側への弾性体の変形量Δは、軸方向の両側(先端側および後端側の両方)への弾性体の変形量の、例えば、半分(「1/2」)となる。ただし、定数kは「1/2」を含むものとして、「Δ=k×Lc×Rc」と表されるΔによって、弾性体の軸方向の先端側への変形量を表すことができる。したがって、軸方向の変形量Δに対する、弾性体の非加締め長Ldの割合である第1パラメータPfは、「Pf=Δ/Ld」と表すことができる。そして、前述のとおり、「Δ=k×Lc×Rc」であり、「Rc=1-Db/Da」であるから、第1パラメータPfは、「Pf={k×Lc×(1-Db/Da)}/Ld」と表すことができる。第1パラメータPfは、弾性体に加わる応力を、軸方向の変形へと変換する効率(変換効率)を評価する指標であり、第1パラメータPfの値が大きい程、弾性体に加わる応力を、軸方向の変形へと変換する変換効率は高いことになる。
【0164】
また、弾性体において、軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率を評価する指標である第2パラメータPsは、以下のように表わすことができる。すなわち、第2パラメータPsは、弾性体の先端側の端面(第1端面)の面積である第1面積Aeと、位置固定部の後端側の端面(第2端面)の面積である第2面積Afとの比として表すことができる。具体的には、「Ps=Af/Ae」と表すことができる。第2パラメータPsの値が大きい程、弾性体において、軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率は、高いことになる。
【0165】
上述のとおり、第1パラメータPfが大きい程、弾性体に加わる応力を、軸方向の変形へと変換する変換効率は高く、また、第2パラメータPsが大きい程、弾性体において、軸方向の変形が径方向の変形へと変換される効率は、高い。そのため、弾性体の変形(軸方向の変形量、径方向の変形量、および、両者のバランスなど)を評価する指標である総合パラメータPcは、「Pc=Pf×Ps」と表すことができる。そして、「Pf={k×Lc×(1-Db/Da)}/Ld」であり、「Ps=Af/Ae」であるから、「Pc=k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」と表すことができる。
【0166】
本件発明者らは、実験により、弾性体によって実現される筒状体(従来のガスセンサの「外筒」に相当する)の気密性を確保するには、総合パラメータPcの値は「0.038k」以上とすることが必要であることを確認した。
【0167】
また、本件発明者らは、実験により、「弾性体の軸方向の変形、移動が大きくなって接点ずれを発生させる」事態を回避するためには、総合パラメータPcの値は「0.171k」以下とすることが必要であることを確認した。具体的には、ガスセンサにおいて、「弾性体の軸方向における変形が過大となって、軸方向の変形を位置固定部によって径方向の変形へと変換しきれなくなる」と、位置固定部自体が、軸方向に(特に、先端側に)移動することになる。そこで、本件発明者らは、「位置固定部が、弾性体の軸方向における変形を、径方向の変形へと変換できる」範囲の総合パラメータPcの値を、実験により求めた。具体的には、本件発明者らは、弾性体の第1端面の位置移動(先端側への移動)を許容範囲に保つ総合パラメータPcの値を、実験により求めた。その結果、本件発明者らは、総合パラメータPcの値を「0.171k」以下とすることで、弾性体の第1端面の位置移動を許容範囲に保つことができることを確認した。
【0168】
以上に説明してきた通り、本件発明者らは、実験により、総合パラメータPcの値が以下の範囲にある場合、筒状体(外筒)内の気密性を確保し、かつ、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。すなわち、本件発明者らは、総合パラメータPcの値を、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下とすることで、気密性を確保し、また、接点ずれの発生を効果的に防止できることを確認した。ここで、「Pc=k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」であるから、「0.038k≦k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171k」と整理できる。この関係式の各辺においては「定数k」が共通するため、この定数kを各辺から除くと、「0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171」となる。
【0169】
そして、本発明に係るガスセンサは、数式(1)を満たし、つまり、「0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171」を満たす。したがって、本発明に係るガスセンサは、外筒(筒状体)の後端側をテーパー状に加締めることなく、外筒内の気密性を確保することができ、また、接点ずれの発生を効果的に防止することができるとの効果を奏する。
【0170】
なお、本件発明者らは、実験により、位置固定部の第2端面の面積である第2面積Afを、弾性体の第1端面の面積である第1面積Aeよりも大きくしても、第2パラメータPsは改善されないことを確認した。
【0171】
本件発明者らは、例えば、ガスセンサ1において、スペーサ70の後端面71の面積である第2面積Afを、弾性体50の先端面53の面積である第1面積Aeよりも大きくしても、第2パラメータPsは改善されないことを確認した。同様に、ガスセンサ1(D)において、セラミックハウジング60(D)の後端面61(D)の面積である第2面積Afを、弾性体50(D)の先端面53(D)の面積である第1面積Aeよりも大きくしても、第2パラメータPsは改善されないことを確認した。
【0172】
また、本件発明者らは、実験により、弾性体の圧縮率Rc(=1-Db/Da)の上限は、弾性体の材料に応じて決定されることを確認した。例えば、弾性体の材料をフッ素ゴムとした場合、圧縮率Rcの上限(圧縮限界)は「0.25」である。そして、本件発明者らは、弾性体の圧縮率Rcが、弾性体の材料に応じて決定される圧縮限界(例えば、「0.25」)以下の範囲にある場合、弾性体が破断することはない(つまり、弾性体の破断リスクを抑制できる)ことも確認した。
【0173】
上述のとおり、本発明に係るガスセンサにおいて、筒状体の後端側には、上述の縮径部が複数形成されていてもよい。すなわち、本発明に係るガスセンサにおいて、筒状体の後端側には、弾性体の一部を周囲から加締める縮径部が複数形成され、係る複数の縮径部のそれぞれにおける筒状体の径は、軸方向において一定であってもよい。そして、「弾性体の、複数の縮径部のそれぞれによって加締められている部分である複数の被加締め部分」の、それぞれの直径(それぞれの加締め後直径Db)は、軸方向において一定であってもよい。
【0174】
筒状体の後端側に複数の縮径部を形成する場合、上述の加締め前直径Da、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afは、それぞれ、複数の縮径部について共通である。そして、複数の縮径部のそれぞれの加締め後直径Db、縮径部長Lcを用いて、複数の縮径部のそれぞれについて算出した、{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)の合計は、0.038以上、0.171以下である。
【0175】
例えば、ガスセンサ1(D)において、筒状体20(D)の後端側には、弾性体50(D)の一部を周囲から加締める縮径部221(1)~221(3)が形成されている。縮径部221(1)~221(3)のそれぞれにおける筒状体20(D)の径は、軸方向において一定である。また、弾性体50(D)の、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれによって加締められている部分である被加締め部分51(1)~51(3)のそれぞれの径は、軸方向において一定である。すなわち、被加締め部分51(1)~51(3)のそれぞれの直径である加締め後直径Db(1)~Db(3)は、それぞれ、軸方向において一定である。
【0176】
また、ガスセンサ1(D)において、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれについて算出される総合パラメータPc(1)~Pc(3)の合計は、「0.038k」以上、かつ、「0.171k」以下である。言い換えれば、ガスセンサ1(D)において、縮径部221(1)~221(3)のそれぞれについて算出される「{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)」の合計は、0.038以上、0.171以下である。
【0177】
これまでに説明してきたとおり、本発明に係るガスセンサは、数式(1)を満たすように各部材のサイズ等が調整されることで、筒状体内の気密性を確保することができ、また、接点ずれの発生を効果的に防止することができるとの効果を奏する。ここで、本件発明者らは、実験によりさらに、総合パラメータPcの値を、「0.050k」以上、かつ、「0.094k」以下とすることで、筒状体内の気密性が著しく向上し、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになることを確認した。
【0178】
したがって、本発明に係るガスセンサにおいて、弾性体の加締め前直径Da、弾性体の加締め後直径Db、縮径部の縮径部長Lc、弾性体の非加締め長Ld、弾性体の第1端面の面積である第1面積Ae、および、位置固定部の第2端面の面積である第2面積Afは、以下の数式(2)を満たすことが望ましい。すなわち、
0.050≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.094
・・・数式(2)
を満たすことが望ましい。
【0179】
上述の数式(2)を満たす場合、本発明に係るガスセンサは、筒状体内の気密性を著しく良好なものとし、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになるとの効果を奏する。
【0180】
なお、これまでに説明してきたとおり、本発明に係るガスセンサにおいて、「弾性体の、軸方向における先端側の端面(第1端面)と接して、係る第1端面の軸方向における先端側への移動を制限する位置固定部」は、以下の何れかであればよい。すなわち、本発明に係るガスセンサにおいて、上述の位置固定部は、「センサ素子の素子電極と、端子金具の素子接触部と、を収容したセラミックハウジング」であってもよく、例えば、ガスセンサ1(D)のセラミックハウジング60(D)であってもよい。また、上述の位置固定部は、「軸方向においてセラミックハウジングよりも後端側に配置され、セラミックハウジングによって軸方向における先端側への移動が制限されたスペーサ」であってもよく、例えば、ガスセンサ1のスペーサ70であってもよい。さらに、上述の位置固定部は、「スペーサと一体に形成されたセラミックハウジング」であってもよく、例えば、ガスセンサ1のセラミックハウジング60とスペーサ70とを一体成形した部材であってもよい。
【0181】
本発明に係るガスセンサは、上述のセラミックハウジング、スペーサ、および、スペーサと一体に形成されたセラミックハウジングの何れかを用いて、「筒状体の気密性の悪化、弾性体の破断、接点ずれの発生」などの各リスクを、抑制できるとの効果を奏する。
【0182】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述までの実施形態の説明は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。上記実施形態には、種々の改良および変形が行われてよい。上記実施形態の各構成要素に関して、適宜、構成要素の省略、置換および追加が行われてもよい。また、上記実施形態の各構成要素の形状および寸法は、実施の形態に応じて適宜変更されてよい。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0183】
図1および
図2には、軸方向における先端側の端面(先端面)が平坦であるスペーサ70の例を示した。しかしながら、本発明に係るガスセンサにとって、スペーサ70の先端面が平坦であることは必須ではない。先端面においてセラミックハウジング60(特に、セラミックハウジング60の後端側の端面(後端面))と接するスペーサ70は、その先端面の一部においてのみ、セラミックハウジング60と接してもよい。例えば、スペーサ70の先端面に、1または複数の凹部を形成し、係る1または複数の凹部を除く部分において、スペーサ70の先端面とセラミックハウジング60(特に、セラミックハウジング60の後端面)とが接していてもよい。また、スペーサ70の先端面に、1または複数の凸部を形成し、係る1または複数の凸部の頂点(複数の凸部を形成する場合、複数の凸部のそれぞれの頂点)においてのみ、スペーサ70の先端面とセラミックハウジング60とが接していてもよい。
【0184】
スペーサ70が、その先端面の全体ではなく、先端面の一部においてのみ、セラミックハウジング60(特に、セラミックハウジング60の後端面)に接するようにすることで、本発明に係るガスセンサは、以下の効果を実現することができる。すなわち、本発明に係るガスセンサは、セラミックハウジング60からスペーサ70、さらには、弾性体50への伝熱を抑制することができるとの効果を奏する。例えば、スペーサ70の強度を確保しつつ、弾性体50の熱劣化を抑制できるように、本発明に係るガスセンサは、スペーサ70の先端面に、1または複数の、凹部および凸部の少なくとも一方を、形成してもよい。先端面に、1または複数の、凹部および凸部の少なくとも一方が形成されたスペーサ70は、先端面の全体ではなく、先端面の一部において、セラミックハウジング60(特に、セラミックハウジング60の後端面)に接する。
【0185】
[実施例]
本件発明者らは、本発明の効果を検証するため、以下の実施例1~7に係るガスセンサを作製した。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【表1】
【0186】
表1において、実施例1~7は、それぞれ、
図1に例示する部材を備えるガスセンサである。実施例1~7のそれぞれに係るガスセンサにおいて、スペーサ70(より正確には、セラミックハウジング60)の軸方向の位置は、「(一般的なガスセンサにおいて採用されている)所定範囲の大きさの力で」固定されている。ただし、実施例1~7のそれぞれに係るガスセンサの総合パラメータPc(=k×{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da))の値は互いに異なる。つまり、実施例1~7のそれぞれに係るガスセンサは、総合パラメータPcの値を除いて、同様の構成を備えている。なお、以下では説明の簡略化のために、表1中の「総合パラメータPc(「定数k」省略)」を、単に「総合パラメータPc」と表記する。
【0187】
実施例1および実施例7は、それぞれ、総合パラメータPcの値が、「0.038」~「0.171」の範囲にないガスセンサである。具体的には、実施例1に係るガスセンサの総合パラメータPcの値は「0.034」であり、実施例7に係るガスセンサの総合パラメータPcの値は「0.181」である。
【0188】
実施例2~6は、それぞれ、総合パラメータPcの値が、「0.038」~「0.171」の範囲にあるガスセンサである。具体的には、実施例2に係るガスセンサの総合パラメータPcの値は「0.038」であり、実施例3に係るガスセンサの総合パラメータPcの値は「0.042」であり、実施例4に係るガスセンサの総合パラメータPcの値は「0.050」である。また、実施例5に係るガスセンサの総合パラメータPcの値は「0.094」であり、実施例6に係るガスセンサの総合パラメータPcの値は「0.171」である。特に、実施例4および実施例5のそれぞれに係るガスセンサは、その総合パラメータPcの値が、「0.050」~「0.094」の範囲にある。
【0189】
本件発明者らは、実施例1~7のそれぞれに係るガスセンサについて、筒状体20内の気密性と、位置ずれの抑制(具体的には、スペーサ70によって、弾性体50の先端面53の移動を許容可能な範囲に抑制できるか)とを確認する実験を実施した。「許容可能な範囲」とは、例えば、接点ずれ(センサ素子10の素子電極と端子金具30との電気的接続の喪失、切断)を発生させない範囲である。
【0190】
上述の実験により、気密性が良好で、かつ、位置ずれを良好に抑制できていたことを確認したガスセンサについては、表1中の「結果」を「◎(良好)」とした。また、気密性が許容可能な範囲にあり、かつ、位置ずれを許容可能な範囲に抑制できていたことを確認したガスセンサについては、表1中の「結果」を「○(許容可能)」とした。さらに、気密性が許容可能な範囲になく、または、位置ずれが許容可能な範囲を超えていたことを確認したガスセンサについては、表1中の「結果」を「×(許容不可)」とした。
【0191】
なお、「不具合モード」とは、実施例1~7のそれぞれに係るガスセンサについて、上述の実験により改善すべき点(または、改善可能な点)として確認できた性能を表している。すなわち、「不具合モード」として「気密性」が挙げられている場合、上述の実験により、「筒状体20内の気密性を改善すべきである(または、筒状体20内の気密性が改善可能である)」と確認されたことを示している。同様に、「不具合モード」として「位置ずれ」が挙げられている場合、上述の実験により、「位置ずれの抑制について改善すべきである(または、位置ずれの抑制について改善可能である)」と確認されたことを示している。
【0192】
総合パラメータPcの値が、「0.038」~「0.171」の範囲にない実施例1および実施例7のそれぞれに係るガスセンサの「結果」は、何れも「×」であった。これに対して、総合パラメータPcの値が、「0.038」~「0.171」の範囲にある実施例2~6のそれぞれに係るガスセンサの「結果」は、「〇」または「◎」である。したがって、総合パラメータPcの値を、「0.038」~「0.171」の範囲にすることで、筒状体20内の気密性を確保でき、また、位置ずれを抑制して接点ずれの発生を効果的に防止できることが確認された。
【0193】
以上に説明してきた通り、加締め前直径Da、加締め後直径Db、縮径部長Lc、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afが、以下の数式(1)を満たすガスセンサは、筒状体20内の気密性を確保でき、また、接点ずれの発生を効果的に防止できた。すなわち、
0.038≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.171
・・・数式(1)
を満たすガスセンサは、筒状体20内の気密性を確保でき、また、接点ずれの発生を効果的に防止できた。
【0194】
また、実施例2~6のうち、総合パラメータPcの値が、「0.050」~「0.094」の範囲にある実施例4および実施例5のそれぞれに係るガスセンサの「結果」は、「◎」である。これに対して、総合パラメータPcの値が、「0.038」~「0.171」の範囲にあるが、「0.050」~「0.094」の範囲にはない実施例2、実施例3、および、実施例6のそれぞれに係るガスセンサの「結果」は、「〇」である。したがって、総合パラメータPcの値を、「0.050」~「0.094」の範囲とした場合、筒状体20内の気密性が著しく向上し、また、位置ずれの抑制効果が著しく向上して、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになることを確認できた。
【0195】
以上に説明してきた通り、加締め前直径Da、加締め後直径Db、縮径部長Lc、非加締め長Ld、第1面積Ae、および、第2面積Afが、以下の数式(2)を満たすガスセンサは、筒状体20内の気密性を著しく良好なものとし、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになるとの効果を奏する。すなわち、
0.050≦{(Lc×Af)/(Ae×Ld)}×(1-Db/Da)≦0.094
・・・数式(2)
を満たすガスセンサは、筒状体20内の気密性を著しく良好なものとし、また、接点ずれの発生を極めて効果的に防止できるようになるとの効果を奏する。
【0196】
なお、上述のとおり、実施例1~7は、それぞれ、
図1に例示する部材を備えるガスセンサである。そのため、上述の数式(1)および数式(2)において、加締め前直径Daは、弾性体50の、縮径部221によって周囲から加締められる前の直径を表している。加締め後直径Dbは、弾性体50の、縮径部221によって周囲から加締められている部分である被加締め部分51の、直径を表している。縮径部長Lcは、筒状体20の縮径部221の、軸方向の長さを表している。非加締め長Ldは、弾性体50の、軸方向において被加締め部分51よりも先端側の部分である非加締め部分52の、軸方向の長さを表している。第1面積Aeは、弾性体50の先端面53(第1端面)の面積を表している。第2面積Afは、スペーサ70(位置固定部)の後端面71を表している。
【符号の説明】
【0197】
1、1(A)、1(B)、1(C)、1(D)…ガスセンサ、10…センサ素子、
20…筒状体、221…縮径部、30…端子金具、40…リード線、50…弾性体、
51、51(1)、51(2)、51(3)…被加締め部分、52…非加締め部分、
53…先端面(第1端面)、60(D)…セラミックハウジング(位置固定部)、
61(D)…後端面(第2端面)、70…スペーサ(位置固定部)、
71…後端面(第2端面)