IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スピードファムクリーンシステム株式会社の特許一覧

特開2024-101953カセット昇降装置及びカセット昇降方法
<>
  • 特開-カセット昇降装置及びカセット昇降方法 図1
  • 特開-カセット昇降装置及びカセット昇降方法 図2
  • 特開-カセット昇降装置及びカセット昇降方法 図3
  • 特開-カセット昇降装置及びカセット昇降方法 図4
  • 特開-カセット昇降装置及びカセット昇降方法 図5
  • 特開-カセット昇降装置及びカセット昇降方法 図6
  • 特開-カセット昇降装置及びカセット昇降方法 図7
  • 特開-カセット昇降装置及びカセット昇降方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101953
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】カセット昇降装置及びカセット昇降方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240723BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/304 642A
H01L21/304 648C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006206
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000107734
【氏名又は名称】スピードファムクリーンシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 和俊
(72)【発明者】
【氏名】内田 智幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晋
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲 久衛
【テーマコード(参考)】
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA22
5F131BA37
5F131CA09
5F131DA05
5F131DA32
5F131DA43
5F131DA55
5F131GA03
5F131GA22
5F131GA33
5F131GA44
5F157AB03
5F157AB35
5F157AB36
5F157BB02
5F157DA43
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】浸漬後の薄いウェーハを安定してロボット搬送できるようにするカセット昇降装置を提供する。
【解決手段】水槽に浸漬されたウェーハを引き上げて次工程に移行させるためのカセット昇降装置1である。
そして、ウェーハW,W1を収納するカセット2と、水槽4に対してカセットを昇降させるとともに、カセットを傾斜させることが可能な昇降装置3と、昇降装置の動作を制御する制御部とを備えている。
この制御部では、カセットを所定の角度で傾斜させて、ウェーハの後端以外が水面上に引き上げられた後に、ウェーハの後端が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽に浸漬されたウェーハを引き上げて次工程に移行させるためのカセット昇降装置であって、
ウェーハを収納するカセットと、
前記水槽に対して前記カセットを昇降させるとともに、前記カセットを傾斜させることが可能な昇降装置と、
前記昇降装置の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部では、前記カセットを所定の角度で傾斜させて、前記ウェーハの後端以外が水面上に引き上げられた後に、前記ウェーハの後端が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる制御を行うことを特徴とするカセット昇降装置。
【請求項2】
前記カセットには、複数枚のウェーハが上下方向に間隔を置いて収納されることを特徴とする請求項1に記載のカセット昇降装置。
【請求項3】
水槽に浸漬されたウェーハを引き上げて次工程に移行させるためのカセット昇降方法であって、
水槽に浸漬されたウェーハを収納するカセットを、所定の角度で傾斜させた状態で引き上げる工程と、
前記ウェーハの後端以外が水面上に引き上げられた後に、前記ウェーハの後端が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる工程と、
前記停止後に再び前記ウェーハを引き上げて、水面上に露出した前記ウェーハを次工程に移行させる工程とを備えたことを特徴とするカセット昇降方法。
【請求項4】
前記所定の角度は、4度以上45度以下であることを特徴とする請求項3に記載のカセット昇降方法。
【請求項5】
前記停止させる時間は、1秒以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載のカセット昇降方法。
【請求項6】
前記ウェーハを側面視したときの前記後端の長さは、5mmから20mmであることを特徴とする請求項3又は4に記載のカセット昇降方法。
【請求項7】
前記ウェーハを側面視したときの前記後端の長さは、5mmから20mmであることを特徴とする請求項5に記載のカセット昇降方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽に浸漬されたウェーハを引き上げて次工程に移行させるためのカセット昇降装置及びカセット昇降方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板処理工程において、シリコンウェーハ、表面に酸化膜等が成膜された成膜ウェーハ、SOIウェーハ、SiCウェーハ、その他半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、石英ガラスウェーハ、水晶ウェーハ、サファイアウェーハ、セラミックウェーハ、酸化物ウェーハ等の薄板状のウェーハが処理される。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、ウェーハをカセットに収納して水槽に浸漬させた状態で洗浄又は待機をさせ、次工程となる洗浄工程や乾燥工程などに移行させるためのロボット搬送が行われる。
【0004】
ここで、水槽に浸漬されたウェーハは、水上に引き上げられて次工程のためにロボット搬送されることになるが、ウェーハをそのまま水上に引き上げると、ウェーハ上に大量の水が残ることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-62214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウェーハ上に大量に水が残ると、水の重量が加わることで薄いウェーハがたわみ、形状が変化することになる。水の残る量にばらつきがあると、ウェーハのたわみ量もばらつき、ロボット搬送する際に、ウェーハ搬送が可能な位置範囲に収まらないなど、搬送ミスやウェーハの破損に繋がるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、浸漬後の薄いウェーハを安定してロボット搬送できるようにするカセット昇降装置及びカセット昇降方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のカセット昇降装置は、水槽に浸漬されたウェーハを引き上げて次工程に移行させるためのカセット昇降装置であって、ウェーハを収納するカセットと、前記水槽に対して前記カセットを昇降させるとともに、前記カセットを傾斜させることが可能な昇降装置と、前記昇降装置の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部では、前記カセットを所定の角度で傾斜させて、前記ウェーハの後端以外が水面上に引き上げられた後に、前記ウェーハの後端が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる制御を行うことを特徴とする。
【0009】
また、カセット昇降方法の発明は、水槽に浸漬されたウェーハを引き上げて次工程に移行させるためのカセット昇降方法であって、水槽に浸漬されたウェーハを収納するカセットを、所定の角度で傾斜させた状態で引き上げる工程と、前記ウェーハの後端以外が水面上に引き上げられた後に、前記ウェーハの後端が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる工程と、前記停止後に再び前記ウェーハを引き上げて、水面上に露出した前記ウェーハを次工程に移行させる工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明のカセット昇降装置は、ウェーハを収納するカセットを傾斜させて昇降させることが可能な昇降装置の動作を制御する制御部が、傾斜したウェーハの後端が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる制御を行う。
【0011】
このため、水槽から引き上げられたウェーハの水残り量が少なく、ウェットな状態の薄いウェーハを安定してロボット搬送させることができるようになる。また、極薄のウェーハであれば残り水の重量によってたわむことが考えられるが、水残り量を安定して減らせることで、極薄のウェーハであっても、たわみ量を低減させることができるようになる。
【0012】
また、カセット昇降方法の発明は、ウェーハを収納するカセットを所定の角度で傾斜させた状態で引き上げる際に、ウェーハの後端以外が水面上に引き上げられた後に、ウェーハの後端が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる工程を行う。
【0013】
この一定時間の停止の際に、ウェーハ上に残る水を水面に伝わらせて水槽の水に吸収させることで、ウェーハ上の水残り量を減らすことができる。このため、ウェットな状態の薄いウェーハを、安定して次工程に向けてロボット搬送させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態のカセット昇降装置の動作を説明する図であって、(a)は水槽にウェーハが浸漬した状態を示す説明図、(b)は最上層のウェーハの後端以外が水面上に引き上げられた状態を示す説明図である。
図2】本実施の形態のカセット昇降装置の全体構成を示した説明図である。
図3】カセットを傾斜させる仕組みを示した説明図である。
図4】最上層のウェーハの後端以外が水面上に引き上げられた状態を拡大して示した説明図である。
図5】ウェーハ上の水残り量を測定した結果を示した説明図である。
図6】ウェーハの後端だけ浸漬させて一時停止させた場合の水残り状況を、傾斜角度を変えて観察した結果を示した説明図である。
図7】ウェーハの後端だけ浸漬させて一時停止させた場合の水残り量の実験結果を示した説明図である。
図8】本実施の形態のカセット昇降方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態のカセット昇降装置1の動作を説明する図である。また、図2図3は、本実施の形態のカセット昇降装置1の構成を説明する図である。
【0016】
本実施の形態のカセット昇降装置1に収納されるウェーハとしては、シリコンウェーハ、表面に酸化膜等が成膜された成膜ウェーハ、SOIウェーハ、SiCウェーハ、その他半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、石英ガラスウェーハ、水晶ウェーハ、サファイアウェーハ、セラミックウェーハ、酸化物ウェーハ等が該当する。本実施の形態のカセット昇降装置1及びカセット昇降方法は、特に薄いウェーハ(極薄ウェーハ)の昇降に適している。例えば、シリコンウェーハであれば約775μm程度の厚さがあるが、それよりも薄い350μm以下や100μm以下の厚さのウェーハ等であれば、極薄ウェーハと言える。
【0017】
基板処理工程において、図1に示すように、ウェーハWをカセット2に収納して水槽4に浸漬させた状態で洗浄又は待機をさせ、次工程となる洗浄工程や乾燥工程などに移行させることが行われる。これらの工程は、ロボット搬送によって行われる。
【0018】
すなわち水槽4に浸漬されたウェーハWは、次工程のために水上に引き上げられて、ロボットハンドでカセット2から取り出されて、搬送されることになる。本実施の形態のカセット昇降装置1は、ウェーハWを水面41から引き上げる際の制御に特徴を有している。
【0019】
本実施の形態のカセット昇降装置1は、ウェーハWを収納するカセット2と、水槽4に対してカセット2を昇降及び傾斜させることが可能な昇降装置3と、昇降装置3の動作を制御する制御部とを備えている。
【0020】
図2は、本実施の形態のカセット昇降装置1の全体構成を説明するための図である。カセット昇降装置1のカセット2には、複数枚のウェーハWがセットされ、水槽4への浸漬が行われる。ここで、複数枚のウェーハWが積層されたカセット2の最上層に位置するものをウェーハW1とする。
【0021】
昇降装置3は、カセット2を鉛直方向の上下に昇降させるための昇降シリンダ31を備えている。ロッドが上下する昇降シリンダ31のロッドの先端には、昇降アーム32が取り付けられる。
【0022】
昇降アーム32の張り出された側には、鉛直方向に延びる支柱321が形成されており、その支柱321の先端には、水平方向に向けてシャフト322が架け渡されている。すなわち、支柱321は、図2の紙面直交方向に間隔をおいて一対が設けられており、一対の支柱321間にカセット2を載せる荷台枠33が配置される。
【0023】
そして、側面視L字状の荷台枠33の上端が、支柱321間に架け渡されたシャフト322に連結される。カセット2は、シャフト322の回転に伴って回動する荷台枠33によって傾斜させることができる。
【0024】
図3は、荷台枠33に載せたカセット2が傾斜した状態を示している。荷台枠33の上端が固定されるシャフト322には、傾斜調整棒34の上端も固定されていて、傾斜調整棒34の下部は、荷台枠33のカセット2を載せる底面よりも下方まで延伸されている。
【0025】
この傾斜調整棒34の下部には、昇降アーム32の上面に取り付けられた押出しシリンダ35のロッドの先端が接続されている。押出しシリンダ35のロッドが伸長すると、それに押された傾斜調整棒34が傾くことでシャフト322が回転し、そのシャフト322の回転に伴って荷台枠33が傾くことになる。
【0026】
押出しシリンダ35による傾斜調整棒34の回動は、ストッパ36A,36Bによって制限されることになる。すなわち、ストッパ36Bに傾斜調整棒34の側面が当たる位置が、カセット2を傾斜させることができる最大の傾斜角度になる。一方、図2に示すように、ストッパ36Aに傾斜調整棒34の反対側の側面が当たる位置で、カセット2に積載されたウェーハWは水平になる。
【0027】
このように構成される昇降装置3の動作を制御する制御部では、カセット2を所定の角度で傾斜させた状態で維持させることができる。カセット2の傾斜角度は、ウェーハWが水平となる傾斜角度0°(度)から、最大45°(度)まで設定することができるが、傾斜角度の上限をストッパ36Bの取り付け位置によって調整することができる。例えば傾斜角度の上限を、10°程度に設定する。
【0028】
図4は、カセット2に収納された最上層のウェーハW1の後端以外が、水面41より上に引き上げられた状態を示している。ここで、寸法として図示したLは、水面41下に浸漬しているウェーハW1の後端の長さを示している。
【0029】
本実施の形態のカセット昇降装置1の制御部では、ウェーハW1の後端(長さL)が水面41下に浸漬された状態で、一定時間の停止をさせる制御を行うことができる。ここで、停止させる時間については、任意に設定することができる。
【0030】
また、カセット2を上昇させる速度や距離は、制御部による昇降シリンダ31の制御によって行われる。例えば、昇降シリンダ31を何mm延ばした後に、何秒停止させる、という制御によって、最上層のウェーハW1を所望する位置で、所望する時間だけ停止させておくことができる。
【0031】
以下では、実験結果を参照しながら、ウェーハWを傾斜させる角度と一時停止させる時間について説明する。図5は、ウェーハW上の水残り量を測定した結果を、一覧表にまとめて示した説明図である。
【0032】
実験に使用したウェーハWは、直径が6インチで、厚さは素材によって350μmと200μmのものを用意した。ウェーハWの素材は、シリコン(Si)、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)の3種類を用意した。
【0033】
水残り量を測定する実験は、カセット2に収納したウェーハWを純水に浸漬させ、傾斜させた状態で水上に引き上げた際に、ウェーハWの上に残っている水重量を電子秤で測定することで行った。
【0034】
ウェーハWを傾斜させる角度(傾斜角度)については、2°、6°、10°の3段階で行った。また、カセット2を引き上げる速度については、5mm/sec、10mm/sec、30mm/secの3段階で行った。ここで、通常、カセット2の引き上げ速度は、5mm/secから10mm/sec程度で、30mm/secは極端に速い速度であると言える。
【0035】
図5に示した実験結果からわかるように、いずれの素材であっても、引き上げ速度が遅く、傾斜角度が大きいほど、水残り量(単位:g)が少なくなることがわかる。例えば、傾斜角度が10°で引き上げ速度が5mm/secの場合、Siウェーハでは2.23g、LTウェーハでは2.38g、LNウェーハでは2.36g(厚さ350μm)と2.32g(厚さ200μm)という水残り量になった。
【0036】
一方、カセット2には、複数枚のウェーハWが同時に収納されるので、上下のウェーハ間に残る水残り量についても検討する必要がある。この実験では、傾斜角度が2°の場合に、上下のウェーハ間に水膜状に大量の水が残ることが判明したため、複数枚のウェーハWをカセット2に収納する場合は、傾斜角度を4°(度)以上に設定することにする。なお、水残り量をできるだけ減らすことを考えると、傾斜角度の上限は45°となるが、実機への適用を考えると、10°程度までの角度が適切になる。
【0037】
続いて、ウェーハW1の後端(長さL)だけ水面41下に浸漬された状態で、一定時間の停止をさせることについての効果を検討する。引き上げ速度については、遅い方がウェーハW上の水残り量を減らすことができるので、引き上げ速度を30mm/secとした設定で実験を行った。
【0038】
図6は、ウェーハWの後端だけ浸漬させて一時停止させた場合の水残り状況を観察した結果を示している。ウェーハWの傾斜角度は、2°、6°、10°の3段階の設定にした。実験に使用したウェーハWは、厚さ350μmのSiウェーハと、厚さ200μmのLNウェーハである。
【0039】
水残り状況の観察は、ウェーハWの上面に残っている水と、カセット2のスリット部に残っている水とを、目視で確認することで行った。実験の結果、傾斜角度が2°の場合、ウェーハWの後端だけ浸漬させた状態で停止しても、水残り量が変化しないことが判明した。
【0040】
一方、傾斜角度が6°の場合、ウェーハWの素材(LNウェーハ)によっては、ウェーハWの後端だけを浸漬させた状態での一時停止によって、水残り量を減らすことができることが分かった。さらに、傾斜角度を10°と大きくした場合は、いずれの素材についても、水残り量を減らすことができた。この結果からも、傾斜角度は、4°(度)以上、好ましくは6°(度)以上に設定する。
【0041】
図7は、ウェーハWの傾斜角度を10°にして、ウェーハWの後端だけ浸漬させた状態で一時停止をさせるか否かによって変化する水残り量を、水重量として測定した実験結果を示している。
【0042】
実験は、LNウェーハを使用して、引き上げ速度を30mm/secに設定して行った。条件が「連続引上げ」は、一定の引き上げ速度(30mm/sec)で停止させずに引き上げたケースで、条件が「後端を水中に漬けたまま一時停止」は、ウェーハWの後端だけ浸漬させた状態で引き上げを停止させたケースである。
【0043】
この実験の結果、ウェーハWの後端を浸漬させた状態で3秒から4秒の一時停止をさせただけで、水重量が、停止させなかったときの5.91gから2.67gへと半減することが判明した。
【0044】
また、3回の実験を行った結果を見ても、ウェーハWの後端を浸漬させた状態で一時停止したときの方が、結果にばらつきが出ないことが分かった。これらの結果から、ウェーハWを引き上げる際には、後端を浸漬させた状態で、1秒から4秒程度の停止時間を設けることが、ウェーハW上の水残り量を減らしたり、水残り量のばらつきを抑えたりするのには有効であると言える。なお、停止時間の4秒は上限を示すものではなく、生産タクトに時間の制限がない、あるいは時間に余裕があるのであれば、30秒や60秒といった停止時間に設定することもできる。
【0045】
ここで、一時停止の際に、水面41下に浸漬させるウェーハW1の後端の長さL(図4参照)については、ウェーハWの大きさにもよるが、5mmから20mm、好ましくは5mmから15mmに設定する。例えば、ウェーハW1の浸漬させる後端の長さLを、10mm程度にするのがよい。
【0046】
次に、本実施の形態のカセット昇降方法について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。本実施の形態では、カセット昇降方法を実施する際に、上述したカセット昇降装置1を使用する。
【0047】
まずステップS1では、複数枚のウェーハWが収納されたカセット2を、カセット昇降装置1に搭載する。なお、カセット昇降装置1に搭載されたカセット2に、ウェーハWを収納する手順であってもよい。
【0048】
そして、複数枚のウェーハWが収納されて昇降装置3の荷台枠33に載せられたカセット2を、水平状態のまま、昇降装置3の昇降シリンダ31を収縮させることで、水槽4の中に下降させる(ステップS2)。
【0049】
続いてステップS3では、水中に浸漬したカセット2を、押出しシリンダ35の伸長によって所定の角度に傾斜した状態にさせる。ここでは、例えばウェーハWの傾斜角度が10°になるようにカセット2を傾斜させる。
【0050】
要するに、カセット2は、最上層のウェーハW1が水面41より下に位置するまで水槽4に浸漬された状態になる(図1(a)参照)。水槽4に浸漬されたウェーハW1,Wは、水槽4内で洗浄されたり、次工程に移行するまでの間、ウェットな状態が維持されたりすることになる。
【0051】
最上層のウェーハW1を次工程に移行させる段階になると、カセット2が傾斜した状態で、昇降装置3の昇降シリンダ31を伸長させることで、カセット2を引き上げる(ステップS4)。カセット2の引き上げは、設定された一定の引き上げ速度(例えば5mm/secから10mm/sec程度)で行われる。
【0052】
そして、傾斜した最上層のウェーハW1の上端(前端)が水面41上に露出し、後端のみが浸漬した状態となったときに、カセット2の引き上げを停止する(ステップS5)。例えば図4に示すように、最上層のウェーハW1の後端の長さLが浸漬した状態になるカセット2の位置を制御部で設定しておき、昇降シリンダ31の伸長がその長さに到達した時点で引き上げを停止する。
【0053】
この停止させておく時間についても、制御部で設定をしておく。例えば、2秒から4秒程度、引き上げを停止し、ウェーハW1の後端(例えばL=10mm)が浸漬した状態を維持する(ステップS6)。このとき、水上に露出したウェーハW1の上面の残り水は、水槽4の水面41の水に引き寄せられるように伝わり、吸収されることでウェーハW1上から取り除かれることになる。
【0054】
一定時間の停止後のステップS7では、再びカセット2を引き上げて、最上層のウェーハW1のすべてが、水面41より上に露出された状態にする。なお、傾斜させていたカセット2を水平にする動作によっても、最上層のウェーハW1のすべてを水面41上に露出させることができる。
【0055】
続くステップS8では、カセット2の姿勢を、必要に応じて水平にするなどして調整し、次工程の受け渡し位置まで移動させる。次工程の受け渡し位置では、最上層のウェーハW1のみが、次工程のロボットハンドなどによってカセット2から引き出される。
【0056】
ステップS9では、最上層のウェーハW1が搬出されたカセット2を、再び水槽4の所定の位置に戻し、水平状態のカセット2を水槽4の中に下降させる。要するに、残りのウェーハWを、次工程への引き渡しまでの間、水槽4に浸漬させておくことになる。カセット2の2枚目以降のウェーハWについても、最上層のウェーハW1と同様の工程を経て、次工程に受け渡される。
【0057】
次に、本実施の形態のカセット昇降装置1及びカセット昇降方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態のカセット昇降装置1は、ウェーハW(W1)を収納するカセット2を傾斜させて昇降させることが可能な昇降装置3の動作を制御する制御部が、最上層の傾斜したウェーハW1の後端(長さL)が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる制御を行う。
【0058】
ここで、水槽4に浸漬されていたウェーハWを引き上げる際に、ウェーハWの端部においては、表面張力によって水が溜まりやすい状況になる。それはたとえウェーハWを傾けていたとしても、後端の部分には多くの水が残ることになる。そこで、本実施の形態のカセット昇降装置1では、傾斜したウェーハW1の後端(長さL)が浸漬された状態で一定時間の停止をさせる制御を行うことで、ウェーハW1上の水を水槽4側に回収させることにした。
【0059】
このため、水槽4から引き上げられたウェーハW1の水残り量が少なく、ウェットな状態の薄いウェーハW1を、安定してロボット搬送させることができるようになる。また、極薄のウェーハW(W1)であれば水残り重量によってたわむことが考えられるが、水残り量を安定して減らせることで、極薄のウェーハW(W1)であっても、たわみ量を低減させることができるようになる。
【0060】
また、カセット昇降方法の発明は、ウェーハW(W1)を収納するカセット2を、例えば4度以上45度以下の所定の角度で傾斜させた状態で引き上げる際に、ウェーハW1の後端以外が水面41より上に引き上げられた後に、ウェーハW1の後端(例えば長さLが5mmから20mm)が浸漬された状態で、一定時間(例えば1秒から4秒)の停止をさせる工程を行う。
【0061】
この一定時間の停止の際に、ウェーハW1上に残る水を水面41に伝わらせて水槽4の水に吸収させることで、ウェーハW1上の水残り量を減らすことができる。このため、ウェットな状態の薄いウェーハW1を、安定して次工程に向けてロボット搬送させることができるようになる。
【0062】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0063】
例えば、前記実施の形態では、複数枚のウェーハW,W1が上下方向に間隔を置いてカセット2に収納された場合について説明したが、これに限定されるものではなく、1枚のウェーハを水槽4から引き上げる際にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 :カセット昇降装置
2 :カセット
3 :昇降装置
4 :水槽
41 :水面
W,W1:ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8