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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101954
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/50 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01S13/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006207
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聖也
(72)【発明者】
【氏名】宇田 尚典
(72)【発明者】
【氏名】小沼 恒二
(72)【発明者】
【氏名】渡津 弘大
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 里穂
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB16
5J070AD02
5J070AE09
5J070AF01
5J070AH14
5J070AH34
5J070AH39
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】検知対象の動きを検知する正確性を高める。
【解決手段】検知装置12は、交流信号を発振する発振器62と、発振器62で出力された交流信号が入力される励振電極64と、励振電極64で生成された電磁場を検出する検出電極66と、発振器62で発振された交流信号と、検出電極66が電磁場を受けることにより生成された検出信号と、の位相差を検出する検出器68と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流信号を出力する発振器と、
前記発振器で出力された前記交流信号が入力される励振電極と、
前記励振電極で生成された電磁場を検出する検出電極と、
前記発振器で発振された前記交流信号と、前記検出電極が前記電磁場を受けることにより生成された検出信号と、の位相差を検出する検出器と、
を有する検知装置。
【請求項2】
同一又は異なる周波数の前記交流信号を生成する複数の前記発振器を備えている、請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
複数の前記励振電極を備えている請求項1に記載の検知装置。
【請求項4】
複数の前記検出電極を備えている請求項1に記載の検知装置。
【請求項5】
前記発振器の発振する前記交流信号の周波数が1kHz以上100MHz以下である請求項1に記載の検知装置。
【請求項6】
前記検出器は、入力された前記交流信号の矩形波と、入力された前記検出信号の矩形波と、から前記位相差を検出する、請求項1に記載の検知装置。
【請求項7】
前記励振電極及び前記検出電極は、導電体によって板状、シート状、網状又は線状に形成されている請求項1に記載の検知装置。
【請求項8】
前記励振電極と前記検出電極の一方が配置された第一部材と、
前記励振電極と前記検出電極の他方が配置された第二部材と、
を有する請求項1に記載の検知装置。
【請求項9】
前記第一部材が椅子の座部であり、
前記第二部材が前記椅子の背部である、請求項8に記載の検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、椅子に座った人に向けて、センサ部から電磁波を送信し、人で反射した反射波を同じセンサ部で受信すると、このセンサ部からの信号を入力される判定処理部が、人の着座や椅子から離れる等の動きに伴う反射面の存否やセンサ部と反射面との間隔変化に応じて変わる信号の、所定の閾値を超える変化から、椅子に人が着座しているか否かを判定する、離席検知システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-133262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、センサ部から送信された電磁波が人で反射される反射を用いて、椅子に人が着差しているか否かを判定している。このように、電磁波の反射を用いると、人の着衣や姿勢によって、センサ部から送信された電磁波が人により吸収されたり、反射状態が不安定になったりするため、検知対象の動きを正確に検知することが難しい。
【0005】
本開示の目的は、検知対象の動きを検知する正確性を高めることである
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様の検知装置は、交流信号を出力する発振器と、前記発振器で出力された前記交流信号が入力される励振電極と、前記励振電極で生成された電磁場を検出する検出電極と、前記発振器で発振された前記交流信号と、前記検出電極が前記電磁場を受けることにより生成された検出信号と、の位相差を検出する検出器と、を有する。
【0007】
この検知装置では、発振器で出力された交流信号が励振電極に入力され、励振電極で電磁場が生成される。検出電極では、この電磁場を検出し、検出信号が生成される。電磁場が検出対象の動き、たとえば人の姿勢変化によって変動すると、検出信号も変化する。検出器では、発振器で発振された交流信号、すなわち変動していない信号と、検出電極で生成された変動後の検出信号と、位相差を検出する。そして、位相差の変化により、検知対象の動きを検知できる。
【0008】
この検知装置では、検知対象の動きの検知に電磁波の反射を利用していないので、電磁波が検知対象に吸収されたり、検知対象における反射状態が不安定になったりする影響を受けない。これにより、検知対象の動きを検知する正確性が高くなる。
【0009】
第二態様では、第一態様の検知装置において、同一又は異なる周波数の前記交流信号を生成する複数の前記発振器を備えている。
【0010】
複数の発振器を備えているので、1つ複数の発振器を備える構成と比較して、検知対象の動きを検知する範囲ごとに発振器を設けることができる。複数の発振器で発振される交流信号の周波数は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0011】
第三態様では、第一又は第二態様の検知装置において、複数の前記励振電極を備えている。
【0012】
複数の励振電極を備えているので、1つの励振電極を備えている構成と比較して、より広い範囲に励振電極を配置して、で検知対象の動きを検出することが可能である。励振電極の配置を調整することにより、検知対象の動きを検知可能な範囲を種々に設定することも可能である。
【0013】
第四態様では、第一~第三のいずれか一態様の検知装置において、複数の前記検出電極を備えている。
【0014】
複数の検出電極を備えているので、1つの検出電極を備えている構成と比較して、より広い範囲に検出電極を配置して、検知対象の動きを検出することが可能である。検出電極の配置を調整することにより、検知対象の動きを検知可能な範囲を種々に設定することも可能である。
【0015】
第五態様では、第一~第四のいずれか一態様の検知装置において、前記発振器の発振する前記交流信号の周波数が1kHz以上100MHz以下である。
【0016】
交流信号の周波数が1kHz以上であることで、1kHz未満の低周波域における、いわゆる(1/f)ノイズの影響を少なくできる。また、交流信号の周波数が100MHz以下であることで、電磁場を伝わる電磁波の波長が概ね3mよりも長くなり、たとえば検知対象を人の姿勢変化とした場合に、この姿勢変化を検知可能な波長にできる。
【0017】
第六態様では、第一~第五のいずれか一態様の検知装置において、前記検出器は、入力された前記交流信号の矩形波と、入力された前記検出信号の矩形波と、から前記位相差を検出する。
【0018】
入力された交流信号と、入力された検出信号と、がいずれも矩形波であることで、位相差の検出が容易になる。
【0019】
第七態様では、第一~第六のいずれか一態様の検知装置において、前記励振電極及び前記検出電極は、導電体によって板状、シート状、網状又は線状に形成されている。
【0020】
これにより、たとえば励振電極及び検出電極がブロック状に形成されている場合と比較して厚みを薄くできるので、設置位置の制限が少なくなる。
【0021】
第八態様では、第一~第七のいずれか一態様の検知装置において、前記励振電極と前記検出電極の一方が配置された第一部材と、前記励振電極と前記検出電極の他方が配置された第二部材と、を有する。
【0022】
したがって、第一部材と第二部材との間における検知対象の動きを検知できる。
【0023】
第九態様では、第八態様の検知装置において、前記第一部材が椅子の座部であり、前記第二部材が前記椅子の背部である。
【0024】
検知装置が椅子に設けられた構成の場合に、椅子の着座者の動きを検知できる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の技術では、検知対象の動きを検知する正確性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は第一実施形態の検知装置を、検知装置が適用された椅子と共に示す斜視図である。
図2図2は第一実施形態の検知装置を、検知装置が適用された椅子に着座者が着座した状態で示す斜視図である。
図3図3は開示の技術の検知装置の構成を波形の概略と共に示すブロック図である。
図4A図4Aは開示の技術の検知装置における波形を着座者の姿勢の変化がない状態で示すブロック図である。
図4B図4Bは開示の技術の検知装置における波形を着座者の姿勢の変化がある状態で示すブロック図である。
図5図5は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の一例を示す斜視図である。
図6図6は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の一例を示す斜視図である。
図7図7は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の一例を示す斜視図である。
図8図8は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の一例を示す斜視図である。
図9図9は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の一例を示す斜視図である。
図10図10は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の一例を示す斜視図である。
図11図11は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の一例を示す斜視図である。
図12図12は第二実施形態の検知装置を、検知装置が適用された椅子と共に示す斜視図である。
図13図13は第三実施形態の検知装置を、検知装置が適用された椅子と共に示す斜視図である。
図14図14は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の一例を示す斜視図である。
図15図15は第四実施形態の検知装置を、検知装置が適用された椅子と共に示す斜視図である。
図16図16は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の配置の一例を示す平面図である。
図17図17は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の配置の一例を示す平面図である。
図18図18は開示の技術の検知装置に適用可能な電極の配置の一例を示す平面図である。
図19図19は第四実施形態の検知装置を、検知装置が適用されたベッドと共に示す斜視図である。
図20図20は開示の技術の検知装置における発振器、励振電極、検出電極及び検出器の構成の一例を示す説明図である。
図21図21は開示の技術の検知装置における発振器、励振電極、検出電極及び検出器の構成の一例を示す説明図である。
図22図22は開示の技術の検知装置における発振器、励振電極、検出電極及び検出器の構成の一例を示す説明図である。
図23図23は開示の技術の検知装置における発振器、励振電極、検出電極及び検出器の構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して第一実施形態の検知装置12について説明する。
【0028】
図1及び図2には、検知装置12が適用される一例としての、椅子14が示されている。
【0029】
椅子14は、脚部16、座部18及び背部20を有している。脚部16は、建物や車両の設置面に設置されると共に、座部18を支持している部分である。
【0030】
座部18は、図2に示すように、着座者SHからの荷重(体重)の一部を支持する部分である。座部18は本開示の技術の第一部材の一例である。背部20は、着座者SHが座部18に着座している場合に、着座者SHの荷重(体重)のうち、座部18に作用していない分の一部を、着座者SHの背中等を介して支持する部分である。背部20は、本開示の技術の第二部材の一例である。なお、後述するように、本開示の技術の椅子としては、肘掛や足載せ等、座部18や背部20以外の機能性部品を有していてもよく、この場合には、着座者SHからの荷重の一部は、さらに肘掛や足載せにも作用する。
【0031】
検知装置12は、発振器62、励振電極64、検出電極66及び検出器68を備えている。
【0032】
図3に示すように、発振器62は、発振部62A及び波形調整部62Bを有している。発振部62Aは、所定の周波数で交流信号SG1を発振する。交流信号SG1は、図示の例では矩形波である。波形調整部62Bでは、この交流信号SG1の波形を調整する。図示の例では、調整後の交流信号SG2の波形は正弦波であるが、矩形波や三角波であってもよい。
【0033】
本実施形態では、波形調整部62Bから出力される交流信号SG2は、発振部62Aで生成された交流信号SG1に対し、90度の位相差が付けられている。
【0034】
励振電極64は、図1及び図2に示す例では、椅子14の座部18に配置されている。そして、図3に示すように、発振器62で発振された交流信号SG2(波形調整部62Bで調整された正弦波)が、励振電極64に入力される。励振電極64からは、図1に示すように、この交流信号に起因する電磁場EMFが生成される。
【0035】
検出電極66は、図1及び図2に示す例では、椅子14の背部20に配置されている。検出電極66は、励振電極64で生成された電磁場EMFから、図3に示すように、検出信号SG3を検出する。そして、この電磁場EMFを検出電極66で検出することにより、検出電極66では検出信号SG3が生成される。
【0036】
検出器68は、信号増幅部68A、同期検波部68B及び信号処理部68Cを有している。信号増幅部68Aには、検出電極66で生成された検出信号SG3が入力される。信号増幅部68Aでは、入力された検出信号SG3を、後段の同期検波部68Bでの処理に適する電圧範囲内の矩形波に変換する。矩形波に変換された検出信号SG4は、信号入力SPとして同期検波部68Bに入力される。
【0037】
同期検波部68Bには、発振器62の発振部62Aで発振された交流信号SG1(矩形波の信号)が、基準入力RPとして入力される。本実施形態では、信号入力SPは、基準入力RPに対し90度の位相の遅れを有している。
【0038】
同期検波部68Bでは、発振部62Aから送られた基準入力RPと、信号増幅部68Aから送られた信号入力SPと、の位相差を検出する。実質的に、信号入力SPは検出信号SG3と同位相であるため、同期検波部68Bでは、検出信号SG3と交流信号SG1との位相差を検出する。そして、検波信号SG5を生成し、検波出力DPとして信号処理部68Cへ送る。
【0039】
信号処理部68Cでは、検波出力DPに対し、フィルタリング、整形及び増幅等の処理を行い、出力信号SG6を生成する。そして、出力信号SG6を検出出力FPとして、外部装置(図示省略)に出力する。外部装置では、検出出力FPから、着座者SHの姿勢が変化したか否かの判定等の各種処理を行う。
【0040】
なお、検出器68における各機能部は、たとえば回路構成によってそれぞれの機能を実現可能に構成できる。さらに、コンピュータにおいて、所定のプログラムを展開することにより、それぞれの機能を実現するように構成することも可能である。たとえば、同期検波部68Bにおいて、基準入力RPと信号入力SPと、の位相差の検出を、ソフトウェア上の処理として行ってもよい。
【0041】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0042】
本実施形態の検知装置12では、図1図3に示すように、発振器62から入力された交流信号SG1により、励振電極64から電磁場EMFが生成されている。そして、検出電極66では、電磁場EMFを検出し、検出信号SG3が生成されている。検出器68では、検出電極66で生成された検出信号SG3を検出している。この検出信号SG3は、信号増幅部68Aによって矩形波に変換され、信号入力SPとして同期検波部68Bに入力される。また、検出器68の同期検波部68Bには、発振器62の発振部62Aで生成された交流信号SG1が、基準入力RPとして入力されている。
【0043】
図1に示すように、椅子14に誰も着座していない状態では、励振電極64で生成された電磁場EMFに変化は生じず、信号入力SPの位相差も生じない。
【0044】
図2に示すように、椅子14に着座者SHがいる場合の電磁場EMFは、着座者SHが存在している状態の電磁場となる。すなわち、励振電極64で生成された電磁場EMFは、着座者SHの体内を伝搬することによって、着座者SHの姿勢変化の影響を受ける。そして、検出電極66では、励振電極64から、着座者SHを介して、又は着座者SHの影響を受けた電磁場EMFを検出する。
【0045】
ここで、着座者SHの姿勢が変化していな状態では、着座者SHによって生成される電磁場EMFには変化は生じず、着座初期の電磁場EMFが継続する。
【0046】
しかし、着座者SHの姿勢や体表面が変化した場合は、電磁場EMFが変動する。検出電極66では、変動している電磁場EMFを検出する。そして、検出器68では、この電磁場EMFの変動に応じて、電圧変化としての検波出力DPを出力する。
【0047】
図4A及び図4Bには、信号入力SPと基準入力RPと、から、検波出力DPを生成する場合の波形の一例が示されている。図4Aは、椅子14に着座者SHが着座していない場合、又は着座者SHの姿勢に変化がない場合の一例であり、図4Bは着座者SHの姿勢が変化した場合の一例である。検波出力DPは、信号入力SPと基準入力RPの積である。
【0048】
本実施形態では、基準入力RPの値は、1周期(位相360度)において、位相が0度から180度までは正の一定の値(便宜的に1としている)であり、位相が180度から360度までは負の一定の値(便宜的に-1としている)である。
【0049】
信号入力SPの波形は、着座者SHの姿勢が変化していない場合には基準入力RPと同じであり、単に位相が90度遅れている(又は270度進んでいる)。具体的には、信号入力SPは、位相が0度から90度では負の一定の値、90度から270度では正の一定の値、270度から360度では負の一定の値である。そして、検波出力DPの値は、位相が0度から90度で-1、90度から180度で1、180度から270度で-1、270度から360度で1である。
【0050】
そして、検波出力DPは、位相が0度から90度で-1、90度から180度で1、180度から270度で-1、270度から360度で1である、検波出力DPの値は、90度の位相で-1と1とを繰り返しているため、1周期を単位として平均を取ると、平均値は0(ゼロ)となる。
【0051】
これに対し、着座者SHの姿勢が変化すると、電磁場EMFも変動する。図4Bに示す信号入力SPは、これによって、信号入力SPの位相が変化した場合の一例である。具体的には、図4Aに示す信号入力SPと比較して、さらに45度だけ遅れている。
【0052】
そして、この場合の検波出力DPは、位相が0度から135度で-1、135度から180度で1、180度から315度で-1、315度から360度で1、であるため、1周期での平均値は-0.5となる。
【0053】
このようにして、生成された検波出力DPは、信号処理部68Cにおいて所定の信号処理が施され、検出出力FPとして、図示しない外部装置に送られる。検出出力FPを受けた外部装置により、実際に着座者SHの姿勢の変化を検出することが可能となる。
【0054】
このように、本実施形態の検知装置12では、着座者SH(検知対象の一例)の姿勢の変化を検知するために、着座者SHに向けて送信した電磁波の反射を利用していない。したがって、電磁波の反射を利用した場合に生じる不都合、たとえば、電磁波が着座者SHによって吸収されたり、反射状態が不安定になったりするといった影響を受けず、着座者SHの姿勢の変化をより正確に検知できる。
【0055】
また、本実施形態の検知装置12では、着座者SH(検知対象の一例)の姿勢の変化を検知するために、着座者SHから作用する体重(荷重)を利用していない。したがって、着座者SHから作用する体重の変化以外に、たとえば着座者SHが上体のみの姿勢を変化させた場合でも、この姿勢の変化をより正確に検知できる。また、たとえば、着座者SHから背部20に体重の一部を作用させていない(着座者SHが背部20と非接触である)場合であっても、着座者SHの姿勢の変化を検知できる。
【0056】
なお、上記では、基準入力RPと信号入力SPとで90度の位相差が生じた状態で、それぞれの信号が検出器68へ入力されるようにしている。但し、着座者SHの姿勢を検知するためであれば、基準入力RPと信号入力SPとにこのような位相差が予め発生されている必要はない。すなわち、基準入力RPと信号入力SPとは同位相であってもよく、また、90度と異なる位相差でもよい。位相差を90度に設定しておくと、図4Aに示したように、着座者SHの姿勢の変化がない状態での検波出力DPの平均値を0(ゼロ)に調整できる。このため、着座者SHの姿勢が変化した場合には、検波出力において、ゼロ点からのズレを見ればよいので、検知が容易である。
【0057】
また、上記では、基準入力RP及び信号入力SPの両方を矩形波として検出器68により位相差を検出している。基準入力RP及び信号入力SPの少なくとも一方が、矩形波以外の波形、たとえば正弦波や三角波である場合と比較して、振幅変化が顕著に現れるため、着座者SHの姿勢の変化の検知が容易である。
【0058】
上記では、励振電極64及び検出電極66が板状に形成されている例を挙げているが、励振電極64及び検出電極66が板状であると、たとえばブロック状である場合と比較して厚みが薄いので、椅子14の座部18及び背部20等への配置(埋め込み)が容易であり配置位置の制限が少なくなる。また、配置の容易さを確保しつつ、所定の撓み剛性を有するような厚みとすることで、不用意な変形を抑制することも可能である。
【0059】
板状の励振電極64及び検出電極66において、図5に示すように、板厚方向に貫通する複数の貫通孔72が形成された導電体製の板材70でもよい。このような形状の板材70は、パンチングメタルと称されることがある。複数の貫通孔72があることで、この板材70を励振電極64及び検出電極66として用いた場合に、貫通孔72がない形状と比較して軽量化を図ることができ、また、厚み方向の通気性も得られる。
【0060】
また、励振電極64及び検出電極66は、図6に示すようにシート状に形成された導電体製のシート材74でもよい。このようなシート材74としては、いわゆる銅薄シートや、アルミホイル等が挙げられる。さらに、図7に示すように、導電性を有する布材76であってもよく、さらには、図8に示すように、絶縁性のシート80に導電性の糸82を折り合わせた繊維材78であってもよい。シート状であることで、椅子14の座部18及び背部20等への配置の容易さを確保できる。また、板状の場合と比較して撓み剛性を低くできるので、配置場所の形状が複雑である場合であっても、この形状に合わせて励振電極64及び検出電極66を配置できる。絶縁性のシート80としては、天然繊維(綿、麻、絹等)で形成されたシートや、化学繊維で形成されたシートを用いることができる。シート80で構成された励振電極64及び検出電極66に対し、図5に示した例と同様に貫通孔を形成してもよい。
【0061】
励振電極64及び検出電極66としては、図9に示すように導電体製の複数の棒材を格子状に編み込んだ網状部材84であってもよい。網状部材84であっても所定の撓み剛性を確保できる。また複数の棒材を格子状に組んでいることで、棒材の隙間により通気性を得られる。
【0062】
さらに、励振電極64及び検出電極66としては、図10に示す導電体製の線材86、又は図11に示す導電体製の帯材88を所定の形状に折り曲げた折曲部材90であってもよい。線材86又は帯材88を所望の位置で曲げることで、励振電極64及び検出電極66の形状の自由度が高くなる。線材86又は帯材88は、湾曲及び屈曲させたり、重ねたり束ねたりすることで、所望の形状とすることが可能である。
【0063】
上記では、励振電極64及び検出電極66がそれぞれ1つ設けられた例を挙げているが、励振電極64及び検出電極66の数は限定されず、それぞれ複数であってもよい。また、励振電極64及び検出電極66を配置する位置も、上記の例に限定されず、以下の各実施形態の例を挙げることができる。
【0064】
なお、以下の各実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0065】
図12に示す第二実施形態の椅子22は、脚部16、座部18及び背部20に加えて、肘掛24、ヘッドレスト26及び足置き28等の機能性部品を有している。励振電極64は、座部18の他に、足置き28にも配置されている。検出電極66は、ヘッドレスト26及び肘掛24に配置されている。なお、図12に示す例では、励振電極64及び検出電極66は、いずれも板状あるいはシート状であるが、励振電極64及び検出電極66の形状はこれに限定されない。たとえば、図5図11に示した各種構成の部材を励振電極64及び検出電極66として用いて、任意の形状とすることが可能である。
【0066】
このように、座部18及び背部20以外の部分を有する椅子22において、座部18及び背部20以外の部分にも励振電極64及び検出電極66の少なくとも一方を配置することで、より広い範囲で着座者SHの姿勢の変化を検知することが可能となる。
【0067】
図13に示す第三実施形態の椅子28は、脚部16、座部18及び背部20に加えて、肘掛24及びヘッドレスト26を有している。検出電極66は、座部18、ヘッドレスト26及び肘掛24に配置されている。
【0068】
第三実施形態の椅子28における励振電極64は、座部18及び背部20のフレーム30を使用して構成されている。フレーム30は四角形の枠状であり、座部18及び背部20の内部において、これらの形状を維持している。さらに、第三実施形態の椅子28では、脚部16自体にも励振電極64が備えられている。脚部16を検出電極66とする場合、たとえば、脚部16が金属製であれば、脚部16をそのまま検出電極66として用いることが可能である。また、脚部16が樹脂等の非導電性材料で形成されていれば、脚部16の内部に、検出電極66として作用する導電性の部材を配置してもよい。
【0069】
このように、椅子28を構成しているフレーム30及び脚部16を励振電極64としても用いることで、あらたに励振電極を設ける必要がなくなり、部品点数を少なくできる。図13に示した例では、励振電極64としてフレーム30及び脚部16を用いているが、検出電極66としてフレーム30及び脚部16を用いてもよい。また、図13に示した例では、検出電極66は板状あるいはシート状であるが、検出電極66の形状はこれに限定されない。
【0070】
図12に示す椅子22及び図13に示す椅子28において、座部18及び背部20の少なくとも一方を、図9に示す網状部材84で構成してもよい。
【0071】
椅子28を構成するフレームとしては、例えば、図14に示す形状であってもよい。このフレーム30は、いわゆる折り畳み椅子として用いられるフレームである。この場合、フレーム30は金属製とされることが多いので、フレーム30をそのまま、励振電極64又は検出電極66として用いることが可能である。図14に示す椅子28では、フレーム30の下部(座部18よりも下側の部分)が脚部16を構成している。
【0072】
図15に示す第四実施形態の椅子32は、第一~第三実施形態の椅子14、22、28と比較して、背部20の高さが低い例である。このように、背部20の高さが低い椅子、あるいは、背部20がない椅子に対しては、たとえば、座部18に、励振電極64及び検出電極66の少なくとも一方又は両方を配置することが可能である。
【0073】
図16図18には、このように、座部18に励振電極64及び検出電極66の両方を配置する場合の、励振電極64及び検出電極66の形状の例が示されている。
【0074】
図16に示す例では、励振電極64及び検出電極66はいずれも、直線状の幹部92と、この幹部92から横方向に延出される複数本(図示の例では3本)の枝部94と、を有している。複数の枝部94の間には、枝部94の幅より広い間隙GPが構成されている。そして、励振電極64の枝部94と、検出電極66の枝部94とが、交互に間隙GPに入り込むように配置されている。
【0075】
図17に示す例では、励振電極64及び検出電極66はいずれも、平面視で長方形の板状又はシート状に形成されており、1つの励振電極64と1つの検出電極66とが並べて配置されている。
【0076】
図18に示す例では、励振電極64及び検出電極66はいずれも、平面視で長方形の板状又はシート状に形成されており、複数(図示の例では2つ)の励振電極64と複数(図示の例では2つ)の検出電極66とが並べて配置されている。特に、図18の上列ULにおける励振電極64と検出電極66の並びと、下列LLにおける励振電極64と検出電極66の並びと、は逆にされている。
【0077】
このように、座部18に励振電極64及び検出電極66を配置した構成では、着座者SHにおいて座部18に近い部分(たとえば臀部)の移動を検知する感度が高くなる。また、心拍による僅かな体表面の移動を検知することも可能となる。
【0078】
また、第四実施形態の椅子32において、励振電極64及び検出電極66の一方を座部18に配置し、他方を脚部16に配置してもよい。
【0079】
なお、図16図18に示した励振電極64及び検出電極66の配置は、座部18に限らず、背部20、ヘッドレスト26、足置き28等に適用することも可能である。
【0080】
さらに、本開示の技術において、検知装置12が適用される例は、椅子に限定されない。
【0081】
図19には、第五実施形態として、検知装置12が適用されたベッド34が示されている。ベッド34は、一例として、ベッドフレーム36と、このベッドフレーム36に支持されたマットレス38と、を有している。そして、マットレス38に、励振電極64及び検出電極66が配置されている。
【0082】
このように、ベッド34に検知装置12を適用した例では、ベッド34上で人物の姿勢が変化した場合に、この姿勢の変化を検知装置12より検知できる。
【0083】
第五実施形態において、励振電極64及び検出電極66の配置は、たとえば、図16図18に示した例を適用できる。また、励振電極64及び検出電極66の一部又は全部を、ベッドフレーム36が兼ねるように構成することも可能である。
【0084】
さらに、テーブルやデスク等の机部材に、本開示の技術の励振電極64及び検出電極66を配置してもよい。この場合、励振電極64及び検出電極66の両方を机部材に配置してもよいし、また、机部材には励振電極64及び検出電極66のいずれか一方を配置し、第一~第五実施形態として例示したような椅子に、励振電極64及び検出電極66の他方を配置してもよい。
【0085】
本開示の技術において、発振器62、励振電極64、検出器68、及び検出電極66の数は特に限定されず、たとえば、図20図23に示す各種の構成を採り得る。
【0086】
図20に示す例では、発振器62、励振電極64及び検出器68は1つであり、検出電極66が複数の例である。この場合、複数の検出電極66に共通で1つの検出器68が設けられる。
【0087】
図21に示す例では、発振器62及び励振電極64は1つであるが、検出電極66及び検出器68は複数(同数)である。この場合、複数の検出器68と複数の検出電極66とが一対一で対応している。
【0088】
図22に示す例では、発振器62及び励振電極64は複数(同数)であり、検出器68及び検出電極66も複数(同数)である。この場合、複数の発振器62と複数の励振電極64とが一対一で対応している。複数の発振器62で発振される交流信号の周波数は同一であってもよいし、異なっていてもよい。異なる交流信号を発振する場合は、たとえば、励振電極64の位置に応じて交流信号の周波数が異なるようにすることで、着座者SH(図2参照)の姿勢の変化を、より正確に検知できる。
【0089】
図23に示す例では、発振器62は1つであり、励振電極64、検出器68及び検出電極66は複数である。この場合、複数の励振電極64で共通化して1つの発振器62が設けられる。
【0090】
なお、図21図23に示す各例では、複数の検出器68を備えているため、複数の検出器68のそれぞれから、検波出力DPが外部装置に送信される。
【0091】
本開示の技術において、発振器62で発振される交流信号の周波数は、検知対象の動きを検知可能であれば制限されないが、一例として、1kHz以上100MHz以下に設定さえる。周波数の上限を100MHzとすることで、励振電極64の周囲の電磁場EMFにおいて、電磁波の波長が概ね3m以下となる。これにより、電磁波の波長が3m超である場合と比較して、検知対象を人とした場合に適した波長となる。また、周波数の下限を1kHzとすることで、1kHz未満の場合と比較して、励振電極64の周囲のノイズの影響を少なくできる。具体的には、励振電極64の周囲には、主に、(1/f)ノイズと熱ノイズと、がある。(1/f)ノイズの大きさは周波数に反比例するのに対し、熱ノイズの大きさは、周波数によらず概ね一定の値を取る。そして、周波数が1kHz未満の範囲では熱ノイズよりも(1/f)ノイズが大きいが、周波数が1kHz以上の範囲では、熱ノイズよりも(1/f)ノイズが小さくなる。すなわち、周波数を1kHz以上とすることで、(1/f)ノイズの影響を少なくすることが可能である。
【0092】
本開示の技術の技術において、検知対象は、上記の着座者、すなわち人に限定されない。たとえば、人以外の動物(ペットの他に家畜を含む)であってもよく、さらには、ロボット等の導体物(非生物)であってもよい。
【0093】
さらに、以下の付記を開示する。
【0094】
(付記1)
交流信号を出力する発振器と、
前記発振器で出力された前記交流信号が入力される励振電極と、
前記励振電極で生成された電磁場を検出する検出電極と、
前記発振器で発振された前記交流信号と、前記検出電極が前記電磁場を受けることにより生成された検出信号と、の位相差を検出する検出器と、
を有する検知装置。
(付記2)
同一又は異なる周波数の前記交流信号を生成する複数の前記発振器を備えている、付記1に記載の検知装置。
(付記3)
複数の前記励振電極を備えている付記1又は付記2に記載の検知装置。
(付記4)
複数の前記検出電極を備えている付記1~付記3のいずれか一項に記載の検知装置。
(付記5)
前記発振器の発振する前記交流信号の周波数が1kHz以上100MHz以下である付記1~付記4のいずれか一項に記載の検知装置。
(付記6)
前記検出器は、入力された前記交流信号の矩形波と、入力された前記検出信号の矩形波と、から前記位相差を検出する、付記1~付記5のいずれか一項に記載の検知装置。
(付記7)
前記励振電極及び前記検出電極は、導電体によって板状、シート状、網状又は線状に形成されている付記1~付記6のいずれか一項に記載の検知装置。
(付記8)
前記励振電極と前記検出電極の一方が配置された第一部材と、
前記励振電極と前記検出電極の他方が配置された第二部材と、
を有する付記1~付記7のいずれか一項に記載の検知装置。
(付記9)
前記第一部材が椅子の座部であり、
前記第二部材が前記椅子の背部である、付記8に記載の検知装置。
【符号の説明】
【0095】
12 検知装置
14 椅子
16 脚部
18 座部
20 背部
22 椅子
24 肘掛
26 ヘッドレスト
28 椅子
30 フレーム
32 椅子
34 ベッド
36 ベッドフレーム
38 マットレス
62 発振器
62A 発振部
62B 波形調整部
64 励振電極
66 検出電極
68 検出器
68A 信号増幅部
68B 同期検波部
68C 信号処理部
70 板材
72 貫通孔
74 シート材
76 布材
78 繊維材
80 シート
82 糸
84 網状部材
86 線材
88 帯材
90 折曲部材
92 幹部
94 枝部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23