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特開2024-101960ヒートシール剤、該ヒートシール剤を含む包材、及び該包材の作製方法、並びに、該包材から作製された包装袋、及び該包装袋の作製方法
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  • 特開-ヒートシール剤、該ヒートシール剤を含む包材、及び該包材の作製方法、並びに、該包材から作製された包装袋、及び該包装袋の作製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101960
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ヒートシール剤、該ヒートシール剤を含む包材、及び該包材の作製方法、並びに、該包材から作製された包装袋、及び該包装袋の作製方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20240723BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C09K3/10 E
B65D65/40 D
C09K3/10 D
C09K3/10 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006215
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150348
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 拓也
(72)【発明者】
【氏名】子安 亜祐里
【テーマコード(参考)】
3E086
4H017
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB52
3E086CA40
4H017AA04
4H017AB01
4H017AB03
4H017AB07
4H017AB10
4H017AC03
4H017AC13
4H017AD06
4H017AE04
(57)【要約】
【課題】密封性に優れた包装袋の包材に含まれるヒートシール剤を提供する。また、このようなヒートシール剤を含む包材、および該包材の作製方法を提供する。さらに、該包材から作製された包装袋、及び該包装袋の作製方法を提供する。
【解決手段】本発明のヒートシール剤は、ヒートシール材と発泡性粒子とを、質量比で90/10~30/70含む。また、本発明の包材は、ヒートシール剤を含むヒートシール層と、基材と、を備える。本発明の包材の作製方法は、ヒートシール剤を含むヒートシール層塗工液を調製するための調製工程と、基材に塗工する塗工工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール材及び発泡性粒子を、ヒートシール材/発泡性粒子=90/10~30/70の質量比で含む、ヒートシール剤。
【請求項2】
前記発泡性粒子の最大発泡径は、35~130μmである、請求項1に記載のヒートシール剤。
【請求項3】
前記発泡性粒子の最大発泡温度は、110~220℃である、請求項1に記載のヒートシール剤。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のヒートシール剤を含むヒートシール層と、基材と、を備える、包材。
【請求項5】
前記基材は、紙である、請求項4に記載の包材。
【請求項6】
請求項4に記載の包材の作製方法であって、
前記ヒートシール剤を含むヒートシール層塗工液を調製するための調製工程と、前記基材に前記ヒートシール層塗工液を塗工する塗工工程と、を含む、包材の作製方法。
【請求項7】
請求項4に記載の包材における前記ヒートシール剤を含む層が、熱圧着によって作製される、包装袋。
【請求項8】
請求項4に記載の包材から作製される包装袋であって、前記包材が重なり合う部分を有する、請求項7に記載の包装袋。
【請求項9】
請求項4に記載の包材から作製される包装袋であって、前記包材を熱圧着する熱圧着工程を含む、包装袋の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール剤に関する。また、ヒートシール剤を含む包材、及び包材の作製方法に関する。さらに、包材から作製された包装袋、及び包装袋の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に大きな影響を及ぼすプラスチックの使用量を低減するための取り組みが盛んに行われている。例えば、特許文献1では、アイオノマー等を含むヒートシール層用塗工液を、不透明度75%以下の紙基材の、少なくとも一方の面に所定量塗工した包材(包装用紙)が開示されている。特許文献1の構成によれば、ヒートシール層に含まれるプラスチックの使用量を低減し、良好なヒートシール性を有する包材が得られるとされている。
【0003】
図8は、特許文献1に記載の包材(包装材)と同様に、従来の包材(ヒートシール層と基材とから構成される包材)の概略断面図を模式的に示した図である。図8に示すように、包材100は、紙基材101と、ヒートシール層102と、を備える。
【0004】
例えば、図9(a)に示すような合掌袋103は、包材100をヒートシール(熱圧着)して作製されることが一般的である。包材100を用いて合掌袋103を作製すると、図9(a)に示すように、合掌袋103には背貼り部104と底貼り部105とが形成される。背貼り部104は、包材100を筒状にして、一端と他端とを貼り合わせた部分である。底貼り部105は、包材100の下端あるいは上端の開口を貼り合わせた部分である。
【0005】
背貼り部104や底貼り部105では、包材100が2枚重なっている。このため、背貼り部104及び底貼り部105における包材100どうしの密着が弱いと、合掌袋103の密封性が担保できない。とくに、背貼り部104及び底貼り部105が重なる重複部106(図9(a)において実線で囲まれた部分である)は、包材が4枚重なる部分である。重複部106について、底貼り部105の長手方向に平行な方向から見た場合の断面を模式的に示すと、図9(b)のように図示される。図9(b)に示すように、重複部106では、他の部分よりも包材100が重なっているため、隙間107(図9(b)でハッチングが密の部分である)が生じ易い。合掌袋103に隙間107が存在するということは、合掌袋103の密封性が担保されていないということである。このため、合掌袋103が破れ易い、あるいは、合掌袋103に収納した内容物が漏れ出る虞が生じる。
【0006】
上記の合掌袋103とは異なるタイプの包装袋として、図10(a)に示すガゼット袋110がある。図10(a)に示すように、合掌袋103と同様にガゼット袋110は、背貼り部111と、底貼り部112と、を有する。また、ガゼット袋110には、両側部に上端から下端にかけて折り込み部113が設けられる。なお、図10(a)に示すガゼット袋110は、全体から上記の背貼り部111、底貼り部112、折り込み部113、及び後述の重複部114の部分が図示されている。
【0007】
ガゼット袋110においても、上記の合掌袋103と同様の問題が生じ得る。すなわち、底貼り部112と折り込み部113とが重なる重複部114(図10(a)において実線で囲まれた部分である)の底貼り部112の長手方向に平行な方向の断面を模式的に示すと、図10(b)のように図示される。図10(b)に示すように、底貼り部112と折り込み部113とが重なる重複部114では包材が4枚重なっている。そして、この重なり合う部分で隙間115(図10(b)でハッチングが密の部分である)が生じ易いため、ガゼット袋110の密封性を担保できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-160165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる課題に鑑み、本発明は、密封性に優れた包装袋用の包材を作製できるヒートシール剤を提供することを目的とする。また、このようなヒートシール剤を含む包材、および該包材の作製方法を提供することを目的とする。さらに、該包材から作製された包装袋、及び該包装袋の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、ヒートシール剤に関する。この態様に係るヒートシール剤は、ヒートシール材及び発泡性粒子を、ヒートシール材/発泡性粒子=90/10~30/70の質量比で含む。
【0011】
本態様に係るヒートシール剤には、上記のような範囲の質量比でヒートシール材と発泡性粒子とが含まれる。これにより、ヒートシール剤を加熱したとき、発泡性粒子が適切に発泡して体積が増加する。これにより、本発明のヒートシール剤を含む包材から作製された包装袋は、包材の重なり合う部分で隙間の発生が抑制される。その結果、密封性に優れた包装袋となる。
【0012】
本態様に係るヒートシール剤において、発泡性粒子の最大発泡径は、35~130μmであることが好ましい。これにより、ヒートシール剤に所定の温度を与えたとき、発泡性粒子が適切に発泡し易い。よって、本発明のヒートシール剤を含む包材から作製された包装袋は、包材の重なり合う部分で隙間の発生がより抑制される。その結果、密封性に優れた包装袋となる。
【0013】
本態様に係るヒートシール剤において、発泡性粒子の最大発泡温度は、110~220℃であることが好ましい。このような発泡性粒子をヒートシール剤に含有すると、発泡性粒子は適切に発泡する。これにより、ヒートシール剤を加熱したとき、発泡性粒子がより発泡し易くなる。よって、本発明のヒートシール剤を含む包材から作製された包装袋は、包材の重なり合う部分で隙間の発生がより抑制される。その結果、密封性に優れた包装袋となる。
【0014】
本発明の第2の態様は、包材に関する。この態様に係る包材は、上記記載の何れか1つのヒートシール剤を含むヒートシール層と、基材と、を備える。本態様に係る包材によれば、上記第1の態様と同様の効果を奏する。この場合、前記基材は、紙であることが好ましい。このように、本態様に係る包材の基材は、好ましくは、プラスチックではなく紙である。よって、プラスチックの使用量を低減できる。
【0015】
本発明の第3の態様は、上記記載の何れか1つのヒートシール剤を含むヒートシール層と、基材と、を備える包材の作製方法に関する。この態様に係る包材の作製方法は、ヒートシール剤を含むヒートシール層塗工液を調製するための調製工程と、ヒートシール層塗工液を基材に塗工する塗工工程と、を含む。本態様に係る包材の作製方法によれば、上記第1および第2の態様と同様の効果を奏する。
【0016】
本発明の第4の態様は、包装袋に関する。この態様に係る包装袋は、上記記載の何れか1つのヒートシール剤を含む層と、基材と、を備える包材の、ヒートシール剤を含む層を熱圧着して得られる。本態様に係る包材によれば、上記第1~第3の態様と同様の効果を奏する。
【0017】
また、この場合、包装袋は、上記の包材が重なり合う部分を有することが好ましい。このように、本態様に係る包装袋は、包材が重なる部分を有していても、密封性に優れたものとなる。
【0018】
本発明の第5の態様は、包装袋の作製方法に関する。この態様に係る包装袋の作製方法は、上記記載の包材を熱圧着する熱圧着工程を含む。この態様に係る包装袋の作製方法により、上記第1~第4の態様と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、密封性に優れた包装袋用の包材を作製できるヒートシール剤が得られる。また、このようなヒートシール剤を含む包材、および該包材の作製方法を提供できる。さらに、該包材から作製された包装袋、及び該包装袋の作製方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る包材の構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る包装袋の作製過程を示すフローである。
図3図3(a)は、実施形態に係る包材から作製される合掌袋の斜視図である。図3(b)は、図3(a)中の実線で囲まれた部分における、底貼り部の長手方向に平行な方向から見た場合の断面を模式的に示した図である。
図4図4(a)は、実施形態に係る包材から作製される、底貼り部と折り込み部とを有するガゼット袋の斜視図である。図4(b)は、図4(a)中の実線で囲まれた部分における、底貼り部の長手方向に平行な方向から見た場合の断面を模式的に示した図である。
図5図5は、実施形態に係るヒートシール剤に含まれる発泡性粒子の温度と体積変化率との関係を示すグラフである。
図6図6(a)~(d)は、それぞれ、検証2~5に関する合掌袋(実施例)の背貼り部と底貼り部との重複部の状態を示す断面の光学顕微鏡写真である。
図7図7(a)、(b)は、それぞれ、比較例1、2に関する合掌袋の背貼り部と底貼り部との重複部の状態を示す断面の光学顕微鏡写真である。
図8図8は、従来例の包材の構成を模式的に示す断面図である。
図9図9(a)、(b)は、それぞれ、従来例の包材に関する図である。図9(a)は、従来例の包材から作製される合掌袋の斜視図である。図9(b)は、図9(a)中の実線で囲まれた部分における、底貼り部の長手方向に平行な方向から見た場合の断面を模式的に示した図である。
図10図10(a)、(b)は、それぞれ、従来例の包材に関する図である。図10(a)は、従来例の包材から作製されるガゼット袋の斜視図である。図10(b)は、図10(a)中の実線で囲まれた部分における、底貼り部の長手方向に平行な方向から見た場合の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、上記したとおり、密封性に優れた包装袋に関する。そこで、まず、図1図4(b)を用いて本発明に係る包装袋の概要を説明する。
【0022】
図1は、主に包装袋に適用される、包材1の構成を模式的に示す断面図である。図2は、包装袋の作製過程を示すフローである。図3(a)、(b)は、包装袋が合掌袋タイプである場合の、合掌袋10を説明するための図である。図3(a)は、合掌袋10の構成を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)において実線で囲まれた部分における、底貼り部12の長手方向に平行な方向から見た場合の断面を模式的に示した図である。図4(a)、(b)は、包装袋がガゼッ袋タイプである場合の、ガゼット袋20を説明するための図である。図4(a)は、ガゼット袋20の構成を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)において実線で囲まれた部分における、底貼り部22の長手方向に平行な方向から見た場合の断面を模式的に示した図である。なお、図2のフローでは、本実施形態に関する工程のみを示しており、詳細な工程は省略している。また、図4(a)に示すガゼット袋20は、全体から背貼り部21、底貼り部22、折り込み部23、及び重複部24の部分が図示されている。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る包装袋に適用される包材1は、ヒートシール層2と、基材3と、を備える。そして、図2のフローに示すように、調製工程、塗工工程、及び熱圧着工程を経て、包装袋が作製される。
【0024】
図2の調製工程は、図1に示す包材1のヒートシール層2を形成するための、ヒートシール層塗工液を調製するための工程である。具体的には、ヒートシール材と発泡性粒子とが適切な質量比となるようにヒートシール剤が調製された後、このヒートシール剤を含むヒートシール層塗工液が調製される。
【0025】
ヒートシール剤におけるヒートシール材と発泡性粒子との質量比は、本実施形態において非常に重要である。これに関しては、後で詳述する。
【0026】
塗工工程では、基材3に、調製工程で調製されたヒートシール層塗工液が塗工される。これらの工程により、包材1が得られる。
【0027】
熱圧着工程は、塗工工程で得られた包材1を用いて所望の形状の包装袋を作製するための工程である。包装袋のタイプとしては、例えば、図3(a)の合掌袋10、及び図4(a)のガゼット袋20等が挙げられる。
【0028】
図3(a)に示す合掌袋10を作製する場合、図9(a)を参照して説明したことと同様に、合掌袋10には、背貼り部11と、底貼り部12と、背貼り部11及び底貼り部12の重複部13と、が形成される。そして、これらの部分は、何れも包材1が重なっている。このため、背貼り部11や底貼り部12の包材1どうしが確実に密着していなければ、密封性に劣った包装袋となってしまう。とくに、重複部13では包材1が4枚重なっているため、従来のような図9(b)に示す隙間107が生じ易い。
【0029】
本願発明者は、包材1が重なり合う部分が熱圧着されて背貼り部11、底貼り部12、及び重複部13が形成されるとき、ヒートシール剤に含まれる発泡性粒子が発泡すれば、包材1間を発泡性粒子が満遍なく埋めていくと考えた。これにより、包材1が重なる部分において、図9(b)で示した隙間107や、図10(b)示した隙間115の発生が抑制されることを突き止めた。つまり、熱圧着によって発泡性粒子が適切に発泡することにより、図3(b)に示すように、包材1どうしが隙間の発生が抑制された形で密着する。その結果、密封性に優れた合掌袋10が得られる。
【0030】
これは、図4(a)のガゼット袋20の作製でも同様である。すなわち、図10(a)のガゼット袋110を参照して説明したことと同様に、ガゼット袋20には、背貼り部21と、底貼り部22と、折り込み部23と、底貼り部22及び折り込み部23の重複部24と、が形成される。ガゼット袋110においては、包材100の重なりによって隙間が生じると、包材100どうしの密着性が弱くなり、例えば、図10(b)に示すような隙間115が生じていた。
【0031】
しかし、上記したとおり、熱圧着によってヒートシール剤に含まれる発泡性粒子が発泡すると、図4(b)に示すように、包材1どうしが隙間の発生が抑制された形で密着し、密封性に優れたガゼット袋20が得られる。
【0032】
なお、ガゼット袋20においても、背貼り部21と底貼り部22とが重なる部分がある。この部分については、図3(a)、(b)の合掌袋10の重複部13と同様であるため、説明を省略する。本実施形態では、合掌袋10にはないガゼット袋20の特徴ある部分として重複部24に着目した。
【0033】
以下、好ましくは密封性に優れた包装袋に適用される包材1について、まず、本願発明者が着目した包材1を構成する、ヒートシール層に含まれるヒートシール剤について説明し、包材1及び包材1の作製について説明する。その後、包材1から作製された包装袋、及び包装袋の作製方法について説明する。
【0034】
<ヒートシール剤>
図1に示すように、包材1は、ヒートシール層2と、基材3と、を備える。ヒートシール層2は、ヒートシール剤を含む。ヒートシール剤は、ヒートシール材と発泡性粒子とを含む。本願発明者は、ヒートシール剤において、ヒートシール材と発泡性粒子との配合割合を適切に調整すると、包材1から作製された包装袋に隙間(図9(b)及び図10(b)を参照)の発生が抑制されることを突き止めた。
【0035】
そのようなヒートシール剤におけるヒートシール材と発泡性粒子との配合割合は、質量比で90/10~30/70である。この範囲となるようにヒートシール材と発泡性粒子との質量比を調整すれば、発泡性粒子が適切に発泡する。そして、包装袋の作製において、包材1が重なり合う部分を熱圧着すると(図2の熱圧着工程である)、ヒートシール剤に含まれる発泡性粒子が適切に発泡する。これにより、合掌袋10(包装袋)で包材1が重なっている部分において隙間の発生が抑制される(図3(a)参照)。とくに、包材1が4枚も重なっており、隙間が生じやすい重複部13においても、隙間の発生が抑制される(図3(b)参照)。これらは、図4(a)に示すガゼット袋20(包装袋)の背貼り部21や底貼り部22、重複部24においても同様である(図4(b)参照)。
【0036】
ヒートシール材に対して発泡性粒子の割合が、質量比で90/10よりも小さいと、発泡性粒子の量が少ないため、包材1が重なり合う部分を熱圧着して発泡性粒子が発泡しても、合掌袋10の包材1が重なった部分を満遍なく密にすることができない。
【0037】
一方、ヒートシール材に対して発泡性粒子の割合が、質量比で30/70よりも大きいと、発泡性粒子とヒートシール材とを混合して調製されたヒートシール層塗工液は、ゲル状になり易い。これは、発泡性粒子の量が過剰であるため、発泡性粒子が安定してヒートシール層塗工液中に分散し難くなるためだと考えられる。このように、ヒートシール材に対して発泡性粒子の割合が、質量比で30/70よりも大きい場合、ヒートシール層塗工液が不安定な状態(ゲル状)となるため、包材1自体を作製することが困難となる。
【0038】
また、発泡性粒子に熱を与えると膨張していくが、そのときの径は、発泡性粒子ごとに固有の値を有する。これは、いわゆる「最大発泡径」である。本実施形態のヒートシール層2(すなわち、ヒートシール剤を含む層)に含まれる発泡性粒子の最大発泡径は、35~130μmの範囲のものが好適である。最大発泡径が35μmより小さい場合、包材1が重なり合う部分を熱圧着したとき(図2の熱圧着工程)、発泡性粒子は発泡するが、発泡径が十分ではない場合があり、包材1間の隙間(図9(b)及び図10(b)を参照)を十分埋めることが困難となる場合がある。
【0039】
一方、最大発泡径が130μmより大きい場合、図2の熱圧着工程の際、発泡性粒子が必要以上に膨らむ場合があり、包材1どうしが適切に圧着され難く、所望の包装袋(合掌袋10及びガゼット袋20等)を作製することが困難となる場合がある。
【0040】
さらに、発泡性粒子は、上記の最大発泡径に達するときの温度(以下、本明細書では「最大発泡温度」と称する)は、110~220℃であることが好ましい。最大発泡温度がこのような範囲であるとき、発泡性粒子は最大発泡径までより適切に膨らむ。最大発泡温度が110℃より低いと、包材1が重なり合う部分を熱圧着したとき(図2の熱圧着工程)、発泡性粒子は発泡するが、最大発泡径が十分でない場合があり、包材1間の隙間(図9(b)及び図10(b)を参照)を埋めることが困難となる場合がある。
【0041】
一方、最大発泡温度が220℃より高いと、発泡性粒子は最大発泡径まで膨らむことはできるが、温度が高過ぎる場合があり、発泡性粒子が不安定な状態となる場合がある。このため、熱圧着工程(図2を参照)を行っても、包材1から包装袋を作製することが困難となる場合がある。
【0042】
ヒートシール剤に含まれる発泡性粒子は、市販品を使用することができる。例えば、本実施形態では、日本フィライト社製のEXPANCEL 031-DU40(最大発泡径がφ40μm)、EXPANCEL 909-DU80(最大発泡径がφ80μm)、EXPANCEL 930-DU120(最大発泡径がφ120μm)、EXPANCEL 551-DU40(最大発泡径がφ50μm)が用いられる。ただし、これらに限られず、適切な発泡性粒子を使用することが好ましい。なお、EXPANCEL 551-DU40は、発泡したときの平均径がφ30~50μmである。このことから、最大発泡径をφ50μmとしている。
【0043】
図5は、本実施形態において使用した日本フィライト社製の発泡性粒子の温度と体積変化率との関係を示すグラフである。図5のグラフでは、EXPANCEL 031-DU40、EXPANCEL 551-DU40、EXPANCEL 909-DU80、EXPANCEL 930-DU120の、4種類の発泡性粒子の温度と体積変化率との関係が示されている。なお、図5のグラフは、日本フィライト社から2013年1月に発行されたエクスパンセルマイクロスフィアのカタログに掲載されているものを引用した。
【0044】
ここで、各発泡性粒子が最大の体積となるときは、各発泡性粒子の体積変化率が最も大きくなるときである。そこで、図5のグラフを確認すると、上記各4つの発泡性粒子の体積変化率が最大となるときの温度は、EXPANCEL 031-DU40では約125℃であり、EXPANCEL 551-DU40では約140℃であり、EXPANCEL 909-DU80では約180℃であり、EXPANCEL 930-DU120では約200℃である。つまり、各発泡性粒子は、上記した温度に達したときに最大発泡径となる。
【0045】
上記したとおり、本実施形態における発泡性粒子は、好ましくは、最大発泡径が35~130μmであり、最大発泡温度は110~220℃である。図5のグラフを参照して説明したEXPANCEL 031-DU40、EXPANCEL 551-DU40、EXPANCEL 909-DU80、及びEXPANCEL 930-DU120の4つの発泡性粒子の最大発泡径及び最大発泡温度は、上記の好ましい数値範囲内である。このため、本実施形態において上記4つの発泡性粒子をより好ましく使用することができる。
【0046】
ヒートシール材は、ヒートシール可能なポリマーであれば特に限定されないが、オレフィン系ポリマー、酢酸ビニルエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルポリビニルアルコール、デキストリン安定化ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニルエチレン共重合体、ビニルアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、スチレンブチルゴム、ポリウレタン、およびこれらの混合物などの、任意の所望のポリマー成分が挙げられる。
【0047】
ヒートシール材と発泡性粒子との配合が調整されたヒートシール剤に、各種の添加剤を含ませもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、乾燥剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、及びワックス等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。こうして、図1に示す包材1のヒートシール層2を形成するためのヒートシール層塗工液が調製される。
【0048】
<包材、及び包材の作製>
次に、上記ヒートシール剤を含む包材1について説明する。図1を参照して説明したとおり、包材1は、ヒートシール層2と、基材3と、を備える。ヒートシール層2は、調製工程において調製した上記ヒートシール剤を用いたヒートシール層塗工液を、塗工工程において基材3に塗工して形成される。
【0049】
基材3は、例えば、上質紙、再生紙、片艶紙、耐油紙、コート紙、アート紙、クラフト紙、グラシン紙、キャスコート紙等の紙製の基材が挙げられる。
【0050】
ヒートシール層塗工液の塗工量は、作製したい包装袋の形状やサイズによって、適宜調整される。
【0051】
<包装袋、及び包装袋の作製>
上記のようにして得られた包材1から各種の包装袋が作製される。包装袋は、包材1が重なり合う部分を有するような形態である。例えば、図3(a)の合掌袋10や、図4(a)のガゼット袋20では、包材1が4枚重なり合う部分(図3(a)の重複部13、及び図4(a)の重複部24)を有する。この他、ピロー袋や底ガゼット袋、スタンド袋等が挙げられる。
【0052】
次に、包材1を用いた包装袋の作製について説明する。
【0053】
図2の調製工程及び塗工工程により包材1が作製されると、包材1が重なり合う部分の所定の箇所に対して熱圧着が行われる(熱圧着工程)。熱圧着工程では、図示されないシールバーが使用される。
【0054】
例えば、包材1から図3(a)に示す合掌袋10を作製する場合、包材1に対して、背貼り部11、底貼り部12、及び重複部13に対応する箇所にシールバーが当てられる。これらの部分は上記したとおり、包材1が重なる箇所である。これらの箇所において、シールバーからの熱により、重複する互いの包材1の好ましくはヒートシール層2が圧着する。すなわち、好ましくは、ヒートシール層2を形成するヒートシール剤どうしが圧着する。このようにして、合掌袋10(包装袋)が得られる。図4(a)に示すガゼット袋20も同様である。
【0055】
熱圧着工程における温度は、包材1のサイズや厚み、使用する発泡性粒子等に応じて、適切に設定される。
【0056】
また、熱圧着工程において、シールバーの圧力は、好ましくは0.4~0.6MPaに設定される。包材1が重なり合う部分の熱圧着は、好ましくは0.5~1.5秒行われる。なお、これらの圧力及び熱圧着の時間は、包装袋のサイズや、包材1の厚みや枚数等によって、適宜変更が可能である。
【0057】
本実施形態の包装袋は、基材が好ましくは紙基材である。この場合、従来の包装袋よりプラスチックの量が低減される。例えば、プラスチックフィルム等の軟包材はシーラン層の厚みがあるため、包材間の隙間が塞がれやすい。一方、紙基材に塗工されたヒートシール剤は軟包材に比べて厚みが薄いため、包材間の隙間を十分に埋めることができない場合がある。しかしながら、本実施形態の包装袋であれば、紙基材であっても、包材が重複する部分で隙間の発生が抑制され、密封性に優れる。そこで、本発明者らは、本実施形態の包装袋が、包材が重複する部分で隙間の発生が抑制され、密封性に優れていることを検証する試験を行った。
【実施例0058】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
[検証1]
発泡性粒子のEXPANCEL 031-DU40(日本フィライト社製)、及びヒートシール材のAQUENCE EPIX BC9220HS(ヘンケル社製)を用いて、No.1~No.9の9つのヒートシール剤を調製した。これら9つのヒートシール剤は、ヒートシール材と発泡性粒子との質量比が、No.1から順に、90/10、80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80、10/90となるようにそれぞれ調整し、ヒートシール剤を調製した。そして、上記実施形態で説明したとおり、各ヒートシール剤を含むヒートシール層塗工液を調製した。
【0060】
No.8とNo.9のヒートシール剤(比較例)は、ヒートシール層塗工液の作製中、ゲル状に変化したため、ヒートシール層塗工液の調製を中止した。このため、下記の作業は、No.1~No.7のヒートシール剤(実施例)に対して行った。
【0061】
次に、これらのヒートシール層塗工液(No.1~No.7のヒートシール剤を用いて調製されたヒートシール層塗工液である)を用いて包材を作製した。この包材の作製では、上記実施形態で説明した包材の作製と同様に行った。すなわち、ヒートシール層塗工液を基材である未晒しクラフト紙(秤量60g/m)に塗工した。ヒートシール層塗工液の塗工量は、乾燥状態で5g/mであった。なお、ヒートシール層塗工液の塗工量は、乾燥状態で5g/mであったことから、作製された包材のヒートシール層の厚みは、5μmであった。
【0062】
検証1では、No.1のヒートシール剤を用いて調製したヒートシール層塗工液を未晒しクラフト紙に塗工して包材を作製したが、この作業を4回繰り返して、4つの包材を作製した。そして、各包材に対してそれぞれ異なる温度下で、上記実施形態で説明した熱圧着工程を行い、合掌袋を作製した。このときの温度は、150℃、160℃、170℃、180℃であった。何れの温度下でも、圧力は、0.5MPaに設定し、熱圧着の時間(すなわち、ヒートシールバーを包材に当てる時間)は、1秒であった。このようにして、No.1のヒートシール剤を用いて4つの合掌袋を作製した。No.1と同様に、No.2~No.7のヒートシール剤について、それぞれ4つの合掌袋を作製した。
【0063】
次に、No.1~No.7のヒートシール剤を用いて作製された合掌袋の包材が重なっている部分である背貼り部(図3(a)参照)を、器具(オリエンテック社製 テンシロン万能材料試験機RTC-1210A)を用いて引っ張り、背貼り部が剥離するときの強度を測定した。また、そのときの背貼り部の状態を目視で観察した。
【0064】
[検証2]
検証2では、検証1と同様の発泡性粒子及びヒートシール材を用いて、No.10~No.18の9つのヒートシール剤を調製し、ヒートシール層塗工液を調製した。検証2も検証1と同様に、ヒートシール材と発泡性粒子との質量比が、20/80、10/90となるようにそれぞれ調整したNo.17、No.18のヒートシール剤(比較例)は、ヒートシール層塗工液の作製中、ゲル状に変化したため、ヒートシール層塗工液の調製を中止した。このため、これ以降の作業は、No.10~No.16のヒートシール剤(実施例)に対して行った。
【0065】
検証2も検証1と同様に、No.10~No.16のヒートシール剤を用いて、それぞれ4つの合掌袋を作製した。ただし、検証2では、未晒しクラフト紙のヒートシール層塗工液の塗工量は、乾燥状態で10g/mであった。なお、検証2では、5g/mのヒートシール層を2回塗工することで、乾燥状態で10g/mとした。作製された包材のヒートシール層の厚みは、10μmであった。
【0066】
次に、No.10~No.16のヒートシール剤を用いて作製され合掌袋の包材が重なっている部分である背貼り部(図3(a)参照)を、器具(オリエンテック社製 テンシロン万能材料試験機RTC-1210A)を用いて引っ張り、背貼り部が剥離するときの強度を測定した。また、そのときの背貼り部の状態を目視で観察した。
【0067】
検証1及び検証2の結果を表1に示す。表1において、項目「剥離形態」とは、上記の器具で合掌袋の背貼り部を引っ張ったときの、背貼り部の状態を指す。「剥離形態」の「界面」とは、「界面剥離」を意味する。これは、上記実施形態で説明したとおり、背貼り部では包材が2枚重なっており、この2枚の包材がヒートシール層を境に剥離していく場合を意味する。つまり、包材が互いに分離するように剥離しているため、検証者が剥離した部分を目視で観察したときに、「きれいに剥離している」と判断した場合に「界面」とした。
【0068】
「材破」とは、「基材破壊」を意味する。これは、上記の「界面」とは異なり、背貼り部における2枚の包材がきれいに分離せず、基材が破れた状態である。つまり、検証者が剥離された部分を目視で観察したときに、「きれいに剥離している」とは判断できない場合に「材破」とした。
【0069】
なお、検証1では、No.8とNo.9、検証2では、No.17とNo.18は、ヒートシール層塗工液を調製することができなかったため、表1では、No.1~No.7、及びNo.10~No.16の結果のみ示している。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、検証1におけるNo.1~No.7のヒートシール剤を用いて、150℃~170℃下で熱圧着工程を行って作製した合掌袋の背貼り部は、剥離形態が全て「材破」であった。とくに、150℃及び160℃に設定して熱圧着工程を行って作製した合掌袋では、背貼り部を剥離(「材破」)できたときの強度が3.48~5.10N/15mmと大きかった。これは、上記の合掌袋では、背貼り部に、3.48~5.10N/15mm程度の大きな強度を加えなければ、剥離することができないということである。
【0072】
また、検証2におけるNo.10~No.16のヒートシール剤を用いて、150℃~170℃下で熱圧着工程を行って作製した合掌袋の背貼り部は、剥離形態が全て「材破」であった。とくに、150℃及び160℃に設定して熱圧着工程を行って作製した合掌袋では、背貼り部を剥離(「材破」)できたときの強度が3.84~5.64N/15mmと大きかった。これは、上記の合掌袋では、背貼り部に、3.84~5.64N/15mm程度の大きな強度を加えなければ、剥離することができないということである。
【0073】
検証1において、170℃下で熱圧着工程を行って作製した合掌袋では、背貼り部を剥離(「材破」)できたときの強度が2.21~4.20N/15mmであった。検証2においては、強度が2.88~5.19N/15mmであった。これらの結果は、150℃及び160℃に比べて、強度は若干小さかったものの、剥離形態は「材破」であり、強く圧着されていた。
【0074】
図6(a)には、No.11の、ヒートシール材と発泡性粒子とを質量比で80/20に調整したヒートシール剤を用いて、170℃下で包材が重なり合う部分に対して熱圧着を行い、合掌袋を作製したときの、背貼り部と底貼り部とが重なる重複部の拡大写真が示されている。図6(a)では、とくに、黒丸で囲まれた部分において、包材の間が埋まっており、隙間が確認できなかった。なお、図6(a)は、光学顕微鏡(キーエンス社製 形状解析レーザー顕微鏡 VK-X1000)で観察したものであり、図6(a)の写真は500倍に拡大したものである。
【0075】
このように、検証1のNo.1~No.7、及び検証2のNo.10~No.16のヒートシール剤を用いて、150℃~170℃下で熱圧着工程を行って作製した合掌袋は、背貼り部、及び背貼り部と同様に包材が重なっている底貼り部、さらには背貼り部と底貼り部とが重なる重複部では、とくに強く熱圧着されていることが分かった。これは、発泡性粒子が適切に発泡して、包材間の隙間を効果的に埋めたためである。
【0076】
一方、検証1のNo.1~No.7、及び検証2のNo.10~No.16のヒートシール剤を用いて、180℃下で包材が重なり合う部分に対して熱圧着を行い、作製した合掌袋の背貼り部は、剥離形態が「材破」の場合と、「界面」の場合とがあった。
【0077】
より詳細には、検証1では、強度が2.22N/15mmで「材破」となった場合(No.3)がある一方で、2.22N/15mmよりも大きい2.47N/15mmの強度(No.7)で「界面」になるという結果であった。検証1で使用した発泡性粒子のEXPANCEL 031-DU40は、最大発泡温度が約120℃であり、熱圧着工程を行ったときの180℃とは60℃程度の差があり、熱圧着工程を150℃~170℃に設定した場合に比べると、若干、熱圧着工程の設定温度が高い。このため、No.1~No.3のような、少量の発泡性粒子を含むヒートシール剤を用いて作製された包装袋の場合は、発泡性粒子が最大径まで発泡しても上記で説明したような包材間の隙間を適切に埋めていき、合掌袋の密封性が向上すると推察される。これに対し、No.4~No.7のように、発泡性粒子の割合を増やすと、発泡性粒子が過剰であることから、発泡性粒子が発泡することでヒートシール強度が得らにくく、剥離形態が「界面」になったと推察される。
【0078】
また、検証2では、No.14のヒートシール剤を用いて170℃下で包装袋を作製した場合、強度が2.88N/15mmで「材破」であった。しかし、No.11のヒートシール剤を用いて180℃下で包装袋を作製した場合、強度が2.80N/15mmで「界面」であった。両者の強度は大きくは変わらないにも関わらず、剥離形態の結果が異なっていた。
【0079】
剥離形態については、上記した検証1の場合と同様に、ヒートシール剤における配合割合が関係しており、さらに、熱圧着工程での温度や発泡性粒子の最大発泡温度にも影響されると推測される。
【0080】
しかしながら、180℃下で熱圧着工程を行ったとしても、検証1ではNo.1~No.3、検証2ではNo.10のような、少量の発泡性粒子を含むヒートシール剤を用いれば、剥離強度が高くなり、密封性に優れた合掌袋を作製できる。したがって、発泡性粒子の割合や熱圧着工程での設定温度を考慮すれば、剥離強度の高い、密封性に優れた合掌袋を作製できることが分かった。
【0081】
[検証3]
検証1及び検証2では、包装袋である合掌袋を作製するときの熱圧着工程は、150℃~180℃に設定されていた。そして、表1及び図6(a)に示すように、ヒートシール剤におけるヒートシール材と発泡性粒子との質量比を適切に調整すれば、密封性に優れた合掌袋を作製できた。
【0082】
検証3では、検証1及び検証2より高温の190℃下で熱圧着工程を行って作製された包装袋について、密封性を検証した。
【0083】
検証3におけるヒートシール剤(これをNo.19とする)の調製では、検証1と同様のヒートシール材及び発泡性粒子を用いて、ヒートシール材と発泡性粒子との質量比を90/10に調整した。そして、包装袋の作製の際の熱圧着工程における温度を190℃に設定したこと以外は、検証1と同様であった。ただし、検証3では、No.19のヒートシール剤を用いた包材は、1つだけ作製した(実施例)。
【0084】
図6(b)は、No.17のヒートシール剤を用いて作製された合掌袋の背貼り部と底貼り部とが重なる重複部(図3(b)参照)を光学顕微鏡(キーエンス社製 形状解析レーザー顕微鏡 VK-X1000)で観察したものであり、図6(b)の写真は500倍に拡大したものである。図6(b)では、とくに、黒丸で囲まれた部分において、包材の間が埋まっており、隙間の発生が抑制されたことが確認できた。
【0085】
[比較例1]
検証3に対し、発泡性粒子を含まず、ヒートシール材のみを含むヒートシール剤(これを比較例1とする)を用いたこと以外は、検証3と同様にして合掌袋を作製した。
【0086】
図7(a)は、比較例1のヒートシール剤を用いて作製された合掌袋の背貼り部と底貼り部とが重なる重複部(図9(b)参照)を光学顕微鏡(キーエンス社製 形状解析レーザー顕微鏡 VK-X1000)で観察したものであり、図7(a)の写真は500倍に拡大したものである。図7(a)では、とくに、黒丸で囲まれた部分において、包材の間に隙間が確認された。
【0087】
検証3及び比較例1の結果から、190℃下で熱圧着工程を行っても、ヒートシール材と発泡性粒子との割合を適切に調整してヒートシール剤を調製したうえで作製された包装袋は、密封性に優れることが分かった。
【0088】
[検証4]
検証4では、検証3に比べて、さらに高温下で熱圧着工程を行って作製された包装袋について、密封性を検証した。
【0089】
検証4では、発泡性粒子のEXPANCEL 909-DU80(日本フィライト社製)、及びヒートシール剤のAQUENCE EPIX BC9220HS(ヘンケル社製)を用いてヒートシール剤(これをNo.20とする)を調製した。No.20のヒートシール剤は、ヒートシール材と発泡性粒子との質量比を90/10に調整した。そして、包装袋の作製の際の熱圧着工程における温度を250℃に設定したこと以外は、検証1と同様であった。ただし、検証4では、No.18のヒートシール剤を用いた包材は、1つだけ作製した(実施例)。
【0090】
図6(c)は、No.20のヒートシール剤を用いて作製された合掌袋の背貼り部と底貼り部とが重なる重複部(図3(b)参照)を光学顕微鏡(キーエンス社製 形状解析レーザー顕微鏡 VK-X1000)で観察したものであり、図6(c)の写真は500倍に拡大したものである。
【0091】
図6(c)では、とくに、黒丸で囲まれた部分において、包材の間が埋まっており、隙間の発生が抑制されたことが確認できた。
【0092】
[検証5]
検証5では、No.20のヒートシール剤において、発泡性粒子をEXPANCEL 930-DU120(日本フィライト社製)に変更してヒートシール剤(これをNo.21とする)を調製した。No.21のヒートシール剤は、ヒートシール材と発泡性粒子との質量比を90/10に調整した。そして、包装袋の作製の際の熱圧着工程における温度を250℃に設定したこと以外は、検証4と同様であった。検証5では、検証3及び検証4と同様に、ヒートシール剤を用いた包材は、1つだけ作製した(実施例)。
【0093】
図6(d)は、No.21のヒートシール剤を用いて作製された合掌袋の背貼り部と底貼り部とが重なる重複部(図3(b)参照)を光学顕微鏡(キーエンス社製 形状解析レーザー顕微鏡 VK-X1000)で観察したものであり、図6(d)の写真は500倍に拡大したものである。
【0094】
図6(d)では、とくに、黒丸で囲まれた部分において、包材の間が埋まっており、隙間の発生が抑制されたことが確認できた。
【0095】
[比較例2]
検証5に対して、発泡性粒子を含まず、ヒートシール材のみを含むヒートシール剤(これを比較例2とする)を用いたこと以外は、検証5と同様にして、合掌袋を作製した。
【0096】
図7(b)は、比較例2のヒートシール剤を用いて作製された合掌袋の背貼り部と底貼り部とが重なる重複部(図9(b)参照)を光学顕微鏡(キーエンス社製 形状解析レーザー顕微鏡 VK-X1000)で観察したものであり、図7(b)の写真は500倍に拡大したものである。
【0097】
図7(b)では、とくに、黒丸で囲まれた部分において、包材の間に隙間が確認された。
【0098】
したがって、250℃という高温下で熱圧着工程を行っても、ヒートシール材と発泡性粒子との割合を適切に調整してヒートシール剤を調製したうえで作製された包装袋は、密封性に優れることが分かった。
【0099】
このように、本実施形態のヒートシール剤を用いて作製された包装袋は、包材が複数重なる重複部においても、隙間の発生が抑制され、密封性に優れる。
【符号の説明】
【0100】
1 包材
2 ヒートシール層
3 基材
10 合掌袋(包装袋)
20 ガゼット袋(包装袋)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10