(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101971
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ヘルメットの遮熱構造及びインナーキャップ
(51)【国際特許分類】
A42B 3/10 20060101AFI20240723BHJP
A42B 3/28 20060101ALI20240723BHJP
A42B 1/008 20210101ALI20240723BHJP
A42B 1/04 20210101ALI20240723BHJP
A42B 1/009 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
A42B3/10
A42B3/28
A42B1/008 K
A42B1/04 B
A42B1/009
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023016439
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】512043360
【氏名又は名称】日本遮熱株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】野口 和恵
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107CA03
3B107DA02
3B107DA21
3B107EA01
3B107EA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱中症になりにくくしかも頭部が蒸れにくいヘルメットの遮熱構造及びインナーキャップを提供する。
【解決手段】ヘルメット帽体1とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3、通気層4、インナーキャップ5でなるヘルメットで、ヘルメット帽体内側に遮熱材を施工、更に内部にインナーキャップを取付け、両者の間に通気層4を設けて外部から出入りする空気でヘルメット全体を冷却する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット帽体の内側に設けられるインナーキャップであって、
熱の吸収材で構成され、頂部付近に、内側と外側とを貫通する複数の通気口が設けられたインナーキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のインナーキャップと、このインナーキャップが内側に設けられる前記ヘルメット帽体とを有するヘルメット構造であって、
前記ヘルメット帽体と前記インナーキャップの間にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を備え、
前記アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の片側又は両側に通気層が形成され、
前記ヘルメット帽体の内側部と前記インナーキャップの周縁部との間から空気が前記通気層に流入又は流出可能なヘルメットの遮熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帽体とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材、通気層、インナーキャップでなるヘルメットで、ヘルメットに照射される輻射熱を遮熱材で阻止、更に帽体内を通気する事により熱中症になりにくく、しかも頭部が蒸れにくいヘルメットの遮熱構造及びインナーキャップを提供する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメット帽体内部に、遮熱材を直貼りする方法がある。
【0003】
頭から首に至るまで頭部をスッポリ覆い、首の側方に保冷材を入れ頸動脈を冷やすものがある。
【特許文献1】実登3213610号公報
【特許文献2】特開2021-88782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとしている課題】
【0004】
その為次のような問題があった。
ヘルメット帽体内部に遮熱材を直貼りする方法がある。
この方法は、遮熱材の低放射性能を利用したもので、貼ると帽体内表面温度が大幅に低下する。例えば、室温25℃の部屋で熱試験をした場合、帽体の温度が70℃になっても帽体内表面温度は室温プラスの28℃程度しかならず非常に効果的と考えられる。
しかしながら、ヘルメットは太陽からの輻射熱ともう一つ頭部から放射される輻射熱という二つの目の熱源がある。帽体内の表面温度が低下すると、熱は高温から低温側に移動の原則に則り今度は頭部から帽体に向かって大量の輻射熱が放射、この熱が遮熱材に反射され結果的には自分の頭に戻ってくる。従って、自分の熱で自分を暑くし蒸れると言う問題がある。
【0005】
頭から首に至るまで頭部をスッポリ覆い、首の側方に保冷材を入れ頸動脈を冷やすものがある。
頸動脈を冷やせば一時的に涼しさを感じる事は知られている。しかし、涼しさは長時間継続する訳ではないので、屋外で長時間作業をする作業者にとって随時交換する必要があり取り扱いが面倒である。
更に、この本体は頭部にスッポリ被せる帽子であり、通気性が良いからと言って涼しさを醸し出す事は困難である。何故なら、通気は圧力差が無いと空気の移動が行われないので、繊維製でも頭部が相当熱をもたないと効果を発揮する事はできない。逆に、効果を発揮できる時は、頭部が蒸れているという事になる。
本発明は、これらの問題を解決する為になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインナーキャップは、ヘルメット帽体の内側に設けられるものであって、熱の吸収材で構成され、頂部付近に、内側と外側とを貫通する複数の通気口が設けられたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、上記のインナーキャップと、ヘルメット帽体とを有し、ヘルメット帽体とインナーキャップの間にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を備え、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の片側又は両側に通気層が形成され、ヘルメット帽体の内側部とインナーキャップの周縁部との間から空気が通気層に流入又は流出可能であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るヘルメットの断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るインナーキャップの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明する。
工事現場等で使用されるヘルメットは、主として飛来物や落下物或いは転倒等から頭部を守る役割、即ち頭部の安全対策を目的に使用されている。
しかしながら、地球温暖化による気温上昇で現場作業者にとって熱中症という新たな問題が発生している。従って、ヘルメットには強度ともう一つ熱対策をする事が重要である。
本発明は、この様なもう一つの安全対策に特化したヘルメットを提供するものである。
【0010】
本発明は、インナーキャップ5と、ヘルメット帽体1とを有し、ヘルメット帽体1とインナーキャップ5の間にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を備え、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の片側又は両側に通気層4が形成され、ヘルメット帽体1の内側部とインナーキャップの周縁部6との間から空気が通気層4に流入又は流出可能であるヘルメットの遮熱構造である。
【0011】
ヘルメットの暑さに最も影響するのは太陽からの輻射熱で、これを阻止するにはアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3が最も有効で、本発明では帽体1の内側に取付けられている。
更に、ヘルメットには第二の熱源である頭部がある。本発明では、この二つの熱源から放射される輻射熱を、ヘルメット帽体1内部にインナーキャップ5を設ける事により分離して阻止する構造としている。
又、ヘルメット帽体1とインナーキャップ5の間には空間を設けて通気層4を形成、この間に蓄熱した熱をヘルメット帽体1の内側部とインナーキャップの周縁部6との空間から空気を取り込み屋外に排出するものである。移動速度が速くなると、顔に当たった空気はこの通気層4を通って後部から排出される。又、風が吹くとその方向のインナーキャップの周縁部6から空気が侵入、通気層4を経由して反対側に流れ排出される。この様に、僅かな風を捉えて又熱の移動を利用し、通気層4内は絶えず無方向に空気の移動がおこり、高温の熱を排出する構造になっている。
【0012】
本発明の五つのポイントを説明する。
第一のポイントは、ヘルメットへの熱影響で最も大きいのは太陽からの輻射熱や建物の屋根壁からの輻射熱で、これを阻止する為にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を使用していることである。
ヘルメットに照射された輻射熱は、ヘルメット帽体1外側表面で一部反射されるが、大半はヘルメット帽体1に吸収され熱となり伝導熱の形態をとって頭部側に熱移動する。この輻射熱は、ヘルメット帽体1内側表面から二次輻射熱として頭部に照射されるが、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3はこれを阻止する目的で使用されている。
【0013】
第二のポイントは、ヘルメット帽体1側からの輻射熱と頭部から放射される輻射熱を阻止する為、両者の間にインナーキャップ5を設ける事である。熱は、高温側から低温側に移動すると言う法則があり、二つの熱源を一緒に処理する事は極めて難しい。例えば、ヘルメット帽体1側の輻射熱を阻止しアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の放射側の温度を低下させると、今度はその分だけ頭部側からの放射量が増加し、結果的にはアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の表面で反射され、再び頭部に戻ってくることになるのである。
そこで、本発明ではこの両者の熱を分離して処理、屋外に排出する目的でインナーキャップ5を設けている。従って、インナーキャップ5は椀型をしていてヘルメット帽体1の内部に設けられるが、樹脂シートや布等の帽子の様な物だけでなく、発泡スチロール製の衝撃ライナー等を改良し、ヘルメット帽体1との間に通気層4を設けたものでも問題はない。
【0014】
第三のポイントは、前述のヘルメット帽体1内側とインナーキャップ5の間に設けられた空間を通気層4として利用することである。
インナーキャップ5は、ヘルメット帽体1と粗同形状でヘルメット帽体1より若干小さめに出来ていて、両者の間には粗均一な間隔の空間が出来る事が好ましい。しかし、ヘルメットは、種々の形状があり前述の様にヘルメット帽体1と粗同形状のインナーキャップ5にする事が出来ない場合や、ヘルメット帽体1内側とハンモックとの間が狭くて取り付けが困難な場合がある。このような場合、インナーキャップ5をハンモックの外側から被せる様に取付け、ヘッドバンド等に固定する方法もある。重要なのは、通気層4が確実に取れる事を優先すべきである。
通気層4は、通気を妨げるものがない事や空気抵抗を少なくするため均一な厚みであることが最も好ましい。一般的には、5~20ミリメートル位の均一な通気層4が好ましい。余り通気層4の間隔が大きいと乱流が発生、通気層4内の熱や湿気を排出する効率が悪くなる可能性がある。
もう一つは、ヘルメット帽体1内側とインナーキャップの周縁部6との間から自由に空気は出入りできる様、このインナーキャップの周縁部6も極力障害が無い事が好ましい。
この様にして、通気層4全体の障害を少なくする事により、僅かな空気の流れや温度変化も捉え、通気層4内では空気の移動が常時無方向に発生、ヘルメット帽体1内部は常に冷却されることになる。
尚、インナーキャップの周縁部6の強度等を目的にインナーキャップの周縁部6にインナーキャップ5と直角方向にツバを設け、このツバに空気の出入りする吸排気口を設ける事もあるが特に問題はない。但し、吸排気口は全周に極力多くの開口面積が出来る事が好ましい。
【0015】
第四のポイントは、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の位置は、ヘルメット帽体1とインナーキャップ5の間に取り付ける。
アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3は、反射率プラス放射率が100パーセントとあらわされる。つまり、高反射率であり低放射率の素材でもあるから、どちらの性能を利用するかでその施工位置で決まってくる。
【0016】
先ず、インナーキャップ5の外側にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を取り付ければ、高反率の性能を利用できる。しかし、この方法だとヘルメット帽体1の表面温度は高く、ヘルメット帽体1表面から頭部側に大量の輻射熱が放射されることになる。勿論、インナーキャップ5の外側のアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3でこの大半の輻射熱を反射するが、この輻射熱は再びヘルメット帽体1に照射されヘルメット帽体1は加熱され更に高温となる。その結果、ヘルメット帽体1内側とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3との間に多くの熱が発生滞留する可能性がある。
ヘルメットは椀型であり、しかもインナーキャップ5はヘルメット帽体1の内側に取り付けられるので、熱は徐々に通気層4内全体に滞留する事になる。インナーキャップ5は、ヘルメット帽体1の周縁部より上部にインナーキャップの周縁部6があるため、通気層4内に滞留した熱はこのインナーキャップの周縁部6を介して頭部のある内側に流れ込む。その結果、頭部はこの熱で温められ蒸れ発生の原因となる可能性がある。
【0017】
ヘルメット帽体1とインナーキャップ5の間に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を取り付ける方法もある。この場合、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の両面に通気層4が出来、高反射及び低放射この両者の性能を利用でき最高の遮熱効果を発揮できる。ただこの場合、通気層4はアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の両面の2カ所になり、その空間のスペース7が必要になる事、又前述同様インナーキャップ5はヘルメット帽体1の周縁部より上部にインナーキャップの周縁部6があるため、通気層4内に滞留した熱はこのインナーキャップの周縁部6を介して頭部のある内側に流れ込む。結果、蒸れの要因となる可能性がある。
更に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3自体が剛性を持ったもので作製する必要があり、費用の問題も起こりうる。
【0018】
本発明で最も推奨する方法は、ヘルメット帽体1の内側にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を取り付けて、低放射性能を利用する方法である。
この構造を利用すると、屋外からの輻射熱を阻止出来るのでアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の表面温度が非常に低下させることが出来る。例えば、反射率95パーセントのアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を使用すれば、放射量は僅か5パーセントとなり頭部側に放射される熱量を極端に少なくする事が出来るのである。
しかしながら、この方法であればヘルメット帽体1内に熱が滞留しないように思えるが大きな落とし穴がある。
ヘルメットにはもう一つの熱源である頭部がある。熱は高い方から低い方に移動の原則に則り、今度は頭部からの輻射熱がヘルメット帽体1内側に取り付けられたアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3に向かって放射され、この表面で反射され再び頭部に戻ってくることになる。結果的には、自分の熱で自分が温められる事となりムレが発生、この方法だけでは使用する事は難しいのである。
そこで本発明では、ヘルメット帽体1と頭部との二つの熱源の間にインナーキャップ5を設ける事により相互の熱影響を極端に少なくする構造とした。
これによって、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の放射側の環境はすこぶる良好で、放射量の増加を阻止する事が出来ているのである。
即ち、ヘルメット帽体1の内側にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を取り付けただけでは使用は難しいが、通気層4、インナーキャップ5の設置でヘルメット帽体1側の性能を格段に向上させることができるのである。
この様に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の位置は種々選択できるが、ヘルメット帽体1内に最も熱を持ち込まないのは、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を帽体1内側表面に取りつけることである。持ち込む熱量が少ないという事は、通気量が少なくてもアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の放射側は常に冷却され、低放射性能が維持されるという事である。
【0019】
第五のポイントは、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の下端部はインナーキャップの周縁部6の高さより上又は同等にしておくことである。前述の通り、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3と顔の間にインナーキャップ5が無いと、顔から放射される輻射熱が再び反射戻され熱くなるからである。
【0020】
本発明は、ヘルメット帽体1の内側に設けられ、熱の吸収材で構成され、頂部付近に、内側と外側とを貫通する複数の通気口2が設けられたインナーキャップ5を提案する。
【0021】
前述の通り、太陽側からの輻射熱は処理する事が出来る事が解った。次は、頭部からの輻射熱である。
頭部からも、インナーキャップ側に輻射熱が放射されるが、こちら側にはアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3はないので、この熱は熱の吸収材で作製されたインナーキャップ5で大半は吸収され、周囲の空気に伝導熱や対流熱の形態で伝達される。
しかし、この熱も何もしないと頭部周囲に滞留する事になり蒸れの要因になる。
インナーキャップ5には、頂部付近に通気層4側と頭部側とを貫通する複数の通気口2が設けられていて、頭部周囲の空気の温度が上昇すると熱膨張して体積が増し、この通気口2から排出されるのである。
更に、インナーキャップ5の外側の通気層4の空気は、ヘルメット帽体1とインナーキャップの周縁部6の間から流れ込み、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の放射側である円周に沿って流れる事になる。すると、通気層4の内側で有るインナーキャップ5側の圧力は負圧となり、インナーキャップ5内側の空気を引っ張る事になる。その結果、頭部周囲の湿気や熱が通気口2を経由し屋外に排出されるのである。
【0022】
蒸れのないヘルメットとするためには、五つの条件がある。
第一は、ヘルメット帽体1内に侵入する熱を最小限にする事である。
その為には、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3が有効で、特に低放射性能を利用する事が好ましい。ただ、低放射性能を継続的に保つには、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の放射側を常に冷却する必要がある。
第二は、頭部周辺の空気の温度が低いことである。インナーキャップ5の外側には通気層4がありインナーキャップ5が絶えず冷却されている。
第三は、インナーキャップ5は熱の吸収素材を使用することである。万一、高速で活動すると頭部が熱を持ち輻射熱が放射されるが、この輻射熱を極力吸収させ、反射の形態をとって再び頭部に戻らないようにすることである。
第四は、万一頭部に熱がたまったら、この熱や湿気が通気層4を介して屋外に排出させることである。このため、インナーキャップ5の頂部には、頭部側と通気層4側とを貫通する通気口2が複数個設けてある。インナーキャップ5の内側が熱を持つと空気が熱膨張し、通気口2から低温の通気層4に流出し屋外へと排出されるのである。
第五は、通気層4内の空気は、ヘルメット帽体1内部の円周に沿って流れるためインナーキャップ5側の通気層4側表面の圧力はマイナスになりやすい。すると、頭部側は頭部の熱で常時プラス圧なので、頭部付近に滞留する熱は通気層4側に引っ張られ、通気口2を経由して屋外に排出されることになる。頭部のムレを無くすには、頭部に空気を供給する事ではなく、掃除機の様に吸引する事が最も良い方法である。
【0023】
アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3は、主としてアルミホイルを使用していて反射率98%以上のものである。ただ、ヘルメットは汗をかいたり或いは海の近くで使用したりすると腐食する可能性が高く、耐酸や耐アルカリ性のものが好ましい。その為、本発明ではアルミホイルの表面に輻射熱に対して高透過樹脂層を施している。これによって、反射率は95パーセント程度になるが、それでも性能としては十分である。
本発明では、不織布にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を熱溶着した遮熱材を、不織布がヘルメット帽体1内側になる様に接着している。勿論、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3が両面にあるものでも問題はない。
アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3はアルミの純度が重要で、一般的には99パーセント以上のものが使用される。本発明では、純度99.5パーセント以上のものを使っている。
アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3は、アルミホイルを使用することがほとんどで、厚みは5ミクロンから10ミクロン程度のものが一般的である。特に、厚みに拘るものではない。
【0024】
インナーキャップ5は、頂部付近に頭部と通気層4とを貫通する複数個の通気口2が設けられている。この通気口2は、頭部の熱や湿気が通気層4を介して屋外に排出するためのものである。直径は5ミリメートルくらいで、頂部を中心に10個程度空いていればよい。勿論、インナーキャップ5の頂部付近に網状の素材を使用する事でも問題はない。
インナーキャップ5の素材は、熱を吸収しやすいものが好ましい。ただ、頭部付近に使用するので吸湿性のないものが好ましい。単層構造でも複層構造でも全く問題はない。
厚みは、1~5ミリメートル位で良く、強度を高める為や他の部材との干渉を防止する事もあるので均一な厚みで有る必要はない。但し、空気の流れる外側面は極力凹凸のない事が望ましい。
インナーキャップ5外側のインナーキャップの周縁部6や頂部に、スペーサー7を取り付ける事も可能である。スペーサー7は、スポンジ系の素材が好ましく、ヘルメット帽体1とインナーキャップ5との間の空間が多少違っても密着する事が出来る。又、形状は、例えば直径10ミリメートルの円柱型、高さは通気層4の厚みとすれば良い。円柱型で有れば、通気層4に出入する空気の抵抗を少なくする事が出来る。更に、円柱形の両側に両面テープ等で簡単に固定も出来る。
【0025】
ヘルメット帽体1の内側に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3を取り付けた熱のメカニズムを説明する。
ヘルメットに加わる最も大きい熱量である太陽からの輻射熱は、一部はヘルメット帽体1表面で反射され大半はヘルメット帽体1に吸収される。この熱は、伝導熱の形態をとってヘルメット帽体1内面に移動する。ヘルメット帽体1内面には、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3が取り付けられているので、伝導熱の大半は再びヘルメット帽体1内を屋外側に向かって移動し、ヘルメット帽体1表面から大気に放出される。
一方、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の表面から放射される輻射熱は極わずかで、インナーキャップ5に放射され概ね伝導熱や対流熱となる。
アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3とインナーキャップ5との間には通気層4が設けられていて、このわずかな伝導熱や対流熱を屋外に排出する事になる。従って、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材3の放射側の温度が上昇する事は極めて少ない。
通気層4は、ヘルメット帽体1内側とインナーキャップの周縁部6の粗全周から空気の出入りが出来る構造としてある。
例えば、移動速度が早めると、顔に当たった空気が通気層4内を上昇し、後方のインナーキャップの周縁部6から排出される。又、僅かな風でも吹けば、インナーキャップの周縁部6から同様に通気層4を経由して反対側から大気に排出される。この様に、顔の周囲の空気が絶えず通気層4に流れ込み、しかも通気層4内では無方向に空気が流れ、抵抗の少ない所から排出される。
一方、インナーキャップ5の温度は通気層4を流れる空気によって冷やされている。しかし、夏場は気温が高くそれほど低温にはならない為、頭部から放射される輻射熱の量は少なくない。ただ、移動速度が速くなり頭部付近の空気が熱せられると、この熱は通気層4と頭部側を貫通しているインナーキャップ5の通気口2から通気層4を経由し屋外に排出される。その結果、頭部のムレを抑える事が出来る。
【試験1】
【0026】
ヘルメット帽体1と粗形状が同じで、大きさはヘルメット帽体1より10ミリメートル位小さいインナーキャップ5を作製した。インナーキャップ5は、厚み3ミリメートルのポリエチレン製のシートを加工、頂部付近には直径5ミリメートルの孔が10個開けてある。又、ヘルメット帽体1との空間を均一にする為、インナーキャップ5の外側には直径10ミリメートルで高さも10ミリメートルのスペーサー7が5個付けてある。こうする事によって、ヘルメット帽体1内側とインナーキャップの周縁部6とのほぼ全周から空気が出入りできる様になっている。従って、移動速度が速くなればなるほど、風の速度が早ければ早いほどヘルメット帽体1内に空気が流れる構造になっている。
このインナーキャップ5をヘルメット帽体1の中に取付け、ヘルメット帽体1外側上部よりハロゲンランプ投光器500W2台で照射した。温度は、ヘルメット帽体1外側とインナーキャップの内側約5ミリメートルの位置にサーモレコーダーを取付け測定しました。室温は20℃であった。
【0027】
【考察1】
【0028】
(1)ヘルメット帽体1の外側温度60.2℃の時、インナーキャップ5内側温度は30.1℃で、半分の30.1℃も低下していた。
(2)ヘルメット帽体1の外側温度68.6℃の時、インナーキャップ5内側温度は33.6℃で、35.0℃も低下していた。
【発明の効果】
【0029】
ヘルメットは熱いと言う常識を完全に覆したもので、熱中症対策に抜群の効果が期待できる。
【0030】
インナーキャップの周縁部6の全周から空気を取り入れることが出来るので、あらゆる方向からの風をとらえられる事や僅かな温度差でも通気層4内の空気が移動するので、常時性能が保たれる。
【0031】
ヘルメット帽体1は従来の形状と同じなので、電気関係仕様でも問題なく使用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ヘルメット帽体
2 通気口
3 アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材
4 通気層
5 インナーキャップ
6 インナーキャップ周縁部
7 スペーサー