(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101983
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】空気調和機用保持装置及びそれを用いた搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65D 19/10 20060101AFI20240723BHJP
B65D 85/68 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B65D19/10
B65D85/68 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116483
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2023005754
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
【テーマコード(参考)】
3E037
3E063
【Fターム(参考)】
3E037AA20
3E037BA07
3E037BB09
3E063AA11
3E063AA31
3E063BA01
3E063BB01
3E063CA05
3E063CA11
3E063CB04
3E063CC04
3E063CD09
3E063EE01
3E063EE06
(57)【要約】
【課題】複数の空気調和機の搬送効率を向上させると共に、保管時の保管スペースを省スペース化する。
【解決手段】複数の空気調和機100を水平姿勢で積み重ねた状態で保持する空気調和機用保持装置1は、複数の空気調和機100のそれぞれの上面に密着させた状態に固定され、両端が空気調和機100の左右両側面よりも外側に延設された第1ビーム材11を有する支持部材2と、最上段の空気調和機よりも下段側に配置される空気調和機100の上面に載置され、上段側に配置される空気調和機100の底面を支持するスペーサー3と、複数の空気調和機100の左右両側面に沿って上下方向に配置され、複数の空気調和機100の左右両側面よりも外側に延設された複数の第1ビーム材11の端部を相互に連結し、複数の空気調和機100の相対移動を規制する支柱部材4と、を備える構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空気調和機を水平姿勢で上下方向に積み重ねた状態で保持する空気調和機用保持装置であって、
前記複数の空気調和機のそれぞれの上面に密着させた状態に固定され、前記空気調和機の上面を左右方向に横断し、両端が前記空気調和機の左右両側面よりも外側に延設された第1ビーム材を有する支持部材と、
前記複数の空気調和機のうち、最上段の空気調和機よりも下段側に配置される空気調和機の上面に載置され、上段側に配置される空気調和機の底面を支持するスペーサーと、
前記複数の空気調和機の左右両側面に沿って上下方向に配置され、前記複数の空気調和機の左右両側面よりも外側に延設された複数の第1ビーム材の端部を相互に連結し、前記複数の空気調和機の相対移動を規制する支柱部材と、
を備えることを特徴とする空気調和機用保持装置。
【請求項2】
前記空気調和機は、左右両側面にボルト部材が接続される取付片が設けられ、
前記第1ビーム材は、両端が前記取付片の上方において前記空気調和機の左右両側面よりも外側に延設されており、前記ボルト部材の上部が挿通されてナットが締め付けられることにより、前記空気調和機の上面に密着固定されることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機用保持装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記複数の空気調和機のそれぞれの上面側において前記第1ビーム材に直交するように配置され、天井構造に接続される吊りボルトの下端を接続する接続部を有する第2ビーム材を更に有することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機用保持装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記吊りボルトの下端を接続した状態で、前記吊りボルトを立設させた第1姿勢と、前記吊りボルトを前記空気調和機の上面側に横倒しさせた第2姿勢とに姿勢変化可能であり、
前記スペーサーは、前記空気調和機の上面側に、前記接続部を前記第2姿勢とした状態の前記吊りボルトを収容する空間を形成することを特徴とする請求項3に記載の空気調和機用保持装置。
【請求項5】
複数の空気調和機を水平姿勢で上下方向に積み重ねた状態で保持する空気調和機用保持装置であって、
前記複数の空気調和機のそれぞれの上面に密着させた状態に固定され、前記空気調和機の上面を左右方向に横断し、両端が前記空気調和機の左右両側面よりも外側に延設された第1ビーム材と、前記空気調和機の左右両側面よりも外側において第1ビーム材に直交するように配置される第2ビーム材とを有する支持部材と、
前記複数の空気調和機のうち、最上段の空気調和機よりも下段側に配置される空気調和機の上面に載置され、上段側に配置される空気調和機の底面を支持するスペーサーと、
前記複数の空気調和機の左右両側面に沿って上下方向に配置され、前記複数の空気調和機の左右両側面よりも外側において複数の第2ビーム材を上下方向に連結し、前記複数の空気調和機の相対移動を規制する支柱部材と、
を備えることを特徴とする空気調和機用保持装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの空気調和機用保持装置を用いて複数の空気調和機を水平姿勢で上下方向に積み重ねた状態で保持し、前記空気調和機用保持装置を搬送車両に積載して前記複数の空気調和機を工場から建築現場へ搬送することを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の運搬時又は保管時に用いることが可能な空気調和機用保持装置及びそれを用いた搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機本体の前後方向にチャンバを組み付けて完成品となる空気調和機を作成する作業を工場で行い、完成した空気調和機を設置現場へ搬送する際に好適に使用し得る搬送装置が提案されている(例えば特許文献1)。この搬送装置は、空気調和機の左右両側面を支持する支持部材と、支持部材に係合することにより空気調和機を保持した状態で移動可能な台車とを備えている。台車に設けられた保持部は、支持部材を回動可能に保持しており、空気調和機を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能な構成である。
【0003】
上記従来の台車は、工場で空気調和機を保持した状態の台車をそのまま搬送車両に積載することで建築現場へ搬入でき、建築現場において空気調和機を設置場所へ搬送する際に仮設エレベータなどの狭小箇所を通過させる必要がある場合には空気調和機を水平姿勢から起立姿勢に変化させることで、空気調和機を台車から降ろすことなく、狭小箇所を通過させることができる。
【0004】
また、上記従来の台車は、建築現場に搬入された後、空気調和機の設置作業が開始されるまでの間、複数の空気調和機を積み重ねた状態で保管しておく際にも利用でき、保管スペースを縮小できるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、建築現場に狭小箇所が存在しない場合には、従来の台車のような姿勢変化機能は必要でなく、寧ろ、工場において台車に空気調和機を積み込む際、及び、設置現場において台車から空気調和機を降ろす際の作業効率が悪いという問題がある。
【0007】
その一方、空気調和機は、その上面に別の空気調和機の底面を直接重ねるような平積み状態で搬送したり保管したりすることができない。そのため、建築現場に狭小箇所が存在しないことが判明している場合に、空気調和機を1台ずつ搬送車両に積載して工場から建築現場に搬送するのでは搬送効率が著しく悪いという問題がある。また、1台ずつ搬入される空気調和機を建築現場で保管しておく際には台数分の保管スペースを床面上に確保する必要があり、十分な保管スペースを確保することが難しいという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、空気調和機の搬送効率を向上させると共に、保管スペースを省スペース化できる空気調和機用保持装置、及び、それを用いた搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の解決手段は、複数の空気調和機を水平姿勢で上下方向に積み重ねた状態で保持する空気調和機用保持装置であって、前記複数の空気調和機のそれぞれの上面に密着させた状態に固定され、前記空気調和機の上面を左右方向に横断し、両端が前記空気調和機の左右両側面よりも外側に延設された第1ビーム材を有する支持部材と、前記複数の空気調和機のうち、最上段の空気調和機よりも下段側に配置される空気調和機の上面に載置され、上段側に配置される空気調和機の底面を支持するスペーサーと、前記複数の空気調和機の左右両側面に沿って上下方向に配置され、前記複数の空気調和機の左右両側面よりも外側に延設された複数の第1ビーム材の端部を相互に連結し、前記複数の空気調和機の相対移動を規制する支柱部材と、を備えることを特徴とする構成である。
【0010】
第2の解決手段は、第1の解決手段において、前記空気調和機は、左右両側面にボルト部材が接続される取付片が設けられ、前記第1ビーム材は、両端が前記取付片の上方において前記空気調和機の左右両側面よりも外側に延設されており、前記ボルト部材の上部が挿通されてナットが締め付けられることにより、前記空気調和機の上面に密着固定されることを特徴とする構成である。
【0011】
第3の解決手段は、第1の解決手段において、前記支持部材は、前記複数の空気調和機のそれぞれの上面側において前記第1ビーム材に直交するように配置され、天井構造に接続される吊りボルトの下端を接続する接続部を有する第2ビーム材を更に有することを特徴とする構成である。
【0012】
第4の解決手段は、第3の解決手段において、前記接続部は、前記吊りボルトの下端を接続した状態で、前記吊りボルトを立設させた第1姿勢と、前記吊りボルトを前記空気調和機の上面側に横倒しさせた第2姿勢とに姿勢変化可能であり、前記スペーサーは、前記空気調和機の上面側に、前記接続部を前記第2姿勢とした状態の前記吊りボルトを収容する空間を形成することを特徴とする構成である。
【0013】
第5の解決手段は、複数の空気調和機を水平姿勢で上下方向に積み重ねた状態で保持する空気調和機用保持装置であって、前記複数の空気調和機のそれぞれの上面に密着させた状態に固定され、前記空気調和機の上面を左右方向に横断し、両端が前記空気調和機の左右両側面よりも外側に延設された第1ビーム材と、前記空気調和機の左右両側面よりも外側において第1ビーム材に直交するように配置される第2ビーム材とを有する支持部材と、前記複数の空気調和機のうち、最上段の空気調和機よりも下段側に配置される空気調和機の上面に載置され、上段側に配置される空気調和機の底面を支持するスペーサーと、前記複数の空気調和機の左右両側面に沿って上下方向に配置され、前記複数の空気調和機の左右両側面よりも外側において複数の第2ビーム材を上下方向に連結し、前記複数の空気調和機の相対移動を規制する支柱部材と、を備えることを特徴とする構成である。
【0014】
第6の解決手段は、搬送方法であって、第1乃至第5のいずれかの解決手段における空気調和機用保持装置を用いて複数の空気調和機を水平姿勢で上下方向に積み重ねた状態で保持し、前記空気調和機用保持装置を搬送車両に積載して前記複数の空気調和機を工場から建築現場へ搬送することを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の空気調和機の搬送効率を向上させることができると共に、複数の空気調和機を保管する際の保管スペースを省スペース化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】空気調和機用保持装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】空気調和機に対する支持部材の組み付け態様を示す図である。
【
図4】空気調和機に対するスペーサーの取り付け態様を示す図である。
【
図5】スペーサーを介して複数の空気調和機を積み重ねた状態を示す図である。
【
図7】支柱部材と第1ビーム材との固定態様を例示する図である。
【
図8】空気調和機の上面側に取り付けられる支持部材の他の例を示す斜視図である。
【
図9】空気調和機に支持部材が取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図10】空気調和機に支持部材が取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図16】吊りボルトを折り畳んだ状態の支持部材が組み付けられた複数の空気調和機を保持する保持装置を示す斜視図である。
【
図17】第3実施形態における保持装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における空気調和機用保持装置1を示す斜視図である。この空気調和機用保持装置(以下、単に「保持装置」という。)1は、複数の空気調和機100を水平姿勢で上下方向に積み重ねた状態で保持する装置である。空気調和機100は、例えば天井スラブやデッキプレートなどの天井構造と天井パネルとの間の天井空間に隠蔽された状態で設置される隠蔽式の空気調和機である。
図2は、その空気調和機100の構成例を示す斜視図である。これらの図面に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする座標系であり、互いに共通する座標系である。尚、他の図に示す三次元座標系も同様である。
【0019】
まず、空気調和機100について説明する。
図2に示すように、空気調和機100は、空気調和機本体110と、吹出チャンバ120と、吸気チャンバ130とを備え、これらが前後方向(Y方向)に沿って直列に一体的に組み付けられることにより、平面視略矩形状の箱形ユニットとして構成される。本実施形態において、空気調和機100の左右方向とはXYZ三次元座標系におけるX方向であり、前後方向とは同座標系におけるY方向である。空気調和機本体110は、空気調和機100の主要部であり、内部に熱交換機やファンなどの機械構造物が搭載されている。これに対し、吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130は、内部が空洞の軽量チャンバである。例えば、吹出チャンバ120は空気調和機本体110の前面側(正面側)に装着され、吸気チャンバ130は空気調和機本体110の後面側(背面側)に装着される。
【0020】
空気調和機100は、空気調和機本体110の重量割合が高く、空気調和機100全体の重心位置が空気調和機本体110にある。また、空気調和機本体110の重心位置は、比較的低い位置にある。そのため、例えば
図2に示すように、空気調和機本体110は、左右両側面110a,110bの下部に、吊りボルトなどのボルト部材を連結するための取付片111,111を備えている。これら取付片111,111は、空気調和機本体110の荷重を支える強度を有している。例えば、左側面110aの下部には、前後方向に所定間隔離れた2箇所の位置に取付片111,111が設けられ、右側面110bの下部にも、左側面110aと同じ位置に取付片111,111が設けられている。空気調和機本体110は、左右両側面110a,110bに設けられた合計4つの取付片111に吊りボルトなどのボルト部材が接続され、それらボルト部材によって支持される。
【0021】
空気調和機本体110は、後方側にフィルタユニット112を備えている。そのフィルタユニット112の後方側の端面110dの中央には、吸気口が設けられている。また、空気調和機本体110は、前方側の端面110cの中央に吹出口が設けられている。空気調和機本体110は、後方側の吸気口から空気を流入させ、フィルタユニット112で塵埃などを除去した後、内部の熱交換器で温度調整を行い、温度調整された空気を前方側の吹出口から吹き出す。
【0022】
空気調和機本体110は、前方側の吹出口の周縁部を前方側に突出させたスリーブ状の接続部113を有している。この接続部113は、空気調和機本体110の前方側に吹出チャンバ120を接続するためのものである。また、空気調和機本体110は、後方側の吸気口の周縁部を後方側に突出させたスリーブ状の接続部115を有している。この接続部115は、空気調和機本体110の後方側に吸気チャンバ130を接続するためのものである。尚、これらの接続部113,115は、前後方向の各端面110c,110dのサイズよりも若干小さくなっている。
【0023】
吹出チャンバ120は、空気調和機本体110と対向する面120aの中央に開口が設けられており、その開口を介して空気調和機本体110の吹出口から吹き出される空気をチャンバ内部に流入させることができる。吹出チャンバ120は、その開口の周縁部に、空気調和機本体110に向けて突出させたスリーブ状の接続部122を有している。この接続部122は、空気調和機本体110の前方側に形成されている接続部113の内側又は外側に嵌め込むことが可能である。例えば、吹出チャンバ120の接続部122を空気調和機本体110の接続部113に嵌め込んで接続部122,113を互いに重ね合わせた状態で外側からビスなどを打ち込むことにより、吹出チャンバ120は空気調和機本体110の前方側に一体的に取り付けられる。
【0024】
また、吸気チャンバ130は、空気調和機本体110と対向する面130aの中央に開口が設けられており、その開口を介してチャンバ内の空気を空気調和機本体110に送り込むことができる。吸気チャンバ130は、その開口の周縁部に、空気調和機本体110に向けて突出させたスリーブ状の接続部132を有している。この接続部132は、空気調和機本体110の後方側に形成されている接続部115の内側又は外側に嵌め込むことが可能である。例えば、吸気チャンバ130の接続部132を空気調和機本体110の接続部115に嵌め込んで接続部132,115を互いに重ね合わせた状態で外側からビスなどを打ち込むことにより、吸気チャンバ130は空気調和機本体110の後方側に一体的に取り付けられる。
【0025】
吸気チャンバ130は、図示を省略するダクト接続部を備えており、そのダクト接続部に外気を取り込むためのダクトが接続される。また、吹出チャンバ120は、
図2に示すように周囲側面に少なくとも1つのダクト接続部121を備えている。このダクト接続部121には、温度調整された空気を室内空間へ導くための送風ダクトが接続される。そのため、空気調和機100は、吸気チャンバ130を介して外気を空気調和機本体110に取り込み、吹出チャンバ120を介して温度調整された空気を少なくとも1つの室内空間に供給することができる。
【0026】
図1に示す保持装置1は、上記のような空気調和機100を上下方向に3つ積み重ねた状態で保持するように構成される。ただし、保持装置1が保持する空気調和機100の数は3つに限られるものではなく、2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。例えば
図1に示すように、保持装置1は、パレット190上において上下方向に積み重ねた複数の空気調和機100を保持することにより、複数の空気調和機100を上下に積み重ねた状態で搬送したり保管したりすることが可能である。
【0027】
この保持装置1は、複数の空気調和機100のそれぞれの上面に密着させた状態に取り付けられる支持部材2と、複数の空気調和機100の間に設置されるスペーサー3と、上下方向に配置される複数の空気調和機100を相互に連結する支柱部材4とを備えている。
【0028】
図3は、空気調和機100に対する支持部材2の組み付け態様を示す図である。支持部材2は、複数の空気調和機100のそれぞれの上面に密着させた状態に固定され、空気調和機100の上面を左右方向に横断し、両端11a,11bが空気調和機100の左右両側面よりも外側に延設される一対の第1ビーム材11,11を有する。第1ビーム材11,11は、例えば断面L型の金具によって構成され、空気調和機100の上面に密着する横板部13と横板部13の端部から立設する縦板部14とを有する。横板部13は、例えば1枚板によって構成され、両端11a,11bの所定位置には、空気調和機100の左右両側面に設けられている取付片111,111の位置に合わせてボルト挿通孔13a,13aが形成されている。また、縦板部14は、2枚板によって構成され、2枚板の内側には空間が形成される。縦板部14は、2枚板のうちの外側の板に、縦板部14の長手方向に沿って形成されるスリット15を有し、そのスリット15が2枚板の内側空間に連通している。
【0029】
第1ビーム材11,11は、両端11a,11bに設けられたボルト挿通孔13a,13aが取付片111,111の上方位置に配置され、ボルト部材19によって空気調和機100の上面に固定される。すなわち、ボルト部材19は、その下端が2つのナット17a,17bによって取付片111に固定され、上端が第1ビーム材11の横板部13に形成されたボルト挿通孔13aに挿通され、横板部13から上方に突出する部分にナット18が装着される。そのナット18が締め付けられることにより、ボルト部材19は、第1ビーム材11の横板部13の底面を空気調和機100の上面に押し付けた状態で第1ビーム材11を空気調和機100の上面に密着固定する。第1ビーム材11の両端11a,11bにボルト部材19が取り付けられ、ナット18が締め付けられることにより、第1ビーム材11は、空気調和機100の左右両側面に設けられている取付片111,111の上方位置に固定され、空気調和機100と一体化される。
【0030】
図4は、空気調和機100に対するスペーサー3の取り付け態様を示す図である。スペーサー3は、上段側に配置される空気調和機100の底面を支持する。スペーサー3が上段側に配置される空気調和機100の底面を支持することにより、後述する支柱部材4によって相互に連結される第1ビーム材11,11に上段側の空気調和機100の荷重が集中して第1ビーム材11,11が変形してしまうことを抑制することができる。スペーサー3は、空気調和機100の上面に第1ビーム材11,11が取り付けられた後、空気調和機100の上面に載置される。本実施形態では、2つのスペーサー3,3が1つの空気調和機100の上面に載置される場合を例示している。2つのスペーサー3,3は、空気調和機100の前後方向に長尺であり、空気調和機本体110の前後方向の長さと同等の長さを有している。それらスペーサー3,3は、空気調和機本体110の上面の左右両端部に載置される。空気調和機本体110の上面には、上述した第1ビーム材11,11が左右方向に横断するように配置されている。そのため、スペーサー3,3の下面側には、第1ビーム材11,11を嵌め込み可能な凹部3a,3aが形成されている。スペーサー3,3は、下面側の凹部3a,3aに第1ビーム材11,11を差し込むようにして空気調和機本体110の上面に載置される。そのため、スペーサー3,3は、空気調和機本体110の上面に載置されると、下面が第1ビーム材11,11に係合した状態となる。尚、スペーサー3,3の高さHは、第1ビーム材11,11の高さ寸法よりも高く設定される。したがって、スペーサー3,3は、空気調和機100の前後方向への移動が規制された状態で空気調和機100の上面側に設置される。このようなスペーサー3,3の材質は、例えば木材や樹脂などである。例えば樹脂でスペーサー3,3を形成する場合、発泡ウレタンや発泡スチロールなどを好適に用いることができる。
【0031】
図5は、スペーサー3を介して複数の空気調和機100を積み重ねた状態を示す図である。
図5に示すように、最下段の空気調和機100をパレット190に載置し、空気調和機100の上面に第1ビーム材11,11を取り付け、更にスペーサー3,3を空気調和機100の上面に載置する。その後、最下段(1段目)の空気調和機100に載置したスペーサー3,3上に2段目の空気調和機100を載置する。そして2段目の空気調和機100に第1ビーム材11,11を取り付け、更にスペーサー3,3を設置する。尚、2段目の空気調和機100には先に第1ビーム材11,11を取り付けておくようにしても良い。更にその後、2段目の空気調和機100に載置したスペーサー3,3上に3段目の空気調和機100を載置する。そして3段目の空気調和機100に第1ビーム材11,11を取り付ける。尚、最上段(3段目)の空気調和機100にはスペーサー3,3を設置しなくても良い。その結果、
図5に示すように、3つの空気調和機100がスペーサー3を挟んで上下に積み重ねられた状態となる。
【0032】
図6は、支柱部材4を示す図である。支柱部材4は、例えば断面L型のアングル鋼材で構成される。支柱部材4は、その長手方向の複数箇所にボルト挿通孔4aが設けられる。
図6の例では、支柱部材4の長手方向に沿って所定間隔Dを隔てた3カ所の位置にボルト挿通孔4aが形成されている。複数のボルト挿通孔4aの間隔Dは、例えば空気調和機100の底面から上面までの高さと、スペーサー3の高さHとを合わせた間隔に相当する。尚、ボルト挿通孔4aは、丸孔として形成するのではなく、支柱部材4の長手方向に沿って形成される長孔として形成されるものであっても構わない。
【0033】
上記のような支柱部材4は、
図1に示すように、下端がパレット190の上面に接合するように設置される。支柱部材4の下端をパレット190の上面に接合させた状態に設置すると、複数のボルト挿通孔4aが各空気調和機100の上面に取り付けられた第1ビーム材11の高さ位置に合致する。そのため、支柱部材4は、ボルト挿通孔4aに挿通されるボルトによって第1ビーム材11に固定することができる。
【0034】
図7は、支柱部材4と第1ビーム材11との固定態様を例示する図である。
図7に示すように、第1ビーム材11の縦板部14には固定ボルト45が装着される。固定ボルト45は、矩形状で薄肉の頭部46と、頭部46の中央から延びるボルト部47とを有している。頭部46は、第1ビーム材11の縦板部14の端部から2枚板の内側空間に挿入可能である。頭部46が縦板部14の内側に挿入されると、ボルト部47は、縦板部14のスリット15から第1ビーム材11の外側に向かって突出する。支柱部材4は、そのボルト部47をボルト挿通孔4aに挿通し、ボルト部47の先端にナット48が装着され、ナット48が締め付けられることにより、第1ビーム材11に固定される。支柱部材4の3カ所に設けられた3つのボルト挿通孔4aのそれぞれに対して固定ボルト45のボルト部47を挿通し、ナット48を締め付けることで、積み重ねられた複数の空気調和機100のそれぞれに取り付けられている第1ビーム材11に支柱部材4を固定することができる。
【0035】
図1に示すように、保持装置1は、4つの支柱部材4を有している。それら4つの支柱部材4は、複数の空気調和機100の左右両側面に対して2本ずつ取り付けられる。これにより、保持装置1は、上下に積み重ねられた複数の空気調和機100のそれぞれがXY平面内で相対移動してしまうことを規制し、複数の空気調和機100を適切に保持し続ける。
【0036】
保持装置1によって保持される複数の空気調和機100を設置現場へ搬送する際には、フォークリフトなどを用いて保持装置1を載置した状態のパレット190を持ち上げて搬送車両に積載すれば良い。トラックなどの搬送車両には複数の空気調和機100が積み重ねられた状態で積載されるため、搬送効率を向上させることができる。また、搬送中に振動などが生じたとしても、保持装置1が複数の空気調和機100の相対移動を抑制するため、荷崩れなどが生じない。
【0037】
また、保持装置1は、複数の空気調和機100を保管しておく際にも利用し得る。すなわち、保持装置1は、複数の空気調和機100を積み重ねた状態で保持するため、保管スペースを省スペース化できるという利点がある。また、保管中に地震などが発生した場合であっても、保持装置1は、複数の空気調和機100の荷崩れなどを生じさせず、適切な保持状体を維持することができる。
【0038】
尚、本実施形態において空気調和機100の上面側に取り付けられる支持部材2(第1ビーム材11)は、空気調和機100が設置現場の天井空間に設置されるときに空気調和機100から取り外される部材であっても良い。しかし、これに限られず、支持部材2は、空気調和機100が天井空間に設置されるときにも利用される部材であっても構わない。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、空気調和機100が設置現場の天井空間に設置されるとき、支持部材2が空気調和機100を天井空間に吊り下げた状態で支持する部材として利用される形態の一例について説明する。
【0040】
図8は、本実施形態において空気調和機100の上面側に取り付けられる支持部材2を示す斜視図である。
図9は、空気調和機100に支持部材2が取り付けられた状態を示す側面図であり、
図10は、空気調和機100に支持部材2が取り付けられた状態を示す正面図である。
【0041】
例えば
図8に示すように、支持部材2は、支持部2aと、吊り部2bとを備えている。支持部2aは、空気調和機100を支持するように構成される。具体的には、支持部2aは、空気調和機100の上面側に配置され、空気調和機本体110の左右両側面に設けられた取付片111を支持すると共に、吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130のそれぞれの端面120b,130bを支持する。吊り部2bは、支持部2aの上部に設けられ、上端部が天井スラブやデッキプレートなどの天井構造に取り付けられることにより、支持部2aによって支持された空気調和機100を天井空間に吊り下げる。
【0042】
支持部2aは、第1ビーム材11と、第2ビーム材12と、連結部16と、接続部20と、ボルト部材19と、チャンバ支持具27とを備えている。
【0043】
第1ビーム材11は、第1実施形態と同様に、空気調和機100の上面、より具体的には空気調和機本体110の上面を左右方向に横断し、両端部が空気調和機本体110の左右両側面よりも外側に突出するように配置される。空気調和機本体110の上面には、空気調和機100の前後方向に所定間隔を隔てて2本の第1ビーム材11,11が配置される。
【0044】
第2ビーム材12は、第1ビーム材11と同様の構成である。すなわち、第2ビーム材12は、
図3に示した第1ビーム材11と同様に、例えば断面L型の金具によって構成され、横板部13と、横板部13の端部から立設する縦板部14とを有する。また、縦板部14は、2枚板によって構成され、2枚板の内側には空間が形成される。縦板部14は、2枚板のうちの外側の板に、縦板部14の長手方向に沿って形成されるスリット15を有し、そのスリット15が2枚板の内側空間に連通する構造である。
【0045】
第2ビーム材12は、
図8に示すように、空気調和機100の上面、より具体的には空気調和機本体110の上面を前後方向に横断し、両端部が空気調和機100の吹出チャンバ120の端面120b及び吸気チャンバ130の端面130bよりも外側に突出するように配置される。空気調和機100の上面には、空気調和機100の左右方向に所定間隔を隔てて2本の第2ビーム材12,12が配置される。
【0046】
第1ビーム材11,11及び第2ビーム材12,12は、空気調和機本体110の上面側で互いに直交するように配置され、その交点に連結部16が配置される。連結部16は、第1ビーム材11と第2ビーム材12とを相互に連結する部材である。連結部16によって一対の第1ビーム材11,11と一対の第2ビーム材12,12とが互いに直交する状態で連結されることにより、第1ビーム材11,11及び第2ビーム材12,12は空気調和機100を支持するフレーム枠体として形成される。
【0047】
第1ビーム材11の両端には、第1実施形態と同様にボルト部材19,19が取り付けられる。ボルト部材19,19は、第1ビーム材11の横板部13に形成されたボルト挿通孔13a,13aに挿通され、横板部13の上面側に装着されるナット18が締め付けられると、第1ビーム材11の両端にはボルト部材19,19による軸力(引張り力)が作用し、第1ビーム材11は、横板部13の下面を空気調和機本体110の上面に密着させた状態に固定される。
【0048】
また、第2ビーム材12の横板部13には、第1ビーム材11,11を連結するための一対のボルト挿通孔が形成される。それら一対のボルト挿通孔の間隔は、空気調和機本体110の上面に設置される一対の第1ビーム材11,11の設置間隔に対応した間隔である。そのボルト挿通孔に連結部16が取り付けられることにより、第2ビーム材12は、一対の第1ビーム材11,11に対して直交する状態に連結される。
【0049】
図11は、連結部16の構成例を示す図である。連結部16は、L型の金具40と、固定ボルト45とを有する。金具40は、互いに直角を成す第1板部41と第2板部42とを有する。
図11に示すように、第1板部41は、第1ビーム材11の縦板部14に沿うように配置され、中央にはボルト部47を挿通する孔43が設けられている。第2板部42は、水平方向に配置され、中央部にはボルト44が立設している。
【0050】
固定ボルト45は、第1実施形態で説明したように、矩形状で薄肉の頭部46と、頭部46の中央から延びるボルト部47とを有している。
図11に示すように、固定ボルト45は、頭部46を第1ビーム材11の端部から縦板部14の内側空間に収容可能である。頭部46が縦板部14の内側空間に収容されると、ボルト部47は、縦板部14のスリット15を介して縦板部14の外側に突出する。ボルト部47は、金具40の第1板部41に形成された孔43に挿通され、その先端にナット48が装着される。また、金具40のボルト44は第2ビーム材12に形成されているボルト挿通孔12aに挿通され、その先端にナット49が装着される。ナット49が締め付けられることにより、第2ビーム材12の下面側に金具40が固定される。
【0051】
ナット48の締め付けが緩いとき、金具40は第1ビーム材11に形成されたスリット15に沿って移動可能である。そのため、金具40の上面側に固定される第2ビーム材12は、第1ビーム材11の長手方向に沿って移動可能であり、第1ビーム材11に対して第2ビーム材12が交差する位置を空気調和機100の左右方向に調整することが可能である。第1ビーム材11に対する第2ビーム材12の交差位置が決まると、ナット48を締め付けることにより、連結部16が第1ビーム材11に固定されるため、第2ビーム材12も第1ビーム材11に対して固定される。
【0052】
また、第2ビーム材12には、接続部20が設けられる。接続部20は、天井スラブやデッキプレートなどの天井構造に接続される吊り部2bを接続するためのものである。すなわち、接続部20には、吊り部2bに含まれる吊りボルト22の下端が接続される。これにより、吊り部2bは、支持部2aを支持する状態に取り付けられる。
【0053】
図12は、接続部20の一構成例を示す図であり、
図12(a)は接続部20の構成部材を分解した状態を、
図12(b)は接続部20を第2ビーム材12に取り付けた状態を示している。
図12(a)に示すように、接続部20は、第2ビーム材12に固定される固定金具50と、吊りボルト22の下端を接続する接続金具60とを有する。
【0054】
固定金具50は、板状金具によって構成され、上下2箇所の位置にボルトを挿通するためのボルト挿通孔51,52が形成されている。この固定金具50は、上部のボルト挿通孔51に接続金具60が取り付けられ、下部のボルト挿通孔52に上述した固定ボルト45が取り付けられる。
【0055】
接続金具60は、L型の金具によって構成され、互いに直角を成す第1板部61と第2板部62とを有する。
図12(a)に示すように、第1板部61にはボルト66を挿通するボルト挿通孔63が形成されている。また第2板部62は、中央に吊りボルト22を挿通するボルト挿通孔64が形成されている。この第2板部62の下面側には、コイルバネなどで構成される防振部材21が装着されている。吊りボルト22は、第2板部62のボルト挿通孔64に挿通され、防振部材21の下方に突出する先端にナットが装着される。これにより、吊りボルト22の下端部は、防振部材21を介して接続金具60に保持された状態となる。防振部材21は、天井空間に設置される空気調和機100が稼働することによって発生する振動が吊りボルト22に伝わることを抑制するための部材である。
【0056】
接続金具60は、第1板部61に設けられたボルト挿通孔63を固定金具50のボルト挿通孔51の位置に合わせた状態でボルト66が挿通され、固定金具50から突出するボルト66の先端にナット53が装着されることにより固定金具50に取り付けられる。
【0057】
また、固定金具50の下部のボルト挿通孔52に取り付けられる固定ボルト45は、薄肉板状の頭部46が第2ビーム材12の縦板部14の内側空間に収容される。これにより、固定ボルト45のボルト部47は、第2ビーム材12の縦板部14に設けられたスリット15を介して縦板部14の外側に突出する。そのボルト部47は、固定金具50に形成されたボルト挿通孔52に挿通され、その先端にナット54が装着される。
【0058】
ナット54の締め付けが緩いとき、固定金具50は第2ビーム材12に形成されたスリット15に沿ってスライド移動可能である。そのため、吊りボルト22の下端を保持する接続部20は、第2ビーム材12の長手方向に沿って移動可能であり、吊りボルト22が設置される位置に応じて接続部20の位置を空気調和機100の前後方向に調整することが可能である。第2ビーム材12に対する接続部20の位置が決まれば、ナット54を締め付けることにより、接続部20を第2ビーム材12に固定することができる。
【0059】
また、ナット53の締付が緩いとき、
図12(b)に示すように、接続金具60は、ボルト66を回転軸としてR方向に回転可能である。そのため、接続金具60は、鉛直方向に起立した第1姿勢と、第2ビーム材12が延びる方向に傾倒した第2姿勢との間で姿勢変化することが可能である。例えば、吊りボルト22の上端を天井構造に固定する際には、接続金具60を第1姿勢としてボルト66とナット53を締め付けることにより、接続金具60を第1姿勢で固定することができる。
【0060】
また、
図9に示すように、第2ビーム材12の長手方向の両端部は、吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130の端面120b,130bよりも外側に延びたチャンバ支持部26として構成される。このチャンバ支持部26には、吹出チャンバ120の端面120b及び吸気チャンバ130の端面130bを支持するチャンバ支持具27が取り付けられる。
【0061】
図13は、チャンバ支持具27の構成例を示す図である。チャンバ支持具27は、第2ビーム材12のチャンバ支持部26に固定される支持金具80と、上記と同様の固定ボルト45とを備えている。
【0062】
支持金具80は、L型の金具によって構成され、互いに直角を成す第1板部81と第2板部82とを有する。第1板部81は、第2ビーム材12の縦板部14と平行な状態に配置される。この第1板部81の上半部には、上下方向に所定長さを有する長孔83が形成される。この長孔83には、固定ボルト45のボルト部47を挿通可能である。第2板部82は、吹出チャンバ120の端面120b又は吸気チャンバ130の端面130bと平行な状態に配置される。第2板部82の下部には、ビスを挿通するための孔84が形成される。
【0063】
固定ボルト45は、薄肉板状の頭部46が第2ビーム材12の縦板部14の内側空間に収容される。これにより、固定ボルト45のボルト部47は、縦板部14のスリット15を介して縦板部14の外側に突出する。そのボルト部47は、支持金具80の第1板部81に形成された長孔83に挿通され、その先端にナット85が装着される。
【0064】
ナット85の締め付けが緩いとき、支持金具80は第2ビーム材12に形成されたスリット15に沿って移動可能である。そのため、チャンバ支持具27は、第2ビーム材12の長手方向に沿って移動可能であり、吹出チャンバ120の端面120b又は吸気チャンバ130の端面130bの位置に応じてチャンバ支持具27の位置を空気調和機100の前後方向に調整することが可能である。第2ビーム材12に対するチャンバ支持具27の位置が決まれば、ナット85を締め付けることにより、チャンバ支持具27を第2ビーム材12に固定することができる。
【0065】
また、ナット85の締め付けが緩いとき、支持金具80は第1板部81に形成された長孔83に沿って上下方向に移動可能であり、支持金具80の高さ位置を調整することができる。そのため、支持金具80の第2板部82に形成された孔84が吹出チャンバ120の端面120bの所定高さ位置、又は、吸気チャンバ130の端面130bの所定高さ位置となるように簡単に調整することが可能であり、吹出チャンバ120の端面120b又は吸気チャンバ130の端面130bの所定位置にビスを打ち込み、吹出チャンバ120又は吸気チャンバ130を支持することが可能である。
【0066】
吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130は、空気調和機本体110とは異なるメーカーによって作成されることがあり、吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130の上面高さ位置が空気調和機本体110の上面高さ位置とは異なることが起こり得る。
図14は、吹出チャンバ120を例に挙げて支持金具80の高さ調整機能を示す図である。例えば、
図14(a)に示すように、吹出チャンバ120の上面高さ位置が空気調和機本体110の上面高さ位置よりも高い場合、支持金具80の高さ位置を上げることにより、孔84を、吹出チャンバ120の端面120bの上縁部に配置することができ、その孔84を介して吹出チャンバ120の端面120bの上縁部にビス88を打ち込むことができる。また、
図14(b)に示すように、吹出チャンバ120の上面高さ位置が空気調和機本体110の上面高さ位置よりも低い場合、支持金具80の高さ位置を下げることにより、孔84を、吹出チャンバ120の端面120bの上縁部に配置することができ、その孔84を介して吹出チャンバ120の端面120bの上縁部にビス88を打ち込むことができる。つまり、支持金具80は、ナット85を緩めることによって簡単にビス88の打ち込み位置を調整することができるため、吹出チャンバ120や吸気チャンバ130がどのようなサイズであってもその端面120b,130bを適切に支持することができる。
【0067】
次に吊り部2bについて説明する。吊り部2bは、例えば
図8乃至
図10に示すように、吊りボルト22と、天井取付金具23と、ブレース連結金具24と、ブレースボルト25とを有する。
【0068】
例えば、吊り部2bは、支持部2aの上部に配置される4本の吊りボルト22を備えている。それら4本の吊りボルト22の上端には、天井取付金具23が取り付けられる。天井取付金具23は、天井構造に予め取り付けられているボルト部材に対して吊りボルト22を連結するための金具である。例えば、天井取付金具23は、特開2020-12344号公報に記載されている「天井設置金具」と同様のものである。すなわち、天井取付金具23は、天井構造に取り付けられるボルト部材を挿入可能な取付孔を有し、吊りボルト22の軸回りに回動することにより、取付孔をボルト部材の位置に適合させてボルト部材を取付孔へ挿入させることが可能な金具である。吊りボルト22の上端部に天井取付金具23が取り付けられることにより、支持部材2を工場において予め空気調和機100に組み付けておくことが可能となる。尚、天井取付金具23は、特開2020-12344号公報に記載されている「天井設置金具」と同様のものに限られず、別の構造のものを採用しても構わない。
【0069】
ブレース連結金具24は、4本の吊りボルト22それぞれの上端近傍位置及び下端近傍位置に取り付けられる。ブレースボルト25は、互いに隣接する2本の吊りボルト22,22間に斜め方向に配置され、その両端部がブレース連結金具24によって互いに異なる吊りボルト22に連結固定される。例えば、4本の吊りボルト22は支持部2aの上部において平面視矩形状となる4つの頂点の位置に配置されており、その矩形の各辺に相当する位置にブレースボルト25が配置される。すなわち、ブレースボルト25は、XZ平面に平行な2つの面、及び、YZ平面に平行な2つの面に配置される。また、2本の吊りボルト22,22間には、2本のブレースボルト25が交差するように配置される。これにより、4本の吊りボルト22は、合計8本のブレースボルト25によって相互に連結された状態に補強され、耐震強度が増す。尚、2本のブレースボルト25が交差する交差部には、図示を省略する交差連結金具を取り付け、2本のブレースボルト25の交差部を相互に固定することがより好ましい。
【0070】
例えば
図8に示すように、4本の吊りボルト22を、複数のブレースボルト25を用いて相互に連結することにより、地震発生時における支持部2a及び空気調和機100の振動を抑制することが可能である。したがって、吊りボルト22の長さが所定長さ以上である場合には、
図8に示すように、互いに隣接する一対の吊りボルト22,22間にブレースボルト25を取り付けて吊りボルト22を補強した支持部材2を構成することが好ましい。尚、吊りボルト22の長さが所定長さ未満である場合には、地震発生時における吊りボルト22の振れ幅が比較的小さいため、一対の吊りボルト22,22間にブレースボルト25を配置しない構成を採用しても構わない。
【0071】
上記のような支持部材2は、複数の空気調和機100を上下方向に積み重ねた状態で搬送又は保管する際に保持装置1の一構成部材となる。
【0072】
本実施形態の支持部材2は、上述のように、吊りボルト22の下端部が接続される接続部20が、吊りボルト22を立設させた第1姿勢と、吊りボルト22を傾倒させた第2姿勢とに姿勢変化可能である。そのため、保持装置1を利用して複数の空気調和機100を上下方向に積み重ねる際に、吊りボルト22を空気調和機100の上面側に折り畳むことが可能であり、搬送効率を向上させることができると共に、保管スペースを省スペース化できるという利点がある。
【0073】
図15は、吊りボルト22を折り畳む例を示す図である。吊りボルト22を折り畳む際には、
図15(a)に示すように支持部材2からYZ平面に取り付けられているブレースボルト25を取り外し、接続部20のナット53を緩める。これにより、接続部20の接続金具60が上述したように回動可能となるため、
図15(b)に示すように吊りボルト22を空気調和機本体110の上面側に折り畳むことができる。このとき、支持部材2のXZ平面に取り付けられていたブレースボルト25を取り外す必要はない。
図15(b)に示すように吊りボルト22を折り畳むと、空気調和機100の上面側に組み付けられている支持部材2の高さ寸法がh1となり、空気調和機100の上面側における支持部材2の占有スペース(容積)を小さくすることができる。
【0074】
図16は、吊りボルト22を折り畳んだ状態の支持部材2が組み付けられた複数の空気調和機100を保持する保持装置1を示す斜視図である。
図16に示すように、本実施形態の保持装置1は、吊りボルト22を折り畳んだ状態の支持部材2が取り付けられた複数の空気調和機100を上下方向に積み重ねた状態で保持する。この保持装置1は、第1実施形態と同様に、互いに積み重ねられる2つの空気調和機100の間にスペーサー3を配置している。このスペーサー3の高さH(
図4参照)は、吊りボルト22を折り畳んだ支持部材2の高さ寸法h1(
図15(b)参照)よりも大きくなるように形成される。したがって、スペーサー3は、空気調和機100の上面側に、接続部20を第2姿勢とした状態の吊りボルト22を収容する空間を形成する。これより、空気調和機100の上面側に折り畳まれた支持部材2は、その上段に積み重ねられる空気調和機100の底面に干渉することがない。
【0075】
本実施形態における保持装置1は、上述した点を除き、第1実施形態で説明したものと同様である。したがって、保持装置1は、上下に積み重ねられた複数の空気調和機100のそれぞれがXY平面内で相対移動してしまうことを規制することが可能であり、複数の空気調和機100を適切に保持し続ける。
【0076】
保持装置1によって保持される複数の空気調和機100を設置現場へ搬送する際には、フォークリフトなどを用いて保持装置1を載置した状態のパレット190を持ち上げて搬送車両に積載すれば良い。搬送車両には複数の空気調和機100が積み重ねられた状態で積載されるため、搬送効率を向上させることができる。また、搬送中に振動などが生じたとしても、保持装置1が複数の空気調和機100の相対移動を抑制するため、荷崩れなどが生じない。
【0077】
また、保持装置1は、複数の空気調和機100を保管しておく際にも利用し得る。すなわち、保持装置1は、複数の空気調和機100を積み重ねた状態で保持するため、保管スペースを省スペース化できるという利点がある。保管中に地震などが発生した場合であっても、保持装置1は、複数の空気調和機100の荷崩れなどを生じさせず、適切な保持状体を維持することができる。
【0078】
特に本実施形態の保持装置1は、支持部材2に予め吊りボルト22を組み付けておき、搬送時や保管時には吊りボルト22を空気調和機100の上面側に折り畳むことで、複数の空気調和機100を上下に積み重ねた状態で保持することが可能であり、搬送時や保管時の占有スペースを省スペース化できるという利点がある。そして、設置現場において空気調和機100を天井空間に吊り下げるときには、接続部20を第2姿勢から第1姿勢に変化させてブレースボルト25を連結することにより、天井空間に吊り下げ可能な構造を簡単に構築することができる。天井空間に吊り下げ可能な構造を構築した後には、昇降機などを用いて空気調和機100を天井空間に持ち上げ、吊りボルト22の上端に予め取り付けられている天井取付金具23を、天井構造に取り付けられているボルト部材に結合させることにより、空気調和機100を簡単に天井空間に設置することができる。したがって、設置現場において空気調和機100を天井空間に吊り下げた状態に設置する際の作業効率を向上させることも可能である。
【0079】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第2実施形態で示した構成において支持部材2の吊り部2bを取り外した状態で、保持装置1が複数の空気調和機100を保持する例について説明する。
【0080】
図17は、本実施形態における保持装置1の構成例を示す図である。この保持装置1は、第2実施形態で説明した支持部材2から吊り部2bを取り外した状態で複数の空気調和機100を上下方向に積み重ねて保持する。支持部材2から吊り部2bを取り外すことにより、第2ビーム材12,12を第1ビーム材11,11の長手方向(X方向)に沿って移動させることができる。空気調和機100を保持装置1に設置するとき、第2ビーム材12は、第1ビーム材11,11の端部近傍位置に移動させられ、空気調和機100の左右両側面よりも外側の位置で第1ビーム材11,11に固定される。これにより、第2ビーム材12に形成されているスリット15は、空気調和機100の左右両側面よりも外側に位置することとなる。そして複数の空気調和機100は、第2ビーム材12が空気調和機100の左右両側面よりも外側に位置する状態でスペーサー3を介して上下に積み重ねられる。
【0081】
本実施形態の保持装置1は、上下方向に積み重ねられた複数の空気調和機100の左右両側面よりも外側の位置で前後方向(Y方向)に延びる第2ビーム材12に対し、支柱部材4が固定される。すなわち、支柱部材4は、第2ビーム材12のスリット15に挿入された固定ボルト45のボルト部47に対して固定される。固定ボルト45のボルト部47は、第2ビーム材12から、空気調和機100の側面に対して直角方向外側に突出するため、支柱部材4を第2ビーム材12に固定するとき、作業者は、空気調和機100の側面に対して直角方向から電動工具のソケットなどをナット48に装着して締め付けることができる。例えば、空気調和機100の側面構造はさまざまであり、空気調和機100の側面から大きく外側に突出する部材が存在することも少なくない。そのような構造の場合、第1及び第2実施形態で説明したように支柱部材4を第1ビーム材11に固定する方法では、空気調和機100の側面と平行な方向から電動工具のソケットなどを差し込む必要があるが、空気調和機100の側面から突出する部材が邪魔になって正常に差し込むことができないことがある。これに対し、本実施形態の保持装置1は、
図17において矢印F1で示すように、空気調和機100の側面に対して正対する方向から電動工具のソケットなどを差し込むことができるため、空気調和機100の側面に突出する部材があっても正常に差し込み操作を行うことが可能であり、作業効率に優れている。
【0082】
また、本実施形態の保持装置1は、第2ビーム材12に支柱部材4を取り付けるため、支柱部材4の位置を第2ビーム材12の長手方向(Y方向)に沿って調整することが可能である。例えば、支柱部材4,4のY方向の間隔Wを適宜調整することが可能であり、最支柱部材4は、安定した位置で複数の空気調和機100を保持することができる。また、上述したように空気調和機100の側面から外側に突出する部材が存在する場合には、支柱部材4の固定位置を、そのような突出部材を避けた位置に設定することが可能である。
【0083】
したがって、本実施形態の保持装置1は、複数の空気調和機100の左右両側面よりも外側において複数の第2ビーム材12を上下方向に連結する支柱部材4を採用することで、作業効率が上がり、しかも側面構造がどのような構造の空気調和機100であっても上下方向に積み重ねた状態で正常に保持することが可能である。
【0084】
尚、本実施形態において、上述した点以外の構成は、第1実施形態又は第2実施形態で説明したものと同様である。
【0085】
(変形例)
以上、本発明に関する好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものの含まれる。
【0086】
例えば、上記実施形態では、空気調和機100が空気調和機本体110に対して吹出チャンバ120と吸気チャンバ130とが装着された構成である場合を例示した。しかし、上述した保持装置1を適用可能な空気調和機100は、空気調和機本体110に対し、吹出チャンバ120及び吸気チャンバ130のいずれか一方若しくは双方が組み付けられていない空気調和機であっても構わない。また、空気調和機100は、必ずしも隠蔽式の空気調和機に限られず、例えば、パッケージエアコンなどのように一部が天井パネルの開口部から室内側に露出した状態に配置される空気調和機に適用することも可能である。
【0087】
また、例えば上記実施形態では、第1ビーム材11及び第2ビーム材12の縦板部14が2枚板で構成され、2枚板の内側に空間を形成して固定ボルト45の頭部46を内側空間に収容可能な構成例を説明した。しかし、第1ビーム材11及び第2ビーム材12は、そのような構成でなくても良い。例えば、第1ビーム材11及び第2ビーム材12は、断面L型の通常のアングル材を用いても良い。
【0088】
また、上記実施形態では、複数の空気調和機100を保持する保持装置1をパレット190上に載置して設置現場へ搬送する例を説明した。しかし、これに限られるものではなく、保持装置1を設置現場へ搬送する際には台車を用いても構わない。
図18は、台車195を用いて保持装置1を設置現場へ搬送する例を示す図である。例えば、台車195は、最下段に配置される空気調和機100の空気調和機本体110の底面全体を支持できる大きさとすることが好ましい。また、支柱部材4の下端は、ボルトとナットなどの締結部材196を用いて台車195の側面195aに固定されることが好ましい。このように保持装置1を台車195に設置した状態で搬送することにより、フォークリフトなどを用いずとも複数の空気調和機100を保持した状態で平行移動させることが可能であり、搬送効率が向上するという利点がある。尚、このような台車195は、第1乃至第3実施形態のいずれにも適用することが可能である。
【0089】
また、
図18に示す台車195は、その上面に、第1乃至第3実施形態で説明した保持装置1が載置されたパレット190を載置し、パレット190に載置された保持装置1を平行移動させるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0090】
1…保持装置、2…支持部材、3…スペーサー、4…支柱部材、11…第1ビーム材、12…第2ビーム材、19…ボルト部材、20…接続部、22…吊りボルト、100…空気調和機、111…取付片。