(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101994
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】光ファイバースプライスおよび光ファイバースプライスを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/24 20060101AFI20240723BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G02B6/24
G02B6/44 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023209356
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】23151727
(32)【優先日】2023-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519099829
【氏名又は名称】エヌケーティー エイチブイ ケーブルズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ノルデ, ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】ホルムベリ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】アルティニ, ペトリュス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水素密封シールが、第1の金属管とスプライス管との間に達成されることのできる光ファイバースプライスを提供する。
【解決手段】第1の金属材料を含む第1の金属管5を備える第1の光ファイバーケーブル2と、第2の金属材料を含むスプライス管7であって、スプライス管が第1の金属管の周りに配置されており、第1の重なりセクション8がスプライス管と第1の金属管との間に形成されており、第3の金属材料を含む第1のコーティング10であって、第3の金属材料が、第1の金属材料および第2の金属材料とは異なり、第1のコーティングがスプライス管の内面に配置されており、スプライス管の内面が重なりセクションにおける第1のコーティングを介してスプライス管と第1の金属管との間に接触を提供する第1の半径方向変形部9を備え、その結果、水素密封シールが、第1の金属管とスプライス管との間に達成されている、光ファイバースプライス1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属管(5)を備える第1の光ファイバーケーブル(2)であって、前記第1の金属管(5)が、第1の金属材料を含む、第1の光ファイバーケーブル(2)と、
第2の金属材料を含むスプライス管(7;7’;7”)であって、前記第2の金属材料が、好ましくは前記第1の金属材料と同じであり、
前記スプライス管(7;7’)が、前記第1の金属管(5)の周りに配置されているか、または前記第1の金属管(5)が、前記スプライス管(7”)の周りに配置されており、それによって、第1の重なりセクション(8)が、前記スプライス管(7;7’;7”)と前記第1の金属管(5)との間に形成されている、スプライス管(7;7’;7”)と、
第3の金属材料を含む第1のコーティング(10;10’;10”)であって、前記第3の金属材料が、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料とは異なり、前記第1のコーティング(10;10’;10”)が、前記第1の重なりセクション(8)における前記スプライス管(7;7’)の内面または前記スプライス管(7”)の外面に配置されている、第1のコーティング(10;10’;10”)と、
を備え、
前記スプライス管(7;7’;7”)の前記内面または前記第1の金属管(5)の前記内面が、前記重なりセクション(8)における前記第1のコーティング(10;10’;10”)を介して前記スプライス管(7;7’;7”)と前記第1の金属管(5)との間に接触を提供する第1の半径方向変形部(9)を備え、その結果、水素密封シールが、前記第1の金属管(5)と前記スプライス管(7;7’;7”)との間に達成されている、
光ファイバースプライス(1;1’;1”)。
【請求項2】
前記第3の金属材料が、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料よりも可鍛性が高い、請求項1に記載の光ファイバースプライス(1,1’,1”)。
【請求項3】
前記第3の金属材料が、鉛、スズ、銀、銅、金、ニッケル、およびインジウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の光ファイバースプライス(1;1’;1”)。
【請求項4】
前記第1の金属材料および前記第2の金属材料のうちの少なくとも一方が、ステンレス鋼を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光ファイバースプライス(1;1’;1”)。
【請求項5】
前記第1の半径方向変形部(9)が、圧着またはかしめによって作製されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の光ファイバースプライス(1;1’;1”)。
【請求項6】
前記光ファイバースプライス(1)が、前記第1の重なりセクション(8)内に第2の半径方向変形部(13)を備え、前記第2の半径方向変形部(13)が、前記第1の半径方向変形部(9)から軸方向に離間している、請求項1から5のいずれか一項に記載の光ファイバースプライス。
【請求項7】
第2の光ファイバーケーブル(3)であって、前記第2の光ファイバーケーブル(3)が、第2の金属管(11)を備え、前記第2の金属管(11)が、前記第1の金属管(5)のものと同じ金属材料を含み、
前記スプライス管(7;7’;7”)が、前記第2の金属管(11)の周りに配置されているか、または前記第2の金属管(11)が、前記スプライス管(7;7’;7”)の周りに配置されており、それによって、第2の重なりセクション(14)が、前記第1の重なりセクション(8)と比較して前記スプライス管(7;7’;7”)の反対側の端部に形成されている、第2の光ファイバーケーブル(3)と、
第2のコーティング(15)であって、前記第2のコーティング(15)が、前記第1のコーティング(10;10’;10”)のものと同じ金属材料を含み、前記第2のコーティング(15)が、前記第2の重なりセクション(14)における前記スプライス管(7)の内面または第2のスプライス管(7;7’;7”)の外面に配置されている、第2のコーティング(15)と、
を備え、
前記スプライス管(7;7’;7”)の前記内面または前記第2の金属管(11)の前記内面が、前記第2の重なりセクション(14)における前記第2のコーティング(15、15’)を介して前記スプライス管(7;7’;7”)と第1の第2の管(11)との間に接触を提供する第3の半径方向変形部(17)を有し、その結果、水素密封シールが、前記第2の金属管(11)と前記スプライス管(7;7’;7”)との間に達成されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の光ファイバースプライス(1;1’;1”)。
【請求項8】
前記第2のコーティング(15’)が、前記第1のコーティング(10’)と同じである、請求項7に記載の光ファイバースプライス(1’)。
【請求項9】
前記第1の光ファイバーケーブル(2)および前記第2の光ファイバーケーブル(3)が、光ファイバー(6,12)を備え、前記スプライス管(7;7’;7”)が、前記第1の光ファイバーケーブル(2)および前記第2の光ファイバーケーブル(3)の前記光ファイバー(6,12)間の接合点(16)を覆うように配置されている、請求項7または8に記載の光ファイバースプライス(1;1’;1”)。
【請求項10】
光ファイバースプライス(1;1’;1”)を製造するための方法であって、前記方法が、
-第1の金属管(5)を備える第1の光ファイバーケーブル(2)を提供すること(S1)であって、前記第1の金属管(5)が、第1の金属材料を含む、第1の光ファイバーケーブル(2)を提供すること(S1)と、
-スプライス管(7;7’;7”)を提供すること(S2)であって、前記スプライス管(7;7’;7”)が、第2の金属材料を含み、前記第2の金属材料が、好ましくは前記第1の金属材料と同じであり、前記スプライス管(7;7’)の内面または前記スプライス管(7”)の外面には、第1のコーティング(10;10’;10”)が設けられており、前記第1のコーティング(10;10’;10”)が、第3の金属材料を含み、前記第3の金属材料が、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料とは異なる、スプライス管(7;7’;7”)を提供すること(S2)と、
-前記スプライス管(7;7’;7”)と前記第1の金属管(5)との間の第1の重なりセクション(8)において、前記第1の金属管(5)の周りに前記スプライス管(7;7’)を配置すること、または前記スプライス管(7”)の周りに前記第1の金属管(5)を配置すること(S3)と、
-水素密封シールが、前記第1の金属管(5)と前記スプライス管(7;7’;7”)との間に達成されるように、前記第1の重なりセクションにおいて、前記スプライス管(7;7’)を前記第1の金属管(5)に向かって変形させるか、または前記第1の金属管(5)を前記スプライス管(7”)に向かって変形させること(S4)と
を含む、光ファイバースプライス(1;1’;1”)を製造するための方法。
【請求項11】
前記第3の金属材料が、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料よりも可鍛性が高い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スプライス管(7;7’;7”)または前記第1の金属管(5)を変形させるステップ(S4)が、前記スプライス管(7;7’;7”)または前記第1の金属管(5)を圧着することまたはかしめることを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
-第2の金属管(11)を備える第2の光ファイバーケーブル(3)を提供するステップ(S5)であって、前記第2の金属管(11)が、前記第1の金属管(5)のものと同じ金属材料を含み、前記スプライス管(7;7’)の内面または前記第1の金属管(5)の外面には、第2のコーティング(15)が設けられており、前記第2のコーティング(15)が、第3の金属材料を含み、前記第3の金属材料が、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料とは異なる、第2の光ファイバーケーブル(3)を提供するステップ(S5)と、
-第2の重なりセクション(14)において、前記第2の金属管(11)の周りに前記スプライス管(7;7’)を配置するか、または前記スプライス管(7”)の周りに前記第2の金属管(11)を配置するステップ(S6)と、
-水素密封シールが、前記第2の金属管(11)と前記スプライス管(7;7’;7”)との間に達成されるように、前記第2の重なりセクション(14)において、前記スプライス管(7;7’)を前記第2の金属管(11)に向かって変形させるか、または前記第2の重なりセクション(14)において、前記第2の金属管(11)を前記スプライス管(7”)に向かって変形させるステップ(S7)と
をさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の光ファイバーケーブル(2)および前記第2の光ファイバーケーブル(3)が、光ファイバー(6,12)を備え、前記スプライス管(7;7’;7”)が、前記第1の光ファイバーケーブル(2)および前記第2の光ファイバーケーブル(3)の前記光ファイバー間の接合点(16)を覆うように配置されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の光ファイバースプライスを備える電力ケーブル。
【請求項16】
前記電力ケーブルが、海底電力ケーブルである、請求項15に記載の電力ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してスプライスに関する。特に、光ファイバースプライスおよび光ファイバースプライスを製造するための方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーケーブルでは、ガラスファイバーまたはプラスチックファイバーなどの光ファイバーの1つ以上の細いストランドが、長距離にわたる光の導波路として機能する。ケーブルは、例えば、データ伝送に使用され得る。
【0003】
光ファイバーは壊れやすいため、一般に保護する必要がある。光ファイバーを保護する1つの方法は、ファイバーの周りに1つ以上の金属管を設けることによるものである。そのような金属チューブを備える光ファイバーケーブルは、金属管被覆ファイバー(FIMT)と呼ばれ得る。機械的安定性を提供することに加えて、金属管は、水および/または水素の侵入から光ファイバーを保護し、これは、海中用途などの過酷な環境で特に有用であり得る。
【0004】
FIMTが長い距離をカバーする場合、例えば機械のリールサイズの制限により、ケーブルのスプライシングが必要なときがある。FIMT金属管をスプライシングする1つの既知の方法は、金属管間の重なりセクションの上にポリマー接着剤を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
ポリマー接着剤を使用して光ファイバー金属管をスプライスする場合、ポリマー材料を通る水および水素の侵入によって問題が発生する可能性があり、これは金属管および光ファイバーの損傷につながる可能性があることが認識されている。
【0006】
さらに、光ファイバースプライスを製造するための既知の方法では、スプライシングに関連して接着剤が金属管の表面上に提供され、これによりスプライシング手順がさらに複雑になる。
【0007】
上記を考慮して、本解決策の目的は、先行技術の問題を解決するかまたは少なくとも緩和する光ファイバースプライスおよび光ファイバースプライスを製造するための方法を提供することである。
【0008】
したがって、第1の態様によれば、光ファイバースプライスが提供される。光ファイバースプライスは、第1の金属管を備える第1の光ファイバーケーブルであって、第1の金属管が、第1の金属材料を含む、第1の光ファイバーケーブル、第2の金属材料を含むスプライス管であって、第2の金属材料が、好ましくは第1の金属材料と同じである、スプライス管、を備え、スプライス管が、第1の金属管の周りに配置されているか、または第1の金属管が、スプライス管の周りに配置されており、それによって、第1の重なりセクションが、スプライス管と第1の金属管との間に形成されている。光ファイバースプライスは、第3の金属材料を含む第1のコーティングであって、第3の金属材料が、第1の金属材料および第2の金属材料とは異なり、第1のコーティングが、第1の重なりセクションにおけるスプライス管の内面またはスプライス管の外面に配置されている、第1のコーティングをさらに備え、スプライス管の内面または第1の金属管の内面が、重なりセクションにおける第1のコーティングを介してスプライス管と第1の金属管との間に接触を提供する第1の半径方向変形部を備え、その結果、水素密封シールが、第1の金属管とスプライス管との間に達成されている。
【0009】
重なりセクションに金属材料を含むコーティングを配置することによって、水素密封シールを達成することができる。水素密封という用語は、海中の電力ケーブルシステムの残りの部分に匹敵する密封性として理解されるべきであり、すなわち、スプライスにおける水素の侵入は、金属管自体を通る水素の侵入よりも高くなるべきではない。
【0010】
ポリマー接着剤の代わりに金属コーティングを使用すると、金属が金属管上に予めコーティングされ得、それによってスプライスの製造時に金属を適用するステップがなくなるため、スプライスの製造がさらに容易になり得る。
【0011】
さらに、金属コーティングは、ポリマーを含むスプライスと比較して、スプライスにおける光ファイバーケーブル間の電気的接触を改善し得る。
【0012】
一実施形態によれば、コーティングは、スプライス管の内面に設けられている。これにより、スプライス管をスプライシングの前に予めコーティングすることができ、したがって、スプライシングプロセスが容易になる。
【0013】
一実施形態によれば、コーティングは、意図された重なりセクションにのみ配置されている。これにより、必要な量のコーティングのみが使用されるため、コストを削減することができる。
【0014】
代替的な実施形態によれば、コーティングは、スプライス管の内面全体を覆うように配置されている。これにより、コーティングを任意のある特定のセクションに配置する必要がないため、コーティングの適用が容易になる。さらに、コーティングの位置決めを考慮する必要がないため、スプライスの製造を容易にすることができる。これにより、予めコーティングされたスプライス管を作り上げ、スプライシングの必要性が生じるまで保管することが可能になる。
【0015】
一実施形態によれば、第3の金属材料は、第1の金属材料および第2の金属材料よりも可鍛性が高い。
【0016】
これにより、第3の金属材料は、スプライス管の変形中に第1の金属管およびスプライス管よりも高度に変形するように配置され得る。したがって、第3の金属材料は、スプライスにおける第1の金属管およびスプライス管内のあらゆる凹凸を埋めるように配置され得る。
【0017】
可鍛性とは、第3の材料が第1の金属材料および第2の金属材料よりも降伏強度が低いことを意味する。また、第3の材料のヤング率は、第1の金属材料および第2の金属材料のヤング率よりも小さくてもよい。
【0018】
一実施形態によれば、第3の金属材料は、鉛、スズ、銀、銅、金、ニッケル、およびインジウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
一実施形態によれば、第1の金属材料および第2の金属材料のうちの少なくとも一方は、ステンレス鋼を含む。
【0020】
ステンレス鋼は、例えば、ステンレス鋼タイプ304、316、または316Lを含み得る。
【0021】
別の実施形態によれば、第1の金属材料および第2の金属材料は、合金625を含み得る。
【0022】
一実施形態によれば、第1の半径方向変形部は、圧着またはかしめによって作製されている。
【0023】
圧着は、外側管、すなわちスプライス管および第1の金属管のうちの一方を内側管、すなわちスプライス管および第1の金属管のうちの他方に機械的にロックするために用いられ得、一方、かしめは、金属コーティングを介して管間に連続的な接触面を提供し得、それによってシールの密封性をさらに改善する。外側金属管が内側金属管に向かって変形させられると、それによってコーティングは圧縮され流出して、管の表面の微細な表面凹凸および亀裂などのあらゆる凹凸を埋めるように配置される。凹凸は、変形前に既に存在し得るか、または変形中に形成され得る。
【0024】
一実施形態によれば、スプライス管などの外側金属管およびコーティングのみが変形されている。
【0025】
代替的な実施形態によれば、外側金属管、コーティングおよび内側金属管の両方が変形されている。この場合、外側金属管は、内側金属管よりも高度に変形されていることが好ましい。
【0026】
一実施形態によれば、第3の金属材料は変形時に、スプライスにおける微細な表面凹凸内に主に配置される。
【0027】
一実施形態によれば、光ファイバースプライスは、第1の重なりセクション内に第2の半径方向変形部を備え、第2の半径方向変形部は、第1の半径方向変形部から軸方向に離間している。
【0028】
これにより、コーティングは、半径方向変形部におけるあらゆる凹凸を埋めるように配置されることに加えて、第1の半径方向変形部と第2の半径方向変形部との間の空間を埋めるように配置され得、これによって、光ファイバースプライスの水素密封性および耐久性がさらに改善され得る。
【0029】
一実施形態によれば、第2の半径方向変形部は、第1の半径方向変形部よりも深く、第2の半径方向変形部は、スプライス管の端部のより近くに配置されている。それにより、水分および水素に曝されるリスクが最も高い半径方向変形部は、これにより良く耐えるように寸法決めされている。
【0030】
一実施形態によれば、光ファイバースプライスは、第2の光ファイバーケーブルであって、第2の光ファイバーケーブルが、第2の金属管を備え、第2の金属管が、第1の金属管のものと同じ金属材料を含み、スプライス管が、第2の金属管の周りに配置されているか、または第2の金属管が、スプライス管の周りに配置されており、それによって、第2の重なりセクションが、第1の重なりセクションと比較してスプライス管の反対側の端部に形成されている、第2の光ファイバーケーブルと、第2のコーティングであって、第2のコーティングが、第1のコーティングのものと同じ金属材料を含み、第2のコーティングが、第2の重なりセクションにおけるスプライス管の内面または第2のスプライス管の外面に配置されている、第2のコーティングと、を備え、スプライス管の内面または第2の金属管の内面が、第2の重なりセクションにおける第2のコーティングを介してスプライス管と第2の金属管との間に接触を提供する第3の半径方向変形部を有し、その結果、水素密封シールが、第2の金属管とスプライス管との間に達成されている。
【0031】
これによって、水素密封シールを有する光ファイバースプライスが、スプライス管を介して第1の光ファイバーケーブルと第2の光ファイバーケーブルとの間に生成されている。
【0032】
一実施形態によれば、第2のコーティングは、第1のコーティングと同じである。
【0033】
すなわち、第1のコーティングおよび第2のコーティングは、スプライス管の表面上に連続的なコーティングを作り出す。したがって、第1のコーティングおよび第2のコーティングは、互いに離間していないか、または互いに距離を置いて配置されていない。
【0034】
一実施形態によれば、第1の光ファイバーケーブルおよび第2の光ファイバーケーブルは、光ファイバーを備え、スプライス管は、第1の光ファイバーケーブルおよび第2の光ファイバーケーブルの光ファイバー間の接合点を覆うように配置されている。
【0035】
第2の態様によれば、光ファイバースプライスを製造するための方法であって、方法が、
-第1の金属管を備える第1の光ファイバーケーブルを提供することであって、第1の金属管が、第1の金属材料を含むことと、
-スプライス管を提供することであって、スプライス管が、第2の金属材料を含み、第2の金属材料が、好ましくは第1の金属材料と同じであり、スプライス管の内面またはスプライス管の外面には、第1のコーティングが設けられており、第1のコーティングが、第3の金属材料を含み、第3の金属材料が、第1の金属材料および第2の金属材料とは異なることと、
-スプライス管と第1の金属管との間の第1の重なりセクションにおいて、第1の金属管の周りにスプライス管を配置すること、またはスプライス管の周りに第1の金属管を配置することと、
-第1の重なりセクションにおいて、スプライス管を第1の金属管に向かって変形させるか、または第1の金属管をスプライス管に向かって変形させ、その結果、水素密封シールが、第1の金属管とスプライス管との間に達成されることと
を含む、光ファイバースプライスを製造するための方法。
【0036】
本発明の第2の態様の効果および特徴は、第1の態様に関連して上述したものとほぼ類似している。
【0037】
一実施形態によれば、第3の金属材料は、第1の金属材料および第2の金属材料よりも可鍛性が高い。
【0038】
一実施形態によれば、スプライス管または第1の金属管を変形させるステップは、スプライス管または第1の金属管を圧着することまたはかしめることを含む。
【0039】
一実施形態によれば、方法は、
-第2の金属管を備える第2の光ファイバーケーブルを提供するステップであって、第2の金属管が、第1の金属管のものと同じ金属材料を含み、スプライス管の内面または第1の金属管の外面には、第2のコーティングが設けられており、第2のコーティングが、第3の金属材料を含み、第3の金属材料が、第1の金属材料および第2の金属材料とは異なるステップと、
-第2の重なりセクションにおいて、第2の金属管の周りにスプライス管を配置するステップと、
-第2の重なりセクションにおいて、スプライス管を第2の金属管に向かって変形させるか、または第2の重なりセクションにおいて、第2の金属管をスプライス管に向かって変形させ、その結果、水素密封シールが、第2の金属管とスプライス管との間に達成されるステップと
をさらに含む。
【0040】
一実施形態によれば、第1の光ファイバーケーブルおよび第2の光ファイバーケーブルは、光ファイバーを備え、スプライス管は、第1の光ファイバーケーブルおよび第2の光ファイバーケーブルの光ファイバー間のスプライシングを覆うように配置されている。
【0041】
これにより、光ファイバースプライスの製造中に、スプライス管が最初に第1の金属管の周りに配置され得、それによって、光ファイバーはアクセスされ得かつ一緒にスプライスされ得る。次いで、スプライス管を定位置に摺動させることによって、スプライス管はファイバーの周りに配置され、スプライスされた光ファイバーを保護し得る。
【0042】
第3の態様によれば、第1の態様による光ファイバースプライスを備える電力ケーブルが提供される。
【0043】
本発明の第3の態様の効果および特徴は、第1の態様に関連して上述したものとほぼ類似している。
【0044】
一実施形態によれば、電力ケーブルは海底電力ケーブルである。
【0045】
海底電力ケーブルにおいて光ファイバースプライスを使用することは、これらのケーブルは水素侵入のリスクが高い過酷な環境に曝されることが多いため、特に関連性があり得る。
【0046】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で別段に明示的に定義されていない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「a/an/the要素、装置、構成要素、手段など」へのすべての言及は、別段に明示的な指定のない限り、要素、装置、構成要素、手段などのうちの少なくとも1つの実例を指すものとしてオープンに解釈されるべきである。
本開示のさらなる詳細、利点、および態様は、図面と併せて以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】例示的な光ファイバースプライスの側面図である。
【
図2】第2の例示的な実施形態による光ファイバースプライスの側面図である。
【
図3】第3の例示的な実施形態による光ファイバースプライスの側面図である。
【
図4】
図1の光ファイバースプライスの断面図である。
【
図5】第4の例示的な実施形態による光ファイバースプライスの側面図である。
【
図6】第5の例示的な実施形態による光ファイバースプライスの側面図である。
【
図7】光ファイバースプライスを製造するための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
次に、本発明の概念を、例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して以下により完全に説明する。
【0049】
図1は、第1の光ファイバーケーブル2とスプライス管7との間の光ファイバースプライス1の一例を示している。
図1の第1の光ファイバーケーブル2は、複数の光ファイバー6と、光ファイバー6を取り囲む第1の金属管5と、を備える。スプライス管7を使用して、第1の光ファイバーケーブル2を端子(図示せず)または第2の光ファイバーケーブル3(
図2に示すように)にスプライスし得る。
【0050】
光ファイバー6は、例えば、ガラスファイバーストランドを含み得る。
【0051】
第1の金属管5は、第1の金属材料で作製されている。スプライス管7は、第2の金属材料で作製されている。第1の金属材料5および第2の金属材料7は、好ましくは、機械的衝撃および湿潤などの他の環境的側面の両方から第1の光ファイバーケーブル2を保護するのに適している。一例によれば、第1の金属材料および第2の金属材料はステンレス鋼を含む。
【0052】
図1の光ファイバースプライス1において、スプライス管7は、第1の金属管5よりも大径である。したがって、スプライス管7は、第1の重なりセクション8において第1の金属管5を取り囲むように配置されている。第1の重なりセクション8は、スプライス管7と第1の金属管5との間に強固な接続およびシールを提供することができるのに十分な長さの延在部を有する。
【0053】
スプライス管7の内面と第1の金属管5の外面との間の第1の重なりセクション8には、第1のコーティング10が設けられている。第1のコーティング10は、好ましくは、第1の金属管5の周りにスプライス管7を配置する前に、スプライス管7の内面に適用される。したがって、スプライス管7は、一例によれば、第1のコーティング10を備え得る。
【0054】
スプライス管7は、重なりセクション8内に第1の半径方向変形部9を有する。第1の半径方向変形部9は、スプライス管7を第1の金属管5に向かって変形させている。第1の半径方向変形部9はまた、第1のコーティング10が側方だけでなく重なりセクション7内の小さな表面凹凸内にも押し込まれるように、重なりセクション8における第1のコーティング10を変形させている。第1の半径方向変形部9の深さ、ならびに第1のコーティング10の厚さおよび材料は、最適な機械的、電気的、および/またはシール特性を達成するために設計段階で決定され得る。
【0055】
図1では、第1の半径方向変形部9は、かしめ変形部として示されている。かしめ変形部は、スプライス管7の外面に設けられた円周方向に延在する溝を含む。第1の半径方向変形部9は、第1の重なりセクション8においてスプライス管7の全周に沿って、第1のコーティング10を介してスプライス管7と第1の金属管5との間に連続的な接触を提供する。第1の半径方向変形部9は、圧着変形部(図示せず)をさらに含み得、圧着変形部は、スプライス管7を第1の金属管5に機械的にロックするために、スプライス管7上に1つ以上の圧着部を備え得る。
【0056】
図1では、変形部はスプライス管7上に提供されており、一方、第1の金属管5は変形していないか、または第1のコーティング10およびスプライス管7に向かって跳ね返るように使用されている。しかしながら、他の実施形態では、スプライス管7および第1の金属管5の両方が変形させられ得る。
【0057】
好ましい例では、第1のコーティング10は第3の金属材料を含む。第3の金属材料は、第1および第2の金属材料よりも可鍛性が高い。第3の金属材料のより高い可鍛性は、材料が破壊する前に圧縮中に高度に変形させられ得るため、変形中に凹凸を埋める第1のコーティングの能力を高める。好ましい例によれば、第3の金属材料は銀を含む。好適な材料の他の例は、鉛、スズ、銅、金、ニッケル、およびインジウムである。
【0058】
図2は、本開示による光ファイバースプライス1の別の例を示している。
図2の光ファイバースプライス1は、第1の光ファイバーケーブル2およびスプライス管7に加えて、第2の光ファイバーケーブル3を備える。第2の光ファイバーケーブル3は、複数の光ファイバー12と、光ファイバー12を取り囲む第2の金属管11と、を備える。スプライス管7は、第1の金属管5および第2の金属管11それぞれよりも大径である。スプライス管7の第1の端部において、スプライス管7は第1の金属管5の周りに配置されて、スプライス管7と第1の金属管5との間に第1の重なりセクション8を提供する。第1の端部と比較してスプライス管7の反対側の端部に配置されたスプライス管7の第2の端部には、スプライス管7と第2の金属管11との間に第2の重なりセクション14が設けられている。第2のコーティング15が、第2の重なりセクション14に配置されている。スプライス管7は、第1の光ファイバーケーブル2の光ファイバー6と第2の光ファイバーケーブル3の光ファイバー12との間のスプライス16を覆う。スプライス管は、第2の重なりセクション14内に第3の半径方向変形部17を有する。
【0059】
図3は、代替的な実施形態の光ファイバースプライス1’を示している。
図3では、コーティング10’、15’は、スプライス管7’の内側面全体上に配置されている。したがって、第1のコーティング10’および第2のコーティング15’は、これらが1つの連続したコーティングを形成するため、この実施形態では同じコーティングである。したがって、スプライスの製造中、重なりセクション8、14、ひいては半径方向変形部9、17は、スプライス管7’に沿ったどこにでも配置され得る。
【0060】
図4は、
図1の光ファイバースプライス1の断面A-Aに沿った断面図を示している。最外層から開始して、光ファイバースプライス1は、スプライス管7と、第1のコーティング10と、第1の光ファイバーケーブル2の第1の金属管5と、を備える。第1の金属管5内には、第1の光ファイバーケーブル2の光ファイバー6が概略的に示されている。第1の光ファイバーケーブル2は、追加の外装層および外側ポリマーシース層などの追加の層も含え得ることが理解される。
【0061】
代替の例示的な実施形態である光ファイバースプライス1”が
図5に示されている。この実施形態では、第1の金属管5は、スプライス管7”の周りに配置されている。したがって、第1のコーティング10”は、スプライス管7”の外面上に配置されており、第1の半径方向変形部9は、第1の金属管5に配置されている。
【0062】
図6は、
図1の光ファイバースプライス1の代替的な実施形態を提示しており、ここでは光ファイバースプライス1は、第1の重なりセクション8内に第2の半径方向変形部13を備える。第2の半径方向変形部13は、第1の半径方向変形部9から軸方向に離間している。
図6では、第1の半径方向変形部9および第2の半径方向変形部13は、かしめ変形部として示されている。第2の半径方向変形部13は、第1の重なりセクション8においてスプライス管7の端部のより近くに配置されており、第1の半径方向変形部9よりもスプライス管7および第1のコーティング10内のより深くまで延在する。この構成により、水素密封シールおよび耐久性のあるスプライシングが第1の金属管5とスプライス管7との間に達成される。光ファイバースプライスは、さらなる変形部も含み得ることが理解される。
【0063】
図7は、
図2に示す光ファイバースプライス1などの光ファイバースプライス1を製造する方法を示している。
【0064】
方法のステップS1では、第1の金属管5を備える第1の光ファイバーケーブル2が提供される。
【0065】
ステップS2では、スプライス管7が提供される。スプライス管7の表面には、この時点で既に第1のコーティング10が設けられ得る。あるいは、第1のコーティングは、追加のステップで適用され得る。
【0066】
ステップS3では、スプライス管7は、第1の重なりセクション8において第1の金属管5の周りに配置される。光ファイバースプライス1が、第1の光ファイバーケーブル2がスプライスされる第2の光ファイバーケーブル3を備える場合、スプライス管7はこのステップにおいて、スプライス管が光ファイバー6、12のスプライスを覆う重なりセクション8内にスプライス管が配置される前に、第1の光ファイバーケーブル2の光ファイバー6にアクセスできかつ第2の光ファイバーケーブル3の光ファイバー12にスプライスできるように、第1の光ファイバーケーブル2の周りに最初に配置され得る。
【0067】
ステップS4では、スプライス管7は、第1の重なりセクション8においてスプライス管5に向かって変形させられ、その結果、水素密封シールが第1の金属管5とスプライス管7との間に達成される。
【0068】
任意選択のステップS5では、第2の金属管11を備える第2の光ファイバーケーブル3が提供される。このステップは、ステップS3の前に実行され得る。
【0069】
任意選択のステップS6では、スプライス管7は、第2の重なりセクション14において第2の金属管11の周りに配置される。このステップは、ステップS4の前に実行され得る。
【0070】
ステップS7では、スプライス管7は、第2の重なりセクションにおいて第2の金属管11に向かって変形させられ、その結果、水素密封シールが第2の金属管11とスプライス管7との間に達成される。
【0071】
図8では、本開示の光ファイバースプライス1、1’、1”を備える海底電力ケーブルが示されている。
図8では、海底電力ケーブルは、光ファイバースプライス1、1’、1”がコアを取り囲む支持構造体内に配置された3コアACケーブルである。他のタイプの電力ケーブル、および電力ケーブル内での光ファイバースプライス1、1’、1”の他の位置決めも可能であることが理解される。
【0072】
以上、例示的な実施形態を参照して本開示を説明したが、本発明は上述したものに限定されないことが理解されよう。例えば、部品の寸法は必要に応じて変えてもよいことが理解されよう。したがって、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得ることが意図される。
【外国語明細書】