(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102003
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003180
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023005553
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】高草 正
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA17
2C056EB07
2C056EB30
2C056EB36
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC14
2C056EC28
2C056FA10
2C056HA47
(57)【要約】
【課題】印刷媒体を適切に乾燥させつつノズルの乾燥を防止するインクジェット印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷媒体Pにインクを吐出して印刷するインクジェットヘッドを有するヘッドユニット2と、印刷媒体Pの複数の領域ごとに乾燥風を送風するものであって、領域ごとに乾燥能力を調整可能な乾燥ユニット4と、領域ごとに当該領域の乾燥条件に応じて乾燥能力を調整するよう乾燥ユニット4を制御する制御部6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にインクを吐出して印刷するインクジェットヘッドと、
印刷媒体の複数の領域ごとに乾燥風を送風するものであって、前記領域ごとに乾燥能力を調整可能な乾燥部と、
前記領域ごとに当該領域の乾燥条件に応じて乾燥能力を調整するよう前記乾燥部を制御する制御部と
を備える、インクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記領域ごとに当該領域の前記乾燥条件としての印字率に応じて乾燥能力を調整するよう前記乾燥部を制御する、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドは、印刷媒体に対して相対移動しつつ印刷を行うものであり、
前記制御部は、前記領域ごとに当該領域の前記乾燥条件としての前記インクジェットヘッドとの位置関係に応じて乾燥能力を調整するよう前記乾燥部を制御する、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に係り、特に、印刷媒体を適切に乾燥させつつノズルの乾燥を防止するインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印字媒体に印字ヘッドからインクを吐出して印字を行うインクジェット印刷装置において、印字媒体に載せたインク滴を乾燥させるようにした送風機構が従来知られている。
【0003】
特許文献1では、印刷媒体の乾燥のために温風を送風する際におけるノズルの乾燥防止のためにインクジェットヘッドに風除けのガードを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、風除けのガードを設けているものの、温風の一部はガードの下へ回り込むため、ノズルの乾燥を十分に防止できないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、印刷媒体を適切に乾燥させつつノズルの乾燥を防止するインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、
印刷媒体にインクを吐出して印刷するインクジェットヘッドと、
印刷媒体の複数の領域ごとに乾燥風を送風するものであって、前記領域ごとに乾燥能力を調整可能な乾燥部と、
前記領域ごとに当該領域の乾燥条件に応じて乾燥能力を調整するよう乾燥部を制御する制御部と
を備えたことにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインクジェット印刷装置の特徴によれば、印刷媒体を適切に乾燥させつつノズルの乾燥を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示したインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示したインクジェット印刷装置が備えるヘッドユニットの概略構成図である。
【
図4】(a)は、
図1に示したインクジェット印刷装置が備える乾燥ユニットを上から見た上面図であり、(b)は、(a)に示した乾燥ユニットを左から見た側面図である。
【
図5】
図1に示したインクジェット印刷装置が備える乾燥ユニットの詳細を示した斜視図である。
【
図6】
図1に示したインクジェット印刷装置が備える乾燥ユニットのバルブおよびダクト周辺について詳細を示した斜視図である。
【
図7】
図1に示したインクジェット印刷装置におけるバルブc、バルブhの出力選択によって主走査印刷領域への送風エアー温度が変化する様子を示した図である。
【
図8】
図1に示したインクジェット印刷装置における処理内容を示したフローチャートである。
【
図9】
図1に示したインクジェット印刷装置において印刷媒体に印刷された印刷領域の一例を示した図である。
【
図10】(a)は、
図8に示した印刷領域を上方から見た平面図である。(b)は、(a)に示した領域D202のデータを示しており、ダクトdのうちの1つで乾燥させるエリアを示している。
【
図11】印字率-乾燥温度データの一例を示した図である。
【
図12】第2実施形態におけるバルブの一例を示した図である。
【
図13】第3実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【
図14】
図13に示したインクジェット印刷装置が備えるヘッドユニットおよび主走査駆動ガイドを上から見た上面図である。
【
図15】(a)は、
図13に示したインクジェット印刷装置が備える乾燥ユニットを上から見た上面図であり、(b)は、(a)に示した乾燥ユニットを左から見た側面図である。
【
図16】
図13に示したインクジェット印刷装置が備える乾燥ユニットの詳細を示した斜視図である。
【
図17】
図13に示したインクジェット印刷装置が備える乾燥ユニットのバルブおよびダクト周辺について詳細を示した斜視図である。
【
図18】
図13に示したインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図19】
図13に示したインクジェット印刷装置におけるヘッドユニットの位置とバルブの制御パラメータとの関係の説明図である。
【
図20】
図13に示したインクジェット印刷装置におけるヘッドユニットの位置とバルブの制御パラメータとの関係の説明図である。
【
図21】
図13に示したインクジェット印刷装置におけるバルブの出力の波形と、ダクトから送風される乾燥風の温度および風量との関係の説明図である。
【
図22】
図13に示したインクジェット印刷装置におけるバルブの出力の波形と、ダクトから送風される乾燥風の温度および風量との関係の説明図である。
【
図23】
図13に示したインクジェット印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図24】
図13に示したインクジェット印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図25】
図13に示したインクジェット印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図26】
図13に示したインクジェット印刷装置における乾燥風の送風開始時の送風の状態を示す図である。
【
図27】
図13に示したインクジェット印刷装置において右方向に移動しているヘッドユニットが乾燥ユニットの中央付近を走行している時点における乾燥風の送風の状態を示す図である。
【
図28】
図13に示したインクジェット印刷装置においてヘッドユニットが右方向に移動しつつ行った1パス分の印刷が終了した時点における乾燥風の送風の状態を示す図である。
【
図29】
図13に示したインクジェット印刷装置におけるヘッドユニットの左方向への移動開始時の乾燥風の送風の状態を示す図である。
【
図30】第4実施形態におけるMVバルブのポートの出力口数の制御の説明図である。
【
図31】第4実施形態におけるMVバルブのポートの出力口数の制御の説明図である。
【
図32】第4実施形態におけるMVバルブのポートの出力口数の制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0011】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図、
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、ヘッドユニット2と、主走査駆動ガイド3と、乾燥ユニット(乾燥部に相当)4と、フラットベッドユニット5と、制御部6とを備えている。
【0014】
ヘッドユニット2は、主走査駆動ガイド3に沿って、主走査方向(左右方向)に移動しながら、印刷媒体Pに印刷を行う。
【0015】
図3は、ヘッドユニット2の概略構成図である。
図3に示すように、ヘッドユニット2は、4つのインクジェットヘッド11と、インクジェットヘッド11を保持するヘッドホルダ12とを備えている。
【0016】
4つのインクジェットヘッド11は、それぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。インクジェットヘッド11は、下面である吐出面11aに開口した複数のノズルを有し、ノズルからインクを吐出する。
【0017】
印刷媒体Pは、フラットベッドユニット5により前から後ろ方向に搬送される。フラットベッドユニット5は、図示しない搬送手段により移動させられることで、印刷媒体Pを搬送する。
【0018】
主走査駆動ガイド3の上方には、乾燥ユニット4が設けられている。乾燥ユニット4は、印刷媒体Pに対して、乾燥風を送風することにより、印刷媒体Pを乾燥させる。
【0019】
図4(a)は、乾燥ユニット4を上から見た上面図であり、
図4(b)は、乾燥ユニット4を左から見た側面図である。
【0020】
乾燥ユニット4は、ファンfcと、ファンfhと、ヒータHと、バルブcと、バルブhと、ダクトdとを備えている。
【0021】
バルブc、バルブh、ダクトdは主走査方向(左右方向)に沿って複数配置され、主走査印刷領域を複数のエリアに区分した時の各エリア(領域)に1組ずつ配置されるものである。装置の左から番号を1,2,3,....,nと付番する。すなわち、主走査方向における左端部をバルブc1、バルブh1、ダクトd1とし、主走査方向における右端部をバルブcn、バルブhn、ダクトdnと表記する。なお該部品の機能説明などで総称として表現する際は番号を略してバルブc、バルブh、ダクトdと称すことにする。
【0022】
乾燥ユニット4は、乾燥ユニット4の装置設置環境のエアーを取り込んで非加温のまま印刷エリアに送風する機能、および装置設置環境のエアーを取り込んでヒータHで加温した後印刷エリアに送風する機能、および非加温エアーと加温エアーを切り替えて印刷エリアに送風する機能を有する。
【0023】
非加温エアーと加温エアーとの切り替えは、主走査印刷領域を複数のエリアに区分したところに配置されたダクトd単位に可能となっている。主走査印刷領域とは、主走査方向に区分された印刷領域である。
【0024】
図4(b)に示すように、ファンfcから取り込まれた装置設置環境のエアーはバルブcに送られ、さらにバルブcからダクトに送られて主走査印刷領域に送風される。また、ファンfhから取り込まれた装置設置環境のエアーはヒータに送られて加温された後、バルブhに送られ、さらにバルブhからダクトに送られて主走査印刷領域に送風される。
【0025】
図5は、乾燥ユニット4の詳細を示した斜視図であり、
図6は、乾燥ユニット4のバルブおよびダクト周辺について詳細を示した斜視図である。ここでは、主走査方向における左端部を例に挙げて説明する。
【0026】
図5、
図6に示すように、ファンfcからの非加温エアーは、ポートca(c1a)受けに接続されたバルブc(c1)のポートcaからバルブcに送られる。更に、バルブcの出力として、ダクトd(d1)のポートcb(c1b)受けが選択されている時は、ダクトdに送られてダクトdの下面に形成された送風口21から主走査印刷領域に送風される。
【0027】
一方、バルブcの出力として、ダクトdのポートcc(c1c)が選択されている時はポートccから上方に排出され、主走査印刷領域には送風はなされない。
【0028】
ファンfhからヒータHを介して加温されたエアーは、ポートha(h1a)受けに接続されたバルブhのポートhaからバルブhに送られる。更に、バルブhの出力として、ダクトのポートhb(h1b)受けが選択されている時はダクトdに送られてダクトdの送風口21から主走査印刷領域に送風される。
【0029】
一方、バルブhの出力として、ダクトdのポートhc(h1c)が選択されている時はポートhcから上方に排出され、主走査印刷領域には送風はなされない。
【0030】
このバルブ出力選択を随時変更することで主走査印刷領域に送風されるエアーの温度を調整することができる。
【0031】
図7は、インクジェット印刷装置1におけるバルブc、バルブhの出力選択によって主走査印刷領域への送風エアー温度が変化する様子を示した図である。
図7では、バルブc、バルブhの出力は波形として表現するものとし、バルブc、バルブhが、ポートcb、ポートhbを選択している時を「1」、バルブc、バルブhが、ポートcc、ポートhcを選択している時を「0」として表現している。
【0032】
装置設置環境温度のエアー温度をtc、ヒータ加温後のエアー温度をthとすると、例えば、t1時点からt2時点の間、バルブcが全開かつバルブhが全閉の場合、非加温エアーが供給されるため、主走査印刷領域への送風エアー温度D102はエアー温度tcとなる。
【0033】
また、例えば、t2時点からt3時点の間、バルブcが全閉かつバルブhが全開の場合、加温エアーが供給されるため、主走査印刷領域への送風エアー温度D102はエアー温度thとなる。
【0034】
t3時点からt4時点の間は、バルブcが全開かつバルブhが全閉である間隔と、バルブcが全閉かつバルブhが全開である間隔とが同時間で交互に繰り返している。
【0035】
また、t4時点からt5時点の間は、バルブcが全開かつバルブhが全閉である間隔が、バルブcが全閉かつバルブhが全開である間隔より長くなるように交互に繰り返している。そのため、t4時点からt5時点の間におけるエアー温度tch1は、t3時点からt4時点の間におけるエアー温度tch2より低くなる。
【0036】
また、t5時点からt6時点の間は、バルブcが全開かつバルブhが全閉である間隔が、バルブcが全閉かつバルブhが全開である間隔より短くなるように交互に繰り返している。そのため、t5時点からt6時点の間におけるエアー温度tch3は、t3時点からt4時点の間におけるエアー温度tch2より高くなる。
【0037】
すなわち、エアー温度tc、th、tch2、tch1、tch3は以下の(数式1)のような関係性となる。
【0038】
tc<tch1<tch2<tch3<th (数式1)
インクジェット印刷装置1による風量、加温エアー温度は以下のように制御している。
【0039】
<風量の制御>
インクジェット印刷装置1は、予めバルブ1からバルブnまでの主走査印刷領域に送風されるエアーによって、メディア浮きが発生したり、着滴ずれが発生したりすることのない風量を測定しておき、その風量をファンfcの風量とファンfhの風量に適用する。
【0040】
制御部6は、ファンfcの風量とファンfhの風量は同量であり、バルブc出力がポートcbを選択している時はバルブh出力はポートhcを選択し、バルブh出力がポートhbを選択している時はバルブc出力はポートccを選択するようにする。これにより、ダクトdからの総風量は、ポートhcとポートcbの総風量と同量、即ち、ファンfcの総風量=ファンfhの総風量=ダクトdからの総風量=ポートhcとポートcbの総風量となる。そのため、各バルブにおいて、バルブc出力、バルブh出力がともにポートcb、ポートhbを選択したりバルブc出力、バルブh出力がともにポートcc、ポートhcを選択したりすることがないようにしてダクトからの総風量が変化しないようにしている。つまり、印刷障害に至るようなことがないように配慮している。
【0041】
<加温エアー温度>
バルブh出力はポートhbおよびポートhcの必ずいずれか一方を選択するようにしている。
【0042】
そうすることで、ファンfhからヒータを介して送風されてきたエアーは常に一定量が流れるようになり、各バルブhbから送風されるエアーの温度が一定になるようになっている。
【0043】
例えば、いずれかのバルブcにおいて、ポートcb出力をダクトに送風する時、それとペアのバルブhのポートhbを閉じるとともにポートhcも閉じてしまうと、ヒータから排出されるエアー量が減りヒータ内部の温度が上がって、いずれかポートhbを使用しているダクトから送風されるエアー温度が高くなってしまうため、そのような障害が発生ないように配慮している。
【0044】
また、エアーの温度調整は、装置環境温度エアーを各ダクトに送風して該ダクト内に専用のヒータと温度センサを用いて調整することは可能だが、所望の温度への調整には時間を要してしまう。
【0045】
インクジェット印刷装置1の制御では、温度tcの装置環境温度エアーと温度thに加温済みのエアーを所望の時間比率で切り替えて適用するため短時間で所望の温度のエアー(乾燥風)を得ることができる。
【0046】
<印刷処理>
インクジェット印刷装置1が1パス分の印刷データを受信する。
【0047】
そして、ヘッドユニット2が主走査しながら受信した印刷データに基づいてインクジェットヘッド11から印刷媒体P上にインクを吐出させる。次に印刷媒体Pを前方向に移動させるとともに次の1パス分の印刷データを受信して、再度ヘッドユニット2を逆方向に主走査しながら該印刷データに基づいてインクジェットヘッド11から印刷媒体P上にインクを吐出させる。
【0048】
これを繰り返すことにより、印刷処理が実行される。上述した乾燥ユニット4による乾燥処理は、この印刷処理の中に導入、適用するものである。
【0049】
図2に戻り、インクジェット印刷装置1の制御構成について説明する。
【0050】
図2に示すように、インクジェット印刷装置1の制御部6は、印刷データメモリ61と、印字率計算手段62と、印字率メモリ63と、乾燥温度メモリ64と、バルブドライバ65とを有している。
【0051】
印刷データメモリ61は、受信した印刷データを記憶する。
【0052】
印字率計算手段62は、受信した印刷データに基づいて、印刷媒体Pにおける複数の領域ごとに印字率を算出する。ここで、印字率は、インクジェット印刷装置1において、印刷媒体Pにおける印刷された領域の乾燥しやすさに影響する乾燥条件として用いられる。
【0053】
印字率メモリ63は、印字率計算手段62により算出された複数の領域ごとの印字率を記憶する。
【0054】
乾燥温度メモリ64は、印字率と乾燥温度との関連付けたデータを記憶している。ここで、乾燥温度は、乾燥ユニット4が印刷媒体Pに送風する乾燥風の温度である。
【0055】
バルブドライバ65は、乾燥温度メモリ64から、ダクトdの配置エリア毎の乾燥温度を読み出し、現状の装置環境温度と設定されたヒータ温度とに基づいて、ダクトdの配置エリア毎のバルブcとバルブhからの送風温度を求め、該バルブ制御パラメータを算出して設定する。
【0056】
このとき、1つのダクトdの配置エリアの乾燥温度をtdにする時、現状の装置環境温度:tc、ヒータ温度:hth、ヒータHによって加温されたエアーが主走査印刷領域に到達するまでに低下する温度:dth、ヒータHによって加温されたエアーが主走査印刷領域に到達した時の温度:tc、バルブドライバ制御サイクル時間をTvとしたとき、ポートcbかつポートhcが選択される時間をTcb、ポートhbかつポートccが選択される時間をThbとすると、Tcb、Thbは以下の(数式2)~(数式4)に示すように算出される。
【0057】
th=hth-dth (数式2)
Thb=Tv*(td-tc)/(th-tc) (数式3)
Tcb=Tv-Thb (数式4)
例えば、td=30(℃)、tc=20(℃)、hth=51(℃)、dth=1(℃)とすると、Tcb、Thbは以下のとおりとなる。
【0058】
th=51-1=50
Thb=Tv*(30-20)/(50-20)=Tv/3
Tcb=Tv-Tv/3=Tv*2/3
このThb、Tcbを該エリアの配置ダクトのバルブドライバ65に設定される。
【0059】
<処理内容>
図8は、インクジェット印刷装置1における処理内容を示したフローチャートである。
【0060】
ステップS1において、インクジェット印刷装置1が1パス分の印刷データを受信する。制御部6は、受信した1パス分の印刷データを印刷データメモリ61に記憶する。この1パス分の印刷データは、後述する
図8に示す領域D201に相当する印刷データであり、これからヘッドユニット2が左方向に主走査して印刷媒体P上に印刷される画像のデータである。
【0061】
ステップS2において、印字率計算手段62は、受信した印刷データに基づいて、印刷媒体Pにおける複数の領域ごとに印字率を算出し、印字率メモリ63にストア(記憶)する。
【0062】
図9は、インクジェット印刷装置1において印刷媒体Pに印刷された印刷領域の一例を示しており、
図10(a)は、
図9に示した印刷領域を上方から見た平面図である。
図10(b)は、
図10(a)に示した領域D202のデータを示しており、ダクトdのうちの1つで乾燥させるエリアを示している。ここでは、この領域D202の印刷データの中身を示している。
【0063】
図10(b)では、●はインクを吐出してドットを形成することを示している。また○にはインクは吐出させず、ドット形成はしないことを示している。この例では
図10(b)の領域には全部で50ドットあり、●が25個、○が25個あるため、印字率は50%となる。そのため、印字率メモリ63の領域D202に対応する部分には「50」がストアされている。
【0064】
図8に戻り、ステップS3において、制御部6は、印字率-乾燥温度データを参照して、各エリア(領域)の印字率から各エリアに適用する乾燥温度を導出し、乾燥温度メモリ64にストア(記憶)する。ここで、制御部6には予めインク種、印刷媒体種、印刷モード毎に、印字率-乾燥温度データが記憶されている。具体的には、使用するインク、印刷対象媒体、その時の印刷モードによって、どのくらいの印字率のところにはどのくらいの乾燥温度が必要かが異なるため、これら(インク、印刷媒体、印刷モード)の条件毎に、印字率に応じて必要十分な乾燥温度の情報を用意している。
【0065】
制御部6は、
図11に示すような印字率-乾燥温度データを予め記憶している。乾燥温度は、乾燥ユニット4の乾燥能力を示すものである。印字率が高いほど、印刷媒体Pが乾燥しにくいため、高い乾燥温度が設定されている。制御部6は、
図11のような印字率-乾燥温度データから、印字率に対して必要な乾燥温度を抽出することができる。
【0066】
そして、制御部6は、印字率メモリ63からダクトdの配置エリア毎の印字率を読み出し、印刷に使用するインク、印刷媒体、及び印刷モードに対応する「印字率-乾燥温度データ」を参照して、ダクトdの配置エリア毎に適用する乾燥温度を導出し、乾燥温度メモリ64にストアする。
【0067】
ステップS4において、制御部6は、現状の装置環境温度と、ヒータ温度と、各エリアに適用する乾燥温度から各エリアのバルブ制御パラメータを算出し、バルブドライバ65に設定する。
【0068】
これにより、
図4に示したバルブcにはファンfcによって装置環境温度のエアーが入力し、バルブhにはファンfhから送られてくる装置環境温度のエアーがヒータによって一定温度に加温されて入力する。
【0069】
インクジェット印刷装置1には予めバルブhによって供給される乾燥エアーがその時の印刷条件(インク、印刷媒体、印刷モード、印字率)の範囲を乾燥させるだけの必要十分なヒータ温度の情報を用意してあり、印刷動作に入る前にヒータ温度を設定しておく。なおヒータ設定温度には、加温されたエアーが主走査印刷領域に到達するまでに低下する量も考慮されている。
【0070】
ステップS5において、制御部6は、1パス印刷を実行する。具体的には、制御部6は、ヘッドユニット2を主走査させながら印刷データメモリ61から印刷データを読み出してヘッドユニット2に送出し、1パス印刷を実行する。
【0071】
このように、インクジェット印刷装置1では、印刷媒体Pにインクを吐出して印刷するヘッドユニット2と、印刷媒体Pの複数の領域ごとに乾燥風を送風するものであって、領域ごとに乾燥能力を調整可能な乾燥ユニット4と、領域ごとに当該領域の乾燥条件に応じて乾燥能力を調整するよう乾燥ユニット4を制御する制御部6とを備える。
【0072】
これにより、印刷媒体Pを適切に乾燥させつつ、過剰な乾燥能力によりインクジェットヘッド11のノズルを乾燥させることは防止できる。
【0073】
具体的には、制御部6は、領域ごとに当該領域の乾燥条件としての印字率に応じて乾燥能力を調整するよう乾燥ユニット4を制御する。これにより、印字率が高いほど印刷媒体Pが乾燥しにくいのに対し、領域ごとの印字率に応じた乾燥能力で印刷媒体Pを乾燥させつつ、乾燥能力が過剰になることによるノズルの乾燥を抑制することが可能である。
【0074】
また、インクジェット印刷装置1では、風量はメディア浮きや着滴ずれによる画質劣化が発生しない範囲の風量とし、各エリアの印字率に応じて、着滴ずれやインク不吐による画質劣化が発生しない温度の乾燥風を適用することができるので、ノズルの乾燥による印刷品質を低下させることなく、最大の生産性で印刷することが可能となる。
【0075】
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態の乾燥ユニットのバルブを変更した第2実施形態について説明する。
【0076】
第1実施形態では、バルブc,hは2つの出力ポートが各々単一の出力口で構成されているが、第2実施形態では、複数の出力口を持つバルブを用いる。
【0077】
図12は、第2実施形態におけるバルブの一例を示した図である。
【0078】
図12に示すような1つの出力ポートに複数の出力口(16個)を持つバルブ(以降、MVバルブと記す)を、第1実施形態のバルブc、バルブhの位置に使用した場合(MVバルブc、MVバルブhと記す)、第1実施形態のバルブではバルブc、バルブhの「ポートcbとポートhc」、「ポートhbとポートcc」の選択時間で主走査印刷領域送風エアー温度を調整していたが、MVバルブc、MVバルブhの各々のポートb、ポートcの出力口の開閉数によって調整可能である。
【0079】
MVバルブc、MVバルブhの各々のポートb、ポートcの出力口がn個の時、MVバルブhのポートb、MVバルブcのポートcの開口数:m、MVバルブhのポートc、MVバルブcのポートbの開口数:n-m、装置設置環境温度のエアー温度:tc、ヒータ加温後のエアー温度:thとすると、下記(数式5)となる。
【0080】
主走査印刷領域送風エアー温度=((n-m)*tc+th*m)/n (数式5)
<動作>
第1実施形態のバルブにMVバルブを搭載した場合は、
図8に示したフローチャートのステップS4においてバルブドライバの制御パラメータが各バルブのポート選択時間の代わりに各MVバルブの出力ポートの出力口開口数となり、以下のようになる。
【0081】
1つのダクトの配置エリアの乾燥温度をtdにする時、現状の装置環境温度:tc、ヒータ温度:hth、
ヒータによって加温されたエアーが主走査印刷領域に到達するまでに低下する温度:dth、
ヒータによって加温されたエアーが主走査印刷領域に到達した時の温度:tc、
各MVバルブの各出力ポートの出力口数:n、
MVバルブhのポートb、MVバルブcのポートcの開口数:m、MVバルブhのポートc、MVバルブcのポートbの開口数:n-mとした時、ヒータ加温後のエアー温度thは、下記(数式6)で表される。
【0082】
th=hth-dth (数式6)
m=n*(td-tc)/(th-tc)
一例として、td=30℃、tc=20℃、hth=51℃、dth=1℃とすると、th=51-1=50 m=n*(30-20)/(50-20)=n/3 となり、
図12のように各MVバルブの各出力ポートの出力口数が16の場合は、m=16/3=5.3=5個、n-m=16-5=11個となり、この値を該エリアの配置ダクトのバルブドライバ65に設定する。
【0083】
<交互風方式と混合風方式の特徴>
第1実施形態と第2実施形態の構成の規模としては、第1実施形態の交互風方式の方が第2実施形態の混合風方式よりも良い。
【0084】
具体的には、第2実施形態には、以下3点の課題がある。
(1)MVバルブは出力口の数が多いためバルブ部の面積、体積が大きくなる。
(2)MVバルブは出力口、1つ1つを開閉させるため回路規模も大きくなる。
(3)MVバルブ使用の方がコスト高になる。
【0085】
また、乾燥温度の設定分解能としては、第1実施形態の交互風方式の方が第2実施形態の混合風方式よりも良い。
【0086】
具体的には、第2実施形態には、以下2点の課題がある。
(1)第1実施形態のバルブ使用ではバルブcのエアーとバルブhのエアーの時間比で乾燥温度を設定できるため、温度設定を細かくできる。
(2)第2実施形態のMVバルブ使用では温度の設定分解能が出力口数に依存するためあまり細かくできない。
【0087】
一方、乾燥温度一様性の観点においては、第2実施形態の混合風方式の方が第1実施形態の交互風方式よりも良い。具体的には、MVバルブ使用ではバルブcとバルブhのエアーがダクトで混合されるので主走査印刷領域に達した時の乾燥温度の一様性が高いという利点がある。
【0088】
[第3実施形態]
次に、上述した第1実施形態の一部を変更した第3実施形態について説明する。
【0089】
図13は、第3実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【0090】
図13に示すように、第3実施形態に係るインクジェット印刷装置1Aは、上述した第1実施形態のインクジェット印刷装置1のヘッドユニット2、主走査駆動ガイド3、乾燥ユニット4、および制御部6を、それぞれヘッドユニット2A、主走査駆動ガイド3A、乾燥ユニット4A、および制御部6Aに置き換えた構成である。
【0091】
図14は、ヘッドユニット2Aおよび主走査駆動ガイド3Aを上から見た上面図である。
図14に示すように、ヘッドユニット2Aは、第1実施形態のヘッドユニット2に位置センサ71を追加した構成である。
【0092】
位置センサ71は、後述する主走査駆動ガイド3Aのスケール72を読み取り、主走査方向におけるヘッドユニット2Aの位置を検出する。位置センサ71は、主走査方向におけるヘッドユニット2Aの位置を示す位置信号SNSを出力する。位置センサ71は、ヘッドユニット2Aのヘッドホルダ12の左端に取り付けられている。
【0093】
主走査駆動ガイド3Aは、第1実施形態の主走査駆動ガイド3にスケール72を追加した構成である。スケール72は、主走査方向をx軸とし、主走査駆動ガイド3Aの左端位置をx=0としたときのx座標を示すものである。
【0094】
図15(a)は、乾燥ユニット4Aを上から見た上面図であり、
図15(b)は、乾燥ユニット4Aを左から見た側面図である。
図15(a)、(b)に示すように、乾燥ユニット4Aは、第1実施形態の乾燥ユニット4のダクトdをダクトeに置き換えた構成である。乾燥ユニット4Aは、主走査駆動ガイド3Aの後方に配置されている。
【0095】
図16は、乾燥ユニット4Aの詳細を示した斜視図であり、
図17は、乾燥ユニット4Aのバルブおよびダクト周辺について詳細を示した斜視図である。
【0096】
図16、
図17に示すように、ダクトeは、その前面に形成された複数の送風口76を有する。この送風口76により、ヘッドユニット2Aの後方から主走査印刷領域に対して送風し、その領域を乾燥させる。印刷媒体Pは1パス分の印刷が行われるごとに前方向に移動していくため、ヘッドユニット2Aが主走査して印刷が行われている時が最も乾燥効果が高いが、送風したエアーは印刷中の領域に留まることなくそれ以前に印刷した領域にも届く。このため、印刷媒体Pの印刷された領域全体に乾燥効果を与えることができる。
【0097】
図18は、インクジェット印刷装置1Aの制御系の構成を示すブロック図である。
図18に示すように、制御部6Aは、位置カウンタ81と、パラメータメモリ82と、バルブドライバユニット83と、CPU84とを備えている。なお、
図18では、乾燥ユニット4Aの制御に関する構成以外の図示を省略している。
【0098】
位置カウンタ81は、位置センサ71からの位置信号SNS、およびダクト間距離情報DCTに基づき、互いに隣接する2つのダクトeの境界位置にヘッドユニット2Aの左端が到達すると、境界信号BNDとして「1」を出力する。
【0099】
ここで、ダクト間距離情報DCTは、主走査方向における1つのダクトeの長さ(幅)を示す情報である。ダクト間距離情報DCTは、予めCPU84により位置カウンタ81に設定されている。また、境界信号BNDは、互いに隣接する2つのダクトeの境界位置にヘッドユニット2Aの左端があるとき以外においては「0」である。
【0100】
パラメータメモリ82は、後述する制御パラメータFWD5,FWD4,FWD3,FWD2,FWD1,HUP,PER1,PER2,PER3,PER4,PER5,EXPを記憶している。
【0101】
バルブドライバユニット83は、バルブc1~cn,h1~hnのそれぞれに対応する複数のバルブドライバ(図示せず)を有する。バルブドライバは、制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,PER1~PER5,EXPのいずれかが設定されるレジスタ(図示せず)を有し、設定された制御パラメータに基づき、当該バルブドライバに対応するバルブc,hを駆動させる。
【0102】
CPU84は、インクジェット印刷装置1Aの各部の動作を制御する。具体的には、CPU84は、ヘッドユニット2Aを主走査方向に移動させつつインクジェットヘッド11からインクを吐出させて1パス分の印刷を行った後、フラットベッドユニット5により印刷媒体Pを前方向に移動させる。次いで、CPU84は、ヘッドユニット2Aを主走査方向における逆方向に移動させつつ、次の1パス分の印刷を行う。CPU84は、これを繰り返すことにより、印刷処理を実行する。
【0103】
この印刷処理中において、CPU84は、印刷された印刷媒体Pを乾燥させるよう乾燥ユニット4Aを制御する。具体的には、CPU84は、各ダクトeに対応する印刷媒体Pの領域ごとに当該領域の乾燥条件としてのインクジェットヘッド11との位置関係に応じて乾燥能力を調整するよう乾燥ユニット4Aを制御する。インクジェット印刷装置1Aでは、CPU84は、各ダクトeにおける乾燥風の温度および風量を調整することにより、各ダクトeに対応する印刷媒体Pの領域ごとの乾燥能力(各ダクトeの乾燥能力)を調整する。
【0104】
具体的には、CPU84は、主走査方向に移動するヘッドユニット2Aの位置に応じて、バルブc1~cn,h1~hnのそれぞれに対応するバルブドライバに、制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,PER1~PER5,EXPのいずれかを設定する。
【0105】
ここで、CPU84は、各ダクトeの乾燥能力を、
図19、
図20に示すようなヘッドユニット領域91、下流側ヘッドユニット外隣接領域92、上流側ヘッドユニット外隣接領域93、およびその他領域94に分けて管理する。ここで、
図19、
図20の例では、ヘッドユニット2Aは左から右へ移動している。
【0106】
ヘッドユニット領域91は、主走査方向におけるヘッドユニット2Aが存在する領域であり、ヘッドユニット2Aの左端から右端までの領域である。
図19、
図20に示すように、ヘッドユニット領域91内の各ダクトeの各バルブc,hを駆動させる制御パラメータが設定されるレジスタ名をHUPとする。また、その制御パラメータ名もHUPとする。すなわち、制御パラメータHUPは、ヘッドユニット領域91内の各ダクトeの各バルブc,hに対応する各バルブドライバのレジスタに設定される制御パラメータである。本実施形態では、ヘッドユニット領域91は、ダクトeの4個分の幅の領域である。
【0107】
下流側ヘッドユニット外隣接領域92は、ヘッドユニット2Aの移動方向におけるヘッドユニット2Aの下流側に隣接する領域である。本実施形態では、下流側ヘッドユニット外隣接領域92は、ダクトeの5個分の幅の領域である。
【0108】
図19に示すように下流側ヘッドユニット外隣接領域92内の各ダクトeの各バルブc,hを駆動させる制御パラメータが設定される各レジスタ名を、ヘッドユニット2Aに近い方からFWD1~FWD5とする。また、それらの制御パラメータ名もFWD1~FWD5とする。すなわち、制御パラメータFWD1~FWD5は、それぞれ下流側ヘッドユニット外隣接領域92内においてヘッドユニット2Aに最も近いダクトeから5番目に近いダクトeの各バルブc,hに対応する各バルブドライバのレジスタに設定される制御パラメータである。
【0109】
上流側ヘッドユニット外隣接領域93は、ヘッドユニット2Aの移動方向におけるヘッドユニット2Aの上流側に隣接する領域である。本実施形態では、上流側ヘッドユニット外隣接領域93は、下流側ヘッドユニット外隣接領域92と同様に、ダクトeの5個分の幅の領域である。
【0110】
図20に示すように、上流側ヘッドユニット外隣接領域93内の各ダクトeの各バルブc,hを駆動させる制御パラメータが設定される各レジスタ名を、ヘッドユニット2Aに近い方からPER1~PER5とする。また、それらの制御パラメータ名もPER1~PER5とする。すなわち、制御パラメータPER1~PER5は、それぞれ上流側ヘッドユニット外隣接領域93内においてヘッドユニット2Aに最も近いダクトeから5番目に近いダクトeの各バルブc,hに対応する各バルブドライバのレジスタに設定される制御パラメータである。
【0111】
その他領域94には、下流側ヘッドユニット外隣接領域92より下流側の領域と、上流側ヘッドユニット外隣接領域93より上流側の領域とがある。
図19、
図20に示すように、その他領域94内の各ダクトeの各バルブc,hを駆動させる制御パラメータが設定されるレジスタ名をEXPとする。また、その制御パラメータ名もEXPとする。すなわち、制御パラメータEXPは、その他領域94内の各ダクトeの各バルブc,hに対応する各バルブドライバのレジスタに設定される制御パラメータである。
【0112】
ここで、パラメータメモリ82において、上述の制御パラメータFWD5のデータとして後述する
図21の期間T4の波形が設定され、制御パラメータFWD4のデータとして期間T9の波形が設定されている。また、制御パラメータFWD3のデータとして
図22の期間T10の波形が設定され、制御パラメータFWD2のデータとして
図21の期間T5の波形が設定されている。また、制御パラメータFWD1,HUP,PER1のデータとして
図22の期間T7の波形が設定され、制御パラメータPER2~PER5,EXPのデータとして
図21の期間T1の波形が設定されている。
【0113】
これにより、後述するように、各ダクトeに対応する印刷媒体Pの領域ごとに当該領域のインクジェットヘッド11との位置関係に応じて各ダクトeにおける乾燥風の温度および風量が調整される。
【0114】
次に、インクジェット印刷装置1Aにおけるバルブc,hの出力の波形と、ダクトeから送風される乾燥風の温度および風量との関係について、
図21、
図22を参照して説明する。
【0115】
図21、
図22でも前述の
図6と同様に、バルブc、バルブhの出力は波形として表現するものとし、バルブc、バルブhが、それぞれポートcb、ポートhbを選択している時を「1」、バルブc、バルブhが、それぞれポートcc、ポートhcを選択している時を「0」として表現している。
【0116】
ここで、インクジェット印刷装置1Aでも第1実施形態のインクジェット印刷装置1と同様に、ファンfcの風量とファンfhの風量とは同量としている。
【0117】
また、インクジェット印刷装置1Aでは、バルブc出力がポートcbを選択している時はバルブh出力はポートhcを選択、またはバルブh出力がポートhbを選択している時はバルブc出力はポートccを選択、またはバルブc出力がポートccを選択かつバルブh出力がポートhcを選択としている。これにより、1つのダクトeからの単位時間あたりの風量は、0以上で、ポートcbからの風量、すなわちポートhbからの風量以下となる。
【0118】
また、各バルブc,hにおいて、バルブc出力、バルブh出力がそれぞれポートcb、ポートhbを選択して印刷障害に至ることがないようにしている。
【0119】
図21の期間T0では、ポートcb出力とポートhc出力とが選択されており、ダクトeからはファンfcからの温度tc、風量avのエアー(乾燥風)が送風される。なお、ファンfcのエアーは、すべてのバルブcのポートcbまたはポートccから排出されるため、av=ファンfcの総風量/nとなる。
【0120】
期間T1では、ポートcc出力とポートhb出力とが選択されており、ダクトeからはファンfhからヒータHを介して加温された温度th、風量avのエアー(乾燥風)が送風される。ファンfhのエアーは、すべてのバルブhのポートhbまたはポートhcから排出されるため、av=ファンfhの総風量/nとなる。
【0121】
期間T2では、ポートcb出力とポートhc出力とが選択された時間と、ポートcc出力とポートhb出力とが選択された時間とが等間隔で繰り返されている。このため、ダクトeからは温度tcと温度thとの中間の温度tch22、風量avのエアー(乾燥風)が送風される。ファンfcの風量=ファンfhの風量であるため、av=ファンfcの総風量/n=ファンfhの総風量/nとなる。
【0122】
期間T3では、ポートcb出力とポートhc出力とが選択された時間と、この時間の1/3の、ポートcc出力とポートhb出力とが選択された時間とが交互に繰り返されている。このため、ダクトeからは温度tch22よりも温度tcに近い温度tch21、風量avのエアー(乾燥風)が送風される。
【0123】
期間T4では、ポートcb出力とポートhc出力とが選択された時間と、この時間の3倍の、ポートcc出力とポートhb出力とが選択された時間とが交互に繰り返されている。このため、ダクトeからは温度tch22よりも温度thに近い温度tch23、風量avのエアー(乾燥風)が送風される。
【0124】
期間T5では、ポートcb出力とポートhc出力とが選択された時間と、ポートcc出力とポートhc出力とが選択された時間とが等間隔で繰り返されている。このため、ダクトeからは温度tc、風量av1のエアー(乾燥風)が送風される。バルブhはポートhc出力固定、バルブcはポートcb出力とポートcc出力とが等間隔で切り替わるため、av1=av/2となる。
【0125】
図22の期間T6では、ポートcc出力とポートhb出力とが選択された時間と、この時間の3倍の、ポートcc出力とポートhc出力とが選択された時間とが交互に繰り返されている。このため、ダクトeからは温度tch21よりも温度thに近い温度tch24、風量av2のエアー(乾燥風)が送風される。バルブcはポートcc出力固定、バルブhはポートhb出力とポートhc出力とがポートhb出力時間<ポートhc出力時間で切り替わるため、av2<av1となる。
【0126】
期間T7では、ポートcb出力とポートhc出力とが選択された時間と、この時間の3倍の、ポートcc出力とポートhc出力とが選択された時間とが交互に繰り返されている。このため、ダクトeからは温度tc、風量av2のエアー(乾燥風)が送風される。バルブhはポートhc出力固定、バルブcはポートcb出力とポートcc出力とがポートcb出力時間<ポートcc出力時間で切り替わるため、av2<av1となる。
【0127】
期間T8では、ポートcc出力とポートhc出力とが選択されており、ダクトeからはエアー(乾燥風)は排出されない。
【0128】
期間T9では、ポートcc出力とポートhb出力とが選択された時間と、この時間の1/2の、ポートcb出力とポートhc出力とが選択された時間と、この時間と同じ長さの、ポートcc出力とポートhc出力とが選択された時間とからなる単位周期が繰り返されている。このため、ダクトeからは温度tch23よりも温度tcに近い温度tch25、風量av3のエアー(乾燥風)が送風される。ここで、av1<av3<avである。
【0129】
期間T10では、ポートcb出力とポートhc出力とが選択された時間と、この時間の1/2の、ポートcc出力とポートhb出力とが選択された時間と、この時間と同じ長さの、ポートcc出力とポートhc出力とが選択された時間とからなる単位周期が繰り返されている。このため、ダクトeからは温度tch25よりも温度tcに近い温度tch26、風量av3のエアー(乾燥風)が送風される。
【0130】
上述した期間T1~T10の動作は、ダクトeごとに適用可能である。
【0131】
次に、インクジェット印刷装置1Aの動作について、
図23~
図25のフローチャートを参照して説明する。
【0132】
図23のステップS11において、CPU84は、パラメータメモリ82から制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,PER1~PER5,EXPのデータを読み出す。
【0133】
ここで、前述のように、パラメータメモリ82において、制御パラメータFWD5のデータとして
図21の期間T4の波形が設定され、制御パラメータFWD4のデータとして期間T9の波形が設定されている。また、制御パラメータFWD3のデータとして
図22の期間T10の波形が設定され、制御パラメータFWD2のデータとして
図21の期間T5の波形が設定されている。また、制御パラメータFWD1,HUP,PER1のデータとして
図22の期間T7の波形が設定され、制御パラメータPER2~PER5,EXPのデータとして
図21の期間T1の波形が設定されている。
【0134】
次いで、ステップS12において、CPU84は、制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,EXPを、それぞれに対応するバルブドライバのレジスタに設定する。
【0135】
ここで、ヘッドユニット領域91内の左端のダクトeおよびそれに対応するバルブc,hの番号をヘッド位置番号POSとする。また、バルブ(POS)をヘッド位置番号POSのバルブc,hとする。
図23のステップS12における、例えば「バルブ(POS)←HUP」は、ヘッド位置番号POSのバルブc,hのそれぞれに対応するバルブドライバのレジスタに制御パラメータHUPを設定することを意味する。
【0136】
印刷開始時において、ヘッドユニット2Aは初期位置にあり、このとき、ヘッドユニット領域91内の左端のダクトeは、ダクトe1である。すなわち、このときのヘッド位置番号POS=1である。
【0137】
したがって、ステップS12では、CPU84は、ヘッドユニット領域91内のダクトe1~e4のバルブc1~c4,h1~h4のそれぞれに対応するバルブドライバのレジスタに制御パラメータHUPを設定する(バルブ(POS)~バルブ(POS+3)←HUP)。
【0138】
また、ステップS12において、CPU84は、下流側ヘッドユニット外隣接領域92内のダクトe5~e9のバルブc5~c9,h5~h9のそれぞれに対応するバルブドライバのレジスタに、ヘッドユニット2Aに近い方から順に制御パラメータFWD1~FWD5を設定する(バルブ(POS+4)←FWD1、バルブ(POS+5)←FWD2、バルブ(POS+6)←FWD3、バルブ(POS+7)←FWD4、バルブ(POS+8)←FWD5)。
【0139】
また、ステップS12において、CPU84は、下流側ヘッドユニット外隣接領域92より下流側のその他領域94内のダクトe10~enのバルブc10~cn,h10~hnのそれぞれに対応するバルブドライバのレジスタに制御パラメータEXPを設定する(バルブ(POS)~バルブ(POS+8)以外←EXP)。
【0140】
なお、ヘッドユニット2Aの移動開始時においては、上流側ヘッドユニット外隣接領域93がないため、PER1~PER5がレジスタに設定されるバルブドライバはない。
【0141】
次いで、ステップS13において、CPU84は、ヘッドユニット走査方向DIRに「0」を設定する。ここで、ヘッドユニット走査方向DIR=0は、ヘッドユニット2Aが左から右に向かって走査する際の設定である。ヘッドユニット2Aが右から左に向かって走査する際は、ヘッドユニット走査方向DIRには「1」が設定される。
【0142】
次いで、ステップS14において、CPU84は、ヘッドユニット2Aの右方向への移動を開始させるとともに、乾燥ユニット4Aによる送風を開始させる。これにより、バルブドライバユニット83の各バルブドライバが、それぞれのレジスタに設定された制御パラメータにより、それぞれに対応するバルブc,hを駆動させることで、各ダクトeから制御パラメータに応じた乾燥風の送風が開始される。
【0143】
具体的には、
図26に示すような乾燥風の送風が開始される。
図26において、黒矢印はバルブhからの加温エアー、白矢印はバルブcからの非加温エアーを示している。また、矢印の数は、エアーが送風される時間を表現している。
【0144】
例えば、ダクトe9に対応するバルブc9,h9は、
図21の期間T4の波形で制御されている。このため、ダクトe9は、1周期の時間のうち3/4をバルブh9の加温エアー、1/4をバルブc9の非加温エアーを送風している。
【0145】
また、例えば、ダクトe7に対応するバルブc7,h7は、
図22の期間T10の波形で制御されている。このため、ダクトe7は、1周期の時間のうち1/4をバルブh7の加温エアー、2/4をバルブc7の非加温エアーを送風し、1/4は送風なしの状態である。
【0146】
CPU84は、上述のステップS14においてヘッドユニット2Aの右方向への移動、および乾燥ユニット4Aによる送風を開始させると、インクジェットヘッド11による1パス分の印刷を開始させる。
【0147】
ヘッドユニット2Aの右方向への移動の開始後、ステップS15において、CPU84は、位置カウンタ81から境界信号BND=1が入力されたか否かを判断する。
【0148】
ここで、前述のように、位置カウンタ81は、位置センサ71からの位置信号SNS、およびダクト間距離情報DCTに基づき、互いに隣接する2つのダクトeの境界位置にヘッドユニット2Aの左端が到達すると、境界信号BNDとして「1」を出力する。互いに隣接する2つのダクトeの境界位置にヘッドユニット2Aの左端があるとき以外は、位置カウンタ81は、境界信号BNDとして「0」を出力する。
【0149】
境界信号BND=1が入力されたと判断した場合(ステップS15:YES)、ステップS16において、CPU84は、ヘッドユニット走査方向DIR=0であるか否かを判断する。
【0150】
ヘッドユニット走査方向DIR=0であると判断した場合(ステップS16:YES)、ステップS17において、CPU84は、ヘッド位置番号POSに「1」を加算する。
【0151】
次いで、
図24のステップS18において、CPU84は、制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,PER1~PER5,EXPを、それぞれに対応するバルブドライバのレジスタに設定する。
【0152】
ここで、ヘッドユニット2Aの初期位置から右方向への移動開始後、1つのダクトeの長さ(幅)の分だけ移動して最初に境界信号BND=1が入力されると、ヘッド位置番号POS=2となる。この結果、バルブc10,h10に対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータは、EXPからFWD5に変更となる。
【0153】
また、バルブc9,h9に対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータはFWD5からFWD4に、バルブc8,h8に対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータはFWD4からFWD3に変更となる。また、バルブc7,h7に対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータはFWD3からFWD2に、バルブc6,h6に対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータはFWD2からFWD1に変更となる。また、バルブc5,h5に対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータはFWD1からHUPに変更となる。
【0154】
バルブc2,h2~c4,h4に対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータはHUPのままである。
【0155】
バルブc1,h1に対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータはHUPからPER1に変更となる。
【0156】
その他のバルブc,hに対応するヘッドドライバのレジスタに設定される制御パラメータはEXPとなる。
【0157】
このように、制御パラメータとバルブc,hとの対応関係が変更される。
【0158】
なお、ヘッドユニット2Aの右方向への移動開始後、1つのダクトeの長さ(幅)の分だけ移動した時点では、上流側ヘッドユニット外隣接領域93内にあるダクトeは1つのため、PER2~PER5がレジスタに設定されるバルブドライバはない。
【0159】
次いで、ステップS19において、CPU84は、1パス分の印刷が終了したか否かを判断する。1パス分の印刷が終了していないと判断した場合(ステップS19:NO)、CPU84は、
図23のステップS15に戻る。
【0160】
ステップS15において、境界信号BND=1が入力されていないと判断した場合(ステップS15:NO)、CPU84は、
図24のステップS19に進む。
【0161】
ヘッドユニット走査方向DIR=0の場合、1パス分の印刷が終了するまで、すなわち1パス分のヘッドユニット2Aの移動が終了するまで、ステップS15~S19が繰り返される。これにより、境界信号BND=1になるごとに、制御パラメータとバルブc,hとの対応関係が変更される。
【0162】
例えば、位置センサ71が
図14のx1の位置にある場合、すなわちヘッドユニット2Aが主走査方向における乾燥ユニット4Aの中央付近を走行している時点では、
図27に示すような乾燥風の送風が行われている。
【0163】
図27の例は、
図19、
図20の例と同様に、バルブc(m+13),h(m+13)は制御パラメータFWD5、バルブc(m+12),h(m+12)は制御パラメータFWD4により駆動されている。
【0164】
また、バルブc(m+11),h(m+11)は制御パラメータFWD3、バルブc(m+10),h(m+10)は制御パラメータFWD2、バルブc(m+9),h(m+9)は制御パラメータFWD1により駆動されている。
【0165】
また、バルブc(m+5)~c(m+8),h(m+5)~(m+8)は制御パラメータHUPにより駆動されている。
【0166】
また、バルブc(m+4),h(m+4)は制御パラメータPER1、バルブc(m+3),h(m+3)は制御パラメータPER2、バルブc(m+2),h(m+2)は制御パラメータPER3により駆動されている。
【0167】
また、バルブc(m+1),h(m+1)は制御パラメータPER4、バルブcm,hmは制御パラメータPER5により駆動されている。
【0168】
その他のバルブc,hは、制御パラメータEXPにより駆動されている。
【0169】
ここで、
図27におけるヘッドユニット2Aの左方の印刷済み領域96は、現在のパスで印刷された領域を示している。印刷済み領域96は、印刷直後のため、なるべく高い乾燥能力で乾燥させることが望ましい。このため、主走査方向における印刷済み領域96内の各ダクトeに対応するバルブc、hを
図21の期間T1の波形で駆動させている。
【0170】
一方、ヘッドユニット2Aは、印刷のためのインクの吐出を行っており、ヘッドユニット2A付近で高い乾燥能力の送風を行うと、インクジェットヘッド11のノズルの乾燥による不吐出が生じるおそれがある。このため、ヘッドユニット領域91の各ダクトeおよび上流側ヘッドユニット外隣接領域93の最もヘッドユニット2Aに近いダクトeは比較的低い乾燥能力に留めている。
【0171】
また、ヘッドユニット2Aの右方(下流側)のこれから走査していく領域は、印刷開始直後においては未印刷状態であるが、副走査方向(前後方向)に印刷が進んでいくとそれ以前のパスによる印刷が行われた状態となっている。このため、なるべく高い乾燥能力で乾燥させることが望ましい。
【0172】
しかし、ヘッドユニット2Aの右方のヘッドユニット2Aに比較的近い領域では、インクの吐出を間近に控えているため、下流側ヘッドユニット外隣接領域92では、制御パラメータFWD5(期間T4の波形)、制御パラメータFWD4(期間T9の波形)、制御パラメータFWD3(期間T10の波形)、制御パラメータFWD2(期間T5の波形)、制御パラメータFWD1(期間T7の波形)により、ヘッドユニット2Aに近いダクトeほど乾燥能力が低くなるようにしている。
【0173】
一方、下流側ヘッドユニット外隣接領域92より下流側のその他領域94では、各ダクトeに対応するバルブc、hを期間T1の波形で駆動させ、高い乾燥能力で乾燥させている。
【0174】
また、例えば、位置センサ71が
図14のx2の位置にある場合、すなわち1パス分の印刷が終了した時点では、
図28に示すような乾燥風の送風が行われている。この時点では、バルブc(n-4)~cn,h(n-4)~hnは制御パラメータHUPにより駆動され、その他のバルブc,hは制御パラメータEXPにより駆動されている。
【0175】
図24に戻り、ステップS19において、1パス分の印刷が終了したと判断した場合(ステップS19:YES)、ステップS20において、CPU84は、印刷終了であるか否かを判断する。
【0176】
印刷終了ではないと判断した場合(ステップS20:NO)、
図25のステップS21において、CPU84は、フラットベッドユニット5により印刷媒体Pを前方向に1ピッチ分だけ搬送させる。
【0177】
次いで、ステップS22において、CPU84は、ヘッドユニット走査方向DIR=0であるか否かを判断する。
【0178】
ここで、ステップS16においてヘッドユニット走査方向DIR=0であると判断(ステップS16:YES)されたパスの印刷終了(ステップS19:YES)によりステップS21で印刷媒体Pを移動させた場合、ステップS22では、ヘッドユニット走査方向DIR=0であると判断される。
【0179】
ヘッドユニット走査方向DIR=0であると判断した場合(ステップS22:YES)、ステップS23において、CPU84は、ヘッドユニット走査方向DIRに「1」を設定する。
【0180】
次いで、ステップS24において、CPU84は、制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,EXPを、それぞれに対応するバルブドライバのレジスタに設定する。
【0181】
ここで、ヘッドユニット走査方向DIRに「1」を設定して右から左への走査を開始する時点において、ヘッドユニット領域91内の左端のダクトeは、ダクトe(n-3)である。すなわち、このときのヘッド位置番号POS=n-3である。
【0182】
したがって、ステップS24では、CPU84は、ヘッドユニット領域91内のダクトe(n-3)~enのバルブc(n-3)~cn,h(n-3)~hnのそれぞれに対応するバルブドライバのレジスタに制御パラメータHUPを設定する(バルブ(POS)~バルブ(POS+3)←HUP)。
【0183】
また、ステップS24において、CPU84は、下流側ヘッドユニット外隣接領域92内のダクトe(n-8)~e(n-4)のバルブc(n-8)~c(n-4),h(n-8)~h(n-4)のそれぞれに対応するバルブドライバのレジスタに、ヘッドユニット2Aに近い方から順に制御パラメータFWD1~FWD5を設定する(バルブ(POS-1)←FWD1、バルブ(POS-2)←FWD2、バルブ(POS-3)←FWD3、バルブ(POS-4)←FWD4、バルブ(POS-5)←FWD5)。
【0184】
また、ステップS24において、CPU84は、下流側ヘッドユニット外隣接領域92より下流側のその他領域94内のダクトe1~e(n-9)のバルブc1~c(n-9),h1~h(n-9)のそれぞれに対応するバルブドライバのレジスタに制御パラメータEXPを設定する(バルブ(POS-5)~バルブ(POS+3)以外←EXP)。
【0185】
なお、ヘッドユニット2Aの移動開始時においては、上流側ヘッドユニット外隣接領域93がないため、PER1~PER5がレジスタに設定されるバルブドライバはない。
【0186】
次いで、ステップS25において、CPU84は、ヘッドユニット2Aの移動を開始させる。ステップS23でヘッドユニット走査方向DIRに「1」を設定した場合は、CPU84は、ステップS25において、ヘッドユニット2Aの左方向への移動を開始させる。
【0187】
このヘッドユニット2Aの左方向への移動開始時には、
図29のような乾燥風の送風が行われる。
図29に示す乾燥ユニット4Aの送風の状態は、
図26に示したヘッドユニット2Aの左方向への移動開始時における送風の状態を左右反転させたものである。
【0188】
この後、CPU84は、
図23のステップS15に進み、位置カウンタ81から境界信号BND=1が入力されたか否かを判断する。
【0189】
境界信号BND=1が入力されたと判断した場合(ステップS15:YES)、ステップS16において、CPU84は、ヘッドユニット走査方向DIR=0であるか否かを判断する。
【0190】
ここで、ステップS23でヘッドユニット走査方向DIRに「1」が設定されて開始されたヘッドユニット2Aの左方向への移動中において、ステップS16でヘッドユニット走査方向DIR=0ではないと判断される。
【0191】
ヘッドユニット走査方向DIR=0ではないと判断した場合(ステップS16:NO)、ステップS26において、CPU84は、ヘッド位置番号POSから「1」を減算する。
【0192】
次いで、ステップS27において、CPU84は、制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,PER1~PER5,EXPを、それぞれに対応するバルブドライバのレジスタに設定する。
【0193】
ステップS27では、CPU84は、上述したヘッドユニット走査方向DIR=0の場合とは乾燥ユニット4Aの送風の状態を左右反転させるように、制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,PER1~PER5,EXPを各バルブドライバのレジスタに設定する(バルブ(POS-5)←FWD5、バルブ(POS-4)←FWD4、バルブ(POS-3)←FWD3、バルブ(POS-2)←FWD2バルブ(POS-1)←FWD1、バルブ(POS)~バルブ(POS+3)←HUP、バルブ(POS+4)←PER1、バルブ(POS+5)←PER2、バルブ(POS+6)←PER3、バルブ(POS+7)←PER4、バルブ(POS+8)←PER5、バルブ(POS-5)~バルブ(POS+8)以外←EXP)。この後、CPU84は、ステップS19に進む。
【0194】
ステップS16においてヘッドユニット走査方向DIR=0ではないと判断(ステップS16:NO)されたパスの印刷終了(ステップS19:YES)によりステップS21で印刷媒体Pを移動させた場合、
図25のステップS22において、ヘッドユニット走査方向DIR=0ではないと判断される。
【0195】
ヘッドユニット走査方向DIR=0ではないと判断した場合(ステップS22:NO)、ステップS28において、CPU84は、ヘッドユニット走査方向DIRに「0」を設定する。
【0196】
次いで、ステップS29において、CPU84は、制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,EXPを、それぞれに対応するバルブドライバのレジスタに設定する。ここで、CPU84は、制御パラメータとバルブc,hとの対応関係を、前述のステップS12におけるものと同様とする。この後、CPU84は、ステップS25に進む。
【0197】
図24のステップS20において、印刷終了であると判断した場合(ステップS20:YES)、ステップS30において、CPU84は、乾燥ユニット4Aによる乾燥風の送風を停止させる。また、CPU84は、フラットベッドユニット5およびヘッドユニット2をそれぞれの初期位置に戻す。これにより、一連の動作が終了となる。
【0198】
以上説明したように、第3実施形態では、CPU84は、各ダクトeに対応する印刷媒体Pの領域ごとに当該領域の乾燥条件としてのインクジェットヘッド11との位置関係に応じて乾燥能力を調整するよう乾燥ユニット4Aを制御する。これにより、印刷媒体Pの領域ごとに、移動するインクジェットヘッド11との位置関係によって適切な乾燥能力が異なるのに対し、領域ごとにインクジェットヘッド11との位置関係に応じた乾燥能力で印刷媒体Pを乾燥させつつ、乾燥能力が過剰になることによるノズルの乾燥を抑制することが可能である。
【0199】
[第4実施形態]
次に、上述した第3実施形態の乾燥ユニットのバルブを変更した第4実施形態について説明する。
【0200】
第4実施形態では、第3実施形態のバルブc、バルブhに代えて、第2実施形態で説明したMVバルブ(MVバルブc、MVバルブh)を使用する。
【0201】
第3実施形態では、バルブc,hのポート選択および開閉時間で乾燥風の温度および風量を調整したが、第4実施形態では、MVバルブc,hの各々のポートb,cの出力口の開閉数によって乾燥風の温度および風量を調整する。
【0202】
具体的には、
図30~
図32に示すように、第3実施形態における
図21、
図22に示した期間T1~T10のバルブcのポートcb,ccおよびバルブhのポートhb,hcの開閉制御によるバルブc,hの出力制御を、MVバルブc,hの各々のポートb,cの出力口数の制御によるMVバルブc,hの出力制御に置き換える。ここで、
図30~
図32における上から1段目および2段目は、
図21、
図22に示したバルブc,hの出力波形と同じものである。
【0203】
そして、第4実施形態では、第3実施形態の制御パラメータFWD5~FWD1,HUP,PER1~PER5,EXPがバルブc,hに印加する波形情報を、MVバルブc,hを制御する出力口数情報に置き換える。
【0204】
このような第4実施形態でも、第3実施形態と同様に、印刷媒体Pの領域ごとに、移動するインクジェットヘッド11との位置関係によって適切な乾燥能力が異なるのに対し、領域ごとにインクジェットヘッド11との位置関係に応じた乾燥能力で印刷媒体Pを乾燥させつつ、乾燥能力が過剰になることによるノズルの乾燥を抑制することが可能である。
【0205】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1乃至第4実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0206】
上述した第1および第2実施形態では、乾燥ユニット4における乾燥風の温度の調整により、乾燥能力を調整した。しかし、第1および第2実施形態においても第3および第4実施形態と同様に、乾燥風の温度および風量の調整により、乾燥能力を調整するようにしてもよい。また、第1乃至第4実施形態において、乾燥ユニット4,4Aにおける乾燥能力を調整する要素として、乾燥風の温度および風量以外の要素を用いてもよい。例えば、風速を用いてもよい。
【0207】
上述した第1および第2実施形態では、ダクトdの下面に形成された送風口21から下方向に送風する構成を示した。また、第3および第4実施形態では、ダクトeの前面に形成された送風口76から前方向に送風する構成を示した。しかし、これらに限らず、第1および第2実施形態においてダクトが前方向に送風する構成としてもよい。また、第3および第4実施形態においてダクトが下方向に送風する構成としてもよい。
【0208】
上述した第1乃至第4実施形態では、用紙を移動させつつ印刷するライン型のインクジェット印刷装置について説明したが、これに限らず、印刷媒体に対してインクジェットヘッドを相対移動させつつ印刷するインクジェット印刷装置であれば本発明を適用できる。例えば、インクジェットヘッドを移動させつつ印刷するシリアル型のインクジェット印刷装置にも本発明は適用可能である。
【0209】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0210】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0211】
(付記1)
印刷媒体にインクを吐出して印刷するインクジェットヘッドと、
印刷媒体の複数の領域ごとに乾燥風を送風するものであって、前記領域ごとに乾燥能力を調整可能な乾燥部と、
前記領域ごとに当該領域の乾燥条件に応じて乾燥能力を調整するよう前記乾燥部を制御する制御部と
を備える、インクジェット印刷装置。
【0212】
(付記2)
前記制御部は、前記領域ごとに当該領域の前記乾燥条件としての印字率に応じて乾燥能力を調整するよう前記乾燥部を制御する、付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【0213】
(付記3)
前記インクジェットヘッドは、印刷媒体に対して相対移動しつつ印刷を行うものであり、
前記制御部は、前記領域ごとに当該領域の前記乾燥条件としての前記インクジェットヘッドとの位置関係に応じて乾燥能力を調整するよう前記乾燥部を制御する、付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0214】
1,1A インクジェット印刷装置
2,2A ヘッドユニット
3,3A 主走査駆動ガイド
4,4A 乾燥ユニット
5 フラットベッドユニット
6,6A 制御部
11 インクジェットヘッド
12 ヘッドホルダ
61 印刷データメモリ
62 印字率計算手段
63 印字率メモリ
64 乾燥温度メモリ
65 バルブドライバ
71 位置センサ
72 スケール
81 位置カウンタ
82 パラメータメモリ
83 バルブドライバユニット
84 CPU