IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-塗布具 図1
  • 特開-塗布具 図2
  • 特開-塗布具 図3
  • 特開-塗布具 図4
  • 特開-塗布具 図5
  • 特開-塗布具 図6
  • 特開-塗布具 図7
  • 特開-塗布具 図8
  • 特開-塗布具 図9
  • 特開-塗布具 図10
  • 特開-塗布具 図11
  • 特開-塗布具 図12
  • 特開-塗布具 図13
  • 特開-塗布具 図14
  • 特開-塗布具 図15
  • 特開-塗布具 図16
  • 特開-塗布具 図17
  • 特開-塗布具 図18
  • 特開-塗布具 図19
  • 特開-塗布具 図20
  • 特開-塗布具 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102009
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/42 20060101AFI20240723BHJP
   B65D 47/24 20060101ALI20240723BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B65D47/42 100
B65D47/24 120
B65D83/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004179
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2023006205
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】大本 慶
(72)【発明者】
【氏名】中田 瑛大
【テーマコード(参考)】
3E014
3E084
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC04
3E014PD15
3E014PE04
3E014PE05
3E014PE09
3E014PE25
3E014PF10
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB05
3E084AB09
3E084BA03
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DB18
3E084DC03
3E084EA04
3E084EB02
3E084EB03
3E084EC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA04
3E084GA08
3E084GB04
3E084GB11
3E084GB14
3E084KB01
3E084LB02
3E084LB07
3E084LD03
3E084LD16
3E084LG02
3E084LG06
(57)【要約】
【課題】中栓(バルブ弁)の開弁に伴い急激な塗布液の吐出を防ぐことができる塗布具を提供する。
【解決手段】塗布液を収容する容器本体2と、容器本体2の口部2cを閉塞して配置され、バネ部材の付勢力に抗して開弁し容器本体2内の塗布液を導出可能にする中栓と、中栓の塗布液導出口を覆って配置され、中栓を介して導出する塗布液を滲出させることにより、塗布面に対して塗布を可能にする塗布体7を備えた塗布具1であって、中栓を備えた塗布ユニット3には、容器本体2内から塗布体7に向かって、塗布液に対して流動抵抗を与える液体流路が形成され、液体流路の1m/s当たりの圧力損失の合計値が、1×10Pa・s以上、1×1010Pa・s未満であることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を収容する容器本体と、前記容器本体の口部を閉塞して配置され、バネ部材の付勢力に抗して開弁し容器本体内の前記塗布液を導出可能にする中栓と、前記中栓の塗布液導出口を覆って配置され、前記中栓を介して導出する塗布液を滲出させることにより、塗布面に対して塗布を可能にする塗布体を備えた塗布具であって、
前記中栓を備えた塗布ユニットには、前記容器本体内から塗布体に向かって、塗布液に対して流動抵抗を与える液体流路が形成され、前記液体流路の1m/s当たりの圧力損失の合計値が、1×10Pa・s以上、1×1010Pa・s未満であることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記塗布ユニットに形成される液体流路には、直列に連通された第1流路乃至第4流路が含まれ、
前記第1流路は、塗布ユニットを構成する弁座部材の弁座と、前記弁座に対峙する弁体部材の弁体との間に形成された流路であり、
前記第2流路は、前記弁体部材の弁体の周縁に繋がる円筒体の周側面と、前記弁座の周縁に繋がって形成された第1環状突起の内周面との間に形成された流路であり、
前記第3流路は、前記第1環状突起の外周面と、前記弁体部材における前記円筒体の外側に同心円状に形成された第3環状突起の内周面との間に形成された流路であり、
前記第4流路は、前記弁体部材の第3環状突起の外側と、前記弁座部材の第1環状突起の外側に同心円状に形成された第2環状突起の内側との間に形成された流路であることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記液体流路を構成する前記各第1流路乃至第4流路の1m/s当たりの圧力損失は、下記式により求められる値に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の塗布具。
ΔP/R=32μL/Sd …… 式
ただし、ΔPは圧力損失(Pa)、Rは流量(m/s)、μは塗布液粘度(Pa・s)、Lは代表流路長さ(m)、Sは代表流路断面積(m)、dは水力直径(m)である。
【請求項4】
前記液体流路は、前記塗布ユニットを構成する弁座部材の弁座に対峙する弁体部材の弁体の後退により、前記液体流路の流路断面積が変化し、前記弁体が最も後退した状態で液体流路の圧力損失が最小となり、その状態における1m/s当たりの圧力損失が、1×10Pa・s以上、1×1010Pa・s未満であることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧液や薬液などの塗布液を容器内に収容して、容器の口部に取り付けられた塗布体から、前記塗布液を滲出させる塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に化粧液や薬液などの液体を収容して、容器の口部に取り付けられた合成樹脂素材に連続気孔を施した比較的広い面積を有する塗布体から、前記液体を滲出させる塗布具が特許文献1に開示されている。
図21は、特許文献1に開示された塗布具に備えられる塗布ユニットを示しており、この塗布ユニット3には、容器本体の口部に装着される中栓(バルブ弁)3bと、この中栓3bを覆うように配置された塗布体7が備えられている。前記中栓3bには、中央部の弁口5aに向かって内径が縮小する漏斗状の弁座5kを有する弁座部材5と、この弁座部材5の漏斗状の弁座5kに密着することで閉弁する円錐状の弁体6cを有する弁体部材6が備えられる。
【0003】
塗布ユニット3に備えられた前記中栓(バルブ弁)3bによると、弁座部材5の弁口5aから突出する弁体部材6の弁棒6dが、塗布体7を介して押し込まれることで、弁座5kから弁体6cが後退して開弁する。
これにより、容器内の液体(塗布液)を前記弁口5aから塗布体7に向かって導出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-160755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された中栓(バルブ弁)によると、弁体部材の弁棒の押し込み量(バルブストローク)に対応して、漏斗状の弁座面から円錐面を有する弁体が平行した状態で離れるので、この瞬間において弁座と弁体との間のバルブ弁の圧力損失(流動抵抗)が極端に小さな値に変化する。
このために、特許文献1に記載された塗布具によると、弁体部材の弁棒の押し込み度合による塗布液の流量制御は難しく、特にエタノール等の低粘度の液体を塗布液として容器に収容した場合には、塗布体を介して弁棒を押圧した際に、急激な液吐出を発生することがあり、ユーザの利便性を損なうという技術的な課題があった。
【0006】
本発明は前記した課題に着目してなされたものであり、中栓(バルブ弁)を構成する弁体の押し込み量(バブルストローク)に対応して、緩やかな圧力損失(流動抵抗)の変化を液体流路に持たせることで、中栓の開弁に伴い急激な塗布液の吐出を防ぐことができる塗布具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る塗布具は、塗布液を収容する容器本体と、前記容器本体の口部を閉塞して配置され、バネ部材の付勢力に抗して開弁し容器本体内の前記塗布液を導出可能にする中栓と、前記中栓の塗布液導出口を覆って配置され、前記中栓を介して導出する塗布液を滲出させることにより、塗布面に対して塗布を可能にする塗布体を備えた塗布具であって、前記中栓を備えた塗布ユニットには、前記容器本体内から塗布体に向かって、塗布液に対して流動抵抗を与える液体流路が形成され、前記液体流路の1m/s当たりの圧力損失の合計値が、1×10Pa・s以上、1×1010Pa・s未満であることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記塗布ユニットに形成される液体流路には、直列に連通された第1流路乃至第4流路が含まれ、前記第1流路は、塗布ユニットを構成する弁座部材の弁座と、前記弁座に対峙する弁体部材の弁体との間に形成された流路であり、前記第2流路は、前記弁体部材の弁体の周縁に繋がる円筒体の周側面と、前記弁座の周縁に繋がって形成された第1環状突起の内周面との間に形成された流路であり、前記第3流路は、前記第1環状突起の外周面と、前記弁体部材における前記円筒体の外側に同心円状に形成された第3環状突起の内周面との間に形成された流路であり、前記第4流路は、前記弁体部材の第3環状突起の外側と、前記弁座部材の第1環状突起の外側に同心円状に形成された第2環状突起の内側との間に形成された流路であることを特徴とする。
【0009】
また、前記液体流路を構成する前記各第1流路乃至第4流路の1m/s当たりの圧力損失は、好ましくは下記式により求められる値に設定される。
ΔP/R=32μL/Sd …… 式
ただし、ΔPは圧力損失(Pa)、Rは流量(m/s)、μは塗布液粘度(Pa・s)、Lは代表流路長さ(m)、Sは代表流路断面積(m)、dは水力直径(m)である。
【0010】
さらに、前記液体流路は、前記塗布ユニットを構成する弁座部材の弁座に対峙する弁体部材の弁体の後退により、前記液体流路の流路断面積が変化し、前記弁体が最も後退した状態で液体流路の圧力損失が最小となり、その状態における1m/s当たりの圧力損失が、1×10Pa・s以上、1×1010Pa・s未満になされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る塗布具によると、中栓を備えた塗布ユニット内には、塗布液に対して適切な流動抵抗を与える液体流路が形成される。前記液体流路は、一例として塗布ユニット内において直列に連通された第1流路乃至第4流路により構成することで、液体流路に対して適切な圧力損失を与えることができ、中栓(バルブ弁)の開弁に伴って塗布液が急激に噴出するのを、防止することができる。
これにより、塗布液として特に粘度や表面張力の低い前記したエタノール等を用いる場合においても、過度な塗布液の流れを抑制し、塗布体からの急激な液流出を防ぐことが可能な塗布具を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係る塗布具全体の外観構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は上面図、(E)は底面図である。
図2】同じく塗布具全体の外観構成を示し、(A)は正面から右側面側に沿って見た斜視図、(B)は右側面から背面側に沿って見た斜視図である。
図3】塗布具全体を中央部において切断した状態の拡大縦断面図である。
図4】塗布具を包装シートによって覆った外観構成を示し、(A)は全体を覆った状態の斜視図、(B)は切れ目から包装シートの一部を剥離した状態の斜視図である。
図5】第1実施形態の塗布ユニットの組み立て図を示し、(A)は前面の塗布体側から見た斜視図、(B)は中央断面図、(C)は背面側から見た斜視図である。
図6】第1実施形態の塗布ユニットの液体流路を示した拡大断面図である。
図7】第1実施形態の弁座部材の単品構成を示し、(A)は側面図、(B)は縦断面図、(C)は前面側から見た斜視図、(D)は背面側から見た斜視図である。
図8】第1実施形態の弁体部材の単品構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は正面側から見た斜視図、(D)は背面側から見た斜視図、(E)は中央断面図である。
図9】塗布体の単品構成を示し、(A)は正面側から見た斜視図、(B)は背面側から見た斜視図、(C)は中央縦断面図である。
図10図9に示す塗布体が塗布具に装着されることで、一部が変形した状態を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は中央縦断面図である。
図11】塗布体支持リングの単品構成を示し、(A)は背面図、(B)は背面側から見た斜視図、(C)は中央断面図である。
図12】キャップ部材の単品構成を示し、(A)は正面側から見た斜視図、(B)は中央断面図、(C)は背面側から見た斜視図である。
図13】第2実施形態の塗布ユニットの組み立て図を示し、(A)は前面の塗布体側から見た斜視図、(B)は中央断面図、(C)は背面側から見た斜視図である。
図14】第2実施形態の塗布ユニットの液体流路を示した拡大断面図である。
図15】第2実施形態の弁座部材の単品構成を示し、(A)は側面図、(B)は縦断面図、(C)は前面側から見た斜視図、(D)は背面側から見た斜視図である。
図16】第2実施形態の弁体部材の単品構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は正面側から見た斜視図、(D)は背面側から見た斜視図、(E)は中央断面図である。
図17】流動抵抗を比較するための従来の塗布ユニットにおける流体通路を示した部分断面図である。
図18】第1実施形態の塗布ユニットにおける流体通路の部分断面図である。
図19】第2実施形態の塗布ユニットにおける流体通路の部分断面図である。
図20】第1実施形態の塗布ユニットにおける各部の採寸位置を示し、(A)は弁座部材の断面図、(B)は弁体部材の断面図である。
図21】従来の塗布具に用いられる塗布ユニットの一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る塗布具について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1図3は、この発明に係る塗布具の全体構成を示しており、そのうち図3は拡大断面図で示している。したがって、先ずは図3に基づいてこの発明に係る塗布具の全体構成について説明する。
なお、以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示しているが、一部の図面においては、紙面の都合により代表的な部分に符号を付けて示しており、各部の詳細については単品構成を示す各図に付けた符号を引用して説明する。
【0014】
この発明に係る塗布具1には、図1図3に示すように塗布液(図示せず)を収容するボトル型の容器本体2が備えられる。この容器本体2は、水平面上に載置できるように、底部2aが楕円状〔図1(E)参照〕になされた平面板により構成されており、この底部2aに連続して上部に起立する胴部2bが形成されている。
この胴部2bは、容器本体2の前面側の起立面、すなわち図3に示す容器本体2の左側における起立面が、上部に起立するにしたがって容器本体2の中心部側に向かって径を縮小する傾斜胴部2b1を構成している。
また、容器本体2の背面側の起立面、すなわち図3に示す容器本体2の右側における起立面は、前記した底部2aにほぼ直交した直立胴部2b2を構成している。
【0015】
そして、前記直立胴部2b2の上部には、容器本体2の前面側に向かって湾曲した首部2b3が形成されて、この首部2b3の湾曲面に沿って、斜め上部に起立する円筒状の口部2cが一体に形成されている。
これにより、容器本体2における前記底部2aの面に直交する容器本体2の軸線Ax1と、前記口部2cの中心を通る口部2cの軸線Ax2との交差角度は、鈍角になされていて、図示例においては、容器本体2の軸線Ax1と口部2cの軸線Ax2との交差角度は、約120度に設定されている。
【0016】
なお前記口部2cは、先に説明したように上部に起立するにしたがって容器本体2の中心部側に向かって径を縮小する傾斜胴部2b1の直上に位置するように構成されている。
これにより、口部2cに取り付けられる後述する塗布ユニット3を含む塗布具1全体の重心位置が、口部2cが形成された容器本体2の前面側に片寄るのを防止できるように、重量バランスについて配慮されている。
加えて、容器本体2の前面側と背面側には、この容器本体2を把持した際に、指先が掛けられる複数の指掛け凹部2dが形成されている。この指掛け凹部2dは容器本体2を把持した際の滑り止めとして機能するものとなる。
【0017】
なお、この容器本体2は、好ましくは可撓性を有する合成樹脂により成形される。これにより容器本体2の左右側面を手などで軽く押圧することで、容器本体2に変形を与えることができるスクイズ容器を構成している。
【0018】
また、容器本体2の前記口部2cに装着された塗布ユニット3には、容器本体2内の塗布液を滲出させて塗布を可能にする後述する塗布体7が、前記口部2cを閉塞した状態で配置されている。そして、口部2cを構成する円筒部の周面に形成された雄ねじ2eを利用して、塗布体7を覆うキャップ部材4が、着脱可能に取り付けられて塗布具1が構成されている。
【0019】
図4は、前記した塗布具1を包装シート11によって覆った外観構成を示しており、図4において、包装シート11はハッチングを付した状態で示している。
この包装シート11は、例えば円筒状に成形された熱収縮製樹脂シートを用いて、塗布具1の外郭に密着させた状態で覆っており、図4(A)は塗布具1の全体を包装シート11で覆って、商品(塗布具1)が未使用の状態を示している。また、図4(B)は包装シート11に施された破線状の切れ目11cを利用して、本体側シート11aからキャップ側剥離シート11bを切り離して、商品(塗布具1)が使用可能な状態を示している。
【0020】
なお、前記した包装シート11に施された破線状の切れ目11cは、前記した熱収縮製樹脂シートの一部に予め形成しておくことが望ましい。そして、樹脂シートが熱収縮されて容器本体2に密着した状態において、破線状の切れ目11cの位置が、図3に示す容器本体2の胴部2bと口部2cとの間の容器本体2の最小断面部分に沿って、容器本体2の底部2aに平行した状態に位置するように設定される。
このように破線状の切れ目11cの位置を設定することで、特別な形状を有する容器本体2の外郭の大部分を、本体側シート11aによって覆うことができる。
したがって、本体側シート11aに対応する熱収縮製樹脂シート側に、塗布具1の商品名やロゴなどの印刷を予め施しておくことで、本体側シート11aの大きな面積を利用して、商品名やロゴなどを標記した塗布具1を提供することが可能となる。
【0021】
図5は、容器本体2の口部2cに装着される第1実施形態の塗布ユニット3を示している。この塗布ユニット3は、円筒状にして前面部に弁口を備えた弁座部材5と、弁座部材5内に収容されてバネ部材により付勢力が与えられる弁体を有する弁体部材6と、弁座部材5の前面側に取り付けられ、前記した容器本体2の口部2cを覆う状態で配置されたシート状の塗布体7と、この塗布体7の周縁部を前記弁座部材5に対して取り付ける塗布体支持リング8より構成されている。
なお、図6図5に示した塗布ユニット3の前記塗布体7に塗布圧を加えて、後述する中栓(バルブ弁)3bが開いた状態を示しており、これは断面形状がアニュラス(円環形状)からなる液体流路3aを備える。この液体流路3aの作用効果については、後で説明する。
【0022】
以下においては、第1実施形態の塗布ユニット3を構成する前記した各部材について、それぞれ単品構成で示した図面に基づいて説明する。
図7は、塗布ユニット3を構成する弁座部材5の単品構成を示している。
この弁座部材5は、全体が円筒状に形成されて、その前面部は閉塞され、その中央部には塗布液導出口として機能する弁口5aが開口されている。この弁口5aの周囲には前面側に向かって内径が縮小する漏斗状にされた弁座5kが形成されており、この弁座5kに対して後述する弁体部材6の円錐面を有する弁体6cが装着されて閉弁される。
弁座部材5の外周面は、軸方向に沿って同一径に形成されて、容器本体2の口部2c内への嵌合部5bを構成しており、その後半部から後端部に沿って外径をわずかに縮小するテーパ部5cが形成されている。このテーパ部5cは、容器本体2の口部2cに対して、塗布ユニット3を装着する際のガイド部として機能する。
【0023】
弁座部材5における前記した嵌合部5bの前面側には、前記嵌合部5bに対して径の大きな鍔部5dが形成されており、この鍔部5dは容器本体2の口部2cの前端部に当接して、塗布ユニット3を位置決めする機能を果たす。
また、弁座部材5の後端部における開口内には、内側に向かって環状係止部5eが突出した状態で形成されている。この環状係止部5eは、後述する弁体部材6を弁座部材5内に装着した際に、弁体部材6の脱落を阻止するストッパーとして機能する。
さらに、弁座部材5の前面側には環状突出部5fが形成されており、これは後述する塗布体7を、その背面側から支持して塗布体7の位置決めの機能を果たすものとなる。
【0024】
図7(B)に断面図で示すように、弁座部材5の内部には弁座5kを囲むようにして、二つの環状突起5g,5hが同心円状に形成されている。この二つの環状突起5g,5hは弁座部材5の後端部側に向かって、同一高さとなるように形成されており、これにより二つの環状突起5g,5hの間には、環状溝部5jが形成されている。
これらの環状突起5g,5hと、環状溝部5jとは、次に説明する弁体部材6との組み合わせにより、容器本体2内の塗布液を塗布体7側に導く断面が蛇行状の液体流路3a(図6参照)を形成するものとなる。
なお、説明の便宜上、前記した二つの環状突起5g,5hのうち、弁座5kの周縁に繋がって形成された内側の環状突起5hを第1環状突起5hと呼び、この第1環状突起5hの外側に形成された環状突起5gを第2環状突起5gと呼ぶことにする。
【0025】
図8は、塗布ユニット3を構成する弁体部材6の単品構成を示している。
この弁体部材6は、全体が弾性合成樹脂により一体成形されており、リング体6aから上向きに螺旋状に延びる1本のバネ部材6bが備えられる。このバネ部材6bの上端には円錐台状の弁体6cが形成されている。そして、弁体6cの中央部には弁棒6dが、弁体6cから突出するようにして成形されている。
さらに、図8(E)に示すように、円錐面を有する弁体6cを囲むようにして、環状突起6e(特許請求の範囲に記載の第3環状突起に相当)が形成されており、この環状突起6eと弁体6cの周囲に続く環状の周側面との間には環状溝部6fが形成されている。
すなわち、前記環状突起6eは、前記弁体6cの周縁に繋がる円筒体6gの外側に、円筒体6gと同心円状に形成されている。
【0026】
前記したリング体6aの外径は、円筒状に形成された弁座部材5の内径にほぼ等しく、環状係止部5eの内径よりもわずかに大きく形成されている。したがって、弁座部材5の後端部における環状係止部5e側から、弁体部材6の弁棒6dを挿入して押し込むことで、後部のリング体6aは弁座部材5の環状係止部5eを乗り越えて、弁座部材5内に収容される。そして、弁体部材6のリング体6aは、弁座部材5の環状係止部5eに係止された状態で弁座部材5内に配置される〔図5(B)参照〕。
これにより、弁体6cは弁口5aに当接して閉弁状態になされ、中央の弁棒6dは弁口5aから前方にわずかに突出した状態になされる。
【0027】
前記したように弁座部材5に弁体部材6を装着した状態においては、弁体部材6の前記した環状突起6eは弁座部材5に形成された環状溝部5jに収容され、また弁体部材6の環状溝部6fには弁座部材5の第1環状突起5hが収容される。そして、環状突起6eの外側には弁座部材5の第2環状突起5gが位置することになる。
これにより、弁座部材5と弁体部材6との間には、図6に塗布液の流れを矢印で示したように、蛇行した液体流路3aが形成される。
この蛇行した液体流路3aは、弁座部材5の弁座5kと弁体部材6の弁体6cとの間で形成される中栓(バルブ弁)3bの直前に形成される。
【0028】
前記した液体流路3aによると、弁体部材6の弁棒6dに加わる塗布圧による弁体6cの後退動作に応じて、例えば、弁座部材5の環状突起5g,5hと、弁体部材6の環状突起6eとの間に形成される隙間(後述する第1流路~第4流路)の合計長さが変化することになる。すなわち、弁体部材6に加わる塗布圧が大きくなるに従って、液体流路3aにおける前記隙間の合計長さは小さくなる。
これにより、塗布液に対する流動抵抗が小さくなり、前記した中栓(バルブ弁)3bの単独の開閉度合いでは適切に制御することができない塗布液の供給量を、前記液体流路3aにおいて制御することが可能となる。
また、塗布液として特に粘度や表面張力の低い液体を用いた場合において、前記液体流路3aは適切な流動抵抗により過度な塗布液の流れを抑制し、塗布体7からの急激な液流出を防ぐことが可能な塗布具を提供できるものとなる。
【0029】
図9は、塗布ユニット3を構成する塗布体7の単品構成を示している。
この塗布体7は、柔軟な発泡シート材料を用いて成形される。この発泡シート材料には、好ましくは連続気泡性のウレタンまたはポリエチレン素材、さらにラバースポンジなども利用することができるが、耐久性の観点から発泡ウレタンを利用することが好ましい。
この塗布体7には、前記した発泡シート材料を円形に切断した素材が用いられ、前記した弁座部材5の前面側の形状に合わせて、中央部に球面状の凸部7aと、この球面状の凸部7aの周縁に形成された短小な円筒部7b、および円筒部7bの端部において、外側に向かって環状の鍔部7cが成形される。
なお、この塗布体7の中央部に球面状の凸部7aを形成する部分は、前記した発泡シート材料の厚さをそのまま残し、その周縁の短小な円筒部7bと鍔部7cは、球面状の凸部7aに対して薄くなるように、例えばプレス加工により成形される。
【0030】
図10は、図9に示した塗布体7が、図5に示した塗布ユニット3に装着されることにより、その一部が変形された状態で示している。
すなわち、前記した球面状の凸部7aの背面側には、図10(C)に示すように弁座部材5の中央部から突出する弁棒6dの先端部により変形した凹み7dが形成される。
また、球面状の凸部7aの背面側には、前記した中央部の凹み7dを囲むようにして、環状の凹み7eが円筒部7bの内側に沿って形成される。これは、弁座部材5の前面側に突出した環状突出部5fが当接することにより、変形されるものとなる。
また、環状の鍔部7cの前面側には、後述する塗布体支持リング8に押さえられることにより変形した塗布体支持リング8側に成形された複数の小突起8dによる多数の凹部7fが形成される。さらに、鍔部7cの背面側には、弁座部材5に押さえられて変形した溝7gが形成される。
【0031】
図11は、塗布ユニット3を構成する塗布体支持リング8の単品構成を示している。
この塗布体支持リング8は、前記した弁座部材5の前面に装着された塗布体7の周縁部を、弁座部材5の前面側周縁部に沿って押さえることで、面状の塗布体7を周縁部に沿って支持するものである。
この塗布体支持リング8は、樹脂素材により成形され、背面側から前面側に向かって外径がわずかに縮小するテーパ面8aを備えている。その内側には背面側から前面側に向かって内径が縮小する環状の第1段部8bと第2段部8cとが、同心円状に成形されている。
【0032】
そして、第2段部8cには背面側に向かって突出する複数の小突起8dが、周に沿って連続的に形成されている。したがって、この塗布体支持リング8によって、弁座部材5の前面に押さえられる前記塗布体7は、複数の小突起8dによって緩みが生じないように支持される。なお、この塗布体支持リング8は弁座部材5の鍔部5dに沿って溶着されることで、図5に示した塗布ユニット3が構成される。
そして、この塗布ユニット3は、弁座部材5のテーパ部5cを利用して、容器本体2の口部2cに装着され、弁座部材5の嵌合部5bによって、容器本体2の口部2c内に嵌合されて取り付けられる〔図3参照〕。
【0033】
図12は、キャップ部材4の単品構成を示している。
このキャップ部材4は、端部が天面4aにより閉塞された筒状を構成し、その外周面には、軸方向に沿って溝状に凹みを付けた多数ローレット4bが周方向に連続して施されている。
そして、開口側の内周面には雌ねじ4cが施されていて、この雌ねじ4cの奥側における前記した天面4aの背面側には、リング状の突出環4dが、軸方向に突出して形成されている。
【0034】
このキャップ部材4は、図3に示したように容器本体2の口部2cに装着し、口部2cの雄ねじ2eに対してキャップ部材4の雌ねじ4cを螺合させることで、口部2cに取り付けることができる。これにより、塗布具1は、塗布ユニット3の塗布体7がキャップ部材4で覆われた保管状態となる。
この時、キャップ部材4内の突出環4dが、塗布ユニット3の塗布体支持リング8に当接して、塗布体7を密封するので、塗布体7からの塗布液溶媒の揮発は抑制される。
【0035】
次に、図13図16はこの発明に係る塗布具1において好適に用いることができる第2実施形態の塗布ユニット3を示している。なお、図13図16に示す塗布ユニット3の第2実施形態においては、すでに説明した図5図8に示した塗布ユニット3の各部と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。従って、各部の詳細な説明は適宜省略する。
【0036】
この第2実施形態の塗布ユニット3における弁座部材5の単品構成の断面図が、図15(B)に示されている。
この図15(B)に示すように、同心円状に形成された内側の第1環状突起5hと、外側の第2環状突起5gで挟まれた環状溝部5jは、環状溝部5jの内底部に向かうにしたがって、円環状の溝幅が狭くなるように構成されている。
すなわち、環状溝部5jを介して対向する内側の第1環状突起5hの外周面と、外側の第2環状突起5gの内周面は、互いに軸方向に対してほぼ同一の傾斜角をもって、断面がテーパ形状になされている。
なお、第1環状突起5hの内周面と第2環状突起5gの外周面は、弁座部材5の軸方向と平行となるように構成されており、これは図7に示した第1実施形態の弁座部材5と同一である。そして、第2実施形態の塗布ユニット3における図15に示した弁座部材5のその他の構成は、図7に示した第1実施形態の弁座部材5の構成と同一である。
【0037】
一方、第2実施形態の塗布ユニット3における弁体部材6は、その単品構成の断面図が図16(E)に示されている。
図16(E)に示されているように、弁体部材6に備えられる弁体6cの外側に形成された環状突起6eは、その内周面と外周面が突起の先端に向かって、環状突起6eの幅が狭くなるように構成されている。すなわち、環状突起6eの内周面と外周面は、軸方向に対して互いにほぼ同一の傾斜角をもって、先端部の幅が小さくなるように構成され、これにより環状突起6eの断面形状がテーパ状になされている。
【0038】
これにより、塗布ユニット3を組上げた際には、図13(B)に示すように弁座部材5の第1環状突起5hと第2環状突起5gの間に形成された断面がテーパ状の環状溝部5j内に、弁体部材6の断面テーパ形状の環状突起6eが、僅かな隙間を介して対峙するように構成される。
なお、第2実施形態の塗布ユニット3における図16に示す弁体部材6のその他の構成は、図8に示した第1実施形態の弁体部材6と同一である。
【0039】
前記した塗布具1の容器本体2内には、化粧液や薬液などの塗布液が収容される。この塗布液には、化粧液や薬液としての性能に影響を及ぼさない範囲で、樹脂、凝集分散剤、体質剤、補色顔料、界面活性剤、防腐剤、濡れ剤、消泡剤、防錆剤、pH調整剤、気泡抑制剤、気泡吸収剤、剪断減粘性付与剤および粘度調整剤などを必要に応じて添加することができる。
【0040】
この場合、塗布液の粘度は0.1~1000mPa・sとすることが好ましい。なお、液体の粘度は、例えばB型粘度計(ブルックフィールドDV-II)を用いT-E1ローターで回転数6rpm、ISO554:1976(Standard atmospheres for conditioning and/or testing)に準拠した温度25℃、湿度65%環境下によって測定することができる。
【0041】
さらにエタノール、イソプロパノールなどのアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール、精製水のような粘度0.1~10-6Pa・sの範囲にある低粘度の液体を収容することができる。液体には用途に応じて各種成分を適宜配合することができる。医薬品の場合には、消炎鎮痛成分(例えば、フェルビナク、インドメタシン、サリチル酸グリコールなど)、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩など)、血行促進成分(例えば、ノナン酸バニリルアミドなど)、清涼化剤(例えば、l-メントールなど)、その他、防腐剤、安定化剤、pH調整剤などが挙げられる。化粧料の場合には、制汗成分(例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛など)、殺菌成分(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、消臭剤成分(例えば、クララエキスなど)、香料などが挙げられる。
【0042】
また、前記記載の内容液を用いた場合は、塗布体を塗布液の吸放出性に優れ、強度及び肌触りが良好である低密度ポリエチレンからなる。低密度ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンのいずれであってもよく、密度は通常0.910~0.930g/cmである。平均気孔径は、大きすぎると含浸された塗布液の保持性が低下して液ダレが生じやすくなる一方、小さすぎると塗布液の浸透性や放出性が低下することから、50~180μmが好ましい。平均気孔径は、水銀圧入式ポロシメータにより測定した値である。また、塗布体の嵩密度(塗布体の重量をみかけ体積で除した値)は、大きすぎると浸透性や放出性が低下する一方、小さすぎると塗布液の保持性が低下することから、0.15~0.25g/cmが好ましい。更に、ASTM D 1940-62Tに準拠して測定した連続気泡率が70%以上の連続気泡発泡体からなることが好ましく、これによって、塗布液の吸放出性及び保持性をより良好にすることができる。また、塗布体の厚みについては、大きすぎると膨潤による変形が大きくなりやすく塗布液の放出性も低下する一方、小さすぎると肌触りが悪化することから、0.5~3.5mmが好ましい。
【0043】
以上、説明したこの実施の形態による塗布具1の塗布ユニット3には、弁座部材5の漏斗状の弁座5kと弁体部材6の円錐面を有する弁体6cによる中栓(バルブ弁)3bが搭載されている。
したがって、塗布面に塗布体7を押し当てることで、塗布体7を介して弁体部材6の弁棒6dを、バネ部材6bの付勢力に抗して後退させることができる。これにより、弁口5aに対する弁体6cの封止が解かれて、容器本体2内の塗布液は塗布体7に供給されて吸収される。そして、塗布体7から塗布液が塗布面に向かって滲出することで、塗布が成される。
この場合、塗布ユニット3の中栓3bの直前には、蛇行して形成された塗布液の液体流路3aが形成されており、この液体流路3aは先に説明したとおり、過度な塗布液の流れを抑制し、塗布体7からの急激な液流出を防ぐことができる。
【0044】
以下においては、断面形状がアニュラス(円環形状)からなる前記した液体流路3aによる塗布液に対する流動抵抗(圧力損失)についての考察と、塗布具現品による塗布液の適切な吐出量(流量)の評価との関係について説明する。
図17図19は、前記した弁座部材5と弁体部材6との間に形成される液体流路について示した部分拡大断面図であり、図17は比較のために図21に基づいて説明した従来の塗布ユニットにおいて形成される液体流路について示している。また、図18図6に示した第1実施形態の塗布ユニット3において形成される液体流路について示しており、さらに、図19図14に示した第2実施形態の塗布ユニット3において形成される液体流路について示している。
【0045】
なお、以下の説明においては、図17に示した流路形態を「ブランク」と称呼し、図18に示した流路形態を「ストレートクリアランス」と称呼し、図19に示した流路形態を「テーパークリアランス」と称呼する。
図17図19に示した各形態について、流路抵抗を含む主な領域に、符号F1,F2,F3,F4を付けて示している。蛇行して直列に連通するこれらの4か所をそれぞれ第1流路乃至第4流路と称呼し、これらの各流路の配置位置について特定すると次のとおりとなる。
【0046】
第1流路(F1):塗布ユニット3を構成する弁座部材5の弁座5kと、弁座5kに対峙する弁体部材6の弁体6cとの間に形成された流路。
第2流路(F2):弁体部材6の弁体6cの周縁に繋がる円筒体6gの周側面と、弁座5kの周縁に繋がって形成された第1環状突起5hの内周面との間に形成された流路。
第3流路(F3):第1環状突起5hの外周面と、弁座部材5における円筒体6gの外側に同心円状に形成された環状突起6eの内周面との間に形成された流路。
第4流路(F4):弁体部材6の環状突起6eの外側と、弁座部材5の第1環状突起5hの外側に同心円状に形成された第2環状突起5gの内側との間に形成された流路。
【0047】
前記第1流路乃至第4流路は、弁体部材6の弁棒6dの押し込み量(バルブストローク)によって、その流路長さや流路断面積が変化する。図17図19に符号A~Dで示した隙間寸法及び長さ寸法の数値が、バルブストローク0.5mm、1.0mm、1.5mmに対応した値として、表1に示されている。
【0048】
【表1】
【0049】
図18に示したストレートクリアランスにおいては、バルブストロークの変化に伴って、表1の数値Aが変化すると共に数値Bも変化する。一方、図19に示したテーパークリアランスにおいては、バルブストロークの変化に伴って、数値Aが変化すると共に数値B、さらに数値Dも変化する。
すなわち、ストレートクリアランスにおいては、バルブストロークの変化に伴って流路長さが変化するのに対して、テーパークリアランスにおいては、バルブストロークの変化に伴って流路長さが変化すると共に、流路断面積も変化する。
【0050】
そこで、各第1流路乃至第4流路の圧力損失(直管損失と呼ぶ場合がある)を計算し、各第1流路乃至第4流路の直管損失の総和(圧力損失合計)と、現品の塗布具1の容器本体2に与える加圧値に対する塗布液の噴出度合とを検証することで、塗布ユニット3が有する好ましい圧力損失を求めることにする。
なお、前記直管損失は次に示す条件に基づいて求めることにする。
1)各流路は、塗布ユニット3の塗布体7から容器本体2内に向かって第1流路、第2流路、第3流路、第4流路とする。
2)各バルブストローク(0.5mm,1.0mm,1.5mm)での流路断面積(平均)と流路長を求める。
3)各流路は面積より求められる直管とみなす。
4)流路間の損失(出口入口、拡大縮小、曲がり)は、ないものとみなす。
5)流動抵抗測定より、流れは層状である。
【0051】
直管損失を求めるにあたって、弁座部材5と弁体部材6における各部の実測寸法の測定部位が、図20(A)及び図20(B)に示されており、各測定部位の値は次のとおりとなる。
D1=φ8.6,D2=φ9.8,D3=φ11.8,D4=φ13.0,H1=2.0mm,D6=φ8.5,D7=φ9.9,D8=φ11.7,H2=2.0mm
【0052】
直管損失は、ダルシーワイズバッハの式1より、流路の断面積の2乗に反比例し、流路の長さに比例する。この式1は式2として展開され、さらに流量1m/s当たりの圧力損失は、式3のように書き換えることができる。
ΔP=32μLv/d …… 式1
ΔP=32μLR/Sd …… 式2
ΔP/R=32μL/Sd …… 式3
ただし、ΔPは圧力損失(Pa)、Rは流量(m/s)、μは塗布液粘度(Pa・s)、Lは代表流路長さ(m)、Sは代表流路断面積(m)、dは水力直径(m)である。
水力直径dは、この実施の形態においては、アニュラス(円管)形状から算出され、アニュラスd=dout-dinであり、dout:外側の直径、din:内側の直径である。
さらに、塗布液粘度(μ)として、エタノール粘度μ=1.096mPa・s=1.096×10-3Pa・sが用いられる。また、流量:R=1mL/s=10-6/sであり、流速:v=R/S(m/s)である。
【0053】
ここで、塗布ユニット3には塗布体7として発泡ウレタンが用いられているが、この発泡ウレタンによる塗布体7は、断面積が大きく流路が短いことから流動抵抗は小さい。この流動抵抗は実測値によると、0.1kPa/(mL/s)以下である。従って、塗布体7による流動抵抗の値は、前記第1流路乃至第4流路の各値に対して遥かに小さいので、これは無視することができる。
【0054】
表2には、図17に示したブランク、図18に示したストレートクリアランス、図19に示したテーパークリアランスの各第1流路~第4流路についての個々の圧力損失を前記した式3により算出した数値が示されている。また表2には、現品の塗布ユニット3による塗布液の流量の検証と共に、適切な圧力損失(圧力損失合計)の範囲を求めた評価結果も示されている。
【0055】
【表2】
【0056】
表2における第1流路~第4流路の各圧力損失は、中栓(バルブ弁)3bを構成する弁体6cの押し込み量(バブルストローク)が、最も開弁した状態であるストローク長が、1.5mmの場合を例にして、前記した式3により算出している。
そして、表2には前記ブランクを比較例1として示しており、前記ストレートクリアランスに、実施例1~4と、比較例2~3を挙げており、前記テーパークリアランスを実施例5として示している。
【0057】
表2に示す第1流路は、中栓(バルブ弁)3bによる流路であり、これは実施例1~5と比較例1~3の全てにおいて、それぞれの対象個所における数値は同一である。
さらに、ストレートクリアランスにおける比較例1、実施例1~5、比較例2においては、各第2流路~第4流路におけるそれぞれの「中央部内径直径」について、その数値が順次漸減するように設定することより、それに対応した圧力損失の算出値をエクセル指数表示により標記している。そして、各第1流路~第4流路による圧力損失の合計値を、圧力損失合計としてエクセル指数表示により標記している。
なお、第2流路の中央部内径直径は、図20(B)に示す直径D6に相当し、第3流路の中央部内径直径は、図20(A)に示す直径D2に相当し、第4流路の中央部内径直径は、図20(B)に示す直径D8に相当する。
【0058】
表2には、「10kPa加圧時の流量」と「5kPa加圧時の流量」が示されており、これはスクイズ容器により構成された容器本体2を加圧したときにおける塗布ユニット3を介した塗布液の流出量(n=3の平均、エタノール使用)を示している。
そして、10kPa加圧時の塗布液の流出量が1000mL/sを超える場合は、塗布液の過剰な吐出(噴出し過多)であるとして、評価(加圧時)の欄には×印が標記され、流出量が1000mL/s以下の場合は、○印が標記されている。
また、5kPa加圧時の塗布液の流出量が、1mL/s未満の場合は、塗布液の吐出が少なく実用範囲から外れるものとして、評価(通常時)の欄には×印が標記され、流出量が1mL/s以上の場合は、○印が標記されている。
【0059】
従って、評価(加圧時)及び評価(通常時)のいずれもが○印で標記される場合においては、液体流路に対して適切な圧力損失を与えることができ、加圧時(10kPa)において塗布液が急激に噴出するのを防止し得ると共に、通常時(5kPa)において、実用上適切な量の塗布液の供給を果たすことができる好ましい塗布具を得ることができるものとみなすことができる。
【0060】
なお、表2に示すように実施例1~5が、液体流路に適切な圧力損失を有する前記した好ましい塗布具の条件を満足しているとみなすことができるものの、表2に示されている実施例における液体流路の1m/s当たりの圧力損失の合計値は、(4.34E+07)=4.34×10~(2.70E+09)=2.70×10の範囲となる。
また、好ましくない塗布具の条件としての圧力損失の合計値として、(5.00E+05)=5.00×10~(3.33E+06)=3.33×10、(4.21E+010)=4.21×1010であることにより、液体流路の1m/s当たりの圧力損失の合計値は、1×10Pa・s以上、1×1010Pa・s未満に設定するのが適切であるということができる。
【0061】
これにより、塗布液として特に粘度や表面張力の低い前記したエタノール等を用いる場合においても、過度な塗布液の流れを抑制し、塗布体からの急激な液流出を防ぐことが可能な塗布具を提供することができるものとなる。
なお、前記したとおり断面形状がアニュラス(円環形状)からなる液体流路3aを有するこの種の塗布ユニット3を備えた塗布具においては、収容する塗布液の粘度に基づいて、式3により流路の1m/s当たりの圧力損失を算出することができる。
従って、個々の流路による圧力損失の合計値を、1×10Pa・s以上、1×1010Pa・s未満の範囲に設定することで、塗布体からの急激な液流出を防ぐことが可能な塗布具を得ることができるものとなり、その流路設計に貢献できるものとなる。
【符号の説明】
【0062】
1 塗布具
2 容器本体
2c 口部
3 塗布ユニット
3a 液体流路
3b 中栓(バルブ弁)
4 キャップ部材
5 弁座部材
5a 弁口(塗布液導出口)
5g 第2環状突起
5h 第1環状突起
5j 環状溝部
5k 弁座
6 弁体部材
6b バネ部材
6c 弁体
6d 弁棒
6e 環状突起(第3環状突起)
6f 環状溝部
6g 円筒体
7 塗布体
8 塗布体支持リング
11 包装シート
11a 本体側シート
11b キャップ側剥離シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21