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特開2024-102017順方向経路および戻り経路を有するアイソレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102017
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】順方向経路および戻り経路を有するアイソレータ
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20240723BHJP
   H04B 1/69 20110101ALI20240723BHJP
【FI】
H04L25/02 303
H04B1/69
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024005044
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】18/155,999
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シャ・キュウ
【テーマコード(参考)】
5K029
【Fターム(参考)】
5K029DD03
5K029JJ01
5K029JJ03
(57)【要約】
【課題】デジタル信号を分離するためのシステム、装置、および方法を提供する。
【解決手段】
第1の信号を用いて搬送波信号を変調して第1の変調信号を生成することができる。搬送波信号および第1の変調信号を、分離バリア内の順方向経路を介して送信することができる。ここで、分離バリアを介して搬送波信号を送信することで、搬送波信号を遅延搬送波信号に変換することができる。第1の変調信号を復調して第1の信号を復元することができる。第2の信号を用いて遅延搬送波信号を変調して第2の変調信号を生成することができる。分離バリア内の戻り経路を介して遅延搬送波信号および第2の変調信号を送信することができる。ここで、戻り経路および順方向経路は、互いに反対方向になっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチップと、第2のチップと、分離バリアと、を備える半導体装置であって、
前記第1のチップは、
前記第2のチップ用に指定された第1の信号を用いて搬送波信号を変調して第1の変調信号を生成し、
前記分離バリアを介して前記搬送波信号および前記第1の変調信号を前記第2のチップに送信するように構成され、
前記第2のチップは、
遅延搬送波信号としての前記搬送波信号と、前記第1の変調信号とを受信し、
前記第1の変調信号を復調して前記第1の信号を復元し、
前記第1のチップ用に指定された第2の信号を用いて前記遅延搬送波信号を変調して第2の変調信号を生成し、
前記分離バリアを介して前記遅延搬送波信号および前記第2の変調信号を前記第1のチップに送信するように構成される、
半導体装置。
【請求項2】
前記分離バリアは、第1の分離部品と、第2の分離部品と、第3の分離部品と、第4の分離部品と、を含み、
前記第1のチップは、前記第1の分離部品を介して前記搬送波信号を前記第2のチップに送信するように構成され、
前記第1のチップは、前記第2の分離部品を介して前記第1の変調信号を前記第2のチップに送信するように構成され、
前記第2のチップは、前記第3の分離部品を介して前記遅延搬送波信号を前記第1のチップに送信するように構成され、
前記第2のチップは、前記第4の分離部品を介して前記第2の変調信号を前記第1のチップに送信するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の分離部品、前記第2の分離部品、前記第3の分離部品、および前記第4の分離部品の各々は、キャパシタおよび変成器のうちの1つである、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のチップは、N個のデジタル信号変調器を含み、
前記第1の分離部品および前記第2の分離部品は、前記第1のチップから前記第2のチップに信号を転送するN個の分離部品に含まれ、
前記第2のチップは、M個のデジタル信号変調器を含み、
前記第3の分離部品および前記第4の分離部品は、前記第2のチップから前記第1のチップに信号を転送するM個の分離部品に含まれる、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1のチップは、
N個のデジタル信号変調器と、
M個のデジタル信号復調器と、
を含み、
前記第2のチップは、
N個のデジタル信号復調器と、
M個のデジタル信号変調器と、
を含み、
前記第1のチップは、前記搬送波信号を前記第1のチップ内の前記N個のデジタル信号変調器に分配するように構成され、
前記第2のチップは、前記遅延搬送波信号を前記第2のチップ内の前記M個のデジタル信号変調器に分配するように構成され、
前記第2のチップは、前記遅延搬送波信号を前記第1のチップ内の前記M個のデジタル信号復調器に送信するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記搬送波信号は、電圧制御発振器によって生成されたスペクトラム拡散信号である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記分離バリアは、前記搬送波信号に遅延を適用して前記搬送波信号を前記遅延搬送波信号に変換し、
前記分離バリアは、前記遅延搬送波信号に前記遅延を適用して前記遅延搬送波信号を2倍遅延搬送波信号に変換し、
前記第1のチップは、
前記2倍遅延搬送波信号を受信し、
前記2倍遅延搬送波信号を復調して前記第2の信号を復元するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
第3のチップをさらに備え、
前記第2のチップは、
前記第3のチップ用に指定された第3の信号を受信し、
前記第3の信号を用いて前記遅延搬送波信号を変調して第3の変調信号を生成し、
前記分離バリアを介して前記遅延搬送波信号および前記第3の変調信号を前記第3のチップに送信するようにさらに構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
信号を送信するための方法であって、
第1の信号を用いて搬送波信号を変調して第1の変調信号を生成するステップと、
分離バリア内の順方向経路を介して前記搬送波信号および前記第1の変調信号を送信するステップであって、前記分離バリアを介して前記搬送波信号を送信することで、前記搬送波信号を遅延搬送波信号に変換する、ステップと、
前記第1の変調信号を復調して前記第1の信号を復元するステップと、
第2の信号を用いて前記遅延搬送波信号を変調して第2の変調信号を生成するステップと、
前記分離バリア内の戻り経路を介して前記遅延搬送波信号および前記第2の変調信号を送信するステップと、
を含み、
前記戻り経路および前記順方向経路は、互いに反対方向になっている、
方法。
【請求項10】
前記順方向経路を介して前記搬送波信号を送信するステップは、前記分離バリアの第1の分離部品を介して前記搬送波信号を送信するステップを含み、
前記順方向経路を介して前記第1の変調信号を送信するステップは、前記分離バリアの第2の分離部品を介して前記第1の変調信号を送信するステップを含み、
前記戻り経路を介して前記遅延搬送波信号を送信するステップは、前記分離バリアの第3の分離部品を介して前記遅延搬送波信号を送信するステップを含み、
前記戻り経路を介して前記第2の変調信号を送信するステップは、前記分離バリアの第4の分離部品を介して前記第2の変調信号を送信するステップを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の分離部品、前記第2の分離部品、前記第3の分離部品、および前記第4の分離部品の各々は、キャパシタおよび変成器のうちの1つである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電圧制御発振器を動作させて前記搬送波信号を生成するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記順方向経路を介して前記搬送波信号を送信するステップは、前記搬送波信号に遅延を適用して前記搬送波信号を前記遅延搬送波信号に変換するステップを含み、
前記戻り経路を介して前記遅延搬送波信号を送信するステップは、前記遅延搬送波信号に前記遅延を適用して前記遅延搬送波信号を2倍遅延搬送波信号に変換するステップを含み、
前記2倍遅延搬送波信号を復調して前記第2の信号を復元するステップをさらに含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
第1の装置と、第2の装置と、アイソレータと、を備える半導体装置であって、
前記アイソレータは、
第1のチップと、
第2のチップと、
分離バリアと、
を含み、
前記第1のチップは、
前記第2の装置用に指定された第1の信号を前記第1の装置から受信し、
前記第1の信号を用いて搬送波信号を変調して第1の変調信号を生成し、
前記分離バリアを介して前記搬送波信号および前記第1の変調信号を前記第2のチップに送信するように構成され、
前記第2のチップは、
遅延搬送波信号としての前記搬送波信号と、前記第1の変調信号とを受信し、
前記第1の変調信号を復調して前記第1の信号を復元し、
前記第1の装置用に指定された第2の信号を前記第2の装置から受信し、
前記第2の信号を用いて前記遅延搬送波信号を変調して第2の変調信号を生成し、
前記分離バリアを介して前記遅延搬送波信号および前記第2の変調信号を前記第1のチップに送信するように構成され、
前記第1のチップは、
前記遅延搬送波信号を2倍遅延搬送波信号として受信し、
前記2倍遅延搬送波信号を復調して前記第2の信号を復元し、
前記第2の信号を前記第1の装置に送信するようにさらに構成される、
半導体装置。
【請求項15】
前記分離バリアは、第1の分離部品と、第2の分離部品と、第3の分離部品と、第4の分離部品と、を含み、
前記第1のチップは、前記第1の分離部品を介して前記搬送波信号を前記第2のチップに送信するように構成され、
前記第1のチップは、前記第2の分離部品を介して前記第1の変調信号を前記第2のチップに送信するように構成され、
前記第2のチップは、前記第3の分離部品を介して前記遅延搬送波信号を前記第1のチップに送信するように構成され、
前記第2のチップは、前記第4の分離部品を介して前記第2の変調信号を前記第1のチップに送信するように構成される、
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1の分離部品、前記第2の分離部品、前記第3の分離部品、および前記第4の分離部品の各々は、キャパシタおよび変成器のうちの1つである、請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1のチップは、N個のデジタル信号変調器を含み、
前記第1の分離部品および前記第2の分離部品は、前記第1のチップから前記第2のチップに信号を転送するN個の分離部品に含まれ、
前記第2のチップは、M個のデジタル信号変調器を含み、
前記第3の分離部品および前記第4の分離部品は、前記第2のチップから前記第1のチップに信号を転送するM個の分離部品に含まれる、
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記第1のチップは、
N個のデジタル信号変調器と、
M個のデジタル信号復調器と、
を含み、
前記第2のチップは、
N個のデジタル信号復調器と、
M個のデジタル信号変調器と、
を含み、
前記第1のチップは、前記搬送波信号を前記第1のチップ内の前記N個のデジタル信号変調器に分配するように構成され、
前記第2のチップは、前記遅延搬送波信号を前記第2のチップ内の前記M個のデジタル信号変調器に分配するように構成され、
前記第2のチップは、前記遅延搬送波信号を前記第1のチップ内の前記M個のデジタル信号復調器に送信するように構成される、
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記第1の装置は、前記搬送波信号を生成するように構成された電圧制御発振器を備える、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記分離バリアは、前記搬送波信号に遅延を適用して前記搬送波信号を前記遅延搬送波信号に変換し、
前記分離バリアは、前記遅延搬送波信号に前記遅延を適用して前記遅延搬送波信号を前記2倍遅延搬送波信号に変換する、
請求項14に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、半導体装置に関する。より詳細には、本開示は、順方向経路および戻り経路を含むアイソレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルアイソレータは、デジタル信号を分離し、分離バリアを介してデジタル通信を転送するために使用される統合デバイスである。入力信号は、送信機を介して変調された後、分離バリアを通過して受信機に到達する。変調信号は、分離バリアに結合され、受信機側で減衰した形態で現れる。受信機内の復調器は、元の入力信号を再生成することができる。分離バリアは、例えば、少なくとも1つの変成器またはキャパシタによって実現され得る。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態において、一般に、デジタル信号を分離するための半導体装置が提供される。半導体装置は、第1のチップと、第2のチップと、分離バリアと、を含むことができる。第1のチップは、第2のチップ用に指定された第1の信号を用いて搬送波信号を変調して第1の変調信号を生成するように構成され得る。さらに、第1のチップは、分離バリアを介して搬送波信号および第1の変調信号を第2のチップに送信するように構成され得る。第2のチップは、搬送波信号および第1の変調信号を受信するように構成され得る。搬送波信号は、遅延搬送波信号として受信され得る。さらに、第2のチップは、第1の変調信号を復調して第1の信号を復元するように構成され得る。さらに、第2のチップは、第1のチップ用に指定された第2の信号を用いて遅延搬送波信号を変調して第2の変調信号を生成するように構成され得る。さらに、第2のチップは、分離バリアを介して遅延搬送波信号および第2の変調信号を第1のチップに送信するように構成され得る。
【0004】
一実施形態において、一般に、信号を送信するための方法が提供される。該方法は、第1の信号を用いて搬送波信号を変調して第1の変調信号を生成するステップを含むことができる。さらに、該方法は、分離バリア内の順方向経路を介して搬送波信号および第1の変調信号を送信するステップを含むことができる。ここで、分離バリアを介して搬送波信号を送信することで、搬送波信号を遅延搬送波信号に変換することができる。さらに、該方法は、第1の変調信号を復調して第1の信号を復元するステップを含むことができる。さらに、該方法は、第2の信号を用いて遅延搬送波信号を変調して第2の変調信号を生成するステップを含むことができる。さらに、該方法は、分離バリア内の戻り経路を介して遅延搬送波信号および第2の変調信号を送信するステップを含むことができる。ここで、戻り経路と順方向経路とは、互いに反対方向になっている。
【0005】
一実施形態において、一般に、デジタル信号を分離するための半導体装置が提供される。半導体装置は、第1の装置と、第2の装置と、アイソレータと、を含むことができる。アイソレータは、第1のチップと、第2のチップと、分離バリアと、を含むことができる。第1のチップは、第1の装置から第1の信号を受信するように構成され得る。ここで、第1の信号は、第2の装置用に指定される。さらに、第1のチップは、第1の信号を用いて搬送波信号を変調して第1の変調信号を生成するように構成され得る。さらに、第1のチップは、分離バリアを介して搬送波信号および第1の変調信号を第2のチップに送信するように構成され得る。第2のチップは、搬送波信号および第1の変調信号を受信するように構成され得る。この搬送波信号は、遅延搬送波信号として受信され得る。さらに、第2のチップは、第1の変調信号を復調して第1の信号を復元するように構成され得る。さらに、第2のチップは、第2の装置から第2の信号を受信するように構成され得る。この第2の信号は、第1の装置用に指定される。さらに、第2のチップは、第2の信号を用いて遅延搬送波信号を変調して第2の変調信号を生成するように構成され得る。さらに、第2のチップは、分離バリアを介して遅延搬送波信号および第2の変調信号を第1のチップに送信するように構成され得る。さらに、第1のチップは、遅延搬送波信号を2倍遅延搬送波信号として受信するように構成され得る。さらに、第1のチップは、2倍遅延搬送波信号を復調して第2の信号を復元するように構成され得る。さらに、第1のチップは、第2の信号を第1の装置に送信するように構成され得る。
【0006】
上述した概要は、例示的なものであり、いかなる場合でも限定的であることを意図していない。上述した例示的な態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、および特徴が、添付の図面および以下の詳細な説明を参照することで明らかになるであろう。図において、同様の参照符号は、同一または機能的に類似する要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】従来型のアイソレータを示す図である。
図1B】従来型のアイソレータを利用したアプリケーションを示す図である。
図2】一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの例示的な図である。
図3】一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの別の例示的な図である。
図4】一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの別の例示的な図である。
図5】一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの別の例示的な図である。
図6】一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの動作に関するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本願の様々な実施形態の理解を促すために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、および技術などを含む多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本願の様々な実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実現され得ることを理解するであろう。場合によっては、本願を不明瞭にしないために、既知の構造または処理ステップの詳細に関する説明を省略する。
【0009】
図1Aは、従来型のアイソレータを示す図である。図1Aに示す従来型のアイソレータ回路は、基準電圧レベルが異なる回路ブロック間の信号転送のための高電圧アイソレータであり得る。一態様において、従来型のアイソレータは、低電圧制御段と高電圧ドライバ段とを接続するシステム集積回路(IC)の一部であり得る。このようなシステムICは、通常、シリコンICプロセスを使用することができる。そのため、従来型のアイソレータは、容量性または誘導性カップリングを使用する。
【0010】
従来型のアイソレータは、図1Aに示す位相シフトキーイング(PSK)アーキテクチャなど、様々なアイソレータアーキテクチャを用いて実現され得る。図1Aに示す従来型のアイソレータは、直流(DC)接続を行わず、例えばキャパシタまたは変成器によって実現された半導体ベースの分離バリアによって分離されたチップAおよびチップBを含むことができる。チップAは、入力信号を受信することができる。チップA内の変調器(例えば、位相シフトキーイング(PSK)変調器)は、入力信号を用いてチップAの無線周波数(RF)発振器から生成された搬送波信号を変調することができる。PSK変調の下では、入力信号は、2進数のゼロまたは2進数の1をそれぞれ表すように、0度または180度の位相シフトとして搬送波信号を変調することができる。搬送波信号を変調することで、RFノイズ、コモンモード過渡耐性(CMTI)、および高ビットレート転送などの課題に対処することができる。変調されたPSK信号と搬送波信号は、半導体ベースの分離バリアを通過してチップBに到達することができる。分離バリアは、PSK信号に遅延を適用して、搬送波信号を遅延させることができる。チップB内の復調器(例えば、PSK復調器)は、遅延PSK信号および遅延搬送波信号を用いて復元信号を生成し、復元信号から搬送波漏洩信号を除去することができる。復元信号は、出力信号として出力され得る。
【0011】
図1Aに示す従来型のシステムがチップAからチップBへの搬送波経路を有さず、チップBがコスタスループブロックなどの搬送波再生成ブロックを有する場合、これはシステム内で復調器として機能する。しかしながら、アイソレータとしての特性はほとんど変わらない。無線基地局からのRFノイズなどの比較的強いRF信号にさらされた場合、搬送波信号の再生成において、復調器の出力信号は、固定レベルとして決定されない。しかしながら、搬送波経路が存在するシステムの場合、強いRFノイズによって搬送波信号とPSK信号が同じRFノイズに入れ替わる。これは、入力が(1,1)または(0,0)しかないので、排他的なOR復調器の出力が低レベル(ロジックロー)になることを意味する。この出力レベルがシステムに知られていれば、システムを、重ノイズ状態では無効となるように設計することができる。また、搬送波経路システムは、RF製品の電磁干渉(EMI)を改善するためにスペクトラム拡散システムを適用することができる。
【0012】
図1Bは、1つまたは複数の順方向経路および戻り経路を有する従来型のアイソレータ(オプトカプラ)を利用するアプリケーションを示す図である。一態様において、いくつかのアプリケーション(例えば、高出力アプリケーション)は、ブロックBからブロックAに信号を送信するための1つまたは複数の戻り経路を含むことができる。例えば、高馬力モータは、ロータ位置検知情報、速度およびトルク制御のための駆動電流情報、ドライバ温度、過電流、またはその他のタイプのフィードバック情報に関する警告または故障報告など、様々なフィードバック信号を必要とする場合がある。別の実施例において、高電圧DC-DCシステムは、出力電圧制御のためのフィードバック電圧、動作安全のための過電圧保護、過電流保護、過温度保護などの警告または保護情報など、ブロックBからブロックAへの戻り経路を利用してもよい。
【0013】
図1Bには、1つの順方向経路および2つの戻り経路を有する従来型のアイソレータ(オプトカプラ)を利用するDC-DCアップコンバータアプリケーションが示されている。1つの順方向経路は、第1のアイソレータ(カプラ1)を利用することができ、ブロックA内の送信機TX1AからブロックB内の受信機RX1Bに信号を送信させることができる。第1の戻り経路は、第2のアイソレータ(カプラ2)を利用することができ、ブロックB内の受信機TX1BからブロックA内の受信機RX1Aに信号を送信させることができる。第2の戻り経路は、第3のアイソレータ(カプラ3)を利用することができ、ブロックB内の送信機TX2BからブロックA内の受信機RX2Aに信号を送信させることができる。第1、第2、および第3のアイソレータは、信号トランスポータとして機能することができる。
【0014】
DC-DC制御ICは、適切な周波数とデューティサイクルを有するパルス幅変調(PWM)信号を生成することができる。ブロックA内の送信機TX1Aは、PWM信号を生成することができ、第1のアイソレータを介してその信号をブロックB内の受信機RX1Bに提供することができる。ブロックA内の送信機TX1Aは、PWM信号を生成することができ、第1のアイソレータを介してその信号をブロックB内の受信機RX1Bに提供することができる。受信機RX1Bは、PWM信号を再生成することができ、そのPWM信号をドライバに提供して、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)Qをスイッチングすることができる。
【0015】
一態様において、安全な動作のために、システムは、MOSFET Qのゲート/ソース間電圧Vgsを監視することができ、MOSFET Qからの電流を監視することができる。監視されたVgsは、ブロックB内のコンパレータを介して送信機TX1Bにフィードバックされ得る。ブロックB内の送信機TX1Bは、監視されたVgsで表すことができる信号を生成することができる。この信号は、第2のアイソレータを介してブロックA内の受信機RX1Aに提供され得る。受信機RX1Aは、ブロックB内のTX1Bから受信した信号を再生成してVgsを復元し、VgsをDC-DC制御ICに提供することができる。
【0016】
監視された電流は、過電流保護回路(OCP)を介してブロックB内の送信機TX2Bにフィードバックされ得る。ブロックB内の送信機TX2Bは、監視された電流で表すことができる信号を生成することができる。この信号は、第3のアイソレータを介してブロックA内の受信機RX2Aに提供され得る。受信機RX2Aは、ブロックB内のTX2Bから受信した信号を再生成して監視された電流を復元し、監視された電流をDC-DC制御ICに提供することができる。複数のアイソレータ(カプラ)を使用することで、図1Bに示す従来型のシステムは、高電圧出力段(HV)と低電圧入力段(LV)との間で分離された接地を達成することができる。
【0017】
ブロックBからブロックAへの戻り経路を実現するには、オプトカプラを使用してアナログ信号またはアナログからデジタルに変換されたデジタル信号(例えば、Vgsおよび監視された電流)を転送して、戻り経路においてブロックAにフィードバックデータを送信する。オプトカプラは、順方向経路および戻り経路のシステムで良好に機能することができる。しかしながら、オプトカプラのそれぞれのサイズが比較的大きくなり、温度や環境(埃っぽいなど)の条件に対する信頼性が低い。このような状況下では、小型で信頼性が高く、システムICに適切な解決策が期待される。
【0018】
図2は、一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの例示的な図である。図2には、装置200が示されている。装置200は、半導体装置またはチップと、複数のアナログ回路部品およびデジタル回路部品と、インターフェースと、を含むことができる。装置200は、分離バリアを介してデジタル信号を2つの分離装置間で交換することができる双方向デジタルアイソレータを実装することができる。一実施形態において、装置200は、システムICとして製造されたアイソレータであり得る。
【0019】
装置200は、第1のチップ201(図2ではチップ201)と、第2のチップ202(図2ではチップ202)と、分離バリアと、を含むことができる。チップ201および202の各々は、個々の集積回路(IC)または半導体チップであり得る。第1のチップ201および第2のチップ202は、互いから分離され得る(例えば、直接的または物理的な接続がない)。分離バリア220は、第1のチップ201と第2のチップ202とを分離するように、第1のチップ201と第2のチップ202との間に配置され得る。分離バリア220は、例えばキャパシタまたは変成器であり得る複数の分離部品または分離要素222、224、226、および228を含むことができる。図2には4つの分離要素が示されているが、分離バリア220は、任意の数の分離要素を含むことができる。
【0020】
第1のチップ201および第2のチップ202は、分離バリア220(例えば、装置200が容量性アイソレータである場合)内の分離要素を用いてデジタル信号を互いに交換させることができる。分離要素がキャパシタである場合、キャパシタは、第1のチップ201から第2のチップ202へ、または第2のチップ202から第1のチップ201へ送信される信号の直流(DC)成分をフィルタリングすることができ、信号の低周波数交流交流(AC)成分を減衰することができる。分離要素が変成器である場合(例えば、装置200が誘導性アイソレータである場合)、変成器は、誘導結合を用いて信号の送信を容易にすることができる。
【0021】
第1のチップ201は、少なくとも1つのデジタル信号変調器(例えば、変調器240)と、少なくとも1つのデジタル復調器(例えば、復調器242)と、を含むことができる。変調器240は、デジタル変調を実施するように構成されたデジタル変調器であり得る。復調器242は、デジタル変調された信号を復調するように構成されたデジタル復調器であり得る。デジタル変調の例として、PSK、2位相偏移変調(BPSK)、4位相偏移変調(QPSK)、差動4位相偏移変調(D-QPSK)、周波数偏移変調(FSK)、M状態位相偏移変調(M-PSK)、直交振幅変調(QAM)、振幅・位相偏移変調(APSK)、および符号分割多重アクセス(CDMA)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、変調器240は、PSK変調器であり得、復調器242は、PSK復調器であり得る。一実施形態において、第1のチップ201は、搬送波信号232を生成するように構成された搬送波生成器230をさらに含むことができる。一部の実施形態において、搬送波生成器230は、装置200の外部の装置に配置され得る。一実施形態において、搬送波生成器230は、無線周波数(RF)発振器であり得る。別の実施形態において、搬送波生成器230は、電圧制御発振器であり得る。搬送波信号232は、情報を伝達する目的で、情報を有する信号で変調または変更され得る信号(例えば、正弦波)であり得る。
【0022】
第1のチップ201は、入力信号204を受信することができる。入力信号204は、パルス幅変調(PWM)信号またはその他のタイプのデジタル信号であり得る。入力信号204は、第1のチップ201から第2のチップ202に送信されるように指定された信号であり得る。搬送波生成器230は、搬送波信号232を変調器240に送信することができる。変調器240は、入力信号204を用いて搬送波信号232を変調するように構成され得る。この変調された搬送波信号は、図2では変調信号205と示されている。変調信号205は、入力信号204によって表されるデータまたは情報を符号化することができる。
【0023】
搬送波生成器230は、分離バリア220を介して搬送波信号232を第2のチップ202に送信することができる。変調器240は、分離バリア220を介して変調信号205を第2のチップ202に送信することができる。一実施形態において、搬送波生成器230および変調器240は、分離バリア220内の個々の分離要素を用いて信号を第2のチップ202に送信することができる。例えば、搬送波生成器230は、分離要素226を介して搬送波信号232を第2のチップ202に送信することができる。変調器240は、分離要素228を介して変調信号205を第2のチップ202に送信することができる。
【0024】
分離バリア220は、遅延Dを搬送波信号232に適用することができ、同じ遅延Dを変調信号205にも適用することができる。適用された遅延に応答して、第2のチップ202は、搬送波信号232を遅延搬送波信号234として受信することができ、変調信号205を遅延変調信号206として受信することができる。第2のチップ202は、少なくとも1つのデジタル信号変調器(例えば、変調器250)と、少なくとも1つのデジタル復調器(例えば、復調器252)と、を含むことができる。復調器252は、遅延搬送波信号234および遅延変調信号206を受信することができる。復調器252は、遅延搬送波信号234を用いて遅延変調信号206を復調して入力信号204を復元するように構成され得る。復調器252は、復元信号を出力信号207として出力することができる。この出力信号207は、入力信号204のコピーであり得、入力信号204と同じデータまたは情報を表すことができる。変調器250は、デジタル変調を実施するように構成されたデジタル変調器であり得る。復調器252は、デジタル変調された信号を復調するように構成されたデジタル復調器であり得る。デジタル変調の例として、PSK、2位相偏移変調(BPSK)、4位相偏移変調(QPSK)、差動4位相偏移変調(D-QPSK)、周波数偏移変調(FSK)、M状態位相偏移変調(M-PSK)、直交振幅変調(QAM)、振幅・位相偏移変調(APSK)、および符号分割多重アクセス(CDMA)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、変調器250は、PSK変調器であり得、復調器252は、PSK復調器であり得る。
【0025】
一実施形態において、第2のチップ202は、分離要素226と変調器250とを接続する第1の内部信号経路または電流経路(例えば、第2のチップ202内の経路)と、分離要素226と分離要素224とを接続する第2の内部信号経路と、を含むことができる。第1の内部信号経路によって、第2のチップ202が遅延搬送波信号234を受信して、遅延搬送波信号234を変調器250に転送することができる。第2の内部信号経路によって、第2のチップ202が遅延搬送波信号234を受信して、遅延搬送波信号234を第1のチップ201に戻すことができる。
【0026】
第2のチップ202は、入力信号212を受信することができる。入力信号212は、デジタル信号であり得る。入力信号212は、第2のチップ202から第1のチップ201に送信されるように指定された信号であり得る。変調器250は、入力信号212を用いて遅延搬送波信号234を変調するように構成され得る。この変調された遅延搬送波信号は、図2では変調信号213と示されている。変調信号213は、入力信号212によって表されるデータまたは情報を符号化することができる。
【0027】
第2のチップ202は、分離バリア220を介して遅延搬送波信号234を第1のチップ201に送信することができる。変調器250は、分離バリア220を介して変調信号213を第1のチップ201に送信することができる。一実施形態において、第2のチップ202および変調器250は、分離バリア220内の個々の分離要素を用いて信号を第1のチップ201に送信することができる。例えば、第2のチップ202は、分離要素226を介して遅延搬送波信号234を第1のチップ201に送信することができる。変調器250は、分離要素222を介して変調信号213を第1のチップ201に送信することができる。
【0028】
分離バリア220は、遅延Dを遅延搬送波信号234に適用することができ、同じ遅延Dを変調信号213にも適用することができる。適用された遅延に応答して、第1のチップ201は、遅延搬送波信号234を2倍遅延搬送波信号236として受信することができ、変調信号213を遅延変調信号214として受信することができる。復調器242は、2倍遅延搬送波信号236および遅延変調信号214を受信することができる。復調器242は、2倍遅延搬送波信号236を用いて遅延変調信号214を復調して入力信号212を復元するように構成され得る。復調器242は、復元信号を出力信号215として出力することができる。この出力信号215は、入力信号212のコピーであり得、入力信号212と同じデータまたは情報を表すことができる。
【0029】
遅延搬送波信号234を変調器250に提供し、遅延搬送波信号234を第1のチップ201に戻すように内部信号経路を構成することで、第2のチップ202は、戻り経路における信号を第1のチップ201に送信するために(例えば、第2のチップ202から第1のチップ201に送信するために)、搬送波信号232(この場合、遅延搬送波信号234は搬送波信号232の遅延バージョンである)を再利用することができる。搬送波信号232を再利用することで、第2のチップ202で搬送波信号を生成するための位相同期ループ(PLL)回路などの回路を設ける必要性を回避することができる。搬送波信号232を再利用することで、装置200は、高いノイズ耐性、短い応答時間(例えば、ゼロロックイン時間)、および良好な位相整合を提供することができる。
【0030】
さらに、第1のチップ201内の復調器242は、第2のチップ202からの変調信号を復調するために、適切な遅延を有する搬送波信号を必要とする。すなわち、第1のチップ201内の復調器242は、変調信号を復調するために、変調信号と位相が一致する搬送波信号を必要とする。搬送波信号232と遅延変調信号214は位相が一致していないので、復調器242は、搬送波信号232を用いて遅延変調信号214を復調することができない。しかしながら、2倍遅延搬送波信号236と遅延変調信号214は位相が一致しているので、復調器242は、2倍遅延搬送波信号236を用いて遅延変調信号214を復調することができる。
【0031】
図3は、一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの別の例示的な図である。図3には、装置300が示されている。一実施形態において、装置300は、追加の構成要素を有する図2に示す装置200であり得る。装置300は、半導体装置またはチップと、複数のアナログ回路部品およびデジタル回路部品と、インターフェースと、を含むことができる。装置300は、分離バリアを介してデジタル信号を2つの分離装置間で交換することができる双方向デジタルアイソレータを実現することができる。一実施形態において、装置300は、システムICとして製造されたアイソレータであり得る。
【0032】
装置300は、第1のチップ301(図3ではチップ301)と、第2のチップ302(図3ではチップ302)と、分離バリア320と、を含むことができる。チップ301および302の各々は、個々のICまたは半導体チップであり得る。第1のチップ301および第2のチップ302は、互いから分離され得る(例えば、直接的または物理的な接続がない)。分離バリア320は、第1のチップ301と第2のチップ302とを分離するように、第1のチップ301と第2のチップ302との間に配置され得る。分離バリア320は、ISOとして示される複数の分離部品または分離要素を含むことができる。分離バリア320内の分離要素は、例えばキャパシタまたは変成器であり得る。一実施形態において、第1のチップ301および第2のチップ302は、それぞれ追加の構成要素を有する図2に示す第1のチップ201および第2のチップ202であり得る。
【0033】
第1のチップ301は、変調器310-A1、310-A2、…310-ANとして示されるN個のデジタル信号変調器を含むことができる。さらに、第1のチップ301は、復調器312-A1、312-A2、…312-AMとして示されるM個のデジタル信号復調器を含むことができる。一実施形態において、第1のチップ301内のN個の変調器は、PSK変調器であり得、第1のチップ301内のM個の復調器は、PSK復調器であり得る。第2のチップ302は、変調器314-B1、314-B2、…314-BMとして示されるM個のデジタル信号変調器を含むことができる。さらに、第2のチップ302は、復調器316-B1、316-B2、…316-BNとして示されるN個のデジタル信号復調器を含むことができる。一実施形態において、第2のチップ302内のM個の変調器は、PSK変調器であり得、第2のチップ302内のN個の復調器は、PSK復調器であり得る。
【0034】
一実施形態において、第1のチップ301内のN個の変調器は、第2のチップ302用に指定された、入力信号A1、入力信号A2、…入力信号ANとして示されるN個の入力信号をそれぞれ受信することができる。第1のチップ301は、搬送波信号232を受信し、搬送波信号232を第1のチップ301内のN個の変調器に分配することができる。第1のチップ301内のN個の変調器は、第2のチップ302用に指定されたN個の入力信号を用いて搬送波信号232を変調してN個の変調信号を生成し、分離バリア320内のそれぞれの分離要素を介してN個の変調信号を第2のチップ302内のN個の復調器に送信することができる。第1のチップ301は、搬送波信号232を第2のチップ302に送信することができる。第2のチップ302は、搬送波信号232を遅延搬送波信号234として受信することができる。第2のチップ302は、遅延搬送波信号234を第2のチップ302内のN個の復調器と、第2のチップ302内のM個の変調器とに分配することができる。第2のチップ302内のN個の復調器は、遅延搬送波信号234を用いて第1のチップ301から受信したN個の変調信号を復調して、出力信号B1、出力信号B2、…出力信号BNとして示されるN個の出力信号を生成することができる。
【0035】
第2のチップ302内のM個の変調器は、第1のチップ301用に指定された、入力信号B1、入力信号B2、…入力信号BMとして示されるM個の入力信号をそれぞれ受信することができる。第2のチップ302内のM個の変調器は、第1のチップ301用に指定されたM個の入力信号を用いて遅延搬送波信号234を変調してM個の変調信号を生成し、分離バリア320内のそれぞれの分離要素を介してM個の変調信号を第1のチップ301内のM個の復調器に送信することができる。第2のチップ302は、遅延搬送波信号234を第1のチップ301に送信することができる。第1のチップ301は、遅延搬送波信号234を2倍遅延搬送波信号236として受信することができる。第1のチップ301は、2倍遅延搬送波信号236を第1のチップ301内のM個の復調器に分配することができる。第1のチップ301内のM個の復調器は、2倍遅延搬送波信号236を用いて第2のチップ302から受信したM個の変調信号を復調して、出力信号A1、出力信号A2、…出力信号AMとして示されるM個の出力信号を生成することができる。
【0036】
図3の実施形態に示すように、搬送波信号232を再利用するための本明細書に記載の方法は、複数の順方向経路(例えば、第1のチップ301から第2のチップ302への経路)および複数の戻り経路(例えば、第2のチップ302から第1のチップ301への経路)を含む分離システムに適用可能である。
【0037】
図4は、一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの別の例示的な図である。図4には、装置400が示されている。一実施形態において、装置400は、追加の構成要素を有する図3に示す装置300であり得る。装置300と比較すると、装置400は、搬送波信号232を生成するように構成された電圧制御発振器(VCO)402をさらに含むことができる。一実施形態において、装置400は、システムICとして製造されたアイソレータであり得る。VCO402は、搬送波信号232を第1のチップ301内のN個の変調器に分配することができる。搬送波信号232が例えばVCO402などのVCOによって生成された場合、搬送波信号232は、スペクトラム拡散搬送波信号であり得る。スペクトラム拡散搬送波信号を生成するためにVCOを用いることで、電磁干渉(EMI)の放出を最小限に抑えることができる。
【0038】
図5は、一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの別の例示的な図である。図5には、装置500が示されている。一実施形態において、装置500は、追加の構成要素を有する図3に示す装置300であり得る。装置200と比較すると、装置500は、第3のチップ502(図5ではチップ502)をさらに含むことができる。第3のチップ502は、ICまたは半導体チップであり得る。第3のチップ502は、第2のチップ302から分離され得る(例えば、直接的または物理的な接続がない)。分離バリア504は、第2のチップ302と第3のチップ502とを分離するように、第2のチップ302と第3のチップ502との間に配置され得る。分離バリア504は、例えばキャパシタまたは変成器であり得る複数の分離部品または分離要素を含むことができる。図5には4つの分離要素が示されているが、分離バリア504は、任意の数の分離要素を含むことができる。
【0039】
第3のチップ502は、復調器506-C1、506-C2、…506-CMとして示されるM個のデジタル信号復調器を含むことができる。第3のチップ502内のM個の復調器は、PSK復調器であり得る。一実施形態において、第2のチップ302内のM個の変調器は、第3のチップ502用に指定された、入力信号BC1、入力信号BC2、…入力信号BCMとして示されるM個の入力信号をそれぞれ受信することができる。第2のチップ302内のM個の変調器は、第3のチップ502用に指定されたM個の入力信号を用いて遅延搬送波信号234を変調することができる。第2のチップ302内のM個の復調器は、第2のチップ302内のM個の変調器によって生成されたM個の変調信号を、分離バリア504内のそれぞれの分離要素を介して第3のチップ502内のM個の復調器に送信することができる。第2のチップ302は、遅延搬送波信号234を第3のチップ502に送信することができる。第3のチップ502は、遅延搬送波信号234を2倍遅延搬送波信号236として受信することができる。第3のチップ502は、2倍遅延搬送波信号236を第3のチップ502内のM個の復調器に分配することができる。第3のチップ502内のM個の復調器は、2倍遅延搬送波信号236を用いて第2のチップ302から受信したM個の変調信号を復調して、出力信号C1、出力信号C2、…出力信号CMとして示されるM個の出力信号を生成することができる。
【0040】
本明細書に記載のアイソレータ(例えば、装置200、300、400、500)は、DC-DCおよびAC-DCコンバータ用のパワーモジュール、民生産業、自動車産業または航空宇宙産業におけるモータドライバ、または分離された装置間で信号を送信する必要があるその他のアプリケーションを含む様々なアプリケーションに実装され得る。本明細書に記載のアイソレータは、高データレート(例えば、200Mbps)、高ノイズ耐性、(例えば、CMTI>200kV/μsec)、および外部磁界(例えば、毎秒800テスラ超)に対応することができる。一実施形態において、本明細書に記載のアイソレータは、マスターコントローラと、シリコントランジスタまたは窒化ガリウム(GaN)トランジスタなどのワイドバンドギャップデバイス(例えば、800ボルト)用のドライバICとの間に配置され得る。本明細書に記載のアイソレータは、調整を行うことなく、マスターコントローラからの高周波PWM(例えば、<1MHz)制御信号の自己整合デッドタイム発生システムに対応することができる。
【0041】
図6は、一実施形態における、順方向経路および戻り経路を有するアイソレータの動作に関するフロー図である。図6に示すプロセス600は、上述した装置200、300、400、または500などのアイソレータを動作させるために実施されてもよい。プロセス600は、1つまたは複数のブロック602、604、606、608、および/または610によって示される1つまたは複数の操作、動作、または機能を含むことができる。個別のブロックとして図に示されているが、所望の用途に応じて、様々なブロックを、追加のブロックとなるように分割したり、より少ない数のブロックとなるように組み合わせたり、省略したり、異なる順序で実行したり、並行して実行したりしてもよい。
【0042】
プロセス600は、ブロック602で開始することができる。ブロック602では、アイソレータの第1のチップは、第1の信号を用いて搬送波信号を変調して第1の変調信号を生成することができる。一実施形態において、第1のチップは、電圧制御発振器を動作させて搬送波信号を生成することができる。プロセス600は、ブロック602からブロック604に進むことができる。ブロック604では、第1のチップは、分離バリア内の順方向経路を介して搬送波信号および第1の変調信号を送信することができる。ここで、分離バリアを介して搬送波信号を送信することで、搬送波信号を遅延搬送波信号に変換することができる。
【0043】
プロセス600は、ブロック604からブロック606に進むことができる。ブロック606では、アイソレータの第2のチップは、第1の変調信号を復調して第1の信号を復元することができる。プロセス600は、ブロック606からブロック608に進むことができる。ブロック608では、第2のチップは、第2の信号を用いて遅延搬送波信号を変調して第2の変調信号を生成することができる。プロセス600は、ブロック608からブロック610に進むことができる。ブロック610では、第2のチップは、分離バリア内の戻り経路を介して遅延搬送波信号および第2の変調信号を送信することができる。ここで、戻り経路および順方向経路は、互いに反対方向になっている。
【0044】
一実施形態において、第1のチップは、分離バリアの第1の分離部品を介して搬送波信号を送信することで、順方向経路を介して搬送波信号を送信することができる。第1のチップは、分離バリアの第2の分離部品を介して第1の変調信号を送信することで、順方向経路を介して第1の変調信号を送信することができる。第2のチップは、分離バリアの第3の分離部品を介して遅延搬送波信号を送信することで、戻り経路を介して遅延搬送波信号を送信することができる。第2のチップは、分離バリアの第4の分離部品を介して第2の変調信号を送信することで、戻り経路を介して第2の変調信号を送信することができる。一実施形態において、第1の分離部品、第2の分離部品、第3の分離部品、および第4の分離部品の各々は、キャパシタおよび変成器のうちの1つであり得る。
【0045】
一実施形態において、第1のチップは、搬送波信号に遅延を適用して搬送波信号を遅延搬送波信号に変換することで、順方向経路を介して搬送波信号を送信することができる。第2のチップは、遅延搬送波信号に遅延を適用して遅延搬送波信号を2倍遅延搬送波信号に変換することで、戻り経路を介して遅延搬送波信号を送信することができる。第1のチップは、2倍遅延搬送波信号を復調して第2の信号を復元することができる。
【0046】
図におけるフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図における各ブロックは、指定された論理機能を実現するための1つまたは複数の実行可能命令を含む命令のモジュール、セグメント、またはその一部を表すことができる。いくつかの代替的な実装例において、ブロックに示された機能は、図に示す順序からはずれて発生してもよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実現されてもよく、関係する機能に応じて、場合によっては逆の順序で実現されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャートの各ブロック、ならびにそれらのブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を実行する、または特別な目的のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する、特別な目的のハードウェアベースのシステムよって実現され得ることに留意されたい。
【0047】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される単数を表す用語は、特に明示されない限り、その複数を含むことも意図している。また、本明細書で使用される「備える」という用語は、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を画定するが、1つまたは複数の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことに留意されたい。
【0048】
添付の特許請求の範囲に記載のすべての手段またはステップと機能要素の対応する構造、材料、操作、およびそれらの等価物は、具体的に記載されている他の要素と組み合わせて機能を実現するための任意の構造、材料、または操作を包含することを意図している。本発明の開示されている実施形態の説明は、例示および説明のために提供されているが、網羅的であること、あるいは開示された形態に限定されることを意図していない。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形を適用することができることが明らかであろう。上述した実施形態は、本発明の原理および実用化を最適に説明するために、また、検討される特定の用途に適するように種々の修正を伴う様々な実施形態について本発明を当業者が理解できるように、選択および説明されたものである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】