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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102022
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 7/08 20060101AFI20240723BHJP
   B02C 7/12 20060101ALI20240723BHJP
   B02C 7/175 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B02C7/08
B02C7/12
B02C7/175
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005645
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2023005726
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523019907
【氏名又は名称】都築 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭太
(72)【発明者】
【氏名】町野 文哉
(72)【発明者】
【氏名】出口 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 晴都
(72)【発明者】
【氏名】都築 正孝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 貴嗣
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063DD02
4D063DD05
4D063DD14
4D063GA10
(57)【要約】
【課題】農作物、花卉の栽培時の散水、液体肥料の施肥に対応し、肥料の固形の粒を粉砕して散水機の目詰まりを抑制する粉砕装置を提供する。
【解決手段】粉砕装置は、被処理液が注入される内容器部と、被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕部と、内容器部の底部及び側面部を被覆し粉砕部を収容する外容器部を備え、粉砕部は、外容器部の外容器底部と接続される底環部材と、底環部材の上側に配置され、内容器部の底部に接続される上環部材と、上環部材と底環部材との間に配置されて上環部材及び底環部材に対して摺動する中環部材とを備え、上環部材が回転して中環部材が上環部材及び底環部材と摺動し、被処理液中に含まれる固形分が上環部材と中環部材との間隙及び底環部材と中環部材との間隙に浸入して上環部材、中環部材、及び底環部材の押圧により圧潰される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕装置であって、
被処理液が注入される注入開口部を備える内容器部と、
前記内容器部に貯留された被処理液が流入して被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕部と、
前記内容器部の底部及び側面部を被覆し前記粉砕部を収容する外容器部とを備え、
前記粉砕部は、
前記外容器部の外容器底部と接続される底環部材と、
前記底環部材の上側に配置され、前記内容器部の前記底部に接続される上環部材と、
前記上環部材と前記底環部材との間に配置されて前記上環部材及び前記底環部材に対して摺動する中環部材とを備え、
前記上環部材が回転して前記中環部材が前記上環部材及び前記底環部材と摺動する際に、被処理液中に含まれる固形分が前記上環部材と前記中環部材との間隙及び前記底環部材と前記中環部材との間隙に浸入して前記上環部材、前記中環部材、及び前記底環部材の押圧により圧潰される
ことを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕装置であって、
被処理液が注入される注入開口部を備える内容器部と、
前記内容器部に貯留された被処理液が流入して被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕部と、
前記内容器部の底部及び側面部を被覆し前記粉砕部を収容する外容器部とを備え、
前記粉砕部は、
前記外容器部の外容器底部と接続される底環部材と、
前記底環部材の上側に配置されて前記底環部材と当接し、前記内容器部の前記内底部に接続される上環部材とを備え、
前記上環部材が回転して前記底環部材と摺動する際に、被処理液中に含まれる固形分が前記上環部材と前記底環部材との間隙に浸入して前記上環部材と前記底環部材との押圧により圧潰される
ことを特徴とする粉砕装置。
【請求項3】
前記上環部材は環の内側に向けて肉薄となる上環傾斜部を有し、前記底環部材は環の内側に向けて肉薄となる底環傾斜部を有する請求項1または2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記中環部材は環の内側に向けて肉薄となる中環傾斜部を有する請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記中環部材は、転動体と前記転動体を収容する収容穴部を備える請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記上環部材は前記内容器部の回転により回転する請求項1または2に記載の粉砕装置。
【請求項7】
前記外容器部に前記内容器部を回転させるモータと、前記モータにより回転するピニオンが備えられ、
前記内容器部にフランジ歯車部が備えられ、前記フランジ歯車部と前記ピニオンが歯合して、前記モータの駆動により前記内容器部が回転する請求項6に記載の粉砕装置。
【請求項8】
前記粉砕部の直上に配置され前記内容器部の前記底部と前記上環部材とを接続し、前記内容器部内に注入された被処理液を前記粉砕部へ誘導する誘導環部材を備える請求項1または2に記載の粉砕装置。
【請求項9】
前記内容器部の前記底部に、前記粉砕部を通過した被処理液を濾過する濾過部を有する底フランジ部が備えられる請求項1または2に記載の粉砕装置。
【請求項10】
前記粉砕部の直下の前記外容器部に振動部が備えられる請求項1または2に記載の粉砕装置。
【請求項11】
前記上環部材に錘部材が備えられる請求項1または2に記載の粉砕装置。
【請求項12】
前記上環部材に粉砕溝部が形成される請求項1または2に記載の粉砕装置。
【請求項13】
前記中環部材に粉砕溝部が形成される請求項1に記載の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉砕装置に関し、特に液中に含まれる固形分を粉砕して目詰まりを防ぐための粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物、花卉の栽培において、圃場、温室等へ水とともに肥料が散布される。このとき、散布効率等から肥料は水と混合されて流動化され、散水機から散布される。ここで、肥料は予め水に溶解され、または、散水機の散水口(シャワーヘッド)の穴よりも小さく粉砕される。そうしなければ、散水機側で目詰まりが生じ、散水、施肥の効率の低下に加えて散水機の故障の原因となりかねない。
【0003】
そのため、水に肥料を溶解した後、散水に問題を生じさせない水準まで適度に粉砕しておく必要がある。例えば、円筒状胴部と、この円筒状胴部に続く逆円錐台状の下部と、この逆円錐台状の下部の底面を形成する底面スクリーンと、このスクリーンの直上に設けられる水平回転カッター等を備える液肥化原料製造装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に参照される装置により粉砕効率は高まった。しかしながら、当該装置は肥料の製造を前提として生ごみの粉砕のために用いられるため、粉砕の程度が粗い。それゆえ、農作物、花卉の栽培時の散水、液体肥料の施肥を勘案すると、特許文献1の装置は対応しきれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-220275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、農作物、花卉の栽培時の散水、液体肥料の施肥に対応し、肥料の固形の粒を粉砕して散水機の目詰まりを抑制する粉砕装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、実施形態の粉砕装置は、被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕装置であって、被処理液が注入される注入開口部を備える内容器部と、内容器部に貯留された被処理液が流入して被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕部と、内容器部の底部及び側面部を被覆し粉砕部を収容する外容器部とを備え、粉砕部は、外容器部の外容器底部と接続される底環部材と、底環部材の上側に配置され、内容器部の底部に接続される上環部材と、上環部材と底環部材との間に配置されて上環部材及び底環部材に対して摺動する中環部材とを備え、上環部材が回転して中環部材が上環部材及び底環部材と摺動する際に、被処理液中に含まれる固形分が上環部材と中環部材との間隙及び底環部材と中環部材との間隙に浸入して上環部材、中環部材、及び底環部材の押圧により圧潰されることを特徴とする。
【0008】
また、実施形態の粉砕装置は、被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕装置であって、被処理液が注入される注入開口部を備える内容器部と、内容器部に貯留された被処理液が流入して被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕部と、内容器部の底部及び側面部を被覆し前記粉砕部を収容する外容器部とを備え、粉砕部は、外容器部の外容器底部と接続される底環部材と、底環部材の上側に配置されて底環部材と当接し、内容器部の内底部に接続される上環部材とを備え、上環部材が回転して底環部材と摺動する際に、被処理液中に含まれる固形分が上環部材と底環部材との間隙に浸入して上環部材と底環部材との押圧により圧潰されることを特徴とする。
【0009】
さらに、粉砕装置において、上環部材は環の内側に向けて肉薄となる上環傾斜部を有し、底環部材は環の内側に向けて肉薄となる底環傾斜部を有することとしてもよい。
【0010】
さらに、粉砕装置において、中環部材は環の内側に向けて肉薄となる中環傾斜部を有することとしてもよい。
【0011】
さらに、粉砕装置において、中環部材は、転動体と転動体を収容する収容穴部を備えることとしてもよい。
【0012】
さらに、粉砕装置において、上環部材は内容器部の回転により回転することとしてもよい。
【0013】
さらに、粉砕装置において、外容器部に内容器部を回転させるモータと、モータにより回転するピニオンが備えられ、内容器部にフランジ歯車部が備えられ、フランジ歯車部とピニオンが歯合して、モータの駆動により内容器部が回転することとしてもよい。
【0014】
さらに、粉砕装置において、粉砕部の直上に配置され内容器部の底部と上環部材とを接続し、内容器部内に注入された被処理液を粉砕部へ誘導する誘導環部材が備えられることとしてもよい。
【0015】
さらに、粉砕装置において、内容器部の底部に、粉砕部を通過した被処理液を濾過する濾過部を有する底フランジ部が備えられることとしてもよい。また、粉砕装置において、粉砕部の直下の外容器部に振動部が備えられることとしてもよい。
【0016】
さらに、粉砕装置において、上環部材に錘部材が備えられることとしてもよい。また、粉砕装置において、上環部材に粉砕溝部が形成されても、中環部材に粉砕溝部が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粉砕装置は、被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕装置であって、被処理液が注入される注入開口部を備える内容器部と、内容器部に貯留された被処理液が流入して被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕部と、内容器部の底部及び側面部を被覆し粉砕部を収容する外容器部とを備え、粉砕部は、外容器部の外容器底部と接続される底環部材と、底環部材の上側に配置され、内容器部の底部に接続される上環部材と、上環部材と底環部材との間に配置されて上環部材及び底環部材に対して摺動する中環部材とを備え、上環部材が回転して中環部材が上環部材及び底環部材と摺動する際に、被処理液中に含まれる固形分が上環部材と中環部材との間隙及び底環部材と中環部材との間隙に浸入して上環部材、中環部材、及び底環部材の押圧により圧潰されるため、農作物、花卉の栽培時の散水、液体肥料の施肥に対応し、肥料の固形の粒を粉砕して散水機の目詰まりを抑制することができる。
【0018】
また、本発明の粉砕装置は、被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕装置であって、被処理液が注入される注入開口部を備える内容器部と、内容器部に貯留された被処理液が流入して被処理液中に含まれる固形分を粉砕する粉砕部と、内容器部の底部及び側面部を被覆し前記粉砕部を収容する外容器部とを備え、粉砕部は、外容器部の外容器底部と接続される底環部材と、底環部材の上側に配置されて底環部材と当接し、内容器部の内底部に接続される上環部材とを備え、上環部材が回転して底環部材と摺動する際に、被処理液中に含まれる固形分が上環部材と底環部材との間隙に浸入して上環部材と底環部材との押圧により圧潰されるため、同様に、農作物、花卉の栽培時の散水、液体肥料の施肥に対応し、肥料の固形の粒を粉砕して散水機の目詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の粉砕装置の側面図である。
図2】粉砕装置の分解斜視図である。
図3】粉砕部の分解斜視図である。
図4】内容器部の底部の部分拡大断面図である。
図5】粉砕部の部分拡大断面図である。
図6】内容器部の底部の底フランジ部近傍の部分拡大断面図である。
図7】他の形態の粉砕部の拡大断面図である。
図8】上環部材の厚さを増した内容器部の底部の部分拡大断面図である。
図9】錘部材を上環部材に重ねた内容器部の底部の部分拡大断面図である。
図10】上環部材と底環部材に粉砕溝部を形成した粉砕部の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
有機肥料を水に混合、溶解して液体肥料を調製する場合、水溶性成分は速やかに溶解するものの、有機肥料中の腐食した樹木の枝、葉、さらに食品残渣の固形分は溶解せずに液中に残留する。また、化成肥料の場合であっても、水温いかんにより化成肥料の成分が溶け残ることがある。近時、農作物、花卉の栽培時、散水に加え、施肥に液体肥料が使用される。この場合、散水用の散水機が液体肥料の施肥にも使用される。この場合、有機肥料、化成肥料の溶解できなかった固形分をそのまま灌漑用の灌水ホースに流通させると、散水口(シャワーヘッド)にて目詰まりが生じる。むろん、溶解できなかった固形分を漉すメッシュ、フィルタを流路中に配置することも可能ではある。
【0021】
しかしながら、液体肥料がメッシュ、フィルタを透過する際、送液の圧力が必要となる。そのため、別途圧送用のポンプ、貯留用のタンク等の設備、さらには圧力に耐えられる配管が必要となる。そこで、実施形態の粉砕装置は、調製された液体肥料を灌水ホースに流通させる前段階において予め目詰まりを生じさせない大きさにまで粉砕しておくことにより、散水機での目詰まりの回避、ポンプ、配管等の設備新設を省略する。そして、実施形態の粉砕装置は、既存の散水設備への設置負担を軽減して導入を容易にする。
【0022】
図1の側面図及び図2の分解斜視図を用い、実施形態の粉砕装置1の全体構成から説明する。粉砕装置1は、前述の有機肥料を溶解した液体肥料及び化成肥料を溶解した液体肥料を被処理液とし、当該被処理液中に含まれる固形分を目詰まりの生じない大きさにまで粉砕する装置である。粉砕装置1を経由する前の被処理液には、有機肥料、化成肥料の溶解できなかった固形分が液中に混入している状態である。
【0023】
被処理液が注入される内容器部10と、内容器部10を収容する外容器部50が備えられ、外容器部50の上側に外枠部16が配置され、内容器部10の下方に粉砕部30が備えられる(図2参照)。
【0024】
内容器部10は被処理液が注入される注入開口部11を備える。実施形態では、内容器部10の注入開口部11に円筒状の嵌合部17が接続される。この嵌合部17の周囲(外側面)には上フランジ部18が備えられ、上フランジ部18の円周部位にフランジ歯車部19が形成されている。すなわち、実施形態の内容器部10は外容器部50の内部で回転可能とされている。
【0025】
粉砕装置1において、被処理液は注入開口部11を介して内容器部10に注入される。内容器部10は底部12と側面部13を有する円筒体形状であり、被処理液は内容器部10の側面部13により囲まれた貯留部10i(図4図6参照)に貯留される。内容器部10の底部12には底フランジ部46が備えられる。
【0026】
外容器部50は内容器部10の底部12及び側面部13を被覆し粉砕部30を収容する。実施形態の粉砕装置1において、外容器部50の外容器胴部53の下方となる外容器底部52にドレインパイプ56が接続され、粉砕を経た被処理液はドレインパイプ56から粉砕装置1の外に排出される。また、外容器胴部53の外容器底部52に振動部60が備えられる。外容器胴部53の外容器開口部51の近傍にモータ55とピニオン59が備えられる。振動部60、モータ55については、後述する。
【0027】
粉砕部30は図3の分解斜視図から理解されるように、複数の環状部材の組み合わせにより構成される。粉砕部30は、上から順に上環部材33、中環部材32、底環部材31の3枚の環状部材が重ねられる。これらの3枚の環状部材が重なり、かつ回転することにより、ちょうど臼を模した摩砕の作用により固形分の粉砕が実現される。図示の実施形態では、粉砕部30にさらに誘導環部材20が組み合わせられる。誘導環部材20には傾斜面部21が形成され、被処理液は傾斜面部21を通じて上環部材33、中環部材32、及び底環部材31の3枚の環状部材の中央の開口部分に誘導される。
【0028】
底環部材31は外容器部50の外容器底部52と接続される。上環部材33は底環部材31の上側に配置され、内容器部10の底部12に接続される。そして、中環部材32は上環部材33と底環部材31との間に配置され上環部材33及び底環部材31に対して摺動する。よって、底環部材31は粉砕装置1の外容器部50に固定される固定側の環状部材となり、上環部材33は内容器部10の底部12に誘導環部材20を介して接続される回転側の環状部材となる。さらに、中環部材32は上環部材33の回転に追従して、回転可能となる。
【0029】
加えて、図示実施形態の中環部材32はローラーベアリングの構成を備える(図3参照)。具体的には、円柱状(他に球状(鋼球)または円錐台形状)の転動体25(ベアリング用のころ、ベアリングローラ)が複数備えられ、転動体25は中環部材32に放射状に形成された収容穴部26内に収容される。図示より、底環部材31の上面部に転動体25が転動するための凹溝部38が形成され、中環部材32が底環部材31から位置ずれしないように、転動体25の移動範囲が凹溝部38により規制される。
【0030】
内容器部10が回転すると、誘導環部材20に接続された上環部材33も回転する。ここで、中環部材32が上環部材33と底環部材31との間に介在されることにより、上環部材33が底環部材31に対して回転する際の摺動抵抗が減少する。結果、内容器部10(上環部材33)の回転駆動に必要とする駆動力を小さくして上環部材33の回転が可能となる。
【0031】
図4図5の部分拡大断面図を用い、粉砕部30における粉砕の仕組みを説明する。図4は実施形態の粉砕装置1における内容器部10の底部12と、当該底部12に備えられる粉砕部30を開示する。図示では、内容器部10の底部12近傍となる側面部13の内面に貯留部10i側に突出する突起部22が備えられ、当該突起部22に誘導環部材20が載置され内容器部10と組み合わせられる。そして、上環部材33は誘導環部材20に接続される。上環部材33と誘導環部材20との接続に際しては、凹部と凸部の噛み合わせ等の適宜の構造が採用される(図示省略)。こうして、内容器部10の回転は確実に上環部材33の回転に反映される。図中、中環部材32の転動体25の図示は省略されている。
【0032】
被処理液が内容器部10に注入され貯留部10iに貯留される際、被処理液中に含まれる固形分は誘導環部材20の傾斜面部21を通じて環状の粉砕部30の上環部材33、中環部材32、及び底環部材31の内側(紙面左側)に降下する。この状態で上環部材33が回転し始める。実施形態の粉砕装置1では、外容器胴部53の外容器開口部51の近傍に設置されたモータ55の駆動に伴いピニオン59が回転し、ピニオン59とフランジ歯車部19も歯合して回転する(図1図2参照)。フランジ歯車部19は嵌合部17に備えられ、嵌合部17は内容器部10に接続されている。そこで、モータ55の回転駆動はピニオン59、フランジ歯車部19と伝達され、内容器部10は回転する。結果、モータ55の駆動により、上環部材33が回転し、同時に上環部材33の回転に伴って中環部材32も回転する。
【0033】
図中、内容器部10の底部12であり側面部13の下端の外周に底フランジ部46が備えられる。そして、底フランジ部46に濾過部45が備えられる。濾過の様子は図6にて詳述する。
【0034】
図5は粉砕部30(図3参照)の主要部分である上環部材33、中環部材32、底環部材31の3枚の環状部材の部分拡大断面図である。図5図4から理解されるように、内容器部10に注入され貯留部10i側が粉砕部30の流入部48となり、粉砕部30を挟んで反対側が粉砕部30の流出部49となる。そこで、固形分を含む被処理液は流入部48から粉砕部30内に流入し流出部49から流出する。
【0035】
このとき、モータ55の回転駆動に伴う内容器部10の回転により、上環部材33が回転して中環部材32が上環部材33及び底環部材31と摺動する。そして、被処理液中に含まれる固形分は、上環部材33と中環部材32との間隙41(上間隙)及び底環部材31と中環部材32との間隙42(下間隙)に浸入する。そして、間隙41と間隙42から浸入した被処理液中に含まれる固形分は、上環部材33、中環部材32、及び底環部材31の押圧により圧潰される。
【0036】
また、粉砕部30の流入部48側では、中環部材32は環の内側(図示の流入部48側)に向けて肉薄となる中環傾斜部36を備える形態である。中環傾斜部36は上下同様の横向きの断面テーパ状であり、被処理液中に含まれる固形分は、流入部48側から間隙41(上間隙)と間隙42(下間隙)への浸入しやすくなっている。
【0037】
そのため、中環部材32の中環傾斜部36における上環部材33と中環部材32との離隔量及び底環部材31と中環部材32との入口離隔量4iは、間隙41(上間隙)と間隙42(下間隙)より長い距離である。そして、粉砕部30の中央部分の間隙41(上間隙)と間隙42(下間隙)の内部離隔量4oは中環傾斜部36の入口離隔量4iよりも狭小とされる。粉砕部30における上環部材33、中環部材32、及び底環部材31の摺動は臼に似た作用を引き起こし、互いの環部材同士が擦れ合うことにより、固形分は摩砕される(すりつぶされる)。最終的に、被処理液中に含まれる固形分は間隙41(上間隙)と間隙42(下間隙)の通過により粉砕され、粉砕部30の流出部49側から排出される。
【0038】
実施形態の粉砕装置1の粉砕部30によると、被処理液中に含まれる固形分は粉砕部30の流入部48側から間隙41(上間隙)と間隙42(下間隙)を通過して流出部49側に達する際に、粒径0.2mm以下に粉砕される。具体的には、入口離隔量4iは1mm、内部離隔量4oは0.1mmに設計されている。上環部材33、中環部材32、底環部材31は液体肥料の耐食性を考慮して、ステンレス鋼等の材質により形成される。また、断面積9mmの固形分が0.1mmの断面積にまで粉砕されるためには、25.46N/mの荷重が必要とされ、上環部材33、中環部材32、底環部材31の相互の摩擦係数は0.549以上とされる程度の表面粗さに仕上げられる。
【0039】
図6の部分拡大断面図は、内容器部10の底部12の底フランジ部46近傍を表す。粉砕装置1の粉砕部30を通じて、被処理液中に含まれる固形分は粉砕される。しかしながら、粉砕が不均一または不完全となる場合があり得る。そこで、粒径の大きな固形分の流出を防ぐ部位が備えられる。図6及び前出の図4が参照されるとおり、底フランジ部46に濾過部45が備えられる。濾過部45には、樹脂または金属のメッシュ、不織布等のフィルタが設けられ、粉砕が不均一または不完全の固形分が濾過(捕捉)されて固形分の流出が抑制される。
【0040】
図6のとおり、粉砕部30の流出部49から排出された被処理液は、内容器部10の底部12から内容器部10の外に流出し、外容器部50の外容器胴部53の下方となる外容器底部52へ流入する。外容器底部52に溜まった被処理液は底フランジ部46の濾過部45から溢れ出る。このとき、濾過部45において粉砕が不均一または不完全の固形分が濾過可能となる。そして、濾過後の被処理液は外容器部50の外容器胴部53の下方に設置されたドレインパイプ56から粉砕装置1の外に排出される。
【0041】
図6中の破線矢印は被処理液の通過の順路である。濾過部45の被処理液を濾過する面は下向きであり、固形分の漏洩は抑制され、濾過済みの被処理液がドレインパイプ56から排出される。
【0042】
ここで、図1及び図2の図示に戻り、実施形態の粉砕装置1では外容器部50の外容器底部52、すなわち粉砕部30の直下に振動部60が備えられる。振動部60は、例えば、モータとカム(偏心錘)の機構による振動モータとするほか、超音波振動子が採用される。振動モータの場合、振動モータが外容器底部52の直上に位置する粉砕部30に流入した被処理液を振動させ、被処理液中に含まれる固形分の沈殿が抑制される。また、超音波振動子の場合、その衝撃波により直接固形分の粒子が粉砕され、粉砕部30における粉砕が補助される。
【0043】
図7の断面模式図は、実施形態の粉砕装置1の粉砕部30の他の形態の開示である。図示は粉砕部30において中環部材32が省略され、上環部材33が直接底環部材31と当接して摺動する形態である。図7の例では、上環部材33が回転して底環部材31と摺動する際、被処理液中に含まれる固形分は上環部材33と底環部材31との間隙40に浸入して上環部材33と底環部材31との押圧により圧潰される。
【0044】
さらに、図示では、上環部材33は環の内側に向けて肉薄となる上環傾斜部34を有し、底環部材31は環の内側に向けて肉薄となる底環傾斜部35を有する。こうして、流入部48側の入口離隔量4iは流出部49側の内部離隔量4oより拡げられる。むろん、上環傾斜部34と底環傾斜部35の肉薄とする構造は、図3ないし図5に開示の粉砕部30に対しても適用可能である。
【0045】
これまでの説明にあるとおり、目詰まりの原因となる固形分は、上環部材33、中環部材32、及び底環部材31の押圧により圧潰される(図3、4、5参照)。もしくは、上環部材33及び底環部材31の押圧により圧潰される(図7参照)。ここで、固形分を効率よく圧潰、粉砕するためには、各環部材間の回転を妨げない程度に、底環部材31側へ押圧できればよい。上方からの荷重が各環部材に加わることにより、各環部材の間隔が広がりにくくなり、常時固形分は圧潰されやすくなる。
【0046】
そこで、上環部材33に錘部材が備えられる。図8の部分拡大断面図に開示の実施形態では、上環部材33sの厚さを増すことにより重量が増加され、上環部材33s自体が錘部材となる。上環部材33s自体が錘として作用し、中環部材32及び底環部材31を押圧可能である。また、図9の部分拡大断面図に開示の実施形態では、上環部材33の直上に錘部材37(錘環部材)が備えられる。錘部材37は上環部材33等と同様の材質により形成される環状の部材である。錘部材37の荷重は上環部材33、中環部材32、及び底環部材31に対して加わる。なお、図7の断面模式図のように中環部材32を省略した形態に対しても、上環部材の厚さを増すこと、または別途錘部材(錘環部材)を備えることの対応が可能である(図示省略)。
【0047】
加えて、図10の粉砕部の部分拡大断面図のとおり、環部材の各所に粉砕溝部が形成される。図10に開示の実施形態では、上環部材33に上環粉砕溝部47が形成される。また、中環部材32では、上環部材33と対向する側の中環部材32に中環上部粉砕溝部43が形成され、下環部材31と対向する側の中環部材32に中環下部粉砕溝部44が形成される。各粉砕溝部(上環粉砕溝部47、中環上部粉砕溝部43、中環下部粉砕溝部44)は、流入部48側から流出部49側にかけて深さが浅くなる緩やかなテーパ状の溝部である。
【0048】
粉砕溝部(上環粉砕溝部47、中環上部粉砕溝部43、中環下部粉砕溝部44)は環部材において、いわゆる石臼の溝の役割を担う。流入部48側から流入する固形分は粉砕溝部(上環粉砕溝部47、中環上部粉砕溝部43、中環下部粉砕溝部44)の溝の深い側に入り込みやすくなる。そこで、固形分は、上環部材33、中環部材32、及び底環部材31の回転に伴い粉砕溝部(図示の上環粉砕溝部47、中環上部粉砕溝部43、中環下部粉砕溝部44)を流出部49側へ進むうちに徐々に摩砕される。図示の粉砕溝部に前述の錘部材を組み合わせて構成してもよい。加えて、図7の例において、上環部材33と底環部材31のいずれかもしくは両方に粉砕溝部が形成されてもよい。
【0049】
一連の説明のとおり、実施形態の粉砕装置では、被処理液中に含まれる固形分は、粉砕部における上環部材、中環部材、そして底環部材の摩擦により圧潰されて粉砕される。従って、散水機の散水口(シャワーヘッド)の目詰まりは抑制される。また、振動部により、粉砕部の粉砕は補助される。加えて、粉砕部の粉砕残りが生じても濾過部を通じて、粉砕が不均一または不完全の固形分の通過は抑制される。さらに、錘部材が備わることにより、各環部材に加わる荷重が増して固形分はより圧潰されやすくなる。加えて、各環部に粉砕溝部が形成されることにより石臼の機能が付加され、固形分はより摩砕されやすくなる。
【符号の説明】
【0050】
1 粉砕装置
10 内容器部
11 注入開口部
12 底部
13 側面部
19 フランジ歯車部
20 誘導環部材
25 転動体
26 収容穴部
30 粉砕部
31 底環部材
32 中環部材
33 上環部材
34 上環傾斜部
35 底環傾斜部
36 中環傾斜部
37 錘部材
40,41,42 間隙
43 中環上部粉砕溝部
44 中環下部粉砕溝部
46 底フランジ部
47 上環粉砕溝部
48 流入部
49 流出部
50 外容器部
55 モータ
59 ピニオン
60 振動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10