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特開2024-102025改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード
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  • 特開-改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード 図1
  • 特開-改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード 図2
  • 特開-改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード 図3
  • 特開-改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード 図4
  • 特開-改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード 図5a
  • 特開-改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード 図5b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102025
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H01S5/0687
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024005817
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】63/480,353
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/406,480
(32)【優先日】2024-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・シュタウディンガー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ・エベラール
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ミュラー
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AD02
5F173AL02
5F173SC10
5F173SF33
(57)【要約】
【課題】改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオードを提供すること。
【解決手段】多接合レーザダイオードは、端面発光レーザ(EEL)において見いだされる。開示されるシステムおよび方法は、個々の接合のレーザモードを結合することなく、および、ファイバブラッググレーティング(FBR)、体積ブラッグ・グレーティング(VBG)、または熱電冷却(TEC)などの何らの外部要素も使用することなく、多接合EELの波長安定性を改善することに適する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードを含むシステムであって、前記レーザダイオードは、
1つまたは複数のレージング接合を含むレーザキャビティと、
前記レーザキャビティの第1のファセット上の第1のミラーと、
前記レーザキャビティの第2のファセット上の第2のミラーと
を含み、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーのうちの少なくとも1つの反射率は、波長に関して可変である、
システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記システムは、端面発光レーザ(EEL)を含む、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記第1のファセットは、前記EELの背面または高反射ファセットであり、前記第2のファセットは、前記EELの前面または発光ファセットである、システム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムであって、前記第1のファセットは、前記EELの前面または発光ファセットであり、前記第2のファセットは、前記EELの背面または高反射ファセットである、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、
前記1つまたは複数のレージング接合は、複数のレージング接合を含み、
前記複数のレージング接合は、1つまたは複数のトンネル接合によって直列に電気的に接続される、
システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記システムは、チップ上の複数のレーザダイオードを含む、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの1つまたは両方は、複数の誘電体層コーティングを含む、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記第2のミラーは、AlOxコーティングを含む、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記第2のミラーは、1ミクロンよりも大である誘電体コーティングを含む、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、
区間における前記反射率の最大値は、前記区間における前記反射率の最小値の2倍よりも大きく、
前記区間は、発光波長よりも2%下から前記発光波長よりも3%上まで広がる、
システム。
【請求項11】
1つまたは複数のレージング接合によってレーザキャビティを形成するステップと、
前記レーザキャビティの第1のファセット上に第1のミラーを堆積させるステップと、
第2のファセット上に第2のミラーを堆積させるステップであって、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーのうちの少なくとも1つの反射率は、波長に関して可変である、ステップと、
前記レーザキャビティにおいて、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間で帰還を発生させるステップと
を含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記方法は、端面発光レーザ(EEL)を製作するステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記第1のファセットは、前記EELの背面または高反射ファセットであり、前記第2のファセットは、前記EELの前面または発光ファセットである、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、前記第1のファセットは、前記EELの前面または発光ファセットであり、前記第2のファセットは、前記EELの背面または高反射ファセットである、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、前記1つまたは複数のレージング接合は、複数のレージング接合を含み、前記方法は、前記複数のレージング接合を、1つまたは複数のトンネル接合によって直列に電気的に接続するステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの1つまたは両方は、複数の誘電体層コーティングを含む、方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、前記第2のミラーを堆積させるステップは、AlOxコーティングをイオンビームスパッタリングするステップを含む、方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、前記第2のミラーは、1ミクロンよりも大である誘電体コーティングを含む、方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、
区間における前記反射率の最大値は、前記区間における前記反射率の最小値の2倍よりも大きく、
前記区間は、発光波長よりも2%下から前記発光波長よりも3%上まで広がる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2023年1月18日に出願された、「MULTI-JUNCTION LASER DIODE WITH IMPROVED WAVELENGTH STABILITY(改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオード)」と表題を付けられた、米国仮特許出願第63/480,353号の利益および優先権を主張するものであり、その米国仮特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
[0002]従前の多接合レーザダイオードの限界および不利点が、そのような手法の、図面を参照して本開示の残り部分において論述される本方法およびシステムのいくつかの態様との比較を通して、当業者に明らかになることになる。
【発明の概要】
【0003】
[0003]特許請求の範囲において、より完全に論述されるような、実質的に、図のうちの少なくとも1つにより図解される、および/または、図のうちの少なくとも1つに関して説明されるような、改善された波長安定性を伴う多接合レーザダイオードを生産するためのシステムおよび方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】[0004]本開示の様々な実装例による、400×600μmの典型的なチップ寸法を伴う、LiDAR用途のための端面発光レーザ(EEL)の例図解を図解する図である。
図2】[0005]本開示の様々な実装例による、改善された波長安定性を伴う多接合レーザの例断面略図を図解する図である。
図3】[0006]本開示の様々な実装例による、弱い波長依存性を伴う参照物としての標準的な前面ミラー、および、強い波長依存性を伴う波長安定化ミラーの反射率の例を図解する図である。
図4】[0007]本開示の様々な実装例による、標準的なミラー(左)および波長安定化ミラー(右)による、GaAs系多接合レーザの異なるヒートシンク温度についての例発光スペクトルを図解する図である。
図5a】[0008]図5aは、本開示の様々な実装例による、標準的なチップおよびλ安定化を伴うチップについての例スペクトルシフトvs.温度を図解する図であり、そのλ安定化を伴うチップにおいて、平均して0.04nm/K未満である波長シフトは、プロットされた温度レンジにおいて30nm超からおよそ5nmに低減し、5℃から105℃の間では、およそ2nmのみの波長シフトが記録される。
図5b】[0009]図5bは、本開示の様々な実装例による、100nsおよび0.1%d.c.のパルス状の動作のもとでの温度性能に関する例パワーは、両方のチップについて同様であるが、λ安定化されたチップについて、わずかに、低いTにおいてはより高く、高いTにおいてはより低いということを図解する図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
[0010]nsパルスを発生させる高パワーレーザは、高速の、信頼性の高い、およびファーレンジの3D奥行き情報を提供するLiDARシステムにとっての鍵となる構成要素である。産業用センシングに対するレンジファインダから、自己駆動車およびロボットのための自律誘導システムまでの、種々の用途が、この技術に基づいて存在する。これらの用途の各々は、要件の、その各々自体の特定のセットを有し、それゆえに、LiDARには、多くの異なる形式がある。最も成熟した技術は、直接飛行時間(dToF)である。そのようなシステムは、本質的には、空間的に分解された距離情報を抽出するために、反射された短いパルスの時間遅延を測定する。それらのシステムには、2つの変形形態がある。フラッシュシステムは、場面全体を一度に照明し、一方で、スキャニングシステムは、視野の全域でレーザをスキャンするために複雑な光学系を使用する。これらのシステムは、端面発光レーザ(EEL)を含むことがある。EELは、優良な輝度を呈し、そのことによって、それらのレーザは、ロングレンジスキャニングdTOF LiDARシステムにおける使用のための理想的な技術になる。
【0006】
[0011]EELは、800から1100nmのレンジに及ぶ近赤外線(NIR)波長におけるGaAsを基に製作されることがある。異なる用途は、使用されている波長についての異なる選定を要する。905nmは、雨および霧を通して障害物を検出するということになると優良であり、検出器側における、より高い量子効率を可能にする。本開示は、905nm波長を伴うEELを提示する。しかしながら、任意の波長を伴うEELが、さらには可能である。
【0007】
[0012]残存する太陽光背景をフィルタリング除去するために、検出器側において、狭いスペクトル帯域幅フィルタを使用することが重要である。EELのために使用され得るフィルタのタイプに関する主な制限によって、材料システムの利得シフトにしたがう、大きい波長シフト - GaAsの事例において約0.3nm/Kが生じる。バンドパス波長窓が小さいほど、レーザ信号対太陽光背景ノイズは良好になる。波長安定化は、それゆえに、LiDARシステムの検出レンジをさらに改善するための鍵である。本開示は、<0.04nm/Kの平均まで、-35℃から105℃の間のレンジにおいて、6分の1にスペクトルシフトを低減する、波長安定化されたEELチップを提示する。
【0008】
[0013]本開示は、任意の数のトンネル接合を伴うレーザを提示する。例えば、2つのトンネル接合により接続される3つの接合、または、3つのトンネル接合により接続される4つの接合。例EELは、905nmにおいて動作し、400×600μmのフットプリントを有する。図1は、本開示の様々な実装例による、400×600μmのチップ寸法を伴う、LiDAR用途のための端面発光レーザ(EEL)の例図解を図解する。この例における発光面積は、接合の数に依存して、200×10μmまたは200×13μmであることがある。しかしながら、本開示は、接合の特定の数により、または、発光面積の特定のサイズにより制限されない。
【0009】
[0014]利得材料を変更することなく安定した波長挙動を達成するために、レーザは、モードが、もっぱら利得シフトにしたがうのではなく、VCSEL構造と同様に、共振器それ自体により左右されるという形において設計されることを必要とする。従来は、分布ブラッグ反射器(DBR)および分布帰還(DFB)レーザが、EELにおける波長シフトを内部的に安定化するために利用されてきた。多接合デバイスにおいて、状況は、より面倒である。接合の各々は、何らのモード結合もなく、個々のレーザとして動作することがある。表面格子によるレーザキャビティの制御は、それゆえに、最有力のレーザに影響を及ぼすのみであり得るものであり、そうして、デバイス全体の波長を安定化するための現実的な選択肢ではない。異なるレーザ設計が、この限界に対処し得るが、そのことは、一般的には、従来の光学系を使用するシステムへとレーザを統合することにとって難題であり得る、非標準的な遠方場特性につながる、より高次の垂直モードを使用することを代償とする。
【0010】
[0015]本開示は、個々の接合のレーザモードを結合することなく、および、ファイバブラッググレーティング(FBR)、体積ブラッグ・グレーティング(VBG)、または熱電冷却(TEC)などの何らの外部要素も使用することなく、多接合EELの波長安定性を改善することに適する技術を説明する。当業者にとって、本開示は、従来の安定化方法がさらには適用可能である単接合EELについて、ならびに、より高次の、または結合された、導波路およびモードを使用する設計について奏功するということが、さらには明白である。
【0011】
[0016]図2は、本開示の様々な実装例による、改善された波長安定性を伴う多接合レーザの例断面略図を図解する。EELは、複数個のレージング接合(lasing junction)201を含むレーザキャビティと、第1のファセット上に堆積させられた高反射性背面ミラー203と、第2のファセット上に堆積させられた、ただし、波長に関する可変反射率を伴う前面ミラーとからなる。n個のレージング接合201は、トンネル接合の手段により直列に電気的に接続される。レーザ発光205が、図3に関してさらに説明されるような可変反射率を伴う前面ミラー207を含む第2のファセットにおいて生起する。
【0012】
[0017]図3は、本開示の様々な実装例による、弱い波長依存性を伴う参照物としての標準的な前面ミラー、および、強い波長依存性を伴う波長安定化前面ミラー(例えば、図2の前面ミラー207)の反射率の例を図解する。前面ミラー(例えば、図2の前面ミラー207)は、前面ミラーの反射率が、図3において示されるように、および、レーザ媒体が利得を提供する波長領域の中で、増大する波長とともに急速に減少するように設計される。波長安定化前面ミラー(例えば、図2の前面ミラー207)の反射率の傾きは、標準的なミラーに対して波長安定化前面ミラーを差別化するものである。例えば、発光波長よりも2%下から発光波長よりも3%上まで広がる区間に関して、波長安定化ミラーは、反射率の最小値の2倍よりも大きい反射率の最大値を有することがある。図3は、900nmの発光波長を伴う例波長安定化ミラーを図解する。882nmから927nmまで広がる区間に関して、この例波長安定化ミラーは、20%の最大反射率、および、5%の最小反射率を有する。
【0013】
[0018]波長安定化ミラーは、単層または多層のいずれかの誘電体コーティングにより達成され得る。後記において提示される例において、およそ1000nmの厚さを伴う、イオンビームスパッタリングによって堆積させられたAlOxコーティングが、およそ900nmにおける波長を安定化するために使用される。しかしさらには、他のコーティング材料および厚さが、それらが、十分な傾斜を伴う、より長い波長における下降する反射率を呈する限りにおいて適する(例えば、900nmの波長についての、750nmまたは1300nmのAlOx)。
【0014】
[0019]レージングは、一般的には、前面および背面ファセット上の誘電体ミラーにより形成されることがある、共振器において発生させられる帰還によって達成される。帰還(すなわち、反射率)が大きいほど、レージング条件は容易に満たされる。反射率が、異なる波長を伴う競合するレージングモードにわたって一定でないならば、それゆえに、モードのうちのいくつかについてレージング条件を低減し(すなわち、それらのいくつかをより容易にレージングさせ)、他のものについてレージング条件を増大することが可能である。図3において提示されるミラーの事例において、885nmよりも小さい波長を伴うモードは、標準的なミラーによってよりも、波長安定化ミラーによって容易にレージングを開始することになり、より長い波長を伴うモードについては、逆のことが言える。活性材料の利得は、より高い温度において、より長い波長にシフトするので、この影響は、それゆえに、より低い波長を伴うモードに好都合である、そのようなミラーを導入することにより相殺され得る。背面ファセット上にではなく、前面ファセットにおいてミラーを付与することは、背面ファセットからのレージング、および、レーザダイオードの結果的に生じる低減される効率を減らす助けとなる。しきい値電流が、そのような安定化を付与するときに、より大きい波長において増大される。それゆえに、この技術は、特に、相対的なパワーペナルティを低減するために、しきい値電流よりも十分に上の(例えば、30×から50×)動作点を伴うレーザに適する。
【0015】
[0020]図4は、本開示の様々な実装例による、標準的なミラー(左)および波長安定化ミラー(右)による、GaAs系多接合レーザの異なるヒートシンク温度についての例発光スペクトルを図解する。図4は、開示される技術を使用して得られる実験結果を指し示す。他の点では同じ設計の2つの多接合レーザダイオードが、それぞれ、従来の標準的な前面ミラーコーティング、および、波長安定化前面ミラーコーティングによってコーティングされる。それらの発光スペクトルが、-35℃から105℃のヒートシンクのいくつもの温度について記録される。標準的なミラー(左)によるレーザの発光は、およそ0.27nm/Kだけ、GaAsシステムにおける利得シフトによってシフトする(および広幅化する)。代わりに、波長安定化ミラーによるレーザは、およそ900nmまでにのみ波長を変化させ、そのことの後、その波長は比較的安定したままである。
【0016】
[0021]理由は、より大きい波長において、低い反射率が、レーザが効率的にレージングすることを妨げ、より低い波長におけるモードが、それらのモードが利得最大値において場所を定められないということを考慮してでさえ、好まれるということである。0.04nm/K未満の、35℃から105℃の間の平均波長シフトが記録される。さらに、レージングモードが制約されるので、より高い温度における典型的な広幅化は認められず、スペクトル幅は、ほぼ一定のままである。
【0017】
[0022]図5aは、本開示の様々な実装例による、標準的なチップおよびλ安定化を伴うチップについての例スペクトルシフトvs.温度を図解し、そのλ安定化を伴うチップにおいて、平均して0.04nm/K未満である波長シフトは、プロットされた温度レンジにおいて30nm超からおよそ5nmに低減し、5℃から105℃の間では、およそ2nmのみの波長シフトが記録される。EELは、非常に高い輝度において高出力パワーを送り出し得るが、それらのパワーの弱点は、およそ0.3nm/Kの、GaAsシステムにおける利得シフトに従来はしたがう、比較的大きい波長シフトである。この挙動は、図5aにおいて認められ得るものであり、その挙動は、今までに公表されたすべてのEELについてまさに同様である。そのような波長シフトは、LiDARシステムを構築することにとって有害であり、なぜならば、その波長シフトは、検出器側で使用され得るスペクトル幅、およびそれゆえに、さらには、到達可能な信号対ノイズ比を制限するからである。
【0018】
[0023]本開示は、大きい温度レンジに関して波長を安定化する、新しいEELチップ設計を開発する。図5aは、参照物としての従来のレーザ、および、λ安定化を伴う同等のレーザの波長シフトを示す。標準的なレーザのスペクトルは、測定された温度窓全体にわたって、一定の割合においてシフトするが、新規の設計は、著しく安定した動作を可能にする。-35℃から105℃まで、参照物の6分の1である、および、0.04nm/K未満の平均波長シフトに対応する、5nmのみのスペクトル窓が利用される。
【0019】
[0024]同時に、パワーは、図5bにおいて指し示されるように、標準的なチップについてとほぼ同じほど安定したままである。図5bは、本開示の様々な実装例による、100nsおよび0.1%デューティサイクルのパルス状の動作のもとでの温度性能に関する例パワーは、両方のチップについて同様であるが、λ安定化されたチップについて、わずかに、低いTにおいてはより高く、高いTにおいてはより低いということを図解する。本開示において提示されるようなλ安定化されたチップは、検出器側におけるはるかに狭いバンドパスフィルタの取り扱いを可能にし、それゆえに、dTOF LiDARシステムの、信号対ノイズ比、およびそうして検出レンジを改善するために理想的である。
【0020】
[0025]本方法および/またはシステムは、ある決まった実装を参照して説明されたが、本方法および/またはシステムの範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされることがあり、均等物が代用されることがあるということが、当業者により理解されることになる。加えて、多くの修正が、個別の状況または材料を本開示の教示に適応させることを、本開示の範囲から逸脱することなく行うようになされることがある。それゆえに、本方法および/またはシステムは、開示される個別の実装に制限されるということではなく、本方法および/またはシステムは、添付される特許請求の範囲の、範囲の中に該当するすべての実装を含むことになるということが意図される。
【符号の説明】
【0021】
201 レージング接合
203 高反射性背面ミラー
205 レーザ発光
207 前面ミラー
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
【外国語明細書】