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特開2024-1020301,2-ジフルオロエチレンを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102030
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】1,2-ジフルオロエチレンを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20240723BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240723BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C09K5/04 F ZAB
C09K3/00 110C
C09K3/30 N
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006254
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023006036
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
(57)【要約】
【課題】1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)を含む新たな組成物の提供。
【解決手段】HFO-1132と、CX*CR1(*は3重結合、R1はCnX1 mで表される一価の基であり、ここで、nは0、1又は2、m=2n+1、かつX及びX1は同一又は異なってH又はFであり、X及びX1の少なくとも1方がFである)で表されるフルオロアセチレン、R2COF(R2はCoX2 pで表される一価の基であり、ここで、oは0又は1、p=2o+1、かつX2はH又はFである)で表されるカルボン酸フロライド、及びCqHrFs(qは3、4又は5、r及びsはそれぞれ同一又は異なってもよい、0以上2q以下の整数であり、かつr+s<2qである)で表される環状アルカン、及びギ酸からなる群より選択される少なくとも一種の化合物とを含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)と、
CX*CR1(*は3重結合、R1はCnX1 mで表される一価の基であり、ここで、nは0、1又は2、m=2n+1、かつX及びX1は同一又は異なってH又はFであり、X及びX1の少なくとも1方がFである)で表されるフルオロアセチレン、R2COF(R2はCoX2 pで表される一価の基であり、ここで、oは0又は1、p=2o+1、かつX2はH又はFである)で表されるカルボン酸フロライド、CqHrFs(qは3、4又は5、r及びsはそれぞれ同一又は異なってもよい、0以上2q以下の整数であり、かつr+s<2qである)で表される環状アルカン、ギ酸からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と
を含む組成物。
【請求項2】
前記化合物を、組成物に対して合計で0.1質量%以下含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
熱移動媒体、発泡剤又は噴射剤である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1,2-ジフルオロエチレンを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1,2-ジフルオロエチレンを含み、冷却、エアーコンディショニング及びヒートポンプシステムにおける使用のための組成物が知られている(特許文献1)。また、1,2-ジフルオロエチレンを含むことを特徴とする熱サイクル用作動媒体が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0253927号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/157765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、1,2-ジフルオロエチレンを含む新たな組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.
1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)と、
CX*CR1(*は3重結合、R1はCnX1 mで表される一価の基であり、ここで、nは0、1又は2、m=2n+1、かつX及びX1は同一又は異なってH又はFであり、X及びX1の少なくとも1方がFである)で表されるフルオロアセチレン、R2COF(R2はCoX2 pで表される一価の基であり、ここで、oは0又は1、p=2o+1、かつX2はH又はFである)で表されるカルボン酸フロライド、CqHrFs(qは3、4又は5、r及びsはそれぞれ同一又は異なってもよい、0以上2q以下の整数であり、かつr+s<2qである)で表される環状アルカン、及びギ酸からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と
を含む組成物。
項2.
前記化合物を、組成物に対して合計で0.1質量%以下含む、項1に記載の組成物。
項3.
熱移動媒体、発泡剤又は噴射剤である、項1又は2に記載の組成物。
【発明の効果】
【0006】
本開示により、1,2-ジフルオロエチレンを含む新たな組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1. 本開示の組成物
本開示では、
1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)と、
CX*CR1(*は3重結合、R1はCnX1 mで表される一価の基であり、ここで、0、1又は2、m=2n+1、X及びX1は同一又は異なってH又はFであり、X及びX1の少なくとも1方がFである)で表されるフルオロアセチレン、R2COF(R2はCoX2 pで表される一価の基であり、ここで、oは0又は1、p=2o+1、かつX2はH又はFである)で表されるカルボン酸フロライド、CqHrFs(qは3、4又は5、r及びsはそれぞれ同一又は異なってもよい、0以上2q以下の整数であり、かつr+s<2qである)で表される環状アルカン、及びギ酸からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(以下、追加的化合物と呼ぶことがある)と
を含む組成物が開示される。
【0008】
1,2-ジフルオロエチレンとしては、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))とシス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))の異性体が存在する。どちらか一方、またはそれらの混合物が本発明の組成物として好適であるが、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))を含む組成物が好ましい。
【0009】
本開示の組成物は、追加的化合物として、少なくとも:
追加的化合物(1):CX*CR1(*は3重結合、R1はCnX1 mで表される一価の基であり、ここで、nは0、1又は2、m=2n+1、かつX及びX1は同一又は異なってH又はFであり、X及びX1の少なくとも1方がFである)で表されるフルオロアセチレン;
追加的化合物(2):R2COF(R2はCoX2 pで表される一価の基であり、ここで、oは0又は1、p=2o+1、かつX2はH又はFである)で表されるカルボン酸フロライド;
追加的化合物(3):CqHrFs(qは3、4又は5、r及びsはそれぞれ同一又は異なってもよい、0以上2q以下の整数であり、かつr+s<2qである)で表される環状アルカン;及び 追加的化合物(4):ギ酸
からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含む。
【0010】
追加的化合物(1)としては、上記において、nが0又は1であるものが好ましい。
【0011】
追加的化合物(1)としては、上記において、mが1又は3であるものが好ましい。
【0012】
好ましい追加的化合物(1)の具体例としては、モノフルオロアセチレン、ジフルオロアセチレンおよび3,3,3-トリフルオロアセチレン等が挙げられる。
【0013】
追加的化合物(2)としては、上記において、pが0~3であるものが好まし好ましい。
【0014】
好ましい追加的化合物(2)の具体例としては、フッ化ホルミル、モノフルオロ酢酸フロライド、ジフルオロ酢酸フロライド及びトリフルオロ酢酸フロライド等が挙げられる。
【0015】
追加的化合物(3)としては、上記において、qが3、4又は5であり、3又は4であるものが好ましい。
【0016】
追加的化合物(3)としては、上記において、rが0~10であるものが好ましく、3~8であるものがより好ましい。
【0017】
追加的化合物(3)としては、上記において、sが0~10であるものが好ましく、3~8であるものがより好ましい。
【0018】
好ましい追加的化合物(3)の具体例としては、1,2,3-トリフルオロシクロプロパン、1,2,3,4-テトラフルオロシクロブタン、及びパーフルオロシクロブタン等が挙げられる。
【0019】
本開示においては、上記の追加的化合物を特定量含む組成物が、安定なHFO-1132の組成物となっている。具体的には、水分が共存する場合における酸の経時的な生成量がより抑制されている、及び/又は加圧下における重合反応がより抑制されている。
【0020】
上記の安定性向上効果の点で、本開示の組成物は、追加的化合物を総量で、組成物全体に対して0.1質量%以下含むことが好ましく、500質量ppm以下含むことがより好ましく、100質量ppm以下含むことが最も好ましい。
【0021】
本開示の組成物は、HFO-1132と追加的化合物に加えて、さらにアセチレンを含んでいてもよい。
【0022】
2. 本開示の組成物の製造方法
HFO-1132を含む冷媒の保存中、運搬中、機器の運転中において追加的化合物が、HFO-1132に混入する可能性があることを、本発明者らは見出した。さらに鋭意検討を重ね、精留、アルカリ洗浄、及び吸着などの精製方法を経て、これらの当該追加的化合物の混入割合を、組成物に対して1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下に調整できることを本発明者らは見出した。
上記精製方法としては、吸着、および蒸留による方法が好適に用いられる。例えば、吸着であれば、活性炭、モレキュラーシーブ、シリカゲル、金属-有機構造体(MOF)等が用いられる。対象とする組成物において調整したい追加的化合物の分子径、吸着材との相互作用の強さを勘案して選択することで、これらの追加的化合物の混入割合を調整することができる。また、蒸留による場合は、通常の蒸留塔により分離することが可能である。例えば、理論段数を10段程度~200段程度の必要な段数を有する蒸留塔を用い、必要に応じて常圧~2MPaG程度の圧力下、蒸留することにより、これらの追加的化合物を塔頂、若しくは東低に濃縮することにより、混入割合の低下したHFO-1132(E)を得ることができる。
【0023】
3. 熱移動媒体
本開示の組成物は、低いGWPと十分な安定性を有し、熱移動媒体として用いることができる。
本開示の組成物は、熱移動媒体に用いられる場合、従来から用いられる冷媒である、R22、R12、R134a、R410A、R407C、R404A、R507A、R502等の冷媒を代替する、より低いGWPを有する冷媒、又は冷媒の成分としても使用しうる。
【0024】
熱移動媒体として用いられる本開示の組成物は、少なくとも一種のその他の成分を含有していてもよい。本開示の組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる(この場合の本開示の組成物を「本開示の冷媒組成物」という)。
【0025】
本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。その他の成分は、特に限定されないが、具体的には、例えば、水、トレーサー、紫外線蛍光染料、安定剤、重合禁止剤等が挙げられる。
本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは0~1質量%であり、より好ましくは0~0.1質量%である。
【0026】
本開示の冷媒組成物は、微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒組成物全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
【0027】
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。また、上記の追加的化合物の少なくとも一部を、トレーサーとして利用することもできる。
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
【0028】
トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3
HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン、CHF2CHF2
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2)HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3)HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2)HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2)HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3)HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3
【0029】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万分率(ppm)~約1000ppm含んでもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm~約500ppm、より好ましくは約50ppm~約300ppm含んでもよい。
【0030】
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
【0031】
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。 ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。 エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒組成物全体に対して、通常、0.01~5質量%とすることが好ましく、0.05~2質量%とすることがより好ましい。
【0032】
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒組成物全体に対して、通常、0.01~5質量%とすることが好ましく、0.05~2質量%とすることがより好ましい。
【0033】
本開示の組成物は、冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体としても使用できる(この組成物を「本開示の冷凍機油含有作動流体」という)。本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10~50質量%含まれる。
【0034】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性及び前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0035】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
冷凍機油として、40℃における動粘度が5~400 cStであるものが、潤滑の点で好ましい。
【0036】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル及び1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0037】
本開示の組成物は、熱移動媒体としてシステムに用いることができる。当該システムの例としては、特に限定されないが、空気調節装置、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、水冷却装置、浸水蒸発器冷却装置、直接膨張冷却装置、遠心冷却装置、移動式冷蔵庫、移動式空気調節装置及びそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0038】
4. 発泡剤
本開示の組成物は、低いGWPと十分な安定性を有し、発泡剤として用いることができる。本開示の組成物を発泡剤として用いると、従来の発泡剤よりも低いGWPを有するものとなる。
【0039】
本開示の組成物を発泡剤として用いる場合、当該組成物は他の発泡剤を含んでもよい。 併用し得る他の発泡剤としては、特に限定されないが、例えばHFC227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)、HCFO-1233zd(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、HFO-1234yf、HFO-1234ze等のハロゲン化炭化水素;空気、窒素、炭酸ガス等の不活性ガス等が挙げられる。
【0040】
本開示の組成物は、水を含んでもよい。水を加えることにより、発泡時に炭酸ガスが生成し、炭酸ガスが発泡に寄与するため好ましい。しかし、多量に水を加えすぎると、発泡体の断熱性能等を低下させるおそれがある。
水の含有割合は、組成物全体(100質量%)に対して、通常60質量%以下程度である。この範囲内とすることによって、より確実に高断熱性発泡体を製造することができる。
【0041】
また、本開示の組成物は、必要に応じて分解抑制剤を含んでもよい。分解抑制剤としては、特に限定されないが、例えばニトロベンゼン、ニトロメタン等のニトロ化合物;α-メチルスチレン、p-イソプロペニルトルエン等の芳香族炭化水素;イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素;1,2-ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物;p-t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等のフェノール化合物;クロロ酢酸イソプロピルエステル等のクロロ酢酸エステル化合物等が好ましく挙げられる。
分解抑制剤の含有割合は、分解抑制剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、組成物全体(100質量%)に対して、通常0.05~5質量%程度である。
【0042】
5. 噴射剤
本開示の組成物は、低いGWPと十分な安定性を有し、噴射剤として用いることができる。本開示の組成物を噴射剤として用いると、従来の噴射剤よりも低いGWPを有するものとなり、地球温暖化に実質的に寄与しない噴射剤を提供することができる。
【0043】
本開示の組成物を噴射剤として用いる場合、当該組成物は、必要に応じて他の化合物を含んでもよい。
他の化合物としては、特に限定されないが、例えば、HFC134a、HFC227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)HFO-1234yf、HFO-1234ze等が挙げられる。
【0044】
本開示の組成物を噴射剤として用いる場合、当該噴射剤はエアゾールに配合することができる。エアゾールとしては、特に限定されないが、例えば、接点洗浄剤、ダスター、潤滑剤スプレー、他の噴霧可能な組成物等の種々の工業用エアゾール;パーソナルケア製品、家庭用品、医薬用エアゾール、自動車用品等の民生用エアゾール等が挙げられる。医療用エアゾールの場合は、薬物(ベータ作用薬、コルチコステロイド、他の薬物等)、界面活性剤、溶媒、他の噴射剤、香味料、賦形剤等の他の成分をさらに含んでもよい。
【0045】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0046】
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
HFO-1132(E)と、モノフルオロアセチレンHC*CF(*は3重結合)からなり、HFO-1132(E)に対してモノフルオロアセチレンの含有量が1重量ppm、10重量ppm、100重量ppm、1000重量ppmの4種類のハロオレフィン類組成物を調製した。
なお、上記HFO-1132(E)は、たとえば、特開2019-196312号公報に示されるような方法で製造した。このとき生成するHFは水洗塔、NaOH水溶液のアルカリ塔により脱酸した。得られたハロオレフィン類組成物は、HFO-1132(E)の製造において使用された水を0~100質量ppm、および酸素を0~10モルppm含み得る。
【0048】
(ハロオレフィン類の安定性試験)
上記実施例及び比較例で得られたハロオレフィン類組成物の各々について、以下のようにハロオレフィン類の安定性試験を行った。片側を溶封済みのガラス製チューブ(ID8mmΦ×OD12mmΦ×L300mm)に、ハロオレフィン類組成物をハロオレフィン類の含有量が0.01molとなるように加えた。チューブは溶封により密閉状態とした。このチューブを150℃の雰囲気下の恒温槽内に静置させ、この状態で1週間保持した。その後、恒温槽から取り出して冷却し、チューブ内のガス中の酸分の分析を行うことで、ハロオレフィン類の安定性を評価した。
ガス中の酸分の分析は次のような方法で行った。上記冷却後のチューブを、液体窒素を用いて、チューブ内に滞留するガスを完全に凝固させた。その後、チューブを開封し、徐々に解凍してガスをテドラーバッグに回収した。このテドラーバッグに純水5gを注入し、回収ガスとよく接触させながら酸分を純水に抽出するようにした。抽出液をイオンクロマトグラフィーにて検出して、フッ化物イオン(F)の含有量(重量ppm)を測定した。
表1に試験結果を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例2)
1.2-ジフルオロエチレン(以下「HFO-1132(E)」と略記する)と、フッ化ホルミルHCOFからなり、HFO-1132(E)に対してフッ化ホルミルの含有量が1重量ppm、10重量ppm、100重量ppm、1000重量ppmの4種類のハロオレフィン類組成物を調製した。
HCOF + H2O → HCOOH + HF
よって、本組成物は分解によって生成したギ酸も含みうる。
【0051】
上記HFO-1132(E)は、たとえば、特開2019-196312号公報に示されるような方法で製造した。このとき生成するHFは水洗塔、NaOH水溶液のアルカリ塔により脱酸した。得られたハロオレフィン類組成物は、HFO-1132(E)の製造において使用された水を0~100質量ppm、および酸素を0~10モルppm含み得る。測定の結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
(実施例3)
1.2-ジフルオロエチレン(以下「HFO-1132(E)」と略記する)と、1,2,3-トリフルオロシクロプロパンからなり、HFO-1132(E)に対して1,2,3-トリフルオロシクロプロパンの含有量が1重量ppm、10重量ppm、100重量ppm、1000重量ppmの4種類のハロオレフィン類組成物を調製した。
上記HFO-1132(E)は、たとえば、特開2019-196312号公報に示されるような方法で製造した。このとき生成するHFは水洗塔、NaOH水溶液のアルカリ塔により脱酸した。得られたハロオレフィン類組成物は、HFO-1132(E)の製造において使用された水を0~100質量ppm、および酸素を0~10モルppm含み得る。測定の結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
これらの表に示すように、追加化合物が10ないし100ppm以下にコントロールされている場合に、水分、酸素ともに低濃度である場合は分解は抑制されていた。しかしながら、水分、酸素共存化でこれら追加化合物の濃度が高くなると分解が促進された。これら高濃度で追加化合物の存在するサンプルは分解が急速に進み、シールドガラスチューブが破損するものもあり、試験をやり直した。