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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102115
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】光電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20240723BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240723BHJP
   H10K 30/88 20230101ALI20240723BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H10K30/50
H10K30/88
B32B27/32
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024067387
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2020555766の分割
【原出願日】2019-04-12
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/059640
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/059637
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】502121731
【氏名又は名称】セ エス エ エム サントル スイス デレクトロニク エ ド ミクロテクニク ソシエテ アノニム ルシェルシェ エ ディベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘンユ リ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルディ エスカレ パロウ
(72)【発明者】
【氏名】カリン ソデルストロム
(72)【発明者】
【氏名】ローレ-エマニュエレ ペレト-アエビ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ バリフ
(72)【発明者】
【氏名】シャビエル ブリアルド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所望の配色を有する有色光電池モジュールを製造する方法を提供する。
【解決手段】封止体によって互いに固定される第1層と第2層を少なくとも有する光電池モジュール(1)の製造方法は、積層装置を供する段階と、積層装置内に第1層を設ける段階と、第1層上に封止材料を設ける段階とを、備える。封止材料は、シラン修飾ポリオレフィンを含む融点が90℃未満の基部樹脂を供する段階と、基部樹脂と、色素粒子と、100樹脂あたり0.01部から5部の割合で存在する架橋触媒を含む添加物との混合物を形成する段階とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止体によって相互に固定される第1層及び第2層を少なくとも備える光電池モジュールの製造方法であって、
積層装置を提供する段階と、
前記第1層を前記積層装置内に設ける段階と、
シラン修飾ポリオレフィンを含む融点が90℃未満の基部樹脂を提供する段階と、100の樹脂あたり0.01から20部の割合で、好適には0.01から5部の割合で存在する架橋触媒を含む添加剤と、色素粒子と、前記基部樹脂との混合物を生成する段階と、90℃から190℃で好適には160℃から180℃の温度で前記混合物を融解する段階と、前記混合物を押し出して封止材を形成する段階と、によって前記第1層上に前記封止材を設ける段階と、
前記第2層を前記封止材上に設ける段階と、
前記基部樹脂を架橋するように、60℃から125℃で、好適には60℃から100℃で、さらに好適には70℃から90℃の温度で加えられる熱と圧力を加えた状態で前記第1層、前記第2層、及び前記封止材を積層する段階と、を有する方法。
【請求項2】
前記封止材はシートとして押し出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記封止材は、押し出され、それに続いて前記第1層上に設けられる前に粉末となるように挽かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
封止体によって相互に固定される第1層及び第2層を少なくとも備える光電池モジュールの製造方法であって、
積層装置を提供する段階と、
前記第1層を前記積層装置内に設ける段階と、
前記第1層上に封止材を粉末状態で設ける段階であって、シラン修飾ポリオレフィンを含む融点が90℃未満の基部樹脂を粉末状態で提供する段階と、前記封止材中に100の樹脂あたり0.01から5部の割合で存在する架橋触媒を含む添加剤と、色素粒子と、前記基部樹脂粉末とを混合させて前記封止材を生成する段階と、によって実現される段階と、
前記第2層を前記封止材上に設ける段階と、
前記基部樹脂を架橋するように、60℃から125℃で、好適には60℃から100℃で、さらに好適には70℃から90℃の温度で熱と圧力を加えた状態で前記第1層、前記第2層、及び前記封止材を積層する段階と、を有する方法。
【請求項5】
前記基部樹脂は、積層前では85℃で10000Pa・s超で、かつ、100℃で6000Pa・s超である複素粘性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基部樹脂は、積層前では85℃で1.0より大きく、かつ、100℃で1.2より大きなタンジェントデルタ値を示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物はさらに、酸化防止剤、紫外吸収剤、紫外安定剤のうちの少なくとも一を含む他の添加剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒は、ホウ酸、メタロセン触媒、幾何拘束型触媒、可逆的連鎖移動型触媒、たとえばツィーグラー・ナッタ触媒又はフィリップス触媒のようなマルチサイト触媒のうちの1つ以上を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記積層段階後、前記封止材は、85℃で15000Pa・sよりも大きく、かつ、100℃で10000Pa・sよりも大きい複素粘性を示す、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記積層段階後、前記封止材は、85℃で1.0未満で、好適には85℃で0.8未満で、かつ、100℃で1.2未満で、100℃で1.0未満のタンジェントデルタ値を示す、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記色素粒子の少なくとも一部は、100nmから50μmで、好適には100nmから1μmで、さらに好適には300nmから700nmで、もっと好適には400nmから600nmの範囲の直径を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記色素粒子は、樹脂100部当たり0.01から10部の範囲の質量濃度で前記封止材内に供される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記色素粒子は、亜鉛系色素、チタン系色素、鉄系色素、クロム系色素、ビスマス系色素、コバルト系色素、アルミニウム系色素、スズ系色素、銅系色素のうちの少なくとも一を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって製造される光電池モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載の光電池モジュールを少なくとも1つ備える建築構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電池デバイスの技術分野に関する。より詳細には本発明は、建築物への組み込み用途に適した有色光電池モジュールの製造方法に関する。
【0002】
光電池(PV)デバイス―太陽電池又はソーラーパネルとも呼ばれる―は、黒に近い色になる傾向がある。通常は紫又は藍色の色合いで、個々のセルの明確に定められるパターンが視認可能である。そのようなPVデバイスが建築物に設けられているとき、そのようなPVデバイスは目障りであり、このような理由で建築物のクラッドとして直接的に用いることは通常耐え難い。
【0003】
この問題を解決するため、建築物の構造物に―特に外部クラッドとして―組み込むことが可能な有色PVデバイスが提案されてきた。
【0004】
特許文献1は、モジュールの外見を修正するようにPVデバイスの前面シートに設けられる膜を開示している。しかしこの膜は、モジュールを構成する個々のPVセルの幾何学形状との位置合わせを必要とする特定のプロファイルを必要とし、かつ、前面シート内のファセット及びモジュールの不活性部内の埋め込み素子を含む複雑な設計に依拠する。
【0005】
特許文献2は、モジュール内部に設けられたグラフィック膜を含むPVデバイスを開示している。この膜は、色又はテクスチャを備えるように印刷され、かつ、膜がモジュールの効率へ及ぼす影響を限定するように選択反射層を必要とする。
【0006】
特許文献3と特許文献4は、特許文献5と特許文献6のようなPVモジュール上又はその内部に設けられる装飾膜オーバーレイを開示している。
【0007】
特許文献7は、全可視スペクトルにわたってある量の光を反射するように干渉フィルタが光電池モジュールの光入射面上に設けられる中間層上に形成される白色光電池モジュールを開示している。この干渉膜を生成するには特別な装置と方法が必要となる。
【0008】
しかしこれらの従来技術の解決手段はすべて、複雑であるか、あるいは、モジュールに追加の層を設けることを必要とする。本質的にはモジュールに加えられる追加層の各々については、分離可能な複数の層の間に界面が存在するので、モジュールの剥離の危険性が増大する。さらに特殊な製造技術又は装置が必要となる恐れもある。
【0009】
特許文献8はこの問題に対する解決策を提案している。特許文献8の図7の実施形態では、前面封止層自体は、内部で無作為に分散する色素粒子を含む。これはしたがって、前面封止層に加えて追加の有色膜を必要としないが、全く異なる一連の問題を引き起こす。特許文献8で用いられた封止体は従来のもので、かつ、最大1barの圧力下で130℃~170℃のオーダーである従来の積層温度で積層されるので、色素粒子は積層中にマイグレーションを起こす恐れがある。このため配色が顕著に不均一になってしまう。さらに極端の場合では、過剰に封止材が流れることで、モジュール内部で-特にPVセルが存在する領域と存在しない領域とで-厚さが顕著にばらついてしまう。この結果繰り返しになるが、モジュール全体にわたって色がばらついてしまう。
【0010】
さらに第2に、標準的な温度及び圧力は、大抵のPVセル技術―たとえば薄膜シリコン、結晶シリコン、及びゲルマニウム系セル―との相性が良い一方で、典型的にはペロブスカイト系の有機及び色素増感セルとの相性はよくない。これら後者の型のセル―グレッツェルセルとしても知られている―は、二酸化チタンの薄膜上で吸着する感光性色素を利用し、かつ、液体又はゲル系電解質を用いる。液体又はゲル系電解質は90℃より高温に加熱されると損傷を受ける恐れがある。そのため、これら後者の型のセルは、従来の積層方法との相性が良くない。ペロブスカイトは、同程度ではないが同じように熱に敏感である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第9281186号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/326292号公報
【特許文献3】米国特許第9276141号公報
【特許文献4】米国特許第8513517号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/247541号公報
【特許文献6】国際公開第2016/118885号公報
【特許文献7】欧州特許第2793271号公報
【特許文献8】国際公開第2009/089236号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2017/123122号公報
【特許文献10】米国特許出願公開第2017/033250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的は、所望の配色を有する有色光電池モジュールを製造する方法であって、また第2の検討として、色素増感型、ペロブスカイト型、及び他の温度に敏感な光電池技術との相性が良い方法を提案することである。
【課題が解決するための手段】
【0013】
より詳細には本発明は、封止体によって互いに固定される第1層と第2層を少なくとも含む太陽電池モジュールの製造方法に関する。当然のこととして当該光電池モジュールが光電変換素子を備えるとしても、前記光電変換素子が前記第1層又は前記第2層のいずれかである必要はないが、いずれかであってもよい。当該方法は、
たとえば真空バッグ積層装置のような積層装置を提供する段階と、
単独で又は既存の事前製造されたPVモジュール若しくは該PVモジュールの一部として、たとえば前面シート、背面シート、若しくは他の層である前記第1層を前記積層装置内に設ける段階と、
(a)シラン修飾ポリオレフィン(たとえばエチレン含有共重合体)を含む融点が90℃未満の基部樹脂を提供する段階と、(b)100の樹脂あたり0.01から20で好適には0.01から5部の割合で存在する架橋触媒を含む添加剤と前記基部樹脂と、便利な種類、サイズ、及び濃度の色素粒子との混合物を生成する段階と、(c)90℃から190℃で好適には160℃から180℃の温度で前記混合物を融解する段階と、(d)前記混合物を押し出して封止材を形成する段階と、によって前記第1層上にシート及び/又は粉末として設けられることが可能な前記封止材を設ける段階と、
たとえば光電変換装置、既存PVモジュールの一部を構成する内部前面シート、又は適切な他の層である前記第2層を前記封止材上に設ける段階と、
前記基部樹脂を架橋するように、60℃から125℃で、好適には60℃から100℃で、さらに好適には70℃から90℃の温度で加えられる熱と圧力を加えた状態で前記第1層、前記第2層、及び前記封止材を積層する段階と、を有する。
【0014】
最大125℃の温度での積層中、上述の前記封止樹脂の少なくとも一部は架橋され得る。その結果、PVモジュールでの使用に適した機械的特性-具体的には十分な剛性と、予想される最高の供給温度(つまり約85℃で、安全マージンを加味して最大105℃)でのクリープ耐性-が得られる。前記架橋はまた、前記モジュールの積層が終わった後に実行又は継続されてもよい。
【0015】
通常よりも処理温度が低くなる結果、積層中での粘性が通常よりも高くなり、タンジェントデルタが通常よりも低くなる。これにより、色素粒子のマイグレーションと凝集が防止されるだけではなく、着色された封止材の過剰な流入も防止される。その結果モジュールの配色は均一になる。この結果は驚くべきことであり、低温処理と、モジュールに色を与えるための色素の使用との間に予期しない相乗効果を示している。
【0016】
さらにこのように特定の封止体と通常の積層温度よりも低い温度とを組み合わせることは、従来の積層装置内で従来のPVモジュールを積層するときのみならず、温度に敏感なPVセル-たとえばペロブスカイト系セル、有機セル、又は色素増感セル-を含むPVモジュールを積層するときの利用にも適している。また積層中での処理温度が低下することで、エネルギー消費が減少する。上述した前記第1層と前記第2層のうちの一は、上に他の層が積層される既存の事前に製造されたPVモジュールの一部を構成してよいし、あるいはPVモジュールの個別の層であってもよいことに留意して欲しい。
【0017】
本発明による代替方法は、
積層装置を提供する段階と、
前記積層装置内で(上述の)前記第1層を設ける段階と、
前記第1層上に粉末状態で封止材を設ける段階であって、(a)シラン修飾ポリオレフィン(たとえばエチレン含有共重合体)を含む融点が90℃未満の基部樹脂を粉末状態で提供する段階と、(b)(前記封止材の混合物全体で考慮して)前記封止材中に100の樹脂あたり0.01から20で好適には0.01から5部の割合で存在する架橋触媒を含む少なくとも粉末又は液体の添加剤と、便利な種類、サイズ、及び濃度の色素粒子と、前記基部樹脂の粉末とを混合させて前記封止材を生成する段階と、によって実現される段階と、;
前記封止材上に(上述の)前記第2層を設ける段階と、
前記基部樹脂を架橋するように、60℃から125℃で、好適には60℃から100℃で、さらに好適には70℃から90℃の温度で熱と圧力を加えた状態で前記第1層、前記第2層、及び前記封止材を積層する段階と、を有する。
【0018】
最大125℃の温度での積層中、たとえ触媒粒子と基部樹脂の粒子が離散的であるとしても前記樹脂は上述した方法と同じようにして架橋される。その結果、PVモジュールでの使用に適した機械的特性-具体的には十分な剛性と、予想される最高の供給温度(つまり約85℃で、安全マージンを加味して最大105℃)でのクリープ耐性-が得られる。
【0019】
通常よりも処理温度が低くなる結果、積層中での粘性が通常よりも高くなり、タンジェントデルタが通常よりも低くなる。これにより、色素粒子のマイグレーションと凝集が防止されるだけではなく、着色された封止材の過剰な流入も防止される。その結果モジュールの配色は均一になる。この結果は驚くべきことであり、低温処理と、モジュールに色を与えるための色素の使用との間に予期しない相乗効果を示している。
【0020】
よってこの方法は、従来の積層装置内で従来のPVモジュールを積層するときのみならず、温度に敏感なPVセル―たとえばペロブスカイト系セル又は色素増感セル―を含むPVモジュールを積層するときに利用することができる。また積層中での処理温度が低下することでエネルギー消費が減少する。繰り返しになるが、上述した前記第1層と前記第2層のうちの一は、上に他の層が積層される既存の事前に製造されたPVモジュールの一部を構成してよいし、あるいはPVモジュールの個別の層であってもよいことに留意して欲しい。
【0021】
有利となるように、前記基部樹脂は、積層前では85℃で10000Pa・s超で、かつ、100℃で6000Pa・s超の複素粘性を有する。
【0022】
有利となるように、前記基部樹脂は、積層前では85℃で1.0より大きく、かつ、100℃で1.2より大きなタンジェントデルタ値を示す。
【0023】
上述の特性によって加工性の良好な封止材が得られる。
【0024】
有利となるように、前記混合物はさらに、酸化防止剤、紫外吸収剤、紫外安定剤のうちの少なくとも一を含む他の添加剤を含む。この他の添加剤は、前記触媒との混合及び/若しくは化合と同時に、又は、得られた混合物が前記触媒と混合及び/若しくは化合する前に別個の段階で、前記基部樹脂と混合及び/又は化合されてよい。
【0025】
有利となるように、前記触媒は、ホウ酸、メタロセン触媒、幾何拘束型触媒、可逆的連鎖移動型触媒、たとえばツィーグラー・ナッタ触媒又はフィリップス触媒のようなマルチサイト触媒のうちの1つ以上を含む。そのような架橋触媒は、金属(たとえばコバルト、スズ、亜鉛、鉄、鉛等)カルボン酸、ジアルキルスズメルカプチド、オクタン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、スズアセテート、カプリル酸スズ、カプリル酸亜鉛、有機塩基―たとえばエチルアミン、ジブチルアミン、又はヘキシルアミン―、無機酸―たとえば硫酸―、又は有機酸―たとえばトルエンスルホン酸、ステアリン酸、及びマレイン酸―を含んでよい。
【0026】
有利となるように、前記積層段階後、前記封止材は、85℃で15000Pa・sよりも大きく、かつ、100℃で10000Pa・sよりも大きい複素粘性を示す。
【0027】
有利となるように、前記積層段階後、前記封止材は、85℃で1.0未満(好適には85℃で0.8未満)で、かつ、100℃で1.2未満(好適には85℃で1.0未満)のタンジェントデルタ値を示す。
【0028】
これらの特性は、要求される構造安定性及び積層直後に要求される供給温度でのクリープ耐性を与えるのに十分である。架橋が積層後にさらに進むことで、前記封止層のクリープ耐性はさらに改善される。
【0029】
有利となるように、前記色素粒子の少なくとも一部―好適には少なくとも50%又はさらには少なくとも75%―は、100nm~50μm―好適には100nm~5μmで、好適には300nm~700nmで、より好適には400nm~600nm―の範囲の中央値をとる直径を有する。粒子の直径は、前面封止層の所望の光学特性向けに最適化され得る。同様に色素粒子が、100の樹脂当たり0.01~10部の質量濃度で前記前面封止層内に供されてよい。これは繰り返しになるが、所望の特性を最適化するように調整され得る。厳密な粒子サイズ及び粒子濃度は、所望の光学特性(色、反射率、透過率、特殊干渉効果等)を実現する通常の実験によって想到し得ることが可能で、かつ、先験的な粒子サイズと粒子濃度との関係―この関係は所望の光学特性に依存する―は特別には存在しないことは言うまでもない。
【0030】
有利となるように前記色素粒子は、亜鉛系色素(たとえば酸化亜鉛又はジンククロメート)、チタン系色素(たとえば酸化チタン又はチタンイエロー)、鉄系色素(たとえば酸化鉄又はプルシアンブルー)、クロム系色素(たとえば酸化クロム)、ビスマス系色素(たとえばバナジン酸ビスマス)、コバルト系色素(たとえばコバルトブルー)又はコバルトスズ酸塩又はコバルト/リチウム/チタン酸化物)アルミニウム系色素(硫黄含有珪酸ナトリウム複合物)、スズ系色素(たとえば硫化スズ)又は銅系色素のうちの少なくとも1つを含む。
【0031】
そのような光電池モジュールは当然のこととして、建築構造で用いるのに適するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のさらなる詳細は、以下の図とともに以降の説明を読むことでより明確になる。
図1】本発明によって製造された光電池モジュールの概略的断面図である。
図2】本発明によって製造された他の光電池モジュールの概略的断面図である。
図3】光電池モジュールの製造方法の概略図である。
図4】本発明による封止材の製造方法の概略図である。
図5】本発明による封止材の製造方法の概略図である。
図6】本発明による封止材の製造方法の概略図である。
図7】本発明による封止材の製造方法の概略図である。
図8】本発明によるPVセルによって得られる環境の色安定性の結果を表すグラフである。
図9】本発明によるPVセルによって得られる環境の色安定性の結果を表すグラフである。
図10】本発明によるPVセルによって得られる環境の色安定性の結果を表すグラフである。
図11】PVモジュールを備える建築構造の概略図である。
【本発明を実施するための形態】
【0033】
以降では、特定の層が隣接層上に直接設けられていることが明記されていなければ、1層以上の中間層も上述の層間に存在できることに留意して欲しい。そのため、「上に」とは、特に断りがなければ「直接的又は間接的に上に」という意味にとられなければならない。さらにある層やコネクタ等のパターニングは、当業者に周知であるため表されていない。
【0034】
図1は、光電池モジュール1の古典的構成を表している。光電池モジュール1は、該光電池モジュール1の光入射面上に設けられて使用時に発光するように意図された前面シート3と、前面シート3の反対に位置するモジュール1の面上に設けられる背面シート11を備える。前面シート3は、ガラス、透明セラミックス、ポリマー、又は任意の他の便利で実質的に透明な材料であってよい。背面シートは、金属、ガラス、セラミックス、ポリマー、又は任意の他の便利な材料であってよい。前面シート3は、コーティングを備えるように構築されてよい。前面シート3と背面シート11のうちの一は、本発明における「第1層」を表し得る。この第1層が封止層によって封止する層は、本発明における「第2層」に相当する。あるいはその代わりに、一つになるように封止されるPVモジュールの構成の任意の2層の特定の層は、本発明における第1層と第2層を表してよい。あるいは第1層と第2層のいずれかが、他の層が積層されている既存の事前に製造されたPVモジュールの一部を構成してもよい。
【0035】
広く知られているようにNIP、PIN、NP、又はPN接合を有する1つ以上のPVセルを備え、パターニングされ、かつ、相互接続される光電変換装置7が、前面シート3と背面シート11との間に設けられている。PVセルは、薄膜シリコン、結晶シリコン、ゲルマニウム、ペロブスカイト、色素増感セル、又は、PVモジュール1の光入射面上に入射してPV変換装置7の光電活性領域を通過する光から電力を生成するように適合する任意の他の型のPV技術に基づいてよい。本発明は特に、色素増感ペロブスカイトセルを組み込むPVモジュールの封止に適用可能だが、任意のPVセル技術にも同様に適用可能である。
【0036】
PV変換装置7は、光入射面上では、該光入射面を前面シート3に密閉させる前面封止層5によって、背面上では背面封止層11によって封止される。背面封止層11は、PV変換装置15を背面シート19に密閉させる。とはいえ背面封止層11自身が背面シートを構成してもよい。封止層5,9の各々は典型的には、200μmから1mmの厚さである。さらに複数の前面封止層3は互いの上部に積層されてよい。前面封止層5及び/又は背面封止層9は特別に本発明によって製造される。前面封止層5及び/又は背面封止層9について以降で詳述する。
【0037】
他の中間層が図示された複数の層間に供されてよく、かつ、それらの層は平坦である必要はなく、曲率を有しているか、あるいはより複雑な表面を表してもよいことに留意して欲しい。そのような場合、粉末状の封止材料をそれ自体で用いること、あるいは、その膜と併用することは、形状のすべての細部が封止体で充填されることを保証する点で有利となり得る。特に、積層後に均一な封止層を保証するために下地層上のある領域を充てんするのに粉末の封止材を用いることで、同一の原則が層の形状にかかわらず適用可能である。
【0038】
図2は、前面封止体5によって既存の事前に製造されたPVモジュール17に前面シート3を積層することによって製造されたPVモジュール1の構造の他の変形例を表している。他の層7,9,11は、これまでに設計されたものである。その結果、事前に製造されたモジュール17の本来の前面シートと前面封止体はそれぞれ、内部前面シート13とさらなる封止層15となる。背面封止体9と背面シート11に関しても前述したことと同様である。この構造は、構築され、プリントされ、所望の添加剤を含み、たとえば特許文献7、特許文献9、特許文献10に開示されている光学フィルタを備えるか、あるいは、同様の機能発現を示す前面シート3による既存のモジュール17の前面の機能発現を可能にする。
【0039】
図3は、本発明によるPVモジュール1の製造方法を概略的に表している。
【0040】
他の存在する層とともに層3,5,7,9を少なくとも備える層積層体31が積層装置33内で一つにされる。図2の実施形態の場合、層積層体は、事前に製造されたPVモジュール17を含む。事前に製造されたPVモジュール17上には、前面封止層5と前面シート3(及び任意の他の所望の層)が付与された。層積層体31は積層装置33内で一つにされ得ることに留意して欲しい。このとき、最終的なPVモジュールの光入射面が上を向いた状態又は下を向いた状態のいずれかで、この向きは、どの特定の層が本発明における「第1の」と「第2の」層であるのかを決定する。さらに封止層5,9のうちの1つ以上は、膜及び/又は粉末として層積層体31に付与されてよい。
【0041】
積層装置は、真空バッグ積層装置、ローラー型積層装置、又は任意の他の便利な型であってよい。積層装置33は続いて、通常よりも低い温度で熱と圧力を加える。温度は特に60℃から125℃で、好適には60℃から100℃で、さらに好適には70℃から90℃で加えられ、圧力は最大2バールゲージ圧力(通常は実質的に2バールゲージ圧力)で、適切な期間(たとえば20分から2000分)加えられる。これにより、様々な封止層が融合及び架橋することで最終的なPVモジュール1となる。
【0042】
その結果、本発明によるPVモジュール1は、特別な装置を必要とすることなく従来のPV処理装置で作ることができる。さらに処理温度が低下することで製造におけるエネルギー消費が減少する。
【0043】
積層後及び供給中での封止体の所望の機械的特性を維持しながら上述の通常温度よりも低い温度での積層を可能にするため、少なくとも1つの封止層5,9が後述するように特別に製造される。
【0044】
問題の封止層5,9は、シラン修飾ポリオレフィン基部樹脂―たとえばポリエチレン若しくは他のエチレン系ポリマー若しくは共重合体又はそのようなポリマーの混合物―から生成される。そのような基部樹脂は、既にポリマー分子に接合されたシラン官能基を含み、かつ、たとえばパダナプラスト(Padanaplast)、ダウ(Dow)、エボニック(Evonik)及び他の会社から市販されている。以降では、具体的な形態に対して変化しない製造者の参考データによって、ある具体的な形態について言及する。よって再現性は当業者には保証される。
【0045】
そのような基部樹脂は典型的に、加水分解性シラン基を含む化合物が存在する中で1つ以上のポリオレフィン(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、若しくは、C-C10アルケンから選ばれる他のモノマーとエチレン又はプロピレンとのコポリマー)を処理することによって得ることができる。ポリオレフィンの他の例は、アリルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、ポリスチレン、アクリルポリマー、アクリレートポリマー、メタクリラート―たとえばPMMA―などである。ポリオレフィンのさらなる例については、ASM D883-12又はウルマン工業化学百科事典で調べることができる。基部樹脂の処理は例えば、加水分解性シラン基を含む化合物及びフリーラジカルを生成できる化合物の存在下で1つ以上のポリオレフィンを溶融処理することによって実行されてよい。しかしそのような基部樹脂は複数の製造者から既製品として入手可能なため、当業者は、適切な基部樹脂を選ぶだけで自分で合成をする必要はない。問題の基部樹脂は理想的には積層前に以下の特性を有する。問題の基部樹脂は理想的には積層前に以下の特性を有する。
【表1】
【0046】
参考として、複素粘性は、せん断応力の強制調和振動中に決定される周波数依存粘性関数で、かつ、複素弾性率を角周波数で除したものと定義される。ここで複素弾性率は、材料の変形-その変形が回復可能(つまり弾性的)、又は、非回復可能(つまり粘性的)であるかにかかわらず-に対する全体的抵抗を表す。これは、動的ムービングダイレオメーター又は同様の装置によって、本願では周波数が1Hzで歪が10%で測定される。タンジェントデルタ-「損失正接」としても知られている―は、損失弾性率(G’’)と貯蔵弾性率(G’)との比で与えられる位相角で、流体中での弾性の存在と大きさを表す。繰り返しになるが周波数1Hzで歪みが10%では、タンジェントデルタが1.0未満であるということは、弾性が支配的(つまり固体状)な挙動であることを示唆し、1よりも大きな値は、粘性が支配的(つまり液体状)な挙動であることを示唆している。
【0047】
引用されている密度範囲は、基部樹脂の結晶性と融点の点での最適を表す。融点の範囲は、封止材は低積層温度で融解可能であることを保証する。粘性値とタンジェントデルタ値は、標準的な積層条件下での封止体の加工性を反映する重要な値である。これらの特性を具体的な市販の樹脂の例は以下の例で与えられているが、当業者は、適切な材料データシートを調べることによって与えられる特性に基づいて他のものの選び方を知っている。本質的には、上述の特性を有するポリマーは要求された温度で積層可能である一方、これらの範囲から外れたパラメータを有するものは典型的には適切ではないことが示された。
【0048】
基部樹脂は、0.01phr~5phr、さらには最大20phrの濃度の架橋触媒と結合される。この触媒は、水源としてのホウ酸、メタロセン触媒、幾何拘束型触媒、可逆的連鎖移動型触媒、たとえばツィーグラー・ナッタ触媒若しくはフィリップス触媒又はシランと水によってポリオレフィン分子の架橋の触媒作用を起こすのに適した他の任意の型の触媒のようなマルチサイト触媒を含んでよい。前記水は環境中の水である、かつ/あるいは、たとえばホウ酸又は加熱されるときに水を解放するように分解する同様の化合物によって供されてよい。触媒は、粉末若しくは溶液として供されてよいし、あるいは、触媒マスターバッチ中のポリマーと既に取り込まれていてもよい。そのような触媒の他の例は、金属(たとえばコバルト、スズ、亜鉛、鉄、鉛等)カルボン酸、ジアルキルスズメルカプチド、オクタン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、スズアセテート、カプリル酸スズ、カプリル酸亜鉛、有機塩基―たとえばエチルアミン、ジブチルアミン、又はヘキシルアミン―、無機酸―たとえば硫酸―、又は有機酸―たとえばトルエンスルホン酸、ステアリン酸、及びマレイン酸―である。
【0049】
以降では、そのような触媒の調製について、具体的な形態に対して変化しない製造者の参照データによって再度参照する。よって再現性は当業者には保証される。
【0050】
他の添加剤―たとえば酸化防止剤、紫外吸収剤、及び/又は紫外安定剤は、濃度がたとえば0.1%~5%の封止体基部樹脂に加えられてよい。さらに封止体はさらなる添加剤として色素粒子をも含む。そのような粒子はたとえば、0.01~10phr又はwt%で、好適には0.1~5phr又はwt%、さらに好適には0.1~1phr又はwt%の濃度で存在してよく、かつ、100nm~1μmで、より顕著には300nm~700nmで、もっとも顕著には400nm~600nmの範囲のサイズを有してよい。好適には少なくとも50%、さらに好適には少なくとも75%、さらに好適には実質的にすべての色素粒子は設定されたサイズを有する。色素粒子は、封止体内の分子レベルで分散する着色剤又は既に着色された材料から作られる封止体とは明確に異なる離散的粒子であることに留意して欲しい。適切な色素の例として、酸化チタン又は酸化亜鉛粒子が、白色を生成するのに用いられてよい。黄色、オレンジ色、赤色、及び茶色は、鉄酸化物―赤褐色にはFe又は黄色にはFeO(OH)―を用いて生成され得る。青色は、たとえば硫黄含有ナトリウムシリケート複合体又はプルシアンブルーによって生成され得る。そのような色素粒子21は、所望の色を生成するようにPVデバイス1に入射する可視光の一部を吸収し、かつ、均一な色を供してPV変換デバイス15の様々な特徴を隠す光を拡散する。様々な特徴とはたとえば、PV変換デバイス15のパターニング、個々のセル間の電気的相互接続、個々のセルの端部、個々のセルと背面封止体17及び/又は背面シート19との間の色のズレなどである。
【0051】
試して成功した特定の既製品の色素のより詳細な例は以下の通りである。・ 赤:酸化鉄の赤色色素―たとえばスイスのショルツ色素(Scholz Farbpigmente Schweiz)のRot110M、BASFのSicocer(登録商標)F Coral2320。典型的な投入量は0.05~2phrである。・ 白:デュポンのDupont Ti-Pure R-900,R-960。典型的な投入量は0.1~1phrである。・ 黄:Ferro社のNubifer Y-4000。典型的な投入量は0.1~2phrである。・ 緑:Ferro社のPG17 S シリーズ、BASFのSicopal(登録商標)GREEN K 9610又は9710。典型的な投入量は0.05~2phrである。
【0052】
当然のこととして他の市販されている既製品の色素粒子も指摘している。そのような色素粒子には、亜鉛系色素(たとえば酸化亜鉛又はジンククロメート)、チタン系色素(たとえば酸化チタン又はチタンイエロー)、鉄系色素(たとえば酸化鉄又はプルシアンブルー)、クロム系色素(たとえば酸化クロム)、ビスマス系色素(たとえばバナジン酸ビスマス)、コバルト系色素(たとえばコバルトブルー)又はコバルトスズ酸塩又はコバルト/リチウム/チタン酸化物)アルミニウム系、色素(硫黄含有珪酸ナトリウム複合物)、スズ系色素(たとえば硫化スズ)又は銅系色素が含まれる。
【0053】
色素粒子21は、所望の色を生成するようにPVデバイス1に入射する可視光の一部を吸収し、かつ、均一な色を供してPV変換デバイス15の様々な特徴を隠す光を拡散する。様々な特徴とはたとえば、PV変換デバイス15のパターニング、個々のセル間の電気的相互接続、個々のセルの端部、個々のセルと背面封止体17及び/又は背面シート19との間の色のズレなどである。
【0054】
この散乱効果は、分子レベルで内部に分散する着色剤によって着色される前面封止体を単純に供するよりも特に有利である。なぜならそのような着色剤は、光の散乱がないことで光の透明度がはるかに大きくなることで、上述したPV変換素子7の様々な特徴を隠す。
【0055】
さらに散乱効果は、PV変換素子7の光入射面上のPVモジュール1内に含まれる従来の拡散素子と同様な方法で、前面封止体5を通過してPV変換素子7の光電的に活性な部分へ入射する光の拡散を容易にすることで、セルを通り抜ける光の平均光路長を増大させる。当然のこととして全体的な効率は、PVデバイスの光入射面へ向かうように反射すなわち後方に散乱される光に比例して減少する。
【0056】
色素粒子21のサイズは、IR光に敏感なPV変換素子5の赤外範囲内での透過率を増大させるように調節され得る。前面封止層5内での色素粒子のサイズと密度を最適化することによって、輝き、かすかな光、又は虹の効果を与える色素粒子21間での干渉が生じ得る。より具体的には、色素粒子のサイズと濃度、前面封止層等は、所望の色、光学効果、透過率、反射率等を実現するための上述の範囲内での通常の実験によって調整可能である。
【0057】
封止材の膜又は後で挽いて粉末にされる任意の他の便利な形態(たとえばシリンダ)を生成するように、基部樹脂と、色素粒子と、触媒(加えて任意の他の添加剤)の混合物は化合されて、その後90℃~190℃の温度で、好適には140℃~180℃の温度で、好適には160℃~180℃の温度で、好適には160℃~180℃の温度で、好適には165℃~180℃の温度で、たとえば二軸押出機又は他の形態の押出機によって押し出され得る。これは図4で概略的に表されている。図中、基部樹脂と触媒調製物(触媒粉末、溶液、又は、ポリマーと既に化合する触媒を含む触媒マスターバッチを含む)が混合され、化合され、押し出される。図5は、このプロセスの他の変化型を概略的に表している。図中、基部樹脂は、他の添加剤―たとえば紫外吸収剤、紫外安定化剤、及び/又は酸化防止剤―と混合及び化合され、その後押し出される。その結果得られた混合物は続いて、(上述した)触媒調製物と混合及び化合されて、押し出される。
【0058】
従来の押し出しプロセスによって、溶融物が固化する前に押し出し機内にとどまる時間が相対的に短くなることで、ポリマーの架橋が相対的に起こりにくいことが保証される。しかし一部は起こるだろうが問題にはならない。押し出し機内で過剰な架橋が起こっても、当業者は、通常の実験によって押し出しパラメータ(温度、押し出し圧、押し出し流量等)を容易に修正することでそのような問題を解決することができる。よってシート及び/又は粉末は、上述したように積層装置33内で層積層体31内に設けられ得る。熱及び圧力を加えることで、シランは、積層温度にて(たとえばホウ酸又は触媒の他の成分に由来し得る)水の存在下でポリマー分子を架橋することで、封止材料を硬化させて隣接層に結合させる。
【0059】
他の変化型では、基部樹脂と触媒以外の任意の添加剤は、上述の温度で化合されて、たとえばシリンダ又はストランドのような形状に押し出されて、その後粉末となるように挽かれる。図6で概略的に表されているように、この基部樹脂粉末は続いて、架橋剤(つまり触媒)材料を含む架橋材粉末又は液体(それ自体又は既にポリマーと化合しているもの)と、色素粒子と、任意でさらなる添加剤-酸化防止剤、紫外吸収剤、及び/又は紫外安定剤-と混合されてよい。この粉末は、1~1000μmで、好適には1~100μmの粒径を有してよい。その結果得られる粉末混合物は、本発明の封止材を構成する。図7で概略的に表されているこのプロセスのさらなる変化型では、基部樹脂(粉末、ペレット、又は任意の他の便利な形態であってよい)及び上述のさらなる添加剤は、最初に混合され、化合され、押し出される。得られた混合物はその後、粉末となるようにすりつぶされる。この後者の粉末は続いて、上述の粉末又は液体形態の架橋剤(ポリマー成分を含んでもよいし含まなくてもよい)と混合されて、封止材料粉末を構成する。
【0060】
この粉末混合物は続いて、上述の層積層体31内に設けられ、60℃から125℃で、好適には60℃から100℃で、さらに好適には70℃から90℃で熱が加えられ、かつ、圧力は0.5から2のバールゲージ圧力が加えられることで、これらの成分が軟化して結合するときに、触媒は基部樹脂と相互作用する。それにより押し出し前に触媒が基部樹脂に混合される場合と同じように基部樹脂のポリマーが架橋される。
【0061】
積層後、得られた封止体は、以下の修正された特性を有する。これらの修正された特性は、提供時に所望の強度及びクリープ耐性を供する。
【表2】
【0062】
その結果、全体プロセス中での封止材のレオロジー挙動は制御される。その結果、積層中での色素粒子と過剰材料のマイグレーションが防止される。色素粒子の凝集及び封止材の顕著な流れは回避される。その結果、モジュールの配色は均一となる。この理由は、封止体の粘性が全プロセス中で高いまま(≧4000Pa・sの複素粘性で、封止体のタンジェントデルタ値は1.2未満で、好適には1.0未満のまま)であることで、特に熱が加えられる積層の初期段階中でのこの色素粒子のマイグレーションを防止する。従来の積層のこの段階中では、封止体が硬化すべき時間になる前で粘性の値は典型的には相対的に低くなる。それにより、封止層の顕著な厚さのばらつきを生じさせる色素のマイグレーション及び凝集並びに過剰な材料の流れを許してしまっていた。特に低温積層と色素のマイグレーション及び過剰な材料の流れの回避との間でのこのような相乗効果は、予期せぬ技術的効果を与えることで、非常に均一なモジュールの配色を可能にする。
【0063】
色素を含まない多数の試験結果が下に再現されている。下記の試験結果は、本発明の方法が良好な低温積層の所望の結果を実現し、かつ、封止層の所望の機械的特定及びレオロジー特性を実現する材料の特定の組み合わせの具体例を与える。
【0064】
「例1」
【表3】
【0065】
表3はこの例の形態の詳細を記載している。表中、“phr”は100の樹脂当たりの部数に関する。酸化防止剤と紫外安定化剤は最初に、170℃で二軸押出機によって添加剤マスターバッチに調合された。続いて基部樹脂と、触媒マスターバッチと、添加剤マスターバッチとの混合物は、170℃で一軸押出機によって押し出されて厚さ0.5mmの膜にされた。押し出された膜は続いて、一連の評価段階で試験された。
【0066】
膜は最初に、標準的な平坦台型の真空バッグ積層装置内において65℃かつ合計60分のサイクル時間で、各々の厚さが3mmの2つのガラス板の間に積層された。結果得られた積層体には、気泡も他の視覚上の欠陥も存在しなかった。ホイルとガラスとの間での積層後剥離強度は、標準的な引っ張り試験装置によって実行される標準的な90°剥離試験によって10N/mmを超えると測定された。続いて積層されたガラス板は、85℃かつ相対湿度85%で標準的なクリープ試験を受けた。その結果、100時間後でもガラスの重さの下でクリープが起こっていないことが示された。これは15kg/mの積層体と等価である。
【0067】
「例2」
【表4】
【0068】
表4はこの例の形態の詳細を記載している。酸化防止剤、紫外吸収剤、及び紫外安定化剤は最初に、170℃で二軸押出機によって添加剤マスターバッチに調合された。続いて基部樹脂(表中に示された2つの異なる樹脂を50:50混合したものを含む)と、触媒マスターバッチと、添加剤マスターバッチとの混合物が、170℃で一軸押出機によって押し出されて厚さ0.5mmの膜にされた。続いて押し出された膜は、一連の評価段階で試験された。
【0069】
膜は最初に、標準的な平坦台型の真空バッグ積層装置内において85℃かつ合計60分のサイクル時間で、各々の厚さが3mmの2つのガラス板の間に積層された。その結果得られた積層体には、気泡も他の視覚上の欠陥も存在しなかった。ホイルとガラスとの間での積層後剥離強度は、上述の標準的な90°剥離試験によって5N/mmを超えると測定された。続いて積層されたガラス板は、85℃かつ相対湿度85%で標準的なクリープ試験を受けた。その結果、100時間後でもクリープが起こっていないことが示された。「例3」
【表5】
【0070】
表5はこの例の形態の詳細を記載している。酸化防止剤、紫外吸収剤、及び紫外安定化剤は最初に、170℃で二軸押出機によって添加剤マスターバッチに調合された。続いて基部樹脂と、触媒マスターバッチと、添加剤マスターバッチとの混合物が、170℃で一軸押出機によって押し出されて厚さ0.5mmの膜にされた。続いて押し出された膜は、一連の評価段階で試験された。
【0071】
膜は最初に、標準的な平坦台型の真空バッグ積層装置内において85℃かつ合計60分のサイクル時間で、各々の厚さが3mmの2つのガラス板の間に積層された。その結果得られた積層体には、気泡も他の視覚上の欠陥も存在しなかった。ホイルとガラスとの間での積層後剥離強度は、上述の標準的な90°剥離試験によって5N/mmを超えると測定された。続いて積層されたガラス板は、85℃かつ相対湿度85%で標準的なクリープ試験を受けた。その結果、100時間後でもクリープが起こっていないことが示された。
【0072】
「例4」
【表6】
【0073】
表6はこの例の形態の詳細を記載している。酸化防止剤及び紫外安定化剤は最初に、190℃で二軸押出機によって添加剤マスターバッチに調合された。続いて基部樹脂と、触媒マスターバッチと、添加剤マスターバッチとの混合物が、170℃で一軸押出機によって押し出されて厚さ0.5mmの膜にされた。続いて押し出された膜は、一連の評価段階で試験された。
【0074】
ホイル膜は最初に、標準的な平坦台型の真空バッグ積層装置内において85℃かつ合計60分のサイクル時間で、各々の厚さが3mmの2つのガラス板の間に積層された。その結果得られた積層体には、気泡も他の視覚上の欠陥も存在しなかった。ホイルとガラスとの間での積層後剥離強度は、上述の標準的な90°剥離試験によって10N/mmを超えると測定された。続いて積層されたガラス板は、85℃かつ相対湿度85%で標準的なクリープ試験を受けた。その結果、100時間後でもクリープが起こっていないことが示された。
【0075】
上述の結果が示すように、本発明の方法によって生成される封止材料は、従来よりも顕著に低い温度で積層可能でありながら、85℃での剥離強度及びクリープ耐性を維持する。その結果、従来の積層装置及び方法は、温度に敏感なPVセルを含むPVモジュールを1―たとえばペロブスカイト技術又は色素増感技術に基づくもの―一つにするのに用いることができる。
【0076】
色素の使用については、色素の存在は、生成されたモジュールの機械的特性に影響を及ぼさなかった。さらにアニーリング中、着色された封止体は、脱色も特性の変化も起こさなかった。その結果、色素と使用された封止体との間での具体的な相互の劣化機構(cross-degradation)は起こらなかったと結論付けられる。
【0077】
本発明によって生成された様々な試料の化学安定性及びUV安定性試験の結果は以下のように図8図10で報告される。
【0078】
図8は、標準的なQSun露光チャンバでの様々な等価露光時間で波長に対する反射率と透過率のグラフを表している。グラフでは、モジュールは図1によって構築され、1phrのTiO色素(デュポンのTi-Pure R-960、中央値の粒子サイズ:0.5μm)を含む厚さ0.8mmのポリオレフィン型前面封止体21(ポリジエン(Polidiemme) FE1252 EXP)が用いられた。前面シート厚さ2mmのガラス板だった。図からわかるように、任意の光の波長で最大6423時間の日光と等価な露光の反射率でも透過率でも変化はなかった。変化は単に測定のばらつきの範囲内だった。
【0079】
知覚された色の変化もCIE(1994)基準にしたがって測定された。
【表7】
【0080】
図からわかるように、ΔECIE94の値は非常に低く、長い露光時間にわたって実質的に一定(測定のばらつきの範囲内)のままである。実践的な意味では、色変化は観察されなかった。
【0081】
図9は、85℃かつ相対湿度85%にてIEC61215による1000時間の減衰熱暴露を施した図8の試料を表している。繰り返しになるが、どの波長でも透過率と反射率でほとんど差は観察されず、1000時間で0.62のΔECIE94の値が得られた。また繰り返しになるが実践的な意味で、色の変化は観察されなかった。
【0082】
図10は、図8のデータを生成するのに用いられたものと同様に赤色着色試料を表している。ただし色素は濃度が0.1phrの酸化鉄(粒子サイズの中央値が0.5μmのショルツ色素(Scholz Farbpigmente)のRot110M)でこれまでと同様の結果を与えた。ΔECIE94の値は以下の通りであった。
【表8】
【0083】
したがって繰り返しになるが、実践的な意味で、色変化は観察されなかった。
【0084】
最後に図11は、建築構造35の天井に載置される本発明による光電池モジュール1を表している。あるいはその代わりに、PVモジュール1は、外壁に載置されてよいし、あるいは、壁及び/又は天井の構造―たとえばクラッドとしての―に統合されてよい。一般的な意味では、PVモジュール1は、建築構造35上又は内部に載置され得る。
【0085】
本発明は具体的な実施形態で説明されてきたが、本発明の変化型は、「特許請求の範囲」で定義される本発明の技術的範囲から逸脱することなく可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止体によって相互に固定される第1層及び第2層を少なくとも備える光電池モジュールの製造方法であって、
積層装置を提供する段階と、
前記第1層を前記積層装置内に設ける段階と、
シラン修飾ポリオレフィンを含む融点が90℃未満の基部樹脂を提供する段階と、100の樹脂あたり0.01から20部の割合で存在する架橋触媒を含む添加剤と、色素粒子と、前記基部樹脂との混合物を生成する段階と、90℃から190℃の温度で前記混合物を融解する段階と、前記混合物を押し出して封止材を形成する段階と、によって前記第1層上に前記封止材を設ける段階と、
前記第2層を前記封止材上に設ける段階と、
前記基部樹脂を架橋するように、60℃から125℃の温度で加えられる熱と圧力を加えた状態で前記第1層、前記第2層、及び前記封止材を積層する積層段階と、を有し、
前記基部樹脂は、積層前では85℃で10000Pa・s超で、かつ、100℃で6000Pa・s超である複素粘性を有し、
前記基部樹脂は、積層前では85℃で1.0より大きく、かつ、100℃で1.2より大きなタンジェントデルタ値を示し、
前記積層段階後、前記封止材は、85℃で15000Pa・sよりも大きく、かつ、100℃で10000Pa・sよりも大きい複素粘性を示し、
前記積層段階後、前記封止材は、85℃で1.0未満で、かつ、100℃で1.2未満のタンジェントデルタ値を示す、
方法。
【請求項2】
前記封止材はシートとして押し出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記封止材は、押し出され、それに続いて前記第1層上に設けられる前に粉末となるように挽かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
封止体によって相互に固定される第1層及び第2層を少なくとも備える光電池モジュールの製造方法であって、
積層装置を提供する段階と、
前記第1層を前記積層装置内に設ける段階と、
前記第1層上に封止材を粉末状態で設ける段階であって、シラン修飾ポリオレフィンを含む融点が90℃未満の基部樹脂を粉末状態で提供する段階と、前記封止材中に100の樹脂あたり0.01から5部の割合で存在する架橋触媒を含む添加剤と、色素粒子と、前記基部樹脂粉末とを混合させて生成する混合物によって前記封止材を生成する段階と、によって実現される段階と、
前記第2層を前記封止材上に設ける段階と、
前記基部樹脂を架橋するように、60℃から125℃の温度で熱と圧力を加えた状態で前記第1層、前記第2層、及び前記封止材を積層する積層段階と、を有し、
前記基部樹脂は、積層前では85℃で10000Pa・s超で、かつ、100℃で6000Pa・s超である複素粘性を有し、
前記基部樹脂は、積層前では85℃で1.0より大きく、かつ、100℃で1.2より大きなタンジェントデルタ値を示し、
前記積層段階後、前記封止材は、85℃で15000Pa・sよりも大きく、かつ、100℃で10000Pa・sよりも大きい複素粘性を示し、
前記積層段階後、前記封止材は、85℃で1.0未満で、かつ、100℃で1.2未満のタンジェントデルタ値を示す、
方法。
【請求項5】
前記混合物はさらに、酸化防止剤、紫外吸収剤、紫外安定剤のうちの少なくとも一を含む他の添加剤を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒は、ホウ酸、メタロセン触媒、幾何拘束型触媒、可逆的連鎖移動型触媒、たとえばツィーグラー・ナッタ触媒又はフィリップス触媒のようなマルチサイト触媒のうちの1つ以上を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記色素粒子の少なくとも一部は、100nmから50μmの範囲の直径を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記色素粒子は、樹脂100部当たり0.01から10部の範囲の質量濃度で前記封止材内に供される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記色素粒子は、亜鉛系色素、チタン系色素、鉄系色素、クロム系色素、ビスマス系色素、コバルト系色素、アルミニウム系色素、スズ系色素、銅系色素のうちの少なくとも一を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】