(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102125
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】機能性フィルム、偏光板、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20240723BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240723BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240723BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240723BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240723BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240723BHJP
G02B 1/115 20150101ALI20240723BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/20 Z
G09F9/30 349E
G09F9/00 313
G02B1/115
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068478
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2022127418の分割
【原出願日】2018-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】管家 了
(72)【発明者】
【氏名】高地 清弘
(72)【発明者】
【氏名】石田 一敏
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 迅希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】大守 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】小川 智洋
(57)【要約】
【課題】ハードコート層と機能層との間の密着性および所望の光学特性の両立を実現可能
な機能性フィルムならびにこれを備えた偏光板および画像表示装置を提供する。
【解決手段】
本発明の一の態様によれば、バインダ樹脂13および複数の無機粒子14を含むハード
コート層12と、ハードコート層12の表面12Aに密着した機能層16とを備える機能
性フィルム10であって、ハードコート層12は、ハードコート層12の表面12Aから
深さ100nmまでの第1の領域R1内に無機粒子14の緻密度が60%以上の層状領域
を有し、ハードコート層12の表面12Aから100nmを超える第2の領域R2での無
機粒子14の緻密度が59%以下である、機能性フィルム10が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダ樹脂および複数の無機粒子を含むハードコート層と、前記ハードコート層の表面に密着した機能層とを備える機能性フィルムであって、
前記機能層が、無機層であり、
前記ハードコート層は、前記ハードコート層の前記表面から深さ100nmまでの第1の領域内に前記無機粒子の緻密度が60%以上の層状領域を有し、前記ハードコート層の前記表面から深さ100nmを超える第2の領域での前記無機粒子の緻密度が29%以上50%以下である、機能性フィルム。
【請求項2】
少なくとも一部の前記無機粒子が前記ハードコート層と前記機能層の界面に存在しており、前記無機粒子が前記機能層に密着している、請求項1に記載の機能性フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層は、前記第1の領域内に前記無機粒子の緻密度が70%以上の層状領域を有する、請求項1または2に記載の機能性フィルム。
【請求項4】
前記第2の領域における前記無機粒子の最大凝集度が、30%以下である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の機能性フィルム。
【請求項5】
前記無機粒子がシリカ粒子であり、前記ハードコート層が、前記第1の領域内に、SiとOの元素比率の合計が60%以上の第1の層状領域と、SiとOの元素比率の合計が60%未満の第2の層状領域とを含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の機能性フィルム。
【請求項6】
前記無機粒子が、異形粒子である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の機能性フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層の膜厚が、1μm以上である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の機能性フィルム。
【請求項8】
前記機能性フィルムの全光線透過率が、90%以上である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の機能性フィルム。
【請求項9】
前記ハードコート層における前記機能層側とは反対側に設けられた光透過性基材をさらに備える、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の機能性フィルム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の機能性フィルムと、
前記機能性フィルムの前記ハードコート層における前記機能層側とは反対側に設けられた偏光子と、
を備える、偏光板。
【請求項11】
ハードコートフィルムおよび前記ハードコートフィルムの表面に密着した無機層からなる機能層を備える機能性フィルムに用いられ、バインダ樹脂および複数の無機粒子を含むハードコート層を少なくとも備えるハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層の表面が、前記ハードコートフィルムの表面をなし、
前記ハードコート層は、前記ハードコート層の前記表面から深さ100nmまでの第1の領域内に前記無機粒子の緻密度が60%以上の部分を有し、前記ハードコート層の前記表面から深さ100nmを超える第2の領域での前記無機粒子の緻密度が29%以上50%以下である、ハードコートフィルム。
【請求項12】
前記無機粒子がSi元素を含み、前記ハードコート層が、前記第1の領域内に、SiとOの元素比率の合計が60%以上の第1の層状領域と、SiとOの元素比率の合計が60%未満の第2の層状領域とを含む、請求項11に記載のハードコートフィルム。
【請求項13】
前記ハードコート層は、前記第1の領域内に前記無機粒子の緻密度が70%以上の部分を有する、請求項11またはし12に記載のハードコートフィルム。
【請求項14】
前記第2の領域における前記無機粒子の最大凝集度が、30%以下である、請求項11ないし13のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項15】
前記無機粒子が、異形粒子である、請求項11ないし14のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項16】
前記ハードコート層の膜厚が、1μm以上である、請求項11ないし15のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項17】
前記機能性フィルムの全光線透過率が、90%以上である、請求項11ないし16のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項18】
前記ハードコート層における前記表面とは反対側の裏面側に設けられた光透過性基材をさらに備える、請求項11ないし17のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項19】
請求項11ないし18のいずれか一項に記載のハードコートフィルムと、
前記ハードコートフィルムの一方の面側に設けられた偏光子と、
を備える、偏光板。
【請求項20】
請求項1ないし9のいずれかに記載の機能性フィルム、請求項10または請求項19に記載の偏光板、あるいは請求項11ないし18のいずれか一項に記載のハードコートフィルムを備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性フィルム、偏光板、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の画像表示装置の画像表示面には、通常、傷付き防止や外光の反射
防止のために機能性フィルムが設けられている。機能性フィルムとしては、例えば、ハー
ドコート層と、ハードコート層に密着し、かつ反射防止機能等の所望の機能を有する機能
層とをこの順で備えているものがある(特許文献1~3参照)。
【0003】
ハードコート層は光学特性の調整、鉛筆硬度の確保等様々な理由により無機粒子を含む
場合がある。無機粒子の中でも、特にシリカ粒子がサイズの均一性、目的により利用でき
るバリエーションの多さの観点から多用されている。また、機能層としては、塗布法によ
って形成される樹脂を含む有機層あるいはスパッタリング法やCVD法等によって形成さ
れる無機層が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4913627号
【特許文献2】特許5700903号
【特許文献3】特許6054019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハードコート層上に機能層を備える機能性フィルムにおいては、ハードコート層と機能
層の界面が存在する。機能層が有機層の場合、有機層はハードコート層とは異なる機能を
発揮させるためにハードコート層とは異なる樹脂組成や内容物を有する。このため、一度
硬化させたハードコート層の上に有機層を形成すると、有機層のハードコート層に対する
密着性が悪化する場合が極めて多い。また、機能層が無機層の場合、ハードコート層と無
機層との界面は異種界面(有機/無機界面)となるので、機能層が有機層である場合に比
べて界面剥離が生じやすい。
【0006】
一方、画像表示装置は、これまでの屋内で主に使用されるテレビジョン以外にも屋外で
使用される場合のある携帯電話をはじめとするモバイル機器、より過酷な環境に曝される
車載用途へと用途展開が進み、必要とされる耐久性、信頼性はより高度なものになってい
る。そうした状況の中で特許文献1~3においては、ハードコート層の組成についての記
載があるが、ハードコート層と機能層の界面に関する記載がなく、機能層と良好な密着性
が得られるか不確実である。さらに、密着性を改善しようとすると、機能性フィルム中の
ハードコート層として所望の光学特性が得られないおそれがあるので、密着性と光学特性
の両立は、極めて困難である。なお、所望の光学特性とは、機能性フィルムの用途や設置
場所等によって異なる。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、ハードコート層と
機能層の間の密着性および所望の光学特性の両立を実現可能な機能性フィルムならびにこ
れを備えた偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。ハードコート層の表
面に機能層を形成したときにハードコート層と機能層の間の密着性および所望の光学特性
の両立を実現可能なハードコートフィルムならびにこれを備えた偏光板および画像表示装
置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様によれば、バインダ樹脂および複数の無機粒子を含むハードコート層
と、前記ハードコート層の表面に密着した機能層とを備える機能性フィルムであって、前
記ハードコート層は、前記ハードコート層の前記表面から深さ100nmまでの第1の領
域内に前記無機粒子の緻密度が60%以上の層状領域を有し、前記ハードコート層の前記
表面から深さ100nmを超える第2の領域での前記無機粒子の緻密度が59%以下であ
る、機能性フィルムが提供される。
【0009】
上記機能性フィルムにおいて、少なくとも一部の前記無機粒子が前記ハードコート層と
前記機能層の界面に存在しており、前記無機粒子が前記機能層に密着していてもよい。
【0010】
上記機能性フィルムにおいて、前記ハードコート層は、前記第1の領域内に前記無機粒
子の緻密度が70%以上の部分を有し、かつ前記第2の領域での前記無機粒子の緻密度が
50%以下であってもよい。
【0011】
上記機能性フィルムにおいて、前記第2の領域における前記無機粒子の最大凝集度が、
30%以下であってもよい。
【0012】
上記機能性フィルムにおいて、前記ハードコート層の膜厚が、1μm以上であってもよ
い。
【0013】
上記機能性フィルムにおいて、前記ハードコート層における前記機能層側とは反対側に
設けられた光透過性基材をさらに備えていてもよい。
【0014】
本発明の他の態様によれば、上記機能性フィルムと、前記機能性フィルムの前記ハード
コート層における前記機能層側とは反対側に設けられた偏光子と、を備える、偏光板が提
供される。
【0015】
本発明の他の態様によれば、バインダ樹脂および複数の無機粒子を含むハードコート層
を少なくとも備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコート層の表面が、前記
ハードコートフィルムの表面をなし、前記ハードコート層は、前記ハードコート層の前記
表面から深さ100nmまでの第1の領域内に前記無機粒子の緻密度が60%以上の部分
を有し、前記ハードコート層の前記表面から深さ100nmを超える第2の領域での前記
無機粒子の緻密度が59%以下である、ハードコートフィルムが提供される。
【0016】
上記ハードコートフィルムにおいて、前記無機粒子がSi元素を含み、前記ハードコー
ト層が、前記第1の領域内に、SiとOの元素比率の合計が60%以上の第1の層状領域
と、SiとOの元素比率の合計が60%未満の第2の層状領域とを含んでいてもよい。
【0017】
上記ハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層は、前記第1の領域内に前記
無機粒子の緻密度が70%以上の部分を有し、かつ前記第2の領域での前記無機粒子の緻
密度が50%以下であってもよい。
【0018】
上記ハードコートフィルムにおいて、前記第2の領域における前記無機粒子の最大凝集
度が、30%以下であってもよい。
【0019】
上記ハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層の膜厚が、1μm以上であっ
てもよい。
【0020】
上記ハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層における前記表面とは反対側
の裏面側に設けられた光透過性基材をさらに備えていてもよい。
【0021】
本発明の他の態様によれば、上記ハードコートフィルムと、前記ハードコートフィルム
の一方の面に設けられた偏光子と、を備える、偏光板が提供される。
【0022】
本発明の他の態様によれば、上記機能性フィルム、上記偏光板、または上記ハードコー
トフィルムを備える、画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一の態様によれば、ハードコート層と機能層との間の密着性および所望の光学
特性の両立を実現可能な機能性フィルムを提供することができる。本発明の他の態様によ
れば、ハードコート層の表面に機能層を形成したときにハードコート層と機能層の間の密
着性および光学特性の両立を実現可能なハードコートフィルムを提供することができる。
また、本発明の他の態様によれば、このような機能性フィルムまたはハードコートフィル
ムを備える偏光板および画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る機能性フィルムの概略構成図である。
【
図2】
図1に示される機能性フィルムの一部の拡大図である。
【
図3】実施形態に係る他の機能性フィルムの概略構成図である。
【
図5】実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
【
図6】実施例1に係る機能性フィルムにおけるハードコート層の断面の走査透過型電子顕微鏡写真である。
【
図7】実施例1に係る機能性フィルムにおける表計算ソフトウェアによって2値化処理された後の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る機能性フィルム、偏光板および画像表示装置について、
図面を参照しながら説明する。本明細書において、「フィルム」、「シート」等の用語は
、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、
「フィルム」はシートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。
図1は本実施形
態に係る機能性フィルムの概略構成図であり、
図2は
図1に示される機能性フィルムの一
部の拡大図であり、
図3は本実施形態に係る他の機能性フィルムの概略構成図である。図
4は本実施形態に係る偏光板の概略構成図であり、
図5は本実施形態に係る画像表示装置
の概略構成図である。
【0026】
<<<機能性フィルムおよびハードコートフィルム>>>
図1に示される機能性フィルム10は、光透過性基材11と、バインダ樹脂13および
複数の無機粒子14を含むハードコート層12とを備えるハードコートフィルム15と、
ハードコートフィルム15の表面15A(ハードコート層12の表面12A)に密着した
機能層16とをこの順で備えている。機能性フィルム10やハードコートフィルム15は
、光透過性基材11を備えているが、後述するように光透過性基材を備えていなくともよ
い。また、機能性フィルムやハードコートフィルムは、光透過性基材とハードコート層の
密着性を向上させるために、光透過性基材とハードコート層との間に樹脂を含む下地層を
さらに備えていてもよい。
【0027】
機能性フィルム10やハードコートフィルム15においては、用途によって異なるがヘ
イズ値が重要な要素とされる。光を透過させて使用される場合であって防眩性が必要とさ
れない場合には、一般にヘイズ値(全ヘイズ値)が、1.0%以下であることが好ましい
。このとき、機能性フィルム10やハードコートフィルム15のヘイズ値が1.0%以下
であれば、優れた透明性を得ることができる。この場合、機能性フィルム10やハードコ
ートフィルム15のヘイズ値は、0.9%以下であることがより好ましく、0.8%以下
であることが最も好ましい。一方、防眩性が必要とされる場合には、防眩性とヘイズ値の
バランスから必要となる値が異なる。具体的には、例えば、ヘイズ値は2%以上45%以
下の範囲であり、60°グロス値が20%以上130%以下の範囲で設計されることが多
い。ヘイズ値は高い方が防眩性が高くなる傾向があることが知られているが、単純に高け
れば防眩性を有するフィルムとして単純に好ましい訳ではなく、機能性フィルムやハード
コートフィルムの用途、設置場所等により目標値が異なるために一概に最適な範囲を決め
るのは困難である。
【0028】
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術研
究所製)を用いてJIS K7136:2000に準拠した方法により測定することがで
きる。上記ヘイズ値は、機能性フィルムを50mm×50mmの大きさに切り出した後、
カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で設置し、機能性フィルムやハードコート
フィルム1枚に対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。本明細
書における「3回測定する」とは、同じ場所を3回測定するのではなく、異なる3箇所を
測定することを意味するものとする。機能性フィルム10やハードコートフィルム15に
おいては、目視した表面10Aは平坦であり、かつハードコート層12等の積層する層も
平坦であり、また膜厚のばらつきも±10%の範囲内に収まる。したがって、切り出した
機能性フィルムの異なる3箇所でヘイズ値を測定することで、おおよその機能性フィルム
やハードコートフィルムの面内全体のヘイズ値の平均値が得られると考えられる。ヘイズ
値のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフ
ォン程度の大きさであっても、±10%以内である。なお、機能性フィルムを上記大きさ
に切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφで
あるので、直径21mm以上となるようなサンプル大きさが必要になる。このため、22
mm×22mm以上の大きさに機能性フィルムやハードコートフィルムを適宜切り出して
もよい。機能性フィルムやハードコートフィルムの大きさが小さい場合は、光源スポット
が外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。
【0029】
機能層フィルムやハードコートフィルムに粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィ
ルムが設けられている場合には、粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離し、さらに
粘着層または接着層の汚れをアルコールで良く拭き取ってから、ヘイズ値を測定するもの
とする。他のフィルムの剥離は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、機
能性フィルムやハードコートフィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積
層体をドライヤーで加熱し、機能性フィルムやハードコートフィルムと他のフィルムの界
面と思われる部位にカッターの刃先を入れて、ゆっくりと剥離していく。このような加熱
と剥離を繰り返すことで、粘着層や接着層および他のフィルムを剥離することができる。
なお、このような剥離工程があったとしても、ヘイズ値の測定には大きな影響はない。
【0030】
上記60°グロス値は、精密光沢計(製品名「GM-26D」、株式会社村上色彩技術
研究所製)を用いて、JIS Z8741:1997に準拠した方法により測定すること
ができる。上記60°グロス値は、機能性フィルムやハードコートフィルムを50mm×
50mmの大きさに切り出した後、機能性フィルムやハードコートフィルムの裏面を空気
吸引法により光沢の無い黒樹脂板に密着させた状態で精密光沢計に設置して測定するもの
とする。また、上記60°グロス値は、機能性フィルムやハードコートフィルム1枚に対
して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。
【0031】
機能性フィルム10やハードコートフィルム15においては、全光線透過率が、85%
以上であることが好ましい。機能性フィルム10やハードコートフィルム15の全光線透
過率が80%以上であれば、充分な光透過性を得ることができる。機能性フィルム10の
全光線透過率は、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好
ましい。
【0032】
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技
術研究所製)を用いてJIS K7361-1:1997に準拠した方法により測定する
ことができる。上記全光線透過率は、機能性フィルムやハードコートフィルムを50mm
×50mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で設
置し、機能性フィルムやハードコートフィルム1枚に対して3回測定し、3回測定して得
られた値の算術平均値とする。機能性フィルム10やハードコートフィルムにおいては、
目視した表面10Aは平坦であり、かつハードコート層12等の積層する層も平坦であり
、また膜厚のばらつきも±10%の範囲内に収まる。したがって、切り出した機能性フィ
ルムの異なる3箇所で全光線透過率を測定することで、おおよその機能性フィルムやハー
ドコートフィルムの面内全体の全光線透過率の平均値が得られると考えられる。全光線透
過率のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマート
フォン程度の大きさであっても、±10%以内である。なお、機能性フィルムやハードコ
ートフィルムを上記大きさに切り出せない場合には、22mm×22mm以上の大きさに
機能性フィルムを適宜切り出してもよい。機能性フィルムやハードコートフィルムの大き
さが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変える
などして測定点を3箇所にする。
【0033】
また、機能性フィルムやハードコートフィルムに粘着層や接着層を介して偏光板等の他
のフィルムが設けられている場合には、上記と同様の方法によって粘着層や接着層ととも
に他のフィルムを剥離してから、機能性フィルムの全光線透過率を測定する。なお、この
ような剥離工程があったとしても、全光線透過率の測定には大きな影響はない。
【0034】
機能性フィルム10の表面10A(機能層16の表面)やハードコートフィルム15の
表面15Aは、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験で測定
されたときの硬度(鉛筆硬度)が、B以上であることが好ましく、H以上であることがよ
り好ましい。鉛筆硬度試験は、50mm×50mmの大きさに切り出した機能性フィルム
やハードコートフィルムをガラス板上に折れやシワがないようニチバン株式会社製のセロ
テープ(登録商標)で固定し、鉛筆に1kgの荷重を加えるとともに、ひっかき速度を1
mm/秒とした状態で行うものとする。鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において機能性フィル
ムやハードコートフィルムの表面に傷が付かなかった最も高い硬度とする。なお、鉛筆硬
度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬
度試験を行い、5回のうち4回以上機能性フィルムやハードコートフィルムの表面に傷が
付かなかった場合には、この硬度の鉛筆においては機能性フィルムやハードコートフィル
ムの表面に傷が付かなかったと判断する。上記傷は、鉛筆硬度試験を行った機能性フィル
ムやハードコートフィルムの表面を蛍光灯下で透過観察して視認されるものを指す。
【0035】
機能性フィルム10やハードコートフィルム15の用途は、特に限定されないが、光学
フィルムとして機能する場合には、機能性フィルム10やハードコートフィルム15の用
途としては、例えば、ノートパーソナルコンピュータ等を含むパーソナルコンピュータ(
PC)、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、デジタルサイネージ、テ
レビジョン、カーナビゲーション等の画像表示装置が挙げられる。また、機能性フィルム
10は、包装材料としても用いてもよい。
【0036】
機能性フィルム10やハードコートフィルム15は、所望の大きさにカットされていて
もよいが、ロール状であってもよい。機能性フィルム10やハードコートフィルム15が
所望の大きさにカットされている場合、機能性フィルムやハードコートフィルムの大きさ
は、特に制限されず、用途(例えば、画像表示装置に用いられる場合には、画像表示装置
の表示面の大きさ)に応じて適宜決定される。具体的には、機能性フィルム10やハード
コートフィルム15の大きさは、例えば、2.8インチ以上500インチ以下となってい
てもよい。本明細書における「インチ」とは、機能性フィルムやハードコートフィルムが
四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕
円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、機能性
フィルムやハードコートフィルムが四角形状である場合、上記インチを求める際の機能性
フィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。
例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただ
し、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横
比に限定されない。また、機能性フィルム10やハードコートフィルム15の大きさが大
きい場合には、任意の位置からA5サイズ(148mm×210mm)に切り出した後、
各測定項目の大きさに切り出すものとする。
【0037】
<<光透過性基材>>
光透過性基材11は、光透過性を有する基材であれば、特に限定されず、例えば、ポリ
エステル系基材、アセチルセルロース系基材、シクロオレフィンポリマー基材、ポリエー
テルスルホン系基材、ポリカーボネート系基材、ポリアミド系基材、ポリイミド系基材、
ポリオレフィン系基材、アクリル系基材、ポリ塩化ビニル系基材、ポリ塩化ビニリデン系
基材、ポリスチレン系基材、ポリビニルアルコール系基材、ポリアリレート系基材、ポリ
フェニレンサルファイド系基材等が挙げられる。これらの中でも、複屈折由来の干渉縞抑
制およびハードコート層との密着性の観点から、アセチルセルロース系基材、アクリル系
基材が好ましい。光透過性基材11は、樹脂の他、添加剤等を含んでいてもよい。
【0038】
ポリエステル系基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ
プロピレンテレフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフ
タレートの少なくとも1種を構成成分とする基材等が挙げられる。
【0039】
アセチルセルロース系基材としては、例えば、トリアセチルセルロース系基材、ジアセ
チルセルロース系基材が挙げられる。トリアセチルセルロース系基材は、可視光域380
~780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な基材である。トリ
アセチルセルロース系基材の平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好
ましい。
【0040】
なお、トリアセチルセルロース系基材としては、純粋なトリアセチルセルロース以外に
、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロ
ースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用した物であってもよい。ま
た、これらトリアセチルセルロースには、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他の
セルロース低級脂肪酸エステルが添加されていてもよい。
【0041】
シクロオレフィンポリマー系基材としては、例えばノルボルネン系モノマーおよび単環
シクロオレフィンモノマー等の重合体からなる基材が挙げられる。シクロオレフィンポリ
マーの市販品としては、例えば、日本ゼオン社製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネ
ン系樹脂)、住友ベークライト社製のスミライトFS-1700、JSR社製のアートン
(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学社製のアペル(環状オレフィン共重合体)、Ti
cona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成社製のオプトレッツO
Z-1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
【0042】
ポリカーボネート系基材としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)
をベースとする芳香族ポリカーボネート基材、ジエチレングリコールビスアリルカーボネ
ート等の脂肪族ポリカーボネート基材等が挙げられる。
【0043】
アクリル系基材としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、ア
クリロニトリル、(メタ)アクリル酸、またはその誘導体等の単量体を重合して得られる
樹脂からなる基材が挙げられる。これらの中でも、透明性および耐候性の観点から、ポリ
メタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸メチル単位を主構成成分とする共重合体
、およびスチレン-メタクリル酸メチル共重合体が好ましい。
【0044】
光透過性基材11の厚みは、20μm以上200μm以下であることが好ましい。光透
過性基材11の厚みが、20μm以上であれば、しわが発生することなく、優れた鉛筆硬
度を有する機能性フィルムを得ることができ、また光透過性基材11の厚みが、200μ
m以下であれば、ロールで取り扱うことが可能な柔軟性が得られる。光透過性基材の厚み
は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、光透過性基材の断面を撮影し、その断面の画
像において光透過性基材の厚みを20箇所測定し、その20箇所の膜みの算術平均値を求
めることによって求めることができる。
【0045】
<<ハードコート層>>
ハードコートフィルム15においては、ハードコート層12の表面12Aがハードコー
トフィルム15の表面15Aとなっている。ハードコート層12は、バインダ樹脂13お
よび複数の無機粒子14を含む。ハードコート層12は、バインダ樹脂13および無機粒
子14の他、紫外線吸収剤、レベリング剤、シランカップリング剤等の成分を含んでいて
もよい。
【0046】
ハードコート層12は、単層構造となっているが、2層以上の多層構造であってもよい
。本明細書における「ハードコート層」とは、光透過性を有し、かつマルテンス硬さが1
00MPa以上の層を意味するものとする。本明細書において、「マルテンス硬さ」とは
、ナノインデンテーション法による硬度測定により、圧子を500nm押込んだときの硬
度である。上記ナノインデンテーション法によるマルテンス硬さの測定は、測定サンプル
においてHYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboInden
ter」を用いて行うものとする。具体的には、まず、1mm×10mmに切り出した機
能性フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な
切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm以上100nm以下の切片を切り
出す。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシス
テムズ株式会社)等を用いることができる。そして、この穴等がない均一な切片が切り出
された残りのブロックを測定サンプルとする。次いで、このような測定サンプルにおける
上記切片が切り出されることによって得られた断面において、以下の測定条件で、上記圧
子としてバーコビッチ圧子(三角錐)をハードコート層の断面中央に500nm押し込み
、一定保持して残留応力の緩和を行った後、除荷させて、緩和後の最大荷重を計測し、該
最大荷重Pmax(μN)と深さ500nmのくぼみ面積A(nm2)とを用い、Pma
x/Aにより、マルテンス硬さを算出する。マルテンス硬さは、10箇所測定して得られ
た値の算術平均値とする。
(測定条件)
・荷重速度:10nm/秒
・保持時間:5秒
・荷重除荷速度:10nm/秒
・測定温度:25℃
【0047】
ハードコート層12の膜厚は、1μm以上となっていることが好ましい。ハードコート
層12の膜厚が、1μm以上であれば、充分な硬度を維持することができる。ハードコー
ト層12の膜厚の下限は2μm以上であることがより好ましい。ハードコート層12の膜
厚の上限は、厚みが厚すぎることに起因する加工性の悪化を抑制する観点から、20μm
以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0048】
ハードコート層の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微
鏡(TEM)を用いて、ハードコート層の断面を撮影し、その断面の画像においてハード
コート層の膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の算術平均値とする。具体的な断
面写真の撮影方法を以下に記載する。まず、15mm×10mmに切り出した機能性フィ
ルムやハードコートフィルムを樹脂板に固定して、クロトームEM UC6(ライカ マ
イクロシステムズ株式会社製)でトリミング幅300μm、高さ80μmに切り出した後
、さらにDiATOME ダイヤモンドナイフ ULTRAにより厚さ方向に切削してい
き、穴等がない均一な、厚さ70nm以上100nm以下の切片を切り出す。切片の作製
には、ウルトラミクロトーム EM UC7(ライカ マイクロシステムズ株式会社)等を
用いてもよい。そして、この穴等がない均一な切片が切り出された残りのブロックを測定
サンプルとする。測定サンプルは、一般的に行われている樹脂に包含させる方法で作成し
てもよい。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800」、株式
会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影する。上記
S-4800を用いて断面写真を撮影する際には、検出器を「TE」、加速電圧を「5k
V」、エミッション電流を「10μA」にして断面観察を行う。倍率については、フォー
カスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000~
20万倍で適宜調節する。なお、上記S-4800を用いて断面写真を撮影する際には、
さらに、アパーチャーを「ビームモニタ絞り3」にし、対物レンズ絞りを「3」にし、ま
たW.D.を「8mm」にしてもよい。ハードコート層の膜厚を測定する際には、断面観
察した折に、ハードコート層と他の層(例えば、光透過性基材)との界面コントラストが
可能な限り明確に観察できることが重要となる。仮に、コントラスト不足でこの界面が見
え難い場合には、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処
理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、染色処理を行ってもよい。また、界面
のコントラストは高倍率である方が分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同
時に観察する。例えば、2.5万倍と5万倍や、5万倍と10万倍など、高低の2つの倍
率で観察し、両倍率で上記した算術平均値を求め、さらにその平均値をハードコート層の
膜厚の値とする。
【0049】
<バインダ樹脂>
バインダ樹脂13は、重合性化合物(硬化性化合物)の重合体(硬化物)を含む。重合
性化合物は、分子内に重合性官能基を少なくとも1つ有するものであり、電離放射線で重
合する電離放射線重合性化合物および熱で重合する熱重合性化合物のいずれであってもよ
い。重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等の
エチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロ
イル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、電離放射線として
は、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
【0050】
重合性化合物としては、上記第1の重合性モノマーに加えて、第2の重合性モノマー、
重合性オリゴマーおよび/または重合性プレポリマーを含んでいてもよい。
【0051】
第2の重合性モノマーとしては、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。上記多官能
(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト
ールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジ
ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ
)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロ
パントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート
、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオク
タ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソ
シアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエ
ステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノー
ルジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ
(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メ
タ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパ
ンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO、カプロラクトン等で変性したも
のが挙げられる。
【0052】
これらの中でも上述したマルテンス硬さを好適に満たし得ることから、3~6官能のも
のが好ましく、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタ
エリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレ
ート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメ
チロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)
アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0053】
なお、硬度や組成物の粘度調整等のために、第2の重合性モノマーは、多官能モノマー
の他、更に単官能(メタ)アクリレートモノマーを含んでいてもよい。上記単官能(メタ
)アクリレートモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
グリシジルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イ
ソステアリル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、アク
リロイルモルホリン、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、シクロ
ヘキシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、
フェノキシエチルアクリレート、およびアダマンチルアクリレート等が挙げられる。
【0054】
重合性オリゴマーまたは重合性プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート
、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ
)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アク
リレート等のオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。これら重合性オリゴマーまた
は重合性プレポリマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
上記第1の重合性モノマーや第2の重合性モノマーの重量平均分子量は、ハードコート
層の硬度を向上させる観点から、1000未満が好ましく、200以上800以下がより
好ましい。また、上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、1000以上2万以下であ
ることが好ましく、1000以上1万以下であることがより好ましく、2000以上70
00以下であることが更に好ましい。本明細書において、「重量平均分子量」は、テトラ
ヒドロフラン(THF)等の溶媒に溶解して、従来公知のゲルパーミエーションクロマト
グラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により得られる値である。
【0056】
バインダ樹脂13は、リン(P)元素を含むことが好ましい。バインダ樹脂13がリン
元素を含むことにより、バインダ樹脂13と無機粒子14との密着性を高めることができ
る。バインダ樹脂13にリン元素が含まれるか否かは、XPS(X-Ray Photo
electron Spectroscopy)、またはESCA(Electron
Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いるこ
とによって確認することができる。
【0057】
バインダ樹脂13がリン(P)元素を含む場合、ハードコート層12の表面12Aにお
ける元素比率は、リンが0.1%以上であることが好ましい。表面12Aの元素比率にお
いてリンが0.1%以上であれば、ハードコート層12と機能層16との密着性をさらに
向上させることができる。ハードコート層の第1の面における元素比率は、XPSまたは
ESCAによって求めることができる。上記元素比率におけるリンの下限は、0.3%以
上であることがより好ましく、上限は、塗工時のリンを含む成分の凝集によるヘイズ上昇
抑制の観点から、10%以下が好ましい。
【0058】
リン元素は、リン酸系モノマーを用いることによってバインダ樹脂13中に含有させる
ことができる。リン酸系モノマーは、リン酸基および重合性官能基を含んでいる。リン酸
系モノマーとしては、例えば、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エ
チレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジメチルホスフェートエチルアク
リレート、ジエチルホスフェートエチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルリ
ン酸、ビスアクリロイルオキシエチルホスフェート、トリスアクリロイルオキシエチルホ
スフェート、2-メタクリロイルオキシエチルリン酸、ビスメタクリロイルオキシエチル
ホスフェート、エトキシ化リン酸トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。リン酸系モノ
マーのリン酸基が無機粒子に水素結合により相互作用するとともに、リン酸系モノマーの
重合性官能基が重合性化合物と結合することによってバインダ樹脂13と無機粒子14と
の密着性を向上させることができるので、ハードコート層12と機能層16との間の界面
剥離をより抑制できる。
【0059】
<無機粒子>
ハードコート層12は、ハードコート層12の表面12Aから深さ100nmまでの第
1の領域R1(
図2参照)内に無機粒子14の緻密度が60%以上の層状領域(以下、こ
の領域を「高緻密層状領域」と称する。)を有し、ハードコート層12の表面12Aから
深さ100nm以上の第2の領域R2(
図2参照)で無機粒子14の緻密度が59%以下
となっている。本明細書における「無機粒子の緻密度」とは、第1の領域および第2の領
域の各領域においてハードコート層の膜厚方向と直交する方向にどの程度の緻密さで無機
粒子が存在しているかを表す指標である。したがって、第1の領域R1内の高緻密層状領
域における無機粒子14の緻密度が、第2の領域R2での無機粒子14の緻密度よりも高
くなっていることは、ハードコート層12の膜厚方向と直交する方向では、無機粒子14
は第2の領域R2よりも第1の領域R1内の高緻密層状領域の方が多く存在していること
を意味している。なお、後述するようにハードコート層の膜厚方向と直交する方向に並ぶ
複数のセルを1列とし、1列毎に無機粒子の緻密度を求めるので、第1の領域内の無機粒
子の緻密度が60%以上となる領域は、層状として現れる。ハードコート層12と機能層
16の間の密着性および所望の光学特性の両立をより高いレベルで実現する観点から、第
1の領域R1内の高緻密層状領域における無機粒子14の緻密度の最大値は70%以上で
あり、かつ第2の領域R2での無機粒子14の緻密度は50%以下であることが好ましい
。
【0060】
第1の領域における無機粒子の緻密度は、以下の方法によって求めることができる。ま
ず、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて倍率
3万倍~10万倍で撮影したハードコート層の断面の画像を画像処理ソフトウェア(製品
名「ImageJ」、米国国立衛生研究所製)で読み込み、セル毎に白黒2値化処理を行
う。このとき、2値化処理のピクセル数は640×480以上とすることが好ましい。T
EMまたはSTEMによる断面の画像においては、密度の高い無機粒子は電子線を透過し
にくいため黒色系になり、また無機粒子よりも密度の低いバインダ樹脂は白色系になる。
このため、2値化処理を行うと、無機粒子が黒色部として現れ、またバインダ樹脂が白色
部として現れる。白色部と黒色部の区分は全セルの値の平均値よりも白色側にある場合は
樹脂部分、黒色側にある場合は粒子部分とする。そして、2値化処理後の画像に現れてい
るセルのうち、ハードコート層の膜厚方向と直交する方向に並ぶ複数のセルを1列として
、1列に存在するセル毎に黒色部であるか白色部であるかを判断し、1列に存在するセル
の合計数に対する黒色部と判断されたセルの数の割合(%)を求める。第1の領域におい
ては、全域にわたり解析を行い、緻密度が60%以上となる部分があれば、第1の領域内
に高緻密層状領域が存在すると判断できる。なお、膜厚方向と直交する方向の1列として
は、必ずしも得られたTEM像やSTEM像の全幅について解析する必要は無く、十分な
解析精度が得られるセル数を含んでいればよい。具体的には100セル以上あれば高い精
度が得られる。
【0061】
第2の領域における無機粒子の緻密度も、第1の領域における無機粒子の緻密度と同様
に求めるが、第2の領域においては、深さが異なる箇所において少なくとも5列分の上記
割合を求めて、それらの算術平均値を求めることによって、第2の領域における無機粒子
の緻密度とする。
【0062】
無機粒子14の緻密度を求める際のSTEMによるハードコート層の断面写真の撮影方
法は、倍率以外は、ハードコート層の膜厚の欄に記載した断面写真の撮影方法と同様であ
る。
【0063】
上記2値化処理は、画像処理ソフトウェア(製品名「ImageJ」、米国国立衛生研
究所製)で行うが、具体的には、以下の手順によって行う。まず、上記ソフトウェアで断
面写真の画像を読み込み、表計算ソフトウェアのセル上に1ピクセルを1セルとして白黒
の諧調を数値として出力する。この時に白黒の諧調数は可能な限り多い方がよい。具体的
には128諧調以上ある状態で以降のデータ解析を行うことが好ましい。この白黒2値化
の処理は特定のソフトウェアによらず、表計算ソフトウェアのマクロ等により計算しても
問題ない。
【0064】
無機粒子14は、優れた硬度を得る観点から、シリカ粒子が好ましい。機能層16が無
機層である場合、
図2に示されるように、少なくとも一部の無機粒子14はハードコート
層12と機能層16の界面に存在して、機能層16に直接密着していることが好ましい。
界面に存在する無機粒子14が機能層16に直接密着することによって、無機粒子14と
機能層16との間の界面が無機/無機界面となるので、ハードコート層12と機能層16
との密着性をより向上させることができる。無機粒子がハードコート層と機能層との界面
に存在しているか否かは、ハードコート層の断面を走査透過型電子顕微鏡(STEM)や
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって確認することができる。なお、ハー
ドコート層の断面出しの手法としては、表面・界面切削試験装置(SAICAS)による
斜め切断やミクロトームによる切削等が利用できる。また、カッターやミクロトーム等に
よる切断で機能性フィルムの断面を出し、断面が出された状態の機能性フィルムに対して
キセノン耐侯試験機を用いて長時間試験環境で曝露させた後に追加で湿熱環境に晒したり
、またはアルコール等の溶媒を断面近傍に作用させることにより強制的に機能層を剥離し
、機能層を剥離した状態で無機粒子がハードコート層と機能層の界面に存在しているか観
察してもよい。
【0065】
ハードコート層12は、無機粒子14がSi元素を含み、第1の領域R1内に、Siと
Oの元素比率が60%以上の第1の層状領域と、SiとOの元素比率の合計が60%未満
の第2の層状領域とを含んでいることが好ましい。第1の領域R1内にSiとOの元素比
率の合計が60%以上の第1の層状領域を有していれば、ハードコート層12と機能層1
6との密着性をより向上させることができる。また、第1の領域R1内にSiとOの元素
比率の合計が60%未満の第2の層状領域を有していれば、無機粒子14が多すぎること
に起因する光学特性の低下をより抑制できる。第1の層状領域および第2の層状領域での
SiとOの元素比率は、走査型X線光電子分光装置(製品名「Quantum2000」
)、アルバック・ファイ株式会社製)を用いて、下記の測定条件で、ハードコート層を深
さ方向にエッチングするとともに深さ5nm毎にSiとOの元素比率をそれぞれ求めるこ
とによって、求められる。
(測定条件)
・X線条件:Al mono 200μmφ×30W 15kV、
・光電子取込角度:45°
・エッチング条件:2kV raster2×2
【0066】
第2の領域R2における無機粒子14の最大凝集度は、30%以下であることが好まし
い。第2の領域R2における無機粒子14の最大凝集度が、30%以下であれば、光学特
性の低下をより抑制できる。第2の領域R2における無機粒子14の最大凝集度は、20
%以下、10%以下であることがさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。本明細
書における「第2の領域における無機粒子の最大凝集度」とは、ハードコート層の断面を
観察した場合に第2の領域においてハードコート層の膜厚方向と直交する方向に所定の幅
で延びる部分を1列とし、1列に存在する無機粒子の全個数に対する、3個以上の無機粒
子と互いに隣接して塊状になっている無機粒子の個数の割合を1列における無機粒子の凝
集度として、この無機粒子の凝集度を複数列(例えば、任意の10列~30列)で求めた
とき、複数列で求めた無機粒子の凝集度の中で最も大きい凝集度を意味する。具体的には
、第2の領域R2における無機粒子14の最大凝集度は、以下のようにして求める。まず
、2値化処理後の画像に現れているセルのうち、ハードコート層の膜厚方向と直交する方
向に並ぶ複数のセルを1列とし、またセルが無機粒子の一次粒径の3倍以上の長さで連続
しているものを凝集状態と判断して、1列に存在するセルの合計数に対する無機粒子の一
次粒径の3倍以上の長さで連続しているセルの割合を求めて、1列の凝集度を算出する。
そして、この無機粒子の凝集度を複数列(例えば、任意の10列~30列)で求めて、複
数列で求めた無機粒子の凝集度の中で最も大きいものを最大凝集度とする。上記「一次粒
径」とは、複数ある無機粒子の直径、幅、奥行き、高さのうち最も小さい径のことを意味
する。
【0067】
無機粒子は、球形粒子であってもよいが、異形粒子であることが好ましい。球形粒子と
異形粒子とを混合させてもよい。上記異形粒子は、その表面積が球形粒子と比較して大き
いため、このような異形粒子を含有することで、上記重合性化合物との接触面積が大きく
なり、上記ハードコート層の硬度を向上させることができる。ハードコート層に含まれて
いる無機粒子が異形粒子であるか否かは、ハードコート層の断面を透過型電子顕微鏡(T
EM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察することによって確認することが
できる。なお、本明細書における「球形粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等の粒子
を意味し、また、「異形粒子」とは、ジャガイモ状(断面観察時のアスペクト比が1.2
以上40以下)のランダムな凹凸を表面に有する形状の粒子を意味する。
【0068】
無機粒子14の平均一次粒径は、5nm以上100nm以下であることが好ましい。無
機粒子14の平均一次粒径が5nm以上であれば、無機粒子を容易に製造することができ
、また100nm以下であれば、ハードコート層12に大きな凹凸が形成されることもな
い。無機粒子が球形粒子の場合には、無機粒子の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(T
EM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて倍率4万倍~20万倍で撮影し
た無機粒子の断面の画像から20個の無機粒子の一次粒径を測定し、20個の無機粒子の
一次粒径の算術平均値とする。また、無機粒子が異形粒子である場合には、無機粒子の平
均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を
用いて撮影したハードコート層の断面の画像から無機粒子の外周の2点間距離の最大値(
長径)と最小値(短径)とを測定し、平均して一次粒径を求め、20個の無機粒子の一次
粒径の算術平均値とする。
【0069】
無機粒子14の大きさ及び配合量を制御することでハードコート層12の硬度(マルテ
ンス硬さ)を制御できる。例えば、無機粒子14は直径が5nm以上100nm以下であ
る場合、無機粒子14の含有量は、上記重合性化合物100質量部に対して、25質量部
以上60質量部以下であることが好ましい。
【0070】
無機粒子としてシリカ粒子を用いる場合、シリカ粒子は、反応性シリカ粒子であっても
よい。上記反応性シリカ粒子は、上記重合性化合物との間で架橋構造を構成することが可
能なシリカ粒子であり、この反応性シリカ粒子を含有することで、ハードコート層12の
硬度を充分に高めることができる。
【0071】
上記反応性シリカ粒子は、その表面に反応性官能基を有することが好ましく、該反応性
官能基とてしては、例えば、上記の重合性官能基が好適に用いられる。
【0072】
上記反応性シリカ粒子としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、
例えば、特開2008-165040号公報記載の反応性シリカ粒子等が挙げられる。ま
た、上記反応性シリカ粒子の市販品としては、例えば、MIBK-SD、MIBK-SD
-MS、MIBK-SD-L、MIBK-SD-ZL(いずれも、日産化学工業株式会社
製)やV8802、V8803(いずれも、日揮触媒化成株式会社製)等が挙げられる。
【0073】
ハードコート層12は、無機粒子14とは別に、異なる目的で有機粒子をさらに含んで
いてもよい。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリアクリル-スチレ
ン共重合体粒子、メラミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポ
リスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒド粒
子、シリコーン粒子、フッ素系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子等が挙げられる。有機
粒子には、無機成分が混合されていてもよい。
【0074】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する機能を有している。紫外線吸収剤としては、特に限
定されないが、例えば、紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベ
ンゾフェノン系紫外線吸収剤、及び、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる
。
【0075】
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-
オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル
)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロ
ピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル
)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]
-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-
ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4
,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、および2-[4-
[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニ
ル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げら
れる。市販されているトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、TINUVIN46
0、477(いずれもBASFジャパン株式会社社製)等が挙げられる。
【0076】
<レベリング剤>
レベリング剤とは、ハードコート層12の表面張力が不均一となることによって生じる
、ハジキ、凹み、ピンホール、ユズハダ等の欠陥を防止し、表面を滑らかにする添加剤を
意味する。レベリング剤は、特に限定されないが、ポリエーテル基、ポリウレタン基、エ
ポキシ基、カルボキシル基、アクリレート基、メタクリレート基、カルビノール基又は水
酸基を有する化合物等が挙げられる。上記レベリング剤は、ポリエーテル基、ポリウレタ
ン基、エポキシ基、カルボキシル基、アクリレート基、メタクリレート基、カルビノール
基又は水酸基を主鎖の末端(片末端、両末端)に有していてもよく、側鎖に有していても
よく、主鎖の末端及び側鎖に有していてもよい。レベリング剤としては、ポリエーテル基
、ポリウレタン基、エポキシ基、カルボキシル基、アクリレート基、メタクリレート基、
カルビノール基又は水酸基を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、シリコー
ン系、フッ素系、シリコーン/フッ素混合系、アクリル系、メタクリル系、芳香族系のレ
ベリング剤を挙げることができる。
【0077】
市販されているシリコーン系レベリング剤としては、例えば、BYK-300、BYK
-302、BYK-306、BYK-307、BYK-320、BYK-325、BYK
-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-341、BYK
-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-377、BYK
-378、BYK-UV3500、BYK-3510、BYK-UV3570等(いれず
れも、ビックケミージャパン株式会社製)のポリエステル変性シリコーンオイルなどが挙
げられる。
【0078】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤は、反応性官能基および加水分解性基を有する有機ケイ素化合物
である。反応性官能基は、多官能電離放射線重合性化合物等と反応し得る基であり、反応
性官能基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アミ
ノ基、ウレイド基、チオール基、スルフィド基およびイソシアネート基からなる群から選
択される1種以上の官能基が挙げられる。
【0079】
加水分解性基は、加水分解でシラノール基(Si-OH)とアルコールを生じることの
可能な基であり、加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル
オキシ基、アルケニルオキシ基、カルバモイル基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシ
メート基等があげられる。加水分解性基が炭素原子を有する場合には、その炭素数は6以
下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。特に、炭素数4以下のアル
コキシ基またはアルケニルオキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが
特に好ましい。
【0080】
シランカップリング剤の具体例としては、例えば、3-メタクリロイルオキシプロピル
メチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-
メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロ
ピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げ
られる。市販されているシランカップリング剤としては、例えば、KBM-5103、K
BM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KR-513(いず
れも、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0081】
<<機能層>>
機能層16は、機能性フィルム10において、何らかの機能を発揮する層である。機能
層16は、有機層および無機層のいずれであってもよい。機能層16が有機層である場合
には、機能層16は塗布法によって形成することができ、また機能層16が無機層である
場合、スパッタリング法やCVD法等の蒸着法によって形成することができる。
【0082】
機能層16としては、特に限定されないが、例えば、密着性向上層、反射防止層、バリ
ア層、導電層、防眩層、帯電防止層、防汚層、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
図1に示される機能層16は、反射防止層となっている。機能層は、単層構造であっても
よいが、多層構造であってもよい。具体的には、
図1に示されるように、機能層16は、
密着性向上層17と反射防止層18から構成されていてもよい。なお、密着性向上層17
は、設けられていなくともよい。
【0083】
機能層16の膜厚は、10nm以上2μm以下となっていることが好ましい。機能層1
6の膜厚が、10nm以上であれば、所望の機能を発揮させることができ、また2μm以
下であれば、機能層16の成膜時の残留応力による破損や温度変化や湿度変化による膨張
率差による剥離などを抑制することができる。機能層16の膜厚の下限は20nm以上で
あることがより好ましく、上限は1μm以下であることがより好ましい。なお、機能層が
多層構造である場合には、機能層の膜厚は、各層の合計の膜厚とする。
【0084】
<密着性向上層>
密着性向上層17の膜厚は、15nm以下となっていることが好ましい。密着性向上層
17の膜厚が、15nm以下であれば、光学特性に影響なく密着性向上の効果をより得る
ことができる。密着性向上層の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または透過型
電子顕微鏡(TEM)を用いて1万~50万倍にて撮影された密着性向上層の断面写真か
らランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とする。
【0085】
密着性向上層17は、無機層となっている。具体的には、密着性向上層17は、SiN
x等の金属窒化物、あるいはSiOx(x=1~2)やCrOx(x=1~2)等の金属
酸化物から構成されている。
【0086】
密着性向上層17の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティ
ング法等の物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法を用いることができる
。密着性向上層17が無機系材料から構成されている場合には、密着性向上層の形成方法
としては、スパッタリング法もしくはCVD法が好適である。
【0087】
<反射防止層>
反射防止層18は、外光反射を抑制する機能を有する層である。反射防止層18は、無
機層となっている。反射防止層が多層構造となっている場合、反射防止層は、低屈折率層
、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の積層構造となっていてもよい。
【0088】
高屈折率層は、屈折率が、低屈折率層の屈折率よりも高い層であり、各層の屈折率は、
各層の欠片を切り出し等によりそれぞれ10個取り出し、取り出した10個の欠片におい
て、ベッケ法により各層の屈折率をそれぞれ測定し、測定した各層の屈折率の10個の平
均値として求めることができる。ベッケ法とは、屈折率が既知の屈折率標準液を用い、上
記欠片をスライドガラスなどに置き、そのサンプル上に屈折率標準液を滴下し、屈折率標
準液で欠片を浸漬し、その様子を顕微鏡観察によって観察し、強化部の表面と屈折率標準
液の屈折率が異なることによって各層の表面に生じる輝線(ベッケ線)が目視で観察でき
なくなる屈折率標準液の屈折率を、各層の屈折率とする方法である。
【0089】
低屈折率層の屈折率は、1.55以下であることが好ましい。低屈折率層の屈折率の下
限は、1.50以下であることがより好ましく、1.48以下であることがさらに好まし
い。高屈折率層の屈折率は、1.560以上2.50以下であってもよい。
【0090】
低屈折率層の膜厚は、20nm以上500nm以下であることが好ましい。高屈折率層
の膜厚は、20nm以上500nm以下であることが好ましい。低屈折率層や高屈折率層
の膜厚は、密着性向上層17の膜厚と同様の方法によって測定することができる。
【0091】
<バリア層>
バリア層は、水分や酸素の透過を抑制する機能を有する層である。バリア層の形成材料
としては、バリア性が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素や
酸化アルミニウム等の無機酸化物や金属等の無機系材料が挙げられる。
【0092】
バリア層の膜厚は、特に限定されないが、0.01μm以上1μm以下であることが好
ましい。バリア層の膜厚が0.01μm以上であれば、バリア層のバリア性能が十分に得
られ、また1μm以下であれば、バリア層のクラック等によりバリア性能の劣化を抑制で
きる。バリア層の厚みのより好ましい下限は0.03μm以上であり、より好ましい上限
は0.5μm以下である。
【0093】
バリア層の膜厚は、密着性向上層17の膜厚と同様の方法によって測定することができ
る。また、バリア層は、単一の層であってもよく、複数の層が積層されたものであっても
よい。バリア層が複数層積層されたものである場合、バリア層の膜厚はバリア層を構成す
る各層の膜厚の合計を意味する。
【0094】
バリア層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法等
の物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法を用いることができる。バリア
層が無機系材料から構成されている場合には、バリア層の形成方法としては、CVD法が
好適である。
【0095】
<導電層>
導電層は、導電性を有する層である。導電層は、例えば、無機系の光透過性導電性材料
、有機系の光透過性導電性材料、または無機系の光透過性導電性材料と有機系の光透過性
導電性材料との混合材料を含む。無機系の光透過性導電性材料としては、スズドープ酸化
インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛、酸化インジウ
ム(In2O3)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(
GZO)、酸化スズ、酸化亜鉛-酸化スズ系、酸化インジウム-酸化スズ系、酸化亜鉛-
酸化インジウム-酸化マグネシウム系などの金属酸化物やカーボンナノチューブ等が挙げ
られる。これらの中でも透明導電層における透明性と低抵抗の観点から、無機系の光透過
性導電性材料料としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)が好ましい。有機系の透
明導電性材料としては、導電性ポリマー等が挙げられる。
【0096】
導電層の膜厚は、15nm以上50nm以下とすることが好ましい。導電層の膜厚は、
密着性向上層17の膜厚と同様の方法によって測定することができる。
【0097】
導電層の形成方法は、特には限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレ
ーティング法等のPVD法、CVD法、塗工法、印刷法などを用いることができる。導電
層が無機系の光透過性導電性材料から構成されている場合には、導電層の形成方法として
は、PVD法が好適である。
【0098】
<<他の機能性フィルムやハードコートフィルム>>
図1に示される機能フィルム10やハードコートフィルム15は、光透過性基材11を
備えているが、機能性フィルムやハードコートフィルムは、光透過性基材を備えていなく
ともよい。例えば、
図3に示される機能性フィルム20は、バインダ樹脂13および複数
の無機粒子14を含むハードコート層12と、ハードコート層12の表面12Aに密着し
た機能層16とを備えているが、光透過性基材を備えていない。
図3の場合、ハードコー
トフィルムは、ハードコート層12のみから構成されている。なお、
図3において、
図1
と同じ符号が付されている部材は、
図1で示した部材と同じものであるので、説明を省略
するものとする。
【0099】
<<機能性フィルムやハードコートフィルムの製造方法>>
機能性フィルム10やハードコートフィルム15は、以下のようにして作製することが
できる。まず、光透過性基材11の一方の面上に、バーコーター等の塗布装置によって、
ハードコート層用組成物を塗布して、ハードコート層用組成物の塗膜を形成する。
【0100】
<ハードコート層用組成物>
ハードコート層用組成物は、ハードコート層12を形成するための重合性化合物および
無機粒子14を含んでいる。ハードコート層用組成物は、その他、必要に応じて、紫外線
吸収剤、レベリング剤、シランカップリング剤、溶剤、重合開始剤、有機粒子を含んでい
てもよい。
【0101】
(溶媒)
上記溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプ
ロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、
PGME、エチレングリコール、ジアセトンアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチ
ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプ
タノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジアセトンアルコール)、エステル(酢
酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、蟻酸メチル
、PGMEA)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水
素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベン
ゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、n-メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒ
ドロフラン)、エーテルアルコール(例、1-メトキシ-2-プロパノール)、カーボネ
ート(炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル)、等が挙げられる。これらの溶
媒、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。なかでも、上記溶媒とし
ては、ウレタン(メタ)アクリレート等の成分、並びに、他の添加剤を溶解或いは分散さ
せ、第1のハードコート層用組成物を好適に塗工できる点で、メチルイソブチルケトン、
メチルエチルケトンが好ましい。
【0102】
(重合開始剤)
重合開始剤は、電離放射線照射より分解されて、ラジカルを発生して重合性化合物の重
合(架橋)を開始または進行させる成分である。
【0103】
重合開始剤は、電離放射線照射によりラジカル重合を開始させる物質を放出することが
可能であれば特に限定されない。重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを用
いることができ、具体例には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラー
ベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェ
ノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、
光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n-ブチルア
ミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0104】
ハードコート層用組成物の塗膜を形成した後、各種の公知の方法で塗膜を、例えば30
℃以上120℃以下の温度で10秒間~120秒間加熱することにより乾燥させ、溶剤を
蒸発させる。
【0105】
塗膜を乾燥させた後、塗膜に紫外線等の電離放射線を照射して、塗膜を硬化(完全硬化
)させて、ハードコート層12を形成する。
【0106】
ハードコート層12を形成した後、ハードコート層12の表面をエッチングし、ハード
コートフィルム15を得る。具体的には、ハードコート層12の表面付近のバインダ樹脂
13を選択的にエッチングする。これにより無機粒子14が露出してもよい。バインダ樹
脂13を選択的にエッチングする方法としては、例えば、グロー放電処理、プラズマ処理
、イオンエッチング処理、アルカリ処理が挙げられる。ただし、密着性向上層の存在によ
り充分な密着が得られる場合には、エッチング工程を省略してもよい。
【0107】
ハードコート層12の表面12Aをエッチングした後、例えば、スパッタリング法等の
蒸着法によって、密着性向上層17および反射防止層18を形成して、機能層16を形成
する。これにより、機能性フィルム10が得られる。
【0108】
図3に示される光機能性フィルム20やハードコートフィルムは、離型フィルム上にハ
ードコート層12および機能層16を上記と同様の手順で形成し、機能層16の形成後、
離型フィルムを剥離することによって得られる。
【0109】
本実施形態によれば、第1の領域R1内に無機粒子14の緻密度が60%以上となる高
緻密層状領域が存在しているので、ハードコート層12においては、表面12A付近に無
機粒子14が多く存在している。このため、ハードコート層12の表面12Aにおいては
、特異的に無機物が多く占める状態となる。一般的には組成が類似した無機物同士は密着
性が良いため、機能層16が無機層である場合には、ハードコート層12はバインダ樹脂
13を含む層でありながら機能層16に対する密着性を良好な状態とすることができる。
また、機能層16が有機層である場合であっても、ハードコート層12はバインダ樹脂1
3を含む層であるので、機能層16に対する密着性を良好な状態とすることができる。こ
れにより、ハードコート層12と機能層16との密着性を向上させることができる。また
、第2の領域R2における無機粒子14の緻密度が59%以下となっているので、無機粒
子14が多すぎることに起因する光学特性の低下を抑制できる。これにより、ハードコー
ト層12と機能層16の間の密着性および所望の光学特性の両立を実現することができる
。
【0110】
<<<偏光板>>>
機能性フィルム10やハードコートフィルム15は、例えば、偏光板に組み込んで使用
することができる。なお、本実施形態においては、機能性フィルム10やハードコートフ
ィルム15は偏光子用の保護フィルムとして用いられているが、機能性フィルム10やハ
ードコートフィルム15の用途は特に限定されない。
【0111】
図4に示されるように偏光板30は、機能性フィルム10と、機能性フィルム10の光
透過性基材11におけるハードコート層12側の第1の面11Aとは反対側の第2の面1
1B側に設けられた偏光子31と、偏光子31における機能性フィルム10側とは反対側
に設けられた保護フィルム32とを備えている。保護フィルム32は位相差フィルムであ
ってもよい。
【0112】
偏光子31は、ヨウ素または二色性色素により染色し、一軸延伸させたポリビニルアル
コール系樹脂フィルムが上げられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビ
ニル系樹脂を鹸化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸
ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単
量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例え
ば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アン
モニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0113】
ポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性
されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等を用いることもできる。
【0114】
このような機能性フィルム10、ハードコートフィルム15や偏光板30は、例えば、
画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。
【0115】
<<<画像表示装置>>>
図5に示されるように、画像表示装置40は、主に、画像を表示するための表示パネル
40と、表示パネル50の背面側に配置されたバックライト装置60とを備えている。本
実施形態においては、表示パネル50が液晶表示パネルであるので、画像表示装置40は
バックライト装置60を備えているが、表示パネル(表示素子)の種類によってはバック
ライト装置60を備えていなくともよい。
【0116】
<<表示パネル>>
表示パネル50は、
図5に示されるように、バックライト装置60側から観察者側に向
けて、偏光板51、光透過性の粘着層52、表示素子53、光透過性の粘着層54、偏光
板30の順に積層された構造を有している。表示パネル50は、偏光板30を備えていれ
ばよく、偏光板51等は備えていなくともよい。
【0117】
偏光板51は、保護フィルム55、偏光子56、保護フィルム57をこの順に備えてい
るものである。保護フィルム55、57は、トリアセチルセルロースフィルム(TACフ
ィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルムから構成されている。偏光子56は、偏光
子21と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0118】
表示素子53は液晶表示素子である。ただし、表示素子53は液晶表示素子に限られず
、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、無機発光ダイオード、および/または量子
ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示素子であってもよい。液晶表示素子とし
ては、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置した公
知の液晶表示素子を用いることが可能である。
【0119】
<<バックライト装置>>
バックライト装置60は、表示パネル50の背面側から表示パネル50を照明するもの
である。バックライト装置60としては、公知のバックライト装置を用いることができ、
またバックライト装置60はエッジライト型や直下型のバックライト装置のいずれであっ
てもよい。
【実施例0120】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの
記載に限定されない。
【0121】
下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物を得た。
(ハードコート層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの
混合物(モノマー、製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):
27.4質量部
・イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(モノマー、製品名「M-313」
、東亞合成株式会社製):25.0質量部
・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマー25%溶液(トルエン:アノン=9:1
溶液、製品名「HRAGアクリル」、DNPファインケミカル株式会社製):12.0重
量部
・シリカ粒子(BET法測定による粒径25nm、製品名「ELECOM V8803-
25」、日揮触媒化成株式会社製):37.5質量部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacur
e(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製):6.5質量部
・重合開始剤(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-
1-オン、製品名「Irgacure(登録商標)907」、BASFジャパン株式会社
製):1.5質量部
・トルエン(溶媒、製品名「トルオール」、DICグラフィック株式会社製):108.
2質量部
・シクロヘキサノン(溶媒、製品名「アノン」、山一化学工業株式会社製):24.5質
量部
・ノルマルブタノール:37.0質量部
・メチルイソブチルケトン(溶媒、製品名「4-メチルn-2-ペンタノン」、関東化学
株式会社製):36.9質量部
【0122】
(ハードコート層用組成物2)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの
混合物(モノマー、製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):
37.5質量部
・イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(モノマー、製品名「M-313」
、東亞合成株式会社製):25.0質量部
・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマー25%溶液(トルエン:アノン=9:1
溶液、製品名「HRAGアクリル」、DNPファインケミカル株式会社製):12.0重
量部
・シリカ粒子(BET法測定による粒径25nm、製品名「ELECOM V8803-
25」、日揮触媒化成株式会社製):37.5質量部
・有機粒子(製品名「504TNR」、積水化成品工業株式会社製):2.2質量部
・有機粒子(粒径3.5μm、製品名「ソリオスターRA-E35FX」、株式会社日本
触媒製):9.5質量部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacur
e(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製):6.5質量部
・重合開始剤(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパ
ン-1-オン(製品名「Irgacure(登録商標)907」、BASFジャパン株式
会社製):1.5質量部
・トルエン(溶媒、製品名「トルオール」、DICグラフィック株式会社製):108.
2質量部
・シクロヘキサノン(溶媒、製品名「アノン」、山一化学工業株式会社製):24.5質
量部
・ノルマルブタノール:37.0質量部
・メチルイソブチルケトン(溶媒、製品名「4-メチルn-2-ペンタノン」、関東化学
株式会社製):36.9質量部
【0123】
(ハードコート層用組成物3)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの
混合物(モノマー、製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):
48質量部
・イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(モノマー、製品名「M-313」
、東亞合成株式会社製):32.0質量部
・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマー25%溶液(トルエン:アノン=9:1
溶液、製品名「HRAGアクリル」、DNPファインケミカル株式会社製):12.0重
量部
・シリカ粒子(BET法測定による粒径25nm、製品名「ELECOM V8803-
25」、日揮触媒化成株式会社製):30.0質量部
・有機粒子(製品名「504TNR」、積水化成品工業株式会社製):2.2質量部
・有機粒子(粒径3.5μm、製品名「ソリオスターRA-E35FX」、株式会社日本
触媒製):9.5質量部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacur
e(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製):6.5質量部
・重合開始剤(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパ
ン-1-オン(製品名「Irgacure(登録商標)907」、BASFジャパン株式
会社製):1.5質量部
・トルエン(溶媒、製品名「トルオール」、DICグラフィック株式会社製):108.
2質量部
・シクロヘキサノン(溶媒、製品名「アノン」、山一化学工業株式会社製):24.5質
量部
・ノルマルブタノール:37.0質量部
・メチルイソブチルケトン(溶媒、製品名「4-メチルn-2-ペンタノン」、関東化学
株式会社製):36.9質量部
【0124】
(ハードコート層用組成物4)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの
混合物(モノマー、製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):
35.0質量部
・イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(モノマー、製品名「M-313」
、東亞合成株式会社製):25.0質量部
・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマー25%溶液(トルエン:アノン=9:1
溶液、製品名「HRAGアクリル」、DNPファインケミカル株式会社製):12.0重
量部
・シリカ粒子(BET法測定による粒径25nm、製品名「ELECOM V8803-
25」、日揮触媒化成株式会社製):40.0質量部
・有機粒子(製品名「504TNR」、積水化成品工業株式会社製):2.2質量部
・有機粒子(粒径3.5μm、製品名「ソリオスターRA-E35FX」、株式会社日本
触媒製):9.5質量部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacur
e(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製):6.5質量部
・重合開始剤(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパ
ン-1-オン(製品名「Irgacure(登録商標)907」、BASFジャパン株式
会社製):1.5質量部
・トルエン(溶媒、製品名「トルオール」、DICグラフィック株式会社製):108.
2質量部
・シクロヘキサノン(溶媒、製品名「アノン」、山一化学工業株式会社製):24.5質
量部
・ノルマルブタノール:37.0質量部
・メチルイソブチルケトン(溶媒、製品名「4-メチルn-2-ペンタノン」、関東化学
株式会社製):36.9質量部
【0125】
(ハードコート層用組成物5)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの
混合物(モノマー、製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):
37.5質量部
・イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(モノマー、製品名「M-313」
、東亞合成株式会社製):25.0質量部
・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマー25%溶液(トルエン:アノン=9:1
溶液、製品名「HRAGアクリル」、DNPファインケミカル株式会社製):12.0重
量部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacur
e(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製):6.5質量部
・重合開始剤(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパ
ン-1-オン(製品名「Irgacure(登録商標)907」、BASFジャパン株式
会社製):1.5質量部
・トルエン(溶媒、製品名「トルオール」、DICグラフィック株式会社製):108.
2質量部
・シクロヘキサノン(溶媒、製品名「アノン」、山一化学工業株式会社製):24.5質
量部
・ノルマルブタノール:37.0質量部
・メチルイソブチルケトン(溶媒、製品名「4-メチルn-2-ペンタノン」、関東化学
株式会社製):36.9質量部
【0126】
(ハードコート層用組成物6)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの
混合物(モノマー、製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):
6.9質量部
・反応性ポリマー(製品名「ヒタロイド7988」、日立化成株式会社製):26.6質
量部
・シリカ粒子分散液(BET法測定による粒径40nm~50nm、固形分30質量%、
分散媒イソプロパノール(MIBK)、製品名「MIBK-ST-L」、日産化学工業株
式会社製):25.3質量部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacur
e(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製):4.6質量部
・メチルイソブチルケトン(溶媒、製品名「4-メチルn-2-ペンタノン」、関東化学
株式会社製):36.9質量部
・γ-ブチルラクトン(製品名「γ-ブチルラクトン」、三菱科学株式会社製):3.8
質量部
【0127】
(ハードコート層用組成物7)
・多官能ウレタンアクリレート(製品名「KAYARAD DPHA-40H」、日本化
薬株式会社製):186質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(製品名「A-TMM-3L」、新中村化学工
業株式会社製):167質量部
・ポリマーアクリレート(製品名「BS371」、荒川化学工業株式会社製):246質
量部
・2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(製品名「ライトエステルP-1M
」、共栄社化学株式会社製):27質量部
・シリカ粒子分散液(BET法測定による粒径40~50nm、固形分30質量%、分散
媒メチルイソブチルケトン(MIBK)、製品名「MIBK-SD-L」、日産化学工業
株式会社製):889質量部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacur
e(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製):36質量部
・シリコーン系レベリング剤(製品名「BYK-377」、ビックケミージャパン株式会
社製):0.6質量部
・トリアジン系紫外線吸収剤(製品名「Tinuvin477」、BASFジャパン株式
会社製):11質量部
・シランカップリング剤(製品名「KR-513」、信越化学工業株式会社製):43質
量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、株式会社DNPファイン
ケミカル製):370質量部
・酢酸ブチル(溶剤、株式会社DNPファインケミカル製):75質量部
・シクロヘキサノン(溶剤、株式会社DNPファインケミカル製):352質量部
【0128】
下記に示す組成となるように各成分を配合して、下地層用組成物を得た。
(下地層用組成物1)
・多官能ウレタンアクリレート(製品名「KAYARAD DPHA-40H」、日本化
薬株式会社製):98質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(製品名「A-TMM-3L」、新中村化学工
業株式会社製):88質量部
・ポリマーアクリレート(製品名「BS371」、荒川化学工業株式会社製):129質
量部
・2-ヒドロキシエチルメタクリレート(製品名「2-ヒドロキシエチルメタクリレート
」、東京化成株式会社製):270質量部
量部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacur
e(登録商標)184」、BASFジャパン株式会社製):36質量部
・シリコーン系レベリング剤(製品名「BYK-377」、ビックケミージャパン株式会
社製):0.6質量部
・トリアジン系紫外線吸収剤(製品名「Tinuvin477」、BASFジャパン株式
会社製):11質量部
・シランカップリング剤(製品名「KR-513」、信越化学工業株式会社製):43質
量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、株式会社DNPファイン
ケミカル製):300質量部
・酢酸ブチル(溶剤、株式会社DNPファインケミカル製):102質量部
・シクロヘキサノン(溶剤、株式会社DNPファインケミカル製):285質量部
・γ-ブチロラクトン(溶剤、三菱ケミカル株式会社製):151質量部
【0129】
<実施例1>
まず、光透過性基材としての厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(製品名
「TD80UL」、富士フイルム株式会社製)を準備し、このトリアセチルセルロースフ
ィルムの一方の面に、ハードコート層組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成
した塗膜に対して、70℃の乾燥空気を60秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中
の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を
硬化させることにより、膜厚5μmのハードコート層を形成した。
【0130】
ハードコート層を形成した後、ハードコート層の表面に処理強度80W・min/m2
でグロー放電処理を行った。これにより、ハードコートフィルムを得た。
【0131】
走査透過型電子顕微鏡(STEM)で撮影したハードコート層の断面写真から、ハード
コート層中のシリカ粒子の形状を確認したところ、球形であり、またハードコート層中の
シリカ粒子の平均一次粒径を測定したところ、25nmであった。シリカ粒子の平均一次
粒径は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて倍率4万倍~20万倍で撮影したシ
リカ粒子の断面の画像から20個のシリカ粒子の粒径を測定し、20個のシリカ粒子の粒
径の算術平均値とした。また、ハードコート層の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STE
M)を用いて、ハードコート層の断面を撮影し、その断面の画像においてハードコート層
の膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の算術平均値とした。
【0132】
走査透過型電子顕微鏡(STEM)によるハードコート層の断面写真は、以下のように
して撮影された。まず、15mm×10mmの大きさに切り出したハードコートフィルム
を樹脂板上に固定して、ミクロトームEM UC6(ライカ マイクロシステムズ株式会
社製)でトリミング幅300μm、高さ80μmに切り出した後、さらにDiATOME
ダイヤモンドナイフ ULTRAにより厚さ方向に切削していき、穴等がない均一な、
厚さ80nmの切片を切り出した。そして、この穴等がない均一な切片を測定サンプルと
した。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800」、株式会社
日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影した。上記S-4
800を用いて断面写真を撮影する際には、検出器を「TE」、加速電圧を「30kV」
、エミッション電流を「10μA」にして断面観察を行った。倍率については、フォーカ
スを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら4万倍~10
万倍で適宜調節した。なお、上記S-4800を用いて断面写真を撮影する際には、さら
に、「ビームモニタ絞りを「3」にし、対物レンズ絞りを「3」にし、またW.D.を「
8mm」にした。なお、他の実施例および比較例も、実施例1と同様の方法によってシリ
カ粒子の形状の確認、また平均一次粒径およびハードコート層や機能層の膜厚を測定した
。
【0133】
<実施例2>
実施例2においては、ハードコート層用組成物1の代わりにハードコート層用組成物2
を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0134】
<実施例3>
実施例3においては、ハードコート層用組成物1の代わりにハードコート層用組成物3
を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0135】
<実施例4>
実施例4においては、ハードコート層用組成物1の代わりにハードコート層用組成物4
を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0136】
<実施例5>
実施例5においては、乾燥温度を50℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてハー
ドコートフィルムを得た。
【0137】
<実施例6>
まず、実施例1で得られたハードコートフィルムの表面(ハードコート層の表面)にス
パッタリング法により膜厚5nmのSiOx(x=1~2未満)からなる密着性向上層を
形成した。さらに、密着性向上層の表面にスパッタリング法により反射防止層を形成し、
これにより密着性向上層および反射防止層からなる機能層を形成し、機能性フィルムを得
た。反射防止層は下側から順に、Nb2O5からなる膜厚20nmの高屈折率層、SiO
2からなる膜厚35nmの低屈折率層、Nb2O5からなる膜厚35nmの高屈折率層、
およびSiO2からなる膜厚100nmの低屈折率層からなる多層構造であった。なお、
高屈折率層および低屈折率層の屈折率をベッケ法で測定したところ、高屈折率層の屈折率
は2.3であり、低屈折率層の屈折率は1.48であった。
【0138】
<実施例7>
実施例7においては、実施例2で得られたハードコートフィルムの表面に、実施例6と
同様の手法によって密着性向上層および反射防止層からなる機能層を形成して、機能性フ
ィルムを得た。
【0139】
<実施例8>
実施例8においては、実施例3で得られたハードコートフィルムの表面に、実施例6と
同様の手法によって密着性向上層および反射防止層からなる機能層を形成して、機能性フ
ィルムを得た。
【0140】
<実施例9>
実施例9においては、実施例4で得られたハードコートフィルムの表面に、実施例6と
同様の手法によって密着性向上層および反射防止層からなる機能層を形成して、機能性フ
ィルムを得た。
【0141】
<実施例10>
実施例10においては、実施例5で得られたハードコートフィルムの表面に、実施例6
と同様の手法によって密着性向上層および反射防止層からなる機能層を形成して、機能性
フィルムを得た。
【0142】
<比較例1>
比較例1においては、ハードコート層用組成物1の代わりにハードコート層用組成物5
を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0143】
<比較例2>
比較例2においては、ハードコート層用組成物1の代わりにハードコート層用組成物6
を用い、またトリアセチルセルロースフィルムの代わりに厚さ40μmのアクリル樹脂フ
ィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0144】
<比較例3>
まず、基材としての厚さ40μmのアクリル樹脂フィルムを準備し、このアクリル樹脂
フィルムの一方の面に、下地層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した
塗膜に対し、70℃の乾燥空気を60秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤
を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化さ
せることにより、膜厚4μmの下地層を形成した。
【0145】
下地層を形成した後、下地層の表面に、ハードコート層組成物7を塗布し、塗膜を形成
した。次いで、形成した塗膜に対して、70℃の乾燥空気を60秒間流通させて乾燥させ
ることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるよ
うに照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚5μmのハードコート層を形成した。
【0146】
<比較例4>
比較例4においては、比較例1で得られたハードコートフィルムの表面に、実施例6と
同様の手法によって密着性向上層および反射防止層からなる機能層を形成して、機能性フ
ィルムを得た。
【0147】
<比較例5>
比較例5においては、比較例2で得られたハードコートフィルムの表面に、実施例6と
同様の手法によって密着性向上層および反射防止層からなる機能層を形成して、機能性フ
ィルムを得た。
【0148】
<比較例6>
比較例6においては、比較例3で得られたハードコートフィルムの表面に、実施例6と
同様の手法によって密着性向上層および反射防止層からなる機能層を形成して、機能性フ
ィルムを得た。
【0149】
<シリカ粒子の緻密度>
実施例および比較例に係るハードコートフィルムおよび機能性フィルムにおいて、ハー
ドコート層におけるハードコート層の表面から深さ100nmまでの第1の領域と、ハー
ドコートの表面から深さ100nm以上の第2の領域において、それぞれシリカ粒子の緻
密度を測定した。具体的には、第1の領域におけるシリカ粒子の緻密度は、以下の方法に
よって求めた。まず、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800」、株
式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて倍率3万倍~10万倍で撮影したハードコー
ト層の断面の画像(
図6参照)を画像処理ソフトウェア(製品名「ImageJ」、米国
国立衛生研究所製)で読み込み、セル毎に白黒2値化処理を行った。このとき、2値化処
理のピクセル数は640×480以上とした。STEMによる断面の画像においては、密
度の高いシリカ粒子は電子線を透過しにくいため黒色系になり、またシリカ粒子よりも密
度の低いバインダ樹脂は白色系になった。このため、2値化処理により、シリカ粒子が黒
色部として現れ、またバインダ樹脂が白色部として現れた。白色部と黒色部の区分は全セ
ルの値の平均値よりも白色側にある場合は樹脂部分、黒色側にある場合は粒子部分とした
。そして、2値化処理後の画像に現れているセルのうち、ハードコート層の膜厚方向と直
交する方向に並ぶ複数のセルを1列として、1列に存在するセル毎に黒色部であるか白色
部であるかを判断し、1列に存在するセルの合計数に対する黒色部と判断されたセルの数
の割合(%)を求めた。第1の領域においては、全域にわたり解析を行い、シリカ粒子の
緻密度の最大値を求めた。第2の領域におけるシリカ粒子の緻密度も、第1の領域におけ
るシリカ粒子の緻密度と同様に求めるが、第2の領域においては、深さが異なる箇所にお
いて5列分の上記割合を求めて、それらの算術平均値を求めることによって、第2の領域
におけるシリカ粒子の緻密度とした。
【0150】
STEMによるハードコート層の断面写真は、以下の方法によって撮影された。まず、
15mm×10mmの大きさに切り出したハードコートフィルムや機能性フィルムを樹脂
板上に固定して、ミクロトームEM UC6(ライカ マイクロシステムズ株式会社製)
でトリミング幅300μm、高さ80μmに切り出した後にさらに、DiATOME ダ
イヤモンドナイフ ULTRAにより厚さ方向に切削していき、穴等がない均一な、厚さ
80nmの切片を切り出した。その後、STEM(製品名「S-4800」、株式会社日
立ハイテクノロジーズ製)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影した。上記S-48
00を用いて断面写真を撮影する際には、検出器を「TE」、加速電圧を「30kV」、
エミッション電流を「10μA」にして断面観察を行った。倍率については、フォーカス
を調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら4万倍~15万
倍で適宜調節した。また、上記S-4800を用いて断面写真を撮影する際には、さらに
、「ビームモニタ絞りを「3」にし、対物レンズ絞りを「3」にし、またW.D.を「8
mm」にした。
【0151】
上記2値化処理は、画像処理ソフトウェア(製品名「ImageJ」、米国国立衛生研
究所製)で行うが、具体的には、以下の手順によって行った。まず、上記ソフトウェアで
断面写真の画像を読み込み、表計算ソフトウェアのセル上に1ピクセルを1セルとして白
黒の諧調を数値として出力した(
図7参照)。諧調数は、255とした。なお、
図6は実
施例1に係る機能性フィルムにおけるハードコート層の断面の走査透過型電子顕微鏡写真
であり、
図7は実施例1に係るハードコートフィルムにおける表計算ソフトウェアによっ
て2値化処理された後の画像である。
【0152】
<第2の領域のシリカ粒子の最大凝集度>
実施例および比較例に係るハードコートフィルムおよび機能性フィルムにおいて、第2
の領域におけるシリカ粒子の最大凝集度を測定した。具体的には、まず、上記シリカ粒子
の緻密度の測定と同様の方法および同様の条件によって、白黒2値化処理をした。そして
、白黒2値化処理後の画像に現れているセルのうち、ハードコート層の膜厚方向と直交す
る方向に並ぶ複数のセルを1列とし、またセルがシリカ粒子の一次粒径の3倍以上の長さ
で連続しているものを凝集状態と判断して、1列に存在するセルの合計数に対するシリカ
粒子の一次粒径の3倍以上の長さで連続しているセルの割合を求めて、1列のシリカ粒子
の凝集度を算出した。そして、このシリカ粒子の凝集度を30列で求めて、30列で求め
たシリカ粒子の凝集度の中で最も大きいものを最大凝集度とした。
【0153】
<密着性>
実施例および比較例に係るハードコートフィルムおよび機能性フィルムにおいて、密着
性をクロスカット法によって評価した。ハードコートフィルムにおいては、実施例6と同
様の方法によってハードコートフィルムの表面(ハードコート層の表面)に密着性向上層
および反射防止層を形成した状態で密着性を評価し、機能性フィルムにおいては、そのま
まの状態で密着性を評価した。具体的には、JIS K5600-5-6:1999に準
拠し、クロスカットCCJ-1(コーテック社製)を用い、反射防止層形成後の状態にお
いて、ハードコートフィルムおよび機能性フィルムの表面に碁盤目状の切り傷を入れ、1
mm角を100マス作製した。そして、ニチバン株式会社製の工業用24mm幅のセロテ
ープ(登録商標)を碁盤目の上に貼り、その上からヘラで往復10回擦って、密着させ1
50°方向に急速剥離を行なった。このような動作を5回繰り返し、残った升目の数をカ
ウントした。残った升目の数を分子、升目の全個数を分母にして、以下の基準で評価した
。
◎:100/100
○:91/100以上99/100以下
△:50/100以上90/100以下
×:50/100未満
【0154】
<ヘイズ値>
実施例1~5および比較例1、2に係るハードコートフィルムのヘイズ値をそれぞれ測
定した。ヘイズ値は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術
研究所製)を用いてJIS K7136:2000に準拠した方法により測定した。上記
ヘイズ値は、50mm×50mmの大きさに機能性フィルムを切り出した後、カールや皺
がなく、かつ指紋や埃等がない状態で反射防止層側が非光源側となるように設置し、機能
性フィルム1枚に対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とした。なお
、実施例1および比較例1~3に係るハードコートフィルムは、防眩性を発揮しないフィ
ルムとして設計されているので、ヘイズ値は低いほど好ましい。一方で、実施例2~5に
係るハードコートフィルムは、防眩性を発揮するフィルムとして設計されているので、ヘ
イズ値が6%以上20%以下であり、かつ後述する60°グロス値が70%以上110%
以下であることが好ましい。
【0155】
<全光線透過率>
実施例1~5および比較例1、2に係るハードコートフィルムの全光線透過率をそれぞ
れ測定した。全光線透過率は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上
色彩技術研究所製)を用いてJIS K7361-1:1997に準拠した方法により測
定した。上記全光線透過率は、50mm×50mmの大きさに機能性フィルムを切り出し
た後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で反射防止層側が非光源側となるよ
うに設置し、機能性フィルム1枚に対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平
均値とした。なお、全光線透過率は、高いほど好ましい。
【0156】
<60°グロス値>
実施例1~5および比較例1に係るハードコートフィルムの60°グロス値をそれぞれ
測定した。上記60°グロス値は、精密光沢計(製品名「GM-26D」、株式会社村上
色彩技術研究所製)を用いて、JIS Z8741:1997に準拠した方法により測定
した。上記60°グロス値は、機能性フィルムを50mm×50mmの大きさに切り出し
た後、ハードコートフィルムの裏面を空気吸引法により光沢の無い黒樹脂板に密着させた
状態で精密光沢計に設置して測定した。また、60°グロス値は、ハードコートフィルム
1枚に対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
【0157】
<ハードコート層中の元素比率>
実施例2および比較例2に係るハードコートフィルムにおいて、ハードコート層を深さ
方向にエッチングして、表面からの深さを変えながらC、N、O、Siの元素比率をそれ
ぞれ求めた。具体的には、走査型X線光電子分光装置(製品名「Quantum2000
」)、アルバック・ファイ株式会社製)を用いて、下記の測定条件で表面から深さ100
nmまでの領域で5nm毎にC、N、O、Siの元素比率を求めた。
(測定条件)
・X線条件:Al mono 200μmφ×30W 15kV、
・光電子取込角度:45°
・エッチング条件:2kV raster2×2
【0158】
以下、ハードコートフィルムの結果を表1に示し、また機能性フィルムの結果を表2に
示す。また、実施例2および比較例2に係るハードコート層中のC、N、O、Siの元素
比率を表3に示す。
【表1】
【0159】
【0160】
【0161】
表1に示されるように、比較例1および2に係るハードコートフィルムは、密着性に劣
っていた。これは、ハードコート層の第1の領域にシリカ粒子の緻密度が60%以上とな
る部分が存在せずに、また第2の領域に存在するシリカ粒子が多かったためであると考え
られる。また、比較例3に係るハードコートフィルムは、密着性は良好であったが、ヘイ
ズ値が高かった。これに対し、実施例1に係るハードコートフィルムは、ハードコート層
の第1の領域にシリカ粒子の緻密度が60%以上となる部分が存在するとともに第2の領
域に存在するシリカ粒子が少ないために、密着性に優れ、全光線透過率が高く、かつヘイ
ズ値が低かった。
図6は実施例1に係るハードコートフィルムにおけるハードコート層の
断面の走査透過型電子顕微鏡写真であるが、この写真からもハードコート層の表面付近は
それ以外の領域に比べてシリカ粒子が多いことが理解できる。また、実施例2~5に係る
ハードコートフィルムも、ハードコート層の第1の領域にシリカ粒子の緻密度が60%以
上となる部分が存在するとともに第2の領域に存在するシリカ粒子が少ないために、密着
性に優れ、全光線透過率が高く、ヘイズ値および60°グロス値も所望の範囲内であった
。
【0162】
また、表2に示されるように、比較例4および5に係る機能性フィルムは、密着性に劣
っていた。これは、ハードコート層の第1の領域にシリカ粒子の緻密度が60%以上とな
る部分が存在せずに、また第2の領域に存在するシリカ粒子が多かったためであると考え
られる。なお、比較例6に係る機能性フィルムは、密着性は良好であったが、比較例3に
係るハードコートフィルムを用いているので、比較例3に係るハードコートフィルムと同
様に、ヘイズ値が高くなるものと考えられる。これに対し、実施例6に係る機能性フィル
ムは、ハードコート層の第1の領域にシリカ粒子の緻密度が60%以上となる部分が存在
するとともに第2の領域に存在するシリカ粒子が少ないために、密着性に優れていた。な
お、実施例6に係る機能性フィルムは、実施例1に係るハードコートフィルムを用いてい
るので、実施例1に係るハードコートフィルムと同様に、全光線透過率が高く、かつヘイ
ズ値が低くなるものと考えられる。また、実施例7~10に係る機能性フィルムも、ハー
ドコート層の第1の領域にシリカ粒子の緻密度が60%以上となる部分が存在するととも
に第2の領域に存在するシリカ粒子が少ないために、密着性に優れていた。なお、実施例
7~10に係る機能性フィルムは、実施例2~5に係るハードコートフィルムを用いてい
るので、実施例2~5に係るハードコートフィルムと同様に、全光線透過率が高く、ヘイ
ズ値および60°グロス値も所望の範囲内となると考えられる。
【0163】
さらに表3に示されるように、実施例2に係るハードコートフィルムにおいては、ハー
ドコート層の表面からの深さが10nm~30nmの領域でSiとOの元素比率の合計が
60%以上であり、その他の領域でSiとOの元素比率の合計が60%未満であった。こ
れは、シリカ粒子が深さ10nm~30nmの領域で集中しているが、その他の領域では
均一に存在していたためと考えられる。したがって、実施例2に係るハードコートフィル
ムにおいては、ハードコート層が、ハードコート層の表面から深さ100nmまでの第1
の領域内に、SiとOの元素比率の合計が60%以上の第1の層状領域と、SiとOの元
素比率の合計が60%未満である第2の層状領域とを有していることが確認された。一方
、比較例2に係るハードコートフィルムにおいては、ハードコート層の表面から深さ10
0nmまでの領域の全域においてSiとOの元素比率の合計が60%未満であった。した
がって、比較例2に係るハードコートフィルムにおいては、ハードコート層が、第1の領
域内にSiとOの元素比率の合計が60%以上の第1の層状領域を有していないことが確
認された。
【0164】
なお、実施例1~5に係るハードコートフィルムおよび実施例6~10に係る機能性フ
ィルムにおいて、ハードコート層のマルテンス硬さを、上記ハードコート層の欄で説明し
た測定条件で、それぞれ測定したところ、ハードコート層のマルテンス硬さは100MP
a以上であった。