(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102126
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】心臓組織アブレーションのための食道熱伝達デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240723BHJP
A61B 18/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068650
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2021503702の分割
【原出願日】2019-04-03
(31)【優先権主張番号】62/652,641
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/739,595
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/793,998
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/795,916
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520385205
【氏名又は名称】アドヴァンスト クーリング セラピー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【弁理士】
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】カルスタッド、エリック
(72)【発明者】
【氏名】シーバー、ジェイ ディー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】心臓組織アブレーション術のための食道熱伝達デバイスおよび方法が開示される。
【解決手段】方法は、患者の食道内に位置する食道熱伝達デバイス108の1つ以上の感知素子を介して食道データを収集することを含む。方法は、食道データおよび/またはオペレーターが選択するパワー設定に基づいて、食道熱伝達デバイス108を通って流れる流体についての温度設定および/または流量設定を決定して、熱伝達領域を介してアブレーション部位に隣接する食道組織の標的温度を維持する。方法は、コントローラー102を介して流体源110を調整して、温度設定および/または流量設定において食道熱伝達デバイス108に流体を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓組織アブレーション術を経験する患者における食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げる、または、減少させるための方法であって、当該方法は:
前記患者の中に食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入することを有し、前記熱伝達デバイスは、熱伝達領域と、前記熱伝達領域に熱伝達流体を提供し、かつ、前記熱伝達領域から前記熱伝達流体を除去するように構成された1つ以上のルーメンを含み;
前記心臓組織アブレーション術の最中に損傷を受けやすい食道組織と熱的に接触するように前記熱伝達領域を位置決めすることを有し;
収集される食道温度データまたはオペレーターが選択するアブレーション設定に基づいて、前記熱伝達流体についての温度設定および/または流量設定を決定することを有し;かつ、
前記の決定された温度設定および/または流量設定にて前記の1つ以上のルーメンを通して前記熱伝達流体を循環させて、損傷を受けやすい前記食道組織の標的温度を維持することを有する、
前記方法。
【請求項2】
前記のオペレーターが選択するアブレーション設定が、パワー、接触力、期間、および、それらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度設定が、約0℃~約10℃であり、代替的には約5℃~約15℃であり、代替的には約10℃~約20℃であり、代替的には約15℃~約25℃であり、代替的には約20℃~約30℃であり、代替的には約25℃~約35℃であり、代替的には約30℃~約40℃であり、または、代替的には約35℃~約45℃である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
コントローラーを介して流体源を調整して、前記温度設定および/または前記流量設定にしたがって、前記食道熱伝達デバイスに前記流体を提供することをさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記食道熱伝達デバイスの1つ以上の感知素子を介してデータを収集することをさらに有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記の1つ以上の感知素子が、温度センサーまたは位置感知素子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の収集される食道温度データが、収集される管腔食道温度データである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記心臓組織アブレーション術が凍結アブレーション術である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記心臓組織アブレーション術が無線周波数アブレーション術である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
無線周波数(RF)アブレーション術を経験する患者における食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させる方法であって、当該方法は:
前記患者の中に食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入することを有し、前記熱伝達デバイスは、熱伝達領域と、前記熱伝達領域に熱伝達流体を提供し、かつ、前記熱伝達領域から前記熱伝達流体を除去するように構成された1つ以上のルーメンを含み;
前記RFアブレーション術の最中に損傷を受けやすい食道組織と熱的に接触するように前記熱伝達領域を位置決めすることを有し;
損傷を受けやすい前記食道組織の温度を維持しながら、前記RFアブレーション術を実行することを有し;
前記RFアブレーション術は、前記患者の後部心房壁セグメントへのアブレーションエネルギーの印加、および、(a)前記後部心房壁セグメント上で少なくとも400である標的最小アブレーションインデックス(AImin)値を有する、
前記方法。
【請求項11】
当該方法が、管腔食道温度(LET)モニタリングを有さない、請求項10に記載の方法
。
【請求項12】
前記RFアブレーション術を経験する前記患者における結果を改善させることをさらに有する、請求項10~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記結果が、心房壁部の後部セグメント上の持続可能な病変の達成;RFアブレーション術後12ヶ月にいかなる症候性心房性不整脈(心房細動、心房粗動、心房頻拍)もないこと;または、かかる温度管理を伴わない前記RFアブレーション術を実行することと比べての食道組織に対する損傷の量および/もしくは深刻さの減少のうちの少なくとも1つである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
食道熱伝達デバイスであって、当該デバイスは:
流出ルーメンに流体的に接続された流入ルーメンを有する多ルーメンチューブを有し、前記流入ルーメンおよび流出ルーメンは、熱伝達媒体の流れのための流体経路を定めており;
前記多ルーメンチューブの外壁の少なくとも一部を有する熱伝達領域を有し;かつ、
デバイス位置感知素子を有する、
前記デバイス。
【請求項15】
前記熱伝達領域の境界を少なくとも部分的に定める、伝熱性ではない、または、部分的に伝熱性である領域をさらに有する、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記デバイス位置感知素子が、マッピングおよび/または撮像システムによって検出可能な位置合わせマーカーを含む、請求項14~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイス位置感知素子が1つ以上の磁場センサーを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記の1つ以上の磁場センサーが、磁場エミッターによって発せられる磁場に応答して信号を生成する、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイス位置感知素子が3軸センサーを含む、請求項14~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記3軸センサーが3つの直交して構成されたコイルを含む、請求項19に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2018年4月4日付けで出願の米国仮特許出願第62/652,641号、2018年10月1日付けで出願の米国仮特許出願第62/739,595号、2019年1月18日付けで出願の62/793,998号および2019年1月23日付けで出願の米国仮特許出願第62/795,916号への優先権を主張する;上記出願のそれぞれの内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本技術は、アブレーション部位に隣接する食道組織の温度を管理することによって、患者が心臓組織アブレーション術を経験している間に、かかる患者の食道組織を保護するためのデバイス、システムおよび方法に関する。一態様では、本技術は、心臓組織アブレーションの最中にアブレーション部位に隣接する食道組織の温度を管理するための食道熱伝達デバイスに関する。別の態様では、本技術は、心臓組織アブレーションの最中にアブレーション部位に隣接する食道組織の温度を管理するための食道熱伝達デバイスを含む、温度管理システムに関する。さらに別の態様では、本技術は、食道熱伝達デバイスを利用して、心臓組織アブレーションの最中にアブレーション部位に隣接する食道組織の温度を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
心房細動は、一般的なタイプの心臓不整脈であり、心臓の心房が不規則または異常な様式で拍動する。それはしばしば、心不全、発作、および、その他の病気と関連付けられる。心房細動に苦しむ人はまた、心臓触診、意識朦朧、胸部痛および息切れを経験するであろう。
【0004】
心臓組織アブレーション術は、患者における心房細動を治療するのに用いられてきた。組織アブレーション(カテーテルアブレーションまたは凍結アブレーションまたは凍結バルーンアブレーションとも呼ばれる)は、心房細動を引き起こす異常な電気活性から心房を電気的に隔離するように設計された、最小限に侵襲的な施術である。例えば、アブレーション術の最中、患者の心臓の左心房の中に、カテーテル、バルーンまたは組織をアブレーションするように設計されたその他のデバイスが挿入される。カテーテルは、心臓組織を加熱または凍結することによって、かかる組織をアブレーション(例えば、破壊)する。したがって、カテーテルは傷跡を作り出し、心臓組織のかかる小さい部分が電気的に不活性になり、したがって、心臓不整脈の基礎をなす異常な電流を伝播し得ないことを引き起こす。
【0005】
いくつかの例では、心房アブレーションは、心臓組織に印加されるエネルギー(例えば、熱エネルギーであり、最も一般的には無線周波数または凍結手術による)の結果として、左心房に隣接する患者の食道の一部に意図しない損傷を引き起こすであろう。実際、左心房の後部壁上でのアブレーションは、貫通、心房-食道瘻孔形成、紅斑症、浸食、出血性病変、潰瘍、縦隔炎、横隔神経傷害、および、その他の食道周囲の神経傷害を含む、食道傷害の危険性と関連付けられる。例えば、左心房アブレーション術を経験する患者の約3%~60%の食道上に病変が形成される。
【0006】
肺静脈隔離(PVI)は、標準的なカテーテルアブレーション術である。肺静脈の隔離を
達成するには、食道を越えて左心房の後部壁上でのアブレーションが必要である。左心房
の後部壁上でのアブレーションは、貫通、心房-食道瘻孔形成、紅斑症,浸食、出血性病
変、潰瘍、縦隔炎、横隔神経傷害、および、その他の食道周囲の神経傷害を含む、食道傷害の危険性と関連付けられる。心房-食道瘻孔形成の発症は、検出することが困難であり得、かつ、即座に治療されなければ、ほぼ一律に致命的である。したがって、適切な病変の配置はしばしば、食道温度が上昇するにつれて制限される。
【0007】
近年、心房アブレーション術は、心房アブレーションの最中に食道傷害の発生を減少させることを試みて、管腔食道温度(LET)モニタリングを組み込んでいる。LETモニタリングでは、食道ルーメンの温度をモニタリングするのに温度プローブが用いられる。しかしながら、食道組織への病変、および/または、その他の損傷が発生しそうであるか否かを検出するためのLETモニタリングの成功は、バラツキが大きかった。一つの懸念は、ルー
メンの温度が、損傷の危険性がある食道組織の温度と対応しないことである;さらに、LETモニタリングは、単一の空間点のみしか測定しない。さらに、LETモニタリングにおいて用いられる温度プローブは、潜在的には、熱効果に貢献し、かつ、食道への直接的な組織加熱を向上させる。例えば、いくつかの研究は、単一のセンサーの温度プローブが用いられるか、多数のセンサーの温度プローブが用いられるかに関わらず、LETモニタリングを
用いると、患者の約40%~50%に食道病変が生じることを示している。
【0008】
さらに、何人かのオペレーターは、病変、および/または、その他の損傷が食道組織上に生じる前に、カテーテルによって心臓組織に対して(とりわけ、後部心房壁上に)提供されるエネルギーの量を減少させることを試みてきた。しかしながら、オペレーターは、心房アブレーション術を実行しながら、心臓組織に印加されるエネルギーレベルを調整することが困難であることを見出した。例えば、食道組織の損傷を回避しようとする際に、オペレーターは、心房壁部に持続的な病変が形成される前に、エネルギーを減少させるであろう。追加的または代替的には、何人かのオペレーターは、心房アブレーション術を実行しながら、食道の温度を制御しようと試みてきた。食道組織へと、または、食道組織から熱を伝達するためのデバイスが提案されてきた。しかしながら、オペレーターは、食道組織に対する病変、および/または、その他の損傷が回避されるが、心房壁部に持続的な病変が形成されるような様式で、心房アブレーション術の最中に食道の温度を正確に制御することが困難であることを見出した。
【0009】
米国特許出願公開第2007/0055328号公報(Mayse)は、冷却剤で充填され
得る、膨張性であり、伝熱性のバルーンに言及する。Mayse は、冷却剤が、バルーンおよび外部の冷却機を通って循環するときに、心臓の左心房の後部壁のアブレーション、または、その他の施術の最中に熱的損傷から食道プローブと接触している食道組織を保護すると主張する。Mayseのデバイスの特定の欠点は、米国特許出願公開第2012/0035
603号公報(Lenihan)に概説されている。1つとしては、食道の壁部の効果的な冷却
が達成されているか否かを知る術が存在しない。
【0010】
米国特許出願公開第2008/0161890号公報(Lafontaine)は、食道保護デバイスに言及し、該食道保護デバイスは、アブレーションカテーテルが心臓組織部位に向けてエネルギーを方向づけている間に食道の内側に配置され得る、食道熱シンクを含む。
【0011】
米国特許出願公開第2010/0168624号公報(Sliwa)は、熱シンクを有する
組織保護機器に言及し、該熱シンクは、(i)アブレーションデバイスによって食道壁組
織に堆積された熱を運び去り、かつ/もしくは、(ii)保護されるべき食道組織を冷却もしくは予め冷却する能力を有する要素または構造体である。
【0012】
米国特許公開第2012/0035603号公報(Lenihan)は、所望の温度にてカテ
ーテルの先端部とは反対側の食道壁の部分を保つために冷却剤を受け取ってもよい、温度
プローブに言及する。
【0013】
米国特許公開第2016/0278845号公報(Mayse)は、食道組織および食道の
外側に沿って走る迷走神経の分岐に対する傷害を回避または最小化しながら、1つ以上の肺疾患を治療するためのデバイスおよび方法に言及する。
【0014】
これらの文献はいずれも、心臓アブレーション(例えば、PVI術)の最中に、持続的な
アブレーションを達成することと、同時に食道組織を保護することとの間の相互作用を確認しておらず、該相互作用に対処していないことを言うまでもない。さらに、かかるデバイスおよび方法は、懐疑論に遭遇してきた。例えば、冷却バルーンの使用は、とりわけ心房が相当の厚さのものである場合であって、かつ、短期間および低い標的温度を用いるときに、心房における経壁的な病変の達成の可能性を減少させ得た。Berjano & Hornero, Phys Med Biol 2005, 50(20):N269-279を参照。
【0015】
Tsuchiyaら(J Cardiovasc Electrophysiol 2007, 18(2):145-150)は、 パワーの低い左心房アブレーションの最中の管腔食道温度が、冷水灌漑食道内バルーンカテーテルを用いた食道冷却によって低下したことを報告した。Tsuchiyaは、パワーの低い無線周波数アブレーションを採用し、結果として、アブレーションの最中に比較的低い食道温度が取得された。研究デザインに鑑み、Tsuchiyaは、その介入が食道傷害を実際に保護したか否かを判定するのは不可能かも知れないと結論付けた。さらに、後の報告は、Tsuchiyaの方法が臨床実務において実行するには複雑であり、かつ、いかなる後に続く研究も実行されなかったことを確認した。Kuwahara et al., Europace 2014, 16:834-839を参照。
【0016】
Arrudaら(J Cardiovasc Electrophysiol 2009, 20(11):1272-1278) は、遠位の拡張可
能でコンプライアントなラテックスサックを有する12Frプローブを用いて、かつ、5℃または10℃にて該サック内で流体を循環させることで、食道が左心房に対抗して変位しなかった2匹の動物において食道組織が熱的傷害を免れたことを報告した。逆に、Arrudaは、25℃にて流体を循環させることが、熱的傷害から食道組織を免れさせ損ねたことを報告した。さらに、インビトロモデルでは、Arrudaは、流体が15℃および25℃にて循環されたときの付帯的な食道の熱的傷害を報告した。したがって、Arrudaは、その方法が、コンプライアントなサックおよび5℃または10℃にて流体を循環させることを必要としたと結論付けた。
【0017】
Kuwahara ら(Europace 2014, 16:834-839)およびSoharaら(J Cardiovasc Electrophysiol 2014, 25(7):686-692)による後続の報告は、無線周波数アブレーション(Kuwahara)
または管腔食道温度が39℃または43℃を超えたときのホットバルーンアブレーション(Sohara)前に食道の中に直接的に冷却流体を導入することの価値に対処した。Kuwaharaは、その方法が、無線周波数アブレーションに起因する食道病変の発生を減少させなかったことを報告した。
【0018】
したがって、心臓アブレーション術の最中に食道保護を改善し、かつ、持続的であり経壁的または部分的に経壁的である心房病変を、心房壁部に隣接する食道組織が損傷をとりわけ受けやすいときに、とりわけ後部左心房壁部において達成するための能力を改善するためのデバイスおよび方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0019】
概要
添付の請求の範囲は、本願を定める。本開示は、実施形態の態様を要約し、かつ、請求の範囲を限定するのに用いられるべきではない。以下の図面および詳細な説明を考察した当業者に明らかになるように、本明細書に記載の技術により、その他の実装が考慮され、
かつ、これらの実装は、本願の範囲内であることが意図される。
【0020】
本開示は、心房における持続的であり、経壁的な、または、部分的に経壁的な病変を作り出す望みと、食道組織に対する付帯的な損傷を最小化し、減少させ、または、除去する望みとのバランスを取るためのデバイスおよび方法を提供する。
【0021】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーション術を経験する患者における食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための方法を提供する。例示的な方法としては、食道熱伝達デバイスを用いて食道組織(好ましくは、アブレーション部位に隣接する食道組織)の温度を管理することが挙げられ、該食道熱伝達デバイスは、(i)
熱伝達領域を含み、該熱伝達領域は、食道内に、かつ、いっそう具体的には、アブレーション部位に隣接する食道組織との熱的接触にて位置するように構成されており、かつ、(ii)1つ以上のルーメンを含み、該1つ以上のルーメンは、熱伝達領域へと熱伝達流体(例えば、水または生理食塩水)を提供し、かつ、熱伝達領域から熱伝達流体を除去するように構成されている。特定の実施形態では、当該方法はまた、食道熱伝達デバイスの1つ以上の感知素子を介して食道データを収集することを含む。特定の実施形態では、当該方法はまた、食道データおよび/またはオペレーターが選択するパワー設定に基づいて、食道熱伝達デバイスを通って流れる流体についての温度設定および/または流量設定を決定して、熱伝達領域を介してアブレーション部位に隣接する食道組織の標的温度を維持することを含む。特定の実施形態では、当該方法はまた、コントローラーを介して、流体源を調整して、温度設定および/または流量設定にしたがって食道熱伝達デバイスへと流体を提供することを含む。
【0022】
一態様では、本開示は、肺静脈隔離(PVI)術を経験する患者における食道組織に対す
る熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための方法を提供する。例示的な方法としては、患者の食道の中へと本明細書に記載の食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入することが挙げられる。食道熱伝達デバイスは、(i)熱伝達領域を含み、該熱伝
達領域は、食道内に、かつ、いっそう具体的には、アブレーション部位に隣接する食道組織との熱的接触にて位置するように構成されており、かつ、(ii)1つ以上のルーメンを含み、該1つ以上のルーメンは、熱伝達領域へと熱伝達流体(例えば、水または生理食塩水)を提供する。特定の実施形態では、当該方法は、同時に食道熱伝達デバイスを用いて食道組織の温度を管理しながらPVI術を実行することを有する。例えば、当該方法は、ア
ブレーション部位に隣接する食道組織の標的温度を維持することを有していてもよい。特定の実施形態では、当該方法は、無線周波数(RF)アブレーション術を経験する患者における食道組織から熱を抽出することを有する。いくつかのかかる実施形態では、PVI術は
、(a)後部心房壁セグメント上の標的最小アブレーションインデックス(AImin)値が300である、または、(b)後部心房壁セグメント上の標的最小フォース-タイムインテ
グラル(FTImin)が150である、患者の後部心房壁セグメントへのアブレーションエネルギーの印加を有する。特定の実施形態では、当該方法はさらに、PVI術を経験する患者
における結果を改善することを有する。いくつかのかかる実施形態では、結果は、心房壁部の後部セグメント上の持続的な病変の達成;PVI術後12ヵ月のあらゆる症候性の心房
性不整脈(心房細動、心房粗動、心房頻拍)がないこと;ならびに/または、かかる温度管理を伴わないPVI術の実行と比べた食道組織に対する損傷の量および/もしくは深刻さ
の減少である。
【0023】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーションの最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための食道熱伝達デバイスを提供する。例示的な食道熱伝達デバイスは、アブレーション部位に隣接する食道組織へと熱を加え、または、アブレーション部位に隣接する食道組織から熱を抽出するように構成された熱伝達領域と、熱伝達領域へと流体を提供するための流体経路を定める1つ以上のルーメンと、例え
ばアブレーション部位に隣接する食道組織を識別するための位置感知素子と、任意選択的には、熱伝達領域がアブレーション部位に隣接する食道組織と接触しているときにアブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成された温度センサーを含む。いくつかの実施形態では、位置感知素子は、食道熱伝達デバイス位置感知素子(「デバイス-位置感知素子」)であるか、または、食道熱伝達デバイス位置感知素子を含み、該食道熱伝達デバイス位置感知素子は、食道熱伝達デバイスの位置が識別されることを可能にする(例えば、アブレーションデバイスおよび/または傷害の危険性があると識別される食道組織に関して)。熱伝達領域へと提供される流体の温度設定および/または流量設定は、アブレーションカテーテルについてオペレーターが選択するパワー設定およびアブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度のうちの1つ以上に基づいて、コントローラーによって調整される。
【0024】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーションの最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための食道熱伝達デバイスを提供する。本明細書に記載の例示的な食道熱伝達デバイスは、アブレーション部位に隣接する組織へと熱を加え、または、アブレーション部位に隣接する組織から熱を抽出する熱伝達領域と、熱伝達領域へと流体を提供するための流体経路を定める1つ以上のルーメンと、熱伝達領域がアブレーション部位に隣接する食道組織と接触しているときにアブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成された非接触温度センサーを含む。特定の実施形態では、熱伝達領域へと提供される流体の温度設定および/または流量設定は、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度に基づいて調整される(例えば、コントローラーによって)。
【0025】
別の態様では、本開示は、熱伝達デバイスを提供し、該熱伝達デバイスは、熱伝達媒体の流れのためのルーメンを少なくとも部分的に定める外壁を有するチューブと、外壁の少なくとも一部を有する熱伝達領域と、熱伝達領域から物理的に分離されており、かつ、熱伝達領域に隣接する患者の組織の温度を感知するように構成された非接触温度センサーを含む。特定の実施形態では、本技術の熱伝達デバイスは、熱伝達領域と熱伝達領域に隣接する患者の組織との間の熱伝達に実質的に影響を与えない温度センサーを含む。
【0026】
別の態様では、本開示は、熱伝達デバイスを提供し、該熱伝達デバイスは、外壁を有するチューブを含み、該外壁は熱伝達媒体の流れのためのルーメンを少なくとも部分的に定めており、該外壁は患者の組織に接触するように構成されており;ルーメン内に配置された支持表面を含み;かつ、支持表面に取り付けられた、または、支持表面に埋め込まれた温度センサーを含み、該センサーは、外壁と接触している組織の温度を感知するように構成されている。
【0027】
別の態様では、本開示は、多ルーメン熱伝達デバイスを提供し、該多ルーメン熱伝達デバイスは、外壁を有するチューブを含み、該外壁は患者の組織に接触するように構成されており;少なくとも1つの内側の共通支持壁によって分離された複数のルーメンを含み;かつ、少なくとも1つの内側の共通支持壁に取り付けられた、または、少なくとも1つの内側の共通支持壁に埋め込まれた温度センサーを含み、該センサーは、外壁と接触している組織の温度を感知するように構成されている。特定の実施形態では、本技術は、熱伝達デバイスの外壁を横切る熱伝達に実質的に影響を与えない温度センサーを含む、熱伝達デバイスを提供する。
【0028】
さらに別の態様では、本技術は、赤外線温度センサーを含む、熱伝達デバイスを提供する。いくつかの実施形態では、赤外線温度センサーは、1つ以上の電荷結合デバイス(CCD)を有する。いくつかの実施形態では、温度センサーは、1つ以上の微小電気機械シス
テム(MEMS)を有する。赤外線温度センサーが複数のCCDおよび/またはMEMSを有する実
施形態では、個別のセンサーは、好ましくはアレイ状に配置される。いくつかのかかる実施形態では、複数の赤外線温度センサーは、線形アレイ状に構成される。その他のかかる実施形態では、複数の赤外線温度センサーは、2次元アレイ状に構成される。
【0029】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載の食道熱伝達デバイスを用いて、心臓組織アブレーションの最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための方法を提供する。食道熱伝達デバイスは、(i)熱伝達領域を含み、該
熱伝達領域は、食道内に、かつ、いっそう具体的には、アブレーション部位に隣接する食道組織との熱的接触にて位置し得、かつ、(ii)1つ以上のルーメンを含み、該1つ以上のルーメンは、熱伝達領域へと流体を提供する。本明細書に記載の例示的な方法としては、非接触温度センサーを介して、アブレーション部位に隣接する食道組織の温度を感知することが挙げられる。いくつかのかかる実施形態では、非接触温度センサーは、熱伝達デバイスの熱伝達領域から物理的に分離されている。
【0030】
特定の実施形態では、当該方法はまた、食道温度データを収集および/または貯蔵することを含む。特定の実施形態では、当該方法はまた、食道温度データに基づいて、食道熱伝達デバイスを通って流れる流体についての温度および/または流量を決定して、アブレーション部位に隣接する食道組織の標的温度を維持することを含む。特定の実施形態では、当該方法はまた、コントローラーを介して、流体源を調整して、少なくとも部分的に食道温度データに基づく温度設定および/または流量設定にしたがって食道熱デバイスへと流体を提供することを含む。
【0031】
特定の実施形態では、感知素子は、非接触温度センサーのような温度センサーを含み、好ましくは赤外線温度センサーを含む。いくつかのかかる実施形態では、温度センサーは、デバイスの熱伝達領域から物理的に分離されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のいっそう良好な理解のために、以下の図面に示されている実施形態が参照されてもよい。図中のコンポーネントは、必ずしも縮尺通りではなく、かつ、関連要素は省略されているかも知れず、または、いくつかの場合には、本明細書に記載の新規な特徴を強調し、かつ、明確に示すために割合が誇張されているかも知れない。さらに、システムのコンポーネントは、本技術分野で知られているように、様々に配置され得る。さらに、図中、同様の参照数字は、いくつかの図を通して対応する部分を示している。
【0033】
【
図1】
図1は、本明細書の教示による例示的なアブレーションシステムを示している。
【
図2A】
図2Aは、例示的な食道熱伝達デバイスを示している。
【
図2B】
図2Bは、例示的な熱伝達デバイスの断面を示している。
【
図3】
図3は、別の例示的な食道熱伝達デバイスを示している。
【
図4】
図4はさらに、別の例示的な食道熱伝達デバイスの一部を示している。
【
図5】
図5は、患者の中に挿入された、例示的な食道熱伝達デバイスおよびアブレーションデバイスを描いている。
【
図6】
図6はさらに、
図5の患者の中に挿入された例示的な食道熱伝達デバイスを描いている。
【
図7】
図7は、
図1のアブレーションシステムの電子コンポーネントのブロック図である。
【
図8】
図8は、本明細書の教示による、心臓アブレーション術の最中に食道熱伝達デバイスを介して患者の食道組織を保護するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、最大組織厚さが測定の部位におけるスライド上の組織の厚さ全体を含み、かつ、最大病変厚さが病変(外膜結合組織において始まり、かつ、上皮に向かい、病変損傷の最大深度へと行く)の厚さを含む、病変した食道組織の病理組織学的評価を描いている。測定線は、視覚的な明確性のために別々に示されているが、百分率計算についての正確な測定を確実にすべくデータ収集のために同一の位置でとられた。
【
図10】
図10は、
図9に記載の病理組織学的評価のグラフ表示を示している。各グループについての病変深度率(経壁率)は、操作パラメーターによって示されている(パワー、期間、水温)。
【
図11】
図11Aは、RFアブレーションモデリングについての計算ドメインを描いており、かつ、次のドメインを含む:(1)胸腔、ならびに、(2)潰れた食道および境界線:(a)アブレーションカテーテルの先端部、および、(b)接地パッド。
図11Bは、2D矢状面におけるRFアブレーションモデリングについての計算ドメインを描いており、かつ、次のドメインを含む:(1)胸腔、(2)収縮した食道、(3)心膜、(4)心筋、ならびに、(5)左心房および境界線:(a)接地パッド、および、(b)カテーテルの先端部。
【
図12】
図12は、異なる温度の水流および100秒のアブレーション時間を用いたアブレーション術の最中の、計算された食道温度を描いた線グラフである。
【
図13】
図13は、30℃の水流および30秒のアブレーション時間を用いたアブレーション術の最中の、組織(食道壁部、間質組織、心房壁部)を横切る計算された温度を描いた線グラフである。
【
図14】
図14は、異なる温度の水流および45秒のアブレーション時間を用いたアブレーション術の最中の、組織(心筋、心膜、食道)を横切る計算された温度を描いた線グラフである。
【
図15】
図15は、異なる温度の水流および45秒のアブレーション時間を用いた、異なるRFパワー値における保護されていない食道組織および保護されている食道組織の両方についての病変深度を描いた棒グラフである。
【
図16】
図16は、45秒のアブレーション後の異なるRFパワーにおける冷却水温度の関数として食道病変深度を描いた線グラフである。調整線は、2次多項式補間に対応する。
【
図17】
図17は、水温およびRFパワーの関数として病変深度を示す病変深度コントープロットである。
【
図18】
図18Aは、40WのRFパワーが印加され、かつ、異なる温度における水流を用いた挿入深度が0mmであるアブレーション術の最中に、組織(心筋、心膜、食道)を横切るように計算された温度を描いた線グラフである。
図18Bは、対照値(潰れた食道研究)として参照される水温の関数としてピーク温度および病変深度を描いた線グラフである。2次多項(放物)線が、冷却水温度(T_Water)の5つのデータポイントおよび結果として生じる式へと調整され、かつ、R
2値が提供される。T_Water値内の変化が小さいので、ピーク温度について回帰は適用されなかった。
【
図19A-B】
図19Aは、RFパワーおよび時間の関数としてピーク温度を示すコントープロットである(挿入深度=0mm)。
図19Bは、挿入深度および時間の関数としてピーク温度を示すコントープロットである(RFパワー=40W)。
【
図19C】
図19Cは、挿入深度およびRFパワーの関数としてピーク温度を示すコントープロットである(アブレーション=60秒)。線は、限界温度100℃に印を付ける。
【
図20A】
図20Aは、冷却水温度およびRFパワーの関数として病変深度を示す病変深度コントープロットである(挿入深度=0mm、アブレーション時間=60秒)。
【
図20B-C】
図20Bは、冷却水温度および挿入深度の関数として病変深度を示す病変深度コントープロットである(RFパワー40W、アブレーション時間=60秒)。
図20Cは、冷却水温度および時間の関数としての病変深度を示す病変深度コントープロットである(RFパワー=40W、挿入深度=0mm)である。線は、考慮される組織厚さについての最適病変深度である6.5mmに印を付ける。
【
図21】
図21は、-50℃凍結バルーン温度における食道保護を伴う場合、および、伴わない場合の凍結アブレーション術の最中に組織(心筋、心膜、食道)を横切るように計算された温度を描いた線グラフである。
【
図22A】
図22Aは、0.5mmの心筋厚さを用いて、異なる予熱時間にて、保護されていない(対照)食道および保護された食道についての凍結アブレーション術の最中に組織(心筋、脂肪層、食道)を横切るように計算された温度を描いた線グラフである。
【
図22B】
図22Bは、3.5mmの心筋厚さを用いて、異なる予熱時間にて、保護されていない(対照)食道および保護された食道についての凍結アブレーション術の最中に組織(心筋、脂肪層、食道)を横切るように計算された温度を描いた線グラフである。
【
図23A】
図23Aは、3.5mmの心筋厚さを用いて、異なる予熱時間にて、保護されていない(対照)食道および保護された食道についての凍結アブレーション術の最中の内側食道および外側食道(In-eso、Out-eso)について経時的に計算された温度を描いた線グラフである。
【
図23B】
図23Bは、3.5mmの心筋厚さを用いて、異なる予熱時間にて、保護されていない(対照)食道および保護された食道についての凍結アブレーション術の最中の内側食道および外側心筋(In-eso、Out-myo)について経時的に計算された温度を描いた線グラフである。
【
図24】
図24は、5分間の予冷を伴う、または、伴わない広範囲の温度設定にわたる食道病変経壁性についての食道冷却の保護効果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本発明が種々の形態で具現化されてもよいが、本開示は本発明の例示と考えられ、かつ、本発明を図示されている特定の実施形態に限定することを意図しないという理解のもと、いくつかの例示的かつ非限定的な実施形態が図中に示され、かつ、以下に記載されるであろう。
【0035】
A.方法
【0036】
一態様では、本開示は、肺静脈隔離(PVI)術を経験する患者における食道組織を保護
するための方法を提供する。患者は例えば、心房細動(AF)で苦しんでいるかも知れない。
【0037】
当該方法は、患者の食道の中に食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入することを有する。特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、熱伝達領域を有する。いくつかのかかる実施形態では、当該方法は、無線周波数(RF)アブレーション術を経験する患者におけるアブレーション部位に隣接する食道組織から熱を抽出することを有する。その他のかかる実施形態では、当該方法は、凍結アブレーション術を経験する患者におけるアブレーション部位に隣接する食道組織に熱を追加することを有する。
【0038】
一態様では、本開示は、食道組織を損傷することなしに肺静脈隔離(PVI)の最中に持
続的なアブレーション病変を作り出すための方法を提供する。特定の実施形態では、病変は経壁的な病変である。特定の実施形態では、病変は部分的に経壁的な病変である。
【0039】
当該方法は、患者の食道の中に食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入することを有する。特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、熱伝達領域を有する。いくつかのかかる実施形態では、当該方法は同時に、無線周波数(RF)アブレーション術を用いて患者の左心房の一部をアブレーションしながら、アブレーション部位に隣接する食道組織から熱を抽出することを有する。その他のかかる実施形態では、当該方法は同時に、凍結アブレーション術を用いて患者の左心房の一部をアブレーションしながら、アブレーシ
ョン部位に隣接する食道組織に熱を追加することを有する。
【0040】
一態様では、本開示は、肺静脈隔離(PVI)術を経験する患者における食道組織に対す
る熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための方法を提供する。
【0041】
当該方法は、患者の食道の中に食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入することを有する。特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、(i)熱伝達領域を含み、該
熱伝達領域は、食道内に、かつ、いっそう具体的には、アブレーション部位に隣接する食道組織との熱的接触にて位置するように構成されており、かつ、(ii)熱伝達領域へと熱伝達流体(例えば、水または生理食塩水)を提供する1つ以上のルーメンを含む。
【0042】
特定の実施形態では、当該方法は同時に、食道熱伝達デバイスを用いて食道組織の温度を管理しながら、PVI術を実行することを有する。例えば、当該方法は、アブレーション
部位に隣接する食道組織の標的温度を維持することを有していてもよい。
【0043】
特定の実施形態では、当該方法は、凍結アブレーション術を経験する患者における食道組織に熱を追加することを有する。特定のその他の実施形態では、当該方法は、無線周波数(RF)アブレーション術を経験する患者における食道組織から熱を抽出することを有する。いくつかのかかる実施形態では、PVI術は、(a)後部心房壁セグメント上の標的最小アブレーションインデックス(AImin)値が300である、または、(b)後部心房壁セグメント上の標的最小フォース-タイムインテグラル(FTImin)が150である、患者の後部心房壁セグメントへのアブレーションエネルギーの印加を有する。本明細書で用いられるとき、用語「アブレーションインデックス」は、例えばNakagawa H, et al., Circulation 2013; 128:A12104; Das M, et al., Europace May 1 2017;19:775-783に記載される
ように、荷重された式における接触力、時間およびパワーを利用する病変特質マーカーを意味する。アブレーションインデックスは、次のように計算されてもよい:
【0044】
【0045】
式中、CFは接触力であり、Pはパワーであり、かつ、dは期間である。本明細書で用いられるとき、用語「フォース-タイムインテグラル」は、接触力に無線周波数印加期間を掛ける病変特質評価ツールを意味する。 フォース-タイムインテグラル(FTI)は次のように計算されてもよい:FTI = CF x d, 式中、CFは平均接触力であり、かつ、dは期間であ
る。
【0046】
本明細書に記載の方法は、食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるだけでなく、かかる温度管理なしで後部心房壁セグメントに対して安全に印加されるより、いっそう高いアブレーションエネルギーの印加、いっそう高い接触力、および/または、いっそう長い接触時間を可能にすることによって、後部心房壁セグメント上での持続的で経壁的な、または、部分的に経壁的な病変の作成を許容すると信じられる。さらに、本明細書に記載の方法は、PVI術の最中のアブレーション治療に対する中断および/も
しくは停止が最小化され、または、除去されさえするので、全PVI術時間を減少させると
信じられる。
【0047】
特定の実施形態では、PVI術は、後部心房壁セグメント上の標的AImin値が少なくとも300、代替的には少なくとも310、代替的には少なくとも320、代替的には少なくとも330、代替的には少なくとも340、代替的には少なくとも350、代替的には少なくとも360、代替的には少なくとも370、代替的には少なくとも380、代替的には
少なくとも390、代替的には少なくとも400、代替的には少なくとも410、代替的には少なくとも420、代替的には少なくとも430、代替的には少なくとも440、代替的には少なくとも450、代替的には少なくとも460、代替的には少なくとも470、代替的には少なくとも480、代替的には少なくとも490、代替的には少なくとも500、代替的には少なくとも510、代替的には少なくとも520、代替的には少なくとも530、代替的には少なくとも540または代替的には少なくとも550である、患者の後部心房壁セグメントへのアブレーションエネルギーの印加を有する。特定の実施形態では、PVI術は、後部心房壁セグメント上の標的AImin値が300~550、代替的には350~500または代替的には400~450である、患者の後部心房壁セグメントへのアブレーションエネルギーの印加を有する。いくつかのかかる実施形態では、PVI術は、
310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540または550である、後部心房壁セグメント上の標的AImin値を有する。
【0048】
特定の実施形態では、PVI術は、管腔食道温度(LET)モニタリングを有しない。特定のその他の実施形態では、PVI術は、LETモニタリングを有する。
【0049】
特定の実施形態では、当該方法はさらに、PVI術を経験する患者における結果を改善す
ることを有する。いくつかのかかる実施形態では、結果は、かかる温度管理なしでPVI術
を実行することと比べた、心房壁部の後部セグメント上の持続的な病変、ならびに/または、食道組織に対する損傷の量および/または深刻さの減少の達成である。
【0050】
一態様では、本開示は、同時に食道組織を管理しながら(かつ、任意選択的にはモニタリングしながら)、肺静脈隔離(PVI)術を実行することを有する、肺静脈(PV)再接続
および/または不整脈再発の危険性を減少させるための方法を提供する。当該方法は、かかる温度管理の不在下で安全に適用されるより、いっそう高いアブレーションエネルギーの印加、いっそう高い接触力、および/または、いっそう長い接触時間を可能にすることによって、肺静脈(PV)再接続および/または不整脈再発の危険性を減少させると信じられる。
【0051】
特定の実施形態では、食道組織温度は、食道熱伝達デバイス(患者の食道の中に経口的または経鼻的に挿入されてもよい)を用いて管理される。
【0052】
上記態様のいずれかの特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、熱伝達領域を有する。
【0053】
いくつかのかかる実施形態では、熱伝達領域は、損傷される危険性が最も高い食道組織の部分に隣接して位置する、個別の熱伝達領域である。例えば、損傷される危険性が最も高い食道組織の部分は、熱的撮像、蛍光透視法、心臓内超音波検査(ICE)、および/ま
たは、アブレーションカテーテルの先端部を撮像するように撮像することによって識別され得る。別の例として、損傷される危険性が最も高い食道組織の部分は、1つ以上の感知素子を介してマッピングすることによって識別され得る;例えば、感知素子は、食道熱伝達デバイスに含有されていてもよく、代替的または追加的には、食道熱伝達デバイスの外側に含有されていてもよい。
【0054】
いくつかのかかる実施形態では、熱伝達領域は、伝熱性の壁部を有する。作動中、熱伝達媒体が、隣接する解剖学的構造(例えば、食道)もしくはその一部から熱を抽出し、または、隣接する解剖学的構造もしくはその一部へと熱を追加するために、伝熱性の壁部に沿って流れ得る。
【0055】
いくつかのかかる実施形態では、熱伝達領域は、金属製センサーによるパワー吸収に起因して、食道を通した無線周波数エネルギー伝達を悪化させるように、かつ/または、食道熱的病変の形成に貢献するように実装されていた金属製温度センサーを実質的に有しない。特有の実施形態では、熱伝達領域は、金属製伝熱経路を実質的に有しない。
【0056】
いくつかのかかる実施形態では、流れている熱伝達媒体は、約0℃~約42℃、代替的には約5℃~約30℃、代替的には約10℃~約25℃、または、代替的には約15℃~約20℃である温度を有する。流れている熱伝達媒体の温度についての追加的な範囲としては、約0℃~約5℃、代替的には約5℃~約15℃、代替的には約10℃~約20℃、代替的には約15℃~約25℃、代替的には約20℃~約30℃、代替的には約25℃~約35℃、代替的には約30℃~約40℃、代替的には約35℃~約45℃、代替的には約40℃~約50℃、代替的には約45℃~約55℃、代替的には約50℃~約60℃、代替的には約55℃~約65℃、代替的には約60℃~約70℃、代替的には約65℃~約75℃、または、代替的には約70℃~約80℃が挙げられる。特定の実施形態では、流れている熱伝達媒体は、無線周波数アブレーション適用において、約25℃未満、代替的には約20℃未満、代替的には約15℃未満、または、代替的には約10℃未満の温度を有する。特定の実施形態では、流れている熱伝達媒体は、凍結アブレーション適用において、約37℃まで、代替的には約42℃まで、代替的には約45℃まで、または、約80℃までの温度を有する。
【0057】
例えば、約20W~約30WのRFアブレーションエネルギーを採用するPVI術については
、流れている熱伝達媒体は、約5℃~約30℃、代替的には約10℃~約25℃、または、代替的には約15℃~約20℃である温度を有する。
【0058】
別の例として、約20W~約30WのRFアブレーションエネルギーおよび約10g~約4
0gの接触力を採用するPVI術については、流れている熱伝達媒体は、約5℃~約30℃、代替的には約10℃~約25℃、または、代替的には約15℃~約20℃である温度を有する。
【0059】
さらに別の例として、約20W~約30WのRFアブレーションエネルギー、約10g~約
40gの接触力および約10秒~約40秒の接触時間を採用するPVI術については、流れている熱伝達媒体は、約5℃~約30℃、代替的には約10℃~約25℃、または、代替的には約15℃~約20℃である温度を有する。
【0060】
一態様では、本開示は、持続可能なアブレーションの達成を損ねることなしで、心房細動(AF)についての肺静脈隔離(PVI)術を経験する患者における食道組織を保護するた
めの方法を提供する。当該方法は、患者の食道に配置される熱伝達デバイスにおける流体経路に沿って熱伝達媒体を循環させることを有する。当該方法はさらに、心房組織における細胞死を作り出すのに十分な温度を有する心房組織における少なくとも1つの等温線(「心房等温線」)と、細胞死を引き起こさない温度を有する食道組織における少なくとも1つの等温線(「食道等温線」)を提供する、循環する熱伝達媒体の温度を選択することを有する。
【0061】
実験的研究は、組織温度が50℃を越えるときに不可逆的な組織破壊が起き、したがって、50℃がしばしば、無線周波数アブレーションにおけるネクローシス性細胞と生存細胞の境界線として見做されることを示した。したがって、組織における50℃等温線は、病変サイズを見積もるのに用いられ得る。
【0062】
無周波数アブレーションに関する特定の実施形態では、心房等温線の温度は50℃を上
回り、かつ、食道等温線の温度は50℃を下回る。無周波数アブレーションに関する特定の実施形態では、心房等温線の温度は約50℃~約90℃、代替的には約60℃~約85℃または代替的には約70℃~約80℃であり、かつ、食道等温線の温度は約30℃~約50℃、代替的には約35℃~約45℃または代替的には約37℃~約42℃である。
【0063】
特定の実施形態では、心房等温線は経壁的であり、左心房の後部壁全体に跨る。特定の実施形態では、心房等温線は部分的に経壁的である。特定の実施形態では、心房等温線の深度は約1mm~約6mmである。
【0064】
実験的研究はまた、組織損傷が温度および時間の両方の関数であることを示している。したがって、組織における43℃にての熱的治療の累積相当分(CEM43℃)のような温度
履歴を考慮するモデルはまた、病変サイズを見積もるのに用いられ得る。
【0065】
一態様では、本開示は、心臓アブレーション術(例えば、肺静脈隔離術)の最中に熱的損傷から食道組織を保護するための方法を提供する。当該方法は、患者の中に食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入し、かつ、食道内(とりわけ、心臓アブレーション術の最中に意図しない損傷を受けやすい食道組織付近)にデバイスの熱伝達領域を位置決めすることを有する。
【0066】
当該方法はさらに、デバイスの流体経路に沿って熱伝達媒体を流すことを有する。特定の実施形態では、熱伝達媒体は、心房の壁部上で持続的で経壁的な病変を取得するための能力と実質的に干渉することなしに、熱的損傷から食道組織を保護するのに十分な温度である。
【0067】
左心房の後部壁におけるアブレーション術の最中、熱伝達媒体についての適温は、オペレーターが選択するパワー設定、接触力および/または時間に基づいていてもよい。例えば、特定の実施形態では、熱伝達媒体の温度は、下記の表A~Gに記載されたガイダンスにしたがって選択される。
【0068】
表A 選択されたアブレーションエネルギーについてのお勧めの水温(℃)
【0069】
【0070】
表B 30秒間に適用された、選択されたアブレーションエネルギーについてのお勧めの水温(℃)
【0071】
【0072】
表C 15秒間に適用された、選択されたアブレーションエネルギーについてのお勧めの水温(℃)
【0073】
【0074】
表D 約15gの接触力で約30秒間適用された、選択されたアブレーションエネルギー
についてのお勧めの水温(℃)
【0075】
【0076】
表E 約15gの接触力で約20秒間適用された、選択されたアブレーションエネルギー
についてのお勧めの水温(℃)
【0077】
【0078】
表F 約15gの接触力で約10秒間適用された、選択されたアブレーションエネルギー
についてのお勧めの水温(℃)
【0079】
【0080】
表G 約15gの接触力で約4秒間適用された、選択されたアブレーションエネルギーに
ついてのお勧めの水温(℃) (例えば、HPSDアブレーションデバイス)
【0081】
【0082】
特定の実施形態では、お勧めの水温または熱伝達媒体温度は、-5、-4、-3、-2または-1℃のように、0℃を下回るように下がってもよい。いくつかのかかる実施形態では、0℃を下回る熱伝達媒体温度が、15分未満、代替的には10分または代替的には5分未満のような比較的短い期間、採用されてもよい。
【0083】
特定の実施形態では、当該方法は、コントローラーを介して、熱伝達流体についての温度設定および/または流量設定を決定することを有する。温度設定および/または流量設定は、収集された食道温度データまたはオペレーターが選択するアブレーション設定に基づいて決定されてもよい。特定の実施形態では、当該方法はまた、決定された温度設定および/または流量設定にて1つ以上のルーメンを通して熱伝達流体を循環させて、損傷を受けやすい食道組織の標的温度を維持することを有する。
【0084】
特定の実施形態では、当該方法はさらに、コントローラーを介して、温度設定および/または流量設定にしたがって、流体源を調整して、食道熱伝達デバイスへと流体を提供することを有する。
【0085】
特定の実施形態では、温度設定は、0、5、10、15、20、25、30または35℃のような特定の値である。特定のその他の実施形態では、温度設定は、広範な値である。例えば、いくつかのかかる実施形態では、温度設定は、約0℃~約10℃、代替的には約5℃~約15℃、代替的には約10℃~約20℃、代替的には約15℃~約25℃、代替的には約20℃~約30℃または代替的には約25℃~約35℃であり;温度設定についてのさらなる範囲としては、約0℃~約5℃、代替的には約5℃~約10℃、代替的には約10℃~約15℃、代替的には約15℃~約20℃、代替的には約20℃~約25℃、代替的には約25℃~約30℃または代替的には約30℃~約35℃が挙げられる。
【0086】
一態様では、本開示は、心房細動アブレーション術(例えば、肺静脈隔離術)の最中に熱的損傷から食道組織を保護するための方法を提供する。当該方法は、患者の中に本明細書に記載の食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入し、かつ、食道内(とりわけ、心房細動アブレーション術の最中に不注意な損傷を受けやすい食道組織付近)にデバイスの熱伝達領域を位置決めすることを有する。いくつかの実施形態では、当該方法は、本明細書に記載の非接触温度センサー(すなわち、熱伝達領域から物理的に分離された温度センサー)を用いて食道組織の温度をモニタリングすることを含む。
【0087】
特定の実施形態では、当該方法はまた、本明細書に記載の非接触温度センサー(すなわち、熱伝達領域から物理的に分離された温度センサー)を介して食道温度データを収集することを含む。
【0088】
特定の実施形態では、当該方法は、コントローラーを介して、流体源の温度設定および/または流量設定を調整して、標的温度にて食道組織を維持することを含む。すなわち、温度設定および/または流量設定は、心臓組織アブレーション術の最中に調整されて、流体源によって熱伝達領域へと提供される流体の温度および/または流量を制御し得る。例えば、食道熱伝達デバイスの温度センサーが、アブレーション部位に隣接する食道組織が、病変が生じる温度に近づいていることを検出すれば、温度設定および/または流量設定は、流体源から熱伝達領域へと流れる流体の温度および/または流量を制御するように調整され、次に、かかる食道組織の温度が標的温度(すなわち、病変が生じない温度)に向かって戻ることを引き起こす。
【0089】
特定の実施形態では、当該方法は、患者の食道の中に本技術のデバイスを位置決めすること、および、任意選択的には温度センサーによって生成される信号に基づいて温度管理パラメーターを調整することによって、心臓アブレーション術の最中に損傷を受けやすい食道組織の温度を同時に測定および管理することを含む。いくつかのかかる実施形態では、温度管理パラメーターは、熱伝達媒体の温度である。
【0090】
一態様では、本開示は、無線周波数アブレーション術の最中に損傷を受けやすい食道組織の温度を同時に測定および管理するための方法を提供する。一実施形態では、本技術は、凍結アブレーションの最中に損傷を受けやすい食道組織の温度を同時に測定および管理するための方法を提供する。
【0091】
一態様では、本開示は、熱的傷害を受けやすい食道組織の温度を同時に検出しながら、心臓組織アブレーション術の最中に食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための方法を提供する。当該方法は、患者の食道の中に本明細書に記載の食道熱伝達デバイスを経口的または経鼻的に挿入することを有する。特定の実施形態では、当該方法は、食道組織(好ましくは、心臓アブレーション術の最中に損傷を受けやすいものとして識別される食道組織)の温度を検出し、かつ、任意選択的にはモニタリングすることを有する。いくつかのかかる実施形態では、当該方法は、AFについての無線周波数(RF
)アブレーション術を経験する患者における食道組織から熱を抽出することを有する。
その他のかかる実施形態では、当該方法は、AFについての凍結アブレーション術を経験する患者における食道組織に熱を追加することを有する。
【0092】
特定の実施形態では、アブレーション部位に隣接する食道組織が、病変が生じる温度に近づいていれば、当該方法は、食道熱伝達デバイスに提供される流体の温度を調整して、食道組織の温度が、病変が生じない標的温度に向かって戻ることを引き起こすことを有する。
【0093】
特定の実施形態では、当該方法はまた、本明細書に記載の非接触温度センサー(すなわち、熱伝達領域から物理的に分離された温度センサー)を介して食道温度データを収集することを含む。
【0094】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーションの最中に、患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための方法を提供する。例示的な方法としては、コントローラーを介して、オペレーターが選択するパワー設定にて組織アブレーションデバイスを作動させることが挙げられる。患者のアブレーション部位(例えば、左心房の壁部の一部)に、組織アブレーションデバイスの先端部が位置する。特定の実施形態では、当該方法はまた、患者の食道内に位置する食道熱伝達デバイスの1つ以上の感知素子を介して食道データを収集することを含む。食道熱伝達デバイスは、アブレーション部位に隣接する食道内に位置する熱伝達領域と、熱伝達領域に流体を提供する1つ以上のルーメンを含む。特定の実施形態では、当該方法はまた、食道データおよび/またはオペレーターが選択するパワー設定に基づいて、食道熱伝達デバイスを通って流れる流体についての温度設定および/または流量設定を決定して、熱伝達領域を介してアブレーション部位に隣接する食道組織の標的温度を維持することを含む。特定の実施形態では、当該方法はまた、コントローラーを介して、温度設定および/または流動設定にしたがって流体源を調整して、食道熱伝達デバイスに流体を提供することを含む。
【0095】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーションの最中の患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための方法を提供する。特定の実施形態では、当該方法は、コントローラーを介してオペレーターが選択するパワー設定にて組織アブレーションデバイスを作動させることを含む。組織アブレーションデバイスは、組織アブレーションデバイスが作動するときに、例えば患者の左心房におけるアブレーション部位に位置する。特定の実施形態では、組織アブレーションデバイスは、心臓組織アブレーション術全体を通してオペレーターが設定するパワー設定にて作動したままである。すなわち、かかる例では、オペレーターが設定するパワー設定は、心臓組織アブレーション術全体を通して不変のままである、一定の値である(例えば、約5ワット~90ワット(例えば、50ワット))。
【0096】
特定の実施形態では、当該方法は、組織アブレーションデバイスを作動させる前に、アブレーション部位に隣接して組織アブレーションデバイスを位置決めし、かつ、患者の食道内に食道熱伝達デバイスを位置決めして、食道熱伝達デバイスの熱伝達領域が、心臓組織のアブレーション部位に隣接する食道組織と熱的に接触するようになっている。例えば、当該方法は、デバイス位置感知素子を用いて食道熱伝達デバイスの位置を検出することを含んでもよい。さらに、特定の実施形態では、心臓組織のアブレーション部位付近に食道熱伝達デバイスの熱伝達領域を位置決めするために、当該方法は、組織アブレーションデバイスの位置を検出し、かつ、組織アブレーションデバイスの位置に基づいてアブレーション部位に隣接する食道組織を識別することを含んでもよい。例えば、組織アブレーションデバイスおよび/または食道熱伝達デバイスの位置は、組織アブレーションデバイスおよび/または食道熱伝達デバイスと一体化した1つ以上の磁場センサー(例えば、3つ
の直交して構成されたコイルのような1つ以上のコイル)を介して検出され得る。別の例として、組織アブレーションデバイスおよび/または食道熱伝達デバイスの位置は、組織アブレーションデバイスおよび/または食道熱伝達デバイスと一体化した音響変換器を介して検出され得る。1つのデバイスにおける音響変換器は、音響波を発するように構成されていてもよく、かつ、さらに、信号のパルス-エコー反射を受け取り、かつ、プロセッサーに信号を伝えてその他のデバイスの位置を決定するように構成されていてもよい。さらに、特定の実施形態では、アブレーション部位に隣接する食道組織は、食道熱伝達デバイスの熱的撮像素子を介して識別される。特定の実施形態では、アブレーション部位に対して無線周波数アブレーションが実行される。その他の例では、アブレーション部位に対して凍結アブレーションが実行される。
【0097】
特定の実施形態では、アブレーションデバイスおよび/またはシステムは、高パワー短期(HPSD)RFカテーテルシステムであってもよい。いくつかのかかる実施形態では、印加されるアブレーションエネルギーは、60、70、80、90または100ワットのように50ワットより大きく、かつ、期間は、約9、8、7、6、5、4、3、2または1秒のように10秒未満である。
【0098】
特定の実施形態では、当該方法はまた、食道熱伝達デバイスが患者の食道内に位置するときに、食道熱伝達デバイスの1つ以上の感知素子を介して食道データを収集することを含む。特定の実施形態では、食道データは、温度、圧力、および/または、その他のデータを含み、かつ、1つ以上の感知素子は、温度センサー、圧力センサー、および/または、食道データを収集するためのその他の感知素子を含む。例えば、食道熱伝達デバイスの温度センサーは、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成されており、かつ/または、食道熱伝達デバイスの圧力センサーは、アブレーション部位に隣接する食道組織上に食道熱伝達デバイスによって印加される現在の圧力を測定するように構成されている。
【0099】
特定の実施形態では、当該方法は、収集された食道データ、および/または、その他のデータに基づいて食道熱伝達デバイスを通って熱伝達領域へと流れる流体についての温度設定および/または流量設定を選択することを含む(例えば、コントローラーを介して)。流体の温度設定および/または流量設定は、食道熱伝達デバイスが、熱伝達領域を介して、例えば食道組織に対する病変、および/または、その他の損傷を妨げるアブレーション部位に隣接する食道組織の標的温度を維持することを可能にするように選択され得る。特定の実施形態では、その他のデータは、アブレーションエネルギーがアブレーション部位に印加される期間および/またはアブレーションカテーテルによってアブレーション部位に印加される接触力を含む。
【0100】
特定の実施形態では、当該方法は、コントローラーを介して、温度設定および/または流量設定を調整して、標的温度にて食道組織を維持することを含む。すなわち、温度設定および/または流量設定は、心臓組織アブレーション術の最中に調整されて、アブレーション部位に隣接する食道組織に病変が生じる危険性を妨げ、または、減少させる。例えば、食道熱伝達デバイスの温度センサーが、食道組織が食道組織において病変が生じる温度に近づいていることを検出すれば、温度設定および/または流量設定は、かかる食道組織の温度が、病変が生じない標的温度に向かって戻ることを引き起こすように調整される。特定の実施形態では、温度設定および/または流量設定は、心臓組織アブレーション術の期間、調整される。さらに、特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、組織アブレーションデバイスが停止したことを識別することに応答して、コントローラーを介して停止する。
【0101】
B.デバイス
【0102】
例示的な食道伝達デバイスは、流入ルーメンと、流出ルーメンと、任意選択的には胃アクセスルーメンを有する、多ルーメンチューブである。食道熱伝達デバイスは、食道内に、かつ、とりわけ具体的には、後部心房壁セグメントのような心臓組織に隣接する食道組織と熱的に接触して位置するように構成された、熱伝達領域を含む。特定の実施形態では、熱伝達領域は、多ルーメンチューブの外壁の少なくとも一部(例えば、アブレーション部位に隣接する食道組織と熱的に接触して位置していた外壁の個別部分)を有する。いくつかのかかる実施形態では、外壁の部分は、絶縁されておらず、かつ/または、高い伝熱性を有する材料を有し、一方で外壁の第2の部分は、絶縁されており、かつ/または、低い伝熱性を有する材料を有する。作動中、流入ルーメンは、流体源(例えば、外部の熱交換器)に流体的に接続されて、デバイスの熱伝達領域に熱伝達流体を提供し得る。さらに、流出ルーメンは、流体源(例えば、外部の熱交換器)に流体的に接続されて、熱伝達流体が流体源に戻ることを可能にし得る。特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、胃減圧、胃吸引または流体の経腸投与のうちの少なくとも1つを可能にする、胃アクセスルーメンを定める胃アクセスチューブを含む。特定の実施形態では、多ルーメンチューブは、コンプライアントではないチューブである。特定の実施形態では、多ルーメンチューブは、多ルーメンシリコーンチューブである。
【0103】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、デバイス位置感知素子を含む。いくつかの実施形態では、デバイス位置感知素子は、マッピングおよび/または撮像システムによって検出可能な位置合わせマーカーを含む。いくつかの実施形態では、デバイス位置感知素子は、可視化装置で見える放射線不透過性マーカーを含み、例えば、食道熱伝達デバイスの配置を補助し、かつ/または、熱伝達領域の配向を可能にする。いくつかの実施形態では、デバイス位置感知素子は、1つ以上の磁場センサーを含む。いくつかのかかる実施形態では、1つ以上の磁場センサーは、磁場エミッター(例えば、施術の最中に患者の下に配置されるロケーターパッド)によって発せられる磁場に応答して信号を生成する。いくつかの実施形態では、デバイス位置感知素子は、3軸センサー(好ましくは、3つの直交して構成されたコイルを含む3軸センサー)を含む。
【0104】
特定の実施形態では、熱伝達領域は、限定された伝熱性の領域(例えば、部分的に伝導性または非伝導性である領域)によって境界されて、デバイスと患者の組織との間の熱伝達が、食道熱伝達デバイスの熱伝達領域に局所化されるようになっている。いくつかのかかる実施形態では、部分的に伝導性または非伝導性である領域は、多ルーメンチューブの外壁の一部を包囲し、または、少なくとも部分的に包囲する絶縁材料を含む。追加的または代替的には、部分的に伝導性または非伝導性である領域は、低い伝熱性を有する材料を有する外壁の一部を含んでいてもよい。いくつかのかかる実施形態では、熱伝達領域は、高い伝熱性を有する材料を含み、かつ、部分的に伝導性または非伝導性である領域は、低い伝熱性を有する材料を含む。したがって、いくつかの実施形態では、熱伝達領域は、少なくとも1つの部分的に伝導性または非伝導性である領域によって境界された物理的に個別の領域であってもよい。特定の実施形態では、熱伝達領域は、部分的に伝導性または非伝導性である領域に隣接し、部分的に伝導性または非伝導性である領域が熱伝達領域の境界を少なくとも部分的に定めるようになっている。
【0105】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーション術の最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための食道熱伝達デバイスを提供する。特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、熱伝達媒体の流れのための流体経路を定める少なくとも1つのルーメンおよび熱伝達領域を有する。いくつかのかかる実施形態では、食道熱伝達デバイスは、熱伝達領域が、食道内(とりわけ、アブレーション術の最中に不注意な損傷を受けやすい食道組織付近)に位置し得るように構成されている。いくつかのかかる実施形態では、熱伝達領域は、食道内に位置する食道熱伝達デバイスの部分全体を有
する。その他のかかる実施形態では、熱伝達領域は、食道内に位置する食道熱伝達デバイスの個別部分を有する。例えば、熱伝達領域は、長さが約1センチメートル~約15センチメートル、代替的には長さが約3センチメートル~約7センチメートルまたは代替的には長さが約4センチメートル~約6センチメートルであってもよい。別の例として、食道内に位置する食道熱伝達デバイスの第1の部分が絶縁されており、かつ、食道内に位置する食道熱伝達デバイスの第2の部分が絶縁されておらず、そのことによって、熱伝達領域を形成する。特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスはさらに、位置感知素子のような1つ以上の感知素子を有する。いくつかのかかる実施形態では、位置感知素子は、磁気コイル、音響変換器、熱的撮像素子、ならびに/または、アブレーション部位、アブレーション部位に隣接する食道組織、および/もしくは、組織アブレーション術を実行する組織アブレーションデバイスの位置を検出するように構成された任意のその他の感知素子を含む。
【0106】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーション術の最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための食道熱伝達デバイスを提供し、かつ、さらに、例えばマッピングおよび/または撮像システムに情報(位置情報を含む)を提供することが可能である。例えば、食道熱伝達デバイスは、マッピングおよび/または撮像システムによって検出可能であり、かつ、基準点(例えば、アブレーションデバイスおよび/または傷害の危険性があるものとして識別された食道組織に関する)を提供する、1つ以上の位置合わせマーカーを有していてもよい。いくつかのかかる実施形態では、熱伝達デバイスは、可視化装置で見えるマーカーのようなマーカーを有し、熱伝達デバイスが視覚化されることを可能にする。例えば、マーカーは、放射線不透過性マーカであってもよい。
【0107】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、位置感知素子、および、好ましくは、食道熱伝達デバイスの位置が識別されることを可能にするデバイス位置感知素子(例えば、磁気コイル、音響変換器)を含む(例えば、アブレーションデバイスおよび/または傷害のリスクがあるものとして識別される食道組織に関して)。
【0108】
いくつかの実施形態では、デバイス位置感知素子は、1つ以上の磁場センサーを含む。いくつかのかかる実施形態では、食道熱伝達デバイスは、2つ以上(例えば、3つ)の磁場センサーを含む。いくつかの実施形態では、磁場センサーは、患者の下に配置されるロケーターパッドのような磁場エミッターによって発せられる磁場に応答して信号を生成する。
【0109】
いくつかの実施形態では、デバイス位置感知素子は、3軸センサーを含む。いくつかのかかる実施形態では、3軸センサーは、3つの直交して構成されたコイルを含む。
【0110】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、食道熱伝達デバイスの位置が識別されることを可能にする、1つ以上の磁気コイル(例えば、1つ、2つ、または、3つの磁気コイル)を含んでいてもよい。
【0111】
したがって、特定の実施形態の作動中、磁場強度は、2つ以上(好ましくは、3つ)の磁場センサーによって検出される。磁場強度は、特定の磁場センサーと磁場エミッターとの間の距離に反比例する。したがって、エミッターの場の強度を統合し、かつ、この測定値を距離に変換することによって、デバイス位置感知素子(したがって、食道熱伝達デバイス、または、好ましくは食道熱伝達デバイスの熱伝達領域)は、空間で三角形にされ得る。
【0112】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーション術の最中に患者の食道組織に対する熱
的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための食道熱伝達デバイスを提供する。食道熱伝達デバイスは、(i)心臓組織アブレーション術の最中にアブレーション部位に隣接
する食道組織の温度を調整するための熱伝達領域と、(ii)熱伝達領域がかかる食道組織と接触しているときに、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成された非接触温度センサーを有する。温度センサーは、熱伝達領域から物理的に分離されている。特定の実施形態では、熱伝達領域は、伝熱性の壁部を有する。作動中、熱伝達媒体が、伝熱性の壁部に沿って流れて、隣接する解剖学的構造(すなわち、食道)、もしくは、その一部から熱を抽出し得、または、隣接する解剖学的構造、もしくは、その一部に熱を追加し得る。
【0113】
本明細書で用いられるとき、用語「非接触温度センサー」は、標的物体(例えば、ヒト組織)に物理的に接触することなく、物体によって発せられる赤外線エネルギーのような温度関連パラメーターを感知し、かつ、温度関連パラメーターを物体温度を表す電気信号に変換するセンサーを意味する。したがって、非接触温度センサーは、アブレーション部位に隣接する食道組織から物理的に分離され得、かつ、好ましくは分離される。さらに、特定の実施形態では、非接触温度センサーはまた、アブレーション部位に隣接する食道組織と熱的に接触している熱伝達領域の部分から物理的に分離されている;かかる配置構成は、熱伝達領域と熱伝達領域に隣接する患者の組織との間の熱伝達を実質的に影響を与えないと信じられる。特定の実施形態では、非接触温度センサーは、電荷結合デバイス(CCD)のような赤外線温度センサーを有する。いくつかのかかる実施形態では、非接触温度
センサーは、複数のCCDを有し、含む。特定の実施形態では、非接触温度センサーは、微
小電気機械システム(MEMS)を有する。いくつかのかかる実施形態では、非接触温度センサーは、複数のMEMSを有し、含む。非接触温度センサーが複数のCCDおよび/またはMEMS
を有する実施形態では、個別のセンサーは好ましくは、アレイ状に配置される。いくつかのかかる実施形態では、アレイは直線アレイである。その他のかかる実施形態では、アレイは2次元アレイである。
【0114】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、チューブの外壁を有する熱伝達領域を含む。いくつかのかかる実施形態では、外壁は、ルーメンを少なくとも部分的に定めており、かつ、ルーメンはさらに、内壁によって定められる。いくつかのかかる実施形態では、外壁と接触している食道組織の温度を感知するように構成された温度センサーは、内壁に埋め込まれ、または、内壁上に取り付けられる。
【0115】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、内側の共通の支持壁(その中に埋め込められた、または、その上に取り付けられた温度センサーを含有する)によって分離された複数のルーメンを定める組織が接触する外壁を有する多ルーメン熱伝達デバイスであり、センサーは、外壁と接触している組織の温度を感知するように構成されている。
【0116】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーションの最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための食道熱伝達デバイスを提供する。例示的な食道熱伝達デバイスは、アブレーション部位に隣接する食道組織に熱を追加し、または、アブレーション部位に隣接する食道組織から熱を抽出するように構成された熱伝達領域と、流体経路を定めて熱伝達領域へと流体を提供する1つ以上のルーメンと、アブレーションカテーテル、アブレーション部位、および/またはアブレーション部位に隣接する食道組織を識別するための位置感知素子と、熱伝達領域から物理的に分離され、かつ、熱伝達領域がアブレーション部位に隣接する食道組織と接触しているときに、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を感知するように構成された温度センサーを含む。
【0117】
一態様では、本開示は、熱伝達領域と、熱伝達領域から物理的に分離された非接触温度
センサーを有する、食道熱伝達デバイスを提供する。特定の実施形態では、熱伝達デバイスは、ルーメンを少なくとも部分的に定める外壁を有するチューブを含み、ルーメンはさらに、支持壁によって定められ、かつ、支持壁は、外壁と接触している食道組織の温度を感知するように構成された温度センサーを含む。いくつかの実施形態では、熱伝達デバイスは、温度センサーを含有する内側の共通の支持壁によって複数のルーメンを定める組織が接触している外壁を有する多ルーメン熱伝達デバイスであり、センサーは、外壁と接触している組織の温度を感知するように構成されている。特定の実施形態では、温度センサーは、赤外線温度センサーを有する。特定の実施形態では、温度センサーは、CCDを有す
る。特定の実施形態では、レンズのような光学素子が、センサーによってモニタリングされる面積を増大させ、または、最適化するのに用いられてもよい。特定の実施形態では、冷却流体がレンズとして作用してもよい。特定の実施形態では、熱伝達デバイスは、可視化装置で見えるマーカーのようなマーカーを有し、食道における熱伝達領域および/または温度センサーの配向を可能にする。いくつかのかかる実施形態では、可視化マーカーは、放射線不透過マーカーである。
【0118】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーションの最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるように構成された食道熱伝達デバイスを提供する。特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、アブレーション部位に隣接する食道組織に熱を追加し、または、アブレーション部位に隣接する食道組織から熱を抽出するように構成された熱伝達領域を含む。例えば、熱伝達領域は、食道熱伝達デバイスの長さに沿って約1センチメートルから約15センチメートルへと延び、食道熱伝達デバイスが局所的な様式で熱を伝達することを可能にする。特定の実施形態では、熱伝達領域は、食道内バルーン(それを通して、流体が流れて、食道組織に熱を追加し、または、食道組織から熱を抽出する)を含む。さらに、特定の実施形態では、熱伝達領域は、食道熱伝達デバイスの外面の別の部分に沿って延びる絶縁層によって、外面の一部において定められる。例えば、絶縁層は、食道熱伝達デバイス内に包囲されたチュービングおよび/または空気のポケットの厚い層を含む。さらに、特定の実施形態では、外面は、食道壁との滑り嵌めを形成して、患者の食道内の熱伝達領域の位置を安定化させる。例えば、食道熱伝達デバイスは、膨張式の部分を含み、外面が食道壁との滑り嵌めを形成し、かつ/または、外面が食道壁との滑り嵌めを形成することを可能にする外径を含む。
【0119】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、膨張式の熱伝達領域を含む。特定のその他の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、膨張式でない熱伝達領域を含む。特定の実施形態では、熱伝達領域はバルーンを含む。特定のその他の実施形態では、熱伝達領域はバルーンを含まない。特定の実施形態では、熱伝達領域は、バルーンの外壁の一部またはコンプライアントなチュービングの長さを有する。特定の実施形態では、熱伝達領域は、コンプライアントではないチュービングの長さの外壁の一部を有する。
【0120】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、流体経路を定めて熱伝達領域に流体を提供する1つ以上のルーメン、アブレーション部位に隣接する食道組織を識別されるように構成された位置感知素子、および/または、熱伝達領域がアブレーション部位に隣接する食道組織と接触しているときに、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成された温度センサーを含む。例えば、位置感知素子は、磁気コイル、音響エミッターおよび/もしくはレシーバー、熱的撮像素子、ならびに/または、アブレーション部位、アブレーション部位に隣接する食道組織および/もしくは組織アブレーション術を実行する組織アブレーションデバイスの位置を検出するように構成された任意のその他の感知素子を含んでもよい。さらに、特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、心臓組織アブレーション術の最中にアブレーション部位に隣接する食道組織に印加される現在の圧力を測定するように構成された圧力センサーを含む。
【0121】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスに連結されたコントローラーによって、食道熱伝達デバイスの熱伝達領域に提供される流体の温度設定および/または流量設定が調整されて、心臓組織アブレーション術の最中に食道組織に対する病変、および/もしくは、その他の損傷の危険性を妨げ、または、減少させる。すなわち、食道熱伝達デバイスを通って流れる流体の温度設定および/または流量設定は、心臓組織アブレーション術の最中に調整されて、アブレーション部位に隣接する食道組織に病変が生じる危険性を妨げ、または、減少される。例えば、温度設定および/または流量設定は、現在の温度、現在の圧力、その他の食道データ、および/または、食道上での病変の形成に影響を与える任意のその他のデータに基づいて調整される。1つの特定の実施形態では、温度設定は、オペレーターが選択するパワー設定に基づいて調整される。別の特定の実施形態では、流量設定は、オペレーターが設定するパワー設定に基づいて調整される。別の特定の実施形態では、温度設定および流量設定は、オペレーターが設定するパワー設定に基づいて調整される。別の実施形態では、温度センサーが、アブレーション部位に隣接する食道組織が、食道組織において病変が生じる温度に近づいていることを検出すれば、温度設定および/または流量設定は、かかる食道組織の温度が、病変が生じない温度に向かって戻ることを引き起こすように調整される。
【0122】
C.システム
【0123】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーションの最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるためのシステムを提供する。特定の実施形態では、当該システムは、組織アブレーションデバイス、食道熱伝達デバイスおよびコントローラーを含む。コントローラーは、パワー源を介して、組織アブレーションデバイスにパワーを提供して、患者の心臓組織のアブレーション部位にて心臓組織アブレーション術を実行する。さらに、コントローラーは、流体源を介して、食道熱伝達デバイスに流体を提供して、食道熱伝達デバイスの熱伝達領域が、心臓組織アブレーション術の最中にアブレーション部位に隣接する食道の一部の温度を調整することを可能にする。
【0124】
特定の実施形態では、コントローラーは、パワー源に通信的に連結され、かつ、パワー源は、組織アブレーションデバイスのアブレーション素子に電気的に連結される。心臓組織アブレーションを実行するために、組織アブレーションデバイスは、患者の左心房の中に少なくとも部分的に挿入される。さらに、アブレーション素子は、患者の左心房におけるアブレーション部位付近に位置する。組織アブレーションデバイスは、アブレーション素子がアブレーション部位付近に位置するときに、コントローラーを介して作動するように構成されている。例えば、オペレーターが、コントローラーを介してアブレーションデバイスのパワー設定(例えば、約5ワット~50ワット)を選択する。特定の実施形態では、コントローラーは信号を送信して、パワー源が、オペレーターが選択するパワー設定にて組織アブレーションデバイスのアブレーション素子にパワーを提供することを引き起こす。例えば、コントローラーおよびパワー源は、組織アブレーションデバイスが、心臓組織アブレーション術全体を通してオペレーターが選択するパワー設定にて作動したままであることを可能にする。さらに、特定の実施形態では、組織アブレーションデバイスは、心臓組織アブレーション術全体を通してオペレーターが選択するパワー設定にて作動したままである。すなわち、かかる例では、オペレーターが選択するパワー設定は、心臓組織アブレーション術全体を通して不変のままである、一定の値である。
【0125】
特定の実施形態では、コントローラーは、流体源に通信的に連結され、かつ、流体源は、食道熱伝達デバイスの流体経路に流体的に連結される。食道熱伝達デバイスは、患者の食道内に少なくとも部分的に位置して、心臓組織アブレーション術の最中に少なくとも食道組織の温度を制御するように構成されている。例えば、食道熱伝達デバイスは、食道熱伝達デバイスの熱伝達領域に流体を提供するように構成された流体経路を定める、1つ以
上のルーメンを含む。熱伝達領域は、アブレーション部位に隣接する食道組織に熱を追加し、または、アブレーション部位に隣接する食道組織から熱を抽出するように構成されている。特定の実施形態では、熱伝達領域は、食道熱伝達デバイスの長さに沿って約1センチメートルから約15センチメートルへと延び、食道熱伝達デバイスが局所的な様式で熱を伝達することを可能にする。
【0126】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイスは、(i)心臓組織のアブレーション部位に
隣接する食道組織を識別するように構成された位置感知素子、(ii)心臓組織アブレーション術の最中にアブレーション部位に隣接する食道組織に印加される現在の圧力を測定するように構成された圧力センサー、および/または、(iii)熱伝達領域が食道組織と接
触しているときにアブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成された温度センサーを含む。食道熱伝達デバイスの感知素子は、コントローラーに通信的に連結されて、コントローラーが、感知素子によって収集される測定値に基づいて流体源を制御することを可能にする。特定の実施形態では、位置感知素子は、磁気コイル、音響変換器、熱的撮像素子、ならびに/または、アブレーション部位、アブレーション部位に隣接する食道組織、および/もしくは、組織アブレーション術を実行する組織アブレーションデバイスの位置を検出するように構成された任意のその他の感知素子を含む。さらに、特定の実施形態では、組織アブレーションデバイスは、磁気コイルおよび/または音響変換器のような位置感知素子を含み、食道熱伝達デバイスがアブレーション部位に隣接する食道組織付近に位置することを促進する。
【0127】
特定の実施形態では、コントローラーは、心臓組織アブレーション術の最中にアブレーション部位に隣接する食道組織上に病変、および/もしくは、その他の損傷が生じる危険性を妨げ、もしくは、減少させる食道熱伝達デバイスの熱伝達領域に提供される流体の温度設定ならびに/または流量設定を決定する。例えば、コントローラーは、現在の温度、現在の圧力、その他の食道データ、オペレーターが設定するパワー設定、および/もしくは、食道上での病変の形成に影響を与える任意のその他のデータに基づいて、温度設定ならびに/または流量設定を決定する。1つの特定の実施形態では、コントローラーは、オペレーターが選択するパワー設定に基づいて温度設定を決定する。別の特定の実施形態では、コントローラーは、オペレーターが選択するパワー設定に基づいて流量設定を決定する。別の特定の実施形態では、コントローラーは、オペレーターが選択するパワー設定に基づいて温度設定および流量設定を決定する。さらに、コントローラーは、流体源が、温度設定および/または流量設定にしたがって食道熱伝達デバイスに流体を提供することを引き起こす。特定の実施形態では、温度センサーが、アブレーション部位に隣接する食道組織が食道組織に病変が生じる温度に近づいていることを検出すれば、コントローラーは、流体源が、食道熱伝達デバイスに提供される流体の温度設定および/または流量設定を調整することを引き起こして、食道の温度が、病変が生じない標的温度に向かって戻ることを引き起こす。特定の実施形態では、コントローラーは、心臓組織アブレーション術の期間、温度設定および流量設定の組み合わせを調整して、心臓組織アブレーション術全体を通して病変の危険性を妨げ、または、減少させる。
【0128】
一態様では、本開示は、心臓組織アブレーション術の最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるためのシステムを提供する。特定の実施形態では、当該システムは、食道熱伝達デバイスおよびコントローラーを含む。
【0129】
食道熱伝達デバイスは、熱伝達領域と、熱伝達領域から物理的に分離されており、かつ、熱伝達領域がかかる食道組織と接触しているときに、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成されている非接触温度センサーを含む。
【0130】
食道熱伝達デバイスの温度センサーは、コントローラーに通信的に連結されて、コント
ローラーが、温度センサーによって検出される食道組織温度に基づいて流体源を制御することを可能にする。特定の実施形態では、コントローラーは、流体源に通信的に連結され、かつ、流体源は、食道熱伝達デバイスの流体経路に流体的に連結される。
【0131】
特定の実施形態では、当該システムは、流体源(食道熱伝達デバイスの熱伝達領域に流体を提供する)の温度設定および/または流量設定を調整して、心臓組織アブレーション術の最中に食道組織に対する病変、および/または、その他の損傷の危険性を妨げ、または、減少させる。すなわち、流体源の温度設定および/または流量設定は、心臓組織アブレーション術の最中に調整されて、流体源によって熱伝達領域に提供される流体の温度および/または流量を制御し得る。特定の実施形態では、温度設定および/または流量設定は、温度センサーによって検出される食道組織温度に基づいて調整される。例えば、温度センサーが、アブレーション部位に隣接する食道組織が、病変が生じる温度に近づいていることを検出すれば、温度設定および/または流量設定は、流体源から熱伝達領域へと流れる流体の温度および/または流量を制御するように調整され、次に、かかる食道組織の温度が、標的温度(すなわち、病変が生じない温度)に向かって戻ることを引き起こす。
【0132】
特定の実施形態では、当該システムは、アブレーション術に用いられるエネルギーの量(無線周波数アブレーション術における)またはアブレーション流体の温度(凍結アブレーション術における)を調整するように構成されている。いくつかのかかる実施形態では、いっそう高いアブレーションエネルギー、または、いっそう冷えたアブレーション流体が用いられてもよい。なぜなら、隣接する食道組織の同時測定および管理が、損傷からかかる組織を保護するからである。
【0133】
本明細書に記載の本技術の任意の態様の特定の実施形態では、熱伝達デバイスの外壁(組織が接触している外壁)は、高い伝熱性を有する材料を有する。いくつかのかかる実施形態では、アブレーション部位に隣接する食道組織の温度は、伝熱性の外壁と本質的に同一である。したがって、特定の実施形態では、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度の測定は、外壁の温度を測定することによって達成され得る。
【0134】
D.例示的な実施形態
【0135】
A1: 心臓組織アブレーション術の最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるための方法であって、当該方法は、(a)コントローラーを介して、オペレーターが設定するパワー設定にて組織アブレーションデバイスを作動させることを有し、組織アブレーションデバイスは、患者の心臓組織のアブレーション部位に位置し;(b)患者の食道内に食道熱伝達デバイスを位置決めすることを有し、食道熱伝達デバイスは、心臓組織のアブレーション部位付近の食道内に位置する熱伝達領域と、熱伝達領域に流体を提供する1つ以上のルーメンを含み;(c)任意選択的には、1つ以上の感知素子を介して食道データを収集することを有し;(d)食道データおよび/またはオペレーターが選択するパワー設定に基づいて、食道熱伝達デバイスを通って流れる流体についての温度設定および/または流量設定を選択して、熱伝達領域を介してアブレーション部位に隣接する食道組織の標的温度を維持することを有し;かつ、(e)コントローラーを介して流体源を調整して、温度設定および/または流量設定にしたがって食道熱伝達デバイスに流体を提供することを有する。
【0136】
A2: さらに、アブレーション部位に隣接する組織アブレーションデバイスを位置決めすることを含み;食道内に食道熱伝達デバイスを位置決めすることを含み、食道熱伝達デバイスの熱伝達領域が、アブレーション部位に隣接する食道組織に接触するようになっており;かつ、アブレーション部位に組織アブレーションデバイスを接触させて、アブレーション部位にて心臓組織のアブレーションを実行することを含む、実施形態A1に記載の方法
。
【0137】
A3: さらに、コントローラーを介して、組織アブレーションデバイスが停止することに応答して食道熱伝達デバイスを停止させることを含む、実施形態A1~A2のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
A4: さらに、食道熱伝達デバイスに対する組織アブレーションデバイスの位置を検出することを含み;かつ、組織アブレーションデバイスの位置に基づいてアブレーション部位に隣接する食道組織を識別することを含む、実施形態A1~A3のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
A5: さらに、食道熱伝達デバイスおよび/または組織アブレーションデバイスの磁気コイルを介して、組織アブレーションデバイスおよび/または食道熱伝達デバイスの位置を検出することを含む、実施形態A4に記載の方法。
【0140】
A6: さらに、食道熱伝達デバイスおよび/または組織アブレーションデバイスの音響変換器を介して、食道熱伝達デバイスに対する組織アブレーションデバイスの位置を検出することを含む、実施形態A4に記載の方法。
【0141】
A7: さらに、食道熱伝達デバイスの熱的撮像素子を介して、アブレーション部位に隣接する食道組織を識別することを含む、実施形態A1~A6のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
A8: 食道データが、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を含み、かつ、1つ以上の感知素子が、現在の温度を測定するための温度センサーを含む、実施形態A1~A7のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
A9: 食道データが、アブレーション部位に隣接する食道組織上に食道熱伝達デバイスによって印加される現在の圧力を含み、かつ、1つ以上の感知素子が、現在の圧力を測定するための圧力センサーを含む、実施形態A1~A8のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
A10: さらに、アブレーションエネルギーがアブレーション部位に印加される期間およ
び/またはアブレーションカテーテルによってアブレーション部位に印加される接触力にさらに基づいて、温度設定および/または流量設定を決定することを含む、実施形態A1~A9のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
A11: アブレーションが無線周波数アブレーションである、実施形態A1~A10のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
A12: アブレーションが凍結アブレーションである、実施形態A1~A11のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
A13: 組織アブレーションデバイスが、心臓組織アブレーション術全体を通してオペレ
ーターが選択するパワー設定にて作動したままである、実施形態A1~A12のいずれか1つ
に記載の方法。
【0148】
A14: オペレーターが選択するパワー設定が、心臓組織アブレーション術全体を通して
不変のままである一定の値である、実施形態A13の方法。
【0149】
A15: 温度設定および/または流量設定が、心臓組織アブレーション術の最中に調整さ
れて、アブレーション部位に隣接する食道組織に病変が生じる危険性を妨げ、または、減
少させる、実施形態A1~A14のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
A16: 食道データが収集され、温度設定が決定され、かつ、食道熱伝達デバイスに提供
される流体の温度が、心臓組織アブレーション術の期間、調整される、実施形態A1~A15
のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
A17: オペレーターが設定するパワー設定が、約5ワット~50ワットである、実施形
態A1~A16のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
B1: 心臓組織アブレーション術の最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるためシステムであって、当該システムは、(a)食道熱伝達デバ
イスを有し、該食道熱伝達デバイスは、(i)心臓組織のアブレーション部位に隣接する食
道組織に熱を伝達するように構成された熱伝達領域と;(ii)流体経路を定めて熱伝達領域に流体を提供する1つ以上のルーメンと;(iii)アブレーション部位に隣接する食道組織
を識別するための位置感知素子と;(iv)任意選択的には、熱伝達領域がアブレーション部位に隣接する食道組織と接触しているときに、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成された温度センサーを有し、かつ、当該システムは、(b)熱伝達領域に提供される流体の温度設定および/もしくは流量設定を決定ならびに/
または調整するように構成されたコントローラーを有する。
【0153】
B2: さらに、心臓組織アブレーション術の最中にアブレーション部位に隣接する食道組織に印加される現在の圧力を測定するように構成された圧力センサーを含み、温度設定および流量設定の組み合わせはさらに、現在の圧力に基づいて調整される、実施形態B1に記載のシステム。
【0154】
B3: 位置感知素子が、磁気コイル、音響変換器および熱的撮像素子からなる群からなる、実施形態B1~B2のいずれか1つに記載のシステム。
【0155】
B4: 熱伝達領域が、約2平方ミリメートル~約100平方ミリメートルである表面積を有する、実施形態B1~B3のいずれか1つに記載のシステム。
【0156】
B5: 熱伝達領域が、食道内バルーンであって、それを通って流体が流れて熱を伝達する前記食道内バルーンを含む、実施形態B1~B4のいずれか1つに記載のシステム。
【0157】
B6: 熱伝達デバイスが、外面と、外面の第1の部分に沿って延びて外面の第2の部分に熱伝達領域を定める絶縁層を含み、第2の部分は絶縁されていない、実施形態B1~B5のいずれか1つに記載のシステム。
【0158】
B7: 絶縁層が空気のポケットを含む、実施形態B6に記載のシステム。
【0159】
B8: 絶縁層がチュービングの厚い層を含む、実施形態B7に記載のシステム。
【0160】
B9: 外面が食道壁との滑り嵌めを形成し、患者の食道内の熱伝達領域の位置を安定化させる、実施形態B6に記載のシステム。
【0161】
B10: さらに、膨張式の部分を含み、外面が食道壁との滑り嵌めを形成することを可能
にする、実施形態B9に記載のシステム。
【0162】
B11: さらに、外面が食道壁との滑り嵌めを形成することを可能にする外径を含む、実
施形態B9に記載のシステム。
【0163】
B12: 温度センサーが食道熱伝達デバイスに埋め込まれているか、または、食道熱伝達
デバイスに取り付けられている、実施形態B1~B11のいずれか1つに記載のシステム。
【0164】
C1: 心臓組織アブレーション術の最中に患者の食道組織に対する熱的傷害の危険性を妨げ、または、減少させるためのシステムであって、当該システムは、(a)食道熱伝達デ
バイスを有し、該食道熱伝達デバイスは、(i)心臓組織のアブレーション部位に隣接する
食道組織に熱を伝達するように構成された熱伝達領域と;(ii)流体経路を定めて熱伝達領域に流体を提供する1つ以上のルーメンと;(iii)アブレーション部位に隣接する食道
組織を識別するための位置感知素子と;(iv)任意選択的には、熱伝達領域がアブレーション部位に隣接する食道組織と接触しているときに、アブレーション部位に隣接する食道組織の現在の温度を測定するように構成された温度センサーを有し;かつ、当該システムは、(b)熱伝達領域に提供される流体の温度設定および/もしくは流量設定を決定なら
びに/または調整するように構成されたコントローラーを有する。
【0165】
C2: 温度センサーが赤外線センサーであり、好ましくは電荷結合デバイスである、実施形態C1に記載のシステム。
【0166】
D1: 熱伝達デバイスであって、当該デバイスは、(a)外壁を有するチューブを有し、
外壁は、熱伝達媒体の流れのためのルーメンを少なくとも部分的に定めており;(b)外
壁の少なくとも一部を有する熱伝達領域を有し;かつ、(c)熱伝達領域に隣接する患者
の組織の温度を感知するように構成された非接触温度センサーを有し、温度センサーは、熱伝達領域から物理的に分離されている。
【0167】
D2: 温度センサーが、熱伝達領域と、熱伝達領域に隣接する患者の組織との間の熱伝達に実質的に影響を与えない、実施形態D1に記載のデバイス。
【0168】
E1: 熱伝達デバイスであって、当該デバイスは、(a)外壁を有するチューブを有し、
外壁は熱伝達媒体の流れのためのルーメンを少なくとも部分的に定めており、外壁は患者の組織に接触するように構成されており;(b)ルーメン内に配置された支持表面を有し
;かつ、(c)支持表面に取り付けられた、または、支持表面に埋め込まれた温度センサ
ーを有し、センサーは、外壁と接触している組織の温度を感知するように構成されている。
【0169】
E2: 多ルーメン熱伝達デバイスであって、当該デバイスは、(a)外壁を有するチュー
ブを有し、外壁は患者の組織に接触するように構成されており;(b)少なくとも1つの
内側の共通の支持壁によって分離された複数のルーメンを有し;かつ、(c)少なくとも
1つの内側の共通の支持壁に取り付けられるか、または、少なくとも1つの内側の共通の支持壁に埋め込まれた温度センサーを有し、センサーは、外壁と接触している組織の温度を感知するように構成されている。
【0170】
E3: 温度センサーが、外壁を横切るような熱伝達に実質的に影響を与えない、実施形態E1~E2のいずれか1つに記載のデバイス。
【0171】
E4: 温度センサーが赤外線センサーである、実施形態D1~D2またはE1~E3のいずれか1つに記載のデバイス。
【0172】
E5: 温度センサーが1つ以上の電荷結合デバイスを有する、実施形態D1~D2またはE1~E4のいずれか1つに記載のデバイス。
【0173】
E6: 温度センサーが複数の電荷結合デバイスを有する、実施形態D1~D2またはE1~E5のいずれか1つに記載のデバイス。
【0174】
E7:複数の電荷結合デバイスがアレイ状に配置されている、 実施形態E6に記載のデバイス。
【0175】
E8: 温度センサーが1つ以上の微小電子機械システムを有する、実施形態D1~D2またはE1~E6のいずれか1つに記載のデバイス。
【0176】
E9: 温度センサーが複数の微小電子機械システムを有する、実施形態D1~D2またはE1~E6もしくはE8のいずれか1つに記載のデバイス。
【0177】
E10: 複数の微小電子機械システムがアレイ状に配置されている、実施形態E9に記載の
デバイス。
【0178】
E11: チューブが、可視化装置で見える少なくとも1つのマーカーを有する、実施形態D1~D2またはE1~E10のいずれか1つに記載のデバイス。
【0179】
E12: マーカーが放射線不透過性マーカーまたは電子磁気マーカーである、実施形態E11に記載のデバイス。
【0180】
F1: 心臓アブレーション術の最中に損傷を受けやすい食道組織の温度を同時に測定および管理するための方法であって、当該方法は、患者の食道の中に先行する請求項のいずれか一項に記載のデバイスを位置決めすること、および、任意選択的には、温度センサーによって生成される信号に基づいて温度管理パラメーターを調整することを有する。
【0181】
F2: 温度管理パラメーターが、心臓の心房(好ましくは、左心房)に隣接する食道組織の温度である、実施形態F1に記載の方法。
【0182】
F3: 温度管理パラメーターが熱伝達媒体の温度である、実施形態F1に記載の方法。
【0183】
F4: 心臓アブレーション術が無線周波数アブレーション術である、実施形態F1~F3のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
F5: 心臓アブレーション術が凍結アブレーション術である、実施形態F1~F3のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
E.図面
【0186】
図面を見ると、
図1は、本明細書の教示による、例示的なアブレーションシステム100を示している。
図1に示されているように、アブレーションシステム100は、コントローラー102と、アブレーションデバイス104(組織アブレーションデバイスともいう)と、アブレーションデバイス104のためのパワー源106と、食道熱伝達デバイス108と、食道熱伝達デバイス108のための流体源110を含む。
【0187】
図示されている例では、コントローラー102は、プロセッサーとメモリーを含む。プロセッサーは、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラーに基づくプラットフォーム、集積回路、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)および/または1つ以上の特定用途集積回路(ASIC)のような、任意の適切な処理デバイスまたは処理デバイスのセットであってもよいが、それらに限定されない。メモリーは、揮発性メモリ
ー(例えば、非揮発性RAM、磁気RAM、強誘電RAMなどを含むRAM)、非揮発性メモリー(例えば、ディスクメモリー、FLASHメモリー、EPROM、EEPROM、メモリスターに基づく非揮発性固体メモリーなど)、不変メモリー(例えば、EPROM)、読み取り専用メモリー、およ
び/または、高性能蓄積デバイス(ハードドライブ、固体ドライブなど)であってもよい。特定の実施形態では、メモリーは、多数の種類のメモリー(とりわけ、揮発性メモリーおよび非揮発性メモリー)を含む。メモリーは、コンピューターで読み取り可能な媒体であって、その上に本開示の方法を作動させるためのソフトウェアのような1つ以上の命令のセットが埋め込まれ得る、前記のコンピューターで読み取り可能な媒体である。命令は、本明細書に記載の方法またはロジックのうちの1つ以上を埋め込んでいてもよい。例えば、命令は、命令の実行の最中に、メモリー、コンピューターで読み取り可能な媒体のうちの1つ以上の内に、および/または、プロセッサー内に、完全に、または、少なくとも部分的に、存在する。
【0188】
用語「固定されたコンピューターで読み取り可能な媒体」および「コンピューターで読み取り可能な媒体」は、中央化された、もしくは、分配されたデータベース、および/もしくは、1つ以上の命令のセットを格納する関連づけられたキャッシュおよびサーバーのような、単一の媒体または多数の媒体を含む。さらに、用語「固定されたコンピューターで読み取り可能な媒体」および「コンピューターで読み取り可能な媒体」は、プロセッサーによる実行のための、または、システムが本明細書に記載の方法または作動のうちの任意の1つ以上を実行することを引き起こす命令のセットを格納し、コードし、または、運搬することが可能な、任意の有形的表現媒体を含む。本明細書で用いられるとき、用語「コンピューターで読み取り可能な媒体」は、任意のタイプのコンピューター読み取り可能な格納デバイスおよび/または格納ディスクを含み、かつ、伝播信号を排除するように明示的に定められている。
【0189】
図示されている例では、コントローラー102は、アブレーションコントローラー112と食道コントローラー114を含む。アブレーションコントローラー112は、アブレーションデバイス104の作動を制御するように構成されており、かつ、食道コントローラー114は、食道熱伝達デバイス108の作動を制御するように構成されている。例えば、アブレーションコントローラー112は、パワー源106に通信的に連結され(例えば、有線または無線接続を介して)、かつ、パワー源106は、アブレーションデバイス104のアブレーション素子116(例えば、先端電極)に電気的に連結されて、アブレーションコントローラー112がパワー源106を介してアブレーションデバイス104の作動を制御することを可能にする。さらに、食道コントローラー114は、流体源110(例えば、有線または無線接続を介して)および食道熱伝達デバイス108の任意選択的な感知素子に通信的に連結され、かつ、流体源110は、食道熱伝達デバイス108の流体経路に流体的に連結されて、食道コントローラー114が、食道熱伝達デバイス108の感知素子に収集されるデータに基づいて流体源110を介して食道熱伝達デバイス108の作動を制御することを可能にする。流体源110は、種々の従来のように設計された熱交換器(例えば、Arctic Sun Temperature Management System (Bard Medical社)、Medi-Therm III Conductive Hyper/Hypothermia System (Gaymar/Stryker社)、Blanketrol
II もしくはBlanketrol III Hyper-Hypothermia System (Cincinnati Sub-Zero社)また
は同等のユニット)のいずれかのような熱交換器であってもよい。特定の実施形態では、流体源110は、陰圧を介して流体を提供するように作動してもよい。流体は、例えば亜酸化窒素、フレオン、二酸化炭素または窒素のような気体であってもよい。代替的には、流体は、例えば水、生理食塩水、プロピレングリコール、エチレングリコール、または、それらの混合物のような液体であってもよい。特定の例では、流体は水または生理食塩水である。その他の例では、流体は、例えば冷却ゲルのようなゲルであってもよい。その他の例では、流体は、粉体を液体と混合することによって形成されてもよい。したがって、上記の媒体の組み合わせ、および/または、混合物は、本技術にしたがって熱伝達媒体を
獲得するように採用されてもよいことが理解されるべきである。
【0190】
図1に示されているように、アブレーションデバイス104は、無線周波数(RF)アブレーション、凍結アブレーション、および/または、その他のアブレーション術を介して患者の組織をアブレーションするように構成されたアブレーション素子116を含む。例えば、アブレーションコントローラー112は、オペレーターがアブレーションデバイス104のためにパワー設定を選択することを可能にする入力デバイス(例えば、制御ノブ、インストルメントパネル、タッチスクリーン、ボタン、タッチパッド)を含む。例えば、オペレーターが選択するパワー設定は、約5ワット~約50ワットの最大範囲を有する。アブレーションコントローラー112は、パワー源106に信号を送信する。パワー源106は、アブレーションコントローラー112から対応する信号を受信することに応答してオペレーターが選択するパワー設定にてアブレーションデバイス104のアブレーション素子116にパワーを提供する。さらに、特定の実施形態では、アブレーションデバイス104は、任意選択的なカメラ118、および/または、その他の感知デバイスを含み、アブレーション部位の位置を識別する。追加的または代替的には、アブレーションデバイス104は、アブレーションデバイス104の位置が識別されることを可能にする位置感知素子120(例えば、磁気コイル、音響変換器)を含む。例えば、アブレーションデバイスは、アブレーションデバイス104の位置が識別されることを可能にする1つ以上の磁気コイル(例えば、1つ、2つ、または、3つの磁気コイル)を含んでもよい。特定の実施形態では、アブレーションデバイス104は、1つ以上のリング電極122を含む。
【0191】
図示されている例の食道熱伝達デバイス108は、熱伝達領域(例えば、
図2Aの熱伝
達領域222)へと、または、熱伝達領域から移動する流体のための流体経路を定める1つ以上のルーメン(例えば、
図2Aの供給ルーメン214、
図2Aの戻しルーメン216)を含む。さらに、食道熱伝達デバイス108は、任意選択的な感知素子を含み、患者の食道の食道データおよび/または食道熱伝達デバイス108の位置データを収集する。例えば、食道コントローラー114は、食道熱伝達デバイス108の位置感知素子(例えば、磁気コイル、音響変換器、熱的撮像素子)からデータを収集して、アブレーション部位に対する食道熱伝達デバイス108、アブレーション部位に隣接する食道組織、および/または、アブレーションデバイス104の位置を識別する。追加的または代替的には、食道熱伝達デバイス108は、食道熱伝達デバイス108の位置が識別されることを可能にする(例えば、アブレーションデバイスおよび/または傷害の危険性があるものとして識別される食道組織に対して)、位置感知素子(例えば、磁気コイル、音響変換器)を含む。例えば、食道熱伝達デバイスは、食道熱伝達デバイス108の位置が識別されることを可能にする1つ以上の磁気コイル(例えば、1つ、2つ、または、3つの磁気コイル)を含んでもよい。
【0192】
さらに、図示されている例の食道コントローラー114は、食道熱伝達デバイス108の感知素子のうちの1つ以上から食道データを収集する。特定の実施形態では、食道コントローラー114は、患者の食道組織と食道熱伝達デバイス108との間の熱の伝達に影響を与えるその他のデータ(例えば、アブレーションデバイス104についてのオペレーターが選択するパワー設定、アブレーション部位へのアブレーションエネルギーの印加の期間、および/または、アブレーションカテーテルによってアブレーション部位に印加される接触力)を収集する。収集されたデータに基づいて、食道コントローラー114は、アブレーション部位に隣接する食道組織が標的温度を維持することを可能にする食道熱伝達デバイス108における流体経路に沿って流れる流体についての温度設定および/または流量設定を決定する。例えば、病変は、約37℃~約50℃の温度を有する食道の一部に沿って生じない。特定の実施形態では、標的温度は特定の値である。その他の例では、標的温度は広範な値である。温度設定および/または流量設定を決定する際、食道コント
ローラー114は、流体源110に信号を送信する。次に、流体源110は、温度設定および流量設定にしたがって食道熱伝達デバイス108の流体経路に流体を提供する。例えば、収集された食道データに基づいて、食道コントローラー114は、流体源110が、アブレーション術の最中に食道熱伝達デバイス108に提供される流体の温度設定および/または流量設定を調整されることを引き起し、食道組織(とりわけ、アブレーション部位に隣接する食道組織)の温度が、病変が生じない標的温度のままであるか、または、病変が生じない標的温度に向かって戻ることを引き起こす。
【0193】
追加的または代替的には、アブレーションデバイスおよび/または食道熱伝達デバイスは、食道熱伝達デバイス108に対するアブレーションデバイス104の位置が識別されることを可能にする位置感知素子(例えば、磁気コイル、音響変換器)を含む。
【0194】
図2Aは、
図1の食道熱伝達デバイス108の例を示している。図示されている例では
、食道熱伝達デバイス108は、内腔204を含む熱伝達体202を含む。さらに、図示されている例の食道熱伝達デバイス108は、近位端206と遠位端208を含む。熱伝達体202は、近位端206と遠位端208との間を延びる。食道熱伝達デバイス108はまた、入口ポート210と出口ポート212を含む。入口ポート210は、食道熱伝達デバイス108の供給ルーメン214に流体的に接続され、かつ、出口ポート212は、食道熱伝達デバイス108の戻しルーメン216に流体的に接続される。供給ルーメン214および戻しルーメン216は互いに流体連通しており、そのことによって、食道熱伝達デバイス108を通る流体および/または熱伝達媒体の流れのための流体経路を定める。
【0195】
図2Aに示されているように、入口ポート210は、流入チューブ218に接続するよ
うに構成され、かつ、出口ポート212は、流出チューブ220に接続されるように構成されている。例えば、流入チューブ218および流出チューブ220は、流体源110に連結されて、流体源110から流体を受け取り、かつ、流体源110へと流体を戻す。したがって、流入チューブ218および流出チューブ220は、流体源110および食道熱伝達デバイス108に流体的に接続して、流体が流体源110と食道熱伝達デバイス108との間を流れて、食道熱伝達デバイス108の熱伝達領域222を加熱または冷却することを可能にする。すなわち、供給ルーメン214および戻しルーメン216は、すなわち、供給ルーメン214および戻しルーメン216は、流体経路を定めて、流体が熱伝達領域222に流れることを可能にし、かつ、熱伝達領域222は、患者の組織(例えば、アブレーション部位に隣接する食道組織)に熱を追加し、または、患者の組織から熱を抽出する。例えば、流入チューブ218が入口ポート210に連結され、かつ、流出チューブ220が出口ポート212に連結されるとき、流体は、流体源110から、流入チューブ218を通って、供給ルーメン214の中へと流れて、熱伝達領域222にて流体を介して患者を加熱または冷却する。さらに、流体は、供給ルーメン214から、戻しルーメン216を通って、流出チューブ220へと流れて、流体源110に戻るように流体を循環させる
【0196】
食道熱伝達デバイス108は、心臓組織アブレーション術を経験する患者の食道内の配置のために構成されている。食道熱伝達デバイス108の遠位端208は、本体オリフィスの中への挿入のために構成されている。例えば、食道熱伝達デバイス108の遠位端208は、患者の鼻孔、口、肛門または尿道の中への挿入のために構成されている。適切に挿入されるとき、食道熱伝達デバイス108の遠位端208は、食道および/または心臓組織アブレーション術の最中に損傷を受けやすいその他の解剖学的構造内に最終的に位置する。患者の中への食道熱伝達デバイス108の挿入(例えば、鼻腔または口を介して)の際、食道熱伝達デバイス108の熱伝達体202は、患者の食道組織に直接的に接触するように構成されている。例えば、食道熱伝達デバイス108が患者の食道の中に挿入さ
れるとき、熱伝達体202の少なくとも一部が患者の食道上皮に直接的に接触する。図示されている例では、熱伝達体202は、可撓性チュービング224を含み、かつ、遠位端208と近位端206との間に概して配置される。その他の例では、熱伝達体202は、可撓性チュービング224および食道熱伝達デバイス108の遠位端208によって定められる。
【0197】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイス108はまた、胃アクセスルーメン228を定め、かつ、食道熱伝達デバイス108の遠位端208へと延びる、任意選択的な胃アクセスチューブ226を含む。さらに、食道熱伝達デバイス108は、胃アクセスチューブ226の側面に沿って1つ以上のポート230を含む。図示されている例では、食道熱伝達デバイス108の遠位端208にて胃アクセスチューブ226に沿って、1つ以上のポート230が配置されている。1つ以上のポート230は、食道熱伝達デバイス108の外側の空間と胃アクセスルーメン228との間の連絡を提供してもよい。例えば、1つ以上のポート230は、患者の胃と胃アクセスルーメン228との間のポータルとして作用して、胃の内容物が患者の胃から胃アクセスルーメン228を通って外へと吸引されることを可能にしてもよい。1つ以上のポート230の存在は、半固体の胃の内容物からの胃アクセスルーメン228の妨害の減少した可能性を提供する。代替的には、多数の胃アクセスルーメンが採用されてもよい。1つ以上のポート230の追加は、胃の内容物の除去を改善および向上させるであろうし、次に、胃粘膜と食道熱伝達デバイス108の熱伝達体202との間の接触を改善させるであろう。かかる改善された接触は、食道熱伝達デバイス108と胃粘膜との間の熱伝達を向上させるであろうし、したがって、患者の加熱または冷却を向上させるであろう。
図2に示されているポート230の構成は、楕円形である。しかしながら、ポート230は、例えば、円形、四角形、または、胃から胃アクセスルーメン228への胃の内容物の流れを可能にする任意のその他の形状であり得る。
【0198】
図2Aに示されているように、食道熱伝達デバイス108は、外面232を含む。例え
ば、熱伝達体202は、可撓性チュービング224の外面232を含む。さらに、熱伝達体202の外面232の一部(例えば、第1の部分)に沿って絶縁層234が延びて、外面232の別の部分(例えば、第2の部分)に沿って熱伝達領域222を定める。例えば、絶縁層234は、患者の食道組織と食道熱伝達デバイス108を通って流れる流体との間の熱伝達を実質的に妨げる材料を含む。絶縁層234は、熱伝達領域222を欠き(すなわち、熱伝達領域222には配置されておらず)、患者の食道と、熱伝達領域222にて食道熱伝達デバイス108を通って流れる流体との間の熱伝達を促進する。特定の実施形態では、絶縁層234は、チュービングの厚い層を含み、食道熱伝達デバイス108の流体を絶縁させる。追加的または代替的には、絶縁層234は、食道熱伝達デバイス108の流体を絶縁させる空気のポケットを含む。図示されている例では、絶縁層234によって定められる熱伝達領域222は、実質的に小さい表面積を有し、食道熱伝達デバイス108が、局所的な様式で患者の食道に熱を追加し、または、患者の食道から熱を抽出することを可能にする。例えば、熱伝達領域222の長さは、患者の食道の長さ未満であってもよい。特定の実施形態では、熱伝達領域222は、熱伝達体202に沿う長さが約1センチメートル~約15センチメートル、代替的には熱伝達体202に沿う長さが約2センチメートル~約10センチメートル、代替的には熱伝達体202に沿う長さが約3センチメートル~約7センチメートル、または、代替的には熱伝達体202に沿う長さが約4センチメートル~約6センチメートルである。さらに、特定の実施形態では、熱伝達体202は、食道熱伝達デバイス108の外面232が、患者の食道の壁との滑り嵌めを形成して、患者の食道内で熱伝達領域222の位置を安定化させることを可能にする外径を有する。
【0199】
図示されている例の食道熱伝達デバイス108はまた、熱伝達領域222に、かつ/または、熱伝達領域222付近に位置する温度センサー236、圧力センサー238および
位置感知素子240を含む。例えば、温度センサー236は、熱伝達領域222が食道壁と接触しているときに患者の食道組織の温度を測定するように構成されている。さらに、圧力センサー238は、患者の食道組織上に食道熱伝達デバイス108によって印加される圧力を測定するように構成されている。例えば、熱伝達領域222が患者の心臓組織のアブレーション部位に隣接する食道組織と接触しているとき、温度センサー236は、かかる食道組織の現在の温度を測定するように構成され(例えば、任意選択的には、センサーを通る熱伝達を可能にしながら)、かつ、圧力センサー238は、食道組織に印加される現在の圧力を測定するように構成されている。追加的または代替的には、食道熱伝達デバイス108は、食道コントローラー114が用いるであろう食道データを収集して、流体源110から食道熱伝達デバイス108の中へと流れる流体についての温度設定および/または流量設定を決定するように構成可能な任意のその他のタイプの感知素子を含む。さらに、位置感知素子240は、アブレーション部位に隣接する食道組織および/または熱伝達デバイス108の位置を識別するように構成されている。例えば、位置感知素子240は、オペレーターが、アブレーションデバイス104、心臓組織のアブレーション部位、および/または、アブレーション部位に隣接する食道組織付近に食道熱伝達デバイス108の熱伝達領域222を位置決めすることを容易にする。特定の実施形態では、位置感知素子240は、オペレーターが食道のその他の部分の温度に対するかかる食道組織に基づいてアブレーション部位に隣接する食道組織を識別することを可能にする画像を収集するために利用される熱的撮像素子である。別の例として、位置感知素子240は、磁場源によって生成される磁場に応答して受信信号を生成して、食道熱伝達デバイス108の位置を決定し得る磁気コイルである。さらに別の例として、位置感知素子240は、音響波を発するように構成され、かつ、さらに、信号のパルス-エコー反射を受け取り、かつ、プロセッサーへと信号を通信して、食道熱伝達デバイス108に対するアブレーションデバイス104の位置を決定するように構成された音響変換器である。
【0200】
特定の実施形態では、食道熱伝達デバイス108は、押出またはオーバーモールドプロセスを介して製造される。例えば、押出またはオーバーモールドプロセスを利用して食道熱伝達デバイス108を形成することは、接合点を封止し、または、エンドキャップを取り付け、かつ、漏れが発生する点を減少させる必要性を除去するであろう。特定の実施形態では、製造プロセスは、オーバーモールドプロセスを有し、漏洩箇所を減少させ、最小化させ、または、除去する。特定の実施形態では、可撓性チュービング224および胃アクセスチューブ226は、押出を介して一体的に形成される。その他の例では、可撓性チュービング224は押出を介して形成され、胃アクセスチューブ226は、押出を介して別個に形成され、かつ、胃アクセスチューブ226は、可撓性チュービング224によって定められた内腔204の中に後で挿入される。
【0201】
図2Bは、熱伝達媒体の流れのためのルーメン264を少なくとも部分的に定める外壁
262を有する例示的な食道熱伝達デバイスの断面図である。ルーメン264はまた、内側支持壁266によって定められる。例えば赤外線温度センサーであってもよい非接触温度センサー268が、内側支持壁266に取り付けられ、または、内側支持壁266に埋め込まれる。患者の食道への配置の際、外壁262の少なくとも一部が、患者の食道組織と熱的に接触している。したがって、温度センサー268は、患者の食道組織と熱的に接触している外壁262の一部から物理的に分離されている(例えば、ルーメン264および外壁262によって)。
【0202】
図3は、食道熱伝達デバイスの別の例を示している。図示されている例では、食道熱伝達デバイスの熱伝達領域300は、第1のバルーン302を含む。例えば、第1のバルーン302は、流体で膨張し得る。特定の実施形態では、第1のバルーン302(すなわち、膨張可能な部分)は、食道熱伝達デバイスの外面306が、患者の食道の壁との滑り嵌めを形成することを可能にする。さらに、図示されている例の食道熱伝達デバイスは、患
者の食道内の熱伝達領域300の位置を安定化させる係留バルーン304を含む。例えば、係留バルーン304は、患者の胃に食道熱伝達デバイスを係留して、患者の食道内の熱伝達領域300を位置決めする。
【0203】
図4はさらに、食道熱伝達デバイスの別の例の熱伝達領域400を示している。図示されている例では、熱伝達領域400はバルーン402を含む。例えば、バルーン402は、コンプライアントな食道内バルーンであって、それを通って生理食塩水、および/または、その他の流体が流れて食道熱伝達デバイスと患者の食道組織との間で熱を伝達する、前記のコンプライアントな食道内バルーンである。特定の実施形態では、温かい生理食塩水、および/または、その他の流体は、食道熱伝達デバイスの熱伝達領域400のバルーン402を通って流れて、食道組織(例えば、凍結アブレーション部位に隣接する食道組織)を温める。その他の例では、冷たい生理食塩水、および/または、その他の流体は、バルーン402を通って流れて、食道組織(例えば、無線周波数アブレーション部位に隣接する食道組織)を冷却する。特定の実施形態では、バルーン402(すなわち、膨張可能な部分)は、患者の食道の壁との滑り嵌めを形成する。特定の実施形態では、バルーン402の長さは、約1センチメートル~約15センチメートル、代替的には約3センチメートル~約7センチメートルまたは約4センチメートル~約6センチメートルであり、そのことによって、食道熱伝達領域400と患者の組織の一部との間の局所化された熱伝達を提供する。
【0204】
図5は、患者502の中に挿入されたアブレーションシステム100のアブレーションデバイス104および食道熱伝達デバイス108を描いている。いっそう具体的には、
図5は、患者502の心臓504の中に挿入されたアブレーションデバイス104および患者502の食道506の中に挿入された食道熱伝達デバイス108を描いている。
【0205】
図示されている例では、アブレーションデバイス104は、患者の心臓504の左心房508の中に挿入され、アブレーションデバイス104のアブレーション素子116(
図5には図示されていない)が、患者502の心房壁部512におけるアブレーション部位510と接触するようになっている。例えば、アブレーション部位510は、蛍光透視法によって、または、電気解剖学的マッピングシステムから取得されたもののような画像および/またはアブレーションデバイス104のカメラ118によって撮られた映像に基づいて、アブレーションシステム100のオペレーターによって識別される。
【0206】
図5に示されているように、食道熱伝達デバイス108は患者502の食道506の中に挿入され、熱伝達領域(
図5には示されていない)が、心房壁部512のアブレーション部位510に隣接する食道の食道壁516の一部514と接触するようになっている。図示されている例では、食道壁516の一部514は、アブレーション部位510に、直接的もしくは心膜繊維脂肪性層を介して間接的に接触し、かつ/または、そうでなければアブレーション部位510付近に位置し、アブレーションデバイス104によってアブレーション部位510に加えられる熱が、少なくとも部分的に食道壁516の一部514に伝達するようになっている。特定の実施形態では、アブレーションシステム100のオペレーターは、食道熱伝達デバイス108の位置感知素子240を利用して、食道壁516の一部514、アブレーション部位510および/またはアブレーションデバイス104付近で熱伝達領域を識別および位置決めする。さらに、図示されている例では、食道熱伝達デバイス108は、口518を通って、咽頭520を超えて患者502の食道506の中に挿入される。追加的または代替的には、食道熱伝達デバイス108は、患者502の鼻腔を介して食道506の中に挿入されるように構成されている。
【0207】
図6はさらに、患者502の食道506の中に挿入された例示的な食道熱伝達デバイス602の一部を描いている。図示されている例では、食道熱伝達デバイス602の熱伝達
領域604は、心臓504の心房壁部512のアブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514に近づいている。
【0208】
図7は、アブレーションシステム100の電子コンポーネント700のブロック図である。
図7に示されているように、コントローラー102は、アブレーションコントローラー112と食道コントローラー114を含む。
【0209】
図示されている例のアブレーションコントローラー112は、アブレーションデバイス104の感知素子702に通信的に連結される。例えば、感知素子702は、磁気コイル706、音響変換器708、および/または、オペレーターがアブレーション部位510に対してアブレーションデバイス104のアブレーション素子116を位置決めすることを容易にする任意のその他のタイプの位置感知素子を含む。アブレーションコントローラー112はまた、パワー源106に通信的に連結されて、パワー源106に、アブレーションデバイス104のアブレーション素子116にオペレーターが選択するパワー設定に提供するように命令する。
【0210】
図示されている例の食道コントローラー114は、食道熱伝達デバイス108の感知素子710に通信的に連結される。例えば、感知素子710は、熱的撮像素子712、磁気コイル714、音響変換器716、ならびに/または、オぺレーターがアブレーション部位510に対する食道熱伝達デバイス108の熱伝達領域、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514、および/もしくは、アブレーションデバイス104を位置決めすることを容易にする任意のその他のタイプの位置感知素子を含む。さらに、感知素子710は、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514の現在の温度を測定するように構成された温度センサー236と、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514の上に印加される現在の圧力を測定するように構成された圧力センサー238を含む。追加的または代替的には、感知素子710は、食道コントローラー114が食道熱伝達デバイス108を通って流れる流体についての温度設定および/または流量設定を決定することを容易にする食道506の食道データを収集するように構成された任意のその他のタイプの感知素子を含む。食道コントローラー114はまた、流体源110に通信的に連結されて、流体源110に、温度設定および/または流量設定にしたがって食道熱伝達デバイス108に流体を提供するように命令する。
【0211】
図8は、心臓アブレーション術の最中に食道熱伝達デバイスを介して患者の食道組織を保護するための例示的な方法800のフローチャートである。
図8のフローチャートは、メモリーに格納され、かつ、1つ以上のプログラム(プロセッサーによって実行されるとき、アブレーションコントローラー112、食道コントローラー114、および/または、いっそう具体的には
図1および7のコントローラー102を引き起こす)を含む、機械で読み取り可能な命令を示す。例示的なプログラムが
図8に示されているフローチャートを参照して説明される一方で、例示的なコントローラー102を実装する多くのその他の方法が、代替的に用いられてもよい。例えば、ブロックの実行のオーダーは、再構成され、変更され、除去され、かつ/または、組み合わされて方法800を実行してもよい。さらに、方法800は、
図1~7のコンポーネントと関連して開示されるので、それらのコンポーネントのいくつかの機能は、以下で詳細に説明されないであろう。
【0212】
最初に、ブロック802において、アブレーションデバイス104は、心房壁部512のアブレーション部位510にて、かつ/または、心房壁部512のアブレーション部位510付近で、患者502の心臓504内に位置する。例えば、アブレーションデバイス104は、アブレーションデバイス104のアブレーション素子116が、アブレーション部位510に接触し、かつ/または、アブレーション部位510に隣接するように位置する。ブロック804において、食道熱伝達デバイス108は、患者502の食道506
内に位置する。
【0213】
ブロック806において、食道熱伝達デバイス108の熱伝達領域222はアブレーション部位510付近に位置して、食道熱伝達デバイス108の熱伝達領域222が、心房壁部512のアブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514と接触するようになっているか否かが判定される。特定の実施形態では、食道壁516の一部514の相対的な位置は、食道熱伝達デバイス108の熱的撮像素子712を介して識別される。例えば、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514は、アブレーション術の最中に食道506のその他の部分より温かいか、または、冷たい。さらに、特定の実施形態では、食道熱伝達デバイス108に対するアブレーションデバイス104の位置が検出され、かつ、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514の相対的な位置は、アブレーション部位510に配置されたアブレーションデバイス104の相対的な位置に基づいて識別される。例えば、アブレーションデバイス104の位置は、アブレーションデバイス104の磁気コイル706を介して検出される。別の例として、食道熱伝達デバイス108に対するアブレーションデバイス104の位置は、それぞれ、アブレーションデバイス104および食道熱伝達デバイス108の音響変換器708,716を介して検出される。
【0214】
食道熱伝達デバイス108の熱伝達領域222が、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514付近にはなく、かつ/または、アブレーション部位に隣接する食道壁516の一部514に接触していないことを判定されることに応答して、方法800は、食道熱伝達デバイス108の位置が食道内506で調整される、ブロック808へと進む。そうでなければ、食道熱伝達デバイス108の熱伝達領域222が、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514付近にあり、かつ/または、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514に接触していることを判定されることに応答して、方法800は、ブロック810へと進む。
【0215】
ブロック810において、アブレーションコントローラー112は、オペレーターが選択するパワー設定にてアブレーションデバイス104を作動させる。さらに、アブレーションデバイス104のアブレーション素子116は、アブレーション部位510と接触して配置されて、心房壁部512の一部をアブレーションする。例えば、アブレーション素子116は、アブレーションデバイス104がオペレーターが選択するパワー設定にて作動するとき、アブレーション部位510と接触して配置されて、無線周波数アブレーションを実行する。特定の実施形態では、アブレーションデバイス104は、アブレーション術全体を通してオペレーターが選択するパワー設定にて作動したままである。いくつかのかかる実施形態では、オペレーターが設定するパワー設定は、アブレーション術全体を通して不変のままである、一定の値(例えば、約5ワット~50ワット)である。
【0216】
ブロック812において、食道コントローラー114は、患者502の食道506内に位置する食道熱伝達デバイス108の感知素子710の1つ以上から食道データを収集する。例えば、収集される食道データは、食道熱伝達デバイス108の温度センサー236を介して測定されるアブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514の現在の温度、および/または、食道熱伝達デバイス108の圧力センサー238を介して測定されるアブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514の上に印加される(例えば、食道熱伝達デバイス108によって)現在の圧力を含む。
【0217】
ブロック814において、食道コントローラー114は、収集された食道データ、オペレーターが選択するパワー設定、アブレーション部位に対するアブレーションエネルギーの印加の期間、および/または、アブレーションカテーテルによってアブレーション部位に印加される接触力に基づいて、流体源110によって食道熱伝達デバイス108に提供
される流体の温度および/または流量を決定して、熱伝達領域222が、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514の標的温度を維持して、持続可能な病変を取得する能力と実質的に干渉することなくアブレーション術の最中に病変が食道506上に形成することの危険性を妨げ、または、減少させることを可能にする。特定の実施形態では、食道コントローラー114は、オペレーターが選択するパワー設定、アブレーションエネルギーがアブレーション部位に印加される期間、および/もしくは、アブレーションカテーテルによってアブレーション部位に印加される接触力に基づいて、温度ならびに/または流量を決定する。
【0218】
ブロック816において、食道コントローラー114は、流体源110が、選択された温度および/または流量にしたがって食道熱伝達デバイス108に流体を提供することを引き起こす。ブロック818において、コントローラー102は、アブレーション術が完了したか否かを判定する。
【0219】
コントローラー102が、アブレーション術が完了していないと判定することに応答して、方法800はブロック810へと戻り、食道コントローラー114が、標的温度にてアブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514を維持することを可能にする。例えば、アブレーション術の最中、食道コントローラー114は流体源110を調整して、調整された温度および/または流量にて食道熱伝達デバイス108に流体を提供する。温度および/または流量は、アブレーション術の最中に食道コントローラー114によって調整されて、アブレーション部位510に隣接する食道壁516の一部514にて病変が生じる危険性を妨げ、または、減少させる。
【0220】
ブロック818に戻ると、コントローラー102が、アブレーション術が完了することを判定することに応答して、方法800はブロック820へと進む。ブロック820において、食道コントローラー114は、アブレーションデバイス104が停止したことを判定することに応答して食道熱伝達デバイス108を停止させる。
【実施例0221】
F.実施例
【0222】
以下の実施例は説明的に過ぎず、いかなる様式でもこの開示に限定するものではない。
【0223】
実施例1.ブタモデル。
【0224】
方法
【0225】
デザイン。この予期される介入性の研究は、ミネソタ州ミネアポリスのAmerican Preclinical ServicesのInstitutional Animal Care and Use Committee (IACUC)による承認済みプロトコル下で、追加の2人の開業している大学系の電気生理学者からのインプットおよび貢献を用いた、開業電気生理学者および心臓学の助教授を含む、経験のあるチームによって実行された。研究は、最新技術であるAssociation for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care (AAALAC) Internationalが認定した動物施設を用いた
、現在の獣医学およびUSDAと一貫した方法を利用した。動物飼育および取り扱いは、Office of Laboratory Animal Welfare guidance for humane care and use of animalsおよ
びUSDA Animal Welfare Act (9 CFR Parts 1, 2および3)に概略が示された規則およびGuide for the Care and Use of Laboratory Animals (National Academy Press, Washington DC, 1996)において特定された条件にしたがった。選択されたサイズのブタモデルは、
心房細動の予防のためにアブレーションを経験する典型的な成人の患者と、サイズ、生理機能および胸部の解剖学的構造において類似性を有する。
【0226】
手順。構内に収容された、平均体重81.5kg±7kgの総計6頭のオスのヨークシャーブタに、介入前に12時間の食事制限が与えられたが、水へのアクセスは自由であった。対象は、テラゾール(チレタミン/ゾラゼパム)/キシラジン3.5~5.5mg/kgの麻酔前混合物を筋肉内に投薬され、気管内に挿管され、かつ、3%吸入イソフルラン(麻酔を維持するのに必要とされるように調整された濃度を有する)で麻酔された。麻痺患者は、研究のいかなる部分の最中にも用いられなかった。通常の生理食塩水が、耳静脈を介して維持率(2cc/kg/hr)にて滴下された。連続的な心臓モニタリングが、リードが3つのEKGリズムリコーダーを用いて実行された。
【0227】
介入。標準的な手順に続いて、例示的な食道熱伝達デバイスが配置された。簡潔には、該デバイスは、外部の熱交換ユニット(ミシガン州カラマズーのStryker Corp.社製Medi-Therm IIIまたはテキサス州フラワーマウンドのThermotek Inc.社製Thermotek Harmonyのいずれか(両方とも、それぞれ、115L/時間または60L/時間の流量で4℃~42℃の温度範囲にて冷却剤として蒸留水を循環させる))に接続された。水流が開始された後、デバイスの先端が水溶性潤滑剤で潤滑され、かつ、中咽頭を通して食道の中に、先端が胸部食道の上に留まるのに十分な深度で挿入された。
【0228】
病変配置。各対象において、右側面開胸術が実行されて食道の領域を露出させた。食道の長さに基づいて、6~10の範囲のアブレーションが、食道上に直接配置された。4mmアブレーションカテーテル(ミネソタ州セントポールのSt. Jude Medical 社製Safire 7Fr Quadripolar Catheter)が用いられ、RF生成器(カリフォルニア州アーヴァインのIrvine Biosciences Inc.社製IBI 1500T9 RF)によってパワーを与えられた。アブレーションエネルギーが、30~45秒間で10Wに設定された。1つの病変において、20Wが利用された。第1の病変上で接触力が測定され、圧力要件(15g)を標準規格に合わせ、かつ
、後に続く病変が、経験のある電気生理学医によって手動で実行された。
【0229】
デバイス内の流れなく静止して保持された37℃の水を用いて(すなわち、水の循環がない)、対照病変が実行された。2つの異なる流量にてデバイス内を循環する冷却された水(5℃~37℃の範囲)を用いて、治療病変が実行された。各対象は、対照および治療病変の組み合わせを受けた。粘膜病変の存在は、トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)染色後に視覚的に評価され、かつ、熱的傷害の深度は、DVM and Diplomate, American College of Veterinary Pathologistsによって実行された、標的組織の組織学によ
って測定された。説明的統計は、独立したサンプルt検定を介して平均と比較して報告さ
れる。
【0230】
結果
【0231】
6頭のブタ(平均質量81.5±7kg)にわたって、総計52のアブレーションが実行された。実験パラメーターを確証するために、6つのアブレーションが用いられた。総計46のアブレーションには、分析のために23の治療と23の対照が含まれた。対象の142の状況下で実行されたすべてのアブレーションが、外部の食道病変を生成した。食道粘膜の中へと延びる経壁的病変は、80kg未満の対象における30秒の10WのRFエネル
ギー印加後の全般的実験において一貫して目に見えた。80kgより大きい対象では、30秒の期間の場合の少なくとも20%および45秒の期間の場合の70%において経壁的な病変が取得された。
【0232】
対照的に、30または45秒間、37℃、10℃または5℃の循環する水を用いて10WのRFエネルギーを用いた治療条件下で実行されたアブレーションは、目に見える経壁的
病変を生成せず、かつ、6つのアブレーション(25%)のみが、目に見える外部病変を
生成した。最も侵襲的な治療条件(5℃の循環する水)の最中に実行されたアブレーションは、アブレーションカテーテルとの接触点において食道の外面を含む、食道筋系の厚さ全体を通していかなる目に見える病変を示さなかった。
【0233】
最大病変厚さが判定され、かつ、最大組織厚さで割られた
図9に示されている測定方法を用いて、病理組織学的評価が実行された。病変厚さの測定値は、食道熱伝達デバイスを通って流れる水温が低下するにつれて病変の経壁率が低下したことを確認した(表1A)
。
図10は、結果のグラフ表示を示している。10Wのパワーを用いた10℃の水流およ
び30秒間での冷却の最中、RFアブレーションの領域においていかなる病変も識別されなかった。37℃の水を用いた対照(45秒の適用)からの経壁率の絶対的低下は、16.0%(p=0.2)である一方、30℃の水を用いた経壁率の絶対的低下は、33.6%
(p=0.02)であり、かつ、5℃の水を用いた絶対的低下は、35.6%(p=0.02)である。30秒のRF適用時間を用いた群では、37℃の水を用いた対照からの経壁率の絶対的低下は、5.1%(p=0.7)である一方、10℃の水を用いた経壁率の絶対
的低下は、69.7%(p<0.001)であり、かつ、5℃の水を用いた絶対的低下は
、44.5%(p<0.001)である。平均粘膜下浮腫スコア、粘膜筋板損傷スコアお
よび上皮損傷スコアは、冷却剤温度の低下(したがって、熱抽出性能の増大)とともに同様に低下した。表1B参照。
【0234】
【0235】
【0236】
スコア: (0) = なし; (1) = 最小; (2) = 軽い; (3) = 中間; (4) = 深刻
【0237】
この実施例で提示されたデータは、RFエネルギーアブレーションの適用からの食道傷害に対する食道冷却デバイスの有意な保護性能を示唆する。熱交換器の2つのモデル(60L/時間または115L/時間の流量を供給する)のいずれかによってデバイスに供給された5℃の水温を用いて、30秒間10WにおけるRFエネルギーの直接的な印加が、熱的影
響の視覚的証拠を引き出し得なかった。対照的に、デバイスを通る水流の存在しない対照条件下では、この同じエネルギーは、肉眼的所見において目に見える完全に経壁的な病変をもたらした。37℃の冷却剤温度でさえ、保護効果が見られ、高い冷却剤流量がこの効果の重要な構成要素であるかも知れないことを示唆した。
【0238】
直接的冷却を介した食道保護の領域における先行する業績は概して、有意に低い冷却剤の流量を利用した。冷却された食道内バルーンの効果を調査した有限要素モデルは、このアプローチが、左心房の手術中のアブレーションの最中に食道に対する熱的傷害を防止するための実行的な方法であり得ることを示唆し、著者は、冷却流体の温度が、冷却率より病変の最小化に対して有意な効果を有することを示唆したが、実際の流量は、未加工の冷却剤の流れよりはむしろ対流係数推定によって表された。寒天ファントムベースのモデルを用いた後に続く研究は、この方法が、効果的な熱的保護を提供し得たことを見出したが、該方法は特定の条件に該当し得ることが注目された;しかしながら、1分間に25m L
のみの冷却剤の流量が用いられ、このことは、効果的に熱を抽出する性能をおそらく有意に制限する(1時間60リットルを超える、または、1分間に1000m Lを越える水の
流れを用いて評価された食道冷却デバイスと比べて)。この同じグループによるさらなる研究は、5℃~37℃の変化する冷却剤温度を利用したが、1分間25mLの冷却剤の流量を維持し、5℃以下の冷却剤温度を利用して食道組織(粘膜表面から2mm離れた経壁的領域を含む)を熱的に保護することが可能であるという結論をもたらした。記録するに値することに、冷却回路の入口および出口において測定された温度は、それぞれ4.9±0.3℃および13.6±0.3℃であり、差は8℃を越えるが、対照的に現行の食道熱伝達デバイスを用いた場合の平均的な増加は0.3℃に過ぎない。
【0239】
1分間に50~300m Lの流量および5~25℃の温度にて循環している温度が制御
された生理食塩水または水を利用する、特別注文で開発されたシステムが、インビトロの子羊の心臓および食道の標本を用いて評価され、6匹の犬を用いたインビボモデルが後に続いた。この特別注文のシステムは、直径が完全に拡張したときに3cmまで拡張する、遠位の拡張可能でコンプライアントなラテックスサックを有する12フレンチプローブで構成された。著者は、25℃の循環する水温が熱的傷害から食道組織を免れさせ損ねたことを見出した。しかしながら、10℃~5℃へと循環温度を下げることが、熱的傷害を免れさせた(循環する容量を増大させることによってバルーン直径を拡張させることが、左心房に向けて食道を変位させ、かつ、筋の外層への浅い食道傷害の進展を許容したが)。
【0240】
低流量(25mL/分)および4.5℃の水温を有する閉じたループシステムを用いた8人の患者の臨床研究が、冷却を伴わずに、食道温度がアブレーションの最中に30秒未満で36.4℃の基準線から40.5℃へと増大した一方、食道冷却バルーンを用いると、バルーンが所定位置にある状態で食道温度が30.2℃へと低下し、33.5℃への温度の増大しか許容しなかったことを見出した。著者は、左心房アブレーションの最中の管腔食道温度が、食道組織に対する熱的損傷がおそらく誘導されない高さへと、それらのカテーテルを用いた食道冷却によって低下したと結論づけた。要約の形態で2007年に発表された研究が、動物モデルにおける食道保護を試みるための生理食塩水で充填されたバルーンの使用を記載し、かつ、4匹の犬において、10℃の流れていない生理食塩水溶液が、熱的傷害を防止するのに十分ではないことを見出した。
【0241】
食道の中への自由水滴が、種々の成功率で試みられた。100人の患者の研究が、滴下される容量(RFエネルギー送達の前であって、かつ、食道温度が42℃に到達したときの後に注入された)として非常に少量(5mL)の氷水を用いた。著者は、このアプローチが食道病変の深刻性を緩和するが、発生を減少させないことを見出した:病変は、実験群の20%で発生し、かつ、対象の22%で発生し、冷却された群では3人が中間、かつ、7人が軽く、かつ、対照では3人が深刻、1人が中間、かつ、7人が軽かった。別の研究が、わずかに高いが、未だに制限された量(ほぼ10℃の温度を有する繰り返し注入されるアリコートで10~20mL)で、ガストログラフィンまたはイオパミドールと混合された冷却された生理食塩水の注入を利用した。総計318人の患者が、冷却を伴わない温度モニタリングのみを受け取る群、温度が43℃を越えたときに冷却を伴う温度モニタリングを受け取る群、および、温度が39℃を越えたときに冷却を伴う温度モニタリングを受け取る群の間でランダム化された。各群におけるいかなる潰瘍形成または浸食も有さない患者の割合は、それぞれ63.6%、87.5%および95.2%であることが見出され、かつ、著者は、アブレーションの最中に管腔温度が39℃を越えるときに、食道損傷が、胃管を介して食道の中に冷却溶液を吹き込むことによって減少され得ると結論づける。
【0242】
まとめると、直接的な冷却を介した食道保護についての先行調査からのこれらのデータは、同一の効率が明らかであるが、制限が、採用される冷却剤の流量が低い、または、流量がないことから派生することを示唆する。さらに、1つの論文では、先行して調査された方法は、臨床実務において実行することがいくぶんか複雑であり、したがって、後に続く研究が実行されなかったことが注目された。対照的に、この研究で評価された食道熱伝達デバイスは、電気生理学研究室における典型的なワークフローの崩壊を伴わずに簡単に配置される。
【0243】
この実施例に記載の研究は、各病変において印加された力を測定するのに接触力感知カテーテルを利用しなかった。第1の応用例は、外部のゲージを用いた力測定を利用する一方で、すべての後に続く病変は、経験のある電気生理学者の判断に基づいた。このアプローチを用いると接触力のいくぶんかのバラツキが避けられないが、系統的なバイアスはおそらく発生せず、かつ、識別される効果サイズは、それらがおそらく圧倒するようになっている。同様に、アブレーションカテーテルの先端を通して供給される灌水に代えて、生理食塩水がアブレーションの最中に水槽として用いられた;しかしながら、このことは、おそらく、灌水を用いる場合より組織に対する深刻な熱的侵襲を提供する。この研究は、直接的には心房のアブレーションを伴わなかった;しかしながら、利用されたデザイン(食道に直接的にアブレーションする)は、心房に対する食道の位置における患者の間のバラツキ、散在した組織の量のバラツキ、および、心房壁部の厚さのバラツキのような交絡因子を除去する最悪の場合のモデルを提供し、これらのバラツキはすべてデータを困惑させる。
【0244】
さらに、直接的な冷却を介した食道保護についての先行調査は、心房病変の質に対する冷却の影響(すなわち、持続的なアブレーションを達成することと、心臓アブレーションの最中に食道組織を同時に保護することとの間の相互作用)を評価しなかった。さらに、先行するアプローチの本質的に静的な作動パラメーターは、心房における病変形成の影響についての詳細な調査が起きないようにした。実際、上述されたように、冷却バルーンの使用が、心房における経壁的な病変を達成する可能性を減少させ得た(とりわけ、心房が相当な厚さであり、かつ、短期間および低い標的温度を用いる場合に)。Berjano & Hornero, Phys Med Biol 2005, 50(20):N269-279を参照。
【0245】
結論としては、食道冷却デバイスの使用は、直接的な無線周波数アブレーションからの食道傷害に対する有意な保護をもたらした。このデータに見られる保護効果は、これが、
心房細動のRFアブレーションの最中に食道傷害の保護に対する効果的なアプローチであるかも知れないことを示唆する。
【0246】
実施例2。
【0247】
フレームワーク(それからこの新しい食道保護戦略のさらなる分析および発展をガイドする)を確立するために、信頼性の高い数学的モデルが、上記の実験的に見られた効果を説明するために派生した。
【0248】
食道傷害の2Dモデルを構築するために、数学的モデリングソフトウェアが用いられた
。該モデルは、露出した食道に対するRFエネルギーの直接的な印加を利用して上記動物モデルからの実験的に派生したデータと比較された。
【0249】
モデリング支配方程式は、質量、運動量およびエネルギーバランスを利用し、境界条件が、アブレーションカテーテル先端の温度、冷却水および患者の動物についての実験的な値によって定められた。さらなる入力は、食道および冷却デバイス壁の熱性能、密度、伝熱性ならびに動的粘度および水ドメインについての特定の熱の割合であった。
【0250】
RFアブレーションは、適用のための2つの電極を利用する:一方は特定のワット数におけるカテーテルに対応し、かつ、他方は、基底基準として作用する。基底電極は概して、パッチの中に埋め込まれ、かつ、RFアブレーションの最中に患者の背中に配置される一方で、カテーテルは、内壁における心筋上への適用のための心房における作用の所望の場所に持っていかれる。電極の位置に起因して、胸腔の簡潔性が、身体におけるRFエネルギー分配(結果的に、組織の加熱)の正確なモデリングを可能にする。
【0251】
評価される異なるモデルについての計算ドメインとして作用する幾何学的形状は、矢状面における2Dで考えられた。なぜなら、最も関連する熱交換が、この平面で起こるから
である。
【0252】
食道に対するRFの直接的な適用
【0253】
このセクションは、食道に対する直接的なRFアブレーションについての課題形成、モデル実装、および、シミュレーション結果と実験結果との間の比較を含む。
【0254】
計算ドメイン(幾何学的形状)。
図11Aは、計算ドメインであって、そのサブドメイ
ンおよび主たる境界線をマーク付けする前記計算ドメインを示している。食道の厚さは、先行する知識、撮像出力または個体群平均に基づいて調整され得る。この例での食道の高さは45mmであり、アブレーションカテーテルの先端部は4mmであり、かつ、接地パッドは76.2mmである。
【0255】
支配方程式および境界条件。モデル支配方程式は、2つの現象と関連づけられた:(1)熱源としてのRF電磁気エネルギー、および、(2)結果として生じる熱伝達。詳細な支配方程式および境界条件は、以下に記載されるように区別され、次に関連する方程式がどのように連結されるかを示している。
【0256】
(1) 熱源としてのRF電磁気エネルギー
【0257】
支配方程式。マックスウェル方程式が、電磁気学を支配する。Comsol社製のAC/DCモジュールは、低周波数にて電磁気的現象を模するのに用いられた。https://www.comsol.com/blogs/study-radiofrequency-tissue-ablation-using-simulation/に見出されるRFアブ
レーションモデリング推奨によれば、ヒトの身体の電気的皮膚深度は1メートルのオーダーである一方、加熱された領域は、センチメートルのオーダーの典型的なサイズを有し、したがって、組織における誘導された電流に起因する加熱は無視し得、かつ、計算されなかったという推定がなされた(付近の血管内のステントのようないくつかの小さい金属片が組織内に存在すれば、この推定は有効ではないであろうが)。この推定を考慮すると、電流が熱源として考えられ、かつ、AC/DCモジュールからの電流インターフェースが用いられ、方程式セット1に示されている方程式を解き、計算ドメインにおいて電位を取得する;Jは電流密度であり、Qj,Vは電流源タームであり、σは導電率であり、Eは電場強度であり、Dは電気変位であり、ωは角周波数であり、Je は外部電流密度であり、かつ、Vは
電位である。
【0258】
方程式セット1、身体内のRFエネルギーについての支配方程式:
【0259】
【0260】
表2は、先行して記載された支配方程式を解くのに必要とされる、適用された境界条件を示し、かつ、説明する。
【0261】
【0262】
(2) 熱伝達。
【0263】
支配方程式。エネルギーバランスが熱伝達を支配し、かつ、Comsol社製の熱伝達モジュールは、熱伝達現象を模するのに用いられた。https://www.comsol.com/blogs/study-radiofrequency-tissue-ablation-using-simulation/に見出されるRFアブレーションモデリ
ング命令によれば、組織における熱伝達についての支配方程式は、Pennes Bioheat 方程
式によって与えられる(方程式セット2)。この方程式は、熱伝達モジュールから生体熱伝達インターフェースを通して解かれた。方程式は、すべての計算ドメインにおける温度を取得するために解かれた。Pennes Bioheat方程式では、Tは温度であり、dzは 厚さであり(平面からの)、ρは密度であり、Cp は熱性能であり、uは流体速度であり、kは伝熱
性であり、 Qは熱源タームであり、 q0は放熱タームであり、かつ、 Qbioは代謝熱生成速度である。
【0264】
方程式セット2、身体内の生体熱伝達についての支配方程式:
【0265】
【0266】
表3は、先行して記載された支配方程式を解くのに必要とされる、適用された境界条件を示し、かつ、説明する。
【0267】
【0268】
複数の物理モデルを持つ連結。RFエネルギーおよび生体熱伝達を連結するために、Coms
ol社の複数の物理モデルを持つモジュールからのインターフェース電磁熱源が用いられた。なぜなら、それが、方程式セット3に示されている関係を含有するからであり、このことは、電磁エネルギー源によって生成されたものとしての熱源を確立する。
【0269】
方程式セット3、電磁エネルギーおよび生体熱伝達連結方程式:
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
境界値の問題を解くのに、それをサブドメイン上でいっそう小さい境界値問題へと分割し、かつ、隣接するサブドメイン間で解答を調整するために反復することによって、ドメイン分割が用いられた。既知の組織パラメーターおよび適用されたRFエネルギーを考慮して温度について解決した後、100秒のアブレーション術の最後に組織を通る温度のプロファイルが、食道熱伝達デバイスを通る異なる循環する冷却剤温度を用いて、
図12にグ
ラフで示されている。
【0274】
食道保護を用いた心房アブレーションを組み込んだ完全モデル
【0275】
このセクションは、課題形成、モデル実装、および、食道保護を用いた心房アブレーションを組み込んだ完全モデルについてのシミュレーションされた結果および実験結果の両方の間の比較を含む。
【0276】
計算ドメイン(幾何学的形状)。
図11Bは、2Dの幾何学的形状を示している。ドメイン全体は、5つの領域に分離された:(1)胸腔、(2)収縮した食道、(3)心膜、(4)心筋、および、(5)左心房。
【0277】
支配方程式および境界条件。RFアブレーションモデリングは、3つの物理的現象に関連づけられた方程式を解くことを必要とする:(1)血液力学、(2)熱源としてのRFエネルギー、および、(3)熱伝達。詳細な支配方程式および境界条件は、次のように物理学によって区別された。
【0278】
(1) 左心房における血液力学(物質および運動量移送)
【0279】
支配方程式。物質および運動量のバランスは、流体力学を支配する。Comsol社のCFDモ
ジュールは、流体の力学を模するのに用いられた。流動様式(レイノルズ数によって与えられる)に基づいて、一方または他方のCFDインターフェースが用いられなければならな
い。いくつかの乱流が心周期において左心房で発生し得るので、このモデリングのためのComsol社のCFDモジュールインターフェースは、乱流であるk-εであり、これは、方程式
セット4に示されている方程式を解いて、血液速度および圧力プロファイルを取得する。血流は、計算時間を減少させるために圧縮不能であると考えられた。方程式セット4に示されている方程式では、ρは流体密度であり、uは速度場であり、pは圧力であり、μは流体動粘度であり、かつ、Fはバルク力を表す。乱流k-εモデルは、 輸送された可変値k(
乱流運動エネルギー)およびε(乱流エネルギーの消散率)である。k-εモデルはまた、既に較正された一定値を必要とする:σk, σε, Pk, cε1, cε2, cμ。
【0280】
方程式セット4、乱流についての境界条件:
【0281】
【0282】
結果
【0283】
モデル結果は、上記実験条件と比べて好ましかった。モデルによって決定された温度プロファイルは、病理組織学についての知見に対応し、そこでは、中間~深刻な粘膜筋層損傷を誘導するのに十分な温度上昇が、5℃の水を用いた食道冷却を伴って除去された。
【0284】
したがって、食道保護は正確に模され得、追加の調査および心房細動の治療のための左心房のアブレーションの最中の保護戦略の改良を可能にする。
【0285】
図13では、x軸は、食道熱伝達デバイスとアブレーション部位との間の距離(左から
右)に対応する。とりわけ、「0」~第1の目盛りはデバイスを表し、第1の目盛り~第2の目盛りはデバイス壁を表し、第2の目盛り~第3の目盛りは食道壁(例えば、45℃を下回る温度を有し)を表し、第3の目盛り~第4の目盛りは間質組織を表し、かつ、第4の目盛り~第5の目盛り(例えば、50℃を上回る温度を有する)は心房壁部を表す。
【0286】
実施例3 RFアブレーションの最中の食道保護
【0287】
下記に提示された結果は、冷却剤温度が、特定のRFアブレーションパラメーターについて調整され、熱的傷害から食道組織を保護しながら所望の心筋組織アブレーションが取得されることを確実にし得ることを示している。
【0288】
実施例3A 45秒のアブレーション時間を用いたモデル
【0289】
この例には、2つの状況における左心房のRFアブレーションのプロセスのシミュレーションが記載されている:(1)左心房と接触している潰れた食道、および、(2)食道組織が、異なる温度の水流を用いる冷却デバイスを挿入することによって燃焼から保護される場合。支配方程式および境界条件は概して、上記の実施例2に記載のものであった。
【0290】
伝熱性は、5℃くらい冷たい~37℃くらい温かい範囲の循環する水を用いて作動する冷却デバイスを伴って、10W~50Wの印加されたパワーにて評価された、心筋、食道および心膜について特定された。
【0291】
図14は、40WのRFの適用されたパワーにて、かつ、すべての考慮される冷却水温度
についてアブレーションされた組織を横切るよう温度を示している。
図15は、異なるRFパワー値において、保護されない食道および保護される食道の両方についての病変深度の棒グラフを示している。
【0292】
30W、40Wおよび50Wの適用されたRFパワーについての冷却水温度の関数としての
食道病変深度は、
図16に示されている。補間ラインもまた、2次多項式に対応して示されており、かつ、R
2値が示されている。最後に、冷却水温度および適用されたRFパワーの両方の関数としての病変深度を示すコントープロットが、
図17に示されている。
【0293】
44℃を上回る致死等温線を用いて、冷却デバイスは、損傷が予測されたすべての場合について食道組織を保護した(
図16および
図17)。
【0294】
実施例3B 60秒のアブレーション時間を用いたモデル
【0295】
この例には、2つの状況における左心房のRFアブレーションのプロセスのシミュレーションが記載されている:(1)左心房と接触している潰れた食道、および、(2)食道組
織が、異なる温度の水流を用いる冷却デバイスを挿入することによって燃焼から保護される場合。支配方程式および境界条件は概して、上記の実施例2に記載のものであった。
【0296】
シミュレーションは、40WのRFパワーおよび0mmの挿入深度を用いた、60秒までのRFアブレーションについての冷却剤温度の影響を研究するために設計された。心筋の無線
周波数カテーテルアブレーションについての致死等高線はしばしば、50℃であると考えられてきており、かつ、何人かは240秒未満の期間での無線周波数エネルギー送達について61℃付近のいっそう高い値を示唆していたが、いっそう控えめな44℃が、このアプローチの保護性能を過大評価することを回避するのに用いられた。
【0297】
図18Aおよび18Bは、異なる冷却水温度における熱的傷害からの食道保護を示しており、かつ、病変形成および深度が冷却水温とともにどのように変化するかを示している。
図18Aは、水温を変化させながらの温度プロファイルを示している。
図18Bは、水温の関数としてピーク温度および病変深度を示している(アブレーション時間 = 60秒、RFパ
ワー = 40W、挿入深度 = 0mm)。
【0298】
図19A、19Bおよび19Cは、RFパワーおよびアブレーション時間、挿入深度および
時間ならびにRFパワーおよび挿入深度の両方の関数としてピーク温度を示すコントープロットである。
【0299】
実施例4 凍結アブレーションの最中の食道保護
【0300】
以下に提示された結果は、食道を温めることが、すべての典型的な治療時間における危険な底温度からの保護を提供したことを示している。とりわけ、結果は、最も好ましくない条件でさえ、最小心膜脂肪絶縁を伴って、食道を温めることが、管腔温度が危険なレベルへと低下することを防止し得ることを示している。
【0301】
実施例4A -50℃の凍結アブレーション温度を用いたモデル
【0302】
この例には、左心房の凍結アブレーションのプロセスのシミュレーションが記載されている。支配方程式および境界条件は概して、上記の実施例2に記載されているようなものである。
【0303】
凍結アブレーションバルーン(Medtronic Arctic Front Advance Cardiac CryoAblation Catheterシステムが模される)は-50℃に設定され、かつ、モデルは、42℃にて6
0L/分の水流を用いて、心筋壁、脂肪組織、心膜、食道壁および最後にデバイスを含ん
でいた。3分間の凍結アブレーション後に組織を横切る温度は
図21に示され、食道熱伝達デバイスを通る42℃の水流を用いた相当な食道保護を示唆する。
【0304】
実施例4B -70℃の凍結アブレーション温度を用いたモデル
【0305】
この例には、左心房の凍結アブレーションのプロセスのシミュレーションが記載されている。支配方程式および境界条件は概して、上記実施例2に記載されていたようなものである。
【0306】
モデルは、食道組織が左心房と接触し、かつ、食道加温デバイスが食道内に配置される構成を利用した。凍結バルーン温度は、-70℃くらい低く評価され、かつ、モデルは、
42℃の水流を用いて、心筋壁、脂肪組織、心膜、食道壁および最後にデバイスを含んでいた。
【0307】
図22Aおよび
図22Bは、異なる予め温められる時間および-70℃の凍結バルーン温
度および3分の凍結アブレーションにおける、保護されない(対照)、または、保護される食道についての凍結アブレーションされた組織を横切る温度を比較する。心筋の厚さは、
図22Aにおいて0.5mmであり、かつ、
図22Bにおいて3.5mmである。対照条件(デバイスなし)、および、予め温める種々の期間についての結果が示されている。
【0308】
図23Aおよび
図23Bは、外側心筋から内側食道壁への関連する点における凍結アブレーションの関数として温度を示している。対照条件(デバイスなし)、および、予め温める種々の期間についての結果が示されている。凍結アブレーション温度=-70°C。心筋厚さは3.5mmである。
図23Aは、内側および外側食道(In-eso, Out-eso)を示しており、かつ、
図23Bは、内側食道および外側心筋(In-eso, Out-myo)を示している。
【0309】
実施例5
【0310】
高パワー短期間(HPSD)アブレーションは、RFアブレーションを実行するための比較的新しい戦略である。HPSDは、標準(低パワー長期間)アブレーション(典型的には、20~30秒かそこらの間に20~30ワット)を用いるのと比べて、食道組織に対する有害な影響を減少させ、または削除するかも知れないと提案されてきた。しかしながら、HPSDを受けた患者の遡及的評価は、低パワー長期間アブレーションと比べて、同様の食道熱的傷害パターンを示した。以下の例は、食道熱伝達デバイスが、HPSDアブレーションと関連づけられた食道熱的傷害を減少させ、かつ、削除さえし得ることを示している。
【0311】
パート1。左心房においてRFエネルギー(5~10秒間で50W、および、4秒間で9
0W)を用いたHPSDアブレーションの有限要素モデル。COMSOL社のマルチフィジックスに
おいて定められた組織パラメーターが利用された;しかしながら、文献において広範な心筋伝熱性が報告されているので、全範囲(0.5 W/m*K~1.5 W/m*K)が検査された。さらに、導電性は、最も広く引用されている定義にしたがって組織温度の関数としてモデリングされ、モデルにおいて評価されるべき3つの異なる範囲の導電性を与えた。平均組織寸法(3mmの心筋厚さ、0.5mmの心膜厚さ、および、3mmの食道厚さ)を用いて、控えめな44℃に設定された致死等高線で、パワーおよび期間のほぼすべての構成は、食道組織を損傷する潜在性を示した。
【0312】
パート2。上記モデルを用いて、食道冷却デバイスが所定の位置にあり、かつ、5℃~37℃の温度で作動している状態の、食道病変形成および病変の深度(経壁率として測定される)の変化が評価された。組織パラメーターが、既存の文献から取得された平均値に設定され、かつ、エネルギー設定が、5~10秒間50Wおよび4秒間90Wにて評価された。
【0313】
経壁率によって測定された食道傷害は、4秒間90Wより10秒間50Wにおいて相当に高かったが、両方の設定が食道傷害の潜在性を示していた。食道冷却デバイスの保護効果は両方の場合について明らかであり、10秒間50Wを用いたときにいっそう大きい効果
を有した(
図24)。5分間の予冷する期間を用いることは、37℃の冷却水温度を用いるときに、いかなる有意な影響も示さなかったが、いっそう冷たい水温を用いたときに食道病変経壁性について著しい効果を示した。最も冷たいデバイス設定において、5分間の予冷期間はまた、意図した心房病変の経壁性を減少させた。
【0314】
食道冷却デバイスを用いた食道冷却は、4秒間90Wを含む高パワー設定の範囲を用い
たRFアブレーションの最中に熱的傷害に対する保護効果を示している。デバイスにおいて循環する水温を調整することによって冷却パワーを調整することは、作動条件への保護効果の適合を可能にする。
【0315】
実施例6
【0316】
心房細動の治療のための心臓アブレーションの実行に用いられる現在の技術は、食道組織が左心房と接触しているという事実によって制限され、左心房の後壁に対するアブレーションが、食道の前壁に対する熱的損傷(それぞれ、無線周波数[RF]または凍結治療エネルギーを介しての、加熱または冷却からの)の危険にさらすようになっている。この損傷は、軽い紅斑から完全な潰瘍におよび得、かつ、ほぼ均一的に致命的な心房食道瘻孔の形成に至り得る。1
【0317】
アブレーション実行の量を定めるのに用いられるメトリックが、接触力、パワーおよび適用の時間の変数を用いて、意図した病変がおそらく電気的隔離を維持することに成功するのを上回る数を引き出す。2しかしながら、この指標の使用は、食道組織の不注意かつ危険な加熱を回避せず、この測定の臨床的研究は、食道の過熱に起因して40人の患者のうちの2人が不適切に治療されたことを示した。2
【0318】
本開示は、以下に記載されるように冷却のレベルを調整して、心房における影響を意図した領域の不必要な冷却(または加温)を回避しながら、食道組織の冷却(または、凍結アブレーションの場合の加温)が達成され得、いっそう大きいアブレーションエネルギー印加、いっそう大きい接触力、および/または、いっそう長い接触時間(したがって、いっそう高いアブレーション指標パラメーターの達成)を可能にすることを示している。
【0319】
この例には、循環する熱伝達媒体の最適な温度を評価して、持続的な病変を達成する能力に悪影響を与えることなくPVI術の最中に食道保護を提供するための新規な臨床モデル
が記載されている。このモデルは、PVI術における種々のアブレーションパラメーターに
わたる食道保護の効果を合理的に予測した。
【0320】
食道組織の熱的保護、PVI術の調整可能なパラメーター、および、撮像研究から取得さ
れた比較的調整可能でない臨床値との間の関係を模するのに、機械論的モデルが用いられた。
【0321】
実行導関数(PD)は、次のように、アブレーションの調整可能なパラメーター、および、撮像研究から取得された調整可能でない臨床値から導出される:
【0322】
【0323】
式中、Pは単位がワットのパワーであり、CFは単位がグラムの接触力であり、tは単位が秒の時間であり、ATは単位がmmの心房厚さであり、IDは単位がmmの介在距離であり、ETは単位がmmの食道厚さであり、かつ、 Tpは次の式から導出される熱的保護性である:
【0324】
【0325】
式中、Qは熱伝達媒体の流量(L/時間)であり、Tは熱伝達媒体の温度(℃)であり、
かつ、kは食道熱伝達デバイスの材料の伝熱性である。
【0326】
Tは、シリコーン(k=0.4)を有する例示的な食道熱伝達デバイス、および、60L
/時間の流量に設定された例示的な冷却装置についての異なるアブレーション条件および平均臨床パラメーター(すなわち、約3mmの心房厚さ、約3mmの食道厚さ、および、約2mmの介在距離)について以下の表に示されているように変化する。
【0327】
表6には、ほぼ500であるPDの値の標的が、食道組織を損傷から保護しながら、心房の意図した領域における最適な病変形成を提供すると推定された。
【0328】
【0329】
表7には、ほぼ250であるPDの値の標的が、食道組織を損傷から保護しながら、心房の意図した領域における最適な病変形成を提供すると推定された。
【0330】
【0331】
表8には、ほぼ100であるPDの値の標的が、食道組織を損傷から保護しながら、心房の意図した領域における最適な病変形成を提供すると推定された。
【0332】
【0333】
実施例7 凍結バルーンアブレーションのケース報告
【0334】
高血圧および発作性心房細動の増大するエピソードの過去の医療履歴を有する68歳の男性が、凍結バルーンアブレーションのために提供された。42℃の水を循環させる食道熱伝達デバイスが、単一のセンサーの温度プローブの後で食道に配置された。Medtronic Arctic Front Advance Cardiac CryoAblation Catheterシステムを用いて、アブレーションが実行された。
【0335】
初期の患者の深部温度は、Foley カテーテル温度センサーを介して36.3℃であると測定された。各肺静脈凍結バルーン適用における食道の温度は、次の通りであった。左上肺静脈における凍結アブレーションで始まり、測定された初期の食道温度は38.6℃であり、凍結アブレーションの最中に最低温度である36.4℃に達した。左下肺静脈において、開始温度は38.5℃であり、かつ、2サイクルの治療後に38.0℃に達した。右上肺静脈では、初期食道温度は38.4℃であり、2サイクルを通して不変のままであり、かつ、38.5℃で終了した。最後に、右下肺静脈では、初期食道温度は38.9℃であり、かつ、2サイクルの治療全体を通して最低温度である38.8℃に達した。施術の最後における患者の温度は、36.0℃であった。
【0336】
食道熱伝達デバイスが、凍結アブレーションの最中に食道における36.4℃を下回る温度低下を妨げ、そのことによって施術の最中に治療を停止する必要性を回避した。推奨されるカットオフ閾値(典型的には、25℃)付近の温度の底の回避もまた、食道組織についての凍結アブレーションの潜在的影響を制限するかも知れない。
【0337】
実施例8 心房アブレーションにおける臨床研究
【0338】
この研究は、AFアブレーションを経験する患者の展望のある二重盲検のランダム化され
て制御された試験であり、例示的な食道熱伝達デバイスを用いた食道冷却が、カテーテルアブレーションの最中に熱的損傷の頻度および/または深刻性を制限するか否かを評価した。
【0339】
患者は、(1)食道熱伝達デバイスの利用を伴う(かつ、温度プローブの使用を伴わない)、または、(2)食道温度プローブである、標準的な食道保護方法を用いた、カテーテルアブレーション術を有するようにランダム化されて、アブレーションエネルギーの印加の最中に任意の温度変化について測定した。実験群では、冷却は、患者の安全の範囲に設定された温度で、処置を行う医師によって制御された。とりわけ、実験群では、冷却流体は、4~6℃の温度にて循環した。対照群では、測定された食道温度が38℃を上回れば、その後でアブレーションはその領域で停止した。
【0340】
アブレーション術後1週間以内に、後に続く上部GI内視鏡検査テストが、内視鏡医によって実行されて、任意のアブレーション関連の熱的傷害について検討した。後に続く内視鏡検査テストを実行する内視鏡医は、試験参加者のランダム化について「盲目的」であり、バイアスを最小化させる。
【0341】
【0342】
食道熱伝達デバイスは、心房アブレーションの最中に食道組織に対する熱的病変および損傷を防止した。結果は、LETモニタリングが例示的な食道熱伝達デバイスを用いた食道
冷却によって安全に回避され得ることを示している。さらに、施術の最中のLETモニタリ
ングおよび考え得る妨害および/または停止は、施術時間の減少をもたらすかも知れない。
【0343】
本願では、離接的接続詞の使用は、結合的接続詞を含むことを意図する。定冠詞または不定冠詞の使用は、カーディナリティーを示すことを意図しない。とりわけ、「the(そ
の)」物体または「a(ある)」および「an(ある)」物体への言及は、考え得る複数の
かかる物体のうちの1つを示すことも意図する。さらに、接続詞「or(または)」は、相互に排他的な代替物ではなく同時に存在する特徴を伝えるのに用いられてもよい。換言すれば、接続詞「or(または)」は、「and/or(および/または)」を含むと理解されるべきである。用語「includes(含む)」、「including(含んで)」および「include(含む)」 は、包括的であり、かつ、それぞれ「comprises(有する)」、「comprising(有し
て)」および「comprise(有する)」と同一の範囲を有する。
【0344】
上記の実施形態(とりわけ任意の「好ましい」実施形態)は、実装の考え得る例であり、かつ、本発明の原理の明確な理解のために記載されているだけである。本明細書に記載の技術の精神および原理から実質的に逸脱することなく、多くのバリエーションおよび修正が、上記の実施形態に対してなされても良い。すべての修正が、本開示の範囲内で本明細書に含まれ、かつ、以下の請求の範囲によって保護されることを意図する。
【0345】
上記の実施形態(とりわけ任意の「好ましい」実施形態)は、実装の考え得る例であり、かつ、本発明の原理の明確な理解のために記載されているだけである。本明細書に記載の技術の精神および原理から実質的に逸脱することなく、多くのバリエーションおよび修正が、上記の実施形態に対してなされても良い。すべての修正が、本開示の範囲内で本明細書に含まれ、かつ、以下の請求の範囲によって保護されることを意図する。
【0346】
以下の文献は、参照によってそれらの全体が組み込まれる:
【0347】
Tzou WS, et al., J Cardiovasc Electrophysiol 2013, 24(9):965-967.
【0348】
Nair GM, et al., Can J Cardiol 2014, 30(4):388-395.
【0349】
Liu E, et al., J Interv Card Electrophysiol 2012, 35(1):35-44.
【0350】
Scanavacca M, Arquivos brasileiros de cardiologia 2016, 106(5):354-357.
【0351】
Tschabrunn CM, et al., Europace 2015, 17(6):891-897.
【0352】
Calkins H, et al., Journal of arrhythmia 2017, 33(5):369-409.
【0353】
Halm U, et al., Am J Gastroenterol 2010, 105(3):551-556.
【0354】
Knopp H, et al., Heart Rhythm, 11(4):574-578.
【0355】
Leite LR, et al., Circ Arrhythm Electrophysiol 2011, 4(2):149-156.
【0356】
Carroll BJ, Cet al., J Cardiovasc Electrophysiol 2013, 24(9):958-964.
【0357】
Hornero F, et al., J Thorac Cardiovasc Surg 2006, 132(1):212-213; author reply 213-214.
【0358】
Deneke T, et al., J Cardiovasc Electrophysiol 2011, 22(3):255-261.
【0359】
Berjano EJ, et al., Phys Med Biol 2005, 50(20):N269-279.
【0360】
Lequerica JL, et al., J Cardiovasc Electrophysiol 2008, 19(11):1188-1193.
【0361】
Lequerica JL, et al., Phys Med Biol 2008, 53(4):N25-34.
【0362】
Arruda MS, et al., J Cardiovasc Electrophysiol 2009, 20(11):1272-1278.
【0363】
Tsuchiya T, et al., J Cardiovasc Electrophysiol 2007, 18(2):145-150.
【0364】
Scanavacca MI, et al., In: ESC Congress 2007, 1 - 5 September. vol. 28. Vienna, Austria; 2007: 156.
【0365】
Kuwahara T, et al., Europace 2014, 16(6):834-839.
【0366】
Sohara H, et al., J Cardiovasc Electrophysiol 2014, 25(7):686-692.
【0367】
Khan I, Haet al., Ther Hypothermia Temp Manag 2017.
【0368】
Kalasbail P, et al., Anesthesia & Analgesia 2018, .
【0369】
Goury A, et al., Resuscitation 2017, 121:54-61.
【0370】
Hegazy AF, et al., Heart & Lung: The Journal of Acute and Critical Care 2017, 46(3):143-148.
【0371】
Markota A, et al., The American Journal of Emergency Medicine 2016, 34(4):741-745.
【0372】
Williams D, et al., Case Reports in Anesthesiology 2016, 2016:6.
【0373】
Naiman M, et al., Expert Rev Med Devices 2016, 13(5):423-433.
【0374】
Naiman MI, et al., JoVE 2017(129):e56579.
【0375】
Kapur S, et al., Circulation Sep 26 2017;136:1247-1255.
【0376】
Das M, et al., Europace May 1 2017;19:775-783.