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特開2024-102129冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
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  • 特開-冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法 図1
  • 特開-冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102129
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
C09K5/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068897
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2022565716の分割
【原出願日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/003424
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021163683
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022081828
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】吉村 崇
(72)【発明者】
【氏名】臼井 隆
(72)【発明者】
【氏名】土屋 立美
(72)【発明者】
【氏名】仲上 翼
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な低GWP混合冷媒を提供する。
【解決手段】冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、ジフルオロメタン(R32)及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含み、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、特定の座標(x,y,z)の5点をそれぞれ結ぶ直線C1D、DG、GH、HB’及びB’C1で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C1D及びB’C1上にある(ただし、点D及び点B’は除く)、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用空調機器を運転するために用いられる、冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、ジフルオロメタン(R32)及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含み、
HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点C1 (52.0, 36.9, 11.1)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の5点をそれぞれ結ぶ直線C1D、DG、GH、HB’及びB’C1で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C1D及びB’C1上にある(ただし、点D及び点B’は除く)、
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
R410Aに代替可能な熱サイクル用作動媒体として、トリフルオロエチレン(HFO-1123)と1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)とを含む熱サイクル用作動媒体が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/141678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新規な低GWP混合冷媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.
車載用空調機器を運転するために用いられる、冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、ジフルオロメタン(R32)及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含み、
HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点C1 (52.0, 36.9, 11.1)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の5点をそれぞれ結ぶ直線C1D、DG、GH、HB’及びB’C1で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C1D及びB’C1上にある(ただし、点D及び点B’は除く)、
組成物。
項2.
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点C2 (49.1, 23.5, 27.4)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B (0.0, 23.3, 76.7)
の5点をそれぞれ結ぶ直線C2D、DG、GH、HB及びBC2で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C2D及びBC2上にある(ただし、点D及び点Bは除く)、
項1に記載の組成物。
項3.
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点L (35.6, 36.8, 27.6)、
点K (44.2, 23.4, 32.4)、
点D2 (48.1, 18.7, 33.2)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の7点をそれぞれ結ぶ線分LK、KD2、D2D、DG、GH、HB’及びB’Lで囲まれる図形の範囲内又は前記線分LK、KD2、D2D及びB’L上にあり(ただし、点D及び点B’は除く)、
前記線分LK、D2D、DG、GH、HB’及びB’Lが直線であり、
前記線分KD2上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01727x2-2.7828x+112.643, -0.01727x2+1.7828x-12.643)で表わされる、
項1に記載の組成物。
項4.
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点P (22.6, 36.8, 40.6)、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の10点をそれぞれ結ぶ線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DG、GH、HB’及びB’Pで囲まれる図形の範囲内又は前記線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D及びB’P上にあり(ただし、点D及び点B’は除く)、
前記線分PO、D1D、DG、GH、HB’及びB’Pが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされる、
項1に記載の組成物。
項5.
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点P (22.6, 36.8, 40.6)、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点E (22.4, 0.0, 77.6)
点E’ (11.2, 7.4, 81.4)
点F (0.0, 15.6, 84.4)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の11点をそれぞれ結ぶ線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DE、EE’、E’F、FB’及びB’Pで囲まれる図形の範囲内又は前記線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、EE’、E’F及びB’P上にあり(ただし、点D、E及び点B’は除く)、
前記線分PO、D1D、DE、FB’及びB’Pが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされ、
前記線分EE’及びE’F上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.0032x2-0.7679x+15.6 , -0.0032x2-0.2321x+84.4)で表わされる、
項1に記載の組成物。
項6.
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点E (22.4, 0.0, 77.6)
点E’ (11.2, 7.4, 81.4)
点F (0.0, 15.6, 84.4)及び
点B (0.0, 23.3, 76.7)
の10点をそれぞれ結ぶ線分ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DE、EE’、E’F、FB及びBOで囲まれる図形の範囲内又は前記線分ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、EE’、E’F及びBO上にあり(ただし、点D、E及び点Bは除く)、
前記線分D1D、DE、FB及びBOが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされ、
前記線分EE’及びE’F上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.0032x2-0.7679x+15.6 , -0.0032x2-0.2321x+84.4)で表わされる、
項1に記載の組成物。
項7.
前記冷媒が、さらに:
アセチレン、HFO-1132a、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、HFC-152a、HFC-161及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも一種の追加的な冷媒を含む、項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
項8.
前記冷媒が、さらに0.1%以下の水分を含む、項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
項9.
前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfの合計の含有割合が99.5質量%を超える、項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
項10.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が:
HFO-1132(E)、R32及びR1234yf;並びに
アセチレン、HFO-1132a、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、HFC-152a、HFC-161及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも一種の追加的な冷媒
を含む、組成物。
項11.
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、R32及びR1234yf、並びに0.1%以下の水分を含む、組成物。
項12.
項1~11のいずれか1項に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
項13.
項1~11のいずれか1項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍装置。
項14.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfを、これらの総和を基準としてそれぞれ、28±0.5質量%、21.5±0.5質量%及び50.5±0.5質量%含む、組成物。
項15.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfを、これらの総和を基準としてそれぞれ、28±0.5質量%、21.5±0.5質量%及び50.5±0.5質量%含む、組成物
を作動流体として含む、冷凍装置。
項16.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfを、これらの総和を基準としてそれぞれ、28±0.5質量%、21.5±0.5質量%及び50.5±0.5質量%含む、組成物
を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示の冷媒は、低GWPである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の冷媒の組成を示す三角図である。
図2】実施例の燃焼速度試験に用いた装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、以下に説明する各種の混合冷媒が、上記特性を有することを見出した。
【0009】
本開示は、かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さらに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。
【0010】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0011】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0012】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0013】
本明細書において用語「冷凍機」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0014】
本明細書において、「車載用空調機器」とは、ガソリン車、ハイブリッド自動車、電気自動車、水素自動車などの自動車で用いられる冷凍装置の一種である。車載用空調機器とは、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。
【0015】
本明細書において冷媒が「WCF微燃」であるとは、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い最も燃えやすい組成(Worst case of formulation for flammability; WCF)が、燃焼速度が10cm/s以下であることを意味する。
【0016】
また、本明細書において冷媒がASHRAE微燃(WCF&WCFF微燃)であるとは、WCFの燃焼速度が10cm/s以下で、かつ、WCFを用いてANSI/ASHRAE34-2013に基づいた貯蔵、輸送、使用時の漏洩試験を行うことで特定される最も燃えやすい分画組成(Worst case of fractionation for flammability; WCFF)が、燃焼速度が10cm/s以下であり、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格の燃焼性区分が「2Lクラス」と判断されることを意味する。
【0017】
本明細書において記載される圧力は、断りの無い場合は、単位を絶対圧とするものである。
【0018】
1.冷媒
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfを含む。
【0019】
本開示の冷媒は、低GWP混合冷媒である。
【0020】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、沸点が-40℃以下となり、かつGWPが250以下となる。
【0021】
<要件>
HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点C1 (52.0, 36.9, 11.1)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の5点をそれぞれ結ぶ直線C1D、DG、GH、HB’及びB’C1で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C1D及びB’C1上にある(ただし、点D及び点B’は除く)。
【0022】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、沸点が-40℃以下となり、かつGWPが160以下となる。
【0023】
<要件>
座標(x,y,z)が、
点C2 (49.1, 23.5, 27.4)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B (0.0, 23.3, 76.7)
の5点をそれぞれ結ぶ直線C2D、DG、GH、HB及びBC2で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C2D及びBC2上にある(ただし、点D及び点Bは除く)。
【0024】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、WCF不燃となり、沸点が-40℃以下となり、かつGWPが250以下となる。
【0025】
<要件>
座標(x,y,z)が、
点L (35.6, 36.8, 27.6)、
点K (44.2, 23.4, 32.4)、
点D2 (48.1, 18.7, 33.2)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の7点をそれぞれ結ぶ線分LK、KD2、D2D、DG、GH、HB’及びB’Lで囲まれる図形の範囲内又は前記線分LK、KD2、D2D及びB’L上にあり(ただし、点D及び点B’は除く)、
前記線分LK、D2D、DG、GH、HB’及びB’Lが直線であり、
前記線分KD2上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01727x2-2.7828x+112.643, -0.01727x2+1.7828x-12.643)で表わされる。
【0026】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、WCCF不燃となり、沸点が-40℃以下となり、かつGWPが250以下となる。
【0027】
<要件>
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点P (22.6, 36.8, 40.6)、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の10点をそれぞれ結ぶ線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DG、GH、HB’及びB’Pで囲まれる図形の範囲内又は前記線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D及びB’P上にあり(ただし、点D及び点B’は除く)、
前記線分PO、D1D、DG、GH、HB’及びB’Pが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされる。
【0028】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、WCCF不燃となり、R1234yfに対する冷凍能力(Cap)比が150%以上となり、かつGWPが250以下となる。
【0029】
<要件>
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点P (22.6, 36.8, 40.6)、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点E (22.4, 0.0, 77.6)
点E’ (11.2, 7.4, 81.4)
点F (0.0, 15.6, 84.4)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の11点をそれぞれ結ぶ線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DE、EE’、E’F、FB’及びB’Pで囲まれる図形の範囲内又は前記線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、EE’、E’F及びB’P上にあり(ただし、点D、E及び点B’は除く)、
前記線分PO、D1D、DE、FB’及びB’Pが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされ、
前記線分EE’及びE’F上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.0032x2-0.7679x+15.6 , -0.0032x2-0.2321x+84.4)で表わされる。
【0030】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、WCCF不燃となり、R1234yfに対する冷凍能力(Cap)比が150%以上となり、かつGWPが160以下となる。
【0031】
<要件>
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点E (22.4, 0.0, 77.6)
点E’ (11.2, 7.4, 81.4)
点F (0.0, 15.6, 84.4)及び
点B (0.0, 23.3, 76.7)
の10点をそれぞれ結ぶ線分ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DE、EE’、E’F、FB及びBOで囲まれる図形の範囲内又は前記線分ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、EE’、E’F及びBO上にあり(ただし、点D、E及び点Bは除く)、
前記線分D1D、DE、FB及びBOが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされ、
前記線分EE’及びE’F上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.0032x2-0.7679x+15.6 , -0.0032x2-0.2321x+84.4)で表わされる。
【0032】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfを、これらの総和を基準としてそれぞれ、28±0.5質量%、21.5±0.5質量%及び50.5±0.5質量%含む冷媒であってもよい。
【0033】
本開示の冷媒は、冷凍サイクルが、局所的に冷媒の圧力が3MPa、かつ冷媒の温度が150℃となっても、不均化反応を抑制することができる。
【0034】
また、本開示の冷媒は、沸点が-40.0℃以下であるため、ヒートポンプによる暖房において使用しやすいという利点がある。例えば、上記本開示の冷媒は、車載用空調機器の冷凍サイクルを運転するために用いることにより、電気ヒーターに比べて消費電力の少ないヒートポンプによる暖房が可能になるという利点がある。車載用空調機器としては、ガソリン車用、ハイブリッド自動車用、電気自動車用又は水素自動車用等が挙げられる。
【0035】
本開示の冷媒は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfに加えて、さらに追加的な冷媒を含有していてもよい。この点で、ある態様においては、本開示の冷媒が、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfの合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含むことが好ましく、99.75質量%以上含むことがより好ましく、99.9質量%以上含むことがさらに好ましく、99.999質量%含むことがさらにより好ましく、99.9999質量%以上含むことが最も好ましい。本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfのみから実質的になるものであってもよく、この場合、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yf、並びに不可避的不純物のみからなるものであってもよい。本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfのみからなるものであってもよい。
【0036】
追加的な冷媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。混合冷媒は、追加的な冷媒として、一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。
【0037】
追加的な冷媒としては、アセチレン、HFO-1132a、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、3,3,3-トリフルオロプロピン等が挙げられる。
【0038】
本開示の組成物には、
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が:
HFO-1132(E)、R32及びR1234yf;並びに
アセチレン、HFO-1132a、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、HFC-152a、HFC-161及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも一種の追加的な冷媒を含む、組成物も含まれる。追加的な冷媒の合計量は、冷媒全体に対して0.01質量%以下であることが好ましい。
【0039】
2. 冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本開示の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0040】
2.1
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含むことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
【0041】
本開示の組成物には、冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、R32及びR1234yf、並びに0.1%以下の水分を含む、組成物も含まれる。
【0042】
2.2 トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0043】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0044】
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
【0045】
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
【0046】
トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3
HFC-41(フルオロメタン、CH3Cl)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2
HFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CH2F)
HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン、CHF2CHF2
HFC-143a(1,1,1-トリフルオロエタン、CF3CH3
HFC-143(1,1,2-トリフルオロエタン、CHF2CH2F)
HFC-152a(1,1-ジフルオロエタン、CHF2CH3
HFC-152(1,2-ジフルオロエタン、CH2FCH2F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2
HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3
HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2
HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)
HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2
HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)
HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3
HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3
【0047】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万分率(ppm)以上含んでいてもよい。また、本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約1000ppm以下含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm以上、より好ましくは約50ppm以上含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約500ppm以下含んでいてもよく、約300ppm以下含んでいてもよい。
【0048】
2.3 紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0049】
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0050】
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
【0051】
2.4 安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0052】
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0053】
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
【0054】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0055】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0056】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0057】
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0058】
安定剤の含有割合は、冷媒全体に対して、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましい。安定剤の含有割合は、冷媒全体に対して、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
【0059】
2.5 重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0060】
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0061】
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0062】
重合禁止剤の含有割合は、冷媒全体に対して、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましい。重合禁止剤の含有割合は、冷媒全体に対して、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
【0063】
3. 冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10質量%以上含まれる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に50質量%以下含まれる。
【0064】
3.1 冷凍機油
本開示の組成物は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0065】
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性(miscibility)及び前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0066】
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0067】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0068】
冷凍機油として、40℃における動粘度が5cSt以上であるものが、潤滑の点で好ましい。
また、冷凍機油として、40℃における動粘度が400cSt以下であるものが、潤滑の点で好ましい。
【0069】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0070】
3.2 相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0071】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0072】
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0073】
4.冷凍機の運転方法
本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍機を運転する方法である。
【0074】
具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を冷凍機において循環させる工程を含む。
【0075】
5.不均化反応の抑制方法
本開示の不均化反応の抑制方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む、HFO-1132(E)の不均化反応の抑制方法である。
【0076】
本開示の不均化反応の抑制方法においては、特に、冷媒の圧力が3.0MPaのときに、かつ冷媒の温度が150℃となっても、HFO-1132(E)の不均化反応が起こらないという効果が得られる。
【0077】
本開示の不均化反応の抑制方法により、特に不均化反応の抑制手段を設けていない冷凍機においても不均化反応を抑制して冷凍サイクルを運転することが可能となる。
【0078】
6.不均化反応の抑制のための使用
本開示の使用は、R32及びHFO-1234yfの、HFO-1132(E)の不均化反応を抑制するための使用であって、前記不均化反応の抑制は、HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfを、本開示の冷媒の混合比率となるように混合することにより行われる。
【0079】
本開示の不均化反応の抑制のための使用においては、特に、冷媒の圧力が3.0MPaのときに、かつ冷媒の温度が150℃となっても、HFO-1132(E)の不均化反応が起こらないという効果が得られる。
【0080】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0081】
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
HFO-1132(E)、R32及びHFO-1234yfを、これらの総和を基準として、表1にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0083】
これらの各混合冷媒について、次の試験方法及び試験条件において、不均化反応の有無を調べた。
試験方法
試験容器に、試験する冷媒組成物を移充填し、150℃まで加熱した後、容器内のPt線に電圧を印可して溶断させることで、冷媒組成物に30Jのエネルギーを与えた。不均化反応の有無は装置内の急激な圧力上昇及び温度上昇によって判定した。
試験条件
試験容器:38cc SUS製容器
試験温度:150℃
圧力:3 MPa
判定基準
「不爆」:Pt線溶断後の温度又は圧力が2倍未満であり、急激な不均化反応が起こっていない。
「爆発」:Pt線溶断後の温度又は圧力が2倍以上に達し、急激な不均化反応が起こった。
【0084】
【表1】
【0085】
表1の結果から、本開示の冷媒は図1に示す三角図において示される領域内では、不均化が起こらないことが判る。
【0086】
また、燃焼速度試験は図2に示す装置を用いて、以下の通り行った。まず、使用した混合冷媒は99.5%またはそれ以上の純度とし、真空ゲージ上に空気の痕跡が見られなくなるまで凍結、ポンピング及び解凍のサイクルを繰り返すことにより脱気した。燃焼速度は、閉鎖法により測定した。初期温度は周囲温度とした。点火は、試料セルの中心で電極間に電気的スパークを生じさせることにより行った。放電の持続時間は1.0~9.9msとし、点火エネルギーは典型的には約0.1~1.0Jであった。火炎の伝搬状態はシュリーレン法により視覚化した。光を通す2つのアクリル窓を備えた円筒形容器(内径:155mm、長さ:198mm)を試料セルとして用い、光源としてはキセノンランプを用いた。炎のシュリーレン画像を高速デジタルビデオカメラで600fpsのフレーミング速度で記録し、PCに保存した。
燃焼速度(Su(cm/s))は、単位面積の火炎面が単位時間に消費する未燃ガスの体積で表され、以下の式より算出される。
Su=Sb*ρu/ρb
Sb;火炎伝搬速度(cm/s)
ρu;断熱火炎温度(未燃)
ρb;断熱火炎温度(既燃)
ここで、
Sbはシュリーレンビデオ画像から求め、ρuは測定温度、ρbは燃焼ガスの燃焼熱及び定圧比熱から算出した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
表2の結果から、本開示の冷媒は図1に示す三角図において示される領域内で、WCF不燃又はWCFF不燃となることが判る。
【0089】
HFO-1132(E)のGWPは1とし、R32及びHFO-1234yfのGWPは、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次報告書の値に基づいて、混合冷媒のGWPを評価した。また、混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度及び沸点は、National Institute of Science and Technology(NIST)Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 9.0)を使い、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。なお、HFO-1132(E)の物性データについては実測値により求めた。
蒸発温度 -30℃
凝縮温度 30℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
【0090】
以下の表中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R1234yfに対する割合(%)を示す。
表中、「沸点(℃)」とは、混合冷媒の液相が大気圧(101.33kPa)となる温度を示す。表中、「動力の消費電力量(%)」とは、電気自動車が走行するために使用した電気エネルギーを示し、冷媒をHFO-1234yfとしたとき消費電力量との比で表す。表中、「暖房の消費電力量(%)」とは、電気自動車が暖房を運転するために使用した電気エネルギーを示し、冷媒をHFO-1234yfとしたとき消費電力量との比で表す。
【0091】
以下の表中、「走行可能距離(あり)」とは、一定の電気容量の二次電池を搭載した電気自動車において、暖房せずに(暖房の消費電力が0)走行した場合の走行可能距離(なし)を100%とした場合の暖房ありで走行した場合の走行可能距離を相対割合(%)で表したものである。
【0092】
暖房方法は、沸点が-40℃を超える冷媒では暖房に電気ヒーター方式を用い、沸点が-40℃以下の冷媒には暖房にヒートポンプ方式を用いた。
【0093】
暖房使用時の消費電力量は、次式により求めた。なお、暖房COPとは「暖房効率」を意味する。
暖房使用時の消費電力量=暖房能力/暖房COP
【0094】
暖房効率について、電気ヒーターの場合は暖房COP=1であり、動力と同等の電極を暖房に消費する。つまり、暖房の消費電力はE=E/(1+COP)となる。
【0095】
一方、ヒートポンプの場合もRefprop 9.0(NIST製)を使用し、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより暖房COPを求めた。
蒸発温度 -30℃
凝縮温度 30℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
走行可能距離は、次式により求めた。
走行可能距離=(電池容量)/(動力の消費電力量+暖房での消費電力量)
これらの値を、各混合冷媒についてのGWPと合わせて以下の表に示す。なお、比COP及び比冷凍能力については、HFO-1234yに対する割合を示す。
【0096】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP =(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】
【表7】
【0102】
【表8】
【0103】
線分JK、MN、NO、及びEF上の座標は、以下のようにして最小二乗法に基づき求めた。なお、M’D1上の座標は、表9に記載のMN上の座標と同じ数式で表せる。
【0104】
【表9】
【0105】
これらの結果から、本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、沸点が-40℃以下となり、かつGWPが250以下となることが判る。
【0106】
<要件>
HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点C1 (52.0, 36.9, 11.1)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の5点をそれぞれ結ぶ直線C1D、DG、GH、HB’及びB’C1で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C1D及びB’C1上にある(ただし、点D及び点B’は除く)。
【0107】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、沸点が-40℃以下となり、かつGWPが160以下となる。
【0108】
<要件>
座標(x,y,z)が、
点C2 (49.1, 23.5, 27.4)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B (0.0, 23.3, 76.7)
の5点をそれぞれ結ぶ直線C2D、DG、GH、HB及びBC2で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C2D及びBC2上にある(ただし、点D及び点Bは除く)。
【0109】
また、本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、WCF不燃となり、沸点が-40℃以下となり、かつGWPが250以下となることが判る。
【0110】
<要件>
座標(x,y,z)が、
点L (35.6, 36.8, 27.6)、
点K (44.2, 23.4, 32.4)、
点D2 (48.1, 18.7, 33.2)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の7点をそれぞれ結ぶ線分LK、KD2、D2D、DG、GH、HB’及びB’Lで囲まれる図形の範囲内又は前記線分LK、KD2、D2D及びB’L上にあり(ただし、点D及び点B’は除く)、
前記線分LK、D2D、DG、GH、HB’及びB’Lが直線であり、
前記線分KD2上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01727x2-2.7828x+112.643, -0.01727x2+1.7828x-12.643)で表わされる。
【0111】
また、本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、WCCF不燃となり、沸点が-40℃以下となり、かつGWPが250以下となることが判る。
【0112】
<要件>
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点P (22.6, 36.8, 40.6)、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点G (12.2, 0.0, 87.8)
点H (0.0, 8.2, 91.8)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の10点をそれぞれ結ぶ線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DG、GH、HB’及びB’Pで囲まれる図形の範囲内又は前記線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D及びB’P上にあり(ただし、点D及び点B’は除く)、
前記線分PO、D1D、DG、GH、HB’及びB’Pが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされる。
【0113】
また、本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、WCCF不燃となり、R1234yfに対する冷凍能力(Cap)比が150%以上となり、かつGWPが250以下となることが判る。
【0114】
<要件>
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点P (22.6, 36.8, 40.6)、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点E (22.4, 0.0, 77.6)
点E’ (11.2, 7.4, 81.4)
点F (0.0, 15.6, 84.4)及び
点B’ (0.0, 36.6, 63.4)
の11点をそれぞれ結ぶ線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DE、EE’、E’F、FB’及びB’Pで囲まれる図形の範囲内又は前記線分PO、ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、EE’、E’F及びB’P上にあり(ただし、点D、E及び点B’は除く)、
前記線分PO、D1D、DE、FB’及びB’Pが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされ、
前記線分EE’及びE’F上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.0032x2-0.7679x+15.6 , -0.0032x2-0.2321x+84.4)で表わされる。
【0115】
さらに、本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR1234yfの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、WCCF不燃となり、R1234yfに対する冷凍能力(Cap)比が150%以上となり、かつGWPが160以下となることが判る。
【0116】
<要件>
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点O (25.7, 23.4, 50.9、
点N’ (28.4, 16.7, 54.9)、
点N (32.4, 10.0, 57.6)、
点M’ (39.2, 5.0, 55.8)、
点D1 (44.5, 2.2, 53.3)、
点D (44.0, 0.0, 56.0)、
点E (22.4, 0.0, 77.6)
点E’ (11.2, 7.4, 81.4)
点F (0.0, 15.6, 84.4)及び
点B (0.0, 23.3, 76.7)
の10点をそれぞれ結ぶ線分ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、DE、EE’、E’F、FB及びBOで囲まれる図形の範囲内又は前記線分ON’、N’N、NM’、M’D1、D1D、EE’、E’F及びBO上にあり(ただし、点D、E及び点Bは除く)、
前記線分D1D、DE、FB及びBOが直線であり、
前記線分ON’及びN’N上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.1204x2-8.9935x+175.03, -0.1204x2+7.9935x-75.03)で表わされ、
前記線分NM’及びM’D1上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.01792x2-2.019x+56.594 , -0.01792x2+1.019x+43.406)で表わされ、
前記線分EE’及びE’F上の点の座標(x,y,z)が、(x, 0.0032x2-0.7679x+15.6 , -0.0032x2-0.2321x+84.4)で表わされる。
【0117】
また、本開示の冷媒は、表10に示す通り、所定の追加的化合物を含んでいる場合においても、所望の効果を奏することが判る。
【0118】
【表10】
【0119】
さらに、本開示の冷媒は、以下の条件で安定性試験をした場合、表11に示す通り、所定割合の水分を含んでいる場合において、固形物の生成が抑制されることが判る。
【0120】
<試料の調整>
上記1,2-ジフルオロエチレンに対して所定量の水を添加することで、1,2-ジフルオロエチレンに対する水の含有量が10、100、1000、2000質量ppmとなるように調節した。このように水の含有量を上記のように調節した1,2-ジフルオロエチレンを容器に密閉し、容器内に酸素を吹き込むことで、1,2-ジフルオロエチレンに対する酸素量を1,2-ジフルオロエチレンを基準として表11に示す通りとなるように調節した。以上のようにして、水分量及び酸素量が所定の割合で調節された表11に示す各フルオロエチレン組成物を得た。
【0121】
前記で使用した1,2-ジフルオロエチレンに水を添加しなかったこと、あるいは酸素を添加しなかったこと以外は前記例と同様の方法で、水を含まず、酸素量が所定の割合で調節された表11に示す各フルオロエチレン組成物を得た。
【0122】
<評価方法>
(フルオロエチレンの安定性試験)
上記実施例及び比較例で得られたフルオロエチレン組成物の各々について、以下のように安定性試験を行った。片側を溶封済みのガラス製チューブ(ID8mmΦ×OD12mmΦ×L300mm)に、フルオロエチレン組成物を1,2-ジフルオロエチレンの含有量が0.01molとなるように加えた。チューブは溶封により密閉状態とした。このチューブを150℃の雰囲気下の恒温槽内に静置させ、この状態で1週間保持した。その後、恒温槽からチューブを取り出して冷却し、外観を確認するとともにチューブ内のガス中の酸分の分析を行うことで、フルオロエチレンの安定性を評価した。
【0123】
フルオロエチレンの安定性試験において、ガス中の酸分の分析は次のような方法で行った。上記冷却後のチューブを、液体窒素を用いて、チューブ内に滞留するガスを完全に凝固させた。その後、チューブを開封し、徐々に解凍してガスをテドラーバッグに回収した。このテドラーバッグに純水5gを注入し、回収ガスとよく接触させながら酸分を純水に抽出するようにした。抽出液をイオンクロマトグラフィーにて検出して、フッ化物イオン(F-)の含有量(質量ppm)を測定した。
【0124】
【表11】
【符号の説明】
【0125】
1:試料セル
2:高速カメラ
3:キセノンランプ
4:コリメートレンズ
5:コリメートレンズ
6:リングフィルター
図1
図2