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特開2024-102138眼瞼皮膚表面印象改善剤及びそのスクリーニング方法
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  • 特開-眼瞼皮膚表面印象改善剤及びそのスクリーニング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102138
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】眼瞼皮膚表面印象改善剤及びそのスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240723BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20240723BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240723BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20240723BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/08
A61K8/9794
G01N33/15 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070305
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2017085224の分割
【原出願日】2017-04-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五味 貴優
(72)【発明者】
【氏名】原田 靖子
(57)【要約】
【課題】眼瞼皮膚表面印象を改善する成分を提供する。
【解決手段】速筋量を指標とすることにより、眼瞼皮膚表面印象を改善する成分を探索する。また、速筋増強成分を、眼瞼皮膚表面印象改善剤とする。かかる速筋増強成分としては、バラ科マルメロ属植物(Cydonia sp.)の抽出物及びユリ科ユリ属植物(Lilium sp.
)の抽出物の組み合わせ、又はボタン科ボタン属植物(Paeonia sp.)の抽出物が好まし
い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
速筋増強成分からなる、眼瞼皮膚表面印象改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼瞼皮膚表面印象改善剤及びそのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目元は顔の見た目の印象に大きな影響を与える部分である。
目元の皮膚は薄く、また、まばたきにより頻繁に動かされることから、老化症状が現れやすく、その改善に対する関心は高い。従来、目尻のシワや、目の下の皮膚のタルミ(下垂)等の代表的な目元の老化症状を、保湿やコラーゲン等の付与によって解消することが提案されてきた。
また、老化に伴い、まぶたの皮膚も変性・変質し、ハリ感を失いぶよぶよとした感触となり、表面に凹凸のある形状となって、老いた印象を与えるため好ましくない。しかしながら、そのような弛緩した状態に対しては、これまでに原因の解明や十分な改善策が報告されていない。
【0003】
ところで、ある種の植物エキスには、筋肉を強化する作用があることが知られている(特許文献1~2)。また、筋肉のうち速筋を強化するものとしては、植物エキスの他、種々のものが報告されている(特許文献3~5、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-157785号公報
【特許文献2】特開2008-214315号公報
【特許文献3】国際公開2012/026575号パンフレット
【特許文献4】特開2013-100272号公報
【特許文献5】特開2002-053489号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jobgen W., et al., J. Nutr. 2009 Feb; 139 (2): 230-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、アンチエイジングに対する関心が高まっていることから、眼瞼皮膚表面の変化が与える老いた印象への対策についても需要があるものの、有効な改善策は未だ知られていない。その理由としては、かかる印象を生じさせる眼瞼皮膚表面の変化の原因が明確にわかっていないことが挙げられる。
本発明は、かかる状況に鑑み、眼瞼皮膚表面印象を改善する成分を探索する方法を確立し、有効な眼瞼皮膚表面印象の改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、表情筋である眼輪筋(目の周りの筋肉)の衰えが、眼瞼皮膚表面の印象を変化させる原因であることを見出した。すなわち、眼輪筋が減少すると、それによって支持される皮膚が変性・変形してしまい、眼瞼皮膚の窪み、及び膨らみ部分が変化するだけでなく、表面にさらに細かな凹凸形状が生じ、これらによってハリ感を失ったぶよぶよとした印象を与えることが分かった。さらに、本発明者らは、眼輪筋の約9割を占める速筋を増強すると、眼輪筋が強化されて、眼瞼皮膚の凹凸も緩和し、かつ、ぶよぶよとした印象が減ずることを見出した。そして、速筋増強成分が眼瞼皮膚表面印象改善剤の有効成分となり得ることに想到し、かかる成分
を探索することにより本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]速筋増強成分からなる、眼瞼皮膚表面印象改善剤。
[2]前記速筋増強成分が、バラ科マルメロ属植物(Cydonia sp.)の抽出物及びユリ科
ユリ属植物(Lilium sp.)の抽出物の組み合わせ、又はボタン科ボタン属植物(Paeonia sp.)の抽出物である、[1]に記載の眼瞼皮膚表面印象改善剤。
[3]前記バラ科マルメロ属植物が、マルメロ(Cydonia oblonga)である、[2]に記
載の眼瞼皮膚表面印象改善剤。
[4]前記ユリ科ユリ属植物の抽出物がマドンナリリー(Lilium candidum)の根の抽出
物である、[2]又は[3]に記載の眼瞼皮膚表面印象改善剤。
[5]前記ボタン科ボタン属植物が、シャクヤク(Paeonia lactiflora)である、[2]に記載の眼瞼皮膚表面印象改善剤。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の眼瞼皮膚表面印象改善剤を含有する、抗老化用化粧料。
[7]目元用である、[6]に記載の、抗老化用化粧料。
[8]速筋量を指標とすることを特徴とする、眼瞼皮膚表面印象改善剤のスクリーニング方法。
[9]前記速筋量が、ミオシン重鎖タンパク質2をコードする遺伝子又は前記タンパク質の発現量であり、被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して大きい場合に、前記被験物質は眼瞼皮膚表面印象改善作用を有すると判定する、[8]に記載の方法。
[10]前記被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量の120%以上である場合に、前記被験物質は眼瞼皮膚表面印象改善作用を有すると判定する、[9]に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、抗老化用化粧料に含有させるのに好適な眼瞼皮膚表面印象改善剤が提供される。また、眼瞼皮膚表面印象改善剤として有効な成分を探索することができる、スクリーニング法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】眼瞼皮膚表面印象の変化が老いた印象を与えることを示す図面代用写真である。(左)ハリがあり、つるんとしたまぶたを有し、若々しい印象を与える目元。(右)ぶよぶよとやわらかくハリがなくなった印象の、表面に細かな凹凸のあるまぶたを有し、老いた印象を与える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>眼瞼皮膚表面印象改善剤
本発明の眼瞼皮膚表面印象改善剤は、速筋増強成分からなる。
速筋増強成分とは、速筋の量を増加させる成分であり、例えば速筋の産生を促進する成分、又は速筋の分解を抑制する成分である。
かかる速筋増強成分が、速筋が約9割を構成する眼輪筋の量を増加させることにより、それにより支持される目元の皮膚の窪み、及び膨らみ部分の変化、並びに表面の凹凸形状が生じること、さらにこれらによって生じるぶよぶよとした印象やハリのない感触が改善され、眼瞼皮膚の表面印象が総合的に改善される。
【0012】
なお、本明細書において「眼瞼皮膚表面印象」とは、眼瞼の皮膚の窪みや膨らみ部分が変化(位置の変化又は消失)し、表面に細かな凹凸形状が生じ、これらの形状によって生じる影と相まって与えられる、ぶよぶよとした外観の印象、及び/又はかかる状態を触っ
たときのハリのない感触をいう(図1右参照)。なお、一般的に目の下の皮膚の下垂を表す「タルミ・ゆるみ」とは区別される。
眼瞼皮膚表面印象が改善したことは、例えば、眼瞼、好ましくは上まぶたの外観を観察して凹凸が消失又は緩和されているかどうかを判定することや、眼瞼、好ましくは上まぶたを触ってぶよぶよとした感触がなくハリがあるかどうかを判定すること等により、確認することができる。
【0013】
本発明における速筋増強成分としては、バラ科マルメロ属植物(Cydonia sp.)の抽出
物及びユリ科ユリ属植物(Lilium sp.)の抽出物の組み合わせ、又はボタン科ボタン属植物(Paeonia sp.)の抽出物が好ましい。
前記バラ科マルメロ属植物としては、特に限定されないが、マルメロ(Cydonia oblonga)が好ましく挙げられる。
前記ユリ科ユリ属植物としては、特に限定されないが、マドンナリリー(Lilium candidum)が好ましく挙げられ、その根の抽出物がより好ましい。
前記ボタン科ボタン属植物は、特に限定されないが、シャクヤク(Paeonia lactiflora)が好ましく挙げられる。
なお、上記植物の抽出物としては、通常化粧料や医薬品の皮膚外用剤に用いられるものであればよく、植物体から常法により抽出されたものを用いることができる。
【0014】
本発明の眼瞼皮膚表面印象改善剤の投与経路は、特に限定されないが、通常は経皮である。
投与量としては、特に限定されないが、所望の効果と安全性とを考慮して、例えば速筋増強成分が植物抽出物であって経皮投与する場合は、固形物換算で0.0002~0.05mg/日が好ましい。
【0015】
本発明の眼瞼皮膚表面印象改善剤は、任意の組成物に含有させることができ、特に経皮吸収による効果が期待できる皮膚外用組成物とすることが好ましい。皮膚外用組成物の態様としては、皮膚に外用で適用されるものであれば特に限定されないが、化粧料(医薬部外品を含む)、医薬品等が好ましく挙げられ、化粧料がより好ましく、抗老化用化粧料がさらに好ましい。さらに、抗老化用化粧料としては目元、特にまぶたに適用されるものに好適である。
【0016】
皮膚外用組成物の剤型としては、例えば、ローション剤型、乳液やクリーム等の乳化剤型、オイル剤型、ジェル剤型、パック、洗浄料等が挙げられ、特に限定されない。
【0017】
本発明の眼瞼皮膚表面印象改善剤を化粧料に含有させる場合は、その量を化粧料全量に対して総量で、好ましくは0.001%~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.05~5質量%の含有量とすると、所望の効果を得やすく、また処方設計の自由度を確保できる。
【0018】
本発明の化粧料は、眼瞼皮膚表面印象改善剤以外に通常の化粧料に配合される成分を、本発明の効果を損なわない限りにおいて任意に含有することができる。
かかる成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルア
ルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;
【0019】
脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等の多価アルコール類;
【0020】
ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていてもよい、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類;表面を処理されていてもよい、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていてもよい、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ-ル剤類;レ-キ化されていてもよい赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外
線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキ
シ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;
【0021】
エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB塩酸塩、ビタミンBトリパルミテート、ビタミンBジオクタノエート、ビタミンB又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール等の抗菌剤(防腐剤);グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等の消炎剤;レチノール、アスコルビン酸、トコフェロール、又はファルネシル酢酸エステル等のシワ改善剤;各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等);ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等の賦活剤;ノニル酸ワレニルアミド、カプサイシン、ジンゲロン、タンニン酸等の血行促進剤;硫黄、チアントール等の抗脂漏剤;トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等の抗炎症剤;コラーゲン、ヒアルロン酸等の水溶性高分子;などが挙げられる。
【0022】
また、本発明の化粧料には、本発明の眼瞼皮膚表面印象改善剤の以外の、眼瞼皮膚表面印象改善剤用成分や目元のタルミ・シワ等の皮膚の老化予防・改善用成分等も配合してもよい。
本発明の化粧料の製造は、常法に従って前述の成分を処理・配合することにより、困難なく行うことができる。その剤型としては、ローション剤型、乳化剤型、オイル剤型等特に限定されず、任意のものを採用できる。
【0023】
<2>眼瞼皮膚表面印象改善剤のスクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、眼瞼皮膚表面印象改善剤をスクリーニングする方法であって、速筋量を指標とすることを特徴とする。
【0024】
本方法の好ましい態様において、速筋量とは、ミオシン重鎖タンパク質2の発現量をいい、より好ましくはミオシン重鎖タンパク質IIx/d(MYH1)、ミオシン重鎖タンパク質IIa(MYH2)、ミオシン重鎖タンパク質IIb(MYH4)、又はそれぞれのタンパク質をコードする遺伝子の発現量であり、さらに好ましくはMYH2をコードする遺伝子又は前記タンパク質の発現量である。なお、本明細書において、発現量とは、該遺伝子のmRNAの転写量と、該遺伝子がコードするタンパク質の翻訳量との何れかを指すものとする。
【0025】
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様においては、被験物質を添加した細胞におけるMYH1、MYH2、又はMYH4の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して大きい場合に、前記被験物質は眼瞼皮膚表面印象改善作用を有すると判定される。
【0026】
本方法のより好ましい態様においては、さらに遅筋量をも指標とする。
ここで、遅筋量とは通常、ミオシン重鎖タンパク質B(MYH7)をコードする遺伝子又は前記タンパク質の発現量である。
【0027】
本発明のスクリーニング方法のより好ましい態様においては、被験物質を添加した細胞
におけるMYH1、MYH2、又はMYH4の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して大きく、かつ、被験物質を添加した細胞におけるMYH7の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して小さくない場合に、前記被験物質は眼瞼皮膚表面印象改善作用を有すると判定される。
【0028】
前記遺伝子の発現量は、任意の方法を用いて測定することができる。例えば、当該遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、定量的な検出を行う。なお、上述したミオシンをコードするヒトの遺伝子配列はそれぞれ公開されており、当業者は適宜プライマーを設計してPCRに供することができる。
また、例えば、当該タンパク質の細胞内の量を、常法で、例えば抗体を用いる免疫学的手法等で測定して、遺伝子の発現量としてもよい。
【0029】
本発明のスクリーニング方法に用いる細胞としては、特に限定されないが、通常は骨格筋細胞又は骨格筋筋芽細胞を用いる。より好ましい態様においては、筋管形成させた、骨格筋細胞又は骨格筋筋芽細胞を用いる。
細胞の培養の条件としては、通常の培養条件の他、本発明のスクリーニング方法の実行を妨げない、具体的に前記発現量の測定を妨げない培養条件であれば、特段の限定なく適用することができる。
【0030】
本発明のスクリーニング方法が対象とする被験物質は、純物質、動植物由来の抽出物、またはそれらの混合物等のいずれであってもよい。
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物又は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花、花蕾、果実等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される一種又は二種以上が好適なものとして例示することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位又はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0031】
本発明のスクリーニング方法における手順の一例を以下に挙げるが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
まず、筋管形成させた骨格筋細胞に被験物質を添加し、24時間インキュベーションする。その後、該細胞からmRNAを抽出し、指標とする速筋に関するミオシン重鎖タンパク質(MYH2等)をコードする遺伝子の発現量を、該遺伝子を特異的に検出するプライマーを用いてRT-PCRを行い、定量的に測定する。コントロールとして被験物質を添加しなかった細胞においても該遺伝子の発現量を測定する。被験物質を添加した細胞における該遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該遺伝子の発現量(コントロール)に対して大きくなった場合、好ましくはコントロールに対して120%以上、より好ましくは135%以上、さらに好ましくは150%以上となった場合に、前記被験物質は速筋増強成分であり、眼瞼皮膚表面印象改善作用を有すると判定する。
遅筋に関するミオシン重鎖タンパク質(MYH7等)をコードする遺伝子の発現量をも測定する場合は、被験物質を添加した細胞における該遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該遺伝子の発現量(コントロール)に対して大きくなった場合、好ましくはコントロールに対して100%以上となった場合に、前記被験物質は遅筋を減少させない成分であり、速筋量を指標とするスクリーニングにより選定された速筋増強成分を眼瞼皮膚表面印象改善剤に採用することを妨げないものであると判定する。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
<実施例1>眼瞼皮膚表面印象改善剤のスクリーニング
以下の手順で、MYH2及びMYH7の発現量を指標として、眼瞼皮膚表面印象改善剤をスクリーニングした。
ヒト培養骨格筋細胞を増殖培地とともに96穴マルチウェルプレートに播種した後、60%コンフルエントになるまで培養した。その後、分化培地に交換し、3日おきに分化培地を交換しながら10日間培養して、筋管を形成させた。そこへ被験物質として表1に示す植物抽出エキスを添加し(1μL/ウェル)、24時間培養した後に培地を除き、FastLane Cell cDNA Kit(QIAGEN社)を用いてcDNAとした。QuantiTect Primer Assayを用いてリアルタイムPCRを行い、MYH2及びのMYH7の各mRNA量を測定した(n=3)。内在性コントロールとしてACTBのmRNA量も測定し、ACTBのmRNA量に対する比率で解析した。なお、プライマーは表2に記載のもの(QIAGEN社)を用いた。比較のため、被験物質の希釈溶媒のみを添加した点以外は同様に培養した骨格筋細胞における上記mRNA量(コントロール)も測定した。
【0034】
【表1】
【0035】
コントロールのmRNA発現量を「1」としたときの相対発現量を表2に示す。マルメロ抽出物とマドンナリリー根抽出物との組み合わせ、及びシャクヤク抽出物を添加した場合には、速筋量の指標であるMYH2の遺伝子発現量の増加が認められた。なお、前記場合に、遅筋量の指標であるMYH7の遺伝子発現量の減少は見られなかった。
【0036】
【表2】
【0037】
<試験例2>速筋増強成分による、眼瞼皮膚表面印象改善効果の評価
以下の手順で、上記実施例においてMYH2のmRNA発現量を増加させることが認められた植物エキスについて、眼瞼皮膚表面印象改善を評価した。
【0038】
表3の処方に従い、植物エキスを含有する皮膚外用剤(アイクリーム)を常法により調製した。
【0039】
健康な40~60歳の女性パネラー30名に、上記調製した各皮膚外用剤のいずれかを、毎日朝晩8週間、目元(両目の周囲)に適量塗布してもらった(各群5名)。
塗布開始8週間後に、熟練評価者がパネラーの上下まぶたの外観及び触感を以下の基準で判定し、5名の平均点を各皮膚外用剤の評点とした。結果を表3に示す。
(上下まぶたの外観)
5:顕著な凹凸が目立ち、くぼみ、折れ曲がりを伴う
4:凹凸がつながり、シワ状の溝に見える
3:凹凸が目立ち、図形状に認められる
2:凹凸が認められる
1:凹凸がなく平坦で滑らかに見える
(上下まぶたの触感)
5:ハリがなく、ぶよぶよと柔らかい触感
4:3と5の中間の触感
3:ハリがなく、柔らかい触感
2:1と2の中間の触感
1:パンとしたハリがあり、滑らかな触感
【0040】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、眼瞼皮膚表面印象改善剤として有効な成分を探索することができ、抗老化用化粧料等に好適な眼瞼皮膚表面印象改善剤が提供されるため、産業上非常に有用である。

図1