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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102161
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】水封入カプセル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
A61K9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071710
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2023570303の分割
【原出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022175360
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023048468
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391010976
【氏名又は名称】富士カプセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 峻吾
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長期的に内容液の水分をカプセル内に封じ込め保持することが可能である水封入シームレスカプセル技術を提供することを課題とする。
【解決手段】水を含む含水コアと、該含水コアの外側に配置された封入層を備えた水封入カプセルにおいて、特定の範囲にした比重の親油性組成物からなる封入層とすることや、封入層の膜厚について一定の膜厚以上を保持範囲とすることにより、長期的に含水コアの水分をカプセル内に封じ込め保持することが可能となった。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む含水コアと、該含水コアの外側に配置された封入層を備えた水封入カプセルであって、前記封入層が比重0.79~1.05の親油性組成物からなり、封入層の膜厚の最薄部が80μm以上であり、22℃ 45%RHでの開放放置における水封入率の8週間経過後の経時変化が91.6%以上であることを特徴とする前記水封入カプセル(ただし、含水コアの水含量が80重量%以下のものは除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を含む含水コアと、該含水コアの外側に配置された封入層を備えた水封入カプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水封入カプセルとしては、水を含む含水コアと、含水コアの外側に配置された内層と、内層の外側に配置された外層とを含む水封入カプセルであって、内層が、親油性材料から構成されており、外層が、親油性粒子又は非水溶性粒子が分散されている親水性材料から構成されている、水の耐蒸散性に優れる水封入カプセルが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、タバコ物品に使用するためのフィルター要素に関し、このフィルター要素は、少なくとも1つのフィルター本体と、液体媒体を含むコア材料と水蒸気不透過性の重合シェルを備えたカプセルとを有し、コア材料の液体媒体が少なくとも1つの界面活性剤を含む、前記フィルター要素が知られている(特許文献2)。その他、タバコ製品内に組み込むのに有用な易破壊性の生カプセルを製造する方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6250211号公報
【特許文献2】特表2020-527953号公報
【特許文献3】特表2011-512122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソフトカプセルにて製剤化可能な内容液として、油や油溶性物質又は乳化液(親油性+親水性)がよく知られている。一方、水や水を主成分とした内容液のカプセル化は可能であっても、カプセル化後早々にカプセル皮膜を介して水が蒸散してしまい、長期的に内容液の水分を保持することはできないため、水や水溶液を封入したカプセル製品は出願人が知る限りでは世に流通していないのが現状である。そこで、本発明の課題は、長期的に内容液の水分をカプセル内に封じ込め保持することが可能であり、耐水性のある水封入シームレスカプセル技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決しうるべく鋭意検討し、水を含む含水コアと、該含水コアの外側に配置された封入層を備えた水封入カプセルにおいて、特定の範囲にした比重の親油性組成物からなる封入層とすることや、封入層の膜厚について一定の膜厚以上を保持範囲とすることにより、長期的に含水コアの水分をカプセル内に封じ込め保持することが可能となり、また、含水コアの水に粘性を付与する粘性付加剤を含ませることによりカプセルの製剤性が向上することが可能となることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明特定事項により特定されるとおりのものである。
[1]水を含む含水コアと、該含水コアの外側に配置された封入層を備えた水封入カプセルであって、前記封入層が比重0.79~1.05の親油性組成物からなり、封入層の膜厚の最薄部が80μm以上であることを特徴とする前記水封入カプセル。
[2]含水コアが、水に粘性を付与する粘性付加剤を含有することを特徴とする上記[1]記載の水封入カプセル。
[3]親油性組成物が、親油性組成物の比重を0.79~1.05とする比重調整剤を含むことを特徴とする上記[1]記載の水封入カプセル。
[4]親油性組成物の融点が16℃以上であることを特徴とする上記[1]記載の水封入カプセル。
[5]親油性組成物が、30~70℃の融点を有する固形油脂を含むことを特徴とする上記[1]記載の水封入カプセル。
[6]親油性組成物が、20℃未満の融点を有する液状油脂を含むことを特徴とする上記[1]記載の水封入カプセル。
[7]封入層の外側にさらに皮膜層が設けられていることを特徴とする上記[1]記載の水封入カプセル。
[8]皮膜層の水分含量が20%以上であることを特徴とする上記[7]記載の水封入カプセル。
[9]皮膜層の水分含量が20%未満であることを特徴とする上記[7]記載の水封入カプセル。
【0008】
また、本発明は、以下の発明特定事項により特定されるとおりのものである。
[10]同心三重ノズルを用い、内側ノズルからは含水コアを、中間ノズルからは封入層を、外側ノズルからは皮膜層を吐出させて三層液滴とし、かかる三層液滴を冷却用溶媒と接触させて水封入プレカプセルを形成することを特徴とする上記[1]~[9]のいずれかに記載の水封入カプセルの製造方法。
[11]水封入プレカプセルを乾燥する前に、皮膜層を剥ぎ取り排除し、水を含む含水コアと、該含水コアの外側に配置された封入層の2層とすることを特徴とする上記[10]記載の製造方法。
[12]水封入プレカプセルを乾燥させずに、3層の水封入生カプセルを調製することを特徴とする上記[10]記載の水封入カプセルの製造方法。
[13]水封入プレカプセル乾燥工程をさらに経ることにより、3層水封入ドライカプセルを調製することを特徴とする上記[10]記載の水封入カプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、室温・開放放置における水封入率の経時変化が小さく、長期的に内容液(含水コア)の水分をカプセル内に封じ込め保持することが可能で、耐水性にも優れた、3層水封入シームレスカプセルや2層水封入シームレスカプセルを提供することができる。そして、水封入カプセルの用途に合わせ、封入層の物性設定を行うことができる。また、含水コアの外側に配置された封入層の物性については、構成する油性物質により固く設定することも柔らかく設定することも可能である。例えば、封入層を柔らかく設定した場合、2層カプセル設計にて、手指で容易にすり潰して使用可能であることを特長とする水封入生カプセルとして、化粧品や医薬部外品用途などで利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水封入カプセルとしては、水を含む含水コアと、該含水コアの外側に配置された封入層を備えた水封入カプセルであって、前記封入層が、比重0.79~1.05の親油性組成物からなり、封入層の膜厚の最薄部が80μm以上である、水封入カプセルであれば特に制限されず、2層水封入カプセルや3層水封入カプセルを好適に例示することができるが、4層以上の多層水封入カプセルであってもよい。
【0011】
上記含水コアとしては、水を含む限りは特に制限されず、水のみから構成されていてもよいが、水に粘性を付与する粘性付加剤を含有するものが好ましく、その他各種有効成分や各種添加物を含んでいてもよい。
【0012】
上記粘性付加剤としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸エステル類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ゼラチン、カラギナン(カラギーナン)、寒天、澱粉、加工澱粉、デキストラン、デキストリン、プルラン、グルコマンナン、アラビアゴム、ファーセレラン、トラガカントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グルコサミン、ユーケマ藻類、大豆水溶性多糖類、ウェランガム、カシアガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、グァーガム酵素分解物、ガッティガム、アラビノガラクタン、カードラン、カラヤガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、タラガム、アマシードガム、こんにゃく粉(芋)、ヒドロキシプロピル化グァーガム、ペクチン等を挙げることができる。
【0013】
上記封入層において、親油性組成物を構成する油性物質としては、第一に、融点が20℃以上の油性物質(以下「固形油脂」という。)を挙げることができ、具体的には硬化油(液状の動植物油脂を水素添加する事によって融点を高めたもの)、部分硬化油(液状の動植物油脂の一部のみを水素添加した硬化油もしくは水素添加していない油脂と硬化油との混合物)、ワックス類が挙げられる。固形油脂の具体例としては、硬化ヒマシ油、硬化大豆油、硬化菜種油、硬化ヤシ油、カカオ脂、バター、硬化パーム核油、ヘッド、牛脂硬化油、ラード、豚脂硬化油、ミツロウ(ビーズワックス)、キャンデリラロウ(キャンデリラワックス)、コメヌカロウ(ライスワックス)、カルナウバロウ(カルナウバワックス)、モクロウ(ジャパンワックス、ウルシロウ)等又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0014】
上記親油性組成物を構成する油性物質としては、第二に、融点が20℃未満の液体の油性物質(以下「液状油脂」という。)を挙げることができ、具体的にはサフラワー油、亜麻仁油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、からし油、ナタネ油、コーン油、ヒマシ油、月見草油、パーム核油、ホホバ油、綿実油、ヤシ油、落花生油、EPA、DHA、DPA、スクワラン、サメ肝油、タラ肝油などの動植物油や、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)や、流動パラフィンなどを挙げることができる。
【0015】
上記親油性組成物を構成する油性物質としては、グリセリン脂肪酸エステルや、ショ糖脂肪酸エステルや、脂肪酸アシルエステル等の界面活性剤のうち、親油性が高いもの(例えば、HLBが7未満のものやHLBが10未満のもの)もまた、親油性組成物を構成する油性物質として挙げることができる。この場合において、前記界面活性剤のうち、20℃で固体のものは固形油脂として、20℃未満で液体の油性物質は液状油脂として利用できる。本発明に用いることができる親油性組成物は、固形油脂及び液状油脂から適宜選択される1種又は2種類以上を混合して使用してもよく、また、市販品としてはGattefosse社が製造・販売する「GELUCIRE」シリーズ、日清MCTオイル、花王「エキセル」シリーズ、花王「エコナ」シリーズ、花王「エマノーン」シリーズ、花王「レオドール」シリーズ等を使用してもよい。
【0016】
上記親油性組成物を構成する油性物質としてはさらに、油性の各種機能性成分〔栄養機能、香料的機能、色素的機能等の各種機能を有する成分であって、油性のもの〕も使用可能である。本発明に使用できる油性栄養機能性成分としては例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸等のオメガ系脂肪酸、プロスタグランジン等の油性物質、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK等の油溶性ビタミン等、及びこれらを含む油脂類を挙げることができる。香料的な機能を有する油性成分としては、オレンジ油、レモン油、シソ油、アンブレット種子油、オリス根油、カナンガ油、カラシ油、キャラウェイ油、キャロット種子油、グレープフルーツ油、ジンジャー油、ホップ油、ミルトル油、ローズ油、ローズマリー油等の天然精油類、オイゲノール、カプリル酸エチル、ゲラニオール、メントール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール等の合成又は天然の着香料を挙げることができる。色素的な機能を有する油性成分としては、アナトー色素、カロチン、オレオレジン等の油性着色料などを挙げることができる。当然のことながら、これらは単独でも、複数の組合せでも使用可能である。
【0017】
上記親油性組成物には油不溶性成分を含めることができる。かかる油不溶性成分としては、油性成分に混和可能な成分であれば、使用可能である。油性成分に混和可能な油不溶性成分としては、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、(微粒)二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機系粉体等が使用できる。
【0018】
上記親油性組成物の比重を所定の範囲にするために比重調整剤を用いることができる。かかる比重調整剤は、親油性組成物と溶解又は混和することが可能であり、かつ、比重調整剤を添加する前の親油性組成物の比重とは、比重が異なる物質である。比重調整剤としては、SAIB(Sucrose Acetate Isobutylate:ショ糖脂肪酸エステル)、ウッドロジングリセリンエステル、ショ糖オクタアセテート等の比重が1以上の油性物質が好適に使用できる。また、二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、(微粒)二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機系粉体も、添加前の親油性組成物と混和することによって比重を調整できれば、比重調整剤として使用できる。さらに、本発明の使用目的上許容される動植物油、合成油、エステル油、鉱物油なども、添加前の親油性組成物に添加することで比重を調整できれば、比重調整剤として使用することができる。
【0019】
本発明における上記封入層の比重としては、0.79~1.05、0.79~1.03、0.79~1.0、0.795~1.05、0.795~1.03、0.795~1.0、0.8~1.05、0.8~1.03、0.8~1.0、0.83~1.05、0.83~1.03、0.83~1.0、0.85~1.05、0.85~1.03、0.85~1.0、中でも0.80~1.0を好適に例示することができる。なお、封入層として、低比重の親油性組成物[例えば、上記スクワランと硬化油、封入層比重:0.795の混合物]及び高比重の親油性組成物[例えば、上記SAIBと硬化油、封入層比重:1.03の混合物]を用いて、水封入カプセルの製剤化が可能であることを確認した。
【0020】
上記封入層の膜厚に関しては、重要なのは最も薄い部分の厚み(最薄部膜厚)であり、それを最低限度以上、例えば80μm以上、好ましくは90μm以上、100μm以上、110μm以上、120μm以上、150μm以上、180μm以上、210μm以上、240μm以上、270μm以上、300μm以上、350μm以上、400μm以上、450μm以上、500μm以上にキープすれば、膜厚に偏りがあってもよい。
【0021】
上記封入層の外側にさらに皮膜層を設けて3層水封入カプセルにすることもできる。かかる皮膜層としては、シームレスカプセルの皮膜として通常使用されているものであればよく、例えば、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、ペクチン及びその誘導体、アルギン酸又はその塩、寒天、ジェランガム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギナン(カラギーナン)、タマリンド、マンナン、ヘミロース、デンプン、キトサン等を基剤として含む皮膜層を挙げることができる。また、上記皮膜層には、基剤に加えて、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の可塑剤、リン酸ナトリウムなどのpH調整剤、クエン酸三ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのキレート剤、乳酸カルシウム、塩化カリウムなどのゲル化促進剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどの界面活性剤、甘味料、香料、防腐剤、着色剤などを含んでいてもよい。さらに、上記皮膜層には、天然色素、合成色素、各種甘味料、防腐剤、水分活性低下剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。上記皮膜層の水分含量により3層水封入カプセルをドライカプセルと生カプセルに分類することも可能である。
【0022】
上記皮膜層に用いる皮膜液としては、C型粘度計(東機産業社製、VISCOMETER TVC-7)にてロータNo.1(上限500mPa・s)で測定した85℃における粘度が300mPa・s以下の皮膜液が好ましい。
【0023】
本発明の水封入カプセルの製造方法としては、同心三重ノズルを用い、内側ノズルからは前記含水コアを、中間ノズルからは前記封入層を、外側ノズルからは前記皮膜層を吐出させて三層液滴とし、かかる三層液滴を例えば0~25℃に設定された冷却用溶媒と接触させて水封入プレカプセルを形成する方法であれば特に制限されず、上記冷却用溶媒としては、カプリン酸、カプリル酸等の脂肪酸で構成されるMCT、流動パラフィン、ヒマワリ油・ベニバナ油等の植物油、又はこれらの混合物など冷却オイルや、空気、ヘリウム、窒素、アルゴン等の低温の気体を挙げることができる。
【0024】
上記水封入プレカプセルが乾燥する前に、皮膜層を剥ぎ取り排除した場合、水を含む含水コアと、該含水コアの外側に配置された封入層の2層とする、2層水封入カプセルを製造することができ、水封入プレカプセルを乾燥する前に、皮膜層を剥ぎ取り排除するには、皮膜層は柔らかい状態なので、手指や薬さじ等に相当する簡単な道具を用いて簡単に剥離することが可能である。
【0025】
本発明の水封入カプセルが2層水封入カプセルである場合、封入層の硬さにより固形カプセルと生カプセルとに、大別することができ、封入層の硬さが固いのが固形カプセル、柔らかいのが生カプセルと一応分類することができるが、両者の物性差における境界線は明確にできないため、新たにレオメーターを用い、各封入層処方における硬さを測定し、その最大荷重を比較することとした。そこで本発明においては、以下の[測定使用機器]を用いた[測定方法]により、レオメーターにてアダプターを3mmまで押し込んだ際の最大荷重が、5kg以下の封入層にて形成されたものを2層水封入生カプセル(2層生カプセル)、5kgを超える封入層にて形成されたものを2層水封入固形カプセル(2層固形カプセル)と便宜上分類することとする。
【0026】
[測定方法]
200mLガラスビーカーに封入層を150g調整し、60℃(硬化油eを含む場合は75℃)の水浴にて溶解し、良く撹拌する。溶解液をプラスチック製ポリ瓶に50g入れ、冷蔵にて3時間以上冷却し固化させた後、室温に戻るまで放置し、レオメーターにてポリ瓶の中心をアダプターで3mmまで押し込んだ際の最大荷重を測定した。
【0027】
[測定使用機器]
SUN RHEO METER CR-3000 EX-L (サン科学)
モード: MODE1(Depth) アダプター :No.1φ10mm
REAL/HOLD: HOLD 進入距離 :3.0mm
圧縮/引張り: PRESS テーブル移動速度:20.0mm/min
ロードセル最大応力:200N
【0028】
そして、2層固形カプセルを作製するには、封入層の親油性組成物の一例として固形油脂、又は固形油脂と液状油脂が用いられ、封入層の融点(実測値)は例えば37℃以上であり、封入層の比重は例えば0.82~1.05である。他方、2層生カプセルを作製するには、封入層の親油性組成物の一例として固形油脂と液状油脂との混合油脂が用いられ、封入層の融点(実測値)は例えば16~36.8℃であり、封入層の比重は例えば0.79~0.82未満である。また、2層生カプセルは通常易崩壊性カプセルとなる。なお、固形油脂と液状油脂との混合油脂である封入層の融点は、固形油脂の融点と液状油脂の融点のダブルピークではなく、ほぼシングルピークを示すことがわかった。
【0029】
上記融点の測定方法としては、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製)を用い、測定開始温度は0℃、昇温は5℃/minで行い、吸熱ピークを融点の実測値とした。
【0030】
上記親油性組成物を構成する油性物質の融点は特に制限されないが、水封入カプセルが2層のカプセルである場合、親油性組成物の性状により固形カプセルか生カプセルかを大まかに大別できる。すなわち、2層固形カプセルの場合、親油性組成物が20℃以上、好ましくは30℃以上の融点を有し、そして好ましくは、100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下の融点を有すればよいが、中でも30℃~70℃の融点を有する親油性組成物を好適に例示することができる。当該親油性組成物は、融点の相違する複数の硬化油等の油性物質を混合したり、液状の動植物油を添加したりすることによって、適宜調整することも可能である。他方、水封入カプセルの性状が生カプセルの場合、一例として上記固形油脂と融点20℃未満の液状油脂との混合油脂が用いられ、例えば、封入層の混合油脂の融点が16℃である水封入カプセルの場合、室温では液体であっても、冷蔵条件では半生状態をキープしており、冷蔵条件下での流通や使用を想定すれば、2層生カプセルと捉えることもできる。
【0031】
一方、水封入カプセルが3層のカプセルである場合、主に皮膜の性状により生カプセルかドライカプセルかを大まかに大別できる。3層水封入生カプセル(3層生カプセル)の場合、上記の同心三重ノズルを用い、内側ノズルからは前記含水コアを、中間ノズルからは前記封入層を、外側ノズルからは前記皮膜層を吐出させて三層液滴とし、かかる三層液滴を冷却用溶媒と接触させて形成された水封入プレカプセルが、皮膜の乾燥工程を経ないで3層生カプセルに調製されることが大きな特徴となる。上記「皮膜の乾燥工程を経ない」(工程)とは、噴霧乾燥、凍結乾燥、送風乾燥、真空乾燥、静置乾燥、真空振動乾燥等の公知のカプセルを乾燥させる手段を用いることなく、3層の水封入カプセルを作製することをいうが、水封入プレカプセルの皮膜の水分含有割合(水分含量)が例えば20%未満、25%未満、30%未満、45%未満、70%未満、90%未満になる前に上記乾燥の工程を停止する(乾燥停止工程)ことも便宜上含めることができる。3層生カプセルの皮膜の水分含量としては、20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは70%以上、さらにより好ましくは90%以上を挙げることができる。
【0032】
上記皮膜の乾燥工程を経ない3層生カプセル各皮膜は柔らかいことに特徴があり、また、皮膜の水分含量については、例えば赤外線水分計FD-720(ケット科学研究所製)を用い、皮膜1g/105℃/15分の条件にて測定することができる。
【0033】
言い換えると、上記3層生カプセルは、以下の(a)~(c)の工程を備える方法により作製することができ、また、保存することができる。
(a)同心三重ノズルを用い、内側ノズルからは含水コアを、中間ノズルからは封入層を、外側ノズルからは皮膜層を吐出させて三層液滴を形成する工程;
(b)三層液滴を冷却用溶媒と接触させて水封入プレカプセルを形成する工程;
(c)水封入プレカプセルをカプセル保存液に浸漬する工程;
なお、上記3層水封入カプセルは、周りに付着している冷却用溶媒を除去するために、必要に応じて、洗剤を用いたり、流水にて洗浄することもできる。
【0034】
上記カプセル保存液としては、水道水、井戸水、蒸留水、精製水、イオン交換水、超純水、深層海洋水、ミネラル水などから選ばれる少なくとも1つの水類を含む水性溶媒を挙げることができるが、皮膜の水分含量が高いため、例えば化粧品用途等を想定する場合には、皮膜の腐敗を防ぐために、フェノキシエタノール等の防腐剤や、1,3-ブチレングリコール等の抗菌剤を皮膜や保存液などに添加することができる。こうして得られた3層生カプセルは、保存液中に浸漬して、輸送に供することも可能であり、保存中・輸送中においても、生カプセルの状態で、内包した水分や水溶性成分を長期的にカプセル内に封じ込め保持することが可能である点で優れている。そのため、3層生カプセルの用途としては、一例として水分が豊富な製品内に混合・分散される形態での使用が挙げられ、その分野は食品、医薬品、医薬部外品、化粧料等の化粧用組成物、皮膚外用剤、飲料、ペットフード、嗜好品など多岐に渡ることが想定される。
【0035】
一方、上記水封入プレカプセルを噴霧乾燥、凍結乾燥、送風乾燥、真空乾燥、静置乾燥、真空振動乾燥等の公知のカプセルを乾燥させる手段を用いて乾燥させることにより調製されるカプセルを3層ドライ水封入カプセル(3層ドライカプセル)とすることができる。3層ドライカプセルの皮膜における水分含量としては、20%未満、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下を挙げることができる。
【0036】
言い換えると、上記3層ドライカプセルは、以下の(a)~(c)の工程を備える方法により作製することができる。
(a)同心三重ノズルを用い、内側ノズルからは含水コアを、中間ノズルからは前記封入層を、外側ノズルからは前記皮膜層を吐出させて三層液滴を形成する工程;
(b)三層液滴を冷却用溶媒と接触させて水封入プレカプセルを形成する工程;
(c)水封入プレカプセルを乾燥して3層ドライカプセルを作製する工程;
【0037】
上記3層ドライカプセルの場合、例えばたばこ用途に使われる割れやすいカプセルを想定した場合には、製造性や割れやすさなどの点から、カプセル皮膜の硬度は0.5~40N、好ましくは0.5~20N、カプセル皮膜の厚さは20~500μm、好ましくは40~200μm、掴みやすさや内容量などの点から、カプセルの直径は0.5~15mm、好ましくは1~8mm、カプセルの皮膜率は5~30%を例示することができる。
【0038】
上記3層ドライカプセルは、手指で簡単に割ることができ、カプセルが割れるときに生じるパチンという音及び感触が心地よいものとなるので、たばこに付属しているフィルターや、たばこに取り付けるためのフィルターの内部に、香料等を内包したカプセルを埋設すれば、喫煙時に指でつぶしてカプセルがつぶれる音や感触と香りが得られる。また、グリーティングカードにフレーバーを内包したカプセルを設置すれば、受取人がカプセルをつぶして音や感触と香りを得ることができる。その他、医薬品や、健康食品、食品、化粧品、清掃用品等の日用品などに適用可能である。なお、3層ドライ皮膜カプセルは、上記の様にたばこ用途に使われる割れやすいカプセルのみならず、経口摂取するのに適したカプセルを含んでもよい
【0039】
本発明のカプセルにおける水封入安定性の判定方法としては、2層固形カプセルの場合には、22℃にて18~45%RH(又は5℃にて70%RH、25℃にて8%RH)での開放放置したカプセルの質量を測ることにより、水封入率の経時変化を測定し、4週間経過後では75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である場合に水封入安定性があると判定し、8週間経過後では50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは78%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である場合に、水封入安定性があると判定する方法を例示することができる。
【0040】
なお、上記3層ドライカプセルであって、たばこ用途に使われる割れやすいカプセルの場合には、カプセル乾燥後1月が経過(1M)しても手指潰し時の音と感触は良好であって、カプセルが割れる音と感触を楽しむことができる場合には、含水コア内の水分や水溶性成分が皮膜側に移行しておらず、水封入安定性があると判定することができる。
【0041】
本発明のカプセルにおける耐水性の評価方法としては、保存液中に、水封入カプセルを浸漬させて保管した際の含水コアの色素移行を目視確認する方法を例示することができる。生カプセル内に含水コアの水分や水溶性成分が封じ込められ安定に保持されている場合には、保存液は無色の状態で色調変化はないが、含水コア内の水分や水溶性成分が皮膜を介し保存液側に移行した際には保存液が青色に着色されるため、不安定であることを目視確認することができる。
【0042】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例0043】
[水封入カプセルの作製]
同心三重ノズル(富士カプセル社製)を用い、最も外側のノズルからは表1に示す組成からなる皮膜液を、最も内側のノズルからは表2,3に示す組成からなる含水コア液を、中間のノズルからは表2,3に示す組成からなる封入層液を吐出させて3層液滴とし、かかる3層液滴をMCTからなる冷却用溶媒と接触させて皮膜液を硬化させることにより、含水コアと、前記含水コアを被包する封入層と、前記封入層を被包する皮膜層とを備えた3層水封入プレカプセルを作製した。
【0044】
上記3層水封入プレカプセルについて、乾燥工程を経ずに最外層のゼラチン皮膜層を剥き取り、2層水封入カプセルを作製した。この2層水封入カプセルの封入層が外層として存在していれば水封入は可能であり、ゼラチン皮膜層は必ずしも必要ないことを確認している。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
[実施例1~7]
実施例1~6の含水コアには、充填性を良くするために水をアルギン酸NaであるキミカアルギンIL-2 ((株)キミカ社製)で増粘させている。封入層には、固形油脂4種をベースにし、封入層の厚さを、70μmを超えることで水封入が可能になっている。実施例3、4及び4-1においては、充填性を良くするために固形油脂に比重調整剤 SAIB(Eastman Chemical社製))が添加されている。
【0049】
表2に示す水封入率テストは、22℃にて18~45%RH(又は5℃にて70%RH、25℃にて8%RH)での開放放置における水封入率の4週間、8週間、12週間、及び16週間経過後の経時変化を測定した。水封入率の参考・目標評価基準として、比較例1[ポリエチレン袋:低密度ポリエチレン樹脂製、厚さ0.06mm]及び比較例2[ゴム風船(水風船):天然ゴム製、厚さ0.10mm]にそれぞれ水100%を封入し、水封入率の経時変化を測定した。水封入率において、比較例2より比較例1のほうが優れており、実施例1~7については比較例1とほぼ同等、もしくはそれより優れた水封入率であった。
【0050】
実施例4は、3層にてシームレス充填して実施例4-1のカプセルを得た後、皮膜乾燥工程を経ずに外層のゼラチン皮膜層を剥き取り2層水封入カプセルにしたものであり、封入層が外層として存在していれば水封入は可能であり、皮膜層(ゼラチン)は必ずしも必要でなく、その製品用途に応じ皮膜層の有無は適宜選択される。また、実施例4及び4-1における水封入率経時変化の結果より、2層及び3層構造にて水封入率に差は生じない。
【0051】
[実施例8~12]
実施例8~12及び比較例3では水封入可能な封入層の最薄膜厚を把握するため、封入層の最薄膜厚を700~70μmまで変更させた2層カプセルを作製し、22℃にて18~45%RHでの開放放置における水封入率の4週間、8週間、12週間、及び16週間経過後の経時変化を測定した。封入層の最薄部膜厚測定には、高分解能3DX線顕微鏡「NANO3DX」(リガク社製)を用い、非破壊による断面画像を撮影し膜厚を確認した。
【0052】
一方、水封入率において封入層の最薄部膜厚が70μmの場合(比較例3)著しく水封入率が低下し、水封入カプセルとしては不適であったが、それを超える最薄部膜厚であれば、良好な水封入率を保持していた。
【0053】
各水封入カプセルを以下の表4に示す処方により作製した。
【0054】
【表4】
【0055】
[レオメーター測定使用機器]
SUN RHEO METER CR-3000 EX-L (サン科学)
モード: MODE1(Depth) アダプター:No.1φ10mm
REAL/HOLD: HOLD 進入距離 :3.0mm
圧縮/引張り: PRESS テーブル移動速度:20.0mm/min
ロードセル最大応力:200N
【0056】
(実施例13及び14)
実施例13及び14の水封入カプセルにおいて、封入層は、固型油脂と-38℃の融点を有するとされる液状油脂スクワランが混合した油性物質を用い、封入層の比重を0.795及び0.815の低比重にそれぞれ設定した。また、レオメーターにより測定された最大荷重は、実施例13では0.75kg、実施例14では3.42kgであり、封入層が柔らかく設定された2層の水封入生カプセルを得ることができた。水封入率経時変化テスト8週間後のデータについていずれも、比較例2(ゴム風船(水風船))よりも優れた水封入率を保持している。したがって、封入層の比重が0.795~0.815の2層生カプセルは、優れた水封入率を保持することが確認された。
【0057】
(実施例15及び16)
実施例15及び16の水封入カプセルにおいて、封入層は、固型油脂と液状油脂スクワランを混合した油性物質を用い、封入層の比重を0.825又は0.835とやや高めに設定した。また、レオメーターにより測定された最大荷重は、実施例15では5.81kg、実施例16では7.18kgであり、封入層が固めに設定された2層の水封入固形カプセルを得た。
【0058】
(実施例17)
封入層における親油性組成物の比重について、比重調整剤としてSAIBを用いて、高比重0.99に設定した2層固形カプセルを実施例17とした。水封入率経時変化テスト8週間後のデータについて、比較例2(ゴム風船(水風船))よりも優れた水封入率を保持している。
【0059】
[3層水封入ドライカプセルの調製]
(実施例18及び19)
実施例18について、高比重0.99に設定したものをゼラチンをベースとする皮膜の3層ドライカプセルとして調製した。実施例19については、さらに高比重の1.03に設定し、ゼラチンをベースとする皮膜の3層ドライカプセルとして調製した。
【0060】
実施例18及び19のいずれも、経時変化テスト4週間後のデータについて75%以上であり、水封入率経時変化テスト8週間後のデータについて50%以上であり、比較例2(ゴム風船(水風船))よりも優れた水封入率を保持している。
【0061】
(比較例4及び5)
封入層における親油性組成物の比重について、比重調整剤としてスクワランを用いて、低比重0.775及び0.785に設定したものをそれぞれ比較例4及び比較例5としたが、いずれも三層カプセルとして製剤化困難であった。製剤化には、0.79以上の比重が必要である。
【0062】
(比較例6及び7)
封入層における親油性組成物の比重について、比重調整剤としてSAIBを用いて、高比重1.065に設定したものをそれぞれ比較例6(2層カプセル)及び比較例7(3層カプセル)とした。比重が1.05よりも大きい場合はカプセル製剤性は悪いがカプセルを作製することは何とか可能である。しかし水封入率の経時変化では8週経過後に2%程度にまで低下してしまい、水封入率が非常に良くなかった。いずれも、水封入率経時変化テスト4週間後のデータ、8週間後のデータともに、上記比較例2(ゴム風船(水風船))よりも低い水封入率であって、水封入安定性に優れたカプセルとはいえなかった。
【0063】
[3層ドライカプセルの検討]
香料等を内包したカプセルは、タバコのフィルターに埋設して喫煙時などにカプセルを割って香りを楽しんだり、カプセルが割れる際の音や感触を楽しむことなどが知られているが、使用される香料としては、一般的にカプセル化が容易な油溶性香料が従来用いられてきた。水溶性香料を使用した場合、カプセル化ができたとしても、水溶性香料内の水分や水溶性成分が早々にカプセル皮膜側に移行してしまい皮膜が軟化するため、カプセルが割れる際の音や感触を楽しむことができない等問題点が指摘されてきたが、これらの課題を解決するための検討をさらに行うこととした。
【0064】
上記[水封入カプセルの作製]の手順に従い、作製された3層水封入プレカプセルをタンブラー型回転送風乾燥機(富士カプセル社製)を用いて乾燥し、以下の表5に示す処方により3層ドライカプセルを作製した。
【0065】
含水コアにおいては、水溶性香料の構成成分として、水、プロピレングリコール、及び/又はエタノール、及び/又はグリセリンを使用した。また、粘性付加剤として、これまでのアルギン酸Naに代えて、ヒドロキシプロピルセルロースを使用した。
【0066】
封入層において、比重調整剤としてSAIBを使用し、封入層の比重は0.94又は0.945と高めに設定された。
【0067】
皮膜層については、タバコフィルター埋設用カプセルやマスク用カートリッジに使用する事ができる、カラギナンと水を含むカラギナンベース、ゼラチンと水を含むゼラチンベース、又は、寒天と水を含む寒天ベースの皮膜処方を用いた。
【0068】
【表5】
【0069】
(水封入安定性の確認)
(実施例20~25)
実施例20~25の6種類の3層ドライカプセルは、いずれも最薄部膜厚が130μm~300μmの範囲内であった。また、融点44.2℃の固型油脂と比重調整剤SAIBとを使用した封入層の比重が0.940~0.945であったが、封入層の物性は固くなり、3層ドライ水封入カプセルとなった。また、皮膜層がカラギナンべース、ゼラチンベース、寒天ベースのいずれであっても手指で簡単に割ることができ、カプセルが割れるときに生じるパチンという音及び感触が心地よいものとなり良好であった。またカプセル乾燥後1月が経過(1M)しても手指潰し時の音と感触は良好で、カプセルが割れる音と感触を楽しむことができたので、130μm以上の封入層の最薄部膜厚を有する3層ドライカプセルは水封入安定性が高いことが確認された。
【0070】
なお、上記6種類のドライカプセルの皮膜層の水分含量は、赤外線水分計 FD-720(ケット科学研究所製)を用い、皮膜1g/105℃/15分の条件にて測定したいずれも8~15%の範囲であった。また、厚さは40~200μm、硬度は0.5~20N、皮膜率は5~30%であり、カプセルの直径は1~8mmであった。
【0071】
[3層生水封入カプセルの作製]
従来技術における生カプセルは、油溶性成分又は親油性組成物を湿潤状態の柔らかい皮膜に内包させた2層カプセルであり、化粧品用途での使用が知られている。使用時にカプセルを磨り潰すことによりカプセル皮膜が破砕され、適用箇所に放出された内容物が、液状、クリーム状、又は半固形状である化粧用基剤とフレッシュな状態で混合されるものであるが、内容物として用いられるものは油溶性成分や親油性組成物が一般的であり、水分や水溶性成分が内包された生カプセルは知られていない。したがって、前述のような使用方法を想定した、水を含む含水コアを有する3層生カプセルについて検討することとした(実施例26~30)。
【0072】
上記[水封入カプセルの作製]の手順に従い、以下の表6に示す各処方について水封入プレカプセルを調製し、流水で洗浄した後、防腐剤(フェノキシエタノール)及び抗菌剤(1,3-ブチレングリコール)を含有させた保存液 (保存水溶液/無色)中に、3層生カプセルを浸漬させた。
【0073】
含水コアにおいては、水に、耐水性試験において含水コアの色素移行を目視確認するための色素として青色1号を添加し、また、粘性付加剤としてアルギン酸Naを使用した。
【0074】
封入層において、固型油脂とともに、液状油脂としてMCT(ココナードMT、花王製)を使用したことにより封入層比重は高めになった。実施例27~30については、比重調整剤としてSAIBを使用し、封入層の比重は1.01及び1.00と高く設定された。最薄部膜厚はいずれも150μm以上であった。
【0075】
皮膜層については、カラギナンと水を含むカラギナンベース、ゼラチンと水を含むゼラチンベース、又は、寒天と水を含む寒天ベースの皮膜処方を用いた。
【0076】
耐水性の評価方法としては、防腐剤(フェノキシエタノール)及び抗菌剤(1,3-ブチレングリコール)を含有させた保存液 (保存水溶液/無色)中に、3層生カプセルを浸漬させて保管した際の含水コアの色素移行を目視確認する方法を用いた。それぞれの3層生カプセル内に含水コアの水分や水溶性成分が封じ込められ安定に保持されている場合には、保存液は無色の状態で色調変化はなく耐水性があることを確認できる。一方、含水コア内の水分や水溶性成分が皮膜を介し保存液側に移行した際には保存液が青色に着色されるため、不安定であり、耐水性に欠けることを目視確認することができる。結果を以下の表6に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
(実施例26~30)
(耐水性の確認)
実施例26~30の3層カプセルは、いずれも封入層の最薄部膜厚が150μm以上であり、液状油脂としてMCTを使用した封入層の比重は、0.930~1.010の3層生水封入カプセルであった。またカプセル乾燥後、3層生カプセルを保存液に浸漬し3月が経過(3M)しても保存液側への色素移行が無く、耐水性が高いことを確認した。また、これらのカプセルは、手指で容易にすり潰して使用可能であった。3層生カプセルにおける皮膜水分含量の実測値としてカラギナンベース皮膜カプセル:20.4%、ゼラチンベース皮膜:49.6%、寒天ベース皮膜カプセル:97.5%が挙げられ、これらの皮膜水分含量では各皮膜は柔らかく生カプセルであると判断された。
【0079】
[カプセルの耐水性の検討]
以下の表7(実施例31~35)に示されるように、様々な封入層の最薄部膜厚を有する2層固型カプセル又は3層カプセルを作製した。
【0080】
以下の表7に示される処方により作製した水封入カプセルの耐水性を評価した。すなわち、20mLガラスバイアル内に水を入れ、その水の中にカプセル1球浸漬させ、蓋をした状態で室温保管した。水浸漬中のカプセルの含水コアの色素が、経時的にカプセル外部に漏出しているかを4週間、8週間、12週間、16週間経過後にそれぞれ目視にて確認した。
【0081】
【表7】
【0082】
(結果)
表7から明らかなとおり比較例8は、封入層の最薄部膜厚が60μmであったが、8週後には全カプセルが色素漏出してしまい、耐水性は得られなかった。一方、実施例31は最薄部膜厚が200μm以上、実施例32は最薄部膜厚が500μm以上ある2層固形水封入カプセルであったが、16週間経過後もガラスバイアル内の水が青色に着色しておらず、色素漏出が無い耐水性を有するカプセルであった。500μm以上の最薄部膜厚である封入層がある実施例33の3層ドライカプセルではゼラチン皮膜層は経時的に膨潤するが、含水コアの色素漏出はなく、耐水性があった。実施例34及び35は、封入層の比重を0.940と1.030に設定した2層固形水封入カプセルであるが、良好な耐水性カプセルが得られている。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の水封入カプセルは、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、飲料、乳製品、調味料、サプリメント、ペットフード、家庭用日用品、たばこ・代用たばこ等の嗜好品、肥料、飼料、洗浄剤等の工業用品その他の分野において、親水性揮発性物質を長期間安定に保持できる水封入カプセルとして利用可能である。