IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファイバーテクス・パーソナル・ケア・アクティーゼルスカブの特許一覧

<>
  • 特開-伸縮性不織シート 図1
  • 特開-伸縮性不織シート 図2
  • 特開-伸縮性不織シート 図3
  • 特開-伸縮性不織シート 図4
  • 特開-伸縮性不織シート 図5
  • 特開-伸縮性不織シート 図6
  • 特開-伸縮性不織シート 図7
  • 特開-伸縮性不織シート 図8
  • 特開-伸縮性不織シート 図9
  • 特開-伸縮性不織シート 図10
  • 特開-伸縮性不織シート 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102168
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】伸縮性不織シート
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20240723BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240723BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20240723BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20240723BHJP
   A61F 13/51 20060101ALN20240723BHJP
   A61F 13/49 20060101ALN20240723BHJP
   A61F 13/514 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
D04H3/16
B32B5/26
D04H3/007
D04H3/147
A61F13/51
A61F13/49 400
A61F13/514 320
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072211
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2022170353の分割
【原出願日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】21207488
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516034957
【氏名又は名称】ファイバーテクス・パーソナル・ケア・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン モーテン ライズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、弾性的に伸縮可能な不織層と、伸縮可能な化粧層とを備える弾性的に伸縮可能な不織シートと、そのようなシートを製造するためのインライン方法を提供する。
【解決手段】少なくとも3層の不織材料を備え、一方の層は、前記3層のうちの1つの層であり、熱可塑性エラストマーポリマー材から形成されたスパンボンド弾性繊維を有する弾性的に伸縮可能な不織材であり、他方の層は、前記3層のうちの2つの層であり、スパンボンド捲縮多成分繊維を有する伸縮可能な化粧層であり、それぞれの側に設けられた前記2つ化粧層の間に、前記弾性的に伸縮可能な不織材を挟持する構造を更に備えており、隣接する3層は、少なくとも1つのカレンダーロールの表面に配置された突起をエンボスし、エンボス用の突起に超音波振動が与えられる又はエンボス用の突起が加熱されることで行われる面接合点によって互いに接合された弾性的に伸縮可能な不織シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層の不織材料を備え、
一方の層は、熱可塑性エラストマーポリマー材から形成されたスパンボンド弾性繊維を
有する不織材であり、
一方の層は、スパンボンド捲縮多成分繊維を有する伸縮可能な化粧層であり、
隣接する層は、エンボス加工された接合点によって互いに接合されており、
前記捲縮多成分繊維の成分のうちの少なくとも一つは、プロピレン-α-オレフィン共
重合体材であることを特徴とする、弾性的に伸縮可能な不織シート。
【請求項2】
WSP100.4に従って計測される流れ方向における前記シートの破断点伸度は、1
50%よりも高く、好ましくは200%よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の
シート。
【請求項3】
ASTM D5459に従って計測される流れ方向における永久変形は、第一のサイク
ル後で、15%よりも低く、好ましくは10%よりも低いことを特徴とする、請求項1ま
たは2に記載のシート。
【請求項4】
ASTM D5459試験の第二のサイクルにおけるヒステリシスプロットの増加およ
び減少の流れ方向の応力―歪み曲線間の面積は、%[A/(A+B)×100]で表す、
初期の増加曲線(A+B)よりも下の全体の面積に関連する曲線(A)同士の間の面積の
相対サイズで表すと、40%未満、好ましくは30%未満であることを特徴とする、請求
項1~3のいずれか1項に記載のシート。
【請求項5】
捲縮多成分繊維のさらなる成分は、ポリプロピレンホモポリマー材であることを特徴と
する、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項6】
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、ポリ(プロピレン-エチレン)ランダム共重
合体であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のシート。
【請求項7】
プロピレン-α-オレフィン共重合体の分子量分布は、前記捲縮多成分繊維の他の成分
の分子量分布よりも広いことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のシート
【請求項8】
前記捲縮多成分繊維は複合繊維であり、好ましくは並列型複合繊維であることを特徴と
する、請求項1~7のいずれか1項に記載のシート。
【請求項9】
弾性繊維を形成する熱可塑性エラストマーポリマー材は熱可塑性ポリオレフィンエラス
トマーであり、好ましくはプロピレン-α-オレフィン共重合体を有することを特徴とす
る、請求項1~8のいずれか1項に記載のシート。
【請求項10】
それぞれの側に設けられた少なくとも一つの化粧層の間に、弾性的に伸縮可能な不織材
の挟持構造を更に備えており、前記シートは、好ましくはこれらの弾性化粧層のみからな
ることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のシート。
【請求項11】
前記化粧層のそれぞれの坪量は、5から40g/m2であり、かつ/または前記弾性層
の坪量は10から140g/m2であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1
項に記載のシート。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の弾性的に伸縮可能な不織シートを製造する方法
であって、以下のインライン式工程:
(a1)少なくとも一つの成分がプロピレン-α-オレフィン共重合体である捲縮多成
分繊維を紡ぎ、該繊維を移動スピンベルトの上に置いて織布を形成する工程と、
(a2)熱可塑性エラストマーポリマー材から形成された弾性繊維を紡ぎ、該繊維を工
程(a1)で形成された織布の表面に置いて別の織布を形成する工程と、
(a3)任意で、少なくとも一つの成分がプロピレン-α-オレフィン共重合体である
捲縮多成分繊維を紡ぎ、該繊維を工程(a2)で形成された織布の表面に置いて別の織布
を形成する工程と、
(b)隣り合う織布を結合して弾性的に伸縮可能なスパンボンド不織シートを形成する
工程と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記シートを流れ方向に予め伸ばすインライン式またはオフライン式工程(c)を更に
備えることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(c)の間、前記シートを、元の寸法の40から160%、好ましくは60から1
40%、さらに好ましくは80から120%だけ流れ方向に予め伸ばすことを特徴とする
、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
衛生用品の製造、好ましくは弾性ウエスト材としてのシートを有するパンツ型おむつの
製造における、請求項1~11のいずれか1項に記載の弾性的に伸縮可能な不織シートの
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性的に伸縮可能な不織弾性層と伸縮可能な不織化粧層とを備える弾性的に
伸縮可能な不織シート、およびそのようなシートを製造するためのインライン式の方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
不織シートは、衛生産業においてベビー用おむつや大人用失禁製品を製造するための材
料として広く用いられている。しかし多くの場合、例えばオープン型おむつの後ろの耳部
分またはパンツ型おむつのウエストベルト部分を形成するために、弾性的に伸縮可能な材
料が必要であるが、一般的な不織シートではその必要を満たすことができない。
【0003】
不織シートの弾性伸びに限界があるという問題に対処するための従来の方法としては、
不織材料の層の間に弾性層を設けることがある。それによって得られた積層体は弾性性能
には優れるが、弾性層は空気を通さないため着用者に不快感をもたらす可能性がある。別
の方法としては、ライクラ繊維と一般に呼ばれる弾性ストランドをシートに含めることが
ある。この方法の問題は、着用者に不快感を与えうる局所的な弾性力であり、製造中にス
トランドが破断しやすい点である。
【0004】
それに加えて、弾性層またはストランドを含むことによりシートが弾性を持つようにな
るが、その弾性は弾性層またはストランドと関連する不織材料の最大伸度の範囲内にとど
まる。従来の不織材料のほとんどは、最大で、ほとんどの場合はさらに少ないが、流れ方
向(MD)において約50から80%、流れ方向に対して直角方向(CD)において70
から100%の破断点伸度を有し(WSP110.4)、これは、破断されるまでに非常
に限られた程度しか伸びないことを意味している。しかし、上述した用途に対して、シー
トは特定の用途に応じて元の寸法の150%(から元の寸法の250%まで)弾性的に伸
びることが要求されるが、これは流れ方向に対して直角方向のまたは流れ方向の伸張に当
てはまる。例えば、従来のオープン型またはテープ型ベビー用おむつを製造するためには
、典型的な製造工程において、後ろの耳部分に用いる材料がCDにおいて上述した値の弾
性伸びを示すことが求められている。一方、大人用またはベビー用パンツ型おむつを製造
するためには、典型的な製造工程において、ベルトのような弾性用途で用いられる材料が
MDにおいて上述した値の弾性伸びを示すことが求められている。
【0005】
不織材料の伸びに限界があるという問題に対処する従来の方法としては、弾性層または
ストランドに対する積層する際に不織シートに折りひだをつけることがある。この方法で
は、不織材料自体に伸縮性がないことを、ひだに追加の材料を設けることで補っている。
しかし、折りひだの欠点は、製造中に多くの材料が必要なことと最終製品の厚さが大きく
なることであり、そのため断熱性が高く目につくため購入者に不評である。
【0006】
さらに最近の方法では、元々弾性的に伸縮可能な不織材料を用いている。これらの不織
シートは、伸縮可能ではあるがそれ自体はそれほど弾性のない少なくとも一つの不織化粧
層と、弾性不織層とを有する。
【0007】
そのような弾性的に伸縮可能な不織シートを製造するオフライン工程は、WO2020
/187540A1に開示されている。この方法は、捲縮繊維からなる予め製造された化
粧層を用いることと、スパンボンド弾性層を形成するスパンボンド工程において化粧層の
上に弾性繊維を堆積することとを含む。次に、このシートを一対の波形ローラーで予め伸
ばす。得られた製品は、CDにおいて元の寸法の150%以上弾性的に伸ばすことができ
産業上の要求を満たすが、MDにおいては弾性伸びに限界があることが分かる。予め製造
された化粧層は、2回目に製造ラインを通すと伸縮性をかなり失うことが分かっているた
め、MDにおける伸びをさらに高める可能性はオフライン工程では限界がある。
【0008】
弾性的に伸縮可能な不織シートを製造するインライン工程が、EP3715517A1
に開示されている。この方法は、マルチビームスパンボンドラインを用いて、捲縮繊維か
らなる伸縮可能な化粧層と弾性繊維からなる弾性層とを備えるシートを、材料をカレンダ
ー結合し前伸張する前に同じラインで製造する。この工程で得られる製品は、CDにおい
て十分に伸張する性質があるが、同様にMDにおいては十分に伸張する性質が不足してい
る。
【0009】
したがって、衛生産業において流れ方向に弾性的に伸びる本来の性質が高い不織シート
が依然として要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、本発明は、少なくとも2層の不織材料を備える弾性的に伸縮可能な不織シート
を提案し、2層のうちの一方の層は熱可塑性エラストマーポリマー材から形成されたスパ
ンボンド弾性繊維を有する弾性的に伸縮可能な不織材料であり、もう一方の層はスパンボ
ンド捲縮多成分繊維を有する伸縮可能な化粧層であり、隣接する層がエンボス加工された
接合点によって結合され、捲縮多成分繊維の成分のうちの少なくとも一つはプロピレン-
α-オレフィン共重合体材である。
【0011】
EP3715517A1に開示された不織シートと比較すると、化粧層の複合繊維の両
方の成分にポリプロピレンを使用し、複合繊維の成分のうちの少なくとも一つにプロピレ
ン-α-オレフィン共重合体(co-PP)を使用することで、特に流れ方向(MD)に
おいてシートの全体的な弾力性が顕著に増加する。具体的には、MDにおいて、WSP1
00.4に従って計測したときに、そのようなシートは、150%を超える、好ましくは
200%を超える、破断点伸度の目標値を実現している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るシートは、特に流れ方向において有利な弾性挙動を示すことが好ましい。
【0013】
ある実施形態において、第一のサイクル後にASTM D5459に従って計測された
流れ方向の永久変形は、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満で
ある。
【0014】
ある実施形態において、ASTM D5459試験の第二のサイクルにおけるヒステリ
シスプロットの増加および減少の流れ方向の応力―歪み曲線間の面積は、初期の増加曲線
(A+B)よりも下の全体の面積に関連する曲線(A)同士の間の面積の相対サイズで表
すと、40%未満、好ましくは30%未満である。
【0015】
複合繊維の2つ以上の成分は、繊維の断面において非対象に配置されている。好ましい
実施形態において、多成分繊維は複合繊維である。標準的な多くの場合、好ましい選択肢
としては並列型複合繊維があるが、本発明の概念は並列型繊維に限定されず、例えば偏心
芯鞘型等の別の断面で実現されてもよい。
【0016】
化粧層および弾性層の両方の不織材料はスパンボンド不織材であり、不織シートは全体
的にはスパンボンド不織シートであると好ましい。
【0017】
プロピレンと共に共重合体を形成するα-オレフィンは、好ましくはエチレンである。
言い換えると、共重合体は好ましくはポリ(プロピレン-エチレン)共重合体である。同
様に、共重合体は好ましくはランダム共重合体である。
【0018】
プロピレン-α-オレフィン共重合体におけるコモノマーの含有量、またはポリ(プロ
ピレン-エチレン)共重合体におけるエチレンの含有量は、好ましくは1wt.-%以上
、より好ましくは2wt.-%以上である。上限としては、コモノマー含有量は以下8w
t.-%以下、好ましくは6wt.-%以下でありうる。
【0019】
捲縮多成分繊維の成分のうちの別の成分は、好ましくはポリプロピレンホモ重合体(P
P)である。本明細書では、ポリプロピレンホモ重合体は、モノマー純度が99.5wt
.-%よりも高く、好ましくは99.8wt.-%よりも高く、より好ましくは99.9
wt.-%よりも高いとして理解される。
【0020】
ポリプロピレンを一つの成分とし、ポリ(プロピレン-エチレン)共重合体を他の成分
として用いる複合繊維を利用することで、MDにおける伸張が特に増加することが分かる
【0021】
さらに好ましい実施形態において、多分散性(M/M)で表されるプロピレン-α
-オレフィン共重合体の分子量分布は、捲縮多成分繊維の他の成分の分子量分布よりも広
く、好ましくは複合繊維の他の成分で用いられるポリプロピレンホモ重合体の分子量分布
よりも広い。
【0022】
名数の観点からいえば、2種類のポリマーのM/Mの違いは、好ましくは1以上、
より好ましくは2以上、最も好ましくは3以上である。一方、2種類のポリマーのM
の違いは、好ましくは10以下、および好ましくは8以下である。M/Mの適切
な絶対値は、例えば、ポリプロピレンでは2.5から7.5であり、プロピレン-α-オ
レフィン共重合体では4から10でありうる。
【0023】
多成分繊維の成分のうちco-PPまたはhomo-PPは、別のポリマー、または、
スリップ剤、充填剤またはカラーマスターバッチ等の別の添加剤と混合してもよいが、そ
れぞれの成分の50重量%を超え、好ましくは75%を超え、さらに好ましくは90%を
超える。
【0024】
捲縮複合繊維内では、他の成分に対するco-PP成分の重量比は、好ましくは複合繊
維のhomo-PP成分が20/80と80/20との間、より好ましくは30/70と
70/30との間、さらに好ましくは40/60と60/40との間である。
【0025】
弾性繊維を形成するための熱可塑性エラストマー材料は、熱可塑性ポリオレフィンエラ
ストマー(TPE-o)を有し、好ましくはプロピレン-α-オレフィン共重合体を有す
る熱可塑性ポリオレフィンエラストマーを含みうる。本発明の文脈において使用する適切
なTPE-o材料が、EP2342075A1に開示されている。代わりに、またはそれ
に加えて、混合物としての意味で、特に熱可塑性のポリウレタン(TPU)等の他の熱可
塑性エラストマー材料またはスチレンブロック共重合体(TPE-s)を用いてもよい。
ある実施形態において、熱可塑性エラストマーに対して、20wt.-%まで、好ましく
は10wt.-%までのホモポリプロピレン等の熱可塑性オレフィンを熱可塑性エラスト
マーに含有してもよい。また、充填材、スリップ剤またはカラーマスターバッチ等の添加
剤を追加することができる。ある実施形態において、複合弾性繊維は、例えば並列型また
は芯鞘型構成において配置される2つの異なる熱可塑性エラストマーから形成されうる。
【0026】
シートの弾性層および化粧層は、他の繊維に加えてそれぞれ上述した弾性材または複合
繊維を有しうるが、上述した弾性材または複合繊維のみからなることが好ましい。
【0027】
ある実施形態において、上記シートは弾性層の両側に少なくとも一つの化粧層を有し、
それによって全体で少なくとも3層を有する。この構成は、両側に設けられた本来粘着性
の弾性層を覆うことにおいて有利である。
【0028】
実施形態において、別の化粧層が第一の化粧層として上述のように構成されてもよい。
弾性層の互いに異なる側に設けられた化粧層は同じであってもよいし、異なっていてもよ
い。例えば、一方の不織化粧層はスパンボンド不織材であってもよく、他の不織化粧層は
別のスパンボンド不織材またはメルトブローン不織材であってもよい。
【0029】
各化粧層の坪量は、5から40g/m2であってもよく、好ましくは8から30g/m2
、より好ましくは10から25g/m2、さらに好ましくは15から20g/m2である。
弾性層の坪量は、10から140g/m2であってもよく、好ましくは20から120g
/m2、より好ましくは25から100g/m2である。
【0030】
シートは、典型的にはマクロ的な接合点のパターンを有する。好ましい実施形態におい
て、繊維表面の1cm2当たりの接合点の数は、100よりも少なくてよく、好ましくは
80よりも少なく、20よりも多いことが好ましい。ある実施形態における面接合点が占
める繊維表面の全体の面積は、18%よりも少なく、好ましくは15%よりも少なく、結
合パターンは比較的開放していることが好ましいことを意味する。
【0031】
ある実施形態において、本発明のシートは本来流れ方向によく伸びる性質があるが、以
下にさらに詳しく説明するように流れ方向の前伸張をすることによってさらに活性化され
てもよい。
【0032】
本発明はさらに、本発明に係る弾性的に伸縮可能な不織シートを製造する方法を提案し
、この製造方法は、以下のインライン式工程:(a1)少なくとも一つの成分がプロピレ
ン-α-オレフィン共重合体である捲縮多成分繊維を紡ぎ、該繊維を移動スピンベルトの
上に置いて織布を形成する工程と、(a2)熱可塑性エラストマーポリマー材から形成さ
れた弾性繊維を紡ぎ、該繊維を工程(a1)で形成された織布の表面に置いて別の織布を
形成する工程と、(b)隣り合う織布を結合して弾性的に伸縮可能なスパンボンド不織シ
ートを形成する工程と、を備える。
【0033】
工程(a1)および(a2)の紡ぐ工程は、スパンボンド機において繊維を押し出し、
焼き入れし、引っ張ることを含む。工程(a1)等で形成された繊維状の織布は、結合工
程(b)の後の不織シートのそれぞれ化粧層および弾性層を形成するための不織材料に結
合していない前駆物質である。
【0034】
工程(b)の結合は、最も好ましくはエンボスである。具体的には、結合は接合点をシ
ートにエンボスすることを含み、このエンボスは、少なくとも1つのカレンダーロールの
表面に配置された突起をエンボスすることで行われる。実施形態は、超音波結合を含み、
超音波振動がエンボス用の突起に与えられる。別の実施形態は、エンボス用の突起を加熱
する熱結合を用いる。
【0035】
好ましい変形例では、繊維表面の1cm2当たりの接合点の数は100未満であってよ
い。面接合点で占められる繊維表面の全体の面積は、好ましくは18%よりも小さく、よ
り好ましくは15%よりも小さく、結合パターンが比較的開放していることを意味する。
【0036】
ある実施形態において、上記方法は、別の繊維、好ましくは捲縮多成分繊維、を紡ぐ工
程(a3)をさらに備え、最も好ましくは捲縮多成分繊維の成分のうちの少なくとも一つ
はプロピレン-α-オレフィン共重合体であり、この繊維を工程(a2)で形成した織布
の表面に置いてさらに別の織布を形成する。この方法の変形例において、本発明の好まし
い実施形態に係るシートが設けられ、2つの化粧層の間に設けられた弾性層の挟持構造を
有する。
【0037】
ある実施形態において、上記方法は、化粧層の織布をあらかじめ圧縮することをさらに
備える。各対応する工程の後に1つの前圧縮工程、つまり工程(a1)と、該当する場合
は工程(a3)、を設けることが好ましい。好ましくは、前圧縮工程は、織布を2つの前
圧縮ローラーの間に通すことを含む。印加する線圧は、好ましくは3から5N/mmであ
る。ローラー温度は、50から110℃以上であってもよく、より好ましくは60から1
00℃である。熱可塑性エラストマーからなる繊維の本来の粘着性によって、前圧縮は工
程(a2)の後には必要がない、または実行可能ではない。
【0038】
ある実施形態において、上記方法はシートを流れ方向に前伸張する工程(c)をさらに
備える。
【0039】
流れ方向の前伸張は、例えば、材料をローラー対で異なる速度で流れ方向に引っ張るこ
とで行ってもよい。
【0040】
あるいは、流れ方向の前伸張は、互いに連動する環状リブと溝(リングロール)または
互いに連動する流れ方向に対して直角方向のリブと溝とを表面に有する一対の相互ロール
を備えたミルで機械的にシートを活性化することで行ってもよい。
【0041】
流れ方向の前伸張工程(c)は、インラインで行ってもよいし、単独型のプロセスとし
て行ってもよい。
【0042】
工程(c)におけるシートの流れ方向の前伸張の範囲は、最終的なシートが流れ方向に
弾性的に伸びうる範囲に影響を与えうる。したがって、ある実施形態において、工程(c
)において上記シートは流れ方向に前伸張される。流れ方向の前伸張の程度は、例えば、
シートが元の寸法の40から160%、好ましくは60から140%、より好ましくは8
0から120%伸びるものでありうる。
【0043】
別の実施形態では、上記方法は流れ方向の前伸張を行わない。複合繊維においてポリマ
ーを特に選択するので、流れ方向の前伸張は、従来技術の材料に比べて、好適な流れ方向
の伸長特性を得るために必要でない場合もある。
【0044】
本発明は、2層または3層のシートに限定されない。弾性層または化粧層または非弾性
層をさらに設けることで3層以上になってもよい。また、各層において、製造工程で定め
た別々の段階の繊維で形成された同一または同種の2つ以上の副層が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る不織シートは衛生用品の製造での使用に特に適している。例えば、不織シ
ートは、弾性ウエスト材として用いられるシートを備えるパンツ型おむつの製造に使用す
ることができる。この用途における産業で現在採用されている典型的な製造工程は、材料
がMDにおいて弾性的に伸びることを要求している。
【0046】
本発明のさらなる詳細および利点は、以下に記載される図面および実施例から明らかに
なるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明に係る弾性的に伸縮可能な不織シートの概略断面図
図2】本発明の方法を実行するために設定された機械の例
図3】流れ方向の伸張によってシートを活性化させるユニットの概略図
図4】動作中の図3に示すユニットの概略図
図5】比較例の構成に係る分離されたスパンボンド化粧層のMD引っ張り(応力-歪み)曲線
図6】本発明の構成に係る分離されたスパンボンド化粧層のMD引っ張り(応力-歪み)曲線
図7】本発明の構成に係る別の分離されたスパンボンド化粧層のMD引っ張り(応力-歪み)曲線
図8】分離された弾性スパンボンド不織層のMD引っ張り(応力-歪み)曲線
図9】本発明に係るシート、シートの分離された化粧層およびシートの分離された弾性層のMD引っ張り(応力-歪み)重畳曲線
図10】ASTM D5459の試験を示す、引っ張り(応力-歪み)線図およびそれに続く応力-歪みサイクルの増加および減少曲線の概略図
図11】材料のヒステリシス曲線を示す、実施例5のサンプル5-1に対する流れ方向の引っ張り(応力-歪み)プロット
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明に係る弾性的に伸縮可能な不織シート100の概略断面図を示し、弾性
繊維130を備える弾性不織層は、第1および第2の不織化粧層120に挟まれている。
【0049】
本発明に係る弾性的に伸縮可能な不織シート100を製造するために設定された機械の
例を図2に示す。
【0050】
この設定は、搬送ベルト10と、搬送ベルトにインライン配置された3つのスパンボン
ド機20、30および40とを備える。
【0051】
各スパンボンド機では、溶融した熱可塑性のポリマーが金型の穴から押し出される。そ
して、押し出された繊維ストランドは、焼き入れされ、引き出され/伸長されて無端繊維
を形成し、形成された無端繊維は、搬送ベルト10または搬送ベルト10にあらかじめ堆
積された織布に置かれる。
【0052】
第1のスパンボンド機20は、捲縮複合繊維の織布を搬送ベルト10に堆積する。2つ
のポリマー供給が、第1のスパンボンド機20の上で示される。中央のスパンボンド機3
0は、熱可塑性エラストマーからなる織布を予め形成された織布に堆積する。最後のスパ
ンボンド機40は、捲縮複合繊維の別の織布を再び弾性繊維織布に堆積する。スパンボン
ド機20および40の次に、織布を前圧縮する一対の前圧縮ローラー21および41がそ
れぞれ設けられている。
【0053】
前圧縮された織布は、一対の対向回転エンボスローラー51および52を備えるカレン
ダーユニット50でカレンダー仕上げされ、不織シートを形成する。カレンダー仕上げの
後、後で詳しく説明する連動構造要素を表面に備える一対の対向回転活性化ローラー61
および62を備える活性化ユニット60で活性化工程を行う。インライン工程全体の最後
に、製品としてのシートが製品ロール70に集められる。
【0054】
図3は、流れ方向の弾力性を高めるように構成された活性化ユニット60の活性化ロー
ラー61および62の実施形態を示す。具体的には、図3に示す図は、ローラー軸に垂直
なラジアル面に沿った拡大断面図である。両方のローラー61および62は、それらの動
作面に均等に間隔を開けて配置した複数のリブ63を備え、リブ63の間には溝65が形
成されている。リブ65は流れ方向に対して直角方向に配置され、ローラー61および6
2の表面で軸方向に延びている。リブ63の幅を「a」で示し、係合深さを「b」で示し
、隣り合うリブの間の距離を「c」で表す。
【0055】
図4は、動作中の図3に示すユニットを示す。図4において左から右へ、2つの化粧層
と化粧層に挟まれた弾性層とを備える活性化されていない前駆物質シートが、活性化工程
に進む。シートが2つのローラー61および62のニップに入ると、シートが噛合リブ6
3の間で部分的に伸長した状態で活性化工程が開始される。この工程の間、弾性層はその
弾性能力によって伸びる。「a」、「b」および「c」のパラメータは、不織シートに与
えられてもよくかつ所望されてもよい伸び特性によって、必要に応じて変更してもよい。
【0056】
活性化されていない場合でも、捲縮複合繊維において比較的狭い分子量分布を有するポ
リプロピレンホモ重合体と比較的広い分子量分布を有するエチレン-プロピレンランダム
共重合体との組み合わせを使用すれば、流れ方向に破断せずに大幅に、実施形態において
は300%まで、伸長できるシートを実現できることが分かった。これは、産業上の基準
を満たし、本発明のシートで使用される弾性不織層の高い伸び特性に一致するのに十分で
あり、実施形態においては400から500%弾性的に伸びることができる。
【0057】
本発明のシートの有利な特性を、以下の実施例で示す。
【0058】
並列型複合捲縮繊維を用いる多くのスパンボンド化粧層を、以下に特定される物質を用
いて用意した。
【0059】
【表1】
【0060】
511Aポリマーは、サビック社製の、狭いポリマー重量分布(M/Mが3.8)
、25g/10分のMFRおよび161℃のTを有するポリプロピレンホモ重合体であ
る。
【0061】
HP552Nポリマーは、ライオンデルバセル社製の、広いポリマー重量分布(M
が6.8)、13g/10分のMFRおよび161℃のTを有するポリプロピレン
ホモ重合体である。
【0062】
RP248Rポリマーは、ライオンデルバセル社製の、30g/10分のMFR、中間
の分子量分布(M/Mが5.2)および148℃のTを有するエチレン-プロピレ
ンランダム共重合体であり、浄化剤とスリップ剤とをさらに含む。
【0063】
QR674Kポリマーは、サビック製の、40g/10分のMFR、広い分子量分布(
/Mが8.5)および150℃のTを有するエチレン-プロピレンランダム共重
合体であり、浄化剤とスリップ剤とをさらに含む。
【0064】
本明細書におけるメルトフローレート(MFR)は、230℃で2.16kgの条件で
ISO1133に従って決定されると理解される。
【0065】
本明細書における融解温度(T)は、DSCでISO11357-3に従って決定さ
れると理解される。
【0066】
本明細書における分子量平均(MおよびM)の値と分子量分布(MWD、M/M
)の結果値は、以下の式を用いてISO16014-1:2003、ISO16014
-2:2003、ISO16014-4:2003およびASTM D 6474-12
に従ってGPCによって決定されると理解される。
【式1】
【0067】
【0068】
一定の溶出量間隔ΔVに対して、AおよびMはそれぞれ溶出量Vに関連したク
ロマトグラフピークスライス面積およびポリオレフィン分子量(MW)であり、Nは積分
限界の間のクロマトグラフから得られるデータの数と等しい。
【0069】
赤外線(IR)検出器(ポリマーチャー(PolymerChar)(バレンシア、ス
ペイン)製のIR4またはIR5を備えた高温GPC器、または、3xAgilent-
PLgelOlexisおよび1xAgilent-PLgelOlexisGuard
カラムを備えたアジレント・テクノロジー社製の示差屈折計(RI)を使用した。溶媒お
よび移動相として、250mg/L2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール)
で安定化させた1,2,4-トリシクロベンゼン(TCB)が使用された。クロマトグラ
フィーシステムを160℃および1mL/分の一定流量で動作させた。200μLのサン
プル溶液を解析ごとに注入した。ソフトウエアバージョン3.3またはポリマーチャーG
PC-IR制御ソフトウェアを用いてデータ収集が行われた。
【0070】
0.5kg/molから11 500kg/molの範囲で、19個の細いMWDポリ
スチレン(PS)基準でユニバーサルキャリブレーション(ISO16014-2:20
03に準拠)を用いてカラムセットをキャリブレーションした。PS基準は、数時間室温
で溶解する。ポリスチレンピーク分子量をポリオレフィン分子量に変換することは、以下
のマーク・フウィンクの式と以下のマーク・フウィンクの定数を用いることで実現する。
PS=19×10-3mL/g、aPS=0.655
PE=39×10-3mL/g、aPE=0.725
PP=19×10-3mL/g、aPP=0.725
キャリブレーションデータに適合するために、三次多項式フィットを用いた。
【0071】
全てのサンプルを、0.5から1mg/mlの濃度範囲で用意し、160℃で2.5時
間溶解した。
【0072】
以下の表2は、これらの材料から得られた分離された20gsmのスパンボンド化粧シ
ートに対して得られた特性を示す。
【0073】
【表2-1】
【0074】
【表2-2】
【0075】
特に、図3および図4に示すミルでどのサンプルも活性化しておらず、1cm2あたり
24個の結合箇所を有する12%の結合面積のオープンドット結合パターンを有していた
【0076】
実施例1は比較例である。実施例2から3は、本発明の実施例である。比較例1から3
のサンプルのMD引っ張り(応力-歪み)曲線を、図5から図7にそれぞれ示す。ここで
図5および図6は、次に平均化された複数の測定の曲線を示し、図7は、既に平均化さ
れた曲線のみを示す。
【0077】
表2の値と図5から図7の曲線から明らかなように、実施例2の化粧層のMD伸びは、
比較例1の化粧層の伸びと比べて非常に高い(約20%高い)。Co-PPの分子量分布
がより広く、PPとCo-PPとの間のMWD差が実施例2よりも大きい実施例3の特に
好ましい構成に係る化粧層は、その効果が非常に大きい(さらに80%向上する)。活性
化/前伸張されていないにも関わらず、ほぼ200%のMD破断点伸度の値(実施例2)
と、さらに250%を超える値(実施例3)とは、一般的に繊維の配列が主に流れ方向で
あるスパンボンド材料に非常に特有である。また、特筆すべき点として、化粧層の厚さは
ある程度クリンプのレベルと関連していることが多いが、実施例2および3の化粧層の厚
さが、同じ坪量にもかかわらず比較例1の化粧層の厚さよりも小さいため、本発明に従っ
て構成されたスパンボンド化粧層の流れ方向に伸びる能力に影響する単純なクリンプのレ
ベルを超える他の効果があることが明らかである。
【0078】
次に、実施例4として、本発明に従って構成された2つの化粧層の間に挟まれた弾性ス
パンボンド層を有する本発明の3つのシート(サンプル4-1、4-2および4-3)を
、材料(活性化されないままのシート)を活性化するためのミル以外は、図2に示すライ
ンで製造する。これらの層を用意し、以下に特定するように構成した。サンプル4-1、
4-2および4-3は、層の坪量のみが異なる。
【0079】
【表3】
【0080】
サンプル4-1のシートの両方の化粧層は、実施例3における分離した方法で確認した
ように、化粧層に対応する。結合パターンは、分離した化粧層で説明した通りである。
【0081】
弾性層は、13wt.-%のエチレン含有量で45g/10分のメルトフローレートで
あるプロピレン系熱可塑性エラストマー共重合体である、エクソンモービル社製の単一の
市販のTPE-o材料VistamaxxTM7050FLからなる。結合パターンは、
上述した通りである。
【0082】
以下の表4は、実施例4の3つのサンプルについて求められた性質を示す。
【0083】
【表4-1】
【0084】
【表4-2】
【0085】
実施例4の変形例として、別の実施例5において、図3および図4に示すように、流れ
方向に前伸張され活性化ユニット60で活性化された以外は、実施例4と同じ材料が製造
された。具体的には、ラインにおける変換スピードの変化によって、活性化ユニット60
のローラーのニップを入れた時点で既に上記材料は100%(元の長さの200%まで)
流れ方向に前伸張している。活性化ユニットにおいて、係合深さ「b」は(5mmのリブ
の全体の高さで)2mmである。
【0086】
以下の表5は、実施例5の3つのサンプルについて求められた性質を示す。
【0087】
【表5-1】
【0088】
【表5-2】
【0089】
本発明の実施例4および5に加えて、実施例6として、実施例4のサンプル4-1の分
離された弾性層を紡ぎ、検証した。
【0090】
図8は、実施例6の分離された40gsmの弾性スパンボンド不織層のMD引っ張り(
応力-歪み)を示す。この材料は、20から25N/50mmの応力を与えると、非常に
、具体的には500%、破断前にMDにおいて伸びることができる。
【0091】
図9は、実施例4のサンプル4-1の本発明のシート、実施例3の化粧層および実施例
6の弾性層の、MD引っ張り(応力-歪み)重畳曲線を示す。これらの重畳曲線から明ら
かなように、化粧層は300%を超える伸びに達するまでは弾性層の弾性プロファイルを
制限していない。シートは高い伸びを有し、弾性があり、弛緩すると元の状態に戻る。
【0092】
図8および図9に示す曲線は、図7の曲線として、複数の測定にわたって平均化された
曲線である。
【0093】
本明細書における弾性材料のさらに重要なパラメータは、ASTM D5459に従っ
て決定された永久変形である。永久変形は長さの増加であり、元の長さの%で表され、こ
れによって弾性材料が、ASTM D5459における試験手順で定められた伸張を行っ
た後で元の長さに戻ることができないものである。永久変形の%が低いほど、弾性材料の
弾力性は高くなる。
【0094】
図10は、ASTM D5459の試験を示す、引っ張り(応力-歪み)線図およびそ
れに続く応力-歪みサイクルの増加および減少曲線の概略図を示す。上記永久変形は、(
AD/AE)×100で求められる値である。
【0095】
別の重要なパラメータは、%[A/(A+B)×100]で表される初期増加曲線(A
+B)よりも下の全体の面積に対する曲線(A)同士の間の面積の相対サイズで表すと、
ASTM D5459試験の第二のサイクルにおけるヒステリシスプロットの増加および
減少の応力―歪み曲線の間の面積である。内部摩擦によって放散したエネルギーの%を計
算する。現実の生活材料で通常見られるように、積み降ろしの間のプロットが一致しない
とき、ある量のエネルギーが失われている。%が低いと、材料の弾力特性は高くなる。
【0096】
図11は、ASTM D5459試験に従って得られた実施例5のサンプル5-1の第
一および第二のサイクルの流れ方向の応力-歪みプロットを示す。ヒステリシス曲線は、
流れ方向におけるこの材料の非常に好ましい弾性特性を示す。具体的には、第一のサイク
ル後の永久変形は1.28%しかなく、第二のサイクルにおける増加および減少曲線の間
の面積は24.8%だけである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層の不織材料を備え、
一方の層は、前記3層のうちの1つの層であり、熱可塑性エラストマーポリマー材から形成されたスパンボンド弾性繊維を有する弾性的に伸縮可能な不織材であり、
他方の層は、前記3層のうちの2つの層であり、スパンボンド捲縮多成分繊維を有する伸縮可能な化粧層であり、
それぞれの側に設けられた前記2つ化粧層の間に、前記弾性的に伸縮可能な不織材を挟持する構造を更に備えており、
隣接する層は、少なくとも1つのカレンダーロールの表面に配置された突起をエンボスし、エンボス用の突起に超音波振動が与えられる又はエンボス用の突起が加熱されることで行われる面接合点によって互いに接合されており、繊維表面の1cm 2 当たりの接合点の数は20~100であり、面接合点が占める繊維表面の全体の面積は18%よりも少なく、
前記捲縮多成分繊維の成分のうちの少なくとも一つは、プロピレン-α-オレフィン共重合体材であり、
前記捲縮多成分繊維のさらなる成分は、ポリプロピレンホモポリマー材である、ことを特徴とする、弾性的に伸縮可能な不織シート。
【請求項2】
WSP100.4に従って計測される流れ方向における前記シートの破断点伸度は、150%よりも高ことを特徴とする、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
ASTM D5459に従って計測される流れ方向における永久変形は、第一のサイクル後で、15%よりも低ことを特徴とする、請求項に記載のシート。
【請求項4】
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、ポリ(プロピレン-エチレン)ランダム共重合体であることを特徴とする、請求項に記載のシート。
【請求項5】
プロピレン-α-オレフィン共重合体の分子量分布は、前記捲縮多成分繊維の前記ポリプロピレンホモポリマーの分子量分布よりも広いことを特徴とする、請求項に記載のシート。
【請求項6】
前記プロピレン-α-オレフィン共重合体のM /M と前記ポリプロピレンホモポリマーのM /M との違いは2~10であることを特徴とする、請求項5に記載のシート。
【請求項7】
前記プロピレン-α-オレフィン共重合体のM /M と前記ポリプロピレンホモポリマーのM /M との違いは3~8であることを特徴とする、請求項5に記載のシート。
【請求項8】
前記ポリプロピレンホモポリマーのM /M は2.5~7.5であり、前記プロピレン-α-オレフィン共重合体のM /M は4~10であることを特徴とする、請求項5に記載のシート。
【請求項9】
前記捲縮多成分繊維は複合繊維あることを特徴とする、請求項に記載のシート。
【請求項10】
弾性繊維を形成する熱可塑性エラストマーポリマー材は熱可塑性ポリオレフィンエラストマーであ、請求項に記載のシート。
【請求項11】
前記化粧層のそれぞれの坪量は、5から40g/m2であり、かつ/または前記弾性層の坪量は10から140g/m2であることを特徴とする、請求項に記載のシート。