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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102230
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】エクソソーム送達技術
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20240723BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20240723BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 11/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C12N5/078
A61K9/50
A61K35/16
A61P9/00
A61P17/00
A61P17/02
C12N1/02
C12N11/04
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074941
(22)【出願日】2024-05-02
(62)【分割の表示】P 2022075868の分割
【原出願日】2016-03-11
(31)【優先権主張番号】62/131,504
(32)【優先日】2015-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517318610
【氏名又は名称】アタ ベフファル
(71)【出願人】
【識別番号】517318621
【氏名又は名称】アンドレ テルジッチ
(71)【出願人】
【識別番号】517318632
【氏名又は名称】ウィリアム クック
(71)【出願人】
【識別番号】517318643
【氏名又は名称】ルベン クレスポ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アタ ベフファル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ テルジッチ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム クック
(72)【発明者】
【氏名】ルベン クレスポ
(57)【要約】
【課題】血液からエクソソームを調製する方法を提供する。
【解決手段】血液から血漿を分離し、これによって、血小板リッチ血漿を提供する工程;血小板リッチ血漿を、少なくとも2回の、血小板リッチ血漿の凍結及び凍結した血小板リッチ血漿の解凍のサイクルに供する工程であって、少なくとも2回のサイクルを、分離工程によって分断することなく実施する工程;及び解凍した血小板リッチ血漿からエクソソームの溶液を分離する工程を含んでなる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクソソームを調製する方法であって、
血液から血漿を分離し、これによって、血小板リッチ血漿を提供する工程;
血小板リッチ血漿を、少なくとも2回の、血小板リッチ血漿の凍結及び凍結した血小板リッチ血漿の解凍のサイクルに供する工程であって、少なくとも2回のサイクルを、分離工程によって分断することなく実施する工程;及び
解凍した血小板リッチ血漿からエクソソームの溶液を分離する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
血液が、ヒト、豚又は牛から集められるものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血液から分離する血漿の液体体積が10~40%である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
解凍した血小板リッチ血漿からエクソソームの溶液を分離する工程を、濾過を介して行い、これによって、エクソソームの溶液をフィルターによって保持する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
濾過を、30~100kダルトンフィルターによって行う請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フィルターが50~80kダルトンフィルターである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
解凍した血小板リッチ血漿からエクソソームの溶液を分離する工程を、遠心分離を介して行う請求項1に記載の方法。
【請求項8】
血漿から抽出するエクソソームの液体体積が0.5~40%である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
血漿から抽出するエクソソームの液体体積が20~30%である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エクソソームの溶液を100~1.0%で希釈する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
エクソソームの溶液を15~5%で希釈する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、水ビーズ送達によって、エクソソームをカプセル化することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
さらに、アルギネートビーズ送達によって、エクソソームをカプセル化することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
さらに、スプレー乾燥ビーズ形成によって、エクソソームをカプセル化することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
さらに、プレーティング送達によって、エクソソームをカプセル化することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
さらに、エクソソームを基礎物質と組み合わせる工程を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
基礎物質がバイオマトリックスゲルである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
エクソソーム及び基礎物質の組み合わせを、所定の物質でコーティングする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
さらに、上記工程を行う際の温度を制御する工程を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項20】
血液から分離される血漿の液体積が10~40%であり;
解凍した血漿からエクソソームの溶液を分離する工程を、濾過又は遠心分離によって行い;
血漿から抽出するエクソソームの液体体積が0.5~40%であり;及び
エクソソームの溶液を15~5%で希釈する請求項1に記載の方法。
【請求項21】
さらに、エクソソームの溶液を、室温において、6か月保存する工程を含んでなり、溶液中のエクソソームは、保存後も活性を保持している請求項1に記載の方法。
【請求項22】
解凍した血小板リッチ血漿からエクソソームの溶液を分離する工程により、球形のエクソソームを含有する溶液を生成する請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、バイオテクノロジーシステム、装置、組成物及び方法に関する。詳しくは、本発明は、心臓病、皮膚病、外科、傷ケア、及び全ての回復ヘルスケアの用途において使用されるヒト再生医学及び医療に関する。最も詳しくは、本発明は、カプセル化したエクソソーム、エクソソームをカプセル化する装置、エクソソームをカプセル化する方法、及びカプセル化したエクソソームを上記の分野で使用する方法に関する。本発明のシステム、装置、組成物及び方法は、獣医学及び化粧品組成物及び方法を含む他の分野(ただし、これらに限定されない)においても有用であると考えらえる。
【背景技術】
【0002】
再生医学的治療及び方法は、心臓病、皮膚病、手術、傷ケア、及び他の医療及び外科の分野において、病気及び他の状態を治療することに関して大いなる可能性を有している。これらの方法は、血液及び他の幹細胞を含むヒト又は動物の各種の細胞からの物質を利用する。エクソソームは、血液を含む多くの体液中に存在する小ベシクル(脂質二重膜によって封入された液からなる細胞内の小型構造体)である(図1参照)。エクソソームは、代表的には、直径30~100nmを有する。エクソソームは、リボ核酸(RNA)、タンパク質、脂質及び各種の代謝物を含有する。エクソソームは、凝固作用、細胞内シグナル伝達、及び老廃物管理において役割を果たしていることが明らかである。エクソソームは、潜在的に、病気の経過予想、薬物療法のために、又はバイオマーカーとして使用されると考えられている。
【0003】
血小板エクソソームは、血小板(直径約2~3μmの哺乳類血液細胞)が各種の手段で物理的に破壊された際に存在する。図2を参照して、血小板は、出血を止めるように機能することがよく知られている(凝血作用及び止血)。しかし、血小板は、組織再生、コラーゲン基質形成、骨密度、血管新生、除痛、炎症最小化、及びヒト又は他の動物における総合的な治癒を増大させるため、一般的に、組織の治癒において広範な役割を果たすと考えられる。本発明は、傷害された組織を再生、補修又は回復させるために及び他の生物学的、医療、化粧、又は消毒を目的として、カプセル化したベシクル、特に、カプセル化したエクソソーム、最も詳しくは、カプセル化した血小板エクソソームを使用することを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この分野において存在する技術は、重大な制限及び欠点を有すると考えられる。
【0005】
この出願のどこかで述べる全ての米国特許及び特許出願、及び他の公開されたドキュメントを、参照して、ここに含める。
【0006】
本発明は、カプセル化したエクソソーム又は他の小ベシクル(以下、「ベシクル」又は「マイクロベシクル」)、カプセル化装置、エクソソーム又は他のベシクルをカプセル化する方法、及び効果的、安全、実用的、信頼できる、及び効率的であり、しかも従来の技術を凌駕する改善を構成すると考えられるカプセル化したエクソソーム又は小ベシクルを使用する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、エクソソーム又は他のベシクルをカプセル化する方法であって、(1)血液を集め、(2)集めた血液から血漿を分離し、(3)そこから、エクソソームを含む溶液を分離し、及び(4)エクソソーム又は他のベシクルをカプセル化する工程を含んでなる方法に係る。
【0008】
第2の態様では、第1の工程で集める血液が、ヒトから集められるものである。
【0009】
第3の態様では、第1の工程で集める血液が、豚、牛、羊等からなる群から集められるものである。
【0010】
第4の態様では、第1の工程で集めた血液から集める血漿の液体体積が、0.5~50%、好ましくは3~45%、最も好ましくは10~40%である。
【0011】
第5の態様では、第1の態様における分離した血漿からエクソソーム又は他のベシクルを分離する工程を、濾過又は遠心分離を介して行う。
【0012】
第6の態様では、第5の態様の濾過工程を、30~100kダルトンフィルター、好ましくは50~100kダルトンフィルター、最も好ましくは50~80kダルトンフィルターによって行い、ここで、フィルターによって保持される物質は、所望のエクソソームを含有する。
【0013】
第7の態様では、第1の態様における血漿から抽出するエクソソームの液体体積が、0.5~40%、好ましく15~35%、最も好ましくは20~30%である。
【0014】
第8の態様では、第1の態様に由来のエクソソーム溶液を、好ましくは100~1.0%、好ましくは25~2.5%、最も好ましくは15~5%に希釈する。
【0015】
第9の態様では、第1の態様のエクソソームをカプセル化する工程が、水ビーズ送達を含む。
【0016】
第10の態様では、第1の態様のエクソソームをカプセル化する工程が、アルギネートビーズ送達を含む。
【0017】
第11の態様では、第1の態様のエクソソームをカプセル化する工程が、スプレー乾燥ビーズ形成を含む。
【0018】
第12の態様では、第1の態様のエクソソームをカプセル化する工程が、プレーティング送達を含む。
【0019】
第13の態様では、第1の態様が、さらに、カプセル化したエクソソームを生物学的標的に送達する工程を含む。
【0020】
第14の態様では、第13の態様における送達工程が、心臓、骨又は関節、創傷、及び皮膚、又は他の臓器又は組織からなる群から選ばれる標的に送達することを含む。
【0021】
第15の態様では、本発明は、上述の工程を実施する際の温度を、界面活性剤にさらすことを制限することによって制御する工程を含む。
【0022】
第16の態様では、本発明は、(1)カプセル化したエクソソームを提供する工程及び(2)カプセル化したエクソソームを、身体、組織又は臓器の標的領域に送達する工程を含む治療方法を提供する。
【0023】
第17の態様では、本発明は、(1)血液を集め、(2)集めた血液から血漿を分離し、(3)そこから、エクソソームを含む溶液を分離し、及び(4)エクソソームをカプセル化する工程を含んでなる方法によって製造されたカプセル化したエクソソームを提供する。
【0024】
第18の態様では、本発明は、(1)血小板エクソソーム物質を含むコアと、(2)カプセル化材料とを含むカプセル化したエクソソーム又は他のベシクルを提供する。
【0025】
本発明は、予測を超える結果を生ずるように新規な様式で組み合わせた新規な要素を含むものであると考えられる。
【0026】
本発明の態様、特徴、利点、利益及び目的は、下記の記載、特許請求の範囲及び図面を参照することによって、当業者には、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ベシクル及びエクソソームを含む細胞を一般的に示す図である。
図2】血液成分及び血小板を一般的に示す図である。
図3】カプセル化したエクソソームの調製に係る発明の好適な具体例を示すチャートである。
図4】カプセル化の水ビーズ法の具体例を示すフローチャートである。
図5】カプセル化したエクソソームを生物学的標的に送達する方法の好適な具体例を示すフローチャートである。
図6】血小板を分画する方法の好適な具体例に関するフローチャートである。
図7】血小板を凍結乾燥する方法の好適な具体例に関するフローチャートである。
図8】バイオマトリックスゲルを形成する方法の好適な具体例に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、エクソソームを集め、精製し、カプセル化し及び送達するためのシステム、装置、方法及び組成物を含む。本発明の対象であるエクソソームは、直径約30~100nmである。興味深いエクソソームを、血小板に富む溶液から回収し、続いて、血小板を物理的に破壊する。傷害された組織の再生及び修復についてのエクソソームの使用効率の有意な指示が明らかにされているが、エクソソームの取り扱い及び加工、及び送達は、これまで、不明であった。
【0029】
本発明の方法の具体例は、(1)血液を集め、(2)集めた血液から血漿を分離し、及び(3)ここから、エクソソームを含む溶液を分離し、(4)エクソソームをカプセル化し、及び(5)エクソソームを送達する工程を含む。血液を集める工程は、下記に詳述するように、ヒト又は他の動物から血液を得ることを含む。血漿を分離する工程は、いくつかの公知の手段によって行われる。第3の工程において単離したエクソソームの分画は、容易に達成され、濾過、遠心分離、又は他の手段を介して濃縮される。濾過が使用される場合、フィルターによって保持される物質は、所望のエクソソームフラクションを含有する。例示的なフィルターは、50kドルトンフィルターである。30~100kドルトンフィルターを使用することもできる。50~100kドルトンフィルターが好ましく、50~80kドルトンフィルターが最も好ましい。或いは、タンジェント流濾過を使用できる。例示的な収率(液体体積基準)は、各工程について、それぞれ、10~40%及び20~30%である。血漿の分離効率は、0.5~50%であり、3~45%が好ましく、10~40%が最も好ましい。
【0030】
エクソソーム/ベシクルの分離効率は、0.5~40%であり、15~35%が好ましく、20~30%が最も好ましい。得られたエクソソーム溶液は、蜂蜜の粘稠度を有する。方法の更なる具体例では、エクソソーム溶液を、カプセル化前に、目的の用途のために、例えば、約20倍に希釈する。希釈率は100~1.0%であり、25~2.5%が好ましく、15~5%が最も好ましい。各種の源から血漿を得ることも、本発明の範囲内に含まれる。さらに、加工した血漿、例えば、脱クリオ血漿を使用することもできる。
【0031】
エクソソーム及び有効成分であるそれらのタンパク質ペイロードは、38℃を越える温度に対して敏感であると考えられる。故に、方法の更なる具体例は、エクソソームを維持する温度を40~150℃に制御することを含む。エクソソームの構造は、リン脂質二重膜構造であり、本発明の物質の加工及び取り扱いの間における界面活性剤の使用も注意深く制御される。無菌条件下では、エクソソームは安定であり、室温において保存する場合6か月後も活性を維持しており、このように、本発明の物質を保存する間、好ましくは、温度を制御する。
【0032】
方法では、続いて、(4)エクソソームをカプセル化する工程、及び(5)生物学的活性の損失を最少にするとともに、いくつかの所望の粒径及び放出プロフィールを提供しつつ、カプセル化したエクソソームを、身体、臓器又は組織の所望の領域に送達する工程を含む。さらに、エクソソームの取り扱い及び送達のこれらの工程は、本発明以前では、未知であったと考えられる。この目標を達成するため、本発明は、工程(3)において、好ましくは希釈前に、工程(3)において生成したエクソソームの濃縮物又は「血小板ハニー」の原料をカプセル化及び送達する少なくとも3つの方法(A、B及びC)を提供する。各カプセル化/送達方法において、キャリヤー物質、エクソソームの濃縮及び負荷、及び仕上がり物質の最終粒径のような各種のパラメーターが開示される。生成された最終組成物は、アクティブ荷重、走査電子顕微鏡(SEM)、光学顕微鏡、熱重量分析(TGA)、粒径分布、比重等のような方法によって特徴付けられる。他の特徴付け方法が存在すること、及びインビボ細胞増殖を促進する能力及び予め定義された棚寿命を超える前臨床性能のような特性も含まれることは本発明の範囲内である。
【0033】
具体例A:水ビーズ法
エクソソームをカプセル化する第1の方法は、水を含むものであり、水溶液の個々の液滴を安定化させるために、疎水性ヒュームドシリカを使用する。この方法は、米国特許第6413548号(発明の名称:液体ビーズの粒子カプセル化;AVEKA,Inc.,米国ミネソタ州ウッドバリー)に記載されている。この特許を、参照して、ここに含める。一般に、このタイプのビーズを形成する方法は、水溶液の疎水性ヒュームドシリカのクラウドへの微粒化を含む。シリカは液滴を被覆して、小滴が集められる際、小滴を癒着から安定化させる。この方法は、パーソナルケア工業のために、ヘアケア製品としての使用に関して商業化されている。代表的には、得られるビーズは、直径30~100ミクロン、85%水溶液であり、閉止容器中、室温において、2年間以上安定である。
マイクロベシクルをカプセル化するこの方法のサブステップの特別な1具体例は、概して、体積加重平均粒径0.05~25μmを有する疎水性粒子の塊を供給し、粒子の塊に水性エクソソーム媒体の滴を供給し、及び水性エクソソーム媒体の微小滴及び疎水性粒子を穏やかに混合して、粒子のシェルによってカプセル化した、水性エクソソーム媒体の滴の安定な封入体システムを形成することを含む。
【0034】
得られるカプル化したマイクロベシクルの1具体例は、所定の質量%(たとえば、少なくとも5%)の水を有する水性の血小板エクソソームを含むコア、及びコアを包囲する封入体を含む。カプセル化材料は、コアと接触しかつ包囲する疎水性粒子の少なくとも1つの層を含む。カプセル化したマイクロベシクルは、体積加重平均粒径を有する。例示的な粒径は0.05~25μmである。マイクロベシクルについての1形状は球形である。1具体例では、カプセル化したマイクロベシクルは、それ自体の質量を支持できる。
【0035】
[実施例]
血小板ハニー及び不足量の物質を使用して、少量の(~20ml)各処方サンプルを得る。血小板ハニーは、治療用処方の範囲内で、そのままで使用される。好ましくは、希釈することによって、効率的な微粒化、溶液又は最終製品の微生物汚染を回避するための物質取り扱い、及び最終プロセスの代表である小型サンプルの生成を可能する方法のスケールダウンを可能にする。得られる物質は、生物学的に活性なバイオマトリックスゲルとしての潜在的な使用と並行して、局所的用途(創傷を含む)に適用可能である。
【0036】
具体例B:アルギネートビーズ法
アルギネートは、真昆布オオウキモ(Macrocystis pyrifera)のような海藻から抽出される多糖類親水コロイドである。アルギン酸のナトリウム共役塩基型は水溶性であり、カルシウム、アルミニウム、又は多くの他の多価カチオンの存在下で固体ゲルを形成する。
【0037】
[実施例]
アルギン酸ナトリウムの1~4重量%水溶液(ここで、エクソソームが溶液の一部である)を調製し、該アルギネート溶液を、第2の塩化カルシウム溶液に滴下すると、直ちに、カルシウムイオン浴に滴下される際の滴の形状及びサイズのビーズが形成する。滴のサイズ、カルシウムイオン濃度、及び浴における時間を制御することによって、粒径及び粒子からのエクソソームの放出プロフィールの両方を制御する。各種のエクソソーム負荷及び粒径分布を有する多数のサンプルが生成される。
【0038】
具体例C:スプレー乾燥ビーズ形成
スプレー乾燥は、溶液を微粒化するか、又は加熱チャンバーに噴霧することによって乾燥する方法である。滴は、壁に到達する以前に乾燥する。これは、カプセル化した物質を生成するための最もコスト的に効果的な方法であるが、物質の温度が38℃以上に上昇する可能性がある。希釈及び濃縮したエクソソーム物質へのアジュバントの添加は、微粒化を可能にし、これによって、マイクロカプセル化用のこの効果的なアプローチを利用するため、風を提供する。最後に、スプレードライヤーの出口温度を最小に維持することによって、このアプローチは、増大されたエクソソームの安定性を提供すると考えられる。代表的には、このタイプの方法に関する粒径は、約15~75μmである。方法のパラメーターを注意深く制御すると、平均粒径10μmより小を有する粒径分布が得られる。水分含量は制御される。1例は、米国特許第8741337号に開示された方法を介する、カプセル等を有する水中に分散された希釈血小板ハニーである。
【0039】
具体例D:プレーティング法
プレーティングは、粉末粒子状態を維持する間、多量の液体を吸収できる多孔性の特殊な物質を使用するカプセル化及び送達システムである。この技術の1つの利点は、例えば、室温又は他の制御された温度において実施されることである。このような技術は、乾燥状態等の食品、栄養補助測品、医薬用液体のカプセル化及び送達について一般的であるが、これまでは、エクソソームのカプセル化については知られていなかった。この具体例では、本発明の方法は、マイクロカプセル化を最適化するために、単糖、加工デンプン、マルトデキストリン、多孔性シリカ、炭酸カルシウム等のキャリヤー物質を使用する。方法は、負荷及び効力を最大にするように変更可能である。これらの物質、及び先の実施例における物質は、棚寿命及び/又は送達速度を有効なものとするためにコーティングされてもよい。
【0040】
[実施例A]
希釈していない「血小板ハニー」2ccを取り、Hurber Zeofree(登録商標)5162シリカ1gに含侵させた。これは、FlackTek Speedmixer(商標名)DAC150を2000rpm及び20秒間で使用し、希釈していない「血小板ハニー」が十分にシリカに含侵されるまで繰り返し操作することによって達成される。物質の温度を測定し、混合の間、35℃以下に維持する。
【0041】
[実施例B]
希釈した「血小板ハニー」2ccを取り、Hurber Zeofree(登録商標)5162シリカ1gに含侵させた。これは、FlackTek Speedmixer(商標名)DAC150を2000rpm及び20秒間で使用し、希釈した「血小板ハニー」が十分にシリカに含侵されるまで繰り返し操作することによって達成される。物質の温度を測定し、混合の間、35℃以下に維持する。
【0042】
本発明は、血小板エクソソームを経済的に分離する方法も提供する。本発明のエクソソームは、ヒト血液から集められる。適切なエクソソームについて集められ及び分離された豚又は牛の血漿からも同様の結果が得られると考えられる。抽出の方法は、同様であるが、これらの源からの多量の血液の利用は、ヒト血漿では容易に達成できないスケーラビリティーを提供する。
【0043】
図3は、要約すると、本発明のカプセル化したエクソソームを形成する方法(10)の具体例を示す。初めに、血液を集める(11)。次に、血液から血漿を分離する(12)。液体体積収率は10~40%である。ついで、好ましくは、血小板の物理的崩壊及び続くフィルター、最も好ましくは50kドルトンフィルターを介する分離によって、血漿からエクソソームを分離する(13)。この工程において、液体体積収率は約20~30%である。単離されたエクソソームのサイズは、約30~100nmである。次に、エクソソームをカプセル化する(14)。カプセル化(14)は、図4のフローチャートにおいて示す水ビーズ法(20)によって達成される。これは、所定のプロフィールの疎水性粒子を提供することを含む(21)。エクソソームの溶液も提供される(22)。最後に、エクソソーム及び粒子を混合する(23)。
【0044】
図5は、治療又は他の目的のため、カプセル化したエクソソームを標的に送達する方法を示す。初めに、カプセル化したエクソソームは、図1において示し、上述した方法(10)によって提供される。次に、カプセル化したエクソソームを、標的に送達する(31)。
【0045】
この技術は、臨床、化粧品及び獣医学用用途について有用であると考えられる。詳しくは、これらの物質は、動物/ペット、ヒトへの適用について、化粧品分野、創傷被覆の用途における局所的適用、及び損傷した心臓又は他の組織への直接注入に有用である。さらに、精製したナノベシクル/エクソソームフラクションは、繊維筋性、骨原性、軟骨形成、脂肪生成、又は他の再生用のバイオマトリックスゲルとして使用される。このように、技術プラットフォームは、大腸/婦人科の手術(瘻孔、非治癒性びらん、骨盤内臓器脱)、ENT法(放射線骨壊死)、形成外科/創傷治癒(傷跡の制限、迅速な治癒、非治癒性創傷)、整形外科的処置(偽関節、無血性壊死)用の生分解性メッシュと複合化される。これらの各用途は、異なった送達関係を呈する。同様に、創傷適用及び直接注入適用は、数日以上6か月以下の、一様のゆっくりとした送達を必要とする。
【0046】
図8を参照すると、本発明は、さらに、バイオマトリックスゲルを調製する方法を提供する。方法の1具体例は、次のとおりである。
1.血小板成分の単離(エクソソーム及び/又は約30~50kDカットオフを介する)に続いて、この成分を、後述のプロトコルにおいて設定した濃度範囲のトレハロースとともに、コラーゲン溶液に混合する。
2.ついで、NaOHの添加を介して、この溶液を中和して、生理的pHとする。最終体積を記録する。
3.完全に凍結するまで、液体窒素で、溶液を直ちにフレッシュ凍結する。
4.溶液を、直ちに、-80℃において、少なくとも24時間保存する。
5.ついで、全ての水分が除去されるまで、これを凍結乾燥する。粉末状物質が形成される。
6.粉末を-80℃で保存できる。
7.工程2において記録した体積での添加によって、粉末を、水又は細胞培養培地中に再懸濁化できる。
8.ついで、ゲル化のため、この物質を37℃において保存する。
9.30分後、生成物は完全にゲル化している。
【0047】
好ましくは、上記工程の各々を、不完全なゲル化を防止するため、氷中のサンプルを使用して行う。
【0048】
図6を参照すると、本発明は、血小板を分画する方法を提供する。この方法の1具体例は、下記の工程を含む。
1.全血を集める。
2.少なくとも1500rpm、少なくとも15分間、全血を遠心分離する(或いは、全血を4℃で保存して、RBCを少なくとも4時間沈殿させる)。
3.血小板欠乏血漿(上澄みの約2/3)を除去し、上澄みの残りの1/3を単離する。
4.血小板リッチ血漿を、液体窒素中でフラッシュ凍結し、-80℃において少なくとも24時間保存する。
5.血小板リッチ血漿を、水浴中、25~37℃の間の温度において解凍させ、好ましくは、凍結-解凍サイクルを繰り返す。
6.解凍したPLを、500gで10分間遠心分離する。
7.上澄みを集め、ペレットを廃棄する。
8.意図的にブランクを捨てる。
9.上澄みを、70μmフィルターを通過させ、集める。
10.先の工程の収集物を、40μmフィルターを通過させる。
11.先の工程の収集物を、0.2μmフィルターを通して濾過する。
12.通過画分を集め、30又は50kDカットオフを介して血小板の分画を行う。ここでは、これらの値を超えるものすべてを集め、それ以下のものを廃棄する。
13.遠心分離を介して30又は50kDカットオフを行う。この工程では、遠心分離機の設定は、フィルターに応じて変動する。所望の生成物の体積が、初期インプット体積よりも少なくとも5倍少なくなった時点で遠心分離を停止する。
14.単離物は蜂蜜様の粘稠度を有しており、これを、(a)長期間の保存のため-80℃で直接凍結する、(b)使用のため、4℃で保存する、又は(c)微粒子化のため凍結乾燥する。
【0049】
図7を参照すると、本発明は、さらに、血小板を凍結乾燥する方法を提供する。方法の1具体例は、次のとおりである。
1.上記工程12の前に、工程13の内容物を、トレハロースの5~60%溶液と混合し、
2.上記工程13、
3.工程13からの単離物を、液体窒素中でフラッシュ凍結し、-80℃において少なくとも24時間保存し、
4.内容物を一夜凍結乾燥し、及び
5.凍結乾燥した物質を-80℃で保存する。
【0050】
エクソソームに関連して、システム、組成物及び方法を、ここに記載したが、技術を他のベシクルに適用することも本発明の範囲内である。
【0051】
当業者が本発明及びそれを製造及び使用する様式及び方法を理解することができるように、上記具体例を選択し、記載し及び説明した。記載及び添付図面は、例示的なものであり、徹底的な又は限定されたものではないと解釈されなければならない。本発明は、開示された正確な形式に限定されるものではない。本願は、合理的に予測可能な本発明の具体例の全てを開示することを試みるものではあるが、等価物として残る予測できない想像上の変形も存在するであろう。特許請求の範囲によって限定されるように本発明の範囲に属するが、ここに開示した具体例以外の具体例も存在することは、当業者によって理解されなければならない。もしあれば、請求項が特定の機能を発揮する手段又は工程として表わされている場合には、このような請求項は、明細書に記載の対応する構造、物質、又は作用及びその等価物(構造的等価物及び等価の構造の両方、物質的等価物及び等価の物質の両方、及び作用的等価物及び等価の作用の両方を含む)を包含すると解釈されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクソソームを調製する方法であって、
小板リッチ血漿を含む物質を提供する工程;
前記物質を、少なくとも2回の、前記物質の凍結及び凍結した前記物質の解凍のサイクルに供する工程であって、少なくとも2回のサイクルを、分離工程によって分断することなく実施する工程;及び
解凍した前記物質からエクソソームの溶液を分離する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
血小板リッチ血漿を含む前記物質が、ヒト、豚又は牛から集められるものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血小板リッチ血漿を含む前記物質の液体体積が10~40%である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
解凍した前記物質からエクソソームの溶液を分離する工程を、濾過を介して行い、これによって、エクソソームの溶液をフィルターによって保持する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
濾過を、30~100kダルトンフィルターによって行う請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フィルターが50~80kダルトンフィルターである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
解凍した前記物質からエクソソームの溶液を分離する工程を、遠心分離を介して行う請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記物質から抽出するエクソソームの液体体積が0.5~40%である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記物質から抽出するエクソソームの液体体積が20~30%である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エクソソームの溶液を100~1.0%で希釈する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
エクソソームの溶液を15~5%で希釈する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、水ビーズ送達によって、エクソソームをカプセル化することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
さらに、アルギネートビーズ送達によって、エクソソームをカプセル化することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
さらに、スプレー乾燥ビーズ形成によって、エクソソームをカプセル化することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
さらに、プレーティング送達によって、エクソソームをカプセル化することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
さらに、エクソソームを基礎物質と組み合わせる工程を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
基礎物質がバイオマトリックスゲルである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
エクソソーム及び基礎物質の組み合わせを、所定の物質でコーティングする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
さらに、上記工程を行う際の温度を制御する工程を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項20】
血小板リッチ血漿を含む前記物質の液体積が10~40%であり;
解凍した前記物質からエクソソームの溶液を分離する工程を、濾過又は遠心分離によって行い;
前記物質から抽出するエクソソームの液体体積が0.5~40%であり;及び
エクソソームの溶液を15~5%で希釈する請求項1に記載の方法。
【請求項21】
さらに、エクソソームの溶液を、室温において、6か月保存する工程を含んでなり、溶液中のエクソソームは、保存後も活性を保持している請求項1に記載の方法。
【請求項22】
解凍した前記物質からエクソソームの溶液を分離する工程により、球形のエクソソームを含有する溶液を生成する請求項1に記載の方法。