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特開2024-102257時間相関定在波干渉とコヒーレント強度増幅とを使用したホログラフィックエネルギテレポーテーション(HET)を利用したエネルギの精密送達
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102257
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】時間相関定在波干渉とコヒーレント強度増幅とを使用したホログラフィックエネルギテレポーテーション(HET)を利用したエネルギの精密送達
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240723BHJP
   A61N 5/067 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61N5/067
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075808
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2021514311の分割
【原出願日】2019-05-15
(31)【優先権主張番号】62/671,632
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】520446540
【氏名又は名称】ホロビーム テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドルゴフ,ジーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エネルギの精密送達のための装置及び方法を提供する。
【解決手段】適正な時間位相関係でオーバーラップする重ね合わせ波を使用して適正な波動干渉を生成することにより(「時間相関定在波干渉」と称される)、波動エネルギが増幅され(「コヒーレント強度増幅」によって)、正確な位置へとテレポートされる。例えば、ある用途では、動脈内の癌細胞又はプラークを破壊するような治療用途のために、生体内の1つ又は複数の領域へとエネルギがテレポートされる。この技法を実装するシステムは、1つ又は複数の選択された疾病の位置において、増幅された建設的干渉を生成するとともに、周囲の位置においては、破壊的干渉を生成する。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾病を処置するためのシステムであって、
少なくとも1つのエネルギ源と、
身体内の処置対象をなす1つ又は複数の位置に対応した座標データの供給源と、
前記座標データを利用してフーリエ解析を実行し、正弦波のフーリエ級数を表すデータ
を生成するように適応されたコンピュータシステムと、
前記エネルギ源から、正弦波の前記フーリエ級数に従った一連のエネルギ正弦波を生成
するように構成されたエネルギ干渉システムと、を含み、
前記一連のエネルギ正弦波は、互いに干渉することにより、身体内の処置対象をなす前
記1つ又は複数の位置において建設的干渉を生成し、かつ、前記1つ又は複数の位置の外
側の空間領域においては破壊的干渉を生成する、システム。
【請求項2】
少なくとも1つの開始位置エネルギ源から、少なくとも1つの目的位置へと、エネルギ
をテレポートするための方法であって、
それぞれが前記少なくとも1つの開始位置エネルギ源からの2つのオーバーラップする
エネルギ波によって生成されてなる少なくとも2つの定在波が、互いに少なくとも部分的
にオーバーラップするように案内され、これにより、前記少なくとも1つの開始位置エネ
ルギ源と前記少なくとも1つの目的位置との間に位置した時空間内の少なくとも1つの規
定されたポイントにおいては破壊的干渉を生成し、
それぞれが前記少なくとも1つの開始位置エネルギ源からの2つのオーバーラップする
エネルギ波によって生成されてなる少なくとも2つの定在波が、時空間内の少なくとも他
の規定されたポイントにおいては互いに少なくとも部分的にオーバーラップするように案
内され、これにより、前記少なくとも1つの目的位置においては建設的干渉を生成し、
時空間内の、前記少なくとも1つの開始位置エネルギ源と前記少なくとも1つの目的位
置との間に位置した前記破壊的干渉を含有した前記少なくとも1つの規定されたポイント
においては、前記少なくとも1つの目的位置と比較して、より小さなエネルギ密度が測定
可能である、方法。
【請求項3】
少なくとも1つの開始位置エネルギ源から、少なくとも1つの目的位置へと、エネルギ
をテレポートするための方法であって、
それぞれが前記少なくとも1つの開始位置エネルギ源からの2つのオーバーラップする
エネルギ波によって生成されてなる少なくとも2つの定在波が、前記少なくとも1つの目
的位置において互いに少なくとも部分的にオーバーラップするように案内され、これによ
り、前記少なくとも1つの目的位置において建設的干渉を生成し、
それぞれが前記少なくとも1つの開始位置エネルギ源からの2つのオーバーラップする
エネルギ波によって生成されてなる少なくとも2つの定在波が、互いに少なくとも部分的
にオーバーラップするように案内され、これにより、時空間内の、前記少なくとも1つの
開始位置エネルギ源と前記少なくとも1つの目的位置との間に位置した少なくとも1つの
規定されたポイントにおいて破壊的干渉を生成し、
前記破壊的干渉を含有しているとともに前記少なくとも1つの目的位置を少なくとも部
分的に取り囲んでいる空間領域においては、前記少なくとも1つの開始位置エネルギ源又
は前記少なくとも1つの目的位置のいずれかと比較して、より小さいエネルギ密度が測定
可能である、方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの開始位置エネルギ源からの前記2つのオーバーラップするエネル
ギ波のすべては、互いに時間的にコヒーレントである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの開始位置エネルギ源からの前記2つのオーバーラップするエネル
ギ波のすべては、互いに空間的にコヒーレントである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの目的位置におけるエネルギ強度は、互いに少なくとも部分的にオ
ーバーラップすることにより建設的干渉を生成する前記少なくとも1つの開始位置エネル
ギ源からの前記少なくとも2つのエネルギ波の振幅の和の二乗の程度である、請求項2又
は3に記載の方法。
【請求項7】
エネルギ源から、空間の少なくとも1つの規定された第1領域へと、エネルギをテレポ
ートするための方法であって、
前記第1領域を、前記エネルギ源からの建設的干渉状態をなすコヒーレントエネルギを
含有したものとし、さらに、前記第1領域を、空間のうちの、破壊的干渉状態をなすコヒ
ーレントエネルギを含有した第2規定領域によって、少なくとも部分的に取り囲まれたも
のとし、
前記方法は、
建設的干渉状態をなす前記エネルギを含有するように、空間の少なくとも1つの第1
領域を選択するステップと、
破壊的干渉状態をなす前記エネルギを含有するように、空間の少なくとも部分的な周
囲領域を選択するステップと、
前記選択された少なくとも1つの第1領域と前記周囲領域とを、少なくとも2対のオ
ーバーラップした相互にコヒーレントなエネルギビームによって照射するステップであっ
て、各対をなすコヒーレントビームは、定在波パターンを生成するようにしてこれにより
少なくとも2つの定在波パターンを生成するようにして、互いにオーバーラップしており
、さらに、前記生成された定在波パターンは、前記定在波パターンのそれぞれが、前記選
択された少なくとも1つの第1領域及び前記選択された周囲領域と交差するようにして、
互いにオーバーラップしている状態で照射する、ステップと、
すべての前記生成された定在波パターンのアンチノードが、選択された瞬間において
、前記選択された少なくとも1つの第1領域においてすべてが互いに位相が合うように、
前記選択された瞬間における前記生成された定在波パターンのそれぞれの位相を、すべて
の他の前記定在波パターンに対して調整するステップと、
前記照射時に、前記オーバーラップする定在波パターンどうしの間にわたって角度を
有して前記オーバーラップする定在波パターンの多重性を提供し、これにより、前記オー
バーラップする定在波パターンどうしが一緒にオーバーラップして前記選択された周囲領
域において破壊的干渉を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
エネルギ源から、空間の規定された第1領域へと、コヒーレントエネルギをテレポート
するための方法であって、
前記第1領域を、前記エネルギ源からの建設的干渉状態をなすコヒーレントエネルギを
含有したものとし、さらに、前記第1領域を、(A)空間のうちの、破壊的干渉状態をな
すコヒーレントエネルギを含有した第2規定領域によって、及び、(B)空間のうちの、
前記エネルギ源からのコヒーレントエネルギを含有していない第3規定領域によって、取
り囲まれたものとし、
前記方法は、
建設的干渉状態をなす前記エネルギを含有するように、空間の第1領域を選択するス
テップと、
破壊的干渉状態をなす前記エネルギを含有するように、空間の第1周囲領域を選択す
るステップと、
前記エネルギを含有していないように、空間の第2周囲領域を選択するステップと、
前記第1領域及び前記第1周囲領域において生成されるべきエネルギプロファイルを
表す少なくとも1つの複素曲線を規定するステップと、
前記少なくとも1つの複素曲線をフーリエ解析して、異なる空間的周波数及び位相を
有した多数のフーリエ成分正弦波を規定するステップと、
前記選択された第1領域と前記第1周囲領域とを、少なくとも2対の共線的にオーバ
ーラップした相互にコヒーレントなエネルギビームによって照射するステップであって、
各対をなすコヒーレントビームは、定在波パターンを生成するようにしてこれにより少な
くとも2つの定在波パターンを生成するようにして、互いにオーバーラップしており、さ
らに、前記生成された定在波パターンは、前記定在波パターンのそれぞれが、前記選択さ
れた第1領域及び前記選択された第1周囲領域と交差するようにして、かつ、前記第2周
囲領域とは交差しないようにして、互いに共線的にオーバーラップしている状態で照射す
る、ステップと、
前記定在波パターンどうしが、重ね合わされてフーリエ合成を受け、これにより、前
記第1領域及び前記第1周囲領域においては前記少なくとも1つの複素曲線エネルギプロ
ファイルを形成するようにして、各定在波パターンが、前記フーリエ成分正弦波の異なる
1つずつに対応した位相値及び空間的周波数値を有することとなるように、選択された瞬
間における前記生成された定在波パターンのそれぞれの位相及び空間的周波数を、すべて
の他の前記定在波パターンに対して調整するステップと、
前記照射時に、前記オーバーラップする定在波パターンの多重性を提供し、これによ
り、前記オーバーラップする定在波パターンどうしが一緒にオーバーラップして、前記第
1領域においては建設的干渉を生成するとともに、前記選択された第1周囲領域において
は破壊的干渉を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
エネルギ源から、空間の規定された第1領域へと、エネルギをテレポートするための方
法であって、
前記第1領域を、第1期間において、前記エネルギ源からの建設的干渉状態をなす前記
エネルギを含有したものとし、さらに、前記第1領域を、前記第1期間において、空間の
うちの、前記エネルギ源からの破壊的干渉状態をなすエネルギを含有した少なくとも1つ
の規定された第2領域によって取り囲まれたものとし、
前記方法は、
建設的干渉状態をなす前記エネルギを含有するように、空間の規定された第1領域を
選択するステップと、
破壊的干渉状態をなす前記エネルギを含有するように、空間の規定された第2領域を
選択するステップと、
前記第1期間において、前記第1領域及び前記第2領域において生成されるべきエネ
ルギプロファイルを表す複素曲線を規定するステップと、
前記複素曲線をフーリエ解析して、異なる時間的周波数及び位相を有した多数のフー
リエ成分正弦波を規定するステップと、
前記第1領域と前記第2領域とを、部分的にオーバーラップする複数の進行波エネル
ギビームによって照射するステップと、
前記選択された期間においては、前記進行波どうしが、重ね合わされてフーリエ合成
を受け、これにより、前記第1領域及び前記第2領域において前記複素曲線エネルギプロ
ファイルを形成するようにして、各進行波ビームが、前記フーリエ成分正弦波の異なる1
つずつに対応した位相値及び時間的周波数値を有することとなるように、前記選択された
期間における前記進行波ビームのそれぞれの位相及び時間的周波数を、すべての他の前記
進行波ビームに対して調整するステップと、
前記照射時に、前記オーバーラップする進行波ビームの多重性を提供し、これにより
、前記オーバーラップする進行波ビームどうしが一緒にオーバーラップして、前記第1期
間において、前記第1領域においては建設的干渉を生成するとともに、前記第2領域にお
いては破壊的干渉を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
機械的仕事、電気的仕事、熱力学的仕事、又は他の仕事を行い得るエネルギ源と、前記
仕事を行い得る前記エネルギの少なくとも一部を、前記仕事が行われるべき空間内の所望
の位置であって前記エネルギ源から変位した所望の位置において、建設的干渉によって再
構成するとともに、空間内の他の位置においては破壊的干渉によってそのようなエネルギ
の存在を低減又は除去するためのフーリエ合成とを使用した方法であって、
前記仕事は、建設的干渉をなす前記所望の位置において実際に行われ、空間内の前記他
の位置は、前記エネルギ源と、空間内の前記建設的干渉を含有した前記所望の位置との間
の空間位置を含む、方法。
【請求項11】
身体へと向けられた外部エネルギ源からのエネルギによって前記身体内の望ましくない
病状を処置するための方法であって、
前記身体内の少なくとも2つの異なる領域は、異なるレベルのエネルギ密度を受け、前
記異なるレベルのエネルギ密度のうちの一方は、ゼロを含む任意のレベルのエネルギ密度
であり、前記異なるレベルのエネルギ密度のうちの他方は、非ゼロであり、
前記身体内の前記少なくとも2つの異なる領域のうちの、非ゼロというレベルのエネル
ギ密度を受ける一方は、処置対象領域であり、前記身体内の少なくとも2つの異なる領域
のうちの、低減エネルギ領域と称される他方は、前記処置対象領域と前記外部エネルギ源
との間の領域であり、
前記方法は、
a)前記外部エネルギ源からエネルギを生成するステップと、
b)前記生成されたエネルギを、少なくとも2つの異なる空間位置から、処置される
前記望ましくない病状を含有した前記身体に向けて案内するステップと、
c)前記少なくとも2つの異なる空間位置からの前記エネルギを、オーバーラップさ
せて互いに干渉させ、これにより、干渉パターンを作製するステップと、を含み、
前記少なくとも2つの空間位置からの、前記干渉パターンを作製する前記エネルギの、
周波数、位相、及び強度は、前記干渉パターン内に、所望エネルギ分布パターンのフーリ
エ合成を生成するように制御され、
前記処置対象領域は、前記干渉パターンのアンチノードに位置し、前記低減エネルギ領
域は、前記干渉パターンの少なくとも1つのノードを含む、方法。
【請求項12】
前記干渉パターンは、定在波パターンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
身体へと向けられた外部エネルギ源からの外部印加エネルギによって前記身体内の望ま
しくない病状を処置するためのシステムであって、
前記身体内の少なくとも2つの異なる領域は、異なるレベルのエネルギ密度を受け、前
記異なるレベルのエネルギ密度のうちの一方は、ゼロを含む任意のレベルのエネルギ密度
であり、前記異なるレベルのエネルギ密度のうちの他方は、非ゼロであり、
前記身体内の前記少なくとも2つの異なる領域のうちの、非ゼロというレベルのエネル
ギ密度を受ける一方は、処置対象領域であり、前記身体内の少なくとも2つの異なる領域
のうちの、低減エネルギ領域と称される他方は、処置対象領域と前記外部エネルギ源との
間の領域であり、
前記システムは、
a)前記身体の前記処置対象領域の検出を補助するために、あるいは、前記処置の効
果を促進して増強するために、エネルギの印加によって活性化される化学薬剤を、前記身
体内へと導入するための手段と、
b)前記身体内の任意の前記処置対象領域の空間的座標を選択するための手段と、
c)前記外部エネルギ源からエネルギを生成するための手段と、
d)前記生成されたエネルギを、少なくとも2つの異なる空間位置から、処置対象を
なす前記望ましくない病状を含有した前記身体内の任意の選択された領域の前記空間的座
標に向けて、案内するための手段と、
e)前記少なくとも2つの異なる空間位置からの前記エネルギを、オーバーラップさ
せて互いに干渉させ、これにより、定在波パターンを作製するための手段であって、前記
少なくとも2つの空間位置からの、前記定在波パターンを作製する前記エネルギの、周波
数、位相、及び強度は、前記定在波パターン内に、少なくとも1つの所望エネルギ分布パ
ターンのフーリエ合成を生成するように制御され、前記選択された前記処置対象領域は、
前記定在波パターンのアンチノードに位置し、前記低減エネルギ領域は、前記定在波パタ
ーンの少なくとも1つのノードを含む、手段と、
f)前記身体内の前記選択された処置対象領域へと導入された化学薬剤の局在化を促
進して増強するための外部手段と、を含み、
エネルギの前記定在波パターンは、前記身体内の前記選択された処置対象領域内への前
記化学薬剤の流れ及び取り込みを増強する、システム。
【請求項14】
少なくとも1つのエネルギ源からのエネルギを、少なくとも1つのエネルギターゲット
へと、テレポートするための方法であって、
前記少なくとも1つのエネルギ源からのエネルギは、建設的干渉状態で前記少なくとも
1つのエネルギターゲットのところに集中しており、
前記少なくとも1つのエネルギ源と前記少なくとも1つのエネルギターゲットとの間に
は、前記少なくとも1つのエネルギ源からのエネルギが破壊的干渉状態で通過する規定空
間領域が位置しており、
前記ターゲットのところでの前記エネルギが、熱を生成する、方法。
【請求項15】
単一光ビームの部分どうしの間に建設的エネルギ波干渉及び破壊的エネルギ波干渉を生
成するためのシステムであって、
光ビームエミッタと、
第1モジュールと、
第2モジュールと、
システム取付バーと、を含み、
前記第1モジュールは、
第1モジュール光ファイバと、
前記光ビームを2つの光ビームへと分割するように形成された第1ビームスプリッタ
と、
前記2つの光ビームのうちの一方を2つの光ビームへと分割するように形成された第
2ビームスプリッタと、
前記第2ビームスプリッタから出てくる各光ビームを変調するための手段を有した第
1モジュール電気光学変調器アレイと、
第1モジュール光ファイバビームコンバイナと、
第1モジュール光学系コリメート手段と、を含み、
前記第2モジュールは、
光ビームを少なくとも2つの光ビームへと分割するように形成されたビームスプリッ
タと、
前記第2ビームスプリッタから出てくる各光ビームを変調するための手段を有した第
2モジュール電気光学変調器アレイと、
第2モジュール光ファイバビームコンバイナと、
第2モジュール光学系コリメート手段と、
前記第1モジュールの前記第1ビームスプリッタと、前記第2モジュールと、の間に
延びる接続用光ファイバと、を含み、
前記第1モジュールと前記第2モジュールとの間の空間は、エネルギ領域を規定し、
前記第1モジュールと前記第2モジュールとは、前記第1モジュールから出てくる光ビ
ームが、前記第2モジュールから出てくる光ビームと交差するように配置され、
これにより、前記エネルギ領域内のいくつかの位置において建設的干渉を生成するとと
もに、前記エネルギ領域内の他のポイントにおいて破壊的干渉を生成する、システム。
【請求項16】
疾病を診断するための方法であって、
エネルギが、患者の身体内の領域へとテレポートされ、
前記患者の前記領域へとテレポートされた前記エネルギは、その後、テレポートされた
前記エネルギと、前記患者の前記領域内の組織との相互作用によって変更された後のエネ
ルギと、の差を定量化するエネルギ検出装置によって検出され、
その検出された差を、組織と相互作用するエネルギが異なる疾病に及ぼす影響に関する
情報と相関させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギの精密送達のための装置及び方法を提供するものであり、例えば、
周囲の構造体との相互作用を最小化しつつ、疾病状態の身体組織に対して治療を提供する
【背景技術】
【0002】
医師及び科学者が多くのことを知っていて充分に理解していたとしても、それでも多く
の場合になおも治癒させ得ない多くの疾病及び他の病状が存在する。これは、多くの場合
、大部分の疾病及び他の病状が、(表面又はその近傍ではなく)身体の内部で起こってい
るためであり、そのことが、特にミクロなスケールでの複雑な相互作用が必要とされる場
合に、一般的にアクセス不可能としているためである。どこかの癌性腫瘍、閉塞した動脈
、脳内のプラーク、感染症、遺伝性疾病、さらにはうつ病やPTSDのような心理状態、
などの特定位置における問題点に対応して、医師及び科学者は、実験室環境内では問題点
を処理することが実証された薬剤及び技法を考案してきた。しかしながら、そのような実
験室での成功を、日常的な臨床的に成功した治療法へと変換することは、しばしば困難な
ことである。例えば、多くの条件に関して問題部位でうまく機能し得る、化学療法、放射
線療法、温熱療法、遺伝子療法、薬物療法、抗菌療法、抗ウイルス療法、抗真菌療法、ア
ブレーション療法、及び、神経刺激療法、が存在する。困難さは、これらの治療法を必要
とする身体内の特定部位へと、途中で身体内の他の細胞に悪影響を及ぼすことなく、適用
することである。
【0003】
物質を、ヒトなどの複雑な生命体であっても、ある場所(A)から別の場所(B)へと
、AとBとの間の空間にその物質が現れることなく移動させる能力は、現在「テレポーテ
ーション」と称されており、それが魔法又は超自然的な力に起因するものであった場合に
は、何世紀にもわたって、おそらく何千年にもわたって、サイエンスフィクションの定番
となってきた。スタートレックで描かれている「トランスポータ」、「フードリプリケー
タ」、「ホロデッキ」(本出願の発明者が最初に思い描いたもの)は、この仮説的発明に
基づいている。
【0004】
Albert Einsteinは、物質が特定の構成のエネルギ(E=mc)に過
ぎないと提案した。この概念は、1997年にスタンフォード線形加速器センタの研究者
が、高エネルギの光ビーム(ガンマ線光子)を衝突させると物質粒子(電子及び陽電子)
が生成されることを実証して以来、本出願の発明者には、エネルギのテレポーテーション
が物質のテレポーテーションの先駆けとなるであろうことを、理解することができた。
【0005】
しかしながら、これまでのところ、物質又はエネルギのテレポーテーションを達成し得
る方法論は、容認された科学に基づいて、一切開示されていない。「情報のテレポーテー
ション」又は「量子状態」に関する現在の研究は、エネルギ又は物質のテレポーテーショ
ンとは、同じではない。
【0006】
以下に開示するように、エネルギテレポーテーションを使用した癌及び動脈硬化などの
疾病の処置は、本特許出願において開示する発明の主要な用途である。
【0007】
しかしながら、ヒト及びヒト以外の生物の様々な疾病及び病状に関しての、診断、処置
、又は治療は、本開示の範囲内、及び、特許請求される発明の範囲内、ならびに、多くの
非医学的応用の範囲内、である。本発明では、電磁波(光波、ラジオ波、マイクロ波、X
線波、ガンマ線波、など)及び音波を含む様々なタイプのエネルギ波を使用することがで
きる。このようなエネルギ波は、レーザ、メーザ、超音波トランスデューサ、アンテナ、
及び、電磁コイル、を含む任意の波源によって生成することができる。身体内の特定の細
胞に対しての波の印加は、振動誘導(結石又はプラークなどに関する構造的損傷誘導のた
め)、加熱、イオン化、アブレーション、瘢痕化、アポトーシス、壊死、破壊、遺伝子発
現の刺激又は阻害、化学プロセス、神経発火、ホルモン又は他の生物学的分子の放出、タ
ンパク質合成、血流、リンパ流、及び、有糸分裂、などの多くの効果をもたらすために、
使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
フーリエ合成を使用してホログラフ的に生成されたものなどの、適正な時間位相関係で
オーバーラップする複数の重ね合わせ定在波を使用した波動干渉を生成することにより(
本出願の発明者により「時間相関定在波干渉」と称される)、波動エネルギが増幅され(
「コヒーレント強度増幅」により)、動脈内の癌細胞又はプラークを破壊するような治療
用途のために、例えば生体内などの、正確な位置へと向けられる。この技法を実装するシ
ステムは、選択された位置において増幅された建設的干渉を生成するとともに、周囲位置
及び/又は介在位置において破壊的干渉を生成する。これにより、エネルギを、例えば腫
瘍細胞に対して「テレポート」することができ、それらを検出して破壊し得るとともに、
周囲の健康な細胞は、実質的に何らのエネルギをも受領することがなく、検出又は処置に
よる副次的損傷を回避することができる。異なる複数の波の組合せは、また、処置に関連
した効果の組合せを生成するために使用することもできる。例えば、RFエネルギ波は、
腫瘍及びそれに付随する血管を加熱するために使用することができる。腫瘍の加熱は、い
くつかの腫瘍損傷を生成することができ、腫瘍は、その後、熱衝撃タンパク質を放出する
。その場合、これらのタンパク質は、腫瘍に対してさらに損傷を与える免疫反応を誘発す
る。また、熱は、腫瘍に対して栄養を供給している血管を拡張させることができ、これに
より、腫瘍内の酸素含有量を増加させる。また、X線を使用した放射線療法を腫瘍に対し
て投与した時に、存在する酸素が多いほど、X線が酸素原子の外側の電子を剥ぎ取った際
により多くのフリーラジカルが生成される。これらのフリーラジカルが、腫瘍をさらに劣
化させる。このように、酸素含有量の増加は、放射線療法をより効果的なものとすること
ができる。よって、本発明の使用は、通常であれば波動放射ビームの入口経路及び出口経
路において照射されてしまうであろう健康な細胞を損傷することなく、RF波及びX線波
の組合せを腫瘍に対して投与することを可能とすることができる。
【0009】
また、健康な細胞の損傷を増加させることなく、放射の強度及び持続時間を増大させる
ことができる。その結果、温熱療法(増大された加熱)と組み合わせた放射線療法を、よ
り効果的でより安全なものとすることができる。放射線療法を使用する代わりに、化学療
法を、熱に強い保護コーティング内に封入された化学療法剤分子を使用して投与すること
ができる。RF波の投与は、腫瘍血管を拡張させることができ、通常よりも多くの化学療
法剤が腫瘍へと入ることを可能にし(効果を改良し)、同時に、腫瘍内でのみ、保護コー
ティングを溶解して化学療法剤を放出させ、これにより、健康な細胞が化学療法剤に対し
て露出されてしまうことを減少させ、したがって、副作用を低減又は除去することができ
る。上記と同様に、腫瘍に対する熱損傷は、また、免疫応答を誘発することもできる。こ
の場合にも、本発明の使用は、そうでなければRFエネルギ波によって生成され得る健康
な細胞に対しての悪影響を低減又は除去することができる。その結果、封入された化学療
法剤と、腫瘍及び付属血管のRF誘導加熱(温熱療法)と、の組合せは、化学療法の有効
性及び安全性を増大させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
癌及び他の疾病は、時には手術によって成功裏に処置することができる。しかしながら
、多くの場合、完全に成功裏に手術を行うには、状況があまりにも入り組んで複雑なため
、健康な組織を損傷することなく実行することができない。他のケースでは、化学療法、
免疫療法、又は遺伝子治療などの、化学に基づく様々な方法が成功することができる。し
かしながら、化学的技法は、手術の場合と同様に、癌、動脈硬化、及び他の疾病、を成功
裏に処置し得るけれども、非常に多くの場合、化学に基づく処置は、健康な組織に対して
著しい損傷を与えてしまう。他のケースでは、放射線処置又は温熱療法などのエネルギに
基づく治療法が、癌及び他の疾病を成功裏に処置することができる。しかしながら、非常
に多くの場合、エネルギを利用した治療法も、また、健康な組織に対して著しい損傷を与
えてしまう。多くの場合、これらの技法は、様々な組合せで一緒に使用されて成功し得る
けれども、それでもなお、健康な組織に対して著しい損傷を与えてしまう。患者の生活の
質を維持するために、手術の範囲を低減させると、及び/又は、投与する化学ベースの又
はエネルギベースの治療の強度を低減させると、多くの場合、不完全な又は効果的ではな
い処置又は「治療」となってしまい、これにより、疾病の再発、ならびに、究極的には患
者の早期死亡につながってしまう。
【0011】
本発明によれば、身体内の疾病に関する成功裏での処置のためには、他の細胞又は分子
(健康な細胞など)に対して悪影響を及ぼすことなく、身体内の選択された細胞及び/又
は他の分子に対してエネルギを送達することが必要とされ、これにより、選択された細胞
及び/又は分子を直接的に又は間接的に破壊又は改変することができる、及び/又は、そ
れらに影響を及ぼす1つ又は複数のプロセスを、開始、改変、又は終了させることができ
る。
【0012】
本発明によるエネルギを使用した処置は、例えば、加熱、イオン化、又は電磁誘導、を
含むことができ、これにより、細胞プロセスの破壊、アポトーシス、壊死、遺伝子の活性
化又は不活性化又は改変、神経の興奮又は阻害、ならびに/もしくは、化学プロセスの、
開始、活性化、不活性化、停止、放出、クラスタ化、及び/又は、切断を生成することが
できる。
【0013】
身体内に位置した疾病に関しての、エネルギの使用を必要とした現在の処置(X線又は
ガンマ線放射線療法、あるいは、細胞内における又は細胞を加熱するナノ粒子内における
、熱の電磁RF生成を使用した温熱療法、など)は、多くの健康な細胞に対して悪影響を
有しており、そのため、処置の有用性を低下させる。これは、エネルギが、腫瘍などの処
置対象をなす選択された領域に出入りする途中で健康な細胞を通過しなければならないか
らであり、また、処置対象をなす選択された領域に到達した時点で、所望のプロセスを開
始させるのに充分な強度を有していなければならないからである。これは、波源が、広帯
域エネルギエミッタであろうと、指向性エネルギビームであろうと、複数の指向性ビーム
であろうと、また、集束型フェーズドアレイエミッタであろうと、真実である。フェーズ
ドアレイ集束は、空間の特定領域へとエネルギを集中させるために建設的干渉及び破壊的
干渉を使用するものではあるけれども、破壊的干渉を使用することによって、処置対象を
なす細胞を取り囲む比較的エネルギのない空間領域を生成するものではなく、そのため、
そのような領域に検出可能なエネルギ又は損傷を与えるエネルギが含まれないということ
はない。破壊的干渉のそのような意図的な使用は、本明細書で開示するホログラフィック
エネルギテレポーテーション(「HET」)の本質的な特徴である。それは、健康な周囲
細胞及び介在細胞が、意図的に無用のエネルギ曝露から免れ得る方法を提供する。さらに
、身体内を通してのエネルギ送達は、従来的には、健康な細胞を通過する際に吸収や散乱
や熱生成によって失われることにより、そのようなエネルギは、そのような損失を補うた
めに、従来的な処置においては、最初に身体内へと送出される際に意図的により増強され
、このことは、そのような健康な細胞の副次的損傷などの、潜在的悪影響を増大させてし
まう。
【0014】
副次的損傷は、多くの場合、患者の生活の質を顕著に低下させるに充分なほど深刻な場
合があり、また、著しい恒久的損傷につながる場合があり、時には、患者の死亡につなが
る場合さえあり得る。現在の治療法に関するこのような悪影響を軽減するために、従来的
な処置は、典型的には、最大化されるよりもむしろ低減されるものであり、これでは、処
置の有効性も低下してしまい、多くの場合、癌又は他の疾病の再発をもたらしてしまいか
ねない。
【0015】
従来的な治療法を使用した完全に効果的な癌又は他の治療を可能とするために、手術、
化学療法、放射線療法、及び/又は温熱療法は、望ましくは、癌性腫瘍細胞(例えば)に
対して適用されるべきであり、介在する又は周囲に位置する健康な細胞に対して適用され
るべきではない。化学療法、放射線療法、及び/又は温熱療法が、例えばどこにあったと
しても、すべての腫瘍細胞を効果的に死滅させ得るように改良されたならば、手術の必要
性は、容易にアクセスすることができかつ健康な細胞と絡み合っていない腫瘍の部分的切
除にまで、除去又は低減することができる。放射線療法及び温熱療法の場合には、安全で
完全に効果的な処置のためには、本明細書で教示される新規な方法で、例えば腫瘍に対し
て、エネルギを適用することが必要である。これらの用途では、介在する健康な細胞及び
周囲の健康な細胞に対しての影響を最小化又は除去しつつ内部細胞に対してエネルギを適
用するこの「新規な方法」は、本明細書では「ホログラフィックエネルギテレポーテーシ
ョン」(HET)として参照される。この技法の目標は、ターゲット疾病細胞が受領する
エネルギを最大化しつつ、健康な細胞に対してのエネルギ効果を最小化することである。
【0016】
本明細書で開示する発明を理解するためには、「テレポーテーション」が何を意味する
かを理解することが重要である。テレポーテーションの概念は、「スタートレック」のよ
うな、いくつかのSF小説、テレビ番組、及び映画に登場する。しかしながら、「テレポ
ーテーション」は、フィクションに限定されない。実際、量子物理学では、それを直接的
に見るわけではないけれども、また、テレポーテーションと称するわけではないけれども
、それは常に起こっている。我々が光を見るというのは、原子内の電子から光子が放出さ
れているからである。電子から光子が放出される時には、電子は、軌道(原子核の軌道半
径)を変えて、より小さな半径のところで(「低エネルギ準位」と称される)、原子の原
子核まわりの軌道周回を開始する。しかしながら、地球を周回している人工衛星が、高い
軌道から低い軌道へと連続的に移動して軌道を変え得るのとは異なり、電子は、ある軌道
から別の軌道へと「テレポート」すると言うことができる。それは、文字通り、軌道どう
しの間に位置した「空間を通過」することなく、今いる軌道から消失して、新たな低い軌
道に再出現することである。これは、一般に、「量子トンネリング」と称される。電子は
、この一見魔法のような偉業を達成するために、「エネルギ干渉」を使用していると言う
ことができる。光子を放出した時には、電子は、それ自身が「位相がずれた」状態となり
、「破壊的干渉」によって消失し、「建設的干渉」によって低い軌道で「位相が合った」
状態となることで再出現する。これは、ある場所から別の場所へと、物質又はエネルギが
、始点と終点との間に位置した介在空間に現れたりそのような介在空間を通過したりする
ことなく移動することであるという、テレポーテーションの古典的な定義に当てはまる。
しかしながら、人間サイズの世界では、誰もこれが物体で起こるのを見たことがない。こ
れに関する例としては、バスケットボールを手に取ってコンクリート壁に投げてみたら、
穴を開けることなく壁の向こう側に行ってしまった、かのようなものである。壁に着いた
時点でバスケットボールが消失し、壁の向こう側に再び現れてそのまま進んでいったとし
たら、それはテレポートされたバスケットボールということになる。しかしながら、これ
は仮定的な可能性の話であり、いつかは当たり前になるかもしれない。
【0017】
しかしながら、本特許出願では、本出願の発明者は、人間サイズの世界でエネルギ干渉
によるHETを使用したエネルギテレポーテーションを達成するための手段を開示する。
物質はエネルギでできており、高エネルギの電磁(EM)波ビーム(すなわち、ガンマ線
)どうしの重ね合わせによる電子及び陽電子の生成によって実証されているため、エネル
ギテレポーテーションを使用することにより、物質テレポーテーションを生成すること(
エネルギをテレポートして使用することにより、新たな位置で物質を生成することができ
る)は、理論的には可能である。しかしながら、物質テレポーテーションは、まだ発明さ
れていない。
【0018】
本発明によれば、HETを達成する1つの方法は、ホログラフィ及びフーリエ合成の独
特な能力どうしを適正な方法で使用することである。本物のホログラム(「ペッパーの幽
霊」などの、時にホログラムと称されることもある光学的錯覚ではなく)を見た経験のあ
る人は、ホログラムが、ホログラムの後ろ又は前のどちらか(又は両方)の空間内に現れ
る完全な3次元画像を再生成し得ることを、知っている。空間内で見ることができる画像
のこの生成には、プロジェクタ、スクリーン、煙、水蒸気、あるいは、いかなる種類のデ
ィスプレイ(ホログラム自体は別として)、も必要としない。単純な光ビームによって照
射された時には、ホログラムは、ホログラムを離れて空間内を移動する波を生成し、ある
場所では破壊的干渉を受け(よって、そこでは、光が現れない)、他の場所では建設的干
渉を受ける(ここでは、光が現れる)。ホログラムとは、「干渉パターン」(2つの光ビ
ームが互いにオーバーラップして干渉した時に生じる、空間内の明るい光スポットと暗い
光スポットとからなるパターン)の記録(通常は、フィルム上への記録)である。記録さ
れた干渉パターンは、回折、屈折、及び/又は反射を利用して、それらを通過する光線の
方向を変えたりあるいはそれらから反射する光線の方向を変えたりする、異なる形状、異
なる向き、及び異なるサイズの、極度に小さな暗いドット及び明るいドットから構成され
ている。完成したホログラムを照らす光線が、ホログラムが作られた際に実物(ホログラ
ムの近くに位置していた)から以前に反射した時にそうであったのと同じ進行角度に曲げ
られるので(ホログラム上に記録された干渉パターンが光に対して行うことはこれである
)、ホログラムから出てくるそれらの光線を見ている人は、実物がもうそこにはないかも
しれないとしても、実物を見ていると思うこととなる。干渉パターンは、実物から反射す
る「コヒーレント」な光(極度によく整列していて、同じ周波数、高度な平行性、一様で
一定の位相関係を有していることを意味する)と、「参照ビーム」として作用する追加の
コヒーレントな光ビーム(これは、通常、実物についての情報を有していない)と、のオ
ーバーラップによって最良に生成される。この干渉パターンには、実物から来る光線と参
照ビームから来る光線とのオーバーラップのすべての進行角度に関する情報が含まれてい
る。2つの光線は、自然に相互作用して、互いにオーバーラップしたところで干渉パター
ンを形成し、その干渉パターンを空間内のどこかに記録したものを、ホログラムと称して
いる。
【0019】
光ビームの進行及び干渉に関する数学が公知であるので、このようなホログラムが記録
された時に生じるであろう干渉パターンは、代替的に、コンピュータで計算することがで
き、ホログラムを生成するために使用することができる(この場合、コンピュータ生成ホ
ログラムと称される)。そのようなコンピュータ生成ホログラム(「CGH」)は、結果
的に、実際には存在していない物体に関しての、あるいは、存在はしているものの、ホロ
グラムの作製時には存在していなかった物体に関しての、3次元画像を「再構成」するこ
とができる。要するに、ホログラフィは、エネルギの波(光波、RF波、マイクロ波、X
線、音波、又は、ガンマ線さえも、など)を誘導するために使用され、これにより、エネ
ルギの波は、所望された任意の特定角度(したがって、位相)で進行するとともに、それ
らの波どうしが空間内でオーバーラップして、空間内の異なる場所で破壊的干渉と建設的
干渉と生成し、画像の外観を形成する。
【0020】
その上、ホログラムによって生成される画像は、物体の画像である必要はない。本発明
によれば、画像は、その代わりに、「黒さ」(見かけ上のエネルギがない)によって囲ま
れた、空間内の1つ又は複数の特定の3次元位置における1つ又は複数の孤立した光(又
は他のエネルギ)のポイントからなる画像とすることができる。通常的には、従来のホロ
グラムは、(レンズが行うのと同じように)画像が現れるべき空間内の所望の特定のポイ
ントにおいて、光線どうしが互いにオーバーラップするように集光又は誘導することによ
って、空間内に光のポイントを生成する。その場合、光のポイントが見えることが望まれ
ている場所(焦点位置)以外の位置でも、より低いレベルでのみ、空間内には検出可能な
光が存在する。しかしながら、本発明によれば、ホログラムシステムは、独自の態様でホ
ログラムに対して衝突する光(又は他のエネルギ)との相互作用によって、空間内に光(
又は他のエネルギ)のポイントを生成するようにしている。この相互作用は、光(又は他
の)波の角度(ひいては、位相)を変化させ、これにより、それらは、エネルギの1つ又
は複数のポイントが所望されている位置(あるいは、複数の位置)を除いて、規定された
空間内のあらゆる場所で破壊的干渉を生成するように、空間内でオーバーラップする。エ
ネルギのこのポイント又は複数のポイントは、建設的干渉によって見ることができるよう
になる。これは、従来的にホログラムが行っていたものではない。本発明では、破壊的干
渉が起こるものとされた空間内の領域は、電磁波で満たされているものの、それらが互い
に位相がずれた状態でオーバーラップすることにより、破壊的干渉を生成し、そのため、
そのエネルギは、何ら検出可能ではなく、空間のその領域では何らの効果も生成しない(
そして、その空間内の物質によって吸収されることもなく、その空間内の物質に対してそ
の他の相互作用を起こすこともない)。エネルギは、建設的干渉が起こる1つ又は複数の
ポイントにおいてのみ見ることができる。この方法では、光(又は他のエネルギ)の1つ
又は複数のポイントは、空間のより大きく規定された領域内において検出できないエネル
ギによって囲まれた、空間内の規定領域内で生成される。ホログラフィック「画像形成」
という、従来にはないこの独自の方法は、HETを達成するための方法の基礎である。し
たがって、HETは、規定されたエネルギ含有空間に対して出入りするエネルギ移動ライ
ンに沿って、空間のうちの、エネルギを含むべき規定領域に対してその前後に位置した空
間などの、規定空間を取り囲んでいる空間においては顕著なエネルギが存在しない状態で
、規定空間内のすべての場所にエネルギを配置するための、独自のかつ新規な方法である
【0021】
2つの通常の光ビームがオーバーラップした時には、2つのビームを互いに加算した合
計と同じくらいの明るさのスポットが生成される。これは、本来的に、常に起こっている
ことであり、特に、ビームの位相どうしが合っていて、建設的干渉が起こっている場合で
ある(以下で説明するように、より多くのエネルギさえ生成される)。しかしながら、2
つの光ビームがオーバーラップして暗いスポットを形成することを想像し得る人は、ほと
んどおらず、また、そのような経験をした人も、ほとんどいない。驚くべきことに、2つ
のビームの位相どうしがずれていて、破壊的干渉を受けた時には、このようなことが起こ
るのである。通常、人々がこのような経験をしない理由は、ほとんどの光源が、コヒーレ
ント放射を生成しないからであり、非コヒーレント光に関してそのような破壊的干渉が起
こったとしても、別の角度から別の漂遊した光ビームがやってきて、暗いスポットを埋め
てしまうため、誰も気づかないからである。しかしながら、利用可能なエネルギの位相及
び角度を注意深く制御した時には(レーザからのコヒーレント光の場合など)、通常的に
は経験したことのないこの不可解な現象が知覚できるようになる。
【0022】
破壊的干渉が日常生活の中で起こる場所の1つは、電子レンジの中である。マイクロ波
は慎重に制御されており、オーバーラップすることで「定在波」を生成し、電子レンジ内
で、建設的干渉と破壊的干渉との異なる領域を生成している。破壊的干渉領域(「ノード
」と称される)に位置した食品は、調理中ずっと強力なマイクロ波が食品のその領域を通
過しているにもかかわらず、破壊的干渉によって食品のその領域がRFエネルギを経験し
ないため、マイクロ波によって加熱されることはない。このため、電子レンジは、より均
一な加熱のために、食品の異なる領域を破壊的干渉領域から建設的干渉領域へと移動させ
得るよう、典型的には、回転テーブル(及び/又は回転ビームダイレクタ)を含んでいる
。別の例として、たいていの人は、無線スマートフォン、タブレット、又はラジオを使用
する際に、自宅又は車内で「デッドスポット」を経験したことがある。これらのデッドス
ポットも、多くの場合、空間内の破壊的干渉領域である。エネルギは、デッドスポットを
通過し、異なる位置で再び検出可能になるだけなので、エネルギはそこにあるけれども、
「デッド」な位置では、破壊的干渉が、エネルギを検出不可能とする。この原理は、また
、ノイズキャンセリングヘッドホンにおいても、使用されている。望ましくないノイズが
検出され、2回目に生成されるけれども、元のノイズとは位相がずれているため、破壊的
干渉が生成され、ノイズが「消える」ようになる。追加の(位相がずれた)ノイズを追加
することにより、不要なノイズが相殺される。建設的干渉及び破壊的干渉のこれらの公知
の分布のすべては、破壊的干渉がなすより大きな領域によって囲まれた建設的干渉からな
る1つ又は複数の規定ポイントから構成されるのではなく、周期的に散在している。しか
しながら、本発明は、全く新規な方法で、建設的干渉及び破壊的干渉を使用する。
【0023】
本出願の発明者は、周囲の健康な細胞がほとんど又は全くエネルギを経験しないものと
しつつ、エネルギを、空間のうちの、身体によって占有された領域などの領域に対して送
達して、腫瘍又はプラークが位置する場所などの所望ポイントにおいてのみ出現させる方
法について、本明細書に開示する。光(又は他のエネルギ)を方向変換することにより所
望の場所でのみ建設的干渉を生成しかつ他の周囲の場所では破壊的干渉を生成する干渉パ
ターンを作製する方法をコンピュータに対して伝えるために、(単純な正弦波と区別され
るものとして)「複素波」であるかのように、生成が所望される空間内のエネルギ分布を
参照することができる。空間内にこの複素波を空間に生成するために作製しなければなら
ない様々な電磁(又は他の)波の詳細を計算するための数学は、「フーリエ解析」及び「
フーリエ合成」を使用する。フーリエ解析では、一連の正弦波(フーリエ級数)によって
、任意の複素波を記述することができる。正弦波のこのフーリエ級数の要素どうしを重ね
合わせることにより、元の複素波をフーリエ合成によって再構成することとなる。このよ
うに、この技法は、破壊的干渉領域によって囲まれた建設的干渉領域を含む、空間内の所
望エネルギ分布を作製するために使用される。
【0024】
コンピュータは、所望の複素波(既存の又は想像されたエネルギ分布を表す)を生成す
るのに必要な正弦波のフーリエ級数を計算するために使用され、それらの正弦波が一緒に
加えられた場合には、複素波が初期的に想像されただけのものであって以前には物理的に
存在しなかったとしても、同じ複素波を生成することとなる。そのデータを使用して、コ
ンピュータは、空間内におけるエネルギの任意の複素波パターンを生成するために一緒に
加算されることが必要となる正弦波を規定することとなるホログラフィック干渉パターン
(コンピュータ生成ホログラム)のためのデータを、生成することができる。そのような
コンピュータ生成ホログラム(「CGH」)は、適正に照射された時には、フーリエ解析
計算によって指示されるように、必要とされる任意の振幅、周波数、又は位相の上記正弦
波を提供するために、照射を変化させて方向変換させることができ、それらは、空間内の
最終的な所望の複素波エネルギパターンを生成するために、必要とされる任意の方向に(
ホログラムからのホログラフィック再構成によって)送達することができる。したがって
、ホログラフィの能力とフーリエ合成の能力とを組み合わせることで、3次元空間内に、
所望の任意の複素波を生成することができる。その結果、例えば、空間の領域を選択し、
波のエネルギがその空間内の特定の1つの位置にのみ現れるようにしたいと決定した場合
には、本明細書においてより具体的に教示されるように、適切にプログラムされたコンピ
ュータは、必要なフーリエ級数を計算し、その空間内において(エネルギがそのホログラ
ムから放出される時に)、無線周波数(「RF」)波などの、エネルギの正弦波を重ね合
わせることとなるホログラムのためのデータを生成することとなり、これにより、指定さ
れた空間領域のみにおいて(建設的干渉によって)エネルギを生成するとともに、空間内
のすべての他の隣接領域又は周囲領域は、(破壊的干渉のために)エネルギを欠いている
ように見えることとなる。建設的干渉によって満たされた空間は、人体内の、例えば腫瘍
を含む選択された容積とすることができ、ホログラムは、このようにして、高強度RF波
を、例えば腫瘍に対して直接的に送達し、これにより、腫瘍の加熱を引き起こすとともに
、すべての周囲の健康な細胞は、エネルギをほとんど又は全く経験しない(すなわち、エ
ネルギによって影響を受けない)。この方法は、例えば、EM波に関して以前に使用され
たフェーズドアレイ集束とは明確に異なるものであり、なぜなら、フェーズドアレイ集束
時に生成されるEM波は、腫瘍領域に出入りする途中に位置した健康な細胞によってなお
も検出され得るからであり、さらに、それら健康な細胞の加熱を引き起こすからである。
【0025】
治療処置のために必要なエネルギを身体内の疾病領域にのみ送達するために必要な干渉
波をホログラフ的に生成し得るよう、それらの例が本明細書に開示されているような様々
な装置構成を、HETを達成するために使用することができる。実質的に、この技法は、
エネルギが健康な細胞を通って輸送される際には、(破壊的干渉によって)エネルギを「
ミュート」することにより、また、エネルギがその意図された目的地に到達した際には(
このようにして、エネルギを「テレポート」する)、エネルギを(建設的干渉によって)
「ミュート解除」することによって、機能する。従来の処置においては、エネルギは、健
康な細胞を通過する際に「ミュート解除」され、そのため、エネルギは、健康な細胞によ
って直接的に検出可能である(そして、潜在的に、健康な細胞に対して損傷を与える)。
【0026】
テレポーテーションは、サイエンスフィクションで知られており、一般に、開始位置に
存在する何かを、開始位置と目的位置との間の空間を通過させたりあるいはそれらの間の
空間に存在させたりして出現させることさえなく、目的位置へと輸送するための仮説的な
方法であると考えられている。本明細書に開示するHETの場合には、テレポートされる
「何か」は、エネルギである。エネルギは、開始位置と目的位置との間の空間では、検出
可能ではなく、なぜなら、その空間内にいる間は、「ミュート」されているからである。
ミュートされたエネルギは、実質的に検出不可能であり、細胞又は他の何かに対して本質
的に悪影響を生成しない。そのようなテレポートされたエネルギ(HETによって生成さ
れたようなもの)は、疾病を直接的に処置することができる(電離X線の使用、又は、細
胞内における熱の電磁的温熱生成などにより)、ならびに/もしくは、ニューロンの発火
などのプロセスの発生を、あるいは、タンパク質やホルモンや酵素や他の生物学的物質の
合成又は放出などのプロセスの発生を、開始又は防止することができる。
【0027】
説明のために添付図面を参照すると、印加されたエネルギのHETミュート化は、処置
を提供するために通常的に使用されるエネルギに対して、位相がずれた追加エネルギを印
加することによって達成され、これにより、選択された処置領域においてはエネルギを相
殺しない一方で、健康な細胞の領域においては破壊的干渉によって初期的エネルギを相殺
する。これにより、エネルギは、選択された処置領域のみ(腫瘍細胞内など)において、
治療効果を有することができる。図1Bに示すような破壊的干渉時には、波どうしは、互
いに相殺され(例えば、オーディオのノイズキャンセルの場合と同様)、これらは、実質
的に何の効果も有していない。細胞は、破壊的干渉状態にある波を経験することができず
(そのような波によって影響を受けることができず)、そのような波によって変化するこ
とはない。しかしながら、相殺されることは、エネルギ波が破壊されたり消失したりする
ことを意味するのではなく、それらエネルギ波は、ミュートされているだけである。それ
らエネルギ波は、なおも、空間を通して一緒に伝搬している。
【0028】
ミュート解除は、ターゲットとされた細胞内において、エネルギ波どうしの位相を合わ
せることで建設的干渉を受けることを引き起こすことにより、達成される。図1Aに示す
ように、共にコヒーレントな2つの波が建設的に干渉した時には、それらのエネルギが一
緒に加算され、それらが位相を合わせている領域では、初期的なエネルギ波のどちらか一
方の強度の最大で4倍の最大効果を生成する。本質的に、破壊的干渉がない場合には、破
壊的干渉領域に現れたであろうエネルギは、建設的干渉領域へとシフトされる。本発明に
よれば、患者が占有する3次元空間の所望領域内における破壊的干渉及び建設的干渉の生
成は、新規な方法(本明細書では、HETとして総称される)で、ホログラフィ及び光学
的フーリエ合成を利用することができる。フーリエ解析は、3次元空間内の所望位置で破
壊的干渉及び建設的干渉を生成するために必要なエネルギ波の、方向、位相、周波数、及
び振幅を決定するために、コンピュータ内で必要な正弦波パラメータを計算するために使
用することができる。この情報は、コンピュータ生成ホログラム(「CGH」)を規定す
るために使用することができる。CGHの使用は、光学的フーリエ合成によって空間内に
エネルギの所望パターンを生成するために、所望の振幅関係及び位相関係を有した所望の
方向にエネルギ波を案内するための方法を提供することができる。
【0029】
この新規な方法は、エネルギが、1つ又は複数の初期位置(身体の外側など)から放出
されて、初期位置と目的位置との間の介在空間又は周囲空間内において検出可能とされる
ことなく、また、目的位置を超えて検出可能とされることなく、1つ又は複数の選択され
た目的位置(身体の内側など)へと、送達されることを可能とする(よって、エネルギは
、テレポートされる)。このようなエネルギのテレポーテーションを、疾病の診断又は処
置に関して使用することは、これまで一度も行われたことがない。
【0030】
放射線療法の場合、本発明によれば、電離放射線(高エネルギX線、又は、ガンマ線、
など)は、ターゲット細胞に到達するため(及び、その後、ターゲット細胞から離れるた
め)に、健康な細胞を通って移動するけれども、電離放射線は、HETによってミュート
されており、よって、実質的に電離も加熱も生成することがなく、よって、健康な細胞に
対して損傷を与えることがない。しかしながら、ターゲット疾病細胞へと到達した時点で
、電離放射線は、ミュート解除されて、最大の損傷を与えることができ、これは、特に、
従来の処置のように初期的にそれらの強度を下げる必要がないからである。同じことは、
温熱療法処置に関し、RFエネルギが身体内へと送出されて細胞を直接的に加熱する際に
、及び/又は任意選択的に、ターゲット細胞のところで化学反応を活性化及び不活性化す
る際に、当てはまる。ミュートされたRFエネルギは、この場合にも、健康な細胞に対し
ては実質的に影響を与えることがなく、かつ、ミュート解除された場所では、ターゲット
に対して最大の影響を与える。
【0031】
商標Holothermia(登録商標)は、Holobeam Technolog
ies Inc.によって提供又はライセンスされた、本開示によるプロセスを使用した
サービス又は商品を識別する。このようなプロセスは、疾病の処置のために、ナノ粒子の
有無にかかわらず、温熱療法などの細胞又は分子を変化させるプロセスと一緒に、ホログ
ラフィックエネルギテレポーテーション(HET)を使用することを含む。Holoth
ermia(登録商標)デバイスは、現行の温熱療法における副次的損傷を伴うことなく
、疾病に対する熱活性化された処置を行い得るよう、ピンポイントの精度(使用するエネ
ルギの波長によって制限される)でもって、ほぼあらゆるサイズの身体内の特定の選択さ
れた内部構造体に対して、エネルギを送達する。X線やガンマ線などの電離放射線と一緒
に使用された場合には、従来の放射線療法で実際に発生していた副次的損傷を、劇的に低
減することができるあるいは除去することさえできる。その上、RF波を利用したHET
の使用は、大型で高価で複雑な装置や特別なトレーニングや様々な放射線障害リスクや健
康な細胞に対しての副次的損傷などといったような従来の放射線療法を使用した場合の欠
点を伴うことなく、電離放射線の場合と同じ損傷を腫瘍に対して生成するという可能性を
有している。
【0032】
図2は、身体210の外側に配置されたアンテナ230(取付構造240を有する)か
らなるアレイなどのエネルギ源から、身体210内の指定領域200へと、エネルギを送
達するという課題を図示している。エネルギ(進行波の形態とされている)は、指定領域
200へと向かう途中で健康な細胞220を照射し、副次的損傷及び他の望ましくない副
作用を生成する。この配置は、現行で行われているものであり、従来技術である。
【0033】
このエネルギの通過による健康な細胞への悪影響を最小化又は除去するために、ホログ
ラフィックエネルギテレポーテーション(HET)として指定された新規な技術を、本明
細書で開示する。この技術は、ホログラフィ及びフーリエ合成の新規な応用を含み、初め
て、1つ又は複数の「起点」位置(身体210の外側のエネルギ源230など)から、1
つ又は複数の「目的」位置(身体内の1つ又は複数の位置200など)へと、エネルギを
テレポートする。しかしながら、この新規な発明を実装するための手段は、図2には図示
されていない。テレポーテーションの本質は、1つ又は複数の起点位置230から送出さ
れるエネルギの量、及び、1つ又は複数の目的位置200において受領されるエネルギの
量は、大きいかもしれないけれども、1つ又は複数の起点位置230と1つ又は複数の目
的位置200との間に位置した場所220において検出可能なエネルギの量、及び、位置
200を超えた領域において検出可能なエネルギの量が、非常に小さいかあるいはゼロで
ある、ということである。エネルギテレポーテーションは、例えば、新規な方法でフーリ
エ合成及びホログラフィを利用することにより達成されるものであり、以下の解析及び説
明から理解することができる。
【0034】
1822年、数学者Joseph Fourierは、どんな複素波であっても、それ
らの振幅(強度)、周波数(振動の速さ、時間的な又は空間的な周波数)、及び位相(あ
る正弦波と別の正弦波との相対的な位置関係)だけが互いに異なる一連をなす多数の単純
な正弦波(「フーリエ級数」と称される)へと、数学的に分解することができる(「フー
リエ解析」と称されるプロセスにおいて)ことを示した。その計算された一連の正弦波か
らの多数の波を互いに重ね合わせた場合には、それらは、元の複素波をなすように、再び
加算されることとなる(「フーリエ合成」と称されるプロセス)。これは、例えば、図3
Aで見ることができ、この場合、300は、元の複素波であり、310は、元の複素波3
00のフーリエ解析から得られた様々な異なる正弦波(「フーリエ級数」)を表している
。これらの正弦波が、フーリエ合成と称されるようにして、これらを互いに重ね合わせる
ことで一緒に加算された時には、波の代数和からの建設的干渉と破壊的干渉とが生成され
ることとなり、これにより、元の複素波300を再び生成する。
【0035】
図3Bは、フーリエ合成時に様々な正弦波が代数的に加算される様子を図示している。
図の上半分には、波1、波2、及び波3とラベル付けされた3つの異なる正弦波が別々に
示されている。図の下半分には、3つの波のフーリエ合成が示されており、淡く表示され
た3つの重ね合わされる正弦波と、その結果として得られる複素波であって濃い線で描か
れた複素波と、が示されている。一例として、時刻「x」における3つの正弦波の振幅値
(「a」、「b」、及び「c」)の加算が図の上半分に、それらの代数和「d」が図の下
半分に示されている。「a」及び「b」が正の値であり、他方、「c」は負の値であり、
結果として正の代数和「d」となっていることに、留意されたい。別の例として、時刻「
y」における波の振幅値(「e」及び「f」)が示されている。「e」が負であり、「f
」が正であり、他方、時刻「y」における波2の値がゼロであることに、留意されたい。
これらの値の代数和は、負であり、「g」で図示されている。同様に、各時点でのすべて
の正弦波の振幅が代数的に加算され、最終的な複素波のフーリエ合成が得られる。図の下
半分に示す、結果として得られた複素波は、図の上半分に示す波1、波2、及び波3のフ
ーリエ合成である。波が両方とも正である(両方とも中央線より上にある)又は両方とも
負である(両方とも中央線より下にある)ところで波どうしを互いに加算した時には、そ
れらは建設的に加算され、建設的干渉と称されるものが生成される。一方が線の上であり
(正)かつ他方が線の下である(負)ところで波どうしを互いに加算した時には、それら
は破壊的に互いから減算され、破壊的干渉と称されるものが生成される。これが、代数的
加算によって意味されるものである。図3Cは、2個、3個、及び10個の正弦波をフー
リエ合成によって加算することにより複素波を形成した例を示している。
【0036】
何かの画像は、例えば、従来のテレビで使用されている走査線などの一連のスライスへ
とあるいは一連のラインへと、分解することができる。その後、これらのラインに沿った
輝度値を、複素曲線として表現することができる。そして、各複素曲線は、フーリエ解析
計算によって、一組をなす複数の正弦波へと、分解することができる。その後、各組をな
す複数の正弦波を互いに重ね合わせることで、フーリエ合成によって、各スライスの画像
を再形成することができる。その場合、様々なスライスのフーリエ合成された画像を組み
立てることにより、元の画像の再形成が得られることとなる。
【0037】
この技法の多くの独自の応用は、他の方法では得られない画像を形成するために使用す
ることができる。本出願の発明者は、健康な細胞をバイパスしながら、身体内で疾病を処
置するために必要とされた所望エネルギ分布を、患者の身体内で形成されるべきエネルギ
の複素波として取り扱って、そのような複素波を、例えばフーリエ合成を使用することに
よって、構築するための方法を開発した。
【0038】
1929年、Lawrence Braggは、X線及び光波(これらは、本質的に正
弦波的である)に対してこの原理を利用して「X線顕微鏡」を開発し、ダイオプサイド結
晶の原子構造の画像を得た。1948年、Dennis Gaborは、BraggのX
線顕微鏡の概念を利用することにより、新しいタイプの電子顕微鏡を開発する目的で、ホ
ログラフィを発明した。Braggは、結晶中の原子の配置を使用することにより、X線
を回折させ得ること、そしてそれにより、回折パターンを形成し得ることを、正しく理論
化し、これにより、彼は、フーリエ解析によって必要な一組をなす複数の正弦波を計算す
ることができた。図4Aに示すように、(結晶の対称性に基づいた)適正な角度で結晶に
X線を照射することにより、X線回折データが得られ、これにより、彼は、必要なフーリ
エ成分(一組をなす複数の正弦波)の振幅、位相、周波数、及び向き、を決定することが
できた。複数の波が回折された時には、結果として得られる回折パターンは、フーリエ級
数の画像となる。彼は、X線の波長で生成されて検出された回折フーリエ級数をもとに、
可視光を使用して正弦波パターンを光学的に重ね合わせる(「光学的フーリエ合成」と称
される)と、結晶構造の拡大像が得られることを理論化した。彼は、また、最初の回折が
X線の波長で行われるのに対し、フーリエ合成は可視光の波長で行われることから、自動
的に拡大されることに気がついた。X線の波長及び光の波長のサイズの違いが、倍率とな
る。
【0039】
最初に、正弦波画像を作製するために、Braggは、不透明な複数の円柱状ロッドの
写真を、それらの軸どうしを互いに平行とした状態で、それらの直径の2倍に等しい距離
の分だけ離間させて、40枚撮影した。各写真における、円柱のサイズ及び間隔、ならび
に、円柱の配置及び向きは、ダイオプサイド結晶の回折パターンのフーリエ解析から得ら
れた正弦波データに基づくものとされた。各画像は、同じ単一の印画紙上へと、わずかに
ピントが合っていない状態で、順次的に投影された。ピントが少しずれた各画像は、正弦
波パターンのように見えた。3つのそのような画像が図4Bに図示されており、これらは
、明らかに異なる空間的周波数を有している(それらが、すべて同じ時間的周波数を有し
ているにもかかわらず)。現像された最終画像は、彼が期待していた通り、結晶中の原子
構造の画像を提供したが、コントラストは低い。画質を向上させるために、彼は、代わり
に、図4Cに図示されている1801年のThomas Youngの2つスリットの配
置を使用して、正弦波のパターンを作製した。空間的なコヒーレンスを生成するために使
用される単一ピンホール(図示せず)からの光は、一対のピンホール(A及びB)を照射
し、互いにオーバーラップする光波を生成し、写真プレート上に干渉パターンを形成した
【0040】
干渉パターンは、C、D、E、及びFに現れる暗いラインと、暗いラインの両側に現れ
る明るいラインと、から構成されていた。狭い周波数帯域の光(黄色いナトリウム光など
)を利用することにより、及び/又は、カラーフィルタを利用することにより、使用され
る光の時間的コヒーレンス(単色性)が高められた。不透明なプレート内に穿孔されたそ
のような40対の小さな穴を利用し、各対が最終画像上に別の組をなす複数の正弦波を生
成し、それぞれが自身の空間的周波数を有した正弦波パターンを生成することで、彼は、
より良好なコントラストを有したフーリエ合成画像を作製した。不透明なプレートに穿孔
された穴のサイズは、各組をなす波の所望の振幅に対応するように変更され、各対をなす
穴の、互いに対しての、位置、向き、及び変位は、各波のパターンに必要な、配置、向き
、及び周波数に対応するように、選択された。この実験は、複素波のフーリエ解析から導
出された計算上の正弦波に対応した光の正弦波的に変化するパターンどうしを単に重ね合
わせるだけで画像を作製するために光学的フーリエ合成を使用することの正当性を、証明
した。元々単一のピンホールから出た光を使用して、様々な組をなすピンホールを照射し
、その光をカラーフィルタリングすることで、関与する各光ビームは、他の各光ビームと
ほぼコヒーレント(空間的にも時間的にも)でありながら、生成された異なる組の正弦波
パターンは、互いに空間的に異なるものであった。波どうしのコヒーレントな重ね合わせ
は、オーバーラップしているビームの数に関係なく、最大のコントラストを生成するもの
であり、なぜなら、光は、完全に非コヒーレントな光のように暗い領域をランダムに埋め
るのではなく、代わりに、多数の波が重ね合わされたとしても、すべての波の代数的な和
から生じる干渉パターンを生成するからである。
【0041】
ピンホールを使用したBraggのフーリエ合成を実行するための構成が、図4Dに図
示されている。構成要素400は、正弦波どうしのオーバーラップから作製された最終画
像を含む写真シート(この技法が、身体内の特定の位置へとエネルギを送達するために使
用された場合には、身体210内の目的位置200に対応することとなる)である。プレ
ート440は、対をなす穴430(構造体240及びエネルギ源230に対応することと
なる)を含む。重要なものは、穴430を含むプレート440と、最終画像を含むシート
400と、の間の空間420である。この空間420(健康な細胞220に対応すること
となる)は、進行波という形態でのエネルギを含み、この配置を、波源230(プレート
440の穴430に対応する)から、身体内の位置200(シート400に対応する)へ
とエネルギを送達するに際し、望ましくないものとしてしまい、なぜなら、介在するすべ
ての健康な細胞220(空間420に対応する)が、この進行波エネルギによって照射さ
れることとなるからであり、また、進行波エネルギが検出可能であって、加熱などの望ま
しくない効果を引き起こし得るからである。それは、進行波が、空間の大きな容積領域に
わたっての、建設的干渉及び破壊的干渉からなる容易に規定された不変の定在波パターン
の生成を、許容しないからである。波源430に起因して目的地400へと伝搬する波は
、進行波ではあるけれども、シート400のところで生成される干渉が、時間の経過につ
れて変化しない一連の波の重ね合わせであって、平面400内に定在波パターンを形成す
ることに留意することは、重要である。これにより、それらは静止しているように見える
ことができ、フィルムをなすシート400上に記録され得る。しかしながら、空間420
内に発生する進行波パターンは、そこに存在する波が進行波であって定在波パターンに加
算されないため、静止したものではなく、限定可能なものでもない。よって、空間420
は、破壊的干渉だけを含むものではない。
【0042】
図2に戻ると、健康な細胞220をエネルギによって照射することなく身体内210内
の1つ又は複数の目的位置200の照射を達成するためには、必要なことは、意図した目
的位置200が、ミュート解除されたエネルギを受領しつつ、領域220に位置したエネ
ルギを「相殺する」すなわちミュートするための方法である。本発明によれば、これは、
領域220に位置した破壊的干渉からなる定在波パターンを生成することによって、達成
することができる。本明細書で上述したように、破壊的干渉によって「相殺された」エネ
ルギは、吸収されたり散乱されたり反射されたり破壊されたりするのではなく、ただ単に
、同じ場所で同時に重ね合わされた位相ずれエネルギの反対効果のために、検出不可能な
ものとされかつ効果のないものとされるだけである。そのような方法は、また、エネルギ
波どうしが位相を合わせることを可能として、建設的干渉を生成し得るものでなければな
らないけれども、それは、所望の効果を生成し得るよう、1つ又は複数の目的位置200
においてのみである。
【0043】
その結果、BraggのX線顕微鏡設計は、シート400がなす平面内の指定領域にお
いて静止した破壊的干渉を生成するにもかかわらず、健康な細胞220を照射することな
く身体内200内の1つ又は複数の目的位置200においてエネルギを再構成するために
は、成功裏に使用することができない。
【0044】
本出願の発明者は、非ターゲット領域220において破壊的干渉を達成するための手段
を発見した。本発明は、従来から行われてきたものとは異なる方法で、フーリエ合成を利
用することができる。定在波フーリエ合成は、正弦波の重ね合わせを含み、時間及び/又
は空間にわたって変化しない定在波を形成する。BraggのX線顕微鏡では、各対をな
す穴は、最終的な写真シート上においてのみしか、静止した正弦波パターンを生成しない
。しかしながら、複数の穴からの光は、最終画像を形成する定在波からなる平面に対して
垂直な向きに、最終画像に対しての進行波として伝搬する。最終画像がなす平面は、最終
画像を形成するために必要に応じて、一定パターンのフーリエ合成が、ひいては、固定的
な建設的干渉パターン及び破壊的干渉パターンが、行われる場所である。穴から最終画像
へと移動する光は、それらの重ね合わせが絶えず変化することのために、最終画像平面へ
と向かう途中でそれらが通過して進行する空間内に破壊的干渉だけをもたらすようにオー
バーラップした複数の正弦波からなる特定の静止パターンを生成するためには使用し得な
い進行正弦波から構成されている。したがって、そのエネルギは、最終的な画像平面へと
進行する際には、常に検出可能であり、本発明が意図する結果をもたらさないこととなる
【0045】
BraggのX線顕微鏡は、本質的には、単一平面内に位置した波源であって別の平面
(逆変換平面として参照される)内に画像を形成する波源を使用した1次元フーリエ変換
に基づくものであった。進行波は、一方の平面から他方の平面へと伝搬するものであり、
それらの平面どうしの間の空間においては、変化する進行波として常に検出可能なもので
あった。最終的な所望の干渉パターンは、エネルギ源がなす平面に対してほぼ平行とされ
た平面内に生成され、進行波がなす平面は、エネルギ源平面と画像平面との双方に対して
垂直であった。
【0046】
本発明によれば、空間の1つ又は複数の選択された領域(例えば、腫瘍細胞が位置する
領域)において所望の強いエネルギ波動場を生成し得るとともに、空間の周囲領域(健康
な細胞が存在することとなる領域)においては波どうしを破壊的干渉(相殺)させ得る1
つの実施形態は、選択された領域の周囲の円内にエネルギエミッタを配置するという構成
を使用するものであり、これにより、各波が他の方向から来る波によってオーバーラップ
され、その結果、建設的干渉が望まれる円内の1つ又は複数の選択された領域を除いて、
空間のすべての領域で破壊的干渉が生成されるようにして、波どうしが互いにオーバーラ
ップし得るものとされる。
【0047】
1998年、Okuyamaらは、「ローグ波」の挙動を研究しており、これは、高さ
が100フィート(30.5m)に達することもある、やや珍しい、異常な自然発生の海
洋波で、平穏な海から不意に上昇したり、巨大な船を沈めたり、また、石油リグのプラッ
トフォームを脅かしたりする。彼の解析には、フーリエ合成を使用して、彼が選んだ特定
の場所にある平穏な海から、離散的に盛り上がった水の波あるいは離散的な水のスパイク
を生成すること、が含まれていた。このプロセスを容易に実証できる方法で例示するため
に、彼は、水波生成器の円形配置を使用して、水面上に盛り上がったアメリカのアルファ
ベット文字を生成した。
【0048】
これを図5Aに示す。直径が5フィート(1.5m)の円形タンク500が、水で満た
された。タンクの周縁には、それぞれが物理的な水の波を生成する能力を有した50個の
電気的に活性化されたソレノイド波生成器510が配置された。コンピュータを使用して
各ソレノイドの強度、速度、及びタイミングを制御しつつ、フーリエ合成を利用して、彼
は、生成された文字の周囲のすべての場所に平らで穏やかな水を生成しながら、タンクの
中央においては、直径が4フィート(1.2m)の円内の水面上に所望の形状を有した波
の構造物を、生成することができた。
【0049】
図5Aに示すように、水は、中央に文字「S」520を形成するために、約5cmだけ
盛り上げられている。タンク内の水の残部は、近くの窓を反射した様子に見られるように
、平坦で滑らかであり、このことは、符号520のところに出現した文字「S」の場所を
除いては、水面のどこにもエネルギが存在していないように見えることを示している。し
かしながら、この方法は、フーリエ合成を生成するために異なる時間的周波数を有した進
行波を使用するので、バイアスが生じる、つまり、生成された「S」の外側では水はすべ
ての場所で平坦であるけれども、水位が(時間の経過とともに)すべての場所で上昇して
おり、ゼロ(エネルギが存在しない)ではないということを意味する。彼は、より強力な
及び/又はより多くのソレノイド波生成器を使用すれば、水面上にさらに高い文字を生成
するであろうことを確認した。しかしながら、文字ではない部分においても、バイアスが
大きくなってしまう。異なる波は、異なる周波数を有しているので、所望の位相関係でそ
れら波どうしが互いにオーバーラップし、所望の建設的干渉パターンを形成して、水面上
に所望の文字を形成するには、ある程度の時間が必要である。他の時間では、水の高さは
、すべての波が再び所望の位相関係に戻ってくるまでは、小さなランダムな値を有し、時
間経過とともにバイアスを生じる。このことは、隆起した領域と平坦な領域との間に生じ
得る高さの差を減少させる。
【0050】
このアプローチの改変を使用することは、ターゲット領域と介在領域との間のエネルギ
レベル差を増大させ、現在使用されている治療用患者照射方法に対して、大きな利点をも
たらすであろう。本出願の発明者は、水タンクの周囲に配置された水波を生成するための
ソレノイドの代わりに、患者を取り囲むようにして円状に配置された、RF、マイクロ波
、X線、音響波、又はさらにはガンマ線、の生成源を使用することにより、副次的損傷を
最小化しつつも、疾病を処置するために患者内の特定の位置へとエネルギを送達する方法
が提供され得ることに気付いた。しかしながら、それを達成するためには、新しいハード
ウェアと手順とを備えた全く新しいシステムが必要であり、それに加えて、効率的で成功
裏での実装を可能とするために理論的に大幅な変更が必要である。
【0051】
BraggのX線顕微鏡で使用された干渉構成とは根本的に相違したこのような円形エ
ネルギ干渉システムを解析するためには、新たに規定された円形空間内に生成されるべき
任意の所与の特定のエネルギ干渉パターンをもたらすために必要とされる波の必要な振幅
、周波数、及び位相を計算するために、ある種の変更が必要である。Okuyamaの水
波システムに関する彼の解析は、このような円形の電磁(「EM」)波システム又は音波
システムの解析にとって、適切である。まず、本出願の発明者は、Braggが使用した
平面系に関する単純なx、y、z直交デカルト座標の代わりに、空間を円筒座標系で表現
するのが最適であると考えている。(これに代えて、Okuyamaが行ったように、水
面などの円形平面を考慮するだけであれば、極座標系を使用することもできる)。
【0052】
このようなシステムでは、図5Bに示すように、ポイントの位置は、選択された基準軸
からの距離と、その軸からの、選択された基準方向に対する方向と、3次元容積の場合に
は、その軸に対して垂直な選択された基準平面からの距離と、によって特定される。後者
の距離は、基準平面のどちら側がポイントに対して面しているかに応じて、正の数又は負
の数として与えられる。システムの「原点」は、3つの座標がすべてゼロに等しいポイン
トである。これは、基準平面と軸との交点である。原点を起点とし、基準平面上にある線
を基準方向に向ける「極軸」と区別するために、軸は、円筒軸又は縦軸と称される。軸か
らの距離を、径方向距離又は半径として参照してもよく、角度座標は、時には、角度位置
又は方位として参照される。半径及び方位は、ポイントを通る平面であって基準平面に対
して平行な平面内の2次元の極座標系に対応しているため、合わせて極座標と称される。
第3の座標は、高さ又は高度(基準平面が水平とみなされる場合)、あるいは、長手方向
位置、あるいは、軸方向位置、と称することができる。図5Bにおいては、原点は、Oに
よって、極軸は、Aによって、縦軸は、Lによって、それぞれラベル付けされている。ド
ットは、径方向距離ρ=4、角度座標φ=130°、高さz=4、のポイントPである。
ポイントPの3つの座標(ρ,φ,z)は、また、次のように規定される。
・径方向距離ρは、z軸からポイントPまでのユークリッド距離である。
・方位φは、選択された平面上の基準方向と、原点とその平面上へのPの投影とを結ぶ直
線と、の間の角度である。
・高さzは、選択された平面からポイントPまでの符号付き距離である。
【0053】
円筒座標のρ座標でのフーリエ展開は、「フーリエベッセル」級数に相当する。数学で
は、フーリエベッセル級数とは、ベッセル関数に基づく特殊な種類の一般化されたフーリ
エ級数(有限区間での無限級数展開)である。整数αに対するベッセル関数は、ここで使
用している円筒座標内のラプラス方程式に関する解の中に現れるため、円筒関数又は円筒
調和関数として知られており、したがって、波動伝搬の多くの問題点において特に重要で
ある。フーリエベッセル級数は、特に円筒座標系において、偏微分方程式に関する解法に
使用される。フーリエベッセル級数展開は、その基礎として、非周期的で減衰するベッセ
ル関数を使用する。第2のフーリエベッセル級数は、「ディニ級数」として知られている
。フーリエ級数が有限区間に関して規定され、対応するもの(無限区間での連続フーリエ
変換)を有しているように、フーリエ-ベッセル級数は、ハンケル変換と称される、無限
区間での対応するものを有している。数学では、ハンケル変換は、任意の所与の関数f(
r)を、第1種ベッセル関数J(kr)の無限数の加重和として表現し、ここで、「v
」は、「次数」であり、「k」は、「r」軸に沿ったスケーリングファクタである。これ
は、フーリエベッセル変換としても知られている。無限区間でのフーリエ変換が、有限区
間でのフーリエ級数に関係するように、無限区間でのハンケル変換は、有限区間でのフー
リエベッセル級数に関係する。ハンケル関数は、円筒波動方程式の外向き伝搬円筒波解及
び内向き伝搬円筒波解をそれぞれ表現するために使用される。
【0054】
これらの概念は、逆リング波を利用して、本明細書では「所望のエネルギピーク」(「
DEPs」)として参照される建設的干渉による高振幅波を解析してその後に生成するた
めの、ならびに、空間内の他のすべての位置で「所望のエネルギ相殺」(「DECs」)
として参照される破壊的干渉領域の生成を解析してその後に生成するための、数学的方法
を提供する。本明細書では、説明を管理可能に維持するために、また、説明が容易に提示
されるようにするために、空間内のただ1つの円形平面のみを考慮することとする(ただ
し、以下で指摘するように、おそらく円筒形容積を規定するいくつかのそのような円形平
面も、同様に、考慮され得る)。
【0055】
本発明によれば、球形ベッセル関数を、3次元の容積空間においても使用することがで
きる。しかしながら、それらの使用は、本明細書に記載される特定の実施形態にとって必
要ではない。本発明を使用して3次元空間で行い得るような、一次元(円がなす平面に対
して平行)でコリメートされた波を使用することは、それらの波を単一平面に限定するこ
ととなり、単一平面解析を適切なものとする。以下に説明するように、複数の円系を、タ
ンデムで使用することもでき、これにより、円筒系を生成することができる。
【0056】
本発明によれば、電磁(EM)波については、ベッセル関数によって数学的に表現され
る複数のリング波の合計によって、DEPs及びDECsが生成されることとなる。波を
ベッセル関数へと分解することは、フーリエベッセル級数展開に基づくディニ展開によっ
て提供される。この展開は、波動エミッタ及び波動キャビティ(波動エミッタがなす円の
内部の空間)の仕様に依存する。
【0057】
リング波は、順方向の時間においてはエネルギエミッタから外側に分散し、逆方向の時
間においては(計算上の目的で)エミッタ波源ポイントのところに集束する。逆リング波
を生成するためには、多数の吸収性(多重反射を抑制するため)波動エミッタが周囲に配
置された波動キャビティを使用することが望ましい。反射されたRF波を吸収するために
、例えば、キャビティは、RFエネルギを熱に変換することによって電磁干渉を減衰させ
るように設計された「ECCOSORB(登録商標)高損失マイクロ波吸収体」などの冷
却された市販の材料コーティングを、含むことが望ましい。任意選択的に、反射のさらな
る低減のために、各波動エミッタは、波動エミッタからの反射がキャビティへと戻るのを
防ぎアイソレータとして機能するために、ファラデー回転子(それぞれ、それ自身の表面
がARコーティングされている)又は同等物を、前方側に有することとなる。
【0058】
本発明の他の実施形態では、音響的なDEPs及びDECsを、相応的に使用すること
ができる。
【0059】
波動場の基本形式
波動エミッタから指定平面内へと発散する波動場は、ラプラスの方程式の解として得ら
れる第1種の0次ハンケル関数H (1)によって表される。この波動場は、マルチセグ
メント化された波動エミッタシステムのセグメントによって生成される波動場を充分に近
似する。このシステムによって生成される波動場は、個々の波動エミッタによって生成さ
れた複数の波の重ね合わせによって記述される。極座標系は、選択された平面上に規定さ
れ、ポイントP及びポイントQは、図5Cに示すようにして規定される。ポイントQは、
原点を中心とした円の内部に位置しており、半径rは、長さOPである。単一波動エミ
ッタは、ポイントPのところに配置される。P及びQの引数は、それぞれΦ及びθとして
表される。各位置ベクトルは、次のように規定される。
【数1】
【0060】
ベクトルどうしの関係は、次のようになる。
s=r-r (2)
「r」及び「s」は、それぞれ、ベクトル「r」及び「s」の大きさを表すものとする。
大きさ「s」は、PとQとの間の距離を示すものであって、次のように記述される。
【数2】
【0061】
この場合、Qのポイントにおける波の振幅は、次のように記述される。
【数3】
ここで、kは、波数、ωは、角周波数である。ハンケル関数の加法定理によれば、r<r
においては、次式が得られる。
【数4】
ここで、Jは、第1種のm次ベッセル関数である。式の両辺にeinΦを掛け算し、Φ
を0~2πにわたって積分した時には、右辺のn次項だけを取ることができる。その結果
、第1種のベッセル関数は、次のように得られる。
【数5】
【0062】
この式は、複数の波動エミッタどうしの間において個々の波動エミッタを半径rの円
上に配置した時には、円内の波動場がベッセル関数によって表されることを意味している
。einΦという積分項は、個々の波動エミッタどうしの間の位相差を表している。n=
0の時には、位相差が消失して、リング波が出現する。波動エミッタによって生成される
波動場は、式6の離散式によって、次のように近似することができる。
【数6】
ここで、Nは、波動エミッタの数を表す。
【0063】
波動場のフーリエベッセル展開
空間内の規定された平面内の任意の波動場は、θとして表される角度座標に関する三角
級数展開と、rとして表される径方向座標に関するフーリエベッセル級数展開と、によっ
て幾何学的に記述される。ζ(r,θ)を、空間内の平面内の任意の波動振幅を表すもの
とする。この振幅は、次のように記述される。
【数7】
ここで、knmは、径方向座標に関する波数である。複素数表記を使用することで、波動
問題の計算がより容易なものとなり、次のように与えられる。
【数8】
【0064】
波数knmは、個々の波動エミッタが配置されている円のところにおける波動プロファ
イルの境界条件から決定される。境界条件が、ドラムの膜上におけるようにζ(r,θ
)=0である時には、利用可能な波数は、式J[knm]=0の解として提供され
る。しかしながら、この条件は、この波動問題には適していない。境界における波動振幅
は、数学的にゼロに設定することはできるけれども、その場合には、任意の波動場の数が
少なくなってしまう。境界条件は、ベッセル関数の直交性に関わるものである。ベッセル
の微分方程式に話を戻すと、ベッセル関数の積分方程式は、次のように得られる。
【数9】
【0065】
この式の右辺が、kとkとが等しくない場合にゼロとなる時には、ベッセル関数の
直交性が表される。直交性による最も単純な条件は、J[k]=0、及び、J
[k]=0の時である。J[k]が0に等しくない時には、次の条件
【数10】
も、また、直交性を導出する。プライムという記号は、微分を表している。パラメータh
は、次のように規定される。
【数11】
【0066】
この条件は、円における波動プロファイルがζ(r,θ)=0に制限されないため、
様々な波動場に関して利用可能である。式11の条件におけるフーリエベッセル級数展開
は、ディニ展開として知られている。式11の条件における直交性を使用して、次のよう
に係数Cnmが得られる。
【数12】
ここで、μnm=knmである。径方向座標に関する積分範囲は、正規化されている
。キャビティ空間にDEPsが明らかに出現する時には、特定のDEPsのみが見え、そ
れ以外のすべての領域は、波のないDECsとして出現する。その場合、円における境界
条件は、ζ(r,θ)=0、かつ、ζ’(r,θ)=0である状況に関して適切であ
る。ベッセル関数の境界条件は、J(knm)=0、かつ、J’(knm
=0である状況を表している。J(knm)=0に関しては、パラメータhは規定
されていないけれども、r=rにおいてJ(knmr)→+0、かつ、J’(k
r)→-0という限界を考慮すれば、h=1を得る。n=0において正規化された波数
μnmを、図5D内の表1に示す。
【0067】
利用可能な波数は、波動エミッタの波動生成性能に応じて選択されなければならない。
Okuyamaらが製作した水波試作機は、角周波数10.08<ω<18.84[ra
d/s]という角周波数内で動作し得る50個の吸収性波生成器から構成されたものであ
り、その半径は、r=0.8[m]であった。その結果、正規化された波数の利用可能
な範囲は、8.17<μnm<28.86として示される。このように、n=0では、m
=4~10という展開項が利用可能である。n個目の展開項は、角度座標に関する振動モ
ードを示している。波動プロファイルは、少なくとも5つの波生成器によって記述される
ことが仮定されている。試作機が、50個の吸収性波生成器から構成されていたため、最
大モードの次数は、10個と考えられる。したがって、展開項の次数は、10次に限定さ
れた。t=tにおいて現れる波動場は、次式によって表現される。
【数13】
【0068】
彼らの試作機では、文字「S」を形成するピークの周囲に、トラフが現れる。式14に
よるシミュレーションデータを、式7によって波動生成信号へと変換することで、彼らは
図5Aの写真に示すような水波の文字「S」を、試作機内で生成した。
【0069】
「集中波」の使用による改良
任意の波動場をより容易に作製するために、「集中ポイント」として参照され得る任意
のポイントに波動エネルギを集中させることによって、プロセスを改良することができる
。式14のディニ展開を、図5Eに示すようにキャビティの中心に集中ポイントを作製す
るために、適用することができる。形成されたエネルギピークは、r=0である極のとこ
ろにピークがあることのために、0次のベッセル関数で表される。よって、フーリエ級数
展開の展開項nは、0でなければならない。その結果、集中ポイントのエネルギピークは
、次のように表される。
【数14】
【0070】
集中ポイントを、任意のポイントR(x,y)に配置した時には(図5Fに示す
ように)、エネルギピークは、次のように記述される。
【数15】
ここで、
【数16】
【0071】
集中ポイントにおける波動プロファイルは、式15によって表されるものと同じである
。ベッセル関数の加法定理によれば、第1種の0次ベッセル関数は、次のように表される

【数17】
【0072】
n=0において、式6を式17に代入することにより、以下の式が得られる。
【数18】
【0073】
中括弧内の積分項は、波動エミッタどうしの間の位相差を含む複素振幅を示している。
集中ポイントを使用すると、波動エミッタの指定を必要とする制限を受けることなく、空
間内の任意の位置に自由に様々なDEPsを形成することができる。このようなDEPの
位置は、次のように表される。
【数19】
【0074】
この改良された方法では、生成されるDEPsの各分布に関して、ディニ展開は不要で
ある。ベッセル関数の係数A0mは、集中ポイントでの波動プロファイルによって決定さ
れ、すべての波動プロファイルは同じである。集中ポイントの位置を提供することだけが
必要とされる。その結果、計算が単純化され、計算時間が短縮される。単一波動エミッタ
によって生成される波動場は、第1種のハンケル関数によって記述することができる。複
数の波動エミッタがなす円によって囲まれた円形キャビティ内に生成される波動場は、複
数のハンケル関数の重ね合わせによって表現することができる。ハンケル関数の加法定理
によれば、この波動場は、円の中心を原点とした第1種のn次ベッセル関数によって数学
的に表現される。任意の波動場が、ベッセル関数に分解されることにより、及び、各ベッ
セル関数が、ハンケル関数へと分解されることにより、単一波動エミッタの波動放出パラ
メータは、任意の波動場及びDEPsを生成するために指定することができる。
【0075】
本発明のこの第1実施形態では、患者の診断及び/又は処置のためのシステムは、この
技法を使用して、図6に示すような波動エミッタ600の円形配置によって、構築するこ
とができ、可動テーブル上の患者602は、エネルギエミッタの円形配置によって規定さ
れた円形平面を通って必要に応じて間欠的に移動され(従来のCTスキャナで行われるこ
とに類似している)、これにより、腫瘍などの関心のある組織位置604を、診断及び/
又は処置のために、DEPs及びDECsが生成される円形領域内へと位置させることが
できる。
【0076】
この第1実施形態の利用に関する代替的な配置として、診断及び/又は処置システムは
図7に示すように、それぞれがそれ自身の円形平面内においてDEPs及びDECsを
生成するように構成された複数のエネルギエミッタからなる一連の平行な円形配置であっ
て円筒710を形成する一連の平行な円形配置から、構成される。このような配置は、多
数の平行平面内での患者組織の診断及び/又は処置を順次的に又は同時的に提供するとと
もに、診断及び/又は治療時の患者の移動の必要性を潜在的に除去する。そのような円形
ユニットは、また、互いに平行以外の他の配置で、患者の周囲に配置することもできる。
エネルギエミッタの2つの個別の円形配置どうしの間に空間がある構成では、患者は、そ
の距離の分だけ移動するだけでよく、身体全体内のすべてのポイントに対して非常に迅速
に対処することができる。
【0077】
好ましくは、処置システムは、MRI、PET、CT、又は、本明細書の他の場所で言
及されているような他のスキャナ、などの画像化装置内に組み込まれることとなる。スキ
ャナは、処置を必要とする腫瘍又は他の組織の3次元位置を検出することとなり、検出さ
れた3次元座標は、患者の身体によって占有される他のすべての位置におけるDECsに
よる破壊的干渉によってエネルギを相殺しながら、指定された位置ではDEPsを生成し
得るよう、処置システムに対しての入力として機能することとなる。
【0078】
この実施形態では、異なる時間的周波数、位相、及び振幅の進行波が、波動エミッタに
よって生成され、フーリエ合成によってDEPs及びDECsを生成するために重ね合わ
される。しかしながら、それらは異なる時間的周波数を含む進行波であるため、それらは
、必要な位相関係にある構成正弦波どうしの適正な重ね合わせ(フーリエ合成のために、
及び、所望の場所でのDEPs及びDECsの構築のために)を各周期に一度だけ生成す
ることができる。ここで、周期とは、異なる時間的周波数を有した複数の波が、所望のフ
ーリエ合成を提供するために所定通りにすべて揃い得るよう、それらが再び揃うまでの時
間である。その結果、DEPs及びDECsは、各サイクルのうちの一部の時間にだけ出
現することとなり、低レベルのバイアスが、他の時間に出現することとなる。このことは
、この実施形態では、処置を必要としない介在組織及び周囲の健康な組織において検出可
能なエネルギレベルがゼロとはならないことを、意味する。しかしながら、複数の波が所
望の位相関係にある時間帯における、非処置領域で生成される破壊的干渉に基づき、及び
、処置領域で生成される建設的干渉に基づき、低レベルのバイアスと比較的高レベルのD
EPsとの間の差は、腫瘍などの選択された組織の成功裏での処置を行うのに充分なエネ
ルギを提供しつつ、健康な組織における著しい損傷も望ましくない悪影響も充分に防止す
ることができる。
【0079】
本出願の発明者は、この実施形態が、直接的なEM励起及びフェーズドアレイシステム
などの現在利用可能な温熱療法システムと比較して、健康な細胞をRF EM放射に対し
て及び熱に対して曝露することを低減することとなるために、温熱療法に関する価値ある
システムとなる可能性が最も高いと考えている。この実施形態のための最適な周波数は、
好ましくは100MHz~200MHzであるが、RF波が多くの周波数でかなり容易に
身体内を通過することのために、GHz範囲までのより高い周波数を含む他の周波数を使
用することができる。
【0080】
本出願の発明者は、また、X線及びガンマ線を利用したこの実施形態の実装も考えてい
る。しかしながら、非コヒーレントバイアスの存在のために、及び、電離EM放射の非常
に有害な影響のために、これは現在使用されているようにどこでも一定の放射線よりは安
全な代替手段ではあろうけれども、従来の方法と比較しての、このような放射線を使用し
た処置に関してこの実施形態を使用することの利点の程度が、まず、試験によって確認さ
れるべきである。
【0081】
時間相関定在波干渉(TiCSI)
最適な処置のために、最大量のエネルギが、周囲の健康な細胞及び介在する健康な細胞
に対してのエネルギ送達を最小化しつつ好ましくは除去しつつ、選択されたターゲット細
胞又はターゲット分子に対してテレポートされるべきである。その結果、あらゆるバイア
スの形成を実質的に除去する本発明の以下の好ましい第2実施形態が、提供される。この
実施形態においては、HETを提供するために、本明細書において「時間相関定在波干渉
」(TiCSI、「ティクシー」と発音される)として参照される新規な技法を使用する
。この技法は、定在波がオーバーラップする各瞬間に定在波の正負を時間相関させること
によって、定在波どうしの間にコヒーレントな干渉を生成する。バイアスの形成を防止す
るためには、患者によって占有された空間内のすべての場所は、建設的干渉(DEPs)
状態のエネルギからなるべきである選択されたターゲット細胞又はターゲット分子の領域
を除くすべての場所において、進行波ではなく、静止した破壊的干渉(DECs)を提供
する静止定在波のみで構成されるべきである。さらに、使用されるエネルギは、破壊的干
渉の位置と建設的干渉の位置との間のコントラストを最大化するために、可能な限りコヒ
ーレントな(空間的にも時間的にも)エネルギであるべきである。この第2の好ましい実
施形態は、オーバーラップする定在波の適正な配置及びタイミングを提供するシステムに
よって達成することができる。
【0082】
定在波は、ノードとアンチノードとから構成され、一見すると、どこにも負になること
はないように見える。そのため、破壊的干渉が形成されないように見えるかもしれない。
破壊的干渉を生成するためには、正の波と干渉するための負の波が不可欠であり、このた
め、定在波を使用して空間の固定領域で破壊的干渉を生成することはできないと結論づけ
ている。しかしながら、本出願の発明者は、定在波を、通常の時間平均的な見方ではなく
、時間の個々の瞬間で見た場合には、あらゆる1周期の間に、アンチノードの状態が正で
あるか又は負であるかあるいはその中間であるかのいずれかであることを理解し得ること
に、気がついた。
【0083】
結果的に、それが負である時には、この波は、例えば同じ時間及び同じ空間的位置で、
正である別の定在波に対して干渉することができ、またその逆も成立する。図8Aを参照
すると、単一の定在波パターン800は、ノード810とアンチノード820とからなる
。ノードは、常にゼロであって、検出可能なエネルギを含んでおらず、他方、アンチノー
ドは、波の持続時間の半分の間は正でありかつ波の持続時間の残りの半分の間は負である
(これに加えて、ゼロである短い時間)ような、正弦波的に変化するエネルギ量からなる
。アンチノードの知覚は、負になることのない一定のエネルギの知覚であるが、これは、
この知覚が時間平均であるという事実に起因する錯覚である。
【0084】
アンチノードのエネルギが、実際には正と負との間で振動していることにより、適正な
位相関係を有した別の同様の定在波をその上に重ね合わせることによって、アンチノード
が常に正であるかのようにあるいは常に負であるかのように、アンチノードと相互作用す
ることが可能である。このようにして、通常の進行正弦波を空間内で静止させ得るかのよ
うに、さらにそれらをオーバーラップさせることによって建設的な又は破壊的な静止した
干渉パターンを生成し得るかのように、見えて振る舞う干渉パターンを生成することがで
きる。
【0085】
例えば、2つの定在波は、定在波を構成する波の波長の半分だけ波の伝搬方向と平行に
一方の定在波をシフトさせた状態で、オーバーラップさせることができる(シフトは、図
8Bにおける水平方向矢印によって示されている)。これにより、定在波は、破壊的干渉
によって完全に打ち消し合うこととなる。これは、ノードが常にゼロであるために、及び
、2つの定在波からのアンチノードが、発振する際に常に互いに位相がずれているために
、起こる。これは、図8Bに示されており、波830は、(濃い正弦波曲線によって示さ
れるように)凍った瞬間の1つの定在波であり、840は、(濃い曲線によって示される
ように)同じ時間の瞬間に、830と位相がずれているように空間的にシフトされた他の
定在波である。各定在波は、それ自体が逆向きに進む2つの進行正弦波のオーバーラップ
によって作られているけれども、定在波は、空間的に凍結されて、あたかも同じ向きに伝
搬する2つの重ね合わされた進行波であるかのように、かつ、位相ずれした状態で空間的
に凍結されるかのように、850で示すように互いに相殺される(波830は、鉛直方向
の矢印で示されるように、波840に対して重ね合わされ、850で示す結果が得られる
)。しかしながら、定在波を平行にオーバーラップする代わりに、互いに斜めにオーバー
ラップすることができ、これにより、建設的干渉を有した空間の固定領域又は破壊的干渉
を有した空間の領域と、干渉がない空間の領域(波どうしがオーバーラップしていない領
域のため)と、を提供することもできる。
【0086】
さらに、多数対の波がオーバーラップしている場合には、選択された領域又は空間の領
域が常に建設的干渉を含みかつ他の領域が常に破壊的干渉を含むように、あるいは、干渉
がない(波どうしがオーバーラップしていない場所)ように、オーバーラップしている定
在波の位相を、調整することができる。オーバーラップする定在波の数、それらの間の角
度及び間隔、ならびに、互いにオーバーラップする定在波の相対的な位相、を調整するこ
とによって、建設的干渉及び破壊的干渉からなる特定の異なる静的パターンを、空間内に
おいて所望に作製することができる。
【0087】
充分な数のこのような定在波を利用すると、広い領域にわたって、どこの場所にでも、
破壊的干渉によって囲まれた建設的干渉からなる1つの領域を生成することもできる。こ
れは、図9Aを参照することによって、より良好に理解することができる。領域910は
、正方形をなす関心領域(「ROI」)を示しており、さらに、2つのエネルギ源911
、912が示されている。これらのエネルギ源は、点状の波源として示されているけれど
も、例えば、コリメートされた平面状の波源も、同様に使用することができる。波915
は、領域910において得られる、検出された定在波強度パターンを示し、定在波干渉パ
ターン内のエネルギ強度が、図示のように輝度レベルによって示されている。要素916
は、線分911-912に沿ってROI910の中心を通過する強度断面を示している。
【0088】
図9Bにおいては、領域920は、4つのエネルギ源921、922、923、924
によって囲まれたROIを示している。パターン925は、領域920内において得られ
た、検出された定在波強度パターンを表している。ここでは、建設的干渉領域及び破壊的
干渉領域に関するより複雑なパターンを、より明確に見ることができる。パターン926
は、線分921-923に沿ってROI領域920の中心を通過する強度断面を示してい
る。中央領域の周囲の破壊的干渉を含む領域のサイズが大きくなっていることに、注意さ
れたい。
【0089】
図9Cにおいては、領域930は、8個のエネルギ源によって囲まれたROIを示して
おり、パターン935は、結果として得られた、検出された定在波強度パターンを表して
いる。ここでは、異なる建設的干渉パターン及び破壊的干渉パターンが見られ、破壊的干
渉領域がさらに増大している。パターン936は、ROI領域930の中心を通過する強
度断面を示している。
【0090】
図9Dにおいては、領域940は、16個のエネルギ源によって囲まれたROIを示し
ている。パターン945は、見られた、検出された定在波強度パターンを示している。こ
こでは、別の異なる建設的干渉パターン及び破壊的干渉パターンが生成されており、中心
領域の外側における破壊的干渉が、さらに強くなっている。パターン946は、ROI領
域940の中心を通過する強度断面を示している。
【0091】
すべての場合において、建設的干渉を生成するROIの中心における定在波の意図的に
調整された一定の位相合わせ関係のために、周囲領域の強度が減少し続ける一方で、中心
は、(ビームの数が増加するにつれて)大きく成長する強度であり続けることに、注意さ
れたい。選択された容積内の任意のポイントは、すべてのビームの位相を、選択されたポ
イントにおける位相に合わせるように調整することによって、中心に代えて、建設的干渉
のポイントとして選択することができる。このように、コヒーレントな単色波を使用する
ことの驚くべき利点は、(従来の温熱療法又は放射線療法の場合などのように)非コヒー
レントな放射の重ね合わせによって起こるように単にそれらの強度どうしを一緒に加算す
るのではなく、それらの波がオーバーラップした時には、これらの波が建設的干渉によっ
てコヒーレントに加算され、これにより、波源振幅の二乗和に等しい強度を生成すること
である。その結果、使用される波源の数が多ければ多いほど、システムが使用する必要の
あるエネルギが少なくなり、健康な細胞に悪影響を及ぼすエネルギが少なくなる。波源の
数が増えるにつれて、ピーク強度は、波源の数の二乗に従って増大する(例えば、各波源
が等しければ、1に正規化される)が、他の場所におけるエネルギ分布は、破壊的干渉の
ために、どんどんゼロに近づいていく。
【0092】
また、図示された大きな強度分布が、中央のピークの周囲における数波長分だけの領域
しか図示していないことにも、注意されたい。このことは、高エネルギピークの領域が、
使用されるエネルギの波長と同程度の領域サイズ内に集中していることを意味する。グラ
フ946から理解され得るように、連続的に大きい半径のところのピーク強度は、継続的
に減少する。
【0093】
図9Eにおいては、パターン950は、100個のエネルギ源によって囲まれたROI
内におけるエネルギ強度の3次元的図示である。パターン955は、ROI950の中心
を通過する強度断面を示している。100個の波源を使用した場合には、DEPの強度が
、単一波源のエネルギの10,000倍であることに、注意されたい。より大きな強度の
波源(及び/又は、より多数の波源)を使用した時には、エネルギは、大きなバイアスを
生成することなく他のすべての場所では破壊的干渉によってほぼ完全に相殺されつつ、中
心のエネルギピークを、より大きなものとすることとなる。例えば、316個の波源を使
用した時には、建設的干渉ピーク(DEP)強度は、単一波源のエネルギの約100,0
00倍となることとなる。本発明によるHETに使用されることが望ましいこの技法は、
本明細書では、コヒーレント強度増幅(「CIA」)として参照される。ピークの位置は
、様々なエネルギ源ビームの位相を調整することにより、ROI内のどこにでもあるよう
に選択することができる。独立した確認のために、数学を使用することにより、パターン
950、955に示す結果が計算され、Matlabを使用することにより、パターン9
10~945に示す結果が生成された。すべての結果は、一致していた。
【0094】
コヒーレント強度増幅(CIA)
以下は、CIAの基礎についての説明である。コヒーレント波どうしの場合、相対位相
及び干渉パターン強度は、時間とともに一定のままである。マクスウェル理論のエネルギ
法則から、波の電場における、単位容積あたりのエネルギすなわちエネルギ密度uが、m
ks単位系において次のように与えられることがわかっている。
【数20】
ここで、εは、波が進行している媒体の誘電率であり、
【数21】
は、電場ベクトルである。uの時間平均は、次のように書くことができる。
【数22】
ここで、2Tは、平均が取られる時間であり、括弧<>は、時間平均化プロセスに関する
記号である。波内のあらゆるポイントにおいて、ポインティングベクトルは、単位時間あ
たりのかつ単位領域あたりのかつ流れに対して垂直な、エネルギ流の大きさ及び向きを与
えるものとして解釈することができる。古典的な光学では、単位時間あたりのかつ単位領
域あたりのかつ流れに対して垂直なかつ単位断面積あたりのエネルギ流の大きさの時間平
均を、その時点での波の強度と称することが一般的な使用法である。強度をIと表記す
ると、次のようになる。
【数23】
ここで、sは、媒体中における波の速度である。mks系では、Iは、1平方メートル
あたりのワットという単位で表される。他方、ホログラフィでは、強度を、次式のような
省略形で規定することが慣例である。
【数24】
【0095】
IとIとの間の比例関係により、相対的な強度を、I又はIに関して同等に表現す
ることができる。よって、
【数25】
が、ビーム内のあるポイントに対しての半径ベクトルであり、
【数26】
が、別のポイントに対しての半径ベクトルである場合には、2つのポイントにおける相対
強度は、次式で与えられる。
【数27】
【0096】
干渉プロセスの洞察は、関連する波の振幅に関する表現を、式(1.1)で規定された
強度である次式
【数28】
へと代入することによって、得られる。電場
【数29】
が物理量として存在するならば、それは、空間及び時間の実関数でなければならず、それ
が真に単色波を表すならば、それは、時間の単純な調和関数でなければならない。fを、
波動振動の周波数とすることができ、電場に関しては、次のように書くことができる。
【数30】
【0097】
ここで、
【数31】
は、振幅であって、空間的座標のみの関数であり、φは、空間的座標のみの位相関数であ
る。式(1.2)を式(1.1)に代入すると次のようになる。
【数32】
ここで、a、a、及びaは、ベクトル
【数33】
のデカルト成分を表している。強度は、このように電場の振幅の二乗に等しい。式(1.
4)から明らかなように、単一波の強度を測定しても、その波の位相についての情報は得
られない。干渉パターンは、2つ以上の波が同時に存在することを意味するので、干渉す
る単色波の数を加算して式(1.1)を適用する方法を考えなければならない。各波は、
【数34】
によって表現することができ、ここで、周波数fは、単一の値を有し、各波に対して同一
である(
【数35】
は、干渉領域内の電場ベクトルである)。これらの正弦波関数の和は、正弦波そのもので
あり、よって、次のようになる。
【数36】
【0098】
上記は、次のように書き換えることができる。
【数37】
ここで、Re[ ]は、括弧内の複素量の実数部を示す。複素表記を使用することによっ
て、計算が容易とされ、波動関数が実数であることを忘れないようにすることによって、
その使用を容易とすることができる。この時点で、式(1.6)の右辺に現れる空間及び
時間の複素波動関数に対して適用し得るいくつかの用語を区別することができる。発振周
波数fで変化する時間的位相因子を含む複素量
【数38】
は、「複素電場ベクトル」と称される。複素量
【数39】
は、周波数fで変化しない振幅因子及び位相因子のみを含み、「複素振幅ベクトル」と称
される。実数の量
【数40】
は、単に振幅ベクトルである。
【0099】
式(1.6)内の記号Re[ ]を削除して、各項をexp(2πift)で割り算す
ると、次のようになる。
【数41】
注:複素量は、太字で表記される。
【0100】
よって、単色波の和の複素振幅ベクトルは、複素数の加算規則に従って、個々の波の複
素振幅ベクトルを加算することによって得られる。
【0101】
ここで、式(1.3)における強度Iを、
【数42】
という観点から、積
【数43】
を形成することにより、書くことができ、これにより、次式となる。
【数44】
ここで、アスタリスクは、複素共役を示す。ホログラフィでは、被写体波及び参照波とい
う2つの波の干渉に関心があることが多い。この場合、式(1.8)における強度Iは、
次のような形態となる。
【数45】
【0102】
よって、2つの波列によって形成された干渉パターン内の任意のポイントでの強度は、
個々の波の強度の和に対して、干渉項を加えたものとなる。相対的な位相情報は、この時
間に依存しない干渉項の中に含まれている。2つの干渉波では、結果として得られる強度
Iは、それらの強度の和と比較して、大きくなることも小さくなることもできる。例えば
、波が、一定で等しい振幅を有している場合には、次式となる。
【数46】
【0103】
その場合、式(1.9)から、強度Iの最大値は、個別強度I又はIの4倍であり
、強度Iの最小値は、0である。その結果、波どうしのコヒーレントな干渉では、結果と
して得られる強度Iは、干渉する波の振幅の和に対して干渉項の値を加えた値の二乗へと
減少する。その結果、追加の波源をコヒーレントに追加することにより、建設的干渉(D
EPs)のピーク領域は、指数関数的に増大し、他方、DECsは、どんどんゼロに近づ
いていく。
【0104】
上述した破壊的干渉(DECs)の領域は、ほとんどエネルギを含んでいないが、わず
かな量のエネルギが残っていることを見て取ることができる。破壊的干渉領域(DECs
)のエネルギをさらに減らすには、いくつかの方法が存在する。先ほど説明したように、
リング内の波源の数を増やすと、1つ又は複数の建設的干渉領域(DEPs)内のピーク
エネルギが大幅に増大する。その結果、各エネルギ源のエネルギ量を減少させることがで
き、DEPsが低減したとしても所望のタスクを達成するのに充分以上のエネルギをなお
も提供することを可能としつつ(CIAによる)、DECsをさらに低減させることがで
きる。
【0105】
これに代えて、すべてが同じ周波数を放出する複数の波源からなるリングを使用する代
わりに、高調波リンギングをさらに相殺するために他の周波数を放出する他の組をなす複
数の波源を、リング内に配置することもできる。これは、特に残留エネルギが最も大きな
建設的干渉ピークからわずかな距離のところにおいて、1つの周波数のみを放出する波源
によって生成されるパターン内にいくらかの残留エネルギがなおも残っている異なる位置
における、さらなる破壊的干渉の重ね合わせを提供することができる。これは、破壊的干
渉(DECs)が望まれる領域内のエネルギを、さらに除去することができる。これは、
図15A図15Fに図示されている。図15Aは、直径が2mのリング内に配置された
64個の等間隔に配置された波源によって生成されたDEPを中心とした3mm領域内の
エネルギプロファイルを示しており、各波源は、300GHz(1mmという波長を有し
ている)の電磁波を放出している。図15Bは、同じDEPを中心とした3cm領域内の
エネルギプロファイルを示している。図15Cは、同じDEPを中心とした0.3m領域
内のエネルギプロファイルを示している。これらのグラフは、DEC領域内に、なおもい
くらかの残留エネルギが存在していることを示している。図15Dは、同じDEPを中心
とした、図15Aに図示したのと同じ3mm領域内のエネルギプロファイルを示している
けれども、5つの追加周波数(39.9GHz、91.6GHz、144GHz、196
GHz、及び248GHz)が、元の300GHz波に対して追加されている。これらの
周波数は、それらのベッセル関数パターンを解析することにより、1つの周波数のみを使
用することによって生成された初期干渉パターンに対して、どの高調波パターンが破壊的
干渉を引き起こすかを見つけることによって、選択された。生成された追加の破壊的干渉
は、破壊的干渉領域(DECs)内の残存エネルギ量を劇的に減少させる。図15Eは、
同じDEPを中心とした、同じ6つの異なる周波数で照射された、図15Bに図示したの
と同じ3cm領域内のエネルギプロファイルを示している。図15Fは、同じDEPを中
心とした、同じ6つの異なる周波数で照射された、図15Cに図示したのと同じ0.3m
領域内のエネルギプロファイルを示している。
【0106】
当業者であれば理解されるように、波源、位相、及び周波数に関する他の構成を、DE
C領域内のエネルギをさらに減少させるために、また、DEP領域内のエネルギを増大さ
せるために、同様に使用することができる。
【0107】
この第2実施形態を利用して、患者をROI内に配置して、図6に示すように、患者を
取り囲むエネルギ源の円によって規定された平面内のあらゆる場所における任意の選択さ
れた領域に対して、破壊的干渉領域によって囲まれた状態で、建設的干渉によって大量の
エネルギをテレポートすることができる。
【0108】
単一のホログラムが、コンピュータ生成ホログラム(CGH)である場合を含めて、当
該技術分野において周知であるように、空間内のいくつかの個々のポイントを再構成する
ことができるのと同様に、本発明のこの第2実施形態におけるリング内の複数の波源から
なるアレイは、電子的ホログラムのように振る舞い、複数の波源からなるリングによって
囲まれた領域内に2つ以上のDEPsを生成するように構成することができる(所与の周
波数において、各エミッタの位相及び振幅を調整する)。このことは、リング内に配置さ
れた患者内で、2つ以上のスポットを同時に処置し得ることを意味している。
【0109】
この場合にも、診断及び/又は処置時に、複数のエネルギ源からなる円形アレイの内外
にわたって患者を移動させる必要性をなくすために、図7に示すように、複数のエネルギ
源からなる円筒形アレイを、代替的に使用することができる、あるいは、円形アレイの他
の向きを使用することができる。上述した第1実施形態とは異なり、すべてのエネルギは
、コヒーレントであるとともに、同じ時間的周波数のものであり、患者空間全体内に全時
間にわたって固定定在波パターンとして残存し、バイアスは起こらない。したがって、本
発明のこの第2実施形態では、患者に対して適用されるエネルギを必要なだけ増加させる
ことができ、これにより、患者の奥深くまで到達させ得るとともに、診断及び/又は処置
のために、選択された領域に対して充分なエネルギ強度を供給することができ、なおかつ
、介在した周囲の健康な細胞に対して危険なエネルギを送達することがない。これは、通
常はほとんど浸透しない高いRF周波数において、特に有用である。これは、破壊的干渉
の状態のエネルギが、患者のうちの、破壊的干渉領域に位置した健康な組織(又は、任意
の他の組織)と相互作用しないことのために、可能とされる。したがって、エネルギは、
吸収されることも散乱されることもなく、加熱もイオン化も組織の損傷も生成しない。エ
ネルギが吸収されないことにより、エネルギは、最大の効果を生成するために「再物質化
」する建設的干渉領域に到達するまで、その高い周波数にもかかわらず、高強度でもって
、妨害されることなく身体を貫通し続けることができる。
【0110】
DEPの最大強度の領域のサイズ(解像度)は、使用された波長(~λ/2)の関数で
ある。明らかに、高周波数では(300GHz以上のミリ波の場合など)、これは、非常
に小さな選択された領域(~1mm以下)に対して、エネルギを正確に送達する能力を、
提供する。上述したように、診断及び/又は処置エネルギは、一度につき1つの小さなス
ポットに対して送達することができる、あるいは代替的には、同時的な診断及び/又は処
置のために、干渉パターンを、複数の位置に意図的な「ホットスポット」(DEPs)を
生成するように計算することができる。
【0111】
患者の周囲にリングを有したこの第2実施形態の使用は、使用されるエネルギの波長と
同程度の直径を有した放射リング内に建設的干渉スポットを生成し得るけれども、建設的
干渉スポット(DEP)の厚さは、単一のエネルギエミッタの厚さよりも小さくなること
はない。非常に高い周波数の波(300GHzなど)が使用された時には、この厚さは、
DEPの直径よりも大きなものとなる可能性があり、生成されるDEPを、米粒又は縫い
針に似た形状とする可能性がある。DEPによって処置されるべき3次元領域が、対称的
である必要があって、エネルギエミッタのサイズよりも小さなものである場合には、直交
リングを追加することができる。この状況は、図16に図示されており、16-2は、D
EP16-2を生成する第1HETリングである。第2の直交HETリングが、16-3
で示されており、これは、16-4においてDEPを生成する。これにより、それらの中
心ポイントで交差しているとともに、対称的であり、すべての3次元で使用されるエネル
ギの波長と同程度のサイズでしかない、互いに垂直な2つの米粒形状の又は縫い針形状の
DEPsが生成されることとなる。よって、オーバーラップしたエネルギポイントでのエ
ネルギ強度は、オーバーラップしていないDEP領域の他の任意の位置でのエネルギ強度
の約2倍となる。他の角度とされた追加のリング(16-5によってラベル付けされたリ
ングなど)を利用することによって、同じ交差ポイントでオーバーラップするさらなるD
EPs(16-6で示すものなど)を生成することは、オーバーラップポイントでのエネ
ルギ強度と、生成されるDEPsの非オーバーラップ領域内のすべての他のポイントでの
エネルギ強度と、の間の差を、さらに増大させることとなる。結果として得られるエネル
ギ強度の差は、所望の効果を生成するには充分な強度である3次元的に対称なDEPsオ
ーバーラップポイントを提供し得るとともに、周囲の領域に対しては、有意な悪影響をも
たらさないことができる。通常では身体内を充分に貫通しない周波数の場合には、破壊的
干渉場は、身体を場内に挿入する前に、最初は低強度で設定することができる(さもなけ
れば、エネルギは、散乱及び吸収のために、身体内へと侵入して破壊的干渉を生成するこ
とは、決してできない)。患者の身体が所定位置にあって、建設的干渉領域が、処置対象
をなすスポットに位置した後に、強度を、所望の効果が得られる程度にまで、引き上げる
ことができる。リアルタイムフィードバックのための、身体内のスポットの温度監視は、
例えば、後述するように、MRThを使用して達成することができる。
【0112】
第3実施形態は、より単純でよりコンパクトな配置から構成される。この方法は、フー
リエ合成と重ね合わせ定在波(CIAと一緒にTiCSIを使用する)とを、別の態様で
組み合わせる。これは、BraggのX線顕微鏡に対して及び上述した第2実施形態に対
して、いくつかの類似点を有するが、Braggが行ったように、定在波及びフーリエ合
成の平面に対して垂直な角度で進行波を送出するのではなく、すべてのことが、単一のビ
ーム経路に沿った同じ単一の平面内において又は同じ単一の容積内において行われる。こ
の構成は、診断及び/又は処置システムにおいて、患者空間内における、健康な細胞に対
して損傷を生成し得る進行波を除去する。加えて、第2実施形態のように、患者の全周囲
にわたって配置された異なる角度からのビームを必要としない。その代わりに、約180
°離れた2つの「ビーム」によって生成される1つのビーム経路を必要とするだけであり
、これは、携帯型ユニットを構築するための道を開く。これに加えて、この第3実施形態
で使用される2つの「ビーム」は、フーリエ合成を可能とするために(Braggのシス
テムのように)異なる空間的周波数のビーム成分から構成されるにもかかわらず、上記の
第2実施形態のように、1つの時間的周波数又は1つの周波数バンドのみが使用されるこ
とにより、コヒーレンスが維持され、よって、Braggのシステムとは異なり、定在波
のみの生成及び使用が、バイアスの形成を除去する。これは、異なる空間的周波数のすべ
てが、所望の空間的周波数でパルス化されかつ位相変調器を使用して位相シフトされた単
一の時間的周波数又は単一の周波数バンドからなるビームに由来するからである。
【0113】
この実施形態を使用するために、図10に示すように、まず、DEPsを含むべき規定
された空間1000内に、1つのポイント(又は、複数のポイント)1010が規定され
る。その空間1000のエネルギプロファイル1020は、複素波とみなされてフーリエ
解析され、複数の正弦波を規定する値のフーリエ級数を生成する。2つのコヒーレントビ
ーム1030、1040が、位相、周波数、及び振幅、に関する変調器(図示せず、電気
的に制御されたニオブ酸リチウム結晶など)を介して、例えば光ファイバを通して伝搬す
ることにより、互いに反対の方向から、空間1000内へと向けられる。ビームどうしが
空間1000内でオーバーラップした時には、それらのビームは、計算されたフーリエ級
数の第1正弦波成分に対応した定在波成分ビーム1050を生成する。これと同時に、2
つの他のビーム1060、1070(位相が揃っており、ほぼ一致しているものとして、
図示されている)が、互いに反対の方向から同様に変調器を通過して空間1000内へと
例えばさらなる光ファイバを通して導入され、互いにオーバーラップすることにより、計
算されたフーリエ級数の第2正弦波成分に対応した第2定在波成分ビーム1080を生成
する。これは、例えば光ファイバビームコンバイナによって、フーリエ級数から一緒に加
算されるべき存在している正弦波成分(100個~1000個の成分)と同じだけの多数
組をなすビームに関して、同時に繰り返される。光ファイバビームコンバイナの作用は、
すべてのこのような定在波成分ビームを、単一の「複合ビーム」へと、結合させることで
ある。
【0114】
さらなる明確化のために、反対向きに伝搬する進行波ビームからなる各対は、それらビ
ームどうしが空間1000内で定在波としてオーバーラップした時には、フーリエ級数の
正弦波成分ビームを生成する。これらの成分ビームは、(TiCSIを使用して)生成さ
れた他の成分定在波ビームに対しての、それらの位相位置を調整するために必要に応じて
変調され、それらのすべてが互いに重ね合わされた時に、上記の「複合ビーム」を生成す
る。これにより、最初に規定された複素波のフーリエ合成が生成される。これに代えて、
好ましくはないが、すべての構成ビームを結合させるために光ファイバを使用する代わり
に、多数のビームスプリッタを直列で使用して、多数のビームを、所望の単一ビーム経路
内へと導入することができる。そのような1つ又は複数の複合ビームを、異なる選択され
た領域を順次的に又は同時的に処置するために、身体内の規定された空間内に生成するこ
とができる。
【0115】
この第3実施形態を実施するために、いくつかの異なる構成を使用することができる。
これらの構成は、以下の基本的な各ステップを実行しなければならない。
1.患者の各側方において複数のビームを作製すること(「各側方」の指定は、任意であ
り、「上方及び下方」によって、あるいは、身体の周囲の任意の対向した位置によって、
置き換えることができる)。
2.規定されたフーリエ成分の各パラメータに従って、複数のビームのそれぞれを個別的
に変調すること。
3.患者の一方の側方において変調ビームどうしを再結合させて、ある向きに進む単一ビ
ームを形成するとともに、患者の他方の側方において変調ビームどうしを再結合させて、
反対向きに進む単一ビームを形成すること。
4.それらビームを互いに反対の方向からオーバーラップさせて、「複合ビーム」を形成
し、これにより、処置されるべき患者内の空間内にフーリエ合成を生成すること。
5.患者の身体内の異なる領域に対応するために、別々の複数の複合ビームを同時に使用
することにより、あるいは、単一の複合ビームを複数のビーム経路内において一度に順次
的に使用することにより、異なるビーム経路に沿って必要に応じて繰り返すこと。
【0116】
これは、レーザによって生成されたものなどの光ビーム、ファイバ光学系、プリズム、
及び/又は、ホログラフィック光学素子(HOE)、の使用を図示している図17におい
て、さらに示されている。マイクロ波などのRFビームを使用する時には、導波管を、フ
ァイバ光学系の代わりに使用することができる。図17は、少なくとも1つのレーザを含
むモジュール1702の使用を図示しており、その少なくとも1つのレーザは、光ファイ
バ1706内に組み込まれた光ファイバレーザとすることができる、あるいは、光ファイ
バ1706を通して1×2光ファイバビームスプリッタ1708へと向けられるレーザダ
イオード1704などの外部レーザとすることができる。出力ビームのうちの1つ171
4は、システム取付バー1740を横断する光ファイバ1726を通して、患者の身体1
700の第1の側方(図では右側方)上のモジュール1728内で使用されるように向け
られる。
【0117】
ビームスプリッタ1708から出た他方のビーム1712は、多数(使用されるべきフ
ーリエ成分と同じだけの多数)の出力ビームを生成する別の光ファイバビームスプリッタ
1716へと向けられる。必要に応じて、複数の光ファイバビームスプリッタをカスケー
ド接続することができ、所望と同じだけの多数のビームを生成することができる。各ビー
ムは、別個のフーリエ成分を生成するために使用される。ファイバは、好ましくは、シン
グルモードの偏光保持ファイバである。ビームスプリッタ1716の出力ファイバは、フ
ァイバ束1716の端部でアレイを表すものとして図示されたものなどのファイバ束へと
組み立てられる、あるいは、複数の個々のビームのアレイを生成するような順序付けられ
たファイバアレイ配列を生成するために行列内に取り付けられる。これに代えて、レーザ
アレイを、構成要素1704~1716の代わりに、複数ビームアレイを生成するために
使用することもできる。あるいは、単一レーザのビームを、変調器アレイ1718を通過
する前に、拡大してコリメートすることができる。いずれにしても、複数の別個のビーム
が、アレイ配列内で生成される。1718は、変調器アレイへと入る各ビームに対して1
つの変調器を有した電気光学変調器アレイを図示している。ここで、各ビームを、所望の
フーリエ成分の1つに対応した定在波を形成するために使用されるビーム成分を形成する
ために、個別に変調することができる。変調器アレイ1718を出たビームは、その後、
すべてのビームを単一ビームへと結合する光ファイバビームコンバイナ1720のファイ
バ内へと向けられることができ、これとともに、新しい単一ビーム内の各ビームは、その
新しい変調プロファイルを保持する。コンバイナ1720を出たビームは、拡大されてコ
リメート光学系1722を通過し、これにより、コリメートされたビーム1724を形成
し、このビーム1724は、患者の第2の側方(図では、左側方)へと移動する。モジュ
ール1728内の構成要素1730、1732、1734、1736は、モジュール17
02内のそれらの対応部材と同じ機能を果たす。それらは、上述したように、患者の第1
の側方(図では、右側方)へと移動するビーム1738を生成する。光ファイバコンバイ
ナ(1720又は1730など)を使用する代わりに、高効率(好ましくは、重クロム化
ゼラチン(DCG)又はフォトポリマーによって形成された)ホログラフィック光学素子
(HOE)又はプリズムアレイを使用して、変調器アレイ(1718又は1732)を出
るすべてのビームを単一スポットへと再指向させ得るとともに、別のHOEをそのスポッ
トで使用して、すべてのビームを単一の共線ビームへと結合させることができる。
【0118】
複合ビームが形成された後に(双方向からの成分ビームのオーバーラップによって)、
所望の位置で患者内にDEPを生成するために、患者を、複合ビーム内の適正な位置へと
移動させることができる。必要な位置決めのために、ユニット全体(1740、1702
、1728)も、患者の周囲において回転させたり移動させたりすることができる。本明
細書で説明するように、複数のユニットを、必要最小限の患者移動によって患者の身体の
異なる領域の同時的な又は順次的な照射を可能として時間を節約するために、一緒に結合
しておくことができる。複合ビームのサイズは、必要に応じて変更することができ、これ
により、2つの対向する成分ビームのそれぞれ内において調節可能なズームレンズを使用
することなどの従来の光学技法を使用してそれらを両方とも同じサイズに維持することに
よって、身体内の異なるサイズの領域を照射することができる。
【0119】
異なる領域の照射時に必要とされる患者移動を、さらに減少させるためにあるいは除去
するために、(互いに反対の方向から来る)各成分ビームを、従来の走査部材を使用して
走査することができ、これにより、プリズムアレイ又はHOEにビームを向けて各ビーム
をその新しい位置に再方向付けすることができる。このようにして、患者の移動を必要と
することなく、身体の任意の領域を、任意のサイズで照射することができる。これは、例
えば図18において見ることができ、1800は、成分ビーム(図17における1724
など)であり、1810は、ガルバノ又は電気光学X-Yスキャナなどのビームスキャナ
であり、1820は、プリズムアレイであり、あるいは好ましくは、HOEであり、その
場合、HOEは、HOE上のどこに着地したとしても、ビームが最初の成分ビーム180
0に対して平行な方向において患者に向かって曲がって移動するように、ビームを曲げる
【0120】
複数のユニット(各ユニットは、1740、1702、1728などの構成要素からな
る)の使用は、異なる角度で患者の周囲に配置することができる。例えば、空間内におい
て薄いディスクのような形状のDEPを各ユニットが生成する3つのユニットを使用する
ことができ、各ユニットは、それぞれ生成されるDEPディスクが、他の2つの生成され
るDEPディスクに対して垂直になるように(各ディスクは、X軸、Y軸、又はZ軸のい
ずれかに対して平行な方向に配向される)、配置される。これらDEPディスクどうしの
交点は、空間内において、生成されるDEPsの他の領域内におけるエネルギよりもはる
かに強いDEPポイントをなすこととなる(本明細書で説明するように、CIAを使用す
ることにより)。この高エネルギポイントは、意義深い態様で身体組織に影響を与えるの
に充分なエネルギを有した唯一の領域とすることができ、これにより、3次元のすべてに
おいて、使用されている波長と同じくらい小さい領域を処置することを可能とする。空間
内でオーバーラップするDEPディスクを形成する2つのそのようなユニットだけを利用
することは、診断及び/又は処置のための充分なエネルギを有した、空間内のポイント領
域ではなく、線を生成することとなる。異なる波長を、異なるサイズのDEPsを形成す
るために使用することができる、及び/又は、1つ又は複数のビームのビームサイズを、
任意の要求された身体領域の形状及びサイズに適応するように調整することができる。
【0121】
したがって、DEPsが必要とされる1つ又は複数のポイントは、フーリエ合成からの
建設的干渉によって生成されたDEPsを含むこととなり、他方、空間1000内の残り
の領域は、破壊的干渉によるDECsを含むこととなる。BraggのX線顕微鏡のよう
に、フーリエ級数の各正弦波は、2つの波の干渉によって生成されるが、ビームは、Br
aggが利用したように最終的なフーリエ合成平面の外側の平面から来るのではなく、最
終的なフーリエ合成定在波パターンと同じ平面内に又は同じ容積内にある。その結果、空
間1000の外側の空間には、健康な細胞に損傷を生成させる進行波は、一切存在しない
【0122】
異なる時間的周波数の進行波を使用しておりそのため時間の一部の間だけDEPs及び
DECsの適正なパターンを生成する第1実施形態の配置とは異なり、この実施形態にお
ける及び上述した第2実施形態における正弦波成分は、静止した定在波であり、したがっ
て、時間の100%にわたってDEPs及びDECsを生成する。したがって、第1実施
形態とは異なり、非常に強力なエネルギビームを使用したとしても、バイアスが生成する
ことがなく、DECsの領域においては、健康な細胞に対する損傷は、一切起こらない。
患者の診断及び/又は処置システムにおいて使用された時には、ビームは、身体の外側に
由来することができ、大きな又は非常に狭い共線ビーム径を有することができ、図11
示すようなコンパクトで開放的なプロファイルを有した診断及び/又は処置システムによ
って、そのビームに沿った特定の1つ又は複数のポイントの診断及び/又は処置を可能と
する。このより単純なシステムは、及び/又は患者は、患者内の異なるポイントを処置す
るために、異なる時間に異なる位置へと移動させることができ、これは、特に、ユニット
が、処置対象をなす細胞の座標を決定するための画像化技術(上述したようなもの)を含
む場合である。本明細書で開示する他の実施形態と同様に、多数のそのようなユニットは
(この第3実施形態において開示しているように)、患者を取り囲む円形平面を規定する
ために円などの配置へと組み立てることができる(図6のように)、あるいは、複数のユ
ニットは、図7のような円筒形の診断及び/又は処置領域を形成するようにして患者を取
り囲む多数の円形リングへと一緒に組み立てることができる、あるいは、正方形の、長方
形の、又は他の形状の、診断及び/又は処置領域を、図12に示すように構成することが
できる。
【0123】
HETを達成するために、他の構成が可能である。例えば、第4実施形態では、対向す
るエネルギ源を使用した以前の実施形態で使用された配置の代わりに、単一の複合波源(
上述したようなもの)を、対向するビームを送り返すための反射器と共に、使用すること
ができる。位相変調器は、反射ビームがミラーを出る時に反射ビーム全体の位相を変化さ
せて、別個の複合波源によって生成されるであろう位相前面を与える。これに代えて、第
5実施形態では、変調されていない反射ビーム(平面反射器からのものなど)を使用して
、複合ビームの成分を適切に変調することにより、必要とされる正弦波的に変化するビー
ムを生成することができ、平面反射器によって反射される場合にはそれ以上の位相変調が
行われないことを考慮することができる。これらの第4及び第5の実施形態は、また、図
11に図示したような配置で使用することもできる。
【0124】
第6実施形態は、周波数がわずかに相違した2つのオーバーラップする共線ビームを使
用する。最初は、それらは、位相がずれたものとされ、大きな破壊的干渉を生成する。し
かしながら、周波数の相違は、ビームどうしを最終的には位相合わせさせることとなり、
これにより、建設的干渉を生成して、最終的には、さらに離れたところでは、再び位相が
ずれたものとされる。
【0125】
その結果、生成されるものは、同等に大きな破壊的干渉領域によって(建設的干渉領域
の前後が)囲まれた、1つの建設的干渉領域である。各領域の長さは、使用される周波数
、総経路長さ、及び周波数どうしの間の差に依存する。
【0126】
第2、第3、第4、第5、及び第6の実施形態は、また、処置対象をなす選択された領
域へと出入りするX線又はガンマ線ビームからの副次的損傷を除去するために、X線及び
ガンマ線放射線療法と共に使用することもできる。放射線が、よりコヒーレントであれば
あるほど、所望の干渉パターンを形成するのに有利である。コヒーレントX線は、例えば
米国のスタンフォード線形加速器センタにあるような硬X線自由電子レーザ源を使用した
Linacコヒーレント光源(LCLS)によって、形成することができる。コヒーレン
トガンマ線の充分な強度を、広帯域ガンマ線ビームからフィルタリングし得る時には、あ
るいは、コヒーレントガンマ線源(「graser」)によって生成し得る時には、それ
らは、HETに関しても使用することができる。例えば、ビーム(質量中心)基準枠内の
レーザ光子のエネルギがmcを超えた時には、強レーザ場内の相対論的電子-陽電子対
の誘導性コヒーレント消滅のプロセスを利用することができ、γ線光子のコヒーレント誘
導生成が可能となる。
【0127】
本明細書で開示する発明は、任意のタイプの波で動作するように設計することができる
。これには、従来の電磁波、音響波、圧力波、及び、物質波さえもが、含まれる。任意の
タイプの波生成器を、本発明で使用するための波源として利用し得るけれども、いくつか
の波源は、高度なコヒーレンス、制御された指向性、等を提供する能力の関数として、他
のものよりも優れた性能を発揮することとなる。レーザ照射された光ホログラムは、正確
な位相及び角度情報の再現によって、3次元空間の任意の場所で、波、光線、ビーム、及
び光ポイントを、正確に再構成するために必要なすべての融通性を提供する。したがって
、本明細書で開示する本発明の実施形態は、従来から利用可能なレーザ及び光学系を使用
して、光学領域において容易に実装することができる。例えば、赤外及び近赤外のレーザ
ビームは、700nm~1ミクロンという程度の直径を有したDEPsを生成するために
使用することができ、個々の細胞(癌幹細胞など)又はそれらのサブコンポーネントを、
処置又は破壊する能力を提供する。上述したように、ビームが1つ又は複数の建設的干渉
領域へと到達するまではビームが破壊的干渉の状態にあるという事実は、吸収という問題
点及び散乱という問題点を除去し、よって、そのような短波長ビームの身体内への浸透を
制限する。本明細書で開示する技術は、そのような波が身体内を容易に通過して、本明細
書で要求されるようにして互いに干渉することにより、RF及びX線の周波数範囲におけ
る医療応用に関して非常に有用となる。
【0128】
最適な性能のためには、本発明による使用のために必要なRF放射パターンを生成する
ための好ましい方法は、精密なビーム形成及び放射が可能であるホログラフィックRFビ
ーム生成器であって、好ましくはサイドローブ又は高次数を有していない複数の同時的な
球面波又は平面波を生成するホログラフィックRFビーム生成器、を使用することを含む
こととなる。点波源由来の球面波ではなく、平面波を使用することは、動作可能ではある
が、各アンテナ(又は、小さな球面波源を使用する場合には、RFレンズ)が、患者と同
じくらい大きくなければならないため、より大きなシステムが必要とされることとなる。
真にホログラフィックであるためには、そのような電子的RFホログラムは、好ましくは
、放出される波長と同程度のあるいはそれよりも小さな個々のリアルタイムプログラム可
能なエネルギエミッタを有するべきであり、フィルムホログラム上の干渉スポット(「フ
リンジ」と称される)と同等の各エミッタは、それに対して隣接した他の放出波の位相に
対して相対的に任意の所望の位相を有した波を放出することができなければならない。
【0129】
減少したサイドローブを有した指向性ビームを生成するように設計された、多くのRF
放射源及び最適化されたアンテナ構成を、本発明によって使用することができる。しかし
ながら、RF波を生成するために利用されている現在の方法及び装置は、やや限定的であ
る。
【0130】
ミリメートルサイズの素子を有したアンテナアレイに対しての、RF信号の従来のルー
ティング及び分配は、損失、インピーダンス整合、高次モード、ならびに、ケーブル及び
ケーブルコネクタのサイズ、などの伝送線路特性に重大な問題点をもたらすこととなる。
従来のデジタルビーム形成アレイでは、アレイ全体の局所発振器の振幅及び位相の無関係
な変動に起因するチャネル同期誤差により、有効性が低下し得る。このような誤差は、ま
た、デジタル-アナログ変換器内の非線形性、クロックジッタ、あるいは量子化誤差、に
よっても発生する。加えて、大電力アンプ内の固有の非線形性は、相互混合及び相互変調
を導入し得るものであって、隣接チャネルのリークをもたらし得る。現在のRFアンテナ
は、現在よりもはるかに小さくしたり密集させたりすることができないものであり、それ
は、アンテナどうしの間において電磁干渉(EMI)が発生し、ビームの制御性が低下し
てしまうからである。加えて、ケーブルを近づければ近づけるほど、ケーブルは、ユニッ
トとして重くなり、発熱及び電力損失の原因となってしまい、他方、細いケーブルでは、
より「損失が大きくなってしまう」。各ケーブルは、また、電気的に非平衡な電流を生成
するため、各アンテナに関して、「バラン」(非平衡状態から平衡状態への、電子的な変
換器)を使用する必要があり、より多くのスペース(及び、重量)を必要とするとともに
、より多くの電力を使用することとなり、アンテナアレイの小型化及び近接化に関してさ
らなる限界がある。ケーブルコネクタも、また、どれだけ小さくできるかに関して、限界
がある。
【0131】
本発明で使用するために必要な電子的RFホログラムアンテナシステムを製造するため
の1つの方法は、複数のビームを生成するためにビームスプリッタアレイを照射するよう
に向けられたメーザアレイ又は単一メーザを利用することである。各メーザで生成された
RFビームは、RFホログラムビーム変調器/ダイレクタを照射して、変調器/ダイレク
タのアレイを形成することができ、これは、例えば患者の周囲に円形配置で配置されて、
必要な干渉パターンを生成することができる。現在のメーザ設計の進歩により、コンパク
トな室温メーザの製造が可能となっている。例えば、2012年には、国立物理研究所と
ロンドンのインペリアルカレッジとの研究者が、ペンタセンをドーピングしたp-ターフ
ェニルから作られた新しい結晶を使用して、室温で動作するとともに磁場を必要としない
、そのようなメーザを製造した。
【0132】
必要とされるホログラフィックビームモジュレータ/ダイレクタを構築するための1つ
の方法が、図13Aに図示されている。RFビーム1315は、RF二重プリズム配置1
335へと送出され、このRFビームは、直交入射で又はほぼ直交入射で微小電気機械シ
ステム(MEMs)デバイス1365上へと、全内部反射(TIR)によって反射される
。プリズム1335は、例えば、RF波を屈折させるルネブルグレンズで使用されるのと
同じ材料から形成することができる。この新しいデバイス1365は、MEMsデバイス
の画素アレイ1367内の各画素から反射されたビームの位相及び角度を変化させること
となり、それによって患者のROIを照射する。アレイ1367内の画素は、使用されて
いるRF波長と同程度のサイズで形成することができる、あるいは、より高い解像度のビ
ーム形成及び制御のために、はるかに小さいサイズで形成することができる。1つのタイ
プのMEMsデバイスは、インクジェットプリンタ、オートフォーカスレンズ調整器、な
らびに、MRI及びCTスキャナ内の精密な患者移動器、において使用される種類のもの
などの、圧電アクチュエータのアレイから形成することができる。MEMsデバイス13
65内のアレイ1367内の各アクチュエータ画素は、石英、セラミック、ニオブ酸リチ
ウム、タンタル酸リチウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸バリウムナトリウム(多くの場
合、バナナと称される)、あるいは、石英又はセラミックと比較して所与の電圧で非常に
大きな変位効果を生成するポリフッ化ビニリデンのようなポリマーなどの材料から形成す
ることができる。電圧が印加された時には、アクチュエータの画素は、反射ビームに対し
て平行な方向に延び、あるいは、電圧が低下するにつれて収縮する。各画素反射器の下に
複数のアクチュエータを積み重ねることは、所与の電圧に対するアクチュエータの移動距
離を増大させる。アレイ1367の各画素の表面は、金属化されており、RF波に対する
反射性が高い。アクチュエータが膨張及び収縮した時には、画素面から反射されたビーム
は、相対的な位相シフトを受ける。その結果、アレイ1367に対して印加された複雑な
電圧パターン(図の右下に図示されているように)により、これらの画素は、フィルム上
に記録された反射ホログラムから反射する時に光ビームがそうであるように、反射ビーム
全体にわたって複雑な位相プロファイルを提供することができる。他のタイプのアクチュ
エータを使用することもできる。例えば、個別的にアドレス指定される電磁場によって駆
動されるソレノイドアクチュエータアレイを、同じ目的を達成するために、使用すること
ができる。
【0133】
これに代えて、図13Bに示すように、例えば数十万個の又は数百万個の10ミクロン
サイズのミラー1377(より大きなサイズも使用可能である)からなるDMD空間的光
変調器1366などの、別のタイプのMEMsデバイスを、新たな方法で使用することが
でき、図では、2つの異なる角度位置の間で揺動する2つのミラーだけが図示されている
。本出願の発明者は、その現在の2つの限界位置どうしの間の任意の所望位置でミラーを
停止させる能力を提供するために、上述した圧電アクチュエータ1388の修正バージョ
ンと組み合わせることによって、このデバイスの修正を提案する。これにより、全体的な
角度シフトを生成するためにより多くの画素を必要とする隣接画素どうしの間の位相遅延
を生成する必要がなく、広範囲の角度にわたって各画素から来るビームの角度の独立した
変化を可能とすることとなる。これは、DMDミラー1377の各可動コーナーの下に配
置された各スプリング先端1399の下に圧電アクチュエータ1388を取り付けること
によって、達成することができる。このようにして、通常は2つの位置を有したデバイス
としてしか機能しないDMDミラー1377が、一方の位置又は他方の位置へと反転した
時には、それは、下側の圧電アクチュエータ1388のプログラム可能な伸長によって制
限された選択された高さへと着地することとなり、ミラー1377及びその反射ビームの
プログラム可能な特定の角度位置制御を提供することとなる。提案したいずれかのデバイ
ス(図13A又は図13Bに図示されているように)により、RFビームは、好ましくは
、所望の一組をなす複数の画素位置と、別の組をなす複数の画素位置との間の変化時には
、連続的に移動するビームの生成を避けるために、パルス化されることとなる。
【0134】
患者内で必要に応じてEMの建設的干渉及び破壊的干渉を生成するために本発明で使用
されるべき電子的RFホログラムアンテナシステムを製造するための好ましい方法は、デ
ラウェア州ニューアークのデラウェア大学のDennis Prather博士らによっ
て開発されたシステムに基づく送信機(Tx)アンテナアレイを使用することを含む。
【0135】
彼らのシステムは、10Gb/秒という能力を有した将来の5G携帯電話通信ネットワ
ーク用に開発された。このようなアンテナシステムは、同じくデラウェア州ニューアーク
のPhase Sensitive Innovations, Inc.で開発中であ
る。Pratherシステムは、リアルタイムで制御された精密に位相変調されたレーザ
ビームを生成し、これと同時に、レーザビームを、レーザ光の位相特性及び振幅特性を模
倣したRF波へとダウンコンバートして、空間的にコヒーレントなフェーズドアレイフィ
ードネットワークを形成することによって、上記の問題点を解決する。
【0136】
このシステムには、量子化誤差及び非線形性を最小化するためのアナログフロントエン
ドが含まれており、アレイ全体にわたって空間的なコヒーレンスを維持するフラットなフ
ェーズドアレイアンテナのフォームファクタによって俊敏なデジタルビーム形成を提供し
ている。フェーズドアレイ内において小さな緊密結合ダイポールを使用することにより、
プロファイルの問題点やスキャンブラインドネスを引き起こすことなく、また、複雑なバ
ラン操作を必要とすることなく、超広帯域の能力を提供する。このプロファイルは、19
65年にHarold Wheelerによって最初に提案された「current s
heet array」設計を具現化したもので、振幅及び位相が制御可能な放射素子の
理想的な連続体に対して、最も近いものである。ホログラフ的にアンテナアレイを駆動す
るために必要な高密度のフィードネットワークの実装は、従来より、嵩張る複雑なインピ
ーダンス整合部品によって妨げられていた。Pratherシステムは、大部分の又はす
べての光学部品どうしの間において偏光保持光ファイバを使用して、光ファイバによって
給電されかつ緊密に結合したアレイを広範囲に使用することにより、この問題点を解決す
る。
【0137】
この設計は、本発明で使用し得るけれども、本出願の発明者は、ファイバ光学系を必要
とすることがなく、より単純で、よりコンパクトで、嵩張らず、重くなく、製造が容易で
あるような、代替的な光供給技法を提案する。この目的のためのPrather技法の使
用は、本発明の範囲内である。
【0138】
いずれの場合も、高出力で高直線性の光検出器(ダイサイズが、0.5mm×0.5m
mであるものなど)を使用して、レーザ光を電気信号へと変換し、アンテナ素子に対して
給電してRF放射を生成する。このようなシステムは、ほぼ40%のダイオード変換効率
でもって10GHzにおいて1W超の電力を連続的に出力し、50%超のダイオード変換
効率でもって低デューティサイクルパルスを使用して10Wというピーク電力を出力する
ことが示されている。素子あたりにつき最大で24dBmという放射電力を有したアレイ
が、実証されている。このようなアンテナアレイは、疾病の診断及び/又は処置のために
本発明の実施形態で使用されるべきRFエネルギ源として患者の周囲に配置されるように
、構成することができる。
【0139】
このホログラフィックRFアンテナアレイは、ミリサイズ(~2mm)のアレイ素子を
使用しているため、同時的マルチビーム形成、及び、リアルタイムでの正確な精密な位相
制御及び光線角度制御が可能である。アレイは、稠密アレイ構成でもって互いに取り付け
られた複数のダイポールアンテナ素子を使用する。従来的な電気ケーブル及びバラン(各
アンテナの電流を平衡化させるために使用されるもの)を使用した場合に遭遇するEMI
及び他の欠点を回避するために、Pratherシステムでは、フォトダイオードに対し
て取り付けられた細い光ファイバ(電気ケーブルの代わりに)を使用しており、これらを
、アレイ内のダイポールアンテナに対して直接的に取り付けている。光ファイバは、非常
に広い帯域幅(0~100GHz)を有し、実質的に損失がなく、EMIが発生せず、電
気ケーブルやコネクタと比較するとより細くてより軽量であり、さらに、光信号は常に平
衡性が取れているためバランが不要である。このシステムは、光ファイバを使用すること
により、レーザ、光学系、及び電子機器を、地上に配置可能としつつ、携帯電話通信シス
テムで必要とされるように、フラットアンテナアレイがタワー上に設置される。医療応用
では、構成要素どうしの間においてこのような大きな離間が必要とされないので、本出願
の発明者は、フォトダイオードの上に直接的に取り付けられた位相変調器アレイを有した
、よりコンパクトなシステムを使用する方法を考案し、これにより、光ファイバ光学系を
不要とした。
【0140】
好ましくは、このアレイは、クロストークを最小化するために、アクティブマトリクス
回路構成で対処することとなる。必要に応じて、フォトダイオードでの集光効率を最大化
するために、レンズアレイを使用することができる。2つの「注入ロック」ダイオードレ
ーザが、所望のRF周波数でパルスを発する光ビームを生成するために使用され、この光
ビームは、Pratherシステムのファイバを通して送出され(ここに提示された修正
されたシステムでは、空間を通して送出され)、RF放射を生成するためにフォトダイオ
ードによってアンテナダイポールで電気信号へと変換される。各ファイバは、各ダイポー
ルでのレーザの光信号の位相及び振幅の変調を可能とするための電気光学変調器を有して
いる。ここで提案されている現在の修正では、各フォトダイオードは、電気光学変調器を
有している。アンテナ素子が、使用されたRFエネルギの波長と同程度であるため、アレ
イは、従来のフィルムホログラムのように(リアルタイムで電子的に変化可能とされてい
ることを除いて)動作し、不要なローブ、高次数、及び迷走ビームを除去し、精密なビー
ムステアリングで複数のビームを生成することができ、さらに、位相シフトを適切に選択
することにより、所望の角度に向けられた正弦波を生成することができる。しかしながら
、携帯電話通信用に連続的な進行波を生成する携帯電話アンテナアレイシステム用途とは
異なり、HETビームは、空間内に所望の破壊的干渉領域及び建設的干渉領域を連続的に
生成し得るよう、静止した定在波を生成するものとされている。このことは、介在してい
る健康な細胞に影響を与えることなく、身体内のターゲット細胞及び/又はターゲットマ
クロ分子に対してエネルギを送達し得るよう、3次元空間内でのRFの建設的干渉及び破
壊的干渉をホログラフ的に生成するための融通性を提供する。
【0141】
以下においては、本発明のホログラフィックアンテナアレイシステム1300がどのよ
うにして作製されて使用され得るかについて、図13Cの図示を参照して、説明する。2
つの(好ましくはダイオード)レーザが利用され、これにより、2つのレーザからのビー
ムが一緒にロックされるように、一方のレーザ1310(マスタレーザ)のビームが、第
2のレーザ1320(注入ロックされたレーザ)内へと注入されシードされる。マスタレ
ーザ1310からのビームは、ファラデー回転子アイソレータ1330を通過し、これは
、システム内のどこにでもある光が、マスタレーザ1310内へと反射によって戻ってき
て、所望の信号を破損させることを防止する。ビームは、ビームスプリッタ1340によ
って分割される。ビームスプリッタ1340を出た1つのビーム1341は、ヌル-バイ
アスされたマッハ-ツェンダー干渉計(MZI)変調器1345へと向かう。MZI変調
器1345内の追加のビームスプリッタ(図示せず)が、干渉計(図示せず)の2つのア
ーム内へと入る2つのビームを生成する。両アームは、電圧制御されたニオブ酸リチウム
結晶などの電気光学変調器(図示せず)を含む。電気光学変調器は、2つのビームの相対
的な位相を変化させ、これにより、それらを互いに干渉させ、再結合されたビームに対し
て位相変調を導入する。RFシード発振器1325は、電気光学変調器を電気的に制御し
、これにより、ビーム上にRF周波数を重ね合わせてサイドバンドを生成する。
【0142】
生成された最初の最も強い2つのサイドバンドは、マスタレーザ1310の搬送周波数
に、RFシード発振器1325によって生成されたRF周波数を、加えたもの及び差し引
いたものに等しい。
【0143】
2つのビームは、マスタレーザ1310の搬送周波数と、搬送周波数からRF周波数を
差し引いた値に等しいサイドバンドとが、破壊的干渉によって抑制(ヌル化)されるよう
に、MZI変調器1345において干渉するようなものとされる。この抑制を補助するた
めに、追加の光学フィルタ(図示せず)が使用される。マスタレーザ1310の搬送波信
号にRF信号を加えた周波数に等しい周波数でMZI変調器1345から出力される残り
のビームは、プロセスから20dBダウンする。このビームは、サーキュレータ1350
に入り、サーキュレータを出て、注入ロックされたレーザ1320に入り、入射ビームと
同じ周波数(マスタレーザ1310の搬送周波数に、RF周波数を加えた周波数)で強制
的に発振させられ、ビームスプリッタ1340を出た第2ビーム1342の強度に一致す
るように信号を増幅させる。その結果、注入ロックされたレーザ1320を出るビームは
、マスタレーザ1310と同じ特性(線幅及び包絡線関数)で発振し、そうでなければ2
つのビームが2つのレーザ1310、1320から独立して生成された場合に存在するで
あろう異なる包絡線関数の畳み込みに起因するであろうノイズを除去する。その後、サー
キュレータ1350は、注入ロックされたレーザ1320を出たビームが、サーキュレー
タ1350を出て、偏光回転子1344及び偏光ビームコンバイナ1355へと向かうこ
とを可能とする。サーキュレータ1350内の経路長さは、(建設的干渉のために)光が
、サーキュレータ1350を出て、注入ロックされたレーザ1320へと向かうことを許
容しつつ、MZI変調器1345を出るビームのうちの、サーキュレータ1350を出て
から偏光ビームコンバイナ1355へと直接的に向かうであろう任意の光に対して破壊的
干渉を引き起こす。また、建設的干渉のために、サーキュレータ1350内の経路長は、
注入ロックされたレーザ1320からのビームが、サーキュレータ1350を通過して偏
光ビームコンバイナ1355へと向かうことを可能とする。ビームスプリッタ1340及
びミラー1343から来るビーム1342は、偏光回転子1344によってその偏光が9
0°回転された後、偏光ビームコンバイナ1355へと入り、そこで、サーキュレータ1
350から来るビーム(注入ロックされたレーザ1320から来たビーム)と結合する。
【0144】
偏光ビームコンバイナ1355を出るビームは、一方はマスタレーザ1310の搬送周
波数でのビームであり、他方はマスタレーザ1310の搬送周波数にRF周波数を加えた
(注入ロックされたレーザ1320から来る)ビームであるような、等しい強度の2つの
同軸的な互いに直交した偏光ビームから構成されている。この結合されたビームは、光フ
ァイバビームスプリッタ又は導波路ビームスプリッタ(回折ビームスプリッタ又はホログ
ラフィックビームスプリッタとすることもできる)などの、カスケードされた数のビーム
スプリッタ1360によって分割され、アンテナアレイ1300内に存在するエレメント
1395と同数だけの多数のビームを、アレイ状に配置された状態で、生成する。ビーム
スプリッタ1360からの各ビームは、変調器アレイ1370内の例えばニオブ酸リチウ
ム電気光学変調器へと向かい、その後、2つの重ね合わされたビームの偏光軸に対して4
5°で配向された直線偏光子1375へと向かう。
【0145】
偏光子1375からの各出力ビーム1387は、偏光子1375を通過した結果として
、3dBダウンした平行直線偏光ビームとなる。アレイ1370内のニオブ酸リチウム変
調器を駆動することは、それぞれ通過する2つの直交した偏光ビームの速度を、互いに相
対的に(10の係数で)変化させ、その結果、変調器アレイ1370を出る各ビームの偏
光楕円度を変化させる。直線偏光子1375を出る各直線偏光ビーム1387は、フォト
ダイオードアレイ1385内のフォトダイオードを照射する。アレイ1370内のニオブ
酸リチウム変調器に対して送出されたコンピュータ生成された電子変調信号は、線形偏光
子1375を出る出力ビーム1387の振幅及び位相を直接的に変化させる。その結果、
各ニオブ酸リチウム変調器1370/直線偏光子1375の組合せから来るビーム138
7の振幅及び位相を独立に制御することができる。各出力ビーム1387は、アレイ13
85内のうちの、アンテナアレイ素子1395どうしの間に接続されたフォトダイオード
へと向かう。任意選択的に、ビーム1387の直径がフォトダイオードよりも大きい場合
には、レンズアレイ1380を使用して、ビーム1387をアレイ1385内のフォトダ
イオード上へと集光することができ、これにより、何らの光も廃棄されないものとするこ
とができる。図の右下部分は、アレイ1385内におけるアンテナ素子1395及びフォ
トダイオードの拡大図を示している。
【0146】
アレイ1385内の各フォトダイオードは、「低周波」二乗検波器であり、そのため、
結果的に、所望のRF周波数である、2つの重ね合わされたビームの周波数どうしの間の
差(ビート周波数)のみに対して、反応することができる。個々の光ビームの基本周波数
は、それらに応答する光検出器の能力をはるかに超えており、そのため、それらは何らの
効果も有していない。その後、アレイ1385内の各フォトダイオードは、それが接続さ
れているダイポール1395内に、RF周波数で発振する電流を生成する。これにより、
ダイポール1395は、各ダイポール1395においてそれらの位相及び振幅が独立して
制御可能であるRF波をコヒーレントに放出する。生成されるRF波のすべては、アレイ
全体にわたって同期化されることとなり、このことは、従来のRFアンテナ設計及び機器
では達成することが実質的に不可能であったであろう。フェーズドアレイ内の素子は、回
折構造のように振る舞う。各素子におけるRF信号の振幅及び位相を制御することにより
、遠方フィールドにおける伝搬は、動的な光学的ホログラムフィールド再構成のように振
る舞う。これにより、アンテナアレイ1300は、本発明による使用のために所望される
任意の形態、位相、振幅、及び方向のRFビームを生成し得るRFホログラムのように振
る舞うことができる。
【0147】
アンテナアレイ1300は、平坦であっても湾曲していてもよく、複数のアンテナアレ
イは、図6及び図7に示すものなどのように、例えば診断及び/又は処置のために患者の
周囲に配置することができる。複数のアンテナアレイの各々は独立して動作することがで
きるけれども、それらのすべてを同じマスタレーザ及びマスタRF発振器に対してロック
することにより、ノイズを抑制することができる。これを達成するために、図13Dに示
すように、追加のビームスプリッタ1339は、マスタレーザ1310からのビームを、
各「スレーブ」アンテナユニットに対して送出し、これにより、スレーブユニット内の注
入ロックされたレーザをシードすることができる。マスタアンテナユニットからのRFシ
ード発振器は、また、図13Dに示すように、そのRF信号をスレーブユニットに対して
送出することができ、これにより、スレーブユニット内のMZI変調器をシードすること
ができる。
【0148】
コヒーレント波ホログラムアンテナシステムを使用することにより、指向性が高くかつ
高次モードやサイドローブを有していないかつ最も効率的で最高出力のRF波生成方法が
得られ、本発明を、大いに効果的なものとする。従来のフィルムホログラムは、ゼロ次の
非回折ビームと-1次の回折ビームとを生成するという欠点があり、このため、エネルギ
の無駄遣いとなり、意図した方向からエネルギを除去するとともに、エネルギが望まれて
いない方向へと無用のエネルギを送出していた。これは、医療処置時には、特に危険なも
のとなり得る。しかしながら、このホログラムは、回折ホログラムのように振る舞うだけ
であることにより、実際には自己発光型コンピュータ生成ホログラム(CGH)であり、
各エネルギエミッタ1395から来るエネルギの位相が、回折なしの位相変調器によって
制御されているので、ゼロ次又は-1次の放射を生成しない。隣接する伝搬ビームどうし
の間の相対的な位相関係は、形成されるビーム角度を制御する。
【0149】
エネルギビームが、破壊的干渉状態にない患者の身体を通過するときはいつでも、異な
る特性(異なる屈折指標、異なる導電性等)を有した異なる材料(軟組織、緻密な組織、
血管、血液、筋肉、骨等)の存在のために、及びそれらの間の境界のために、散乱及び反
射が、様々な場所で起こり得る。このようなビーム経路の偏向が起こった時には、結果的
に発生することとなる、意図された干渉パターンの潜在的な変化が、ならびに、生成され
得る建設的干渉及び破壊的干渉に関しての、位置及び程度の潜在的な変更が、所望される
理想的な干渉効果の正確な生成を損なわせてしまいかねない。本発明においては位相情報
を保存するコヒーレント波を使用することのために、これを補正することができる。この
補正を達成するために、本出願の発明者は、「チャネル状態推定」と称される携帯電話通
信ネットワークのために開発された技法の使用を提案する。
【0150】
より新しい携帯電話伝送技術は、特定のユーザのために意図された情報を、充分な強度
で、かつ、周囲の静的な障害物及び変化する障害物からの干渉を最小化しつつも、そのユ
ーザに対して直接的に伝送することを目的としている。車両、建物、人、及び他の障害物
は、RF信号を、散乱及び反射することができ、これにより、その意図されたユーザに対
しての信号強度を低下させるとともに、他のユーザとの干渉を引き起こす。ユーザとこれ
らの障害物の多くとは、移動し得るものであるため、この混乱は、継続的に補正されなけ
ればならない。これを達成するために、送信機と受信機の間の通信チャネルは、その「状
態」を決定するために繰り返し的に監視される。この情報は、信号が送信機から受信機へ
とどのように伝搬するかを記述しており、例えば、散乱、反射、フェーディング、及び、
距離に伴う出力減衰、の複合効果を表している。この「チャネル状態情報」は、ユーザの
みに向けられていて他のどの方向にも偏向されないことが想定される既知のポイントから
、毎回単一のパルスを送信することによって、1秒間に何度もチェックされる。送信機と
受信機との間の空間の周囲における様々な位置に配置された受信アンテナは、不要な迷走
信号の存在を検出することができ、散乱及び反射の存在を示す。この情報は、任意の所与
の瞬間において信号の散乱及び反射を特別に補正し得るよう、送信パターンを変更するた
めに使用することができる。
【0151】
この技術は、散乱及び反射を同様に検出するために、送信アンテナと一緒に患者の周囲
に受信アンテナを配置することによって、本発明の実施形態へと組み込むことができる。
フーリエ解析は、迷走信号の方向及び強度を決定することを可能とする。この情報で武装
することにより、次の瞬間に送信されるべき信号は、破壊的干渉によって以前に検出され
た散乱及び反射を相殺するために送信パターンに対して負の位相及び振幅補正を追加する
ように、変更することができる。
【0152】
使用される周波数に応じて、ビーム経路内には、患者の動き、呼吸、心拍、臓器の動き
、血流の変化、内部の液体及び気体の流れ、等に基づく多くの変化があり得るため、患者
の身体内の特定ポイントに対してRF波を送達する時には、監視及び補正が必要となり得
る。これは、従来の受信アンテナを使用して比較的低いRF周波数(100MHz~20
0MHzなど)で達成することができ、それぞれは、「AD」コンバータと、RF信号の
振幅及び位相を取得するI/Q受信機と、に続いて、すべてのポイントで複雑なフィール
ド情報を取得するためにクロックと同期して、リアルタイムFFT(高速フーリエ変換)
へと続く。その後、負の位相及び1/振幅を有した複素共役(逆信号)が、送信プロファ
イル補正信号として作製され、これは、送信アンテナへと送出され、これにより、次の送
信パルス上での散乱及び反射を相殺するものとされ、よって、受信アンテナでの一点再構
成が得られる。
【0153】
図6において患者の周囲のリングを構成している長方形部分などのアンテナは、送信ア
ンテナ部分と受信アンテナ部分とを交互的に構成することができる。しかしながら、ギガ
ヘルツ領域の高周波数では、誤った方向に進行している受信ビームの強度及び方向を決定
するために必要なフーリエ解析を、リアルタイムで充分に迅速に実行することは、非常に
困難である。しかしながら、デラウェア大学のPratherらが5G携帯電話通信での
将来的な使用のために開発した受信アンテナシステムを併せて使用すれば、これを達成す
ることができる。ほぼ瞬時的にフーリエ解析を行うために、Pratherシステムは、
受信アンテナアレイと、受信したRF信号を光波長へとアップコンバートする方法と、を
利用することにより、リアルタイムでの光フーリエ変換を可能として、高周波数の迷走ビ
ーム情報をリアルタイムで送信アンテナに対して提供する。
【0154】
受信アンテナシステムは、空間的に分解されて統計的に独立した複数の検出ポイントか
らなる連続体を提供しなければならず、これにより、検出素子の配列内において、各信号
が来た位置を一意的に決定することができる。この動作は、画像化プロセスに相当し、対
応する検出器アレイに対してのRF環境の空間的マッピングを実行するために、フーリエ
光学の概念に依存するアップコンバートフェーズドアレイを使用して実現することができ
る。これは、受信したすべてのRF信号を、環境内の原点に基づいて特定の検出器上へと
空間的にマッピングすることにより、RFシーンを文字通り「画像化」することにより、
画像化システムに相当する。RF信号環境を「画像化」するこのプロセスでは、空間的な
分離が達成され、これは、異なる空間的位置に由来する信号どうしの相互作用を防止する
ことにより、隣接チャネル干渉及び同一チャネル干渉を軽減する。複数の信号は、異なる
検出器上へと最初に空間的に分離され、その後、受信信号として個別に処理されるため、
信号どうしの相互混合及び相互変調を軽減するように機能する。
【0155】
この能力を実現するために、本発明のこの構成要素のこの実施形態では、フェーズドア
レイ受信機システムを使用し、ここで、アレイ内の各素子は、受信したRF信号を光搬送
波のサイドバンドへとアップコンバートする光変調器に対して接続されている。この集合
的なアップコンバートの後に、光信号は、共通のファイバ束内へと集められる(ここで、
各ファイバの位置は、それがアレイ内で接続されているアンテナ素子の位置に対応する)
。サイドバンドは、搬送波からフィルタリングされて、自由空間へと発射され、これによ
り、各光検出器が空間的に一意の方向に対応している光検出器アレイ上へと、光学レンズ
によってその後に「画像化」される場所においてすべての光ビームがオーバーラップする
ことが可能とされる。光学レンズは、光学的フーリエ変換を生成し、アレイアンテナの開
口部全体にわたって複雑なRF信号を空間的に処理することを迅速かつ容易なものとする
。光学的フーリエ変換レンズを使用することにより、アップコンバートされたRF信号上
におけるすべての空間的処理は、アナログ/デジタル変換器を使用することなく、リアル
タイムで同時にかつ実質的に瞬時に実行される。そうすることで、システムは、RFビー
ムのほぼ連続体に対しての、潜在的に無制限のビーム帯域幅積によって光速でアナログ逆
フーリエ変換を文字通り実行する空間的プロセッサとなり、RF環境内のすべてのRF波
の空間的処理を可能とする。
【0156】
このシステムは、図14において、概略的に及びイメージ図形式で、図示されている。
各アンテナ素子1410のところには、低ノイズ増幅器があり、その出力は、統合された
マッハツェンダー干渉計(MZI)変調器に対して接続されており、アレイ1420を形
成している。レーザ1430は、光搬送周波数を有したビームであって各アンテナ素子1
410からの入射RF信号によって変調されたビームを生成し、各アンテナ素子1410
からのサイドバンドによってアップコンバートされた信号を生成する。変調後には、アッ
プコンバートされた信号は、軽量かつ低損失であるとともにすべてのチャネルの総経路長
さに一致するように精密に測定されてスプライスされた光ファイバ1440を通して、搬
送される。光ファイバに続いて、信号は、単一のニオブ酸リチウム製フォトニック集積回
路基板上にカスタム作製された低速光位相変調器アレイ1450を通過する。この変調器
アレイは、チャネルに対して個別に位相バイアスを適用するために使用されるとともに、
緩んだ光ファイバの音響的な、機械的な、及び熱的な摂動によって誘起されたランダムな
位相変動をリアルタイムで補正するために使用される。これらの位相変動を検出して補正
する手段は、自由空間での光学的プロセッサの一部として実装される。このようにして、
ファイバアレイ1440から出てくるサイドバンド光は、周波数ではスケールアップされ
ているがサイズではダウンしているアンテナ開口部において、RFフィールドを複製する
【0157】
搬送波抑制は、光学的バンドパスフィルタ(図示せず)の使用によって達成される。加
えて、搬送光は、偏光ビームスプリッタ1470を介して、各ファイバが市販の光検出器
アレイ1490内の別個の光検出器上へと画像化されるように拡大されたファイバアレイ
画像を生成するレンズ1480へと、向けられる。各ファイバのそれぞれの画像は、アッ
プコンバート変調器1420に対して供給する同じレーザから導出された大きなコリメー
トされたスポットによって、重ね合わされる。同じレーザからのものであること、及び、
緊密に一致した長さの光ファイバを通して移動した後に線形光検出器アレイ1490へと
到着したことにより、このレーザは、各ファイバ内の反射搬送光からの集束スポットと混
合し、アレイ1490内の各光検出器は、それぞれの別々の信号チャネルと、レーザスポ
ットからの共通の基準信号との間のビートを取得する。
【0158】
これらの光検出器1490の出力は、リアルタイム(200kHzのリフレッシュレー
ト)で、ファイバフィードネットワーク内の機械的/音響的位相変動を測定して補正する
ために使用される。反射された搬送波は、アレイを空間的に位相ロックするために使用さ
れるけれども、一方のサイドバンドからの光は、光学的バンドパスフィルタ1460を通
過し、自由空間1495内へと伝搬し続ける。そうすることで、すべてのアレイ素子14
40からの各ファイバを経た寄与は、それらが自由空間1495内を伝搬して膨張する際
に、オーバーラップする。この時点で、レンズ1496は、レンズ開口部内の光学的フィ
ールド上で空間的フーリエ変換を実行するために使用され、これにより、RFシーンを複
製するサイドバンドエネルギの画像をもたらす。
【0159】
光学的フーリエ変換は、画像を生成するカメラセンサ1498上へと入射し、このカメ
ラセンサは、RFエネルギがどこから来ているかをすなわち到着角度又は空間セクターを
、ならびに画像源の見かけの大きさを、表示するために使用することができる。本発明に
よるこのタイプのアンテナシステムの使用は、迷走ビームの検出を可能とすることとなり
、その消去を可能とする。それは、患者又はテレポート対象物の散乱プロファイルに関係
なく、電磁波又は音波によるHETのための所望の干渉パターンの生成を可能とすること
となる。
【0160】
上述したように、本明細書では、この技術は、任意のタイプの波に対して適用すること
ができる。EM波の代わりに音響波においてそれを利用する際には、音響トランスデュー
サアレイが、本明細書で説明したRF変調アレイに代えて使用されることとなる。
【0161】
HETによる疾病の検出及び処置
この特許出願は、主に、HETと、疾病の診断及び/又は処置におけるその使用とに関
する。HETは、周囲の細胞又は介在する細胞に影響を与えたり損傷を与えたりすること
なく、身体内の細胞及び分子に対して直接的に影響を与えるために使用することができる
。温熱療法(細胞の加熱)は、様々な容易にアクセス可能な疾病を処置するための充分に
確立された方法である。しかしながら、腫瘍又は他の疾病細胞の大部分は、容易にアクセ
ス可能ではない。HETは、非常にアクセスしにくい部位も含めて、身体内の疾病に関す
る温熱療法的処置を可能とする。本明細書で上述した、身体内の疾病を診断して処置する
ためのエネルギを使用する技法は、非常に小さな(mm)スケールにまで細胞及び分子に
対して強い所望の効果を有し得るものではあるけれども、多くの例においては、ターゲッ
トとされる診断及び処置は、ミクロスケールで又はサブミクロスケールで行われる必要が
あり得る(例えば、選択された癌幹細胞の検出及び根絶など)。加えて、正確な細胞位置
又は他の位置へとエネルギを向ける時には、精度を高める必要があり得る。しかしながら
、従来の方法では、処置する必要がある正確な細胞又は分子の位置を特定することは、多
くの場合、困難である。さらに、サブミリメートルサイズの細胞又は分子を検出又は処置
するために本発明を使用することは、また、身体を充分に貫通しないサブミリエネルギ波
長の使用を必要とする。このような小さな細胞及び分子をより正確に発見して処置するこ
とを補助するために、ナノ粒子を使用したナノテクノロジーを、本発明で使用することが
できる。それらを使用することにより、加熱(又は他のエネルギ効果)の領域を、より微
細なものかつより精密なものとすることができる。ナノ粒子の適正な使用は、テレポート
されたエネルギを熱へと変換することができ、あるいは、他の効果を効率的に生成するこ
とができ、これは、例えば、ナノ粒子のクラスタ化、腫瘍又は他の疾病細胞又は他の構造
体の加熱及び損傷、化学療法又は遺伝子治療などの化学物質の放出、もしくは、1つ又は
複数のニューロンの抑制又は発火あるいは酵素又はホルモンの放出などの身体内での何ら
かの他の特定反応の誘発、などの様々なミクロでの及びサブミクロでのタスクを達成する
ために使用することができる。アクセス可能な腫瘍内へと注入されたナノ粒子によって温
熱療法を使用することが、健康な細胞を傷つけることなく、腫瘍を選択的に死滅させるた
めの非常に効果的な方法であることが証明された。ナノ粒子の使用は、HET加熱の領域
がミリメートルの程度又はそれ以上などのずっと大きな領域であったとしても、検出能力
及び処置効果をナノサイズの領域へと集中させる。HETによって最も有用であるために
は、使用されるナノ粒子は、使用されるエネルギの波長によって非常に強く影響を受ける
(例えば、エネルギを吸収して加熱するなど)少なくとも1つの材料を、含むべきである
。様々な金属は、例えば様々なRF周波数を吸収することにおいて最適であり、他方、様
々な光吸収色素は、光の異なる周波数を吸収することにおいて最適である。
【0162】
温熱療法
1960年代以降、本出願の発明者を含む数名の研究者は、上述したような温熱療法と
称される薬剤を使用しない処置技法が、癌及び他の疾病細胞を死滅させ、また、タンパク
質及び細胞構造を損傷させて腫瘍を縮小させ、さらに、様々な他の疾病を処置又は治癒さ
せる、という独自の可能性を有していることを認識してその探求を開始した。この方法が
完成すれば、放射線療法又は化学療法よりも安全で効果が高くなる可能性があり、化学療
法や放射線療法と併用して効果を高めることも可能となる。
【0163】
細胞の温度を回復可能なしきい値を超えて上昇させる温熱療法は、古代(早くも紀元前
3000年)から癌を含む疾病の処置に使用されてきた。人体を加熱することが、治癒効
果を有していて、多くの病原体及び疾病を破壊することが知られている。通常、身体は、
細菌及びウイルスを死滅させるために熱を生成するけれども、健康な細胞は、影響を受け
ないか、あるいは、すぐに加熱の効果から回復する。43℃を超える局所的な温熱療法の
温度は、癌性腫瘍を除去するための効果的な処置であることが結論的に示されており、1
984年にはFDAの承認さえ受けている。さらに言えば、原発性の悪性腫瘍は、血液循
環が悪く、このことが、悪性腫瘍を温度変化に敏感なものとし、温熱療法が悪性腫瘍をよ
り効果的に破壊することを補助する。近年、腫瘍細胞を加熱した時には、腫瘍細胞の表面
上に熱衝撃タンパク質が放出され、通常は見ることができない腫瘍をT細胞が認識し得る
ようにすることにより、身体の固有の免疫システムが活性化されることが、発見された。
その結果、温熱療法は、また、身体の免疫システムを増幅することによっても、腫瘍細胞
を死滅させることを補助する。温熱療法は、温浴、ワックス封入、発熱誘導、加熱された
化学療法剤による四肢の局所灌流、ジアテルミー、高周波加熱、マイクロ波加熱、及び、
超音波加熱を含むいくつかの異なる方法を使用して実行されてきた。
【0164】
しかしながら、温熱療法が癌撲滅の万能薬であることが証明されていない理由は、健康
な細胞を加熱しない状態で又は加熱しすぎない状態で又はそのままとした状態で、必要な
量の熱を疾病細胞だけに選択的に適用することの困難さにある。容易にアクセス可能な癌
及び他の疾病細胞は、外部から適用された温熱療法によって容易に死滅させ得るけれども
、内部の腫瘍及び他の細胞を外部から加熱した場合には、どのような形態で加熱したとし
ても、身体内に熱勾配が発生し、健康な組織を広範囲に加熱することとなり、悪影響を伴
ってしまう。加えて、異なる組織位置で達成される温度は、組織密度及び他の特性の変化
に基づいて制御不能に変化するとともに、投与時間が長くなると予測できないほどに変化
する。
【0165】
温熱療法処置の有効性は、処置時に達成される温度と、処置の長さと、細胞及び組織の
特性とに関係する。
【0166】
温熱療法は、処置される領域が正確な期間にわたって厳密な温度範囲内に維持される場
合に、最良に動作する。しかしながら、組織特性の場所による差のために、より高い温度
は、様々なスポットを引き起こしかねない。その結果、火傷、水疱、不快感、又は痛み、
が起こり得る。腫瘍内部の温度、及び、様々に加熱された健康な組織内の温度を、正確に
測定することは困難であり、近くの組織に影響を与えることなく、ある領域を一定温度に
維持することは、非常に困難である。加えて、一部の身体組織は他の組織よりも敏感であ
るため、すべての身体組織が、熱に対して同じように反応するわけではない。所望の温度
に到達していることかつそれを超えないことを確保するために、温熱療法処置の間にわた
って、腫瘍及び周囲組織の温度を監視する試みが行われてきた。局所麻酔を使用して、小
さな温度計(プローブ)付きの細い針又はチューブを、処置部位内へと挿入して、温度を
監視する。
【0167】
コンピュータ断層撮影(CT)などの画像化技術を、プローブが適切に配置されている
ことを確認するために、使用することができる。これらの温度センサは、生成された温度
が所望範囲内において維持されるように処置を調整し得ることを補助するけれども、侵襲
的であるとともに、加熱の不均一性を除去することはできない。最近では、磁気共鳴画像
化(MRI)走査及びCT走査が、プローブを入れることなく温度を監視するための新し
い方法を提供している。
【0168】
ナノ粒子に対してエネルギをテレポートする能力は、動脈硬化、アルツハイマー病、肥
満(糖尿病、心臓病、心臓発作、脳卒中、高血圧、及び、閉塞性睡眠時無呼吸症、につな
がる)、良性の手術不能腫瘍、遺伝性疾患、脊椎狭窄症及び椎間板ヘルニア、脳障害(精
神障害、うつ病、不安、PTSD、摂食障害、社会障害行動、及び、パーキンソン病)、
細菌感染、真菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、プリオン感染、不妊症、勃起不全、前
立腺肥大、蜂窩織炎、ならびに、癌などの多くの疾病及び病状に関する処置及び治療法な
ど、実用的な医療応用が可能である。
【0169】
現在の臨床での局所的RF温熱療法の実践では、MR温度測定(MRTh)が、温度及
び処置効率の時空的監視のために使用され始めている。MRIに関して使用されるRF伝
送は、一般的に、約63MHz(1.5Tという磁気強度)という周波数で行われ、RF
伝送による誘導加熱は、通常は約100MHzで駆動されるRFアンテナを使用して達成
される。100MHzでのRF波長は、脳組織では約33cmであり(異なる組織密度は
、印加されたRF波の波長を変化させることができる)、これは、そのサイズがわずか数
cmの脳腫瘍に対して電磁(EM)エネルギを充分に選択的に集中させることには、適し
ていない。より高いRF周波数(>100MHz)が、局所的RF温熱療法を実行するに
際して、頭頸部領域に対しては、より適切に適用される。残念ながら、確立されたシステ
ムでは、処置部位及び健康な組織に対して適用される熱線量を監視して制御するための非
侵襲的な3次元的温度測定の能力が、なおも不足している。
【0170】
この課題に取り組むために、超高磁場(7.0T以上の磁気強度を有している)が統合
型アプリケータを実現可能とすることを実証した実験が行われた。それらは、MRThと
共に、MRIに適した構成を含み、300MHzという単一の伝送周波数を利用して、タ
ーゲットのRF加熱を制御する。アプリケータは、ターゲットのRF加熱のための陽子M
R周波数を使用し、画像診断及びRF温熱療法応用のための、市販のMRシステム及びマ
ルチチャネルRF伝送構成と一緒に使用することができる。初期の結果は、処置前の診断
及び計画、熱線量処置制御及び適応、ならびに、処置効率の処置後の評価を、単一のデバ
イスで実行し得ることのために、このアプローチが頭蓋内病変に対する治療応用に関して
概念的に魅力的であることを示している。さらに高いRF周波数(最大で1GHzまで)
を利用し得るアプリケータ設計が、提案されている。このアプローチは、達成可能な熱処
理ホットスポットサイズの効果的な縮小を提供することが期待される。この目標を達成す
るために、電磁場(EMF)シミュレーションが、健康なボランティアから推論されたヒ
トのボクセルモデルで実行された。300MHz、500MHz、及び1GHzに関して
RFアンテナ設計が提示されており、これらは、脳組織内における実効波長が約13.5
cm、8.6cm、及び4.5cmであるような、7.0T、11.7T、及び23.5
Tという磁石に対応している。
【0171】
処置を制限するホットスポットを最小化しつつ腫瘍の加熱を最適化するためには、適切
な位相振幅のステアリングが不可欠である。臨床結果は幾分心強いものであるが、正常組
織に処置を制限するホットスポットが形成され、このことが、総出力のさらなる増加を阻
害するため、43℃で1時間という最適な熱線量を追求しても、達成されないことが多い
。熱線量と効果との間には明確な関係があるので、出力を増大させつつも出力を制限する
ホットスポットを防止することができれば(本発明の目標)、臨床の成果を、さらに改良
することができる。
【0172】
そのようなホットスポットを減少させるために、「能動的治療制御」が使用され、これ
は、温熱療法処置時に利用可能な信頼性の高い温度情報と、温度分布を最適化するための
良好な空間的出力制御とに大いに依存する。温度は、通常、少数の低侵襲的な温度測定プ
ローブによって測定されるが、温度の疎で不規則なサンプリングでは、実際の3次元的温
度分布に関する適切な特性評価が提供されない。MRI走査又はCT走査から得られる非
侵襲的温度測定(NIT)は、より高品質の加熱を得るために必要な処置調整に関しての
より多くの洞察を提供するために非常に有用であるが、NITは、まだ広く利用可能なも
のではなく、現時点では、限られた数の腫瘍部位に限定されている(例えば、NITは、
肺内又は腹部内などにおける移動する腫瘍に対しては、あるいは、不均一な組織に対して
は、現時点では実行可能ではない)。
【0173】
空間的出力制御は、アンテナ数と、動作周波数とに依存する。アンテナ数が多いほど、
また、周波数が高いほど、ステアリング制御は、より良好となる。より高い周波数は、ま
た、より小さい焦点容積を提供するが、より浅い浸透深さと関連しており、したがって、
深部にある腫瘍を充分に加熱するためには、より多くのアンテナ数が必要とされる。副次
的損傷を引き起こすことなくより多くの出力を使用することができれば(本発明の目標)
、より高い周波数であっても、浸透深さを深くすることができ、これにより、より緊密に
焦点合わせされた温熱療法処置スポットが提供されることとなる。その上、個々のアンテ
ナからの信号の振幅及び位相の調整可能性に起因する多数の自由度は、操作者が直感又は
試行錯誤によって最適なステアリング戦略を決定することを非常に困難なものとする。
【0174】
その決定を補助するために、異なる組織セグメント位置における組織のタイプ及び特性
を分類しようとする「組織セグメント化」は、温熱療法処置計画の非常に重要な態様であ
る。組織内におけるエネルギ吸収を決定する誘電特性は、人体の異なる組織によって及び
異なる臓器によって、著しく相違する。よって、組織のセグメント化は、処置計画に強く
影響する。セグメント化は、温熱療法処置時に使用されるのと同じ位置におけるCT走査
又はMRI走査に基づいて行われ、手動であるいは半自動で、行うことができる。CTデ
ータに対してのMRIデータの利点は、提供される軟部組織造影情報が非常に優れている
ことと、健康な組織への追加の放射量がないことである。腫瘍のターゲット領域は、ター
ゲット範囲という観点から、したがって処置品質という観点から、異なる処置計画を比較
できるように、手動で輪郭を描かなければならない。HETは、加熱されるべき細胞又は
ナノ粒子を中心とした身体内の非常に小さな領域へとエネルギをテレポートすることによ
り、実質的にすべての潜在的なホットスポットを除去する。
【0175】
ナノ粒子を使用した温熱療法のコンセプト及び目標は、腫瘍又は他の疾病細胞の内部に
配置されたナノ粒子内にエネルギを集中させてそれらを加熱することを可能としつつも、
健康な組織の加熱を最小化するために、ナノ粒子の誘電加熱に使用されるよりも少ないエ
ネルギを、身体の広い領域に送達することである。誘電性ではなく導電性であるため、ナ
ノ粒子は、より少ないエネルギの印加によって、ヒトの組織よりも、より多く加熱される
こととなる。
【0176】
癌を死滅させるためのナノ粒子の誘導加熱は、複数の研究者によって、動物を使用した
いくつかの前臨床の研究において何度も成功裏に実証されている。例えば、Cornin
gにおけるJoseph Panzarino博士ら(米国特許第4,323,056号
明細書)は、生体不活性リン酸塩ベースのガラスセラミック基板内にマグネタイト結晶(
Fe)を埋め込んだ50nm超というサイズの強磁性ナノ粒子を、マウスの腫瘍に
対して直接的に注入して、腫瘍を死滅させた。比較的低い10kHzという周波数で70
0エルステッドの交番磁場を使用することにより、腫瘍を死滅させるのに充分なヒステリ
シス温熱療法加熱(組織1グラムあたり1ワットという「必要最小限」を提供)を生成し
たけれども、健康な組織においては、検出可能な不要なホットスポットが一切発生するこ
とがなく、「刺激」耐性試験のために人間のボランティアの手に対して適用した時には、
知覚可能な何らの悪影響(神経又は筋肉の反応から)もなかった。低い周波数というこの
選択は、また、感電、心臓の不整脈又は停止、発作、あるいは、中枢神経系の機能不全と
いう危険性を除去するために、なされた。周波数を10kHz以下に維持することは、ナ
ノ粒子及びナノ粒子を付着させた腫瘍細胞に対するヒステリシス温熱療法加熱を最大化し
ながら、(マウス内の)健康な組織に関する誘導電流加熱及び渦電流加熱を最小化した。
ナノ粒子の温度が、及びその結果として周囲組織の温度が、上がりすぎないようにするた
めに、彼らは、所望の腫瘍処置温度に一致するように慎重に選択された「キュリー温度」
を有したナノ粒子を使用した。継続的な電磁ヒステリシス加熱は、ナノ粒子がキュリー温
度に達すると実質的に自動的に停止し、これにより、過熱が防止される。これは、熱運動
によるランダム化力が、加熱の原因となる磁気整列力よりも強くなるためである。後続の
特許(米国特許第4,574,782号明細書)において、彼らは、公称誘導電流加熱又
は渦電流加熱あるいは他の許容できない刺激あるいは悪影響による腫瘍破壊のための同じ
所望の1ワット/グラムを生成するような、周波数及び磁場強度に関する様々な組合せを
決定してプロットした。例えば、同じ効果を得るために、200エルステッド~20エル
ステッドという磁場強度を、10KHz~600KHzという周波数と共に使用すること
ができ、また、40Hz以下の周波数を、2000エルステッド以上の磁場強度と共に使
用することができる。
【0177】
より最近では、Dartmouth-Hitchcock Health Scien
cesにおけるJack Hoopes博士らの仕事は、犬のカップルの癌性口腔腫瘍に
関して(これは彼らの獣医師によって停止された)、麻酔の後に、腫瘍内に3ワット/グ
ラムを生成するものとして、350エルステッドという磁場強度の下で150KHz~1
60KHzという周波数範囲で、100nmの酸化鉄ナノ粒子に対して、ACフィールド
ヒステリシス温熱療法加熱を適用することにより、腫瘍の完全な根絶を示した。ナノ粒子
は、口腔内腫瘍の意図的に四分割された各部分内に直接的に注入され、その後、電磁気的
に加熱された。この処置は、完全に成功したと考えられ、犬は、最終的には、癌ではなく
老衰で死ぬこととなった。化学療法も放射線療法も必要ではなかった。この手順は、充分
な量のナノ粒子をアクセス可能な腫瘍内へと直接的に注入することができたことにより、
成功した。しかしながら、動物が処置時に完全に麻酔をかけられたことにより、また、人
間のボランティアが「刺激レベル」をテストするために使用されなかったことにより、動
物のサイズを増大化できたか、及びその結果としての出力密度を増大化できたか、不要な
誘導電流効果又は渦電流効果が生成したかは、不明である。
【0178】
したがって、特定の医学的診断及び処置への応用を支援するために、本特許出願は、疾
病細胞又はナノ粒子に対して直接的に相互作用するためのHETの使用を開示する。疾病
処置に関し、ナノ粒子は、走査時には腫瘍細胞の位置を表示し、その後、疾病細胞の座標
を使用しつつ、テレポートされたエネルギは、アポトーシス(プログラムされた細胞死)
又は壊死(外部から引き起こされた細胞死)又は必要に応じて気化させることなどの1つ
又は複数のプロセスを開始するために、疾病細胞の温度を適正な分だけ上昇させることが
できる。
【0179】
共振周波数励起による温熱療法効率の最大化
上記で概説した各ステップに加えて、健康な細胞に対してのあらゆるエネルギ曝露を最
小化しつつも、ナノ粒子によって吸収されるエネルギを最大化するために、及び熱として
再放出されるエネルギを最大化するために、追加の手段を講じることができる。その結果
、ナノ粒子に対して送達されるべき必要なエネルギの量を最小化しながら、ナノ粒子の加
熱をさらに最大化するためには、選択すべき電磁エネルギ周波数は、細胞によって又は使
用するナノ粒子によって吸収されるのに最適な周波数であることが、最良である。ワイン
グラスが、適正な周波数(「共振周波数」と称される)で音に曝された時には、粉々にな
るのと同じように、細胞又はナノ粒子は、その共振周波数で電磁気的に「振動させる」こ
とによって、最大量のEMエネルギを吸収し得るとともに、最大量の熱を放出することが
できる。実際には、細胞の「原子」又は「ナノ粒子」の電子スピンの歳差運動は、コヒー
レントかつ平行とされて、互いに位相を合わせなければならず、その後、これを達成する
ために、垂直軸に対して一緒に反転されなければならない。この技法は、レーザが、共振
キャビティを使用して、従来の非コヒーレントな光ビームよりもはるかに強力なコヒーレ
ントで同位相の増幅された放射(レーザビーム)を生成するプロセスである「レーシング
」に類似している。これは、金属ナノ粒子を使用した時には「強磁性共鳴加熱」(FMR
H)として参照されるプロセスを使用して、達成することができる。
【0180】
2000年に、Christian Kirstenらは、この技法を使用して、導電
性粒子を含む熱活性接着剤層を加熱し、ラベル又はそれが付着している表面(あるいは、
2つの結合材料)を加熱することなく、接着剤層のみを加熱することにより、マイクロ波
を使用して、表面に対してのラベルの着脱を、あるいは、2つの材料の結合(又は、それ
らの分離)を、効率的に行うことを提案した。彼は、これが、金属粒子、磁性粒子、フェ
リ磁性粒子、強磁性粒子、反強磁性粒子、又は超常磁性粒子、を使用して行い得ること、
これらの粒子が、例えば、アルミニウム、コバルト、鉄、ニッケル、又は、これらの合金
、の中から選択され得ること、また、バリウムヘキサフェライト、n-マグネタイト(F
)、n-マグネタイト(Fe)、又は、Meを、マンガン、銅、亜鉛、コ
バルト、ニッケル、マグネシウム、カルシウム、及び、カドミウム、の中から選択される
二価の金属とした時に、MeFeのタイプのフェライト、のタイプの金属酸化物か
ら選択され得ること、を示唆した。さらに、彼は、好ましい粒子が、マグネタイトから形
成された超常磁性ナノ粒子(直径が20nm未満)であることを示唆した。彼は、FMR
H現象の存在が、1946年から知られていたけれども、工業的応用の可能性については
これまで体系的な調査が行われていなかったと述べている。この現象の研究、説明、及び
定量化については、1960年代に様々な研究者によって大量の実験及び解析が行われ、
発表されている。FMRHは、このような粒子を静的なDC磁場内に配置し(電子スピン
の歳差運動を揃えるため)、その後、振動するEM場を使用して、例えばマイクロ波の周
波数で振動するEM場を使用して、DC磁場に対してほぼ垂直な方向に照射し、これによ
り、歳差運動軸を反転させることで、発生する。FMRHを生成するのに必要な正確な周
波数は、加熱される粒子の特性と、DC磁場の強度と、に依存する。任意の所与の粒子構
成及びDC磁場の強度に対して、共振周波数は、非常に精細に設定され、その周波数だけ
が、振動磁場エネルギの効率的な吸収、共振、及び、非常に効率的な熱放射、を引き起こ
すこととなる。このタイプの加熱は、通常はより低い周波数でのEM発振によって生成さ
れる渦電流及び誘電加熱に起因するヒステリシス加熱よりも、はるかに効率的である。こ
のような高周波数のEM発振では、粒子は、その表面でエネルギを吸収し(「表皮効果」
と称される)、粒子内に渦電流が形成されることを防止する。
【0181】
吸収されたエネルギは、粒子が静的(DC)磁場にある限りにおいては、粒子内で反転
した電子スピンからのコヒーレントな同時的熱放出を引き起こす。その結果、FMRH効
果による高効率でのエネルギ吸収及び高効率での熱生成の結果として、大量の加熱を提供
するのに必要なエネルギが、大幅に低減される。FMRHの他の重要な利点は、一様なも
のではなく、勾配のある(空間的に変化した)、静的DC磁場を使用し得ることであり、
勾配のある領域に位置した粒子のうちの、適正な磁場強度(所与の材料特性、及び、所与
の発振磁場周波数)のところに位置した一部だけが、共振して発熱し、この際、すべての
周囲領域は、加熱されないままであることである。これは、ヒステリシス加熱では不可能
であるような、ピンポイントの精度でもって小さな選択された領域のみで熱生成するため
の方法を提供する。
【0182】
2010年には、Noboru Yoshikawaらは、マイクロ波を使用してFM
RHによって加熱した直径が数ミリメートル程度のFe粒子が、50℃の温度上昇
を示すとともに、ヒステリシス加熱が何ら検出されないことを示す実験を行い、これによ
り、高効率加熱がFMRHのみによるものであることを確認した。
【0183】
2005年には、Gang Wangらは、超常磁性ナノ粒子をFMRHと併用するこ
とで、癌腫瘍をターゲットとした損傷を高効率で生成することを提案したが、彼らは、実
際の腫瘍では試したことがなかった(資金不足のため)。彼らは、体がそれに対してほと
んど透明である100MHz~200MHzの低RF周波数の電磁発振(マイクロ波では
なく)と、マグヘマイト(y-Fe)ベースの化合物又はイットリウム鉄ガーネッ
ト(YFe12)ベースの化合物から形成されたナノ粒子と、を使用することを提
案した。調節可能な勾配の静的DC磁場と、RF周波数での垂直発振電磁場とを提供する
ように構成されたエネルギ源と、を使用して、彼らは、最初にRF出力が、腫瘍(及びそ
の周囲領域)に対する従来のヒステリシス加熱を充分に引き起こして最大で42℃まで加
熱することとなり、その後、FMRHが、ナノ粒子のみをそしてこれにより腫瘍自体を、
さらに3℃~5℃加熱してアポトーシス(プログラムされた細胞死)を引き起こすことと
なる、あるいは代替的には、さらに7℃~10℃加熱して壊死(アブレーションによる細
胞死)を引き起こすこととなる、ことを想定した。2つ又は3つの垂直な磁場勾配を使用
して、静的DC磁場の勾配を空間内で時間的にシフトさせることにより、よって、FMR
Hの領域を空間内で時間的にシフトさせることにより、腫瘍細胞を、一度あたりにつき1
つのスライス(平面)内であるいは1つのボクセル内でさえも破壊することができ、広い
領域を加熱する必要性を除去することができた。彼らは、ナノ粒子を全身注射によって腫
瘍内へと注入しようとすると、腫瘍内のナノ粒子濃度が1%未満にしかならないことに気
づいたが、このような低濃度のナノ粒子であっても、FMRHの高いエネルギ効率に基づ
き、腫瘍細胞を死滅させるのに充分な熱を生成することとなると計算した。彼らの計算は
、FMRHによる加熱が、従来の誘電加熱によって達成され得るものと比較して、約3桁
(1000倍)以上となる可能性があることを示した。このことは、上記の示差加熱を達
成するために必要なのは、わずか約0.1%~約1%というナノ粒子の容積濃度であり、
ニール加熱に基づく温熱療法処置に必要な濃度よりもはるかに低いことを意味する。毒性
からの保護のために、彼らは、ナノ粒子を、プルラン、ラクトフェリン、セルロプラスミ
ン、インスリン、ポリエチレングリコール、及びアルブミン、などの材料によって、また
、アミノプロピルシランでコーティングされたイットリウムアルミニウム鉄ガーネット(
より詳細には、アルミニウムがドーピングされたYIG)などの材料によって、コーティ
ングし得ることを提案した。FMRHの使用から得られる追加の利点は、超常磁性ナノ粒
子におけるESR特性の温度依存性のために、ナノ粒子の電子スピン共鳴(ESR)の監
視を使用することにより、ナノ粒子の電子スピン共鳴周波数を、ナノ粒子の温度(及びナ
ノ粒子が付着している細胞の温度)を監視するために使用し得ることである。例えば、E
SRによって検出し得る磁化飽和は、温度に依存する。このような効果を使用して、1℃
という感度で温度を測定し得ることが、当該技術分野においては、以前に実証されている
。ESRに基づくナノ粒子の画像化を、また、従来のMRIよりも低コストで、同じ装置
によってFMRHの加熱と画像化と温度測定とが可能な単一のシステム内に組み込むこと
ができ、これは、ESRがMRIよりもはるかに小さな強度の磁石(約500ガウス)を
必要とするだけであって、MRIの場合に必要とされる大きな強度の磁石(典型的には、
1.5テスラすなわち15,000ガウスという磁界強度を必要とする)よりも安価なも
のとするからである。
【0184】
本発明の追加の利点は、ナノ粒子を使用することなく、腫瘍又は他の疾病細胞を破壊す
るために使用し得ることである。そのような細胞が、密度、電気的性質、多毛性(細胞内
の組をなす染色体の数、あるいは、オルガネラ(細胞内の組織化された構造)内の特殊構
造の数)等の、健康な細胞とは異なる特性を有しているため、疾病細胞自体の共振周波数
は(ナノ粒子を含まなくても)、隣接する健康な細胞とは異なる。したがって、アドレッ
シング-RF周波数を調整することは、共振を利用して、RF励起のみによって隣接する
健康な細胞で引き起こされる加熱強度と比較して何倍もの強度で、選択的に疾病細胞に熱
を生成することができる。これは、細胞レベルまでピンポイントで正確に疾病細胞を集中
的に加熱することを提供しつつも、ナノ粒子の使用の必要性をなくすことができる。繰り
返しになるが、HETを同時に使用することにより、健康な細胞を一切加熱することをな
くすことができる。強い磁場中にサンプルターゲット細胞(処置対象となる身体内の細胞
と同じタイプの細胞)を配置し、RFパルスで照射した際に、異なる周波数で監視するこ
とにより、(FMRH及びナノ粒子の場合と同様に)損傷を受けるべき細胞の共振周波数
を見つけることができる。その後、患者は、選択された細胞を破壊するために、磁場内で
RFパルスを受けることができる。
【0185】
その結果、HET及び温熱療法を使用したFMRH加熱又は細胞共振加熱は、ナノ粒子
での熱生成を最大化するために使用することができ、あるいは、ナノ粒子のない疾病細胞
の細胞共振加熱は、その加熱を最大化するために使用することができ、それとともに、そ
れを達成するために必要なエネルギ量を最小化して、健康な細胞の加熱をなくすことがで
きる。
【0186】
ナノ粒子が「カーゴ」を運ぶことを可能とすることによる、有毒な薬剤からの身体の保
護、及び、免疫系からの薬剤の保護
化学療法薬剤は、腫瘍細胞に対して致死的に作用するように設計されており(しかしな
がら、健康な細胞に対しても、毒性又は致死的に作用する)、遺伝子治療薬剤は、健康な
細胞に毒性又は損傷を与え得るとともに、身体の免疫系によって破壊されたり不活性化さ
れたりされ得る。しかしながら、化学療法及び遺伝子治療は、身体の内部のどこであって
も腫瘍細胞を見つけるために全身に投与しなければならず、投与された治療薬の99%超
が、腫瘍細胞ではなく健康な細胞へと到達するため、多くの副次的影響が、中には非常に
重篤なもの(時には致命的なものもある)が、起こり得る。
【0187】
しかしながら、毒性のある化学療法薬剤及び遺伝子治療薬剤は、熱に不安定なコーティ
ングされたナノ粒子内に含まれ得るものであって、健康な細胞との相互作用が防止される
。ナノ粒子は、腫瘍又は他の疾病細胞を探し出すとともにそれに対して(特定のベクター
を使用して)付着するように設計することができる。そこに着いた後には、カーゴを放出
するために、いくつかの方法を使用することができる。酵素触媒(タンパク質に関連した
化学反応のスピードアップ)、あるいは、細胞内の低pHへの反応(ナノ粒子が、pH感
受性ポリマーコーティングによってコーティングされている場合、すなわち、酸性環境に
曝された時に分解するコーティングによってコーティングされている場合)は、また、ナ
ノ粒子カーゴの放出を誘発することができる。電磁エネルギは、そのようなナノ粒子に対
して外部から適用されるものであって、熱を生成することができ、その保護コーティング
を溶解することができ、また、腫瘍又は他のターゲット細胞に対してのみ毒性の化学療法
薬剤又は遺伝子治療薬剤の制御された放出を提供することができる。薬物送達のためのこ
の秘密の方法を使用した時には、現在投与されている化学療法薬剤のごく一部の量で、現
在よりもはるかに大きな化学療法レジメンによって生成されるのと同じ致死的な細胞損傷
を引き起こすのに充分な量になる。さらに、健康な細胞が化学療法薬剤によって攻撃され
た時に現在発生している副次的影響を生成することなく達成されることとなる。科学文献
には、この技法に関する実験的テストが報告されており、有望な結果が得られている。健
康な細胞に熱を生成することなく、腫瘍又は他の細胞に対して付着した後に、化学物質を
放出するためにナノ粒子に充分な熱を生成し得るようにすることが不可欠である。
【0188】
このような実験の1つにおいては、親水性(水を引き寄せる)のドキソルビシン(化学
療法薬剤)と、酸化鉄ナノ粒子とが、ポリビニルアルコール(PVA)のシェル内に封入
された。
【0189】
PVAは、疎水性(撥水性)のパクリタキセル(別の化学療法薬剤)を担持する能力の
ために選択された。よって、これらのナノ粒子は、1つのナノ粒子の中に、劇的に異なる
特性を有した2つの強力な化学療法薬剤を含んでいた。薬剤は、外部の発振電磁場からの
熱を印加することによって、必要に応じて放出された。テモゾロミド(TMZ)及び5-
フルオロウラシルを含むいくつかの他の化学療法用抗癌剤を、同様にナノ粒子に組み合わ
されている。
【0190】
Kostas Kostarelosらは、細胞膜材料から形成された小さな小胞(気
泡)である温度感受性リポソーム(TSL)を、動物実験において、ヒトメラノーマ癌細
胞に対して使用し、腫瘍細胞に対する細胞毒性効果が有意に増強されることを実証した。
彼らは、過剰発現しているヒトメラノーマ癌細胞(MDA-MB-435)内のMUC-
1抗原をターゲットとしたhCTMO1モノクローナル抗体を使用して、動物の生存率を
適度に向上させた。別の研究では、脂質(脂肪などの有機化合物)と、「ロイシンジッパ
ー温度応答性ペプチド」(Lp-ペプチドハイブリッド)との間のハイブリッド膜形成に
基づく新しいタイプのこのような感温性小胞を、ドキソルビシン(DOX)を封入するた
めに使用した。この組合せは、対照マウスと比較して有意な腫瘍成長遅延を達成し、それ
らのより長い血液循環のために毒性の兆候を伴わず、良好な腫瘍蓄積をもたらした。
【0191】
このカーゴ担持能力は、また、腫瘍又は他の細胞を処置する(多くの異なる疾病を処置
する)という別の重要なタイプに関しても有用である。癌及び多くの他の疾病が遺伝的に
引き起こされる疾病であるため、たとえ癌又は他の疾病細胞のすべてが発見されて破壊さ
れたとしても、癌又は他の疾病を生み出した致命的な組合せの欠陥遺伝子は、なおも身体
内に存在しており、新しい疾病を生み出す可能性がある。したがって、特に特定の疾病を
形成する遺伝的素因を有した患者においては、新たな疾病の形成を阻止するために、密か
に安全な遺伝子治療法が、開発されて提供される必要がある。継続的な研究により、約1
2の異なる組合せ(経路と称される)内の約200個の遺伝子が、ほとんどの癌の原因と
なっていることが示されている。選択された組合せ(経路)内の遺伝子及び/又はそれら
のリンクに対するベクターは、それらを温熱療法のターゲットとしてそれらを破壊するこ
とができる、あるいは、必要に応じてそれらをオン又はオフとして、身体内のどこででも
癌細胞の複製を助長することを防止することができる。それでも、最終的には、遺伝子治
療は、患者が新たに癌又は他の疾病を発症することを食い止めることができない。バイオ
療法は、化学療法と似ているが、低分子の薬剤を投与する代わりに、DNA、低分子干渉
RNA(siRNA)、タンパク質、及びペプチド、などの生物学的薬剤を腫瘍部位に投
与して細胞死を誘導する点が相違する。癌では、損傷したDNAは、非定型のタンパク質
発現をもたらし、悪影響をもたらす。癌は、癌細胞内の欠陥遺伝子を置換することによっ
て、DNA送達によって処置することができる。これに代えて、siRNAを介した癌治
療は、損傷した遺伝子のタンパク質発現を抑制することによって、作用する。他方、タン
パク質及びペプチド治療は、細胞接着を阻害したり、血管新生を阻害したり、及び/又は
、他の細胞機能を阻害したり、などのように、特定の細胞メカニズムを攻撃することによ
って作用し、アポトーシス(プログラムされた細胞死)をもたらす。過去において、バイ
オ治療薬の送達は、送達ベクターによって引き起こされる免疫原性(免疫応答を誘発する
)のために、限られた成功しか示さなかった。他方、生体適合性ポリマーによってコーテ
ィングされたナノ粒子が、抑制的な免疫応答に対する保護を提供し得ることにより、及び
、これらの治療薬のターゲットへの送達を提供し得ることにより、ナノ粒子送達システム
にバイオ治療薬を含めることは、この問題点を解決することができる。
【0192】
科学文献は、キトサン、PEI、及びPEGからなるポリマーシェルによってコーティ
ングされた鉄酸化物コアナノ粒子が開発されたことを、報告している。キトサンは、PE
IとPEGとの結合のための活性部位を有した安定化生体適合性のかつ生分解性の表面コ
ーティングを提供するために使用された。PEIは、核酸と静電的に結合し、siRNA
をロードするために使用された。結果は、髄芽腫及び上衣腫の癌細胞に対してのsiRN
Aの細胞内送達の成功と、その結果としての放射線耐性DNA修復タンパク質の抑制と、
を示した。siRNAを介したこのタンパク質の抑制は、ガンマ線に対する腫瘍細胞の抵
抗性を低下させることをもたらした。外部の電磁場によって生成される熱は、必要に応じ
てこれらのペイロードを放出するためにも使用することができる。
【0193】
臨床的に関連する多数の癌遺伝子の発見により、遺伝子編集は、癌治療の重要な関連態
様となってきている。低分子干渉RNA(siRNA)又はマイクロRNA(miRNA
)の送達、ペプチド核酸、及び、CRISPR/Cas技術、を介したRNA干渉(RN
Ai)による遺伝子編集は、関心のある遺伝子を無力化する可能性がある。CRISPR
(Clustered Regularly Interspaced Short P
alindromic Repeats)は、細菌を攻撃したウイルスからのDNA断片
を含む細菌のDNAシーケンスのファミリーである。これらのシーケンスは、細菌の防御
システムにおいて重要な役割を果たしており、また、生物内の遺伝子の恒久的改変を可能
とするCRISPR/Cas9として知られるゲノム編集技術の基礎を形成している。合
成ガイドRNA(gRNA)と複合化したCas9(CRISPR Associate
d System 9)ヌクレアーゼを細胞内に導入することにより、細胞のゲノムを、
任意の位置で切断することができ、既存の遺伝子を削除したり及び/又は新しい遺伝子を
追加したりすることができる。
【0194】
遺伝子治療とは、疾病を処置するために遺伝子の発現を調節するために、核酸を細胞内
に送達することである。しかしながら、遺伝子送達は、非効率的であること、又は、危険
であること、があり得る。保護コーティングを有したナノ粒子、ならびに、熱生成による
それらのターゲットでの放出は、この問題点を解決することができる。表現型調節(特定
の遺伝子構造(遺伝子型)の外観及び行動が環境によって変化すること)は、遺伝子の追
加、遺伝子の修正、又は、遺伝子のノックダウン、のいずれかによって達成される。遺伝
子の追加は、通常、最も一般的なアプローチであり、宿主に先天的に欠落している遺伝物
質とその結果として得られるタンパク質とを導入することによって、細胞の挙動を変化さ
せる。遺伝子の修正は、一般的ではないが、人気が高まっており、「ジンクフィンガーヌ
クレアーゼ」、三重形成オリゴヌクレオチド、又は、CRISPR-Cas、などの技術
を利用して、ゲノムシーケンスを改変又は修正する。最後に、RNA干渉(RNAi)に
よる遺伝子ノックダウンが、大きな関心を集めている。癌発症の複雑な性質と、疾病の進
行に関与する多数のシグナル伝達経路と、のために、独特で特異な分子ターゲットを単離
することは、ますます困難になる可能性がある。多くの場合、腫瘍細胞は、転写因子活性
を変化させ、複数の経路に影響を与えており、低分子薬剤を介して標的化することは困難
である。したがって、遺伝子治療は、癌に対しての効果的かつ特異的な治療法を設計する
ための代替戦略を提供することができる。
【0195】
そのようなカーゴを送達し、その目的位置に到達した後に熱を利用してカーゴを放出す
る場合に問題となるのが、内部の目的地に対しての従来的な熱送達方法によって生成され
る副作用及び副次的損傷である。HETは、ターゲット細胞内に位置した適正なナノ粒子
に対して直接的にエネルギを送達することにより、また、ターゲット位置でのみ熱を生成
することにより、さらに、免疫系からのカーゴ分子への損傷を除去するとともに患者に対
しての副作用及び副次的損傷を除去することにより、この問題点を解決する。その結果、
適切にコーティングされたナノ粒子は、よって、制御された放出のために、腫瘍又は他の
疾病細胞に対して、化学療法の「カーゴ」を安全に運ぶために、HETと一緒に使用する
ことができ、通常の副作用を起こすことなく、増強された化学療法処置を提供することが
できる。加えて、カーゴを担持したナノ粒子は、遺伝子治療の安全性及び有効性を大幅に
向上させることができる。
【0196】
疾病を診断するための、処置を指示して監視するための、ならびに、温度を測定して管
理するための、ナノ粒子(及びカーゴ)の検出及び監視
温熱療法又はHolothermia(登録商標)の精度及び効果を最大化するために
、身体内のナノ粒子の検出及び監視が、いくつかの理由から非常に重要である。
1.腫瘍を探すベクターによってコーティングされた注入されたナノ粒子は、腫瘍細胞内
に蓄積することとなり、様々な癌の存在を検出するための安全で非侵襲的な診断ツールを
提供する。ナノ粒子が注入されて、腫瘍又は他の疾病細胞によって取り込まれる機会があ
れば、1つ又は複数のスキャナによるそれらの存在の検出は、そのような細胞の存在の強
力な徴候を提供する。この方法は、他の方法では検出できない非常に初期の疾病を、さら
には前癌さえをも、検出することができ、早期診断ツールとして機能する。
2.腫瘍又は他の疾病細胞内に蓄積されたナノ粒子の位置を検出することは、指向性温熱
療法又はHolothermia(登録商標)処置によってナノ粒子を含む細胞のみを選
択的に加熱し得るよう、エネルギを指向するために必要なアルゴリズムを生成するために
必要とされる。
3.ナノ粒子の監視は、電磁エネルギ及びカーゴ-薬剤送達のリアルタイム処置監視と、
組織応答のリアルタイム処置監視と、を提供する可能性があり、これにより、プロセス中
の処置レジメンの更新を迅速化し、患者の生活の質を向上させることができる。カーゴを
担持したナノ粒子が腫瘍細胞と健康な細胞とに対してどの程度の割合で堆積しているかを
検出することは、腫瘍細胞への充分な送達と、健康な細胞が最小限のカーゴ及び熱を受領
することと、熱放出及びカーゴの活性化が、疾病細胞では最大化されつつも、健康な細胞
では最小化又は除去されることと、を確保することを補助することとなる。
4.また、ナノ粒子の監視は、ホットスポットを防止し得るよう、ナノ粒子の過熱(これ
は、周囲の健康な組織の過熱につながり得る)を防止し得るよう、さらに、疾病細胞を適
正に損傷させるようにあるいは他の所望の機能を遂行するようにナノ粒子が充分なエネル
ギを受領することを確保し得るよう、異なる組織位置に対して送達されるエネルギ量の能
動的な変更を可能とするために、加熱された疾病細胞だけでなく、周囲の健康な組織につ
いても、リアルタイムの温度データを提供するために必要である。ナノ粒子の温度を検出
することは、また、生成された細胞損傷及びカーゴの放出に関する情報を提供することも
できる。
【0197】
身体内のナノ粒子の位置を検出するために、患者は、ESR(電子スピン共鳴)スキャ
ナ(本明細書において上述した)、SPECT(単一光子放出コンピュータ断層撮影)ス
キャナ、MPI(磁性粒子画像化)スキャナ、PET(陽電子放出断層撮影)スキャナ、
CT(コンピュータ断層撮影)スキャナ、透視装置、MRI(磁気共鳴画像化)スキャナ
、又は、ULTRA(Unlimited Trains of Radio Acqu
isitions)MRIスキャナ、あるいは、これらの組合せ、などのナノ粒子を検出
し得る画像化システムの内部に配置されなければならない。収集されたナノ粒子の位置デ
ータが、処置時にナノ粒子に対しての正確な位置合わせを可能とするために使用されなけ
ればならないことにより、定位法のいずれかが、位置データとエネルギ適用とを相関させ
るために使用されることが、あるいは、より正確な対応関係のために、画像化スキャナが
、単一デバイス内において温熱療法処置システム又はHolothermia(登録商標
)処置システムに対して統合されていることが、重要である。その場合には、患者が、画
像化と処置との間で移動することがないので、実際の組織位置と組織画像との間の最適化
された位置合わせを維持することができる。患者の診断と処置との双方に関して単一のシ
ステムを使用することは、「セラノスティックス」として参照される。
【0198】
ナノ粒子の位置を検出するための最も単純で最も正確な方法の1つは、MPIスキャナ
を使用することである。磁性粒子画像化(MPI)は、血流内に注入された酸化鉄超常磁
性ナノ粒子の磁気特性を直接的に検出する新しい非侵襲的断層撮影技法である。MPIは
、ミリ秒間隔でもってリアルタイムに3次元画像を生成する。MPIは、高感度、高い空
間的解像度(~0.4mm)、及び高速画像化(~20ms)で、ナノ粒子の分布を画像
化することができる。MPIは、ナノ粒子に対して付着した細胞を、全身で追跡すること
を可能とする。画像化は、電離放射線を使用せず、身体内の任意の深さで信号を生成する
ことができる。ナノ粒子は、細胞に付着している間は安定しており、毒性がなく、87日
を超えても検出可能なままである。
【0199】
他のタイプの検出器を使用することもできる。ナノ粒子は、ビスマス-酸化鉄複合コア
からなることが、文献で報告されている。重いビスマス金属は、X線減衰剤として作用し
、CTスキャナ又は透視装置(X線を検出する)を使用してナノ粒子を画像化するために
使用することができる。ナノ粒子は、また、放射性フッ素同位体(18F)-酸化鉄コア
からなるものとしても形成されており、これは、PETスキャナ又はSPECTスキャナ
によって画像化することができる(放射性崩壊の結果として、フッ素同位体は、陽電子を
放出し、身体内で衝突した電子を消滅させ、PETスキャナ及びSPECTスキャナによ
って検出可能なガンマ線を生成する)。他の放射性核種(放射性同位体)を使用すること
もできる。
【0200】
酸化鉄は、それ自体を、MRIスキャナで検出することができる。その結果、MRIス
キャナは、ナノ粒子に対して他の元素(ビスマス又はフッ素など)を添加する必要なく、
ナノ粒子を検出するために使用することができる。これに加えて、一部又は全部の画像化
方法を組み合わせたスキャナで使用するために、3つのすべての材料を組み合わせてナノ
粒子を形成することもできる。MRI及びCTは、卓超した空間的解像度を有するが、感
度が不足しており、これに対し、PETは、高感度であるが、詳細な構造情報を提供しな
い。よって、これらの画像化方法の組合せは、正確な診断及び処置のために必要な解剖学
的解像度と分子感度とを提供することができ、すべての画像化方法のための造影剤として
機能する1つのタイプの組合せナノ粒子を使用することにより、診断及び処置の正確性及
び一貫性を大幅に向上させることができる。
【0201】
このようなセラノスティックシステムにおけるMRIの使用は、電離放射線又は潜在的
に有害な放射性物質を使用することなく、高解像度で高コントラストの軟部組織を画像化
し得ることのために、特に価値がある。酸化鉄ナノ粒子は、MRIに関する造影の増強に
おけるそれらの使用に関して、広範囲に研究されてきた。造影剤を増加させるにつれて、
画像を鮮明にし、細部を強調することを補助することができる。最も広く利用されている
MRI造影剤は、ガドリニウムキレートであり、その中でもGd-DTPAが、最もよく
知られており、潜在的な毒性があるにもかかわらず、長年にわたって臨床応用において保
護コーティングとして使用されてきた。他方、超常磁性及び常磁性の酸化鉄ナノ粒子は、
一般的に毒性がなく、ナノサイズのMRI造影剤としても使用されており、ガドリニウム
の2倍の造影効果を提供する。
【0202】
セラノスティックシステムにおいてMRIを使用することの他の利点は、カーゴを担持
した酸化鉄ナノ粒子からのカーゴ放出を監視し得ることである。MR画像化時には、静的
な線形磁場が、処理する原子核(主に水分子内の水素原子の陽子)の軸を整列させる。そ
の後、RFパルスによって原子核を反転させ、これにより、それらの歳差運動軸は、以前
に整列させた向きに対して垂直となり、その後、RFパルスが終了し、原子核は、以前に
整列した向きへと緩和し、この過程で自身の高周波信号を放出して、それが検出されて画
像を形成する。ナノ粒子に対して薬物カーゴが「導入」されている時には、ナノ粒子の酸
化鉄コアの近傍における水の拡散が阻害され、これが、緩和時間を変化させ(ナノ粒子に
対して「導入」されていない場合と比較して)、その結果、ナノ粒子のMRI画像密度を
変化させ、これにより、ナノ粒子からの薬物送達(導出)の程度を表す指標として作用す
る。治療薬剤が「放射性ラベル付け」されている場合(放射性トレーサーに対して付着さ
れている場合)には、「生物内分布」走査を行うことにより、組織内での薬物の取り込み
、その濃度、及び最終的な除去を決定することができる。
【0203】
MRIセラノスティックスの1つの問題点は、研究が示唆しているように(本明細書に
おいて上述したように)有意な加熱効果を生成する最大の可能性を有した濃度である、組
織1gあたりにつきFeが~1mgという濃度を超えた時には、従来のMRI技術では、
酸化鉄ナノ粒子の組織レベルを定量化することができないという観察に基づいている。2
つの主要な問題点は、1)そのような高濃度では、画像が、実際に起こっているよりも大
きなナノ粒子の分布を予測し(すなわち、画像内のダークホール(又は、シグナルボイド
)の周囲が、ナノ粒子が高濃度で存在する領域の実際の周囲よりも大きい)、これが、画
像の詳細な解釈を混乱させることであり、また、2)これらのシグナルボイドが、一般的
に、組織/空気境界と区別がつかず、その解釈をさらに混乱させることである。この問題
点は、酸化鉄ナノ粒子が大きすぎるダークホールとして現れる(「ネガティブコントラス
ト」と称される)代わりに、ナノ粒子が画像内に明るいスポット(「ポジティブコントラ
スト」と称される)を引き起こし、他の組織や空気/組織境界との正確な区別を容易とす
る、いくつかの特殊なMRI走査シーケンスの1つを利用することによって、解決される
【0204】
以下においては、これを行う方法について説明する。MRIは、原子核の磁気特性に基
づいている。強力で一様な外部磁場(「z軸」に沿った)を使用することにより、検査対
象をなす組織の水の原子核内において通常はランダムに配向されている陽子スピンを整列
させる。追加の電磁コイルは、すべての3次元(x、y、及びz)内において、勾配磁場
(規定された空間にわたって強度が変化する)を生成する。その場合、陽子スピンの整列
は、一様磁場に対して垂直な横方向(xy)平面内へと陽子スピンの成分を(例えば、1
°~90°という角度で)励起(回転)させるRFエネルギの外部パルスの導入によって
、乱される。これらの原子核スピンは、xy平面内で回転(又は、歳差運動)し、徐々に
互いに位相がずれ(すなわち、横方向の緩和)、縦方向の緩和過程によって、再びz軸内
の一様磁場に平行なそれらの静止した整列へと戻る。スピンがxy平面内において歳差運
動する際には、それらは、起電力(EMF)を生成し、これが、受信コイルによって採取
される信号源となり、測定される。勾配磁場は、走査される身体領域がなす各平面内にお
ける各ポイントから異なる歳差運動周波数を生成するために、オンオフされるとともに、
時間的にその強度が変化する。フーリエ変換が、各画像化された平面内の各位置からの信
号に含まれる周波数情報を、対応する強度レベルへと変換するために使用され、それらは
、その後、画素配置内においてグレーの濃淡として表示される。異なる磁場勾配を適用し
つつ、印加されて収集されるRFパルスシーケンスを変化させることにより、異なる平面
及び異なる組織位置から、異なるタイプの画像が作製される。
【0205】
繰り返し時間(TR)とは、所与のMRIシーケンスにおける連続した励起RFパルス
どうしの間の時間量である。エコーまでの時間(TE)とは、所与の励起RFパルスを印
加してから、信号(場合によっては、勾配エコー又はスピンエコーの形態を有する)が取
得されるまでの時間である。組織は、指数関数的時定数によって特徴づけられる2つの異
なる陽子スピン緩和時間T1、T2によって特徴づけられる。T1(縦方向緩和時間)は
、スピンする陽子が、励起された状態から、外部のz軸磁場によって再整列する(平衡に
戻る)ための時定数である。T2(横方向緩和時間)は、励起されたスピンが、x-y平
面内において互いに位相がずれるまでの時間を記述する時定数である。短いT2は、信号
が非常に急速に減衰することを意味するので、短いT2を有した物質は、長いT2値を有
した物質と比較して、信号がより小さく、より暗く見える。TR及びTEの選択は、異な
るT1値及びT2値に対する画像化シーケンスの感度を決定する。例えば、パルスシーケ
ンスに関する特定の選択、ならびに、TE設定及びTR設定に関する特定の選択は、身体
内の脂肪組織を強調表示する。特定のシーケンスにおけるTR及びTEのタイミングは、
身体内の脂肪と水分との双方を強調するT2重み付け画像を作製するように設定すること
ができる。最も一般的なMRIシーケンスは、「T1-重み付け」及び「T2-重み付け
」走査である。T1重み付け画像は、一般に、短いTE時間及び短いTR時間を使用して
作製される。画像のコントラスト及び明るさは、主に、組織のT1特性によって決定され
る。逆に、T2重み付け画像は、一般に、長いTE時間及び長いTR時間を使用して作製
される。これらの画像では、コントラスト及び明るさは、主に、組織のT2(脂肪及び水
)特性によって決定される。しかしながら、実際のMRI走査時には、横方向の磁化(x
-y平面内)は、本来的な原子及び分子のメカニズムによって予測されるよりも速く減衰
するものであり、この速度は、T2と表記される。T2は、「観察された」又は「実
効的な」T2と考えることができ、これに対し、T2は、画像化される組織の「自然な」
又は「真の」T2と考えることができる。T2は、常に、T2以下である。T2は、
主に、主磁場内の非一様性に起因する。これらの非一様性は、磁石自体に固有の欠陥の結
果であったり、あるいは、磁場内に配置された組織又は他の材料によって生成された感受
性によって誘起された磁場の歪みの結果であったり、する。勾配エコー及び比較的長いT
E値を使用した特定のMRシーケンスは、T2重み付けと称される。これらは、出血及
び石灰化の検出を補助し得るよう、局所的な磁気同質性効果を強調するために使用される
。T2に敏感なシーケンスは、また、「BOLD(Blood Oxygen Lev
el Dependent)」技法を使用した機能的MRI(fMRI)の基礎を形成す
る。
【0206】
MRIは、核磁気共鳴(NMR)化学的分光解析技法に基づいて開発された。3つの異
なるタイプのNMR技法が、すなわち、連続波(CW)、パルス、及びストキャスティッ
クが開発された。パルスフーリエ変換(FT)分光法の効率に気付いた後に、パルスFT
は、主要な分光技法としてCWに取って代わり、MRIが開発された時には、最終的に選
択される方法となった。ミネソタ大学のMichael Garwood博士らは、3つ
のすべての基本的なNMR技法の組合せと考えられ得る新しいMRI法を開発した。CW
NMRの場合と同様に、この方法は、掃引RF励起(範囲にわたって周波数を順次的に
かつ段階的に変更する)を使用するけれども、掃引速度は、高速走査時でさえもCWでの
掃引速度をはるかに上回る。周波数領域で信号を取得するCW法とは異なり、信号は、パ
ルスFT法の場合と同様に、時間の関数として扱われる。加えて、この方法は、ストキャ
スティックNMRにおいて使用されるのと同じく、陽子スピンシステムに由来する信号を
抽出するために、相関を使用する。この方法は、「SWIFT」と称され、Sweep
Imaging with Fourier Transformationの略である
。単色(単一周波数)RFパルスの代わりに、掃引RF励起すなわちストキャスティック
励起を使用し、その後、相関法を使用してNMRスペクトルを再構成する、という概念は
、30年以上前に言及されていたけれども、実用化されていなかった。パルスMRI技法
と比較しての、CW法の主な利点は、RF出力要求が少ないことである。しかしながら、
CW法は、取得速度が遅いためことのために、時間がかかるものであって、生体内用途に
は不向きである。ストキャスティックNMRの主な制限は、系統的なノイズアーチファク
トを避け得るよう、真にランダムな励起を生成する必要があることである。原理的には、
同じ「時分割」取得を使用するSWIFT技術は、ストキャスティックNMRの分岐と考
えることができる。SWIFTの主な利点は、そのほぼ同時的な励起及び取得技法に由来
する。加えて、従来のMRIと比較して、同等の大きな帯域幅の画像化を生成するに際し
、はるかに少ないピークRF出力しか必要とされない。従来のMRIでは、励起事象と取
得事象とは、エコー時間(TE)として知られていて通常は1ms超である時間長さの分
だけ、分離されている。この時間長さは、長すぎて、短いT2緩和時間でゆっくりとタン
ブリングする原子核を検出することができない。比較すると、SWIFTは、励起後の数
マイクロ秒以内に信号取得を開始し得ることにより、ゼロに近いTEを可能とする。励起
パルスが、直接的に受信されて、解析及び画像生成のために必要な陽子信号(又はEMF
)と混同されてしまうことを防止するために、受信コイルの注意深い配向(送信コイルに
対して位相を90°だけずらす)、サーキュレータ又はクワッドハイブリッド受動電子部
品の使用、及び、励起パルスの能動的な相殺の使用、などのいくつかの方法を使用するこ
とができる。多数の周波数の掃引において各周波数が順次的に使用されることにより、小
さなピーク出力のみが必要とされ、このようにして、SWIFTで行われるような周波数
掃引励起は、各周波数での漏洩RF送信信号からMRI信号を分離するために必要とされ
るRFアイソレーションに関し、必要なレベルを低減する。SWIFTは、非常に短いT
2値を含む幅広い緩和時間分布を有した対象物を画像化するための強力なツールである。
この方法は、異なる(掃引)周波数のRFパルスシーケンスを使用しており、それぞれは
、典型的にはミリ秒の範囲内である持続時間を有している。周波数掃引励起は、信号エネ
ルギを時間的に分散させ、したがって、適正な信号デジタル化に関するダイナミックレン
ジ要件は、従来のMRIと比較して減少する。ギャップ付きSWIFTとして知られるS
WIFTの1つのバージョンでは、パルスは、複数のセグメントに分割され、各セグメン
トは、RF電源がオフとされた遅延に続いて、短い時間にわたってRF電源をオンとする
。データサンプリングは、パルスセグメントの後に実行される。このタイプの時分割型の
励起及び信号取得は、スピン上へと空間依存性の歳差運動周波数を付与するために使用さ
れる印加磁場勾配の存在下で行われる。パルスの最小時間間隔(繰り返し時間)(TR)
は、単に、パルスの持続時間に、磁場勾配の配向を増分的に変化させるのに必要な時間量
を、加えたものである。空間的符号化のために使用される磁場勾配は、従来のMRIのよ
うなパルスのオンオフではなく、増分的な態様で向きを段階的に変化させるものであり、
このため、音響ノイズが非常に小さいものとなる。この独特な短時間での取得方法は、生
きた被験者を画像化する上で重要であるようなサンプルの動きに対して、比較的鈍感であ
る。周波数符号化された投影のフルセットを取得した後に、3次元画像を、3Dバックプ
ロジェクションアルゴリズムを使用して再構成することができる。例えば、標準的なMR
Iスキャナが容易に達成し得る取得パラメータの場合、行列サイズ=128×128×1
28の3次元画像を、30秒未満で取得することができる。等距離投影サンプリング法を
使用すれば、画質に影響を与えることなく、さらに約30%の時間短縮が可能である。S
WIFTは、観察可能な画像アーチファクトなしに、高いS/N(信号対雑音比)を提供
する。SWIFT技法は、MRIにとって多くの新規で有益な特性を有している。(a)
高速であること。この方法は、再焦点合わせパルス又は勾配反転に関連した遅延だけでな
く、取得時間と組み合わされる励起パルスのための時間をも、回避するものである。(b
)短いT2に敏感であること。(c)動くアーチファクトが低減されること。SWIFT
法は、「エコー時間」を有していないことのために、従来のMRI法よりも、動くアーチ
ファクト及び流れるアーチファクトに対する感受性がより小さい。他の高速シーケンスと
比較して、SWIFTでは、勾配の存在下での拡散又は補正されない動きのいずれかに起
因する信号損失が、はるかに少ない。(d)信号のダイナミックレンジが低減すること。
異なる周波数が順次的に励起されるため、結果として得られる信号は、時間的に分散され
、取得された信号の振幅の減少につながる。これは、デジタイザのダイナミックレンジを
、より効果的に利用することを可能とする。(e)静かであること。最後ではあるが、S
WIFT法では、投影どうしの間に勾配を変更する際に、小さなステップが使用され、こ
のため、従来のMRIの場合に大音量ノイズを生成してしまう高速で大きな角度の勾配ス
イッチングが回避される。
【0207】
MRIは、身体内の組織の画像を作製することに加えて、身体内における金属ナノ粒子
の画像であって、温熱療法処置時に、組織温度、ナノ粒子及び腫瘍の位置、処置の進捗状
況、ならびに、他の要因、を決定するに際して非常に重要である身体内における金属ナノ
粒子の画像を、作製することができる。患者内における酸化鉄ナノ粒子(IONPs)の
分布を正確に知ることは、効果的で安全な処置のために重要である。従来のMR画像化シ
ーケンスでは、鉄が特定の値を超えた場合には、T2値が非常に短いため、可能な限り
短いエコー時間であっても、MRI信号がノイズによって支配されることにより、治療濃
度範囲内のIONP濃度を定量化することができない。例えば、Resovist及びF
eridexと称されるFDA承認のナノ粒子製剤は、従来のMRI勾配エコー(GRE
)及びスピンエコー(SE)パルスシーケンスで画像化した時には、典型的には、低強度
の信号(負のコントラストを伴って)を生成する。低濃度のIONPsは、多くの場合、
このようなGRE及びSEシーケンスで定量し得るけれども、これらの方法では、強い負
のコントラストが生成されるため、高濃度のIONP(処置範囲内)を定量化することは
できない。GRE及びSEシーケンスは、それらの比較的長いエコー時間(TE)(典型
的には、1ms超)のために、及び、IONPsの存在下でのそれらの短いスピンのT2
及びT2時間のために、低濃度でのIONPsに対して敏感である。しかしながら、こ
のような従来の(エコーベースの)パルスシーケンスを使用した時には、高濃度のION
Psは、T2又はT2時間が、画像化するのに充分に長い場合にのみ、定量化すること
ができる。しかしながら、高濃度のIONPsでは、T2及びT2値は、より急速に減
衰し、正確なIONPの定量化を可能とするには短すぎるものとなる。他方、X線コンピ
ュータ断層撮影(CT)は、ヨーロッパでは磁性ナノ粒子温熱療法時のIONPの定量化
のために臨床的に使用されており、バルク密度の小さな変化に依存し、ナノ粒子濃度がさ
らに高い場合(>5mg Fe/mL)でのみ実用的である。このため、検出可能なIO
NP濃度範囲に、ギャップ(1mg Fe/mL~5mg Fe/mL)が残り、この範
囲に関しては、CTも従来のMRIも、正確な定量化のための十分な感度を有していない
。この問題点を解決するために、SWIFTを「ルック-ロッカー」法と組み合わせるこ
とで、これらの高濃度のIONPsのT1時間をマッピングする。SWIFTに加えて、
UTE、ZTE、及び、PETRAなどの、非常に短いT2時間を有したスピンからの
信号を保存し得る他のMRIパルスシーケンスも、また、近年開発されている。これらの
シーケンスでは、信号が励起パルスの直後に又は最中に取得されるため、T2又はT2
重み付けは無視できるほどである。これらのシーケンスでは、水の縦方向緩和時間(T1
)の短縮に基づいて、IONPsを検出して定量化することができる。最も一般的なT1
マッピング方法は、反転回復(IR)又は飽和回復(SR)に基づくものである。ルック
-ロッカー法は、SR法とIR法との双方に関してT1マッピングを加速する方法である
。例えば、3.0mg Fe/mLのFerrotec EMG-308鉄酸化物ナノ粒
子(Ferrotec USA Corp., Bedford, NH)では、SWI
FT法を使用して正のIONPコントラストを有する画像が生成され、SWIFTルック
-ロッカー法では、大きな局所濃度のIONPsを定量化することができた。一例として
、縦方向(T1)緩和速度の画像化及びマッピングは、SWIFTを使用して他の人によ
って行われ、IONPsによって引き起こされる正のT1コントラストからの信号増強が
、最大で3.2mg Fe/(g組織重量)までの濃度で、肝臓、脾臓、及び腎臓におい
て生体内で観察されて定量化された。従来のエコーベースのパルスシーケンスでは、この
ような高濃度のIONPではノイズしか発生しなかった。「エコー」を有していないこと
により、及び、非常に短いT2値を有したスピンからの信号を取得することにより、S
WIFTは、鉄の濃度が変化する際のT1への影響を調べることができる。
【0208】
ナノ粒子及びそれらの周囲組織を加熱する時には、組織内の非一様性、境界線の存在、
及び、組織タイプの違いにより、熱吸収率及び熱伝導率に局所的な相違が生じる。このた
め、ホットスポット及び不均一な加熱を防止するために、3次元リアルタイム温度マッピ
ングが必要になる。温度マッピングは、腫瘍細胞が充分な熱を受領して所望の損傷を生成
しつつも、健康な細胞が過剰な熱を受けないことを確保するためにも重要である。いくつ
かの陽子緩和パラメータの温度依存性に基づいて、「陽子分光」MR画像化(MR温度測
定又はMRThとして参照される)は、連続的な温度測定と、温度変化の3次元マッピン
グと、の双方を可能とし、絶対温度値を示す。この技法は、水(ほとんどの身体組織に存
在する)中の水素陽子の「陽子共鳴周波数シフト」(PRFS)の温度依存性を利用する
。温度に敏感な造影剤の使用は、この技法の感度及び精度をさらに向上させることができ
る。例としては、常磁性温度感受性リポソーム、ランタニド錯体、多機能性ナノ粒子、及
び、スピン転移分子材料、が挙げられる。MR画像化は、身体内の水の水素原子中におけ
る陽子の歳差運動軸を反転させることに依存している。原子(及び、ひいては、それらの
陽子)は、静磁場内に配置され、その強度(ほとんどの部分に関して)が、それらの共振
周波数を決定する。しかしながら、それらの共振周波数は、また、温度にも依存しており
、そのため、それらの温度が変化した時には、シフトすることとなる。通常、雰囲気温度
では、水分子どうしが互いに結合しており、その結果、各水分子と他の水分子とを接続す
る水素結合の歪みによって、電子は、それらの陽子から多少引き離されている。その結果
、任意の単一の水分子の電子は、その原子核内の陽子に対して、より小さな磁気的「遮蔽
」しか提供しない。遮蔽のこの減少は、陽子が検出する磁場を増大させ、その結果、陽子
の共鳴周波数を増大させる。しかしながら、温度が上昇した時には、水分子どうしの間の
水素結合の長さが長くなり、水素結合が切れることとなる。結合が切れた後には、孤立し
た自由な単一の水分子の電子は、水素陽子に対して近づき、MRIによって印加された磁
場からの、それら電子による陽子に対する磁気遮蔽を増大させる。これにより、陽子が検
出する磁場強度が低下し、その結果、陽子の共振周波数が低下する。63.85MHzと
いうRF励起を使用した1.5Tの画像化装置の場合には、陽子の共振周波数は、0.6
385Hz/℃という変化率で変化することとなる。共鳴周波数のこの小さな変化を検出
することにより、MRIによって画像化される領域内の温度に関する非常に敏感なマップ
を作製することができる。このような温度マップは、加熱されたナノ粒子及びそれらの周
囲組織をリアルタイムで監視することを可能とし、これにより、必要に応じて異なる領域
で、温度を制御することができる。このような空間的に正確な温度監視及び温度制御の非
常に価値ある利点は、患者が導電性インプラントを有している(通常は、このような導電
性インプラントは、患者がMRIを受けることを阻害する)領域での加熱を低減又は除去
する能力である。最初は、低出力信号を使用して、そのような導電性インプラントの位置
を検出することができ、患者内の、EM放射を受けるべきでないスポットの座標を提供す
ることができる。その後、加熱EM放射場の形状を、そのような領域を避けるように変更
することができる。その結果、そのようなインプラントを有した患者は、MRIだけでな
く、温熱療法やHolothermia(登録商標)処置も、受け得ることとなる。MR
温度監視は、生体内で成功裏に実証されており、主に集束超音波(FUS)及びレーザ加
熱と組み合わせて、多くの臨床応用で定期的に使用されている。この方法は、3T以下の
磁場での熱的アブレーション手順において広く使用されている。PRFSマッピングには
、従来より2つの制限があった。第1に、脂肪を除いて、画像化される組織のタイプに関
係なく、優れた直線性と温度依存性とを有している。しかしながら、脂肪は、水の水素原
子を有していないため、温度依存性の効果を示さない。その結果、脂肪が少ないあるいは
脂肪が全くない組織の温度マッピングは、非常に正確であるけれども、脂肪の含有量が多
い組織のマッピングは、不正確である。第2に、呼吸、筋肉の張力の変化、心拍、蠕動運
動、臓器の動き及び変形、熱処理された組織の膨張や膨潤や構造変化や変形などの動きが
、マッピングの細部のゴーストやぼやけなどのアーチファクトを引き起こしてしまい、そ
のため、PRFS温度監視の多くの領域に関して動きが最も一般的な問題点となっており
、臨床応用への広範な受け入れを妨げている。
【0209】
不要な動きのいくつかは、外部の方法によって監視することができ、例えば呼吸周期又
は心拍などの動きの発生源の安定時に画像取得が行われるように(「ゲーティング」と称
される)、MR画像化と同期化させることができる。全身麻酔及び機械的呼吸下での動物
における従来の呼吸ゲーティングは、他の人によって成功裏に使用された。
【0210】
PRFSに基づく温度画像化は、一般的に、「分光画像化」及び「位相画像化」という
2つの技法に分けることができる。分光画像化は、通常、空間的解像度及び時間的解像度
が低いという欠点がある。分光画像化では、周波数情報を抽出可能とするために、多くの
異なる時点で信号を測定することを行う。対照的に、位相画像化では、典型的には、信号
を一度でサンプリングし、高い空間的解像度でもってサブ秒単位での温度測定を可能とす
る。明らかに、多くの異なる値をサンプリングすることに代えて、単一の値をサンプリン
グすることは、より良好な空間的解像度でのより高速な画像化を可能とすることができ、
これは、可動臓器における温熱療法のリアルタイム監視において特に有用なものとするこ
とができる。しかしながら、サンプリングされたデータ量のそのような低減は、脂肪信号
による破損に対して、及び/又は、温度に関係のないフィールド変動による破損に対して
、位相画像化をより脆弱なものとする。加熱前の位相画像化では、加熱後に取得した画像
から差し引くことができるように、「ベースライン」(又は参照)画像が必要である。こ
の減算は、温度誤差を2倍に増加させ、位相マッピング法を、動きやフィールドドリフト
に対して脆弱なものとする。このような欠点にもかかわらず、位相画像化は、これまでで
最も一般的に使用されているPRFS温度測定アプローチである。これに代えて、ベース
ライン(参照)位相画像を、後に取得した各位相画像自体から推定する、いわゆる「参照
なし」方法が提案されており、これにより、ベースライン参照を以前の時点で取得する必
要性を省略することができる。この方法は、ベースライン画像の減算の必要性をなくすこ
とにより、「走査間」の動き(連続する走査どうしの間の動き)に対して鈍感である。こ
のような参照なし方法は、少なくとも部分的に非ビート領域によって囲まれた加熱スポッ
トを必要とする。位相画像化の代替適応的な方法は、De Sennevilleらによ
って開発されたもので、リアルタイムで使用することができ、彼らのアプローチでは、動
きのアトラスが、加熱なしの前処理期間中に取得された50枚のMR画像を使用して構築
される。温熱療法時には、取得したすべての動的画像が、その後、アトラス画像と比較さ
れる。アトラス画像の中で、動的画像に対して最大の類似性を有した対応する位相画像が
、温度マッピングのための基準として使用される。
【0211】
脂肪細胞は、水の水素陽子を欠いているため、脂肪細胞の存在は、身体のうちの、過剰
の脂肪が存在する領域内において水分子から取得した温度データを、破壊することとなる
。その結果、これらの技法を使用して正確な温度マップを作製するためには、脂肪に関連
したデータを抑制するための技法を使用する必要がある。スペクトル選択性RFパルスの
使用、短い「タウ反転回復」(STIR)、及び、いわゆる「ディクソン」法などの様々
な脂肪抑制法が、温度マッピングのために利用されてきた。
【0212】
ボストンカレッジのChang-Sheng Meiによって開発されたハイブリッド
技法は、動きと脂肪細胞の存在とを補正するために、3つの追加の手順を組み合わせたも
のである。第1に、彼は、RF励起パルスで励起される領域を減少させることによって、
また、同じ低減した領域に対しての信号監視を制限することによって、各画像の取得にか
かる時間を短縮して、走査内の動き(単一の走査内での動き)によるアーチファクトを制
限した。第2に、彼は、画像化される解剖学的部位の周囲の異なる位置に配置された多数
の異なるコイルによって、画像化される対象物が同時に「見られる」ということに依存し
た「並行的画像化」を使用することにより、画像取得時間をさらに短縮した。第3に、彼
は、オーバーラップした信号のフーリエ符号化(選択的信号処理に関する高度な数学的方
法)を使用して、異なるコイルから別々に取得した画像どうしの重ね合わせに起因する折
り返しアーチファクトを除去した。この複合的なアプローチにより、画像取得時間を大幅
に短縮することにより、及び、脂肪を含む領域からのデータを除外することで脂肪組織の
存在によって発生することとなる温度マッピング誤差を実質的に除去すること(「脂肪抑
制」)により、動きのアーチファクトを大幅に低減させた。
【0213】
正確なMR温度マッピングという問題点を解決するための全く異なるアプローチが、コ
ロラド大学のJ.H.Hankiewiczらによって、最近提案された。MRI温度マ
ップを形成するための彼らの方法は、関心のある範囲の最上部に、キュリー温度(温熱療
法又はHolothermia(登録商標)処置においては、43℃以上など)を有した
ナノ粒子を使用することに基づいている。キュリー温度とは、物質の熱運動が、粒子間の
磁気吸引力よりも強くなる温度のことである。その温度を超えた時には、電磁加熱は、基
本的に停止する。強い温度依存性の磁化(これは、ナノ粒子のキュリー温度の近くで起こ
る)を有したナノ粒子を使用した場合には、NMRにおいて温度依存性の線幅と、それに
伴うMRI強度の変化とを、約1℃の精度で得ることができる。これは、T2重み付け
されたMRI画像内に誘起された明るさの変化から、得られる。組織内に埋め込まれたナ
ノ粒子は、MRIスキャナの静磁場を非一様なものとする局所的な双極子磁場を生成する
こととなり、その結果、NMR線を広げる。磁性粒子が、ナノ粒子のキュリー温度近傍の
温度の関数として磁化の急速な変化を示すことにより、この線の広がりは、温度に依存す
ることとなる。ナノ粒子が加熱された時には、ナノ粒子の組成に応じて、例えば30℃範
囲にわたって温度が増加した時には、MR線幅は、250%超の減少を示すことができる
。磁性粒子の異なる組成(合金及びヘテロ構造)及びサイズは、温度依存性のMR画像コ
ントラストを変化させることとなる。元素を一緒にドーピング(混合)することにより、
ナノ粒子のキュリー温度を、所望に設定することができる。例えば、パーマロイ(FeO
.2NiO.8)は、通常、576℃というキュリー温度を有している。しかしながら、
Cuを50%ドーピングした時には、キュリー温度は、55℃へと下がり、これは、温熱
療法やHolothermia(登録商標)による細胞加熱に最適である。絶対温度を知
るためには、磁性粒子の濃度を知る必要もある。しかしながら、濃度が不明である場合に
は、温熱療法又はHolothermia(登録商標)手順時の局所加熱によって導入さ
れる温度差などの、温度差を測定することができる。MRI画像内に表示される異なる灰
色の濃淡(又は、様々な疑似色)は、初期のベースラインとしてナノ粒子の前処理温度か
ら始まる温度変化のマップを提示するために較正することができる。この技法を使用する
他の利点は、材料がそのキュリー温度に達した時点で磁気加熱が停止するということに基
づいている。これは、温熱療法又はHolothermia(登録商標)処置時に、損傷
性の暴走加熱を防止することができる。
【0214】
本明細書において上述したように、組織及びナノ粒子の位置の監視、カーゴ放出の監視
、及び温度の監視、と同時に、最適な温熱療法又はHolothermia(登録商標)
処置を行うためには、セラノスティックアプローチが好ましい。従来のMRIは、そのよ
うな監視を達成するための好ましい方法の1つではあるけれども、なおも、非リアルタイ
ム表示という欠点、ならびに、深刻な電気的ノイズ及び音響的ノイズという欠点、を有し
ている。これらの問題点は、ニューヨークのMichael Hutchinson博士
によって提案されたULTRA(Unlimited Trains of Radio
Acquisitionsの略)と称される現在開発中の新しいMRIシステム(米国
特許出願公開第2016/0282429号明細書)を使用することによって、除去する
ことができる。従来のMRIシステムでは、単一の走査(数分を要し得る)の中で、3つ
の勾配生成コイル(各次元に1つずつ)を利用して、極めて急速に反転方向にオンオフさ
れる勾配磁場を生成する。加えて、それらは、また、同一時間帯に陽子励起RFパルスを
繰り返し的に使用する(これらのすべては、従来のMRI画像化で発生する電気的ノイズ
及び音響的ノイズの一因となる)。データは、3次元患者空間内の各ボクセルから個別的
にかつ順次的に収集され、その結果、全体的に画像化時間が比較的長くなる。他方、UL
TRA MRIシステムでは、常にオン(変化しない)とされた1つの勾配コイルのみを
使用し、1つのRFパルスのみによってすべての歳差運動陽子を反転させ、これにより、
それらのRF信号を繰り返し的に放射させ、それらを取得して、完全な3次元ボリューム
画像として表示する。MRI磁石の固定された静的磁場上への、一定の単一の勾配磁場の
重ね合わせは、3次元患者ボリューム内の空間に、勾配磁場に対して垂直な、それぞれが
自身の独自の磁場強度を有する一連の「スライス」を形成することとなる。したがって、
空間内のそのような各スライス内における患者の水陽子は、あらゆる他のスライスとは異
なる磁場強度を見て、空間内のあらゆる他のスライス内の陽子とは異なる共振周波数で歳
差運動し、これにより、放出される陽子RF信号強度値を、スライスどうしの間にわたっ
て区別可能なものとする。磁場は、結果的に1つのスライス位置から次なるスライスまで
異なるけれども、各スライス内では一定であるため、データを、すべてのスライスから同
時に収集することができ、フーリエ解析によってコンピュータ内で分離することができ、
各スライスから来るデータを、個別的に把握することができる。従来のMRIシステムに
見られる比較的単純な受信コイルの配置ではなく、ULTRAシステムでは、一連をなす
サイドバイサイドで並置された複数のリングであって、患者の周囲に円筒状に配置される
複数のリングを使用する。各リングは、複数の小さなコイルからなるアレイから構成され
、全体として円筒形のコイルアレイを構成する。任意の所与のスライス内の任意の所与の
ボクセルからのデータ値は、すべてのコイルから同時に検出され、各スライス内の各ボク
セルが周囲のコイル位置のそれぞれから異なる距離にありしたがって計算され得ることの
ために、各スライス内の画素強度マップが作製される。この配置の結果、全体の3次元患
者空間からのすべてのボクセルが、同時に取得されて表示される。このようにして、3次
元空間全体を、わずか1msで画像化することができ、これは、従来のMRI画像化と比
較して250倍~2500倍の速さであり、「リアルタイム」での走査及び表示を可能と
する。従来のMRIで使用されていた勾配スイッチングに起因するRFノイズを除去して
いるため、信号対雑音比(SNR)が優れている。このことも、また、ULTRA MR
Iを、処置時におけるリアルタイムでの3次元的温度測定に関して、理想的なものとする
【0215】
したがって、要約すると、疾病及び身体内でのその位置を診断するためには、ナノ粒子
が、ひいては、これらナノ粒子が接続されている腫瘍細胞(又は関心のある他の細胞)が
、検出されるべきである。それらの検出及び監視は、また、カーゴの放出、処置の進捗、
及び、処置に対する組織反応、を決定することを可能とすることとなり、これにより、副
次的損傷又は副作用を最小化しつつも処置効果を最大化し得るよう、リアルタイムでの処
置修正のためのフィードバックを提供する。これは、ESRスキャナ、MPIスキャナ、
PETスキャナ、CTスキャナ、透視装置、Swift画像化付きMRIスキャナ、及び
/又は、ULTRA MRIスキャナなどの画像診断装置と、温熱療法又はHoloth
ermia(登録商標)処置装置と、を組み合わせたセラノスティックシステムによって
達成することができ、これにより、重ね合わされた温度マップを有した関心のある患者ボ
リュームの画像化と、動き及び介在脂肪に起因する画像内の紛らわしい負のコントラスト
ホールやアーチファクトの除去とのすべてを可能な限りリアルタイムに近い動作で、行う
ことができる。
【0216】
要約すると、ナノ粒子が全身に注入され、それらのターゲットに到達した後には、活性
化エネルギを、好ましくはナノ粒子の又は細胞の共振周波数でもって、それらに対して送
出することができ、これにより、最小量の印加エネルギでもって最大の効果を生成するこ
とができる。これは、強磁性共鳴加熱(FMRH)又は細胞共鳴周波数加熱を使用するこ
とによって最良に達成され、その場合、RFエネルギが、細胞又はナノ粒子に対してそれ
らの共鳴周波数で送出され、それらの電子スピンは、最初は外部磁場によって整列させら
れていたものの、その後、そのようなRFエネルギの印加の結果として、新しい配向状態
へと反転させられ、これにより、RFエネルギが非常に効率的に吸収されて、ナノ粒子に
よって効率的に熱へと変換されることを、可能とする。HETは、健康な細胞を損傷させ
ることなく、精密な処置のために、単独で又はナノ粒子との併用で、使用することができ
る。温熱療法又はHolothermia(登録商標)処置システム装置は、集中したナ
ノ粒子の存在を検出することによって疾病を診断し得るよう、また、処置の進捗を指示し
て監視し得るよう、さらに、処置時に3次元で温度変化を測定して管理し得るよう、MR
I又は他のスキャナなどの走査システムと組み合わせることが好ましい。
【0217】
ホログラフィックエネルギテレポーテーション(HFT)画像化ならびに他の用途
本発明は、また、本明細書において「HET走査」又は「HET画像化」として参照さ
れる新規な形態の画像化をも可能とする。本明細書では医療画像化に関して説明されてい
るけれども、画像化のこの形態は、材料、構造体、及び組成に関する非破壊検査など、他
の多くの用途をも有している。HETは、対象物の内部であっても、空間内の任意の指定
された場所に、高エネルギポイントを生成する方法を提供する一方で、エネルギのない大
きな周囲領域を提供する。その結果、エネルギを、例えば患者の身体内の任意の1つ又は
複数のボクセルへとテレポートすることができ、そこから外向きに放射され、テレポート
先をなす1つ又は複数のボクセルの温度を上昇させるなどの変化をもたらすこととなる。
照射された1つ又は複数のボクセル内で結果的に起こる変化を、検出することができ、選
択された1つ又は複数のボクセルの内容に対してそのエネルギがどのように相互作用した
かについての情報を、伝えることができ、また所望であれば、その照射された1つ又は複
数のボクセルから外向きに放射される際に、身体外へと出る途中で遭遇したボクセルに対
してそのエネルギがどのように相互作用したかについての情報を、伝えることができる。
このようなエネルギは、化学結合、組織密度、血管化の存在、骨密度等に関する情報を提
供し得る測定可能な効果を生成することができ、よって、画像診断ツールとして使用する
ことができる。材料及び構造体では、最小限の加熱に起因する不均一な膨張が、隠れた内
部欠陥を示すことができる。この情報は、たとえその「部分」が患者の血管であっても、
早期の局所的機能不全を防止するために使用することができる。組織処置のためにHET
併用画像診断技法としてHETを使用することは、処置される組織に関しての、温度上昇
、膨張、破壊、構造変化等を示すことなどによって、処置の有効性に関するデータを提供
することもできる。これは、ボクセル単位で、平面的な又は容積的な関心領域(ROI)
を走査することにより、行うことができる。
【0218】
MRI又はIR画像化などのエネルギ検出に関する任意の方法(使用されるエネルギの
タイプに応じて選択される)は、データを収集するために、患者の身体(又は対象物)の
外部で使用することができる。本明細書において上述したようなチャネル状態推定の使用
は、エネルギがその起点から検出器又は検出器アレイに向けて外向きに移動する際に、エ
ネルギの反射及び散乱を相殺するために使用することができる。これにより、発光ボクセ
ルからの直線内においてあるいは選択された複数の直線内において検出されたエネルギパ
ルスに対して行われた変化を正確に測定することができることとなる。このチャネル状態
補正方法は、エネルギ源が身体内の任意の場所へとテレポートされる場合には、あるいは
、エネルギ源が身体内へとテレポートされずに身体外に位置している場合であっても、例
えばCT走査で行われるようにして、エネルギが、身体内を通過して反対側へと出て行く
ことを可能とする。しかしながら、CT走査とは異なり、エネルギを身体を通してまっす
ぐに通過させて断層撮影解析及び画像再構成を行うに際して、電離放射線を使用する必要
はない。通常、散乱は、そのような走査(非電離エネルギ又は高周波エネルギを使用)が
有用な情報を提供することを妨げるけれども、散乱ノイズを相殺することで、正確なデー
タを収集することができる。身体内のボクセル内へとテレポートされたエネルギは、ボク
セル内でわずかな量の加熱を引き起こすことができ、これは、高感度赤外線カメラシステ
ムによって、あるいは、MRTh走査によって、身体外から測定することができる。
【0219】
身体内と身体外との2つの建設的干渉ポイントを有してHETを行うと、2つの建設的
干渉領域どうしが絡み合うこととなる。その結果、建設的干渉ポイントにおける身体内条
件が変化した場合(例えば、吸収によってなど)、その変化は、身体外の第2の建設的干
渉ポイントにおいて検出可能となることとなる。よって、外部の建設的干渉ポイント(D
EP)の外部監視は、吸収及び散乱の効果を相殺するためのチャネル状態補正を必要とす
ることなく、身体内の特定のボクセルに関するデータを提供することができる。本質的に
は、エネルギは、身体内のうちの、そこで見つけた状態によって変更されるスポットへと
テレポートされ、その後、身体内のDEPポイントでのエネルギに関する影響のみを測定
する検出器に向けて、身体外へとテレポートされる。この方法を使用することにより、身
体内の様々な場所でDEPsを生成して、関心のある領域(ROI)全体に関して走査を
行うことができる。1つの建設的干渉ポイント(DEP)を、(好ましくは順次的に)身
体内の多くの異なるポイントで順次的に生成し得るけれども、身体外で生成されたDEP
は、検出器を配置し得る同じ単一の位置に常に配置することができる。この情報を使用す
ることにより、例えば、MRI走査画像又はCT走査画像において見られるものなどの、
密度に関する3次元マップタイプ画像を生成することができる。しかしながら、CT走査
において使用されるような電離X線は、必要ではなく、また、MRIスキャナで使用され
るような複雑な磁石も、必要ではない。この技法は、「HETエンタングルド走査」とし
て参照される。
【0220】
HET MRI走査
MRIスキャナは、電離放射線を一切使用することなく、健康な細胞と疾病細胞との相
違を非侵襲的に決定し得る能力において、独特なものである。これには、癌性悪性腫瘍の
検出だけでなく、他の病状の検出も含まれる。MRI走査では、T1データとT2データ
とを検出することができ、健康な細胞と疾病細胞とを独自に分類することができ、CT走
査では対応できないレベルで軟部組織の詳細なデータを得ることができる。MRIでは、
強磁場と、3つの磁場勾配生成コイルとを使用してこれを達成するものであるが、3つの
コイルは、様々な電力設定とタイミング設定とで迅速にオンオフがスイッチングされなけ
ればならない。残念なことに、このことが、走査プロセスを遅いものとし、その結果、走
査が完了するまで、患者は不快にも30分以上も横になったままでいなければならない。
長時間の走査が必要であることにより、子供やペットに関する走査は、麻酔をかけない限
り不可能であり、リスクが高くなる。また、この時間遅延は、1日あたりに実行可能な走
査の数を制限し、収益性を制限する。CT走査及びMRI走査の双方とも、約1mmより
小さい組織を識別できないことのために、高い組織分解能を提供する能力には限界がある
。初期の癌は、1mmよりもはるかに小さく、そのため、これらのシステムでは初期段階
で診断できないため、これは非常に重要である。癌が初期の段階で発見された時には完治
の可能性が非常に高いことのために、これは特に残念なことである。
【0221】
さらに、癌が転移した時には、小さな癌細胞及び癌幹細胞が身体の他の部位へと移動し
て、他の位置でより大きな癌を増殖させてしまい、通常は致命的な状態となってしまう。
小さな癌細胞及び癌幹細胞が大きな腫瘍へと増殖する前に、検出可能であって画像化可能
であれば、それらを破壊することができて、全身に癌が広範囲に転移することを防止する
ことができる。
【0222】
癌による全死亡者のうちのほぼ95%は、転移によるものである。
【0223】
HETを、MRI技術と一緒に使用することができ、これにより、これらすべての問題
点を解決する優れたタイプのMRIスキャナを製造することができる。このようなシステ
ムは、HET MRIスキャナとして参照される。
【0224】
通常、MRIスキャナは、勾配磁場の活性化及び不活性化(膨張及び収縮を引き起こす
)の複雑なパターンでアドレスされる勾配コイルを必要とする。経時的に生成される多く
の異なる勾配磁場は、互いに加算され、これにより、多くの異なる方向において、空間内
に、一定の磁場強度からなる多くの異なる平面が生成される。異なる周波数のパルスRF
信号は、磁場強度が一定である所与の平面内に位置した水分子の水素原子内の歳差運動陽
子を励起することができる。様々な特定の複雑な態様で勾配を変更することにより、よっ
て、一定磁場強度をなす平面の向きを変更するとともに歳差運動陽子の位相を変更するこ
とにより、データを、一度につき、一平面で、一直線で、及び一ポイントで、収集するこ
とができ、これにより、3次元MRI画像データを生成することができる。勾配を変更す
るには、勾配コイルへの通電を解除して、磁場を崩壊させ、その後、勾配コイルへの通電
を再開して、新たな構成で磁場を生成する必要がある。このプロセスには時間を要する。
加えて、成長する磁場及び崩壊する磁場は、スキャナ内の金属製の導体及び構造体を、引
きつけたり、応力を与えたり、移動させたりし、これにより、走査時間全体の間に極めて
大きなノイズを生成する。さらに、身体内の異なる平面どうしを区別する能力は、空間内
の隣接領域における磁場強度の微妙な違いを検出することが困難であることのために、制
限されている。その結果、従来の全身MRI装置では、一般に、1mm以上のサイズの特
徴物(ボクセル)を表示することへと、制限されていた。
【0225】
改良されたMRIスキャナと一緒にHETを使用することにより、これらの欠点を除去
することができる。一実施形態では、従来の磁石(0.6テスラ~3テスラという磁場強
度を有したものなど)を有したMRIスキャナは、勾配コイルを使用することなく、使用
することができる。勾配スイッチングの除去は、MRIスキャナの通常のノイズを除去す
ることとなるとともに、必要であった長い走査時間を除去することとなる。勾配コイルに
代えて、HETを使用することができ、これにより、固定磁場内に配置された患者内の任
意の特定のポイントへと、RFパルスを送達することができる(RF DEPを生成する
ことができる)。これにより、水-水素-陽子の歳差運動の励起及び反転が、建設的干渉
のそのポイントのみにおいて、適正な共振周波数で、そのポイントでの既存の磁場強度で
、引き起こされることとなる。スキャナ内のどこにでもある検出コイルは、RFパルスが
停止して陽子が固定磁場軸の周りの歳差運動に戻って減衰する時に生成されるエコー信号
を取得することとなる。T1及びT2のデータは、従来のMRI走査の場合と同様に検出
可能となる。
【0226】
光共振励起のための新規な方法がここに開示され、従来の低RF周波数で共振を生成さ
せることをなおも可能としつつ、生成されるRF DEPのサイズが、サブミリメートル
寸法に達することを可能とする。1mm以下というサイズのDEPを生成するためには、
DEPのサイズが、使用されるエネルギの波長のサイズと同程度であるために、テレポー
トされるエネルギは、300GHz以上の周波数でなければならない。しかしながら、従
来のMRI磁場強度を使用した場合には、水-水素陽子に関して必要な共鳴周波数は、波
長が2.3mの130MHzよりも小さい。その結果、必要とされる微細なDEPsを生
成するために必要なエネルギ周波数(300GHz以上)は、従来のMRIシステムでは
共振を生成しない。この問題点を解消するために、レーザによって生成されたIRビーム
又はNIRビームを、必要な共振周波数で変調することができる(例えば、1.5テスラ
の磁石で使用する場合には63MHz、あるいは、3テスラの磁石で使用する場合には1
26MHz)。これは、AM変調などの従来的な方法で行うことができる。必要とされる
ビームを生成するための別の方法は、IRビーム又はNIRビームと、この第1のビーム
からわずかにダウンコンバートされた又はアップコンバートされた第2のIRビーム又は
NIRビームとを使用して開始し、これにより、合計周波数のサイドバンドと差分周波数
のサイドバンドとを生成し、一方のサイドバンドを、必要とされる共振周波数とすること
である。これを行うための1つの方法については、図13C及び図13Dを参照して本明
細書において詳細に説明されている。搬送波は、IR周波数又はNIR周波数(300G
Hz~430THzなど)において、700nm(0.7ミクロン)のような小さなDE
Pスポットを生成することができる。比較すると、赤血球は、直径が約7ミクロンである
。この高周波搬送波は、サブミリメートルDEPの生成を可能とすることとなるけれども
、水素陽子の共鳴周波数で変調されたサイドバンドのみが、水の陽子を励起して、MRI
エコー信号を生成することとなる。
【0227】
解像度を高めるために、選択されたボクセルのサイズが小さくなると、エコー信号強度
が減少することとなり、検出が困難なものとする。エコー強度のこの減少を補償するため
に、より高出力の繰り返しRFパルスを使用することができ、これにより、ボクセル内の
陽子が完全に飽和するまで、ボクセル内のより多くの陽子に対してエネルギを与えること
ができる。加えて、時間平均化の結果としてより強いエコーを生成し得るよう、RFパル
スを、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。これにより、信号雑音比が向上し、
有用な信号を検出することができる。アドレスされているボクセルから充分な強度の信号
が検出された後に、スキャナは、患者内の隣接ポイントへと(別のDEPとして)RFパ
ルスを送出することができ、これにより、関心のある領域(ROI)内のすべてのボクセ
ルが検査されて画像を作製し得るようになるまで、プロセスを繰り返すことができる。
【0228】
患者内の未知のボクセル位置から来るエコー放出の起源の正確な位置を決定するために
従来のMRI走査で使用されるような、検出されたデータのフーリエ変換も、また、必要
ではない。これは、一度に受領したすべてのデータが、RF DEPがHETによって生
成された既知のボクセル位置から来ていることが理解されているからである。
【0229】
何らの勾配を使用することなく、患者の身体は、一様な磁場内に位置している。その結
果、特定の固定されたRF周波数帯域を使用することにより、生成される周波数を変更す
る必要なく、身体のあらゆるポイントからエコーを順次的に引き出すことができる。DE
Pの位置を、患者の身体内のすべての異なる位置へと移動させることは、そのサイズに関
係なく、コンピュータ又はテレビモニタ上で毎秒600個もの磁場を生成するために行わ
れるラスター走査と同様の3次元走査パターンで迅速に行うことができる。データ取得時
間を高速化するために、複数の別個の受信コイルを、患者が内部に位置しているトンネル
全体にわたってすなわち走査領域全体にわたって配置することができる。位相を検出する
ことで、ひいては、様々な受信コイルからの信号の受領時間を検出することで、受信した
エコーの生成源を特定することができ、これにより、身体内の複数の場所に同時にRF
DEPsを配置することが可能とされる。
【0230】
患者の全身の走査をさらに高速化するために、第2実施形態では、常にオンになってい
る単一の勾配コイルを使用することができる。これは、身体を、異なる磁場強度からなる
複数の個々の薄い平面へと、分割する。各平面内の細胞が共振信号を生成するためには、
各平面は、異なるRF周波数帯域によって刺激されなければならない。
【0231】
その結果、必要とされるすべての異なるRF周波数帯域を、全身に対して同時に送出す
ることができる。しかしながら、各RF周波数帯域は、適正な対応する磁場強度を有した
1つの平面のみにおいて共振を刺激することとなる。これにより、組織の異なる各平面か
ら来るすべてのデータは、他のすべての平面から来るすべてのデータに対して、容易に識
別可能である。したがって、別個の各平面を、他のすべての平面と同時に(異なるポイン
トでDEPsを生成することによって)走査することができ、これにより、患者の身体全
体に関する走査時間を劇的に短縮することができる。
【0232】
HETは、多くの非医療応用にも使用することができる。HETは、情報の有無にかか
わらず、所望の位置へとエネルギをテレポートするという独自の能力を提供するけれども
、エネルギ又は情報は、比較的大きな介在領域にわたって検出可能ではない。
【0233】
本発明が様々な他の実施形態を有し得ることは、理解されよう。さらに、本明細書にお
いて図示されて説明された本発明の形態は、本発明の様々な好ましい実施形態を構成する
けれども、これは、本発明の可能なすべての形態を例示することを意図したものではない
。また、使用された用語が、限定のためではなく説明のための用語であること、及び、開
示された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い得ることは、理
解されよう。本発明の範囲は、与えられた実施例のみに限定されるものではない。
【0234】
本明細書において使用された略語
CIA-コヒーレント強度増幅
DCG-重クロム化ゼラチン
DEC-所望のエネルギ相殺
DEP-所望のエネルギピーク
HET-ホログラフィックエネルギテレポーテーション
HOE-ホログラフィック光学素子
TiCSI-時間相関定在波干渉
【図面の簡単な説明】
【0235】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17
図18
図1
図2
図3A
図3B
図3C
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図5B
図5C
図5D
図5E
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図9B
図9C
図9D
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図11
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図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレントエネルギ源から、建設的干渉状態のコヒーレントエネルギを含有するために本方法によって生じる空間の規定された第1領域へと、エネルギをテレポートする方法であって、
該方法は、
建設的干渉状態のコヒーレントエネルギを含有するための前記空間の規定された第1領域を選択するステップと、
破壊的干渉状態のコヒーレントエネルギを含有するための空間の規定された第2領域を選択するステップであって、前記空間の規定された第1領域が、前記空間の規定された第2領域に少なくとも部分的に取り囲まれているステップと、
前記空間の規定された第1領域及び前記空間の規定された第2領域において生成されるべきエネルギパターンのエネルギプロファイルを複素曲線として規定するステップと、
前記エネルギプロファイルをフーリエ解析して、異なる振幅と周波数と位相とを有するフーリエ成分正弦波のパラメータを決定するステップと、
前記空間の規定された第1領域と前記空間の規定された第2領域とを、少なくとも2対の共線的に重なり合った相互にコヒーレントなコヒーレントエネルギビームで照射するステップであって、前記相互にコヒーレントなビームの対はそれぞれ結果として生じる定在波パターンを生成し、これにより少なくとも2つの結果として生じる定在波パターンを生成するように、互いに重なり合っており、前記生成された結果として生じる定在波パターンは、前記結果として生じる定在波パターンのそれぞれが前記空間の規定された第1領域及び前記空間の規定された第2領域と交差するように、互いに共線的にオーバーラップする、ステップと、
前記生成された結果として生じる定在波パターンのそれぞれが、前記フーリエ成分正弦波のうちの異なる1つに対応する振幅と位相と周波数とを有するように、前記重なり合った、生成された結果として生じる定在波パターンがフーリエ合成を受けて前記エネルギパターンを形成して、前記空間の規定された第1領域にわたって建設的干渉を生成し、前記空間の規定された第2領域にわたって破壊的干渉を生成するように、前記生成された結果として生じる定在波パターンのそれぞれの振幅と位相と周波数とを、他の前記生成された結果として生じる定在波パターンに対して、選択された瞬間に調整するステップと、
を含み、
これにより、破壊的干渉状態のコヒーレントエネルギを含有する前記空間の規定された第2領域によって、前記コヒーレントエネルギ源からのエネルギが、前記コヒーレントエネルギ源から前記空間の規定された第1領域にテレポートされる、方法。
【請求項2】
前記コヒーレントエネルギを使用するステップであって、該コヒーレントエネルギは建設的干渉状態で定在波内に位置することにより、血管の拡張、熱ショックの生成、化学的カーゴの放出、保護コーティングの除去、アブレーション、壊死、細胞の損傷、ウイルスの損傷、細菌の損傷、真菌の損傷、腫瘍の損傷、癌幹細胞の損傷、血管プラークのアブレーション、加熱、瘢痕化、アミロイドプラークのアブレーション、タウタンパク質のアブレーション、神経もつれ箇所のアブレーション、骨及び狭窄箇所のアブレーション、アポトーシスの開始、蒸発、有糸分裂の途絶、神経発火の開始、神経発火の阻害、イオン化、DNAの損傷、遺伝子発現の活性化、遺伝子発現の抑制、タンパク質合成の活性化、タンパク質合成の抑制、リン酸化の活性化、リン酸化の抑制、分子情報の検出、及び電子情報の検出のうちの少なくとも1つを実行するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者の少なくとも一部を前記規定された第1領域に配置するステップと、
患者内で生成された定在波内における建設的干渉状態のエネルギによって照射された細胞又は他の構造から放射されるエネルギを観測するステップと、
前記細胞又は他の構造の座標を決定し、かつ、該座標のそれぞれにおいて患者内の前記生成された結果として生じる定在波内における建設的干渉状態の前記エネルギによって照射された前記細胞又は他の構造から放射される前記観測されたエネルギを解析するステップと、
前記解析から画像を形成するステップと、
前記画像内の情報を利用して処置計画を作成するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
HET MRIスキャナを提供するステップであって、前記HET MRIスキャナは、
静磁場を、前記HET MRIスキャナの前記静磁場内に位置した患者の身体に印加するように構成された静磁場発生器であって、前記患者内で軸まわりに回転する陽子の軸を、第2軸まわりに歳差運動させる静磁場発生器と、
前記患者の身体内に定在波パターンを生成するために、多数の無線周波数放射素子を含む波形発生器と、
前記患者の身体内の原子によって生成される無線周波数磁気共鳴エコーを検出するための受信機と、
前記受信機によって検出された無線周波数磁気共鳴エコーを処理して、HET MRIデータを取得するためのプロセッサと、
前記HET MRIスキャナの上述の構成要素を制御するためのコントローラと、を備える、HET MRIスキャナを提供するステップと、
そして、
前記患者の身体を前記HET MRIスキャナ内に配置するステップと、
建設的干渉状態の無線周波数波の周波数と、特定ポイントにおける磁場強度の組み合わせにより、前記ポイントに位置した細胞又は他の身体構造内で前記陽子において共鳴を生成し、前記ポイントにおける前記陽子にスピン軸を反転させて、ここで、該スピン軸が前記HET MRIスキャナ内の第3軸まわりに歳差運動するように、前記波形発生器を制御して、前記患者の身体内の前記特定ポイントにおいて定在波パターン内で建設的干渉状態の前記無線周波数波の生成を開始するステップと、
前記波形発生器を制御することにより前記無線周波数波の生成を妨げ、結果的に前記ポイントにおける前記HET MRIスキャナの前記スピン軸の配向を以前のスピン軸配向に向かって低下させて、これにより、前記ポイントに位置した前記陽子からの再放射エコーを開始させるステップと、
前記エコーを検出かつ解析し、データを提供するステップと、
上述のステップを繰り返すことにより、前記患者の身体において選択した容積で種々のポイントからエコーを引き出すステップと、
前記データを処理し、そこから画像を形成するステップと、
前記画像内の情報を利用して処置計画を作成するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記HET MRIスキャナの波形発生器の素子は、前記患者の身体内の任意のポイントにおける細胞及び他の身体構造内で共鳴を、前記ポイントのそれぞれにおける既存の磁場と共に生成するのに適切な周波数を有する少なくとも1つのビームを生成するためにオーバーラップするビームを提供する多重化レーザを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記HET MRIスキャナは、前記患者の身体内の1つ又は複数の他のポイントからエコー発生位置を検出するために、前記HET MRIスキャナ内の異なる位置にそれぞれ、1つ又は複数の追加の受信機をさらに含み、
それぞれの該受信機からの位相及び受信時刻を含むエコーデータを処理し、そこから画像を形成するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記HET MRIスキャナは、少なくとも1つの勾配コイルをさらに含み、該少なくとも1つの勾配コイルは、単一の静的勾配磁場を生成するように動作し、
ここで、前記波形発生器を制御することにより前記無線周波数波を生成する前記ステップは、多数の周波数において無線周波数波帯域を生成することを含み、前記多数の周波数の各構成要素は、前記勾配磁場に対して固定された角度関係を有する特定の平面内で建設的干渉状態にあり、
ここで、それぞれの該平面からのエコーは、前記患者の身体内の前記勾配磁場に対して同一の前記固定された角度関係を有する他の平面からのエコーとは異なってもよく、
ここで、上述のステップを繰り返すことにより、前記患者の身体内の各所望の平面内の他のポイントからエコーを引き出すとともに、多数の平面が同様にスキャンされており、
前記データを処理し、そこから画像を形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の周囲に前記多数の無線周波数放射素子を集めるステップであって、
前記放射素子を、好ましくは等間隔に配置し、かつ、好ましくは円の円周上に配置するステップと、
本発明に従って、前記放射素子に定在波を形成させるステップと、
a.前記患者内の細胞及び他の構造に関するデータ、及び
b.前記患者内の細胞及び他の構造の処置
のうちの少なくとも一方を提供するために、前記放射素子によって放射される前記エネルギにより形成される各定在波内のアンチノードが、前記患者内の所望の共通ポイントにおいてオーバーラップするように、前記定在波のそれぞれの位相を調整するステップと、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記HET MRIスキャナの波形発生器の素子は、レーザビームにより光学的にエネルギ付与されるフォトダイオードによって、電気的にエネルギ付与される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
HETスキャナを提供するステップであって、前記HETスキャナは、
建設的干渉が生成される、前記空間の第1領域を規定する手段と、
破壊的干渉が生成される、前記空間の第2領域を規定する手段と、
建設的干渉が生成される前記空間の第1領域及び破壊的干渉が生成される前記空間の第2領域において生成される前記所望のエネルギパターンのエネルギプロファイルを表す前記複素曲線を生成する手段と、
前記複素曲線をフーリエ解析して、異なる振幅と周波数と位相値とを有する一連の算出された正弦波のパラメータを決定する手段と、
前記コヒーレントエネルギ源と、
前記コヒーレントエネルギを、前記算出された正弦波の数と同数のコヒーレントエネルギビームを有する第1組のコヒーレントエネルギビームと、該第1組のコヒーレントエネルギビームと同数のコヒーレントエネルギビームを有する第2組のコヒーレントエネルギビームと、に分割する手段と、
前記第1組のコヒーレントエネルギビームのそれぞれのコヒーレントエネルギビームの振幅と周波数と位相とを、変調コヒーレントエネルギビームのそれぞれが、前記一連の算出された正弦波から異なる1つのフーリエ成分正弦波の振幅と周波数と位相とを有するように、変調する手段と、
前記第1組の重なり合ったコヒーレントエネルギビームから前記変調コヒーレントエネルギビームを第1の共線変調ビームに結合する手段と、
前記第2組のコヒーレントエネルギビームのそれぞれのコヒーレントエネルギビームの振幅と周波数と位相とを、変調コヒーレントエネルギビームのそれぞれが、前記一連の算出された正弦波から異なる1つのフーリエ成分正弦波の振幅と周波数と位相とを有するように、変調する手段と、
前記第2組の重なり合ったコヒーレントエネルギビームから前記ビームを第2の共線変調ビームと結合する手段と、
前記第1の共線変調ビームを、前記第2の共線変調ビームと反対方向から結合し、単一の共線定在波患者走査ビームを形成する手段と、
前記単一の共線患者走査ビーム内に患者を配置する手段と、
前記単一の共線患者走査ビームに前記患者の体内の異なる領域を走査させ、それにより前記単一の共線患者走査ビームと前記患者の体内の前記異なる領域との相互作用から生じる前記患者の体内の前記異なる領域に関する情報を検出する手段と、
前記検出された情報を画像に変換する手段と、
前記患者に処置を提供するために前記患者走査ビームの強度を制御する手段と、を備える、HETスキャナを提供するステップを、さらに含み、
その後すぐに、
前記建設的干渉が生成される、前記空間の第1領域を規定するステップと、
前記破壊的干渉が生成される、前記空間の第2領域を規定するステップと、
前記空間の第1領域及び前記空間の第2領域において生成される前記所望のエネルギパターンのエネルギプロファイルを表す前記複素曲線を生成するステップと、
前記複素曲線をフーリエ解析して、異なる振幅と周波数と位相値とを有する一連の算出された正弦波のパラメータを決定するステップと、
前記コヒーレントエネルギ源にコヒーレントエネルギビームを生成させるステップと、
前記コヒーレントエネルギビームを、前記一連の算出された正弦波と同数のコヒーレントエネルギビームを有する第1組のコヒーレントエネルギビームと、該第1組のコヒーレントエネルギビームと同数のコヒーレントエネルギビームを有する第2組のコヒーレントエネルギビームと、に分割させるステップと、
前記第1組のコヒーレントエネルギビームのそれぞれのコヒーレントエネルギビームの振幅と周波数と位相の変調を、その前記コヒーレントエネルギビームのそれぞれが、前記一連の算出された正弦波から異なる1つのフーリエ成分正弦波の振幅と周波数と位相とを有するように、実施するステップと、
前記第1組のコヒーレントエネルギビームから前記変調コヒーレントエネルギビームを前記単一の共線第1変調ビームに結合するステップと、
前記第2組のコヒーレントエネルギビームのそれぞれのコヒーレントエネルギビームの振幅と周波数と位相の変調を、前記第2組のコヒーレントエネルギビームからそれぞれのコヒーレントエネルギビームが、前記一連の算出された正弦波から異なる1つのフーリエ成分正弦波の振幅と周波数と位相とを有するように、実施するステップと、
前記第2組のコヒーレントエネルギビームから前記変調コヒーレントエネルギビームを前記単一の共線第2変調ビームと結合するステップと、
前記単一の共線第1変調ビームと前記単一の共線第2変調ビームとを反対方向から結合させ、前記単一の共線患者走査ビームを形成するステップと、
前記単一の共線患者走査ビーム内に前記患者を配置するステップと、
前記単一の共線患者走査ビームを動かして、前記患者内の前記異なる領域を走査させるステップと、
前記単一の共線患者走査ビームから前記情報を検出するステップと、
前記検出された情報を前記画像に変換するステップと、
前記画像内の前記情報を利用して前記処置計画を作成するステップと、を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記処置計画に従って前記患者に処置を提供するために前記患者走査ビームの強度を制御するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記規定された第1領域及び前記規定された第2領域内に局所化された前記エネルギパターンは、異なる位置に動かされて、体積をスキャンアウトする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コヒーレントエネルギ源から、建設的干渉状態のコヒーレントエネルギを含有するために本システムの動作によって生じる空間の規定された第1領域へと、エネルギをテレポートするシステムであって、
該システムは、
前記コヒーレントエネルギ源と、
前記規定された第1領域にわたって建設的干渉状態の前記コヒーレントエネルギを含有するための前記空間の規定された第1領域を選択する手段と、
規定された第2領域にわたって破壊的干渉状態の前記コヒーレントエネルギを含有するための前記空間の規定された第2領域を選択する手段であって、前記空間の規定された第1領域が、前記空間の規定された第2領域に少なくとも部分的に取り囲まれている、手段と、
前記空間の規定された第1領域及び前記空間の規定された第2領域において生成されるべきエネルギパターンのエネルギプロファイルを複素曲線として規定する手段と、
前記エネルギプロファイルをフーリエ解析して、異なる振幅と周波数と位相とを有するフーリエ成分正弦波のパラメータを決定する手段と、
前記空間の規定された第1領域と前記空間の規定された第2領域とを、前記コヒーレントエネルギ源からの少なくとも2対の共線的に重なり合った相互にコヒーレントなコヒーレントエネルギビームによって照射する手段であって、
前記相互にコヒーレントなビームの対はそれぞれ結果として生じる定在波パターンを生成し、これにより少なくとも2つの結果として生じる定在波パターンを生成するように、互いに重なり合っており、
前記生成された結果として生じる定在波パターンは、前記結果として生じる定在波パターンのそれぞれが前記空間の規定された第1領域及び前記空間の規定された第2領域と交差するように、互いに共線的にオーバーラップする、手段と、
前記生成された結果として生じる定在波パターンのそれぞれが、前記フーリエ成分正弦波のうちの異なる1つに対応する振幅と位相と周波数値とを有するように、照射中、前記重なり合った定在波パターンがフーリエ合成を受けて、前記空間の規定された第1領域及び前記空間の規定された第2領域にわたって前記エネルギパターンを形成するように、前記生成された結果として生じる定在波パターンのそれぞれの振幅と位相と周波数とを、他の前記生成された結果として生じる定在波パターンに対して、選択された瞬間に調整する手段と、
を備える、システム。
【請求項14】
前記規定された第1領域及び前記規定された第2領域における前記エネルギは、異なる位置に動かされて、体積をスキャンアウトする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
建設的干渉が生成される、前記空間の第1領域を規定する手段と、
破壊的干渉が生成される、前記空間の第2領域を規定する手段と、
建設的干渉が生成される前記空間の第1領域において生成される所望のエネルギパターン及び破壊的干渉が生成される前記空間の第2領域において生成される所望のエネルギパターンの前記エネルギプロファイルを表す複素曲線を生成する手段と、
前記複素曲線をフーリエ解析して、異なる振幅と周波数と位相値とを有する一連の算出された正弦波のパラメータを決定する手段と、
コヒーレントエネルギ源と、
前記コヒーレントエネルギを、前記算出された正弦波の数と同数の第1組のコヒーレントエネルギビームと、該第1組のコヒーレントエネルギビームと同数の第2組のコヒーレントエネルギビームと、に分割する手段と、
前記第1組のコヒーレントエネルギビームのそれぞれのコヒーレントエネルギビームの振幅と周波数と位相とを、各コヒーレントエネルギビームが、前記一連の算出された正弦波から異なる1つのフーリエ成分正弦波の振幅と周波数と位相とを有するように、変調する手段と、
前記第1組の変調されて重なり合った共線コヒーレントエネルギビームから前記コヒーレントエネルギビームを第1の変調ビームに結合する手段と、
前記第2組のコヒーレントエネルギビームのそれぞれのコヒーレントエネルギビームの振幅と周波数と位相とを、各コヒーレントエネルギビームが、前記一連の算出された正弦波から異なる1つのフーリエ成分正弦波の振幅と周波数と位相とを有するように、変調する手段と、
前記第2組の変調されて重なり合ったコヒーレントエネルギビームから前記ビームを第2の変調ビームと結合する手段と、
前記第1の変調ビームを、前記第2の変調ビームと反対方向から結合し、単一の共線定在波患者走査ビームを形成する手段と、
前記単一の共線定在波患者走査ビーム内に患者を配置する手段と、
前記単一の共線定在波患者走査ビームに前記患者の体内の異なる領域を走査させ、それにより前記単一の共線定在波患者走査ビームと前記患者内の前記異なる領域との相互作用から生じる前記単一の共線定在波患者走査ビーム内に、前記異なる領域に関する情報を受信する手段と、
前記単一の共線定在波患者走査ビームからの情報を検出する手段と、
前記検出された情報を画像に変換する手段と、
前記患者に処置を提供するために前記単一の共線定在波患者走査ビームの強度を制御する手段と、をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【外国語明細書】