(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102268
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】乾燥粉末吸入製剤、および肺の治療的処置のためのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 9/72 20060101AFI20240723BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/4748 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240723BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240723BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240723BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240723BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240723BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K9/72
A61K45/00
A61K9/14
A61K31/282
A61K31/337
A61K31/4748
A61K31/519
A61K31/7048
A61K33/24
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/36
A61P11/00
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076338
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2021538005の分割
【原出願日】2019-12-27
(31)【優先権主張番号】18248302.4
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514084347
【氏名又は名称】ユニベルシテ リブレ デ ブリュッセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アミーギ,カリム
(72)【発明者】
【氏名】ウォートズ,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ロジエール,レミ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乾燥粉末吸入製剤、および肺の治療的処置のためのその使用法を提供する。
【解決手段】乾燥粉末吸入製剤であって、少なくとも1つの活性医薬成分(API)と、モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのトリグリセリドを含む脂質マトリックスと、を含み、前記脂質マトリックスは、硬化ヒマシ油であり、前記少なくとも1つのAPIと硬化ヒマシ油との間の比率は、10/90~88/12である、乾燥粉末吸入製剤とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥粉末吸入製剤であって、
少なくとも1つの活性医薬成分(API)と、
モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのトリグリセリドを含む脂質マトリックスと、を含み、前記脂質マトリックスは、硬化ヒマシ油であり、
前記少なくとも1つのAPIと硬化ヒマシ油との間の比率は、10/90~88/12である、乾燥粉末吸入製剤。
【請求項2】
前記少なくとも1つのAPIと前記少なくとも1つのトリグリセリドとの間の重量比率:API/硬化ヒマシ油は、前記乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、25/75~75/25である、請求項1に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項3】
少なくとも1つのAPIと硬化ヒマシ油との間の重量比率は、前記乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、40/60~60/40である、請求項1に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項4】
PEG化賦形剤または多糖類からなる群から選択される長期肺滞留賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項5】
前記長期肺滞留賦形剤は、PEG化賦形剤であり、前記乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、0.1wt%~20wt%の量で存在する、請求項4に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項6】
物理化学的特性および/または空気力学的特性を改善する賦形剤を、前記乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、0.1wt%~80wt%の量でさらに含み、前記賦形剤は、糖アルコール;ポリオール;結晶性糖類;無機塩;有機塩;オリゴ糖類;二酸化チタン;二酸化シリコーン;ステアリン酸マグネシウム;レシチン;アミノ酸;アセスルファムKまたはアスパルテームであるアミノ酸の誘導体;ラウリン酸またはそのエステルおよび塩;パルミチン酸またはそのエステルおよび塩;ステアリン酸またはそのエステルおよび塩;エルカ酸またはそのエステルおよび塩;ベヘン酸またはそのエステルおよび塩;ステアリルフマル酸ナトリウム;ステアリル乳酸ナトリウム;ホスファチジルコリン;ホスファチジルグリセロール;天然および合成の肺表面活性剤;トリグリセリド;糖エステル;リン脂質;コレステロール;タルクからなる群から選択される、請求項1に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項7】
前記APIは、ブデソニド、サルブタモール、フルチカゾン、ベクロメタゾン、モメタゾン、シクレソニド、ホルモテロール、サルブタモール、アルホルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、サルメテロール、イプラトロピウム、アクリジニウム、グリコピロニウム、チオトロピウム、ウンメクリジニウム(unmeclidinium)、モメタゾン、シクレソニド、ホルモテロール、アルホルモテロール、イブプロフェン、トブラマイシン、バンコマイシン、テトラヒドロリプスタチン、クラリスロマイシン、イソニアジド、リファンピン、ピラジナミド、イトラコナゾール、ボリコナゾール、アズトレオナム、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、コリスチン、コリスチメタソディアム、カプレオマイシン、シプロフロキサシン、リファペンチン、ドキシサイクリン、サイクロセリンE、エチオナミド、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン、ホスホマイシン、p-アミノサリチル酸、デヌホソル四ナトリウム、ランコブチド、リバビリン、ザナミビル、ラミナビル(laminavir)、ルピントリビル、ペンタミジン、アンホテリシンB、ポサコナゾール、イサブコナゾール、カプスフンギン(capsufungin)、ミカファンギン、アニデュラファンギン、イロプロスト、レボチロキシン、それらの塩、溶媒和物、水和物、およびそれらのエステル、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、全身治療または局所治療のために肺に吸着する任意の活性医薬成分のような、気管支拡張活性、グルココルチコイド、抗炎症活性、または抗感染症活性を有する小化学分子であるか、前記APIは、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、ナノボディ、核酸からなる群から選択される巨大分子であり、前記APIは、インスリン、プロインスリン、合成インスリン、半合成インスリン、ベバシズマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、トル様受容体アゴニスト、グレリン、IgGモノクローナル抗体、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、ドルナーゼアルファ、シクロスポリンA、アルファ-1アンチトリプシン、インターロイキンアンタゴニスト、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-ω、インターロイキン-2、抗IgE mAb、カタラーゼ、カルシトニン、パラチロイドホルモン、ヒト成長ホルモン、インスリン様増殖因子-I、ヘパリン、rhG-CSF、GM-CSF、Epo-Fc、FSH-Fc、sFc-γ RIIb、mRNAからなる群から選択されるか、前記APIは、抗腫瘍剤である、請求項1に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項8】
前記APIは、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ペメトレキセド、エトポシド、ビノレルビンからなる群から選択される抗腫瘍剤である、請求項7に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項9】
前記APIは、シスプラチンであり、前記少なくとも1つのAPIと硬化ヒマシ油との間の比率は、40/60~60/40である、請求項8に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【請求項10】
二糖類である賦形剤を含む、請求項9に記載の乾燥粉末吸入製剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、乾燥粉末吸入製剤、および肺の治療的処置のためのその使用に関する。
【0002】
乾燥粉末吸入(DPI)療法は現在、例えば喘息の処置などの多くの処置を肺に送達するために主に使用されており、肺における活性医薬成分(API)の滞留を延長するために、乾燥粉末吸入製剤を最適化する多くの努力がなされてきた。
【0003】
吸入は、生体内に事前に分布することなく、肺に対して直接高用量の薬物を投与することを可能にする。これは、一方では、より少量の活性医薬成分(API)が使用され、生体内において消費される見込みがあるようにするだけでなく、APIの毒性が懸念される場合には、直接的なインサイチュ投与が毒性を低下させることを可能にする。
【0004】
さらに、肺は膨大な吸収表面を特徴とするので、吸入は体循環にAPIを送達するための有望な投与経路である。
【0005】
しかしながら、従来の即時放出乾燥粉末吸入(DPI)製剤は、それにもかかわらず、肺内での短すぎる滞留につながる可能性がある。これは、外因性の吸入粒子に対するクリアランスの複数のメカニズム(すなわち、粘液繊毛およびマクロファージのクリアランス)、および体循環への迅速な吸収につながる薬剤粒子の速い溶解のためである。したがって、この短い滞留は、患者の服薬率不良につながる複数回投与を必要とする。即時のAPI放出はまた、薬剤粒子の速い溶解および肺沈着後の肺液中のAPIの高いピーク濃度のために、局所耐性不良の原因でもあり得る。
【0006】
肺におけるAPIの持続可能な滞留プロファイルのために、肺における滞留を延長する特異な賦形剤が同定されている。
【0007】
したがって、肺治療の有効性を増大させるために、さらなる乾燥粉末吸入製剤を開発する必要がある。
【0008】
その文脈で、例えば、高い薬物担持および高い微粒子画分を備えた制御放出シスプラチンベースのDPI製剤が開発された(Levet et al, Int J Pharm 2016)。当該製剤は、低い全身分布につながる制御放出および長期肺滞留能力を示した(Levet et al, Int J Pharm 2017)。
【0009】
この目的のために、Levetらは、1つの抗腫瘍剤(すなわちシスプラチン)用の、肺上皮防御メカニズムによる速すぎる排除を回避するためにPEG化賦形剤を含む特異な製剤に取り組んでいる。Levetらはまた、ポリマーおよび脂質マトリックスなどの異なる担体を比較して、肺における長い滞留時間を可能にし、それによって吸入の効率を増加させている。
【0010】
中でも、Levetらの研究に記載された脂質マトリックスは、脂質マトリックスを提供するための有望な候補として同定されたトリステアリンを含む。
【0011】
さらに、マトリックスを形成するための脂質由来賦形剤でさえも、ポリマーよりも好ましいが、毒性の理由から、治療的処置の他の経路と比較して、吸入のための薬学的組成物について許容され、認可されるのは、脂質マトリックスを形成することができるほんの少しの物質のみである(Pilcer et Amighi, Int J Pharm 2010)。
【0012】
残念ながら、トリステアリンは有望な候補として同定されたが、その市場での入手可能性は医薬化合物としてはかなり限られている。
【0013】
本発明は、例えば単剤療法または多剤療法で使用されるための、少なくとも1つの活性医薬成分(API)と、モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのトリグリセリドを含む脂質マトリックスと、を含む乾燥粉末吸入製剤を提供することによって、これらの障害の少なくとも一部を解決することに直面する。
【0014】
驚くべきことに、医薬グレードが存在するモノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される前記少なくとも1つのトリグリセリドは、API(活性医薬成分)と共に脂質マトリックスを形成することができ、肺における肺沈着速度の増加を示すことが同定された。後者は、肺吸入のために使用することができる。
【0015】
実際に、モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物は、以下のような物理化学的特性を有する化合物である:振盪フラスコ法を使用して測定すると、5より高い、好ましくは14~25、より特には18~25、好ましくは約20のLog P値を有する;および/または、40℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは75℃以上の融点温度を有する。
【0016】
これにより、乾燥粉末吸入器での適切な使用のために、油相でも粘着性ペーストでもない、乾燥粉末の形態で吸入製剤を製造することができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、APIの量と、モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つのトリグリセリドの量との間の比率を変化させることによって、トリステアリンなどの他の従来のトリグリセリドに対してAPIの肺沈着速度を増加させ、APIの溶解プロファイルを調節することが可能になることが、すべての予想に対して同定された。これは、従来のトリグリセリドの場合にはなかった。
【0018】
好ましくは、本発明に係る乾燥粉末吸入製剤は、前記少なくとも1つのAPIと前記少なくとも1つのトリグリセリドとの間の重量比率:API/トリグリセリドが、0.1/99.9~99.9/0.1であり、好ましくは10/90~88/12であり、好ましくは15/85~85/15であり、好ましくは25/75~75/25であり、より好ましくは30/70~70/30であり、特には40/60~60/40であり、例えば約50/50である。
【0019】
有利には、本発明に係る製剤において、前記少なくとも1つのトリグリセリドは、硬化ヒマシ油である。
【0020】
ヒマシ油は、文献において、一般的な賦形剤(米国特許出願公開第2005/0042178号を参照のこと)、または粉砕助剤(国際公開第2013/128283号)の長いリストに記載されている。
【0021】
本発明に係る好ましい一実施形態において、乾燥粉末吸入製剤は、前記少なくとも1つのAPIを、乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、0.1wt%~98wt%含む。本発明に係る第1の特定の実施形態において、前記活性剤は、少なくとも0.1w%/v、または少なくとも0.5w%/v、より好ましくは少なくとも1w%/v、より特には少なくとも5w%/vの、アルコール中での溶解度を有する小化学分子である。この第1の特定の実施形態によれば、前記小化学分子は、0.1%w/v以上のアルコール中での溶解度を有し、本発明においてアルコール可溶性APIとして定義される、任意の活性医薬成分(API)である。このような任意の活性医薬成分(API)は、例えば、ブデソニド、パクリタキセル、ペメトレキセド、イトラコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、サルブタモール、サルブタモール硫酸塩、フルチカゾン、ベクロメタゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ホルモテロール、アルホルモテロール、インダカテロール、インダカテロールマレイン酸塩、オロダテロール、オロダテロール塩酸塩、サルメテロール、イプラトロピウム臭化物、グリコピロニウム臭化物、チオトロピウム臭化物、ウメクリジニウム臭化物、イブプロフェン、バンコマイシン、バンコマイシン塩酸塩、テトラヒドロリプスタチン、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンクリスチン硫酸塩、エトポシド、ビノレルビン、ゲムシタビンなどである。
【0022】
より具体的には、第1の特定の実施形態に係る乾燥粉末吸入製剤は、前記少なくとも1つのAPIを、乾燥粉末吸入製剤の重量に対して、0,1wt%~95wt%、好ましくは1wt%~90wt%、より好ましくは1wt%~85wt%含む。
【0023】
本発明に係る好ましい一実施形態において、乾燥粉末吸入製剤は、前記アルコール可溶性APIが溶解または微細に分散した脂質マトリックス粒子に存在する。
【0024】
本発明に係る第2の特定の実施形態において、前記活性剤は、0,5w%/v未満のアルコール中での溶解度を有する小化学分子である。この第2の特定の実施形態において、前記小化学分子は、0.5%w/v未満、特には0.1%w/v未満、より特には0.01%w/v未満のアルコール中での溶解度を有し、アルコール不溶性APIとして定義される、任意のAPIである。このような任意のAPIは、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ペメトレキセド二ナトリウム、アザシチジン、ベクロメタゾンジプロピオネート、トブラマイシン、アクリジニウム臭化物などである。
【0025】
より具体的には、第2の特定の実施形態に係る乾燥粉末吸入製剤は、前記少なくとも1つのAPIを、乾燥粉末吸入製剤の重量に対して、0,1wt%~95wt%、好ましくは1wt%~90wt%、より好ましくは1wt%~85wt%含む。
【0026】
したがって、乾燥粉末吸入製剤は、前記アルコール不溶性APIを、前記乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、0.1wt%~95wt%、好ましくは1wt%~90wt%、より好ましくは1wt%~85wt%、例えば1wt%~60wt%、または1~50wt%含む。
【0027】
本発明に係る好ましい一実施形態において、乾燥粉末吸入製剤は、前記アルコール不溶性APIが分散した脂質マトリックス粒子に存在する。
【0028】
本発明に係る第3の特定の実施形態において、前記活性剤は、巨大分子である。本発明に係るこの第3の特定の実施形態において、乾燥粉末吸入製剤は、前記少なくとも1つのAPIを、乾燥粉末吸入製剤の重量に対して、0,1wt%~95wt%、好ましくは1wt%~90wt%、より好ましくは1wt%~85wt%含む。
【0029】
したがって、乾燥粉末吸入製剤は、前記巨大分子を、前記乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、0.1wt%~95wt%、好ましくは1wt%~90wt%、より好ましくは1wt%~85wt%、例えば1wt%~60wt%、または1~50wt%含む。
【0030】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明に係る製剤は、PEG化賦形剤などの長期肺滞留賦形剤、または、キトサンもしくはデキストランなどの多糖類をさらに含む。
【0031】
好ましくは、本発明によれば、前記長期肺滞留賦形剤は、PEG化賦形剤であり、前記乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、0.1wt%~20wt%、好ましくは0.2~10wt%、より好ましくは0.5~5wt%の量で存在する。
【0032】
より具体的には、本発明によれば、前記PEG化賦形剤は、ビタミンE由来、または、トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)もしくはジステアロイルホスホエタノールアミンポリエチレングリコール2000(DSPE-mPEG-2000)などのリン脂質由来である。
【0033】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明に係る製剤は、吸入のために、乾燥粉末の物理化学的特性および/または空気力学的特性を改善する賦形剤などの、1つ以上の賦形剤をさらに含む。
【0034】
用語「1つ以上の賦形剤」は、以下から選択される化合物を意味する:糖アルコール;ポリオール(ソルビトール、マンニトール、およびキシリトールなど);単糖類(グルコース、アラビノースなど)、および二糖類(ラクトース、マルトース、スクロース、デキストロース、トレハロース、マルチトールなど)を含む結晶性糖類;無機塩(塩化ナトリウム、および炭酸カルシウムなど);有機塩(乳酸ナトリウム、リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、尿素など);多糖類(デキストラン、キトサン、デンプン、セルロース、ヒアルロン酸、およびそれらの誘導体など);オリゴ糖類(シクロデキストリン、およびデキストリンなど);二酸化チタン;二酸化シリコーン;ステアリン酸マグネシウム;レシチン;アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、スレオニン、リジン、バリン、メチオニン、フェニルアラニンなど);アミノ酸の誘導体(アセスルファムK、アスパルテームなど);ラウリン酸または誘導体(エステルおよび塩など);パルミチン酸または誘導体(エステルおよび塩など);ステアリン酸または誘導体(エステルおよび塩など);エルカ酸または誘導体(エステルおよび塩など);ベヘン酸または誘導体(エステルおよび塩など);ステアリルフマル酸ナトリウム;ステアリル乳酸ナトリウム;ホスファチジルコリン;ホスファチジルグリセロール;天然および合成の肺表面活性剤;ラウリン酸およびその塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムなど);トリグリセリド;糖エステル;リン脂質;コレステロール;タルク。
【0035】
特定の好ましい実施形態において、賦形剤は、マンニトール、デキストラン、またはラクトースである。
【0036】
特定の好ましい実施形態において、賦形剤は、リン脂質、またはコレステロールである。
【0037】
特定の好ましい実施形態において、賦形剤は、マンニトール、デキストラン、ヒアルロン酸、ラクトース、リン脂質、またはコレステロールである。
【0038】
特定の好ましい実施形態において、賦形剤は、マンニトール、デキストラン、リン脂質、またはコレステロールである。
【0039】
特定の実施形態において、前記少なくとも1つの賦形剤は、担体である。
【0040】
本発明に係る製剤の好ましい一実施形態において、前記製剤は、30μm以下、好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは5μm以下の幾何学的粒径分布(PSD)d50を有する微粒子の形態である。
【0041】
本発明に係る製剤のさらに好ましい実施形態において、前記製剤は、60μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下の幾何学的粒径分布(PSD)d90を有する微粒子の形態である。
【0042】
本発明に係る製剤のまたさらに好ましい実施形態において、前記製剤は、40μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは6μm以下の体積平均径D[4,3]を有する粒子の形態である。
【0043】
好ましくは、本発明によれば、前記改善賦形剤および/または前記賦形剤は、前記乾燥粉末吸入製剤の総重量に対して、0.1%w/w~80wt%、好ましくは70wt%未満、より好ましくは60wt%未満、特には50wt%未満、例えば50wt%未満の量で存在する。
【0044】
用語「微粒子用量」または「FPD」は一般に、名目用量の質量(すなわち、吸入デバイスに装填された用量の質量)に対して、5μm未満の空気力学的径を有する粒子の質量を指す。
【0045】
微粒子用量または微粒子画分は、深く吸入することができ、理論的に薬理活性に利用可能である医薬製剤の画分を表す(Dunbar et al, Kona 16: 7-45, 1998)。
【0046】
本発明に係る有利な実施形態において、製剤は、6μm以下、好ましくは5μm以下、好ましくは4μm以下の空気力学的質量中位径(MMAD)を有する微粒子の形態である。
【0047】
MMADは、50%(w/w)の粒子がこれより低い直径を有し、50%(w/w)がこれより高い直径を有する、インパクター中に沈着した粒子の直径を指す。
【0048】
粒子の「空気力学的径」または「dae」という用語は、考慮される粒子と同じ静止空気中での沈降速度を有する、単位密度(すなわち、密度1)の球の直径として定義することができる。「dae」は、吸入可能な粒子の有用な測定を提供し、それらの空気力学的特性に影響を及ぼす因子を考慮する。「dae」は、異なる物理的サイズの粒子を比較するために使用することができ、それらの密度および形状、ならびにそれらの幾何学的サイズを考慮する。
【0049】
「dae」を測定するための方法は、欧州または米国薬局方に記載されている方法であり、ガラスインピンジャー、多段液体インピンジャー(MsLI)、Andersenカスケードインパクター、もしくは次世代インパクター(NGI)などのインパクターまたはインパクション装置を使用する。これらにより、DPI製剤の空気力学的特性(MMAD、幾何学的標準偏差、肺沈着パターン、微粒子用量、微粒子画分を含む)を、シミュレーションされた呼吸条件下で測定することができる。
【0050】
5μm未満の空気力学的径を有する粒子の総用量は、収集効率曲線からの内挿によって計算することができ、微粒子用量(FPD)または微粒子画分(FPF)とみなすことができ、名目API用量(すなわち、DPIデバイスに含まれる用量)の割合として表される。
【0051】
好ましくは、本発明に係る乾燥粉末吸入製剤は、乾燥粉末吸入器、または密閉型乾燥粉末吸入器および/もしくは使い捨て乾燥粉末吸入器において使用されるように、例えばブリスターまたはカプセル中に包装される。
【0052】
特定の実施形態において、前記活性剤は、気管支拡張活性、グルココルチコイド、抗炎症活性、抗感染症活性を有する小化学分子(例えば、抗生物質、抗結核薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬)である。
【0053】
別の具体的な実施形態において、前記小化学分子は、例えば、ブデソニド、サルブタモール、フルチカゾン、ベクロメタゾン、モメタゾン、シクレソニド、ホルモテロール、サルブタモール、アルホルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、サルメテロール、イプラトロピウム、アクリジニウム、グリコピロニウム、チオトロピウム、ウンメクリジニウム(unmeclidinium)、モメタゾン、シクレソニド、ホルモテロール、アルホルモテロール、イブプロフェン、トブラマイシン、バンコマイシン、テトラヒドロリプスタチン、クラリスロマイシン、イソニアジド、リファンピン、ピラジナミド、イトラコナゾール、ボリコナゾール、アズトレオナム、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、コリスチン、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、カプレオマイシン、シプロフロキサシン、リファペンチン、ドキシサイクリン、サイクロセリンE、エチオナミド、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン、ホスホマイシン、p-アミノサリチル酸、デヌホソル四ナトリウム、ランコブチド、リバビリン、ザナミビル、ラミナビル(laminavir)、ルピントリビル、ペンタミジン、アンホテリシンB、ポサコナゾール、イサブコナゾール、カプスフンギン(capsufungin)、ミカファンギン、アニデュラファンギン、イロプロスト、レボチロキシン、それらの塩、溶媒和物、水和物、多形体、ならびにそれらのエステル、それらの組合せ、アナログおよび誘導体などの、全身治療または局所治療のために肺に吸収される任意の活性医薬成分である。
【0054】
またさらなる実施形態において、前記活性剤は、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、ナノボディ、核酸などの巨大分子である。
【0055】
好ましくは、上述の本発明によれば、前記巨大分子は、インスリン、プロインスリン、合成インスリン、半合成インスリン、ベバシズマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、トル様受容体アゴニスト、グレリン、IgGモノクローナル抗体、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、ドルナーゼアルファ、シクロスポリンA、アルファ-1アンチトリプシン、インターロイキンアンタゴニスト、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-ω、インターロイキン-2、抗IgE mAb、カタラーゼ、カルシトニン、パラチロイドホルモン、ヒト成長ホルモン、インスリン様増殖因子-I、ヘパリン、rhG-CSF、GM-CSF、Epo-Fc、FSH-Fc、sFc-γ RIIb、mRNAである。
【0056】
さらに好ましい実施形態において、前記活性剤は、例えば肺癌および肺腫瘍に対して提供される、抗腫瘍剤である。
【0057】
肺癌は、世界で最も高い有病率および死亡率を有する癌である。ほとんどの場合、肺癌は、進行した段階で診断される。そのため、患者は既に、肺または他の臓器に転移、すなわち肺外転移を呈することが多い。処置様式は、たいてい併用で用いられ、手術、放射線療法、化学療法、標的療法、および免疫療法にある。
【0058】
化学療法は、主に病気が進行した段階の、肺癌患者の60%にまで用いられる。化学療法は現在、静脈内注射もしくは輸液、または経口、すなわち全身投与経路によって投与される、すなわち全身化学療法である。化学療法は、重度の全身毒性の原因となるが、これは(i)化学療法薬が生体内に広く分布すること、および(ii)癌細胞に対する選択性が欠如していること、によるものである。結果的に、癌専門医は、より効率的でより許容性が高い新しい処置アプローチを大いに必要としている。
【0059】
化学療法は実際に、化学療法によって生じる不可逆的な毒性副作用および不快な副作用を最大レベルで減少させることによって、投与されるべき最高量の抗腫瘍剤を見出すに過ぎない。
【0060】
したがって、非常に複雑な治療スキームは、異なる治療的処置および活動(例えば、手術)を、放射線療法の第1のサイクル、続いて抗腫瘍剤注射または静脈内注入の複雑なサイクルと非常に頻繁に組み合わせることが予測される。抗腫瘍剤注射または静脈内注入は、各サイクルについて同じであってもよいし異なっていてもよく、患者の身体上で同定された副作用に応じて、低減または適合されてもよい。
【0061】
抗腫瘍剤または分子それぞれは、腎毒性、神経毒性など、治療スキーム中に休止期間を導入する必要がある用量規定毒性(DLT)を有する。不可逆的でない場合には、休止期間により、患者の身体は有害な副作用から回復することが可能となる。
【0062】
さらに、抗腫瘍剤は、しばしばその半減期として知られている半減期を有する。半減期とは、体内の薬物の濃度または量が半分に減少するために必要な期間である。抗腫瘍剤の半減期は、典型的には12時間~36時間である。前記半減期は、抗腫瘍剤の有益な作用に対する人体の暴露時間を表すものとして、短くすることができる。
【0063】
しかしながら、抗腫瘍剤の用量規定毒性(DLT)のために、いくつかの投与期間中に投与される用量の量は制限されたままであり、前述したように、前記量は、休止期間または除外期間によって互いに分離されるべきである。
【0064】
抗腫瘍剤が経口または注射または静脈内注入によって投与される場合という事実と共に、半減期と用量規定毒性との組み合わせは、固形腫瘍部位に効率的に到達する抗腫瘍剤の濃度が低く、腫瘍自体に対する効果が限定され、患者の身体に対する全身毒性が高いという結果を有する。
【0065】
抗腫瘍剤のさらに別の制約は、累積用量である。累積用量とは、身体の同じ部分または全身の抗腫瘍剤への反復暴露から生じる総用量である。
【0066】
シスプラチンについては、静脈内経路で投与され、累積用量は、4~6サイクル以内に300mg/m2である。
【0067】
それらの考察から、本発明の研究者らは、より標的化された療法およびオンサイト注射/注入を開発することができた。
【0068】
吸入療法は異なる種類のものであり、APIを気道に送達するための異なる様式としてネブライザー形式吸入器とは区別することができる。吸入器はまた、異なる種類のものであってもよく、乾燥粉末吸入器(DPI)がその1つである。
【0069】
ネブライザーと比較して、乾燥粉末吸入器(DPI)は、化学療法によく適合している。それらは、高用量のAPIだけでなく、難水溶性化合物(すなわち、癌におけるほとんどの化学療法剤)も投与することを可能にする。さらに、DPIは、(i)患者の吸気流のみによるそれらの活性化および駆動、ならびに(ii)無視できる呼気薬物用量のために、エアロゾルによる環境汚染を制限する。最後に、DPIは、単回使用の使い捨てデバイスとして設計することができる。
【0070】
したがって、腫瘍を有する肺に有効な抗癌療法を送達するために、抗腫瘍薬の肺経路を開発し、臨床試験で使用される現在の吸入装置および製剤を十分に適合させる必要がある。
【0071】
肺における抗腫瘍剤の滞留プロファイルを延長させ、速すぎない吸収を確実化することは、多くの利点を有する。しかしながら、肺の吸収表面積は膨大であり、それによって前記薬剤の素早い全身吸収がもたらされるため、長期放出プロファイルに到達することは、今日でも依然として難しい課題である。
【0072】
先に説明したように、制御放出シスプラチンベースのDPI製剤は、高い薬物担持および高い微粒子画分を備えるよう開発され、低い全身分布につながる制御放出および長期肺滞留能力を有する。(Levet et al, Int J Pharm 2017)。この文献によると、肺癌マウスモデルにおいて、このアプローチにより、インビボにて、静脈内レジメンと同等の腫瘍反応が半用量(それぞれ、1.0mg/kg対0.5mg/kg)で得られた。静脈内レジメンが肺外転移に対して良好な結果をもたらした一方で、シスプラチン吸入は肺腫瘍に対してより有効と思われた。
【0073】
パクリタキセルベースのナノキャリアで構成されたDPI製剤もまた、増加した肺における滞留時間、限定的な全身分布を備えるよう開発され、葉酸受容体(FR)を標的とすることによって、特異的に肺癌細胞を標的にする(Rosiere et al, Int J Pharm 2016; Rosiere et al, Mol Pharm, 2018)。FR、特にFR-αは、多くの肺腫瘍(すなわち、腺癌の70%超)において癌細胞表面に過剰発現しており、肺癌において標的となる有望な膜受容体である。肺癌マウスモデルにおけるタキソール(登録商標)(市販のパクリタキセル)静脈内投与と組み合わせたFR標的化吸入処置では、タキソール(登録商標)静脈内投与単独よりも有意に長い生存率が観察された。
【0074】
本論に戻ると、DPI化学療法の使用は、薬物動態プロファイルおよび安全性の観点では有望な前臨床結果につながったが、それらの有効性はかなり限定されている。
【0075】
抗腫瘍剤の長期放出プロファイルに到達することからは多数の利点が生じ得るが、吸入化学療法の文脈においては、APIを素早く吸収させ体循環に提供する有意に巨大な吸収表面を肺が示すので、この課題はさらに強調される。
【0076】
さらに、肺には強力な防御メカニズムが備わっているので、異物沈着粒子に対する肺における非常に効率的なクリアランスメカニズムにより、吸入療法におけるAPIの排除は非常に素早い。
【0077】
Sebtiら(Sebti et al, Eur J Pharm Biopharm 2006a; Sebti et al, Eur J Pharm Biopharm 2006b)は、ブデソニドと、コレステロールから構成される脂質マトリックスとを備えた固体脂質マクロ粒子を開発したが、ブデソニド放出プロファイルのなんら遅延も観察されなかった。
【0078】
同じ目的のために、DepreterおよびAmighi(Depreter and Amighi, Eur
J Pharm Biopharm 2010)は、コレステロールから構成される脂質マトリックスでコーティングされたインスリン微粒子を開発したが、これについては、インスリン放出のわずかな遅延のみが観察された。
【0079】
同じ目的のために、前述のように、Levetらは、肺における長期滞留時間を可能にし、それによって吸入化学療法の効率を増加させることに取り組み、有望な候補としてトリステアリンおよびTPGSから構成される脂質マトリックスを同定した。
【0080】
さらに、マトリックスを形成するための脂質由来賦形剤がポリマーよりも好ましい場合であっても、毒性の理由から、治療的処置の他の経路と比較して、吸入のための薬学的組成物について許容され、認可されるのは、脂質マトリックスを形成することができるほんの少しの物質のみである(Pilcer and Amighi, Int J Pharm 2010)。
【0081】
残念ながら、トリステアリンベースのマトリックスは有望であると同定されたが、その市場での入手可能性は医薬化合物としてはかなり限定されている。一方で、モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される前記少なくとも1つのトリグリセリドの入手可能性は大部分でより広い。
【0082】
さらに、トリステアリンベースのマトリックスはボリコナゾールの放出プロファイルを制御するためには有望ではなかったが、調製方法(すなわち、噴霧乾燥)および賦形剤組成物は、シスプラチンについてLevetらに記載されているものと同様であった。
【0083】
さらに、本発明によれば、本発明により限定された群から選択される前記少なくとも1つのトリグリセリドは、肺における化学療法の持続放出プロファイルおよび長期滞留を得ることに加えて、最も近いトリグリセリドであるトリステアリンに対して、肺沈着速度を有意に増加させることを可能にすることが同定された。
【0084】
好ましくは、前記抗腫瘍剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ペメトレキセド、エトポシド、ビノレルビンである。
【0085】
本発明に係る乾燥粉末吸入製剤の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0086】
本発明は、本発明に係る乾燥粉末吸入製剤の製造方法に関する。当該方法は、以下の工程を含む:
a)溶媒を用いて、または用いずに、モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される、所定量の少なくとも1つのトリグリセリド中で、1つ以上のAPIを混合する工程;
b)懸濁液もしくは溶液の噴霧乾燥、前記少なくとも1つのトリグリセリド中の活性薬物もしくはAPIの溶液の噴霧凝固、または、APIと前記少なくとも1つのトリグリセリドとの物理的混合物の押出、続いてジェットミルなどの、先の混合物から吸入可能な粒子をもたらすボトムアップ法、またはトップダウン法。
【0087】
例えば、本発明は、本発明に係る乾燥粉末吸入製剤の製造方法に関する。当該方法は、以下の工程を含む:モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される、所定量の少なくとも1つのトリグリセリド中で、1つ以上のAPIの粉末を懸濁または可溶化し、1つ以上のAPIの粒子の懸濁液または溶液を形成し(例えば、溶融および/または押出による)、次いで、冷却(例えば、噴霧凝固による)または押出後に得られる1つ以上のAPIの溶液または懸濁液の粒子のサイズを、高速および/もしくは高圧にて縮小し、前記乾燥粉末吸入製剤を得る工程。
【0088】
別の例において、製造方法は、以下の工程を含む:
a)少なくとも1つのAPIを少なくとも1つのトリグリセリドと均質に混合し、均質な混合物を形成する工程;
b)適切な温度にて、(2軸)押出機を用いて均質な混合物を押し出して、前記APIを含む均質な脂質マトリックスを得る工程;
c)押出物を切断し、粗いペレット/シリンダーを得る工程;
d)任意で、前記粗いペレット/シリンダーを適切な貯蔵条件にて貯蔵することによって、安定な多形相にトリグリセリドを変換する工程;
e)適切なミルを使用することによってペレットを粉砕し、前記少なくとも1つのトリグリセリドと共に前記APIを含む吸入用微粒子(DPI)を得る工程。
【0089】
また別の例において、本発明は、本発明に係る乾燥粉末吸入製剤の製造方法に関する。当該方法は、以下の工程を含む:
a)1つ以上のAPIの粉末を溶媒中に懸濁または可溶化し、1つ以上のAPIの粒子の懸濁液または溶液を形成する工程;
b)冷却下で、高速および/または高圧均質化にて、前記1つ以上のAPIの粒子のサイズを任意に縮小し、1つ以上のAPIの粒子のサイズが縮小した懸濁液を形成する工程;
c)モノヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される、所定量の少なくとも1つのトリグリセリドを溶媒中で前記微結晶懸濁液または溶液と混合し、前記少なくとも1つのAPIと前記少なくとも1つのトリグリセリドとの混合物を得る工程;
d)前記少なくとも1つのAPIと前記少なくとも1つのトリグリセリドとの混合物を噴霧乾燥し、前記乾燥粉末吸入製剤を得る工程。
【0090】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、サイズ縮小のために適用される前記高速は、10000~30000rpmであり、好ましくは15000~26000rpmであり、適用される時間は、8~15分であり、好ましくは9~12分である。
【0091】
好ましくは、本発明によれば、均質化工程のための前記高圧は、8~12、好ましくは9~11である所定の数の予備粉砕サイクルにわたって、2000~10000psi、好ましくは4000~6000psiである第1の圧力から、8~12、好ましくは9~11である所定の数の予備粉砕サイクルにわたって、8000~12000psi、好ましくは9000~11000psiである第2の圧力へと徐々に増加し、18~22、好ましくは19~21である所定の数の予備粉砕サイクルにわたって、18000~24000psi、好ましくは19000~24000psiである第3の圧力へ、徐々に増加する。
【0092】
本発明に係る特に好ましい実施形態において、微結晶懸濁液の前記微結晶は、30μm以下、好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは5μm以下の幾何学的粒径分布(PSD)d50を有する。
【0093】
本発明に係るさらに特に好ましい実施形態において、微結晶懸濁液の前記微結晶は、60μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下の幾何学的粒径分布(PSD)d90を有する。
【0094】
本発明に係る別の特に好ましい実施形態において、微結晶懸濁液の前記微結晶は、40μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは6μm以下の体積平均径D[4,3]を有する。
【0095】
本発明に係る有利な好ましい実施形態において、PEG化賦形剤または他の賦形剤がさらに添加される。
【0096】
本発明に係る方法の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0097】
本発明はさらに、肺治療における乾燥粉末吸入製剤の使用に関する。
【0098】
好ましくは、本発明に係る使用は、局所肺疾患:喘息、COPD、肺感染症(例えば、嚢胞性線維症患者、アスペルギルス症、結核など)、または全身性疾患(例えば、糖尿病、疼痛など)を処置するために予見される。
【0099】
本発明に係る変形例において、乾燥粉末吸入化学療法製剤は、任意の肺腫瘍、肺転移(例えば骨肉腫転移)、小細胞肺癌または非小細胞肺癌などの、肺癌の処置のための多剤療法において使用される。
【0100】
有利には、前記多剤療法は、静脈内注射または注入化学療法、免疫療法、腫瘍切除手術、腫瘍を有する器官の一部または全部を除去するための切除手術、治癒手術、放射線療法およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つの一次療法と、追加療法として吸入による1つ以上の化学療法とを含む。
【0101】
本発明はまた、対応する治療方法にも関する。
【0102】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の他の特徴および利点は、以下の非限定的な説明から、ならびに、実施例および図面を参照することによって、得られる。
【0103】
図面において、
図1は、比較例(Levetらにおける組成物F5)ならびに実施例1および2のFPF値(%)を示す(平均±標準偏差、n=2~3)。
【0104】
図2は、シスプラチン微粒子のみから構成される比較製剤と比較した、実施例1および2によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのシスプラチンの放出プロファイルを示す。
【0105】
図3は、実施例10のFPF値を、ペメトレキセド微粒子のみから構成される比較製剤と比較して示し(それぞれ、平均±標準偏差、n=3および1)、肺沈着に関する従来のDPI製剤に対する実施例10の優位性を実証する。
【0106】
図4は、ペメトレキセド微粒子のみからなる比較製剤と比較した、実施例10によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのペメトレキセドの放出プロファイルを示す(平均±標準偏差、n=3)。
【0107】
図5は、実施例13のFPF値を示し(平均±標準偏差)、本発明において開示されるインスリンベースのDPI組成物の高い肺沈着速度を実証する。
【0108】
図6は、Depreterらによって記載された比較製剤(180分まで)(B)と比較した、実施例13によって調製されたDPI製剤(240分まで、平均±標準偏差、n=2)(A)の呼吸可能画分からのインスリンの放出プロファイルを示す。
【0109】
図7は、シスプラチン微粒子からなる比較製剤と比較した、実施例16によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのシスプラチンの放出プロファイルを示す(平均±標準偏差、n=3)。
【0110】
図8は、比較例BUD-TS4およびBUD-TS5と比較した、実施例19および20のFPF値を示す(平均±標準偏差、n=3)。(***)p<0.001、t検定、肺沈着に関して、他のトリグリセリドベースのブデソニドDPI製剤と比較して、本発明において開示されるブデソニド組成物の優位性を実証する。
【0111】
図9は、微粉化ブデソニド比較例、ならびに実施例19、20および21によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのブデソニドの放出プロファイルを示し(n=1)、本発明の組成物からのブデソニドの制御放出プロファイルを示し、薬物/脂質比率を調節することによって放出プロファイルを調節する可能性を示す。
【0112】
〔実施例〕
〔実施例1.吸入用シスプラチン乾燥粉末製剤の調製 n°1〕
【0113】
簡単に説明すると、原末(Shanghai Jinhe Bio-technology Co., Ltd., Shanghai, PRC)由来の原料シスプラチン微結晶を、まず5%w/vの濃度になるようにイソプロパノール50mL中に懸濁させ、高速(24000rpmにて10分間)(X620モーターおよびT10分散シャフト、Ingenieurburo CAT M. Zipperer GmbH, Staufen, Germany)でサイズを縮小させ、5000psi、次いで10000psiにて、それぞれ10予備粉砕サイクル、次いで20000psiにて20粉砕サイクル、高圧均質化(EmulsiFlex-C5高圧ホモジナイザー、Avestin Inc., Ottawa, Canada)を行った。熱交換器を均質化バルブに接続し、F32-MA冷却サーキュレータ(Julabo GmbH, Seelbach,
Germany)を用いて-15℃に維持した。プロセスの最後に懸濁液からアリコートを除去し、レーザー回折(下記参照)によってシスプラチン微結晶の粒径分布(PSD)を測定した。
【0114】
次いで、加熱したイソプロパノールに可溶化させた硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を微結晶懸濁液に添加し、最終濃度が1.32%w/vのシスプラチンおよび0.68%w/vの硬化ヒマシ油/TPGS(99:1w/w)の混合物を得、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。
【0115】
噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0116】
バルクシスプラチン、サイズ縮小プロセスからのシスプラチン微粒子、およびシスプラチン乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定した。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して行われた。バルクシスプラチン、およびサイズ縮小プロセスからのアリコートの測定は、シスプラチン飽和イソプロパノール中で行った。シスプラチン乾燥粉末製剤は、予め分散させ、ボルテックスし、シスプラチン飽和0.1%w/vのPoloxamer407(BASF, Ludwigshafen, Germany)NaCl 0.9%水溶液中で測定した。PSDは、体積中位径d(0.5)(粒子の50%が表された直径未満である)、体積平均径D[4,3]、および累積篩下曲線から決定された微粒子の割合(5μm未満の粒子の割合)として、表された。PSDの結果は、本発明によって予想される範囲内である。
【0117】
〔実施例2.吸入用シスプラチン乾燥粉末製剤の調製 n°2〕
【0118】
簡単に説明すると、原末(Shanghai Jinhe Bio-technology Co., Ltd., Shanghai, PRC)由来の原料シスプラチン微結晶を、まず5%w/vの濃度になるようにイソプロパノール50mL中に懸濁させ、高速(24000rpmにて10分間)(X620モーターおよびT10分散シャフト、Ingenieurburo CAT M. Zipperer GmbH, Staufen, Germany)でサイズを縮小させ、5000psi、次いで10000psiにて、それぞれ10予備粉砕サイクル、次いで20000psiにて20粉砕サイクル、高圧均質化(EmulsiFlex-C5高圧ホモジナイザー、Avestin Inc., Ottawa, Canada)を行った。熱交換器を均質化バルブに接続し、F32-MA冷却サーキュレータ(Julabo GmbH, Seelbach,
Germany)を用いて-15℃に維持した。プロセスの最後に懸濁液からアリコットを除去し、レーザー回折(下記参照)によってシスプラチン微結晶の粒径分布(PSD)を測定した。
【0119】
次いで、加熱したイソプロパノールに可溶化させた硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を微結晶懸濁液に添加し、最終濃度が1.0%w/vのシスプラチンおよび1.0%w/vの硬化ヒマシ油/TPGS(99:1w/w)の混合物を得、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0120】
バルクシスプラチン、サイズ縮小プロセスからのシスプラチン微粒子、およびシスプラチン乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定した。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して、実施例1に記載したように、行われた。
【0121】
〔実施例3.実施例1および2によって調製されたシスプラチン乾燥粉末製剤の沈着速度の分析〕
【0122】
比較例(Levetらにおける組成物F5)ならびに実施例1および2による製剤を、それらの微粒子画分値に関して分析した。
【0123】
微粒子画分(FPF)(5μm未満の空気力学的直径(dae)を有するシスプラチンベースの粒子の回収された用量に対する割合)、および、空気力学的質量中位径(MMAD)によって特性付けられる空気力学的PSDを、欧州薬局方8.0.(2014)に記載されるようにして、MsLI(Copley Scientific, Nottingham, UK)(装置C)を使用して決定した。あらかじめ355mmのステンレス鋼メッシュを通してふるい分けした各DPI製剤(比較例および実施例2による)20mgの質量を、サイズ3 HPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps, Madrid, Spain)中で秤量し、そのアダプターを備えた吸入ポート上に取り付けたRS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape, Osnago, Italy)を使用して、MsLI中に沈着させた(n=3)。
【0124】
DFM3流量計(Copley Scientific, Nottingham, UK)を使用して測定した100±5L/minの沈着流量を、TPK臨界流量制御器(Copley Scientific, Nottingham, UK)に直列に接続した2台のHCP5エアポンプ(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、得た。
【0125】
この流量において、カットオフ直径は、MsLIの各ステージ間で、10.0、5.3、2.4、1.3、および0.4mmであった。マイクロオリフィスコレクター(MOC)フィルター(すなわち、ステージ5)は、0.45mmの細孔径を有し、高密度ポリエチレン支持体(Merck Millipore, Darmstadt, Germany)上に結合したFluoropore 9cm PTFE膜を含んでいた。臨界流量制御器を使用して、欧州薬局方8.0.(2014)によって要求されるように、100L/minにて2.4秒の沈着時間、およびP3/P2比<0.5の臨界流量を確保した。
【0126】
インパクション後、希釈相として超純水/イソプロパノール(60:40v/v)中の予め充填された0.5%w/vのPoloxamer407を20mL使用する第1のリンス、DMFを25mL使用する第2のリンス、および100.0mLに調整され30分間超音波処理された希釈相を使用する第3のリンスを、MsLIの4つの上部ステージに加えた。100.0mLの希釈相を用いて可溶化させ、30分間超音波処理した後、カプセル、装置、誘導ポート、およびMOCフィルターへの薬物沈着を測定した。各ステージにおけるインパクション質量は、Levetら(Levet, Int J Pharm 2016)に記載された有効な電熱原子吸光分析(ETAAS)法によるシスプラチン含量の定量によって決定した。
【0127】
次いで、結果をCopley Inhaler Testing Data Analysis Software 1(Copley Scientific, Nottingham, UK)にてプロットし、5μm未満のFPDを得た。これは、対応するステージのカットオフ直径に対する、回収された質量の内挿から行った。FPFは、名目用量の割合として表した。
【0128】
図1は、比較例(Levetらにおける組成物F5)ならびに実施例1および2のFPF値(%)を示し(平均±標準偏差、n=2~3)、肺沈着に関して、他のトリグリセリドベースのシスプラチンDPI製剤と比較して、本発明において開示されるシスプラチン組成物の優位性を実証する。
【0129】
〔実施例4.実施例1および2によって調製されたシスプラチン乾燥粉末製剤からのシスプラチンの溶解速度の分析〕
【0130】
DPI製剤の溶解特性は、Levetら(Levet et al, Int J Pharm 2016)に記載された方法を適用することによって、証明した。この方法は、経皮パッチのために改造された溶解装置タイプVを使用するUSP39からのパドルオーバーディスク法に由来する。シスプラチンの放出プロファイルは、Fast Screening Impactor(FSI, Copley Scientific, Nottingham, UK)を使用して選択された、DPI製剤の全呼吸可能画分(daeが5μm以下)から決定した。3mgのシスプラチンの沈着用量に相当する、DPI製剤それぞれの適切な質量を、サイズ3のHPMCカプセル(Quali-V-I Qualicaps, Madrid, Spain)中に秤量した。次いで、これを、RS.01 DPI装置(RPC Plastiape)を使用して、対応するプレセパレータインサートを備えたFSI(2.4s、100L/min)を有する、孔径0.45mmのFluoropore(登録商標)疎水性PTFE膜フィルター(Merck Millipore, Darmstadt, Germany)上に沈着させた。次いで、沈着した粉末を上に向けたFluoroporeフィルターを、Isopore(登録商標)0.4mm親水性ポリカーボネートフィルター(Merck-Milipore, Germany)で覆い、クリップおよびPTFEメッシュスクリーンを備えた時計皿-PTFEディスクアセンブリ(Copley, Nottingham, UK)上に固定した。次いで、ディスクアセンブリを、400mLの改変模擬肺液(mSLF)(Son and McConville, 2009)(肺電解質および界面活性剤組成物を模した媒体)を含むAT7溶解装置(Sotax AG, Aesch, Switzerland)の溶解容器に浸漬した。
【0131】
溶解試験は、37±0.2℃、pH7.35±0.05でのシンク条件に基づき、実施した。ブレードとディスクアセンブリの中心との間で25±2mmに設定されたパドルは、50±4rpmの回転速度に設定された。サンプリング量2.0mLを、細孔サイズが0.22mmである酢酸セルロースシリンジフィルター(VWR, Leuven, Belgium)に通して、2分~24時間の間の予め設定された時間で濾過し、2.0mLの遊離予熱mSLFを用いて置き換えた。
【0132】
溶解アッセイの最後に、ディスクアセンブリを溶解容器に開け、30分間、超音波処理して、100%シスプラチン溶解値を確立した。
【0133】
図2は、シスプラチン微粒子のみから構成される比較製剤と比較した、実施例1および2によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのシスプラチンの放出プロファイルを示す。
【0134】
〔実施例5.インスリン乾燥粉末製剤の調製 n°1〕
【0135】
最初に、インスリンをイソプロパノール(2%w/v)中に懸濁させ、40kHzのBranson2510バス中で10分間、超音波処理することによって、粉末の分散を確保した。次いで、EmulsiFlex-C5高圧ホモジナイザー(Aves-tin Inc., Ottawa, Canada)を使用して、粒径を縮小させた。まず、予備粉砕低圧均質化サイクルをインスリン懸濁液に対して行い、粒径をさらに縮小させた(7000PSIにて10サイクル、および12,000PSIにて10サイクル)。次いで、最後に、HPHを24,000PSIにて30サイクル、適用した。これらのサイクルは、処理された懸濁液をサンプルタンク(閉ループ)に直接再循環させることによって行った。HPHは、サンプル温度の上昇(24,000PSIにて20サイクルの後には、30℃上昇する)を引き起こすので、すべての操作は、均質化バルブの前に配置した熱交換器を使用して行い、サンプル温度を5±1℃に維持した。
【0136】
プロセスの最後に懸濁液からアリコートを除去し、レーザー回折(下記参照)によってインスリン微結晶の粒径分布(PSD)を測定した。
【0137】
次いで、加熱したイソプロパノールに可溶化させた硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を微結晶懸濁液に添加し、最終濃度が1.0%w/vのインスリンおよび1.0%w/vの硬化ヒマシ油/TPGS(99:1w/w)の混合物を得、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0138】
バルクインスリン、サイズ縮小プロセスからのインスリン微粒子、およびインスリン乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定すると、本発明の範囲内であった。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して、実施例1に記載したように、行われた。
【0139】
〔実施例6.インスリン乾燥粉末製剤の調製 n°2〕
【0140】
最初に、インスリンをイソプロパノール(2%w/v)中に懸濁させ、40kHzのBranson2510バス中で10分間、超音波処理することによって、粉末の分散を確保した。次いで、EmulsiFlex-C5高圧ホモジナイザー(Aves-tin Inc., Ottawa, Canada)を使用して、粒径を縮小させた。まず、予備粉砕低圧均質化サイクルをインスリン懸濁液に対して行い、粒径をさらに縮小させた(7000PSIにて10サイクル、および12,000PSIにて10サイクル)。次いで、最後に、HPHを24,000PSIにて30サイクル、適用した。これらのサイクルは、処理された懸濁液をサンプルタンク(閉ループ)に直接再循環させることによって行った。HPHは、サンプル温度の上昇(24,000PSIにて20サイクルの後には、30℃上昇する)を引き起こすので、すべての操作は、均質化バルブの前に配置した熱交換器を使用して行い、サンプル温度を5±1℃に維持した。
【0141】
プロセスの最後に懸濁液からアリコートを除去し、レーザー回折(下記参照)によってインスリン微結晶の粒径分布(PSD)を測定した。
【0142】
次いで、加熱したイソプロパノールに可溶化させた硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を微結晶懸濁液に添加し、最終濃度が1.5%w/vのインスリンおよび0.5%w/vの硬化ヒマシ油/TPGS(99:1w/w)の混合物を得、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0143】
バルクインスリン、サイズ縮小プロセスからのインスリン微粒子、およびインスリン乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定すると、本発明の範囲内であった。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して、実施例1に記載したように、行われた。
【0144】
〔実施例7.吸入用ブデソニド乾燥粉末製剤の調製 n°1〕
【0145】
最初に、ブデソニド(1%w/v)を、磁気撹拌下でイソプロパノールに可溶化させた。次いで、加熱したイソプロパノールに可溶化させた硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を微結晶懸濁液に添加し、最終濃度が1.0%w/vのブデソニドおよび1.0%w/vの硬化ヒマシ油/TPGS(99:1w/w)の混合物を得、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0146】
バルクブデソニド乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定すると、本発明の範囲内であった。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して、実施例1に記載したように、行われた。
【0147】
〔実施例8.吸入用ブデソニド乾燥粉末製剤の調製 n°2〕
【0148】
最初に、ブデソニド(1.5%w/v)を、磁気撹拌下でイソプロパノールに可溶化させた。次いで、加熱したイソプロパノールに可溶化させた硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を微結晶懸濁液に添加し、最終濃度が1.5%w/vのブデソニドおよび0.5%w/vの硬化ヒマシ油/TPGS(99:1w/w)の混合物を得、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0149】
バルクブデソニド乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定すると、本発明の範囲内であった。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して、実施例1に記載したように、行われた。
【0150】
〔実施例9.ブデソニド乾燥粉末製剤の調製 n°3〕
【0151】
Turbula(登録商標)ミキサー(Willy A. Bachofen AG, Muttenz, Switzerland)中で、10gの量の微粉化ブデソニド、9.9gの硬化ヒマシ油、および0.1gのTPGSを均質にブレンドした。次いで、均質なブレンドを、適切な温度にて、二軸押出機(Process-11, Thermo Fischer Scientific, Massachusetts, USA)を通して押し出し、均質な脂質マトリックスを得た。次いで、押出物を切断して粗いペレットを得、ペレットを適切な貯蔵条件のインキュベーターに入れて、安定な多形相に脂質マトリックスを変換した。最後に、ジェットミル(適切なペレット供給速度、射出圧力、および粉砕圧力)によってペレットを粉砕し、ヒト用の吸入用微粒子を得た。
【0152】
〔実施例10.吸入用ペメトレキセド乾燥粉末製剤の調製 n°1〕
【0153】
簡単に述べると、原末(Carbosynth Limited, Berkshire, United Kingdom)由来の原料ペメトレキセド二ナトリウム(ヘプタハイドレート形態)微結晶を、まず0.05%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)の存在下で1%w/vの濃度になるようにイソプロパノール50mL中に懸濁させ、高速(24000rpmにて10分間)(X620モーターおよびT10分散シャフト、Ingenieurburo CAT M. Zipperer GmbH, Staufen, Germany)でサイズを縮小させ、25000psiにて20粉砕サイクル、高圧均質化(EmulsiFlex-C3高圧ホモジナイザー、Avestin Inc., Ottawa, Canada)を行った。熱交換器を均質化バルブに接続し、F32-MA冷却サーキュレータ(Julabo GmbH, Seelbach, Germany)を用いて+5℃に維持した。プロセスの最後に懸濁液からアリコートを除去し、レーザー回折(下記参照)によってペメトレキセド微結晶の粒径分布(PSD)を測定した。
【0154】
次いで、1%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)を、加熱した(50℃)微結晶懸濁液懸濁液に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0155】
バルクペメトレキセド、サイズ縮小プロセスからのペメトレキセド微粒子、およびペメトレキセド乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定すると、本発明の範囲内であった。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して、実施例1に記載したように、行われた。
【0156】
〔実施例11.実施例10によって調製されたペメトレキセド乾燥粉末製剤の沈着速度の分析〕
【0157】
実施例10による製剤を、そのインビトロ肺沈着パターンおよびFPF値に関して分析した。
【0158】
FPF(5μm未満の空気力学的直径(dae)を有するペメトレキセドベースの粒子の回収された用量に対する割合)、および、MMADによって特性付けられる空気力学的PSDを、欧州薬局方8.0.(2014)に記載されるようにして、NGI(Copley Scientific, Nottingham, UK)(装置E)を使用して決定した。あらかじめ355mmのステンレス鋼メッシュを通してふるい分けしたDPI製剤(実施例10によるもの、およびペメトレキセド微粒子のみで構成された比較製剤)20mgの質量を、サイズ3 HPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps, Madrid, Spain)中で秤量し、そのアダプターを備えた吸入ポート上に取り付けたRS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape, Osnago, Italy)を使用して、NGI中に沈着させた(n=3)。
【0159】
DFM3流量計(Copley Scientific, Nottingham, UK)を使用して測定した100±5L/minの沈着流量を、TPK臨界流量制御器(Copley Scientific, Nottingham, UK)に直列に接続した2台のHCP5エアポンプ(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、得た。
【0160】
この流量において、カットオフ直径は、NGIの各ステージ間で、6.12、3.42、2.18、1.31、0.72、0.40、および0.24μmであった。臨界流量制御器を使用して、欧州薬局方8.0(2014)によって要求されるように、100L/分にて2.4秒の沈着時間、およびP3/P2比<0.5の臨界流量を確保した。
【0161】
インパクション後、カプセル、装置、誘導ポート、予備分離器、7ステージ、およびNGIのMOCに沈着したペメトレキセド質量を、希釈相として超純水/DMF(30:70v/v)を用いて収集し、30分間超音波処理した。各ステージにおけるインパクション質量は、有効なHPLCによるペメトレキセド含有量の定量によって決定した。クロマトグラフィーシステム(HP 1200 series, Agilent Technologies, Diegem, Belgium)は、4基のポンプ、オートサンプラー、およびダイオードアレイ検出器を備えていた。分離は、逆相Hypersil Gold C18カラム(5mm、250mm×4.6mm)(Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)で行った。移動相は、0.4%ギ酸で酸性化した超純水/アセトニトリル(86:14)からなり、1mL/minの流速で送達された。定量は、256nmにて行った。注入量は20μLであり、温度は30℃に設定され、分析実行時間は15分であった。
【0162】
次いで、結果をCopley Inhaler Testing Data Analysis Software 1(Copley Scientific, Nottingham, UK)にてプロットし、5μm未満のFPDを得た。これは、対応するステージのカットオフ直径に対する、回収された質量の内挿から行った。FPFは、名目用量の割合として表した。
【0163】
図3は、実施例10のFPF値を、ペメトレキセド微粒子のみから構成される比較製剤と比較して示し(それぞれ、平均±標準偏差、n=3および1)、肺沈着に関する従来のDPI製剤に対する実施例10の優位性を実証する。
【0164】
〔実施例12.実施例10によって調製されたペメトレキセド乾燥粉末製剤からのペメトレキセドの溶解速度の分析〕
【0165】
DPI製剤の溶解特性は、Pilcerら(Pilcer et al, J Pharm Sci 2013)に記載された方法の適合を適用することによって、証明した。DPI放出プロファイルの調査のために特別に開発された溶解システム(Copley Scientific, Nottingham, UK)を、「Paddle over Disc」(Eur.Ph. 7)から適合させた方法を用いて、使用した。肺に沈着する粒子の放出プロファイルを調査するために、ペメトレキセド製剤の分画を最初にNGIで行った。ステージ3のカップは、粒子を収集するための取り外し可能なディスク挿入部分を備えるように選択された。特に興味深いことに、選択された吸入速度(100L/minで2.4秒間)では、ステージ3のカットオフ直径は、2.18~3.42μmの範囲であり、肺を標的とする粒子の選択を可能にした。実施例10による製剤を適切な量で含むカプセルを秤量して、ステージ3において約6mgのペメトレキセドを収集した。次いで、ディスク挿入部分をポリカーボネート膜(孔径0.4μm)(Merck Millipore)で覆い、400mLのmSLF(Son and McConville, 2009)(肺電解質および界面活性剤組成物を模した培地)を充填したパドル溶解装置(Erweka DT6; ERWEKA
GmbH, Heusenstamm, Hesse, Germany)に入れた。
【0166】
溶解試験は、37±0.2℃、pH7.35±0.05でのシンク条件に基づき、実施した。ブレードとディスクアセンブリの中心との間で25±2mmに設定されたパドルは、50±4rpmの回転速度に設定された。サンプリング量2.0mLを、細孔サイズが0.22mmである酢酸セルロースシリンジフィルター(VWR, Leuven, Belgium)に通して、2分~24時間の間の予め設定された時間で濾過し、2.0mLの遊離予熱mSLFを用いて置き換えた。
【0167】
溶解アッセイの最後に、ディスクアセンブリを溶解容器に開け、30分間、超音波処理して、100%ペメトレキセド溶解値を確立した。
【0168】
図4は、ペメトレキセド微粒子のみからなる比較製剤と比較した、実施例10によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのペメトレキセドの放出プロファイルを示す(平均±標準偏差、n=3)。
【0169】
類似性因子f2を使用して、2つの溶解プロファイルを比較した(Shah et al, Pharm Res 1998)。曲線は、有意に異なっていた(f2<50)。さらに、実施例10からのすべての時点での累積放出値は、ペメトレキセド微結晶からのものと比較して、有意に低く(p<0.05、t検定)、例えば、1時間ではそれぞれ53±9%および97.9±0.9%(p<0.01)であり、これは、本発明の組成物からのペメトレキセドの制御放出プロファイルを示す。
【0170】
〔実施例13.インスリン乾燥粉末製剤の調製 n°3〕
【0171】
最初に、磁気撹拌機を使用して、インスリン(Sigma-Aldrich)をイソプロパノール(1%w/v)中に懸濁させ、40kHzのBranson2510バス中で10分間、超音波処理することによって、粉末の分散を確保した。次いで、EmulsiFlex-C3高圧ホモジナイザー(Avestin Inc., Ottawa, Canada)を使用して、22,000PSIにて30サイクル、粒径を縮小させた。これらのサイクルは、処理された懸濁液をサンプルタンク(閉ループ)に直接再循環させることによって行った。HPHは、サンプル温度の上昇を引き起こすので、すべての操作は、均質化バルブの前に配置した熱交換器を使用して行い、サンプル温度を5±1℃に維持した。
【0172】
プロセスの最後に懸濁液からアリコートを除去し、レーザー回折(下記参照)によってインスリン微結晶の粒径分布(PSD)を測定した。
【0173】
次いで、1%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)を、加熱した(50℃)微結晶懸濁液懸濁液に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃,0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0174】
バルクインスリン、サイズ縮小プロセスからのインスリン微粒子、およびインスリン乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定すると、本発明の範囲内であった。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して、実施例1に記載したように、行われた。
【0175】
〔実施例14.実施例13によって調製されたインスリン乾燥粉末製剤の沈着速度の分析〕
【0176】
実施例13による製剤を、そのFPF値に関して分析した。
【0177】
FPF(5μm未満のdaeを有するインスリンベースの粒子の回収された用量に対する割合)を、Fast Screening Impactor(FSI)(Copley Scientific, Nottingham, UK)を使用して、決定した。FSIは、2段階分離プロセスを採用しており、ここで、第1の大きな非吸入性ボーラスが液体トラップに捕捉され、次いで5ミクロン(すなわち、FPFに対応する)での微細切断インパクション段階が続く。あらかじめ355mmのステンレス鋼メッシュを通してふるい分けしたDPI製剤(実施例13によるもの)10mgの質量を、サイズ3 HPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps, Madrid, Spain)中で秤量し、そのアダプターを備えた吸入ポート上に取り付けたRS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape, Osnago, Italy)を使用して、FSI中に沈着させた(n=3)。
【0178】
DFM3流量計(Copley Scientific, Nottingham, UK)を使用して測定した100±5L/分の沈着流量を、TPK臨界流量制御器(Copley Scientific, Nottingham, UK)に直列に接続した2台のHCP5エアポンプ(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、得た。臨界流量制御器を使用して、100L/分にて2.4秒の沈着時間を確保した。
【0179】
インパクション後、カプセル、装置、誘導ポート、予備分離機、および、0.45mmの細孔径を有し、高密度ポリエチレン支持体(Merck Millipore, Darmstadt, Germany)上に結合したFluoropore 9cm PTFE膜上に沈着したインスリン質量を、希釈相として0.01M HClを用いて収集し、30分間超音波処理した。各ステージにおけるインパクション質量は、欧州薬局方9.2.(2017)に記載されているHPLC法によるインスリン含量の定量によって決定した。FPFは、名目用量の割合として表した。
【0180】
図5は、実施例13のFPF値を示し(平均±標準偏差)、本発明において開示されるインスリンベースのDPI組成物の高い肺沈着速度を実証している。
【0181】
〔実施例15.実施例13によって調製されたインスリン乾燥粉末製剤からのインスリンの溶解速度の分析〕
【0182】
実施例13によるDPI製剤の溶解特性は、Depreterら(Depreter et al, Eur J Pharm Biopharm 2012)に記載された方法の適合を適用することによって、証明した。DPI放出プロファイルの調査のために特別に開発された溶解システム(Copley Scientific, Nottingham, UK)を、「Paddle over Disc」(Eur.Ph. 7)から適合させた方法を用いて、使用した。肺に沈着する粒子の放出プロファイルを調査するために、インスリン製剤の分画を最初にNGIで行った。ステージ3のカップは、粒子を収集するための取り外し可能なディスク挿入部分を備えるように選択された。特に興味深いことに、選択された吸入速度(100L/minで2.4秒間)では、ステージ3のカットオフ直径は、2.18~3.42μmの範囲であり、肺を標的とする粒子の選択を可能にした。実施例13による製剤を適切な量で含むカプセルを秤量して、ステージ3において約3mgのインスリンを収集した。次いで、ディスク挿入部分をポリカーボネート膜(孔径0.4μm)(Merck Millipore)で覆い、400mLの0.01mMリン酸バッファ生理食塩水(pH7.4)を充填したパドル溶解装置(Erweka DT6; ERWEKA GmbH, Heusenstamm, Hesse, Germany)に入れた。
【0183】
溶解試験は、37±0.2℃、pH7.35±0.05でのシンク条件に基づき、実施した。ブレードとディスクアセンブリの中心との間で25±2mmに設定されたパドルは、50±4rpmの回転速度に設定された。5.0mL量を、2分~24時間の間の予め設定された時間でサンプリングし、5.0mLの遊離予熱PBSを用いて置き換えた。
【0184】
溶解アッセイの最後に、ディスクアセンブリを溶解容器に開け、30分間、超音波処理して、100%インスリン溶解値を確立した。
【0185】
サンプルを3%w/vのトレハロースの存在下で凍結乾燥した(Christ Epsilon 1-6)。凍結乾燥物を0.02N HCl500μLに溶解し、欧州薬局方9.2.(2017)に記載の方法を使用してHPLCシステムに注入した。
【0186】
図6は、Depreterらによって記載された比較製剤(180分まで)(B)と比較した、実施例13によって調製されたDPI製剤(240分まで、平均±標準偏差、n=2)(A)の呼吸可能画分からのインスリンの放出プロファイルを示す。
【0187】
実施例13からの種々の時点での累積放出値は、Depreterらからの2つの製剤からのものと比較して低く、例えば、1時間ではそれぞれ、約60%および約100%であり、これは、インスリン放出の制御に関して、Depreterらに記載されたインスリン微結晶および脂質被覆インスリン微結晶(それぞれ
図6のF1およびF2)の両方に対する、本発明に開示されたインスリン組成物の優位性を実証する。
【0188】
〔実施例16.シスプラチン乾燥粉末製剤の調製 n°3および比較例〕
【0189】
最初に、シスプラチン(Umicore, Hanau-Wolfgang, Germany)を、5%w/vの濃度になるようにエタノール50mL中に懸濁させ、高速(24000rpmにて10分間)(X620モーターおよびT10分散シャフト、Ingenieurburo CAT M. Zipperer GmbH, Staufen, Germany)でサイズを縮小させ、EmulsiFlex-C3高圧ホモジナイザー(Avestin Inc., Ottawa, Canada)を用いた高圧均質化(20,000PSIにて40サイクル)を行った。これらのサイクルは、処理された懸濁液をサンプルタンク(閉ループ)に直接再循環させることによって行った。HPHは、サンプル温度の上昇を引き起こすので、すべての操作は、均質化バルブの前に配置した熱交換器を使用して行い、サンプル温度を15±1℃に維持した。
【0190】
プロセスの最後に懸濁液からアリコートを除去し、レーザー回折(下記参照)によってシスプラチン微結晶のPSDを測定した。
【0191】
次いで、加熱したイソプロパノールに可溶化させた硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)およびTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)(または、比較例についてはトリステアリン)を微結晶懸濁液に添加し、最終濃度が2.0%w/vのシスプラチンおよび2.0%w/vのトリグリセリド/TPGS(99:1w/w)の混合物を得、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0192】
バルクシスプラチン、サイズ縮小プロセスからのシスプラチン微粒子、およびシスプラチン乾燥粉末製剤の幾何学的PSDを、懸濁および個別化された粒子として測定すると、本発明の範囲内であった。これは、40W超音波プローブ(Malvern Instruments Ltd.)を備えたHydro MVディスペンサーに接続したMastersizer3000レーザー回折計(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用して、実施例1に記載したように、行われた。
【0193】
〔実施例17.実施例6 16によって調製されたシスプラチン乾燥粉末製剤の沈着速度の分析〕
【0194】
実施例16による製剤を、そのインビトロでの肺沈着パターンおよびFPF値に関して分析した。
【0195】
FPF(5μm未満のdaeを有するシスプラチンベースの粒子の回収された用量に対する割合)、および、MMADによって特性付けられる空気力学的PSDを、欧州薬局方8.0.(2014)に記載されるようにして、NGI(Copley Scientific, Nottingham, UK)(装置E)を使用して決定した。あらかじめ355mmのステンレス鋼メッシュを通してふるい分けしたDPI製剤(実施例17によるもの)20mgの質量を、サイズ3 HPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps, Madrid, Spain)中で秤量し、そのアダプターを備えた吸入ポート上に取り付けたRS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape, Osnago, Italy)を使用して、NGI中に沈着させた(n=3)。
【0196】
DFM3流量計(Copley Scientific, Nottingham, UK)を使用して測定した100±5L/分の沈着流量を、TPK臨界流量制御器(Copley Scientific, Nottingham, UK)に直列に接続した2台のHCP5エアポンプ(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、得た。
【0197】
この流量において、カットオフ直径は、NGIの各ステージ間で、6.12、3.42、2.18、1.31、0.72、0.40、および0.24μmであった。臨界流量制御器を使用して、欧州薬局方8.0.(2014)によって要求されるように、100L/分にて2.4秒の沈着時間、およびP3/P2比<0.5の臨界流量を確保した。
【0198】
インパクション後、カプセル、装置、誘導ポート、予備分離器、7ステージ、およびNGIのMOCに沈着したシスプラチン質量を、希釈相としてDMFを用いて収集し、30分間超音波処理した。各ステージにおけるインパクション質量は、Levetら(Levet et al, Int J Pharm 2016)に記載された有効なETAAS法によるシスプラチン含量の定量によって決定した。
【0199】
次いで、結果をCopley Inhaler Testing Data Analysis Software 1(Copley Scientific, Nottingham, UK)にてプロットし、5μm未満のFPDを得た。これは、対応するステージのカットオフ直径に対する、回収された質量の内挿から行った。FPFは、名目用量の割合として表した。
【0200】
得られた結果は、実施例3で得られた結果と統合され、肺沈着に関して、他のトリグリセリドベースのシスプラチンDPI製剤と比較して、本発明で開示されるシスプラチン組成物の優位性を実証した。
【0201】
〔実施例18.実施例16によって調製されたシスプラチン乾燥粉末製剤からのシスプラチンの溶解速度の分析〕
【0202】
DPI製剤の溶解特性は、Pilcerら(Pilcer et al, J Pharm Sci 2013)に記載された方法の適合を適用することによって、証明した。DPI放出プロファイルの調査のために特別に開発された溶解システム(Copley Scientific, Nottingham, UK)を、「Paddle over Disc」(Eur.Ph. 7)から適合させた方法を用いて、使用した。肺に沈着する粒子の放出プロファイルを調査するために、シスプラチン製剤の分画を最初にNGIで行った。ステージ3のカップは、粒子を収集するための取り外し可能なディスク挿入部分を備えるように選択された。特に興味深いことに、選択された吸入速度(100L/minで2.4秒間)では、ステージ3のカットオフ直径は、2.18~3.42μmの範囲であり、実施例16による製剤が適切な量で充填されたカプセルから肺を標的とする粒子の選択を可能にし、ステージ3において約2mgのシスプラチンを沈着させた。次いで、ディスク挿入部分をポリカーボネート膜(孔径0.4μm)(Merck Millipore)で覆い、400mLのmSLF(Son and McConville, 2009)(肺電解質および界面活性剤組成物を模した培地)を充填したパドル溶解装置(Erweka DT6; ERWEKA GmbH,
Heusenstamm, Hesse, Germany)に入れた。
【0203】
溶解試験は、37±0.2℃、pH7.35±0.05でのシンク条件に基づき、実施した。ブレードとディスクアセンブリの中心との間で25±2mmに設定されたパドルは、50±4rpmの回転速度に設定された。サンプリング量2.0mLを、細孔サイズが0.22mmである酢酸セルロースシリンジフィルター(VWR, Leuven, Belgium)に通して、2分~24時間の間の予め設定された時間で濾過し、2.0mLの遊離予熱mSLFを用いて置き換えた。
【0204】
溶解アッセイの最後に、ディスクアセンブリを溶解容器に開け、30分間、超音波処理して、100%シスプラチン溶解値を確立した。
【0205】
図7は、シスプラチン微粒子からなる比較製剤と比較した、実施例16によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのシスプラチンの放出プロファイルを示す(平均±標準偏差、n=3)。
【0206】
類似性因子f2を使用して、2つの溶解プロファイルを比較した(Shah et al, Pharm Res 1998)。曲線は、有意に異なっていた(f2<50)。さらに、実施例16からのすべての時点での累積放出値は、シスプラチン微結晶からのものと比較して、有意に低く(p<0.05、t検定)、例えば、4時間ではそれぞれ57±4%および76±5%(p<0.01)であり、これは、本発明の組成物からのシスプラチンの制御放出プロファイルを示す。
【0207】
〔実施例19.吸入用ブデソニド乾燥粉末製剤の調製 n°4〕
【0208】
0.1500%w/vのブデソニド、2.8215%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)(または、比較例BUD-TS4についてはトリステアリン)、および0.0285%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温イソプロパノール(65℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer
B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0209】
〔実施例20.吸入用ブデソニド乾燥粉末製剤の調製 n°5〕
【0210】
0.600%w/vのブデソニド、2.376%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)(または、比較例BUD-TS5についてはトリステアリン)、および0.024%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温イソプロパノール(65℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0211】
〔実施例21.吸入用ブデソニド乾燥粉末製剤の調製 n°6〕
【0212】
1.500%w/vのブデソニド、1.485%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)、および0.015%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温イソプロパノール(65℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0213】
〔実施例22.実施例19および20によって調製されたブデソニド乾燥粉末製剤の沈着速度の分析〕
【0214】
実施例19および20による製剤を、そのインビトロでの肺沈着パターンおよび微粒子画分値に関して分析した。製剤19および20の比較例、すなわち、BUD-TS4およびBUD-TS5をそれぞれ、硬化ヒマシ油の代わりにトリステアリン(TS)(Tokyo Chemical Company, Tokyo, Japan)を用いて、対応する同一のプロトコルによって製造した。
【0215】
FPF(5μm未満のdaeを有するブデソニドベースの粒子の回収された用量に対する割合)、および、MMADによって特性付けられる空気力学的PSDを、欧州薬局方8.0.(2014)に記載されるようにして、NGI(Copley Scientific, Nottingham,
UK)(装置E)を使用して決定した。あらかじめ355mmのステンレス鋼メッシュを通してふるい分けしたDPI製剤(実施例19および20、ならびに比較粉末BUD-TS4およびBUD-TS5によるもの)10mgの質量を、サイズ3 HPMCカプセル(Quali-V-I, Qualicaps, Madrid, Spain)中で秤量し、そのアダプターを備えた吸入ポート上に取り付けたRS.01乾燥粉末吸入器(RPC Plastiape, Osnago, Italy)を使用して、NGI中に沈着させた(n=3)。
【0216】
DFM3流量計(Copley Scientific, Nottingham, UK)を使用して測定した100±5L/minの沈着流量を、TPK臨界流量制御器(Copley Scientific, Nottingham, UK)に直列に接続した2台のHCP5エアポンプ(Copley Scientific, Nottingham, UK)を用いて、得た。
【0217】
この流量において、カットオフ直径は、NGIの各ステージ間で、6.12、3.42、2.18、1.31、0.72、0.40、および0.24μmであった。臨界流量制御器を使用して、欧州薬局方8.0.(2014)によって要求されるように、100L/minにて2.4秒の沈着時間、およびP3/P2比<0.5の臨界流量を確保した。
【0218】
インパクション後、カプセル、装置、誘導ポート、予備分離器、7ステージ、およびNGIのMOCに沈着したブデソニド質量を、希釈相として超純水:イソプロパノールが60:40(v/v)の混合物中の0.5%w/vのポロキサマー407を用いて収集し、60℃にて30分間、超音波処理した。次いで、溶液を、細孔径が0.45μmである再生セルロースMinisartシリンジフィルター(Sartorius Stedim Biotech GmbH, Germany)を通して濾過した。各ステージにおけるインパクション質量は、有効なHPLC法によるブデソニド含有量の定量によって決定した。クロマトグラフィーシステム(HP 1200 series, Agilent Technologies, Diegem, Belgium)は、4基のポンプ、オートサンプラー、およびダイオードアレイ検出器を備えていた。分離は、逆相Alltima C18カラム(5mm、150mm×4.6mm)(Hichrom, Theale, UK)で行った。移動相は、PH3.20のリン酸バッファ:アセトニトリル(65:35 v/v)からなり、1m.5L/minの流速で送達された。定量は、245nmにて行った。注入量は100μLであり、温度は40℃に設定され、分析実行時間は22分であった。
【0219】
次いで、結果をCopley Inhaler Testing Data Analysis Software 1(Copley Scientific, Nottingham, UK)にてプロットし、5μm未満のFPDを得た。これは、対応するステージのカットオフ直径に対する、回収された質量の内挿から行った。FPFは、名目用量の割合として表した。
【0220】
図8は、比較例BUD-TS4およびBUD-TS5と比較した、実施例19および20のFPF値を示す(平均±標準偏差、n=3)。(***)p<0.001、t検定、肺沈着に関して、他のトリグリセリドベースのブデソニドDPI製剤と比較して、本発明において開示されるブデソニド組成物の優位性を実証する。
【0221】
〔実施例23.実施例19、20および21によって調製されたブデソニド乾燥粉末製剤からのブデソニドの溶解速度の分析〕
【0222】
実施例19、20および21によるDPI製剤、および比較ブデソニド粉末(すなわち、微粉化ブデソニド)の溶解特性はPilcerら(Pilcer et al, J Pharm Sci 2013)に記載された方法の適合を適用することによって、証明した。比較微粉化ブデソニド粉末を、3%w/vのブデソニドイソプロパノール溶液を噴霧乾燥(Mini-Spray Dryer B-290, Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)することによって製造して、ヒト用のDPI製剤を得た。
【0223】
DPI放出プロファイルの調査のために特別に開発された溶解システム(Copley Scientific, Nottingham, UK)を、「Paddle over Disc」(Eur.Ph. 7)から適合させた方法を用いて、使用した。肺に沈着する粒子の放出プロファイルを調査するために、ブデソニド製剤の分画を最初にNGIを用いて行った。ステージ2のカップは、粒子を収集するための取り外し可能なディスク挿入部分を備えるように選択された。特に興味深いことに、選択された吸入速度(100L/minで2.4秒間)では、ステージ2のカットオフ直径は、6.12~3.42μmの範囲であり、微粉化ブデソニド、ならびに実施例20、21および22による製剤が適切な量で充填されたカプセルから肺を標的とする粒子の選択を可能にし、ステージ3において約500μgのブデソニドを沈着させた。次いで、ディスク挿入部分をポリカーボネート膜(孔径0.4μm)(Merck Millipore)で覆い、400mLの0.01mMリン酸バッファ生理食塩水(pH7.4)を充填したパドル溶解装置(Erweka DT6; ERWEKA GmbH, Heusenstamm, Hesse, Germany)に入れた。
【0224】
溶解試験は、37±0.2℃、pH7.35±0.05でのシンク条件に基づき、実施した。ブレードとディスクアセンブリの中心との間で25±2mmに設定されたパドルは、50±4rpmの回転速度に設定された。サンプリング量2.0mLを、細孔サイズが0.22mmである酢酸セルロースシリンジフィルター(VWR, Leuven, Belgium)に通して、2分~24時間の間の予め設定された時間で濾過し、2.0mLの遊離予熱PBSを用いて置き換えた。
【0225】
100%ブデソニド溶解値は、ステージ3で沈着した質量に対応する。
【0226】
図9は、微粉化ブデソニド比較例、ならびに実施例19、20および21によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのブデソニドの放出プロファイルを示し(n=1)、本発明の組成物からのブデソニドの制御放出プロファイルを示し、薬物/脂質比率を調節することによって放出プロファイルを調節する可能性を示す。
【0227】
〔実施例24.吸入用パクリタキセル乾燥粉末製剤の調製 n°1〕
【0228】
0.1500%w/vのパクリタキセル、2.8215%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)、および0.0285%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温エタノール(50℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0229】
〔実施例25.吸入用パクリタキセル乾燥粉末製剤の調製 n°2〕
【0230】
0.600%w/vのパクリタキセル、2.376%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)、および0.024%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温エタノール(50℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0231】
〔実施例26.吸入用パクリタキセル乾燥粉末製剤の調製 n°3〕
【0232】
1.500%w/vのパクリタキセル、1.485%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)、および0.015%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温エタノール(50℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0233】
〔実施例27.吸入用パクリタキセル乾燥粉末製剤の調製 n°4〕
【0234】
2.700%w/vのパクリタキセル、0.297%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)、および0.003%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温エタノール(50℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0235】
〔実施例28.吸入用パクリタキセル乾燥粉末製剤の調製 n°5〕
【0236】
1.50%w/vのパクリタキセル、1.35%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)、および0.15%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温エタノール(50℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0237】
〔実施例29.吸入用パクリタキセル乾燥粉末製剤の調製 n°6〕
【0238】
1.5%w/vのパクリタキセル、1.2%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)、および0.3%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)を、磁気撹拌下で温エタノール(50℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0239】
〔実施例30.吸入用パクリタキセル乾燥粉末製剤の調製 n°7〕
【0240】
1.500%w/vのパクリタキセル、1.485%w/vの硬化ヒマシ油(BASF, Ludwigshafen, Germany)、0.015%w/vのTPGS(Sigma-Aldrich, St-Louis, USA)、および0.3%w/vのL-ロイシン(Sigma-Aldrich)を、磁気撹拌下で温エタノール(50℃)中に可溶化させ、Mini-Spray Dryer B-290(Buchi Labortechnik AG, Flawil, Switzerland)を用いて噴霧乾燥し、ヒト用のDPI製剤を得た。噴霧乾燥の間に用いた操作パラメータは、以下の通りであった:供給速度3.0g/min、入口温度70℃、0.7mmノズル、1.5mmノズルキャップ、圧縮空気800L/min、および乾燥空気流35m3/h。装置は、B-296除湿器(Buchi Labortechnik AG)を備え、噴霧乾燥の間、相対湿度を50%HRに維持した。
【0241】
〔実施例31.吸入用ブデソニド乾燥粉末製剤の調製 n°7〕
【0242】
吸入用ブデソニド乾燥粉末製剤n°4を、最初に実施例19に従って調製した。次いで、10g量の吸入用ブデソニド乾燥粉末製剤n°4および30gのラクトース(Respitose(登録商標)SV003, DFE Pharma, Goch, Germany)を、Turbula(登録商標)ミキサー(Willy A. Bachofen AG, Muttenz, Switzerland)中で均質になるようにブレンドし、吸入用の担体ベース乾燥粉末製剤を得た。
【0243】
本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく変形を適用することができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【
図1】
図1は、比較例(Levetらにおける組成物F5)ならびに実施例1および2のFPF値(%)を示す(平均±標準偏差、n=2~3)。
【
図2】
図2は、シスプラチン微粒子のみから構成される比較製剤と比較した、実施例1および2によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのシスプラチンの放出プロファイルを示す。
【
図3】
図3は、実施例10のFPF値を、ペメトレキセド微粒子のみから構成される比較製剤と比較して示し(それぞれ、平均±標準偏差、n=3および1)、肺沈着に関する従来のDPI製剤に対する実施例10の優位性を実証する。
【
図4】
図4は、ペメトレキセド微粒子のみからなる比較製剤と比較した、実施例10によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのペメトレキセドの放出プロファイルを示す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図5】
図5は、実施例13のFPF値を示し(平均±標準偏差)、本発明において開示されるインスリンベースのDPI組成物の高い肺沈着速度を実証する。
【
図6】
図6は、Depreterらによって記載された比較製剤(180分まで)(B)と比較した、実施例13によって調製されたDPI製剤(240分まで、平均±標準偏差、n=2)(A)の呼吸可能画分からのインスリンの放出プロファイルを示す。
【
図7】
図7は、シスプラチン微粒子からなる比較製剤と比較した、実施例16によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのシスプラチンの放出プロファイルを示す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図8】
図8は、比較例BUD-TS4およびBUD-TS5と比較した、実施例19および20のFPF値を示す(平均±標準偏差、n=3)。(***)p<0.001、t検定、肺沈着に関して、他のトリグリセリドベースのブデソニドDPI製剤と比較して、本発明において開示されるブデソニド組成物の優位性を実証する。
【
図9】
図9は、微粉化ブデソニド比較例、ならびに実施例19、20および21によって調製されたDPI製剤の呼吸可能画分からのブデソニドの放出プロファイルを示し(n=1)、本発明の組成物からのブデソニドの制御放出プロファイルを示し、薬物/脂質比率を調節することによって放出プロファイルを調節する可能性を示す。