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特開2024-102292ETV6またはFOXO1の発現を調節する中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102292
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ETV6またはFOXO1の発現を調節する中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240723BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P25/28
A61P9/00
A61P9/12
A61P19/10
A61P3/10
A61P25/16
A61K31/7105
C12N15/11 Z
A61P43/00
A61K45/00 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076795
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2021504393の分割
【原出願日】2019-07-29
(31)【優先権主張番号】1812334.9
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523041285
【氏名又は名称】セニスカ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ハリーズ ローナ
(72)【発明者】
【氏名】ラトッレ エヴァ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】FOXO1および/もしくはETV6の遺伝子発現を減弱させる、スプライシング因子の発現を調節する、または細胞老化および/もしくは細胞周期への再進入を減少もしくは逆転させるための組成物を提供する。
【解決手段】FOXO1および/もしくはETV6の発現を調節するための組成物であって、1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物、スプライシング因子の発現を減弱させるための組成物であって、FOXO1および/もしくはETV6の発現調節因子を含む組成物、または細胞老化および/もしくは細胞周期への再進入を減弱させるための組成物であって、FOXO1および/もしくはETV6の発現調節因子もしくはスプライシング因子の発現に関連するそれらの下流の標的を含む組成物を提供する。このような組成物は、加齢に関連する疾患もしくは状態もしくは癌の予防、管理、改善もしくは治療において、治療上の利益を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢に関連する疾患もしくは状態もしくは癌の予防、管理、改善または治療における使用のための、ETV6の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物。
【請求項2】
前記加齢に関連する疾患もしくは状態または癌が、スプライシング因子の発現の調節異常、および/または細胞老化の調節異常を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
加齢に関連する疾患もしくは状態もしくは癌の予防、管理、改善または治療における使用のための、FOXO1の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物であって、前記加齢に関連する疾患もしくは状態または癌は、スプライシング因子の発現の調節異常、および/または細胞老化の調節異常を含む組成物。
【請求項4】
前記加齢に関連する疾患または状態が、アルツハイマー病、心血管疾患、高血圧、骨粗鬆症、2型糖尿病、癌、パーキンソン病、認知機能障害、虚弱またはプロゲロイド症候群から選択される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が2種以上の前記中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記中間体ノンコーディングRNA制御因子が、miRNAs、miRNA模倣物またはアンタゴミルを含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記中間体ノンコーディングRNA制御因子が、2種以上の異なる相補的なアンチセンスmiRNA配列に結合することができる2種以上のmiRNA、miRNA模倣物またはアンタゴミルを含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記中間体ノンコーディングRNA制御因子が、以下の、MIR142;MIR3124;MIR3188;MIR3196;MIR320E;MIR330;MIR3675;MIR4316;MIR4488;MIR4496;MIR4513;MIR4674;MIR4707;MIR4772;MIR6088;MIR6129;MIR6780A;MIR6797;MIR6803;MIR6810;MIR6842;またはMIR7155のうちの1つ以上から選択される請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記中間体ノンコーディングRNA制御因子が、以下の、MIR3124;MIR3675;MIR4496;MIR6780A;MIR6810;MIR6842;またはMIR7155のうちの1つ以上から選択される請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
細胞培養物においてスプライシング因子の発現を増加させ、細胞老化を減少させ、かつ/または細胞周期への再進入を促進する方法であって、前記細胞培養物に、FOXO1および/またはETV6の発現を調節する中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物を投与する工程を備える方法。
【請求項11】
前記組成物が、2種以上の前記中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記中間体ノンコーディングRNA制御因子が、miRNA、miRNA模倣物またはアンタゴミルを含む請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記FOXO1および/またはETV6の発現調節因子が、2種以上の異なる相補的なアンチセンスmiRNA配列に結合することができる2種以上のmiRNA、miRNA模倣物またはアンタゴミルを含む請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
加齢の影響の美容的治療のための、ETV6の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物の使用。
【請求項15】
前記加齢の影響が、スプライシング因子の発現の調節異常、および/または細胞老化の調節異常を含む請求項14に記載の使用。
【請求項16】
加齢の影響の美容的治療のための、FOXO1の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物の使用であって、前記加齢の影響は、スプライシング因子の発現の調節異常、および/または細胞老化の調節異常を含む使用。
【請求項17】
前記組成物が2種以上の前記中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記中間体ノンコーディングRNA制御因子が、miRNA、miRNA模倣物またはアンタゴミルを含む請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記FOXO1またはETV6の発現調節因子が、2種以上の異なる相補的なアンチセンスmiRNA配列に結合することができる2種以上のmiRNA、miRNA模倣物またはアンタゴミルを含む請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記中間体ノンコーディングRNA制御因子が、以下の、MIR142;MIR3124;MIR3188;MIR3196;MIR320E;MIR330;MIR3675;MIR4316;MIR4488;MIR4496;MIR4513;MIR4674;MIR4707;MIR4772;MIR6088;MIR6129;MIR6780A;MIR6797;MIR6803;MIR6810;MIR6842;またはMIR7155のうちの1つ以上から選択される請求項14から請求項19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記中間体ノンコーディングRNA制御因子が、以下の、MIR3124;MIR3675;MIR4496;MIR6780A;MIR6810;MIR6842;またはMIR7155のうちの1つ以上から選択される請求項20に記載の使用。
【請求項22】
スプライシング因子の発現を回復および/もしくは増加させるため、または細胞老化および/もしくは細胞周期への再進入を減少もしくは逆転させるための研究ツールとしての、FOXO1および/またはETV6の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物の使用。
【請求項23】
細胞培養物のための、FOXO1および/またはETV6の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物の使用。
【請求項24】
前記組成物が、細胞培養における生存可能な継代数を増加させ、および/または老化細胞集団を減少させるためのものである請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FOXO1および/もしくはETV6またはスプライシング因子の制御に関わるそれらの標的の発現を調節する組成物に関する。このような組成物は、加齢に関連する疾患もしくは状態、または癌の予防、管理、改善または治療において、また研究ツール/試薬として治療上の可能性を有する。
【背景技術】
【0002】
老化細胞は、細胞分裂の複数回のラウンドを経て増殖する能力を失い、複数の組織および複数の種において加齢プロセスの間に蓄積することが示されている、生存可能で代謝的に活性な存在である(Faragherら、2017)。老化細胞は、細胞老化関連分泌現象(SASP)と呼ばれる、炎症促進性サイトカインとリモデリング(組織修復)タンパク質のカクテルを放出し、これは、パラクリン(傍分泌)的な方法で近隣の細胞の老化の確立を誘発し、周囲の組織の炎症をさらに刺激するように作用する(Salamaら、2014)。老化細胞負荷の増加が、生命体の老化(de Magalhaes、2004)および加齢に関連する疾患(van Deursen、2014)に直接寄与することを示唆する証拠が多数存在し、トランスジェニックマウスにおける老化細胞の標的枯渇は、複数の老化表現型を改善し、寿命を延ばす(Bakerら、2016;Baarら、2017)。したがって、細胞老化の基本的な生物学、および重要なことに、細胞老化に寄与する因子を理解することは、非常に大きな重要性を有する。
【0003】
細胞老化および老化表現型の潜在的な推進因子(ドライバー)として浮上している領域の1つは、オルタナティブスプライシングの調節異常である(DeschenesおよびChabot、2017;LatorreおよびHarries、2017)。遺伝子発現の微細な制御は、細胞機能、可塑性、および細胞の同一性の制御に不可欠である。スプライス部位の選択を支配する制御機構の発現の変化は、老化したヒト集団において見られ(Harriesら、2011)、多系統の老化細胞において見られ(Hollyら、2013)、動物モデルにおいても寿命と関連している(Heintzら、2016;Leeら、2016)。アルツハイマー病、パーキンソン病または癌などの加齢に関連する疾患もまた、スプライシングの大規模な調節異常によって特徴づけられ、ライフコース全体にわたる健康のための正しいスプライシングの重要性を強調している(LatorreおよびHarries、2017)。スプライシング因子は、細胞老化に影響を与える標的遺伝子の良い候補である。なぜなら、いくつかのスプライシング因子は増殖の制御と密接に関連しており、いくつかはテロメア機能の維持に関与しているからである(Kangら、2009;Anczukowら、2012)。それゆえ、老化していく組織におけるオルタナティブスプライシングの制御の喪失は、複数の生物種における加齢を特徴づける内在性および外在性の細胞ストレス因子への応答の悪化を支えている可能性があり(KourtisおよびおよびTavernarakis、2011)、生理的虚弱性の増加に大きく寄与する可能性がある。
【0004】
加齢に伴うスプライシングの調節異常の上流の推進因子はまだ解明されていない。スプライシング因子をコードする遺伝子は、それ自体がオルタナティブスプライシングによって制御されており、これは、当然のことながら、その発現に強く寄与していることを表す(LareauおよびBrenner、2015)。タンパク質レベルでのスプライシング因子の活性の制御は、SRPKプロテインキナーゼの作用によって、また、リン酸化と細胞内局在化のレベルでPI3K/PTEN/AKTシグナル伝達によって決定されることも知られている(Blausteinら、2005;BullockおよびOltean、2017)。以前の研究では、いくつかのスプライシング因子がRAF/MEK/ERKシグナル伝達の変化によって制御される可能性があることが示唆されている(Tarn、2007)。老化中の細胞シグナル伝達の調節異常の概念は新しいものではない。老化におけるインスリン/インスリン様成長因子1(IGF1/INS)シグナル伝達の役割は周知であり、老化に関連した最初の分子経路である(CohenおよびDillin、2008)。この経路内の多くの遺伝子変異が寿命を延ばすことが示されている(Suhら、2008)。遺伝子改変または食事制限によるIGF-1/INS経路の操作もまた、ヒトの寿命延長におけるこれらの経路の重要性を実証しており(van Heemstら、2005)、モデル系における長寿命との関連性も示されている(Slackら、2015)。RAF/MEK/ERKおよびPI3K/PTEN/AKTシグナル伝達は、IGF-1/INSシグナル伝達のすぐ下流で交差しており、DNA損傷、調節異常の成長因子および炎症などの古典的な「老化」刺激によっても活性化される(Fontanaら、2012;Linら、2013)。
【0005】
いくつかの研究では、MEKまたはPI3K阻害剤の使用は、細胞老化および老化の誘導を防ぐことができることが示唆されている(Demidenkoら、2009;Chappellら、2011)。NFκB経路は細胞老化関連分泌現象(SASP)を制御する(Salminenら、2012)が、このNFκB経路は、ERKおよびAKTシグナル伝達と交差することも知られており(Linら、2012)、炎症性変化がRAF/MEK/ERKシグナル伝達の上流および下流の両方に存在し得ることを示唆している。しかしながら、これらの経路間の関係は単純ではない。これらの間にはクロストーク(相互干渉)があり、また、投与量、細胞型、文脈の影響もある(Rhimら、2016)。それゆえ、DNA損傷、炎症または成長因子などの古典的な老化刺激によるERKおよびAKTシグナル伝達の活性化は、スプライシング因子の発現およびオルタナティブスプライシングの調節異常を誘導し、細胞老化に影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Faragher RGら、F1000Res. 6、1219(2017)
【非特許文献2】Salama Rら、Genes Dev. 28、99-114(2014)
【非特許文献3】de Magalhaes JP、Exp Cell Res. 300、1-10(2004)
【非特許文献4】van Deursen JM、Nature. 509、439-446(2014)
【非特許文献5】Baker DJら、Nature. 530、184-189(2016)
【非特許文献6】Baar Mら、Cell 169、133-147(2017)
【非特許文献7】Deschenes MおよびChabot B、Aging Cell(2017)
【非特許文献8】Latorre EおよびHarries LW、Ageing Res Rev. 36、165-170(2017)
【非特許文献9】Harries LWら、Aging Cell. 10、868-878(2011)
【非特許文献10】Holly ACら、Mechanisms of ageing and development. 134、356-366(2013)
【非特許文献11】Heintz Cら、Nature. 541、102-106(2016)
【非特許文献12】Lee BPら、Aging Cell. 15、903-913(2016)
【非特許文献13】Kang Xら、Oncogene. 28、565-574(2009)
【非特許文献14】Anczukow Oら、Nat Struct Mol Biol. 19、220-228(2012)
【非特許文献15】Kourtis NおよびTavernarakis N、EMBO J. 30、2520-2531(2011)
【非特許文献16】Lareau LFおよびBrenner SE、Mol Biol Evol. 32、1072-1079(2015)
【非特許文献17】Blaustein Mら、Nat Struct Mol Biol. 12、1037-1044(2005)
【非特許文献18】Bullock NおよびOltean S、J Pathol. 241、437-440(2017)
【非特許文献19】Tarn WY、J Biomed Sci. 14、517-522(2007)
【非特許文献20】Cohen EおよびDillin A、Nature reviews.Neuroscience. 9、759-767(2008)
【非特許文献21】Suh Yら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 105、3438-3442(2008)
【非特許文献22】van Heemst Dら、Aging Cell. 4、79-85(2005)
【非特許文献23】Slack Cら、Cell. 162、72-83(2015)
【非特許文献24】Fontana Lら、Circ Res. 110、1139-1150(2012)
【非特許文献25】Lin Xら、Histol Histopathol. 28、1547-1554(2013)
【非特許文献26】Demidenko ZNら、Cell cycle. 8、1896-1900(2009)
【非特許文献27】Chappell WHら、Oncotarget. 2、135-164(2011)
【非特許文献28】Salminen Aら、Cell Signal. 24、835-845(2012)
【非特許文献29】Lin Gら、Oncol Rep. 27、1527-1534(2012)
【非特許文献30】Rhim JHら、Sci Rep. 6、26547(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、以下のうちの1つ以上の機能を有する組成物を提供することである:FOXO1および/もしくはETV6の遺伝子発現を減弱させること、スプライシング因子の発現を調節すること、または細胞老化および/もしくは細胞周期への再進入(復帰)を減少もしくは逆転させること。理想的には、そのような組成物は、加齢に関連する疾患もしくは状態、または癌を標的とする治療薬として使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、加齢に関連する疾患もしくは状態もしくは癌の予防、管理、改善または治療における使用のための、ETV6の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物が提供される。
【0009】
上記加齢に関連する疾患もしくは状態または癌は、スプライシング因子の発現の調節異常および/または細胞老化の調節異常を含み得る。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、加齢に関連する疾患もしくは状態もしくは癌の予防、管理、改善または治療における使用のための、FOXO1の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物であって、この加齢に関連する疾患もしくは状態または癌は、スプライシング因子の発現の調節異常および/または細胞老化の調節異常を含む組成物が提供される。
【0011】
本発明のなおさらなる態様によれば、FOXO1および/またはETV6の発現を調節するための組成物であって、1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物が提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、スプライシング因子の発現を減弱させるための組成物であって、FOXO1および/もしくはETV6またはスプライシング因子の調節に関連するそれらの下流標的の発現調節因子を含む組成物が提供される。
【0013】
本発明のなおさらなる態様によれば、細胞老化および/もしくは細胞周期への再進入を減少または逆転させるための組成物であって、FOXO1および/もしくはETV6またはスプライシング因子の調節に関連するそれらの下流標的の発現調節因子を含む組成物が提供される。
【0014】
上記の態様の組成物は、FOXO1の別個の調節因子(モジュレーター)とETV6の別個の調節因子、またはそれらの個別のまたは組み合わせた標的遺伝子を含んでもよいことは、当業者には明らかであろう。あるいは、当該組成物は、単にFOXO1とETV6の複合調節因子、またはそれらの標的遺伝子を含んでもよい。
【0015】
本発明者らは、有利なことに、FOXO1および/またはETV6の発現を調節することが、スプライシングおよび老化の下流エフェクターの活性を標的としており、それゆえ、将来の治療法の範囲の有望な標的を表す可能性があることを見出した。
【0016】
上記の態様におけるFOXO1および/もしくはETV6またはそれらの標的遺伝子の調節は、阻害剤のようないくつかのタイプの分子を使用することによって行うことができる。阻害剤は、FOXO1および/もしくはETV6、もしくは任意の下流のエフェクター分子の作用もしくは機能を制限、防止またはブロックする任意の分子(1種もしくは複数種)である。
【0017】
FOXO1および/またはETV6の発現調節因子は、1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含んでいてもよい。この1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子は、2種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含んでもよい。
【0018】
上記中間体ノンコーディングRNA制御因子は、miRNA、miRNA模倣物(ミミック)、またはアンタゴミル(antagomiR)を含んでもよい。特定の実施形態では、中間体ノンコーディングRNA制御因子は、以下の、MIR142;MIR3124;MIR3188;MIR3196;MIR320E;MIR330;MIR3675;MIR4316;MIR4488;MIR4496;MIR4513;MIR4674;MIR4707;MIR4772;MIR6088;MIR6129;MIR6780A;MIR6797;MIR6803;MIR6810;MIR6842;またはMIR7155うちの1つ以上から選択される。より好ましくは、中間体ノンコーディングRNA制御因子は、以下の、MIR3124;MIR3675;MIR4496;MIR6780A;MIR6810;MIR6842;またはMIR7155うちの1つ以上から選択される。
【0019】
FOXO1またはETV6の標的遺伝子に富む生化学的および機能的経路は、下記表Aに例示される。潜在的に、表Aに概説された遺伝子または経路のいずれか1つを破壊することは、FOXO1および/またはETV6の発現の調節をもたらす可能性がある。
【0020】
【表1】
【0021】
細胞可塑性は、オルタナティブスプライシングの正しい時間的および空間的パターンを必要とする細胞恒常性の重要な因子である。このプロセスを統合制御するスプライシング因子は、加齢に伴う発現異常を示しており、老化と長寿命に影響を及ぼす可能性のある因子として浮上してきている。これらの変化の上流の推進因子はまだ明らかにされていないが、異常な細胞内シグナル伝達が関与している可能性がある。
【0022】
本発明者らは、初期および後期の継代のヒト初代線維芽細胞の複数のシグナル伝達経路におけるタンパク質のリン酸化状態を比較し、ERKおよびAKTシグナル伝達の活性化因子として知られるサイトカインに対する「若い」細胞の応答を決定した。次に、ERKおよびAKT経路の直接下流標的の化学的阻害、または標的ノックダウンが、老化したヒト初代線維芽細胞におけるスプライシング因子発現、細胞老化および増殖動態に与える影響を評価した。
【0023】
驚くべきことに、そして予想外のことに、ERKとAKTの両方のシグナル伝達経路の成分が、細胞の老化に伴って活性化が高められていることが示された。サイトカインに曝露された初期継代細胞でも、スプライシング因子の発現に変化が見られた。AKTとERKの経路を阻害すると、スプライシング因子の発現が上方制御され、老化細胞負荷が減少し、複数の細胞老化表現型が用量依存的に逆転することが示された。
【0024】
上記組成物中のERKの阻害剤および/またはAKTの阻害剤の用量は、好ましくは低用量である。実験中、本発明者らは、1μMでのERKまたはAKTシグナル伝達のいずれかの低用量化学的阻害を24時間行うと、スプライシング因子の発現が、若い継代細胞で見られるレベルと一致するレベルまで回復し、試験した細胞のある割合で、老化の逆転および細胞周期への再進入がもたらされることを、予想外にも見出した。
【0025】
本発明のさらなる態様では、スプライシング因子の発現を調節することが可能な組成物であって、FOXO1および/もしくはETV6遺伝子に結合し、FOXO1および/もしくはETV6遺伝子と結合し、またはFOXO1および/もしくはETV6遺伝子を阻害することが可能な1種以上の化合物を含む組成物が提供される。好ましくは、当該組成物は、FOXO1およびETV6遺伝子(もしくは他のFOXOもしくはETSファミリーメンバーの遺伝子)もしくはその遺伝子産物に結合することが可能な、またはそれを阻害することが可能な1種以上の化合物を含む。
【0026】
本発明者らは、有利にも、下流の標的FOX01またはETV6をコードする遺伝子の標的ノックダウンは、ERKおよびAKTの阻害に関して見出された観察結果を模倣するのに十分であることを有利に指摘した。
【0027】
上記の態様の組成物は、実験室試薬および研究ツールから医薬品まで、いくつかの用途を有し得る。実験室試薬に関して、当該組成物は、FOXO1および/またはETV6の遺伝子発現の低下の効果を調査するため、またはスプライシング因子の発現を回復および/もしくは増加させるため、または細胞の老化および/もしくは細胞周期への再進入を減少もしくは逆転させるための研究ツールとして使用することができる。当該組成物はまた、研究および治療への応用のための幹細胞培養を含む細胞培養のために細胞老化および/もしくは細胞周期への再進入を減少または逆転させる方法として使用することができる。当該組成物は、細胞培養における生存可能な継代数を増加させ、および/または老化細胞集団を減少させるために使用することができよう。
【0028】
当該組成物は、ERKまたはAKTシグナル伝達の阻害剤を含んでいてもよい。
【0029】
当該組成物は、医薬製剤の形態であってもよい。
【0030】
当該組成物は、医薬として使用するためのものであってもよい。
【0031】
有利にも、本発明者らによって生み出された結果は、加齢に関連するスプライシング因子の発現の調節異常および細胞老化が、部分的には、ERKおよびAKTシグナル伝達の変化した活性に由来し、ETV6およびFOXO1転写因子を介して作用する可能性があることを示唆している。それゆえ、ERKおよびAKTの下流エフェクターの活性を標的とすることは、将来の治療的介入のための有望なターゲットとなり得る。
【0032】
当該組成物は、加齢に関連する疾患もしくは状態の予防、管理、改善または治療における使用のためのものであってもよい。
【0033】
当該組成物は、加齢に関連する疾患もしくは状態の予防、管理、改善または治療の方法における使用のためのものであってもよく、この方法は、治療上有効な量の当該組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を備える。
【0034】
関連する態様では、本発明は、加齢に関連する疾患もしくは状態の予防、管理、改善または治療のための医薬品の製造における使用のための組成物を含んでいてもよい。
【0035】
上記加齢に関連する疾患または状態は、アルツハイマー病、心血管疾患、高血圧症、関節炎、骨粗鬆症、2型糖尿病、癌、パーキンソン病、認知機能障害または虚弱性などの多くの加齢に関連する状態を包含してもよい。上記加齢に関連する疾患または状態はまた、ウェルナー(Werner)症候群およびハッチンソン-ギルフォード(Hutchinson-Gilford)早老症候群などのような、プロゲロイド症候群(早老症候群)と呼ばれる早期老化を生じる特定の状態に罹患している若い対象が苦しんでいるいくつかの状態を包含してもよい。
【0036】
当該組成物は、癌の予防、管理、改善または治療における使用のためのものであってもよい。
【0037】
当該組成物は、癌の予防、管理、改善または治療の方法における使用のためのものであってもよく、その方法は、治療上有効な量の当該組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を備える。
【0038】
関連する態様では、本発明は、癌の予防、管理、改善または治療のための医薬品の製造における使用のための組成物を含んでいてもよい。
【0039】
当該組成物はまた、加齢の影響を低減するための栄養補助食品または化粧品としての使用のためのものであってもよい。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、
a)FOXO1および/もしくはETV6もしくはそれらの標的遺伝子の遺伝子発現を調節するため、
b)スプライシング因子の発現を回復および/もしくは増加させるため、または
c)細胞老化および/もしくは細胞周期への再進入を減少もしくは逆転させるため
のERK阻害剤およびAKT阻害剤の関連する組み合わせが提供される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」、「治療する」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。この効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に防ぐという点で予防的であってよく、かつ/または疾患および/もしくはその疾患に起因する悪影響を部分的にまたは完全に治癒するという点で治療的であってよい。本明細書で使用される場合の「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を対象とし、(a)疾患に対する素因を有する可能性があるが、まだその疾患を有すると診断されていない対象においてその疾患が発生することを防止すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、疾患の発達を阻止するかまたは遅らせること、および(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0042】
本明細書で使用される用語「対象」には、任意のヒトまたは非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどのすべての哺乳類を含む。
【0043】
「治療上有効な量」とは、疾患を治療するために対象に投与したときに、その疾患に対するそのような治療に影響を与えるのに十分な組成物の量を指す。この「治療上有効な量」は、使用される薬剤活性成分、疾患およびその重症度、ならびに治療されるべき対象の年齢、体重などに応じて変化するであろう。
【0044】
一般に、本発明によって企図される投与経路には、経腸経路、非経口経路、または吸入経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0045】
吸入投与以外の非経口投与経路には、外用(局所)経路、経皮経路、皮下経路、筋肉内経路、眼窩内経路、関節包内経路、脊髄内経路、胸骨内経路、髄腔内経路、および静脈内経路、すなわち、消化管を通るもの以外のあらゆる投与経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。非経口投与は、全身的または局所的な送達をもたらすために実施することができる。全身送達が望まれる場合、投与は、典型的には、医薬製剤の侵襲的もしくは全身吸収性の局所投与または粘膜投与を含む。経腸投与経路には、経口送達および直腸(例えば、座薬を使用する)送達が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0046】
従来のおよび薬学的に許容される投与経路には、鼻腔内投与、筋肉内投与、気管内投与、髄腔内投与、頭蓋内投与、皮下投与、皮内投与、外用(局所)投与、静脈内投与、腹腔内投与、動脈内投与(例えば、頸動脈を介して)、脊髄送達または脳内送達、直腸投与、経鼻投与、経口投与、ならびに他の経腸投与経路および非経口投与経路が含まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物または本発明の組み合わせは、加齢に関連する疾患もしくは状態もしくは癌の予防、管理、改善または治療に有効な1種以上の他の化合物と一緒に投与されてもよい。
【0048】
本発明の代替的な態様では、加齢の影響の美容的治療のための、ETV6の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物の使用が提供される。この加齢の影響は、スプライシング因子の発現の調節異常および/または細胞老化の調節異常を含み得る。
【0049】
本発明のなおさらなる態様では、加齢の影響の美容的治療のためのFOXO1の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物の使用であって、この加齢の影響がスプライシング因子の発現の調節異常および/または細胞老化の調節異常を含む使用が提供される。
【0050】
用語「美容的治療」は、ヒトまたは動物に全身的または局所的に施され得る任意の非医学的治療を意味することが意図されている。
【0051】
用語「加齢の影響」は、老化、または生物学的機能の低下、および代謝ストレスに適応する能力の低下をもたらすヒトまたは動物における進行性の(ただし、疾患に基づくものではない)生理学的変化を意味することが意図されている。
【0052】
上記FOXO1および/もしくはETV6の調節因子(1種もしくは複数種)またはその標的遺伝子は、人為的に生成されたものであってもよい。つまり、それは天然に存在していないものである。しかしながら、FOXO1および/またはETV6の調節因子(1種もしくは複数種)ならびにそれらの標的遺伝子は、天然に存在する分子(1種または複数種)であってもよいが、医薬品または医薬製剤または組み合わせにおけるその濃度と配合は、その分子が加齢に関連する疾患もしくは状態もしくは癌の予防、管理、改善または治療のために使用されることを可能にする一方で、そうでなければ、その分子は何の効果も有さないか、または限られた効果しか持たないであろう。阻害剤(1種または複数種)は、天然に存在する分子(1種または複数種)であってもよいが、治療的に有効であることが見出されたその分子(1種または複数種)の濃度および配合は、そのような濃度で、または他の成分を含む配合で天然に存在するわけではないことが理解されるであろう。
【0053】
阻害剤(1種または複数種)は、抗体(1種もしくは複数種)または抗体の混合物を含んでもよい。そのような抗体(1種または複数種)は、ポリクローナルであってもよいし、モノクローナルであってもよい。阻害剤として作用するであろう抗体をどのようにして製造するかは、当業者には明らかであろう。好ましくは、抗体はヒト化される。
【0054】
他の実施形態では、阻害剤(1種または複数種)は、ペプチドまたはそのペプチド模倣体、またはそのC末端アミド化ペプチドを含む。
【0055】
用語「ペプチド」(1種および複数種)は、アミノ酸残基(H-Cα-[側鎖])を有するが、このアミノ酸残基がペプチド(-CO-NH-)または非ペプチド結合によって結合されていてもよい化合物を含む。
【0056】
ペプチドは、Fmoc-ポリアミドモードの固相ペプチド合成法によって合成されてもよい。
【0057】
ペプチドは、ペプチドアプタマーであってもよい。ペプチドアプタマーは、典型的には、特定の標的分子に結合することができる、短い5~20アミノ酸残基長の配列からなる。
【0058】
アミド結合を含まないペプチド組成物の設計および合成には、いくつかの異なるアプローチがある。1つのアプローチにおいて、1つ以上のアミド結合は、本質的に異性体的な方法で、様々な化学的官能基によって置換される。
【0059】
ペプチド結合が逆になっているレトロインバーソ(retro-inverso)ペプチド模倣体は、当該技術分野で公知の方法によって合成することができる。このアプローチは、側鎖の配向ではなく、骨格に関与する変化を含む疑似ペプチドを作ることを含む。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含むレトロインバーソペプチドは、タンパク質分解に対してより耐性がある。
【0060】
ペプチドは直鎖状であってもよい。しかし、ペプチドベースのフレームワークに環状部位を導入することは有利である場合がある。環状部位は、ペプチド構造のコンフォメーション空間を制限し、これは、有効性の増大につながる可能性がある。この戦略の付加的な利点は、ペプチドへの環状部位の導入が、細胞性ペプチダーゼに対する感受性の低下を有するペプチドをもたらす可能性もあることである。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドは、別の部位に結合されてもよい。ペプチドが結合されてもよい好都合な部位としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ならびに細胞への送達を増強するTATおよびアンテナペディアなどのペプチド配列が挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、阻害剤(1種または複数種)は、ペプチドのプロドラッグである。プロドラッグは、タンパク質などの分子を産生するために生体内で代謝される化合物である。当業者であれば、プロドラッグの調製に精通しているであろう。
【0063】
ペプチドは、ペプチド模倣体であってもよい。ペプチド模倣体は、本明細書で定義される分子と類似の構造(ジオメトリ)および極性を有し、実質的に類似の機能を有する有機化合物である。模倣体は、1つ以上のペプチド連結のNH基がCH基で置換されている分子であってもよい。模倣体は、1つ以上のアミノ酸残基が、ナプチル基のようなアリール基で置換されている分子であってもよい。
【0064】
他の実施形態では、阻害剤(1種または複数種)は、FOXO1および/もしくはETV6の下流エフェクターまたはそれらの標的遺伝子に結合して阻害することができる一本鎖のDNAまたはRNAなどの核酸を含む。同じ標的は、ペプチドを用いた標的指向化(ターゲティング)にも適しており、ペプチドアプタマーは、RNAまたは修飾RNAアプタマーを用いた標的指向化にも適していることが想定される。FOXO1および/またはETV6の下流エフェクターまたはそれらの標的遺伝子に結合し阻害する一本鎖のDNAおよびRNAなどの核酸が提供されてもよい。典型的には、この核酸は一本鎖であり、100~50000塩基を有する。
【0065】
さらに他の実施形態では、阻害剤(1種または複数種)は、低分子または低分子を含む。
【0066】
当該組成物が、FOXO1および/またはETV6遺伝子の発現またはその遺伝子産物に結合し、または調節することができる1つ以上の化合物を含むことが意図されている場合、当業者には明らかであろう。
【0067】
本発明の特定の態様、実施形態または例に関連して記載された特徴、整数、特性、化合物、分子、化学的部位または基は、それと相容れない場合を除き、本明細書に記載された他の態様、実施形態または例にも適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の付随する特許請求の範囲、要約および図を含む)に開示された特徴のすべて、ならびに/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程のすべては、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、上述の任意の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(任意の付随する特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、もしくは任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程の任意の新規な1つ、もしくは任意の新規な組み合わせにも及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1図1は、初期継代細胞培養物と後期継代(老化)細胞培養物との間の増殖性細胞画分の差を示す。初期継代細胞培養物および後期継代細胞培養物は、活発に成長している細胞を選択的に染色するために、S期マーカーBrdUを用いる24時間の標識にさらされた。***=p=<0.0001、n=3の生物学的複製物、複製物ごとに数えた300核。
図2図2は、ERKおよびAKT経路内の標的についてのタンパク質リン酸化における加齢に伴う変化を示す。Aは、AKTおよびERK経路からの主要な標的のリン酸化されたタンパク質の発現が若い(PD=25)細胞と老化(PD=63)細胞で評価されたことを示すグラフである。白色と灰色のバーはそれぞれ若い細胞と老化細胞の溶解物を表している。Bは、AKTおよびERK経路における老化に関連するリン酸化の差について試験した遺伝子を示す模式図である。リン酸化レベルが有意に異なることを示す標的は、太字の下線で強調表示されている。タンパク質のリン酸化に有意差を示さない標的は、通常の書体で表示されている。統計的有意性はp<0.05の星印で示される。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
図3図3は、ERKまたはAKTシグナル伝達の化学的阻害が、細胞老化の表現型からの救済に関連していることを示す。A.1μMまたは10μMのトラメチニブおよびSH-6で処理した後の老化に関連するβ-ガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)活性を陽性に染色した細胞の割合を、SA-β gal陽性細胞の割合を手動で数えることによって決定した。各サンプルについてN=300細胞超。B.老化マーカーp16をコードする老化関連転写物CDKN2Aのレベルを、qRTPCRにより老化細胞中で評価した。データは、安定な内因性対照遺伝子GUSB、IDH3BおよびPPIAとの相対的な表現であり、ビヒクルのみで処理した対照細胞に存在する個々の転写物のレベルに正規化して与えられている。倍数変化は、3つの生物学的複製物に対して三つ組で計算された。統計的有意性は、**p<0.005、***p<0.0001(二元配置ANOVA)で示されている。C.1μMおよび10μMのERKおよびAKT阻害剤で処理した後の様々な炎症促進性SASP因子のタンパク質レベル。D.DNA損傷応答タンパク質p21をコードするCDKN1A転写物の発現レベル。E.SASPタンパク質発現の倍数変化を示すヒートマップである。緑色は上方制御を示し、赤色は下方制御を示す。統計的に有意な変化のみがヒートマップに表示されている。色のスケールは、発現のパーセント変化を指す。実験は、合計6つの生物学的複製物に対して重複して実施された。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
図4図4は、細胞増殖を許可しない条件下でのスプライシング因子の発現および老化細胞負荷に対するERKまたはAKT阻害剤の効果を示す。老化細胞培養物の見かけの「若返り」が、培養物中の非老化細胞の増殖動態の変化に由来するか、または処理に応答した真の救済から生じるかを確証するために、選択した実験を、細胞が分裂するのを阻止された血清飢餓の条件下で繰り返した。A.Ki67染色は、細胞が非増殖性であることを示したのに対し、B.SA-b-Gal染色は救助がまだ明白であったことを明らかにした。***=p=<0.0001、n=3の生物学的複製物、複製物ごとに数えた300核。
図5図5は、低用量のERKまたはAKTの阻害に応答して、ERKおよびAKTシグナル伝達タンパク質、およびリンクされたシグナル伝達経路のタンパク質のリン酸化状態の変化を示す。白色、薄灰色、薄灰色ハッチング、濃灰色および濃灰色ハッチングのボックスは、それぞれ対照、低用量トラメチニブ、高用量トラメチニブ、低用量SH-6および高用量SH-6を表す。統計的有意性は、*p<0.05の星印で示される。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。***=p=<0.0001。データは3つの生物学的複製物と2つの技術的複製物から得られたものである。
図6図6は、AKTまたはERK経路の阻害がスプライシング因子転写物の発現および細胞増殖率に影響を与えることを示す。A.1μMおよび10μMのERKまたはAKT阻害剤による24時間の処理に応答したスプライシング因子mRNAレベルの変化を示す。緑色は上方制御された遺伝子を示し、赤色は下方制御された遺伝子を表す。色のスケールは発現の倍数変化を示す。統計的に有意な変化のみがヒートマップに表示されている。B.増殖指数は、Ki67免疫蛍光(サンプルあたり400個以上の核を数えた)によって評価され、処理された細胞について評価された。C.1μMおよび10μMのERKまたはAKT阻害剤で処理した後の細胞数。D.36B4内因性対照との相対的にqPCRによって定量され、ビヒクルのみの対照におけるテロメア長に正規化されたテロメア長。E.TUNELアッセイにより決定された、阻害剤で処理された老化細胞のアポトーシス指数。データは、3つの生物学的複製物の二重反復試験に由来する。統計的有意性は、**p<0.005、***p<0.0001で示される。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
図7図7は、ETV6およびFOXO1遺伝子の標的ノックダウンの細胞効果および分子効果を示す。A.FOX01、ETV6またはETV6/FOX01遺伝子ノックダウン後のスプライシング因子の発現のレベル。緑色は上方制御された遺伝子を示し、赤色は下方制御された遺伝子を表す。色のスケールは発現の倍数変化を示す。統計的に有意な変化のみがヒートマップに表示されている。B.FOX01、ETV6およびETV6/FOX01遺伝子ノックダウン後のSA-β-Galで示される老化細胞負荷。各サンプルについてn>300の細胞。C.FOX01、ETV6およびETV6/FOX01遺伝子ノックダウン後のCDKN2A遺伝子発現によって示される老化細胞負荷。データは、安定な内因性対照遺伝子GUSB、IDH3BおよびPPIAとの相対的な表現であり、ビヒクルのみの対照における個々の転写物のレベルに正規化されている。D.増殖指数は、FOX01、ETV6およびETV6/FOX01遺伝子ノックダウン後に、Ki67免疫蛍光(サンプルあたり400個以上の核を数えた)によって評価した。E.ETV6およびFOXO1遺伝子のそれぞれの相互発現に対するFOX01またはETV6遺伝子ノックダウンの効果。データは、安定な内因性対照遺伝子GUSB、IDH3BおよびPPIAとの相対的な表現であり、対照中の個々の転写物のレベルに正規化されている。データは、3つの生物学的複製物の二重反復試験に由来する。統計的有意性は、p<0.05、**p<0.005、***p<0.0001で示される。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
図8図8は、第2の方法論であるsiRNAによって達成されたFOXO1および/またはETV6ノックダウンの効果を示す。ETV6またはFOXO1遺伝子ノックダウンの効果は、注目する遺伝子に対するsiRNAによって確認された。ノックダウンのレベルは、ETV6については43%、FOXO1については65%と決定された。スプライシング因子の発現に対する遺伝子ノックダウンの効果(A)、ETV6およびFOXO1発現に対する効果(B)。操作した遺伝子の識別名はX軸に与えられている。最初の4本のバーはFOXO1遺伝子発現に対する効果、後半はETV6発現に対する効果を示す。老化細胞負荷(C)およびCDKN2A発現(D)に対する効果も調べた。統計的に有意な変化のみがヒートマップに表示されている。***=p=<0.0001、n=3の生物学的複製物。データは、3つの独立した生物学的複製物からのものである。
図9図9は、FOXO1およびETV6転写物の発現ならびに細胞内局在化に対するERKまたはAKT阻害の効果を示す。A.ETV6およびFOXO1発現に対するERKおよびAKT阻害の効果を示す。処理は、X軸上に示されている。最初の5本のバーはFOXO1発現に対する効果を示し、2番目の5本のバーはETV6発現に対する効果を示す。データは、3つの独立した生物学的複製物からのものであり、それぞれ3つの技術的複製物を有する。B.ETV6およびFOXO1タンパク質の細胞内局在化に対するERKおよびAKT阻害の効果。処理は、X軸上に示されている。最初の5本のバーはETV6の局在化に対する効果を示し、2番目の5本のバーはFOXO1の局在化に対する効果を示す。***=p=<0.0001。データは、3つの独立した生物学的複製物のそれぞれからの少なくとも50個の細胞からのものである。
図10図10は、本発明者らが実施した実験により解明された老化の間接制御を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の実施形態を、例示のためだけに、添付の図を参照して以下に説明する。
【実施例0070】
本例の実験の目的は、化学的阻害または標的遺伝子ノックダウンによるERKおよびAKTシグナル伝達経路の操作が、後期継代ヒト初代線維芽細胞におけるスプライシング因子の発現および細胞老化および増殖動態に及ぼす影響を調べることであった。
【0071】
1. 老化細胞におけるMEK/ERKおよびPI3K/AKT経路の標的タンパク質のリン酸化の増加
細胞培養物は、集団の倍化時間が1週間あたり0.5個未満の細胞分裂まで遅くなったときに老化とみなした。この時点では、S期マーカーであるBrdU(DNAの複製が活発に行われていることを示す)に対して陽性に染色されている細胞は3%程度であった(図1)。後期継代初代ヒト真皮線維芽細胞は、PD=63で老化に達していることが判明した。より初期の継代細胞はPD=25のものであった。本発明者らは、後期継代の線維芽細胞では、AKT、CREB、ERK、GSK3α、MEK、MSK2シグナル伝達タンパク質のリン酸化が増加していることを指摘したが、これらの細胞では、GSK3β、HPS27、JNK、MKK3、MKK6、mTOR、p38、p58、p70SK6またはRSK1タンパク質のリン酸化は増加していないことが明らかになった(図2A)。これらの標的のいくつかは、AKTまたはERKシグナル伝達経路に存在する(図2B)。
【0072】
2. MEK/ERKおよびPI3K/AKT経路の阻害は、細胞老化の表現型を救済する
本発明者らは、特定の阻害剤を用いて、後期継代のヒト初代線維芽細胞におけるAKTまたはMEK/ERKの標的阻害の効果を評価した。1μMおよび10μMの両方のSH-6(AKT)またはトラメチニブ(MEK/ERK)で処理すると、SH-6およびトラメチニブは、高用量および低用量の両方で、それぞれAKTまたはERKタンパク質のリン酸化の特異的な減少をもたらした(図3A)。これは、SA-β-Gal染色の低下(p=<0.0001;図3B)ならびにp16およびp21の両方の発現の減少(図3Cおよび図3D)によって示されるように、わずかではあるが確実な老化細胞集団の減少を伴っていた。低用量および高用量のトラメチニブとSH-6の両方で処理した細胞では、いくつかの分泌されたSASPタンパク質のレベルの低下も認められた(下記表1;図3E)。
【0073】
【表2】
(細胞老化関連分泌現象(SASP)の炎症促進性成分のタンパク質レベルは、1μMまたは10μMのERK阻害剤トラメチニブまたはAKT阻害剤SH-6で24時間処理した老化細胞からの培地中で、メソスケール(Mesoscale)ELISAプラットフォームを使用して測定した。結果は、3つの独立した実験の対照値(ビヒクルのみ)のパーセンテージとして表されている。平均値の標準誤差(SEM)は括弧内に与えられている。統計的有意性は、対応する対照値と比較してp<0.05、**p<0.005および***p<0.001の星印で示されている。)
【0074】
老化細胞画分における低下が積極的な「救済」によるものか、あるいは単に培養物中の増殖停止した細胞の増殖の増加によるものかを確証するために、本発明者らは、細胞増殖を阻害する血清飢餓の条件下で処理を繰り返した。血清飢餓下の細胞では、SA-β-Gal陽性細胞が約20%減少しており、これは、上記効果は単に培養細胞の分裂速度の変化に由来するものではないことを示した(図4)。これは、本発明者らの以前の知見(Latorreら、2017)と一致している。
【0075】
3. MEK/ERKおよびP13K/AKTの阻害は、ERKおよびAKTの上流および下流の両方の標的タンパク質のリン酸化状態を変化させる
細胞老化に影響を与えている可能性のある有望な下流の標的を調べるために、本発明者らは、下流のシグナル伝達標的に対するERKとAKTの阻害の効果を評価した。予想通り、高用量および低用量の経路阻害に応答して、ERKおよびAKTのリン酸化レベルの変化が、GSK3α、GSK3β、p70SK6およびCREBの下流標的のリン酸化状態の変化とともに観測された。GSK3βの下方制御は高濃度および低濃度のトラメチニブの両方については明らかであったが、高用量SH-6のみで認められ、一方、GSK3αのリン酸化は、トラメチニブ単独とSH-6単独の両方において、低用量では減少したレベルを示し、高用量では増加したレベルを示したが、高用量のSH-6と低用量のトラメチニブでのみ統計的に有意であった(図5A)。この拮抗作用のパターンは、p38を含む上流のキナーゼに対しても明らかであった。p53、MKK3、MKK6、およびMEKを含む他のいくつかの上流の標的は、処理後のリン酸化状態の差を示し、効果は高用量で最も一般的であった(図5B)。p53のリン酸化の変化は、AKTまたはERK阻害剤で処理することで、細胞がより増殖性でより老化しにくい状態に回復すること(Pise-Masisonら、1998)と一致している。
【0076】
4. ERKおよびAKT経路はスプライシング因子の発現に影響を与える
スプライシング因子の発現の調節異常は、ヒト集団および細胞における(Harriesら、2011;Hollyら、2013)、および動物モデルにおける(Heintzら、2016;Leeら、2016)細胞老化および加齢に関連づけられてきた。さらには、低分子を用いたスプライシング因子の発現の回復は、本発明者らの以前の研究において、細胞老化の救済と関連していた(Latorreら、2017)。それゆえ、本発明者らは、低用量(1μM)および高用量(10μM)のAKTおよびERK阻害剤(それぞれSH-6およびトラメチニブ)で処理した後期継代ヒト線維芽細胞において老化に関連する変化を示すことが以前に実証された20種のスプライシング制御因子遺伝子の先験的リストの発現を評価した。低用量(1μM)でのトラメチニブおよびSH-6の両方での処理は、複数のスプライシング因子の上方制御と関連していた(図6A;下記表2)。
【0077】
【表3】
(1μMまたは10μMのERK阻害剤(トラメチニブ)またはAKT阻害剤(SH-6)を用いた24時間の処理に応答した、老化した初代ヒト線維芽細胞におけるmRNAレベルの変化。データは、3つの生物学的複製物の二重反復試験に由来する。平均値の標準誤差(SEM)は括弧内に与えられている。統計的有意性は、対応する対照値と比較してp<0.05、**p<0.005および***p<0.0001の星印で示されている。)
【0078】
効果は、AKTを阻害した細胞よりもMEK/ERKを阻害した細胞の方が顕著であった。驚くべきことに、高用量の阻害剤(10μM)は、スプライシング因子の発現に対して拮抗的な効果を明らかにした(図6A;表2)。この用量依存性の応答は、増殖動態についても認められた(図6B、C)。低用量のトラメチニブは、増殖指数の31%の増加をもたらしたのに対し、低用量のSH-6は、Ki67染色の27%の増加をもたらした(それぞれp=<0.0001および<0.0001)。いずれの阻害剤での高用量処理は、増殖の再活性化をもたらさなかった(図6B、C)。これらのデータは、細胞周期への再進入とスプライシング因子の発現との間の明確な関連を示している。いずれの処置を行ってもテロメアの救済は明らかではなく(図7D)、アポトーシス指数の増加はいずれの処置を行っても認められなかった(図7E)。
【0079】
5. ETV6およびFOXO1は、スプライシング因子の発現および細胞老化の表現型の制御因子である
ERKおよびAKTシグナル伝達は、複数の下流エフェクター経路を有し、クロストークおよび自己制御の有意な証拠を有する(Rhimら、2016)。メカニズムを明らかにするために、操作時の表現型のより明快な評価を与えるために、下流のエフェクター遺伝子を特定する必要があった。FoxoおよびAop遺伝子の標的欠失は、キイロショウジョウバエ(D.Melanogaster)における寿命の延長と関連していることが報告されており(Slackら、2015)、これらの最も近いヒト同族体はFOXO1およびETV6である(Joussetら、1997;Kramerら、2003)。モルフォリノオリゴヌクレオチドを用いた標的遺伝子ノックダウンは、後期継代ヒト初代線維芽細胞におけるFOXO1またはETV6のいずれかの下方制御が、AKTまたはERK阻害で見られるのと同様のスプライシング因子遺伝子発現の救済をもたらすことを明らかにしたが、今回の結果はFOXO1についてより顕著であった(図7A)。スプライシング因子の発現の変化は、ETV6およびFOXO1ノックダウンについては、SA-β-Gal染色で測定される場合、それぞれ約18%および40%の老化細胞負荷の減少を伴っており(p=<0.0001および0.0001;図7B)、CDKN2A発現の対応する24%および43%の減少も認められた(それぞれETV6およびFOXO1のp=<0.05および<0.005;図7C)。これは、全体としてのERKまたはAKTシグナル伝達のいずれかを阻害した場合よりも顕著な変化を示している。ここでも、本発明者らがスプライシング因子の発現について述べたように、効果はFOXO1発現が操作された細胞で最も強くなった。ETV6またはFOXO1の発現が阻害された後期継代線維芽細胞では、細胞増殖も回復した。ETV6のノックダウンは、増殖指数の36%の増加をもたらしたのに対し、FOX01を阻害すると19%の増加をもたらした(それぞれp=<0.0001および<0.005;図4D)。また、ETV6またはFOXO1遺伝子のノックダウンの効果は、注目する遺伝子を標的としたsiRNAを用いて、スプライシング因子の発現、細胞老化、CDKN2A発現のレベルでも確認された(図8)。
【0080】
6. AKTシグナル伝達経路とERKシグナル伝達経路との間には有意な交差制御が存在する
ERKシグナル伝達経路とAKTシグナル伝達経路の両方との間、またETV6とFOXO1自体の間には、交差制御的な関係が明らかになった。ETV6とFOXO1の両方の遺伝子を二重にノックダウンすると、複数の老化表現型からの救済が阻害された(図7B~D)。共制御の一部は、部分的に転写相互作用のレベルにある可能性がある。ETV6遺伝子のノックダウンはETV6とFOXO1遺伝子の両方の発現に影響を与えたのに対し、FOXO1遺伝子のノックダウンはFOXO1レベルの下方制御のみに関連していた(図8B)。同様の交差制御は、ERKまたはAKT阻害剤に対するFOXO1およびETV6遺伝子発現の応答にも見られる。低用量のトラメチニブで老化細胞を処理すると、mRNAレベルでETV6とFOXO1の両方の発現が誘導され、一方、低用量のSH-6で処理すると、FOXO1だけの上方制御を引き起こした(図9A)。これは、mRNA発現レベルでの代償的な逆制御を表している可能性があるが、これはまだ確証されていない。高用量のSH-6はFOXO1とETV6の両方の発現の有意な下方制御を引き起こしたが、高用量のトラメチニブはFOXO1の発現の変化のみに関連していた(図9A)。トラメチニブまたはSH-6での処理はまた、ETV6およびFOXO1タンパク質の細胞内局在において、何らかのわずかではあるが有意な変化を引き起こした。低用量のトラメチニブは、ETV6タンパク質のより多くの核内保持と関連していたが、FOXO1タンパク質の核内保持は減少していた。高用量のトラメチニブは、より少ない核内FOXO1タンパク質のみと関連していた。低用量のSH-6はETV6の核内保持量の有意な低下と関連していたが、FOXO1の細胞内局在は影響を受けなかった。高用量のSH-6は、ETV6とFOXO1タンパク質の両方の核局在の減少を引き起こした(図9B)。これらのデータは、FOXO1とETV6の間の相互作用が、転写およびタンパク質局在の両方のレベルで起こること、ならびに本明細書で、および以前に発表されたデータ(Rhimら、2016)で示されたように、タンパク質活性のレベルでの交差制御が起こることを示している。交差制御は、これらのシグナル伝達経路の典型的なものであり、将来的には探索する価値がある。
【0081】
7. スプライシング因子は、FOXO1およびETV6の間接的な標的である
FOXO1とETV6の標的遺伝子を、ヒト細胞型から公開されているクロマチン免疫沈降(ChIP)データセットの解析によって比較した。ETV6の標的遺伝子は419個、FOX01の標的遺伝子は242個特定された。FOX01の標的242個はすべてETV6の標的でもあった。2つのスプライシング因子(HNRNPFおよびHNRNPLL)はETV6の直接的な標的であったが、ほとんどのスプライシング因子は直接的には標的にされておらず、これらのタンパク質による制御は間接的であることが示唆された。FOXO1とETV6の標的遺伝子は、いくつかの分子機能を含んでいたが、驚くべきことに、ETV6とFOXO1の両方で標的とされた遺伝子のほぼ4分の1(58/242)が、ノンコーディングRNA制御因子(miRNA、snoRNA、lncRNA)、転写因子、または細胞シグナル伝達タンパク質を含んでいた(下記表3)。
【0082】
【表4(1)】
【0083】
【表4(2)】
【0084】
【表4(3)】
【0085】
【表4(4)】
【0086】
【表4(5)】
【0087】
【表4(6)】
【0088】
また、興味深いのは、4つの場合において、コーディングRNAの共役モジュールとその同族のノンコーディングRNA制御因子の両方がFOXO1およびETV6によって標的化されている(AP4B1およびAP4B1-AS1;CD27およびCD27-AS1;PCOLCEおよびPCOLCE-AS1;RAMP2およびRAMP2-AS1)という観察であった。遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)により、FOXO1およびETV6標的遺伝子は、老化プロセスに関与する経路にクラスター化されていることが示唆された。両遺伝子の標的との関連性が高い上位4つの経路は、「細胞老化関連分泌現象(SASP)」(ETV6についてはp=0.0002、FOXO1については0.0003)、「有糸分裂前期」(ETV6についてはp=0.0004、FOXO1については0.0003)、「細胞老化」(ETV6についてはp=0.0021、FOXO1については0.0001)、および「M期」(ETV6についてはp=0.0045、FOXO1については0.0001)であった(下記表4を参照)。
【0089】
【表5】
【0090】
考察
受容体チロシンキナーゼは、細胞内外からの複数のシグナルを統合し、この情報を細胞制御機構に伝達する。本発明者らのデータは、ERKおよびAKTシグナル伝達経路に含まれるタンパク質が後期継代細胞でより高いレベルのリン酸化を示し、有意な交差制御および自己調節を示すことを示唆している。本発明者らは、これの下流の主要な結末は、主にFOX01とETV6の転写因子の活性と交差反応性の変化を媒介とした、後期継代細胞におけるスプライシング因子の発現の調節異常である可能性があり、これらの変化がこの系の老化表現型と関連していることを提案する。後期継代ヒト初代線維芽細胞におけるERKシグナル伝達もしくはAKTシグナル伝達のいずれかの低用量の化学的阻害、またはFOXO1もしくはETV6遺伝子の発現の低下は、スプライシング因子の発現を、より若い継代細胞で見られるレベルと一致するレベルにまで回復させ、試験した細胞のある割合で、老化の逆転と細胞周期への再進入をもたらした。
【0091】
ERKおよびAKTシグナル伝達経路は、DNA損傷、栄養シグナル伝達の調節異常、老化に伴う慢性炎症などの古典的な老化刺激によって活性化される可能性がある(Fontanaら、2012;Linら、2013)。細胞老化関連分泌現象(SASP)の主な原因であるNF-kβ経路は、ERKとAKTの両方のシグナル伝達によって活性化されることも知られており(Linら、2012)、正のフィードバックの悪循環の可能性を高めている。正常なスプライシングプロセスの調節異常は、アルツハイマー病、パーキンソン病、癌などの多くの加齢に関連する疾患の重要な特徴である(LatorreおよびHarries、2017)。変化したスプライシング調節は、それ自体、ヒト集団における老化(Harriesら、2011)、インビトロモデルにおける細胞老化(Hollyら、2013)、およびマウスモデルにおける長寿命(Leeら、2016)と関連している。いくつかの研究は、特定のスプライシング因子の標的化された破壊が無脊椎動物モデルにおいて寿命を調節することができるので、スプライシング制御が老化の原因経路上にある可能性を示唆している(Heintzら、2016)。本発明者らの最近の研究は、細胞老化の特徴が、スプライシング因子レベルの低分子修復によって逆転され得ることを示唆している(Latorreら、2017)。最近の考え方は、正確にどのアイソフォームが遺伝子から発現されるかを取り巻く意思決定プロセスの変化が、老化および加齢に関連する表現型に直接寄与する可能性があることを示唆している(DeschenesおよびChabot、2017)。
【0092】
変化した細胞シグナル伝達は、老化の重要な特徴である。mTORおよびIGF-1シグナル伝達などの経路の作用は周知であり、明確になっている(CohenおよびDillin、2008)。ERKおよびAKTシグナル伝達は共に、以前に、老化および老化表現型に関連するとされており(Demidenkoら、2009;Chappellら、2011)、これらの経路の改変もまた、動物モデルにおける寿命延長および老化表現型に関連している(Slackら、2015)。ERKおよびAKTの両方がスプライシング因子活性の制御と関連していることは以前にも知られており(ShinおよびManley、2004;Tarn、2007)、AKTはキナーゼ活性化レベルでのスプライシング因子遺伝子の制御に役割を持つことが知られている(Blausteinら、2005)。しかしながら、これらの経路がスプライシング因子の発現を制御し、老化表現型に影響を及ぼす可能性がある正確な基礎的メカニズムの研究は、本発明者らが実証したように、これらの経路が組織、用量および文脈に明確な影響を示すこと、ならびにそれらの間に重要なクロストークも存在すること(Rhimら、2016)から、困難に満ちている。このことは、阻害剤の異なる用量では結果が一貫していない可能性があり、ある細胞型で見られた効果が別の細胞型では必ずしも当てはまらない可能性があることを示唆している。このことは、用量の明確な影響を指摘した本発明者らのデータから明らかである。低用量では、いくつかのスプライシング因子の発現の増加、老化表現型の救済(回復)や細胞周期への再進入が見られたが、高用量では、スプライシング因子の発現は減少し、増殖指数の上昇は見られなかった。このことは、高用量で活性化した場合には、スプライシング因子の発現や増殖の阻害につながるAKTシグナル伝達経路やERKシグナル伝達経路内の他のフィードバックループが活性化している可能性を示唆している。ここでも、これは、より高濃度で活性化される可能性のあるスプライシング因子の発現および増殖の阻害につながるAKTまたはERKシグナル伝達経路内のフィードバックループから生じる可能性がある。これ自体は珍しいことではない。というのも、投与量または組織応答の点での拮抗効果は細胞内シグナル伝達経路では珍しくないからである(Pardoら、2003;Wangら、2017)。実際、本発明者らのデータは、いくつかの交差制御および自己制御のフィードバックループの存在を示しており、これは、スプライシング因子の発現が、かなり狭い発現限界内で、恒常的なメカニズムによって厳密に制御されていることを示している可能性があり、これは、増殖の制御におけるそれらの既知の役割、およびそれらがオルタナティブスプライシングを制御する組み合わせ的な用量応答的な性質と一致するであろう(Kangら、2009;Anczukowら、2012;FuおよびAres、2014)。
【0093】
ERKおよびAKTのシグナル伝達の変化、スプライシング因子の発現、細胞老化との正確な関係をより理解するには、より詳細な分子解析が必要である。本発明者らのデータは、スプライシング因子の発現および細胞老化表現型に対するAKTとERKの活性化の特徴の多くが、ERKまたはAKTシグナル伝達の2つの主要な下流エフェクターであるFOXO1とETV6を標的とした破壊によって再現される可能性があることを示唆している。このFOXO1およびETV6遺伝子は共に転写因子をコードし、そのうちの最も近いショウジョウバエ同族体(FoxoおよびAop)は、キイロショウジョウバエにおける寿命に対するERKおよびAKT活性化の効果に寄与することが報告されている(Slackら、2015)。FOXOタンパク質は、老化経路への関与の長い歴史を持っている。FOXOタンパク質は、線虫、ハエ、哺乳類の長寿命に関与していることはよく知られているが(SalihおよびBrunet、2008)、本発明者らの知る限りでは、これまでスプライシング因子の制御と結びついたことはなかった。
【0094】
いずれかの遺伝子を標的としたノックアウトは、スプライシング因子の発現増加と老化からの救済の両方をもたらした。ここでも、両遺伝子の同時ノックアウトは、スプライシング因子の発現と老化細胞負荷に対する加算的または乗算的な効果を生じず、効果が完全に消失するため、これらの遺伝子間の関係は相乗的なものではない可能性がある。このことは、転写とタンパク質の細胞内局在のレベルでのFOXO1とETV6遺伝子の相互制御によって部分的に説明できる可能性がある。つまり、FOXO1のノックダウンはETV6の発現を増加させ、特定の阻害剤によるいずれかのシグナル伝達経路の調節は両遺伝子の核内局在に影響を与える。いくつかのスプライシング因子は、それらのプロモーター領域に進化的に保存されたFOXO結合モチーフを有し(Webbら、2016)、FOXO1タンパク質は、スプライシングが起こる細胞内の核斑と共局在化することが報告されている(Araiら、2015)。ETV6は、転写因子のETSファミリーのメンバーであり、細胞増殖の制御および造血器癌の制御における周知の役割を有する(HockおよびShimamura、2017)が、おそらく長寿命遺伝子としてはそれほど自明ではない候補である。FOXO1と同様に、ETV6は、スプライシング因子の発現の制御因子としては以前に報告されていないが、非常に類似した結合部位を有する遺伝子のより広いETSファミリーの他のメンバーは、そのような活性を有することが報告されている(Kajitaら、2013)。FOXO1とETV6の両方が腫瘍抑制遺伝子としての活性を有することが報告されている(DansenおよびBurgering、2008;RasighaemiおよびWard、2017)ので、細胞増殖に必要な遺伝子の発現を負に制御する役割は予想外ではない。
【0095】
FOXO1およびETV6がいくつかのスプライシング因子(HNRNPF、HNRNPL)を直接制御する可能性があるが、スプライシング因子の発現のほとんどの制御因子は、むしろ一連の中間体を介して作用し、そのうちのほぼ25%はノンコーディングRNAであることを、ChIP解析は示している。共通の標的のうちの9つがU1またはU5スプライソソーム複合体の構成要素であるため、スプライシングプロセスは直接関与している。FOXO1とETV6によって制御されている遺伝子の間には驚くほどの重複があり、制御は協調的または競合的に行われている可能性があることを示唆している。この制御には他のFOXOや他のETSファミリーメンバーの作用も含まれているのではないかと推測される。これらの遺伝子が老化プロセスを媒介する役割を果たしていることは、本発明者らのGSEAの結果からも示唆されている。FOXO1とETV6の標的は、老化の基本的な経路(「細胞老化関連分泌現象(SASP)」、「細胞老化」、「M期」、「有糸細胞分裂周期」)にクラスター化している。このように、本発明者らのデータは、FOXO1とETV6がスプライシング因子の制御に関与しそれらの老化との関係に影響を与えるメディエーター遺伝子のモジュールを協調的に制御する可能性があるという証拠を提供する。
【0096】
本発明者らのデータは、ETV6とFOXO1がスプライシング因子の発現の新規な制御因子としての活性を持っている可能性を示唆しているが、これらのネットワークにおける他の遺伝子の寄与を排除するものではない。実際、全体像は似ているが、経路全体の阻害に挑戦した場合、いくつかのスプライシング因子遺伝子は、FOXO1やETV6の特異な不活性化と比較して、異なる挙動を示す(例えば、ERKシグナル伝達についてのSRSF3、SRSF6、およびAKTシグナル伝達についてのAKAP17A、LSM2およびLSM14A)。これは、他の制御因子の存在を強く示唆している。また、細胞集団全体が元に戻らないので、細胞のサブセットのみが救済されることも明らかである。老化細胞の「クローン」培養物でさえも、パラクリン阻害の程度に応じて、成長が停止しているが、老化していない細胞と老化細胞を含む不均一なものである。成長停止時の老化細胞の百分率は、同じ組織型の異なる細胞株であっても、約40%から80%超に及ぶことがある。
【0097】
結論として、本発明者らは、加齢に伴う現象によるERKおよび/またはAKTシグナル伝達の活性化が、FOXO1およびETV6転写因子の活性変化に至るイベントのカスケードにつながる可能性があるという証拠をここに提示する。本発明者らは、本研究で、ETV6とFOXO1がスプライシング因子の発現の新規な制御因子であること、およびそれらの活性の加齢による変化がスプライシングの調節異常や最終的には細胞老化につながることを初めて明らかにした。AKTおよびERKシグナル伝達経路の阻害剤は、すでに癌の治療薬として使用されており、これらの経路の遺伝子は、将来的に健康的な老化のための早期介入のターゲットとなる可能性があるという興味深い可能性を示している。
【0098】
実験手順
ヒト初代線維芽細胞の培養
単一ドナーからの新生児包皮由来の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF;Promocell(プロモセル)、ハイデルベルク(Heidelburg)、ドイツ)を、2%FBS、成長因子(組換え線維芽細胞成長因子および組換えヒトインスリン)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補充した線維芽細胞増殖培地(C-23020、Promocell、ハイデルベルク、ドイツ)中で、6×10細胞/cmの播種密度で培養した。集団倍加(PD)=25での初期継代細胞(85%の成長画分および7%の老化画分)またはPD=63での後期継代細胞(33%の成長画分および58%の老化画分)を、その後の実験に先立って10日間培養して維持した。MEK/ERKの阻害剤(トラメチニブ)およびAKTの阻害剤(SH-6)を、文献(Krechら、2010;Slackら、2015)の以前の研究に基づいて、1μMまたは10μMで24時間添加した。ビヒクルのみ(DMSO)の対照を各実験に含めた。変化した増殖動態から老化救済を分化させるために血清飢餓が必要とされた場合には、細胞を、線維芽細胞特異的な補充物がない状態で0.1%の血清および1%のペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したDMEM(Sigma Aldrich(シグマアルドリッチ)、ドーセット(Dorset)、英国)中で、処理の前に24時間維持した。
【0099】
細胞老化の間の主要なシグナル伝達経路におけるリン酸化変化の評価
早期および後期継代初代ヒト線維芽細胞を25cmフラスコに6×10細胞/cmの密度でプレーティングし、10日間増殖させた。次いで、老化で活性化されると考えられている主要なシグナル伝達経路のタンパク質のリン酸化状態を、製造業者の使用説明書に従ってヒトMAPKリン酸化抗体アレイ(ab211061、Abcam(アブカム)、ブリストル(Bristol)、英国)を使用して、初期継代(PD=25)または後期継代(PD=63)初代ヒト線維芽細胞からの細胞溶解物中で評価した。試験したリン酸化部位は以下の通りであった。AKT(pS473)、CREB(pS133)、ERK1(pT202/Y204)、ERK2(pT185/Y187)、GSK3a(pS21)、GSKb(pS9)、HSP27(pS82)、JNK(pT183)、MEK(pS217/221)、MKK3(pS189)、MKK6(pS207)、MSK2(pS360)、mTOR(pS2448)、p38(pT180/Y182)、p53(pS15)、P70S6K(pT421/S424)、RSK1(pS380)。簡単に言うと、膜を、ブロッキングバッファーを用いて室温で30分間ブロッキングし、1mlの細胞溶解物を4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、検出抗体カクテルを添加して2時間インキュベートし、次いで室温でHRP抗ウサギIgGと2時間インキュベートした。膜を検出バッファーとインキュベートし、結果を化学発光イメージングシステム(LI-COR biosciences(LI-CORバイオサイエンシーズ)、ネブラスカ州、米国)上で記録した。信号強度は、Image StudioソフトウェアV5.2(LI-COR biosciences、ネブラスカ州、米国)を使用して定量化した。結果は、全細胞タンパク質含有量に対して正規化し、陽性対照との相対的な表現とした。
【0100】
細胞老化の評価
PD=63の後期継代初代ヒト線維芽細胞を、6ウェルプレートに1ウェルあたり6×10個の細胞を3つの生物学的複製物で播種した。細胞は、1μMおよび10μMのMEK/ERK阻害剤トラメチニブまたはAKT阻害剤SH-6で、またはそれぞれ1μMの2つの阻害剤の組み合わせで24時間処理した。次に、細胞老化を、市販のキット(Sigma Aldrich、英国)を使用して3回に分けて試験した生化学的老化マーカーSA β-Galを使用して評価した。製造業者の使用説明書に従って、複製物ごとに最低400個の細胞を評価した。また、老化を、CDKN2A(p16)遺伝子の発現を評価することによって分子的に、および本発明者らの以前の研究(Hollyら、2013)と同様に、老化に典型的な細胞形態の変化によって定量化した。CDKN2A(p16)は、QuantStudio 12K Flexプラットフォーム(Applied Biosystems(アプライド・バイオシステムズ)、フォスターシティー(Foster City)、米国)上で、GUSB、PPIAおよびGADPH内因性対照遺伝子に対する相対的なqRTPCRにより測定した。PCR反応物は、合計5μlの体積の中に2.5μl TaqMan Universal Mastermix(AMPeraseなし)(Applied Biosystems、フォスターシティー、米国)、0.25μMプローブ、および上記のように逆転写される0.5μl cDNAを含んでいた。PCR条件は、95℃で10分間の1回のサイクルに続いて、95℃で15秒間、60℃で1分間の40サイクルを行った。p16およびp21の定量的RTPCRアッセイのアクセッション番号を下記表5に与える。
【0101】
【表6】
【0102】
SASPタンパク質発現に対する処理関連の変化の定量化
PD=63の後期継代初代ヒト線維芽細胞を6ウェルプレートに1ウェルあたり6×10細胞で播種し、10日間培養した後、1μMまたは10μMのトラメチニブ(MEK/ERK阻害剤)またはSH-6(AKT阻害剤)で24時間処理した。その後、細胞上清を収穫し、-80℃で保存した。GMCSF、IFNγ、IL1β、IL2、IL6、IL8、IL10、IL-12p70およびTNFα SASP成分のレベルを、K15007B MesoScale DiscoveryマルチプレックスELISAイムノアッセイ(MSD、ロックビル(Rockville)、米国)を用いて、4つの生物学的複製物で、処理した細胞およびビヒクルのみの対照細胞の細胞上清中で測定した。タンパク質は、製造業者の使用説明書に従い、Sector Imager SI-6000を用いて標準曲線に対する相対定量を行った。
【0103】
ERKまたはAKT阻害で処理した後期継代初代ヒト線維芽細胞におけるスプライシング因子の発現の評価
PD=63の後期継代初代ヒト線維芽細胞を6ウェルプレートに3つの生物学的複製物として1ウェルあたり6×10細胞で播種し、10日間増殖させた後、1μMまたは10μMのERK阻害剤トラメチニブまたはAKT阻害剤SH-6で24時間処理した。ビヒクル(DMSO)のみの対照もまた、同じ成長条件で含めた。次に、本発明者らの以前の研究(Harriesら、2011;Hollyら、2013;Leeら、2016)において、以前に年齢、複製老化または寿命と関連づけられた20種のスプライシング因子転写物の発現レベルを、qRTPCRによって評価した。スプライシング因子アッセイのためのアクセッション番号は表5に与えられている。RNAを、TRI試薬(登録商標)(Life Technologies(ライフ・テクノロジーズ)、フォスターシティー、米国)を製造業者の使用説明書に従って用いて抽出した。総RNA(100ng)を、Superscript III VILOキット(Life Technologies)を用いて20μl反応物中で逆転写した。次いで、転写物発現を、QuantStudio 12K Flex(Applied Biosystems、フォスターシティー、米国)でTaqMan Low Density Array(TLDA)を用いて、各生物学的複製物について二重に定量した。サイクル条件は、50℃で2分間、94.5℃で10分間の各1サイクルと、その後97℃で30秒間、57.9℃で1分間の40サイクルであった。反応混合物は、50μl TaqMan Fast Universal PCR Mastermix(Life Technologies)、30μl dHOおよび20μl cDNAテンプレートを含んでいた。100μlの反応混合物をTLDAカードチャンバーに分注し、1000rpmで1分間2回遠心した。転写物発現を、IDH3B、GUSBおよびPPIA内因性対照遺伝子との相対的な比較Ctアプローチにより評価し、未処理の後期継代細胞からのRNA中のそれらの発現に正規化した。
【0104】
細胞増殖の評価
処理した細胞の増殖能は、Ki67およびBrdU染色によって、ならびに細胞数によって評価した。PD=63での後期継代初代ヒト線維芽細胞を24ウェルプレートに3つの生物学的複製物で1ウェルあたり1×10細胞で播種し、10日間増殖させた後、ki67染色により細胞増殖についてアッセイした。S期の細胞の評価のために、PD=63の後期継代初代ヒト線維芽細胞を24ウェルプレートに3つの生物学的複製物としてカバースリップあたり1×10細胞で播種し、10日間増殖させた後、5-ブロモ-2’-デオキシ-ウリジン(BrdU)と24時間インキュベートした。BrdUの取り込みは、製造業者(Roche Molecular Biochemicals(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ))の使用説明書に従って、5-Bromo-2’-デオキシ-ウリジン標識および検出キットIによって決定した。BrdU陽性細胞を蛍光顕微鏡で可視化し、計数した。細胞数は、細胞のトリプシン化および懸濁後、処理した培養物およびビヒクルのみの培養物において、3つの生物学的複製物で手動で実施し、平均値(+/SEM)として提示する。処理後、細胞を4%PFAで10分間固定し、0.025%Triton(トリトン)と10%血清を含むPBSで1時間透過させた。Ki-67染色は、ウサギモノクローナル抗体(ab16667、Abcam、英国)を1:400希釈して実施し、サンプルを4℃で一晩インキュベートし、次いでFITC結合二次ヤギ抗ウサギ抗体(1:400)で1時間インキュベートし、核をDAPIでカウンター染色した。カバースリップを、DAKO蛍光マウント培地(S3023;Dako(ダコ)、サンタクララ(Santa Clara)、米国)中でスライドにマウントした。増殖指数は、Leica D4000蛍光顕微鏡下で400×倍率で各生物学的複製物から少なくとも400個の核からのKi67陽性細胞の割合を数えることによって決定した。
【0105】
TUNELアッセイを用いたアポトーシスの評価
末端DNA切断点インサイツ3-ヒドロキシ末端標識(Terminal DNA breakpoints in situ 3-hydroxy end labeling:TUNEL)アッセイは、NHDF細胞におけるアポトーシスのレベルを定量するために行った。PD=63での後期継代初代ヒト線維芽細胞を24ウェルプレート内に3つの生物学的複製物としてウェルあたり1×10細胞で播種し、10日間成長させ、TUNELアッセイをClick-iT(登録商標) TUNEL Alexa Fluor(登録商標) 488 Imaging Assayキット(Thermofisher(サーモフィッシャー)、英国)を製造業者の使用説明書に従って用いて実施した。陰性(ビヒクルのみ)対照および陽性(DNase1)対照も実施した。アポトーシス指数は、400×倍率で各生物学的複製物から少なくとも400個の核からの陽性細胞の割合を数えることによって決定した。
【0106】
ETV6およびFOXO1遺伝子のノックダウン
無脊椎動物系におけるこれまでの研究では、キイロショウジョウバエにおける寿命の決定因子として、それぞれERKおよびAKTシグナル伝達に関与するAopおよびFoxo遺伝子が特定されている(Slackら、2015)。これらの遺伝子の最も近いヒト同族体は、FOX01(Kramerら、2003)およびETV6/TEL(Joussetら、1997)である。本発明者らは、FOXO1またはETV6遺伝子発現のノックダウンが、後期継代初代ヒト線維芽細胞における細胞老化およびスプライシング因子の発現に及ぼす影響を評価した。PD=63での後期継代細胞を6ウェルプレートに1ウェルあたり6×10細胞で播種し、10日間培養した。アンチセンスオリゴヌクレオチド(モルフォリノ、MO)を、開始コドンの近傍にあるFOXO1遺伝子またはETV6遺伝子の5’非翻訳領域に設計した(Gene Tools LLC(ジーン・ツールズ)、フィロマス(Phillomath)、米国)。モルフォリノオリゴヌクレオチド(10μM)を、製造業者の使用説明書に従って、エンドポーター(endo-porter)送達により細胞に導入した。フルオレセイン結合スクランブル陰性対照モルフォリノも陰性対照として、また構築物の送達をモニターするために含めた。トランスフェクション効率は顕微鏡法で評価した。次いで、スプライシング因子の発現および細胞老化を上記のように決定した。結果は、遺伝子ノックダウンの別の方法、siRNAによって確認した。本研究のために、PD=63での後期継代初代ヒト線維芽細胞を、6ウェルプレート中にウェルあたり6×10細胞の3つの生物学的複製物で播種し、15nM FOXO1、ETV6 siRNAまたは15nM対照siRNA(Themofisher)を用いて、Lipofectamine RNAiMAX試薬(Invitrogen(インビトロジェン)、ペーズリー(Paisley)、英国)を用いて48時間トランスフェクションを実施した。siRNAおよびモルフォリノ配列は表5に与えられている。
【0107】
FOXO1およびETV6の細胞内局在の評価
ETV6およびFOXO1タンパク質の細胞内局在を免疫蛍光により評価した。PD=63での後期継代初代ヒト線維芽細胞を24ウェルプレートに3つの生物学的複製物としてカバースリップあたり1×10細胞で播種し、10日間増殖させた後、細胞内局在化についてアッセイした。1μMのトラメチニブまたはSH-6で処理した後、細胞を4%PFAで10分間固定し、0.025%Tritonおよび10%血清を含むPBSで1時間透過させた。抗ウサギETV6(ab64909)および抗ウサギFOXO1(Abcam、英国)をそれぞれ1:1000および1:100の希釈で加え、サンプルを4℃で一晩インキュベートし、次いでFITC結合二次ヤギ抗ウサギ抗体(1:400)で1時間インキュベートし、核をDAPIでカウンター染色した。カバースリップを、DAKO蛍光マウント培地(S3023;Dako、サンタクララ、米国)中でスライドにマウントした。核局在は、Leica D4000蛍光顕微鏡下で400×倍率で各生物学的複製物から少なくとも50個の細胞からの核染色の割合を数えることによって決定した。
【0108】
テロメア長の評価
3つの生物学的複製物にプレーティングし、次いで1μMのERK阻害剤トラメチニブまたはAKT阻害剤SH-6のいずれかで24時間処理したPD=63での2×10の後期継代初代ヒト線維芽細胞から、PureLink(登録商標) Genomic DNA Mini Kit(Invitrogen(商標)/Thermo Fisher、マサチューセッツ州、米国)を製造業者の使用説明書に従って用いて、DNAを抽出した。DNAの品質および濃度は、Nanodrop(ナノドロップ)分光光度法(NanoDrop/Thermo Fisher、マサチューセッツ州、米国)により確認した。相対的なテロメア長は、改変されたqPCRプロトコル(O’CallaghanおよびFenech、2011)を用いて決定した。PCR反応物は、384ウェルプレート中の5μlの総体積の中に、1μlのEvaGreen(Solis Biodyne(ソリス・バイオダイン)、タルトゥ(Tartu)、エストニア)、2μMの各プライマーおよび25ngのDNAを含んでいた。定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応テロメアアッセイをStepOne Plus上で実行し、サイクル条件は次の通りであった:95℃で15分間の1回のサイクルに続いて、95℃で10秒、60℃で30秒、72℃で1分間の45サイクル。平均相対テロメア長は、単一コピー数遺伝子(36B4)に対するテロメアリピートコピー数の比として計算し、未処理細胞のテロメア長に正規化した。
【0109】
統計解析
別段の記載がない限り、処理した培養物とビヒクルのみの対照培養物の間の差は、二元配置分散分析(ANOVA)によって統計的有意性を評価した。統計解析は、コンピュータ支援のPrism GraphPadプログラム(Prism version 5.00、GraphPad Software(グラフパッド・ソフトウェア)、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州)を用いて実施した。
【0110】
クロマチン免疫沈降(ChIP)および遺伝子セットエンリッチメント解析
本研究の入力データは、ETV6については4つの公開されているヒトChIPデータセット、FOXO1については3つのデータセットであった。ETV6のデータセットは、K562細胞由来の2セット(GSE91511およびGSE95877)とGM12878細胞由来の2セット(GSE91904およびGSE96274)を含んでいた。FOXO1データセットは、ヒト子宮内膜間質細胞(GSE69542)、ヒト白血病前B細胞(GSE80773)および正常ヒトB細胞(GSE68349)由来のデータセットを含んでいた。これらのデータセットをCistrome Projectソフトウェア(www.cistrome.org)にインポートし、デフォルトパラメータを使用したBETA(Binding and Expression Target Analysis)マイナスアプリケーションを使用して、FOXO1およびETV6標的遺伝子の特定を行った。このソフトウェアは、シグナル対バックグラウンド比が5倍未満のピークをフィルタリングした後、制御可能性スコアに基づいて入力データ中の転写因子結合部位を検出する。次いで、2016 reactome(リアクトーム)インターフェースを使用して、Enrichrプログラムを使用してGSEA経路解析を実施した。
【0111】
上記の実施形態は、特許請求の範囲によって与えられる保護の範囲を制限することを意図するものではなく、むしろ、本発明がどのようにして実施され得るかの例を説明することを意図している。
【0112】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024102292000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載された発明。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢に関連する疾患もしくは状態もしくは癌の予防、管理、改善または治療における使用のための、ETV6の発現を調節する1種以上の中間体ノンコーディングRNA制御因子を含む組成物。
【外国語明細書】