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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102305
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】フッ化ビニル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/20 20060101AFI20240723BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20240723BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20240723BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20240723BHJP
   B01J 27/12 20060101ALI20240723BHJP
   C07C 21/22 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
C07C17/20
C07C21/18
C09K5/04 F
C09K5/04 C
B01J35/61
B01J27/12 Z
C07C21/22
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077268
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2020114983の分割
【原出願日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2019127098
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 友亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 新吾
(57)【要約】
【課題】フッ化ビニル化合物を高収率且つ高選択率で得ることができる方法を提供する。
【解決手段】アルカリ金属フッ化物の存在下に、CHR1=CXR3[式中、R1は水素原子、ハロ
ゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R3はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R3がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Xはフッ素原子以外のハロゲン原
子を示す。]で表されるハロゲン化ビニル化合物を反応させてCHR1=CFR2[式中、R1は水
素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R2はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R2がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。]で表されるフッ化ビニル化合物を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
CHR1=CFR2 (1)
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R2はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R2がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。]
で表されるフッ化ビニル化合物の製造方法であって、
アルカリ金属フッ化物の存在下に、
一般式(2):
CHR1=CXR3 (2)
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R3はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R3がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Xは
フッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化ビニル化合物を反応させて前記一般式(1)で表されるフッ化ビニ
ル化合物を得る反応工程
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるフッ化ビニル化合物が、一般式(1A):
【化1】
[式中、R1及びR2は前記に同じである。]
で表されるフッ化ビニル化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(2)で表されるハロゲン化ビニル化合物が、一般式(2A):
【化2】
[式中、R1、R3及びXは前記に同じである。]
で表されるハロゲン化ビニル化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属フッ化物の比表面積が500~2000m2/gである、請求項1~3のいずれか
1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ金属フッ化物が担体上に担持されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記担体及びアルカリ金属フッ化物の総量を100質量%として、前記アルカリ金属フッ化物の含有量が0.1~75質量%である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応工程がフッ素を含有する気体の存在下で行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記反応工程において、前記ハロゲン化ビニル化合物の前記アルカリ金属フッ化物を含む触媒に対する接触時間(W/F)が5~200g・sec/ccである、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記反応工程における反応温度が200~500℃である、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
一般式(1A):
【化3】
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R2はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R2がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。]
で表されるフッ化ビニル化合物と、一般式(3):
R1-C≡C-R2 (3)
[式中、R1及びR2は前記に同じである。]
で表されるアルキン化合物とを含有する、組成物。
【請求項11】
前記組成物の総量を100モル%として、前記一般式(1)で表されるフッ化ビニル化合物の
含有量が60~99.9モル%であり、前記一般式(3)で表されるアルキン化合物の含有量が0.1~20モル%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記一般式(1A)で表されるフッ化ビニル化合物が、一般式(1A1):
【化4】
[式中、R1は前記に同じである。]
で表されるジフルオロビニル化合物と、
一般式(1A2):
【化5】
[式中、R1は前記に同じである。X1はフッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]
で表されるフッ化ビニル化合物とを含有する、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の総量を100モル%として、一般式(1A1)で表されるジフルオロビニル化合物
の含有量が40~98モル%であり、前記一般式(1A2)で表されるフッ化ビニル化合物の含有量が2~30モル%である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
クリーニングガス、エッチングガス、冷媒、又は有機合成用ビルディングブロックとして用いられる、請求項10~13のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ化ビニル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化ビニル化合物におけるSP2炭素原子に結合したフッ素原子以外のハロゲン原子をフッ素原子に置換する場合、例えば、テトラクロロエチレン(PCE)に対して、フッ化水素及び三フッ化ホウ素(BF)により塩素原子をフッ素化する方法も知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society, 1948, 70 (2), pp 758-760.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、フッ化ビニル化合物を高収率且つ高選択率で得ることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の構成を包含する。
【0006】
項1.一般式(1):
CHR1=CFR2 (1)
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R2はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R2がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。]
で表されるフッ化ビニル化合物の製造方法であって、
アルカリ金属フッ化物の存在下に、
一般式(2):
CHR1=CXR3 (2)
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R3はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R3がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Xは
フッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化ビニル化合物を反応させて前記一般式(1)で表されるフッ化ビニ
ル化合物を得る反応工程
を備える、製造方法。
【0007】
項2.前記一般式(1)で表されるフッ化ビニル化合物が、一般式(1A):
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、R1及びR2は前記に同じである。]
で表されるフッ化ビニル化合物である、項1に記載の製造方法。
【0010】
項3.前記一般式(2)で表されるハロゲン化ビニル化合物が、一般式(2A):
【0011】
【化2】
【0012】
[式中、R1、R3及びXは前記に同じである。]
で表されるハロゲン化ビニル化合物である、項1又は2に記載の製造方法。
【0013】
項4.前記アルカリ金属フッ化物の比表面積が500~2000m2/gである、項1~3のいず
れか1項に記載の製造方法。
【0014】
項5.前記アルカリ金属フッ化物が担体上に担持されている、項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【0015】
項6.前記担体及びアルカリ金属フッ化物の総量を100質量%として、前記アルカリ金属フッ化物の含有量が0.1~75質量%である、項5に記載の製造方法。
【0016】
項7.前記反応工程がフッ素を含有する気体の存在下で行われる、項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【0017】
項8.前記反応工程において、前記ハロゲン化ビニル化合物の前記アルカリ金属フッ化物を含む触媒に対する接触時間(W/F)が5~200g・sec/ccである、項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【0018】
項9.前記反応工程における反応温度が200~500℃である、項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【0019】
項10.一般式(1A):
【0020】
【化3】
【0021】
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R2はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R2がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。]
で表されるフッ化ビニル化合物と、一般式(3):
R1-C≡C-R2 (3)
[式中、R1及びR2は前記に同じである。]
で表されるアルキン化合物とを含有する、組成物。
【0022】
項11.前記組成物の総量を100モル%として、前記一般式(1)で表されるフッ化ビニ
ル化合物の含有量が60~99.9モル%であり、前記一般式(3)で表されるアルキン化合物の含有量が0.1~20モル%である、項10に記載の組成物。
【0023】
項12.前記一般式(1A)で表されるフッ化ビニル化合物が、一般式(1A1):
【0024】
【化4】
【0025】
[式中、R1は前記に同じである。]
で表されるジフルオロビニル化合物と、
一般式(1A2):
【0026】
【化5】
【0027】
[式中、R1は前記に同じである。X1はフッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]
で表されるフッ化ビニル化合物とを含有する、項10又は11に記載の組成物。
【0028】
項13.前記組成物の総量を100モル%として、一般式(1A1)で表されるジフルオロビ
ニル化合物の含有量が40~98モル%であり、前記一般式(1A2)で表されるフッ化ビニル化
合物の含有量が2~30モル%である、項12に記載の組成物。
【0029】
項14.クリーニングガス、エッチングガス、冷媒、又は有機合成用ビルディングブロックとして用いられる、項10~13のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、フッ化ビニル化合物を高収率且つ高選択率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0032】
本開示において、「選択率」とは、反応器出口からの流出ガスにおける原料化合物以外の化合物の合計モル量に対する、当該流出ガスに含まれる目的化合物の合計モル量の割合(モル%)を意味する。
【0033】
本開示において、「転化率」とは、反応器に供給される原料化合物のモル量に対する、反応器出口からの流出ガスに含まれる原料化合物以外の化合物の合計モル量の割合(モル%)を意味する。
【0034】
本開示において、「収率」とは、反応器に供給される原料化合物のモル量に対する、反応器出口からの流出ガスに含まれる目的化合物の合計モル量の割合(モル%)を意味する。
【0035】
1.フッ化ビニル化合物の製造方法
本開示のフッ化ビニル化合物の製造方法は、
一般式(1):
CHR1=CFR2 (1)
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R2はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R2がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。]
で表されるフッ化ビニル化合物の製造方法であって、
アルカリ金属フッ化物の存在下に、
一般式(2):
CHR1=CXR3 (2)
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R3はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R3がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Xは
フッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化ビニル化合物を反応させて前記一般式(1)で表されるフッ化ビニ
ル化合物を得る反応工程
を備える。
【0036】
従来は、一度フッ化水素付加反応を行い、その後、脱ハロゲン化水素反応を行うことによりフッ素原子が導入されていた。この方法によれば、別個に2段階の反応工程が必要となるうえに、脱ハロゲン化水素反応を行う際には、同時に脱フッ化水素反応も起こり、副生成物が多く生成されることから目的物の選択率は低かった。また、非特許文献1のように、テトラクロロエチレン(PCE)に対して、フッ化水素及び三フッ化ホウ素(BF
)により塩素原子をフッ素化する方法も知られているが、この場合の収率は20%程度に過ぎなかった。
【0037】
本開示によれば、上記のように、フッ素原子以外のハロゲン原子を有するハロゲン化ビニル化合物を基質として、アルカリ金属フッ化物の存在下に反応させることで、フッ化ビニル化合物を一工程で高収率且つ高選択率で得ることができる。
【0038】
(1-1)ハロゲン化ビニル化合物
本開示の製造方法において使用できる基質としてのハロゲン化ビニル化合物は、上記のとおり、一般式(2):
CHR1=CXR3 (2)
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R3はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R3がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Xは
フッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化ビニル化合物である。
【0039】
このハロゲン化ビニル化合物は、シス体及びトランス体の双方を含み得るものであるが、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点において、トランス体が好ましく、一般式(2A):
【0040】
【化6】
【0041】
[式中、R1、R3及びXは前記に同じである。]
で表されるハロゲン化ビニル化合物が好ましい。
【0042】
一般式(2)及び(2A)において、R1及びR3で示されるハロゲン原子としては、フッ素
原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0043】
一般式(2)及び(2A)において、R1及びR3で示されるアルキル基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~10、特に1~6のアルキル基が挙げられる。このアルキル基は、上記したハロゲン原子等の置換基を1~6個、特に1~3個有することもできる。
【0044】
一般式(2)及び(2A)において、R1及びR3で示されるフルオロアルキル基としては、
例えば、トリフルオロメチル基、ペンタクルオロエチル基等の炭素数1~10、特に1~6の
フルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)が挙げられる。
【0045】
ただし、R1が水素原子であり、且つ、R3がフルオロアルキル基である場合は、一般式(1)で表されるフッ化ビニル化合物ではなく、一般式(3):
R1-C≡C-R2 (3)
[式中、R1及びR2は前記に同じである。]
で表されるアルキン化合物が合成されやすい。このため、R3がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。
【0046】
一般式(2)及び(2A)において、Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0047】
基質であるハロゲン化ビニル化合物としては、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点においてR1及びR3はいずれもフルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)であることが好ましく、Xは塩素原子であること
が好ましい。
【0048】
なお、R3及びXの双方がフッ素原子以外のハロゲン原子である場合には、上記の一般式
(2)及び(2A)で表されるハロゲン化ビニル化合物の反応により、1つのハロゲン原子のみがフッ素原子に置換されたCHR1=CFX1、特に一般式(1A2):
【0049】
【化7】
【0050】
[式中、R1は前記に同じである。X1は上記したフッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]で表されるフッ化ビニル化合物と、2つのハロゲン原子がフッ素原子に置換された一般式
(1A1):
【0051】
【化8】
【0052】
[式中、R1は前記に同じである。]
で表されるジフルオロビニル化合物の双方が合成され得る。これらの一般式(1A1)で表
されるジフルオロビニル化合物及び一般式(1A2)で表されるフッ化ビニル化合物はいず
れも目的化合物である。
【0053】
上記したR1、R3及びXは、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
上記のような条件を満たす基質としてのハロゲン化ビニル化合物としては、具体的には、
【0055】
【化9】
【0056】
等が挙げられる。これらのハロゲン化ビニル化合物は、単独で用いることもでき、2種以
上を組合せて用いることもできる。このようなハロゲン化ビニル化合物は、公知又は市販品を採用することができる。
【0057】
(1-2)置換反応
本開示における一般式(2)で表されるハロゲン化ビニル化合物を反応させる反応工程
では、例えば、基質として、一般式(2)で表されるハロゲン化ビニル化合物では、R1
びR3はいずれもトリフルオロメチル基が好ましく、Xは塩素原子が好ましく、トランス体
が好ましい。また、基質として、一般式(2)で表されるハロゲン化ビニル化合物では、R1は水素原子、R3及びXを塩素原子とすることも好ましい。
【0058】
つまり、以下の反応式:
【0059】
【化10】
【0060】
に従い、一工程でフッ化ビニル化合物を得ることが好ましい。
【0061】
(1-3)アルカリ金属フッ化物
本開示における一般式(2)で表されるハロゲン化ビニル化合物を反応させる反応工程
は、アルカリ金属フッ化物の存在下に、一工程でハロゲン原子をフッ素原子に置換するものである。アルカリ金属フッ化物は、触媒として機能し、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる。
【0062】
アルカリ金属フッ化物としては、特に制限されるわけではないが、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点において、第4~第7周期のアルカリ金属のフッ化物が好ましく、例えば、フッ化カリウム(KF)、フッ化セシウム(CsF)等がより好ましく、フッ化セシウム(CsF)がさらに好ましい。これらのアルカリ金属フッ化物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0063】
アルカリ金属フッ化物の比表面積は、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点から、500~2000m2/gが好ましく、800~1500m2/gがより好ましい。本開示において、アルカリ金属フッ化物の比表面積はBET法で測定する。
アルカリ金属フッ化物の比表面積がこのような範囲にある場合、アルカリ金属フッ化物の粒子の密度が小さ過ぎることがないため、より高い選択率で目的化合物を得ることができる。また、基質の転化率をより向上させることも可能である。なお、後述のように、アルカリ金属フッ化物を担体に担持させた場合も、比表面積に大差はなく、アルカリ金属フッ化物を担体に担持させた場合の比表面積も上記した範囲が好ましい。
【0064】
なお、本開示において、気相で反応を行う場合、上記した基質とフッ素源とを接触させるが、その場合、反応性の観点から、アルカリ金属フッ化物は固体の状態(固相)で基質と接触させることが好ましい。
【0065】
本開示において、例えば気相連続流通式の反応を行う場合は、反応性の観点から、アルカリ金属フッ化物は粉末状でもよいが、ペレット状が好ましい。また、上記したアルカリ金属フッ化物は、そのまま使用することもできるが、担体上に担持させて用いることができる(以下、担体上に担持させたアルカリ金属フッ化物を「担体担持アルカリ金属フッ化物」と言うことがある)。これにより、フッ素源の比表面積を上昇させて反応効率を向上させ、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる。担持させる担体は特に制限はなく、例えば、炭素、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、ゼオライト、シリカアルミナ、酸化クロム等が挙げられる。炭素としては、活性炭、不定形炭素、グラファイト、ダイヤモンド等が挙げられる。これらの担体は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なかでも、比表面積が大き
く、アルカリ金属フッ化物の担持が容易という観点から、炭素が好ましく、活性炭がより好ましい。
【0066】
担体担持アルカリ金属フッ化物とする場合、その担持量は特に制限はないが、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点から、担体担持アルカリ金属フッ化物の総量を100質量%として、アルカリ金属フッ化物を0.1~75質
量%含むことが好ましく、1~60質量%含むことがより好ましい。
【0067】
担体担持アルカリ金属フッ化物の嵩密度は、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点から、0.01~10g/mLが好ましく、0.1~5g/mLがより好ましい。本開示において、担体担持アルカリ金属フッ化物の嵩密度は嵩密度測定器により測定する。担体担持アルカリ金属フッ化物の嵩密度がこのような範囲にある場合、担体担持アルカリ金属フッ化物の粒子の密度が小さ過ぎることがないため、より高い選択率で目的化合物を得ることができる。また、基質の転化率をより向上させることも可能である。
【0068】
担体担持アルカリ金属フッ化物の細孔容積は、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点から、0.1~1.5mL/gが好ましく、0.25~1.0mL/gがより好ましい。本開示において、担体担持アルカリ金属フッ化物の細孔容積はBET法により測定する。担体担持アルカリ金属フッ化物の細孔容積がこのような範囲にある場合、担体担持アルカリ金属フッ化物の粒子の密度が小さ過ぎることがないため、より高い選択率で目的化合物を得ることができる。また、基質の転化率をより向上させることも可能である。
【0069】
担体担持アルカリ金属フッ化物の平均細孔径は、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点から、5~20μmが好ましく、8~15μmが
より好ましい。本開示において、担体担持アルカリ金属フッ化物の平均細孔径はBET法に
より測定する。
【0070】
(1-4)フッ素を含有する気体
上記したアルカリ金属フッ化物は触媒としても機能し、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができるものである。しかしながら、アルカリ金属フッ化物にはフッ素原子が含まれており、一般式(1)で表されるフッ化ビニル化合
物を得る反応の際にフッ素原子が引き抜かれ得る。このため、反応を長時間進行させるにつれて、触媒として有効に機能するアルカリ金属フッ化物の量は減少する可能性がある。このため、フッ素原子を補充することを意図して、上記反応は、フッ素を含有する気体の存在下で行うことが好ましい。
【0071】
このようなフッ素を含有する気体としては、特に制限はなく、例えば、F2、HF、CFCl3
、CF2Cl2、CFHCl2、CF2HCl、CF3H、NF3、IF5、IF7、FCl、ClF3等が挙げられる。
【0072】
なお、本開示において、気相で反応を行う場合、上記したフッ素を含有する気体は気体の状態(気相)で吹き込むことが好ましい。
【0073】
(1-5)反応温度
本開示におけるハロゲン化ビニル化合物を反応させてフッ化ビニル化合物を得る工程では、反応温度は、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点から、通常200~500℃が好ましく、250~450℃がより好ましく、300~400℃がさらに好ましい。
【0074】
(1-6)反応時間
本開示において、気相で反応を行う場合、反応時間は、例えば気相流通式を採用する場合には、原料化合物(ハロゲン化ビニル化合物)の触媒(アルカリ金属フッ化物)に対する接触時間(W/F)[W:アルカリ金属フッ化物を含む触媒の重量(担体担持アルカリ金
属フッ化物の場合は担体も含めた総量)(g)、F:原料化合物(ハロゲン化ビニル化合物)の流量(cc/sec)]は、反応の転化率が特に高く、フッ化ビニル化合物をより高収率
及び高選択率に得ることができる観点から、5~200g・sec./ccが好ましく、10~150g・sec./ccがより好ましく、15~100g・sec./ccがさらに好ましい。なお、上記接触時間とは、原料化合物及び触媒が接触する時間を意味する。
【0075】
上記の接触時間は、気相、特に気相連続流通式で反応を進行する場合の条件を示しているが、バッチ式で反応を進行する場合も適宜調整することができる。
【0076】
本開示において、反応工程をフッ素を含有する気体の存在下で行う場合、フッ素を含有する気体の含有量は、反応の転化率が特に高く、フッ化ビニル化合物をより高収率及び高選択率に得ることができる観点から、原料化合物(ハロゲン化ビニル化合物)1モルに対
して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましく、1~2.5モルがさらに好まし
い。
【0077】
(1-7)反応圧力
本開示におけるハロゲン化ビニル化合物を反応させてフッ化ビニル化合物を得る際の反応圧力は、フッ化ビニル化合物を特に、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点から、-0.05~2MPaが好ましく、-0.01~1MPaがより好ましく、常圧~0.5MPaがさらに好ましい。なお、本開示において、圧力については特に表記が無い場合はゲージ圧とする。
【0078】
本開示における反応において、アルカリ金属フッ化物及び必要に応じてフッ素を含有する気体の存在下に原料化合物(ハロゲン化ビニル化合物)を反応させる反応器としては、上記温度及び圧力に耐え得るものであれば、形状及び構造は特に限定されない。反応器としては、例えば、縦型反応器、横型反応器、多管型反応器等が挙げられる。反応器の材質としては、例えば、ガラス、ステンレス、鉄、ニッケル、鉄ニッケル合金等が挙げられる。
【0079】
(1-8)反応の例示
本開示におけるハロゲン化ビニル化合物を反応させてフッ化ビニル化合物を得る反応工程は、反応器に原料化合物(ハロゲン化ビニル化合物)を連続的に仕込み、当該反応器から目的化合物(フッ化ビニル化合物)を連続的に抜き出す気相連続流通式及びバッチ式のいずれの方式によっても実施することができる。目的化合物が反応器に留まると、さらに脱離反応が進行し得ることから、気相連続流通式で実施することが好ましい。本開示におけるハロゲン化ビニル化合物を反応させてフッ化ビニル化合物を得る反応工程では、気相で行い、特に固定床反応器を用いた気相連続流通式で行うことが好ましい。気相連続流通式で行う場合は、装置、操作等を簡略化できるとともに、経済的に有利である。
【0080】
本開示におけるハロゲン化ビニル化合物を反応させてフッ化ビニル化合物を得る反応工程を行う際の雰囲気については、アルカリ金属フッ化物の劣化を抑制する点から、不活性ガス雰囲気下が好ましい。当該不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。これらの不活性ガスのなかでも、コストを抑える観点から、窒素が好ましい。当該不活性ガスの濃度は、反応器に導入される気体成分の0~50モル%とすることが好ましい。なお、上記反応を、フッ素を含有する気体の存在下で行う場合は、当該フッ素を含有する気体の雰囲気下又は上記不活性ガスと当該フッ素を含有する気体との混合雰囲気下とすることもできる。当該フッ素を含有する気体の濃度は、反応器に導入される気体成分の0.1~90
モル%とすることが好ましい。
【0081】
反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理を行い、一般式(1)で表され
るフッ化ビニル化合物を得ることができる。
【0082】
(1-9)目的化合物
このようにして得られる本開示の目的化合物は、一般式(1):
CHR1=CFR2 (1)
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R2はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R2がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。]
で表されるフッ化ビニル化合物である。
【0083】
このフッ化ビニル化合物は、シス体及びトランス体の双方を含み得るものであるが、高い転化率、収率及び選択率で製造することができる観点において、トランス体が好ましく、一般式(1A):
【0084】
【化11】
【0085】
[式中、R1及びR2は前記に同じである。]
で表されるフッ化ビニル化合物が好ましい。
【0086】
一般式(1)及び(1A)におけるR1及びR2は、上記した一般式(2)及び(2A)におけるR1及びR3と対応している。なお、一般式(2)及び(2A)におけるR3がフッ素原子以外の
ハロゲン原子である場合、目的化合物であるフッ化ビニル化合物には、当該ハロゲン原子がフッ素原子に置換した化合物と、当該ハロゲン原子がそのまま残存した化合物とが包含され得る。このため、製造しようとする一般式(1)及び(1A)で表されるフッ化ビニル
化合物は、例えば、具体的には、
【0087】
【化12】
【0088】
等が挙げられる。
【0089】
このようにして得られたフッ化ビニル化合物は、半導体、液晶等の最先端の微細構造を形成するためのエッチングガス、クリーニングガス、有機合成用ビルディングブロック等の各種用途に有効利用できる。有機合成用ビルディングブロックについては後述する。
【0090】
2.組成物
以上のようにして、フッ化ビニル化合物を得ることができるが、一般式(1)及び(1A
)で表されるフッ化ビニル化合物と、一般式(3):
R1-C≡C-R2 (3)
[式中、R1及びR2は前記に同じである。]
で表されるアルキン化合物とを含む組成物の形で得られることもある。
【0091】
この場合、本開示の組成物の総量を100モル%として、一般式(1)で表されるフッ化ビ
ニル化合物の含有量は60~99.9モル%が好ましく、80~99モル%がより好ましい。また、本開示の組成物の総量を100モル%として、一般式(3)で表されるアルキン化合物の含有量
は0.1~20モル%が好ましく、0.2~10モル%がより好ましい。なお、一般式(1)で表され
るフッ化ビニル化合物が、後述のように一般式(1A1)及び(1A2)の双方を含む場合は、上記含有量はその合計量である。
【0092】
また、上記のとおり、一般式(2)及び(2A)におけるR3がフッ素原子以外のハロゲン
原子である場合、目的化合物であるフッ化ビニル化合物には、当該ハロゲン原子がフッ素原子に置換した化合物と、当該ハロゲン原子がそのまま残存した化合物とが包含され得る。
【0093】
このため、一般式(1)及び(1A)で表されるフッ化ビニル化合物には、一般式(1A1):
【0094】
【化13】
【0095】
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。]
で表されるジフルオロビニル化合物と、
一般式(1A2):
【0096】
【化14】
【0097】
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。X1はフッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]
で表されるフッ化ビニル化合物とを含み得る。
【0098】
一般式(1A)及び(1B)において、R1としては上記したものを採用でき、X1で示されるフッ素原子以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0099】
この場合、本開示の組成物の総量を100モル%として、一般式(1A1)で表されるジフル
オロビニル化合物の含有量は40~98モル%が好ましく、50~90モル%がより好ましい。また、本開示の組成物の総量を100モル%として、一般式(1A2)で表されるジフルオロビニル
化合物の含有量は2~30モル%が好ましく、3~20モル%がより好ましい。
【0100】
なお、本開示の製造方法によれば、上記した組成物として得られた場合であっても、一般式(1)で表されるフッ化ビニル化合物を、一工程で、反応の転化率を高く、また、高
収率且つ高選択率で得ることができるため、組成物中の一般式(1)で表されるフッ化ビ
ニル化合物以外の成分を少なくすることが可能であるため、一般式(1)で表されるフッ
化ビニル化合物を得るための精製の労力を削減することができる。
【0101】
このような本開示の組成物は、半導体、液晶等の最先端の微細構造を形成するためのエッチングガスの他、有機合成用ビルディングブロック、クリーニングガス等の各種用途に有効利用できる。なお、有機合成用ビルディングブロックとは、反応性が高い骨格を有する化合物の前駆体となり得る物質を意味する。例えば、本開示の組成物とCF3Si(CH3)3
の含フッ素有機ケイ素化合物とを反応させると、CF3基等のフルオロアルキル基を導入し
て洗浄剤や含フッ素医薬中間体となり得る物質に変換することが可能である。
【0102】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能である。
【実施例0103】
以下に実施例を示し、本開示の特徴を明確にする。本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0104】
合成例1:50%CsF/AC
活性炭(比表面積1200m2/g)と、フッ化セシウムとを、活性炭及びフッ化セシウムの総量を100質量%として、フッ化セシウムの使用量が50質量%となるように混合し、活性炭に
フッ化セシウムが担持した50%CsF/AC触媒を得た。得られた触媒の比表面積は600cm2/g、
細孔容積は0.7mL/g、細孔径は10μmであった。
【0105】
合成例2:5%CsF/AC
活性炭(比表面積1200m2/g)と、フッ化セシウムとを、活性炭及びフッ化セシウムの総量を100質量%として、フッ化セシウムの使用量が5質量%となるように混合し、活性炭にフッ化セシウムが担持した5%CsF/AC触媒を得た。得られた触媒の比表面積は900cm2/g、細孔容積は0.8mL/g、細孔径は10μmであった。
【0106】
合成例3:5%KF/AC
活性炭(比表面積1200m2/g)と、フッ化カリウムとを、活性炭及びフッ化カリウムの総量を100質量%として、フッ化カリウムの使用量が5質量%となるように混合し、活性炭にフッ化セシウムが担持した5%KF/AC触媒を得た。得られた触媒の比表面積は900cm2/g、細孔
容積は0.8mL/g、細孔径は10μmであった。
【0107】
実施例1~5
実施例1~5のフッ化ビニル化合物の製造方法では、原料化合物は、一般式(2)で表さ
れるハロゲン化ビニル化合物において、R1及びR3はトリフルオロメチル基、Xは塩素原子
とし、以下の反応式:
【0108】
【化15】
【0109】
に従って、フッ化ビニル化合物を得た。
【0110】
反応管であるSUS配管(外径:1/2インチ)に、合成例1、2又は3で得た触媒を10g加えた。窒素雰囲気下、200℃で2時間乾燥した後、圧力を常圧、CF3CH=CClCF3(原料化合物)と触媒との接触時間(W/F)が16.0g・sec/cc又は42.0g・sec/ccとなるように、反応管にCF3CH=CClCF3(原料化合物)を流通させた。
【0111】
反応は、気相連続流通式で進行させた。
【0112】
反応管を300℃又は400℃で加熱して反応を開始した。
【0113】
反応を開始してから1時間後に、除害塔を通った留出分を集めた。
【0114】
その後、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、商品名「GC-2014」)を用い
てガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により質量分析を行い、NMR(JEOL社
製、商品名「400YH」)を用いてNMRスペクトルによる構造解析を行った。
【0115】
質量分析及び構造解析の結果から、目的化合物としてCF3CH=CFCF3が生成したことが確
認された。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
実施例6~8
実施例6~8のフッ化ビニル化合物の製造方法では、原料化合物は、一般式(2)で表さ
れるハロゲン化ビニル化合物において、R1は水素原子、R3及びXは塩素原子とし、以下の
反応式:
【0118】
【化16】
【0119】
に従って、フッ化ビニル化合物を得た。
【0120】
反応管であるSUS配管(外径:1/2インチ)に、合成例1又は3で得た触媒を10g加えた。
窒素雰囲気下、200℃で2時間乾燥した後、圧力を常圧、CH2=CCl2(原料化合物)と触媒との接触時間(W/F)が10.0g・sec/cc又は20.0g・sec/ccとなるように、反応管にCH2=CCl2(原料化合物)を流通させた。
【0121】
反応は、気相連続流通式で進行させた。
【0122】
反応管を400℃で加熱して反応を開始した。
【0123】
反応を開始してから1時間後に、除害塔を通った留出分を集めた。
【0124】
その後、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、商品名「GC-2014」)を用い
てガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により質量分析を行い、NMR(JEOL社
製、商品名「400YH」)を用いてNMRスペクトルによる構造解析を行った。
【0125】
質量分析及び構造解析の結果から、目的化合物としてCH2=CClF及びCH2=CF2が生成した
ことが確認された。結果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1A):
【化1】
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。R2はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基を示す。ただし、R2がフルオロアルキル基である場合は、R1はハロゲン原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。]で表されるフッ化ビニル化合物と、一般式(3):
R1-C≡C-R2 (3)
[式中、R1及びR2は前記に同じである。]
で表されるアルキン化合物とを含有する、組成物。
【請求項2】
前記組成物の総量を100モル%として、前記一般式(1)で表されるフッ化ビニル化合物の含有量が60~99.9モル%であり、前記一般式(3)で表されるアルキン化合物の含有量が0.1~20モル%である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記一般式(1A)で表されるフッ化ビニル化合物が、一般式(1A1):
【化2】
[式中、R1は前記に同じである。]
で表されるジフルオロビニル化合物と、
一般式(1A2):
【化3】
[式中、R1は前記に同じである。X1はフッ素原子以外のハロゲン原子を示す。]
で表されるフッ化ビニル化合物とを含有する、請求項又はに記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の総量を100モル%として、一般式(1A1)で表されるジフルオロビニル化合物の含有量が40~98モル%であり、前記一般式(1A2)で表されるフッ化ビニル化合物の含有量が2~30モル%である、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
クリーニングガス、エッチングガス、冷媒、又は有機合成用ビルディングブロックとして用いられる、請求項のいずれか1項に記載の組成物。