(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102311
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】リチウム二次電池の制御方法、電池制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240723BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240723BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077725
(22)【出願日】2024-05-13
(62)【分割の表示】P 2022132338の分割
【原出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】515090628
【氏名又は名称】株式会社スリーダムアライアンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】永原 良樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 扶沙子
(72)【発明者】
【氏名】成岡 慶紀
(57)【要約】 (修正有)
【課題】充電サイクルにおいて電池セルの状態を適時に検出するリチウム二次電池の制御方法及び電池制御装置を提供する。
【解決手段】リチウム二次電池の制御方法は、1回の充電サイクルにおいて、リチウム二次電池セルを充電するステップS10~S18と、リチウム二次電池セルの状態を検出するステップS20と、を含む。充電するステップは、リチウム二次電池セルを所定の電圧Vaまで定電流(CC)充電するステップS10~S12YESと、電圧Vaに達した後に、電圧Vaを維持しつつ充電電流を漸次減少させながら所定のカットオフ電流値以下になるまで定電圧(CV)充電を行うステップS16~S18YESと、を含む。セル状態検出ステップは、CV充電に要する時間を所定の式に従って推定する工程と、推定により得られた推定値と、CV充電に要した時間の実測値との差分に基づいて、リチウム二次電池セルの状態を検出する工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液と、を少なくとも含むリチウム二次電池セルの制御方法であっ
て、
前記リチウム二次電池セルにおける前記負極が、あらかじめ負極集電体上に金属リチウ
ム層が形成されているか、又は、充電時に負極集電体上に金属リチウム層が析出するもの
であり、
前記方法は、1回の充電サイクルにおいて、
前記リチウム二次電池セルを充電する工程(A)と、
前記工程(A)の後に前記リチウム二次電池セルの状態を検出する工程(B)と、を
含み、
前記工程(A)は、
前記リチウム二次電池セルを所定の電圧Vaまで充電する工程と(A-1)と、
前記電圧Vaに達した後に、前記電圧Vaを維持しつつ充電電流を漸次減少させなが
ら所定のカットオフ電流値以下になるまで定電圧充電を行う工程(A-2)と、を含み、
前記工程(B)は、
前記工程(A-1)における充電電流密度をiCC(mA/cm2)としたときに、
前記工程(A-2)に要する時間tCV_i(sec)を下記式(1)の関係に従って推
定する工程(B-1)と、
前記tCV_iと、前記工程(A-2)に要した時間の実測値tCV_m(sec)
との差分に基づいて、前記リチウム二次電池セルの状態を検出する工程(B-2)と、を
含む、
リチウム二次電池の制御方法。
tCV_i=a×log(iCC/icutoff)・・・式(1)
(式(1)において、aは定数であり、icutoff(mA/cm2)はあらかじめ定
めたカットオフを行う際の電流密度である)
【請求項2】
前記式(1)における前記aの値を前記リチウム二次電池セルに含まれる前記電解液の
種類に応じて決定する、
請求項1に記載のリチウム二次電池の制御方法。
【請求項3】
前記差分が所定の閾値より大きい場合、次の充電サイクルにおいて前記工程(A-1)
を行うときの充電電流密度iCCを小さくするように制御する、
請求項1又は2に記載のリチウム二次電池の制御方法。
【請求項4】
前記差分が前記閾値より大きい場合、次回以降の充電サイクルにおいて前記工程(A)
を行う度に前記工程(A-1)における充電電流密度iCCを所定量ずつ小さくすること
を、前記差分が前記閾値以下になるまで繰り返し行う、
請求項3に記載のリチウム二次電池の制御方法。
【請求項5】
1回の充電サイクルの所定のタイミングで前記リチウム二次電池セルの直流抵抗を検出
し、2回以上の充電サイクルの後に得られた前記直流抵抗の変化量に基づいて、前記aの
値を補正する工程(C)を含む、
請求項1または2に記載のリチウム二次電池の制御方法。
【請求項6】
前記リチウム二次電池セルのn回目(1≦n≦20)の充電サイクルにおける前記aの
値をan、前記直流抵抗の値をRnとし、
前記リチウム二次電池セルのm回目(20<m)の充電サイクルにおける前記直流抵抗
の値をRmとしたときに、
前記m回目の充電サイクルの前記工程(B-1)において適用される前記aの値amを
、下記式(2)に従って補正する、
請求項5に記載のリチウム二次電池の制御方法。
am=(Rm/Rn)×an・・・式(2)
【請求項7】
正極と、負極と、電解液と、を少なくとも含むリチウム二次電池セルの電池制御装置で
あって、
前記リチウム二次電池セルにおける前記負極が、あらかじめ負極集電体上に金属リチウ
ム層が形成されているか、又は、充電時に負極集電体上に金属リチウム層が析出するもの
であり、
1回の充電サイクルにおいて、前記リチウム二次電池セルを所定の電圧Vaまで充電す
る手順(A-1)と、前記所定の電圧Vaに達した後に、前記電圧Vaを維持しつつ充電
電流を漸次減少させながら所定のカットオフ電流値以下になるまで定電圧充電を行う手順
(A-2)とを順に行うようにして、前記リチウム二次電池セルを充電する充電制御部と
、
前記電圧Vaに達してから充電が完了するまでの時間tCV_m(sec)を計測する
計測部と、
前記リチウム二次電池セルを前記電圧Vaまで充電するときの充電電流密度をiCC(
mA/cm2)としたときに、前記電圧Vaに達してから充電が完了するまでの時間tC
V_i(sec)を下記式(1)の関係に従って推定する推定部と、
前記tCV_iと前記tCV_mとの差分に基づいて、各充電サイクル後の前記リチウ
ム二次電池セルの状態を検出する状態検出部と、を備えた、
電池制御装置。
tCV_i=a×log(iCC/icutoff)・・・式(1)
(式(1)において、aは定数であり、icutoff(mA/cm2)はあらかじめ定
めたカットオフを行う際の電流密度である)
【請求項8】
前記式(1)における前記aの値は、前記リチウム二次電池セルに含まれる前記電解液
の種類に応じて異なる値に設定されている、
請求項7に記載の電池制御装置。
【請求項9】
前記充電制御部は、前記差分が所定の閾値より大きい場合、次の充電サイクルにおいて
前記リチウム二次電池セルを充電するときの前記手順(A-1)における充電電流密度i
CCを小さくするように制御する、
請求項7又は8に記載の電池制御装置。
【請求項10】
前記充電制御部は、前記差分が前記閾値より大きい場合、次回以降の充電サイクルにお
いて前記手順(A-1)を行う度に充電電流密度iCCを所定量ずつ小さくすることを、
前記差分が前記閾値以下になるまで繰り返し行う、
請求項9に記載の電池制御装置。
【請求項11】
前記推定部は、1回の充電サイクルの所定のタイミングで前記リチウム二次電池セルの
直流抵抗を検出し、2回以上の充電サイクルの後に得られた前記直流抵抗の変化量に基づ
いて、前記aの値を補正する、
請求項7または8に記載の電池制御装置。
【請求項12】
前記リチウム二次電池セルのn回目(1≦n≦20)の充電サイクルにおける前記aの
値をan、前記直流抵抗の値をRnとし、
前記リチウム二次電池セルのm回目(20<m)の充電サイクルにおける前記直流抵抗
の値をRmとしたときに、
前記推定部は、前記m回目の充電サイクルにおいて適用される前記aの値amを、下記
式(2)に従って補正する、
請求項11に記載の電池制御装置。
am=(Rm/Rn)×an・・・式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の制御方法、及び、電池制御装置に関するものであって、
特に、リチウム二次電池の状態を検出する技術、さらには、リチウム二次電池の状態に応
じた制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属やアルカリ土類金属からなる金属イオンを充放電時に正極と負極との間で
授受することにより起電力を得る二次電池において、よりエネルギー密度の高い電池が要
請されている。そのため、箔状もしくは蒸着によって、金属リチウムに代表される、上記
の金属イオンと同種の金属自体を負極集電体上に形成して負極活物質として用いる、もし
くは金属リチウムなどの金属を電気化学的に負極に析出させる態様の金属二次電池(代表
例として金属リチウム二次電池)の需要が高まっている(例えば特許文献1)。金属リチ
ウム二次電池は、充電過程で負極集電体上にリチウム金属が析出し、析出したリチウム金
属が放電過程で電解質中に溶解することで充放電を繰り返す。リチウム金属が極めて卑な
電位を有するため、リチウム金属二次電池は高い理論容量密度が実現すると期待されてい
る。
【0003】
金属リチウム二次電池では、負極活物質中に金属イオンが吸蔵またはインターカレーシ
ョンされることがないため、常に負極表面に例えばリチウム等の金属が起こり、充電条件
により不均一な析出が生ずる場合がある。この金属の不均一析出物であるデンドライトは
、充電時には、負極表面のわずかな凹凸に応じた局所的な電解集中に伴って負極表面にウ
ィスカー状に成長する。そのため、金属リチウム二次電池では、デンドライトが成長する
ことによって正極と負極とが短絡するという問題がしばしば発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、利便性の観点から二次電池の急速充電性能が求められている。急速充電では
、通常の速度の充電よりも高い電流密度での充電が必要となるが、高電流密度での充電に
伴って上記のデンドライトの形成が促進され、正極と負極とが短絡に至る可能性はより高
くなる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、リチウム二次電池の各充電
サイクルにおいてリチウム二次電池セルの状態を適時に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、正極と、負極と、電解液と、を少なくとも含むリチウム二次電池セ
ルの制御方法である。前記リチウム二次電池セルにおける前記負極が、あらかじめ負極集
電体上に金属リチウム層が形成されているか、又は、充電時に負極集電体上に金属リチウ
ム層が析出するものである。
前記方法は、1回の充電サイクルにおいて、
前記リチウム二次電池セルを充電する工程(A)と、
前記工程(A)の後に前記リチウム二次電池セルの状態を検出する工程(B)と、を
含む。
前記工程(A)は、
前記リチウム二次電池セルを所定の電圧Vaまで充電する工程と(A-1)と、
前記電圧Vaに達した後に、前記電圧Vaを維持しつつ充電電流を漸次減少させなが
ら所定のカットオフ電流値以下になるまで定電圧充電を行う工程(A-2)と、を含む。
前記工程(B)は、
前記工程(A-1)における充電電流密度をiCC(mA/cm2)としたときに、
前記工程(A-2)に要する時間tCV_i(sec)を後述する式(1)の関係に従っ
て推定する工程(B-1)と、
前記tCV_iと、前記工程(A-2)に要した時間の実測値tCV_m(sec)
との差分に基づいて、前記リチウム二次電池セルの状態を検出する工程(B-2)と、を
含む。
【0008】
本発明の別の態様は、正極と、負極と、電解液と、を少なくとも含むリチウム二次電池
セルの電池制御装置である。前記リチウム二次電池セルにおける前記負極が、あらかじめ
負極集電体上に金属リチウム層が形成されているか、又は、充電時に負極集電体上に金属
リチウム層が析出するものである。
この電池制御装置は、
1回の充電サイクルにおいて、前記リチウム二次電池セルを所定の電圧Vaまで充電す
る手順(A-1)と、前記所定の電圧Vaに達した後に、前記電圧Vaを維持しつつ充電
電流を漸次減少させながら所定のカットオフ電流値以下になるまで定電圧充電を行う手順
(A-2)とを順に行うようにして、前記リチウム二次電池セルを充電する充電制御部と
、
前記電圧Vaに達してから充電が完了するまでの時間tCV_m(sec)を計測する
計測部と、
前記リチウム二次電池セルを前記電圧Vaまで充電するときの充電電流密度をiCC(
mA/cm2)としたときに、前記電圧Vaに達してから充電が完了するまでの時間tC
V_i(sec)を下記式(1)の関係に従って推定する推定部と、
前記tCV_iと前記tCV_mとの差分に基づいて、各充電サイクル後の前記リチウ
ム二次電池セルの状態を検出する状態検出部と、を備える。
tCV_i=a×log(iCC/icutoff) …式(1)
(式(1)において、aは定数であり、icutoff(mA/cm2)はあらかじめ定
めたカットオフを行う際の電流密度である)
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、リチウム二次電池の各充電サイクルにおいてリチウム二次
電池セルの状態を適時に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】二次電池セルの充電曲線を例示する図である。
【
図2】二次電池セルに対してCCCV充電を行うときに、CV充電における充電時間(CV充電時間)とCV充電における充電電流(CV充電電流)の関係を説明する図である。
【
図3】二次電池セルに対してCCCV充電を行うときに、充電電流密度とCV充電時間との関係を説明する図である。
【
図4】一実施形態の電池制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】一実施形態の電池制御装置の制御部において1回の充電サイクルの間に行われる処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図5のフローチャートにおいてセル状態検出処理の詳細処理を示すフローチャートである。
【
図7】二次電池セルにおいて充電サイクル数とCV充電時間比率の関係を示す図である。
【
図8】二次電池セルにおいて充電サイクル数と定数比率の関係を示す図である。
【
図9】二次電池セルにおいて充電サイクル数と二次電池セルの直流抵抗(DCR
1
0s)比率の関係を示す図である。
【
図10】二次電池セルにおいてDCR
10s比率と定数比率の関係を示す図である。
【
図11】一実施形態の電池制御装置の制御部に格納されるデータセットの一例である。
【
図12】
図6に示すフローチャートの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態のリチウム二次電池の制御方法、及び、電池制御装置について図面を
参照して説明する。
リチウム二次電池(以下、単に、二次電池)は、正極と、負極と、電解液と、正極と負
極とを隔離するセパレータを含む。
正極は、通常、正極集電体に正極活物質を含む正極活物質混合物を積層させた正極活物
質層を配置したものである。正極活物質は、例えば、LiCoO2、LiCo1-xAlxO2
、LiCo1-xMgxO2、LiCo1-xZrxO2、LiMn2O4、Li1-xMn2-xO4、L
iCrxMn2-xO4、LiFexMn2-xO4、LiCoxMn2-xO4、LiCuxMn2-xO
4、LiAlxMn2-xO4、LiNiO2、LiNixMn2-xO4、Li6FeO4、α-Li
FeO2、LiFe2(MoO4)3、LiFe2(WO4)3、LiFe2(SO4)3、Li3
Fe2(PO4)3、Li3Fe2(AsO4)3、Li3V2(AsO4)3、Li3FeV(As
O4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3、LiFePO4、Li2FeSiO4、など
の、リチウムを含む、リチウム複合酸化物を好適に用いることができる。
【0012】
負極は、通常負極集電体に負極活物質層を配置したものである。負極活物質は、リチウ
ム金属(金属片又はシート)を使用する。
電解液としては、例えば、非水性有機溶媒に溶解されたリチウム塩が用いられ、これは
良好なイオン伝導性を有している。充電中、リチウムイオンは、正極から負極(リチウム
)へと移動する。放電中は、リチウムイオンは逆方向に移動して、正極へと戻される。
【0013】
本願の発明者は、二次電池セルの負極表面に発生するデンドライトに起因する正極と負
極の短絡を回避しつつ急速充電を可能にすべく鋭意研究を行った結果、充電方法として一
般的なCCCV充電(Constant Current, Constant Voltage:定電流定電圧充電)におけ
るCV(定電圧)充電時間をモニタすることで二次電池セルの状態を適時に検出できるこ
とを見出した。ある充電サイクルにおける二次電池セルの状態の検出結果に応じて次回の
充電サイクルにおけるCC(定電流)充電電流密度を制御することにより、正極と負極の
短絡を回避可能な最大の充電電流密度を特定することができる。
以下、
図1~
図3を参照してさらに詳しく説明する。
【0014】
図1~
図3において言及する二次電池セルに含まれる正極、負極、および電解液の仕様
は以下のとおりである。
・正極:正極活物質であるリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(Li
Ni
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2、以下NMC811)に導電助剤とバインダを混合
した正極合剤をアルミニウム箔上に形成。
・負極:金属リチウム箔を銅箔上に貼合して形成
[電解液A]
・2.4モル/リットル LiFSIおよび1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビ
ス(フルオロスルホニル)イミド(EMIFSI)/モノフルオロベンゼン(FB)混合
物
[電解液B]
・3.0モル/リットル LiFSIおよび1,2-ジメトキシエタン(DME)/ハ
イドロフルオロエーテル(HFE)混合物
【0015】
図1は、異なる電解液A,Bの二次電池セルに対して、CC充電の電流密度を0.7m
A/cm
2、1.8mA/cm
2、2.9mA/cm
2、3.6mA/cm
2と変化させ
た場合の充電曲線を例示する図である。
図1に示すように、いずれの電解液の場合におい
ても、過電圧の影響によりCC充電の電流密度が高いほど充電時のセル電圧が高くなるよ
うに推移する。この充電曲線では、約4.3Vに到達した時点がCC充電からCV充電に
移行したタイミングである。
【0016】
CC充電において最も充電電流密度が高い充電曲線(3.6mA/cm2)に着目する
と、いずれの電解液の場合においても、より低い充電電流密度の場合と比較してより多く
の電気量が充電されていることがわかる。別の観点では、CC充電において最も充電電流
密度が高い場合には、より多くの電流が流れるため、CV充電の終了を判断するときの電
流の下限の閾値(以下、カットオフ電流)に到達するのにより多くの時間が掛かっている
。ここで、CC充電において充電電流密度が比較的高い場合により多くの電流が流れる原
因は、デンドライトの成長に起因する正極と負極の間での微小な短絡の発生にあると考え
られる。微小な短絡が発生した場合には、通常の充電電流に重畳して短絡した箇所で電流
が流れるため、微小な短絡が発生していない場合と比較してより多くの電流が流れること
になると考えられる。
【0017】
そこで、発明者は、正極と負極の間の微小な短絡、あるいは微小な短絡の兆候をより明
確に検知できる手法について研究を進めていく過程でCV充電時間とCV充電電流の関係
に着目した。そして、異なるCC充電電流での両者の実測値を二次元平面上にプロットし
たところ、正極と負極の間の微小な短絡が生じない程度に低いCC充電電流の場合には、
指数関数を用いることでCV充電時間とCV充電電流の関係を高精度にフィッティングで
きることを見出した。なお、CV充電時間とは、CC充電からCV充電に移行してから充
電が完了するまでの時間(つまり、CV充電電流がカットオフ電流に到達するまでの時間
)を意味する。
【0018】
図2を参照すると、電解液Aと電解液Bの各々の二次電池セルの場合のCV充電時間と
CV充電電流の関係について、実測値を実線で示し、フィッティングによる値を点線で示
している。なお、この実測値では、正極と負極の間の微小な短絡が発生しないと考えられ
る程度の低い電流密度で充電を行った場合の結果である。具体的には、CC充電の電流密
度の上限値を、電解液Aの場合には1.5~1.8[mA/cm
2]とし、電解液Bの場
合には1.5[mA/cm
2]とした。
【0019】
フィッティングの際に用いた式を式(2)に示す。式(2)において、i
CVはCV充
電電流密度、t
CVはCV充電時間、i
CCはCC充電電流密度、をそれぞれ示している
。Aは、電解液の種類に依存する定数である。
カットオフ電流に相当する電流密度をi
cutoffとすると、式(2)から式(3)
を導くことができる。なお、式(3)においてlogの底は10である。
図2から、電解
液ごとに、実測値とフィッティングによる値とが極めて精度良く合うことがわかる。式(
3)から、所与のCC充電電流密度に対して、正極と負極の間の微小な短絡が発生しない
場合のCV充電時間を推定することができる。なお、以下では、式(3)により得られる
CC充電電流密度とCV充電時間の関係を示すカーブを「フィッティングカーブ」という
。
【0020】
【0021】
【数2】
なお、以下の説明では、以下の式(4)のとおり定数aを定義する。この定数aも電解
液の種類に依存する定数である。
a=2.303/A …式(4)
【0022】
ここで、CC充電電流密度とCV充電時間の関係について実測値とフィッティングカー
ブとが合うのは、二次電池セルが正常の場合(つまり、正極と負極の間の微小な短絡が発
生しない場合)である。したがって、CC充電電流密度とCV充電時間の実測値がフィッ
ティングカーブから乖離してきた場合には、デンドライトの成長に起因する正極と負極の
間の微小な短絡の発生によって、充電電流が正常な場合よりも増加したことによるものと
考えることができる。
【0023】
図3に、電解液A,Bの各々の二次電池セルにおいて、CC充電での充電電流密度とC
V充電時間と実測値をプロットしたものを示す。
図3において、点線は、各電解液の場合
のフィッティングカーブを示している。
図3を参照すると、電解液Aの場合、CC充電電
流密度が2.2[mA/cm
2]を超えてからフィッティングカーブに対して乖離し始め
、CV充電時間がフィッティングによる値よりも多く掛かるようなることがわかる。また
、電解液Bの場合、CC充電電流密度が1.5[mA/cm
2]を超えてからフィッティ
ングカーブに対して乖離し始め、CV充電時間がフィッティングによる値よりも多く掛か
るようなることがわかる。
【0024】
そこで、一実施形態では、各充電サイクルにおいて、CC充電における充電電流密度を
iCC[mA/cm2]としたときのCV充電時間の推定値tCV_i[sec](上記
式(3)に基づく値)と、CV充電時間の実測値tCV_m[sec]との差分に基づい
て、二次電池セルの状態を検出する。二次電池セルの状態を充電サイクルごとにモニタす
ることで、二次電池セルの状態に応じた様々な制御を行うことができる。例えば、上記差
分が所定の閾値以上である場合には、デンドライトの成長に起因する正極と負極の間の微
小な短絡の発生、あるいは微小な短絡の兆候があると考えられるため、次の充電サイクル
からCC充電における充電電流密度を低下させ、デンドライトの成長を抑制することがで
きる。すなわち、短絡を回避しつつ極力高い電流で充電するように制御することができる
。具体的な制御方法については、後述する。
【0025】
次に、一実施形態のリチウム二次電池の制御方法が実装された電池制御装置について説
明する。
図4に概略的に示す電池制御装置1は、電池モジュール2を図示しない充電装置と接続
することによって電池モジュール2を充電する際に、電池モジュール2の各電池セル21
の状態を検出するように構成される装置である。電池制御装置1は、各電池セル21の状
態に応じて、電池モジュール2に対する充電を制御する。
電池モジュール2は、1以上の電池セル21が接続されている。各電池セルは、正極と
、負極と、電解液と、を少なくとも含む。
【0026】
なお、
図4において充電対象となる電池モジュール2は一例に過ぎず、本発明は、2以
上の電池モジュールを含む電池パックに適用することができる。また、
図4に示す電池モ
ジュール2は、1以上の電池セル21が直列に接続される場合について例示しているが、
その限りではない。電池モジュールは、並列に接続された電池セルの組合せが複数、直列
に接続された形態でもよい。
【0027】
図4に示すように、電池制御装置1は、制御部3、セル電圧測定部4、及び、電流セン
サ5を含む。制御部3は、充電制御部、計測部、推定部、状態検出部の一例である。
セル電圧測定部4は、電池モジュール2の各電池セル21の端子間電圧を測定し、逐次
制御部3に送信するように構成される。電流センサ5は、電池モジュール2が図示しない
充電装置に接続されて電池モジュール2を含む閉回路が形成されたときに、この閉回路を
流れる電流を検出し、逐次制御部3に送信するように構成される。
【0028】
制御部3は、CPU31、記憶部32、及び、通信部33を含む。
CPU31は、充電サイクルごとに、一実施形態のリチウム二次電池の制御方法が記述
された所定のプログラムを実行する。記憶部32は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発
性メモリであり、CPU31によってプログラムを実行するのに必要なデータや、CPU
31によるプログラムの実行により得られたデータ等を格納する。通信部33は、図示し
ない充電装置とあらかじめ定められたプロトコルに従って通信を行う通信インタフェース
である。
【0029】
次に、一実施形態の電池制御装置1の動作について、
図5および
図6を参照して説明す
る。
図5は、1回の充電サイクルにおける電池制御装置1の処理を示すフローチャートであ
る。
図6は、
図5のセル状態検出処理の詳細なフローチャートである。
図5のフローチャ
ートは、電池制御装置1の制御部3により実行される。
【0030】
電池制御装置1が充電装置に接続されて充電を行う場合、制御部3は先ず、記憶部32
に記憶されているiCC調整フラグをチェックする。iCC調整フラグは、今回の充電サ
イクルにおいてCC充電電流密度を低下させるか否かを示すフラグ(ON:CC充電電流
密度を低下させる、OFF:CC充電電流密度を低下させない)であり、前回の充電サイ
クルでセル状態検出処理の結果に基づいて決定される。
【0031】
制御部3は、iCC調整フラグがONである場合(ステップS2:YES)、今回の充
電サイクルでのCC充電電流密度iCCを、前回の充電サイクルにおけるCC充電電流密
度(前回値)に対して所定量Δi低下させることを決定する(ステップS6)。次いで、
制御部3は、ステップS6で決定したCC充電電流密度iCCを記憶部32に記録する(
ステップS8)。なお、ここで記録したCC充電電流密度iCCは、次回の充電サイクル
において前回値となる。
制御部3は、iCC調整フラグがOFFである場合(ステップS2:NO)、今回の充
電サイクルでのCC充電電流密度iCCを、前回の充電サイクルにおけるCC充電電流密
度(前回値)とする(ステップS4)。
【0032】
ステップS10~S18の処理は、今回の充電サイクルにおけるCCCV充電処理を示
している。
制御部3は先ず、ステップS4又はS6で決定したCC充電電流密度iCCにより電池
モジュール2のCC充電を開始する(ステップS10)。CC充電は、電池モジュール2
の各電池セル21のセル電圧が所定の電圧Vaに達するまで継続して行われる(ステップ
S12)。
セル電圧が所定の電圧Vaに達すると、制御部3は、カウンタを起動させ(ステップS
14)、CV充電を開始する(ステップS16)。カウンタを起動させるのは、CV充電
時間を測定するためである。CV充電は、電流センサ5で測定されるCV充電電流に対応
するCV充電電流密度iCVがカットオフを行う際の電流密度icutoff電流以下と
なるまで継続して行われる(ステップS18)。
【0033】
制御部3は、CV充電が完了するとセル状態検出処理を実行して(ステップS20)、
終了する。
セル状態検出処理について
図6を参照すると、制御部3は、ステップS14で起動させ
たカウンタの値に基づいてCV充電時間の実測値t
CV_mを取得する(ステップS22
)。次いで制御部3は、上記式(3)に従ってCV充電時間の推定値t
CV_iを取得す
る(ステップS24)。なお、式(3)を演算するのに必要な定数a(式(4)を参照)
は、予め記憶部32に記憶されている。
【0034】
制御部3は、CV充電時間の実測値t
CV_mと推定値t
CV_iの差分値(t
CV_
m-t
CV_i)を所定の閾値Thと比較することにより、各電池セル21の状態を検出
する。上記差分値が閾値Thより大きい場合には(ステップS26:YES)、
図3に示
したフィッティングラインから乖離していることを意味しており、正極と負極の間で微小
な短絡が発生した、あるいはその兆候がみられると判断し、次回のCC充電電流密度を低
下させるべく、i
CC調整フラグをONにする(ステップS28)。逆に、上記差分値が
閾値Th以下である場合には(ステップS26:NO)、
図3に示したフィッティングラ
インから乖離していないことから現在のCC充電電流密度を維持することができるため、
i
CC調整フラグをOFFにする(ステップS30)。
【0035】
今回の充電サイクルにおいてiCC調整フラグがONになると、次回の充電サイクルで
のCC充電電流密度iCCがΔiだけ小さくなる。すなわち、今回の充電サイクルにおい
て制御部3は、実測値tCV_mと推定値tCV_iの差分値が所定の閾値Thより大き
い場合、次の充電サイクルにおいて電池セル21を充電するときのCC充電における充電
電流密度iCCを小さくするように制御する。そのため、次回の充電サイクルにおいてC
V充電時間が推定値から乖離することが抑制される。
【0036】
一実施形態では、今回の充電サイクルにおいて制御部3は、実測値tCV_mと推定値
tCV_iの差分値が閾値Thより大きい場合、次回以降の充電サイクルにおいてCC充
電を行う度に充電電流密度iCCを所定量ずつ小さくすることを、上記差分値が閾値Th
以下になるまで繰り返し行う。それによって、正極と負極の短絡を回避しつつ極力高いC
C充電電流を特定できる。
【0037】
以上、一実施形態のリチウム二次電池の制御方法が実装された電池制御装置について説
明した。
次に、一実施形態のリチウム二次電池の制御方法において、充電サイクルの進行に伴う
影響(サイクル劣化の影響)について考察する。
【0038】
図7は、電解液Aの二次電池セルにおいて、サイクル数とCV充電時間比率の関係をプ
ロットしたものである。なお、例えばN回目のサイクル数におけるCV充電時間比率とは
、1回目のサイクル数におけるCV充電時間に対する、N回目のサイクルにおけるCV充
電時間の比率である。
図7から、CV充電時間はサイクル数の増加とともに増大する傾向であることがわかる
。
【0039】
図8は、電解液Aの二次電池セルにおいて、サイクル数と定数比率の関係をプロットし
たものである。なお、例えばN回目のサイクル数における定数比率とは、1回目のサイク
ル数における定数a(電解液の種類に依存する定数)に対する、N回目のサイクルにおけ
る定数aの比率である。ここでは、各サイクルにおいて、CV充電時間とCV充電電流の
測定値を基にフィッティングを行うことで定数aを算出した。
図8に示すように、同じ電
解液を使用する場合であってもサイクルの増加とともに、算出される定数aも増大する傾
向となった。
【0040】
図7および
図8の結果から、サイクル数が増加するとともに、CV充電時間と電解液の
種類に依存する定数aも増大する傾向にあることがわかる。これは、サイクル数とともに
二次電池セルが劣化することによって内部抵抗が増大するためであると考えられる。そこ
で、各サイクルにおいて同一のSOCにおける二次電池セルの内部抵抗の値として、満充
電(SOC=100%)の状態で放電を開始してから10秒後の直流抵抗の値(以下、直
流抵抗DCR
10s)のサイクル数の進行に伴う推移をプロットしたものが
図9である。
直流抵抗はSOCによって変化するため、各サイクルにおいて同一SOCの条件で直流抵
抗を求める必要がある。
直流抵抗DCR
10sを算出するには、満充電の二次電池セルに対してt=0の時点か
ら所定の負荷を二次電池セルに接続することで定電流Iを流し、t=0からt=10[s
ec]までの二次電池セルの端子間の電圧降下ΔVを測定し、ΔV/Iを求める。
【0041】
図9において、例えばN回目のサイクル数におけるDCR
10s比率とは、1回目のサ
イクル数における直流抵抗DCR
10sに対する、N回目のサイクルにおける直流抵抗D
CR
10sの比率である。
図9に示すように、直流抵抗DCR
10sは、サイクル数の増
加とともに増大し、その変化の程度がCV充電時間および定数aと極めて似ていることが
わかる。このことから、サイクル数が増加するとともにCV充電時間と電解液の種類に依
存する定数aも増大する傾向となることは、サイクル数の進行に伴う二次電池セルの内部
抵抗の増大に起因することが確かめられた。
なお、指標として、満充電(SOC=100%)の状態で放電を開始してから10秒後
の直流抵抗の値としたのは一例に過ぎず、満充電(SOC=100%)の状態で放電を開
始してから1~120秒の範囲の任意のタイミングの直流抵抗の値とすることもできる。
また、各サイクルで直流抵抗を測定することの基準となる時点(t=0)のSOCは、サ
イクルごとに変動させない限り任意に設定可能であるが、100%であることは放電開始
直後に測定可能な点で都合が良い。
【0042】
電解液A,Bの各々の二次電池セルにおいて、DCR
10s比率と定数比率の関係をプ
ロットしたところ、いずれの電解液の場合も
図10に示すようにほぼ比例関係となった。
よって、各サイクルについて直流抵抗DCR
10sを逐次算出し、サイクルの進行に伴う
直流抵抗DCR
10sの変化に応じて、既知の係数(すなわち、
図10に示すような関係
を表す比例係数)により定数aを補正することで、任意のサイクルにおいて上記式(3)
を適用することが可能となる。
すなわち、一実施形態では、1回の充電サイクルの所定のタイミングで二次電池セルの
直流抵抗DCR
10sを検出し、2回以上の充電サイクルの後に得られた直流抵抗DCR
10sの変化量に基づいて定数aを補正する。
【0043】
図8に示すように、定数比率は、サイクル数が約20サイクルを超えてから線形に上昇
する傾向にある。
図9においても同様の傾向が見られ、サイクル数が約20サイクルを超
えてからDCR
10s比率が上昇する傾向にある。つまり、直流抵抗DCR
10sが1サ
イクル時の値と比較して上昇するのは約20サイクルを超えてからであり、約20サイク
ル以降でサイクル劣化が顕著になることを示している。そのため、定数aの補正のための
係数を算出するに際しては、n回目(1≦n≦20)の充電サイクルにおいて算出した直
流抵抗DCR
10sと、m回目(20<m)の充電サイクルにおいて算出した直流抵抗D
CR
10sとに基づいて係数を算出することが好ましい。
したがって、一実施形態では、二次電池セルのn回目(1≦n≦20)の充電サイクル
における定数aの値をa
n、直流抵抗DCR
10sの値をR
nとし、二次電池セルのm回
目(20<m)の充電サイクルにおける直流抵抗DCR
10sの値をR
mとしたときに、
m回目の充電サイクルにおいてCV充電時間の推定値を算出するときの定数aの値a
mを
、下記式(5)に従って補正する。
a
m=(R
m/R
n)×a
n …式(5)
【0044】
次に、サイクル劣化の影響を考慮した電池制御装置1の制御部3による制御方法につい
て、
図11および
図12を参照して説明する。
図11は、制御部3の記憶部32に格納されるデータセットのデータ構成例である。
このデータセットは、1回目のサイクルから現在のサイクルまでの各サイクルについて
、CC充電電流密度i
CC、i
CC調整フラグ(ON又はOFF)、及び、直流抵抗DC
R
10sの各値を含む。データセットの各サイクルにおける値は、各サイクルの処理が実
行される度にCPU31によって書き込まれる。
図12は、サイクル劣化の影響を考慮した場合のセル状態検出処理を示すフローチャー
トである。
図12に示すフローチャートは、
図6のフローチャートと比較して、ステップ
S23A,23Bが追加された点で異なる。
【0045】
図12を参照すると、制御部3は、充電が完了した後、所定の負荷を接続することで放
電を開始して定電流を流し、放電を開始してから10秒経過した時点での各電池セル21
の電圧降下に基づいて直流抵抗DCR
10sを算出する(ステップS23A)。次いで、
制御部3は、電解液の種類に依存する定数aを補正する(ステップS23B)。ここで、
定数aを補正するための、DCR
10s比率と定数比率の比例係数は、予め記憶部32に
格納されている。
制御部3は、ステップS24においてCV充電時間の推定値t
CV_iを取得する際に
は、上記式(3)においてステップS23Bで補正された定数aを適用する。そのため、
ステップS26では、サイクル劣化を考慮したものとなり、サイクルの進行に関わらず次
のサイクルのCC充電電流密度を維持するか、あるいは低下させるか(つまり、i
CC調
整フラグをONにするかOFFにするか)について、サイクル劣化を考慮した、より適切
な判断を行うことができる。
なお、サイクル劣化の影響を考慮した電池制御装置1では、各サイクルのCC充電電流
密度i
CCは、
図5のステップS8においてデータセットに記録される。各サイクルのi
CC調整フラグは、
図12のステップS28又はS30においてデータセットに記録され
る。各サイクルのDCR
10sは、
図12のステップS23Aにおいてデータセットに記
録される。
【0046】
以上説明したように、一実施形態のリチウム二次電池の制御方法によれば、各充電サイ
クルにおいてCCCV充電において二次電池セルが正常な場合(つまり、正極と負極の短
絡の徴候がない場合)のCV充電時間の推定値と、CV充電時間の実測値とを比較し、両
者の差分に基づいて、二次電池セルの状態を検出する。そのため、二次電池セルの負極表
面のデンドライトの成長に起因する短絡の徴候を早期に把握することができる。
一実施形態では、CV充電時間の推定値を求める式に含まれる定数が電解液の種類に依
存していることに鑑み、状態の検出対象となる二次電池セルの電解液の種類に応じて定数
を決定する。それによって、二次電池セルの状態の検出精度を高めることができる。
一実施形態では、あるサイクルにおいてCV充電時間の推定値と実測値の差分が所定の
閾値より大きい場合には、次のサイクルにおいてCC充電電流密度を小さくする。それに
よって、二次電池セルの負極表面のデンドライトの成長が抑制される。
一実施形態では、あるサイクルにおいてCV充電時間の推定値と実測値の差分が所定の
閾値より大きい場合には、次回以降のサイクルにおいてCC充電電流密度を所定量ずつ小
さくすることを、上記差分の所定の閾値以下になるまで繰り返し行う。それによって、正
極と負極の短絡を回避可能な最大のCC充電電流密度を特定できるため、正極と負極の短
絡を回避しつつ急速充電を行うことが可能になる。
一実施形態では、サイクル劣化を考慮し、CV充電時間の推定値を求める式に含まれる
、電解液の種類に依存する定数を、二次電池セルの直流抵抗の値によって補正する。それ
によって、サイクル劣化を考慮した推定値を得ることができ、二次電池セルの状態の検出
精度を高めることができる。
一実施形態では、CV充電時間の推定値を求める式に含まれる上記定数を補正する際に
は、サイクル初期(例えば、約20サイクルまで)において同一SOC条件下の二次電池
セルの内部抵抗が変化(劣化)しないことに鑑み、上記式(5)に従って上記定数を補正
する。それによって、サイクル劣化がより正確に反映されたCV充電時間の推定値を得る
ことができる。
【0047】
以上、本発明のリチウム二次電池の制御方法、及び、電池制御装置の実施形態について
説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明
の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。例えば、上述した各
実施形態及び各変形例に記載した個々の技術的特徴は、技術的矛盾がない限り、適宜組み
合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…電池制御装置
2…電池モジュール
21…電池セル
3…制御部
31…CPU
32…記憶部
33…通信部
4…セル電圧測定部
5…電流センサ