(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102335
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】皮膚色素沈着およびタトゥー・インクの除去の方法および装置の改善
(51)【国際特許分類】
A61B 18/20 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
A61B18/20
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024079128
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2020573470の分割
【原出願日】2019-06-25
(31)【優先権主張番号】1810495.0
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1810496.8
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1811297.9
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】520512487
【氏名又は名称】ライトセンス イスラエル エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン,ダン,ドブ
(72)【発明者】
【氏名】ロエブル,オデッド
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ダメリン,エロール
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンベルク,ジャレッド,アロン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】皮膚科レーザー治療、たとえば、望まれない刺青または他の皮膚色素沈着の除去方法および装置を提供する。
【解決手段】単一のパルス・レーザー・ビームを用いる複数の色の除去を、約50GW/cm
2を超える強度を使用して達成することができる。レーザー刺青除去に関連する痛みおよび組織損傷を減らす方法は、0.5~10J/cm
2のフルエンスを有する2mm未満のスポット・サイズを使用することを含む。治療される皮膚の領域にわたるレーザー・ビームの走査は、皮膚の治療される部分から離れた熱のすばやい放散を促進するように計算された走査パターンを用いてそのような領域を正確に治療することを可能にする。複数の治療室が、レーザーのダウンタイムを最小にするためにビーム・トグリング、ビーム分割、またはパルス選択によって単一のパルス治療レーザーによってサービスされ得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光のパルス・ビームを用いて治療される被験者の皮膚の領域を照射することを含む皮膚科治療の方法であって、前記レーザー光は、少なくとも約50GW/cm2の強
度および約0.1~100psの範囲内のパルス幅を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
レーザー光の前記ビームは、連続するパルスが前記領域の異なる部分に当たり、前記領域の各部分が単一の治療内で前記レーザー光の1つのパルスを受け取るように、治療される前記領域に対して相対的に移動される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
皮膚の前記領域の前記異なる部分は、お互いに実質的にオーバーラップしない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パルス・レーザー光は、約0.5~10J/cm2の皮膚の深さでのフルエンスを
有する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記レーザー光の前記強度は、色素または病変の少なくとも3つの異なる色の除去が可能である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記レーザー光は、約0.1~1TW/cm2の強度を有する、請求項1~5のいずれ
かに記載の方法。
【請求項7】
前記レーザー光は、少なくとも約0.5ps、好ましくは少なくとも1.0psのパルス幅を有する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記レーザー光は、約35ps未満、好ましくは約25ps未満のパルス幅を有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記レーザー光は、約1~15ps、好ましくは約1~10psの範囲内のパルス幅を有する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記レーザー光は、直径約2mm未満の前記皮膚でのスポット・サイズを有する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記レーザー光は、約0.1~1.0mm、好ましくは約0.5~1.0mmのスポット・サイズを有する、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記被験者の皮膚に入射するレーザー光の各パルスのフルエンスおよび前記スポット・サイズは、前記フルエンスが約0.5~10J/cm2の範囲内になるよう制御され、前
記スポット・サイズは、前記皮膚への損傷が生じるしきい持続時間より長く44℃を超える温度に皮膚がさらされない照射の後に前記皮膚が十分にすばやく冷えるようになっている、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
治療される被験者の皮膚の領域にわたってレーザー光のパルス・ビームを移動することを含み、各パルスは、スポットの形で治療される前記領域内の前記被験者の皮膚の異なる部分に突き当たり、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスは、約0.5~10J/cm2
の範囲内であり、各スポットのサイズは、前記皮膚への損傷が生じるしきい持続時間より長く44℃を超える温度に皮膚がさらされない十分なすばやさで前記皮膚が冷えるようになっていることを特徴とする、皮膚科治療の方法。
【請求項14】
前記スポットの前記サイズは、前記皮膚の熱緩和時間が、前記皮膚への損傷が引き起こされる前に前記皮膚が初期温度上昇に耐えることのできる時間の長さより短くなるようになっている、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱緩和時間は、約0.1sから約8sの範囲内である、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記被験者の皮膚上に前記レーザー光によって作られる前記スポットの前記サイズは、前記皮膚の温度が約51℃を超えて上昇せず、約6sを超えない緩和時間を提供する、請求項12~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
治療される被験者の皮膚の領域にわたってレーザー光のパルス・ビームを移動することを含み、各パルスは、スポットの形で治療される前記領域内の前記被験者の皮膚の異なる部分に突き当たり、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスは、約0.5~10J/cm2
の範囲内であり、各スポットが、約2mm未満の最大寸法を有することを特徴とする、皮膚科治療の方法。
【請求項18】
前記レーザー光は、約1~100mJの範囲内のエネルギ・パルスを前記皮膚に入力する、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
レーザー光のパルス・ビームが、各パルスが治療される領域内の被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、治療される前記被験者の皮膚の領域にわたって移動される、複数の連続する皮膚科治療を含み、各パルスは、約0.5~10J/cm2の範囲内のフル
エンスを有し、前記皮膚への損傷が生じるしきい持続時間より長く44℃を超える温度に前記皮膚がさらされないのに十分に小さいスポットの形で前記被験者の皮膚に突き当たり、前記皮膚科治療は、1~3週間おきに繰り返される、色素除去の方法。
【請求項20】
最大4回の治療が、同一の日に実行され、これに1~3週間、好ましくは1~2週間の休息期間が続く、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
各皮膚科治療は、請求項1~18のいずれかに従って実行される、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザー光の強度は、109~1010W/cm2の範囲内である、請求項13、17、または19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
2つ以上の異なる波長のレーザー光は、組み合わせて使用され得る、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
1011~1012W/cm2の強度を有するレーザー光の第1のパルス・ビームは、109~1010W/cm2の強度を有するレーザー光の第2のパルス・ビームと組み合わせて使
用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1および第2のパルス・ビームのそれぞれは、0.5~10J/cm2の範囲内
のフルエンスを独立に有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のビームは、オプションで800nmまたは1030nmの波長を有する、第1の赤外線(IR)レーザーからであり、前記第2のビームは、オプションで532nmの波長を有する緑色レーザー、または1064nmの波長を有する第2のIRレーザーからである、請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項27】
レーザー光の連続するパルスを用いて治療される皮膚の前記領域の別々の部分は、少なくとも約0.1mmだけお互いから分離される、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
治療される被験者の皮膚の領域にわたってレーザー光のパルス・ビームを移動することを含み、前記ビームは、前記被験者の皮膚上にレーザー光のスポットを形成し、連続するパルスは、約0.5~10J/cm2の範囲内の皮膚の深さでのフルエンスを伴って前記
領域の異なるそれぞれの部分に当たり、部分は、少なくとも約0.1mmだけお互いから分離される、皮膚科治療の方法。
【請求項29】
レーザー光の前記ビームは、各スポット内の前記ビームの強度が外側周辺領域でより低くなるように、前記周辺領域内で減衰される、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
各パルスが、前記被験者の皮膚内にレーザー光のスポットを作り、約0.5~10J/cm2の範囲内のフルエンスを有するレーザー光のパルス・ビームを用いて治療される被
験者の皮膚の領域を照射することを含み、レーザー光の前記ビームは、連続するパルスが前記領域の異なる部分に当たるように、治療される前記領域にわたって移動され、前記ビームは、その強度が、前記ビームの残りより周辺外側領域で低くなるように減衰される、皮膚科治療の方法。
【請求項31】
レーザー光の前記パルスは、隣接する行が連続しては照射されないことを保証するシーケンスに従って照射されるスポットの複数の隣接する行を含むパターンで前記皮膚に向けられる、請求項1~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記ビームは、治療される前記領域にわたって走査される、請求項1~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記走査されるビームは、光学ビーム・ステアリングによって走査範囲にわたって走査される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記走査範囲の形状は、調整可能である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記走査範囲の前記形状は、複数の事前にセットされた形状、たとえば、円形、正方形、およびオプションで異なるアスペクト比を有する長方形から選択可能である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記走査範囲のアウトラインを示すために、前記走査範囲の周囲の回りで可視照準ビームを継続的に走査することをさらに含む、請求項33~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記ビームは、走査されたばかりの部分に隣接する走査される前記領域の部分をスキップすることと、前記走査された部分からより離れた部分を走査した後にそれに戻ることとを含む、構成可能な走査パターンで前記走査範囲にわたって走査される、請求項33~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記ビームは、レーザー光の各パルスが、前記被験者の皮膚の異なるそれぞれの部分に入射するように、前記走査範囲にわたって走査され、前記ビームは、選択された隣接しない部分が各パスで照査される、前記被験者の皮膚にまたがるパスのシーケンスで走査される、請求項33~36のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
レーザー光の前記ビームは、連続するパルスが治療される前記領域の異なる部分に当たるように、一連の直線または曲線で前記走査範囲にわたって走査される、請求項33~36のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
各パルスが、被験者の皮膚内にレーザー光のスポットを作り、約0.5~10J/cm2の範囲内のフルエンスを有する、レーザー光のパルス・ビームを用いて治療される前記
被験者の皮膚の領域を照射することを含み、レーザー光の前記ビームは、連続するパルスが治療される前記領域の異なる部分に当たるように、一連の直線または曲線で走査範囲にわたって走査される、皮膚科治療の方法。
【請求項41】
前記線は、お互いに並べて走査され、各線は、前記被験者の皮膚の隣接する部分への前記レーザー光の複数の連続するパルスを含む、請求項39または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
隣接する線は、連続して、たとえばラスタ走査によってまたはインターレース式に走査される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
各走査される線内の部分は、順序はずれで照射される、請求項39~42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
各線は、そのそれぞれで選択された隣接しない部分が照射される複数のパスで走査される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記走査範囲の前記形状は、光学、たとえばコンピュータ・ビジョンによって、治療される前記領域の形状を獲得することによって自動的に判定される、請求項33~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記パルス・ビームは、約30Hz超、好ましくは約100Hz超、オプションで200~500Hzのパルス繰り返し率を有する、請求項1~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記パルス・ビームは、約1000Hz以上のパルス繰り返し率を有する、請求項1~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
治療される被験者の皮膚の領域の少なくとも一部の1つまたは複数の画像を獲得するのにカメラを使用することと、治療される前記領域の前記少なくとも一部の形状およびサイズを判定するために画像認識技法を使用して前記1つまたは複数の画像を処理することと、治療される前記領域の前記少なくとも一部の前記判定された形状およびサイズに従ってパルス・レーザー・ビームの走査範囲の形状およびサイズを調整することと、その後、前記走査範囲の全体にわたって治療される前記領域の前記少なくとも一部にレーザー光の前記パルス・ビームを走査することと、を含む、皮膚科治療の方法。
【請求項49】
治療される領域の連続する部分的にオーバーラップするセグメントを照射することと、同一の治療内で既に照射されているセグメントとオーバーラップする治療される各セグメントの領域をマスクするのに画像ステッチング・アルゴリズムを使用して前記1つまたは複数の画像を処理することとを含む、請求項48に記載の皮膚科治療の方法。
【請求項50】
調整可能なサイズおよび/または形状の走査範囲にわたって2mm未満のスポット・サイズを有する治療レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナおよびカメラを含むワーク・ヘッドと、少なくとも1つのパルス治療レーザーに前記ビーム・スキャナを接続する光学入力と、治療される被験者の皮膚の領域に隣接して前記ワーク・ヘッドを安定して位
置決めする調整可能な位置決めデバイスと、レーザー治療装置の動作を制御する自動制御システムとを含み、前記自動制御システムは、前記カメラから治療される前記領域の1つまたは複数の画像を受け取り、治療される前記領域の少なくとも一部の形状を判定するために前記受け取られた画像を処理し、治療される前記領域の前記少なくとも一部の前記判定された形状に従い、前記走査範囲にわたって前記治療レーザー・ビームを走査するために、前記走査範囲の前記サイズおよび/または形状を調整するように構成される、皮膚科治療のレーザー装置。
【請求項51】
前記被験者の皮膚上でオペレータに前記走査範囲のアウトラインを示す光学トレーサをさらに含み、前記自動制御システムは、前記被験者の皮膚上に前記走査範囲のアウトラインを表示するために前記光学トレーサを制御するようにさらに構成される、請求項50に記載のレーザー装置。
【請求項52】
治療される前記被験者の皮膚の前記領域の前記少なくとも一部の画像を表すディスプレイ信号を前記自動制御システムから受け取り、これらの画像をスクリーン上に表示するように適合されたディスプレイをさらに含み、前記自動制御システムは、前記被験者の皮膚の前記画像に重畳される前記走査範囲のアウトラインを前記スクリーン上に表示するようにさらに構成される、請求項50または請求項51に記載のレーザー装置。
【請求項53】
前記自動制御システムは、前記ビーム・スキャナを動作させる前に、前記走査範囲が示された後に、安全制御信号を待つように構成される、請求項50~52のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項54】
前記自動制御システムは、オペレータによる前記走査範囲の前記形状および/またはサイズの調整を可能にするように構成される、請求項50~53のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項55】
前記ワーク・ヘッドは、治療される前記領域に対する相対的な前記レーザー・ビーム・スキャナの位置を前記被験者の皮膚上に示すために前記被験者の皮膚に向かって可視照準ビームを放つ照準ビーム・デバイスをさらに含む、請求項50~54のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項56】
治療される前記領域の前記少なくとも一部の表面的特徴を測定する1つまたは複数の表面的特徴測定器具をさらに含み、前記自動制御システムは、前記表面的特徴測定に基づいて治療される前記領域の前記少なくとも一部の表面的特徴を判定し、前記走査範囲の前記形状および/またはサイズを計算するために治療される前記領域の前記少なくとも一部の前記形状、サイズ、および表面的特徴を融合させるようにさらに構成される、請求項50~55のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項57】
前記位置決めデバイスは、複数の連続するセグメント内の治療される前記領域全体の治療を可能にするために、前記ワーク・ヘッドが複数の異なる位置で位置決めされることを可能にする、請求項50~56のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項58】
前記自動制御システムは、前記制御システムによって既に認識された別のセグメントとのオーバーラップの領域を識別するために治療される前記領域のセグメントの受け取られた画像を処理し、治療される前記セグメントの前記走査範囲内のオーバーラップの前記領域をマスクするのに画像ステッチング・アルゴリズムを使用するように構成される、請求項57に記載のレーザー装置。
【請求項59】
前記位置決めデバイスは、自動化され、前記自動制御システムは、治療される前記領域
全体をカバーするために連続する隣接する走査範囲を走査するように前記ワーク・ヘッドを位置決めするように前記位置決めデバイスを制御するようにさらに構成される、請求項50~57のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項60】
前記自動化された位置決めデバイスは、前記ワーク・ヘッドが前記オペレータによって自由に移動され得る第1のモードと、前記ワーク・ヘッドの位置が前記自動制御システムによって制御される第2のモードとの間で切り替え可能である、請求項59に記載のレーザー装置。
【請求項61】
治療される前記領域の前記少なくとも一部の前記表面的特徴を測定する1つまたは複数の表面的特徴測定器具をさらに含み、前記自動制御システムは、前記表面的特徴測定に基づいて治療される前記領域の前記少なくとも一部の前記表面的特徴を判定し、前記走査範囲の前記形状および/またはサイズを計算するために治療される前記領域の前記少なくとも一部の形状、サイズ、および表面的特徴を融合させるようにさらに構成され、前記自動制御システムは、オペレータがその第1のモードの前記位置決めデバイスを用いて治療される前記領域の全体の回りで前記ワーク・ヘッドを向ける時にロボット・アームがその位置を継続的に測定し、その経路を記録する間に、前記カメラが前記被験者の皮膚の画像を取り込むように継続的に動作し、その後、前記自動制御システムが走査経路を最適化することによって前記走査経路を計算する、学習モードと、治療される前記領域の前記全体にわたって前記パルス・レーザー・ビームを走査するために連続する走査範囲内で前記ビーム・スキャナを動作させている間に、前記ワーク・ヘッドが、前記制御システムによって生成された前記経路に従うために前記制御システムの制御下で移動させられる走査モードとの間で切り替え可能である、請求項60に記載のレーザー装置。
【請求項62】
治療中に前記被験者の動きを検出し、測定する1つまたは複数の動き検出器をさらに含み、前記自動制御システムは前記動きがしきい量を超える場合に、前記治療レーザー・ビームの走査を自動的に補正し、または走査を停止するように構成される、請求項50~61のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項63】
パルス治療レーザーと、前記ワーク・ヘッドの前記光学入力に前記治療レーザーを接続する光学系とをさらに含む、請求項51~62のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項64】
ビーム走査デバイスによって放たれた前記パルス・レーザー・ビームは、約0.1~100psの範囲内のパルス幅および少なくとも約50GW/cm2の強度を有する、請求
項63に記載のレーザー装置。
【請求項65】
パルス治療レーザーと、治療される被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを供給するワーク・ヘッドと、前記治療レーザーを前記ワーク・ヘッドに接続する光学系とを含み、配置は、前記パルス・レーザー・ビームが、約0.1~100psの範囲内のパルス幅および少なくとも約50GW/cm2の強度を有するようになっている、皮膚科
治療のレーザー装置。
【請求項66】
前記パルス・レーザー光は、約0.5~10J/cm2、好ましくは約1~8J/cm2の皮膚の深さでのフルエンスを有する、請求項64または請求項65に記載のレーザー装置。
【請求項67】
前記レーザー光は、約0.1~1TW/cm2の強度を有する、請求項64~66のい
ずれかに記載のレーザー装置。
【請求項68】
前記レーザー光は、少なくとも約0.5ps、好ましくは少なくとも約1.0psのパ
ルス幅を有する、請求項64~67のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項69】
前記レーザー光は、約35ps未満、好ましくは約25ps未満のパルス幅を有する、請求項64~68のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項70】
前記レーザー光は、約1~15ps、好ましくは約1~10psの範囲内のパルス幅を有する、請求項64~69のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項71】
前記レーザー光は、直径約2mm以下の前記皮膚内のスポット・サイズを有する、請求項64~70のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項72】
前記レーザー光は、約0.1~2.0mm、好ましくは約0.5~1.0mmのスポット・サイズを有し、前記ワーク・ヘッドは、各パルスが前記被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、レーザー光の前記パルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含む、請求項64~71のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項73】
パルス治療レーザーと、各パルスが被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、治療される前記被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含むワーク・ヘッドと、前記治療レーザーを前記ビーム・スキャナに接続する光学系とを含み、配置は、使用中に、各パルスが、約0.1~2.0mm、好ましくは約0.5~1.0mmの範囲内の最大寸法を有するスポットの形で前記被験者の皮膚に前記ビーム・スキャナによって供給され、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスが、約0.5~10J/cm2の範囲内になるようになっている、皮膚科治療のレーザー装置。
【請求項74】
前記ビーム走査デバイスは、レーザー光の連続するパルスを用いて治療される皮膚の前記領域の異なる部分が、少なくとも約0.1mmだけお互いから分離されるように構成される、請求項73に記載のレーザー装置。
【請求項75】
パルス治療レーザーと、各パルスが被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、治療される前記被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含むワーク・ヘッドと、前記ビーム走査デバイスに前記治療レーザーを接続する光学系とを含み、配置は、各パルスが、約0.5~10J/cm2の範囲内の皮膚の深さで
のフルエンスを有するスポットの形で前記被験者の皮膚に前記ビーム・スキャナによって供給され、前記異なる部分が、少なくとも約0.1mmだけお互いから分離されるようになっている、皮膚科治療のレーザー装置。
【請求項76】
パルス治療レーザーと、各パルスが被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、治療される前記被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含むワーク・ヘッドと、ビーム走査デバイスに前記治療レーザーを接続する光学系を含み、配置は、使用中に、各パルスが、約0.5~10J/cm2の範囲内の皮膚の深
さでのフルエンスを有するスポットの形で前記被験者の皮膚に前記ビーム・スキャナによって供給され、前記ビームが、その強度が前記ビームの残りより周辺外側領域で低くなるようになっている、皮膚科治療のレーザー装置。
【請求項77】
前記ビーム・スキャナは、走査範囲にわたって前記ビームを走査する光学ビーム・ステアリング・デバイスを含む、請求項73~75のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項78】
前記走査範囲の形状は、調整可能である、請求項77に記載のレーザー装置。
【請求項79】
前記走査範囲の前記形状は、複数の事前にセットされた形状、たとえば、円形、正方形
、およびオプションで異なるアスペクト比を有する長方形から選択可能である、請求項78に記載のレーザー装置。
【請求項80】
前記走査範囲のアウトラインを示すために前記走査範囲の周囲の回りに可視照準ビームを継続的に走査する照準ビーム・デバイスをさらに含む、請求項77~79のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項81】
前記ビーム・スキャナは、前記ビームが、走査されたばかりの部分に隣接する走査される前記領域の部分をスキップすることと、前記走査された部分からより離れた部分を走査した後にそこに戻ることとを含む構成可能な走査パターンで前記走査範囲にわたって走査されるように構成される、請求項77~80のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項82】
前記ビーム・スキャナは、前記ビームが、そのそれぞれで治療される前記領域の選択された隣接しない部分が照射されるパスのシーケンスで前記走査範囲にわたって走査されるように構成される、請求項77~81のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項83】
前記ビーム・スキャナは、連続するパルスが治療される前記領域の異なる部分に当たるように、一連の直線または曲線で前記走査範囲にわたってレーザー光の前記ビームを走査するように構成される、請求項77~82のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項84】
パルス治療レーザーと、治療される被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含むワーク・ヘッドと、前記ビーム・スキャナに前記治療レーザーを接続する光学系とを含み、配置は、使用中に、各パルスが、約0.5~10J/cm2の範囲内の皮膚の深さでのフルエンスを有するスポットの形で前記被験者の皮膚
に前記ビーム・スキャナによって供給され、前記ビーム・スキャナが、連続するパルスが治療される前記領域の異なる部分に当たるように一連の直線または曲線で走査範囲にわたってレーザー光の前記ビームが走査されるように構成されるようになっている、皮膚科治療のレーザー装置。
【請求項85】
前記線は、お互いに並べて走査され、各線は、前記被験者の皮膚の隣接する部分への前記レーザー光の複数の連続するパルスを含む、請求項83または請求項84に記載のレーザー装置。
【請求項86】
隣接する線は、連続して、たとえばラスタ走査によって走査される、請求項85に記載のレーザー装置。
【請求項87】
前記線は、インターレース式に走査される、請求項85に記載のレーザー装置。
【請求項88】
各走査される線内の位置は、順序はずれで照射される、請求項83~87のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項89】
各線は、そのそれぞれで選択された隣接しない部分が照射されるパスのシーケンスで走査される、請求項88に記載のレーザー装置。
【請求項90】
前記走査範囲の前記形状は、光学、たとえばコンピュータ・ビジョンによって治療される前記領域の前記形状を獲得することによって自動的に判定される、請求項83~89のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項91】
前記パルス・ビームは、約30Hz超、好ましくは約100Hz超、オプションで200~500Hzのパルス繰り返し率を有する、請求項64~90のいずれかに記載のレー
ザー装置。
【請求項92】
前記パルス・ビームは、約1000Hz以上、たとえば2000Hz、4000Hz、または6000Hzのパルス繰り返し率を有する、請求項64~91のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項93】
各パルスは、約1~100mJ、好ましくは約1~50mJ、より好ましくは約1~30mJの範囲内のエネルギを有する、請求項64~92のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項94】
前記ワーク・ヘッドに接続された異なる波長を有する2つ以上のパルス治療レーザーを含む、請求項64~93のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項95】
配置は、使用中に、前記ワーク・ヘッドが、第1のパルス治療レーザーからの1011~1012W/cm2の強度を有する第1のビームおよび第2のパルス治療レーザーからの1
09~1010W/cm2の強度を有する第2のビームを治療される前記領域に供給するようになっている、請求項94に記載のレーザー装置。
【請求項96】
前記第1および第2のパルス・ビームのそれぞれは、0.5~10J/cm2、好まし
くは1~7J/cm2または1~8J/cm2の範囲内のフルエンスを独立に有する、請求項95に記載のレーザー装置。
【請求項97】
前記第1のレーザーは、オプションで800nmまたは1030nmの波長を有するIRレーザーであり、前記第2のレーザーは、オプションで532nmの波長を有する緑色レーザー、または1064nmの波長を有する別のIRレーザーである、請求項95または請求項96に記載のレーザー装置。
【請求項98】
レーザー光の前記ビームは、各スポット内の前記ビームの強度が周辺領域内でより低くなるように外側周辺領域内で減衰される、請求項64~81のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項99】
前記レーザーは、モード同期レーザーである、請求項64~98のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項100】
治療中の前記被験者またはワーク・ヘッドの動きを検出し、測定する1つまたは複数の動き検出器と、前記動きがしきい量を超える場合に前記レーザーの動作を停止するように構成された自動制御システムとをさらに含む、請求項64~99のいずれかに記載のレーザー装置。
【請求項101】
少なくとも30Hzのパルス繰り返し率を有するレーザー光のビームを作るように動作可能なパルス治療レーザーと、複数の別々の治療エリアと、各治療エリア内のレーザー治療装置であって、各レーザー治療装置は、治療される被験者の皮膚の領域にわたって治療レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナと光学入力とを含むワーク・ヘッドを含む、レーザー治療装置と、各レーザー治療装置の前記ワーク・ヘッドの前記光学入力に前記治療レーザーを接続する光学系とを含み、前記光学系は、前記レーザー治療装置の任意の1つに前記レーザー・ビームを選択的にステアリングするように動作可能な光機械セレクタを含む、皮膚科レーザー治療施設。
【請求項102】
各パルスは、約1~100mJのエネルギを有する、請求項101に記載の皮膚科レーザー治療施設。
【請求項103】
少なくとも30Hzのパルス繰り返し率を有するレーザー光のビームを作るように動作可能なパルス治療レーザーと、複数の別々の治療エリアと、各治療エリア内のレーザー治療装置であって、各レーザー治療装置は、治療される被験者の皮膚の領域にわたって2mm未満のスポット・サイズを有する治療レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナと光学入力とを含むワーク・ヘッドを含む、レーザー治療装置と、各レーザー治療装置の前記ワーク・ヘッドの前記光学入力に前記パルス治療レーザーを接続する光学系とを含み、前記光学系は、前記ビームを分割し、これを前記レーザー治療装置のそれぞれに並列に向ける受動光学スプリッタを含む、皮膚科レーザー治療施設。
【請求項104】
前記パルス治療レーザーは、少なくとも5mJのパルス・エネルギを有する、請求項103に記載の皮膚科レーザー治療施設。
【請求項105】
各ワーク・ヘッド内のビーム・スキャナは、各別々の治療エリアの特定の要件に従って前記分割されたレーザーを変調する高速光学変調器を含む、請求項103または請求項104に記載の皮膚科レーザー治療施設。
【請求項106】
前記ビームは、2つのレーザー治療装置/治療エリアの間で分割される、請求項103~105のいずれかに記載の皮膚科レーザー治療施設。
【請求項107】
少なくとも30Hzのパルス繰り返し率を有するレーザー光のビームを作るように動作可能なパルス治療レーザーと、複数(n個)の別々の治療エリアと、各治療エリア内のレーザー治療装置であって、各レーザー治療装置は、治療される被験者の皮膚の領域にわたって2mm未満のスポット・サイズを有する治療レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナと光学入力とを含む、レーザー治療装置と、各レーザー治療装置の前記光学入力に前記パルス治療レーザーを接続する光学系とを含み、前記光学系は、直列に配置され、前記レーザー治療装置の異なる1つに連続するパルスをステアリングするように選択的に動作可能な、治療エリアの個数と等しい複数(n個)の光学変調器を含み、各光学変調器は、n個おきのパルスを選択する、皮膚科レーザー治療施設。
【請求項108】
前記パルス治療レーザーは、100Hz超、好ましくは500Hz超、より好ましくは1000Hz超、たとえば2000Hz、4000Hz、または6000Hzのパルス繰り返し率を有する、請求項106に記載の皮膚科レーザー治療施設。
【請求項109】
各パルスは、約1~100mJのエネルギを有しなければならない、請求項107または請求項108に記載の皮膚科レーザー治療施設。
【請求項110】
各レーザー治療装置のビーム・スキャナは、約0.5~10J/cm2の範囲内の皮膚
の深さでのフルエンスを提供するパルス持続時間に前記パルスを変調する光学変調器を含む、請求項107から109のいずれかに記載の皮膚科レーザー治療施設。
【請求項111】
ワーク・ヘッド上の対応する係合部分と係合するように構成されたワーク・ヘッド係合部分と、前記ワーク・ヘッドの1つまたは複数の特性をテストする1つまたは複数のセンサとを有する支持構造を含み、前記1つまたは複数のセンサは、前記ワーク・ヘッド係合部分から離隔された位置で前記支持構造に固定され、前記ワーク・ヘッド係合部分は、前記センサに対して相対的に前記ワーク・ヘッドを安定して配置するために前記ワーク・ヘッド上の対応する前記係合部分と係合するように構成される、皮膚科レーザー治療装置のワーク・ヘッドの正しい動作をテストするテスト装置。
【請求項112】
前記1つまたは複数のセンサは、前記ワーク・ヘッドによって放たれるレーザー光のビ
ームの位置およびパワーを検出する少なくとも1つの位置関知センサを含む、請求項111に記載のテスト装置。
【請求項113】
前記ワーク・ヘッド係合部分と前記少なくとも1つのセンサとの間に挿入された穴のあるセパレータ板をさらに含み、前記セパレータ板は、前記ワーク・ヘッド係合部分に対して相対的に既知の位置でそれを通って延びる1つまたは複数の穴を有して形成され、前記セパレータ板の残りは、前記ワーク・ヘッドによって放たれるレーザー光に対して不透明であり、前記ワーク・ヘッド係合部分は、前記セパレータ板に対して相対的に既知の位置に前記ワーク・ヘッドを配置するために前記ワーク・ヘッド上の対応する前記係合位置と協力するように適合され、前記1つまたは複数のセンサは、前記1つまたは複数の穴を正しく通過する光を検出するために前記セパレータ板の前記ワーク・ヘッドと反対の側の1つまたは複数の光学パワー・センサを含む、請求項111または請求項112に記載のテスト装置。
【請求項114】
前記セパレータ板は、前記ワーク・ヘッドによって放たれたビームの発散を測定するために異なるサイズの複数の穴を有して形成される、請求項113に記載のテスト装置。
【請求項115】
前記1つまたは複数のセンサは、少なくとも1つの光学パワー・メーターを含む、請求項111~114のいずれかに記載のテスト装置。
【請求項116】
請求項111~115のいずれかに記載のテスト装置および少なくとも1つのスペーサであって、前記少なくとも1つのスペーサは、使用中に被験者の皮膚からの前記ワーク・ヘッドの間隔を設けるために前記ワーク・ヘッド上の対応する前記係合位置に取り外し可能に接続され得、前記1つまたは複数のセンサと前記ワーク・ヘッド係合部分との間の距離は、実質的に前記スペーサの長さと同一である、請求項111~115のいずれかに記載のテスト装置および前記少なくとも1つのスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望まれない皮膚色素沈着およびタトゥー・インクの除去に関し、その方法および装置およびこれに関する様々な改善を包含する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の刺青および他の色素沈着は、皮膚の真皮すなわち、通常は約2mm厚の、表皮の下にある皮膚組織の層への色素の配置を伴う。最初の注入の後に、色素は、均質化された損傷を受けた層全体を介して表皮および真皮上層を通って散乱し、表皮と真皮上層との両方で、異物の存在は、色素粒子を飲み込むように免疫系の食細胞を活性化する。回復が進行する時に、損傷を受けた表皮ははがれる(表面色素を除去する)が、皮膚の深い部分では、肉芽組織が形成され、これがコラーゲン成長によって結合組織に変換される。これは、色素がマクロファージの連続する世代に取り込まれたままになる真皮上層を、約300~700μmの間の皮膚表面の下の深さで真皮/表皮境界の真下の層に最終的に集中するよう回復させる。その場でのその存在は、安定しているが、長い期間(数十年)では、色素は、古い刺青の劣化した詳細を考慮すると、真皮のより深くに移動する。非特許文献1によれば、米国の18歳と35歳との間の人のほぼ半数が、刺青を有し、ほぼ4人に1人が、それを後悔している。その年齢グループの約6千万人の推定に基づいて、これは、約750万人が「刺青の後悔」を有することを意味する。したがって、刺青を有する多くの人が、その刺青を除去しようと努めている。
【0003】
本願の時点で、刺青除去のゴールド・スタンダード・モダリティは、Qスイッチ・レーザーを使用する刺青色素の非侵襲除去である。患者の皮膚への放射の適用は、手動で行われ、オペレータが、治療される領域にレーザー・ビームを向け、レーザーを発射する。異なるタイプのQスイッチ・レーザーが、刺青色素の特定の光吸収スペクトルに応じてタトゥー・インクの異なる色をターゲットにするのに使用される。通常、黒および他のより暗い色のインクは、Qスイッチ・レーザーを使用して完全に除去され得るが、黄色および緑などのより明るい色は、除去が非常に困難である。成功は、皮膚の色、インクの色、およびインクが適用された深さを含む様々な要因に依存する可能性がある。
【0004】
パルス・レーザー治療も、そばかす、加齢による染み、日焼けによる染み、肝斑、黒皮症、ならびにポートワイン母斑および毛細管拡張症などの表在性血管奇形などの望まれない皮膚色素沈着および色素性病変を除去するのに使用される。
【0005】
望まれない色素沈着のレーザー除去は、通常、約1~7J/cm2のフルエンスを達成
するために、約109~1010W/cm2の皮膚表面入力強度および250psを超えるパルス幅を使用して実行される。これらの入力フルエンスを生じるために、200~800mJの範囲内のパルス・エネルギが、皮膚表面で2~6mmのスポット・サイズおよび約1~10Hzのパルス繰り返し率に関連して使用される。
【0006】
そのような方法は、色選択的であり、主に吸収である組織とのレーザーの主な相互作用が、単に、ターゲット色素吸収に関する波長の関数であると仮定される。実際に、これは、選択的光熱融解の背後にある主なアイデアである(非特許文献2)。レーザー放射波長と除去されるインクまたは病変の色との間に一致が存在しなければならないと広く考えられている。たとえば、赤インクを緑(532nm)レーザーによって除去でき、緑インクが赤外線(IR)(800nm)波長を必要とすることが周知である。不一致が発生する時(すなわち、不適切なレーザー波長が使用される時)には、レーザー放射は、ターゲット色によって吸収されず、除去は達成されない。これは、単一の刺青が、異なるレーザー
波長を必要とする複数の色を有する時に特に問題である。現在のハイエンド・レーザー除去システムは、異なる刺青色に対処するために様々な波長のレーザーを提供するが、限られた成功と高いコストを有する。必要な治療の数は、8から20もの範囲にわたる可能性があり、1年と2年との間にわたる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、単一波長のレーザー光を使用して複数の異なる色を除去できる、皮膚色素沈着またはタトゥー・インクの除去の方法および装置を提供することである。
【0008】
現在の刺青除去治療システムは、複数の他の欠点に苦しむ(非特許文献3)。
・痛みが、治療の不可欠な部分であり、通常は局部麻酔が適用される。
・皮膚への損傷が激しい。腫れ、圧痛、点状出血、水泡形成、およびかゆみなどの直接の副作用は、治療の正常な直接の結果と考えられる。鋭い痛み、下肢浮腫、明らかな出血、水泡、および難治性掻痒などの有害事象が、時として発生する可能性がある。瘢痕化、文字どおりの変化、および肥大瘢痕化が、急性または慢性になり得る他の可能で一般的な複雑化である。
・広範囲の損傷のために、治療の間の回復時間が長く、少なくとも6週間以上が、完全な組織回復に必要である。
【0009】
上で述べた不利益は、色素除去の従来技術システムの幅広い採用に関する大きい障壁と考えられる。
【0010】
したがって、本発明のもう1つの目的は、被験者が望まれない皮膚色素沈着の除去のためにレーザー治療を経験する時に、被験者の経験する痛みおよび皮膚損傷の量を減らすことである。
【0011】
本発明のもう1つの目的は、望まれない皮膚色素沈着のよりすばやい除去を可能にするために、連続するレーザー治療の間の回復時間を短縮することである。
【0012】
さらに、被験者の皮膚へのレーザーの手動適用は、本来低速かつ/または不正確である。照準ビームが、オペレータに位置フィードバックを提供するのに時々使用されるが、正確な動作および高いスループットを維持することはむずかしい。治療される領域が、小さい特徴およびサイズ、たとえば、入り組んだ刺青または小さい病変のグループを有する時には、ビーム・サイズが、レーザー治療の正確さをさらに妨げる。約2mmのこれらの応用での最小の現在のビーム・サイズを使用する場合であっても、2mmより小さい特徴の領域を治療するのは、時間がかかると同時に不正確である。さらに、配置の正確さは、完全にオペレータの専門技術、器用さ、経験、および忍耐に依存し、そのすべてが、かなり変化する可能性がある。大きい色素沈着した領域をカバーする間に、オペレータは、通常、10Hzのパルス・レートを有するパルス・レーザーを使用し、領域を横切ってビームをすばやく移動する。これは、本来不正確なプロセスであり、皮膚に対する連続パルスの高い度合の不可避なオーバーラップと組織に対する付随する追加の損傷とを伴う。したがって、レーザー放射の手動配置が、一貫せず不正確で時間がかかり、そのような従来のレーザー治療法によって引き起こされる皮膚への損傷を悪化させる可能性があることは明瞭である。
【0013】
したがって、本発明のもう1つの目的は、以前の方法より正確であり、短縮された治療時間および/または低減された組織損傷につながる、刺青および他の望まれない局所的な皮膚色素沈着の除去の方法および装置を提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、皮膚科レーザー治療装置が所定の安全な動作パラメータ内
で一貫して信頼できる形で動作することをチェックするために、皮膚科レーザー治療装置をテストする方法および装置を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、本発明の以下の説明から、特に、皮膚から望まれない色素沈着を除去する既存の方法に対するその技術的利点から明白になる。
【0016】
明白になるように、当業者の望み通りに一緒にまたは別々に使用できる、本発明の複数の異なる態様がある。上で議論した従来の皮膚科治療のレーザーベースの方法に関連する様々な異なる技術的問題は、本発明の異なる態様によって対処される。本発明の各別々の態様が、必ずそれ自体で上述の問題のすべてを解決することは、意図されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Shannon-Missal,L.「Tattoo Takeover: Three in Ten Americans Have Tattoos, and Most Don't Stop at Just One」(2016年2月10日)Harris Pollから検索:https://theharrispoll.com/tattoos-can-take-any-number-of-forms-from-animals-to-quotes-to-cryptic-symbols-and-appear-in-all-sorts-of-spots-on-our-bodies-some-visible-in-everyday-life-others-not-so-much-but-one-thi/
【非特許文献2】Anderson,R.R.,& Parrish,J.A.「Selective photothermolysis: precise microsurgery by selective absorption of pulsed radiation」(1983年)Science、220(4596)、524~527
【非特許文献3】Goldman,M.P.,Fitzpatrick,R.E.,Ross,E.V.,Kilmer,S.L.,& Weiss,R.A.(編集)「Lasers and Energy Devices for the Skin(第2版)」(2013年)Taylor & Francis Group,LLC。
【発明の概要】
【0018】
今や、驚くべきことに、皮膚内の色素またはタトゥー・インクとのレーザー相互作用が、波長の関数であるだけではなく、むしろ、波長および/またはパルス持続時間および/または強度の関数であることがわかっている。具体的には、レーザー光の強度を、従来技術で使用されるものに類似するフルエンス値すなわち約1から7J/cm2を有する約1
011~1012W/cm2まで高めることが、単一のレーザー波長を使用する異なる色の効
率的除去を獲得できることがわかっている。レーザー光の強度が、すべての色、特に可視色と大きく相互作用するために十分に高くなる必要があることがわかっている。非線形光学破壊の鋭いしきい値とは対照的に、生きている皮膚内の色素に関して、同一の波長を使用して複数の色と相互作用するのに使用できる広い範囲の強度があることがわかっている。
【0019】
したがって、本発明の第1の態様では、レーザー光のパルス・ビームを用いて治療される被験者の皮膚の領域を照射することを含む皮膚科治療の方法であって、レーザー光は、少なくとも約50GW/cm2の強度および約0.1~100psの範囲内のパルス幅を
有することを特徴とする方法が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、適切に、パルス・レーザー光を、当業者に既知の種類のモード同期レーザーによって作ることができる。
【0021】
各治療内で、被験者の皮膚の治療される領域は、通常は1回だけ照射される。通常、治療される領域は、各パルスが被験者の皮膚に入射するレーザー光のスポットより大きい。したがって、領域全体を治療するために、ビームを、下でより詳細に説明するように、ビーム自体または治療される領域のいずれかを移動することによって領域上で移動することができ、その結果、連続するパルスが、領域の別々の部分に当たるようになり、各部分は、ビームによって作られるレーザー光のスポットのサイズと実質的に同一のサイズを有する。領域の各部分は、単一の治療内でレーザー光の1つのパルスを受け取る。単一の治療内でパルスによって照射される皮膚の領域の別々の部分は、好ましくはお互いとオーバーラップしない。
【0022】
適切に、パルス・レーザー光は、皮膚の深さで約0.5~10J/cm2のフルエンス
を有することができる。いくつかの実施形態では、皮膚の深さでのフルエンスを、約1~8J/cm2または1~7J/cm2とすることができる。「皮膚の深さ」は、本明細書では、色素が通常真皮内に配置される深さ、すなわち、皮膚の表面(表皮)から約200~1000μm下を意味する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、皮膚科治療は、純粋に美容とすることができ、たとえば、皮膚色素沈着もしくはタトゥー・インクの除去または非医療目的の他の皮膚条件の治療にあるものとすることができる。本発明に従って治療できる皮膚条件は、表在性血管奇形(ポートワイン母斑)、顔毛細管拡張症、血管腫、化膿性肉芽腫、カポジ肉腫、およびシヴァット多形皮膚萎縮症を含む血管病変を含む。
-そばかすと、なんらかの先天性色素細胞性母斑、青色母斑、大田/伊藤母斑、およびベッカー母斑を含む母斑とを含む色素性病変。
-顔のしわ、にきび瘢痕、ケロイド、肥厚性瘢痕、および日焼けで痛んだ皮膚
【0024】
しかし、いくつかの実施形態では、本発明の方法を医療目的に使用することができる。具体的には、本発明の方法を、たとえば、にきび、炎症性皮膚疾患、良性および悪性の皮膚腫瘍のような、皮膚条件その医療治療に使用することができる。
【0025】
皮膚色素沈着、タトゥー・インク、または他の皮膚条件の「除去」は、全体的なまたは部分的な除去を意味する。通常、病変または刺青は、単一の治療によっては除去されないが、その着色の強度は下がる。完全な除去は、本明細書でより詳細に説明するように、ある期間にわたる複数の連続する治療を必要とする可能性があり、色は、各治療の後に徐々に薄くなる。皮膚からの色の完全な撤去(裸眼に対する)は、有限回数のセッションの後に達成され得る。セッションの回数は、ターゲット色によって変化する可能性があるが、どの場合でも、ある色から次の色へのセッションの回数は、約2倍を超えては変化しない。下でより詳細に説明するように、本発明の方法の利点は、病変またはインクの完全な除去の合計時間を短縮するために、所与の個人に対して治療をより頻繁に実行する能力である。
【0026】
本発明による高強度パルス・レーザー光の使用は、色素またはインクのある範囲の色、具体的には可視色を、光の単一の波長を使用して除去することを可能にすることができる。これは、レーザーの波長が除去される病変または刺青の色に厳密に一致される以前の方法と鋭い対照をなす。本発明のいくつかの実施形態では、レーザー光の強度は、色素または病変の少なくとも3つの異なる色の除去を得るために、所与の波長およびフルエンスに関して選択され得る。色を、たとえば、黒、緑、黄、赤、およびオレンジから選択することができる。有利なことに、レーザーの強度を選択して、たとえば紫およびピンクを含む複数の色の除去を得ることができる。所与の波長に関して、複数の選択された色の除去に必要なレーザー光の強度を、一定のフルエンスでレーザー光の強度を高めながら異なるインク色/皮膚色素の反応しきい値を測定することによって、経験的に選択することができ
る。「ワースト・ケース」色すなわち、除去が最もむずかしい色を除去するのに必要な最高強度を見つけることによって、選択された色のすべてを包含する適切な作業強度を識別することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、レーザー光の作業強度を選択して、すべてのターゲット色が吸収の類似する非線形プロセスのために吸収する/吸収性になるようにするために十分な強度を導入することができる。
【0028】
したがって、いくつかの実施形態では、レーザー光は、約0.1~1TW/cm2の強
度を有することができる。
【0029】
したがって、本発明の特定の態様によれば、レーザー光のパルス・ビームを用いて治療される被験者の皮膚の領域を照射することを含む皮膚科治療の方法であって、レーザー光は、少なくとも約50GW/cm2の強度のパルス幅を有することを特徴とする方法が提
供される。
【0030】
適切に、レーザー光は、約0.5ps、好ましくは少なくとも1.0psのパルス幅を有することができる。いくつかの実施形態では、レーザー光は、約35ps未満、好ましくは約25ps未満のパルス幅を有することができる。したがって、レーザー光は、約1~15ps、好ましくは約1~10psの範囲内のパルス幅を有することができる。
【0031】
したがって、本発明の異なる態様によれば、レーザー光のパルス・ビームを用いて治療される被験者の皮膚の領域を照射することを含む皮膚科治療の方法であって、レーザー光は、約0.1~100psの範囲内のパルス幅を有することを特徴とする方法が提供される。
【0032】
有利なことに、レーザー光は、直径約2mm未満の皮膚上のスポット・サイズを有することができる。いくつかの実施形態では、レーザー光は、約0.1~1.5mm、通常は約0.5~1.0mmのスポット・サイズを有することができる。そのようなスポット・サイズは、以前の方法で使用される2~6mmのスポット・サイズより小さい。同一のフルエンスに関して、より小さいスポット・サイズは、より大きいスポット・サイズと比較してより少ないエネルギが皮膚に入力されることを必然的にもたらす。しかし、所与のフルエンスに関して、多少単純化された分析の結果、レーザー光のパルスは、スポット・サイズにかかわりなく、レーザー光によって照射される皮膚の体積内の温度の実質的に同一の上昇を生じる(複雑な組織構造および光の相互作用のために、より高く上昇した温度の小さい体積がある可能性がある)。たとえば、約2.5J/cm2のフルエンスを有する
レーザー・パルスは、5mmまたは0.5mmのどちらのスポット・サイズが使用されるのかにかかわりなく、約15℃の温度上昇をもたらす。相対的に低いエネルギの小さいスポット・サイズを使用することの利点は、相対的に高いエネルギのより大きいスポットと比較して、皮膚の温度が照射後によりすばやく下がることである。
【0033】
皮膚が高温にさらされる時に、皮膚が組織損傷(たとえば、凝固)なしで耐えることのできる高温と皮膚が高温にさらされる時間の長さとの間に反比例関係があることが既知である。研究は、露出時間が約6時間を超えない限り、44℃の表面温度が、やけどを生じないことを示した。44℃から51℃の範囲の温度では、皮膚壊死の速度は、各半分の摂氏温度の約2倍になる。70℃以上では、皮膚壊死を生じるのに必要な露出時間は、1s未満である(Pierce County Emergency Medical Services)。これらの数字は、皮膚に適用された極端な熱源を表す。埋め込まれた色素吸収のために内部から組織を加熱するレーザー放射の場合に、これらの数字は、楽観的である可能性が高く、損傷がより早く発生する可能性がある。
【0034】
したがって、適切に、被験者の皮膚に入射するレーザー光の各パルスのフルエンスおよびスポット・サイズは、フルエンスが約0.5-10J/cm2の範囲内に含まれるよう
に制御されなければならず、スポット・サイズは、皮膚への損傷が高温で生じるしきい持続時間より長く44℃を超える高温に皮膚がさらされない照射の後に十分にすばやく皮膚が冷えるようになっている。
【0035】
したがって、本発明の第2の態様によれば、治療される被験者の皮膚の領域にわたってレーザー光のパルス・ビームを移動することを含み、各パルスは、スポットの形で治療される領域内の被験者の皮膚の異なる部分に突き当たり、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスは、約0.5~10J/cm2の範囲内であり、各スポットのサイズは、高温で皮膚
への損傷が生じるしきい持続時間より長く44℃を超える高温に皮膚がさらされない十分なすばやさで皮膚が冷えるようになっていることを特徴とする、皮膚科治療の方法が提供される。
【0036】
適切に、上で述べたように、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスを、約1~8J/cm2または1~7J/cm2の範囲内とすることができる。
【0037】
適切に、スポットのサイズを、皮膚の熱緩和時間(皮膚の温度がその初期温度上昇の半分だけ下がるのに要する時間と定義することができる)が、皮膚への損傷が引き起こされる前に皮膚が耐えることのできる時間の長さより短くなるようなものにすることができる。この文脈での「初期」温度上昇は、レーザー光のパルスの受け取りの後に皮膚の達する最高温度を意味する。通常、熱緩和時間は、約0.1sから約8sまでの範囲内とすることができる。たとえば、いくつかの実施形態で、被験者の皮膚上にレーザー光によって作られるスポットのサイズは、皮膚の温度が約51℃を超えて上昇してはならず、約6sを超えない緩和時間を提供する。
【0038】
上で述べたように、いくつかの実施形態では、スポットは、約2mm未満の直径を有することができる。一般に、スポットを、円形とすることができるが、他の実施形態では、スポットは、約2mm未満の最大寸法を有する異なる形状を有することができる。
【0039】
したがって、本発明の第3の態様によれば、 治療される被験者の皮膚の領域にわたってレーザー光のパルス・ビームを移動することを含み、各パルスは、スポットの形で治療される領域内の被験者の皮膚の異なる部分に突き当たり、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスは、約0.5~10J/cm2の範囲内であり、各スポットは、約2mm未満の最
大寸法を有することを特徴とする、皮膚科治療の方法が提供される。
【0040】
上で説明したように、各スポットは、1.5mmまたは1mmの最大寸法を適切に有することができる。
【0041】
皮膚の深さでの各パルスのフルエンスは、上で述べたように、約1~8J/cm2また
は1~7J/cm2の範囲内とすることができる。
【0042】
適切に、レーザー光は、約1~50mJの範囲内で皮膚にエネルギ・パルスを入力することができる。いくつかの実施形態では、各パルスは、約1~30mJの範囲内のエネルギを有することができる。たとえば、パルス・エネルギを、約2.5mJ、5mJ、10mJ、15mJ、または20mJとすることができる。
【0043】
原理的に、ますます小さくなるパルス・エネルギは、非常に速い熱拡散時間を生じると考えることができる。実際に、パルス・エネルギに対する非常に強い下側キャップがある
。効果的な治療のパルス・エネルギおよび要求されるフルエンスを与えられて、パルス有効面積(スポット・サイズ)を、次のように計算することができる。
面積=パルス・エネルギ/要求されるフルエンス
【0044】
生物組織では、明白な散乱が、異なる細胞、細胞小器官、ならびに、血管および組織型などのマクロ特徴の屈折率の不規則性によって引き起こされることが周知である。この効果は、レーザー・ビームに対する拡散効果に近似され得るので、熱拡散に類似する。たとえば小さく丸い均一なスポットとして皮膚の表面に当たるレーザー放射は、横向き/放射状に拡散し始め、皮膚のより深くに伝搬する時に、ガウス様形状になる。貫通の深さが大きければ大きいほど、拡散の幅が大きくなり、平均フルエンスが小さくなる。所与の深さおよび無限に小さい(すなわち、狭い)ビームに関して、この効果は、通常の長さスケールのガウシアン「スミア」を生じる。有限の入力ビーム・サイズが、この長さスケールにより近くなる時に、組織の最上部の入力フルエンスは、下に伝搬する間にかなり減少し始める。これは、最小の有用なスポット・サイズを制限し、これによって、単一パルスの最も高速の達成可能な熱緩和時間を制限する。したがって、適切に、スポットは、少なくとも約0.1mm、通常は少なくとも約0.25mmの直径または他の最小寸法を有することができる。
【0045】
皮膚の温度がレーザー光のパルスを用いる照射の後によりすばやく下がることを可能にするために本発明による小さいスポット・サイズを使用することによって、被験者の経験する痛みのレベルおよび皮膚損傷の広がりを、大幅に低減することができる。これは、色素除去のプロセスを被験者にとってより許容できるものにするだけではなく、より頻繁な治療をも可能にすることができ、これによって、刺青または他の望まれない色素沈着の完全な除去に要する時間を加速する。たとえば、色素除去の従来のレーザー法は、約6~8週間の、連続する治療の間の休息期間を必要とするが、本発明の方法は、治療を1~2週間おき、時にはより短い期間で安全に繰り返すことを可能にすることができる。これは、色素除去プロセスの大幅な加速を表す。
【0046】
したがって、本発明の第4の態様によれば、レーザー光のパルス・ビームが、各パルスが治療される領域内の被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、治療される被験者の皮膚の領域にわたって移動される、複数の連続する皮膚科治療を含み、各パルスは、約0.5~10J/cm2の範囲内のフルエンスを有し、高温での皮膚への損傷が生じるし
きい持続時間より長く44℃を超える高温に皮膚がさらされないのに十分に小さいスポットの形で被験者の皮膚に突き当たり、皮膚科治療は、1~3週間おきに繰り返される、色素除去の方法が提供される。
【0047】
各治療内で、被験者の皮膚の領域の各別々の部分がレーザー光の1つのパルスだけを受け取るように、領域を照射することができる。いくつかの実施形態では、複数の治療を同一の日に実行し、これに1~3週間の休息期間を続けることができる。適切に、最大4回の治療、より通常は1~3回の治療を同一の日に実行することができる。いくつかの実施形態では、2回の治療を同一の日に実行することができる。
【0048】
適切に、休息期間を1~2週間とすることができる。いくつかの実施形態では、特定の被験者の休息期間を、ダーモスコピによって判定することができる。具体的には、被験者の皮膚に対する変更を治療の後に観察して、被験者がさらなる治療を受ける準備ができている時を判定することができる。監視できる皮膚に対する変更は、たとえば、乱切、皮膚損傷、および/または皮膚血管活動を含む。そのような技法は、技量を有する皮膚科医に周知である。
【0049】
いくつかの実施形態では、光の強度は、可視スペクトル内の複数の色と相互作用するた
めに、本発明に従って選択され得る。したがって、レーザー光は、上で説明したように、1011~1012W/cm2の範囲内の強度を有することができる。しかし、本発明の現在
の態様によれば、レーザー光のより低い強度を、単一の色との相互作用に使用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、レーザー光の強度を、109~1010W
/cm2の範囲内とすることができる。
【0050】
皮膚の深さでの各パルスのフルエンスを、約1~8J/cm2または約1~7J/cm2の範囲内とすることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、2つ以上の異なる波長のレーザー光を、色素またはインクのある色に対する高められた有効性のために組み合わせて使用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、より高強度のレーザー光の第1のパルス・ビームを、より低強度のレーザー光の第2のパルス・ビームと組み合わせて使用することができる。第1のビームは、1011~1012W/cm2の強度を有することができ、第2のビームは、1
09~1010W/cm2の強度を有することができる。上で説明したように、ビームは、同一のまたは同様のフルエンスを有することができる。たとえば、第1および第2のパルス・ビームのそれぞれが、上で説明したように0.5~10J/cm2の範囲内のフルエン
スを独立に有することができる。たとえば、一部の被験者に関して、他の色とは別々に赤の色素をターゲットにすることが有利であることがわかっている。したがって、一実施形態では、高強度赤外線(IR)レーザーを、低強度緑色レーザーと組み合わせて使用することができる。別の実施形態では、相対的に高強度のものと相対的に低強度のものという、2つのIRレーザーを使用することができる。適切に、高強度IRレーザーは、800nmまたは1030nmの波長を有することができる。相対的に低強度のIRレーザーは、1064nmの波長を有することができる。緑色レーザーは、532nmの波長を有することができる。本発明によれば、レーザー光の連続パルスを、上で説明したように領域の別々の部分に適用することができる。各パルスが被験者の皮膚の異なる部分に当たるように、ビームを治療される領域にわたって徐々に移動することができる。スポットが、もしも治療される領域を完全に充てんし、単一パルスの熱緩和時間よりはるかに短い時間以内に全領域がカバーされるほどにパルス繰り返し率が高い場合には、これが、実際には、単一の大きいスポットを作成し、熱拡散が、大きい高エネルギ・スポットの熱拡散に類似するであろうことを了解されたい。しかし、いくつかの実施形態では、本発明は、レーザー・スポットの間の計画的な、設計された、または制御された間隔を組み込むことを包含する。
【0052】
したがって、本発明によれば、レーザー光の連続するパルスを用いて治療される皮膚の領域の別々の部分は、お互いから小さい距離だけ有利に分離され得る。適切に、レーザー・スポットの間に制御された間隔を設けることができる。いくつかの実施形態では、たとえば、別々の部分を、少なくとも約0.1mmだけ分離することができる。
【0053】
したがって、本発明の第5の態様では、治療される被験者の皮膚の領域にわたってレーザー光のパルス・ビームを移動することを含み、ビームは、被験者の皮膚上にレーザー光のスポットを形成し、連続するパルスは、約0.5~10J/cm2の範囲内の皮膚の深
さでのフルエンスを伴って領域の異なるそれぞれの部分に当たり、部分は、少なくとも約0.1mmだけお互いから分離される、皮膚科治療の方法が提供される。
【0054】
したがって、別々の部分は、小さいスポットのアレイに対応することができる。お互いからわずかに離れた小さいスポットのそのようなアレイを使用することの利点は、隣接するスポットの間に皮膚の小さい治療されないパッチがあることである。熱緩和を加速し、損傷を減らすと同時に、これらの小さいパッチは、治療され、局所的な損傷を被った皮膚の回復プロセスを実質的にスピード・アップする手段になることができる。隣接するスポ
ットの間のパッチは、単一の治療内では治療されないが、一連の治療にまたがって、治療される領域内のスポットが、治療ごとに正確に同一の位置にはならず、ある治療で治療されないパッチが、別の治療で治療されることを理解されたい。高速回復が、これを、全体的治療時間に関する好ましいトレード・オフにする。
【0055】
本発明による別のオプションは、着信レーザーの均一な円形放射プロファイルからそれ、たとえばガウシアン・プロファイルなどの勾配を導入することである。これは、放射が実質的により低いビームのエッジで、隣接するスポットが治療の領域全体をカバーする場合であっても、減らされた損傷が発生するか損傷が発生しないことを保証することができる。適切に、レーザー光のビームは、外側周辺領域で減衰され得、各スポット内のビームの強度が、外側周辺領域内でフェザリングされるようになる。円形スポットに関して、外側周辺領域を環状とすることができる。外側周辺領域内の強度は、外側周辺領域とビームの残りとの間に強度のステップ変化があるように、均一とすることができる。代替案では、外側周辺領域内の強度は、強度がビームの外側に向かって徐々に低くなるように、徐々に変化させることができる。
【0056】
したがって、本発明の第6の態様では、各パルスが、被験者の皮膚内にレーザー光のスポットを作り、約0.5~10J/cm2の範囲内のフルエンスを有するレーザー光のパ
ルス・ビームを用いて治療される被験者の皮膚の領域を照射することを含み、レーザー光のビームは、連続するパルスが領域の異なる部分に当たるように、治療される領域にわたって移動され、ビームは、その強度が、周辺外側領域でその他の部分より低くなるように減衰される、皮膚科治療の方法が提供される。
【0057】
したがって、いくつかの実施形態では、レーザー光のスポットが、お互いにオーバーラップすることができる。いくつかの実施形態では、レーザー・スポットは、治療される領域全体をカバーすることができる。
【0058】
レーザー光のパルスを照射される治療される領域の各部分からできる限り早く熱が放散することを可能にする本発明による別のオプションは、治療される部分から熱が放散することを可能にするために、直接に連続するパルスが、それらの間に十分な時間遅延を有することを保証することである。いくつかの実施形態では、これを、適切に低いパルス繰り返し率を使用することによって達成することができる。これに関して、約1~10Hzの範囲内のパルス繰り返し率を使用することができる。
【0059】
これらのオプションのすべてで、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスを、約1~8J/cm2または1~7J/cm2の範囲内とすることができる。
【0060】
いくつかの実施形態で、レーザー光のパルスを、隣接する行が連続しては照射されないことを保証するシーケンスに従って照射されるスポットの複数の隣接する行を含むパターンで皮膚に向けることができる。たとえば、一連の連続するパルスを、一方の線で(すなわち、スポットの行として)皮膚に向けることができ、その直後に、さらなる一連のパルスを、他方の線のスポットのどれもが一方の線のスポットのどれにも隣接しないように、一方の線から離隔された別の線で皮膚に向けることができる。これは、一方の線のスポットからの熱が、少なくとも一方の線をトラバースする方向で散逸する時間を有することを保証する。いくつかの実施形態では、治療される領域は、漸進的な直線または曲線のパスのシーケンスで治療される領域に対して相対的にレーザー・ビームを移動することによって照射され得、各パスは、治療される皮膚の領域の隣接する部分の線を治療するために皮膚にこのように突き当たるレーザー光の複数のパルスの持続時間を有する。部分の線は、治療される領域をカバーするためにお互いに隣接する。本発明によれば、レーザーの連続するパスのシーケンスは、隣接する線が連続しては治療されなくなるものとすることがで
きる。その代わりに、各連続するパスは、スポットの直前の線に隣接しないスポットの線を作成することができ、前の線に隣接するスポットの線は、間の1つまたは複数の隣接しない線を作った後に限って作られ得る。
【0061】
したがって、適切に、ビームを、治療される領域にわたって走査することができる。160mm焦点距離で100x100mm2の大きい走査範囲を有するレーザー・スキャナ
が、たやすく入手可能である。スキャナ焦点距離およびサイズの選択は、要求される走査範囲面積対サイズ(重量)のトレード・オフである。走査機構を、上で説明した種類のより小さいスポット・サイズおよび下でより詳細に説明するより高いパルス繰り返し率を用いる使用に有利とすることができる。これは、レーザー・スポットの均一な適用および速いカバレッジを可能にすることができる。さらに、配置の正確さを、被験者の皮膚上でのレーザー・ビームの自動化された走査によって達成することができる。小さいレーザー・スポットを使用することによって、被験者の皮膚上の小さい特徴を正確に治療することができる。当業者に既知の任意の適切なレーザー走査システムを、この目的に使用することができる。適切なビーム走査デバイスの実施形態を、下でより詳細に説明する。
【0062】
いくつかの実施形態では、放射を、関節アームを介して被験者の皮膚に供給することができる。関節アームの自由端を、ロボット、x-yステージ、x-y-zステージ、またはレーザーのパルス・レートおよび範囲の要求されるサイズを伴ってレーザー・ビームを同期して正確に走査するのに十分な自由度を有する任意の他の適切な手段によって保持することができる。治療される領域が配置される被験者の身体の部分を、任意の適切な装置によって静止して保持することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、レーザー・ビーム自体を、光学ビーム・ステアリングの手段によって、治療される領域にわたって走査することができる。たとえばガルバノメトリック・ミラー(galvanometric mirror)または音響光学変調器など、当業者に既知のビーム・ステアリングの任意の適切な手段を使用することができる。
【0064】
本発明のこの態様の利点は、レーザー光のビームを、被験者の皮膚の構成可能な領域にわたって走査できることである。走査されるビームは、走査範囲を画定することができる。いくつかの実施形態では、走査範囲は、たとえば長方形または円形の、固定された形状を有することができる。いくつかの実施形態では、走査範囲の形状を、調整可能とすることができる。たとえば、走査範囲の形状を、複数の事前にセットされた形状、たとえば円形、正方形、および長方形から選択可能とすることができる。たとえば異なるアスペクト比を有する、複数の異なる長方形範囲形状を提供することができる。いくつかの実施形態では、下でより詳細に説明するように、走査範囲の形状を、治療される領域の形状に従って自動的に構成可能とすることができる。走査範囲は、約10mmまたは約12mmまでの最長寸法を有することができる。適切に、走査範囲は、約5mmまでの最長寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、範囲サイズを調整可能とすることができる。範囲サイズを、連続的に調整可能とすることができ、または、複数の事前にセットされた範囲サイズ、たとえば1mm、2mm、3mm、4mm、および5mmから選択することができる。
【0065】
適切に、レーザー・ビームを、ワーク・ヘッドを介して供給することができる。いくつかの実施形態では、走査範囲は、治療される領域全体をカバーすることができる。しかし、走査範囲のサイズより大きい領域の治療に関して、ワーク・ヘッドを、治療される領域に対して相対的に移動可能とすることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、ワーク・ヘッドを、上で説明した種類の関節アームの端で担持することができる。スキャナ・ヘッドを、手動で移動可能とすることができる。いくつかの実施形態では、下で詳細に説明するように、スキャナ・ヘッドを自動的に移動することができる。代替案では、スキ
ャナ・ヘッドを静止とすることができ、治療される領域を、制御された形でスキャナ・ヘッドに対して相対的に移動することができる。たとえば、被験者を、ステージによってワーク・ヘッドに対して相対的に移動することができる。適切に、ステージを、たとえば関節アームの手段に類似する手段を使用して、自動化することができる。この場合に、被験者または少なくとも治療される領域が配置される被験者の身体の部分を、たとえばワーク・ヘッドに対する相対的な制御された移動のために配置された可動ステージなどの指示部材上で不動に支持することができる。
【0066】
有利なことに、ワーク・ヘッドは、使用中のレーザー・ビームの方向に実質的に平行な方向でワーク・ヘッドから離れて延びる固定長または調整可能な長さのスペーサを含むことができる。スペーサは、適切に、治療レーザー・ビームを遮らずにこれに並んで延びる細長い部材を適切に含むことができる。たとえば、細長い部材は、指様部材またはレーザー・ビームを囲む管状もしくは半管状部材を含むことができる。細長い部材は、被験者の皮膚に接触する、ワーク・ヘッドから離れた滑らかな遠位端を有することができる。したがって、スペーサが、ワーク・ヘッドを治療される皮膚の領域から一定の距離に維持するように働く。適切に、スペーサは、ワーク・ヘッドから取り外し可能とすることができる。スペーサ部材は、清潔で無菌のスペーサを治療される患者ごとに使用できるようにするために、使い捨てまたは洗浄可能とすることができる。
【0067】
本発明に従って複数の小さいスポットを走査することのさらなる利点は、走査される領域の全体的な形状を、最適化された治療のために制御できることである。以前の方法では、単一の大きいスポットが、通常は円形または長方形であり、その全体的なサイズは制御できるが、その形状は制御できない。対照的に、本発明のいくつかの実施形態では、走査領域または走査範囲を、任意の所望の形状にプログラムすることができる。走査範囲は、治療される領域の形状に従って適合され得る選択可能な「ブラシ」サイズおよび/または形状を有することができる。これは、たとえば、長く細い刺青の線、たとえば通常は多数の水平線および垂直線を有するテキスト文字を除去するために細長い形状を走査するのに有益である可能性がある。走査範囲内で、被験者の皮膚の領域の対応する部分が、すばやく1回照射される。必要な場合には、領域全体がカバーされるまで、上で説明したように、走査ヘッドを治療される領域の別の部分に移動することなどができる。単に小さい円形または正方形のスポットを使用することと比較したスループット利益は、かなりのものになる可能性がある。
【0068】
したがって、本発明は、治療に関するターゲット領域の形状を考慮することによる、治療効力の最適化および治療持続時間の最小化のための任意の(ブラシ)形状の走査パターンの使用を包含する。調整可能なサイズおよび形状の走査範囲のさらなる利点は、付帯的な組織損傷を減らし、したがって回復時間を短縮するために刺青されていない皮膚または色素沈着していない皮膚のレージングを最小化できることである。
【0069】
適切に、可視照準ビームは、走査範囲のアウトラインを示し、これによって上で説明した形で治療される領域にわたってレーザー・ビームを案内する際にオペレータを支援するために、たとえば走査によって、治療ビームによって画定される走査範囲の周囲の回りに継続的に向けられ得る。照準ビームが、被験者の皮膚に対して影響を有してはならず、治療ビームの位置の皮膚上の可視指示を提供するように働くのみであることを理解されたい。オペレータが、走査範囲が被験者の皮膚に対して相対的に正しく配置されたことに満足した後に、オペレータは、範囲を横切って走査するためにパルス・レーザー・ビームを選択的に操作することができる。
【0070】
当業者は、治療される領域にわたってレーザー・ビームを走査する上述の技法の任意の組合せを使用できることを了解しよう。
【0071】
いくつかの実施形態では、スマート走査技法を使用して、被験者の皮膚の隣接する部分の照射の間の最大遅延を保証し、これによって熱負荷を減らすことができる。したがって、ビームは、走査されたばかりの部分に隣接する走査される領域の部分をスキップすることと、走査された部分からより遠い部分を走査した後にそこに戻ることとによって、熱負荷を減らす構成可能な走査パターンで走査範囲または治療される領域にわたって走査され得る。適切に、ビームは、一連の直線または曲線として、治療される領域を横切って走査され得る。
【0072】
したがって、本発明の第7の態様では、各パルスが、被験者の皮膚内にレーザー光のスポットを作り、約0.5~10J/cm2の範囲内のフルエンスを有する、レーザー光の
パルス・ビームを用いて治療される被験者の皮膚の領域を照射することを含み、レーザー光のビームは、連続するパルスが治療される領域の異なる部分に当たるように、一連の直線または曲線で治療される領域にわたって走査される、皮膚科治療の方法が提供される。
【0073】
いくつかの実施形態では、ビームを、上で説明した種類の走査範囲を横切って走査することができる。治療される領域または走査範囲をカバーするために、線を、お互いに並べて走査することができる。各線は、上で説明したようにオーバーラップしてもオーバーラップしなくてもよい被験者の皮膚の隣接する部分へのレーザー光の複数の連続するパルスを含むことができる。適切に、隣接する線を、連続して走査することができる。いくつかの実施形態では、ビームを、治療される領域にわたってラスタ走査することができる。代替案では、線をインターレースすることができる。別の実施形態では、各走査される線内の諸部分を、順序はずれで照射することができる。したがって、各線を、選択された隣接しない部分が照射されるパスのシーケンスで走査することができる。たとえば、各線内で、すべての部分が完全なシーケンス中に照射されるまで、n個おきの部分を、第1の部分から始めて線の端まで照射することができ、次に、n個おきの部分は、第1のランで照射されなかった第2の部分から始まるなどである。いくつかの実施形態では、ビームは、複数の隣接する行を含むパターンで走査範囲にわたって走査され、各行は、レーザーのそれぞれのパルスによって照射される被験者の皮膚の隣接する部分の線を含む。行のすべてを、複数(n)回走査することができ、行のすべてを、いずれかの行が繰り返される前に走査することができる。所与の行の各走査内では、n個おきの部分だけを照射することができ、隣接する行のn個おきの部分は、各行のn個おきの位置が隣接する行のn番目の位置と隣接しなくなるようにするために、オフセットされ得る。行が走査されるたびに、以前に照射されていない異なるn番目の位置が照射される。行のn回の走査の後に、位置のすべてを照射することができ、これによって、走査範囲全体がカバーされる。たとえば、各行を、2回走査することができ、各行内で、2つおきの位置を、レーザーを用いて照射することができ、各行の2つおきの位置は、隣接する行(1つまたは複数)の2つおきの位置に関してオフセットされ、したがってこれに隣接せず、これによって、走査範囲を、「チェッカー・ボード」タイプのパターンで走査することができる。走査パターンを、円形/環状、らせん、四辺形、同心円状の輪からなる、または治療プロセスを最適化する任意の他の形状とすることができる。
【0074】
被験者の皮膚の複数の小さい部分に関して要求される走査時間が、以前の方法による単一のより大きいスポットの走査時間より累積的に長くなることを了解されたい。しかし、本発明による小さい(サブミリメートル)スポット・サイズの使用によって引き起こされる増加した走査時間は、レーザー光のビームのパルス繰り返し率を高めることによって改良され得る。したがって、適切に、パルス・ビームは、約30Hzを超えるパルス繰り返し率を有することができる。いくつかの実施形態では、パルス・ビームは、約100Hzを超えるパルス繰り返し率を有することができる。いくつかの実施形態では、パルス繰り返し率を、1KHz以上までとすることができる。たとえば、いくつかの実施形態で20
00Hz、4000Hz、または6000Hzのパルス繰り返し率を有するレーザーを使用することができる。治療に要求される全体的な時間を増やす被験者の治療の他のステップ(たとえば、オペレータによるレーザーの配置)の不可避な包含を考慮すると、約200~500Hzの範囲内のパルス繰り返し率が、従来の方法と比較してスループットの本質的消失がないことをほとんどの場合に保証するのに十分であることがわかっている。
【0075】
したがって、上で説明したように、本発明は、上で説明したように本発明の1つまたは複数の態様に従って治療される領域にレーザー光のパルス・ビームを供給するために治療される被験者の皮膚の領域に対して相対的に走査ヘッドを位置決めすることを包含する。レーザー・ビームを、調整可能なサイズおよび/または形状の走査範囲を横切って自動的に走査することができ、走査範囲のアウトラインを、照準ビームを使用して、被験者の皮膚上の範囲の正しい位置を保証するためにオペレータに示すことができる。レーザーを発射する際に、範囲内の被験者の皮膚の各部分を、レーザー光の1つのみのパルスを用いて照射する。たとえば5mmのサイズおよび0.1mmのスポット・サイズを有する正方形の走査範囲に関して、約3000個のパルスが、範囲全体を横切ってビームを走査するのに必要であることを理解されたい。たとえば1mmのより大きいスポット・サイズに関して、約30個のパルスだけが必要である。一般に、走査範囲全体を照射するのに必要なレーザーのパルスの個数は、1個から約10000個、より典型的には約100個から約1000個の範囲にわたる可能性がある。100Hzから1KHzまでのパルス繰り返し率では、範囲全体を走査するのに必要な時間は、約1msから約100s、より典型的には約100msから約10sである可能性がある。走査範囲を走査した後に、走査ヘッドは、要求される場合にすなわち、治療される領域が範囲より大きい場合、または治療される領域が、1つの位置の走査ヘッドを用いてその全体を治療され得ないように輪郭を描かれている場合に、被験者の皮膚の異なる部分の上に再位置決めされ得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、走査範囲の形状を、光学手段または他の手段を使用して、治療される領域の形状を獲得することによって、自動的に計算することができる。たとえば、治療される領域の形状を、カメラおよび/またはマシン・ビジョンによって判定することができる。光学トレースを使用して、レーザーの操作の前の検証のために被験者の皮膚に関する走査範囲の計算された形状をオペレータに表示することができる。たとえば、光学トレースは、計算された走査範囲のアウトラインを示すことができる。代替案では、計算された範囲形状および被験者の皮膚上のその位置を、適切なスクリーン上でオペレータに表示することができる。
【0077】
したがって、走査ヘッドは、治療される領域と対応する要求される走査範囲のサイズおよび形状とを判定するために、処理される被験者の皮膚の画像を獲得する少なくとも1つのカメラを含むことができる。画像は、適切な画像認識システムを使用して処理され得る。走査ヘッドは、使用可能な品質の画像の獲得を保証するために被験者の皮膚を照明する1つまたは複数のランプをさらに含むことができる。
【0078】
本発明の第8の態様によれば、治療される被験者の皮膚の領域の少なくとも一部の1つまたは複数の画像を獲得するのにカメラを使用することと、治療される領域の少なくとも一部の形状およびサイズを判定するために画像認識技法を使用して1つまたは複数の画像を処理することと、治療される領域の少なくとも一部の判定された形状およびサイズに従ってパルス・レーザー・ビームの走査範囲の形状およびサイズを調整することと、その後、走査範囲の全体にわたって治療される領域の少なくとも一部にレーザー光のパルス・ビームを走査することとを含む、皮膚科治療の方法が提供される。
【0079】
したがって、本発明の方法は、任意の適切なコンピューティング・システムの制御の下で実行され得る方法ステップのシーケンスを含むことができる。方法ステップのそれぞれ
は、その構造が複数のサブステップを含むことができ、かつ/または複数のサブステップによって表現され得るアルゴリズムを表すことができる。
【0080】
本発明の第9の態様によれば、調整可能なサイズおよび/または形状の走査範囲にわたって2mm未満のスポット・サイズを有する治療レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナおよびカメラを含むワーク・ヘッドと、少なくとも1つのパルス治療レーザーにビーム・スキャナを接続する光学入力と、治療される被験者の皮膚の領域に隣接してワーク・ヘッドを安定して位置決めする調整可能な位置決めデバイスと、レーザー治療装置の動作を制御する自動制御システムとを含み、自動制御システムは、カメラから治療される領域の1つまたは複数の画像を受け取り、治療される領域の少なくとも一部の形状を判定するために受け取られた画像を処理し、治療される領域の少なくとも一部の判定された形状に従い、走査範囲にわたって治療レーザー・ビームを走査するために、走査範囲のサイズおよび/または形状を調整するように構成される、皮膚科治療のレーザー治療装置が提供される。
【0081】
適切に、自動制御システムは、コンピュータと、コンピュータによって実行された時にレーザー治療装置に本明細書に記載のように動作させるソフトウェアとを含むことができる。コンピュータおよびソフトウェアは当業者に周知なので、本発明がそのような機器を使用してどのように実施されるべきかを本明細書で詳細に説明することは不必要である。しかし、いくつかの実施形態では、自動制御システムが、少なくとも1つの物理プロセッサと、物理プロセッサによって実行された時に物理プロセッサに本発明による少なくとも1つの方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む物理メモリとを含むことを理解されたい。
【0082】
適切に、少なくとも治療される領域の部分の画像認識を、画像分析の分野で既知の標準的な方法を使用して実行することができる。マルチスペクトル・イメージングを使用して、たとえば治療されなければならない病変の正しいターゲット形状を見つけるための追加情報を提供することができる。さらに、機械学習法および/または人工知能法を、治療される領域を認識するのに使用することができる。
【0083】
上で述べたように、ワーク・ヘッドは、カメラによって取り込まれた画像が、その処理および/または画像認識を容易にするのに十分に良い品質を有することを保証するために、治療される領域を照明する1つまたは複数のランプをさらに含むことができる。適切に、たとえば、ワーク・ヘッドは、治療される被験者の皮膚の領域を照明するために、可視範囲の光、たとえば白色光を放つように動作可能な1つまたは複数のLEDを含むことができる。そのような光は、少なくとも治療される領域の部分の画像認識を支援することができる。
【0084】
ワーク・ヘッドは、被験者の皮膚上でオペレータに走査範囲のアウトラインを示す光学トレーサをさらに含むことができる。自動制御システムは、被験者の皮膚上で、少なくとも治療される領域の部分の判定された形状およびサイズに従って調整された走査範囲のアウトラインを表示するように光学トレース・デバイスを制御するようにさらに構成され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、レーザー装置は、少なくとも治療される被験者の皮膚の領域の部分の画像を表す制御システムからのディスプレイ信号を受け取り、これらの画像をスクリーン上に表示するように適合されたディスプレイをさらに含むことができる。自動制御システムは、少なくとも治療される領域の部分の判定された形状および/またはサイズに従って調整され、被験者の皮膚の画像に重畳された、走査範囲のアウトラインをスクリーン上に表示するようにさらに構成され得る。
【0086】
適切に、自動制御システムは、ビーム・スキャナを操作する前に、走査範囲が示された後に、オペレータから安全制御信号を受け取るのを待つように構成され得る。安全制御信号は、オペレータによって選択的に操作可能な適切なトリガ・デバイス、たとえば、フット・ペダル、スイッチ、ボタン、または類似物によって生成され得る。いくつかの実施形態では、制御システムは、たとえばキーボード、タッチスクリーン、選択ボタン、回転可能なノブもしくはダイヤル、または類似物、あるいは、これらの2つ以上の組合せなどの適切な入力デバイスを介して走査範囲の形状および/またはサイズをオペレータが調整することを可能にするように構成され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、ワーク・ヘッドは、治療される領域に対する相対的なレーザー・ビーム・スキャナの位置を被験者の皮膚上に示し、これによって、治療される被験者の領域に隣接してワーク・ヘッドを正しく位置決めするための位置決めデバイスの調整を容易にするために、被験者の皮膚に向かって可視照準ビームを放つ照準ビーム・デバイスをさらに含むことができる。便利なことに、照準ビームは、上で述べた種類の光学トレース・デバイスによって生成され得、この光学トレース・デバイスは、したがって、治療レーザーの発射の前に、自動制御システムによって計算され、オプションでオペレータによって調整される走査範囲の形状および/またはサイズを検証するために、ワーク・ヘッドおよび光学トレースを配置するための照準ビームを選択的に生成するように構成され得る。
【0088】
さらなる複雑化は、一般に、被験者の皮膚が平坦ではないことである。これは、治療される領域が、ビーム・スキャナの最大の使用可能な走査範囲より小さい場合であっても、治療レーザー・ビームを用いて走査できる皮膚の領域に対する制限があることを暗示する。ターゲット領域へのレーザー・ビームの入射の角度は、達成可能な領域をさらに制限する可能性がある。いくつかの実施形態では、治療される領域の表面的特徴に、ビーム・スキャナの焦点距離を調整することによって対処することができるが、これも、達成可能な矯正を制限する可能性がある。たとえば、被験者の手首の周囲に延びる、ポートワイン母斑病変または他の治療される領域を検討されたく、スキャナは、1走査あたり手首の一部のみをカバーすることができる。
【0089】
この問題に対処するために、いくつかの実施形態では、本発明のレーザー治療装置は、少なくとも治療される領域の部分の表面的特徴を判定し、高さ変化、入射角、およびオプションで他の制限のおかげで達成可能な走査範囲を計算するように適合され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のレーザー治療装置は、少なくとも治療される領域の部分の表面的特徴を測定する1つまたは複数の地形測定器具をさらに含むことができる。たとえば、レーザー治療装置は、治療される領域の様々な部分までの距離を測定する距離測定デバイスを含むことができる。適切に、距離測定デバイスを、ワーク・ヘッドに組み込むことができる。たとえば3Dカメラ、専用測定システム、および3Dスキャナを含む適切な距離測定デバイスが、当業者に既知であり、入手可能である。いくつかの実施形態では、上で説明した種類の照準ビームを使用して、表面的特徴を計算するための三角測量を実行することができる。自動制御システムは、この種の測定に基づいて、少なくとも治療される領域の部分の地形を判定するようにさらに構成され得る。制御システムは、達成可能な走査範囲の形状および/またはサイズを計算するために、少なくとも治療される領域の部分の形状、サイズ、および表面的特徴を融合させるように構成され得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、病変または治療される他の領域の輪郭制限は、単一の走査の達成可能な走査範囲を超えて延びるようになっている場合がある。いくつかの実施形態では、病変または治療される他の領域は、平坦な表面的特徴に関しても、単一の走査には大きすぎる場合がある。本発明によれば、位置決めデバイスは、複数のセグメントでの治療
される領域全体の治療を可能にするために、ワーク・ヘッドが複数の異なる位置に位置決めされることを可能にすることができる。したがって、ワーク・ヘッドは、治療される要求される領域の完全なカバレージのために、被験者の皮膚の異なる部分をカバーする新しい位置に位置決めされ得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、ワーク・ヘッドは、オペレータによって手動で再位置決めされ得る。各位置で、制御システムは、セグメントの境界を検出するために、上で説明したように、治療される被験者の皮膚の領域の隣接するセグメントの1つまたは複数の画像を処理するように動作可能とすることができる。適切に、制御システムは、治療される領域のセグメントを識別するために、治療されていない皮膚の画像に頼る画像処理法を使用することができる。その後、セグメントを治療するための走査範囲の必須の形状およびサイズを、上で説明したように判定することができる。その後、治療レーザー・ビームを操作して、走査範囲を横切ってセグメントを照射することができる。上で説明した種類の照準ビームを使用して、オペレータは、通常、直前に治療されたセグメントがある場合にこれを含む、1つまたは複数の以前に治療されたセグメントとオーバーラップするように、治療される各セグメントにわたってワーク・ヘッドを位置決めすることができる。オペレータは、たとえば、前に治療されたセグメントを識別するために、皮膚のレーザー治療の結果として発生する「つや消し」を使用することができる。自動制御システムは、2つ以上の隣接するセグメントの間のオーバーラップの領域内の皮膚の部分が、単一の治療内で1回を超えて照射されないようにするために、ワーク・ヘッドの他の位置の以前に識別されたセグメントとオーバーラップする各セグメントの部分をマスクするように構成され得る。当業者に既知の種類のイメージ・スティッチング・アルゴリズムを適切に使用して、識別されたセグメントの間のオーバーラップの領域を識別することができる。各位置で、カメラは、治療されていない皮膚を使用して、治療される領域のセグメントの識別を容易にするために、達成可能な走査範囲より広い視野を有することができる。
【0092】
代替案では、位置決めデバイスを自動化することができ、自動制御システムを、ワーク・ヘッドを位置決めするように位置決めデバイスを制御するようにさらに構成することができる。この形で、ワーク・ヘッドを、連続する走査範囲を走査するように自動的に位置決めすることができる。連続する走査範囲は、治療される領域の完全なカバレージを保証するために、お互いに対して連続とすることができる。代替案では、連続する走査範囲は、オーバーラップすることができ、前の段落で説明した種類のイメージ・スティッチング・アルゴリズムが、オーバーラップの領域をマスクするのに使用され得る。適切な自動化された位置決めデバイスの例は、治療される領域全体をカバーするのに十分な自由度を有するロボット・アームである。ロボット・アームは、下で説明するように、その位置を監視し、記録できるものとすることができる。
【0093】
適切に、自動化された位置決めデバイスは、ワーク・ヘッドをオペレータによって自由に移動できる第1のモードと、ワーク・ヘッドの位置を制御システムの制御の下でのみ調整できる第2のモードとの間で切り替え可能とすることができる。位置決めデバイスは、たとえば、位置決めデバイスをこれらの2つのモードの間で選択的に切り替えることを可能にするために、少なくとも1つの選択的に動作可能なクラッチを含むことができる。第1のモードでは、位置決めデバイスは、オペレータによって抵抗なしに移動され得るが、オペレータによって解放される場合に、たとえば重力の下で移動しないようにワーク・ヘッドを十分に安定して保持する。
【0094】
第1のモードでは、ワーク・ヘッドは、治療される領域の全体の1つまたは複数の画像を取り込むためにオペレータによって操作され得る。第2のモードでは、ワーク・ヘッドは、本発明に従ってパルス・レーザー光を用いて被験者の皮膚を治療するために自動制御システムの制御の下で治療される領域にまたがって自動的に移動され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、自動制御システムを、学習モードおよび走査モードで動作するように構成することができる。学習モードでは、オペレータは、第1のモードの位置決めデバイス(たとえば、ロボット・アーム)を用いてワーク・ヘッドを保持し、輪郭全体を横切って、治療される領域の全体の周囲でワーク・ヘッドを操作する。ワーク・ヘッドは、第1のモードでオペレータのガイダンスに抵抗なしに従うことができる。カメラが、ロボット・アームがすべての軸上でのその位置を測定し、オペレータのたどる動きおよび経路を記録する間に、被験者の皮膚の画像を取り込むように継続的に操作される。このシーケンスの終りに、自動制御システムは、複数のデータ・セットすなわち、取り込まれた画像、ワーク・ヘッドの位置および軌跡と3D輪郭、ならびに治療される領域の距離測定値を受け取っている。自動制御システムは、その後、走査経路を最適化することによって、走査経路を計算するように構成される。第1近似として、学習シーケンスでオペレータのたどった経路を使用することができる。
【0096】
代替案では、独立の3Dスキャナを使用して被験者を走査することができ、オペレータは、走査される領域をコンピュータ上で入力することができる。その定義に基づいて、制御システムは、その後、スキャナ・ヘッドの要求される3D軌跡を計算することができる。
【0097】
走査モードでは、位置決めデバイスは、第2のモードに切り替えられ、ワーク・ヘッドは、治療される領域の全体にわたってパルス・レーザー・ビームを走査するように連続する走査範囲内でビーム・スキャナを動作させながら、制御システムによって生成された経路に従うように制御システムの制御の下で移動される。
【0098】
いくつかの実施形態では、レーザー治療装置は、治療を受ける被験者によって操作されるインターロック・デバイスをさらに含むことができる。自動制御システムは、被験者がインターロック・デバイスを積極的に操作している時に限って操作され得るように構成され得る。インターロック・デバイスは、任意の適切なボタン、トリガ、スイッチ、または被験者が治療中に彼らの手に保持することのできる類似物を含むことができる。適切に、インターロック・デバイスは、非ラッチ式である。被験者が、レーザー治療装置の動作中にインターロック・デバイスを離す場合に、インターロック制御信号が制御デバイスに送られ、レーザー装置にその動作を即座に停止させる。その後、被験者がインターロック・デバイスを再操作する場合に、制御システムは、オペレータが、上で述べたトリガ・デバイスの操作によって必須入力信号をもう一度提供するのを待つように構成され得る。この形で、被験者が、治療中にロボット・アームまたは任意の他の位置決めデバイスの移動に関して不安を感じる場合に、被験者は、装置に停止させることができる。レーザー・ビームが、ロボット・アーム、x-yステージ、x-y-zステージ、または類似物によって治療される領域にわたって機械的に走査される場合に、移動が、非常に高速で威嚇的になり得ることを了解されたい。しかし、光学スキャナが使用される場合には、高速の移動は光学的にすぎず、位置決めデバイスは、静止しまたは非常に低速で移動するのいずれかになる。
【0099】
治療が、数分以上を要する場合があるので、被験者がある程度まで動くことは不可避である。したがって、いくつかの実施形態では、レーザー治療装置は、被験者の移動、特に治療される領域の移動を検出する1つまたは複数の動き検出器をさらに含むことができる。動き検出器は、ワーク・ヘッド上のカメラまたは被験者の皮膚の3D測定を行うデバイスを含むことができる。動き検出器は、被験者の移動を検出するように構成され得、制御システムは、たとえば検出された移動が安全な操作に大きすぎまたは速すぎる場合に、それ相応に走査を補償するか停止するために治療レーザー・ビームの自動走査を補正するように構成され得る。いくつかの実施形態では、被験者の動きの測定を容易にするために、
マーカーまたはインジケータを被験者の皮膚に取り付け、接着し、または描くことができる。
【0100】
本発明のレーザー治療装置は、パルス・レーザーと共に使用するように適合される。したがって、適切に、レーザー治療装置は、パルス治療レーザーと、ワーク・ヘッドの光学入力に治療レーザーを接続する光学系とをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、レーザーは、ピコ秒程度のパルス幅を有するレーザー光のパルスを作ることのできるモード同期レーザーとすることができる。上で説明したように、いくつかの実施形態では、パルスは、約0.1~100psの範囲内のパルス幅および少なくとも約50GW/cm2の強度を有することができる。
【0101】
当業者は、上で本発明の第1から第8の態様に関して説明された本発明の特徴が、本発明のレーザー治療装置に同等にあてはまり、簡潔さのためにここで繰り返される必要がないことを理解しよう。
【0102】
したがって、本発明の第10の態様によれば、パルス治療レーザーと、治療される被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを供給するワーク・ヘッドと、治療レーザーをワーク・ヘッドに接続する光学系とを含み、配置は、パルス・レーザー・ビームが、約0.1~100psの範囲内のパルス幅および少なくとも約50GW/cm2の強度を
有するようになっている、皮膚科治療のレーザー装置が提供される。
【0103】
上で説明したように、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスは、約0.5~10J/cm2、好ましくは約1~8J/cm2または約1~7J/cm2の範囲内とすることができ
る。
【0104】
いくつかの実施形態では、上で説明したように、ビーム・スキャナは、使用中に、各パルスが、約0.1mm~2.0mm未満、好ましくは約0.5~1.0mmの範囲内の最大寸法を有するスポットの形で被験者の皮膚に供給されるように構成され得る。
【0105】
したがって、本発明の第11の態様によれば、パルス治療レーザーと、各パルスが被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、治療される被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含むワーク・ヘッドと、治療レーザーをビーム・スキャナに接続する光学系とを含み、配置は、使用中に、各パルスが、約0.1~2.0mm未満、好ましくは約0.5~1.0mmの範囲内の最大寸法を有するスポットの形で被験者の皮膚にビーム・スキャナによって供給され、皮膚の深さでの各パルスのフルエンスが、約1~7J/cm2の範囲内になるようになっている、皮膚科治療のレー
ザー装置が提供される。
【0106】
適切に、上で説明したように、ビーム・スキャナは、被験者の皮膚の異なる部分がお互いから少なくとも約0.1mmだけ分離されるように構成され得る。
【0107】
したがって、本発明の第12の態様によれば、パルス治療レーザーと、各パルスが被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、治療される被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含むワーク・ヘッドと、ビーム・スキャナに治療レーザーを接続する光学系とを含み、配置は、各パルスが、約1~7J/cm2
の範囲内の皮膚の深さでのフルエンスを有するスポットの形で被験者の皮膚にビーム・スキャナによって供給され、異なる部分が、少なくとも約0.1mmだけお互いから分離されるようになっている、皮膚科治療のレーザー装置が提供される。
【0108】
いくつかの実施形態では、上で説明したように、スポットを、お互いにオーバーラップ
させることができる。レーザー光のビームは、その強度が周辺外側領域でビームの残りより低くなるように減衰され得る。
【0109】
したがって、本発明の第13の態様では、パルス治療レーザーと、各パルスが被験者の皮膚の異なる部分に突き当たるように、治療される被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含むワーク・ヘッドと、ビーム・スキャナに治療レーザーを接続する光学系を含み、配置は、使用中に、各パルスが、約1~7J/cm2の範囲内の皮膚の深さでのフルエンスを有するスポットの形で被験者の皮膚にビーム
・スキャナによって供給され、ビームが、その強度がビームの残りより周辺外側領域で低くなるようになっている、皮膚科治療のレーザー装置が提供される。
【0110】
有利なことに、ビーム・スキャナは、上で説明したように、レーザー光のビームが、連続するパルスが治療される領域の異なる部分に当たるように一連の直線または曲線で走査範囲にわたって走査されるように構成され得る。
【0111】
本発明の第14の態様では、パルス治療レーザーと、治療される被験者の皮膚の領域にレーザー光のパルス・ビームを走査するビーム・スキャナを含むワーク・ヘッドと、ビーム・スキャナに治療レーザーを接続する光学系とを含み、配置は、使用中に、各パルスが、約1~7J/cm2の範囲内の皮膚の深さでのフルエンスを有するスポットの形で被験
者の皮膚にビーム走査デバイスによって供給され、ビーム・スキャナが、連続するパルスが治療される領域の異なる部分に当たるように一連の直線または曲線で走査範囲にわたってレーザー光のビームが走査されるように構成されるようになっている、皮膚科治療のレーザー装置が提供される。
【0112】
上で説明したように、パルス・ビームは、約30Hz超、好ましくは約100Hz超、オプションで200~500Hzのパルス繰り返し率を有することができる。いくつかの実施形態では、パルス・ビームは、約1000Hzまでのパルス繰り返し率を有することができる。上で説明した要件が可能な適切なパルス・レーザーは、1000Hzで4mJエネルギを供給できる、米国ニューヨーク州ロング・アイランドのPhotonics Industriesから名称RGL-1064-4の下で市販されている高パルス・エネルギ高繰り返し率ピコ秒レーザーおよび1000Hzで10mJを供給できる、リトアニア国ビリニュスのEksplaから名称APL2201の下で入手可能な高エネルギKHz繰り返し率ピコ秒増幅器を含む。
【0113】
当業者は、上述の種類のパルス・レーザーが、非常に高価な機器部品であることを認めよう。また、一連の被験者を治療する時に、レーザーが、通常は時間の約50%になるかなりの長さの時間に使用されていないことを了解されたい。上で説明したように、いくつかの実施形態では、本発明は、以前の治療法と比較してより小さいスポット・サイズを補償するために、高速のパルス繰り返し率を利用する。さらに、本発明による色素除去は、1パルスあたり再少量のエネルギ、通常は上述したように1~50mJを必要とする。
【0114】
いくつかの実施形態では、単一の治療レーザーを、本発明による複数のレーザー治療装置に選択的にパルス・レーザー光を供給するように配置することができる。各レーザー治療装置を、たとえば異なる治療室など、異なる治療エリアに設けることができる。上で説明したように、レーザー治療装置のそれぞれは、ワーク・ヘッドと、ワーク・ヘッドを治療レーザーに結合する光学入力とを含むことができる。光機械セレクタを含む光学系を、治療レーザーをレーザー治療装置のうちの1つに選択的に結合するために設けることができる。この形で、治療レーザーを使用して、他のレーザー治療装置が使用中ではない間に被験者を治療するためにレーザー治療装置のうちの1つにパルス・レーザー光を供給することができる。そのような配置は、治療レーザーのより多い利用を可能にすることができ
る。
【0115】
したがって、本発明の第15の態様では、パルス治療レーザーと、複数の別々の治療エリアと、各治療エリア内のレーザー治療装置であって、各レーザー治療装置は、治療される被験者の皮膚の領域にわたって2mm未満のスポット・サイズを有する治療レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナと光学入力とを含むワーク・ヘッドを含む、レーザー治療装置と、各レーザー治療装置のワーク・ヘッドの光学入力に治療レーザーを接続する光学系とを含み、光学系は、レーザー治療装置の任意の1つにレーザー・ビームを選択的にステアリングするように動作可能な光機械セレクタを含む、皮膚科レーザー治療施設が提供される。
【0116】
適切に、パルス治療レーザーは、上で説明したように少なくとも30Hzのパルス繰り返し率を有するレーザー光のビームを作るように動作可能とすることができる。
【0117】
各パルスは、1~50mJ、好ましくは約1~30mJのエネルギを有することができる。いくつかの実施形態では、パルス治療レーザーは、100Hz超、好ましくは少なくとも200Hz、より好ましくは少なくとも500Hzのパルス繰り返し率を有することができる。いくつかの実施形態では、パルス治療レーザーは、1000Hz以上のパルス繰り返し率を有することができる。
【0118】
レーザー光を、各治療エリアの特定の要件に従って治療レーザーで電子的に変調することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、高パルス・エネルギ治療レーザーを使用することができる。上で説明したように治療エリアの間でビームを順次トグルするのではなく、受動光学スプリッタを使用して、本発明の複数のレーザー治療装置による並列の使用のためにビームを分割することができる。この形で、異なる治療エリアのレーザー治療装置を同時に使用することができる。
【0120】
したがって、本発明の第16の態様によれば、少なくとも30Hzのパルス繰り返し率を有するレーザー光のビームを作るように動作可能なパルス治療レーザーと、複数の別々の治療エリアと、各治療エリア内のレーザー治療装置であって、各レーザー治療装置は、治療される被験者の皮膚の領域にわたって2mm未満のスポット・サイズを有する治療レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナと光学入力とを含むワーク・ヘッドを含む、レーザー治療装置と、各レーザー治療装置のワーク・ヘッドの光学入力にパルス治療レーザーを接続する光学系とを含み、光学系は、ビームを分割し、これをレーザー治療装置のそれぞれに並列に向ける受動光学スプリッタを含む、皮膚科レーザー治療施設が提供される。
【0121】
適切に、パルス治療レーザーは、少なくとも5mJのパルス・エネルギを有することができる。いくつかの実施形態では、パルス治療レーザーは、約300mJまでのパルス・エネルギを有することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、10mJ、15mJ、20mJ、または30mJのパルス・エネルギを使用することができる。治療レーザーを、フル・パワー出力で連続的に動作させることができる。各ワーク・ヘッド内のビーム・スキャナは、各別々の治療エリアの特定の要件に従って分割されたレーザー・ビームを変調する、たとえばポッケル・セル、ガルバノ・ミラー、または類似物などの高速光学変調器を含むことができる。
【0122】
通常、ビームを、少なくとも2つのレーザー治療装置/治療エリアの間で分割することができる。パルス繰り返し率およびパルス・エネルギに関する治療レーザーの特性のおか
げで、本明細書で説明するように各娘ビーム内に皮膚科色素除去に十分なパルス・エネルギを保持しながらビームを分割できる回数に対する制限がある。
【0123】
したがって、本発明の別の変形形態では、ビーム多重化技法を使用して、単一のパルス・レーザー・ビームを複数の治療エリアの間で分割することができる。高速のパルス繰り返し率を有する治療レーザーに接続された光学系は、直列に配置され、パルス・レーザー・ビームの選択されたパルスを選び、それらを本発明によるそれぞれのレーザー治療装置に向けるように独立に選択的に動作可能な複数の光学変調器を含むことができる。
【0124】
本発明の第17の態様によれば、少なくとも30Hzのパルス繰り返し率を有するレーザー光のビームを作るように動作可能なパルス治療レーザーと、複数(n個)の別々の治療エリアと、各治療エリア内のレーザー治療装置であって、各レーザー治療装置は、治療される被験者の皮膚の領域にわたって2mm未満のスポット・サイズを有する治療レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナと光学入力とを含む、レーザー治療装置と、各レーザー治療装置の光学入力にパルス治療レーザーを接続する光学系とを含み、光学系は、直列に配置され、レーザー治療装置の異なる1つに連続するパルスをステアリングするように選択的に動作可能な、治療エリアの個数と等しい複数(n個)の光学変調器を含み、各光学変調器は、n個おきのパルスを選択する、皮膚科レーザー治療施設が提供される。
【0125】
光学変調器の例は、ポッケルス・セル、高速ガルバノ・ミラー、回転ポリゴン・スキャナ、および当業者に既知の他の光学変調器を含む。
【0126】
この形で、高いパルス繰り返し率を有する単一のパルス治療レーザーを、レーザー治療装置の台数と等しい複数の連続パルスまでのレーザー治療パルスの異なる1つに連続パルスを繰り返して選択的に向けることによって、複数の異なるレーザー治療装置にレーザー光の分割されないビームのパルスを供給するのに使用することができる。したがって、各治療装置は、パルス治療レーザーの元の周波数を治療装置の台数で割ったものと等しい周波数のパルス・レーザー光を選択的に受け取ることができる。たとえば、レーザーが、3つの治療装置に供給するのに使用される場合に、各治療装置の使用可能パルス繰り返し率は、治療レーザーのパルス周波数の1/3と等しい。この理由から、好ましくは、100Hzを超え、好ましくは200Hzを超え、より好ましくは500Hzを超えるパルス繰り返し率を有する、できる限り高速の治療レーザーを使用することが望ましい。いくつかの実施形態では、1000Hz以上のパルス繰り返し率を使用することができる。いくつかの実施形態では、単一のレーザー・ビームを同時に使用して複数の被験者を治療する治療時間を最小にするために、2000Hz、4000Hz、または6000Hzのパルス繰り返し率を使用することができる。
【0127】
レーザー・ビームのパルスが、関連する光学変調器が作動される時にのみ所与のレーザー治療装置に向けられることを理解されたい。光学変調器が作動されない場合には、エネルギのパルスは、その目的で提供される適切なビーム・ダンプに受け取られるまで、光学系内で継続する。
【0128】
代替案では、パルスは、異なる治療エリアに継続的に向けられ得、追加の光学カプラが、各エリア内で治療に要求されるパルスを変調するために各エリア内で直列に追加され得る。
【0129】
上で説明したように、各パルスは、約1~100mJのエネルギを有しなければならない。適切に、各レーザー治療装置内で受け取られるパルスは、それぞれのビーム・スキャナによって、約0.5~10J/cm2の範囲内の皮膚の深さでのフルエンスを提供する
ように計算されたパルス持続時間にさらに変調され得る。適切なパルス持続時間、スポッ
ト・サイズ、および強度は、上で説明した。
【0130】
人の皮膚上での使用のためのレーザー治療装置が、たとえば治療される皮膚の領域に入射するレーザー・ビームのパワーおよび/または位置を含む、上で説明した要求される動作パラメータ内で信頼できる形で一貫して動作することが重要であることを了解されたい。このために、本発明のレーザー治療装置は、レーザー・ビームおよび/またはワーク・ヘッドの1つまたは複数の物理特性および/または動作特性をテストする1つまたは複数のセンサを組み込んだテスト装置を含むことができる。
【0131】
適切に、テスト装置は、ワーク・ヘッドと係合するように構成されたワーク・ヘッド係合部分を含む支持構造と、ワーク・ヘッド係合部分から離隔された位置で支持構造に固定される少なくとも1つのセンサとを含むことができる。適切に、センサ(1つまたは複数)は、ワーク・ヘッドがワーク・ヘッド係合部分と係合される時に、センサとワーク・ヘッドとの間の距離が、レーザー治療装置が使用中である時のワーク・ヘッドと皮膚との間の距離と実質的に同一になるように支持構造に固定され得る。この形で、センサ(1つまたは複数)は、レーザー治療装置が使用中である時の皮膚の平面と光学的に同等の平面に配置され得る。上で説明したように、ワーク・ヘッドは、取り外し可能なスペーサへの接続のために適合され得る。したがって、ワーク・ヘッドは、スペーサ係合部分を含むことができる。支持構造のワーク・ヘッド係合部分を、ワーク・ヘッドのスペーサ係合部分との解放可能な係合のために構成することができる。
【0132】
有利なことに、支持構造は、ワーク・ヘッド係合部分と少なくとも1つのセンサとの間に挿入された穴のあるセパレータ板を含むことができる。セパレータ板を、それを通って延びる1つまたは複数の穴を有するように形成することができる。セパレータ板の残りは、ワーク・ヘッドによって放たれるレーザー光に不透明とすることができる。1つまたは複数の穴を、ワーク・ヘッド係合部分に対して相対的に既知の位置でセパレータ板内に形成することができる。したがって、セパレータ板は、正確な位置で支持構造に適切に固定される。したがって、セパレータ板を使用して、ワーク・ヘッド内のレーザー・ビーム・スキャナの動揺を検出することができる。テスト・モードでは、ビーム・スキャナは、ビーム・スキャナがアライメントからそれなかったことと、ビーム・スキャナが期待される通りに動作していることとを保証するために、1つまたは複数の穴を介してレーザー・ビームをステアリングするように操作され得る。もう1つの光センサが、1つまたは複数の穴を正しく通過する光を検出するために、セパレータ板のワーク・ヘッド係合部分と反対の側で支持構造上に設けられる。
【0133】
いくつかの実施形態では、レーザー・ビームの位置およびパワーを測定できる、当業者が入手可能な種類の位置感知検出器を、穴のあるセパレータ板の代わりにまたはこれに加えて使用することができる。いくつかの実施形態では、セパレータ板を、ビームの発散を考慮に入れるために異なるサイズの複数の穴を有するように形成することができる。1つまたは複数のセンサが、ワーク・ヘッドによって放たれたレーザー・ビームのパワーを測定するための対応する個数のパワー・センサを含むことができ、各パワー・センサは、穴のそれぞれの1つに関連付けられる。異なるサイズの穴が、それぞれのパワー・センサによって測定される異なるパワー・レベルをもたらすことを了解されたい。
【0134】
適切に、支持構造は、テスト装置へのレーザー・ビームの光学経路を適合させるために、1つまたは複数のセンサとワーク・ヘッド係合部分との間で1つまたは複数のレンズを支持することができる。少なくとも1つのレンズを、セパレータ板とワーク・ヘッド係合部分との間に配置することができる。
【0135】
便利なことに、テスト装置の支持構造は、ワーク・ヘッドが使用中でない時にこれを取
り外し可能に保持するホルダを含むことができる。
【0136】
以下は、本発明の実施形態の添付図面を参照する、例のみとしての説明である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるレーザー治療装置を含む皮膚科レーザー治療施設を示す概略側面図である。
【
図2】被験者へのレーザー・ビーム供給のために関節アームを介してパルス・レーザーに接続されて図示されている、
図1の皮膚科治療装置の光学経路およびスキャナ・ヘッドを示す概略側面断面図である。ワーク・ヘッドは、ビーム・ステアリング装置として電流測定x-yスキャナを含む。ビームは、被験者の皮膚上で所望のサイズに達するように焦点を合わされる。
【
図3】
図1の皮膚科レーザー治療装置の一部を形成する手動で移動可能なスキャナ・ワーク・ヘッドを示す側面立面図である。
【
図5】
図1のシステムのワーク・ヘッド内で選択可能な異なるサイズおよび形状の様々な走査範囲を示す図である。
【
図6】
図1の皮膚科レーザー治療装置の動作を示す流れ図である。
【
図7】本発明による被験者の皮膚からの刺青または他の色素沈着の除去の方法を示す流れ図である。
【
図8】
図8Aは、従来の方法による治療される領域の治療を示す図である。
図8Bは、本発明による走査範囲の形状/サイズ最適化を示す図である。
図8Aに示された従来の方法では、薔薇形状の刺青の例示的な細い茎が、非常に小さいスポット・サイズを要求し、正確な配置を有する多数のスポットが、茎全体をカバーするのに必要である。対照的に、本発明の走査方法では、走査範囲を、任意の所望の形状にプログラムすることができる。たとえば、細長い長方形の走査範囲が、長く細い刺青線の治療に、より効率的で高速である可能性がある。
【
図9】異なるパルス幅を有するパルス・レーザー光を使用する色素除去に要求される作業フルエンス(強度)を判定する方法を示す流れ図である。
【
図10】測定された切除しきい値フルエンス対色素の様々な色に関するパルス幅を示すチャートである。より短いパルス幅が、より少ないフルエンスを要求し、異なる色の間のしきい値の差が、より小さいことが明白である。
【
図11】低強度レーザーを使用する従来の方法と比較して高強度のレーザーを使用する、本発明による多色刺青除去の例を示す図である。図示されているのは、生きている豚の皮膚に対して実行された制御された実験での実際の除去結果を示す写真である。
【
図12】経時的な皮膚温度プロファイルを示す図である。
図12Aは、高エネルギの大きいスポットから生じた温度プロファイルを示す。
図12Bは、低エネルギの小さいスポットから生じた温度プロファイルを示す。熱拡散の始まりは、大きいスポットに関して約10sの時間スケールで顕著である。小さいスポットに関して、熱の拡散は、約0.1s未満後に顕著である。
【
図13】時間の関数として加熱された組織の体積の中心での温度を示すチャートである。1mJ、0.22mmスポットの熱緩和時間(初期温度デルタの50%)は、約0.12sであり、5mJ、0.5mmスポットに関して、熱緩和時間は、約0.7sであり、500mJ、5mmスポットの熱緩和時間は、約70sである。
【
図14】熱緩和時間対2.5J/cm
2の所与のフルエンスに関する熱緩和時間対パルス・エネルギを示すチャートである。
【
図15】本発明に従って治療される皮膚の領域のラスタ走査対インターレースを概略的に示す図である。
図15Aは、隣接する線の間に時間Tを有する標準的なラスタ走査を示す。
図15Bは、K本の線をスキップすることと、最も下の線の後に最上部に戻ることとによるインターレース走査を示す。行の間の時間は、T×Kである。
【
図16】本発明の第2の実施形態による走査ヘッドのホルダを示す横断面図である。
【
図17】
図16のホルダの一部を形成し、治療の前にスキャナ、レーザー、および光学アライメントをテストすることのできる、セパレータ・アセンブリを示す分解図である。
【
図18】テスト・ルーチンを実行するホルダの動作を示す流れ図である。
【
図19】本発明の第3の実施形態による、治療椅子の上に位置決めされた平衡関節アームに接続された自動化された走査ワーク・ヘッドを示す図である。
【
図21】本発明による画像獲得、検証、および刺青除去治療のシーケンスの例を示す図である。
図21Aでは、照準ビームが、走査範囲アウトラインをオペレータに示す。
図21Bでは、治療されるターゲット領域の輪郭が測定され、走査パラメータが計算される。
図21Cは、照準ビームまたはオンスクリーン・ディスプレイを使用する走査範囲/シーケンスのプレビューを示す。
図21Dおよび
図21Eは、刺青除去シーケンスを示す。
【
図22】達成可能な走査範囲に対する地形の影響を示す図である。
図22Aでは、平坦なターゲットが示され、スキャナ・ヘッドの走査範囲全体を使用することができる。
図22Bでは、非平坦なターゲットが、達成可能な走査範囲を減らす。単純さのために、球トポロジが示されている。
【
図23】達成可能な走査範囲より大きい治療される色素沈着領域の治療を概略的に示す図である。ステッチング・アルゴリズムが、オーバーラップを有する未治療の領域のパターン認識を使用して複数の走査セグメント内の領域全体を治療するのに使用される。
【
図24】スキャナ・ヘッドと共に取り付けられる6軸ロボットを示す透視図である。
【
図25】単一の治療レーザーからの単一のパルス・レーザー・ビームが、複数(この場合には2個)の異なる治療エリアの間で選択的にトグルされ得る、本発明の第4の実施形態による皮膚科治療施設を示す概略図である。
【
図26】単一の高エネルギ・パルス治療レーザー・ビームが、複数の異なる治療エリアに並列に分割され、ステアリングされる、本発明の第5の実施形態による皮膚科治療施設を示す概略図である。
【
図27】単一の高周波数(パルス繰り返し率)パルス治療レーザー・ビームが、パルスピッキングによって複数の別々の部屋に並列に多重化される、本発明の第6の実施形態による皮膚科治療施設を示す概略図である。
【
図28】
図27の皮膚科治療施設内で使用されるパルスピッキングを示すタイミング図である。
【
図29】
図1に示された本発明の一実施形態による皮膚科レーザー治療装置の電気的および電子的な構成要素および接続性を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
[実施例1]
図1は、本発明の一実施形態による皮膚医学治療施設を概略的に示す添付図である。この施設は、分割壁21によって分離された2つの隣接する部屋12、13で提供される。部屋の一方12は、治療室であり、他方は、第1および第2の治療レーザー1、2を収容するレーザー室13である。この実施形態では、第1のレーザー1は、超短パルスを作る800nm Ti:サファイヤ・レーザーであり、第2のレーザー2は、1064nmおよび532nmのNd:YAGレーザーである。Tiサファイヤ・レーザーは、1Khzパルス繰り返し率で1~10ミリジュールのエネルギを伴う100~30000フェムト秒パルスを放つ。Nd-Yagレーザーは、同様のエネルギおよび500Hzのパルス繰
り返し率でサブ・ナノ秒パルスを放つ。異なるレーザーを、本発明の他の実施形態で使用できることを理解されたい。照準ビーム5が、治療される被験者の皮膚の領域上の正しい位置で、下でより詳細に説明するようにワーク・ヘッド4を配置する際に支援するために下で説明するように治療レーザー1、2に光学的に結合される。コンピュータ、電源、およびシステム動作に関する専用コントローラを含むパワーおよび制御ユニット6が設けられる。
【0139】
レーザー室13は、レーザー1、2の最適条件が維持されることを保証する。治療室12は、オペレータおよび被験者がアクセス可能な機器だけを含む。
【0140】
第1および第2の治療レーザー1、2のそれぞれは、レーザー1、2が本発明による皮膚科治療装置を含むワーク・ステーション25に供給される治療室12にレーザー1、2によって作られたレーザー・ビーム11を、分割壁21を介して向けるために光学系22に接続されるレーザー出力23を有する。光学系22は、当業者に既知のミラー・レンズおよび他の光学構成要素の任意の適切な配置(下で説明する)とすることができ、分割壁21を通過する時に保護導管内で受け取られる。
【0141】
治療室12内で、ワーク・ステーション25に隣接して、治療される被験者(図示せず)の治療椅子10が設けられる。
【0142】
ワーク・ステーション25は、コンソール7と、安定性のために治療室12の壁または床に固定された関節アーム3とを含む。関節アーム3は、その自由端で上述のワーク・ヘッド4を担持する。関節アーム3は、治療室のある体積内の任意の点のワーク・ヘッド4の光学入力に治療レーザー・ビームおよび照準ビームを光学的に向ける(ミラーおよび関節アセンブリを使用することによって)ことができる。
【0143】
ワーク・ステーション25は、レーザー出力を制御するためにフット・ペダル8に接続される。
【0144】
図2を参照すると、治療レーザー31(これまでは、
図1でレーザー1および2と呼ばれた)が、専用コントローラ44によって制御される。明瞭さのために、1つの治療レーザー1だけが図示されているが、第2のレーザー2の配置は、同様である。各治療レーザー出力31は、高速検出器32によってリアル・タイムで監視され、高速検出器32は、ビーム・サンプラ35(この実施形態では照準ビーム・カプラとしても働く)を使用してビームの小さいパーセンテージ42をサンプリングするように動作可能である。コントローラ44は、治療レーザーの出力が最大パルス・エネルギまたは最小パルス・エネルギから逸脱する場合に、自動的にレーザー・パワーをシャット・ダウンし、シャッタ33を閉じるように構成される。
【0145】
照準ビーム34は、結合ミラー35によって治療レーザー・ビーム光学経路に結合される。その後、ビーム経路は、システムの残りを介する伝搬のためにビーム・エクスパンダ36を通って移動する。関節アーム43を介して移動して、両方のビームが、ワーク・ヘッド37に達する。
【0146】
ワーク・ヘッド37は、取り外し可能スペーサ38およびガルバノ・スキャナ41を含む。使用中に、レーザー・ビームは、ガルバノ・スキャナ41内に移動し、ここで、電動ミラー40によって、レンズ39を通過して被験者の皮膚に向かうように向けられる。スペーサ38は、ワーク・ヘッドから離れて延び、被験者の皮膚に接触する滑らかな遠位端で終わる。スキャナ・ガルバノメトリック・ミラー40は、ビームがある角度で合焦レンズ・アセンブリ39に達するようにするために回転される。この角度は、合焦レンズ・ア
センブリを介して被験者の皮膚上の位置に翻訳される。レンズは、皮膚の表面上に所望のスポット・サイズを作成し、このサイズは、要求されるフルエンスを達成するためにオペレータによってリサイズされ得る。この実施形態では、0.7mmのスポット・サイズが、4J/cm
2フルエンスに関して使用されるが、約0.5~50J/cm
2、好ましくは約1~30J/cm
2の範囲内のフルエンスを有する、約2mm未満、好ましくは約1m
m未満の任意のスポット・サイズを使用できることが、当業者によって理解されよう。その後、スキャナ41は、調整可能なサイズおよび形状の走査範囲内で皮膚を横切ってスポットをステアリングする。隣接するスポットの間の距離は、構成可能であり、通常は約0.1mm未満である。いくつかの代替実施形態では、ガウシアン・プロファイルを有するオーバーラップするスポットを使用することができる。オーバーラップの量は、通常は約0.1mmとすることができる。異なる選択可能な走査範囲を、例として
図5に示す。具体的には、この実施形態では、ガルバノ・スキャナ41は、長さおよび/または幅において約1mmから約10mmまでの構成可能な長方形を走査するように動作可能である。他の実施形態では、走査範囲が、スキャナ41の制限内のすべての所定のまたは任意の形状を有することができることを理解されたい。被験者の皮膚の領域までの距離は、スペーサ38によって決定され得る。
【0147】
ワーク・ヘッドは、動きセンサ26をも含む。主レーザーの動作中に、動きセンサが、事前定義のしきい値を超える動きを検出する場合に、動きセンサは、主レーザーを即座に停止するように制御ユニット6にシグナリングする。これは、意図されないレージングまたは制御されないレージングを防ぐのを助ける。
【0148】
ワーク・ヘッド37は、
図3および
図4に最もよく示されている、走査範囲サイズ・セレクタ・ノブ14、照準ビーム34をアクティブ化するアウトライン・スイッチ15、指示照明19、および交換可能スペーサ18(
図2の38)を含む人間工学的なプラスティック・アセンブリとして設計された外側シェル20を含む。
【0149】
スキャナ・ミラーは、様々なアスペクト比を有する1から10mmまでの範囲にわたるサイズの事前定義の長方形のセット、
図5 45~54のうちの1つを走査するようにプログラムされる。各長方形は、範囲セレクタ・ノブ14の特定のセッティングに対応する。本発明の他の実施形態では、スキャナ・ミラーは、異なるサイズおよび/または長方形以外の形状の走査範囲、たとえば円形の走査範囲を作るように動作可能とすることができる。
【0150】
図29に最もよく見られるように、制御ユニット6は、電力線410を有する電源401、ソフトウェアおよびデータを記憶するメモリ404を有するプロセッサ402、リアル・タイム・コントローラ405、およびプログラマブル論理デバイス403を含む。これらは、組み合わされて、許容できる冗長性を伴うシステムの滑らかで安全な動作を保証する。信号およびデータは、電力線およびデータ線411を介して示されているように、様々なシステム構成要素(1、2、5、4、37など)に接続される。リアル・タイム・コントローラ405およびプロセッサ402は、アナログ・スキャナ・ドライバ407を動作させるデジタル・スキャナ・コントローラ406と通信する。これらは、ワーク・ヘッド37内のガルバノ・ミラー・スキャナ41に電力と制御との両方を供給する。明瞭さのために、多くの接続および詳細が省略されている。
【0151】
システムは、
図6の図に示された論理に従う。パワー・アップ61中に、複数の安全チェックが実行され、これにアイドル状態62が続く。アウトライン・スイッチ15がオペレータによってオンに切り替えられた後に、システムは、アウトライン・モード63に移動する。システムは、アウトライン・スイッチ15がオフに切り替えられるか、フット・ペダル8が押し下げられるまで、アウトライン・モードに留まり、照準ビーム34を用い
て長方形アウトライン(すなわち、45~54のうちの1つ)を継続的に走査する。フット・ペダルが押し下げられた後に、主レーザーが、オンに切り替えられ、レーザー光のパルスが、フル走査モード64で長方形走査領域を横切って走査される。領域全体がレーザー・パルスによって照射された後に、レーザーは、オフに切り替えられ、システムは、アウトライン・モード63に戻る。
【0152】
治療の適用中に、オペレータは、除去される色素70の形状およびサイズを検査する。オペレータが、アウトライン走査をオンに切り替えた後に、照準ビームが、
図7に示されているように、被験者の皮膚上に現在選択されている長方形73のアウトラインを描く。これは、視覚的フィードバックと、治療される領域へのスキャナの正確なアライメントとを可能にする。オペレータは、長方形が色素の形状およびサイズにフィットするようにするために、範囲セレクタを調整し、色素沈着領域77にわたってワーク・ヘッドを正確に配置する。オペレータが、セットされた走査範囲配置に賛成した後に、フット・ペダル8が押し下げられ、その後、各位置79内に1つのスポットのレーザー・スポットを用いて走査範囲の領域全体をカバーすることによって、主レーザーが被験者の皮膚を照射する。この実施形態では、フル走査持続時間は、1秒より短く、通常は0.5秒である。フル走査の後に、主治療レーザーが、オフに切り替えられ、照準ビーム34は、治療される領域81のアウトラインをもう一度示す。治療される領域は、通常、パルス・レーザーと皮膚との相互作用82のつや消し効果に起因して可視である。最適の結果を達成するために、レーザー・セット・ポイントは、下の実施例2で説明するように選択される。
【0153】
刺青または色素の他の領域に走査範囲形状を適合させることのスループット利益を、
図8Aおよび
図8Bに示された例を比較することによって了解することができる。たとえば薔薇の茎などの細長い形状をカバーするために、適当な長方形86の使用は、5回の走査を必要とする。正方形または円形の形状85に関して、走査の回数は、約3倍多い。単一の範囲走査は非常に高速なので、オペレータの配置プロセスは、総治療時間に関する主な寄与する要因である。したがって、3倍少ない範囲は、約3倍高速の治療時間になる。たとえば3mm厚、50mm長の茎に関して、オーバーラップなしの500Hzパルス繰り返し率および0.6mmスポット・サイズを使用して、我々は、1.7秒の正味走査時間と等しい約830個のスポットに達する。3x3mm範囲(
図8A参照)を使用すると、約17個の走査すべき別々の範囲がある。0.75秒程度の範囲配置時間を有するよく訓練されたオペレータを仮定すると、我々は、12.75秒の配置時間および14.45秒の総治療時間を有する。
図8Bに示された3x10mmの長方形範囲を使用する時に、我々は、約5回の配置を有し、したがって、総治療時間は5.45秒である。15秒と5秒との間の差は、治療セッションに関して禁止的ではないが、複雑な形状および特徴を有するはるかにより大きい色素沈着領域に関してこの分析を繰り返すことによって、範囲形状を最適化することによって、治療時間の膨大な短縮を達成できることは明白である。下の実施例5は、この概念をさらに採用して、さらにより短い治療時間を達成する。
【0154】
[実施例2]
本発明による超短超高強度放射の使用は、非常に色選択的である線形吸収を超える、1つの波長を用いる複数の色の除去に有益である。新しいシステムを設計する時には、多色色素除去を達成するために、正しいレーザー作業点を判定しなければならない。作業点は、フルエンス、パルス幅、および強度を含む。強度は、多色除去に十分に高くなることを要求され、通常、フルエンス(エネルギ密度)およびパルス幅の組合せによって決定される。フルエンスは、強度を支持するのに十分に高くならなければならないが、過剰な損傷を引き起こすほど高すぎてはならない(通常は約0.5~10J/cm
2)。パルス幅は
、短くなければならないが、通常は、特定のレーザー設計によって制限される。好ましいパルス幅は、約0.5~30ピコ秒程度である。パルス・エネルギを、下の実施例3で議論する。最適の作業点は、特定のレーザーの波長、ターゲット色(通常は多ければ多いほ
どよい)、および特定のレーザー・システムの使用可能なレーザー・パルス幅に依存する。正しい作業点を見つけるために、我々は、実験室セット・アップで異なるインク色/皮膚色素の反応しきい値を測定する。テストを、ターゲット色素ごとに繰り返す。テスト・ターゲットは、ゼラチン、水、および色素を混合することによって作成される。
図9を参照すると、ターゲットは、フルエンスのセットを用いて走査され、フルエンスごとに、パルス幅が変調される(実際には、強度を変調する)。相互作用がターゲット内で目撃された(通常はターゲットの損傷によって)後に、特定のパルス幅のしきいフルエンスが判定される。損傷を与えるのが最もむずかしい色に必要な最高強度を見つけることによって、我々は、すべての色をカバーする要求される強度に達した。この方法では、強度およびフルエンスが、パルス幅変調を介して独立にテストされ、パルス幅が一定なのでフルエンスおよび強度が結合される従来の方法とは本来異なる。
【0155】
図10では、実際の実験室結果を示す。パルス幅が増える時に、ますます多くのフルエンスが、ターゲット色素との有効な相互作用のために要求される。異なる色に関して要求される異なるフルエンスの広がりも、かなり増加する。従来技術のレーザー・システムは、通常、>250psパルス幅およびより低い強度で働く。たとえば約1J/cm
2の組
織内の色素位置の所与のフルエンス(
図10では符号100によって示される)に関して、システムは、たとえば緑および黒を除去できる可能性があるが、赤および黄色を除去することはできない。これは、黄および赤が、パルス幅に関してかなりより高いフルエンスしきい値を有するからである。その代わりに、所与の波長およびパルス幅で「これらが十分に吸収しない」と言うことができる。本発明に従って約25ps未満にパルス幅を減らすことによって、同一のフルエンス101が、この場合にすべての色を成功裏に除去することができる。これは、このパルス幅で、相互作用のしきい値が、所与のフルエンス未満であるからである。従来技術と同一の波長が、今や、より高い強度の結果としてすべての色を除去できることに留意されたい。
【0156】
上の方法は、異なるレーザーが、ターゲット色対使用される波長に依存して異なる最大強度および/またはフルエンスを要求する場合に、特定のレーザー波長ごとに適用可能である。しかし、しきい強度が使用された後に、すべてのターゲット色が、その特定のレーザーによって除去される。
【0157】
「除去」は、本明細書では、皮膚からの色の完全な撤去(裸眼に対して)を、有限回数のセッションの後に達成できることと意図されている。セッションの回数は、ターゲット色ごとに変化し得るが、どの場合でも、色ごとのセッションの回数は、約2倍を超えては変化しない。
【0158】
商業レーザーが、規定されたパラメータ・セットに関して入手可能である。たとえば、8mJ、8psパルス幅を有するPicoLaser ltdの「Pico-1M」レーザーまたは30mJ、1.5psパルス幅を有するAmplitude Laser ltdの「Magma」レーザーを参照されたい。
【0159】
図11は、上述の方法およびシステムの例として、生きている豚の皮膚に対して実行された制御された実験の実際の除去結果を示す。ターゲットは、緑111、青112、シアン113、オレンジ114、赤118、黄117、紫116、および黒115に着色された領域を含む多色正方形である。ターゲットの中央は、刺青されていないが、境界は黒くアウトラインを描かれている。
【0160】
様々なパルス幅および2ヵ月のスパン内の複数の治療を使用した、事前および事後の画像が、101~106に示されている。レーザーAは、6nsのパルス幅を使用し、レーザーBは、0.6nsのパルス幅を使用し、レーザーCは、1~15ピコ秒のパルス幅を
使用した(100~1000倍短い)。レーザーA、Bは、4J/cm2フルエンスを使
用し、レーザーCは、2J/cm2フルエンスを使用した。レーザーA/Bのそれぞれの
強度は、0.7/7GW/cm2であり、レーザーCは、約50GW/cm2の強度を有した。レーザーA、Bを用いると、顕著な除去が、アウトラインの黒で達成される(101対102および103対104)。短パルス・レーザーCに関して、すべての刺青色が反応し、約80%の撤去が達成された(105対106)。定量的な撤去レベルを、107に示す。
【0161】
[実施例3]
レーザー色素除去のプロセスは、色素をターゲットとするが、色素を囲む組織内の局所加熱を生じる。色素を保持する組織の局所損傷は不可避であるが、色素放射吸収によって直接には損傷を受けない周囲の組織は、副次的加熱に悩まされる。局所的な高められた加熱の持続時間は、周囲の組織へのより大きい損傷の原因である。以下の例では、我々は、これらの影響を定量化する。
【0162】
色素沈着した組織の照射中に、以下が発生する。当初に、レーザー・パルス幅の時間スケールで、通常は治療のターゲットにされる発色団内で、放射が、組織の吸収している部分で吸収される。これは、ピコ秒またはナノ秒という非常に短い時間スケールで非常に高められた温度(数千度さえ)を達成する可能性がある。これは、通常、プラズマ作成、機械的破壊、および/または他の極端な事象につながり、これらは、通常は治療の望まれる効果である。それでも、短い時間の後に、このエネルギのすべてが、最終的に熱に変換され、プラズマ放射は、パルスが終わった後に吸収され、運動粒子は、衝突を介して停止まで低速化する。化学的変質(通常は望まれない効果)を除いて、最終的に、入ってくる放射のすべてが熱に変換される。
【0163】
パルス幅よりはるかに長い時間スケールに関して、我々は、組織内に誘導される温度を推定するために、吸収層の全体熱近似を使用することができる。たとえば、平均2.5J/cm
2のフルエンス、500mJのパルス・エネルギ、5mmのスポット直径を検討さ
れたい。たとえば、レーザー放射を吸収するタトゥー・インクが、通常/支配的に、皮膚表面の300から700μm下の深さにある。我々は、すべての放射が、その厚さで、入力パルスの直径の円筒内で(簡単にするために)吸収されると仮定し、よい推定として水比熱を使用する。ΔT=E/M・Cを使用して、我々は、約34℃(外側)から36.8℃(内側)までの周囲皮膚温度より約15℃上の温度上昇に達する。
【表1】
【0164】
これは、0.5mm直径を有する5mJパルス・エネルギ(100倍低いエネルギおよび10倍小さい直径)に関しても真である。フルエンスが同様である場合に、同一の平均加熱が、この近似で必ず発生する。
【0165】
小さい低エネルギ・パルスだけを適用することの利点は、経時的な熱拡散を見ることによって明白になる。非常にすばやい初期加熱プロセス(ナノ秒以下程度)の後に、熱は、最初に加熱された体積から拡散し始める。被験者の身体が、高パルス・エネルギの総パルス・エネルギと比較して無限の熱だめであることを考慮すると、拡散は、加熱された体積の温度を自然な体温まで徐々に下げる。この冷却効果の速度は、上の例では非常に異なる加熱された組織の体積に大きく依存する。より正確には、速度は、加熱された組織の表面積に対する体積の比率によって決定される。小さい体積は、大きい体積よりはるかにすばやく冷える。
【0166】
関連する時間スケールを定量化するために、上の実施例2のように同一のフルエンスを有する2つのパルスの場合を検討されたい。1つのパルスだけが組織に当たると仮定して、熱はどのレートで拡散するのか。線形熱拡散を解くことが、我々に、時刻t=0での初期加熱の後の異なる時刻での温度の放射プロファイルを与える。高エネルギ大スポット(
図12A)および低エネルギ小スポット(
図12B)の温度プロファイルを、
図12に示す。約1秒後に、500mJパルスに関して、上昇した温度のわずかな変化だけがある121が、5mJパルス温度は、約50%だけ低下した122。500mJパルスに関して、温度が50%だけ低下するのに、100秒程度を要する。
【0167】
熱緩和時間を、本明細書では温度デルタが2倍だけ低下する時間と定義することができる。時間の関数としての加熱された組織体積の中央の温度を、
図13にプロットする。0.22mmスポットを有する1mJパルスに関して、熱緩和時間は、約0.12秒である。5mJ、0.5mmスポットに関して、熱緩和時間は約0.7秒であり、500mJ、5mmスポットの熱緩和時間は約70秒である。
【0168】
図14は、2.5J/cm
2の所与のフルエンスに関する熱緩和時間対パルス・エネル
ギを示すチャートである。箱142は、200~1000mJパルスを使用する従来の方法による作業点を示す。30~200秒の緩和時間が通常である。箱141では、0.1~8秒のはるかに短い緩和時間が、1~30mJのより小さいパルス・エネルギを使用して本発明に従って提供される。皮膚損傷しきい値が、143、144にプロットされている。
【0169】
前に述べたように、損傷が発生する前に、皮膚が、51℃で約6秒しか耐えられない144ことを考慮すると、したがって、上の例で、5mJパルスを使用すると、熱が1秒未満で放散するので、皮膚が、約51℃までの15℃温度上昇に耐えられることは明白である。500mJパルスに関して、同一の温度上昇に関して、緩和時間が損傷しきい値よりはるかに長い約70sなので、損傷が発生する。同一の分析が、損傷が発生する前に24秒間許容され得る50度の皮膚温度に関して真である。痛みが、損傷が発生する前に現れることも既知である。痛みしきい値は、損傷しきい値より低いが、温度依存性は同様である(Yarmolenko)。
【0170】
この理由から、痛みおよび損傷は、両方とも、200mJを超える大きいパルスではなく、小さいエネルギのパルス(1~30mJ)を使用することによって、減らされ、または完全に回避される。
【0171】
上の計算は、同一フルエンスでの低エネルギ・パルスに対する高エネルギ・パルスの比較を反映する。複数のスポットを用いて大きい領域を走査する時の高速緩和時間の利益を得るためには、隣接するパルスの間に適当な時間を設けることが重要である。これは、専用の走査技法を使用することによって達成することができる。隣接するスポットの使用可能な緩和時間を増やすスマート走査技法の例を、
図15Bに示す。N本の線の通常のラスタ走査(
図15A)で、各太線150は、複数のスポットからなる。1本の線を完了する
のに要する時間は、Tである。これは、時間Tの後に、各スポットが、下に新しい隣接物を有し、これが、それ自体の線の左右の隣接物に追加されることを意味する。ここで、インターレース走査(
図15B)を使用し、これは、線を連続的に走査するのではなく、最上部の線151を走査し、その後、M本の線をスキップして、はるかに離れた次の線152をマークすることを意味する。我々は、走査範囲のエッジに達するまでこれを継続し、ここで、最上部から2番目の線154に戻り、このプロセスを繰り返す。これは、隣接する線に、より大きい範囲に関して潜在的にはるかに長くなり得るK×T、K=floor(N/M)の緩和時間を与える。
【0172】
[実施例4]
システムの正しい機能性と被験者およびオペレータの安全とを保証するために、実施例1のシステムを、治療室12内に配置され得る専用ワーク・ヘッド・ホルダ内に特殊化されたテスト・ハードウェアおよびシーケンスを含めるように適合させることができる。本発明のホルダ27は、ワーク・ヘッド・インターフェース164、光学レンズ166、穴のあるセパレータ169、および光学パワー・メーター161を含む。
【0173】
図16を参照すると、ワーク・ヘッド4は、この図に示されているようにホルダ164の右側に接続される。接続が、治療に使用される、上で
図3を参照して説明したスペーサ18の接続に機械的に同一であることに留意されたい。
【0174】
164の左には、パワー・メーター161までの光学距離を適合させるレンズ166がある。パワー・メーターの上には、セパレータ169があり、複数のホールドが、レーザー放射がパワー・メーターに達することを可能にするためにドリル加工されている。
【0175】
図17Aは、検出器の方向のセパレータ左側170およびセパレータを通って延びる複数の穴172の配置をも示す。
図17Bは、ワーク・ピースの方向でのセパレータの右側171を示す。
【0176】
テスト・シーケンスを、
図18に示す。シーケンスは、正しい制御が適用され、主に制御ビーム・スイッチ15オンおよびフット・ペダル8が押下げられる時に限って始まる。その後、スキャナ・ミラー40が、セパレータ内の穴位置172に対応する位置に移動される。各位置で、主レーザー1/2がオンに切り替えられ、パワーが、パワー・メーター161で測定される。
【0177】
すべての事前定義の位置およびパワー測定が実行された後に、測定されたパワーが、許容可能な範囲を有する事前定義のテーブルと比較される。すべての測定値が事前定義の範囲内である場合に、テストは成功である。
【0178】
複数の好ましい態様に留意されたい。第1の態様は、パワー・メーター161(または任意の他の関連するセンサ)が、スペーサ18を使用して、治療される皮膚の平面と光学的に同等の平面内に配置されることである。これは、レーザー放射が通常はシステムの出力ではなくレーザー出力のより近くで測定される従来のシステムと対照的である。これは、被験者が正確な放射パラメータを受け取ることを保証し、光学経路に沿ったどこかすなわち、レーザーの内部から、光学要素、スキャナ、ワーク・ヘッド内のレンズを介して(
図2参照)、障害が発生することを考慮に入れる。
【0179】
第2に、異なる位置の異なるセパレータ穴は、スキャナ・ミラー40が事前定義の位置に達することを要求する。これは、スキャナ・ミラー、そのアクチュエータ、およびその制御エレクトロニクスのすべてが、期待される通りに実行していることを保証する。これは、光学ビームが、角度または位置のアライメントから外れて放浪していないことをも保
証し、この放浪は、セパレータ穴を部分的にまたは完全に見失い(ミラー・アクチュエータ障害のように)、低いパワー測定値をもたらすことに対応する。
【0180】
また、異なる直径の穴を作成することによって、ビームの発散をも考慮に入れることができる。この発散は、異なる直径の穴内の事前定義のパワー・レベルと比較して異なる測定されたパワー・レベルをもたらす。
【0181】
さらに、テスト中に、レーザー出力32(
図2参照)の隣に配置されたリアル・タイム・センサが、ホルダ・センサと比較され、それらがパルス・エネルギを一貫して測定していることを保証する。
【0182】
最後に、シーケンスは、治療中の正常動作と同一の形でのユーザ・コントロールの動作を要求し、スイッチまたはコントロールのすべての障害を考慮に入れる。
【0183】
テスト装置が、ワーク・ヘッドのホルダを組み込むことを必ずしも必要としないことを理解されたい。他の実施形態では、センサは、ワーク・ヘッドをそのようなものとして保持するようには設計されていないが、テストのためのセンサに対して相対的にワーク・ヘッドを安定して配置するためにワーク・ヘッドに係合するように構成されたワーク・ヘッド係合部分を有する支持構造に取り付けられ得る。上で説明した穴のあるセパレータの代わりに、センサは、レーザー・ビームの位置およびパワーを検出するための少なくとも1つの位置感知センサを含むことができる。
【0184】
[実施例5]
図19は、本発明の別の実施形態による、治療される被験者の皮膚の領域の自動化された走査のために適合されたレーザー治療装置を含む皮膚科治療施設の治療室を示す。治療椅子190の上に、大きい光学ワーク・ヘッド191が、平衡関節アーム192を介して懸架される。レーザー室(図示せず)内の装置は、上の実施例1で説明した装置に類似するが、この実施形態の治療室ワーク・ヘッドは、より大きく、治療される大きい領域(実施例1の手動で走査される小さい領域と比較して)を自動的に走査するのにイメージング・センサおよび他のセンサを利用する。
【0185】
レーザー走査は、産業材料処理応用例から幅広く既知である。同一のターゲット材料およびサンプルが大量に繰り返して走査されるレーザー走査の産業応用とは異なって、本発明では、被験者は、1回だけ(少なくとも治療ごとに)走査され、要求される走査パターンは、2人の被験者および2つの病変のどれもが同一ではないので、極まれにしか類似しない。さらに、誤りのコストは、許容できるものではなく、安全性の考慮事項が、最重要である。以下の説明は、これらの複雑化が、皮膚科適応症を治療するためのレーザーの高速で正確で安全な走査を提供するために本発明に従ってどのように対処されるのかを示す。
【0186】
図20Aおよび
図20Bでは、ワーク・ヘッド191の構成要素が、2つの断面図に示されている。レーザー放射は、レーザー室内の1つまたは複数の治療レーザーから関節アーム192を介してワーク・ヘッド入力200に入り、電動で調整可能な集束レンズ208を通る。その後、レーザー放射は、スキャナ201に入る。このスキャナは、実施例1のスキャナより大きく、ワーク・ヘッド191からの約[距離]の一定の距離に通常は維持される被験者の皮膚204上の100x100mmの領域をカバーするために160mmfθレンズ202を介してレーザー・ビームを向ける。スキャナ、一体化された集束レンズ、およびfθレンズは、たとえばドイツ国のScanLabまたは米国マサチューセッツ州のCambridge technologyからたやすく入手可能である。ワーク・ヘッド内に取り付けられたカメラ207は、治療エリアをイメージングするように動
作可能であり、照明LED 206は、特定の照明条件を供給する。カメラ207は、奥行きの3D測定が可能でもあり、治療される領域のイメージングに加えて、領域の高さマップを生成することができる。3Dカメラは、たとえば米国のIntelからのRealSenseなど、たやすく入手可能である。
【0187】
治療シーケンスを、
図21A~
図21Eで説明する。当初に、オペレータは、おおむねターゲット領域の上に配置されるようにワーク・ヘッド191を手動で操作する。関節アームは、摩擦がほとんどなくなるように平衡をとられ、オペレータは、ワーク・ヘッドを簡単に操作することができる。オペレータが使用可能な走査範囲の中央をターゲット領域にほぼ一致するように位置決めするのを助けるために、照準ビームが、使用可能な走査範囲のアウトラインを示すことによってこれを示す(
図21A参照)。画像処理を使用して、システムは、その後、カメラ207によって取り込まれた領域の画像に基づいて、色素沈着した領域を検出する。3Dカメラは、ターゲット領域の輪郭をも測定し、走査パラメータが計算される(
図21B)。走査計画が定義された後に、オペレータは、治療される計画された領域を示される。これは、専用のコンピュータ・インターフェースを用いて行うことができるが、この例では、被験者ターゲット領域に直接に示され、照準ビームだけを使用して、主治療レーザーによって実行される正確な計画されたパターンが、繰り返して走査される(
図21C)。その後、オペレータは、ユーザ・インターフェース・スクリーン内のボタンを押すことによって走査計画を承認し、その後、ワーク・ヘッドが、治療レーザーを用いて承認された領域を走査する(
図21D)。この走査の後に、システムは、使用可能な範囲のアウトラインを示すことに戻り、治療された領域は、通常、上で説明したようにつや消しの結果として白く見える(
図21E)。
【0188】
走査範囲内のすべての色素沈着した皮膚が、さらなるオペレータ関与なしで、即座に治療されることに留意されたい。これは、手動配置と比較した超高速の治療時間(100x100mm刺青に関して40秒まで、通常ははるかに短い)を達成しながらレーザー治療の正確さを保証する。
【0189】
システムは、スキャナ-皮膚距離および皮膚表面の輪郭を考慮に入れるために、集束レンズ208を調整するのに事前に測定された奥行きデータおよびリアル・タイム奥行きデータを使用することができる。いくつかの例では、ターゲット領域の輪郭は、領域全体の走査が不可能になるように曲がっている場合があり、たとえば手首の周囲の腕輪刺青である。奥行き測定中に(
図21B)、治療されるにはあまりに曲がっている(20度を超える角度に起因してまたは通常は35mmのシステムの焦点範囲を超える奥行きに起因して)色素沈着した領域は、計画された走査から省略される。
図22Aおよび
図22Bは、この特徴の例を示し、
図22Aでは、平坦なターゲットが走査され、使用可能な走査範囲221全体を利用することができる。
図22Bでは、スキャナ220の下の曲がった表面が、平坦な表面221のより大きい領域と比較して、表面223のより小さい領域が走査され得ることを暗示する。
【0190】
治療される色素沈着した領域を検出する画像処理アルゴリズムを、エッジ検出の1次導関数(ソボル)演算子を使用して、刺青の間で分割することができ、より柔らかい縁を有する色素性病変は、トレーニングされたニューラル・ネットワーク・アルゴリズムを利用することができる。これらのアルゴリズムは、当業者によって簡単に理解される。両方のアルゴリズムの正確さが100%ではないので、オペレータは、アルゴリズム結果を補正するのに適切なコンピュータ・インターフェース(図示せず)を使用し、必要な場合には走査パターンを手動で調整することができる。その後、パターンは、事前走査に更新される(
図21C)。
【0191】
最大走査領域より大きい領域または1回の走査では治療できない曲がった領域を治療す
る時に、治療を、複数のセグメントに分割することができる。オペレータは、各セグメントの上でスキャナを手動で位置決めし、パターン認識アルゴリズムを開始する。現在の画像と比較した前の画像に基づいて、適切なステッチング・アルゴリズムが、治療された前のセグメントを識別し、したがって、領域を2回治療することまたはいくつかの領域を見逃すことを防ぐ。このアルゴリズムを、
図23A~
図23Eに示す。第1のステップ(
図23A)では、スキャナが、治療される領域の左上領域の上に配置される。カメラ207は、スキャナ最大範囲231より大きい領域230を取り込む。パターン認識アルゴリズムが、色素沈着した領域を識別し、治療が、この領域に対して執行される235。その後、スキャナは、オペレータによって、図に示されているように右向きに移動される(
図23B)。オペレータは、前のカメラ画像230との新しいカメラ画像236内の多少のオーバーラップがあることを検証する必要がある。このオーバーラップは、234および232(前の画像と現在の画像とのオーバーラップ領域)に明示的に示されている。このオーバーラップを使用して、画像231および236をステッチすることができ、新しい治療エリアが、今や、パターン認識アルゴリズムによって識別されるが、前のステップ235で既に治療された領域は、マスクされる。したがって、新しい走査領域237が画定され、走査が、前の走査とのオーバーラップなしで実行される(
図23C)。その後、オペレータは、スキャナを領域の中央左に移動する(
図23D)。この時に、新しい画像内で領域239と比較した第1の画像の領域233とのオーバーラップが見つかる。ステッチング・アルゴリズムは、治療の領域240を画定し、走査が実行される(
図23E)。治療された皮膚が、皮膚の場合のレーザー治療で頻繁である皮膚白化(つや消しとも称する)に起因して時として外見が大幅に異なるので、ステッチング・アルゴリズムが、未治療の皮膚に頼ることに留意されたい。
【0192】
輪郭を描かれた領域を治療する時には、上のプロセスを、測定された曲率データを使用する平坦化された画像へのカメラ画像の投影の中間ステップを用いて繰り返すことができる。これらのアルゴリズムは、当業者に既知である。その後、より大きい領域および/または輪郭を描かれた治療領域の組合せは、単純である。
【0193】
さらに、事前定義のルール・セット(通常は、特定の色に関するレーザー)に基づいて、パターン認識アルゴリズムは、特定の色素色を識別し、治療レーザー波長を推奨する。
【0194】
刺青サイズに応じて数秒以上を要する可能性がある(上を参照されたい)主レーザー走査中に、被験者が動く場合がある。この理由から、カメラは、治療エリアを継続的にイメージングし、動きに関して監視することができる。走査中に主レーザーからの反射によって盲目にされないようにするために、電動光学フィルタ209(
図20参照)を治療走査中に使用して、様々なレーザー波長をブロックすることができる。
【0195】
照明光源206(
図20)は、特別に選択されたLEDである。LEDの一部は、主に可視範囲の「白色」光を放つことができる。これらは、アルゴリズムによる色素沈着した領域のパターン認識に使用される。いくつかの実施形態では、他のLEDが、UV範囲に固有である場合があり、かつ/または他のLEDが、IR範囲に固有である場合がある。複数の画像を、異なる照明光源を使用して撮影することができる。UV画像は、皮膚内の様々な色素沈着に関する情報を抽出し、IR画像は、IR波長レーザーの吸収を査定するのに使用される。
【0196】
このシステムを、配置を自動的に実行する6軸ロボット(
図24)と一体化することができる。これは、システムの利用および正確さをさらに高めることができる。
【0197】
[実施例6]
臨床経験が示すように、レーザー治療セッションには、被験者準備および治療後ケアの
10から20分の最小期間がある場合がある。実際の正味レーザー治療時間は、同等またはより速く、上の実施例1のシステムを使用して200cm2の刺青に関して約20分、
実施例5のシステムを使用する時に約2分未満である可能性がある(200cm2は、臨床経験に基づく、除去される最も一般的な刺青領域である)。これは、投資に対するより低い利益率をこうむる、レーザーおよびシステムの低い利用を暗示する。
【0198】
上記を軽減する解決策は、単一の治療レーザー・システムによってサポートされる、本発明による2治療室施設である。
図25を参照すると、システムは、1つの治療レーザー・システム(複数の波長を有する)253、制御ユニット254、2つの治療室251、252内の2つのワーク・ヘッド256、257(たとえば、実施例1または実施例5で説明した)、および電動フリップ・ミラー255を含む。各治療室は、治療椅子および治療を執行するのに必要なすべてのものをも含む。この実施形態では、フリップ・ミラーは、定位置にある時に、レーザー放射を部屋#1 252のワーク・ヘッドにステアリングする。フリップ・ミラーが光学経路の外にある時には、レーザーは、第2の治療室およびスキャナ・ヘッド256に向けられる。光学的詳細およびフリップ・ミラーは、当業者に周知であり、ここで詳細には説明しない。制御ユニットは、フリップ・ミラーの追加の制御を伴って、実施例1または実施例5で説明したものに非常に類似するものとすることができる。ワーク・ヘッドは、関節アーム、スキャナなど、前の例で説明したものと同一である。
【0199】
ある被験者が、第1の部屋252で治療されている時に、第2の被験者は、第2の部屋251で治療の準備をすることができる。制御ユニット254は、第1の部屋のワーク・ヘッド257からのオペレータ・コマンドを受け入れるように動作可能であり、この間に、第2の部屋のワーク・ヘッド256からのコマンドは無視される。治療が、第1の部屋で終了した(オペレータがワーク・ヘッドをオフに切り替えることによってシグナリングされる)後に、コントローラは、フリップ・ミラーをトグルし、第2のワーク・ヘッド256から受け取られるコマンドにその制御を転じる。現在治療の準備ができている第2の部屋内の被験者は、治療を開始し、第1の部屋内の第1の被験者は、治療後ケアを受けることができる。第1の部屋は、その後、清掃され、次の被験者が、治療の準備をし、したがって、彼/彼女は、第2の部屋内の被験者が治療を終了した後に、治療の準備ができている。
【0200】
この施設レイアウトは、実施例1または実施例5のいずれかのワーク・ヘッドの約2倍だけ利用を改善する。20分の平均治療時間を有する、実施例1のシステムに似たシステムに関して、利用を、オーバーヘッド(事前被験者ケア、事後被験者ケア)として90%超とすることができ、治療時間を、同様とすることができる。実施例5の走査ヘッド(自動化された領域走査)に類似する走査ヘッドを使用すると、治療レーザーが実際に走査している時間がまだ短い(20~30分おきに約4分)ので、比較的低い利用がまだ生じる。これに、以下の例で対処する。
【0201】
[実施例7]
実施例6で議論したように、患者の事前ケアおよび事後ケアによって下げられた全体的な利用を高めることが有益である。システム内で最も高価な構成要素は、治療レーザーである。システム利用を3倍高めるシステムを、これから
図26を参照して説明する。
【0202】
治療に要求されるものより3~4倍高いパルス・エネルギが可能なレーザー(すなわち、10~150mJが可能なレーザー)を使用すると、レーザー・ビームは、独立に働くようにセット・アップされた3つの治療エリア261、262、267の間で受動的に分割される。
【0203】
レーザー263は、専用ビーム・スプリッタ264によってエネルギで1:2の比率に分割される強力なパルスを放つ。より小さいパルス(元の1/3)は、第1の治療室262へ伝搬する。より大きいパルス(元の2/3)は、第2のビーム・スプリッタ265の向きに伝搬し続け、第2のビーム・スプリッタ265で、1:1に分割され、第2の部屋261および第3の部屋267に並列に向けられる。したがって、3つの治療室のすべてが、元のパルス・エネルギの約33%を受け取る。
【0204】
各治療室では、レーザー放射が、各部屋からの制御信号に別々に従って独立に変調される。これは、たとえば、部屋267のポッケルス・セル光学変調器266を使用して達成され得る。したがって、3つの独立のワーク・ヘッドが、3つの別々の領域で動作可能である。治療レーザー263は、継続的に働き、したがって、その出力で使用される光学変調器は、全く不要である。実際には、この変調器は、実際には3つの部屋のそれぞれに配置される。未使用のパルスは、ビーム・ダンプおよび各光学変調器の終りで放散される。
【0205】
したがって、レーザーの利用は、より高価なレーザーおよび3つの専用光学変調器を犠牲にして、3倍だけ高められる。
【0206】
たとえば6部屋施設に関する利用の6倍の改善を達成するために、この実施形態を前の実施形態と組み合わせることは、自明である。
【0207】
[実施例8]
上の実施例7では、3~4倍高いパルス・エネルギを有する治療レーザーが、3つの治療室に並列に分割される。パルス・エネルギのスケーリングは、一般に、レーザー・ダウンタイムを短縮するのに有利であるが、レーザーのコストが通常はパルス・エネルギに伴ってスケーリングするので、必ずしも最善の手法ではない可能性がある。対照的に、同一のパルス・エネルギを保ちながらパルス繰り返し率を高めること(すなわち、平均パワーを高めること)は、通常は、より好ましくスケーリングする。これは、平均パワーの増加が、ポンプ・ソースのスケーリングおよび熱負荷の処理を伴う(1次近似まで)が、パルス・エネルギのスケーリングが、さらに、内部レーザー表面へのレーザー誘導される光学損傷の処理を含み、これが、ビーム面積のスケーリングによって、したがって光学構成要素のサイズおよびコストの増加によって軽減されるからである。
【0208】
この例では、単一のレーザーを用いて3つの治療エリアをサポートする診療所を説明する。ここでは、3倍高い繰り返し率、たとえば600~3000Hzであるが同様のパルス・エネルギ1~30mJ(単一部屋診療所レーザーと比較して)のレーザーを使用する。
【0209】
図27を参照すると、レーザー室270は、上で指定した治療レーザー271、3つの高速光学変調器(ポッケルス・セル)273、274、275、制御ユニット292、およびビーム・ダンプ276を含む。変調器は、通常はオフに切り替えられ、レーザー出力272が乱されずにビーム・ダンプ276に進むことを可能にする。変調器273、274、275のうちの1つがオンに切り替えられる時に、放射のすべてが、対応する治療室の方向に約90度だけ偏向される。その後、放射は、その治療室内のワーク・ヘッドに達する。
【0210】
変調器は、公称レーザー周波数の1/3で制御ユニット292によって選択的にオンに切り替えられ、それらの間に1サイクル時間の相を有し、これは、変調器のうちの第1の変調器が、3つおきのパルスで1回だけ開かれ得、変調器のうちの第2の変調器が、次のパルスの間に1回だけ開かれ得、その後、第2からの3つおきのパルスに開かれるなどであることを意味する。実際には、組み合わされた変調器は、レーザーからパルス・トレー
ンをダウンサンプリングし、各治療室は、3つおきのパルスからの第1のパルス、第2のパルス、または第3のパルスを受け取る。
【0211】
ダウンサンプリングに加えて、変調器は、それに対応する治療室からのレージングの需要がある時に限ってパルスをステアリングする。詳細なタイミング図を、
図28に示す。レーザー・パルスは、黒い長方形310として示され、x軸は、時間を表す。レーザー出力272からの元のパルス・トレーンが、300に示されている。符号301は、2つの別々の時間期間に治療走査を要求する、第1の治療室のワーク・ヘッドからの信号を示す。302では、治療室281内のワーク・ヘッド292に達するレーザー出力272の出力が示されている。対応するワーク・ヘッドからの要求がある時に、レーザーからの3つおきのパルスが、第1の部屋にステアリングされる。残りのパルス303は、第2の変調器274の方向で継続する。304では、第2の部屋のワーク・ヘッド279から要求された治療信号が、第2の治療室の方向に第2の変調器274によって偏向され、最終的にワーク・ヘッド279に達するパルスと一緒に示されている。偏向されないパルスは、第3の変調器275に向かって継続する。数字306は、第3のワーク・ヘッドの要求された治療信号および第3の部屋に達する結果のパルスを示す。偏向されないパルス307は、最終的にビーム・ダンプ276に達し、そこで吸収される。
【0212】
要約すると、3つの高速光学変調器は、3つの処理室を同時に独立に処理するために高パルス繰り返し率レーザーを利用し、したがって、レーザーの高い利用を達成し、好ましい投資利益率を生む。3つの変調器が、この実施形態ではレーザー光の連続するパルスを3つの対応する治療エリアのワーク・ヘッドにステアリングするのに使用されるが、当業者は、他の実施形態で、レーザーの元のパルス繰り返し率に応じて、より少数またはより多数の変調器を、2つまたは4つ以上の治療室にビームを選択的にステアリングするのに使用できることを了解しよう。
【0213】
[コンピューティング・デバイスおよびコンピューティング・システム]
本明細書で説明され、かつ/または図示されるコンピューティング・デバイスおよびコンピューティング・システムは、コンピュータ可読命令を実行できる任意のタイプまたは形のコンピューティング・デバイスまたはコンピューティング・システムをおおまかに表す。その最も基本的な構成では、これらのコンピューティング・デバイス(1つまたは複数)は、それぞれ、少なくとも1つのメモリ・デバイスおよび少なくとも1つの物理プロセッサを含むことができる。
【0214】
いくつかの例では、用語「メモリ・デバイス」は、一般に、データおよび/またはコンピュータ可読命令を記憶することのできる任意のタイプまたは形の揮発性または不揮発性のストレージ・デバイスまたは媒体を指す。メモリ・デバイスの例は、限定なしに、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、フラッシュ・メモリ、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、光ディスク・ドライブ、キャッシュ、その1つまたは複数の変形形態または組合せ、あるいは、任意の他の適切なストレージ・メモリを含む。
【0215】
いくつかの例で、用語「物理プロセッサ」は、一般に、コンピュータ可読命令を解釈し、かつ/または実行することのできる任意のタイプまたは形のハードウェア実施された処理ユニットを指す。物理プロセッサの例は、限定なしに、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)、ソフトウェア・プロセッサを実施するフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、その1つまたは複数の部分、その1つまたは複数の変形形態または組合せ、あるいは、任意の他の適切な物理プロセッサを含む。
【0216】
本明細書で説明され、かつ/または図示されるプロセス・パラメータおよびステップのシーケンスは、例として与えられ、望み通りに変更され得る。たとえば、本明細書で説明され、かつ/または図示されるステップが、特定の順序で図示されまたは議論される場合があるが、これらのステップが、必ずしも図示されまたは議論される順序で実行される必要はない。本明細書で説明され、かつ/または図示される様々な例示的な方法は、本明細書で説明され、かつ/または図示されるステップのうちの1つまたは複数を省略することも、開示されるステップに加えて追加のステップを含むこともできる。
【0217】
本明細書で説明される実施形態のいずれかからの特徴を、本明細書で説明される全般的な原理に従ってお互いと組み合わせて使用することができる。これらおよび他の実施形態、特徴、および利点は、添付図面および特許請求の範囲に関連して前述の詳細な説明を読む時に、より十分に理解されよう。
【0218】
先行する説明は、本明細書で開示される例示的実施形態の様々な態様を当業者が利用することを可能にするために提供された。この例示的な説明は、網羅的であることまたは開示される正確な形態に限定することを意図されたものではない。多数の修正形態および変形形態が、本開示の趣旨および範囲から逸脱せずに可能である。本明細書で開示される実施形態は、あらゆる点で例示的であって、制限的ではないと考えられなければならない。本開示の範囲を決定する際には、添付の特許請求の範囲およびその同等物への参照が行われなければならない。
【0219】
[参考文献]
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【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の皮膚の選択された領域の少なくとも一部にレーザー光のパルス・ビームを照射することを含む皮膚科治療の方法であって、
各パルスは前記被験者の皮膚上にレーザー光のスポットを作り、1ns未満のパルス持続時間の約0.5~10J/cm
2
の範囲のフルエンスで供給され、
前記レーザー光のビームは、自動的に移動可能な光学系を使用してレーザーの指向を偏向させることによって、前記レーザー光のビームが前記選択された領域内の複数の経路をたどり、連続するパルスが前記経路に沿った隣接する部分に当たるように、前記選択された領域の少なくとも一部にわたって走査される、方法。
【請求項2】
前記皮膚科治療の目的は、皮膚の表面の下に人為的に導入された色素の除去である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮膚科治療の目的は、皮膚内の色素性病変の除去である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択された領域の1つまたは複数の画像をカメラで獲得することと、前記経路を決定するために自動画像認識技法を使用して前記1つまたは複数の画像を処理することと、その後、これらの経路に沿って前記レーザー光のパルス・ビームを走査することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
それらの部位を前記経路に沿って含めるために選択するように、画像処理が、前記選択された領域内で治療を必要とする部位を自動的に識別するために、前記部位の1つ以上の所定の特性に基づいて実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の特性のセットは、表皮下色素の存在、高濃度のメラニン、任意の前記表皮下色素の色を含むが、これらに限定されない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
それらの部位を前記経路に沿って含めるために選択しないように、画像処理が、前記選択された領域内ですでに治療された部位を自動的に識別するために、前記部位の1つ以上の所定の特性の第2のセットに基づいて実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の特性の第2のセットは、表皮下色素の不存在、皮膚の赤み(「紅斑」)、表皮下の気泡(「つや消し」)、点状出血、任意の前記表皮下色素の見かけの色、水泡形成、瘢痕化を含むが、これらに限定されない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
画像処理の方法は、以前に獲得された複数の画像でトレーニングされた人工ニューラル・ネットワークを使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
画像処理の方法は、畳み込みニューラル・ネットワークを使用する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記パルス・ビームは、約30Hz超、好ましくは約100Hz超、オプションで200~500Hzのパルス繰り返し率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記パルス・ビームは、約1000Hz以上のパルス繰り返し率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザー光のパルス・ビームは、約2mm未満の前記皮膚での直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザー光のパルス・ビームは、約1mm未満の前記皮膚での直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
走査期間の持続時間中の前記経路の時間的順序が、44℃を超える領域がないように、治療される皮膚の任意の部分のピーク温度も最小化するように最適化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
治療中に44℃を超える領域がないように、治療される皮膚のどの部分のピーク温度も最小化するために、走査期間の持続時間中、各経路の走査の間に可変な時間遅延を挿入する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
皮膚科治療のレーザー装置であって、
治療レーザー・ビームを2mm未満のスポット・サイズに収束するレンズと、調整可能なサイズおよび/または形状の走査範囲にわたって前記レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナとを含むワーク・ヘッドと、
少なくとも1つのパルス治療レーザーに前記ビーム・スキャナを接続する光学入力と、
治療される被験者の皮膚の領域に隣接して前記ワーク・ヘッドを配置する 調整可能な位置決めデバイスと、
治療される前記領域の画像を撮影するためのカメラと、
レーザー治療装置の動作を制御する自動制御システムとを含み、
前記自動制御システムは、前記カメラから治療される前記領域の1つまたは複数の画像を受け取り、治療される前記領域の少なくとも一部の形状を判定するために前記受け取られた画像を処理し、治療される前記領域の前記少なくとも一部の前記判定された形状に従い、前記走査範囲にわたって前記治療レーザー・ビームを走査するために、前記走査範囲の前記サイズおよび/または形状を調整するように構成される、皮膚科治療のレーザー装置。
【請求項18】
前記ビーム・スキャナは、一組の1つまたは複数のガルバノミラーである、請求項17に記載のレーザー装置。
【請求項19】
前記ワーク・ヘッドが、前記カメラに見える領域を照明するための光源を含む、請求項17に記載のレーザー装置。
【請求項20】
前記ビーム・スキャナは、一組の1つまたは複数の回転アキシコンレンズである、請求項17に記載のレーザー装置。
【請求項21】
前記被験者の皮膚上でオペレータに前記走査範囲のアウトラインを示すための可視で目に安全なガイド・ビームをさらに含み、前記自動制御システムは、前記被験者の皮膚上に前記走査範囲のアウトラインを表示するために前記ガイド・ビームを制御するようにさらに構成される、請求項17に記載のレーザー装置。
【請求項22】
前記自動制御システムは、カメラからの入力なしにオペレータによる前記走査範囲の前記形状および/またはサイズの調整を可能にするように構成される、請求項17に記載のレーザー装置。
【請求項23】
前記皮膚に供給されるレーザーが、1ns未満のパルス持続時間で0.5~10J/cm
2
の範囲のフルエンスである、請求項17に記載のレーザー装置。
【請求項24】
前記パルス・ビームは、約30Hz超、好ましくは約100Hz超、オプションで200~500Hzのパルス繰り返し率を有する、請求項17に記載のレーザー装置。
【請求項25】
前記パルス・ビームは、約1000Hz以上のパルス繰り返し率を有する、請求項17に記載のレーザー装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚科治療のレーザー装置の作動方法であって、
前記レーザー装置のレーザーが、1ns未満のパルス持続時間の約0.5~10J/cm2の範囲のフルエンスのレーザー光のパルス・ビームを放射する工程と、
前記レーザー装置の自動的に移動可能な光学系が、前記レーザーから放射された前記レーザー光のパルス・ビームが事前に決定された走査経路をたどり、連続するパルスが前記走査経路に沿った隣接する部分に当たるように、前記レーザー光のパルス・ビームの指向を偏向させる工程と、
を含む皮膚科治療のレーザー装置の作動方法。
【請求項2】
前記皮膚科治療のレーザー装置は、皮膚の表面の下に人為的に導入された色素の除去用のレーザー装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮膚科治療のレーザー装置は、皮膚内の色素性病変の除去用のレーザー装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カメラから1つまたは複数の画像を取得する工程と、自動画像認識技法を使用して前記1つまたは複数の画像を処理して前記走査経路を決定する工程と、その後、前記走査経路に沿って前記レーザー光のパルス・ビームを走査する工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記画像の処理が、治療を必要とする部位の1つ以上の所定の特性に基づいて、それらの部位を前記走査経路に沿って含めるために選択するように、前記1つまたは複数の画像内で治療を必要とする部位を自動的に識別するために実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の特性のセットは、表皮下色素の存在、高濃度のメラニン、任意の前記表皮下色素の色を含むが、これらに限定されない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記画像の処理が、すでに治療された部位の1つ以上の所定の特性の第2のセットに基づいて、それらの部位を前記走査経路に沿って含めるために選択しないように、前記1つまたは複数の画像内ですでに治療された部位を自動的に識別するために実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の特性の第2のセットは、表皮下色素の不存在、皮膚の赤み(「紅斑」)、表皮下の気泡(「つや消し」)、点状出血、任意の前記表皮下色素の見かけの色、水泡形成、瘢痕化を含むが、これらに限定されない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記画像の処理の方法は、以前に獲得された複数の画像でトレーニングされた人工ニューラル・ネットワークを使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記画像の処理の方法は、畳み込みニューラル・ネットワークを使用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パルス・ビームは、約30Hz超、好ましくは約100Hz超、オプションで200~500Hzのパルス繰り返し率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記パルス・ビームは、約1000Hz以上のパルス繰り返し率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザー光のパルス・ビームは、約2mm未満の前記皮膚での直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザー光のパルス・ビームは、約1mm未満の前記皮膚での直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
皮膚科治療のレーザー装置であって、
治療レーザー・ビームを2mm未満のスポット・サイズに収束するレンズと、調整可能なサイズおよび/または形状の走査範囲にわたって前記レーザー・ビームを走査するビーム・スキャナとを含むワーク・ヘッドと、
少なくとも1つのパルス治療レーザーに前記ビーム・スキャナを接続する光学入力と、
治療される被験者の皮膚の領域に隣接して前記ワーク・ヘッドを配置する 調整可能な位置決めデバイスと、
治療される前記領域の画像を撮影するためのカメラと、
レーザー治療装置の動作を制御する自動制御システムとを含み、
前記自動制御システムは、前記カメラから治療される前記領域の1つまたは複数の画像を受け取り、治療される前記領域の少なくとも一部の形状を判定するために前記受け取られた画像を処理し、治療される前記領域の前記少なくとも一部の前記判定された形状に従い、前記走査範囲にわたって前記治療レーザー・ビームを走査するために、前記走査範囲の前記サイズおよび/または形状を調整するように構成される、皮膚科治療のレーザー装置。
【請求項16】
前記ビーム・スキャナは、一組の1つまたは複数のガルバノミラーである、請求項15に記載のレーザー装置。
【請求項17】
前記ワーク・ヘッドが、前記カメラに見える領域を照明するための光源を含む、請求項15に記載のレーザー装置。
【請求項18】
前記ビーム・スキャナは、一組の1つまたは複数の回転アキシコンレンズである、請求項15に記載のレーザー装置。
【請求項19】
前記被験者の皮膚上でオペレータに前記走査範囲のアウトラインを示すための可視で目に安全なガイド・ビームをさらに含み、前記自動制御システムは、前記被験者の皮膚上に前記走査範囲のアウトラインを表示するために前記ガイド・ビームを制御するようにさらに構成される、請求項15に記載のレーザー装置。
【請求項20】
前記自動制御システムは、カメラからの入力なしにオペレータによる前記走査範囲の前記形状および/またはサイズの調整を可能にするように構成される、請求項15に記載のレーザー装置。
【請求項21】
前記皮膚に供給されるレーザーが、1ns未満のパルス持続時間で0.5~10J/cm2の範囲のフルエンスである、請求項15に記載のレーザー装置。
【請求項22】
前記パルス・ビームは、約30Hz超、好ましくは約100Hz超、オプションで200~500Hzのパルス繰り返し率を有する、請求項15に記載のレーザー装置。
【請求項23】
前記パルス・ビームは、約1000Hz以上のパルス繰り返し率を有する、請求項15に記載のレーザー装置。
【外国語明細書】