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特開2024-102365インサートを有する流管を備えたコリオリ流量計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102365
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】インサートを有する流管を備えたコリオリ流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/84 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01F1/84
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024081791
(22)【出願日】2024-05-20
(62)【分割の表示】P 2022525652の分割
【原出願日】2019-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランハム, グレゴリー トリート
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルバッハ, クリストファー エー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】層流条件下での測定精度が向上したコリオリ流量計を提供する。
【解決手段】コリオリ流量計は、流管800に連結されたドライバであって駆動方向に流管を振動させるように構成されたドライバと、流管に結合されたピックオフセンサであって流管800の動きを測定するように構成されたピックオフセンサと、内面854を有する導管852及び複数のインサート856a、856b、856c、856dであって複数のインサート856a、856b、856c、856dのそれぞれは、導管852の内面上の少なくとも第1の位置に連結されているインサートを有する流管と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流管(800、900)に連結されたドライバ(180)であって、前記流管(800、900)を駆動方向に振動させるように構成されたドライバ(180)と、
前記流管(800,900)に連結されたピックオフセンサ(170L、170R)で
あって、前記流管(800,900)の動きを測定するように構成された、ピックオフセ
ンサと、
前記流管であって、
内面(854)を有する導管(852)
及び
複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)であって、前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれは、前記導管(852)の内面(854)上の少なくとも第1の位置(858)に連結されるインサート
を有する流管と、
を備える、コリオリ流量計(100)。
【請求項2】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)がロッドとして成形されている、請求項1に記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項3】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)が、フィンとして成形されている、請求項1に記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項4】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)の少なくとも1つの、前記第1の位置(858)が、前記導管(852)のアクティブ部分の内部にある、請求項1から3のいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項5】
前記導管(852)の内面(854)上の前記第1の位置(858)が、前記導管(852)の屈曲部(802a、802b)内にある、請求項1から4のいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項6】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれが、前記導管の直径の少なくとも25%にわたって延びる、請求項1から5のいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項7】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれが、前記第1の位置(858)に連結された第1の端部と、前記導管(852)の内面(854)上の少なくとも第2の位置に連結された第2の端部とを含む、請求項1から6のいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項8】
前記導管(852)の直径が少なくとも2インチである、請求項1から7のいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項9】
前記複数のインサート(956a、956b)が、第1の長手方向(902a)を有する第1のインサート(956a)と、第2の長手方向(902b)を有する第2のインサート(956b)とを含み、前記第1の長手方向(902a)は、前記第2の長手方向(902b)から45度以上オフセットされている、請求項1から8のいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項10】
流管(800,900)を提供するステップと、
ドライバ(180)を流管(800,900)に連結するステップであって、前記ドラ
イバ(180)が、駆動方向に前記流管(800,900)を振動させるように構成され
る、ステップと、
ピックオフセンサ(170L、170R)を前記流管(800,900)に連結するス
テップであって、前記ピックオフセンサ(170L、170R)は、前記流管(800,
900)の動きを測定するように構成される、ステップと、を含み、
前記流管(800,900)は、内面(854)を有する導管(852)と複数のイン
サート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)とを含み、前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれは、前記導管(852)の内面(854)上の少なくとも第1の位置(858)に連結される、コリオリ流量計(100)の組み立て方法。
【請求項11】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)がロッドとして成形されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)がフィンとして成形されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記導管(852)の内面(854)上の第1の位置(858)が前記導管(852)のアクティブ部分の内部にある、請求項10から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記導管(852)の内面(854)上の前記第1の位置(858)が、前記導管(852)の屈曲部(802a、802b)内にある、請求項10から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれが、前記導管の直径の少なくとも25%にわたって延びる、請求項10から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれが、前記第1の位置(858)に連結された第1の端部と、前記導管(852)の内面(854)上の少なくとも第2の位置に連結された第2の端部とを含む、請求項10から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記導管(852)の直径が少なくとも2インチである、請求項10から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記複数のインサート(956a、956b)が、第1の長手方向(902a)を有する第1のインサート(956a)と、第2の長手方向(902b)を有する第2のインサート(956b)とを含み、前記第1の長手方向(902a)は、前記第2の長手方向(902b)から45度以上オフセットされている、請求項10から17のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に説明される実施形態はコリオリ流量計に関し、より詳細には、インサートを有する流管を備えたコリオリ流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ流量計は、質量流量、密度、体積流量の測定や、流動材料に関するその他の情報の提供のために使用できる流量計の一種である。流動材料は、液体、気体、液体および気体の混合物、液体中に懸濁された固体、並びに気体および懸濁固体を含む液体を含みうる。
【0003】
図1は、メータアセンブリ10およびメータ電子機器20を備えるコリオリ流量計100の例を示している。メータアセンブリ10は、プロセス材料の流れの変化に応答する。メータ電子機器20はリード線102を介して、または無線でメータアセンブリ10に接続され、メータ電子機器インターフェース26を介して、密度、体積流量、および質量流量情報を、その他の情報に加えて提供しうる。
【0004】
この例では、コリオリ流量計100は、2つの湾曲した流管130および130’を備える。しかしながら、さらなる実施形態では、コリオリ流量計100は、単一の流管、または3つ以上の流管を含んでもよい。あるいは、当業者であれば理解できるように、コリオリ流量計100は、一つ以上の湾曲した、または直線状の流管を備えてもよい。
【0005】
例示的なメータアセンブリ10は、一対のマニホールド150および150’、フランジ103および103’、一対の平行な流管130および130’、ドライバ180、ならびに一対のピックオフセンサ170Lおよび170Rを含む。流管130および130’は、それらの長さに沿って2つの対称な位置で曲がり、それらの長さ全体にわたって本質的に平行である。補強バー140および140’は、それぞれの流管の振動の中心軸を定めるように機能する。
【0006】
フランジ103および103’が、入口端104および出口端104’を介して、測定されているプロセス材料を運ぶプロセスライン(図示せず)に接続されると、材料は、フランジ103を通ってメータの入口端104に入り、マニホールド150を通って流管取付ブロック120に導かれる。材料はマニホールド150内で分割され、流管130および130’を通って送られる。流管130および130’を出ると、プロセス材料は、流管取付ブロック120’を通ってマニホールド150’内で再び合流して単一の流れになり、その後、フランジ103’によってプロセスライン(図示せず)に接続された出口端104’に送られる。
【0007】
両方の流管130および130’は、ドライバ180によって反対方向に駆動され、これはコリオリ流量計100の第1の逆位相曲げモードと呼ばれるものである。流管130および130’の両方は、ドライバ180によって、反対方向に、いわゆるコリオリ流量計100の第1の逆位相曲げモードで駆動される。このドライバ180は、流管130’に取り付けられた磁石、および流管130に取り付けられ両方の流管を振動させるために交流が通される対向コイルなど、多数の周知の構成の任意の1つを備えることができる。適切なドライバ電圧が、メータ電子機器20によってドライバ180に印加される。
【0008】
メータ電子機器20は、駆動信号をドライバ180に供給して、流管130および130’を振動させる。メータ電子機器20は、ピックオフセンサ170Lおよび170Rか
ら左右の速度信号を受信して、メータアセンブリ10を通過する流れの質量流量、体積流量、および/または密度情報を計算する。
【0009】
ピックオフセンサ170Lおよび170Rは、流管130および130’が振動するときの変位を測定する。流管130および130’を通る流れがない状態では、ピックオフセンサ170Lおよび170Rの信号は同位相である。しかし、振動する管を通して流動が始まると、管にコリオリ力が誘起される。
【0010】
コリオリ流量計を流れる流体は、層流を示すことがある。導管内の層流下の流体は、導管の境界に隣接すると速度が遅く、その境界から離れると速度が速くなる。このため、従来のコリオリ流量計は、より小さな質量コリオリ力と、それに対応したより小さな質量流量測定値を生成する可能性がある。層流のために、従来のコリオリ流量計は、それによって、流体の流れを過小測定する可能性がある。
【0011】
必要とされているのは、層流条件下での測定精度が向上したコリオリ流量計である。
【発明の概要】
【0012】
一実施形態によれば、コリオリ流量計が提供される。コリオリ流量計は、流管に連結されたドライバであって前記流管を駆動方向に振動させるように構成されたドライバと、前記流管に連結され、前記流管の動きを測定するように構成されたピックオフセンサと、前記流管であって、内面を有する導管及び複数のインサートであって前記複数のインサートのそれぞれは前記導管の内面上の少なくとも第1の位置に連結されているインサートを有する前記流管と、を有する。
【0013】
一実施形態によれば、コリオリ流量計の組み立て方法が提供される。この方法は、流管を提供するステップと、流管にドライバを連結するステップであって、前記ドライバが前記流管を駆動方向に振動させるように構成される、ステップと、ピックオフセンサを前記流管に連結するステップとを含み、前記ピックオフセンサは、前記流管の動きを測定するように構成され、前記流管は、内面を有する導管と複数のインサートとを含み、前記複数のインサートのそれぞれは、前記導管の内面上の少なくとも第1の位置に連結される。
【0014】
[態様]
一態様によれば、前記複数のインサートは、ロッドとして成形されてもよい。
【0015】
一態様によれば、複数のインサートは、フィンとして成形されてもよい。
【0016】
一態様によれば、複数のインサートのうちの少なくとも1つの、第1の位置は、導管のアクティブ部分の内部にあってもよい。
【0017】
一態様によれば、導管の内面上の第1の位置は、導管の屈曲部内にあってよい。
【0018】
一態様によれば、複数のインサートのそれぞれは、導管の直径の少なくとも25%にわたって延びてもよい。
【0019】
一態様によれば、複数のインサートのそれぞれは、第1の位置に連結された第1の端部と、導管の内面上の少なくとも第2の位置に連結された第2の端部とを含んでいてもよい。
【0020】
一態様によれば、導管の直径は、少なくとも2インチでありうる。
【0021】
一態様によれば、複数のインサーは、第1の長手方向を有する第1のインサートと、第2の長手方向を有する第2のインサートとを含むことができ、第1の長手方向は、前記第2の長手方向から45度以上オフセットされている。
【0022】
一態様によれば、前記複数のインサートは、ロッドとして成形されてもよい。
【0023】
一態様によれば、複数のインサートは、フィンとして成形されてもよい。
【0024】
一態様によれば、複数のインサートのうちの少なくとも1つの、第1の位置は、導管のアクティブ部分の内部にあってもよい。
【0025】
一態様によれば、導管の内面上の第1の位置は、導管の屈曲部内にあってよい。
【0026】
一態様によれば、複数のインサートのそれぞれは、導管の直径の少なくとも25%にわたって延びてもよい。
【0027】
一態様によれば、複数のインサートのそれぞれは、第1の位置に連結された第1の端部と、導管の内面上の少なくとも第2の位置に連結された第2の端部とを含んでいてもよい。
【0028】
一態様によれば、導管の直径は、少なくとも2インチでありうる。
【0029】
一態様によれば、複数のインサーは、第1の長手方向を有する第1のインサートと、第2の長手方向を有する第2のインサートとを含むことができ、第1の長手方向は、前記第2の長手方向から45度以上オフセットされている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
すべての図面において、同じ参照番号は同じ要素を表す。図面は必ずしも原寸に比例していないことを理解されたい。
図1図1は、一実施形態に係る流量計100を示す。
図2図2は、一実施形態に係る可動流管200を示す。
図3図3Aは一実施形態に係る可動流管300を示し、図3Bは一実施形態に係るプロット350を示す。
図4図4Aは一実施形態に係る可動流管400を示し、図4Bは一実施形態に係るプロット450を示す。
図5図5Aは一実施形態に係る流体流500を示し、図5Bは一実施形態に係る流体流550を示す。
図6図6は、一実施形態に係るプロット600を示す。
図7図7Aは一実施形態に係る流体流700を示し、図7Bは一実施形態に係る流体流720を示し、図7Cは一実施形態に係る流体流740を示し、図7Dは一実施形態に係る流体流760を示す。
図8図8Aは一実施形態に係る流管800を示し、図8Bは一実施形態に係る流管800の詳細850を示す。
図9図9は、一実施形態に係る流管900を示す。
図10図10は、一実施形態に係る方法1000を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図2図10および以下の説明は、本出願の最良の態様を作成及び使用する方法を当業者に教示するための具体的な例を示す。本発明の原理を教示する目的において、いくつかの従来からの態様は、単純化され、あるいは省略されている。当業者であれば、本出願の
範囲内に含まれるこれらの例からの変形を理解できるであろう。当業者であれば、以下に記載される特徴を様々な方法で組み合わされて、本出願の複数の変種を形成できることを、理解できるであろう。結果として、本出願は、以下で説明される具体的な例に限定されるものではなく、特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ限定される。
【0032】
図2は、可動流管200を示す。流量計100の流管130、130’を含む可動流管200は、図の流体の流れがない状態において、第1の逆位相曲げモード(駆動モード)で振動する。図1に見られるように、ピックオフセンサ170R、170Lは、ドライバ180の両側の流管130、130’に連結され、それらが振動するときの流管130、130’の変位を測定する。図2に示されているような流れのない条件下では、ピックオフセンサ170R、170Lは、対称的な位相信号を提供する。しかし、振動する管を通って流体流が始まると、コリオリ力が管に誘起される。
【0033】
コリオリ力の式は次の通りである。
【数1】
ここで、
【数2】
はコリオリ力、mは質量、
【数3】
は角回転、
【数4】
は流体の速度である。逆位相曲げモードにおける流体流を伴うコリオリ力は、図3Aの可動流管300に見ることができる。角運動量
【数5】
速度、
【数6】
およびコリオリ力
【数7】
を含む力ベクトルの2つの例が、ドライバ180の両側において、図3Aの可動流管300の上に重ねられている。
【0034】
逆位相曲げモードでの可動流管300に沿ったコリオリ力分布が、図3Bのプロット350に描かれている。プロット350において、X軸は、流管130の軸に沿った距離であり、Y軸は、コリオリ力である。プロット350上に重ねられているのは、ピックオフセンサ170L、170Rおよびドライバ180の位置の例である。コリオリ力ベクトル
【数8】
は、ドライバの両側で反対方向を指していることが分かる。
【0035】
図4Aは、可動流管400を示している。可動流管400は、流体流を伴う逆位相曲げモードの2つの流管130、130’を含む。図4Bは、流体が流れている間にピックオフセンサ170Lおよび170Rで検出された位相のプロット450を示している。プロット450から分かるように、ピックオフセンサ170Lおよび170Rで検出される動きの間の位相差は、位相オフセットΔφである。位相オフセットΔφは、テスト対象の流体の質量流量
【数9】
に正比例する。
【数10】
ここで、FCF(グラム/(秒又はマイクロ秒))はメータの流量校正係数である。流量較正係数FCFは、多くの場合、試験条件下で製造業者によって決定される。
【0036】
乱流及び層流は、レイノルズ数で決まる。
【数11】
ここで、ρは密度、Vは速度、Dは直径、μは粘度である。レイノルズ数Reが2000以下では流体はほぼ層流であり、4000以上では乱流である。レイノルズ数Reが2000と4000との間の場合、流体は乱流と層流との遷移ゾーンにある。
【0037】
式1は、流体速度
【数12】
項が管全体にわたって一様であると仮定している。しかし、この一様流速
【数13】
の仮定は乱流領域の流体にのみ適用される。層流領域の流体の速度は、流管直径に沿って変化する。
【0038】
例えば、図5Aおよび5Bは、それぞれ、流体流500および流体流550を示す。流体流500および550は、それぞれ、乱流および層流の流体流についての、流管130の直径を横切る方向(縦方向)での、速度
【数14】
プロファイル(水平矢印の長さ)を描いている。図5Aおよび5Bの流れは、同じ質量mおよび角回転
【数15】
を有する流体を表す。図5Aおよび図5Bに示されるように、流管の中心軸に沿って配置された速度ベクトルα1およびα2は、層流および乱流下では同じ大きさを有する。したがって、流管の中心軸に沿った、層流および乱流下の流体は、ほぼ同じ実効コリオリ力
【数16】
を生成する。
【0039】
しかしながら、流体流500および550の境界に沿って、層流については速度ベクトルβ1が、乱流については速度ベクトルβ2が、示されている。乱流の場合、速度ベクトルβ2およびα2は、ほぼ同じである。しかし、層流については、中心側の速度ベクトルα1は外側の速度ベクトルβ1よりも大きい。乱流速度ベクトルβ2は層流ベクトルβ1より大きいので、層流下の流体は乱流下の流体に対してより効果の低いコリオリ力
【数17】
を生成しうる。したがって、層流条件下の流体の流体流550について求めた質量流量
【数18】
は、乱流条件下の流体の流体流500について求めた質量流量
【数19】
より小さくなる可能性がある。
【0040】
図6は、低流量誤差効果を示すプロット600である。プロット600は、体積誤差のパーセントを示すY軸と、レイノルズ数を示すX軸とを含む。プロット600では、レイノルズ数が100,000未満の流体は、層流による過小測定に起因すると考えられる、
負の体積誤差量の増加が認められるであろう。
【0041】
図7A図7B図7C、および図7Dは、それぞれ障害物702の周りの流体流720、740、760、および780を示す。図から分かるように、図7A~7Dの左から層流で入る流体は、障害物702の周りを迂回した後に図の右から出ている。図7Aでは、流体は1未満のレイノルズ数Reを有し、流体は、障害物702を通過した後に再び層流となる。図7Bでは、流体は1から30のレイノルズ数Reを有し、流体は、障害物702を通過した後再び層流となる前に、少しの渦を生成する。図7Cでは、流体は30から1000のレイノルズ数Reを有し、流体は、障害物702を通過した後より多くの渦を生成し、フォンカルマン渦列を形成する。図7Dでは、流体は1000より大きいレイノルズ数Reを有し、流体は、障害物702を通過した後に、流管に沿ってある程度の距離にわたって乱流となる。
【0042】
本出願の一実施形態では、図7Dの障害物702と同様に、レイノルズ数が100,0
00未満の流体の体積誤差を減少させるために、インサートを有する流体管を使用して、流体に乱流を発生させる。例えば、図8Aは流管800の断面を示し、図8Bは、一実施形態に係るコリオリ流量計100のための流管800の詳細を示す。上述したように、コリオリ流量計100は、流管、例えば流管700に連結されたドライバ180を備え、ド
ライバ180は、流管800を駆動方向に振動させるように構成される。コリオリ流量計100は、流管800に連結されたピックオフセンサ170L、170Rをさらに備え、流管800の動きを測定するように構成される。
【0043】
上述のコリオリ流量計100は、二重流体導管流量計を含むが、単一の、または任意の他の複数の導管流量計を実施することは、十分に本発明の範囲内であることを理解されたい。さらに、流体導管130、130’は、湾曲した流体導管構成を備えるものとして示されているが、本発明は、1つまたは複数の直線状の流体導管を備える流量計を用いて実施することができる。したがって、上述のコリオリ流量計100の特定の実施形態は単なる一例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
流管800は、内面854を有する導管852を含む。実施形態において、導管852は、円形断面、楕円形断面、または当業者に公知の任意の他の断面を有し得る。円形断面を含む導管852を備えた流管800の例では、内面854は、4つの屈曲部を有する円筒状の表面である。
【0045】
流管800は、複数のインサートをさらに備え、複数のインサートのそれぞれは、導管の内面の少なくとも第1の位置に連結される。例えば、図8Bは複数のインサート856a、856b、856c、856dを示しており、図8Aは流管800の他の部分に沿ったさらなる複数のインサートを示している。複数のインサート856a、856b、856c、856dのそれぞれは、導管852の内面854上のそれぞれの位置、例えばインサート856aについては第1の位置858に連結されている。
【0046】
複数のインサート856a、856b、856c、856dを流管800の内面854に沿って配置することによって、コリオリ流量計100内に乱流を発生させることができ、これにより、測定中の流体が層流を示すときに発生する誤差を低減することができる。
【0047】
流管800の例は、何の限定も意図していない。当業者であれは容易に理解できるように、流管800は、乱流を増大させるために、任意の数のインサート856a、856b、856c、856dを含むことができる。
【0048】
実施形態では、複数のインサート856a、856b、856c、856dのうちの少なくとも1つの、第1の位置858は、流管800のアクティブ部分に配置できる。例えば、複数のインサート856a、856b、856c、856dのうちの少なくとも1つは、ドライバ180によって振動するように駆動される流管800の一部、例えば、図1の補強バー140と140’との間の流管800の部分、に配置されうる。
【0049】
流管800のアクティブ部分にインサート856a、856b、856c、856dを設けることによって、コリオリの力が最も強く、ピックオフセンサ170L、170Rが配置されやすい場所に、乱流を提供することが可能となりうる。これは、コリオリ流量計100の、層流下での流体の過小測定に起因して発生する誤差を、最小限に抑えうる。
【0050】
実施形態では、複数のインサート856a、856b、856c、856dのうちの少なくとも1つの、第1の位置858は、導管の屈曲部内にある。例えば、複数のインサート856a、856b、856c、856dのうちの少なくとも1つは、図8Aおよび図8Bのそれぞれに示されるように、屈曲部802aまたは802bの一部に配置すること
ができる。
【0051】
流管800の湾曲部分802a、802b内にインサート856a、856b、856c、856dを設けることによって、試験中の流体において、乱流の領域が最大となりう
る、乱流を生成することが可能となりうる。これは、コリオリ流量計100の、層流下での流体の過小測定に起因して発生する誤差を、さらに最小限に抑えるのに寄与しうる。
【0052】
実施形態では、複数のインサート856a、856b、856c、856dのそれぞれは、導管852の直径の少なくとも25%にわたって延びていてもよい。内面854の二つの別個の部分に接続しないインサート856a、856b、856c、856dを設けることで、流管800の製造の際に、インサートを二つの別個の部分で内面854に接続する場合に生じる可能性のある、位置合わせの問題を引き起こすことなく、乱流を最大とすることが可能となり得る。
【0053】
しかしながら、当業者であれば容易に理解するように、複数のインサート856a、856b、856c、856dのそれぞれは、導管852の直径に対して任意の長さにわたることができる。実施形態では、例えば、複数のインサート856a、856b、856c、856dは、導管852の直径の少なくとも30、50、70、または100パーセントにわたって延在してもよい。
【0054】
しかしながら、さらなる実施形態では、複数のインサート856a、856b、856c、856dのうちの1つまたは複数のインサートは、第1の位置に連結された第1の端部と、導管の内面上の少なくとも第2の位置に連結された第2の端部とを含んでいてもよい。実施例では、複数のインサート856a、856b、856c、856dのいずれのインサートも、流管800の中心軸を通過するように配置されてもよい。しかし、さらなる例では、複数のインサート856a、856b、856c、856dのいずれのインサートも、流管800の中心軸を通ることなく、流管の断面を横切って配置されてもよい。
【0055】
実施形態において、複数のインサート856a、856b、856c、856dは、ロッドとして成形されてもよい。例えば、複数のインサート856a、856b、856c、856dは、円形断面を有する長くて薄い部材を含みうる。
【0056】
さらなる実施形態では、複数のインサート856a、856b、856c、856dは、フィンとして成形されてもよい。例としては、フィンは、流管の軸線に沿って延びる長手方向を有する、実質的に平面状のインサートを含みうる。
【0057】
さらなる実施形態では、当業者であれは理解できるように、試験中の流体に乱流を提供し、及び/または低コストでの製造を可能にする、インサート856a、856b、85
6c、856dの他の形状または向きが可能であり得る。
【0058】
実施形態では、流管800の導管852の直径は、少なくとも2インチでありうる。これは、テスト対象の過小測定の原因となる層流が発生する可能性の高い、より大きなメータでの、メータ精度を向上させうる。
【0059】
実施形態では、複数のインサート856a、856b、856c、856dは、第1の長手方向を有する第1のインサートと、第2の長手方向を有する第2のインサートとを含むことができ、第1の長手方向は、第2の長手方向から45度以上オフセットされる。例えば、図9は、一実施形態に係る流管900の断面図を示す。図9では、第1のインサート956aが第1の長手方向902aを有し、第2のインサート956bが第2の長手方向902bを有することが分かる。実施形態では、第1のインサート956aおよび第2のインサート956bは、流管900の長さ方向に沿って同じ位置または異なる位置に配置されてもよい。第1の長手方向902aは、第2の長手方向902bから45度以上オフセットされるように配向される。
【0060】
複数のインサート956a、956bの1つまたは複数のインサートを異なる方向に配向させることによって、流管900が試験中の流体の乱流を生成する能力を向上させることができる。
【0061】
図10は、一実施形態に係る方法1000を示す。方法1000は、一実施形態に係るコリオリ流量計を組み立てるために実行できる。
【0062】
方法1000は、ステップ1002から開始する。ステップ1002において、流管が提供される。例えば、内面854を有する導管852と、複数のインサート856a、856b、856c、856dとを備え、複数のインサート856a、856b、8568c、856dのそれぞれが、上述のように、導管852の内面854上の少なくとも第1
の位置858に連結されている、流管800が提供されうる。
【0063】
実施形態において、流管800は、導管852を貫通する1つ以上の孔を、ドリル加工、機械加工、ワイヤ放電加工することによりにより、形成されうる。次に、複数のインサート856a、856b、856c、856dのそれぞれを、複数の孔のそれぞれに挿入し、導管852に溶接、ろう付け、または他の方法で連結し、これにより流体漏れがないように流管800を封止する。
【0064】
さらなる実施形態では、流管800は、射出成形によって製造されてもよい。
【0065】
方法1000は、ステップ1004に続く。ステップ1004では、ドライバが、流管に連結され、ドライバは、流管を駆動方向に振動させるように構成される。例えば、ドライバ180は、当業者には公知の任意の連結技術を用いて流管800に連結され、上述したように、流管800を駆動方向に振動させうる。
【0066】
方法1000は、ステップ1006に続く。ステップ1006では、ピックオフセンサが流管に連結され、ピックオフセンサは、流管の動きを測定するように構成される。例えば、ピックオフセンサ170L、170Rは、当業者には公知の任意の連結技術を使用して流管800に連結され、流管800の動きを測定することができる。
【0067】
方法1000は、レイノルズ数Reが100000未満であり、したがって層流を示す傾向があるテスト対象の流体に使用される流量計において見られる過小測定問題のない、コリオリ流量計の組立を可能にし得る。
【0068】
方法1000の実施形態では、複数のインサートは、上記のようにロッドとして成形することができる。
【0069】
方法1000の実施形態では、複数のインサートは、上記のように、フィンとして成形することができる。
【0070】
方法1000の実施形態では、複数のインサートのうちの少なくとも1つの、第1の位置は、上記のように、導管のアクティブ部分に配置され得る。
【0071】
方法1000の実施形態では、複数のインサートのうちの少なくとも1つの、第1の位置は、上記のように、導管の屈曲部内に配置され得る。
【0072】
実施形態では、複数のインサートのそれぞれは、上記のように、導管の直径の少なくとも25%にわたって延びてもよい。
【0073】
実施形態では、複数のインサートのそれぞれは、上記のように、導管の内面上の第1の位置に連結された第1の端部と、少なくとも第2の位置に連結された第2の端部とを含んでもよい。
【0074】
実施形態では、導管の直径は、上記のように、少なくとも2インチであってもよい。
【0075】
実施形態では、複数のインサート956a、956bは、第1の長手方向902aを有する第1のインサート956aと、第2の長手方向902bを有する第2のインサート956bを含むことができ、第1の長手方向902aは、第2の長手方向902bから45度以上オフセットされる。
【0076】
このように、特定の実施形態が例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者であれば理解できるように、本明細書の範囲内で様々な同等の修正が可能である。したがって、上述の実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲から決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流管(800、900)に連結されたドライバ(180)であって、前記流管(800、900)を駆動方向に振動させるように構成されたドライバ(180)と、
前記流管(800,900)に連結されたピックオフセンサ(170L、170R)であって、前記流管(800,900)の動きを測定するように構成された、ピックオフセンサと、
前記流管であって、
内面(854)を有する導管(852)
及び
複数のロッド形状のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)であって、前記複数のロッド形状のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれは、前記導管(852)の内面(854)上の少なくとも第1の位置(858)に連結され乱流を生成し層流下での前記流管内の流体の測定誤差を最小化するように構成され、前記第1の位置(858)に連結された第1の端部と、前記導管(852)の内面(854)上の少なくとも第2の位置に連結された第2の端部とを含む、インサート
を有する流管と、
を備える、コリオリ流量計(100)。
【請求項2】
前記複数のロッド形状のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)が、固体である、請求項1に記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項3】
前記複数のロッド形状のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)の少なくとも1つの、前記第1の位置(858)が、前記導管(852)のアクティブ部分の内部にある、請求項1又は2に記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項4】
前記導管(852)の内面(854)上の前記第1の位置(858)が、前記導管(852)の屈曲部(802a、802b)内にある、請求項1からのいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項5】
前記導管(852)の直径が少なくとも2インチである、請求項1からのいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項6】
前記複数のロッド形状のインサート(956a、956b)が、第1の長手方向(902a)を有する第1のインサート(956a)と、第2の長手方向(902b)を有する第2のインサート(956b)とを含み、前記第1の長手方向(902a)は、前記第2の長手方向(902b)から45度以上オフセットされている、請求項1からのいずれかに記載のコリオリ流量計(100)。
【請求項7】
流管(800,900)を提供するステップと、
ドライバ(180)を流管(800,900)に連結するステップであって、前記ドライバ(180)が、駆動方向に前記流管(800,900)を振動させるように構成される、ステップと、
ピックオフセンサ(170L、170R)を前記流管(800,900)に連結するステップであって、前記ピックオフセンサ(170L、170R)は、前記流管(800,900)の動きを測定するように構成される、ステップと、
を含み、
ここで前記流管(800,900)は、内面(854)を有する導管(852)と複数のロッド形状のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)とを含み、
前記複数のロッド形状のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれのインサートの第1の端部を、前記導管(852)の内面(854)上の少なくとも第1の位置(858)に連結するステップと、
前記複数のロッド形状のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)のそれぞれのインサートの第2の端部を、前記導管(852)の内面(854)上の少なくとも第2の位置に連結するステップと、
をさらに含み、
前記複数のロッド形状のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)が、乱流を生成し層流下での前記流管内の流体の測定誤差を最小化するように構成されている、コリオリ流量計(100)の組み立て方法。
【請求項8】
前記複数のインサート(856a、856b、856c、856d、956a、956b)が固体である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記導管(852)の内面(854)上の第1の位置(858)が前記導管(852)のアクティブ部分の内部にある、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記導管(852)の内面(854)上の前記第1の位置(858)が、前記導管(852)の屈曲部(802a、802b)内にある、請求項からのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記導管(852)の直径が少なくとも2インチである、請求項から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記複数のロッド形状のインサート(956a、956b)が、第1の長手方向(902a)を有する第1のインサート(956a)と、第2の長手方向(902b)を有する第2のインサート(956b)とを含み、前記第1の長手方向(902a)は、前記第2の長手方向(902b)から45度以上オフセットされている、請求項から11のいずれかに記載の方法。
【外国語明細書】