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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102374
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】粘膜炎の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/231 20060101AFI20240723BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 9/64 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 31/23 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 31/4453 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K31/231
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/64
A61K47/10
A61K47/22
A61K31/23
A61K31/4453
A61K31/661
A61K38/18
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P1/02
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084387
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2022099653の分割
【原出願日】2016-11-09
(31)【優先権主張番号】62/253,019
(32)【優先日】2015-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/959,750
(32)【優先日】2015-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518161905
【氏名又は名称】エンジーケム ライフサイエンシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ソン キ ヨン
(57)【要約】
【課題】口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)及び消化管粘膜炎などの粘膜炎の予防及び治療のための新規治療法を提供すること。
【解決手段】本発明は、モノアセチルジアシルグリセロール化合物、特にPLAGを含む、粘膜炎、例えば、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)及び消化管粘膜炎の予防又は治療のための医薬組成物、及びこれを用いて粘膜炎を予防又は治療する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1の化合物の有効量を必要とする患者に投与することを含む、粘膜炎の予防又は治療法:
【化1】
ここで、R及びRは、それぞれ独立して炭素数14~20の脂肪酸残基である。
【請求項2】
及びRは、それぞれ独立して、パルミトイル、オレオイル、リノレオイル、リノレノイル、ステアロイル、ミリストイル、及びアラキドノイルからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
及びR(R/R)は、オレオイル/パルミトイル、パルミトイル/オレオイル、パルミトイル/リノレオイル、パルミトイル/リノレノイル、パルミトイル/アラキドノイル、パルミトイル/ステアロイル、パルミトイル/パルミトイル、オレオイル/ステアロイル、リノレオイル/パルミトイル、リノレオイル/ステアロイル、ステアロイル/リノレオイル、ステアロイル/オレオイル、ミリストイル/リノレオイル、ミリストイル/オレオイルからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
化学式1の化合物は、化学式2の化合物であるものである、請求項1~3のいずれかの項に記載の方法。
【化2】
【請求項5】
化学式2の化合物は、他のモノアセチルジアシルグリセロールを実質的に含有しない医薬組成物として投与されるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
化学式2の化合物は、他のトリグリセリド化合物を実質的に含有しない医薬組成物として投与されるものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
粘膜炎は、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)又は消化管粘膜炎であるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記粘膜炎は、再発性口腔潰瘍であるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記再発性口腔潰瘍は、化学療法、放射線療法、好中球性減少状態、及び自己免疫疾患から選択される疾患又は状態によって引き起こされるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記再発性口腔潰瘍は、再発性アフタ性口内炎(RAS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びベーチェット病(BD)から選択される疾患によって引き起こされるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
粘膜炎は、感染症によって引き起こされるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記感染症は、単純ヘルペスウイルス(HSV)又はカンジダ感染である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
粘膜炎は、放射線治療によって、全体的又は部分的に引き起こされるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
粘膜炎は、化学療法によって、全体的又は部分的に引き起こされるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
粘膜炎は、ジブ-アフリベルセプト、ブレンツキシマブベドチン、デフェリプロン、ゲムシタビン、プララトレキサート、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、サリドマイド、ロミデプシン、ボセプレビル、デシタビン、イマチニブ、トポテカン、レナリドマイド、パクリタキセル、オランザピン、イリノテカン、パリペリドン、インターフェロン、リポ多糖、タモキシフェン、フレカイニド(クラス1Cの抗不整脈薬)、フェニトイン、インドメタシン、プロピルチオウラシル、カルビマゾール、クロルプロマジン、トリメトプリム/スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール)、クロザピン、チクロジピン、及びこれらの誘導体、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、カルボプラチン、アクチノマイシンD、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシン及びダウノルビシン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、アザチオプリン、2-クロロデオキシアデノシン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、アザシチジン、リン酸フルダラビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、タモキシフェン、ペメトレキセド、nab-パクリタキセル、ダサチニブ、プララトレキサート、デシタビン、ロミデプシン、イマチニブ、レナリドミド、スニチニブ、オキサリプラチン、アドリアマイシン、イホスファミド、シタラビン、及びサリドマイドから選択される薬物によって引き起こされるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者は、他の治療の不在下で粘膜炎を引き起こすのに十分な用量で化学療法又は放射線治療を受けようとしているか、もしくは、化学療法又は放射線療法の結果として粘膜炎を患っているものである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
粘膜炎が、造血幹細胞移植又は末梢幹細胞注入に関連するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、粘膜炎を治療又は緩和させる添加剤の有効量を、順次又は同時に、これを必要とする患者に投与するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記添加剤は、パリフェルミン、ゲルクレア、ジラクチン、IL-6拮抗薬(例えば、抗IL-6抗体)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、低出力レーザー治療(LLLT)を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記治療は、予防のためのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
化学式1の化合物は、医薬組成物として投与され、前記医薬組成物は、経口又は非経口投与のための固体、液体、ゲル、又は懸濁液の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
化学式1の化合物は、経口投与のための医薬組成物の形で投与されるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
化学式1の化合物は、薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と組み合わせて又は連携して、化学式1の化合物を含有する軟質ゼラチンカプセルである医薬組成物の形で投与されるものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
化学式1の化合物の1日当たりの総服用量は、250mg~2000mg/dayである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、薬学的に許容可能な酸化防止剤をさらに含有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記薬学的に許容可能な酸化防止剤は、アスコルビン酸(AA、E300)、トコフェロール(E306)、没食子酸プロピル(PG、E310)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、E320)、及びブチルヒドロキシトルエンから選択されるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
化学式1の化合物は、他のトリグリセリドを実質的に含有せず、薬学的に許容可能なトコフェロール化合物0.1~3mgとともに、化学式1の化合物を250~1000mg含有し、経口投与のために軟質ゼラチンカプセルの形で投与されるものである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
化学式1の化合物は、他のトリグリセリドを実質的に含有せず、薬学的に許容可能なトコフェロール化合物1mgとともに、化学式1の化合物を250又は500mg含有し、経口投与のために軟質ゼラチンカプセルの形で、1日に1回又は2回投与されるものである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
化学式1の化合物は、化学式2の化合物である、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年11月9日に提出された米国仮出願62/253019の優先権の利益を主張し、その内容はここに参照として含まれる。
【0002】
本発明は、モノアセチルジアシルグリセロール化合物の投与を含む、粘膜炎、例えば、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)及び消化管粘膜炎の予防又は治療法、並びにこれに有用な組成物、より詳しくは、医薬組成物及び健康機能食品組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
粘膜炎は、軽い炎症から重い場合は潰瘍に至り、口から肛門までの消化管のうちのいずれか又は複数の部位に影響を与える、粘膜の損傷を特徴とする病的状態である。粘膜炎は、一般的に癌のような疾患を治療する際に副作用として発生する。化学療法の有害反応による細胞死滅の結果として、口腔の粘膜が薄くなるように、消化管の粘膜の内層に炎症や潰瘍が生じることがある。頭や首又は骨盤又は腹部への放射線治療も、口腔又は消化管に粘膜炎を引き起すこができる。口腔及び消化管(GI)の粘膜炎は、高用量の化学療法及び造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation、HSCT)を受ける多くの患者に発生する。口腔粘膜炎は、全身に放射線照射を受けたHSCT患者において、特に深刻であり、長期間にわたって継続する。
【0004】
治療によって誘発される粘膜炎は、癌治療による心身の極度の衰弱、そして頑固な副作用の一つとして、患者の生活の質に影響を及ぼす。口腔粘膜炎は、ほとんどが紅斑及び/又は粘膜の潰瘍を含む。ひどい場合、患者は固形食品が食べられず、さらには、液体さえ飲めなくなるため、その結果、完全非経口栄養法(total parenteral nutrition、TPN)が必要となる。消化管粘膜炎は、一般に、疼痛、腹部膨張、下痢、悪心、及び嘔吐を伴う。結果として、粘膜炎は、健康や経済的な面への悪影響だけでなく、かなりの罹患率、生活の質の低下と関連している。さらに、粘膜炎は、プログラムされた治療計画の定期的投与及び服用を妨げすることができ、癌治療の結果に影響を及ぼす。
【0005】
口腔潰瘍は、口腔粘膜炎の非常に一般的な表現であり、多くの疾患と絡んでおり、また、他の多くのメカニズムによって発生する。再発性口腔潰瘍は、口腔内において粘膜の破れやただれが定期的に起こる状態である。再発性口腔潰瘍の根本的な原因は不明である。しかし、家族性、外傷、ホルモン要因、食品又は薬物過敏症、情動性ストレス、化学療法、放射線療法、好中球減少症、及び自己免疫疾患が、再発性口腔潰瘍の素因となることが知られている。例えば、再発性アフタ性口内炎(recurrent aphthous stomatitis、RAS)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、SLE)、ベーチェット病(Behcet’s disease、BD)が再発性口腔潰瘍を引き起こすことが知られている。
【0006】
再発性アフタ性口内炎(RAS)は、口腔潰瘍の最も一般的な原因である。アフタは、痛みを伴う口腔病変であり、灰色の基底をもつ円形の浅い潰瘍が局部的に現れる。アフタ性潰瘍の病因は、明らかではない。アフタ性潰瘍の原因は、まだはっきりと明かされていないが、細菌感染、ウイルス感染、又は免疫調節障害によるものと推測される。また、熱い食べ物、口腔内の傷、疲労やアレルギーがアフタ性口内炎を引き起こしたり悪化させたりする可能性があると言われている。
【0007】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、皮膚、関節、腎臓、肺、及び神経系など、体内の様々な器官に影響を及ぼす慢性全身性自己免疫疾患である。SLEの正確な原因は不明であるが、遺伝子、ホルモン、及び環境要因など、いくつかの要因がSLEと関連している。SLEの一般的な症状は、頬の発疹や鼻と口の潰瘍を含む。また、SLEは、関節痛、腎臓疾患、及びうつ病の原因にもなり得る。
【0008】
ベーチェット病(BD)は、しばしば口腔潰瘍、生殖器潰瘍、及び眼の問題を呈する、希な免疫介在性小血管系血管炎である。全身性疾患として、胃腸管、肺、筋骨格系、心血管系、及び神経系など、多くの臓器に影響する可能性がある。最も一般的な症状としては、口腔潰瘍、生殖器潰瘍、眼の炎症、皮膚病変、及び関節炎を挙げられる。SLEの正確な原因は不明であるが、遺伝的要因や環境要因など、いくつかの要因がベーチェット病の原因の可能性がある。
【0009】
今まで、粘膜炎の治療は、主に支持的である。口腔衛生が治療の主流となる。現在、すべての臨床現場において、粘膜炎を継続的に予防する承認された予防剤又は治療剤はない。パリフェルミン(Palifermin)又は組み換えヒトケラチノサイト成長因子(human recombinant keratinocyte growth factor、KGF)は、自家造血幹細胞移植を受ける患者において、口腔粘膜炎の罹患数(incidence)、持続期間、及び重症度を大幅に低下させて、自家又は同種造血幹細胞移植とともに、全身放射線治療を伴うか又は伴わない高用量の化学療法を受ける、血液がん患者への使用が承認された。低出力レーザー療法(Low-level laser therapy、LLLT)は、口腔粘膜炎の重症度を軽減できる別の治療法である。これは、低エネルギーのレーザーを感染した組織に集束することを含む。LLLTは、回復過程の加速化に役立ついくつかの細胞を刺激することによって作用すると考えられる。さらに、ゲルクレア(Gelclair(登録商標))及びジラクチン(Zilactin(登録商標))の2つの治療薬は、粘膜をコーティングして露出された神経終末のために保護膜を形成することによって作用する粘膜保護剤である。臨床試験でこれらの治療薬は、痛みの調節や食べる能力、話す能力を改善した。放射線によって引き起こされる粘膜の損傷に対していくつかの保護を提供する薬物である、アミホスチン(Amifostine、Ethyol(登録商標))は、FDAによって頭頸部癌のために放射線治療を受ける患者への使用が承認された。研究により、アミホスチンが口腔乾燥症を減らし、粘膜炎を予防又は粘膜炎の程度を軽減できることが実証された。しかしながら、粘膜炎を予防又は治療する手段は、まだ不十分であり、痛み、感染、出血、及び栄養の調節に限定されている。特にがん患者において、粘膜炎を予防又は治療する新しい方法を開発することが望ましいであろう。
【0010】
鹿茸は角化していない鹿(Cornu cervi)の袋角を乾燥して製造したもので、東洋医学で伝統的に広く使われている薬である。鹿茸は、1613年に初めて出版された韓国の医学書である東医宝鑑に記載されているように、成長及び発達の促進、造血機能の促進、神経衰弱の治療といった様々な医学的効果を有し、心不全への有益性や五臓六腑の機能を改善することで好評を受けてきた。さらに鹿茸は、体力及び持久力の向上、心筋の動きの改善、疲労回復、免疫システムの強化など、様々な医学的効果を有することが知られている。鹿茸の有効成分及びその効能については研究が行われている。例えば、鹿茸のクロロホルム抽出物から得られるrac-1-パルミトイル-2-リノレオイル-3-アセチルグリセロール(rac-1-palmitoyl-2-linoleoyl-3-acetylglycerol、PLAG)を含む鹿茸の所定の成分は、造血幹細胞及び巨核細胞の生長促進効果があることが報告されている(WO99/26640)。また、鹿茸の有効成分であるモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、自己免疫疾患、敗血症、胆道がん、腎臓がん、又は悪性黒色腫といった癌の治療に効果的であることが報告されている(WO2005/112912)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)及び消化管粘膜炎などの粘膜炎の予防及び治療のための新規治療法を見出すことを目指し、驚くべきことに、本明細書に記載のモノアセチルジアシルグリセロール(monoacetyldiacylglycerols)、特にPLAGが、粘膜炎の予防又は治療に有効であることを見出した。したがって、本発明は、粘膜炎を予防又は治療するための医薬組成物、及びこれを用いて粘膜炎を予防又は治療する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール、特にPLAGを有効成分として含有する、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)及び消化管粘膜炎のような粘膜炎を予防、改善、又は治療するための医薬組成物及び健康機能食品組成物を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
ここで、R及びRは、それぞれ独立して炭素数14~20の脂肪酸残基である。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、これを必要とする患者に化学式1の化合物、特にPLAGの有効量を投与することを含む、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)及び消化管粘膜炎などの粘膜炎を予防又は治療する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
また、本発明の適用分野は、後述する詳細な説明及び実施例により明らかになるであろう。但し、本発明の好ましい実施例を示す詳細な説明及び具体的な実施例は、例示的なものであり、発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0017】
口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)及び消化管粘膜炎などの粘膜炎を予防又は治療するための本発明の化合物は、化学式1の1つのアセチル基及び2つのアシル基を有するグリセロール誘導体を含有する:
【0018】
【化2】
【0019】
ここで、R及びRは、それぞれ独立して炭素数14~20の脂肪酸残基である。
【0020】
本発明において、化学式1のグリセロール誘導体は、モノアセチルジアシルグリセロール(MDAG)と呼ぶ場合がある。脂肪酸残基は、脂肪酸とアルコールとの反応によるエステル結合の形成から生じるアシル(acyl)部分を指す。R及びRの非限定的な例としては、パルミトイル(palmitoyl)、オレオイル(oleoyl)、リノレオイル(linoleoyl)、リノレノイル(linolenoyl)、ステアロイル(stearoyl)、ミリストイル(myristoyl)、アラキドノイル(arachidonoyl)などがある。R及びRの望ましい組み合わせ(R/R)としては、オレオイル/パルミトイル、パルミトイル/オレオイル、パルミトイル/リノレオイル、パルミトイル/リノレノイル、パルミトイル/アラキドノイル、パルミトイル/ステアロイル、パルミトイル/パルミトイル、オレオイル/ステアロイル、リノレオイル/パルミトイル、リノレオイル/ステアロイル、ステアロイル/リノレオイル、ステアロイル/オレオイル、ミリストイル/リノレオイル、ミリストイル/オレオイルなどがある。光学活性において、化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール誘導体は、(R)-型、(S)-型、又はラセミ混合物であってもよく、それらの立体異性体も含んでいてもよい。R及び/又はR置換基が不飽和脂肪酸残基である場合、二重結合は、シス(cis)配置を有していてもよい。
【0021】
一実施形態として、モノアセチルジアシルグリセロールは、化学式2で表される化合物である:
【0022】
【化3】
【0023】
化学式2の化合物は、1-パルミトイル-2-リノレオイル-3-アセチルグリセロールであり、本発明において、「PLAG」と呼ぶ場合がある。化学式2の化合物のR及びRは、それぞれパルミトイル及びリノレオイルである。グリセロール部分上の2-炭素は、キラル(chiral)である。PLAGは、一般的にラセミ体として提供され、R-及びS-の鏡像異性体は、同じ活性を持つと見られる。化学式2のPLAGは、盲腸-結紮-穿刺(cecal-ligation-puncture)を用いた敗血症動物モデル実験において、動物の生存率を増加させることが知られており、優良試験室基準(Good Laboratory Practice、GLP)毒性試験で毒性がないことが報告された。しかしながら、PLAGを含むモノアセチルジアシルグリセロール化合物の粘膜炎に対する効果は、従来の研究では知られていないか、明らかにされていない。
【0024】
モノアセチルジアシルグリセロール化合物は、天然の鹿茸から分離及び抽出でき、又は公知の有機合成方法により製造することができる。より詳しくは、鹿茸をヘキサンで抽出した後、クロロホルムで残渣を抽出し、クロロホルムを除去して、クロロホルム抽出物を得る。抽出のための溶媒量は、鹿茸が浸るくらいであれば十分である。一般的に、鹿茸1kg当たり約4~5リットルのヘキサン及び/又はクロロホルムが用いられるが、 これに限定されない。次いで、この方法で得られた抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びTLC法を用いて分別・精製し、本発明のモノアセチルジアシルグリセロール化合物を得る。抽出のための溶媒は、クロロホルム/メタノール、ヘキサン/酢酸エチル/酢酸の中から選択されるが、 これに限定されない。モノアセチルジアシルグリセロール化合物を製造する化学合成法は、例えば、大韓民国登録特許第10-0789323号及び第10-1278874号に開示されており、その内容は参照としてここにも含まれる。
【0025】
本発明のモノアセチルジアシルグリセロール化合物、特にPLAGは、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)及び消化管粘膜炎などの粘膜炎の予防又は治療に有効である。インビボ実験は、PLAGを患者に投与することにより、口腔潰瘍の症状が大幅に改善されたことを示している。
【0026】
一実施形態において、本発明は、化学式1の化合物、特にPLAGの有効量を、これを必要とする患者に投与することを含む、粘膜炎を予防又は治療するための方法を提供する。本発明において、粘膜炎は、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)又は消化管粘膜炎を含む、いずれかの粘膜炎であってもよい。粘膜炎は、様々な原因によって生じる。例えば、化学療法及び/又は放射線療法を含む癌治療の副作用として発生することがある。単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)やカンジダ感染(candida infections)と関連する粘膜損傷なども、粘膜炎として現れる場合がある。
【0027】
造血幹細胞移植(HSCT)のための放射線照射及び/又は化学治療剤の前処置レジメンは、ほぼすべての患者に粘膜炎を引き起こす。モノアセチルジアシルグリセロール化合物は、HSCT又は末梢幹細胞注入(peripheral stem cell infusion)に関連する粘膜炎の予防又は治療のために患者に投与することができる。
【0028】
粘膜炎は、再発性口腔潰瘍(Recurrent oral ulceration)であり得る。再発性口腔潰瘍は、化学療法、放射線療法、好中球減少の状態、及び自己免疫疾患など、多数の状態又は疾患の結果として発生し得る。例えば、再発性アフタ性口内炎(RAS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びベーチェット病(BD)は、再発性口腔潰瘍を引き起こすことがある。モノアセチルジアシルグリセロール化合物、特にPLAGは、これらの障害によって引き起こされる再発性口腔潰瘍の予防または治療に有効である。
【0029】
モノアセチルジアシルグリセロール化合物は、単独で投与するか、もしくは、順次又は同時に粘膜炎を治療又は緩和するための追加の薬剤又は療法と組み合わせて投与してもよい。薬剤又は療法の非限定的な例としては、例えば、パリフェルミン(組み換えヒトケラチノサイト成長因子)、アミホスチン、ゲルクレア、ジラクチン、抗IL-6抗体のようなIL-6拮抗薬、及び低出力レーザー治療(LLLT)を挙げられる。
【0030】
粘膜炎の予防又は治療のための本発明の医薬組成物は、単独の又は実質的に純粋な化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール、特にPLAGで構成されてもよく、又は、有効成分(化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール、特にPLAG)と通常薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤とを含有していてもよい。医薬組成物中のモノアセチルジアシルグリセロールの量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、具体的には、組成物の合計量に対して0.0001~100重量%、例えば、0.001~50重量%、0.01~20重量%、50~95重量%、又は95~99重量%である。医薬組成物は、経口又は非経口投与のために固体、液体、ゲル、又は懸濁液の形で製剤化することができ、例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、硬質又は軟質のゼラチンカプセルなどのカプセル剤、エマルション、懸濁剤、シロップ剤、乳剤、滅菌水溶液、非水性溶剤、凍結乾燥製剤、坐剤などである。組成物の製剤化において、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの通常の賦形剤又は希釈剤を用いてもよい。経口投与のための固形製剤は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などを含み、一つ又はそれ以上の有効成分と澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、ゼラチンなど、少なくとも一つの賦形剤を混合して製造してもよい。賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルク(talc)などの潤滑剤を用いてもよい。経口投与のための液状製剤は、エマルション、懸濁剤、シロップ剤などを含み、水、液体パラミンなどの通常の希釈剤又は湿潤剤、甘味剤、芳香剤、及び保存剤など、様々な賦形剤を含有していてもよい。非経口投与のための製剤は、滅菌水溶液、非水性溶剤、凍結乾燥製剤、及び坐剤などを含み、これらの溶液のための溶媒は、プロピレングリコール、オリーブオイルなどの植物性油、オレイン酸エチルのように注射可能なエステルを含んでいてもよい。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール(macrogol)、ツイーン61(tween61)、カカオ脂、ラウリン脂(Laurin)、及びグリセロゼラチンを含んでいてもよい。
【0031】
モノアセチルジアシルグリセロール化合物は、薬学的に有効な量を投与することができる。前記用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療において、十分に望ましい結果を達成するための量を指すときに用いられる。前記用語「薬学的に有効な量」は、対象の種類、年齢、性別、疾患の重症度及び種類、薬物の効能、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路、排泄率などによって決定することができる。
【0032】
前記用語「予防」又は「予防する」は、本発明の組成物を投与することにより、粘膜炎の発症を抑制又は遅延させる何らかの行為を含む。前記用語「治療」又は「治療する」は、本発明の組成物を投与することによる、粘膜炎症状の部分的又は完全な排除又は予防だけでなく、粘膜炎の予防、緩和、改善、遅延、又は減少を含む。前記本発明の組成物は、単独で又は他の薬物と共に、順次又は同時に投与することができる。本発明の組成物の好ましい量は、患者の状態及び体重、疾患の重症度、薬剤の製剤形態、投与経路及び治療期間に応じて変化させることができる。1日当たりの適切な総投与量は、医師によって決定され、一般には約0.05~200mg/kgである。動物におけるインビボ実験や細胞におけるインビトロ実験から推定すると、一日当たりの好ましい総投与量は、成人男性基準で0.1~100mg/kgに決定された。例えば、50mg/kgの総量を1日に1回投与してもよく、1日に2回、3回、又は4回に分けて投与してもよい。
【0033】
本発明は、一実施形態において、本発明は、朝に500mg、夕方に500mgで分割服用して、1日当たりの投与量が500mgないし4,000mg、例えば1000mg/dayで、1日に1回又は2回投与するように、 経口投与用軟質ゼラチンカプセルの形の単位剤形として、酸化防止剤として0.1~3mg、例えば1mgの薬学的に許容可能なトコフェロール化合物(例えば、a―トコフェノール)と共に、他のトリグリセリドは含有せずに、250~1000mg、例えば250mg又は500mgの PLAGを含む、粘膜炎を予防又は治療するための医薬組成物を提供する。
【0034】
本発明の組成物は、粘膜炎の予防又は治療を必要とするいかなる患者に投与することができる。例えば、本発明の組成物は、ヒトだけでなく、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギなど、非ヒト動物(詳しくは、哺乳類)に投与することができる。本発明の組成物は、公知の様々な方法、例えば、経口又は直腸投与、又は静脈(intravenous、iv)、筋肉(intramuscular、im)、皮下(subcutaneous、sc)、又は脳血管注射(cerebrovascular injection)によって投与することができる。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール、特にPLAGの有効量を含み、粘膜炎を予防、治療、又は改善するための健康機能食品組成物を提供する:
【0036】
【化4】
【0037】
ここで、R及びRは、それぞれ独立して炭素数14~20の脂肪酸残基である。
【0038】
前記用語「改善」又は「改善する」は、本発明の組成物を投与することにより、粘膜炎の症状を改善する何らかの行為を含む。粘膜炎を予防又は改善するための本発明の健康機能食品組成物は、単独の又は実質的に純粋な化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール、特にPLAGで構成されることができ、又は有効成分(化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール、特にPLAG)と健康機能食品として公知されている別の成分とを含有していてもよい。健康機能食品組成物中のモノアセチルジアシルグリセロールの量は、広範に変化させることができ、一般に健康機能食品組成物の総量に対して、15重量%未満、好ましくは10重量%未満である。しかし、前記モノアセチルジアシルグリセロールの量は、加減してもよい。
【0039】
本発明の化合物を添加することができる食品としては、様々なものがあるが、例えば、肉類、ソーセージ類、パン類、チョコレート類、キャンディー類、菓子類、ピザ類、麺類、ガム類、及び、アイスクリーム類、スープ類、飲料、お茶、ドリンク類、アルコール飲料、ビタミン配合剤、及び動物飼料などの乳製品類である。
【0040】
本発明の化合物が飲料製品に使用される場合、飲料製品は、甘味剤、香味剤、又は炭水化物を含有することができる。炭水化物は、例えば、ブドウ糖や果糖などの単糖類、マルトースやスクロースなどの二糖類、デキストリンやシクロデキストリンなどの多糖類、及びキシリトール、ソルビトール、及びエリスリトールなどの糖アルコールを挙げられる。飲料組成物中の炭水化物の量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、好ましくは、飲料100ml当たり0.001~0.04gであり、より好ましくは、0.02~0.03gである。甘味剤は、例えば、ソーマチンやステビア抽出物などの天然甘味剤、及びサッカリンやアスパルテームなどの人工甘味剤を挙げられる。
【0041】
その他、本発明の健康機能食品組成物は、各種栄養剤、ビタミン類、電解質、香味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。さらに、本発明の健康機能食品組成物は、天然果汁飲料、果汁飲料、及び野菜飲料の製造に使用される果実類を含有することができる。
【0042】
したがって、本発明は、一態様において、化学式1の化合物の有効量を必要とする患者に投与することを含む、粘膜炎の予防又は治療方法(方法1)を提供する:
【0043】
【化5】
【0044】
ここで、R及びRは、それぞれ独立して炭素数14~20の脂肪酸残基、例えば、PLAGである;
例えば、
1.1. R及びRは、それぞれ独立して、パルミトイル、オレオイル、リノレオイル、リノレノイル、ステアロイル、ミリストイル、及びアラキドノイルからなる群から選択される、方法1
1.2. R及びR(R/R)は、オレオイル/パルミトイル、パルミトイル/オレオイル、パルミトイル/リノレオイル、パルミトイル/リノレノイル、パルミトイル/アラキドノイル、パルミトイル/ステアロイル、パルミトイル/パルミトイル、オレオイル/ステアロイル、リノレオイル/パルミトイル、リノレオイル/ステアロイル、ステアロイル/リノレオイル、ステアロイル/オレオイル、ミリストイル/リノレオイル、ミリストイル/オレオイルからなる群から選択される、方法1又は1.1.
1.3. 化学式1の化合物は、化学式2の化合物であるものである、前述の方法;
【0045】
【化6】
【0046】
1.4. 化学式2の化合物は、他のモノアセチルジアシルグリセロールを実質的に含有せず、例えば、 製剤中の総モノアセチルジアシルグリセロールのうち少なくとも95%、例えば、少なくとも99%が化学式2の化合物である医薬組成物として投与されるものである、前述の方法。
【0047】
1.5. 化学式2の化合物は、他のモノアセチルジアシルグリセロール化合物を実質的に含有しない医薬組成物として投与されるものである、前述の方法。
【0048】
1.6. 化学式2の化合物は、他のトリグリセリド化合物を実質的に含有しない医薬組成物として投与されるものである、前述の方法。
【0049】
1.7. 化学式1の化合物は、天然の鹿茸から分離及び抽出されるものである、前述の方法。
【0050】
1.8. 化学式1の化合物は、化学合成により製造されるものである、前述の方法。
【0051】
1.9. 粘膜炎は、口腔粘膜炎(例えば、口腔潰瘍)又は消化管粘膜炎であるものである、前述の方法。
【0052】
1.10. 粘膜炎は、再発性口腔潰瘍であるものである、前述の方法。
【0053】
1.11. 再発性口腔潰瘍は、化学療法、放射線療法、好中球減少の状態、及び自己免疫疾患から選択される疾患又は状態によって引き起こされるものである、前述の方法。
【0054】
1.12. 再発性口腔潰瘍は、再発性アフタ性口内炎(RAS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びベーチェット病(BD)から選択される疾患によって引き起こされるものである、前述の方法。
【0055】
1.13. 粘膜炎は、単純ヘルペスウイルス(HSV)やカンジダ感染などの感染症によって引き起こされるものである、前述の方法。
【0056】
1.14. 粘膜炎は、化学療法及び/又は放射線療法を含む癌の治療によって引き起こされるものである、前述の方法。
【0057】
1.15. 粘膜炎は、放射線治療によって、全体的又は部分的に引き起こされるものである、前述の方法。
【0058】
1.16. 粘膜炎は、化学療法によって、全体的又は部分的に引き起こされるものである、前述の方法。
【0059】
1.17. 粘膜炎は、ジブ-アフリベルセプト(Ziv-aflibercept)、ブレンツキシマブベドチン(Brentuximab Vedotin)、デフェリプロン(Deferiprone)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、プララトレキサート(Pralatrexate)、ガンシクロビル(Ganciclovir)、バルガンシクロビル(Valganciclovir)、サリドマイド(Thalidomide)、ロミデプシン(Romidepsin)、ボセプレビル(Boceprevir)、デシタビン(Decitabine)、イマチニブ(Imatinib)、トポテカン(Topotecan)、レナリドマイド(Lenalidomide)、パクリタキセル(Paclitaxel)、オランザピン(Olanzapine)、イリノテカン(Irinotecan)、パリペリドン(Paliperidone)、インターフェロン(Interferons)、リポ多糖(Lipopolysaccharide)、タモキシフェン(tamoxifen)、フレカイニド(Flecainide)(クラス1Cの抗不整脈薬)、フェニトイン(Phenytoin)、インドメタシン(Indomethacin)、プロピルチオウラシル(Propylthiouracil)、カルビマゾール(Carbimazole)、クロルプロマジン(Chlorpromazine)、トリメトプリム/スルファメトキサゾール(Trimethoprim/sulfamethoxazole)(コトリモキサゾール(cotrimoxazole))、クロザピン(Clozapine)、チクロジピン(Ticlodipine)、及びこれらの誘導体、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、メクロレタミン(Mechlorethamine)、クロラムブシル(Chlorambucil)、メルファラン(Melphalan)、カルムスチン(Carmustine、BCNU)、ロムスチン(Lomustine、CCNU)、プロカルバジン(Procarbazine)、ダカルバジン(Dacarbazine、DTIC)、アルトレタミン(Altretamine)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)、アクチノマイシンD(Actinomycin D)、エトポシド(Etoposide)、トポテカン(Topotecan)、イリノテカン(Irinotecan)、ドキソルビシン及びダウノルビシン(Doxorubicin&daunorubicin)、6-メルカプトプリン(6-Mercaptopurine)、6-チオグアニン(6-Thioguanine)、イダルビシン(Idarubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、ミトキサントロン(Mitoxantrone)、アザチオプリン(Azathioprine)、2-クロロデオキシアデノシン(2-Chloro deoxyadenosine)、ヒドロキシウレア(Hydroxyurea)、メトトレキサート(Methotrexate)、5-フルオロウラシル(5-Fluorouracil)、シトシンアラビノシド(Cytosine arabinoside)、アザシチジン(Azacytidine)、リン酸フルダラビン(Fludarabine phosphate)、ビンクリスチン(Vincristine)、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビノレルビン(Vinorelbine)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)、タモキシフェン(Tamoxifen)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、nab-パクリタキセル(Nab-paclitaxel)、ダサチニブ(Dasatinib)、プララトレキサート(Paralatrexate)、デシタビン(Decitabine)、ロミデプシン(Romidepsin)、イマチニブ(Imatinib)、レナリドミド(Lenalidomide)、スニチニブ(Sunitinib)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、アドリアマイシン(Adriamycin)、イホスファミド(Ifosfamide)、シタラビン(Cytarabine)、及びサリドマイド(Thalidomide)から選択される薬物によって引き起こされるものである、前述の方法。
【0060】
1.18. 患者は、他の治療の不在下で粘膜炎を引き起こすのに十分な用量で化学療法又は放射線治療を受けようとしているか、もしくは、化学療法又は放射線療法の結果として粘膜炎を患っているものである、前述の方法。
【0061】
1.19. 粘膜炎が、造血幹細胞移植又は末梢幹細胞注入に関連するものである、前述の方法。
【0062】
1.20. 前記方法が、粘膜炎を治療又は緩和させる添加剤の有効量を、順次又は同時に、これを必要とする患者に投与するものである、前述の方法。
【0063】
1.21. 添加剤は、パリフェルミン(Palifermin)(組み換えヒトケラチノサイト成長因子、keratinocyte growth factor)、アミホスチン(Amifostine)、ゲルクレア(Gelcair、)、拮抗薬(antagonists)(例えば、抗IL-6抗体)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものである、前述の方法。
【0064】
1.22. 前記方法が、低出力レーザー治療(LLLT)のように、粘膜炎を治療又は緩和させるさらなる治療を含むものである、前述の方法。
【0065】
1.23. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、経口投与のための医薬組成物の形で投与されるものである、前述の方法。
【0066】
1.24. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、薬学的に許容可能な希釈剤又は担体、例えば、食用油、例えば、植物性油脂、例えば、オリーブオイルなどを含む希釈剤又は担体と組み合わせて又は連携して、化学式1の化合物、例えば、PLAGを軟質ゼラチンカプセルである医薬組成物の形で投与されるものである、前述の方法。
【0067】
1.25. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、0.0001~100重量%、例えば、50~95%、又は95~99%を組成物の重量として含む医薬組成物の形で投与されるものである、前述の方法。
【0068】
1.26. 前記組成物は、没食子酸プロピル(propyl gallate、PG、E310)、tert-ブチルヒドロキノン(tertiary butylhydroquinone、TBHQ)、ブチルヒドロキシアニソール(butylated hydroxyanisole、BHA、E320)、及びブチルヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT、E321)、例えば、a-トコフェロール(a-tocopherol)のような合成酸化防止剤だけでなく、薬学的に許容可能な酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸(ascorbic acid、AA、E300)及びトコフェロール(tocopherols、E306)を含有するものである、前述の方法。
【0069】
1.27. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、ほぼ50mgの薬学的に許容可能な希釈剤又は担体、例えば、食用油、例えば、植物性油脂、例えば、オリーブオイルなどと組み合わせて又は連携して、化学式1の化合物、例えば、PLAGを250mg又は500mg含有する軟質ゼラチンカプセルの形で投与される化学式2の化合物であるものである、前述の方法。
【0070】
1.28. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、ヒトが消費するのに適した食品へ添加又は混合される健康機能食品の形で投与されるものである、前述の方法。
【0071】
1.29. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、1日に1回(q.d.)又は2回(b.i.d.)投与されるものである、前述の方法。
【0072】
1.30. 化学式1の化合物、例えば、PLAGの1日当たりの総服用量は、250mg~2000mg/dayであり、例えば、500mg~1500mg/day、例えば、500mg/day、1000mg/day、又は1500mg/dayであるものである、前述の方法。
【0073】
1.31. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、1日に2回、例えば、朝晩250mg又は500mgの服用量で投与されるものである、前述の方法。
【0074】
1.32. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、1日に1回、例えば夜500mgの服用量で投与されるものである、前述の方法。
【0075】
1.33. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、少なくとも2週間以上、例えば、少なくとも1ヵ月にわたって投与されるものである、前述の方法。
【0076】
1.34. 医薬組成物は、経口又は非経口投与のための固体、液体、ゲル、又は懸濁液の製剤である、前述の方法。
【0077】
1.35. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、他のトリグリセリドを実質的に含有せず、薬学的に許容可能なトコフェロール化合物0.1~3mgとともに、化学式1の化合物、例えば、PLAGを250~1000mg含有し、経口投与をのために軟質ゼラチンカプセルの形で投与されるものである、前述の方法。
【0078】
1.36. 化学式1の化合物、例えば、PLAGは、他のトリグリセリドを実質的に含有せず、薬学的に許容可能なトコフェロール化合物1mgとともに、化学式1の化合物、例えば、PLAGを250~1000mg含有し、1日に1回又は2回、経口投与のために軟質ゼラチンカプセルの形で投与されるものである、前述の方法。
【0079】
1.37. 化学式1の化合物は、250mg又は500mgのPLAG薬物及び酸化防止剤として1mgのa-トコフェロールを含有し、経口投与のために軟質ゼラチンカプセルの形で投与される化学式2(PLAG)の化合物であり、1日当たり250mg~4,000mgの総投与量で、1日に1回又は2回投与されるものである、前述の方法。
【0080】
1.38. 化学式1の化合物は、500mgのPLAG薬物及び酸化防止剤として1mgのa-トコフェロールを含有し、経口投与のために軟質ゼラチンカプセルの形で投与される化学式2(PLAG)の化合物であり、1日当たり500mg~4,000mgの総投与量で、1日に1回又は2回投与されるものである、前述の方法。
【0081】
1.39. 前記治療は、予防のためのものである、前述の方法。
【0082】
1.40. 患者は、ヒトであるものである、前述の方法。
【0083】
1.41. 患者は、動物であるものである、前述の方法。
【0084】
さらに本発明は、例えば、方法1以下のいずれかにも使用するための、粘膜炎の予防又は治療に使用するための化学式1の化合物、例えば、PLAG(又は医薬組成物、例えば、本願に記載の化学式1の化合物、例えば、PLAGの有効量を含有する医薬組成物)を提供する。
【0085】
さらに本発明は、例えば、方法1以下のいずれかで、粘膜炎の予防又は治療のための薬剤の製造における化学式1の化合物、例えば、PLAGの用途を提供する。
【0086】
さらに本発明は、 方法1以下のいずれかにも使用するための、例えば方法1のいかなる使用のための、粘膜炎の予防、治療、又は改善に使用するための、化学式1の化合物、例えば、PLAGの有効量を含有する健康機能食品組成物を提供する。
【実施例0087】
本発明の理解をより深めるために、下記実施例を提供する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
実施例1.口腔潰瘍におけるPLAGのインビボ効果
再発性口腔潰瘍(ROU)を患っている20代~80代の患者総44人(女性34人、男性10人、病名;RAS(26人)、BD(27人)、SLE(1人)、平均年齢:49.3±9.0)が、本研究に登録された。ROUの診断は、病歴及び医師による口腔粘膜の診察を基に行われた。再発性口腔潰瘍には、次の3つの病状を含めることにした:再発性アフタ性口内炎(RAS)、ベーチェット病(BD)、全身性エリテマトーデス(SLE)。基準値の評価を完了した後、250mgのPLAGを2~4週間1日に2回(250mgのPLAG/錠剤、500mg/day)患者に経口投与した。患者の再発性口腔潰瘍の変化は、次の3つの測定手段を含む、自己報告スコアリングシステム(合計12点)を使用して、治療後2週目又は4週目に評価した:潰瘍の頻度の変化(リッカート0-4)、潰瘍の重症度の変化:痛み及びサイズ(リッカート0-4)、及び潰瘍の持続期間の変化(リッカート0-4)。ROUの症状は、3つのスコアの合計が5点を超えた場合、大幅に改善されたものとみなした。その結果を表1に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示した通り、再発性口腔潰瘍を患っている患者にPLAGを投与することによる、潰瘍の頻度の変化(リッカート0-4)、潰瘍の重症度の変化:痛み及びサイズ(リッカート0-4)、及び潰瘍の持続期間の変化(リッカート0-4)は、それぞれ平均2.07±0.55、2.13±0.68、及び1.86±0.72であった。3つのスコアの合計は、平均5.93±1.76である。これは、44人の患者のうち30人(68.18%)において、再発性口腔潰瘍が大幅に改善されたことを示している。本研究において、PLAGの明らかな副作用は認められなかった。しかし、1人の患者で軽度の皮膚発疹を、2人の患者で軽度の消化不良を、1人の患者で軽度の味覚変化(金属味)を示した。これらがPLAGの投与と関連している可能性は排除できない。
【0091】
実施例2.単位投与製剤
(i)PLAG及び(ii)a-トコレロールを含有し、本明細書に記載の方法で使用するための軟質ゼラチンカプセルの例は、以下の組成を有する:
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1の化合物の有効量を必要とする患者に投与することを含む、粘膜炎の予防又は治療法:
【化1】
ここで、R及びRは、それぞれ独立して炭素数14~20の脂肪酸残基である。
の方法。