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特開2024-10238ロボット光学ナビゲーション手術システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010238
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ロボット光学ナビゲーション手術システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20240116BHJP
【FI】
A61B34/20
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192788
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2020531917の分割
【原出願日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】62/609,042
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516317229
【氏名又は名称】ユー.エス. パテント イノベーションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】U.S. PATENT INNOVATIONS LLC
【住所又は居所原語表記】6930 Carroll Avenue, 10th Floor,Suite 1000,Takoma Park,MD 20912, USA
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】カナディ,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】カナディ,チェフレン
(72)【発明者】
【氏名】チュワン,タイセン
(72)【発明者】
【氏名】タバタバイ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ツェ,フアイ
(72)【発明者】
【氏名】ワイ,シュルチ
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ,デイビット
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロボット手術システム用のナビゲーション・システムを提供する。
【解決手段】作業区域をマーキングする(自動ロボット・ナビゲーション手術システムの外部から注入される)色素を検出する、自動ロボット・ナビゲーション手術システム。使用される色素の色およびタイプは、明瞭であるとともに反射性が高い色およびタイプである。自動ロボット・ナビゲーション手術システムには、4つの部分、すなわちエネルギー供給源、表示装置ユニットおよび制御アーム、センサ・アレイ、使い捨てチップが存在する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ、
メモリ、
運動制御モジュール、
画像/映像プロセッサ、ならびに
制御および診断モジュール
を備える手術管理システムと、
電気手術ユニットと、
1次表示装置と、
ロボット制御アームと、
センサ・アレイと
を備え、
前記手術管理システムの前記プロセッサが、患者に手術手技を実施するように前記電気手術ユニット、前記1次表示装置、前記ロボット制御アーム、および前記センサ・アレイを制御する、
ロボット手術システム。
【請求項2】
前記センサ・アレイが、赤外線センサ、可視光カメラ、紫外線センサ、および赤外線カメラのうちの少なくとも2つを備える、請求項1に記載のロボット手術システム。
【請求項3】
前記ロボット制御アームに連結された手術ツールをさらに備える、請求項1に記載のロボット手術システム。
【請求項4】
前記手術ツールが、低温大気圧プラズマを送達するためのアクセサリを備える、請求項4に記載のロボット手術システム。
【請求項5】
ロボット手術治療を実施する方法であって、
患者の複数の領域において、癌組織について前記患者を走査するステップと、
前記患者の癌組織の第1の領域および第2の領域の画像をメモリに記憶するステップと、
癌組織の前記第1の領域および前記第2の領域のそれぞれにおける癌組織を分析して、癌組織の前記第1の領域および前記第2の領域のそれぞれにおける癌組織のタイプを特定するステップと、
癌組織の前記第1の領域の癌組織について、第1の特異的な低温大気圧プラズマ投与量および治療設定を決定するステップと、
癌組織の前記第2の領域の癌組織について、第2の特異的な低温大気圧プラズマ投与量および治療設定を決定するステップと、
癌組織の前記第1の領域へと移動し、その領域の癌組織の位置を特定し、前記第1の特異的な投与量および治療設定の低温大気圧プラズマを前記第1の癌組織に適用し、前記第1の領域の治療が完了した後、前記第2の領域へと移動し、前記第2の領域の前記癌組織の位置を特定し、前記第2の特異的な投与量および設定の低温大気圧プラズマをその第2の癌組織に適用するようロボット手術システムをプログラミングするステップと
を含む、方法。
【請求項6】
前記ロボット手術システムが、ある領域の記憶された画像と前記領域のリアル・タイム画像とを比較することによって前記領域の癌組織の位置を特定する、請求項5に記載のロボット手術治療を実施する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本発明者らによって2017年12月17日に出願された米国特許仮出願第62/609,042号の出願日の利益を主張する。
【0002】
前述の特許仮出願は、参照により、本明細書に全体として援用される。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
なし。
【0004】
本発明はロボット手術システムに関し、より具体的には、ロボット手術システム用のナビゲーション・システムに関する。
【背景技術】
【0005】
手術技巧を向上させ、かつ外科医が直感的に患者を手術することを可能にするために、種々の低侵襲なロボット(または「遠隔手術」)システムが開発されてきている。以下の米国特許にはこうしたシステムの多くが開示されており、これら特許のそれぞれは、参照により、本明細書にそれぞれ全体として援用される。「Robotically powered surgical device with manually-actuatable reversing system」と題する米国特許第9,408,606号、「Articulated Surgical Instrument For Performing Minimally Invasive Surgery With Enhanced Dexterity and Sensitivity」と題する米国特許第5,792,135号、「Robotic Arm DLUS For Performing Surgical Tasks」と題する米国特許第6,231,565号、「Robotic Surgical Tool With Ultrasound Cauterizing and Cutting Instrument」と題する米国特許第6,783,524号、「Alignment of Master and Slave In a Minimally Invasive Surgical Apparatus」と題する米国特許第6,364,888号、「Mechanical Actuator Interface System For Robotic Surgical Tools」と題する米国特許第7,524,320号、「Platform Link Wrist Mechanism」と題する米国特許第7,691,098号、「Repositioning and Reorientation of Master/Slave Relationship in Minimally Invasive Telesurgery」と題する米国特許第7,806,891号、および「Surgical Tool With Wristed Monopolar Electrosurgical End Effectors」と題する米国特許第7,824,401号。
【0006】
最近では、正常な細胞を守りながら癌性腫瘍を治療および/または除去する、「低温大気圧プラズマ」と呼ばれる新しい治療分野が発展してきている。たとえば、低温大気圧プラズマのシステム、ツール、および関連する治療が、「System and Method for Cold Plasma Therapy」と題するWO2012/167089、「Cold Plasma Scalpel」と題する米国特許出願公開第2016-0095644(A1)号、「System and Method for Cold Atmospheric Plasma Treatment on Cancer Stem Cells」と題する米国特許出願公開第2017-0183632(A1)号、および「Method for Making and Using Cold Atmospheric Plasma Stimulated Media for Cancer Treatment」と題する米国特許出願公開第2017-0183631(A1)号に開示されている。前述の公開特許出願を、参照により本明細書に全体として援用する。癌性腫瘍の除去手術では、こうした治療を用いて、検出されている肉眼的な疾患を取り除くことができるが、いくつかの微視的な病巣は残る場合がある。
【0007】
さらに、蛍光ガイド手術において進歩が生まれてきた。こうしたシステムでは、データの可視化により、信号の取込みと、その信号によって伝えられる、臨床的決定に必要とされる表示との間のステップが提供される。たとえば、J. Elliottら、「Review of fluorescence guided surgery visualization and overlay techniques」、BIOMEDICAL OPTICS EXPRESS 3765(2015)には、表示配向、カラー・マップ、透過/アルファ関数(transparency/alpha function)、ダイナミック・レンジ圧縮、および色認識チェックに関する5つの現実的な提案が略述されている。蛍光ガイド手術の議論の別の例は、K.Tipimeniら、「Oncologic Procedures Amenable to Fluorescence-guided Surgery」、Annals of Surgery、第266巻、第1号、2017年7月)である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
生物学的組織内の腫瘍を位置特定する光学的スクリーニング法を特定することは、依然として課題である。癌腫瘍を標的するスマート・ビーコンが、ますます急速な速さで開発されている。正常な組織では下方制御される、癌性組織では過剰発現する(over expressed)バイオマーカ受容体が特定されたことにより、手術と組み合わせたバイオ・イメージング技法は改善されてきている。癌患者を治療する際の主要な目標は、癌を検出し、腫瘍の切除を完了し、切除された組織の辺縁部に癌がないことを確定することである。
【0009】
癌細胞上の過剰発現する受容体を特定し、続いてその細胞に付着して蛍光ビーコンを生じさせる、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、金属(すなわち金)ナノ粒子、半導体量子ドット(QD)、モレキュラー・ビーコン、蛍光色素などの光学的スマート・ビーコンが開発されてきている。これらのイメージング技法を用いると、すなわち細胞周期ポジション、アポトーシス、転移、有糸分裂、浸潤、および血管新生を含むヒトまたは動物内の癌の作用を、外科医、研究者がリアル・タイムで観察することが可能になる。癌細胞および支持組織は色分けすることができ、これにより、リアル・タイムのマクロ・イメージング技術およびミクロ・イメージング技術が可能になる。新たな分野である生体内細胞生物学が生まれてきている。
【0010】
現在、光学イメージング・ガイド技法を使用することにより、(顕微鏡を適用する)微視的および肉眼的な2Dおよび3Dの適用において、癌性腫瘍を識別することができる。癌組織のバイオ光学的画像をロボットで検出し、この画像を処理し、画像をマッピングおよび位置特定し、3Dマッピング座標に画像を移し、続いてエネルギー供給源にデータを送り、次いで、動物またはヒトの内部のマッピングされたまさにその場所にエネルギー・ビーム(すなわちプラズマ)または電荷を送達するロボット光学ナビゲーション・システム(RONS)の能力は、これまで存在しなかった。完全なロボット光学ナビゲーション・システムは、光学イメージングとナビゲーションを統合し、プラズマ・ビームまたは電荷を送達して、アブレーションを必要とする腫瘍または識別された任意の生物学的組織をアブレーションするかまたは消滅させることになる。
【0011】
本発明は、術前のCT、MRI、もしくは超音波画像のガイドによって動かされる自動ロボット・アーム、および/または蛍光ガイド手技のための蛍光造影剤を使用する完全自動ロボット・ナビゲーションを使用した、低温大気圧プラズマを精密かつ均一に適用するための新規なイノベーションを提供する。投与パラメータは、対処されている癌のタイプ、および記憶されているゲノム血漿(genomic plasma)の結果に基づいて設定することができる。さらに、本発明により、癌治療および外傷治療においては低温プラズマの精密で自動化された均一な投与が可能になり、他の用途においてはロボット手術アームの精密な自動制御が可能になる。
【0012】
好ましい一実施形態では、本発明は自動ロボット・ナビゲーション手術システムであり、この自動ロボット・ナビゲーション手術システムは、作業区域をマーキングする(このシステムの外部から注入される)色素を検出する。使用される色素の色およびタイプは、明瞭であるとともに反射性が高い色およびタイプであることになる。自動ロボット・ナビゲーション手術システムには、4つの部分、すなわちエネルギー供給源、表示装置ユニットおよび制御アーム、センサ・アレイ、使い捨てチップが存在する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、自動ロボット手術治療を実施する方法である。方法は、患者の複数の領域において、癌組織について前記患者を走査するステップと、前記患者の癌組織の第1の領域および第2の領域の画像をメモリに記憶するステップと、癌組織の前記第1の領域および前記第2の領域のそれぞれにおける癌組織を分析して、癌組織の第1の領域および第2の領域のそれぞれにおける癌組織のタイプを特定するステップと、癌組織の前記第1の領域の癌組織について、第1の特異的な低温大気圧プラズマ投与量および治療設定を決定するステップと、癌組織の前記第2の領域の癌組織について、第2の特異的な低温大気圧プラズマ投与量および治療設定を決定するステップと、癌組織の第1の領域へと移動し、その領域の癌組織の位置を特定し、前記第1の特異的な投与量および治療設定の低温大気圧プラズマを第1の癌組織に適用し、第1の領域の治療が完了した後、第2の領域へと移動し、第2の領域の癌組織の位置を特定し、第2の特異的な投与量および設定の低温大気圧プラズマをその第2の癌組織に適用するようロボット手術システムをプログラミングするステップとを含む。さらに、ロボット手術システムは、ある領域の記憶された画像と前記領域のリアル・タイム画像とを比較することにより、前記領域の癌組織の位置を特定することができる。
【0013】
本発明のさらに他の態様、特徴、および利点は、単に好ましい実施形態および実装形態を示すことにより、以下の詳細な説明から容易に明らかになる。本発明は他の実施形態および様々な実施形態も可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、種々の明白な点において修正されてもよい。したがって、図面および説明は本質的に例示的なものであり、限定的であると考えられるべきではない。本発明の追加の目的および利点は、部分的には以下に続く説明において述べられることになり、部分的には説明から明らかであり、または本発明の実施によって学習される場合もある。
【0014】
本発明およびその利点をより完全に理解するために、以下の説明および添付図面を次に参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の好ましい一実施形態によるシステムのアーキテクチャを示す図である。
【0016】
図2】本発明の好ましい一実施形態によるロボット手術システムの図である。
【0017】
図3】癌組織をマーキングする光学的スマート・ビーコンまたは色素の使用法を示す図である。
【0018】
図4】癌組織の位置を特定し、エネルギー・ビームを連続照射し(sequence)て癌組織をアブレーションするかまたは消滅させる、本発明の好ましい一実施形態によるロボット手術ナビゲーション・システムの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
好ましい一実施形態では、本発明によるロボット・ナビゲーション・システム100は、手術管理システム200、電気手術ユニット300、ロボット制御アーム400、記憶装置500、1次表示装置600、および2次表示装置700を有する。使い捨てのチップまたはツール480、およびセンサ・アレイまたはカメラ・ユニット490が、ロボット制御アーム400にマウントされるかまたは組み込まれる。電気手術ユニット300により、低温大気圧プラズマ、アルゴン・プラズマ凝固法、ハイブリッド・プラズマ切断、および従来の他のタイプの電気手術を含めた種々のタイプの電気手術が可能になる。したがって、電気手術ユニットは、種々のタイプの電気手術に対応するために、電気エネルギーとガス流の両方を供給する。電気手術ユニットは、電気エネルギーとガス流の両方の送達を制御する組合せユニットであることが好ましいが、別法として、あるユニットが電気エネルギーを制御し、別のユニットがガスの流れを制御するような複数のユニットでもよい。
【0021】
手術管理システム200により、種々のサブシステムの制御および調整が可能になる。手術管理システム200は、システムを制御し種々の機能を実施するソフトウェアを記憶および実行するためのプロセッサおよびメモリ202を有する。手術管理システムは、ロボット・アーム400の運動を制御するための1つまたは複数の運動制御モジュール210と、画像/映像プロセッサ220と、制御および診断モジュール230と、投与モジュール240と、登録モジュール250とを有する。手術管理システム200および電気手術ユニット300は、たとえば「GAS-ENHANCED ELECTROSURGICAL GENERATOR」と題する国際出願第PCT/US2018/026894号に開示されているような一体型ユニットを形成する場合もある。
【0022】
システムの電子記憶装置500は、ハード・ドライブ、ソリッド・ステート・メモリ、または他の知られているメモリもしくは記憶装置でもよく、手術手技に先立って、また手術手技中に収集された患者情報を記憶する。デジタル・イメージングなどの患者情報は2Dでも3Dでもよく、患者の体内の関心領域(ROI)を特定および/またはマッピングするCTスキャン、MRI、または他の知られている方法によって実施することができる。このようにして、1つまたは複数の関心区域を特定することができる。マッピングされたこれらの画像は記憶装置500から手術管理システム200へとアップロードされ、センサ・アレイ490内の搭載型の視覚カメラおよびIRカメラによって提供される現在の画像と組み合わせられる。さらに、この画像により、使用者が走査前に標的区域を定めて後続のあらゆる走査の確実性を高めることが可能になり、また手技中のよりよい状況認識が実現される。術前の計画および再検討は、患者内の標的領域または関心領域を特定するために、記憶装置500の2D/3Dデータセットを使用して実施することができる。術前情報には、たとえば癌組織の場所およびタイプに関する情報、ならびに治療すべき癌組織のタイプに適当な投与量または治療設定の情報が含まれ得る。癌組織のタイプは、たとえば手術に先立って実施される生検および検査を通じて判定することができる。投与量または治療設定の情報は、メモリにあらかじめ記憶されたテーブルから読み出される場合もあり、生検を通じて得られた癌組織の事前検査によって決定される場合もある。
【0023】
さらに、術前患者情報を使用して、手技を実施するように手術管理システムをプログラムすることもできる。一例として、術前の走査および評価により、癌組織を有する2つの領域が発見され、各領域での癌組織のタイプが特定された患者を考える。手術管理システムは、癌組織の第1の領域を見つけ出し、その領域の癌組織の位置を特定し、特異的な投与量または治療設定の低温大気圧プラズマをその第1の癌組織に適用するようにプログラムされ得る。第1の領域の治療が完了した後、手術管理システムはロボット・アームを第2の領域へと動かし、そこで、癌組織の位置を特定し、その第2の癌組織に特異的な投与量の低温大気圧プラズマをその第2の癌組織に適用する。低温大気圧プラズマの文脈では、「投与量」には適用時間、出力設定、ガス流量設定、および治療の波形またはタイプ(この例では低温大気圧プラズマ)が含まれ得る。
【0024】
手技中に、可視光画像および映像を1次表示装置600および/または2次表示装置700に示すことができる。手技中にセンサ・アレイ490によって収集された画像、映像、およびメタデータは、手術管理システム200へと伝送され、記憶装置500に記憶される。
【0025】
最新式のロボット・アーム400およびカメラ・ユニット490により、蛍光ナビゲーションなどのガイド画像によって癌細胞などの標的組織を検出する小型で携帯可能なプラットフォームが提供され、その最終目標は、たとえば低温プラズマまたは他の治療手段を標的組織に投与することである。標的組織が癌組織である場合の例が示されているが、本発明によるロボット光学ナビゲーション・システムを使用して、人工膝関節置換手術などの他のタイプの手技が実施されてもよい。プラズマの適用は、手で施される治療からの著しい改善であることになる。低温プラズマなどの治療手段の手術への適用は、関心領域のカバー範囲および投与量に関して精密であることになる。必要なら、適用が精密に繰り返されてもよい。センサ・アレイ490は、限定はされないが、映像カメラおよび/もしくは画像カメラ、癌細胞を照らす近赤外線イメージング、ならびに/または患者の手術区域の外形マッピングおよび距離測定のためのレーザ/LIDARを備えることができる。センサ・アレイ490からHDの映像および画像を取得することにより、低温プラズマの適用が従来にない形で操作者に見えるようになり、将来的に見るための参照記録が提供されることになる。
【0026】
図2には、手術管理システム200とロボット・アーム400との間の相互作用が示してある。ロボット・アーム400は、たとえばモータ・ユニット410と、複数のリンク部分420、440、460と、複数の可動アーム・ジョイント430、450と、アームの全長に沿ったチャネル470とを有することができ、チャネル470は、チャネル内の電極と、チャネルを不活性ガスの供給源に接続し、電極を電気手術ジェネレータ300(電気エネルギーの供給源)に接続するためのコネクタとを備える。さらに、ロボット・アームは第2の電極、たとえばリング電極を有することができ、これは、低温大気圧プラズマ手技などの手技に使用することができる。ロボット・アームは、さらに、使い捨てのチップまたはツール480を動かすための、たとえばチップを回転させるための構造的手段を有することができる。本発明とともに使用することができるロボット手術アームの一例がPCT特許出願第PCT/US2017/053341号に開示されており、これは、参照によって本明細書に全体として援用される。モータ410は、バッテリによって、電気手術ユニット300から、壁コンセントから、または別の電源から給電され得る。
【0027】
手術管理システムの運動制御モジュール210および他の要素は、電源および/またはバッテリ120によって給電される。運動制御モジュール210は入力装置212に接続され、これは、たとえばジョイスティック、キーボード、ローラ・ボール、マウス、または他の入力装置でもよい。入力装置212は、ロボット・アーム400の運動、手術ツールの機能性、センサ・アレイ490の制御、およびシステム100の他の機能性を制御するために、システムの操作者によって使用され得る。
【0028】
ロボット・アーム400は、その遠位端部に、または遠位端部の近くにセンサ・アレイ490を有し、センサ・アレイ490は、たとえば複数のフォトレジスタ・アレイ494、496、可視光カメラおよび赤外線(IR)カメラ492、URFセンサ498、ならびに他のセンサを備える。
【0029】
電気手術ユニット300は、ユーザ・インターフェース310、エネルギー送達ユニット320、およびガス送達ユニット330を有する独立型のユニットであることが好ましい。電気手術ユニットは、任意の必要な手段、すなわちRF電気手術、低温大気圧プラズマ、アルゴン・プラズマ凝固法、ハイブリッド・プラズマなどを提供できることが好ましい。たとえば、低温プラズマ・ジェネレータ(CPG)は、使い捨てのメスから出される(fire)ことになるチューブ、または患者に最も近い端部に位置付けられる他の送達機構を介して、低温プラズマを提供することができる。CPGは、あらゆる命令、すなわち低温プラズマをいつオンおよびオフにするかという命令を手術管理システム(SMS)から受領することになる。電気手術ジェネレータはユーザ・インターフェースを有することが好ましい。電気手術ユニット300は独立型のユニットであることが好ましいが、電気手術ユニット300が電気手術ジェネレータを備えるような他の実施形態も考えられる。
【0030】
表示装置600、700は多面的であり、出力設定、低温プラズマ・ステータス、作動(arm)/安全ステータス、標的の数、各標的への距離、取得源(acquisition source)、および2つの十字線(一方はカメラの中心を示し、他方はカバー範囲の低温プラズマ区域を示す)を表示することができる。作動/安全ステータスにより、システムが「作動」されるまですべての低温プラズマ分散を制限する能力が外科医に与えられることになる。標的の数は、センサ・アレイの「レーダ状」装置を使用して決定される。この装置は、プログラマブル信号プロセッサによって設定されたパラメータ、およびセンサ・アレイの全体にわたって位置付けられた種々のフォト・レジスタの使用に基づいて、所与の区域を走査することになる。各標的への距離は、(「レーダ状」装置と組み合わせて信号プロセッサおよびフォト・レジスタの3-Dマッピングを使用して決定される)自動距離、または超音波距離検出器(URD)(標的がセンサ・アレイの前方にある場合)およびIR距離検出器(IRRD)(標的がセンサ・アレイの側方に位置付けられている場合)であることになる。取得源は、選択された標的にカメラを位置合わせするものである。外科医は、標的アレイから標的を選択するかまたは手動で選択するという2つの選択肢を有することになる。標的アレイは、レーダが通過するたびに発見されるポジティブ・アイデンティフィケーション(positive identification)から構築され、CPP(低温プラズマ・プロセッサ)内のリストにデータを読み込み、外科医が表示装置上で各標的を選択するのを可能にすることになる。外科医は「手動」を選択し、カメラおよびCP(低温プラズマ)チップを移動させることもできる。
【0031】
手術管理システムは、1次表示装置600および/または2次表示装置700にリアル・タイム映像と重なり合った蛍光画像を提示することができる。センサ・アレイ490からの蛍光イメージングは、ロボット・アームのビジュアル・サーボ制御、たとえば、腫瘍の切取りおよび/または把持を実現するために、手術管理システムによって使用され得る。さらに、手術管理システムは、センサ・アレイ490の蛍光イメージング機能を使用して、ロボット・アームのビジュアル・サーボ制御を行い、低温プラズマで腫瘍辺縁部を治療することができる。
【0032】
本発明によるロボット・ナビゲーション・システムを使用する例示的な方法を図3図4を参照して説明する。準備ステップとして、癌組織の切除可能部分を患者から取り除くことができる。こうした切除により、辺縁部の周りに癌組織が残される場合がある。辺縁部のこうした癌組織を、本発明のシステムおよび方法を用いて治療することができる。本発明のロボット光学ナビゲーション・システム(「CRON」)を使用して辺縁部の周りの癌組織の位置を特定し、エネルギー・ビームを癌組織に連続照射してその組織をアブレーションするかまたは消滅させることができる。
【0033】
図3に示してあるように、癌細胞810は過剰発現したバイオマーカ受容体812を有する。蛍光イメージング法により、光学的スマート・ビーコンまたはダイ820を癌組織へと注入または適用する(また組織を囲繞させる)ことができ、それにより、色素またはスマート・ビーコン820が癌組織810のバイオマーカ受容体812に取り付けられる。こうした種々のシステム、こうしたナノ粒子ガイド、蛍光タンパク質、またはスペクトル・メータを本発明とともに使用することができる。このように、このシステムを使用して、治療のためにマーキング済み癌組織800を準備することができる。
【0034】
ロボット光学ナビゲーション(RON)システム100のセンサ・アレイ490により、過剰発現したバイオマーカ受容体Aと光学的スマート・ビーコンBの複合体(マーキングされた癌組織800)が特定(または位置特定)され、その組合せは、センサ・アレイ490によって検知され手術管理システムによって特定される蛍光グローCを生じさせる。ロボット光学ナビゲーション・システムは、次いで、エネルギー・ビーム(たとえば低温大気圧プラズマ)を癌性のA+B複合体に連続照射して、組織をアブレーションするかまたは消滅させる。
【0035】
方法のより概略的な説明は、(1)治療のために複数の場所を特定し、(2)癌組織に付くことになる色素をこれら複数の場所に注入し、(3)ロボット光学ナビゲーション・システムのセンサで第1の標的組織を検知し、(4)手術管理システムで第1の標的組織を検証し、(5)標的組織を治療し、(6)第2の標的組織を検知し、(7)手術管理システムで第2の標的組織を検証し、(8)第2の標的組織を治療することである。必要な数の標的組織または場所について、これらのステップが繰り返されてもよい。
【0036】
代替の一実施形態では、システムは、注入などによって癌組織に治療手段を送達するためのチャネルを有する。たとえば、米国公開特許出願第2017/0183631号に開示されているような刺激された媒体が、本発明のロボット光学ナビゲーション・システムを介して癌組織に注入または適用されてもよい。本発明のロボット光学ナビゲーション・システムを使用して、患者の免疫細胞を捕集および使用して癌を治療することから開発された適応細胞移植治療など、他のタイプの治療が施されてもよい。「CAR T Cells:Engineering Patients’ Immune Cells to Treat Their Cancers」、National Cancer Institute(2017)を参照のこと。
【0037】
本発明の好ましい実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されてきた。これは網羅的であること、または開示されたまさにその形態に本発明を限定することを意図したものではなく、修正形態および変形形態が上記の教示に照らして考えられ、または本発明の実施から獲得される場合もある。実施形態は、企図される特定の使用法に適したものになる、種々の実施形態で当業者が本発明を利用することを可能にする本発明の原理ならびにその現実的な用途を説明するために選択および説明されている。本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲、およびその均等物によって定義されることが意図されている。上記文書のそれぞれの全体は、参照によって本明細書に援用される。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ、
メモリ、
運動制御モジュール、
画像/映像プロセッサ、ならびに
制御および診断モジュール
を備える手術管理システムと、
電気手術ユニットと、
1次表示装置と、
ロボット制御アームと、
センサ・アレイと
を備え、
前記手術管理システムの前記プロセッサが、患者に手術手技を実施するように前記電気手術ユニット、前記1次表示装置、前記ロボット制御アーム、および前記センサ・アレイを制御する、
ロボット手術システム。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ、
メモリ、
運動制御モジュール、
画像/映像プロセッサ、ならびに
制御および診断モジュール
を備える手術管理システムと、
電気手術ジェネレータと、
1次表示装置と、
ロボット制御アームと、
センサ・アレイと、
前記ロボット制御アームに連結された手術ツールと、
を備え、
前記センサ・アレイは、その全体にわたって位置付けられた種々のフォト・レジスタを備え、前記プロセッサによって設定されたパラメータに基づいて患者の所与の区域を走査し、走査データを前記プロセッサに提供するように構成され、
前記手術ツールは、低温大気圧プラズマを送達するためのアクセサリを備え、
前記手術管理システムの前記プロセッサが、前記センサ・アレイからのスキャンと前記メモリに記憶された標的組織の先のスキャンとを比較して、前記アクセサリを前記標的組織上でガイドすることにより、患者に手術手技を実施するように前記電気手術ジェネレータ、前記1次表示装置、前記ロボット制御アーム、および前記センサ・アレイを制御する、
ロボット手術システム。
【請求項2】
さらに、前記センサ・アレイから前記標的組織までの距離を検出するための距離検出器を備える、請求項1に記載のロボット手術システム。
【請求項3】
前記距離検出器は、超音波距離検出器及びIR距離検出器の少なくとも1つを備える、請求項2に記載のロボット手術システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、標的アレイ、及び、前記センサ・アレイによって実行された走査に基づいて前記患者の前記標的組織の区域の3-Dマップを構築するように構成されている、請求項2に記載のロボット手術システム。
【外国語明細書】