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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102406
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】生体電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/271 20210101AFI20240724BHJP
   A61B 5/37 20210101ALI20240724BHJP
   A61B 5/293 20210101ALI20240724BHJP
   A61B 5/266 20210101ALI20240724BHJP
【FI】
A61B5/271
A61B5/37
A61B5/293
A61B5/266
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006240
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】502212844
【氏名又は名称】株式会社ユニークメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰汎
(72)【発明者】
【氏名】松田 早苗
(72)【発明者】
【氏名】間部 恭平
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127LL08
4C127LL15
4C127LL19
(57)【要約】
【課題】リード線やハイドロゲルの破損を抑制できる生体電極を提供することを目的の1つとする。
【解決手段】ハイドロゲルからなる支持体(2)と、前記支持体に埋め込まれた複数の電極素子(3)と、前記電極素子に電気的に接続された配線(4)と、を有し、前記配線は、各電極素子に繋がり前記支持体に埋め込まれた複数本のリード線(5)と、各リード線をまとめて前記支持体の外部に引き出すケーブル(6)と、前記ケーブルに固定され、前記支持体に埋め込まれた繊維からなる補強糸(7)と、を有して構成される、ことを特徴とする生体電極。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロゲルからなる支持体と、
前記支持体に埋め込まれた複数の電極素子と、
前記電極素子に電気的に接続された配線と、
を有し、
前記配線は、各電極素子に繋がり前記支持体に埋め込まれた複数本のリード線と、各リード線をまとめて前記支持体の外部に引き出すケーブルと、前記ケーブルに固定され、前記支持体に埋め込まれた繊維からなる補強糸と、を有して構成される、
ことを特徴とする生体電極。
【請求項2】
複数の前記電極素子は、前記支持体の前端側から後端側に向けて、及び/又は、前記支持体の前後方向と直交する横方向に向けて、間隔をあけて並設されており、
前記ケーブルは、前記支持体の後端側から外部に引き出されており、
前記補強糸は、前端側の前記電極素子の位置まで延出している、ことを特徴とする請求項1に記載の生体電極。
【請求項3】
前記補強糸は、アラミド繊維、あるいは、その他のマルチフィラメント糸から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の生体電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電極に関する。
【背景技術】
【0002】
心電や、脈波、筋電、脳波等の生体情報を測定する際に生体電極が使用される。生体電極を生体表面に貼り付ける、または生体内に留置するなどして、生体信号を検出し、あるいは、生体に刺激電流を伝搬する。
【0003】
特許文献1には、電極体、電極体の製造方法について開示されている。この特許文献には、電極をゲルで覆った電極体の構造について記載されている。電極には、外部電源等とつなげる接続構造として配線が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/124566号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイドロゲルに複数の電極素子を埋め込み、各電極素子に繋げたリード線をまとめてケーブルとして、ハイドロゲル支持体の外部に引き出した構造にあっては、装置接続時や使用中に、ハイドロゲル支持体とケーブルとの間に引っ張り応力が加わることが多々ある。
このとき、リード線及びケーブルと、ハイドロゲル支持体との間の接合強度は低いため、引っ張り応力により、ケーブル抜けや、リード線やハイドロゲルの破損が懸念された。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、リード線やハイドロゲルの破損を抑制できる生体電極を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の生体電極は、ハイドロゲルからなる支持体と、前記支持体に埋め込まれた複数の電極素子と、前記電極素子に電気的に接続された配線と、を有し、前記配線は、各電極素子に繋がり前記支持体に埋め込まれた複数本のリード線と、各リード線をまとめて前記支持体の外部に引き出すケーブルと、前記ケーブルに固定され、前記支持体に埋め込まれた繊維からなる補強糸と、を有して構成される、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様の生体電極は、複数の前記電極素子は、前記支持体の前端側から後端側に向けて、及び/又は、前記支持体の前後方向と直交する横方向に向けて、間隔をあけて並設されており、前記ケーブルは、前記支持体の後端側から外部に引き出されており、前記補強糸は、前端側の前記電極素子の位置まで延出している、ことを特徴とする。
本発明の一態様の生体電極は、前記補強糸は、アラミド繊維、あるいは、その他のマルチフィラメント糸から選択される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補強糸を、ハイドロゲルからなる支持体に埋め込むことで、引っ張り応力が加わっても、ケーブル抜け、リード線やハイドロゲルの破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態の生体電極の斜視図である。
図2】本実施の形態の生体電極を構成する配線の縦断面図である。
図3】本実施の形態の生体電極を構成する配線の横断面図である。
図4】実験に使用したクランプ装置の概念図である。
図5】補強糸を用いた実施例における引張強度試験の測定結果を示す。
図6】補強糸を有さない比較例における引張強度試験の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態の生体電極について詳細に説明する。なお、以下の説明では、すべての図面において同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施の形態の生体電極1の斜視図である。この生体電極1は、(頭蓋内)硬膜下電極に適用できるが、特に用途を限定するものではない。図1に示す生体電極1は、ハイドロゲルからなる支持体2と、支持体2に埋め込まれた複数の電極素子3と、各電極素子3に電気的に接続された配線4と、を有して構成される。なお、図1に示す電極素子3、および配線4の一部は、支持体2に埋め込まれているが、見やすいように、実線で図示した。
【0012】
支持体2は、電極素子3および配線4の一部を、支持体2の内部に配置し固定するための基材である。支持体2は、主としてハイドロゲルで構成されるが、ハイドロゲル以外の材料を含んでいてもよい。ハイドロゲルからなる支持体2は、生体への親和性や密着性に優れる。「ハイドロゲル」とは、ポリマーを含む三次元網目構造の中に、水や水系溶媒が包含されている構造体を表す。ハイドロゲルは、水あるいは水系溶媒を主成分として含み、具体的には、使用目的にもよるが、柔軟性の観点から水あるいは水系溶媒の含有量は、ハイドロゲルの全量に対して、85.0質量%程度であることが好ましく、95質量%以上である場合は扱いにくく、ちぎれやすい。70.0質量%以下である場合は硬いゲルとなる。例えば、ポリビニールアルコールハイドロゲルの場合は、PVAの量とゲルの感触の関係を調べたデータから、水あるいは水系溶媒の含有量を求めることができる。
【0013】
ハイドロゲルは、無色透明であるが、顔料などを加えて、不透明や有色で構成してもよい。なお、無色透明であることで、支持体2に埋め込まれた電極素子3やリード線5やその先の生体表面を目視できる。これにより、生体に生体電極1を貼る、又は生体組織に設置する時などに、電極素子3の位置を確認でき、またリード線5の接続状態(断線の有無など)を容易に確認できる。
【0014】
図1に示すように、支持体2は、薄いシート状あるいはフィルム状であり、平面形状は、図1に示す略矩形状に限定されるものでなく、円形状、楕円形状等を例示することができる。
【0015】
限定されるものではないが、支持体2の幅寸法(図1に示すX方向の長さ)は、40~80mm程度であり、長さ寸法(図1に示すY方向の長さ)は、10~80mm程度であり、支持体2の厚さ寸法(図1に示すZ方向の長さ)は、1~3mm程度である。なお、図1に示すX、Y、Zは互いに直交関係にある。配線4は、支持体2の長さ方向(Y方向)に沿って延出している。
【0016】
電極素子3は、生体信号を検出し、又は、生体に刺激電流を伝えるための導体を指す。電極素子3の材質を特に限定するものではないが、カーボン系、金属、あるいは、伸縮性導電体等を例示できる。これらの中で、ハイドロゲルの柔軟性を妨げないカーボン系シートを選択することが好ましい。
【0017】
また、電極素子3の形状は、図1に示す円形状に限定されるものでなく、多角形状や楕円形状等であってもよい。電極素子3の厚みは、数μm~数百μm程度である。
【0018】
図1に示すように、複数の電極素子3は、支持体2の長さ方向(前後方向;Y方向)に間隔を空けて一列に並んでおり、この列が、支持体2の幅方向(横方向;X方向)に間隔を空けて複数列、形成されている。図1に示す電極素子3の並び方は、一例であり、これに限定されるものではない。例えば、複数の電極素子3は、図1に示す幅方向(X方向)に向けて、間隔を空けて配列されていてもよいし、複数の電極素子3は、長さ方向及び幅方向の双方に、間隔を空けて、マトリクス状に配列されていてもよい。
【0019】
電極素子3に電気的に接続される配線4は、各電極素子3に繋がり支持体2に埋め込まれた複数本のリード線5と、各リード線5をまとめて支持体2の外部に引き出すケーブル6と、を有して構成される。
【0020】
リード線5は、検出された生体信号を計測装置に伝え、又は、刺激装置からの電流を電極素子に伝えるための被覆導線である。リード線5の材質を限定するものではないが、導線部は、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル、カーボン線、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。また、被覆部は、シリコーンゴムや、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリウレタン、フッ素系樹脂等の絶縁物である。被覆部は、水分を含むハイドロゲル内を通るため、水中にて腐食や劣化しにくい材質であることが好適である。
【0021】
リード線5の先端は、被覆部が剥がされて導電部が露出しており、該導電部と電極素子3とが導電性ペーストなどにより接合されている。
【0022】
ケーブル6は、複数のリード線5をまとめて、外部装置(計測装置や刺激装置など)のコネクタに繋ぐ多芯被覆線である。ケーブル6の内部形状については後で詳述する。
【0023】
<従来における生体電極の課題、及び本実施の形態の生体電極に至る経緯>
上記したように、支持体2は、ハイドロゲルからなり、これにより、生体への親和性および密着性を効果的に向上させることができる。
【0024】
なお、生体電極全体の柔軟性を維持するために、支持体2のみならず、支持体2に埋め込まれる電極素子3や、これに接続されるリード線5も柔軟性の高い材質および形状で形成されることが好ましい。
【0025】
ところで、電極素子3、及びリード線5は、図1に示すように、支持体2に埋め込まれ、固定される。柔軟性を特徴とするハイドロゲルからなる支持体2やリード線5は、汎用性のある材質として従来から一般的に用いられる、シリコーンゴム等の樹脂シートや、ステンレス線等に比べると強度が小さい。また、水を含むハイドロゲルと、疎水性の被覆部とを強固に接合できない(すなわち、接着性に劣る)。
【0026】
以上から、支持体2に埋め込まれたリード線5からケーブル6の一部は、支持体2に強固に固定できない。そのため、ケーブル6に引っ張り力が加わると、ケーブル6が抜ける方向に移動してリード線5が支持体2内で伸びきり、断線する不具合が生じた。また、ケーブル6が抜ける方向に移動し、それにつられてハイドロゲルからなる支持体2が破損する問題が生じた。
【0027】
<本実施の形態の生体電極1の特徴的構成>
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、繊維からなる補強糸7をケーブル6に固定し、支持体2に埋め込むことで、引張強度を効果的に高めることができる生体電極1を発明するに至った。
【0028】
図1に示すように、補強糸7は、支持体2に埋め込まれており、ケーブル6側から離れた前端側(先端側)の電極素子3a付近まで延出している。補強糸7の繊維構造内に支持体2を構成するハイドロゲルが入り込むことで、ハイドロゲルと補強糸7とが一体化して抜けにくくなる。
【0029】
補強糸7は、アラミド繊維やその他(ナイロン、ポリエステル等)のマルチフィラメント糸から選択されることが好ましい。特に、アラミド繊維を用いることが好ましく、これにより、柔軟性があり、かつ引っ張り強度にも優れた補強糸7をハイドロゲルと絡ませることで、生体電極1全体の引張強度を効果的に高めることができる。
【0030】
[配線構造について]
配線4の構造、特に、ケーブル6内の構造について、図2及び図3を用いて、さらに詳しく説明する。
【0031】
図2は、図1に示す配線4を、Y方向に沿って切断した縦断面図である。また、図3は、図2に示すA-A線に沿って切断し矢印方向から見た横断面図である。
【0032】
図2図3に示すように、複数本のリード線5は、まとめて、絶縁性の被覆部8内に収納されており、これにより、ケーブル6が構成される。被覆部8は、例えば、柔軟な樹脂チューブである。樹脂チューブは、例えば、シリコーンゴムで形成される。
【0033】
図2図3に示すように、被覆部8内には、補強チューブ9が内包されている。補強チューブ9は、引っ張りに対する補強や、ケーブルの屈曲の繰り返しやキンクによるリード線の断線を防ぐための補強のために用いる。補強チューブ9は設けなくてもよいが、引っ張り強度だけでなく、ケーブル6は、ある程度折れにくいことも必要である。このため、補強糸7だけでケーブル6に必要な特性を得ることは難しく、したがって、補強チューブ9を設けることが好ましい。なお、被覆部8が、例えば、シリコーンゴムでなく、適度な柔軟性と折れにくい材料であれば、補強チューブ9を設けず、補強糸7だけで補う形態とすることも可能である。
【0034】
図2図3に示すように、補強チューブ9の内部空間に補強糸7が通され、接着層10を介して、補強糸7と補強チューブ9とが固定されている。例えば、ケーブルは、中に細いリード線5を通すために内腔の広い熱収縮チューブを用い、通した後に径を小さくする方法もあるが、このチューブの材料がシリコーンゴム等で接着性が悪いた場合は、補強チューブ9に補強糸7を通すことで接着性を向上させることができる。加えて、補強糸7は、次に説明する接着層11にも接合されるので、以上により、補強糸7を補強チューブ9に入れることで、ケーブル6内に強固に固定できる。
【0035】
また、図2図3に示すように、被覆部8内の端部付近は接着されている(接着層11の形成)。これにより、被覆部8内で、複数本のリード線5、補強チューブ9及び補強糸7を適切に固定できる。補強チューブ9に関しては、ケーブル6の中で屈曲に応じて摺動するために滑りやすい材質を用いているが、位置ズレも生じやすい。そこで接着層11により、効果的に固定することが可能になる。また、接着層11は、被覆部8の内部にハイドロゲルの水分が侵入するのを防ぐ役割もある。
【0036】
なお、接着層11は、少なくとも一か所設ければよい。特に、後述するポリアミド系やポリウレタン系等の柔軟性のある一体成形ケーブルを用いる場合は、接着は、一か所あれば十分である。
【0037】
[補強糸7について]
次に、補強糸7について詳しく説明する。図2図3では、補強糸7を被覆部8の内部に固定している。具体的には、補強チューブ9に補強糸7を通し、補強チューブ9を被覆部8内に固定することで、補強糸7を被覆部8の内部に配置できる。ただし、補強糸7は、被覆部8の内側でなく、被覆部8の外側に固定することもできる。
【0038】
例えば、被覆部8の内側に、数十本の芯線が通るポリアミド系やポリウレタン系等の柔軟性のある一体成形ケーブルを用いる場合、被覆部8の内側に補強糸7を通す空間がないため、補強糸7を被覆部8の外側に固定する。
【0039】
また、図2に示すように、補強糸7は、ケーブル6の先端部付近を始端として固定すればよい。本実施の形態の目的は、ハイドロゲルは水を含むため接着性が低く、ケーブル端をハイドロゲルに固定しようとしても簡単に抜けるため、ハイドロゲルが染み込むような細い繊維を撚った糸でハイドロゲルとケーブル6を繋ぎ抜けにくくすることにあるため、補強糸7の始端は、ケーブル6の先端部とすればよい。なお、補強糸7の始端を、ケーブル6の中間位置や末端とすることも可能であるが、ケーブル6内で補強糸7の長さがあまり長いと、例えば、ケーブル6が屈曲した際に、それにつれて、補強糸7も動きやすくなり、補強糸7と絡むハイドロゲルが引っ張られて変形する可能性がある。したがって、補強糸7の始端は、ケーブル6の先端部とすることが好ましい。
【0040】
補強糸7の本数を限定するものではないが、1本であることが好ましい。補強糸7は、細い繊維を撚った糸であり、これを1本と数える。なお、電極素子3の数が増えることで、ケーブル6の数も複数となる場合は、各ケーブル6に1本の補強糸7を設けることが好ましい。したがって、補強糸7の数は、ケーブル6と同数であることが好ましい。
【0041】
ハイドロゲル内に配置した補強糸7は、ハイドロゲルそのものの引っ張り強度を高めるため、生体電極1の使用中などに、ハイドロゲルに張力が掛かったときでも、ハイドロゲル内部に配線された細いリード線5が切れることを防ぐことができる。その一方で、補強糸7は、ハイドロゲルの膨潤や乾燥による延び縮みに追従しないため、補強糸7の本数を増やすと、ハイドロゲルの歪みを招くことがある。したがって、補強糸7は、1本のみ(ケーブル6の数が増えればその数に合わせて)設ければよい。
【0042】
補強糸7は、引張強度が非常に大きいアラミド繊維で形成されることが好ましいが、補強糸7を設けた実施例に対する引張強度測定によれば、まず先に破断するのは、補強チューブ9と補強糸7との接合部分であることがわかっている。したがって、アラミド繊維ほどの引張強度がなくても、切れにくいマルチフィラメント糸であれば、ポリエステル、ナイロンでも補強糸7とし、十分使用することができる。
【0043】
なお、限定するものでないが、補強糸7の太さは、0.1mm~0.5mm程度であることが好ましい。ハイドロゲルからなる支持体2の厚さとの兼ね合いで上限値を決めることができる。また、ハイドロゲルから簡単に抜けないようにするため、補強糸7は、ある程度の太さが必要とされる。一例であるが、アラミド繊維として、東レ・デュポン株式会社製のケブラー(登録商標)(0.25mm径(K220dtex/1を2本撚ったもの))を使用できる。
【0044】
図1では、補強糸7は、支持体2の後端側から前端側に向けてY方向と略平行な方向に延出しているが、蛇行させたりUターンさせてもよい。また、補強糸7の前端は、複数の電極素子3の中で、最も前端側に位置する電極素子3aと同位置か、あるいは、該電極素子3aよりも、さらに先の位置にまで延びていることが好ましい。これにより、支持体2の後端側から前端側に向けての略全体にわたって引張強度を高めることができ、リード線5の切断防止、及びハイドロゲルの破損防止を効果的に図ることができる。
【0045】
以上により、本実施の形態の生体電極1によれば、ケーブル6に引っ張り応力が加わっても、ハイドロゲルからなる支持体全体の引張強度が高まったことで、該引っ張り応力に耐えて、リード線5の切断やハイドロゲルの破損を効果的に特性できる。限定されるものではないが、20N(2kgf)以上の引張強度を得ることができ、実使用に十分耐え得る生体電極1を得ることができる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明する。ただし、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0047】
実験では、補強糸を含む生体電極(実施例)と、補強糸を含まない生体電極(比較例)を形成した。補強糸以外の電極素子3、リード線5及びケーブル6は、図1と同様の構造とし、実施例及び比較例ともに同じとした。
【0048】
図4に示す引張試験機20を用い、生体電極1の支持体2側を第1のクランプ21に固定し、一方、生体電極1のケーブル6を第2のクランプ22に挟んだ。第2のクランプ22は、移動機構部23により上下移動可能に支持されている。図4の状態から第2のクランプ22を図示上方向に引き上げた際の移動距離と、ケーブル6の根本4a付近にかかる荷重との関係を求めた。図5は、補強糸を用いた実施例の実験結果であり、図6は、補強糸を有さない比較例の実験結果である。
【0049】
図5及び図6を対比すると、補強糸を有さない比較例では、荷重が20Nを超えると、各電極素子3に繋がる全てのリード線が伸びきった状態になり、やがて各リード線が徐々に切れ始めた。
【0050】
これに対し、本実施例では、荷重が20Nを超えても十分耐えることができ、荷重が50Nを超えて、補強チューブと補強糸との接合部が外れることがわかり、リード線の切断は確認されなかった。このように、補強糸を設けることで、引張強度を十分高くでき、引張応力に十分耐えることができる生体電極を製造できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は、ハイドロゲルからなる支持体に、補強糸を埋めこむことで、引張強度を高めることができ、心電や、脈波、筋電、脳波等の生体情報を測定する生体電極として好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 :生体電極
2 :支持体
3、3a :電極素子
4 :配線
5 :リード線
6 :ケーブル
7 :補強糸
8 :被覆部
9 :補強チューブ
10 :接着層
11 :接着層
20 :クランプ装置
21 :第1のクランプ
22 :第2のクランプ
23 :移動機構部
図1
図2
図3
図4
図5
図6