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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102424
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240724BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20240724BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 Z
H05K7/20 D
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006290
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 奎典
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA11
5E322EA10
5E322FA01
5F136BA06
5F136BA32
5F136CB07
5F136CB08
5F136CB27
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA14
(57)【要約】
【課題】部品点数を増加することなく、且つ部品または装置の大型化を伴わずに伝熱面積を増やすことができ、放熱性能を向上させることが可能なヒートシンクを提供する。
【解決手段】ヒートシンク2は、フィン領域2bに複数の溝4を有することにより、伝熱面積を増やすことができ、放熱性能を向上させることが可能である。さらに、溝4の長手方向Yが冷媒の流入方向Aに対して平行でないため、流入した冷媒の一部が溝4の長手方向側面41に衝突し、撹拌、混合されることから、冷却効率をより向上させることができる。また、ヒートシンク2は、冷媒の流入方向Aに対して長手方向Y3が平行となるように配置された溝4cを有していてもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に複数のピンフィンが設けられたフィン領域を有し、他方の面に電子部品が取り付け可能であり、前記電子部品で発生した熱を前記フィン領域を流れる冷媒に伝えるヒートシンクであって、
前記フィン領域は、前記一方の面に設けられた複数の溝を有することを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記溝は、前記フィン領域に入る直前の前記冷媒の流入方向に対して前記溝の長手方向が平行とならないように配置されたことを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記ピンフィンは、矩形の前記フィン領域に千鳥状に配置され、前記溝は、前記フィン領域の一つの端面から他の端面まで貫通して設けられたことを特徴とする請求項2記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記溝は、格子状に配置されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記溝は、前記フィン領域に入る直前の前記冷媒の流入方向に対して前記溝の長手方向が平行となるように配置されたことを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記ピンフィンは、前記フィン領域に千鳥状に配置され、前記溝は、前記ピンフィンと交互に千鳥状に配置されたことを特徴とする請求項5記載のヒートシンク。
【請求項7】
一部の前記溝は、前記フィン領域に入る直前の前記冷媒の流入方向に対して前記溝の長手方向が平行とならないように配置され、他の一部の前記溝は、前記フィン領域に入る直前の前記冷媒の流入方向に対して前記溝の長手方向が平行となるように配置されたことを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記ピンフィンは円柱状であり、前記溝は前記ピンフィンの根元と間隔をあけて設けられたことを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項9】
前記ピンフィンは、根元の角部が曲面となっていることを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記溝は、一定の深さ寸法を有することを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項11】
前記溝は、前記溝の長手方向に平行な断面において異なる深さ寸法を有することを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項12】
前記溝は、前記溝の長手方向に垂直な断面において異なる深さ寸法を有することを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【請求項13】
前記溝は、内部に段差を有することを特徴とする請求項11または請求項12に記載のヒートシンク。
【請求項14】
前記溝は、底面が傾斜していることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のヒートシンク。
【請求項15】
前記溝は、底面と側面の角部が曲面となっていることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のヒートシンク。
【請求項16】
前記冷媒の流入口と流出口を有するウォータージャケットと接合され、液冷式冷却器の冷却容器を形成することを特徴とする請求項1記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ヒートシンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、CPU、LSI、パワー半導体素子等の発熱素子の発熱密度が増加して高温となる傾向にある。車載用インバータにおいては、パワーモジュールの発熱密度の増加に加え、他の様々な熱源からの熱害に晒されていることから、従来の空冷式冷却器よりも冷却性能の高い液冷式冷却器が用いられることが多くなっている。
【0003】
液冷式冷却器は、一方の面にフィン領域を有し、他方の面に電子部品が取り付け可能なヒートシンクを備え、冷媒流路にフィン領域が配置されるよう構成される。このような液冷式冷却器において放熱性能を向上させる方法として、フィン形状を複雑にしたり部品点数を増やしたりすることで、冷媒への伝熱面積を増やす方法がある。また、フィン領域を通過する冷媒の流れを乱すことにより、冷媒流路の冷媒を撹拌して冷却効率を向上させる方法も知られている。
【0004】
例えば特許文献1では、積層方向に重ねられた複数のインナフィンが冷媒流路に配設された積層型冷却器において、少なくとも一つのインナフィンをウェーブフィンとすることにより伝熱面積を増やしている。さらに、このような構造によれば、冷媒の一部がウェーブフィンに沿って蛇行しながら進むため、冷媒流路内で冷媒が混ざりやすくなり、冷却効率がより向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5382185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒートシンクの伝熱面積を簡単に増やす方法として、フィンの高さ寸法を大きくしてフィンの表面積を増やすことが考えられる。しかしながら、フィンの高さ寸法が大きくなるほどフィン先端部の放熱性は低下し、フィン効率が低下する。さらに、流路断面積が拡大するため冷媒の流速低下が生じるという問題がある。
また、特許文献1のように、部品点数を増やしてフィン構成を複雑にすることで伝熱面積を増やす方法では、冷却器が大型化するという問題がある。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、部品点数を増加することなく、且つ部品または装置の大型化を伴わずに伝熱面積を増やすことができ、放熱性能を向上させることが可能なヒートシンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示されるヒートシンクは、一方の面に複数のピンフィンが設けられたフィン領域を有し、他方の面に電子部品が取り付け可能であり、電子部品で発生した熱をフィン領域を流れる冷媒に伝えるヒートシンクであって、フィン領域は、一方の面に設けられた複数の溝を有する。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示されるヒートシンクによれば、フィン領域に複数の溝を有することにより、部品点数を増加することなく、且つ部品または装置の大型化を伴わずに伝熱面積を増やすことができ、放熱性能を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係るヒートシンクを備えた電力変換装置を示す分解斜視図である。
図3】実施の形態1に係るヒートシンクのフィン領域を示す斜視図である。
図4】実施の形態1に係るヒートシンクのフィン領域を示す平面図である。
図5】実施の形態1に係るヒートシンクのフィン領域の変形例を示す平面図である。
図6】実施の形態1に係るヒートシンクのフィン領域の別の変形例を示す平面図である。
図7】実施の形態2に係るヒートシンクのフィン領域を示す斜視図である。
図8】実施の形態2に係るヒートシンクのフィン領域を示す平面図である。
図9】実施の形態3に係るヒートシンクのフィン領域を示す斜視図である。
図10】実施の形態3に係るヒートシンクのフィン領域を示す平面図である。
図11】実施の形態4に係るフィン構造の例を示す断面図である。
図12】実施の形態4に係る溝構造の例を示す断面図である。
図13】実施の形態4に係る溝構造の変形例を示す断面図である。
図14】実施の形態4に係る溝構造の別の変形例を示す断面図である。
図15】実施の形態4に係る溝構造のさらに別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係るヒートシンクについて、図面に基づいて説明する。図1は、実施の形態1に係るヒートシンクを示す斜視図、図2は、実施の形態1に係るヒートシンクを備えた電力変換装置を示す分解斜視図、図3及び図4は、実施の形態1に係るヒートシンクのフィン領域を示す斜視図及び平面図である。なお、各図において、同一、相当部分には同一符号を付している。
【0012】
ヒートシンク2は、一方の面(図1では下の面)に複数のピンフィン(以下、フィン3)が設けられたフィン領域2bを有している。フィン領域2bは、一方の面全体を占めており矩形である。また、ヒートシンク2は、他方の面(以下、ベース面2a)に電子部品1が取り付け可能であり、電子部品1で発生した熱をフィン領域2bを流れる冷媒に伝える。さらに、フィン領域2bは、一方の面に設けられた複数の溝4を有する。
【0013】
ヒートシンク2は、例えばアルミニウム、銅等の良熱伝導性の材料を用い、鍛造、鋳造、ダイカスト、金属粉末射出成型(MIM)等の方法で製造される。いずれの製造方法においても金型が用いられ、フィン3と溝4は同時に形成される。
【0014】
電子部品1は、特に限定されるものではないが、例えば、パワー電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体素子、またはIGBT等の半導体素子とダイオードとを内蔵した半導体モジュール等である。電子部品1は、金属結合、グリース、または接着等でベース面2aに固定される。
【0015】
図2に示す電力変換装置20は、例えば車載用インバータであり、ヒートシンク2とウォータージャケット5から構成される液冷式冷却器10を備えている。ウォータージャケット5は、ヒートシンク2と同様に、例えばアルミニウム、銅等の良熱伝導性の材料を用いて形成される。ヒートシンク2は、冷媒の流入口6と流出口7を有するウォータージャケット5と接合され、液冷式冷却器10の冷却容器を形成する。
【0016】
ウォータージャケット5は、短手方向側の壁面に、冷媒の流入口6と流出口7とを個々に有している。ただし、冷却容器の構成は特に限定されるものではなく、ヒートシンク2及びウォータージャケット5の形状、流入口6及び流出口7の配置等は適宜変更が可能である。
【0017】
液冷式冷却器10の冷媒としては、例えばエチレングリコール系の不凍液が混入された水、水、アンモニア等の自然冷媒、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC-123、HFC-134a等のフロン系冷媒、メタノール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等が用いられる。
【0018】
液冷式冷却器10の作用について、図2を用いて簡単に説明する。外部から供給された冷却水等の冷媒は、矢印Aで示すように流入口6から流入し、冷却容器の長手方向に延びる冷媒流路8を通過して流出口7から排出される。ベース面2aに実装された電子部品1で発生した熱は、ベース面2aからフィン領域2bのフィン3へ伝わり、さらにフィン3に接している冷媒へと伝わることにより、電子部品1が冷却される。
【0019】
ヒートシンク2に設けられた溝4について、図3及び図4を用いて詳細に説明する。図3及び図4において、矢印Aはフィン領域2bに入る直前の冷媒の流入方向を示している。ただし、冷媒の流れる方向は、フィン領域2bに流入後は一定ではない。また、図4において、矢印Xは溝4の幅方向(短手方向)を示し、矢印Yは溝4の長手方向を示している。
【0020】
フィン3は角柱であり、四つの端面を有する矩形のフィン領域2bに千鳥状に配置されている。すなわち、フィン領域2bのいずれかの端面の側から見たとき、一列目のフィン3と二列目のフィン3は重ならず、一列目のフィン3と三列目のフィン3が重なるように配置されている。
【0021】
溝4は、冷媒の流入方向Aに対して溝4の長手方向Yが平行とならないように配置されている。冷媒の流入方向Aはヒートシンク2の長手方向壁面2cと平行であり、溝4の長手方向Yはヒートシンク2の長手方向壁面2cと所定の角度(約45度)を有している。また、溝4は、矩形のフィン領域2bの一つの端面から他の端面まで貫通して設けられている。
【0022】
このような構成によれば、溝4の長手方向Yの寸法を十分に確保することができるため、ヒートシンク2の伝熱面積の増加に大きく寄与することができる。溝4による伝熱面積の増加の程度は、溝4の幅方向Xの寸法、長手方向Yの寸法、深さ寸法、及び形状等によって変わるが、溝4を設けない場合に比べて数パーセントから10パーセントあるいはそれ以上の増加が見込まれる。
また、フィン領域2bに流入した冷媒の一部が溝4の長手方向側面41に衝突して流れが乱されるため、冷媒流路8において温度差が生じた冷媒が撹拌、混合され、冷却効率が向上する。
【0023】
前述のように、ヒートシンク2は金型で製造されるため、溝4の形状は単純であることが望ましい。金型を用いる製造方法では、金型寿命が重要な指標であり、金型の形状が複雑かつ微細になるほど、その形状部に応力が集中し寿命が短くなる。図3及び図4に示す溝4の形状は単純であるため、溝4の追加によって金型寿命が短くなることは殆どない。
【0024】
なお、実施の形態1では、溝の長手方向が冷媒の流入方向に対して角度を有していればよく、図3及び図4に示す溝4の形状及び配置は一例に過ぎない。また、フィン3の形状は角柱に限定されるものではなく、円柱、六角柱等であってもよい。さらに、フィン3の本数及び配置等も限定されるものではない。
【0025】
実施の形態1に係るヒートシンクのフィン領域の変形例について、図5及び図6を用いて説明する。
図5に示す変形例では、長手方向Y1、Y2をそれぞれ有する溝4a、4bを格子状に配置している。このような配置によれば、溝を設けない場合に比べ伝熱面積を約9%増やすことができ、さらに冷媒撹拌による効果も加わり、放熱性能が約10%向上するという結果が得られた。
【0026】
また、図6に示す別の変形例では、フィン領域2bに円柱状のフィン3aを設けている。このように、フィン3aの側面が曲面となっている場合、溝4はフィン3aの根元と間隔Sをあけて設けられる。これにより、金型が複雑な微細形状を有することを避けることができる。
【0027】
実施の形態1に係るヒートシンク2によれば、フィン領域2bに複数の溝4を有することにより、部品点数を増加することなく、且つ部品または装置の大型化を伴わずに伝熱面積を増やすことができ、放熱性能を向上させることが可能である。また、部品点数を増加したり部品または装置を大型化したりした場合に起こる、フィン効率の低下、冷媒の流速低下等を防止することができる。
【0028】
さらに、溝4の長手方向Yが冷媒の流入方向Aに対して平行でないため、流入した冷媒の一部が溝4の長手方向側面41に衝突して撹拌、混合されることから、冷却効率をより向上させることができる。また、溝4は単純な形状であるため、ヒートシンク2を製造する際の金型の寿命に影響を与えることなく、製造コストの上昇を招かない。
これらのことから、実施の形態1によれば、低コストで小型且つ放熱性能の高いヒートシンク2を実現することが可能である。
【0029】
実施の形態2.
図7及び図8は、実施の形態2に係るヒートシンクのフィン領域を示す斜視図及び平面図である。なお、実施の形態2に係るヒートシンク2の構成は、フィン領域2bに設けられた溝4c以外は上記実施の形態1に係るヒートシンク2と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0030】
実施の形態2に係るヒートシンク2の溝4cについて、図7及び図8を用いて説明する。図7及び図8において、矢印Aはフィン領域2bに入る直前の冷媒の流入方向を示している。ただし、冷媒の流れる方向は、フィン領域2bに流入後は一定ではない。また、図8において、矢印Y3は溝4cの長手方向を示している。
【0031】
溝4cは、冷媒の流入方向Aに対して溝4cの長手方向Y3が平行となるように配置されている。冷媒の流入方向Aはヒートシンク2の長手方向壁面2cと平行であり、溝4cの長手方向Y3はヒートシンク2の長手方向壁面2cと平行である。フィン3は、矩形のフィン領域2bに千鳥状に配置され、溝4cは、フィン3と交互に千鳥状に配置されている。
【0032】
このような構成によれば、フィン領域2bに流入した冷媒の一部は、溝4cの長手方向Y3に沿って流れるため、冷媒の流れが大きく乱されることはない。なお、実施の形態2では、溝の長手方向が冷媒の流入方向と平行であればよく、図7及び図8に示す溝4cの形状及び配置は一例に過ぎない。
【0033】
実施の形態2に係るヒートシンク2によれば、フィン領域2bに複数の溝4cを有することにより、部品点数を増加することなく、且つ部品または装置の大型化を伴わずに伝熱面積を増やすことができ、放熱性能を向上させることが可能である。また、部品点数を増加したり部品または装置を大型化したりした場合に起こる、フィン効率の低下、冷媒の流速低下等を防止することができる。
【0034】
さらに、溝4cの長手方向Y3が冷媒の流入方向Aと一致しており、フィン領域2bに流入した冷媒の一部は、溝4cの長手方向Y3に沿って流れるため、冷媒の流れに偏りが生じることを防ぐことができる。また、溝4cは単純な形状であるため、ヒートシンク2を製造する際の金型の寿命に影響を与えることなく、製造コストの上昇を招かない。
これらのことから、実施の形態2によれば、低コストで小型且つ放熱性能の高いヒートシンク2を実現することが可能である。
【0035】
実施の形態3.
図9及び図10は、実施の形態3に係るヒートシンクのフィン領域を示す斜視図及び平面図である。なお、実施の形態3に係るヒートシンク2の構成は、フィン領域2bに設けられた溝4c以外は上記実施の形態1に係るヒートシンク2と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0036】
実施の形態3に係るヒートシンク2の溝4、4cについて、図9及び図10を用いて説明する。図9及び図10において、矢印Aはフィン領域2bに入る直前の冷媒の流入方向を示している。ただし、冷媒の流れる方向は、フィン領域2bに流入後は一定ではない。また、図10において、矢印Yは溝4の長手方向を示し、矢印Y3は溝4cの長手方向を示している。
【0037】
実施の形態3に係るヒートシンク2は、上記実施の形態1で説明した溝4(図4参照)と、上記実施の形態2で説明した溝4c(図8参照)の両方を有している。すなわち、一部の溝4は、冷媒の流入方向Aに対して溝4の長手方向Yが平行とならないように配置され、他の一部の溝4cは、冷媒の流入方向Aに対して溝4cの長手方向Y3が平行となるように配置されている。一部の溝4は、矩形のフィン領域2bの一つの端面から他の端面まで貫通して設けられている。
【0038】
このような構成によれば、一部の溝4の長手方向Yの寸法を十分に確保することができるため、ヒートシンク2の伝熱面積を増やすことができる。また、フィン領域2bに流入した冷媒の一部は、一部の溝4の長手方向側面41に衝突して流れが乱されるため、冷媒流路8において温度差が生じた冷媒が撹拌、混合され、冷却効率が向上する。一方、フィン領域2bに流入した冷媒の一部は、他の一部の溝4cの長手方向Y3に沿って流れるため、流れが大きく乱されることはない。
【0039】
なお、実施の形態3では、一部の溝の長手方向が冷媒の流入方向に対して角度を有し、他の一部の溝の長手方向が冷媒の流入方向と平行であればよく、図9及び図10に示す溝4、4cの形状及び配置は一例に過ぎない。
【0040】
実施の形態3に係るヒートシンク2によれば、フィン領域2bに複数の溝4、4cを有することにより、伝熱面積を増やすことができ、放熱性能を向上させることが可能である。また、冷媒の流入方向Aに対して長手方向が平行な溝4cと平行でない溝4の両方を設けることにより、冷媒の流れに偏りが生じることを防止しつつ、冷媒を撹拌、混合して冷却効率を向上させることができる。また、溝4、4cは単純な形状であるため、ヒートシンク2を製造する際の金型の寿命に影響を与えることなく、製造コストの上昇を招かない。
これらのことから、実施の形態3によれば、低コストで小型且つ放熱性能の高いヒートシンク2を実現することが可能である。
【0041】
実施の形態4.
実施の形態4では、上記実施の形態1から実施の形態3に係るヒートシンクに適用可能なフィン構造及び溝構造の例について、図11から図15を用いて説明する。
図11に示す例では、フィン領域2bに設けられたフィン3は、根元の角部が曲面31となっている。金型でヒートシンクを製造する際に、フィン3の根元の角部に応力が集中しやすく金型が破損しやすい。このため、フィン3の根元の角部にR(アール)を付けることで応力を分散し、金型の長寿命化を図ることができる。
【0042】
また、図12に示す溝構造の例では、冷媒の流入方向Aに対して長手方向Y3が平行となるように配置された溝4c(図8及び図10参照)は、長手方向Y3と平行な断面において一定の深さ寸法Dを有している。なお、図示していないが、溝4cは、長手方向Y3と垂直な断面において一定の深さ寸法を有していてもよい。
【0043】
さらに、図示していないが、冷媒の流入方向Aに対して長手方向Yが平行とならないように配置された溝4(図4及び図10参照)は、長手方向Yと平行あるいは垂直な断面において、一定の深さ寸法を有している。このように、溝4、4cの深さ寸法を一定にすることで、金型の形状が単純になり、局所的な応力集中を緩和することができるので、金型の長寿命化が図られる。
【0044】
また、図13から図15に示すように、溝4cは、長手方向Y3に平行な断面において異なる深さ寸法を有していてもよい。
図13に示す変形例では、溝4cは、図12に示す溝4cよりも深さ寸法D1が大きく(D1>D)、内部に段差部43を有することにより、底面42と段差部43とでそれぞれ異なる深さ寸法D1、D2を有している。このように、溝4cの深さ寸法を大きくしたり内部に段差部43を設けたりすることで、溝4cの表面積が増えヒートシンクの伝熱面積が増加する。
【0045】
また、溝4cは、図14に示す別の変形例のように、底面42aが傾斜していてもよいし、図15に示すさらに別の変形例のように、底面42と側面の角部が曲面44となっていてもよい。このように、溝4cの底面42aを傾斜させたり角部にRを付けたりすることで、冷媒の流れに与える影響を調整することができる。また、溝4cの角部にRを付けることで、冷媒と共に微細なゴミ等が流れ込んできた場合でも角部にゴミが詰まり難く、詰まりによる放熱性能低下を防ぐことができる。
【0046】
また、図示していないが、溝4cは、長手方向Y3に垂直な断面において異なる深さ寸法を有していてもよい。すなわち、溝4cは、長手方向Y3に垂直な断面において、段差部を有していたり、底面が傾斜していたり、角部が曲面となっていてもよい。さらに、溝4は、長手方向Yと平行あるいは垂直な断面において、異なる深さ寸法を有していてもよい。すなわち、溝4は、長手方向Yと平行あるいは垂直な断面において、段差部を有していたり、底面が傾斜していたり、角部が曲面となっていてもよい。
【0047】
なお、上記実施の形態1から実施の形態4では、液冷式冷却器に用いられるヒートシンクについて説明したが、本願に係るヒートシンクは液冷式以外の冷却器にも用いることが可能であり、冷媒は気体であってもよい。
【0048】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0049】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0050】
(付記1)
一方の面に複数のピンフィンが設けられたフィン領域を有し、他方の面に電子部品が取り付け可能であり、前記電子部品で発生した熱を前記フィン領域を流れる冷媒に伝えるヒートシンクであって、
前記フィン領域は、前記一方の面に設けられた複数の溝を有することを特徴とするヒートシンク。
(付記2)
前記溝は、前記フィン領域に入る直前の前記冷媒の流入方向に対して前記溝の長手方向が平行とならないように配置されたことを特徴とする付記1に記載のヒートシンク。
(付記3)
前記ピンフィンは、矩形の前記フィン領域に千鳥状に配置され、前記溝は、前記フィン領域の一つの端面から他の端面まで貫通して設けられたことを特徴とする付記1または付記2に記載のヒートシンク。
(付記4)
前記溝は、格子状に配置されたことを特徴とする付記1から付記3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
(付記5)
前記溝は、前記フィン領域に入る直前の前記冷媒の流入方向に対して前記溝の長手方向が平行となるように配置されたことを特徴とする付記1に記載のヒートシンク。
(付記6)
前記ピンフィンは、前記フィン領域に千鳥状に配置され、前記溝は、前記ピンフィンと交互に千鳥状に配置されたことを特徴とする付記5に記載のヒートシンク。
(付記7)
一部の前記溝は、前記フィン領域に入る直前の前記冷媒の流入方向に対して前記溝の長手方向が平行とならないように配置され、他の一部の前記溝は、前記フィン領域に入る直前の前記冷媒の流入方向に対して前記溝の長手方向が平行となるように配置されたことを特徴とする付記1に記載のヒートシンク。
(付記8)
前記ピンフィンは円柱状であり、前記溝は前記ピンフィンの根元と間隔をあけて設けられたことを特徴とする付記1から付記7のいずれか一項に記載のヒートシンク。
(付記9)
前記ピンフィンは、根元の角部が曲面となっていることを特徴とする付記1から付記8のいずれか一項に記載のヒートシンク。
(付記10)
前記溝は、一定の深さ寸法を有することを特徴とする付記1から付記9のいずれか一項に記載のヒートシンク。
(付記11)
前記溝は、前記溝の長手方向に平行な断面において異なる深さ寸法を有することを特徴とする付記1から付記9のいずれか一項に記載のヒートシンク。
(付記12)
前記溝は、前記溝の長手方向に垂直な断面において異なる深さ寸法を有することを特徴とする付記1から付記9のいずれか一項に記載のヒートシンク。
(付記13)
前記溝は、内部に段差を有することを特徴とする付記11または付記12に記載のヒートシンク。
(付記14)
前記溝は、底面が傾斜していることを特徴とする付記11または付記12に記載のヒートシンク。
(付記15)
前記溝は、底面と側面の角部が曲面となっていることを特徴とする付記11または付記12に記載のヒートシンク。
(付記16)
前記冷媒の流入口と流出口を有するウォータージャケットと接合され、液冷式冷却器の冷却容器を形成することを特徴とする付記1から付記15のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願は、冷却器を構成するヒートシンクとして利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 電子部品、2 ヒートシンク、2a ベース面、2b フィン領域、2c 長手方向壁面、3、3a フィン、31、44 曲面、4、4a、4b、4c 溝、5 ウォータージャケット、6 流入口、7 流出口、8 冷媒流路、10 液冷式冷却器、20 電力変換装置、41 長手方向側面、42、42a 底面、43 段差部
図1
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