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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102434
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】水系化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240724BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20240724BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240724BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240724BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240724BHJP
   A61Q 3/00 20060101ALI20240724BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/88
A61K8/19
A61Q1/00
A61Q1/10
A61Q3/00
A61Q1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006308
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】500154423
【氏名又は名称】株式会社マツモト交商
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄太
(72)【発明者】
【氏名】多田 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】宮田 苑加
(72)【発明者】
【氏名】中山 恭子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB132
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC342
4C083AC372
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC552
4C083AC862
4C083AD022
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD242
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD492
4C083AD572
4C083AD662
4C083BB01
4C083BB21
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC14
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】水系化粧料に疎水性粉体を配合しても疎水性粉体の分散性、分散安定性が向上し、耐水性も向上した水系化粧料を提供する。
【解決手段】以下の成分(A)~(C)
(A)アニオン変性セルロースナノファイバー
(B)界面活性剤
(C)疎水性粉体
を含有し、
(B)界面活性剤のHLBと含有量から計算されるHLBの加重平均が6~16であることを特徴とする水系化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(C)
(A)アニオン変性セルロースナノファイバー
(B)界面活性剤
(C)疎水性粉体
を含有し、
(B)界面活性剤のHLBと含有量から計算されるHLBの加重平均が6~16であることを特徴とする水系化粧料。
【請求項2】
成分(A)のアニオン変性セルロースナノファイバーが、平均繊維径が2~200nm、アスペクト比が20以上のものである請求項1記載の水系化粧料。
【請求項3】
成分(A)の含有量が、0.01~3.0質量%である請求項1または2記載の水系化粧料。
【請求項4】
成分(B)の含有量が、0.01~5.0質量%である請求項1または2記載の水系化粧料。
【請求項5】
成分(C)の含有量が、0.01~20.0質量%である請求項1または2記載の水系化粧料。
【請求項6】
成分(A)と(C)の質量比が1:1~50ある請求項1または2記載の水系化粧料。
【請求項7】
成分(B)と(C)の質量比が1:0.1~100である請求項1または2に記載の水系化粧料。
【請求項8】
メイクアップ化粧料である請求項1または2記載の水系化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性粉体の分散性、分散安定性が向上し、耐水性も向上した水系化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水系化粧料に疎水性粉体を配合する場合、分散性、分散安定化のために、種々の界面活性剤を使用することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、疎水性粉体を含有する液体化粧料に特定の非ニュートン粘性指数(n)の範囲で特定の粘度範囲を満足するアニオン性高分子化合物(キサンタンガム)等を用いる技術が開示されている。また、特許文献2では、疎水性粉体を含有する水系アイライナー組成物において、キサンタンガム及びジェランガムから選ばれる微生物由来の多糖類等を用いる技術が開示されている。更に、特許文献3では、化粧料に用いられる疎水性粉体を含有する水系分散体において、特定の平均重合度、結晶化率および平均粒子径であるセルロース含有微粒子等を用いる技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの技術のうち、特許文献1、2の技術では化粧料の粘度が高くなり使用性も悪く、特許文献3では化粧料における疎水性粉体の沈殿抑制効果が不十分である。また、これらの化粧料は総じて、高HLBの界面活性剤を使用することで疎水性粉体の分散性、分散安定性は向上するが、耐水性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4036560号
【特許文献2】特許第4299294号
【特許文献3】特開2010-138074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みて行われたものであり、水系化粧料に疎水性粉体を配合しても疎水性粉体の分散性、分散安定性が向上し、耐水性も向上した水系化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、アニオン変性セルロースナノファイバー、界面活性剤、疎水性粉体を含有する水系化粧料において、界面活性剤のHLBと含有量から計算されるHLBの加重平均を特定の範囲にすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の成分(A)~(C)
(A)アニオン変性セルロースナノファイバー
(B)界面活性剤
(C)疎水性粉体
を含有し、
(B)界面活性剤のHLBと含有量から計算されるHLBの加重平均が6~16であることを特徴とする水系化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
疎水性粉体を含有しながらも、疎水性粉体の分散性、分散安定性が向上し、耐水性も向上した優れた水系化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、以下の成分(A)~(C)
(A)アニオン変性セルロースナノファイバー
(B)界面活性剤
(C)疎水性粉体
を含有し、
(B)界面活性剤のHLBと含有量から計算されるHLBの加重平均が6~16であることを特徴とする水系化粧料である。
【0011】
本発明の水系化粧料で用いられる成分(A)アニオン変性セルロースナノファイバーは、セルロース原料をアニオン変性した、アニオン変性セルロースを解繊することにより得られる。セルロース原料としては 、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等))、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等が挙げられる。これらの中でも、植物や微生物等が好ましく、植物がより好ましい。
【0012】
上記アニオン変性セルロースは、上記セルロース原料を原料としたセルロースに、例えばカルボキシメチル基、カルボキシル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基等のアニオン性基を導入したものであり、例えば、カルボキシメチル化セルロース、カルボキシル化セルロース、リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロース及び硫酸エステルセルロース等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。また、これらの中でも、カルボキシメチル化セルロースおよびカルボキシル化セルロースが好ましく、カルボキシメチル化セルロースは食品添加物として使用できるため特に好ましい。
【0013】
上記アニオン変性セルロースの解繊は公知の方法、例えば、WO2018/230228の「0043」等に記載された方法に基づいて製造できる。また、アニオン変性セルロースナノファイバーの平均繊維径やアスペクト比は解砕時の圧力により調整することができる。
【0014】
成分(A)アニオン変性セルロースナノファイバーの平均繊維径は、特に限定されないが、例えば、1~500nmが好ましく、2~200nmがより好ましい。また、成分(A)アニオン変性セルロースナノファイバーのアスペクト比は、特に限定されないが、10以上、1000以下が好ましく、20以上、100以下がより好ましい。本発明においては、成分(A)のアニオン変性セルロースナノファイバーは、平均繊維径が2~200nm、アスペクト比が20以上のものを用いることが特に好ましい。なお、成分(A)の平均繊維径、平均繊維長及びアスペクト比の測定は以下のようにして測定することができる。
【0015】
平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いてランダムに選んだ200本の繊維について解析した値である。なおアスペクト比は下記の式により算出した値である。
【0016】
【数1】
【0017】
成分(A)アニオン変性セルロースナノファイバーとしては、日本製紙社製のCELLENPIA(セレンピア:登録商標)シリーズ(カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、カルボキシル化セルロースナノファイバー)、第一工業製薬社製のRHEOCRYSTA(レオクリスタ:登録商標) Cellulose Nanofiber Gel(カルボキシル化セルロースナノファイバー)、王子製紙社製のアウロ・ヴィスコ(リン酸エステル化セルロースナノファイバー)などの市販品が使用可能である。
【0018】
(カルボキシメチル置換度)
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.50以下であることが好ましい。カルボキシメチル置換度が0.50を超えると水へ溶解し、繊維形状を維持できなくなると考えられる。また、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.01以上であることが好ましい。カルボキシメチル置換度が0.01未満であるとカルボキシメチル化セルロースナノファイバーへと解繊するためには多大なエネルギーが必要になると考えられる。操業性の観点から、当該置換度は0.02~0.50であることがより好ましく、0.05~0.50であることがさらに好ましく、0.10~0.40であることがさらに好ましい。セルロースにカルボキシメチル基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発するため、ナノファイバーへと解繊することができるようになる。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
【0019】
本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう。)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうちカルボキシメチルエーテル基に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)を示す。
【0020】
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものである。すなわち、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの水分散体を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができる。また、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーをX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができる。
【0021】
(セルロースI型の結晶化度)
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーにおけるセルロースI型の結晶化度は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。セルロースI型の結晶化度が40%以上と高いと、水等の溶媒中で溶解せずに結晶構造を維持するセルロースの割合が高いため、チキソ性が高くなり(チキソトロピー)、増粘剤等の粘度調整用途に適するようになる。また、水系化粧料の原料に添加した際に、優れた保形性を付与できるという利点が得られる。セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、並びにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化及びカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。
【0022】
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのセルロースI型の結晶化度の測定方法は、以下の通りである:
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD-6000、島津製作所製)を用いて測定する。
結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°~30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
【0023】
【数2】
【0024】
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーにおけるI型結晶の割合は、ナノファイバーとする前のカルボキシメチル化セルロースにおけるものと、通常、同じである。
【0025】
本発明の水系化粧料における成分(A)の含有量は特に限定されないが、例えば、0.01~3.0質量%(以下、単に%という)、好ましくは0.1~1.0%である。
【0026】
本発明の水系化粧料で用いられる成分(B)界面活性剤は、特に限定されないが、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
【0027】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリン、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸エステル等のグリセリンまたはポリグリセリンのエステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビットモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリントリイソステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート、等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン-2-オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル、等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン-2-デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、水添ラノリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリンエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、テトロニック等のテトラポリオキシエチレン・テトラポリオキシプロピレンエチレンジアミン縮合物類、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレイン酸エステル等のポリオキシエチレンヒマシ油誘導体またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。
【0028】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、 ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン酸、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、ポリアスパラギン酸ナトリウム等のアミノ酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸、ジトリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸コラーゲン加水分解アルカリ塩等が挙げられる。
【0029】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5,-メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコ-ル脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、カチオンポリマー、アクリル酸β-N-N-ジメチル-N-エチルアンモニオエチル塩化ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
【0030】
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N,N,-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤、レシチン、水添レシチン等のリン脂質等が挙げられる。
【0031】
これらの界面活性剤の中でも、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましい。また、非イオン性界面活性剤の中でもソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等が、アニオン性界面活性剤の中でもリン酸エステル塩、アミノ酸塩等が、両性界面活性剤の中でもリン脂質等が好ましい。
【0032】
特に本発明においては、これらの界面活性剤の中でも、疎水性粉体の分散性、安全性の点から特にポリアスパラギン酸Na(HLB:8~10)、ラウレス-10(HLB:12)、ラウレス-20(HLB:15)、ラウレス-30(HLB:16)、べへネス-10(HLB:10)、べへネス-20(HLB:16)、べへネス-30(HLB:18)、イソステアリン酸ソルビタン(HLB:5)、セスキステアリン酸ソルビタン(HLB:4)、トリステアリン酸ソルビタン(HLB:2)から選ばれる1種以上を組み合わせて用いることが好ましい。本発明においては、界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明の水系化粧料における成分(B)の含有量は特に限定されないが、例えば、0.01~5.0%、好ましくは0.05~3.0%である。
【0034】
なお、本発明の水系化粧料における成分(B)界面活性剤のHLBと含有量から計算されるHLBの加重平均が6~16、好ましくは8~15である。なお、界面活性剤のHLB加重平均は、水系化粧料に使用した界面活性剤のHLBと含有量から計算した。例えば、界面活性剤のうちHLB10の界面活性剤を50%用い、HLB20の界面活性剤を50%用いた場合には、HLBの加重平均は15となる。また、界面活性剤のHLBは公知の計算法により計算することができる。
【0035】
本発明の水系化粧料で用いられる成分(C)疎水性粉体は、特に限定されず、例えば、粉体自体が疎水性を有しているもの、粉体に疎水化処理剤で疎水化表面処理を行って疎水性粉体としたもの等が挙げられる。
【0036】
疎水性粉体とは精製水に当粉体をまぶした際に沈まないもしくは沈んでも精製水に容易に均一に分散しないものをいう。
【0037】
粉体自体が疎水性を有しているものとしては、例えば、シリコーン樹脂パウダー、ポリ乳酸パウダー、ナイロンパウダー、PMMAパウダー、ポリウレタンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、四フッ化エチレンパウダーなどの樹脂粉体、ラウロイルリシン等のアミノ酸系粉体、カーボンブラック、赤226、青404、黄205、黄401などの色素が挙げられる。
【0038】
また、粉体に表面処理剤で処理を行って疎水性粉体としたものとしては、例えば、上記疎水性粉体または上記疎水性粉体に該当しない粉体に、疎水化表面処理剤を用いて疎水化表面処理を行ったものが挙げられる。上記疎水性粉体に該当しない粉体としては、例えば、マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、合成雲母、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青、ベンガラ、シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸、ストロンチウム、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、酸化チタン酸化スズ被覆雲母、酸化亜鉛被覆雲母、酸化チタン被覆酸化アルミニウム、酸化鉄被覆酸化アルミニウム、酸化チタン被覆ガラス末、ガラス末、アルミ末、デンプン、セルロース、結晶セルロース、酢酸セルロール、シルク、等が挙げられる。
【0039】
疎水化表面処理に用いられる疎水化表面処理剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、トリエトキシカプリリルシラン等のシリコーン処理、アルキル処理、チタネート処理、フッ素処理、ジミリスチン酸アルミニウム等の金属石鹸処理、ラウロイルグルタミン酸塩、パルミトイルサルコシン塩等のアミノ酸処理、レシチン、水添レシチン等のリン脂質処理、アクリル樹脂処理、メタクリル樹脂処理、ウレタン樹脂処理、フッ素化合物処理、ジメチコン、フェニルトリメチコン、ジメチコノール、アモジメチコン等のシリコーン油、スクワラン、ワセリン、パラフィン等の炭化水素油、セバシン酸イソステアリン酸、リンゴ酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ等のエステル油等がある。疎水化表面処理は上記疎水化表面処理剤を用いる以外は通常の粉体の表面処理に従って行えばよい。また、これらの疎水化表面処理は単独でもよいし、複数を用いて混合処理をしたり、重複処理をしてもよい。疎水性粉体の形状は、特に限定されず、球状、板状、針状、紡錘状等が挙げられるが、球状、板状が好ましい。また、本発明による疎水性粉体の分散性、分散安定性の効果は、疎水性粉体の粒径によらないが、例えば、平均粒径が1nm~200μm、好ましくは1nm~60μmである。なお、平均粒径は電子顕微鏡観察、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定にて測定される値である。
【0040】
本発明においては、これらの疎水性粉体の中でも、耐水性向上の点から、アミノ処理粉体、シリコーン処理粉体、金属石鹸処理粉体、シリコーン樹脂パウダー、ナイロンパウダー、PMMAパウダー、ポリウレタンパウダー、カーボンブラック、赤226、青404から選ばれる1種が好ましく、特にアミノ酸処理粉体、シリコーン処理粉体、金属石鹸処理粉体から選ばれる1種が好ましい。これら疎水性粉体は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明の水系化粧料における成分(C)の含有量は特に限定されないが、例えば、成分(C)の含有量が、0.01~20.0%、好ましくは0.1~15%である。
【0042】
本発明の水系化粧料においては、成分(A)~(C)を含有するだけで効果を発揮するが、使用感、疎水性粉体の分散性、分散安定性の点から成分(A)と(C)の質量比が1:1~50が好ましく、1:10~30がより好ましい。
【0043】
また、耐水性、疎水性粉体の分散性、分散安定性の点から成分(B)と(C)の質量比が1:0.1~100が好ましく、1:0.3~50がより好ましい。
【0044】
本発明の水系化粧料は当然のことながら水を含有する。水の含有量は特に限定されないが、例えば、0.01~90%、好ましくは1~70%である。
【0045】
本発明の水系化粧料には、前記成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で、着色顔料、皮膜剤を含有させてもよい。
【0046】
着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、酸化チタン、黒酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、更に、炭等の顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、青色1号等の合成有機顔料、β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素等が挙げられ、これらの着色顔料の複合体、これらの着色顔料とパール顔料とを組み合わせた複合顔料などが挙げられる。処理されるパール顔料としては、例えば、雲母、金雲母、タルク、シリカ、セリサイト、マイカ、ガラス、カオリン、オキシ塩化ビスマス、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、板状アルミナ粉末等の天然又は合成の無機粉体が挙げられる。複合顔料の具体例としては、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆合成金雲母、酸化クロム被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン内包ガラス末、酸化鉄内包ガラス末等が挙げられる。これら着色顔料は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも酸化チタン、黄酸化鉄、ベンガラ等の金属酸化物、赤色201号、赤色202号、黄色4号、黄色5号、青色1号等の合成有機顔料、これらの着色顔料の複合体、これらの着色顔料とパール顔料とを組み合わせた複合顔料を用いることが好ましい。本発明の化粧料における着色顔料の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01~30%、好ましくは1~20%である。なお、本発明においては一般的に着色顔料とされるものであっても疎水性のあるものは疎水性粉体に分類する。
【0047】
皮膜剤としては、通常の化粧料に用いられる水系皮膜剤、油系皮膜剤を用いることができる。水系皮膜剤としては、例えば、アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、アクリル酸・アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸・アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、オルガノポリシロキサンポリマーエマルション、ポリ酢酸ビニルポリマーエマルション等のポリマーエマルション、ポリビニルアルコール、PVP等の水溶性ポリマーが挙げられる。油系皮膜剤としては例えば、トリコンタニルPVP、(VP/エイコセン)コポリマー、(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマー、(VP/VA)コポリマー等の油溶性ポリマー、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキ)コポリマー等のアクリルシリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂等のシリコーン樹脂、パラフィン、セレシン、オゾケライト、ポリエチレン、合成ワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、カルナウバエキス、キャンデリラエキス、ミツロウ、モクロウ、コメヌカロウ、ヒマワリ種子ロウ等のワックス類が挙げられる。これら皮膜剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でもアクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、アクリル酸・アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸・アクリル酸アルキルコポリマーエマルション、メタクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマーエマルション、オルガノポリシロキサンポリマーエマルション、ポリ酢酸ビニルポリマーエマルション等のポリマーエマルション、トリコンタニルPVP、(VP/エイコセン)コポリマー、(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマー、(VP/VA)コポリマー等の油溶性ポリマーを用いることが好ましい。また、本発明の化粧料における皮膜剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1~50%、好ましくは1~30%である。
【0048】
本発明の水系化粧料には、前記成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、グリセリン、エチルヘキシルグリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、カプリリルグリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール等のポリオール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等の防腐剤、スクワラン、ミネラルオイル等の炭化水素油、イソノナン酸イソノニル、トリエチルヘキサノイン等のエステル油、ジメチコン、フェニルトリメチコン等のシリコーン油等の油剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アンモニア、L-アルギニン等のpH調整剤、EDTA-2Na、EDTA-4Na、エチドロン酸4Na、エデトサン2Na等のキレート剤、トコフェロール、BHT、等の酸化防止剤等のその他の成分を含有させてもよい。
【0049】
本発明の水系化粧料の粘度は、特に限定されないが、B型粘度計で測定する粘度が100,000mPa・s以下であることが好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明の水系化粧料の好ましい態様としては、以下のものが挙げられる。
以下の成分(A)~(C)を含有し、界面活性剤のHLBと含有量から計算されるHLBの加重平均が6~16であるもの。
(A)平均繊維径が2~200nm、アスペクト比が20以上のアニオン変性セルロースナノファイバー 0.01~1.0%
(B)界面活性剤 0.01~1.0%
(C)疎水性粉体 0.1~10.0%
成分(A)と(C)の質量比が1:1~50
成分(B)と(C)の質量比が1:0.1~100
【0051】
また、上記好ましい態様の水系化粧料のB型粘度計で測定する粘度は100,000mPa・s以下であることが好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましい。また、上記好ましい態様の水系化粧料には、その他の成分として着色顔料を0.01~30%含有させたものがより好ましく、更に、皮膜剤を0.1~50%含有させたものがより好ましい。
【0052】
本発明の水系化粧料は、公知の方法によって製造することができる、例えば、着色顔料を用いる場合にはボールミル、サンドグラインダー、ロールミル等の分散機により着色顔料を分散した後、パドルミキサー、ディスパーミキサー等を用い、他の成分と混合することで得られる。また、着色顔料が既に分散されたものを使用する場合にはこれを他の成分と混合することで容易に得られる。このとき分散顔料を再度分散機に掛けて使用することは差し支えない。また、得られた分散体や化粧料を濾過や遠心分離機に掛けて粗大粒子や不溶解成分を除いたりすることは何ら差し支えない。染料を用いた場合には通常の手段を用いて溶解すればよい。また、油剤を配合する場合にはホモミキサー等を使用することで得た乳化組成物に着色顔料分散物を混合することで得られる。
【0053】
斯くして得られる本発明の水系化粧料は、疎水性粉体の分散性、分散安定性が向上し、耐水性も向上したものである。そのため、本発明の水系化粧料は疎水性粉体を用いる、例えば、メイクアップ、日焼け止め等の種々の化粧料とすることができるが、メイクアップ化粧料とすることが好ましい。メイクアップ化粧料としては、特に限定されないが、例えば、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、ファンデーション、リップ、メイクアップベース、ハイライト、チーク、BBクリーム、CCクリーム等が挙げられる。
【実施例0054】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において、成分(A)と(C)の質量比を単に(A):(C)、成分(B)と(C)の質量比を単に(B):(C)という。また、実施例において測定された粘度はB型粘度計で測定された値である。
【0055】
[参考例1]
アニオン変性セルロースナノファイバー(CNF1)の調製:
回転数を100rpmに調節した5L容の二軸ニーダーに、イソプロパノール(IPA)1089部と、水酸化ナトリウム31部を水121部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量で200部仕込んだ。30℃で60分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつモノクロロ酢酸ナトリウム117部を添加し、30℃で30分間撹拌した後、30分かけて70℃に昇温し、70℃で60分間カルボキシメチル化反応をさせた。マーセル化反応時及びカルボキシメチル化反応時の反応媒中の水の割合は、10質量%である。反応終了後、中和し、65%含水メタノールで洗浄し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.27、セルロースI型の結晶化度64%のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。なお、カルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度の測定方法は、先述の通りである。
得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を水に分散し、1%(w/v)水分散体とした。これを、150MPaの高圧ホモジナイザーで3回処理し、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの分散体を得た。得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、平均繊維径が3.2nm、アスペクト比が40であった。
【0056】
[参考例2]
アニオン変性セルロースナノファイバー(CNF2)の調製:
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO(Sigma Aldrich))780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/g、結晶化度76%であった。上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、キャビテーション噴流装置(20℃、14Mpa)で3回処理して、カルボキシル化セルロースナノファイバーの水分散液(以下、これを「CNF2」という)を得た。なお、得られたカルボキシル化セルロースナノファイバーは、平均繊維径が200nm、アスペクト比が25であった。
【0057】
[実施例]1~10、[比較例]1~10
アイライナーの調製:
以下の表1に記載の成分を以下の製造方法に従って混合してアイライナーを調製した。これらのアイライナーについて専門パネラー10名で以下の評価方法に基づいて分散安定性、耐水性、耐擦れ性、なめらかなのび広がり、速乾性、べたつきのなさを5点満点で評価してもらい平均点が、4.5点以上のものを◎、3.5点以上、4.5点未満のものを○、1.0点以上、3.5点未満のものを△、1.0点未満のものを×とした。その結果も併せて表1に示した。なお、界面活性剤のHLB加重平均は、アイライナーに使用した界面活性剤のHLBと含有量から計算した。
【0058】
【表1-1】
【表1-2】
【0059】
<製造方法>
A成分を均一に混合する。B成分を均一に混合する。AにBを添加し、均一に混合する。
【0060】
<評価方法>
(分散安定性)
上記で調製したアイライナーをガラス瓶に入れ、これを50℃で1ヶ月間静置し、疎水性粉体が沈降する様子を観察し、以下の基準で評価した。
(評点)(内容)
5:非常に良い(全く沈殿がない)
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:非常に悪い
(耐水性)
各資料について専門パネル10名による使用テストを行った。6時間後に涙や汗などでにじんだりしていないか等を評価した。
(評点)(内容)
5:非常に良い(全くにじまない)
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:非常に悪い
(耐擦れ性)
各試料について専門パネル10名による使用テストを行った。パネルに通常の生活をしてもらった後、化粧膜が部分的に剥離していないか等を評価した
(評点)(内容)
5:非常に良い(全く剥離しない)
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:非常に悪い
(なめらかなのび広がり)
各試料について専門パネル10名による使用テストを行った。なめらかに伸び広がるかを評価した。
(評点)(内容)
5:非常に良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:非常に悪い
(速乾性)
各試料について専門パネル10名による使用テストを行った。塗布してから3分後、指で触った際、指への付着がないかを評価した。
(評点)(内容)
5:非常に良い(指への付着が全くない)
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:非常に悪い
(べたつきのなさ)
各試料について専門パネル10名による使用テストを行った。塗布後のべたつきについて評価した。
(評点)(内容)
5:非常に良い(全くべたつかない)
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:非常に悪い
【0061】
<結果>
アイライナーにアニオン変性セルロースナノファイバーを配合し、使用する界面活性剤のHLB加重平均を6~16の範囲とすることで、疎水性粉体の分散性、分散安定性が向上し、さらにアイライナーの耐水性が向上した。
【0062】
[実施例]11
アイライナーの調製:
以下の表2の処方のうちAを均一に混合した。次にBを均一に混合した。最後に、AにBを添加して均一に混合してアイライナーを調製した。
【0063】
【表2】
【0064】
このアイライナーは、顔料分散安定性、耐水性に優れたアイライナーであった。
【0065】
[実施例]12
アイライナーの調製:
以下の表3の処方のうちAを均一に混合した。次にBを均一に混合した。最後に、AにBを添加して均一に混合してアイライナーを調製した。
【0066】
【表3】
【0067】
このアイライナーは、顔料分散安定性、耐水性に優れたアイライナーであった。
【0068】
[実施例]13
水系ネイルの調製:
以下の表4の処方のうちAを均一に混合した。次にBを均一に混合した。最後に、AにBを添加して均一に混合して水系ネイルを調製した。
【0069】
【表4】
【0070】
(製法)
1)Aを均一に混合する。
2)1)にBを加え、均一に混合する。
3)2)にCを加え、均一に混合する。
【0071】
この水系ネイルは、顔料分散安定性、耐水性に優れた水系ネイルであった。
【0072】
[実施例]14
マスカラの調製:
以下の表5の処方を用いて以下の製造方法でマスカラを調製した。
【0073】
【表5】
【0074】
(製法)
1)Aを加熱する。
2)1)にBを加え、均一に混合する。
3)Cを均一に混合する。
4)2)に3)を加え乳化する。
5)4)にDを加え均一に混合する。
【0075】
このマスカラは、顔料分散安定性、耐水性に優れたマスカラであった。
【0076】
[実施例]15
アイシャドウの調製:
以下の表6の処方を用いて以下の製造方法でアイシャドウを調製した。
【0077】
【表6】
【0078】
(製法)
1)Aを混合する。
2)AにBを添加し混合する。
3)Cを加熱し均一混合する。
4)2)に3)を添加し乳化する。
5)Dを均一に混合する。
4)に5)を添加し、均一に混合する。
【0079】
このアイシャドウは、顔料分散安定性、耐水性に優れたアイシャドウであった。
【0080】
[実施例]16
ファンデーションの調製:
以下の表7の処方を用いて以下の製造方法でファンデーションを調製した。
【0081】
【表7】
【0082】
(製法)
1)Aを均一混合する。
2)Bを加熱し均一溶解する。
3)AにBを添加し乳化する。
4)Cを均一混合する。
5)3)に4)を添加し均一混合する。
6)5)にDを添加し、均一混合する。
7)6)にEを添加し、均一混合する。
【0083】
このファンデーションは、クリーム状であり、顔料分散安定性、耐水性に優れたファンデーションであった。
【0084】
[実施例]17
ファンデーションの調製:
以下の表8の処方を用いて以下の製造方法でファンデーションを調製した。
【0085】
【表8】
【0086】
(製法)
1)Aを均一混合する。
2)1)にBを添加し混合する。
3)2)にCを添加し乳化する。
【0087】
このファンデーションは顔料分散安定性、耐水性に優れたファンデーションであった。
【0088】
[実施例]18
リップの調製:
以下の表9の処方を用いて以下の製造方法でリップを調製した。
【0089】
【表9】
【0090】
(製法)
1)Aを加熱溶解して均一にする。
2)Bを混合し、加温する。
3)1)に2)を添加して乳化する。
4)撹拌しながら、約30℃まで水冷する。
5)Cを均一に混合する。
6)4)に5)を添加して、均一に混合する。
【0091】
このリップは、クリーム状であり、顔料分散安定性、耐水性に優れたリップであった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の水系化粧料は、疎水性粉体を含有しながらも、疎水性粉体の分散性、分散安定性が向上し、耐水性も向上した優れたものであるため、メイクアップ化粧料等に好適である。