(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102461
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20240724BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B27/00 E
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006350
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野上 忠豊
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和之
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA17
4F055BA10
4F055BA12
4F055BA15
4F055EA26
4F055FA05
4F055FA24
4F055GA08
4F055GA11
4F055GA13
4F055GA32
4F100AK01A
4F100AK04D
4F100AK07D
4F100AK15
4F100AK25
4F100AK42
4F100AK42D
4F100AK45D
4F100AK49D
4F100AK50D
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00E
4F100AT00D
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA02
4F100CB00C
4F100CB01
4F100EJ38
4F100GB08
4F100HB00
4F100HB00A
4F100HB00B
4F100JB12E
4F100JK06
4F100JK06D
4F100JK07
4F100JK07E
4F100JL04
4F100JL04A
4F100JL04B
4F100JL04C
4F100JL04D
4F100JL04E
4F100JL11
4F100JL11E
4F100JM01E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】壁紙の施工を容易にし、壁紙の施工後の膨れ又はしわを抑制する。
【解決手段】壁紙S1は、樹脂層11と、該樹脂層11の裏側に積層された裏打ち層12とを有する装飾シート1と、装飾シート1の裏側に積層された接着層2と、接着層2に接着されて接着層2の裏側に積層された樹脂製の支持層3と、支持層3の裏側に積層され、粘着剤の硬化物により形成された、使用時に壁面に貼り付けられる粘着層4とを備え、支持層3単体を、周囲温度23℃、相対湿度50%である第1環境から、周囲温度40℃、相対湿度80%の第2環境に移した場合の寸法変化率は、装飾シート1単体を第1環境から第2環境へ移した場合の寸法変化率よりも、縦方向及び横方向の両方で小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、該樹脂層の裏側に積層された裏打ち層とを有する装飾シートと、
前記装飾シートの裏側に積層された接着層と、
前記接着層に接着されて前記接着層の裏側に積層された樹脂製の支持層と、
前記支持層の裏側に積層され、粘着剤の硬化物により形成された、使用時に被着体に貼り付けられる粘着層と
を備え、
前記支持層単体を、周囲温度23℃、相対湿度50%である第1環境から、周囲温度40℃、相対湿度80%である第2環境に移した場合の寸法変化率は、前記装飾シート単体を前記第1環境から前記第2環境へ移した場合の寸法変化率よりも、縦方向及び横方向の両方で小さい、壁紙。
【請求項2】
前記装飾シート単体を、前記第1環境から、前記第2環境に移した場合の寸法変化率は、縦方向及び横方向の両方で0.05%以上である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
10cm四方の正方形状に裁断した前記装飾シート単体を、前記第1環境から、周囲温度15℃、相対湿度30%である第3環境に移した場合、前記装飾シート周縁部における少なくとも一部に、前記装飾シート中央部に対して厚み方向に1mm以上の反りが生じ、
10cm四方の正方形状に裁断した前記支持層単体を、前記第1環境から前記第3環境に移した場合、前記支持層周縁部におけるいずれの部位にも、前記支持層中央部に対して厚み方向に1mm以上の反りが生じない、請求項1に記載の壁紙。
【請求項4】
前記粘着剤は溶剤系粘着剤又はエマルション系粘着剤である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項5】
前記支持層を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群から選択されたいずれか1種又は2種以上の混合物である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項6】
前記粘着層の周囲温度23℃における貯蔵弾性率は2.0×104Pa以上2.0×106Pa以下であり、前記粘着層の周囲温度40℃における貯蔵弾性率は1.0×104Pa以上1.0×106Pa以下である、請求項1に記載の壁紙。
【請求項7】
前記粘着層の裏面は、被着体への貼付け時に、前記壁紙の少なくとも一端に連通する空間が形成されるような凹凸形状を有する、請求項1に記載の壁紙。
【請求項8】
前記壁紙の裏面を紙に貼り付けた場合、前記第1環境において貼付け後24時間経過した時の前記紙に対する粘着力は、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で測定すると2N/25mm以上20N/25mm以下である、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、壁紙を壁面に貼付するためにはデンプン糊等の水性接着剤が多く用いられる。水性接着剤を用いる場合には、水性接着剤の調製に加え、養生シートの準備が必要であるなど、施工に手間がかかることが多く、更に水性接着剤の壁面への塗布後に養生時間も必要となる。
【0003】
一方、特許文献1には、粘着層と、基材層と、絵柄模様を有する合成樹脂ペースト層と、トップコート層とがこの順に設けられた、粘着層付き壁紙が記載されている。特許文献1の明細書段落0013には、発明の効果として、壁紙の施工が容易であることや、施工時間を短縮できることなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載の粘着層付き壁紙は、水性接着剤を用いて施工された壁紙に比べて膨れやしわが発生しやすい傾向にある。特許文献1の明細書段落0002には、壁紙に膨れが生じる原因として壁紙と下地との間に空気が介在することが記載されており、その問題を解決する技術として空気を追い出すために無数の微細な孔を開けることが記載されている。
【0006】
しかし、本願発明者らが検討を重ねた結果、壁紙の膨れやしわが発生する原因は、施工時に壁紙と下地との間に空気が介在することのほかに、壁紙自体が温度や湿度の変化によって伸縮変形することにもあることが分かった。すなわち、壁紙に貫通孔を設けても膨れやしわの発生を十分に抑えるのは困難である。
【0007】
本発明の目的は、壁紙の施工を容易にし、壁紙の施工後の膨れ又はしわを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示された壁紙は、樹脂層と、該樹脂層の裏側に積層された裏打ち層とを有する装飾シートと、前記装飾シートの裏側に積層された接着層と、前記接着層に接着されて前記接着層の裏側に積層された樹脂製の支持層と、前記支持層の裏側に積層され、粘着剤の硬化物により形成された、使用時に被着体に貼り付けられる粘着層とを備え、前記支持層単体を、周囲温度23℃、相対湿度50%である第1環境から、周囲温度40℃、相対湿度80%である第2環境に移した場合の寸法変化率は、前記装飾シート単体を前記第1環境から前記第2環境へ移した場合の寸法変化率よりも、縦方向及び横方向の両方で小さい。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示された壁紙によれば、樹脂製の支持層が裏打ち層の裏側に設けられているので、施工後の膨れやしわの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態の変形例に係る壁紙を示す断面図である。
【
図3】
図2における剥離ライナーの具体例を示す斜視図である。
【
図4】
図2における剥離ライナーの
図3とは異なる具体例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係る壁紙S1の一例を示す断面図である。壁紙S1は、装飾シート1と、装飾シート1の裏側に積層された接着層2と、接着層2の裏側に積層された樹脂製の支持層3(樹脂シート)と、支持層3の裏側に積層され、粘着剤の硬化物により形成された粘着層4と、粘着層4の裏側に積層された剥離ライナーL1とを備える。
【0012】
なお、本明細書において、「縦方向」とは壁紙S1が広がる平面内の任意の方向、「横方向」とは壁紙S1が広がる平面内で「縦方向」と垂直な方向、「表側」とは壁紙S1の厚み方向であって
図1の上側、「裏側」とは壁紙S1の厚み方向であって
図1の下側を、それぞれ意味する。
【0013】
―装飾シート―
装飾シート1全体の厚みは、限定がされないが、例えば100μm以上600μm以下である。装飾シート1は、シート状の樹脂層11と、樹脂層11の裏側に積層された紙製の裏打ち層12とを有する。
【0014】
樹脂層11の材質は、樹脂であれば限定されないが、例えばポリ塩化ビニル(PVC)である。なお、樹脂層11は、発泡剤を含んでいてもよい。樹脂層11は、表面に凹凸が形成されていてもよい。樹脂層11の表面には、汚染防止効果等を有する機能性コーティング層(図示しない)が設けられていてもよい。樹脂層11の表面には、任意の図柄を有する印刷層(図示しない)が設けられていてもよい。
【0015】
裏打ち層12は、限定されないが、例えば紙製である。裏打ち層12は、樹脂製の繊維と紙繊維との混抄紙であってもよい。なお、紙以外の裏打ち層12の材質としては、織布、不織布(樹脂繊維不織布)等が挙げられる。紙の坪量は、限定されないが、例えば20~200g/m2程度が好ましい。裏打ち層12は、紙製であるため吸湿性が高くなりやすい。このため、装飾シート1は、単体での寸法変化率が大きく、またカールが生じやすい傾向にある。ここで本実施形態では、後記のように支持層3が寸法変化しにくいので、支持層3により装飾シート1の寸法変化及びカールを抑制できる。このため、装飾シート1は、寸法変化やカールが生じることを懸念する必要がない。具体的には、装飾シート1単体を、周囲温度23℃、相対湿度50%の環境(以下「第1環境」という場合がある。)から、周囲温度40℃、相対湿度80%(以下「第2環境」という場合がある。)に移した場合の寸法変化率は、縦方向及び横方向の両方で0.05%以上あってもよく、0.10%以上であってもよい。また、10cm四方の正方形状に裁断した装飾シート1単体を、第1環境から、周囲温度15℃、相対湿度30%(以下「第3環境」という場合がある。)に移した場合、カールが生じてもよい。なお、本明細書において「カールが生じる」とは、装飾シート1周縁部における少なくとも一部に、装飾シート1中央部に対して厚み方向に1mm以上の反りが生じることを意味する。
【0016】
―接着層―
接着層2は、装飾シート1に支持層3を接着して積層できればよい。具体的には、接着層2の材質は、限定されないが、例えば、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール系接着剤、レゾルシノール系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、水性高分子-イソシアネート系接着剤、酢酸ビニル系エマルション接着剤等が挙げられる。これらの接着剤は、乾燥後にタックを失う接着剤であるが、これに代えて、粘着剤の硬化物により接着層2を形成してもよい。接着層2を形成する粘着剤の例としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ホットメルト材等が挙げられる。
【0017】
―支持層―
支持層3は、接着層2に接着されている。支持層3を構成する樹脂は、寸法変化しにくいものであれば限定されない。具体的には、支持層3単体を、周囲温度23℃、相対湿度50%(第1環境)から、周囲温度40℃、相対湿度80%(第2環境)に移した場合の寸法変化率は、装飾シート1単体を第1環境から第2環境へ移した場合の寸法変化率よりも、縦方向及び横方向の両方で小さい。支持層3を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミドイミド(PAI)及びポリイミド(PI)からなる群から選択されたいずれか1種又は2種以上の混合物が挙げられる。これらの樹脂は、装飾シート1を構成するPVC及び紙に比べて吸湿性が低く、寸法変化が小さいという観点から好ましい。さらに、これらの樹脂のうち、透明度の高さ及び加工の容易さという観点から、PETが特に好ましい。
【0018】
支持層3の厚みは、限定されないが、壁紙S1の膨れ又はしわの発生を抑制するという観点から、2μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。支持層3の厚みは、壁紙S1を薄くして扱いやすくするという観点から、250μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
【0019】
支持層3単体を第1環境から、第2環境に移した場合の寸法変化率は、縦方向、横方向ともに0%以上0.1%以下であることが好ましく、0%以上0.05%以下であることがより好ましい。
【0020】
10cm四方の正方形状に裁断した支持層3単体を、周囲温度23℃、相対湿度50%(第1環境)から周囲温度15℃、相対湿度30%(第3環境)に移した場合、カールが生じない、又はカールの程度が非常に小さい。具体的には、支持層3単体を、第1環境から第3環境に移した場合、支持層3周縁部におけるいずれの部位でも、支持層3中央部に対して厚み方向に生じる反りの大きさは1mm未満であり、0.5mm未満であることが好ましく、0.1mm未満であることがより好ましく、0.0mmであることが更により好ましい。
【0021】
―粘着層―
粘着層4は、壁紙S1の使用時に壁面(被着体)に貼り付けられる。粘着層4は、施工時の手間を少なくするという観点から、溶剤系粘着剤の硬化物又は水溶媒中にポリマーがミセルを形成して分散したエマルション系粘着剤の硬化物が好ましく、環境への配慮という観点からは有機溶剤を用いないエマルション系粘着剤がより好ましい。溶剤系粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられる。
【0022】
粘着層4の厚みは、限定されないが、壁面の凹凸をある程度吸収して外観を良好にするという観点からは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。粘着層4の厚みは、壁紙S1を薄くして扱いやすくするという観点から、また使用する粘着剤の量を少なくして製造コストを抑えるという観点から、300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
【0023】
粘着層4の周囲温度23℃における貯蔵弾性率は、2.0×104Pa以上2.0×106Pa以下であることが好ましい。粘着層4の周囲温度40℃における貯蔵弾性率は、1.0×104Pa以上1.0×106Pa以下であることが好ましい。粘着層4の貯蔵弾性率が前記の範囲であることにより、23℃及び40℃の各温度において粘着力と凝集力のバランスを良好にとることができる。周囲温度23℃における貯蔵弾性率が2.0×106Pa以下であること、及び周囲温度40℃における貯蔵弾性率が1.0×106Pa以下であることの少なくとも一方を満たす場合、粘着層4は、壁面等の被着体に凹凸がある場合に、当該凹凸を吸収しやすくなる。
【0024】
壁紙S1は、粘着層4の粘着力により、壁面等の被着体に貼り付けることができる。粘着層4の粘着力は、壁紙S1を施工後に剥がれにくくするという観点からは適度に大きいことが好ましい一方、施工時に貼り直しをしやすくするという観点からは適度に小さいことが好ましい。具体的には、壁紙S1の裏面を紙に貼り付けた場合、23℃、相対湿度50%(第1環境)において貼付け後24時間経過した時の紙に対する粘着力は、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で測定すると2N/25mm以上20N/25mm以下であることが好ましい。
【0025】
―剥離ライナー―
剥離ライナーL1は、例えば樹脂製であるが、これに限定されず、例えば紙製であってもよい。なお、本実施形態では、剥離ライナーL1は表面及び裏面ともに凹凸がなく平坦である。
【0026】
―作用・効果―
本実施形態では、装飾シート1の裏側に、温度及び湿度の変化にともなう寸法変化率が小さい支持層3を設けることにより、装飾シート1の寸法変化が比較的大きくても、その寸法変化を抑制できる。その結果、壁紙S1における浮き及びしわの発生も効果的に抑制できる。また、本実施形態の壁紙S1は、装飾シート1の寸法変化率が限定されないので、装飾シート1の選択の自由度が高い。
【0027】
ところで、本願発明者らが検討を重ねた結果、従来の壁紙において、壁紙に膨れやしわが発生するのは、壁紙と、石膏ボード等からなる壁面との間に、吸湿性の高い紙などの下地があることにも原因があることが分かった。すなわち、その下地が温度や湿度の変化によって伸縮し、壁紙に膨れやしわを発生させるからである。なお、壁紙と壁面との間に紙がある場合とは、例えば、室内リフォーム時に古い壁紙を剥がして新しい壁紙に貼り替える際に、壁面に古い壁紙の裏打ち紙が残る場合である。
【0028】
ここで、本実施形態では、装飾シート1の裏側に、温度及び湿度の変化にともなう寸法変化率が小さい支持層3を設けることにより、壁面に下地としての裏打ち紙などがある場合にも、裏打ち紙の影響を抑制できる。その結果、壁紙S1における膨れ又はしわの発生を効果的に抑制できる。
【0029】
また、本実施形態では、支持層3単体は、23℃、相対湿度50%(第1環境)から15℃、相対湿度30%(第3環境)に移した場合にカールが生じない又はカールが極めて生じにくい。このため、装飾シート1単体にカールが生じやすい場合であっても、装飾シート1裏側に支持層3が設けられていることにより、装飾シート1のカールの発生を抑制できる。
【0030】
以上の理由から、本実施形態の壁紙S1は、冬季の低温及び低湿度の環境でも、夏季の高温及び高湿度の環境でも、いずれにおいても、寸法変化やカールが生じにくく、問題なく使用しやすい。
【0031】
(実施形態の変形例)
以下、
図2~3に示す実施形態の変形例に係る壁紙S2について説明する。なお、以下では、前記実施形態と共通する構成については、説明を省略する。前記実施形態では、剥離ライナーL1の表面は平坦であるが、本変形例では、剥離ライナーL2の表面は、
図2に示すように凸部P及び/又は凹部Rを有する。
【0032】
剥離ライナーL2の凹凸形状としては、例えば
図3~4に示す形状が好ましい。
図3に示す剥離ライナーL2では、表面に凸部Pが格子状に延びて形成されている。
図4に示す剥離ライナーL2では、表面に、略半球状に、下方に窪んだ凹部Rが複数形成されている。このほか、図示しないが、剥離ライナーL2の表面に、一方向に延びる複数の凸部がストライプ状に互いに平行に形成されていてもよい。
【0033】
粘着層4の裏面には、剥離ライナーL2の表面形状が転写されるので、粘着層4の裏面は、剥離ライナーL2表面の凹凸形状に対応した凹凸形状を有する。このため、壁紙S2の壁面への貼り付け時に、粘着層4の裏面と壁面との間に、壁紙S2の少なくとも一端に連通する溝等の空間が形成されることとなる。すると、粘着層4と壁面との間の空気は、当該空間を通して壁紙の周縁部から排出される。その結果、空気による壁紙S2の膨れ又はしわの発生を抑制できる。
【0034】
なお、以上の説明では、剥離ライナーL2表面が凹凸形状(
図3、
図4、ストライプ状の凸部)を有するが、本変形例はこれに限られず、粘着層4の裏面が、壁面への貼付け時に壁紙S2の少なくとも一端に連通する空間が形成されるような凹凸形状を有していればよい。
【実施例0035】
以下、本発明に係る壁紙を製造した実施例1~8、比較のための壁紙を製造した比較例1~5、並びに壁紙等の測定方法及び測定結果について説明する。
【0036】
[壁紙の製造]
<実施例1>
PVCから形成された樹脂層と、紙製の裏打ち層とを有する市販の装飾シート(トキワ工業株式会社製「TS540」)を準備した。また、支持層として、厚み25μmの二軸延伸PETフィルムを準備した。次いで、前記裏打ち層に溶剤系アクリル系粘着剤Aと硬化剤とを含む組成物Aを塗付した後、前記装飾シートと前記支持層とを貼り合わせた。
【0037】
次いで、剥離面(表面)が平坦な市販の剥離ライナーを準備し、その剥離面に乾燥後の厚みが60μmになるように組成物Aを塗付した。塗布した組成物Aの乾燥後、前記支持層の裏面に剥離ライナーの剥離面を貼り合わせ、積層体を構成した。この積層体を、周囲温度40℃で、72時間エイジングし、壁紙を製造した。なお、各実施例及び各比較例で製造した壁紙の構成、及び後記の評価結果については、表1~3にも示す。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
<実施例2>
剥離面に格子状凸部が形成された剥離ライナー(日榮新化株式会社製「マトリクス(登録商標)3」)を用いたことを除き、実施例1と同様の方法により壁紙を作製した。
【0042】
<実施例3>
装飾シートと支持層との貼り合わせ、及び支持層と剥離ライナーとの貼り合わせのための前記組成物Aに代えて、溶剤系アクリル系粘着剤Bと硬化剤とを含む組成物Bを用いたことを除き、実施例1と同様の方法により、壁紙を作製した。なお、組成物Bは、後記の表4に示すように、形成される粘着層の貯蔵弾性率が組成物Aと異なる。
【0043】
<実施例4>
剥離面に格子状凸部が形成された剥離ライナー(日榮新化株式会社製「マトリクス3」)を用いたことを除き、実施例3と同様の方法により、壁紙を作製した。
【0044】
<実施例5>
支持層として厚み38μmの二軸延伸PETフィルムを用いたことを除き、実施例1と同様の方法により、壁紙を作製した。
【0045】
<実施例6>
剥離面に格子状凸部が形成された剥離ライナー(日榮新化株式会社製「マトリクス3」)を用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、壁紙を作製した。
【0046】
<実施例7>
装飾シートと支持層との貼り合わせ、及び支持層と剥離ライナーとの貼り合わせのための前記組成物Aに代えて、前記組成物Bを用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、壁紙を作製した。
【0047】
<実施例8>
剥離面に格子状凸部が形成された剥離ライナー(日榮新化株式会社製「マトリクス3」)を用いたことを除き、実施例7と同様の方法により、壁紙を作製した。
【0048】
<比較例1>
PVCにより形成された樹脂層と、紙製の裏打ち層とを有する市販の装飾シート(トキワ工業株式会社製「TS540」)を準備した。次いで、剥離面に格子状凸部が形成された剥離ライナー(日榮新化株式会社製「マトリクス3」)を準備し、その剥離面に乾燥後の厚みが70μmとなるように前記組成物Aを塗付した。塗布した組成物Aの乾燥後、前記支持層の裏面に剥離ライナーの剥離面を貼り合わせ、積層体を構成した。この積層体を、周囲温度40℃で、72時間エイジングし、壁紙を作製した。このように、比較例1の壁紙には、支持層が設けられていない。
【0049】
<比較例2>
粘着層の厚みを100μmとしたことを除き、比較例1と同様の方法により、壁紙を作製した。
【0050】
<比較例3>
粘着層の厚みを140μmとしたこと、及び剥離ライナーとして表面が平坦な市販の剥離ライナーを用いたことを除き、比較例1と同様の方法により、壁紙を作製した。
【0051】
<比較例4>
粘着層の厚みを210μmとしたことを除き、比較例3と同様の方法により、壁紙を作製した。
【0052】
<比較例5>
組成物Aに代えて、エマルション系粘着剤Cと硬化剤とを含む組成物Cを用いたことを除き、比較例3と同様の方法により、壁紙を作製した。なお、組成物Cは、形成される粘着層の貯蔵弾性率が組成物A及び組成物Bのいずれとも異なる。
【0053】
[測定方法]
<粘着層の貯蔵弾性率G’の測定>
粘着層の貯蔵弾性率G’を、以下の方法で測定した。まず、組成物A及び組成物Bをそれぞれ準備し、各組成物を厚み50μmの粘着層に形成して、基材レステープを作製した。次いで、この基材レステープを、周囲温度40℃で、72時間エイジングした。次いで、粘着層(基材レステープ)を複数回積層することにより、粘着層の総厚みを1mmまで厚くした後、基材レステープを直径8mmの大きさのタブレットに打ち抜いて、試験片1とした。各試験片1をレオメーター(製品名:AR2000ex)のプレート間に挟み、せん断方向にひずみ量0.05%、周波数1Hzで両プレートを振動させて、貯蔵弾性率G’を測定した。測定は、-40~100℃の温度範囲で行い、昇温速度3度/分で昇温させながら行った。なお、後記の表4には、23℃及び40℃における結果を示す。
【0054】
<寸法変化率の測定>
各実施例及び各比較例の壁紙における装飾シートを、10cm×10cmの正方形状に切り出し、試験片2とした。各試験片2を23℃、相対湿度50%(第1環境)の下で24時間静置し、試験片2の縦方向に沿った長さLA_1及び横方向に沿った長さLB_1を測定した。次いで、試験片2を40℃、相対湿度80%(第2環境)の環境に移し、当該環境下で72時間静置し、試験片2の縦方向に沿った長さLA_2及び横方向に沿った長さLB_2を測定した。縦方向の寸法増加率を、100×(LA_2-LA_1)/LA_1の式から算出した。横方向の寸法増加率を、100×(LB_2-LB_1)/LB_1の式から算出した。算出した縦方向及び横方向の寸法増加率の絶対値を、それぞれ縦方向及び横方向の寸法変化率とした。
【0055】
さらに、試験片2を、前記と同様に第1環境の下で24時間静置後、周囲温度15℃、相対湿度30%(第3環境)の環境に移し、当該環境下で72時間静置し、試験片2の縦方向に沿った長さLA_3及び横方向に沿った長さLB_3を測定した。縦方向の寸法増加率を、100×(LA_3-LA_1)/LA_1の式から算出した。横方向の寸法増加率を、100×(LB_3-LB_1)/LB_1の式から算出した。算出した縦方向及び横方向の寸法増加率の絶対値を、それぞれ縦方向及び横方向の寸法変化率とした。
【0056】
なお、前記した、第2環境72時間静置後、及び第3環境72時間静置後において、各試験片2にカールが発生しているか否かについても目視により確認した。
【0057】
実施例1~8の壁紙の支持層として用いたPETフィルムについて、厚みを25μm、38μm及び50μmとし、周囲温度23℃で10cm×10cmの正方形状に切り出して試験片3とした。各試験片3について、各試験片2と同様に、寸法増加率及び寸法変化率を算出した。
【0058】
<粘着力の測定>
粘着力の測定は、JIS Z0237(2009)に準拠して行った。具体的には、各実施例及び各比較例で作製した壁紙を、幅25mm、長さ150mmの長方形状に裁断し、剥離ライナーを剥がしたものを試験片4とした。各試験片4を、被着体としてのSUS鋼板(BA)又は紙に貼り付けた。貼り付けた試験片を被着体に対して2kgのローラーで1往復して圧着させ、23℃、相対湿度50%(第1環境)で1分又は24時間静置した。静置後の各試験片4を、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で、万能材料試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフ(登録商標)AG-IS」)を用いて被着体から剥離するのに要する力を粘着力(N/25mm)として測定した。そのようにして、粘着力(N/25mm)を3回測定し、その平均値を測定値とした。
【0059】
<保持力の測定>
保持力の評価は、JIS Z0237(2000)に準拠して行った。具体的には、各実施例及び各比較例で製造した壁紙を、幅25mm、長さ100mmの長方形状に切り出して、これを試験片5とした。各試験片5の一端部25mm×25mmの正方形部分を被着体としてのSUS鋼板(BA)又は紙に貼り付けた。被着体に貼り付けた当該正方形部分に対してスキージを用いて均一な力で圧着した。
【0060】
次いで、各試験片5の正方形部分が上方に位置するように被着体を鉛直に立て、下方に位置する各試験片5の他端部に1kgの重りを吊り下げた。この状態で、各試験片5が完全に剥がれるまでの時間を保持力持続時間として測定した。また、測定開始から5万秒経過時での各試験片5の位置変位量(測定開始時の位置と5万秒経過時の位置のずれ)(単位:mm)を、保持力を示す指標として測定した。なお、測定時の周囲温度は40℃であった。
【0061】
<環境試験>
各実施例及び各比較例で作製した壁紙を285mm×650mmの長方形状に切り出したものを試験片6とした。石膏ボード上に紙を貼り付け、その紙の上から各試験片6を貼り付けた後、各試験片6を上からスキージで1回圧着した。次いで、周囲温度15℃、相対湿度30%(第3環境)の下に24時間試験片を置いた後、周囲温度40℃、相対湿度90%の環境に移し、当該環境下に24時間置いた。この温度及び湿度の環境変化を2サイクル実施し、目視により各壁紙の外観を観察した。表1~3では、環境試験の外観観察で、異常が無かった場合を〇と表し、異常が見られた場合を△と表し、著しい異常が見られた場合を×と表している。
【0062】
[測定結果]
<粘着層の貯蔵弾性率G’>
組成物A、組成物Bを用いて作製した粘着層の貯蔵弾性率の測定結果を表4に示す。
【0063】
【0064】
表4に示すように、粘着層を形成するために組成物Aを用いた場合には、粘着層の貯蔵弾性率は、23℃、1Hzにおいて1.35×105Pa、40℃、1Hzにおいて7.12×104Paであった。粘着層を形成するために組成物Bを用いた場合には、粘着層貯蔵弾性率は、23℃、1Hzにおいて1.17×105Pa、40℃、1Hzにおいて6.96×104Paであった。
【0065】
<寸法変化率>
装飾シート単体の寸法増加率、及び支持層単体(PETフィルム)の寸法増加率を表5に示す。
【0066】
【0067】
表5に示すように、周囲温度23℃、相対湿度50%(第1環境)から周囲温度40℃、相対湿度80%に(第2環境)に移動させた場合、縦方向の寸法増加率は、装飾シートが+0.12%、厚み25μmの支持層単体が+0.02%、厚み38μmの支持層単体が+0.04%及び厚み50μmの支持層単体が+0.03%であった。絶対値である寸法変化率も同じ値である。このように、縦方向において、支持層の寸法変化率は、装飾シートの寸法変化率よりも小さかった。
【0068】
また、横方向の寸法増加率は、装飾シートが+0.15%、厚み25μmの支持層単体が-0.03%、厚み38μmの支持層単体が+0.03%及び厚み50μmの支持層単体が-0.01%であった。したがって、横方向の寸法変化率は、装飾シートが0.15%、厚み25μmの支持層単体が0.03%、厚み38μmの支持層単体が0.03%及び厚み50μmの支持層単体が0.01%であった。このように、横方向においても、支持層の寸法変化率は、装飾シートの寸法変化率よりも小さかった。なお、縦方向と横方向とで、寸法変化率に違いがあるのは、装飾シート及び支持層の製造方法、樹脂特性等に起因するものと考えられる。
【0069】
以上のように、周囲温度23℃、相対湿度50%(第1環境)から周囲温度40℃、相対湿度80%(第2環境)に移動させた場合、支持層単体は、縦方向、横方向のいずれについても装飾シート単体での寸法変化率よりも小さいことが確認できた。
【0070】
また、装飾シート単体及び支持層単体をそれぞれ周囲温度23℃、相対湿度50%(第1環境)から周囲温度15℃、相対湿度30%(第3環境)に移した場合、装飾シート単体では縦方向にカールの発生が確認されたが、支持層単体ではいずれの厚みでもカールの発生は確認されなかった。装飾シート単体及び支持層単体をそれぞれ周囲温度23℃、相対湿度50%(第1環境)から周囲温度40℃、相対湿度80%(第2環境)に移した場合には、装飾シート単体及び支持層のいずれにおいてもカールの発生は確認されなかった。
【0071】
<粘着力>
各実施例及び各比較例で製造した壁紙の粘着力、位置変位量(保持力)及び環境試験の結果を、表1~3に示す。
【0072】
表1において、SUS鋼板(BA)を被着体とした実施例1と実施例2とでの粘着力の違いに着目すると、実施例1の粘着力の方が、1分間静置後で2.7N/25mm、24時間静置後で3.9N/25mm大きいことが分かる。実施例1と実施例2との違いは、実施例1では剥離シート表面が平坦である一方、実施例2では剥離シート表面が凹凸を有するという点である。このため、剥離シート表面が平坦である方が、剥離シート表面が凹凸を有するよりも、粘着力が大きいといえる。このほか、実施例3と実施例4との比較、実施例5と実施例6との比較、及び実施例7と実施例8との比較からも、剥離シート表面が平坦である実施例3、5、7の方が、剥離シート表面が凹凸を有する実施例4、6、8よりも、粘着力が大きいという同様の傾向があることが分かる。これは、剥離シート表面が平坦であることにより、粘着層も平坦であり、その結果、粘着層と被着体との粘着面積が大きくなるためと考えられる。
【0073】
一方、表1において、紙を被着体とした実施例1と実施例2とで粘着力の違いに着目すると、1分間静置後で実施例1の粘着力は実施例2の粘着力と同じ大きさであり、24時間静置後で実施例1の粘着力が実施例2の粘着力よりも0.7N/25mmのみ大きい。このように、紙を被着体とした場合には、SUSを被着体とした場合よりも、実施例1と実施例2とで粘着力の差が小さいことが分かる。このほか、実施例3と実施例4との比較、実施例5と実施例6との比較、及び実施例7と実施例8との比較からも、紙を被着体とした場合には、SUSを被着体とした場合よりも、粘着力の差が小さいという同様の傾向があることが分かる。以上のことから、紙を被着体とすると、粘着層裏面を平坦でなく凹凸形状にしても、被着体への粘着力の低下が少ないといえる。
【0074】
<保持力>
表1~3において位置変位量(保持力)の結果に着目すると、実施例1~8では、被着体がSUS鋼板(BA)であるか紙であるかにかかわらず、位置変位量が0.22mm~0.33mmの範囲に分布していた。これに対して、実施例1~8とは異なる粘着剤を用いた比較例5では、位置変位量が大きくなっており、実施例1~8と比較して保持力が小さいことが分かった。
【0075】
<環境試験>
表1~3において環境試験の結果に着目すると、実施例1~8では、壁紙の外観に異常は見られなかった。これに対し、比較例1~5では、いずれの場合も壁紙の外観に異常が見られた。具体的には、粘着層の厚みがそれぞれ70μm及び100μmである比較例1及び比較例2で、壁紙に著しい膨れやしわが発生し、粘着層の厚みがそれぞれ140μm及び210μmである比較例3及び比較例4でも、壁紙に膨れやしわが発生していた。粘着層が比較的厚い比較例3及び比較例4では、粘着層が比較的薄い比較例1及び比較例2に比べ、膨れやしわの程度は抑制されていたものの、比較例1、比較例2及び比較例5と同様に、温度、湿度変化の1サイクル後に、すでに細かな膨れやしわが発生していた。また、粘着層が比較的厚く(140μm)、粘着層を組成物Cにより形成した比較例5では、壁紙に著しい膨れやしわが発生していた。
【0076】
すなわち、支持層を設けなかった比較例1~5の壁紙では、粘着層の厚みや粘着層を形成している組成物の種類にかかわらず、膨れやしわが発生しやすい。これに対して、支持層を設けた実施例1~8の壁紙では、支持層の厚みや粘着層を形成している組成物の種類にかかわらず、膨れやしわの発生が抑制された。