(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102486
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】電動車両の車載充電器
(51)【国際特許分類】
B60L 53/20 20190101AFI20240724BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240724BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240724BHJP
H02H 7/26 20060101ALI20240724BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B60L53/20
B60L53/14
H02J7/00 S
H02J7/00 P
H02H7/26 B
H02H3/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006391
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 政男
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和大
【テーマコード(参考)】
5G004
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB02
5G004BA01
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503FA06
5G503FA17
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BB05
5H125CD04
5H125DD02
5H125DD10
5H125EE12
5H125EE13
(57)【要約】
【課題】外部充電装置の供給電圧以上に昇圧した電圧で充電している車載電池に地絡が生じた際に、外部充電装置の過電圧保護回路が損傷するのを防止する。
【解決手段】車載側に過電圧保護回路を追加し、車載側の過電圧保護回路の制限電圧を外部充電装置の過電圧保護回路の制限電圧より低く設定する。車載側の過電圧保護回路が作動することで外部充電装置の過電圧保護回路が損傷するのを防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源線とアース線の間及び第2電源線と前記アース線の間に過電圧保護回路が接続されている外部充電装置に、前記第1電源線と前記第2電源線と前記アース線とによって接続された状態で、電動車両の車載電池を充電する車載充電器であり、
前記外部充電装置の出力電圧を昇圧して前記車載電池に供給する昇圧回路と、
前記第1電源線と前記車載充電器のケースの間及び前記第2電源線と前記ケースの間に接続されている車載側の過電圧保護回路を備えており、
前記車載側の過電圧保護回路の制限電圧が、前記外部充電装置の過電圧保護回路の制限電圧より低く設定されていることを特徴とする車載充電器。
【請求項2】
前記第1電源線と前記ケースの間及び前記第2電源線と前記ケースの間の電圧または電流を検出する検出回路と、
前記検出回路の出力に基づいて地絡の発生を検出する制御装置と、
前記制御装置が地絡の発生を検出した時に前記第1電源線と前記第2電源線の少なくとも一方を遮断する遮断回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載充電器。
【請求項3】
前記第1電源線と前記第2電源線の間の電圧または電流を検出する検出回路と、
前記検出回路の出力に基づいて地絡の発生を検出する制御装置と、
前記制御装置が地絡の発生を検出した時に前記第1電源線と前記第2電源線の少なくとも一方を遮断する遮断回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車外に設置されている外部充電装置(充電スタンド等)に接続して車載電池を充電する電動車両に車載されている充電器を開示する。
【背景技術】
【0002】
外部充電装置に接続して車載電池を充電している状態で車載電池に地絡が発生することがあり、特許文献1に地絡の発生を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
車載充電器は、第1電源線と第2電源線とアース線とによって外部充電装置に接続される。アース線は、車載充電器のケースと車両のボディ等を外部充電装置の接地端子に接続し、車両ボディ等の電位を安定させる。
外部充電装置が過電圧保護回路を内蔵していることがある。過電圧保護回路は、第1電源線とアース線の間の電圧が過電圧になることを防止し、第2電源線とアース線の間の電圧が過電圧になることを防止する。
外部充電装置が供給する電圧より車載電池の充電時電圧が高いことがある。そのために車載充電器が昇圧回路を備え、その昇圧回路で昇圧した電圧で車載電池を充電することがある。例えば、外部充電装置が400ボルトを供給し、車載充電器で800ボルトに昇圧し、車載電池を800ボルトにまで充電することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外部充電装置が過電圧保護回路を備え、車載充電器が昇圧回路を備えている場合、車載電池が地絡した場合に外部充電装置の過電圧保護回路が損傷することがある。上記に例示した場合、すなわち外部充電装置が400ボルトを供給し、車載充電器で800ボルトに昇圧し、車載電池を800ボルトにまで充電する場合は、400ボルト程度が印加されることを想定して設計されている外部充電装置の過電圧保護回路に800ボルト程度が印加されることがあり、外部充電装置の過電圧保護回路が損傷してしまうことがある。
【0006】
本明細書では、外部充電装置が供給する電圧以上に昇圧した電圧で車載電池を充電するシステムにおいて、車載電池に地絡が生じた際にも外部充電装置の過電圧保護回路が損傷するのを防止できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する車載充電器は、外部充電装置に接続して車載電池を充電する。車載充電器と外部充電装置は、第1電源線と第2電源線とアース線によって接続される。外部充電装置を過電圧から保護するために、外部充電装置には過電圧保護回路が組み込まれている。過電圧保護回路は、第1電源線とアース線の間と、第2電源線とアース線の間に接続され、アース線に対して過大な電圧が第1電源線と第2電源線に印加されるのを防止する。
【0008】
外部充電装置に過電圧保護回路を設けることによって外部充電装置は過電圧から保護されるが、車載充電器が昇圧回路を備えている場合には問題が生じる。外部充電装置が供給する電圧よりも車載電池の充電時電圧が高い場合は車載充電器が昇圧回路を備えている。
昇圧回路で昇圧した電圧で充電される車載電池を備えている場合、車載電池に地絡が発生すると、昇圧された電圧が外部充電装置の過電圧保護回路に印加され、その結果、過電圧保護回路が損傷することがある。先に例示した場合、400ボルト程度の過電圧から保護するように設計されている過電圧保護回路に800ボルト程度が印加され、それによって過電圧保護回路が損傷することがある。過電圧保護回路が損傷して短絡故障すると、車載電池からアース線に過電流が流れてアース線が切断され、車両ボディ等の電位が不安定となるといった現象に繋がりかねない。
【0009】
本明細書で開示する車載充電器は、車載側にも過電圧保護回路を備えており、その車載側の過電圧保護回路の制限電圧が外部充電装置の過電圧保護回路の制限電圧より低く設定されている。車載側の過電圧保護回路は、第1電源線と車載充電器のケースの間と、第2電源線と車載充電器のケースの間に接続されている。車載充電器のケースは電気的に車両ボディに接続されている。車載充電器のケースと車両ボディは導電位であり、車載側の過電圧保護回路は、第1電源線と車両ボディの間と、第2電源線と車両ボディの間に接続されているといってもよい。
【0010】
本明細書で開示する車載充電器では、車載側の過電圧保護回路の制限電圧が外部充電装置側の過電圧保護回路の制限電圧より低く設定されている。このために、外部充電装置の過電圧保護回路に過電圧保護回路を損傷させるような大きな電圧が印加される際には、それに先だって車載側の過電圧保護回路が作動して、第1電源線とアース線の間及び第2電源線とアース線の間に、車載側の過電圧保護回路の制限電圧以上の電圧が印加されるのを防止する。第1電源線とアース線の間及び第2電源線とアース線の間に、車載側の過電圧保護回路の制限電圧以上の電圧が印加されるのを防止できれば、車載側の過電圧保護回路の制限電圧は外部充電装置の過電圧保護回路の制限電圧より低く設定されているので、外部充電装置の過電圧保護回路が損傷するのを防止できる。
【0011】
本明細書で開示する車載充電器によると、外部充電装置を改造することなく、電動車両の車載電池の充電時電圧を高めることができる。あるいは、外部充電装置の仕様等を調査することなく、外部充電装置が損傷することを防止できる。
【0012】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】車載側の過電圧保護回路が存在しない場合の地絡電流経路を示す。
【
図3】車載側の過電圧保護回路が存在する場合の地絡電流経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は外部充電装置2と電動車両1を接続した状態を示し、両者は第1電源線(本実施例ではP線、すなわち正極線)41と第2電源線(本実施例ではN線、すなわち負極線)42とアース線(本実施例ではPE線、すなわちプロテクティブアース線)43で接続される。
外部充電装置2は、交流電源3に接続されており、交流電源3から供給される交流電力を所定電圧の直流電力に変換して電動車両1に供給する電源回路21を備えている。外部充電装置2は、遮断回路24をも備えており、遮断回路24は電動車両1の充電が終了した時等に電源回路21から電動車両1に電力を供給するのを停止する。
【0015】
外部充電装置2は、地絡検出回路23と過電圧保護回路22を備えている。地絡検出回路23は、第1電源線41とアース線43の間の電圧と、第2電源線42とアース線43の間の電圧を検出する。後記する車載電池12等に地絡が発生すると、通常時と異なる電圧を検出するので、地絡検出回路23によって地絡の発生の有無を検出できる。過電圧保護回路22は、第1電源線41とアース線43の間の電圧が所定値以上に上昇することを防止し、第2電源線42とアース線43の間の電圧が所定値以上に上昇することを防止する。
【0016】
本実施例では、電源回路21が400ボルトの直流電圧を供給する。過電圧保護回路22は、第1電源線41とアース線43の間の電圧が200ボルトに余裕電圧を加えた電圧以上に上昇することを防止し、第2電源線42とアース線43の間の電圧が200ボルトに余裕電圧を加えた電圧以上に上昇することを防止する。
ここでいう電圧は、電圧の絶対値をいう。第1電源線41とアース線43の間の電圧が200ボルト(例えば+200ボルト)であり、第2電源線42とアース線43の間の電圧が200ボルト(-200ボルト)であれば、第1電源線41と第2電源線42の間の電圧は400ボルトになる。
アース線43は外部充電装置2のケースを介して接地線43aに接続されており、接地線43aは接地端子に接続されている。地絡検出回路23の一端と過電圧保護回路22の一端は、接地線43aを介してアース線43に接続される。
【0017】
電動車両1は、車載充電器11と車載電池12を備えている。車載充電器11は、昇圧回路111と車載側の過電圧保護回路112を備えている。昇圧回路111は、外部充電装置2が供給する電圧を昇圧し、昇圧された電圧にまで車載電池12を充電する。本実施例では、昇圧回路111は外部充電装置2が供給する400ボルトを800ボルトに昇圧する。車載電池12の充電時電圧は800ボルトである。
アース線43は、電動車両1のボディに接続されており、同ボディを介して車載充電器11のケースにも接続されている。電動車両1のボディや車載充電器11のケース等は、アース線43と接地線43aを介して外部充電装置2の接地端子に接地されている。
【0018】
車載側の過電圧保護回路112は、第1電源線41とアース線43の間の電圧が所定値以上に上昇することを防止し、第2電源線42とアース線43の間の電圧が所定値以上に上昇することを防止する。ここでいう電圧もまた電圧の絶対値をいう。
【0019】
本実施例では下記の関係に調整されている。
「外部充電装置2の電源回路21が供給する電圧」<「車載側の過電圧保護回路112の制限電圧」<「過電圧保護回路22の制限電圧」<「過電圧保護回路22が損傷する電圧」<「車載側の過電圧保護回路112が損傷する電圧」
【0020】
過電圧保護回路22には、印加電圧が上昇すると抵抗値が低下するバリスタを利用することができる。第1電源線41とアース線43の間の電圧または第2電源線42とアース線43の間の電圧が所定値以上に上昇すると、過電圧保護回路22の抵抗が減少して電圧の上昇を緩和する。過電圧保護回路22に印加される最大電圧を制限電圧という。過電圧保護回路22は印加電圧を制限電圧以下に抑える。
過電圧保護回路22の制限電圧は400ボルト程度に設定されており、それ以上の電圧が印加されないように設定されているが、800ボルトに充電されている車載電池12に地絡が発生すると、400ボルト程度の電圧を想定して設計されている過電圧保護回路22では耐量が不足して電圧上昇をおさえきれなくなり、過電圧保護回路22に短絡故障といった損傷が生じる。
【0021】
図2は、車載側に過電圧保護回路112を設けない場合に車載電池12に地絡が発生したとき(正確には車載電池12の正極が地絡した場合)の電流経路を示し、地絡電流は、車載電池12の正極→車両のボディ→アース線43→外部充電装置2のケース→過電圧保護回路22→第2電源線42→車載電池12の負極→車載電池12の正極の経路を循環する。800ボルト程度に充電された車載電池12の地絡電流がこの循環経路を流れると、400ボルト程度を想定して設計されている過電圧保護回路22では耐量が不足し、過大電流が流れて過電圧保護回路22が損傷する。過電圧保護回路22が短絡故障すると、車載電池12からアース線43に過電流が流れてアース線43が切断され、車両ボディ等の電位が不安定となるといった現象に繋がりかねない。
【0022】
図3は、車載側に過電圧保護回路112を設けた場合に車載電池12に地絡が発生したとき(正確には車載電池12に正極が地絡したとき)の電流経路を示し、地絡電流は、車載電池12の正極→車両のボディ→車載側の過電圧保護回路112→第2電源線42→車載電池12の負極→車載電池12の正極の経路を循環する。車載側の過電圧保護回路112に並列な回路、すなわち
図1に示すように、車両のボディ→アース線43→外部充電装置2のケース→過電圧保護回路22→第2電源線42を流れる電流も存在するが、過電圧保護回路112の制限電圧が過電圧保護回路22の制限電圧よりも低く設定されているので、地絡電流の大部分は過電圧保護回路112を流れ、過電圧保護回路22を流れる電流は制限される。過電圧保護回路22の耐量が不足するといった問題は生じない。車載側の過電圧保護回路112は、昇圧回路111によって昇圧された電圧が印加されるのを想定してその仕様が決定されており、
図3の地絡電流によって損傷することはない。
【0023】
(実施例2)
実施例2では、
図4に示すように、車載側にも地絡検出回路113と制御装置114と遮断回路115を設ける。地絡検出回路113は、第1電源線41とアース線43の間の電圧と、第2電源線42とアース線43の間の電圧を検出する。車載電池12等に地絡が発生すると地絡検出回路113は通常時と異なる電圧を検出する。このとき、制御装置114は遮断回路115を作動させて充電電流の供給を停止する。遮断回路115には、パイロヒューズを利用することができる。実施例2によると、遮断回路115によって遮断することを前提にして過電圧保護回路112に必要な仕様を決定することができ、過電圧保護回路112がオーバスペックとなることを防止できる。
地絡検出回路113は、電圧に代えて、第1電源線41とアース線43の間を流れる電流と、第2電源線42とアース線43の間を流れる電流を検出して地絡の発生を検出してもよい。
【0024】
(実施例3)
図5に示すように、第1電源線41と第2電源線42の間に地絡検出回路116を設けてもよい。地絡検出回路116は、電圧を検出してもよいし、電流を検出してもよい。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
1:電動車両 2:外部充電装置 3:交流電源 11:車載充電器 12:車載電池
21:電源回路 22:過電圧保護回路 23:地絡検出回路 24:遮断回路
41:第1電源線(正極線) 42:第2電源線(負極線) 43:アース線(プロテクティブアース線)
111:昇圧回路 112:過電圧保護回路 113:地絡検出回路 114:制御装置 116:地絡検出回路