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特開2024-102489インクジェットインク組成物及び記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102489
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】インクジェットインク組成物及び記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240724BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240724BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006394
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 慶吾
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056FA13
2C056FC01
2C056HA41
2C056HA44
2C056HA46
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB54
4J039AD01
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE06
4J039BE12
4J039CA06
4J039EA36
4J039EA44
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】記録物の耐擦性を良好に維持しつつ、記録装置の構造に起因する異物を生じにくいインクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂からなる第1樹脂粒子と、ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂粒子と、を含有するインク組成物であって、インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置、で用いられるインクジェットインク組成物であり、前記第2樹脂粒子として、パルスNMRの緩和時間から得た比表面積が0.18m/g以下である樹脂粒子を含む、水系のインクジェットインク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂からなる第1樹脂粒子と、ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂粒子と、を含有するインク組成物であって、
インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置、で用いられるインクジェットインク組成物であり、
前記第2樹脂粒子として、パルスNMRの緩和時間から得た比表面積が0.18m/g以下である樹脂粒子を含む、水系のインクジェットインク組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2樹脂粒子の前記比表面積が0.05m/g以上0.18m/g以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第2樹脂粒子の含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記第1樹脂粒子が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂の何れかからなる、インクジェットインク組成物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2において、
前記第1樹脂粒子の含有量に対する前記第2樹脂粒子の含有量の質量比が、1以上5以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項6】
請求項1又は請求項2において、
前記記録装置は、前記部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する、ダイアフラムポンプ又はチューブポンプを有する、インクジェットインク組成物。
【請求項7】
請求項1又は請求項2において、
前記記録装置が、ラインプリンターであるか又は記録媒体に対するインクジェットヘッドの走査幅を50cm以上とし得るヘッドスキャン式プリンターである、インクジェットインク組成物。
【請求項8】
請求項1又は請求項2において、
有機溶剤を含有し、前記有機溶剤の全質量に対する、標準沸点が190℃以下の有機溶剤の割合が50質量%以上である、インクジェットインク組成物。
【請求項9】
請求項1又は請求項2において、
有機溶剤を含有し、前記有機溶剤の標準沸点の最大値は、250℃以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項10】
請求項1又は請求項2において、
前記第2樹脂粒子の体積平均粒子径が50nm以上300nm以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項11】
請求項1又は請求項2において、
前記記録装置は、前記インク供給経路にインク循環機構を有する、インクジェットインク組成物。
【請求項12】
インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置を用いて行われ、
請求項1又は請求項2に記載のインクジェットインク組成物を、前記インク供給経路を介して前記インクジェットヘッドへ供給する供給工程と、
前記インクジェットインク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出する吐出工程と、
を含む記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジンインクなどの水系インクにおいて、ポリオレフィン樹脂粒子(ポリオレフィンワックス)を用いることで記録物に滑性を付与することにより、記録物の耐久性(耐擦性など)が優れる。特にアクリル系やウレタン系などの樹脂粒子の定着樹脂と、ポリオレフィンワックスとを用いることで、記録物の耐久性が向上することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の酸価のアクリル系樹脂と、ワックスとを含む白色インク組成物が開示されている。同文献には、このような白色インク組成物の画像は、記録媒体への密着性や滑沢に優れる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-085548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェットプリンターがインクの供給経路に、インクを機械的な応力で押しつぶす機構を備える場合には、ポリオレフィンワックス(以下ワックス)が異物化することが分かってきた。このような異物が生じると、供給経路に配置されたフィルターを閉塞してしまう恐れがある。また異物が生じることにより、吐出安定性が低下して記録中などにノズルが乾燥したときに吐出不良となることも懸念される。したがって、記録物の耐擦性を良好に維持しつつ、記録装置の構造に起因する異物を生じにくいインクジェットインク組成物が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットインク組成物の一態様は、
ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂からなる第1樹脂粒子と、ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂粒子と、を含有するインク組成物であって、
インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置、で用いられるインクジェットインク組成物であり、
前記第2樹脂粒子として、パルスNMRの緩和時間から得た比表面積が0.18m/g以下である樹脂粒子を含む。
【0007】
本発明に係る記録方法の一態様は、
インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置を用いて行われ、
請求項1又は請求項2に記載のインクジェットインク組成物を、前記インク供給経路を介して前記インクジェットヘッドへ供給する供給工程と、
前記インクジェットインク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出する吐出工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インクジェット記録装置の一例の概略図。
図2】インクジェット記録装置のインク供給経路の一例の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0010】
1.インクジェットインク組成物
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂からなる第1樹脂粒子と、ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂粒子と、を含有する水系のインク組成物である。
【0011】
1.1.インクジェットインク組成物の用途
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置、で用いられる。
【0012】
インク供給経路としては、インクタンクから記録ヘッドまでの間の管路、インクを記録ヘッド内又は記録ヘッドと記録ヘッド外で循環させる循環流路などを指す。また、内側とは、インク経路を構成する部材でインクが接触する内面を指す。部材同士が外部からの力で押し付け合う部分とは、インク経路の内面が接触する部分であって、外部からの力学的な作用によって、部材が変形すること、又は、複数の部材が接触することによって、インク経路の内面が接触する部分を指す。
【0013】
部材同士が外部からの力で押し付け合う部分では、インクが押しつぶされ、インク成分の少なくとも一部が圧縮及び/又は凝集するような応力を受ける。かかる応力は、インク供給経路内のインクの流動によることのみでは、インク成分を再分散させることが困難となるような凝集物を発生させる場合がある。かかる凝集物を、本明細書では異物と称することがある。
【0014】
インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置としては、例えば、インク供給経路にダイアフラムポンプ及び/又はチューブポンプを有する記録装置が挙げられる。ダイアフラムポンプは、インク供給量や供給速度が大きい時に、ダイアフラムが部材に押し付けられる場合があり、チューブポンプは、チューブが狭窄された場合にチューブの内面同士が押し付けられる。
【0015】
チューブポンプの動作原理等については、例えば、URL「https://www.welco-web.co.jp/company/_peristalticpump.html」に説明され、ダイアフラムポンプの動作原理等については、例えば、「https://www.tacmina.co.jp/library/coretech/45/」に説明がある。
【0016】
記録装置がラインプリンターであるか又は記録媒体に対するインクジェットヘッドの走査幅を50cm以上とし得るヘッドスキャン式プリンターである場合には、インク供給経路が長くなる傾向があり、インク供給経路でインクを移動させるために、加圧ポンプを備えることが好ましい。特に記録装置がラインプリンターである場合は、インクジェットヘッドから吐出される単位時間当たりのインク量が多く、加圧ポンプを使用することが好ましい。
【0017】
ヘッドスキャン式プリンターで記録媒体に対するインクジェットヘッドの走査幅は、60cm~200cmが好ましく、70cm~150cmがより好ましい。この場合、幅の広い記録物の記録が可能であり有用であるが反面、特にインク供給経路が長くなる傾向がある。また、インクの循環機構を有する記録装置では、循環機構でインクを循環させるために、加圧ポンプを備えることが好ましい。
【0018】
加圧ポンプとしては、インク供給経路にダイアフラムポンプ及び/又はチューブポンプを備えたものとすることが好ましい。
【0019】
これにより、インクを移動させる十分な圧力を得ることができ、インクをインク供給経路に移動させることができ、インクジェットヘッドへ多くのインクを、迅速に供給することができる。
【0020】
ダイアフラムポンプは、インクを供給する能力が特に高く、耐久性が優れ、上記のようなインクを移動させる庄力が必要な場合に好ましい。ダイアフラムポンプは、特に単位時間当たりに供給するインク量が多い場合に、ダイアフラムが部材に押し付けられることが多くなる。
【0021】
チューブポンプは、比較的簡単な機構であり、使いやすい点で有用であるが、チューブが狭窄されてチューブの内面同士が押し付けられる傾向が大きい。
【0022】
本実施形態のインクジェットインク組成物によれば、このような異物を生じやすい記録装置を用いた場合でも安定した記録を行うことができる。
【0023】
1.2.第1樹脂粒子
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、第1樹脂粒子を含有する。第1樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂からなる。
【0024】
第1樹脂粒子は、記録媒体に付着させたインクジェットインク組成物による画像に密着性、定着性など性能を付与することができる。
【0025】
第1樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂(スチレンアクリル系樹脂を含む)、フルオレン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂、パラフィン等からなる樹脂粒子が挙げられる。なかでも、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。これにより画像の耐擦性をより良好にできる。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。また、ウレタン系樹脂として、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 420、460、460s、840、E-4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS-6021、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)などの市販品を用いてもよい。
【0027】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられる。また例えば、ビニル系単量体としては、スチレンなどが挙げられる。
【0028】
アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、中央理科工業社製)、モビニール952B、718A(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0029】
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、後述するスチレン・アクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリルとの表記は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0030】
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレン単量体と(メタ)アクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレン・アクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、678、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)、ビニブラン2586(日信化学工業社製)等を用いてもよい。
【0031】
パラフィンは、本明細書では、分子量が数万以下のアルカンであり、後述のポリオレフィン系樹脂とは区別して扱う。パラフィンの例としては、ワックスが挙げられ、ワックスとしては、例えば、炭化水素ワックス、パラフィンワックス及びその変性体が挙げられる。
【0032】
また、樹脂粒子は、エマルジョンの形態で供給されてもよく、そのような樹脂エマルジョンの市販品の例としては、マイクロジェルE-1002、E-5002(日本ペイント社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート4001(DIC社製商品名、アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート5454(DIC社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAM-710、AM-920、AM-2300、AP-4735、AT-860、PSASE-4210E(アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP-7020(スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、ポリゾールSH-502(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAD-13、AD-2、AD-10、AD-96、AD-17、AD-70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールPSASE-6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)(昭和電工社製商品名)、ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK-200(商品名、アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、AE-120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルジョン)(日信化学工業社製商品名)、エリーテルKA-3556、KA-5071S、KT-8803、KT-9204、KT-8701、KT-8904、KT-0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、ハイテックSN-2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、タケラックW-6020、W-635、W-6061、W-605、W-635、W-6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス420、870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、パーマリンUA-150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、NeoRez R-9660、R-9637、R-940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、アデカボンタイター HUX-380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、モビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、NKバインダーR-5HN(新中村化学工業株式会社製)、ハイドランWLS-210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)、ジョンクリル7610(BASF社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0033】
第1樹脂粒子の体積平均粒子径は、10nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上300nm以下がより好ましく、30nm以上250nm以下がさらに好ましく、40nm以上220nm以下が特に好ましい。体積平均粒子径(D50)は、粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「ナノトラックシリーズ」マイクロトラックベル社製)が挙げられる。体積平均粒子径はD50値とする。
【0034】
第1樹脂粒子のガラス転移温度は、10~130℃が好ましく、30~100℃がより好ましく、40~80℃がさらに好ましく、50~75℃が特に好ましい。この場合、信頼性、耐擦性などがより優れ好ましい。
【0035】
インクジェットインク組成物における第1樹脂粒子の含有量は、インクジェットインク組成物の全質量に対して、固形分として、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下である。
【0036】
1.3.第2樹脂粒子
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、第2樹脂粒子を含有する。第2樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂からなる。
【0037】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、市販品を用いることもでき、例えばアローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)、HORDAMER PE02、PE03、PE34、PE35(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、AQUACER 552、593(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、ハイテックEシリーズ(東邦化学工業株式会社製)等を用いてもよい。また、ポリオレフィン系樹脂は、変性樹脂であってもよい。なお、AQUACER 539(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)は、分子量が小さく、本明細書では、パラフィン系樹脂に分類される。
【0038】
インクジェットインク組成物は、パルスNMRの緩和時間から得た比表面積が0.18m/g以下である第2樹脂粒子を含む。パルスNMRの緩和時間から得た比表面積は、以下の測定及び以下の式(I)、式(II)に基づく計算により導かれる。
【0039】
・装置:パルスNMR(Xigo nanotools社製Acorn Drop)
・測定温度:30℃
・測定試料:0.5mL
・測定試料A1:第2樹脂粒子分散体
・測定試料A2:水
・S:インクジェットインク組成物中の第2樹脂粒子の比表面積[m/g]
・式(I) S={[(Rav/R)-1]×R}/(0.0016×ψ
(式(I)中、Ravは、測定試料A1を用いて得られたパルスNMRの測定値の逆数を示し、Rは、測定試料A2を用いて得られたパルスNMRの測定値の逆数を示し、ψは、下記式によって算出して求められる。)
・式(II) ψ=(S/S)/[(1-S)/T
(式(II)中、Sは、測定試料A1の固形分濃度(質量%)を示し、Sは、測定試料A1の第2樹脂粒子の密度を示し、Tは、測定試料A2の密度を示す。)
なお、Sd(第2樹脂粒子の密度)は、1.0とみなし、Td(水の密度)についても1.0とみなす。
【0040】
第2樹脂粒子の比表面積が、0.18m/g以下であることで、第2樹脂粒子の親水性表面の割合が小さくなり、押しつぶされた際に凝集したとしても凝集が解けやすく、再分散しやすい。これにより、異物の発生を抑制できる。
【0041】
第2樹脂粒子の上記の比表面積は、0.01m/g以上0.18m/g以下であることがより好ましい。また0.05m/g以上0.18m/g以下であることがより好ましく、0.10~0.18m/gがさらに好ましく、0.15~0.18m/gが特に好ましい。
【0042】
比表面積がこのような範囲であると、第2樹脂粒子が押し付けられた際の凝集し難さと、インクジェットインク組成物中での分散安定性の両者をより良好にすることができる。また、さらに画像の耐擦性を向上できる。
【0043】
第2樹脂粒子の含有量は、特に限定されないが、インクジェットインク組成物の全量に対して、0.05質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がよりさらに好ましい。第2樹脂粒子の含有量がこのような範囲であると、さらに画像の耐擦性を向上できる。
【0044】
また、第2樹脂粒子の体積平均粒子径は、特に限定されないが、10nm以上500nm以下が好ましく、50nm以上300nm以下がより好ましく、50nm以上200nm以下がさらに好ましい。第2樹脂粒子の体積平均粒子径がこのような範囲であると、より異物を生じやすい状況でも安定した記録を行うことができる。
【0045】
他方、インクジェットインク組成物は、上記の比表面積が0.18m/g超のポリオレフィン系の樹脂粒子を含んでもよいが、そのような場合には、当該樹脂粒子は、インクジェットインク組成物の全量に対して、0.05質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以下であることがより好ましく、含有しないことがさらに好ましい。
【0046】
また、インクジェットインク組成物が含有するポリオレフィン系の樹脂粒子の総質量に対する、上記の比表面積が0.18m/g以下であるポリオレフィン系の樹脂粒子の質量比が、90質量%以上が好ましい。
【0047】
1.4.第1樹脂粒子と第2樹脂粒子の含有比
インクジェットインク組成物における第1樹脂粒子の含有量に対する第2樹脂粒子の含有量の質量比(第1樹脂粒子の含有量をa、第2樹脂粒子の含有量をbとしたときの「a/b」は、0.5以上10以下であることが好ましく、0.8以上8以下であることがより好ましく、1以上5以下であることがさらに好ましい。
【0048】
第1樹脂粒子と第2樹脂粒子の含有比が上記範囲にあると、得られる画像の耐擦性をさらに向上できる。
【0049】
1.5.水
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、水系のインクである。水系とは主要な溶媒成分の1つとして水を含有する組成物である。このようにすれば、環境負荷を低減した、臭気等の少ない記録を行うことができる。
【0050】
水は、インクジェットインク組成物の主となる溶媒成分として含まれ、乾燥により蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、インクジェットインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。
【0051】
水の含有量はインクジェットインク組成物の総量に対して好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以上95質量%以下である。さらには65質量%以上90質量%以下が好ましく、70質量%以上85質量%以下がより好ましい。水の含有量が上記範囲以上の場合、インクの乾燥性が優れ、記録物の画像がこすれて汚れてしまうことを抑制でき好ましい。
【0052】
1.6.その他の成分
インクジェットインク組成物は、以下の成分を含んでもよい。
【0053】
1.6.1.有機溶剤
インクジェットインク組成物は、溶剤(有機溶剤)を含有してもよい。溶剤としては、例えば、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、アルコール類、多価アルコール類等を挙げることができる。含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
【0054】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0055】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0056】
なお、上記のアルキレングリコールは、モノエーテルよりも、ジエーテルのほうが、インク組成物中の第1樹脂粒子を溶解又は膨潤させやすい傾向があり、画像の耐擦性をより向上できる点で好ましい。
【0057】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、ε-デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0058】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、等を例示することができる。
【0059】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは樹脂の皮膜化を促進させる点で好ましく、特に2-ピロリドンがより好ましい。
【0060】
アルコール類としては、例えば、アルカンが有する1つの水素原子がヒドロキシル基によって置換された化合物が挙げられる。該アルカンとしては、炭素数10以下のものが好ましく、6以下のものがより好ましく、3以下のものが更に好ましい。アルカンの炭素数は1以上であり、2以上であることが好ましい。アルカンは、直鎖型であってもよく、分枝型であってもよい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及びtert-ペンタノール、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、フェノキシプロパノールなどが挙げられる。
【0061】
多価アルコール類は、分子中に2個以上の水酸基を有するものである。多価アルコール類は、例えば、アルカンジオール類やポリオール類が挙げられる。
【0062】
アルカンジオール類とは、例えば、アルカンが2個の水酸基で置換された化合物が挙げられる。アルカンジオール類としては、例えば、エチレングリコール(別名:エタン-1,2-ジオール)、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール(別名:1,3-ブタンジオール)、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができる。
【0063】
ポリオール類としては、例えば、アルカンジオール類の2分子以上が水酸基同士で分子間縮合した縮合物、水酸基を3個以上有する化合物などが挙げられる。
【0064】
アルカンジオール類の2分子以上が水酸基同士で分子間縮合した縮合物としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコールや、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のトリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0065】
水酸基を3個以上有する化合物は、アルカンやポリエーテル構造を骨格とする、3個以上の水酸基を有する化合物である。水酸基を3個以上有する化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ポリオキシプロピレントリオールなどが挙げられる。
【0066】
上記有機溶剤は一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0067】
有機溶剤の含有量は、インクジェットインク組成物の総質量に対して、合計で1質量%以上が好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。さらには20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上であるのがよりさらに好ましい。有機溶剤の含有量の上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。また、有機溶剤の含有量は、インクジェットインク組成物に含む液媒体成分の総質量に対して上記範囲とすることも好ましい。
【0068】
また、有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の全質量に対する、標準沸点が190℃以下の有機溶剤の割合が50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがさらにより好ましい。上限は100質量%以下である。
【0069】
このようにすれば、インクジェットインク組成物が記録ヘッドのノズル付近で乾燥しやすく吐出信頼性が低下しやすい場合でも安定した記録を行うことができ、得られる画像の耐擦性もさらに優れたものとできる。
【0070】
また、有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の標準沸点の最大値は、250℃以下であることがより好ましく、標準沸点が280℃を超える有機溶剤を含まないことが好ましい。このようにすれば、インクジェットインク組成物が記録ヘッドのノズル付近で乾燥しやすく吐出信頼性が低下しやすい場合でも安定した記録を行うことができ、得られる画像の耐擦性もさらに優れたものとできる。
【0071】
1.6.2.pH調整剤
インクジェットインク組成物は、pH調整剤と含有してもよい。pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリン等のアミン類及びこれらの変成物;酢酸、クエン酸、フタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アミノ酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩類;水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウム)等が挙げられる。なお、これらのうち、アミン類は、上述した有機溶剤に含めないものとする。
【0072】
1.6.3.界面活性剤
インクジェットインク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、インクジェットインク組成物の表面張力を調節し、例えば記録媒体との濡れ性等を調整する機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0073】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0074】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)、シルフェイスSAG002、005、503A、008(以上商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0075】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-3440(ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS-241、S-242、S-243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(ネオス社製)等が挙げられる。
【0076】
インクジェットインク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。インクジェットインク組成物に界面活性剤を含有させる場合の含有量は、インクジェットインク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下、好ましくは0.4質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以上1.0質量%以下とすることができる。
【0077】
1.6.4.色材
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、色材を含有してもよい。色材としては、顔料、染料のいずれも用いることができ、カーボンブラック、チタンホワイトを含む無機顔料、有機顔料、油溶染料、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料、分散染料、昇華型染料等を用いることができる。インクジェットインク組成物は、顔料を含んでいることが好ましく、該顔料が分散樹脂により分散されていてもよい。
【0078】
<顔料>
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等を用いることができる。
【0079】
有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料等を例示できる。
【0080】
有機顔料の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0081】
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0082】
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0083】
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、138、150、及び180からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0084】
これ以外の色の顔料も使用可能である。例えば、オレンジ顔料、グリーン顔料などが挙げられる。
【0085】
上記例示した顔料は、好適な顔料の例であり、これらに限定されるものではない。これらの顔料は一種又は二種以上の混合物として用いてよいし、染料と併用しても構わない。
【0086】
また、顔料は、水溶性樹脂、界面活性剤等から選ばれる分散剤を用いて分散して用いてもよく、あるいはオゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して自己分散顔料として分散して用いてもよい。なお、分散剤に使用できる界面活性剤としては、後述するインク組成物に含有してもよい界面活性剤であってもよい。
【0087】
<染料>
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、色材として染料を用いてもよい。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料、及び分散染料が使用可能である。染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17、23、42、44、79、142、C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289、C.I.アシッドブルー9、45、249、C.I.アシッドブラック1、2、24、94、C.I.フードブラック1、2、C.I.ダイレクトイエロー1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173、C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、132、225、227、C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、199、202、C.I.ダイレクトブラック19、38、51、71、154、168、171、195、C.I.リアクティブレッド14、32、55、79、141、249、C.I.リアクティブブラック3、4、35が挙げられる。
【0088】
色材の含有量は、用途に応じて適宜調整することができるが、インクジェットインク組成物の総質量に対して、好ましくは0.1質量%以上17.0質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上15.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下であり、特に好ましくは2.0質量%以上5.0質量%以下である。
【0089】
1.6.5.その他
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、必要に応じて、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0090】
〔防腐剤・防かび剤〕
防腐剤・防かび剤としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンジンチアゾリン-3-オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルTN)等が挙げられる。
【0091】
〔キレート剤〕
キレート剤は、イオンを捕獲する性質を有する。そのようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
【0092】
1.7.製造方法
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
【0093】
1.8.インクジェットインク組成物の物性
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、25℃における表面張力が10mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを処理液組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0094】
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、20℃における粘度が2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上5mPa・s以下であることがより好ましく、2mPa・s以上3.6mPa・s以下であることがより好ましい。粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR-300(商品名、Pysica社製)を用いて、40℃または20℃の環境下での粘度を測定することができる。
【0095】
1.9.作用効果
本実施形態に係るインクジェットインク組成物によれば、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置で用いた場合でも、異物の発生が抑制され、安定した記録を行うことができる。また、このインクジェットインク組成物によれば、形成される画像の耐擦性も良好とすることができる。
【0096】
2.記録方法
本実施形態に係る記録方法は、インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置を用いて行われ、上述のインクジェットインク組成物を、インク供給経路を介してインクジェットヘッドへ供給する供給工程と、インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出する吐出工程と、を含む。
【0097】
2.1.インクジェット記録装置
本実施形態に係る記録方法に使用可能なインクジェット記録装置の一例について図面を参照しながら説明する。
【0098】
図1は、インクジェット記録装置を模式的に示す概略断面図である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、加熱ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8とを備える。
【0099】
インクジェットヘッド2は、インクジェットインク組成物をインクジェットヘッド2のノズルから吐出して付着させることにより記録媒体Mに記録を行う構成である。本実施形態において、インクジェットヘッド2は、シリアル式のインクジェットヘッドであり、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査してインクを記録媒体Mに付着させる。インクジェットヘッド2は、記録媒体Mに対して相対的に主走査方向(図1において紙面奥行き方向)に複数回走査される。媒体幅方向とは、インクジェットヘッド2の主走査方向である。主走査方向への走査を主走査ともいう。
【0100】
またここで、主走査方向は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ(図示せず。)の移動する方向である。図1においては、矢印SSで示す記録媒体Mの搬送方向である主走査方向に交差する方向である。そして、インクジェットヘッド2の主走査と、記録媒体Mの搬送である副走査を複数回繰り返し行うことで、記録媒体Mに対して記録する。すなわち、吐出工程は、インクジェットヘッド2が主走査方向に移動する複数回の主走査と、記録媒体Mが主走査方向に交差する副走査方向へ移動する複数回の副走査と、により行われる。
【0101】
インクジェットヘッド2には、図示せぬインクタンクから、インク供給経路を通じてインクジェットインク組成物が供給される。インクタンク及びインクジェットヘッド2は、チューブ等のインク供給経路に接続される。そして当該インク供給経路には、チューブポンプが備えられている。複数のインクタンクのそれぞれには異なる種類のインクジェットインク組成物が充填されており、インクタンクから各ノズルにインクジェットインク組成物が供給される。
【0102】
インクジェットヘッド2の吐出には従来公知の方式を使用することができる。本実施形態では、圧電素子の振動を利用して液滴を吐出する方式、すなわち、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成する吐出方式を使用する。
【0103】
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2から吐出され記録媒体Mに付着したインクジェットインク組成物を乾燥させるための、通気ファン8、IRヒーター3及びプラテンヒーター4を備える。これら、通気ファン8、IRヒーター3及びプラテンヒーター4を適宜組み合わせて用いることにより一次乾燥工程を行うことができる。一次乾燥工程においては、必ずしも記録媒体Mを加熱する必要はなく、常温の送風の実施として通気ファン8を単独で用いるものであってもよい。
【0104】
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から赤外線の輻射により放射式で記録媒体Mを加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4等の記録媒体Mの裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体Mの厚みの影響を受けずに昇温することができる。また、温風又は環境と同じ温度の風を記録媒体Mにあてて記録媒体M上のインクを乾燥させる各種のファン(例えば通気ファン8)を備えてもよい。
【0105】
プラテンヒーター4は、インクジェットヘッド2によって吐出された処理液やインクジェットインク組成物が記録媒体Mに付着された時点から早期に乾燥することができるように、インクジェットヘッド2に対向する位置において記録媒体Mを、プラテン11を介して加熱することができる。プラテンヒーター4は、記録媒体Mを伝導式で加熱可能なものであり、本実施形態の記録方法では、これにより加熱された記録媒体Mに対してインクジェットインク組成物を付着させることができる。そのため、記録媒体M上でインクジェットインク組成物を早期に固定することができ、画質を向上させることができる。
【0106】
加熱ヒーター5は、記録媒体Mに付着された処理液やインクジェットインク組成物を乾燥及び固化させる、つまり、二次加熱又は二次乾燥用のヒーターである。加熱ヒーター5は、後乾燥工程に用いることができる。加熱ヒーター5が、画像が記録された記録媒体Mを加熱することにより、インクジェットインク組成物中に含まれる水分等がより速やかに蒸発飛散して、インクジェットインク組成物中に含まれ得る樹脂によってインク膜が形成される。このようにして、記録媒体M上においてインク膜が強固に定着又は接着して造膜性が優れたものとなり、優れた高画質な画像が短時間で得られる。
【0107】
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。記録媒体Mに記録されたインクジェットインク組成物を乾燥後、冷却ファン6により記録媒体M上のインクジェットインク組成物を冷却することにより、記録媒体M上に密着性よくインク塗膜を形成することができる。
【0108】
また、インクジェット記録装置1は、記録媒体Mに対してインクジェットインク組成物が付着される前に、記録媒体Mを予め加熱するプレヒーター7を備えていてもよい。さらに、インクジェット記録装置1は、記録媒体Mに付着したインクジェットインク組成物がより効率的に乾燥するように通気ファン8を備えていてもよい。
【0109】
図1では、シリアル式のインクジェット記録装置としたが、ライン式のインクジェット記録装置であっても、いわゆるラテラルプリンターと呼ばれるヘッドスキャン式プリンターも用いることができる。また、シリアル式である場合には、インクジェットヘッド2の走査幅(主走査方向の走査距離)が50cm以上であってもよい。また、インク供給経路に備えられるポンプは、ダイアフラムポンプであってもよい。さらに、インクジェットヘッド2内、又は、インクジェットヘッド2及び循環流路を有するインクの循環機構を有してもよい。この場合、循環流路は、インク供給経路とみなしてもよい。
【0110】
図2は、本実施形態のインクジェット記録装置のインク供給経路の周囲64の一例を表す概略図である。サブタンク200はインクカートリッジ(図示せず)からインクの供給を受け、加圧ポンプ202によってインクをフィルターモジュール204、共通リザーバーユニット106の順に通過させて、複数個設けられたインクジェットヘッド100に供給する。サブタンク200内にはインク液面218が生じ得る。加圧ポンプ202としては、ダイアフラムポンプやチューブポンプを用いることができる。
【0111】
インクジェットヘッド100は記録媒体(図示せず)にインクを吐出するものである。弁108は開弁アクチュエーター320によって開弁され、サブタンク200からインクジェットヘッド100へのインクの供給の開閉を調整する。
【0112】
フィルターモジュール204を通過したインクは、圧力調整弁108が開弁すると、共通リザーバーユニット106内の共通リザーバー220に流入する。共通リザーバー220から、インク供給経路が複数の通路に分岐されて、複数個のインクジェットヘッド100に接続されている。
【0113】
インクジェットヘッド100から吐出されなかったインクは、インクジェットヘッド内のインクリザーバー222を通り、開閉バルブ212が開いた状態において、統合継手210及び復路216を介してサブタンク200へ循環される。サブタンク200とインクジェットヘッド100との間にインクを循環させることで、インクが長期滞留してインク成分が分離、沈降した場合にこれを回復させたりすることができる。サブタンク200に循環したインクは、インクカートリッジから供給された新たなインクと混合され、往路214から、再びインクジェットヘッド100へ供給される。ただしインクジェット記録装置は、インクをサブタンク200へ循環させる機構を備えないものであってもよい。加圧ポンプ200はインク供給経路の何れかにあればよい。
【0114】
インクジェットヘッド100は記録媒体にインクの吐出を行う。図2の例は、インクジェットヘッド100が複数個あり、複数個のインクジェットヘッド100を用いて、記録媒体に一度に記録幅の広い記録が可能であり、例えばライン式のインクジェット記録装置とするのに有用である。ただしインクジェットヘッド100は1個以上あればよい。
【0115】
以上例示したインクジェット記録装置は、本実施形態に係る記録方法の実施に好ましく用いることができる。
【0116】
2.2.記録媒体
本実施形態の記録方法で記録を行う記録媒体としては、インクを吸収する記録面を有するものであっても有しないものであってもよい。したがって記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、紙、フィルム、布等の液体吸収性記録媒体、印刷本紙などの液体低吸収性記録媒体、金属、ガラス、高分子等の液体非吸収性記録媒体などが挙げられる。
【0117】
液体低吸収性又は液体非吸収性の記録媒体とは、インクを全く吸収しない、又はほとんど吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、液体非吸収性又は液体低吸収性の記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙-液体吸収性試験方法-ブリストー法」に述べられている。これに対して、液体吸収性の記録媒体とは、液体非吸収性及び液体低吸収性に該当しない記録媒体のことを示す。なお、本明細書では、液体低吸収性及び液体非吸収性を、単に低吸収性及び非吸収性と称することがある。
【0118】
液体非吸収性の記録媒体としては、例えば、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの、紙等の基材上にプラスチックフィルムが接着されているもの、吸収層(受容層)を有していないプラスチックフィルム等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0119】
また、液体低吸収性の記録媒体としては、例えば、表面に液体低吸収性の塗工層が設けられた記録媒体が挙げられる。例えば塗工紙と呼ばれるものである。例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、ポリマー等が塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。
【0120】
記録媒体としては、液体吸収性の記録媒体も用いることができる。液体吸収性の記録媒体は、上述の「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m超である記録媒体」を指す。
【0121】
液体吸収性の記録媒体としては、記録媒体の表面に液体を吸収する受容層が設けられていることによって液体吸収性の記録媒体になっているものが挙げられる。例えば、インクジェット用紙(インクジェット専用紙)などが挙げられる。液体を吸収する受容層としては、液体吸収性の樹脂、液体吸収性の無機微粒子などから構成された層が挙げられる。
【0122】
液体吸収性の記録媒体としては、記録媒体の基材そのものが液体吸収性である記録媒体も挙げられる。例えば、繊維からなる布帛、パルプを成分とする紙などが挙げられる。紙としては、普通紙、厚紙、ライナー紙などが挙げられる。ライナー紙は、クラフトパルプ、古紙などの紙から構成されるものが挙げられる。
【0123】
2.3.その他の工程
本実施形態の記録方法は、記録媒体に付着したインクジェットインク組成物を乾燥させる乾燥工程(一次加熱工程)や、記録媒体を加熱する工程(後加熱工程)等を備えてもよい。
【0124】
2.4.作用効果
本実施形態の記録方法によれば、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置で用いるという異物の発生しやすい状況において、異物の発生が抑制され、安定した記録を行うことができる。また、この記録方法によれば、形成される画像の耐擦性も良好とすることができる。
【0125】
3.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「部」「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。なお評価は、特に断りが無い場合は、温度25.0℃、相対湿度40.0%の環境下で行った。
【0126】
3.1.インクジェットインク組成物の調製
表1~表2の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に用いるインクジェットインク組成物(C01-C19)を得た。なお、顔料及び樹脂粒子の表中の数値は固形分量を表す。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
表1、表2中、成分の詳細は以下の通りである。
・色材:C.I.ピグメントブルー15:3
・第1樹脂粒子
・・アクリル系:ジョンクリル631(ガラス転移点105℃)
ジョンクリル1680(ガラス転移点56℃)
・・ポリエステル系:エリーテルKA-3556(ガラス転移点80℃)
・・ウレタン系:スーパーフレックス170(ガラス転移点75℃)
・第2樹脂粒子
・・ポリオレフィン系:HORDAMER PE02
(粒径116nm、比表面積0.04m/g、固形分40%)
HORDAMER PE03
(粒径178nm、比表面積0.17m/g、固形分40%)
HORDAMER PE34
(粒径117nm、比表面積0.12m/g、固形分38%)
AQUACER515
(粒径45nm、比表面積3.1m/g、固形分35%)
AQUACER530
(粒径84nm、比表面積4.3m/g、固形分32%)
ハイテックE-6324
(粒径74nm、比表面積4.7m/g、固形分35%)
・・パラフィン系:AQUACER539
(粒径61nm、比表面積1.8m/g、固形分35%)
・水溶性有機溶剤
・・アルカンジオール類:プロピレングリコール(沸点188℃)
1,2-ブタンジオール(沸点193℃)
1,3-ブタンジオール(沸点207℃)
1,3-プロパンジオール(沸点214℃)
1,5-ペンタンジオール(沸点239℃)
トリエチレングリコール(沸点276℃)
1,2-ヘキサンジオール(沸点223℃)
・pH調整剤:アミン類:トリイソプロパノールアミン(沸点299℃)
・界面活性剤:シリコーン系:SAG503A(日信化学工業株式会社製)
・水:イオン交換水
【0130】
用いた各第2樹脂粒子の比表面積は、以下のように、パルスNMRの緩和時間から求めた。
・装置:パルスNMR(Xigo nanotools社製Acorn Drop)
・測定温度:30℃
・測定試料:0.5mL
・測定試料A1:各第2樹脂粒子分散体
・測定試料A2:水
・S:分散体中の第2樹脂粒子の比表面積[m/g]
・式(I) S={[(Rav/R)-1]×R}/(0.0016×ψ
(式(I)中、Ravは、測定試料A1を用いて得られたパルスNMRの測定値の逆数を示し、Rは、測定試料A2を用いて得られたパルスNMRの測定値の逆数を示し、ψは、下記式によって算出して求められる。)
・式(II) ψ=(S/S)/[(1-S)/T
(式(II)中、Sは、測定試料A1の固形分濃度(質量%)を示し、Sは、測定試料A1の第2樹脂粒子の密度を示し、Tは、測定試料A2の密度を示す。)
なお、Sd(第2樹脂粒子の密度)は、1.0とみなし、Td(水の密度)についても1.0とみなした。
【0131】
また、表1、表2には、各組成物に含まれる有機溶剤の最大沸点、第2樹脂粒子の第1樹脂粒子に対する質量比、有機溶剤の全質量に対する、標準沸点が190℃以下であるプロピレングリコールの割合を記入した。
【0132】
3.2.評価方法
3.2.1.記録試験
条件:SC-S80650(セイコーエプソン株式会社製)改造機を用意した。図2の様にインク供給経路に加圧ポンプ(後述する送液ポンプ)を備えた。
記録ヘッドのノズル列のノズル密度は360dpi。
記録媒体の加熱機構を有し、記録時の記録媒体の表面温度は40℃とした。
記録媒体の搬送方向の下流の二次ヒーターで記録媒体の温度を70℃として二次加熱を行った。
記録パターンのインクジェットインク組成物の付着量は6mg/inchとした。
記録解像度は基本を720×720dpiとし、ドット重量は7ngとし、インクドット密度を調製して上記付着量にした。
記録媒体は、PET50A(リンテック社製)70cm幅を用いた。
【0133】
3.2.2.耐擦性の評価
各実施例、比較例及び参考例のインクジェットインク組成物の記録物について、インクのベタ部を試験した。摩擦子は基材のインク非印刷領域。学振試験(500g×30回)。以下の基準で評価して、結果を表3に記入した。
A:摩擦子への色移り、印刷面の地汚れが認められない。
B:摩擦子への色移りが見られるが、印刷面の地汚れは認められない。
C:印刷面の地汚れが見られるが、目立たない。
D:印刷面の地汚れが目立つ。
【0134】
3.2.3.耐異物性の評価
各実施例、比較例及び参考例のインクジェットインク組成物の記録物について、インク供給経路に設置したフィルターを以下の要領で観察した。各例で用いた送液ポンプ(インク供給装置)を表3に記載した。
P1では、送液ポンプ(マスターフレックス07522型、ヤマト化学株式会社製)を用いた。P1は、チューブポンプであり、脈動が比較的少ない。P1は、インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置である。P2では、送液ポンプ(油研工業社製)を用いた。P2はピストンポンプであり、脈動が比較的大きい。P2では、インク供給流路において部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有しないので、異物は生じにくい。
【0135】
各例において、500gのインクを流速50g/minで1時間循環させた。その後のインク10mlを通液させた後のフィルターを観察した。以下の基準で評価して、結果を表3に記入した。
A:異物は見られない。
B:僅かに異物が見られる。
C:異物が見られる。
D:異物が多量に見られる。
【0136】
3.2.4.吐出安定性(信頼性)の評価
記録試験の条件で2時間、記録を行った。ただし記録後ヘッドからインクを吐出しない模擬記録とした。記録後、吸引クリーニングを行い、ノズル検査を行った。クリーニング1回はノズル列から1ccのインクを排出した。以下の基準で評価して、結果を表3に記入した。
A:クリーニング1回で、全ノズル回復。
B:クリーニング3回で、全ノズル回復。
C:クリーニング6回で、全ノズル回復。
D:クリーニング6回で回復しないノズルあり。
【0137】
【表3】
【0138】
3.3.評価結果
表3をみると、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂からなる第1樹脂粒子と、ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂粒子と、を含有し、する水系のインク組成物であって、第2樹脂粒子として、パルスNMRの緩和時間から得た比表面積が0.18m/g以下である樹脂粒子を含む各実施例のインクジェットインク組成物は、耐異物性及び記録物の耐擦性が良好であった。なお、記載は省略したが、P1のチューブポンプに代えてダイアフラムポンプ(タクミナ社製)を用いたところチューブポンプと同様の結果となった。
【0139】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0140】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0141】
インクジェットインク組成物は、
ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂からなる第1樹脂粒子と、ポリオレフィン系樹脂からなる第2樹脂粒子と、を含有する水系のインク組成物であって、
インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置、で用いられるインクジェットインク組成物であり、
前記第2樹脂粒子として、パルスNMRの緩和時間から得た比表面積が0.18m/g以下である樹脂粒子を含む。
【0142】
このインクジェットインク組成物によれば、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置で用いた場合でも、異物の発生が抑制され、安定した記録を行うことができる。また、このインクジェットインク組成物によれば、形成される画像の耐擦性も良好とすることができる。
【0143】
上記インクジェットインク組成物において、
前記第2樹脂粒子の前記比表面積が0.05m/g以上0.18m/g以下であってもよい。
【0144】
このインクジェットインク組成物によれば、さらに画像の耐擦性を向上できる。
【0145】
上記インクジェットインク組成物において、
前記第2樹脂粒子の含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であってもよい。
【0146】
このインクジェットインク組成物によれば、さらに画像の耐擦性を向上できる。
【0147】
上記インクジェットインク組成物において、
前記第1樹脂粒子が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂の何れかからなってもよい。
【0148】
このインクジェットインク組成物によれば、さらに画像の耐擦性を向上できる。
【0149】
上記インクジェットインク組成物において、
前記第1樹脂粒子の含有量に対する前記第2樹脂粒子の含有量の質量比が、1以上5以下であってもよい。
【0150】
このインクジェットインク組成物によれば、さらに画像の耐擦性を向上できる。
【0151】
上記インクジェットインク組成物において、
前記記録装置は、前記部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する、ダイアフラムポンプ又はチューブポンプを有してもよい。
【0152】
このインクジェットインク組成物によれば、より異物を生じやすい状況でも安定した記録を行うことができる。
【0153】
上記インクジェットインク組成物において、
前記記録装置が、ラインプリンターであるか又は記録媒体に対するインクジェットヘッドの走査幅を50cm以上とし得るヘッドスキャン式プリンターであってもよい。
【0154】
このインクジェットインク組成物によれば、より異物を生じやすい状況でも安定した記録を行うことができる。
【0155】
上記インクジェットインク組成物において、
有機溶剤を含有し、前記有機溶剤の全質量に対する、標準沸点が190℃以下の有機溶剤の割合が50質量%以上であってもよい。
【0156】
このインクジェットインク組成物によれば、インクがノズル付近で乾燥しやすく吐出信頼性が低下しやすい場合でも安定した記録を行うことができ、得られる画像の耐擦性もさらに優れたものとできる。
【0157】
上記インクジェットインク組成物において、
有機溶剤を含有し、前記有機溶剤の標準沸点の最大値は、250℃以下である、インクジェットインク組成物。
【0158】
このインクジェットインク組成物によれば、インクがノズル付近で乾燥しやすく吐出信頼性が低下しやすい場合でも安定した記録を行うことができ、得られる画像の耐擦性もさらに優れたものとできる。
【0159】
上記インクジェットインク組成物において、
前記第2樹脂粒子の体積平均粒子径が50nm以上300nm以下であってもよい。
【0160】
このインクジェットインク組成物によれば、より異物を生じやすい状況でも安定した記録を行うことができる。
【0161】
上記インクジェットインク組成物において、
前記記録装置は、前記インク供給経路にインク循環機構を有してもよい。
【0162】
このインクジェットインク組成物によれば、より異物を生じやすい状況でも安定した記録を行うことができる。
【0163】
記録方法は、
インクジェットヘッドにインクジェットインク組成物を供給するインク供給経路の内側に、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置を用いて行われ、
請求項1又は請求項2に記載のインクジェットインク組成物を、前記インク供給経路を介して前記インクジェットヘッドへ供給する供給工程と、
前記インクジェットインク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出する吐出工程と、
を含む。
【0164】
この記録方法によれば、部材同士が外部からの力で押し付け合う部分を有する記録装置で用いるという異物の発生しやすい状況において、異物の発生が抑制され、安定した記録を行うことができる。また、この記録方法によれば、形成される画像の耐擦性も良好とすることができる。
【符号の説明】
【0165】
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…加熱ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、64…インク供給経路の周囲、100…インクジェットヘッド、106…共通リザーバ
ーユニット、108…圧力調整弁、200…サブタンク、202…加圧ポンプ、204…フィルターモジュール、210…統合継手、212…開閉バルブ、214…往路、216…復路、218…インク液面、220…共通リザーバー、222…インクリザーバー、320…開弁アクチュエーター、SS…副走査方向、M…記録媒体
図1
図2