(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102491
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】虚像表示装置及び頭部装着型表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240724BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240724BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240724BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240724BHJP
G02C 11/00 20060101ALN20240724BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02F1/13 505
G02B5/30
G02B5/22
G02C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006396
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】武田 高司
【テーマコード(参考)】
2H006
2H088
2H148
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H088EA10
2H088EA42
2H088HA02
2H088HA14
2H088HA18
2H088HA21
2H088MA06
2H148CA01
2H148CA05
2H148CA14
2H148CA19
2H148CA24
2H149AA17
2H149AB04
2H149BA02
2H149EA10
2H149FC06
2H149FC07
2H149FC08
2H149FC10
2H199CA12
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA43
2H199CA45
2H199CA63
2H199CA70
2H199CA74
2H199CA85
2H199CA86
2H199CA87
(57)【要約】
【課題】光学系全体が大型化してしまうことを回避しつつ画角を広くする。
【解決手段】虚像表示装置100A,100Bは、画素表示領域22pとして映像光MLを散乱させる散乱領域22eを有する散乱部材22と、散乱領域22eに映像光MLを照射する投射光学系10と、散乱部材22の外界側に配置され、散乱領域22eへの外界光OLの入射を抑制する遮光部材21と、散乱部材22の顔側に配置され、散乱領域22eに対応して設けられ散乱部材22で散乱された映像光MLを第1偏光方向に制限する第1偏光領域23bを有する第1偏光部材60と、第1偏光部材60の位置から外界側に配置され、外界光OLを第1偏光方向と異なる第2偏光方向に制限する第2偏光領域23cを有する第2偏光部材70と、第1偏光部材60の顔側に配置され、映像光MLの偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子50と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素表示領域として映像光を散乱させる散乱領域を有する散乱部材と、
前記散乱領域に前記映像光を照射する投射光学系と、
前記散乱部材の外界側に配置され、前記散乱領域への外界光の入射を抑制する遮光部材と、
前記散乱部材の顔側に配置され、前記散乱領域に対応して設けられ前記散乱部材で散乱された前記映像光を第1偏光方向に制限する第1偏光領域を有する第1偏光部材と、
前記第1偏光部材の位置から外界側に配置され、前記外界光を前記第1偏光領域と異なる第2偏光方向に制限する第2偏光領域を有する第2偏光部材と、
前記第1偏光部材の顔側に配置され、前記映像光の偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子と、
を備える、虚像表示装置。
【請求項2】
前記散乱部材は、前記散乱領域と、外界を視認可能にする光透過領域とを有する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記第1偏光領域は、前記散乱領域に対応して離散的に設けられる、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記遮光部材は、前記外界光の入射を抑制する遮光層を有し、
前記遮光層は、前記散乱領域に対応する大きさを有する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記第1偏光部材と前記第2偏光部材とは、同一基板に配置され、
前記第2偏光領域は、前記第1偏光領域の周囲に配置される、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記偏光分離レンズ素子は、複数の画素を包括的に結像させる偏光分離液晶レンズである、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記投射光学系は、画像を表示する画像表示パネルを有し、前記画像表示パネルの発光領域からの射出光を前記映像光として前記画素表示領域に投影する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記投射光学系は、走査のために駆動される微小ミラーにより、レーザー光源からの変調光を前記映像光として前記画素表示領域に投影する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記遮光部材と、前記散乱部材と、前記第1偏光部材とが一体化されている、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
前記散乱部材は、赤色用の散乱領域と、緑色用の散乱領域と、青色用の散乱領域とを有し、前記散乱領域が配置されない領域に前記外界光を透過させる光透過領域を有する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の虚像表示装置を備える第1装置と、
請求項1~10のいずれか一項に記載の虚像表示装置を備える第2装置と、
前記第1装置と前記第2装置とを支持し、頭部への装着を可能にするテンプルを含む支持装置と、
を備える、頭部装着型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の観察を可能にする虚像表示装置及び頭部装着型表示装置に関し、特に外界像を視認可能にするシースルー型の虚像表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
外界を視認可能にするシースルー型の虚像表示装置として、画像表示領域と、該画像表示領域を囲むように形成された透明表示領域とを有する液晶パネルと、光源から端部に入射されたバックライト光を導光する導光板とを備え、導光板が液晶パネルの画像表示領域にバックライト光を照射する発光領域と環境光を透過させる光透過領域とを備えるものが公知となっている(特許文献1)。この表示装置は、導光板の光透過領域及び液晶パネルの透明表示領域から環境光が観察者に到達するとともに、画像表示領域にバックライト光を照射しない期間に環境光が導光板の発光領域と液晶パネルの画像表示領域とを透過して観察者に到達するように構成されている。このような構成により、映像光と環境光とが重ね合わされたシースルー表示が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、導光板の発光領域にドットの形成、散乱材の塗布等の加工がなされており、液晶パネルの画像表示領域を通過する環境光が、加工がなされた発光領域を通過することになるので、画像表示領域に対応する視野の中央付近でのシースルー透過率が低下する。視野の中央付近において高いシースルー透過率のシースルー表示を実現するためには、別途、シースルー透過率の高い光学系等が必要となり、大型化に繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における虚像表示装置は、画素表示領域として映像光を散乱させる散乱領域を有する散乱部材と、散乱領域に映像光を照射する投射光学系と、散乱部材の外界側に配置され、散乱領域への外界光の入射を抑制する遮光部材と、散乱部材の顔側に配置され、散乱領域に対応して設けられ散乱部材で散乱された映像光を第1偏光方向に制限する第1偏光領域を有する第1偏光部材と、第1偏光部材の位置から散乱部材の外界側に配置され、外界光を第1偏光方向と異なる第2偏光方向に制限する第2偏光領域を有する第2偏光部材と、第1偏光部材の顔側に配置され、映像光の偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の虚像表示装置の装着状態を説明する外観斜視図である。
【
図2】表示光学系の光学的構造を説明する概念的な斜視図である。
【
図3】表示光学系の光学的構造を説明する概念的な側面図である。
【
図4】複合表示部材の繰返単位又はサブ画素を説明する概念的な拡大斜視図である。
【
図5C】パターン偏光部材を説明する平面図である。
【
図6】画素区画でのサブ画素スポットの照射状態の例を説明する図である。
【
図7】遮光部材、散乱部材、及びパターン偏光部材を重ねて示した図である。
【
図9】投射光学系で形成される画素又はサブ画素を説明する図である。
【
図10】偏光分離レンズ素子の構造及び機能を説明する概念的な斜視図である。
【
図11A】第1実施形態の虚像表示装置の動作を説明する概念図である。
【
図11B】第1実施形態の虚像表示装置の動作を説明する概念図である。
【
図12】第2実施形態の虚像表示装置を説明する概念図である。
【
図13】第3実施形態の虚像表示装置を説明する概念図である。
【
図14A】第3実施形態のパターン偏光部材を説明する平面図である。
【
図14B】第3実施形態の外光偏光部材を説明する平面図である。
【
図15】第4実施形態の虚像表示装置を説明する概念図である。
【
図16A】第5実施形態の虚像表示装置を説明する概念図である。
【
図16B】第5実施形態の虚像表示装置の変形例を説明する概念図である。
【
図17】第6実施形態の虚像表示装置を説明する概念図である。
【
図18】第6実施形態の複合表示部材を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔第1実施形態〕
以下、
図1~11を参照して、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置等について説明する。
【0008】
図1は、ヘッドマウントディスプレイ、すなわち頭部装着型表示装置200の装着状態を説明する斜視図である。頭部装着型表示装置(以下、HMDとも称する。)200は、双眼型表示装置201であり、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。
図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、HMD200を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0009】
HMD200は、右眼用の第1虚像表示装置100Aと、左眼用の第2虚像表示装置100Bと、虚像表示装置100A,100Bを支持する一対のテンプル100Cと、情報端末であるユーザー端末90とを備える。第1虚像表示装置100Aは、第1装置1Aであり、上部に配置される第1表示駆動部102aと、眼前を覆う第1表示光学系103aと、第1表示光学系103aを外界側又は前方側において覆う光透過カバー104aとで構成される。第2虚像表示装置100Bは、第2装置1Bであり、上部に配置される第2表示駆動部102bと、眼前を覆う第2表示光学系103bと、第2表示光学系103bを外界側又は前方側において覆う光透過カバー104bとで構成される。第1装置1Aである第1虚像表示装置100Aと、第2装置1Bである第2虚像表示装置100Bとを組み合わせたHMD200は、広義の虚像表示装置でもある。一対のテンプル100Cは、装着者USの頭部に装着される装着部材又は支持装置106である。テンプル100Cは、外観上一体化されている表示駆動部102a,102bを介して一対の表示光学系103a,103bの上端側と、一対の光透過カバー104a,104bの上端側とを支持している。一対の表示駆動部102a,102bを組み合わせたものを駆動装置102と呼ぶ。一対の光透過カバー104a,104bを組み合わせたものをシェード104と呼ぶ。
【0010】
図2は、第1表示光学系103aの構造を説明する概念的な斜視図である。
図3は、第1表示光学系103aの構造を説明する概念的な側面図である。第1表示光学系103aは、投射光学系10と、複合表示部材20と、偏光分離レンズ素子50とを備える。投射光学系10は、複合表示部材20の散乱部材22に映像光MLが照射されるように、複合表示部材20の斜め上方向に配置されている。散乱部材22は、投射光学系10からの投影光又は映像光MLのスクリーンとして機能する受動的な画像表示部材である。複合表示部材20と偏光分離レンズ素子50とは、光軸AX方向に離間して配置されている。第1表示光学系103aにおいて、眼EYと偏光分離レンズ素子50との間の距離は、例えば10mm~20mm程度である。また、散乱部材22と偏光分離レンズ素子50との間の距離は、例えば3mm~25mm程度である。
【0011】
図2及び
図3に示すように、複合表示部材20は、投射光学系10から射出された映像光MLを装着者USの眼EY、すなわち装着者USの瞳位置に導くものである。複合表示部材20は、光軸AXに垂直なXY面に平行に延びる板状の部材である。複合表示部材20は、遮光部材21と、散乱部材22と、パターン偏光部材23とを積層し、不図示の枠体によって一体化した構造を有する。図示の例では、複合表示部材20の散乱部材22に映像光MLのスポットを形成するため、投射光学系10から入射する映像光MLは、パターン偏光部材23を経て散乱部材22に入射する配置となっている。
【0012】
複合表示部材20は、XY面に沿ってマトリクス状に配列された複数の繰返単位20aで構成される。繰返単位20aは、画像を形成する単位である画素PEに対応する画素区画22tを含む。遮光部材21と、散乱部材22と、パターン偏光部材23とは、所定の間隔を設けて近傍に配置された状態で接合され、固定されている。これにより、装置を比較的薄くすることができる。なお、遮光部材21と、散乱部材22と、パターン偏光部材23とは、密着してもよい。散乱部材22とパターン偏光部材23とは、パターン偏光部材23を経て散乱部材22に入射する投射光学系10からの映像光MLの偏光方向と、散乱部材22の散乱領域22eで散乱してパターン偏光部材23を通過する映像光MLの偏光方向とが同一となるように配置を調整する。なお、パターン偏光部材23を散乱部材22から光軸AX方向に離して、投射光学系10から散乱部材22に映像光MLを直接入射させてもよい。
【0013】
偏光分離レンズ素子50は、映像光MLに対してレンズとして機能する。偏光分離レンズ素子50は、複合表示部材20のパターン偏光部材23の顔側つまり-Z側に配置されて眼前を覆う。偏光分離レンズ素子50は、複数の画素PEを包括的に結像させる単独レンズである。つまり、偏光分離レンズ素子50は、各画素PEに対応する光をまとめて結像させる。偏光分離レンズ素子50を単独レンズとすることにより、アイボックスを広くすることが容易になる。偏光分離レンズ素子50は、XY面に平行に延びる板状の部材である。偏光分離レンズ素子50は、具体的には液晶レンズ51であり、屈折率の状態が異なる複数の円形の輪帯部分RAを含む。一群の輪帯部分RAは、光軸AXの周りに対称的に同心で配置されている。一群の輪帯部分RAのうち、光軸AXから離れた周辺の輪帯部分RAは、光軸AXが通る中央の輪帯部分RAよりも、光軸AXを中心とする径方向の幅が狭くなっている。つまり、輪帯部分RAの径方向の幅は、周辺にあるものほど狭くなっている。
【0014】
偏光分離レンズ素子50は、水平方向の偏光に作用し、垂直方向又は鉛直方向の偏光には作用しない。水平方向の偏光に作用する偏光分離レンズ素子50は、散乱面DS又はこれに近い位置に焦点があり、或いはそれに近い屈折力を有するため、映像光MLは眼EYに略平行になって射出する。これにより、眼EYの網膜上に画像と外界像が重なり、AR表示することができる。
【0015】
第2表示光学系103bは、第1表示光学系103aと光学的に同一であり、或いは第1表示光学系103aを左右反転させたものであり、詳細な説明を省略する。
【0016】
図4は、複合表示部材20の繰返単位20aを説明する部分拡大斜視図である。
図4では、繰返単位20aのうち1つのサブ画素PEaに対応する領域を示している。ここで、軸AXaは、
図1に示す光軸AXに平行な軸である。
【0017】
遮光部材21は、散乱部材22の散乱領域22eへの外界光OLの入射を抑制する。遮光部材21は、光透過性を有する平板21a上に四角形の遮光層21bを設けたものである。
図5Aに示すように、全体の遮光部材21には、多数の遮光層21bが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、遮光部材21を構成する全遮光層21bは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。各遮光層21bは、各繰返単位20aにおける画素区画22tのサブ画素PEaに対応する領域に形成されている。なお、遮光層21bは、4つのサブ画素PEaを含む画素区画22tに対応する領域に形成されてもよい。遮光層21bは、画素PEを構成するサブ画素PEaと同等又はサブ画素PEaより広い範囲を遮光する。遮光層21bは、散乱領域22eに対応する大きさを有する。これにより、外界光OLが散乱領域22eに入射することを抑制することができる。遮光部材21のうち遮光層21bが設けられていない光透過領域A1は、外界光OLを透過させるが、遮光層21bは、外界光OLの通過を抑制する。
【0018】
遮光層21bは、吸光性を有する塗料その他の物質で形成され、例えばインクジェット方式で目的の個所に塗布することができる。遮光層21bは、平板21a上において遮光層21bを形成しない位置に事前に離型剤からなる離型パターンを記録し、吸光物質のスプレーを全体に塗布し、離型パターンの箇所で吸光物質を除去することで、残った吸光物質層からなるものであってもよい。遮光層21bは、光吸収作用又は光反射作用を有する物質であれば、黒以外の色の塗料を用いてもよい。さらに、遮光層21bは、フォトレジスト技術等を用いて平板21a上において遮光層21bを形成すべき箇所に金属パターンを形成し、金属パターンを酸化して吸収性を高めたものであってもよい。遮光層21bは、金属膜のような反射性を有する物質で形成されたミラーであってもよい。なお、遮光層21bは、平板21aの顔側に形成されるものに限らず、平板21aの外界側に形成されてもよい。
【0019】
図4等に示す散乱部材22は、遮光部材21の顔側に配置されている。散乱部材22は、
図3に示す投射光学系10から照射される映像光MLのうち一部の光を装着者USの眼EYに向けて散乱させるものであり、複合表示部材20において、画像表示部材として機能する。散乱部材22は、光透過性を有する平板22a上に、赤色、緑色、及び青色に対応する散乱領域22eを有している。散乱部材22は、散乱面DSにおいて、画像表示パネル11からのサブ画素スポットSPが照射される画素表示領域22pを有する。画素表示領域22pは、画素PEを構成するサブ画素PEaを含み、映像光ML又はサブ画素スポットSPが入射する領域である。散乱領域22eは、画素表示領域22pよりも狭い範囲に形成される。
【0020】
散乱領域22eは、光を眼EY側に散乱させるナノ構造等の構造体である。散乱領域22eは、平面視において多角形又は円形の輪郭を有する。散乱領域22eのナノ構造は、ナノインプリントリソグラフィ、フォトリソグラフィ等で形成される。
【0021】
画素表示領域22pに照射された光のうち、散乱領域22eに入射した光は、眼EY側、すなわち前方に散乱し、散乱領域22e以外の光透過領域A2に入射した光は、透過又は反射されるため、眼EY側に進まない。
【0022】
図6に示すように、散乱部材22において、例えば1画素の画素表示領域22pには、各色用の散乱領域22e、具体的には、赤色用の散乱領域22r、一対の緑色用の散乱領域22g、青色用の散乱領域22bが設けられている。赤色用の散乱領域22rは、投射光学系10からの光照射又はサブ画素スポットSPに応じて赤色の映像光MLrを表示に必要なタイミング及び輝度で射出する。一対の緑色用の散乱領域22gは、投射光学系10からの光照射又はサブ画素スポットSPに応じて緑色の映像光MLgを表示に必要なタイミング及び輝度で射出する。青色用の散乱領域22bは、投射光学系10からの光照射又はサブ画素スポットSPに応じて青色の映像光MLbを表示に必要なタイミング及び輝度で射出する。
図5B及び
図6に示すように、全体の散乱部材22には、4つの散乱領域22r,22g,22bを一組とする多数の画素PEが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、散乱部材22を構成する全画素PE、又は全組の散乱領域22r,22g,22bは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。散乱部材22のうち散乱領域22r,22g,22bが設けられていない光透過領域A2は、外界光OLを透過させる。
【0023】
散乱領域22eを設けた基板である平板22aは、光透過性を有するガラスやプラスチックで形成されている。平板22a上には、画素表示領域22pに1つのサブ画素PEaに対応する散乱領域22eが形成されている。散乱領域22eは、サブ画素PEaと1対1の関係にあり、1つの散乱領域22eに対して1つのサブ画素PEaに対応するサブ画素スポットSPが照射される。散乱領域22eは、画素区画22tのうち、遮光層21bと同等又は遮光層21bより小さい領域となっている。サブ画素スポットSPは、散乱領域22eより大きく、隣の散乱領域22eに入射しない大きさとなっている。投射光学系10からの各サブ画素PEaに対応する光の照射状態(角度方向や範囲)を制御することにより、散乱領域22eでの映像光MLの選択的な散乱が可能になる。
【0024】
図5Bに示すように、散乱部材22は、四角形の輪郭を有する繰返区画22sをX方向とY方向とに配列したものである。各繰返区画22sは、画素区画22t又は画素PEを有し、画素区画22tは、複数のサブ画素区画22uを有する。サブ画素区画22uにおいて、サブ画素PEaに対応する散乱領域22eの周囲には、光透過領域A2が形成されている。画素区画22tは、画像を表示する画素表示領域22pである。画素区画22tは、2×2で配列された4つの散乱領域22eを含む。第1表示光学系103aの散乱部材22において、画素PEが形成される領域の大きさは、例えば1インチ程度であり、画素数は、2K~4K程度である。サブ画素PEaを含むサブ画素区画22uの大きさは、例えば5μm角~20μm角程度である。散乱領域22eの大きさは、例えば2μm角~15μm角程度である。シースルー光を確保するため、(散乱領域面積)/(サブ画素区画面積)は、例えば0.3~0.8程度となっている。例えば、画素区画22tが12μm角、つまり、サブ画素区画22uが6μm角である場合、散乱領域22eは4μm角である。
【0025】
図4等に示すパターン偏光部材23は、散乱部材22の顔側に配置されている。パターン偏光部材23は、映像光MLと外界光OLとを第1偏光方向及び第2偏光方向にそれぞれ制限する。パターン偏光部材23を通過することで、映像光MLの偏光方向と外界光OLの偏光方向とは異なるものとなる。
【0026】
パターン偏光部材23は、第1偏光部材60と、第2偏光部材70とを有する。第1偏光部材60は、光透過性を有する平板23aに四角形の第1偏光領域23bを有する。第1偏光領域23bは、散乱領域22eに対応して離散的に設けられる。第2偏光部材70は、外界光OLを第1偏光方向と異なる第2偏光方向に制限する第2偏光領域23cを有する。第2偏光領域23cは、平板23aのうち第1偏光部材60つまり第1偏光領域23b以外の領域に設けられている。パターン偏光部材23は、第1偏光部材60と第2偏光部材70とを一体的に組み込んだものである。すなわち、第1偏光部材60と第2偏光部材70とは、同一基板上に形成される。第1偏光領域23bは、
図5Cに示すように格子点上に配列され、第2偏光領域23cは、第1偏光領域23bの周囲に配置される。これにより、第1偏光領域23bと第2偏光領域23cとの平面的な区分が可能になり、映像光MLと外界光OLとの干渉を抑えつつ、部品点数を減らすことができる。
図5Cに示すように、全体のパターン偏光部材23には、多数の第1偏光部材60又は第1偏光領域23bが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、パターン偏光部材23を構成する全第1偏光部材60は、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元的に配列されている。パターン偏光部材23のうち第1偏光部材60が設けられていない第2偏光部材70は、外界光OLを第2偏光方向の縦偏光に制限する。第1偏光部材60は、散乱部材22の散乱領域22eで散乱された映像光MLを第2偏光方向と直交する第1偏光方向の横偏光に制限する。なお、第1偏光部材60又は第1偏光領域23bは、全てが離散的に設けられる場合に限らず、映像光MLの偏光制御に影響が生じない程度に第1偏光部材60又は第1偏光領域23bの一部が繋がっていてもよい。
【0027】
パターン偏光部材23は、例えば、ワイヤーグリッド型の偏光板であり、ガラス等の平板23aにアルミニウム等の金属による微細なグリッドが形成されている。第1偏光領域23bと第2偏光領域23cとでは、偏光方向が90°異なるようにパターニングされている。なお、第1偏光領域23bのみをワイヤーグリッド型の偏光板とし、第2偏光領域23cは、平板23a上に吸収型の偏光膜を貼り付けたものとしてもよい。ここで、偏光膜は、例えばヨウ素吸着させたPVAを特定方向に延伸した樹脂シートである。
【0028】
図7は、散乱部材22において、遮光部材21とパターン偏光部材23とを透視した状態を重ねて示した図である。この場合、遮光部材21の遮光層21bは、画素区画22tのサブ画素PEaをカバーし、サブ画素PEaよりも若干外側に広がった領域に形成されているが、サブ画素PEaと一致する領域に形成されてもよい。また、遮光部材21の遮光層21bは、複数のサブ画素PEaを囲む枠に対応して設けてもよい。パターン偏光部材23の第1偏光領域23bは、画素区画22tのサブ画素PEaをカバーし、サブ画素PEaよりも若干外側に広がった領域に形成されているが、サブ画素PEaと一致する領域に形成されてもよい。
【0029】
図2、
図3、及び
図8に示す投射光学系10は、2次元的な画像を形成し、この画像から映像光MLを射出させる。
図3及び
図8に示すように、投射光学系10は、画像表示パネル11と、結像光学系12と、表示制御装置88とを有する。投射光学系10は、画像表示パネル11の発光領域からの射出光を映像光MLとして散乱部材22の散乱面DS、具体的には散乱領域22eに投影する。つまり、画像表示パネル11上の画像が対応する散乱領域22eに投影され、散乱部材22上に表示すべき画像が形成される。
【0030】
画像表示パネル11は、自発光型の画像光生成装置である。画像表示パネル11は、例えば有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)ディスプレイであり、2次元の表示面11aにカラーの静止画又は動画を形成する。画像表示パネル11は、表示制御装置88に駆動されて表示動作を行う。画像表示パネル11は、有機ELディスプレイに限らず、無機EL、有機LED、LEDアレイ、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等を用いた表示デバイスに置き換えることができる。画像表示パネル11は、自発光型の画像光生成装置に限らず、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源によって照明することによって画像を形成するものであってもよい。画像表示パネル11として、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)や、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
【0031】
図9に示すように、画像表示パネル11は、四角形の輪郭を有する繰返区画11sをx方向とy方向とに配列したものであり、各繰返区画11sは、画素区画11tを有し、画素区画11tは、複数のサブ画素区画11uを有する。画素区画11tは、画像を表示する画素表示領域PAである。画素区画11tは、サブ画素区画11uにおいて、例えば2×2で配列された4つの発光領域11m、具体的には、ベイヤー配列の発光領域11r,11g,11bを含む。すなわち、画像表示パネル11には、例えば4つの発光領域11r,11g,11bを一組とする多数の画素PEが、xy面に沿ってマトリクス状に配列されている。画素区画11tは、画素PEに対応する。各発光領域11r,11g,11bは、サブ画素区画11uのうちサブ画素PEaに対応する。繰返区画11sは、
図2及び
図5Bに示す複合表示部材20の繰返単位20aに対応する。画像表示パネル11を構成する全画素PE、又は全組の発光領域11r,11g,11bは、x方向及び縦のy方向に関して周期的に2次元配列されている。図示の例では、画素PE又は発光領域11r,11g,11bは、散乱部材22の散乱面DSにおける投影に対して左右反転させた配置となっている。画像表示パネル11は、表示制御装置88により、発光領域11r,11g,11bを選択的に発光させる。
【0032】
図3及び
図8に示すように、結像光学系12は、投射レンズ12aと、反射ミラー12bとを有する。画像表示パネル11と、結像光学系12とは、
図1に示す第1表示駆動部102aの一部に対応する。画像表示パネル11及び結像光学系12は、相互にアライメントされた状態で不図示のケース内に固定されている。結像光学系12は、散乱部材22の散乱面DSに映像光MLを結像させる。サブ画素PEaからの光は、結像光学系12によって散乱部材22の画素表示領域22pにサブ画素スポットSPとして形成される。
【0033】
図10は、偏光分離レンズ素子50又は液晶レンズ51の構造や機能を説明する図である。
図10中で、上側α1は、液晶レンズ51の概念的な斜視図であり、下側α2は、液晶レンズ51のリタデーションの分布状態を例示するチャートである。液晶レンズ51は、特定偏光成分に対してレンズの役割をする光学素子である。液晶レンズ51は、映像光MLの偏光に対して選択的に作用する屈折力を有しその屈折力が輪帯部分RAごとに設定されている。液晶レンズ51は、縦偏光と横偏光とが入射した場合において、一方向の横偏光(第1偏光P1)に対して屈折率の分布により選択的にレンズとして作用し、他方向の縦偏光(第2偏光P2)に対して略そのまま透過させて作用を及ぼさない。ここで、一方向の偏光は具体的には水平方向に沿った偏光面を有する横偏光の映像光MLであり、他方向の偏光は具体的には鉛直方向に沿った偏光面を有する縦偏光の外界光OLである。液晶レンズ51は、固定焦点で使用することができるが、可変焦点で使用してもよい。液晶レンズ51の屈折率の分布を全体的に増減させれば、液晶レンズ51の屈折力を増減させることができ、可変焦点で使用することができる。
【0034】
偏光分離レンズ素子50としての液晶レンズ51は、レンズ部材51aと駆動回路51cとを備える。レンズ部材51aは、対向する2つの光透過基板53a,53bと、光透過基板53a,53bの内面側に設けられた2つの電極層54a,54bと、電極層54a,54bに挟まれた液晶層55とを備える。なお、図示を省略しているが、電極層54a,54bと液晶層55との間には、配向膜が配置され、液晶層55の初期配向状態を調整している。第1の電極層54aは、輪帯部分RAにおいて、XY面に沿って同心に配置される多数の電極57を含み、各電極57は、環状の透明電極である。多数の電極57は、互いに離間し、外側に位置する電極57ほど横幅が狭まっている。電極57の横幅は、レンズ部材51aによる屈折作用の精度に影響する。各電極57は、途中経路上では不図示の絶縁層によって絶縁された配線58を介して駆動回路51cに接続されている。第2の電極層54bは、XY面に平行に延びる共通電極であり、光透過基板53bに沿って一様に形成されている。多数の電極57には、異なる印加電圧V1~V7が印可され、複屈折又はリタデーションの分布状態を調整する。液晶レンズ51に凸レンズの効果を持たせる場合、印加電圧V1を印加電圧V7よりも高くし、印加電圧V2~V6を電圧範囲V1~V7内で徐々に変化させた値に設定する。
【0035】
散乱部材22から射出された映像光MLがパターン偏光部材23等を介して液晶レンズ51に入射する場合、つまりX方向に平行な偏光面を有する横偏光(第1偏光P1)が液晶レンズ51に入射する場合について考える。横偏光に関しては、周辺部である最も外側に配置される電極57に印可される電圧が高くなってリタデーションが減少し、この領域で屈折率が相対的に低くなるので、例えば遠方の点光源からの光を考えたとき、周辺部の電極57を経て液晶レンズ51を通過した光は、波面が相対的に進む。一方、中央部である最も内側の電極57に印可される電圧が低くなってリタデーションが元に近い状態に維持され、この領域で屈折率が相対的に高くなるので、例えば遠方の点光源からの光を考えたとき、中央部の電極57を経て液晶レンズ51を通過する光は、波面が相対的に遅れる。よって、所定の焦点面FPに設定された像RIから液晶レンズ51に入射する発散状態の映像光ML0は、横偏光であり、液晶レンズ51を通過することで凸レンズとしての作用を受け、発散角が減少した状態の映像光MLPRとなる。映像光MLPRを逆に辿った仮想的な映像光MLPIは、焦点面FPよりも遠方の虚像位置からのものとなる。液晶レンズ51の焦点距離は、点光源からの光がコリメートされる場合の点光源から液晶レンズ51までの距離である。本実施形態では、焦点距離は、散乱部材22から液晶レンズ51までの距離と略一致する。近似的には、レンズの公式により、焦点面FPから液晶レンズ51までの距離をAとし、液晶レンズ51から像面までの距離をBとし、液晶レンズ51の焦点距離をFとして
1/F=1/A+1/B
なる関係が成り立つ。ここで、焦点面FPから虚像位置までの距離Bは、液晶レンズ51から焦点面FPまでの距離Aの数倍から数10倍の距離に設定される。この距離比は、詳細な説明を省略するが、虚像の拡大率に相当するものとなる。以上において、印加電圧V1~V7の相対的比率を略維持して低電圧とした場合、中心と周辺でリタデーションの差が減少し、液晶レンズ51の正のパワーの絶対値が減少する。つまり、液晶レンズ51に高電圧VHを印可することで、パワーの絶対値を増加させることができ、液晶レンズ51に低電圧VLを印可することで、パワーの絶対値を減少させることができ、駆動回路51cによって液晶レンズ51を外部から調整可能な可変焦点レンズとして機能させることができる。
【0036】
液晶レンズ51を可変焦点レンズとして機能させることにより、焦点距離Fが変化するので、液晶レンズ51から像面位置又は虚像位置までの距離Bを自在に変更することができ、拡大率の調整が可能になる。また、装着者USの視力が近視等で偏っている場合であっても、焦点があった状態で虚像を観察するフォーカス調整が可能になる。つまり、個人の視度能力差(遠視、近視、乱視等)に合わせて像面位置又は虚像位置を微調整することができる。拡大率の調整やフォーカス調整は、装着者USが例えばユーザー端末90を操作することで実現される。つまり、虚像表示装置100A,100Bは、装着者USの操作によって拡大率やフォーカスに関するカスタマイズが可能になっている。
【0037】
液晶レンズ51は、横偏光の映像光MLに対して結像作用を有するものであり、回転角度を調整することで縦偏光の映像光MLに対して結像作用を有するものであり、特定の偏光成分に対してレンズの役割をする液晶レンズということができ、特定の偏光成分に作用してレンズ機能を有する液晶レンズということもできる。液晶レンズ51を眼前に配置することで、液晶レンズ51のサイズに近いアイボックスを確保することができ、アイボックスを大きくでき画像の欠けを生じさせにくくできるだけでなく、小型ながらFOVを大きくした表示光学系103a,103bを実現することができる。さらに、散乱部材22、パターン偏光部材23等を含む複合表示部材20と、液晶レンズ51とを組み合わせることにより、小型の光学系で大画面を表示することができる。ここで、大画面の表示とは、例えば2.5m前方に70インチ以上の虚像を形成する場合を意味する。
【0038】
液晶レンズ51は、中心から周辺に向かってリタデーションが徐々に減少するものに限らず、例えば国際公開2009/072670号明細書に開示のようにフレネル型のレンズとすることもできる。液晶レンズ51は、超音波で液晶の配向方向を変更するものであってもよい。
【0039】
なお、遮光部材21等を通過した外界光OLについては、縦偏光(第2偏光P2)であり、液晶レンズ51を通過しても、印加電圧V1~V7の値に関わらずリタデーションがXY面内で一様に保たれるので、位相差が与えられず、液晶レンズ51のレンズ作用の影響を受けない。つまり、外界光OLは、複合表示部材20及び偏光分離レンズ素子50によって実質的な作用を受けることなく直進する。
【0040】
図11A及び11Bを参照して、散乱部材22で散乱された映像光MLは、パターン偏光部材23のうち第1偏光部材60又は第1偏光領域23bを経て第1偏光P1、具体的には、横偏光として射出される。第1偏光部材60を通過した映像光MLは、横偏光に対して凸レンズとして機能する偏光分離レンズ素子50である液晶レンズ51を経て虚像を形成する。装着者USの眼EYには、画像表示パネル11又は散乱部材22に形成された画像が、散乱部材22の後方に所望の拡大率の虚像として観察される。一方、外界光OLは、遮光部材21の光透過領域A1を通過し、散乱部材22の光透過領域A2を通過する。その後、外界光OLは、パターン偏光部材23のうち第2偏光部材70又は第2偏光領域23cを経て第2偏光P2、具体的には、縦偏光として射出される。この際、外界光OLは、遮光部材21、散乱部材22、及びパターン偏光部材23によってレンズ作用を受けない。装着者USの眼EYには、通常の外界像が観察される。つまり、表示光学系103a,103bを介して外界像のシールスルー視が可能になる。
【0041】
以上の説明では、パターン偏光部材23において、第1偏光部材60が横偏光の映像光MLのみを透過させ、第2偏光部材70が縦偏光の外界光OLを透過させるとしたが、第1偏光部材60が縦偏光の映像光MLを透過させ、第2偏光部材70が横偏光の外界光OLを透過させるものであってもよい。偏光分離レンズ素子50については、パターン偏光部材23等の機能変更に伴い、レンズとして機能する偏光方向を対応するものに変更する必要がある。
【0042】
図7を参照して、繰返区画22sは、光透過領域A2である外光視認画素X1と、サブ画素PEaである映像光射出画素X2とを組み合わせたものとして見ることができ、シースルー画像表示画素TXとも呼ぶ。シースルー画像表示画素TXは、外界光OLが局所的に遮断された箇所で画素を形成するという観点で、背景を透視させる画素ということができる。遮光部材21によって遮られなかった外界光OLは、散乱部材22のシースルー画像表示画素TXの一部である光透過領域A2を通過し、パターン偏光部材23の第2偏光部材70によって偏光方向が制限され、液晶レンズ51で光線状態を維持して通過する。一方、シースルー画像表示画素TXの一部である画素表示領域22pの散乱領域22eから射出された映像光MLは、パターン偏光部材23によって偏光方向が制限され、液晶レンズ51を集光作用又はレンズ作用を受けつつ通過し、画素表示領域22pによる表示に対応する虚像に変換される。
【0043】
以上で説明した第1実施形態の虚像表示装置100A,100Bは、画素表示領域22pとして映像光MLを散乱させる散乱領域22eを有する散乱部材22と、散乱領域22eに映像光MLを照射する投射光学系10と、散乱部材22の外界側に配置され、散乱領域22eへの外界光OLの入射を抑制する遮光部材21と、散乱部材22の顔側に配置され、散乱領域22eに対応して設けられ散乱部材22で散乱された映像光MLを第1偏光方向に制限する第1偏光領域23bを有する第1偏光部材60と、第1偏光部材60の位置から外界側に配置され、外界光OLを第1偏光方向と異なる第2偏光方向に制限する第2偏光領域23cを有する第2偏光部材70と、第1偏光部材60の顔側に配置され、映像光MLの偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子50と、を備える。
【0044】
上記虚像表示装置100A,100Bでは、外界から遮光部材21を通過した透過光が、第2偏光部材70を経て第2偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子50を屈折力の作用を受けずに通過し、散乱領域22eから射出された映像光MLが、第1偏光部材60を経て第1偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子50を屈折力の作用を受けて通過し虚像を形成する。この場合、散乱部材22や偏光分離レンズ素子50を眼EYの近くに配置して散乱部材22の散乱領域22eに形成された画像に対応する虚像を形成することができ、散乱部材22や偏光分離レンズ素子50を大きく離すことなく画角を広くすることができる。特に偏光分離レンズ素子50が単独レンズであることから、アイボックスを広くすることが容易である。
【0045】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、第2実施形態の虚像表示装置、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、第1実施形態の虚像表示装置と共通する部分については説明を省略する。
【0046】
図12に示すように、投射光学系10は、レーザー光源13と微小ミラー14又はMEMSミラーとを有する。投射光学系10は、走査のために駆動される微小ミラー14により、レーザー光源13からの変調光を映像光MLとして散乱部材22の画素表示領域22pに投影するものである。つまり、変調光が走査により散乱部材22上を移動する軌跡が表示すべき画像に相当する。投射光学系10において、レーザー光源13から出た映像光MLは、微小ミラー14又はMEMSミラーにより角度を振られ、複合表示部材20に向けて射出される。投射光学系10は、走査のために駆動される微小ミラー14により、レーザー光源13からの変調光を映像光MLとして散乱領域22e(
図5B参照)に投影する。
【0047】
なお、第3実施形態以降の虚像表示装置100A等でも第1実施形態の投射光学系10の代わりに第2実施形態の投射光学系10を用いることができる。
【0048】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、第3実施形態の虚像表示装置、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、第1実施形態の虚像表示装置と共通する部分については説明を省略する。
【0049】
図13に示すように、本実施形態では、表示光学系103a,103bは、遮光部材21の外界側に外光偏光部材24を有する。
図14Bに示すように、外光偏光部材24は、第2偏光部材70であり、外界光OLを第2偏光方向、具体的には、縦偏光に制限する第2偏光領域24cを有する。
図14Aに示すように、パターン偏光部材23は、平板23aに離散的に設けられた第1偏光部材60を有する。第1偏光部材60は、映像光MLを第1偏光方向、具体的には、横偏光に制限する第1偏光領域23bを有する。つまり、第1偏光部材60と第2偏光部材70とは、別部材となっている。パターン偏光部材23において、第1偏光部材60又は第1偏光領域23b以外は、光透過領域A3となっており、光透過領域A3を通過する外界光OLは、偏光方向の制限を受けない。
【0050】
第2偏光部材70は、光透過性を有する平板24a上に吸収型の偏光膜70bを貼り付けたものである。偏光膜70bは、例えばヨウ素吸着させたPVAを特定方向に延伸した樹脂シートである。図示の例では、偏光膜70bは、上下の±Y方向に平行な偏光面を有する縦偏光のみを透過させ、左右の±X方向に平行な偏光面を有する横偏光を吸収する。この結果、外界光OLのうち、横偏光は、第2偏光部材70で遮断され、縦偏光は、第2偏光部材70を通過する。なお、偏光膜70bは、第1偏光P1を反射によって遮断するものであってもよい。反射によって偏光を遮断する偏光膜70bは、例えばワイヤーグリッド型の偏光板であり、ガラス等の平板24a上にアルミニウム等の金属による微細なグリッドが形成されている。
【0051】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、第4実施形態の虚像表示装置、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、第1実施形態の虚像表示装置と共通する部分については説明を省略する。
【0052】
図15に示すように、本実施形態の表示光学系103a,103bでは、複合表示部材20と偏光分離レンズ素子50との間に、光学アレイ25が配置されている。光学アレイ25は、光透過性を有する平板25a上に平面視において円形又は四角形の微小光学素子25bを設けたものである。微小光学素子25bは、散乱部材22を構成する画素PE又はサブ画素PEaからの映像光MLについて個別に発散状態を調整する。微小光学素子25bは、例えばマイクロレンズである。
【0053】
図示を省略するが、全体の光学アレイ25には、多数の微小光学素子25bが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、光学アレイ25を構成する全微小光学素子25bは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。各微小光学素子25bは、各繰返単位20aにおけるサブ画素PEa又は画素PEに対応する領域に形成されている。
【0054】
微小光学素子25bは、散乱部材22の近傍に配置されるので、虚像表示装置100Aを薄型にすることが容易になる。また、マイクロレンズを設けることにより、拡散角がより大きくなり、眼EYに入射するときのアイリング径を大きくすることができる。
【0055】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、第5実施形態の虚像表示装置、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、第1実施形態の虚像表示装置と共通する部分については説明を省略する。
【0056】
図16Aに示すように、本実施形態の複合表示部材20の各部材21,22,23は、同一基板SSに設けられている。具体的には、基板SSの一方の主面である第1面SSa上に、外界側から順に、遮光部材21と、散乱部材22と、パターン偏光部材23とが配置されている。各部材21,22,23は、密着した層構造を有する。ここで、散乱部材22は、共通の基板SSに間接的に支持されるので、支持用の平板を省略した散乱領域22eとして組み込まれ、パターン偏光部材23は、第1偏光領域23b及び第2偏光領域23cとして組み込まれている。基板SSの表面に散乱部材22の散乱領域22eを設けることにより、基板SSへの散乱光の侵入を抑制し、ゴーストの発生を防ぐことができる。また、各部材21,22,23を一体化することにより、装置の薄型化及び軽量化を図ることができる。なお、パターン偏光部材23については、不図示の支持体を設けてもよい。
【0057】
基板SSは、例えば、光透過性を有するガラスやプラスチックで形成されている。複合表示部材20において、基板SS上に、蒸着及びエッチングにより遮光層21bを形成し、遮光層21b上に散乱領域22eを形成する。散乱領域22eは、例えば、スピンコート後にエッチングを行い、部分的に散乱構造を形成することで得られる。
【0058】
投影光MLeとして投射光学系10から投影される映像光ML又はサブ画素スポットSPは、離散的に形成されたパターン偏光部材23の第1偏光領域23bを経て散乱部材22の散乱領域22eに入射する。散乱領域22eに入射した映像光MLfは散乱され、再度第1偏光領域23bを通過し、第1偏光方向の横偏光が偏光分離レンズ素子50に入射する。なお、第2偏光部材70又は第2偏光領域23cは、偏光の制御に影響を与えない範囲で第1偏光部材60又は第1偏光領域23bの位置より顔側に多少離間して配置されていてもよい。
【0059】
なお、
図16Bに示すように、複合表示部材20の各部材を第3実施形態と同様の配置としてもよい。この場合、複合表示部材20の遮光部材21、散乱部材22、及びパターン偏光部材23は、基板SSの顔側の第1面SSa上に形成され、外光偏光部材24は、基板SSの外界側の第2面SSb上に形成される。
【0060】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、第6実施形態の虚像表示装置、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、第1実施形態の虚像表示装置と共通する部分については説明を省略する。
【0061】
図17に示すように、本実施形態では、散乱部材22において、散乱領域22eにマイクロミラーMMが設けられている。マイクロミラーMMは、映像光MLを眼EYの方向に導く部材である。マイクロミラーMMの傾斜角度は、画素PEの位置によって異なっている。マイクロミラーMMは、平滑面であってもよいし、散乱構造を有していてもよい。
【0062】
図18に、本実施形態の複合表示部材20に関して、各部材21,22,23を一体化して配置した具体例を示す。
図18に示す複合表示部材20は、
図16Bに示す複合表示部材20に似た構造を有し、基板SSの顔側の第1面SSa上に、散乱部材22、遮光部材21、及びパターン偏光部材23が形成され、基板SS外界側の第2面SSb上に、外光偏光部材24が形成される。
図18では、散乱部材22の一部であるマイクロミラーMMの表面に遮光層21bが形成され、その上に散乱部材22又は散乱領域22eが設けられている。
【0063】
〔変形例その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0064】
上記実施形態において、液晶レンズ51は、電極を要素とするものに限らず、フレネルレンズ状の第1基板と平板状の第2基板との間に液晶を充填し、液晶の配向をフレネルレンズ面に揃えることで屈折力を持たせたものであってもよい。
【0065】
液晶レンズ51は、円形に限らず特定方向に若干長い長円状の電極を有するものであってもよい。
【0066】
偏光分離レンズ素子50としての液晶レンズ51は、リング状の輪帯部分RAを含むものに限らない。偏光分離レンズ素子50として、特定の偏光に対してレンズ作用を持つ様々な構造を採用することができる。
【0067】
以上では、HMD200が頭部に装着されて使用されることを前提としたが、上記虚像表示装置100A,100Bは、頭部に装着せず双眼鏡のようにのぞき込むハンドヘルドディスプレイとしても用いることができる。つまり、本発明において、ヘッドマウントディスプレイには、ハンドヘルドディスプレイも含まれる。
【0068】
上記実施形態において、画素PE又はサブ画素PEaの配置や大きさは、1画素に十分なシースルー領域が存在するように、適宜変更することができる。
【0069】
具体的な態様における虚像表示装置は、画素表示領域として映像光を散乱させる散乱領域を有する散乱部材と、散乱領域に映像光を照射する投射光学系と、散乱部材の外界側に配置され、散乱領域への外界光の入射を抑制する遮光部材と、散乱部材の顔側に配置され、散乱領域に対応して設けられ散乱部材で散乱された映像光を第1偏光方向に制限する第1偏光領域を有する第1偏光部材と、第1偏光部材の位置から外界側に配置され、外界光を第1偏光方向と異なる第2偏光方向に制限する第2偏光領域を有する第2偏光部材と、第1偏光部材の顔側に配置され、映像光の偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子と、を備える。
【0070】
上記虚像表示装置では、外界から遮光部材を通過した透過光が、第2偏光部材を経て第2偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子を屈折力の作用を受けずに通過し、散乱領域から射出された映像光が、第1偏光部材を経て第1偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子を屈折力の作用を受けて通過し虚像を形成する。この場合、散乱部材や偏光分離レンズ素子を眼の近くに配置して散乱部材の散乱領域に形成された画像に対応する虚像を形成することができ、散乱部材や偏光分離レンズ素子を大きく離すことなく画角を広くすることができる。
【0071】
具体的な態様における虚像表示装置において、散乱部材は、散乱領域と、外界を視認可能にする光透過領域とを有する。
【0072】
具体的な態様における虚像表示装置において、第1偏光領域は、散乱領域に対応して離散的に設けられる。
【0073】
具体的な態様における虚像表示装置において、遮光部材は、外界光の入射を抑制する遮光層を有し、遮光層は、散乱領域に対応する大きさを有する。これにより、外界光が散乱領域に入射することをより抑制することができる。
【0074】
具体的な態様における虚像表示装置において、第1偏光部材と前記第2偏光部材とは、同一基板に配置され、第2偏光領域は、第1偏光領域の周囲に配置される。これにより、第1偏光領域と第2偏光領域との平面的な区分が可能になり、映像光と外界光との干渉を抑えつつ、部品点数を減らすことができる。
【0075】
具体的な態様における虚像表示装置において、偏光分離レンズ素子は、複数の画素を包括的に結像させる偏光分離液晶レンズである。単独レンズとすることにより、アイボックスを広くすることが容易になる。
【0076】
具体的な態様における虚像表示装置において、投射光学系は、画像を表示する画像表示パネルを有し、画像表示パネルの発光領域からの射出光を映像光として画素表示領域に投影する。つまり、画像表示パネル上の画像が対応する散乱領域に投影され、散乱部材上に表示すべき画像が形成される。
【0077】
具体的な態様における虚像表示装置において、投射光学系は、走査のために駆動される微小ミラーにより、レーザー光源からの変調光を映像光として画素表示領域に投影する。つまり、変調光が走査により散乱部材上を移動する軌跡が表示すべき画像に相当する。
【0078】
具体的な態様における虚像表示装置において、遮光部材と、散乱部材と、第1偏光部材とが一体化されている。これにより、装置の薄型化及び軽量化を図ることができる。
【0079】
具体的な態様における虚像表示装置において、散乱部材は、赤色用の散乱領域と、緑色用の散乱領域と、青色用の散乱領域とを有し、散乱領域が配置されない領域に外界光を透過させる光透過領域を有する。
【0080】
具体的な態様における頭部装着型表示装置は、上述した虚像表示装置を備える第1装置と、上述した虚像表示装置を備える第2装置と、第1装置と第2装置とを支持し、頭部への装着を可能にするテンプルを含む支持装置とを備える。
【符号の説明】
【0081】
1A…第1装置、1B…第2装置、10…投射光学系、11……画像表示パネル、11a…表示面、11m,11r,11g,11b…発光領域、11s…繰返区画、11t…画素区画、12…結像光学系、12a…投射レンズ、12b…反射ミラー、13…レーザー光源、14…微小ミラー、20…複合表示部材、20a…繰返単位、21…遮光部材、21b…遮光層、22…散乱部材、22p…画素表示領域、22e,22r,22g,22b…散乱領域、22s…繰返区画、22t…画素区画、23…パターン偏光部材、23b…第1偏光領域、23c…第2偏光領域、24…外光偏光部材、24c…第2偏光領域、25…光学アレイ、25b…微小光学素子、50…偏光分離レンズ素子、51…液晶レンズ、60…第1偏光部材、70…第2偏光部材、70b…偏光膜、88…表示制御装置、90…ユーザー端末、100A…第1虚像表示装置、100B…第2虚像表示装置、100C…テンプル、102…駆動装置、102a…第1表示駆動部、102b…第2表示駆動部、103a…第1表示光学系、103b…第2表示光学系、104…シェード、104a,104b…光透過カバー、106…支持装置、200…頭部装着型表示装置、201 …双眼型表示装置、A1,A2,A3…光透過領域、AX…光軸、DS…散乱面、EY…眼、ML…映像光、MM…マイクロミラー、OL…外界光、P1…第1偏光、P2…第2偏光、PA…画素表示領域、PE…画素、PEa…サブ画素、SP…サブ画素スポット、SS…基板、TX…シースルー画像表示画素、US…装着者、X1…外光視認画素、X2…映像光射出画素