(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102492
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】虚像表示装置及び頭部装着型表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240724BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240724BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240724BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240724BHJP
G02C 11/00 20060101ALN20240724BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02F1/13 505
G02B5/30
G02B5/22
G02C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006397
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】武田 高司
【テーマコード(参考)】
2H006
2H088
2H148
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H088EA10
2H088EA42
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA06
2H088HA08
2H088HA14
2H088HA18
2H088HA21
2H088HA28
2H088HA30
2H088JA05
2H088JA09
2H088JA10
2H088MA06
2H148CA01
2H148CA14
2H148CA19
2H148CA24
2H149AA17
2H149AB04
2H149BA02
2H149EA10
2H149FC06
2H149FC08
2H149FC09
2H149FC10
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA43
2H199CA63
2H199CA66
2H199CA70
2H199CA74
2H199CA85
2H199CA86
(57)【要約】
【課題】光学系全体が大型化してしまうことを回避しつつ画角を広くする。
【解決手段】虚像表示装置100A,100Bは、液晶画素PEと、光透過性を有する光透過領域A2とを有する光変調素子24と、光変調素子24の外界側に配置され、液晶画素PEへの外界光OLの入射を抑制する遮光部材21と、遮光部材21と光変調素子24との間に配置され、液晶画素PEに対応する位置で照明光を液晶画素PEに向けて射出する導光部材と、導光部材と光変調素子24との間に配置され、液晶画素PEと光透過領域A2とに入射する光を第1偏光方向の偏光に制限する第1偏光板23と、光変調素子24の顔側に配置され、液晶画素PEに対応して設けられ液晶画素PEから射出される映像光MLを第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光に制限する偏光領域25pとしての偏光膜25bを有する第2偏光板25と、第2偏光板25の顔側に配置され、映像光MLの偏光に対して機能する屈折力を有する偏光分離レンズ素子50とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶画素と、光透過性を有する光透過領域とを有する光変調素子と、
前記光変調素子の外界側に配置され、前記液晶画素への外界光の入射を抑制する遮光部材と、
前記遮光部材と前記光変調素子との間に配置され、前記液晶画素に対応する位置で照明光を前記液晶画素に向けて射出する導光部材と、
前記導光部材と前記光変調素子との間に配置され、前記液晶画素と前記光透過領域とに入射する光を第1偏光方向の偏光に制限する第1偏光板と、
前記光変調素子の顔側に配置され、前記液晶画素に対応して設けられ前記液晶画素から射出される前記映像光を前記第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光に制限する偏光領域を有する第2偏光板と、
前記第2偏光板の顔側に配置され、前記映像光の偏光に対して機能する屈折力を有する偏光分離レンズ素子と
を備える、虚像表示装置。
【請求項2】
前記第2偏光板の偏光領域は、前記液晶画素に対応して離散的に設けられる、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記導光部材に3色の光を時分割で供給する光源装置をさらに備える、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記導光部材は、平行平板状の部材であり、前記液晶画素に対応して離散的に設けられて前記3色の光を前記液晶画素に射出する光抽出部を有する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記光抽出部は、光散乱層、ナノ構造、及び微小レンズのいずれかである、請求項3に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記遮光部材は、前記外界光の入射を抑制する遮光層を有し、
前記遮光層は、前記光抽出部に対応する大きさを有する、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記偏光分離レンズ素子は、複数の前記液晶画素を包括的に結像させる偏光分離液晶レンズである、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記遮光部材と前記導光部材と前記第1偏光板と前記光変調素子と前記第2偏光板とが、板状の部材として一体化されて複合表示部材を構成し、
前記複合表示部材において、前記導光部材が、前記遮光部材と前記第1偏光板とから離間して配置された一対の平面を有する平行平板状の部材であり、
前記偏光分離レンズ素子が、前記複合表示部材から離間して配置されている、請求項7に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記第2偏光板と前記偏光分離レンズ素子との間において、前記第2偏光板の近傍に配置され、前記液晶画素に対応して離散的に設けられて前記液晶画素から射出される前記映像光の発散角を調整するマイクロレンズを有するレンズアレイをさらに備える、請求項8に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の虚像表示装置を備える第1装置と、
請求項1~9のいずれか一項に記載の虚像表示装置を備える第2装置と、
前記第1装置と前記第2装置とを支持し、頭部への装着を可能にするテンプルを含む支持装置と
を備える、頭部装着型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の観察を可能にする虚像表示装置及び頭部装着型表示装置に関し、特に外界像を視認可能にするシースルー型の虚像表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
外界を視認可能にするシースルー型の虚像表示装置として、画像表示領域と、この画像表示領域を囲むように形成された透明表示領域とを有する液晶パネルと、光源から端部に入射されたバックライト光を導光する導光板とを備え、導光板が液晶パネルの画像表示領域にバックライト光を照射する発光領域と環境光を透過させる光透過領域とを備えるものが公知となっている(特許文献1)。この表示装置は、導光板の光透過領域及び液晶パネルの透明表示領域から環境光が観察者に到達するとともに、画像表示領域にバックライト光を照射しない期間に環境光が導光板の発光領域と液晶パネルの画像表示領域とを透過して観察者に到達するように構成されている。このような構成により、映像光と環境光とが重ね合わされたシースルー表示が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、導光板の発光領域にドットの形成、散乱材の塗布等の加工がなされており、液晶パネルの画像表示領域を通過する環境光が、加工がなされた発光領域を通過することになるので、画像表示領域に対応する視野の中央付近でのシースルー透過率が低下する。視野の中央付近において高いシースルー透過率のシースルー表示を実現するためには、別途、シースルー透過率の高い光学系等が必要となり、大型化に繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における虚像表示装置は、液晶画素と、光透過性を有する光透過領域とを有する光変調素子と、光変調素子の外界側に配置され、液晶画素への外界光の入射を抑制する遮光部材と、遮光部材と光変調素子との間に配置され、液晶画素に対応する位置で照明光を液晶画素に向けて射出する導光部材と、導光部材と光変調素子との間に配置され、液晶画素と光透過領域とに入射する光を第1偏光方向の偏光に制限する第1偏光板と、光変調素子の顔側に配置され、液晶画素に対応して設けられ液晶画素から射出される映像光を第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光に制限する偏光領域を有する第2偏光板と、第2偏光板の顔側に配置され、映像光の偏光に対して選択的に作用する屈折力を有する偏光分離レンズ素子とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の虚像表示装置の装着状態を説明する外観斜視図である。
【
図2】表示光学系の光学的構造を説明する概念的な斜視図である。
【
図3】複合表示部材の繰返単位を説明する概念的な拡大斜視図である。
【
図4】導光部材の光抽出部を説明する概念的な拡大斜視図である。
【
図5】光変調素子の具体的な構造の一例を説明する概念的な斜視図である。
【
図6】偏光板、光変調素子、導光部材、及び遮光部材を透視した状態を示す。
【
図7】偏光分離レンズ素子の構造及び機能を説明する概念的な斜視図である。
【
図8】第1実施形態の虚像表示装置の動作を説明する概念図である。
【
図9】第2実施形態の虚像表示装置を説明する外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔第1実施形態〕
以下、
図1~8を参照して、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置等について説明する。
【0008】
図1は、ヘッドマウントディスプレイ、すなわち頭部装着型表示装置200の装着状態を説明する斜視図である。頭部装着型表示装置(以下、HMDとも称する。)200は、双眼型表示装置201であり、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。
図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、HMD200を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0009】
HMD200は、右眼用の第1虚像表示装置100Aと、左眼用の第2虚像表示装置100Bと、虚像表示装置100A,100Bを支持する一対のテンプル100Cと、情報端末であるユーザー端末90とを備える。第1虚像表示装置100Aは、第1装置1Aであり、上部に配置される第1表示駆動部102aと、眼前を覆う第1表示光学系103aと、第1表示光学系103aを外界側又は前方側において覆う光透過カバー104aとで構成される。第2虚像表示装置100Bは、第2装置1Bであり、上部に配置される第2表示駆動部102bと、眼前を覆う第2表示光学系103bと、第2表示光学系103bを外界側又は前方側において覆う光透過カバー104bとで構成される。第1装置1Aである第1虚像表示装置100Aと、第2装置1Bである第2虚像表示装置100Bとを組み合わせたHMD200は、広義の虚像表示装置でもある。一対のテンプル100Cは、装着者USの頭部に装着される装着部材又は支持装置106であり、外観上一体化されている表示駆動部102a,102bを介して一対の表示光学系103a,103bの上端側と、一対の光透過カバー104a,104bの上端側とを支持している。一対の表示駆動部102a,102bを組み合わせたものを駆動装置102と呼ぶ。一対の光透過カバー104a,104bを組み合わせたものをシェード104と呼ぶ。
【0010】
図2は、第1表示光学系103aの構造を説明する斜視図である。第1表示光学系103aは、照明光として3色の光を時分割で発生する光源装置10と、2次元的な画像を形成し映像光を射出する板状の複合表示部材20と、映像光に対してレンズとして機能する偏光分離レンズ素子50とを備える。光源装置10は、
図1に示す第1表示駆動部102aの一部であり、後述する複合表示部材20の導光部材22に対して上端辺から照明光を供給するように、導光部材22の上辺の上方近傍に配置されている。複合表示部材20と偏光分離レンズ素子50とは、光軸AX方向に離間して配置されている。第1表示光学系103aにおいて、眼EYと偏光分離レンズ素子50との間の距離は、例えば10mm~20mm程度である。また、複合表示部材20と偏光分離レンズ素子50との間の距離は、例えば3mm~25mm程度である。
【0011】
複合表示部材20は、光軸AXに垂直なXY面に沿って延びる板状の部材であり、遮光部材21と導光部材22と第1偏光板23と光変調素子24と第2偏光板25とを積層した全体として板状の部材であり、不図示の枠体によって一体化された構造を有する。ここで、遮光部材21と導光部材22と第1偏光板23と光変調素子24と第2偏光板25とは、所定の間隔を設けて近傍に配置された状態で接合され、固定されている。これにより、装置を比較的薄くすることができる。なお、第1偏光板23と光変調素子24と第2偏光板25とは、密着してもよい。複合表示部材20は、XY面に沿ってマトリクス状に配列された複数の繰返単位20aで構成され、繰返単位20aは、光変調素子24において、画像を形成する単位である液晶画素PEを含む。複合表示部材20において、導光部材22は、一対の平面22i,22jを有する平行平板状の部材であり、遮光部材21と第1偏光板23とに挟まれてこれらの近傍に配置されつつも、その機能を発揮する観点で遮光部材21と第1偏光板23とから離間して配置されている。具体的には、導光部材22の一対の平面22i,22jは、対向する遮光部材21や第1偏光板23の表面から、数μm以上50μm以下離れて配置されている。これにより、導光部材22における照明光の伝搬を確保しつつ、装置の薄型化及び軽量化を図ることができる。
【0012】
偏光分離レンズ素子50は、映像光MLに対してレンズとして機能する。偏光分離レンズ素子5050は、複合表示部材20における第2偏光板25の顔側つまり-Z側に配置されて眼前を覆う。偏光分離レンズ素子50は、光変調素子24を構成する複数の液晶画素PEを包括的に結像させる単独レンズである。つまり、偏光分離レンズ素子50は、各液晶画素PEに対応する光をまとめて結像させる。偏光分離レンズ素子50を単独レンズとすることにより、アイボックスを広くすることが容易になる。偏光分離レンズ素子50は、XY面に沿って延びる板状の部材である。偏光分離レンズ素子50は、具体的には液晶レンズ51であり、屈折率の状態が異なる複数の円形の輪帯部分RAを含む。一群の輪帯部分RAは、光軸AXの周りに対称的に同心で配置されている。一群の輪帯部分RAのうち、光軸AXから離れた周辺の輪帯部分RAは、光軸AXが通る中央の輪帯部分RAよりも、光軸AXを中心とする径方向の幅が狭くなっている。つまり、輪帯部分RAの径方向の幅は、周辺にあるものほど狭くなっている。
【0013】
偏光分離レンズ素子50は、垂直方向又は鉛直方向の偏光に作用し、水平方向の偏光には作用しない。垂直方向の偏光に作用する偏光分離レンズ素子50は、光変調素子24の位置に焦点があり、或いはそれに近い屈折力を有するため、映像光MLは眼EYに略平行になって射出する。これにより、眼EYの網膜上に画像と外界像が重なり、AR表示することができる。
【0014】
第2表示光学系103bは、第1表示光学系103aと光学的に同一であり、或いは第1表示光学系103aを左右反転させたものであり、詳細な説明を省略する。
【0015】
図3に示すように、遮光部材21は、光透過性を有する平板21a上に四角形の遮光層21bを設けたものである。図示を省略するが、全体の遮光部材21には、多数の遮光層21bが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、遮光部材21を構成する全遮光層21bは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。各遮光層21bは、各繰返単位20aにおける画素に対応する領域(具体的には光変調素子24に液晶画素PEが形成された領域)に形成されている。遮光部材21のうち遮光層21bが設けられていない光透過領域A1は、外界光OLを透過させるが、遮光層21bは、外界光OLを遮断する。
【0016】
遮光層21bは、吸光性又は反射性を有する塗料その他の物質で形成され、例えばインクジェット方式で目的の個所に塗布することができる。遮光層21bは、平板21a上において遮光層21bを形成しない位置に事前に離型剤からなる離型パターンを記録し、吸光物質のスプレーを全体に塗布し、離型パターンの箇所で吸光物質を除去し、残った吸光物質層からなるものであってもよい。遮光層21bは、光吸収作用又は光反射作用を有するものであれば、黒以外の色の塗料を用いて形成されてもよい。さらに、遮光層21bは、フォトレジスト技術等を用いて平板21a上において遮光層21bを形成すべき位置に金属のような反射材料のパターンを形成したミラーとすることができる。遮光層21bは、フォトレジスト技術等を用いて形成した金属パターンを酸化して吸収性を高めたものであってもよい。遮光層21bがミラーである場合、後述する導光部材22の光抽出部22dから外界側に向かう照明光ILを反射することができ、光変調素子24に向かうバックライト光BLとして利用することができる。なお、遮光層21bは、平板21aの顔側に形成されるものに限らず、平板21aの外界側に形成されてもよい。
【0017】
導光部材22は、光透過性を有する平板22a上に例えば光抽出部22dを設けたものである。光抽出部22dは、平行平板状の導光部材22による全反射等を利用した照明光ILの伝搬を乱すことによって、必要な個所で照明光ILを効率よく取り出すことができる。図示を省略するが、全体の導光部材22には、多数の光抽出部22dが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、導光部材22を構成する全光抽出部22dは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。
【0018】
光抽出部22dは、導光部材22を構成する一対の平面22i,22jのうち例えば光変調素子24側の平面22jに形成された光散乱層E1であるが、かかる光散乱層E1をナノ構造E2又は微小レンズE3に置き換えることができる。光抽出部22dによって平面22i,22jで反射されつつ導光部材22を伝搬する照明光ILの全反射条件が壊され、光抽出部22dから第1偏光板23に向けてバックライト光BLが漏れ出す。これにより、導光部材22は、照明光ILを後述する光変調素子24の液晶画素PEに向けて射出することができる。具体的には、光抽出部22dが光散乱層E1である場合、導光部材22を伝搬する照明光ILが光散乱層E1で散乱され、照明光ILの伝搬方向が平面22jの外部に向けてランダムに分散し、照明光ILが全体として-Z方向に射出される。光抽出部22dがナノ構造E2である場合、導光部材22を伝搬する照明光ILがナノ構造E2での屈折や干渉によって偏向され、照明光ILが全体として-Z方向に射出される。この場合、バックライト光BLの射出方向の制御が容易になる。光抽出部22dが微小レンズE3である場合、導光部材22を伝搬する照明光ILが微小レンズE3で屈折され、微小レンズE3の面形状や傾きの調整によって、照明光ILを全体として-Z方向に射出させることができる。つまり、光抽出部22dによって、導光部材22を伝搬する照明光ILが導光部材22から外部に取り出される。導光部材22において、光抽出部22dを設ける箇所を適宜設定すれば、導光部材22の必要な個所で照明光ILを効率よく取り出すことができる。光抽出部22dが光散乱層である場合、平面22jの表面にマスクを形成し、その開口に物理的或いは化学的な処理を施して微細散乱構造を形成し、最後にマスクを除去する。光抽出部22dがナノ構造である場合、平面22jの表面の適所にナノインプリント等を利用して散乱構造体を形成する。光抽出部22dが微小レンズである場合、導光部材22の成形型に予めレンズ形状の転写面を加工しておく。
【0019】
一方で、導光部材22は、外部から平面22iに入射した光を平面22j側に透過させる。つまり、導光部材22は、遮光部材21によって遮蔽されずに到来した外界光OLを少なくとも部分的に通過させる光透過領域A2を備えている。導光部材22のうちの光抽出部22dが設けられている部分以外の平板部分が、光透過領域A2として使用される。
【0020】
導光部材22に付帯する光源装置10は、バックライト光用の照明光ILとして、3色の光を時分割で発生し、3色の光を導光部材22に供給する。3色の照明光ILは、例えば、表示画像に対して求められる色域内の任意の色が表現可能であり、重ね合わされたときに白色光となるように選択される。光源装置10は、具体例において、
図2に概念的に示すように、赤色の光を発生するR発光素子11rと、緑色の光を発生するG発光素子11gと、青色の光を発生するB発光素子11bとを備えている。R発光素子11r、G発光素子11g、及びB発光素子11bは、自発光素子、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、無機材料で形成されたマイクロ発光ダイオード(μLED)のような発光ダイオードであってもよい。R発光素子11r、G発光素子11g、及びB発光素子11bは、単独で組み込まれるものに限らない。つまり、光源装置10は、1つ又は複数のR発光素子11rと、1つ又は複数のG発光素子11gと、1つ又は複数のB発光素子11bとを組み合わせたものである。光源装置10と導光部材22との間には、照明光ILの拡散を支援するためビームスプリッターを含む合分波器を組み込むことができる。
【0021】
図4に示すように、導光部材22から射出されたバックライト光BLは、全体として、平面22jに直交する方向、つまり光軸AXに平行な-Z方向を中心とする角度方向に射出される。各光抽出部22dは、各繰返単位20aにおいて光変調素子24の液晶画素PEに対応する領域に離散的に形成されており、第1偏光板23を介して対応する液晶画素PEに向けてバックライト光BLを照射する。バックライト光BLは、
図2に示すR発光素子22rからの照明光成分に相当する赤色光BLrと、G発光素子11gからの照明光成分に相当する緑色光BLgと、B発光素子11bからの照明光成分に相当する青色光BLbとで構成され、赤色光BLrと緑色光BLgと青色光BLbとが切り換えられつつ出力される。つまり、光抽出部22dは、3色の光である赤色光BLr、緑色光BLg、青色光BLbを液晶画素PEに射出する。導光部材22の光抽出部22dのサイズは、光変調素子24の液晶画素PEのサイズと同等であるか、又は、液晶画素PEのサイズよりも僅かに小さい。光抽出部22dのサイズが液晶画素PEのサイズよりも小さい場合、光抽出部22dから射出されるバックライト光BLが拡散するものであっても、バックライト光BLを全体的に液晶画素PEに入射させることができる。なお、光抽出部22dは、全てが離散的に設けられる場合に限らず、映像光MLの結像に大きな影響が生じない程度に光抽出部22dの一部がつながったものであってもよい。
【0022】
図3等に示す光源装置10と導光部材22とは、例えば下記のように動作することで、3原色の光、即ち、赤色、緑色、青色の光を時分割で発生する。赤色の光をバックライト光BLとして発生する期間(以下、「赤発光期間」ということがある)では、
図2に示すR発光素子11rが点灯し、赤色光BLrによって光変調素子24の各液晶画素PEを照明する。緑色の光をバックライト光BLとして発生する期間(以下、「緑発光期間」ということがある)では、G発光素子11gが点灯し、緑色光BLgによって光変調素子24の各液晶画素PEを照明する。青色の光をバックライト光BLとして発生する期間(以下、「青発光期間」ということがある)では、B発光素子11bが点灯し、青色光BLbによって光変調素子24の各液晶画素PEを照明する。
【0023】
赤発光期間、緑発光期間及び青発光期間に加えて、R発光素子11r、G発光素子11g、及びB発光素子11bの全てが発光する全発光期間が設けられてもよい。全発光期間を設けることにより、表示画像の輝度を全体的に高めることができる。
【0024】
図3に戻って、複合表示部材20の第1偏光板23は、導光部材22の顔側に配置されており、透過光を所定の偏光方向、具体的には第1偏光方向の偏光である横偏光に制限し、第1偏光方向に直交する第2偏光方向の偏光である縦偏光を遮断するように構成されている。図示された実施形態では、左右の±X方向に平行な偏光面を有する横偏光が第1偏光P1であり、上下の±Y方向に平行な偏光面を有する縦偏光が第2偏光P2である。第1偏光板23の作用により、遮光部材21の光透過領域A1等を通過した外界光OL及び導光部材22から射出されたバックライト光BLのうち、縦偏光である第2偏光P2は第1偏光板23で遮断され、横偏光である第1偏光P1は第1偏光板23を通過する。第1偏光板23を通過した横偏光すなわち第1偏光P1は、後述する光変調素子24の液晶画素PEと光透過領域A3とに入射する。第1偏光板23は、例えば光透過性を有する平板23a上に吸収型の偏光膜23bを貼り付けたものである。偏光膜23bは、例えばヨウ素吸着させたポリビニルアルコール(PVA)を特定方向に延伸した樹脂シートであってもよい。図示の例では、偏光膜23bは、左右の±X方向に平行な偏光面を有する横偏光すなわち第1偏光P1のみを透過させ、上下の±Y方向に平行な偏光面を有する縦偏光すなわち第2偏光P2を吸収する。第1偏光板23又は偏光膜23bが画像の形成に利用されない縦偏光すなわち第2偏光P2を吸収することで、迷光の発生を抑制することができる。
【0025】
複合表示部材20において、光変調素子24が第1偏光板23の顔側に配置され、第2偏光板25が光変調素子24の顔側に配置されている。
【0026】
光変調素子24と第2偏光板25とは、表示画像に対応する画像データに応じて液晶画素PEに入射したバックライト光BLを変調して映像光MLを生成するように構成されている。詳細には、光変調素子24の各液晶画素PEは、画像データに示されている各液晶画素PEの階調に対応する駆動電圧で駆動され、バックライト光BLの偏光面を駆動電圧に対応する角度だけ回転して映像光MLを射出する。液晶画素PEから射出される映像光MLの縦偏光成分が、信号成分すなわち液晶画素PEの階調に対応した強度を有している。光変調素子24は、光透過領域A3において外界光OLの偏光面に作用することなく外界光OLを透過させる。第2偏光板25は、光透過性を有する平板25a上に四角形の偏光領域25pを有する。偏光領域25pは、液晶画素PEに対応して離散的に設けられて液晶画素PEから射出される映像光MLを第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光に制限する偏光膜25bである。つまり、偏光領域25pは、透過光を所定の偏光方向、具体的には第2偏光方向の偏光である第2偏光P2に制限し、第2偏光方向に直交する第1偏光方向の偏光である第1偏光P1を遮断するように構成されている。
図3の実施形態では、映像光MLの横偏光成分が除去される一方、外界光OLと、映像光MLの信号成分である縦偏光成分とが第2偏光板25を透過する。第2偏光板25は、第1偏光板23と異なり、パターニングされた偏光膜25bを有するので、例えばワイヤーグリッドタイプの偏光板を平板25aの片面に一様に形成し、マスクによって偏光膜25bの形成予定箇所を保護しつつ、その周囲のワイヤーグリッドパターンをエッチングによって除去する。最後にマスクを除去することで、ワイヤーグリッドタイプの偏光領域からなる偏光膜25bを所望のサイズ及びパターンで平板25a上に形成することができる。
図3に図示されている例では、偏光膜25bは、上下の±Y方向に平行な偏光面を有する縦偏光すなわち第2偏光P2のみを透過させ、左右の±X方向に平行な偏光面を有する横偏光すなわち第1偏光P1を反射又は吸収する。
【0027】
第2偏光板25は、光変調素子24の光透過領域A3を通過した外界光OLを少なくとも部分的に通過させる光透過領域A4を備えている。第2偏光板25のうちの偏光膜25bが設けられている偏光領域25p以外の平板部分が、光透過領域A4として使用される。
【0028】
カラー表示を実現するために、光変調素子24の各液晶画素PEは、導光部材22からの3原色のバックライト光BLの時分割での発生に同期して駆動される。バックライト光BLとして赤色光BLrが発生される赤発光期間では、赤色の階調に対応する駆動電圧で液晶画素PEが駆動される。同様に、バックライト光BLとして緑色光BLgが発生される緑発光期間では、緑色の階調に対応する駆動電圧で液晶画素PEが駆動され、バックライト光BLとして青色光BLbが発生される青発光期間では、青色の階調に対応する駆動電圧で液晶画素PEが駆動される。導光部材22が3原色の光をバックライト光BLとして時分割で発生して液晶画素PEに照射するので、カラー表示を行う場合でも光変調素子24の解像度、すなわち液晶画素PEの密度が低いことが許容される。これは、光変調素子24における光透過領域A3の割合を増加させ、シースルー透過率を向上することを可能にする。
【0029】
図5は、光変調素子24の具体的な構造の一例を説明する概念的な斜視図である。
図5は、光変調素子24を構成する1つの繰返単位20aのうち、特に液晶画素PEに対応する構造部分を図示している。図示の例では、光変調素子24が、アクティブマトリクス型の液晶パネルとして構成されている。光変調素子24は、第1基板41と、第1基板41に対向するように配置された第2基板42とを備えている。第1基板41と第2基板42とは、光透過性を有するガラスやプラスチックで形成されている。第1基板41と第2基板42の間の空間は、液晶49で満たされている。液晶49としては、例えば、TN液晶、IPS(in plane switching)液晶、VA(Vertical Alignment)液晶が使用され得る。第1基板41上には、ゲート線とも呼ばれることもある走査線43と、ソース線と呼ばれることもある信号線44と、スイッチ素子である駆動素子45と、画素電極46とが形成されている。図示された実施形態では、走査線43がX軸に平行に延伸するように設けられ、信号線44がY軸に平行に延伸するように設けられている。駆動素子45は、薄膜トランジスター(TFT)を備えており、例えば、走査線43を高電位にプルアップすることにより走査線43が選択されると、走査線43と画素電極46とを電気的に接続するスイッチ素子として構成されている。第2基板42には、共通電圧に維持される対向電極47が形成される。画素電極46と、対向電極47と、これらの間にある液晶49とが、繰返単位20aの液晶画素PEを構成している。図示を省略しているが、画素電極46と対向電極47との間には、配向膜が配置され、液晶49の初期配向状態を調整している。動作の一例について説明すると、液晶画素PEは、画像データに示されている液晶画素PEの階調に対応する駆動電圧が書き込まれると、液晶画素PEに入射されたバックライト光の偏光面を上記駆動電圧に対応する角度だけ回転して映像光MLを射出するように構成されている。駆動電極の液晶画素PEへの書き込みは、走査線43を選択して駆動素子45をオンにした状態で、不図示のドライバーから信号線44及び駆動素子45を介して画素電極46に駆動電圧を供給することによって行われる。
【0030】
図示の光変調素子24に場合、液晶画素PEは、液晶49で満たされた液晶セルに格納され、この液晶セルの外部には液晶が存在しない構造とされている。このような構造では、液晶画素PEの外部の光透過領域A3において外界光OLが液晶層を通過しないので、液晶49として電圧が印加されなくても偏光面を回転させるものが用いられる場合であっても、光透過領域A3を通過する外界光OLが横偏光に維持される。なお、電圧が印加されないと偏光面を回転させない液晶であれば、液晶セルの外部がかかる液晶で満たされてしても、外界光OLの偏光状態に影響を及ぼさない。
【0031】
図3に関連する説明では、第1偏光板23が横偏光である第1偏光P1の外界光OL及び映像光MLを透過させ、第2偏光板25の偏光膜25bが縦偏光である第2偏光P2の映像光MLを選択的に透過させるとしたが、第1偏光板23は、縦偏光の映像光MLを透過させるものであってもよい。この場合、第2偏光板25の偏光膜25bは、横偏光の映像光MLを選択的に透過させるものとする。光変調素子24については、第1偏光板23や第2偏光板25の偏光面に対応するものが用いられる。後述する液晶レンズ51についても、第1偏光板23及び第2偏光板25の偏光膜25bの偏光方向の変更に伴い、レンズとして機能する偏光方向が、対応するものに変更される。
【0032】
図6は、第2偏光板25側から、光変調素子24を透視し、併せて遮光部材21や導光部材22を透視した状態を重ねて示した図である。この場合、遮光部材21の遮光層21bは、繰返単位20aのうち画素区画22tに対応する液晶画素PEをカバーし、画素区画22t又は液晶画素PEよりも若干外側に広がった領域に形成されているが、画素区画22t又は液晶画素PEと一致する領域に形成されてもよい。導光部材22の光抽出部22dは、画素区画22t又は液晶画素PEよりも若干狭い領域に形成されているが、画素区画22t又は液晶画素PEと略一致する領域に形成されてもよい。遮光部材21の遮光層21bは、光抽出部22d又は液晶画素PEに対応する大きさを有する。具体的には、遮光層21bは、光抽出部22dよりも若干外側に広がった領域に形成されている。第2偏光板25の偏光膜25bは、画素区画22t又は液晶画素PEをカバーし、画素区画22t又は液晶画素PEよりも若干外側に広がった領域に形成されているが、画素区画22t又は液晶画素PEと一致する領域に形成されてもよい。光変調素子24等の大きさは、例えば1インチ程度である。第1表示光学系103aにおいて、画素数は、2K~4K程度である。液晶画素PEの大きさは、例えば10μm角~40μm角程度である。導光部材22の光抽出部22dの大きさは、例えば4μm角~30μm角程度である。シースルー光を確保するため、(光抽出面積)/(画素区画面積)は、例えば0.3~0.8程度となっている。
【0033】
図7は、偏光分離レンズ素子50又は液晶レンズ51の構造や機能を説明する図である。
図10中で、上側α1は、液晶レンズ51の概念的な斜視図であり、下側α2は、液晶レンズ51のリタデーションの分布状態を例示するチャートである。液晶レンズ51は、特定偏光成分に対してレンズの役割をする光学素子である。液晶レンズ51は、映像光MLの偏光に対して選択的に作用する屈折力を有しその屈折力が輪帯部分RAごとに設定されている。液晶レンズ51は、縦偏光と横偏光とが入射した場合において、一方向の偏光(第2偏光P2)に対して屈折率の分布により選択的にレンズとして作用し、他方向の偏光(第1偏光P1)に対して略そのまま透過させて作用を及ぼさない。ここで、一方向の偏光は具体的には鉛直方向に沿った偏光面を有する縦偏光の映像光MLであり、他方向の偏光は具体的には水平方向に沿った偏光面を有する横偏光の外界光OLである。液晶レンズ51は、固定焦点で使用することができるが、可変焦点で使用してもよい。液晶レンズ51の屈折率の分布を全体的に増減させれば、液晶レンズ51の屈折力を増減させることができ、可変焦点で使用することができる。
【0034】
偏光分離レンズ素子50としての液晶レンズ51は、レンズ部材51aと駆動回路51cとを備える。レンズ部材51aは、対向する2つの光透過基板53a,53bと、光透過基板53a,53bの内面側に設けられた2つの電極層54a,54bと、電極層54a,54bに挟まれた液晶層55とを備える。なお、図示を省略しているが、電極層54a,54bと液晶層55との間には、配向膜が配置され、液晶層55の初期配向状態を調整している。第1の電極層54aは、輪帯部分RAにおいて、XY面に沿って同心に配置される多数の電極57を含み、各電極57は、環状の透明電極である。多数の電極57は、互いに離間し、外側に位置する電極57ほど横幅が狭まっている。電極57の横幅は、レンズ部材51aによる屈折作用の精度に影響する。各電極57は、途中経路上では不図示の絶縁層によって絶縁された配線58を介して駆動回路51cに接続されている。第2の電極層54bは、XY面に平行に延びる共通電極であり、光透過基板53bに沿って一様に形成されている。多数の電極57には、異なる印加電圧V1~V7が印可され、複屈折又はリタデーションの分布状態を調整する。液晶レンズ51に凸レンズの効果を持たせる場合、印加電圧V1を印加電圧V7よりも高くし、印加電圧V2~V6を電圧範囲V1~V7内で徐々に変化させた値に設定する。
【0035】
光変調素子24から射出された映像光MLが第2偏光板25を介して液晶レンズ51に入射する場合、つまりY方向に平行な偏光面を有する縦偏光(第2偏光P2)が液晶レンズ51に入射する場合について考える。縦偏光に関しては、周辺部である最も外側に配置される電極57に印可される電圧が高くなってリタデーションが減少し、この領域で屈折率が相対的に低くなるので、例えば遠方の点光源からの光を考えたとき、周辺部の電極57を経て液晶レンズ51を通過した光は、波面が相対的に進む。一方、中央部である最も内側の電極57に印可される電圧が低くなってリタデーションが元に近い状態に維持され、この領域で屈折率が相対的に高くなるので、例えば遠方の点光源からの光を考えたとき、中央部の電極57を経て液晶レンズ51を通過する光は、波面が相対的に遅れる。よって、所定の焦点面FPに設定された像RIから液晶レンズ51に入射する発散状態の映像光ML0は、縦偏光であり、液晶レンズ51を通過することで凸レンズとしての作用を受け、発散角が減少した状態の映像光MLPRとなる。映像光MLPRを逆に辿った仮想的な映像光MLPIは、焦点面FPよりも遠方の虚像位置からのものとなる。液晶レンズ51の焦点距離は、点光源からの光がコリメートされる場合の点光源から液晶レンズ51までの距離である。本実施形態では、焦点距離は、光変調素子24から液晶レンズ51までの距離と略一致する。近似的には、レンズの公式により、焦点面FPから液晶レンズ51までの距離をAとし、液晶レンズ51から像面までの距離をBとし、液晶レンズ51の焦点距離をFとして
1/F=1/A+1/B
なる関係が成り立つ。ここで、焦点面FPから虚像位置までの距離Bは、液晶レンズ51から焦点面FPまでの距離Aの数倍から数10倍の距離に設定される。この距離比は、詳細な説明を省略するが、虚像の拡大率に相当するものとなる。以上において、印加電圧V1~V7の相対的比率を略維持して低電圧とした場合、中心と周辺でリタデーションの差が減少し、液晶レンズ51の正のパワーの絶対値が減少する。つまり、液晶レンズ51に高電圧VHを印可することで、パワーの絶対値を増加させることができ、液晶レンズ51に低電圧VLを印可することで、パワーの絶対値を減少させることができ、駆動回路51cによって液晶レンズ51を外部から調整可能な可変焦点レンズとして機能させることができる。
【0036】
液晶レンズ51を可変焦点レンズとして機能させることにより、焦点距離Fが変化するので、液晶レンズ51から像面位置又は虚像位置までの距離Bを自在に変更することができ、拡大率の調整が可能になる。また、装着者USの視力が近視等で偏っている場合であっても、焦点があった状態で虚像を観察するフォーカス調整が可能になる。つまり、個人の視度能力差(遠視、近視、乱視等)に合わせて像面位置又は虚像位置を微調整することができる。拡大率の調整やフォーカス調整は、装着者USが例えばユーザー端末90を操作することで実現される。つまり、虚像表示装置100A,100Bは、装着者USの操作によって拡大率やフォーカスに関するカスタマイズが可能になっている。
【0037】
液晶レンズ51は、縦偏光の映像光MLに対して結像作用を有するものであり、回転角度を調整することで横偏光の映像光MLに対して結像作用を有するものであり、特定の偏光成分に対してレンズの役割をする液晶レンズということができ、特定の偏光成分に作用してレンズ機能を有する液晶レンズということもできる。液晶レンズ51を眼前に配置することで、液晶レンズ51のサイズに近いアイボックスを確保することができ、アイボックスを大きくでき画像の欠けを生じさせにくくできるだけでなく、小型ながらFOVを大きくした表示光学系103a,103bを実現することができる。さらに、導光部材22、光変調素子24等を含む複合表示部材20と、液晶レンズ51とを組み合わせることにより、小型の光学系で大画面を表示することができる。ここで、大画面の表示とは、例えば2.5m前方に70インチ以上の虚像を形成する場合を意味する。
【0038】
液晶レンズ51は、中心から周辺に向かってリタデーションが徐々に減少するものに限らず、例えば国際公開2009/072670号明細書に開示のようにフレネル型のレンズとすることもできる。液晶レンズ51は、超音波で液晶の配向方向を変更するものであってもよい。
【0039】
なお、遮光部材21等を通過した外界光OLについては、横偏光(第1偏光P1)であり、液晶レンズ51を通過しても、印加電圧V1~V7の値に関わらずリタデーションがXY面内で一様に保たれるので、位相差が与えられず、液晶レンズ51のレンズ作用の影響を受けない。つまり、外界光OLは、複合表示部材20及び偏光分離レンズ素子50によって実質的な作用を受けることなく直進する。
【0040】
図8を参照して、導光部材22の光抽出部22dから射出されたバックライト光BLは、第1偏光板23を介して光変調素子24の液晶画素PEを照明する。光変調素子24の液晶画素PEから射出された映像光MLは、バックライト光BLの偏光面を駆動信号に応じて回転させたものであり、第2偏光板25を経て縦偏光である第2偏光P2のみが射出される。第2偏光板25を通過した映像光MLは、縦偏光である第2偏光P2に対して凸レンズとして機能する偏光分離レンズ素子50の液晶レンズ51を経て虚像を形成する。装着者の眼EYには、光変調素子24及び第2偏光板25によって変調された映像光MLで形成された虚像が観察される。一方、外界光OLは、遮光部材21の光透過領域A1を通過し、導光部材22の平行平板状の光透過領域A2を通過する。その後、外界光OLは、第1偏光板23を通過して偏光方向が横に制限され、光変調素子24の光透過領域A3を通過し、第2偏光板25の光透過領域A4を通過し、最終的に液晶レンズ51に入射する。この際、外界光OLは、遮光部材21、導光部材22、第1偏光板23、光変調素子24、及び第2偏光板25によってレンズ作用を受けず、液晶レンズ51によってもレンズ作用を受けない。装着者の眼EYには、通常の外界像が観察される。つまり、表示光学系103a,103bを介して外界像のシールスルー視が可能になる。
【0041】
図3を参照して、光変調素子24のうち繰返単位20aに対応する部分は、光透過領域A3である外光視認画素X1と、液晶画素PEである映像光射出画素X2とを組み合わせたものとして見ることができ、シースルー画像表示画素TXとも呼ぶ。シースルー画像表示画素TXは、外界光OLが局所的に遮断された箇所で画素を形成するという観点で、背景を透視させる画素ということができる。遮光部材21によって遮られなかった外界光OLは、第1偏光板23によって偏光方向が制限され、光変調素子24のシースルー画像表示画素TXの一部である光透過領域A3を通過し、液晶レンズ51で光線状態を維持して通過する。一方、シースルー画像表示画素TXの一部である画素区画22tから射出された映像光MLは、第2偏光板25によって偏光方向が制限され、液晶レンズ51を集光作用又はレンズ作用を受けつつ通過し、画素区画22tによる表示に対応する虚像に変換される。
【0042】
以上で説明した第1実施形態の虚像表示装置100A,100Bは、液晶画素PEと、光透過性を有する光透過領域A2とを有する光変調素子24と、光変調素子24の外界側に配置され、液晶画素PEへの外界光OLの入射を抑制する遮光部材21と、遮光部材21と光変調素子24との間に配置され、液晶画素PEに対応する位置で照明光を液晶画素PEに向けて射出する導光部材22と、導光部材22と光変調素子24との間に配置され、液晶画素PEと光透過領域A2とに入射する光を第1偏光方向の偏光(具体的には、例えば横偏光である第1偏光P1)に制限する第1偏光板23と、光変調素子24の顔側に配置され、液晶画素PEに対応して設けられ液晶画素PEから射出される映像光MLを第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光(具体的には、例えば縦偏光である第2偏光P2)に制限する偏光領域25pとしての偏光膜25bを有する第2偏光板25と、第2偏光板25の顔側に配置され、映像光MLの偏光(具体的には、例えば縦偏光である第2偏光P2)に対して機能する屈折力を有する偏光分離レンズ素子50とを備える。
【0043】
上記虚像表示装置100A,100Bでは、外界から遮光部材21を通過した透過光つまり外界光OLが、第1偏光板23を経て第1偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子50を屈折力の作用を受けずに通過し、液晶画素PEから射出された映像光MLが、第2偏光板25を経て第2偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子50を屈折力の作用を受けて通過し虚像を形成する。この場合、光変調素子24や偏光分離レンズ素子50を眼の近くに配置して光変調素子24の液晶画素PEに形成された画像に対応する虚像を形成することができ、光変調素子24や偏光分離レンズ素子50を大きく離すことなく画角を広くすることができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、第2実施形態の虚像表示装置、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、第1実施形態の虚像表示装置と共通する部分については説明を省略する。
【0045】
図9に示すように、本実施形態の表示光学系103a,103bでは、複合表示部材20と偏光分離レンズ素子50との間であって、第2偏光板25の近傍に、光学アレイ26が配置されている。光学アレイ26は、光透過性を有する平板26a上に平面視において円形又は四角形の微小光学素子26bを設けたレンズアレイである。微小光学素子26bは、光変調素子24を構成する液晶画素PEからの映像光MLについて個別に発散状態を調節する。微小光学素子26bは、例えばマイクロレンズである。
【0046】
図示を省略するが、全体の光学アレイ(レンズアレイ)26には、多数の微小光学素子26bが、XY面に沿ってマトリクス状に配列されている。つまり、光学アレイ26を構成する全微小光学素子26bは、横のX方向及び縦のY方向に関して周期的に2次元配列されている。各微小光学素子26bは、各繰返単位20aにおける液晶画素PEに対応する領域に形成されている。光学アレイ26のうちの微小光学素子26bが設けられている領域以外の平板部分が、外光用の光透過領域A5として使用される。
【0047】
微小光学素子26bは、光変調素子24の近傍に配置されるので、虚像表示装置100Aを薄型にすることが容易になる。また、マイクロレンズを設けることにより、拡散角がより大きくなり、眼EYに入射するときのアイリング径を大きくすることができる。
【0048】
〔変形例その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0049】
上記実施形態において、液晶レンズ51は、電極を要素とするものに限らず、フレネルレンズ状の第1基板と平板状の第2基板との間に液晶を充填し、液晶の配向をフレネルレンズ面に揃えることで屈折力を持たせたものであってもよい。
【0050】
液晶レンズ51は、円形に限らず特定方向に若干長い長円状の電極を有するものであってもよい。
【0051】
偏光分離レンズ素子50としての液晶レンズ51は、リング状の輪帯部分RAを含むものに限らない。偏光分離レンズ素子50として、特定の偏光に対してレンズ作用を持つ様々な構造を採用することができる。
【0052】
以上では、HMD200が頭部に装着されて使用されることを前提としたが、上記虚像表示装置100A,100Bは、頭部に装着せず双眼鏡のようにのぞき込むハンドヘルドディスプレイとしても用いることができる。つまり、本発明において、ヘッドマウントディスプレイには、ハンドヘルドディスプレイも含まれる。
【0053】
上記実施形態において、液晶画素PEの配置や大きさは、1画素に十分なシースルー領域が存在するように、適宜変更することができる。
【0054】
具体的な態様における虚像表示装置は、液晶画素と、光透過性を有する光透過領域とを有する光変調素子と、光変調素子の外界側に配置され、液晶画素への外界光の入射を抑制する遮光部材と、遮光部材と光変調素子との間に配置され、液晶画素に対応する位置で照明光を液晶画素に向けて射出する導光部材と、導光部材と光変調素子との間に配置され、液晶画素と光透過領域とに入射する光を第1偏光方向の偏光に制限する第1偏光板と、光変調素子の顔側に配置され、液晶画素に対応して設けられ液晶画素から射出される映像光を第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光に制限する偏光領域を有する第2偏光板と、第2偏光板の顔側に配置され、映像光の偏光に対して機能する屈折力を有する偏光分離レンズ素子とを備える。
【0055】
上記虚像表示装置では、外界から遮光部材を通過した透過光つまり外界光が、第1偏光板を経て第1偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子を屈折力の作用を受けずに通過し、液晶画素から射出された映像光が、第2偏光板を経て第2偏光方向に制限され、偏光分離レンズ素子を屈折力の作用を受けて通過し虚像を形成する。この場合、光変調素子や偏光分離レンズ素子を眼の近くに配置して光変調素子の液晶画素に形成された画像に対応する虚像を形成することができ、光変調素子や偏光分離レンズ素子を大きく離すことなく画角を広くすることができる。
【0056】
具体的な態様における虚像表示装置において、第2偏光板の偏光領域は、液晶画素に対応して離散的に設けられる。
【0057】
具体的な態様における虚像表示装置において、導光部材に3色の光を時分割で供給する光源装置をさらに備える。これにより、3色の光を時分割で液晶画素に照射することができ、カラー表示を行う場合でも光変調素子を構成する液晶画素の密度が低いことが許容される。これは、光変調素子における光透過領域の割合を増加させ、シースルー透過率を向上することを可能にする。
【0058】
具体的な態様における虚像表示装置において、導光部材は、平行平板状の部材であり、液晶画素に対応して離散的に設けられて3色の光を液晶画素に射出する光抽出部を有する。光抽出部は、平行平板状の部材による全反射等を利用した照明光の伝搬を乱すことによって、必要な個所で照明光を効率よく取り出すことができる。
【0059】
具体的な態様における虚像表示装置において、光抽出部は、光散乱層、ナノ構造、及び微小レンズのいずれかである。
【0060】
具体的な態様における虚像表示装置において、遮光部材は、外界光の入射を抑制する遮光層を有し、遮光層は、光抽出部に対応する大きさを有する。これにより、外界光が散乱領域に入射することをより抑制することができる。
【0061】
具体的な態様における虚像表示装置において、偏光分離レンズ素子は、複数の液晶画素を包括的に結像させる偏光分離液晶レンズである。単独レンズとすることにより、アイボックスを広くすることが容易になる。
【0062】
具体的な態様における虚像表示装置において、遮光部材と導光部材と第1偏光板と光変調素子と第2偏光板とが、板状の部材として一体化されて複合表示部材を構成し、複合表示部材において、導光部材が、遮光部材と第1偏光板とから離間して配置された一対の平面を有する平行平板状の部材であり、偏光分離レンズ素子が、複合表示部材から離間して配置されている。これにより、導光部材における照明光の伝搬を確保しつつ、装置の薄型化及び軽量化を図ることができる。
【0063】
具体的な態様における虚像表示装置において、第2偏光板と偏光分離レンズ素子との間において、第2偏光板の近傍に配置され、液晶画素に対応して離散的に設けられて液晶画素から射出される映像光の発散角を調整するマイクロレンズを有するレンズアレイをさらに備える。マイクロレンズによって映像光が偏光分離レンズ素子に入射する領域を広げることができ、アイボックスを広く確保することができる。
【0064】
具体的な態様における頭部装着型表示装置は、上述した虚像表示装置を備える第1装置と、上述した虚像表示装置を備える第2装置と、第1装置と第2装置とを支持し、頭部への装着を可能にするテンプルを含む支持装置とを備える。
【符号の説明】
【0065】
10…光源装置、20…複合表示部材、20a…繰返単位、21…遮光部材、21a…平板、21b…遮光層、22…導光部材、22a…平板、22d…光抽出部、22i,22j…平面、22t…画素区画、23…第1偏光板、23a…平板、23b…偏光膜、24…光変調素子、25…第2偏光板、25a…平板、25b…偏光膜、25p…偏光領域、26…光学アレイ、26a…平板、26b…微小光学素子、49…液晶、50…偏光分離レンズ素子、90…ユーザー端末、100A,100B…虚像表示装置、102…駆動装置、103a,103b…表示光学系、200…頭部装着型表示装置、201…双眼型表示装置、A1,A2,A3,A4,A5…光透過領域、AX…光軸、BL…バックライト光、EY…眼、IL…照明光、ML…映像光、OL…外界光、P1…第1偏光、P2…第2偏光、PE…液晶画素