(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102493
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/72 20060101AFI20240724BHJP
F24C 7/02 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H05B6/72 A
F24C7/02 511G
F24C7/02 511H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006400
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岸本 卓士
【テーマコード(参考)】
3K090
3L086
【Fターム(参考)】
3K090AA01
3K090AB02
3K090DA08
3L086AA01
3L086BB07
3L086DA12
(57)【要約】
【課題】高周波を加熱源とする加熱装置において、ムラのない加熱を達成できるようにする。
【解決手段】加熱装置10は、加熱庫13と、モータ23と、アンテナ28と、導線26とを有する。加熱庫13は、回転式であって、加熱対象物30を収容する。モータ23は、加熱庫13を回転させるための中空の回転軸24を有する。アンテナ28は、加熱庫13の内部へ電磁波29を放射させることができる。導線26は、加熱庫13の外部からモータ23における中空の回転軸24を通ったうえで、アンテナ28へ電気的に接続する。導線26は、加熱対象物30を加熱するための電磁波29をアンテナ28から加熱庫13の内部へ放射させるための電力を、アンテナ28へ供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象物が収容される収容部と、
前記収容部が固定される中空の回転軸を有しており、前記回転軸を回転させる駆動部と、
前記収容部に電磁波を放射するアンテナと、
前記回転軸内を通過し、前記アンテナが電気的に接続される給電線と
を備える、加熱装置。
【請求項2】
前記収容部は、上下方向に沿う回転軸心周りに前記駆動部から伝達される力により回転し、
前記収容部は上向きの開口を有し、
前記開口を開閉する扉を更に備える、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記収容部は、内部空間を規定する壁体を有し、
前記収容部の回転により前記アンテナから前記壁体までの距離が変化する形状である、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記収容部は、遠沈管を保持する保持部材を有する、請求項1に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱装置に関し、特に高周波を加熱源とする加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波であるマイクロ波を加熱源とする加熱装置が、特に加熱調理器の分野において広く知られている。このような加熱調理器として、特許文献1には、食品に吸収されるマイクロ波の分布を制御することによって加熱ムラの発生を防止することが記載されている。詳細には、特許文献1には、加熱ムラの発生を防止するための、食品を載置台に載せて加熱室内で食品を回転させる方法や,マイクロ波を放射するアンテナを回転させることで加熱室内の定在波分布を回転制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-53533号公報(段落0003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に載置台を回転させる方法では、たとえ載置台を回転させたとしても固定式のアンテナと加熱庫の庫内との位置関係は常に同じである。このため、固定式のアンテナの位置と庫内形状とを主たる要因として発生する定在波は大きく移動することが無い。結局、食品などの加熱対象物の加熱ムラが完全に解消するには至っていない。
【0005】
本発明は、加熱対象物をムラ無く加熱可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る加熱装置は、加熱対象物が収容される収容部と、前記収容部が固定される中空の回転軸を有しており、前記回転軸を回転させる駆動部と、前記収容部に電磁波を放射可能なアンテナと、前記回転軸内を通過し、前記アンテナが電気的に接続される給電線とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱装置によれば、加熱対象物をムラなく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の加熱装置を示す概略図である。
【
図2】
図1におけるモータまわりの詳細構造を示す図である。
【
図3】第2の実施形態の加熱装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の加熱装置10を示す概略図である。
図2は、
図1におけるモータ23まわりの詳細構造を示す図である。
【0011】
図1に示される加熱装置10は、高周波としてのマイクロ波を加熱源とする加熱装置である。加熱装置10はケーシング11を有する。ケーシング11は、上部に開口12が設けられている。図示のケーシング11は開口12が開放された構成であるが、ケーシング11は開口12を開閉するための扉を備えた構成であってもよい。
【0012】
ケーシング11の内部には、加熱庫13が設けられている。加熱庫13は、本発明における「収容部」の一例である。加熱庫13は、上向きの開口14を有する。詳細には、開口14は、加熱庫13の上部に設けられている。加熱庫13は、開口14を開閉する扉15を更に備えている。加熱庫13及び扉15は、加熱用のマイクロ波が外部に漏れないように電磁的にシールドすることができる構成である。扉15を有することで、加熱庫13を確実に電磁的にシールドすることができる。
【0013】
加熱庫13は、底部16と、側部17とを有する。底部16は、加熱装置10の前後方向及び左右方向に拡がる。側部17は、加熱装置10の上下方向に沿って延びる。側部17は、本発明における「壁体」の一例であり、加熱庫13の内部空間を規定する。底部16と側部17とは、板状の部材などによって構成されることが好適である。加熱庫13内には、加熱対象物30が収容される。加熱対象物30は、例えば食品であり、底部16に置かれる。
【0014】
加熱庫13の底部16よりも下側の位置には、アンテナ室18が設けられている。アンテナ室18は壁板19によって形成されている。壁板19は、底板20と側板21とを有する。側板21の上端の部分が、加熱庫13の底部16に取り付けられている。この取付けによって、アンテナ室18は、閉じた空間として形成される。
【0015】
底板20と側板21とを有する壁板19も、加熱用のマイクロ波が外部に漏れないように電磁的にシールドできる構成である。加熱庫13の底部16は、アンテナ室18が形成されている領域において、アンテナ室18の天板を構成する。このアンテナ室18の天板を構成している領域においては、加熱庫13の底部16は、電磁的にシールドできる構成とはされていない。つまり、加熱庫13の底部16におけるアンテナ室18の天板を構成している領域は、アンテナ室18で発生したマイクロ波を加熱庫13に透過可能である。
【0016】
加熱庫13は、加熱装置10の上下方向に沿う回転軸心22周りにモータ23(後述)から伝達される力により回転する。モータ23は、本発明の「駆動部」の一例である。アンテナ室18よりも下側の位置には、つまりアンテナ室18よりも外側の位置には、加熱庫13を回転駆動させるためのモータ23が設けられている。加熱装置10では、加熱庫13とアンテナ室18とが一体に回転可能である。
図2に詳しく示すモータ23は、図示を省略した適宜の部材によって、ケーシング11の内部の適所に取り付けられる。モータ23は、中空の回転軸24を有する。図示の例では、この回転軸24には、フランジ形の取付け部材25を用いて、アンテナ室18の底板20に連結されている。即ち、回転軸24には、加熱庫13が固定されている。これによりモータ23から伝達される力が底板20に伝達され、加熱庫13とアンテナ室18とが一体に回転される。
【0017】
モータ23の回転軸24は、中空軸である。同軸ケーブル26は、ケーシング11の内部における加熱庫13及びアンテナ室18の外部から、中空の回転軸24内を通過して、アンテナ室18の内部に至る。同軸ケーブル26は、本発明の「給電線」の一例である。
図1に示すように、同軸ケーブル26の一端は、ケーシング11の内部における加熱庫13及びアンテナ室18の外部に設けられた高周波電源27に接続されている。同軸ケーブル26の他端は、
図2に示すように、モータ23の回転軸24からアンテナ室18の内部に入り込んでいる。
【0018】
同軸ケーブル26の他端には、アンテナ28が電気的に接続される。アンテナ28は、アンテナ室18の内部に配置されている。アンテナ28は、同軸ケーブル26を通じて、高周波電源27からの高周波電力の供給を受けて、アンテナ室18の内部に、加熱用の電磁波としてのマイクロ波29を放射する。アンテナ28は、マイクロ波29を放射できる限りにおいて、その形態は任意である。モータ23の回転軸24は回転するが、アンテナ28は、同軸ケーブル26と同様に非回転式の構成である。
【0019】
アンテナ28から放射されたマイクロ波29は、アンテナ室18から加熱庫13の内部に到達したうえで、加熱対象物30に照射される。マイクロ波29の照射によって、加熱対象物30が加熱される。
【0020】
加熱対象物30の加熱のために非回転構造のアンテナ28からマイクロ波29が照射されるときには、モータ23の回転によって加熱庫13が回転される。この回転によって、アンテナ28に対する側部17の位置関係が変化する。このため、加熱庫13における定在波の発生を抑制することができて、加熱対象物30をムラなく加熱することができる。
【0021】
定在波の発生を防止するために、実施形態では、モータ23による加熱庫13の回転により、アンテナ28から側部17までの距離が変化する。詳細には、加熱庫13の内部空間を直方体や立方体にて構成することで、アンテナ28から側部17までの距離が変化させることができる。
【0022】
図1及び
図2では、モータ23の回転軸24がアンテナ室18の底板20に接続されることで、モータ23における中空の回転軸24によって直接的に加熱庫13を回転させる例が示されている。しかし、本発明の「駆動部」の別の一例として、モータの回転軸とは別の中空の回転軸によって加熱庫13を回転させることもできる。この場合には、モータの回転軸から、上記の別の中空の回転軸に動力が伝達される。動力を伝達するための手段は適宜であって、例えばベルト伝動機構やその他の機構を用いることができる。この場合は、伝動機構が別途必要になるが、モータの回転軸を中空にする必要がないという利点がある。
【0023】
図1では、加熱庫13における上向きの開口14のための扉15として、上開き構造の扉が例示されている。これによって、回転式の加熱庫13を確実に電磁的にシールドできるとともに、加熱庫13に対する加熱対象物30の出し入れを確実かつ容易に行うことができる。しかし、加熱庫13の扉を、一般的な加熱装置と同様に横開き構造とすることも可能である。この場合には、横開き構造の扉の開閉のために、ケーシング11の開口は、上述のような上向きではなく、横向きに形成される。
【0024】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態の加熱装置10を示す概略図である。
【0025】
第2の実施形態の加熱装置10は、遠心分離機能を備える。
【0026】
遠心分離機能を備えた加熱装置、換言すると加熱しながら遠心分離する装置が知られている。遠心分離機能を備えた既知の加熱装置では、加熱源としてヒータが一般的に用いられている。
【0027】
しかし、ヒータで加熱する構成の装置では、遠心分離を行う対象である液状の検体を入れる遠沈管は、耐熱性の観点から、金属製の容器とされている。このため、一般的な樹脂製の遠沈管を用いることができない。また、検体の温度は、ヒータの熱が伝熱することにより制御される。このため、応答性が悪く、温度制御性が良いとは言えない。
【0028】
第2の実施形態の加熱装置10は、これらの点を改善する。詳細には、
図2に示すように、第2の実施形態の加熱装置10は、加熱庫13の内部に遠沈管41が設置されている。遠沈管41は、
図3では図示を省略した適宜の保持部材によって、加熱庫13の内部に保持される。遠沈管41は、遠心分離の対象となる液状の検体42を収容する。
【0029】
遠沈管41の内部の検体42を加熱しながら遠心分離するときには、モータ23によって加熱庫13を高速回転させながら、アンテナ28からマイクロ波29を放射させる。これにより、マイクロ波29によって、遠沈管41は加熱せずに検体42のみを加熱することができる。遠沈管41は、加熱されないため、検体42の加熱温度以上の温度に対する耐熱性は不要である。このため、一般的な樹脂製の遠沈管を用いることができる。また、マイクロ波29によって、検体42を迅速に加熱することができる。
【0030】
図3に示した第2の実施形態の加熱装置10において、上記で説明した以外の事項については、変形例なども含めて、上述の第1の実施形態と共通する。
【0031】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、加熱装置を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0033】
10 加熱装置
12 開口
13 加熱庫
15 扉
17 側部(壁体)
22 軸心
23 モータ
24 回転軸
26 同軸ケーブル(導線)
28 アンテナ
29 マイクロ波(電磁波)
30 加熱対象物
41 遠沈管