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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102494
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】伝送装置及び伝送制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/125 20220101AFI20240724BHJP
   H04L 47/24 20220101ALI20240724BHJP
   H04L 47/6295 20220101ALI20240724BHJP
【FI】
H04L47/125
H04L47/24
H04L47/6295
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006405
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】栗田 いずみ
(72)【発明者】
【氏名】羽田 明生
(72)【発明者】
【氏名】流王 智子
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA03
5K030HB17
5K030JA11
5K030LA03
5K030LC11
5K030MA04
5K030MB02
(57)【要約】
【課題】所定の時刻表に沿って運行される移動体をパケットの宛先或いはパケットの送信元とする交通機関に係る伝送ネットワークの優先制御において、移動体毎のパケットの処理数の偏りを抑制すること。
【解決手段】列車40を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の列車40に向けて発信又は中継する制御を行う伝送装置であるルータ10は、パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けるとともに、優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に宛先別に区別して記憶し、記憶したパケットを優先度の順に取り出して送出するが、高優先度のパケットとして2以上の宛先のパケットが記憶されている場合には、宛先が異なるパケットを順に取り出して高優先度のパケットを送出する制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体のうち、所与の移動体を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の移動体に向けて発信又は中継する制御を行う伝送装置であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分ける仕分け制御手段と、
前記仕分け制御手段により仕分けられたパケットを前記優先度別に区別して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する制御を行う送出制御手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に宛先別に区別して記憶し、
前記送出制御手段は、前記高優先度のパケットとして2以上の宛先のパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、宛先が異なるパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットの送出制御を行う、
伝送装置。
【請求項2】
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体のうち、所与の移動体を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の移動体に向けて発信又は中継する制御を行う伝送装置であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
前記移動体は、グループが対応付けられており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分ける仕分け制御手段と、
前記仕分け制御手段により仕分けられたパケットを前記優先度別に区別して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する制御を行う送出制御手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に、当該パケットの宛先に係る前記グループ別に区別して記憶し、
前記送出制御手段は、前記高優先度のパケットの宛先として2以上の前記グループのパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、前記グループが異なる宛先のパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットの送出制御を行う、
伝送装置。
【請求項3】
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体から送信され、当該移動体を送信元とする伝送情報が格納されたパケットを中継する制御を行う伝送装置であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分ける仕分け制御手段と、
前記仕分け制御手段により仕分けられたパケットを前記優先度別に区別して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する制御を行う送出制御手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に送信元別に区別して記憶し、
前記送出制御手段は、前記高優先度のパケットとして2以上の送信元のパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、送信元が異なるパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットの送出制御を行う、
伝送装置。
【請求項4】
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体から送信され、当該移動体を送信元とする伝送情報が格納されたパケットを中継する制御を行う伝送装置であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
前記移動体は、グループが対応付けられており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分ける仕分け制御手段と、
前記仕分け制御手段により仕分けられたパケットを前記優先度別に区別して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する制御を行う送出制御手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に、当該パケットの送信元に係る前記グループ別に区別して記憶し、
前記送出制御手段は、前記高優先度のパケットの送信元として2以上の前記グループのパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、前記グループが異なる送信元のパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットの送出制御を行う、
伝送装置。
【請求項5】
前記送出制御手段は、所定の単位時間毎に、前記優先度の順のパケットの取り出し及び送出を区切って繰り返し行う、
請求項1~4の何れか一項に記載の伝送装置。
【請求項6】
前記送出制御手段は、今回の前記単位時間における前記高優先度のパケットの順次の取り出し及び送出を、前回の前記単位時間における当該高優先度のパケットの取り出し及び送出の続きから実行する制御を行う、
請求項5に記載の伝送装置。
【請求項7】
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体のうち、所与の移動体を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の移動体に向けて発信又は中継する制御を行う伝送制御方法であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けて記憶手段に区別して記憶させる仕分け制御と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する送出制御と、
を含み、
前記仕分け制御は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に宛先別に区別して前記記憶手段に記憶させる制御を行い、
前記送出制御は、前記高優先度のパケットとして2以上の宛先のパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、宛先が異なるパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットを送出する制御を行う、
伝送制御方法。
【請求項8】
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体のうち、所与の移動体を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の移動体に向けて発信又は中継する制御を行う伝送制御方法であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
前記移動体は、グループが対応付けられており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けて記憶手段に区別して記憶させる仕分け制御と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する送出制御と、
を含み、
前記仕分け制御は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に、当該パケットの宛先に係る前記グループ別に区別して前記記憶手段に記憶させる制御を行い、
前記送出制御は、前記高優先度のパケットの宛先として2以上の前記グループのパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、前記グループが異なる宛先のパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットを送出する制御を行う、
伝送制御方法。
【請求項9】
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体から送信され、当該移動体を送信元とする伝送情報が格納されたパケットを中継する制御を行う伝送制御方法であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けて記憶手段に区別して記憶させる仕分け制御と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する送出制御と、
を含み、
前記仕分け制御は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に送信元別に区別して前記記憶手段に記憶させる制御を行い、
前記送出制御は、前記高優先度のパケットとして2以上の送信元のパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、送信元が異なるパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットを送出する制御を行う、
伝送制御方法。
【請求項10】
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体から送信され、当該移動体を送信元とする伝送情報が格納されたパケットを中継する制御を行う伝送制御方法であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
前記移動体は、グループが対応付けられており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けて記憶手段に区別して記憶させる仕分け制御と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する送出制御と、
を含み、
前記仕分け制御は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に、当該パケットの送信元に係る前記グループ別に区別して前記記憶手段に記憶させる制御を行い、
前記送出制御は、前記高優先度のパケットの送信元として2以上の前記グループのパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、前記グループが異なる送信元のパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットを送出する制御を行う、
伝送制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットを発信又は中継する伝送装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
パケットを伝送する伝送ネットワークでは、伝送されるパケットに優先度を定めて処理する優先制御が知られている。例えば、特許文献1には、優先度を示すカテゴリ番号別に利用可能な最大セッション数を設定登録しておくことで、トラフィックの輻輳状態が発生したとしても、割り当て可能なセッション数が残っている優先度(カテゴリ番号)のパケットについて通信を可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-107935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、列車やバスといった所定の時刻表に沿って運行される移動体(より具体的には当該移動体に設置された通信装置)をパケットの宛先或いはパケットの送信元とする交通機関に係るパケットの伝送ネットワークに、従来の優先制御の技術を単純に適用しようとすると、問題が生じる場合があった。当該交通機関においては、移動体は決まった経路を決まった時刻で移動するのが基本である。そのため、各時刻において各移動体と地上との間で通信トラフィック上の問題が生じることのないように、当該経路や時刻表に基づき、基地局の離散的な配置を含む伝送ネットワークの設計がなされるため、平常時においては問題が生じない或いは生じることは稀と考えられる。
【0005】
しかし、例えば、特定の移動体と地上との間で優先度の高い情報の通信が要求される場面でその特定の移動体が複数存在する場合に従来の優先制御の技術を適用すると、パケットの処理が複数の特定の移動体の間で均等にならず、一部の特定の移動体に偏ってしまう場合が起こり得た。
【0006】
当該交通機関では、各移動体は所定の経路に沿って移動するため、時刻表通りの運行ができない状態が生じると、あるエリアに移動体が集中して存在する状況が生じ得る。この状況下では、伝送ネットワークにおけるパケットの通信経路として、そのエリアに向けて或いはそのエリアからのパケットが数多くなる。何らかの異常が発生し、当該エリアに存在する移動体に係る緊急度の高い情報の伝送が増えると、優先度の高いパケットが集中するおそれがある。このような場合に、パケットの処理が一部の特定の移動体に偏ってしまう上記のような問題が生じると、情報伝送の遅延等が生じ、問題がより大きくなるおそれがあった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、所定の時刻表に沿って運行される移動体をパケットの宛先或いはパケットの送信元とする交通機関に係る伝送ネットワークの優先制御において、移動体毎のパケットの処理数の偏りを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体のうち、所与の移動体を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の移動体に向けて発信又は中継する制御を行う伝送装置であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分ける仕分け制御手段(例えば、図3の仕分け制御部102)と、
前記仕分け制御手段により仕分けられたパケットを前記優先度別に区別して記憶する記憶手段(例えば、図3の記憶部110)と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する制御を行う送出制御手段(例えば、図3の送出制御部104)と、
を備え、
前記記憶手段は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に宛先別に区別して記憶し、
前記送出制御手段は、前記高優先度のパケットとして2以上の宛先のパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、宛先が異なるパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットの送出制御を行う、
伝送装置である。
【0009】
他の発明として、
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体のうち、所与の移動体を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の移動体に向けて発信又は中継する制御を行う伝送制御方法であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けて記憶手段に区別して記憶させる仕分け制御と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する送出制御と、
を含み、
前記仕分け制御は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に宛先別に区別して前記記憶手段に記憶させる制御を行い、
前記送出制御は、前記高優先度のパケットとして2以上の宛先のパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、宛先が異なるパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットを送出する制御を行う、
伝送制御方法を構成してもよい。
【0010】
第1の発明等によれば、所定の時刻表に沿って運行される移動体をパケットの宛先とする交通機関に係る伝送ネットワークの優先制御において、移動体毎のパケットの処理数の偏りを抑制することができる。つまり、移動体を宛先とするパケットを当該パケットに定められた優先度別に仕分け・区別して記憶するが、高優先度のパケットについては、更に宛先別に区別して記憶しておき、高優先度のパケットとして2以上の宛先のパケットが記憶されている場合には、宛先が異なるパケットを順に取り出して高優先度のパケットの送出制御を行う。これにより、高優先度のパケットの処理に関して、宛先である移動体別の送出数、すなわち処理数の偏りを抑制することができる。
【0011】
第2の発明は、
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体のうち、所与の移動体を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の移動体に向けて発信又は中継する制御を行う伝送装置であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
前記移動体は、グループが対応付けられており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分ける仕分け制御手段と、
前記仕分け制御手段により仕分けられたパケットを前記優先度別に区別して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する制御を行う送出制御手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に、当該パケットの宛先に係る前記グループ別に区別して記憶し、
前記送出制御手段は、前記高優先度のパケットの宛先として2以上の前記グループのパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、前記グループが異なる宛先のパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットの送出制御を行う、
伝送装置である。
【0012】
他の発明として、
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体のうち、所与の移動体を宛先とする伝送情報が格納されたパケットを、当該宛先の移動体に向けて発信又は中継する制御を行う伝送制御方法であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
前記移動体は、グループが対応付けられており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けて記憶手段に区別して記憶させる仕分け制御と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する送出制御と、
を含み、
前記仕分け制御は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に、当該パケットの宛先に係る前記グループ別に区別して前記記憶手段に記憶させる制御を行い、
前記送出制御は、前記高優先度のパケットの宛先として2以上の前記グループのパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、前記グループが異なる宛先のパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットを送出する制御を行う、
伝送制御方法を構成してもよい。
【0013】
第2の発明等によれば、所定の時刻表に沿って運行される移動体をパケットの宛先とする交通機関に係る伝送ネットワークの優先制御において、移動体毎のパケットの処理数の偏りを抑制することができる。つまり、移動体を宛先とするパケットを当該パケットに定められた優先度別に仕分け・区別して記憶するが、高優先度のパケットについては、更に宛先に係る移動体のグループ別に区別して記憶しておき、高優先度のパケットとして2以上のグループのパケットが記憶されている場合には、グループが異なる宛先のパケットを順に取り出して高優先度のパケットの送出制御を行う。これにより、高優先度のパケットの処理に関して、宛先に係る移動体のグループ別の送出数、すなわち移動体別の処理数の偏りを抑制することができる。
【0014】
第3の発明は、
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体から送信され、当該移動体を送信元とする伝送情報が格納されたパケットを中継する制御を行う伝送装置であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分ける仕分け制御手段と、
前記仕分け制御手段により仕分けられたパケットを前記優先度別に区別して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する制御を行う送出制御手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に送信元別に区別して記憶し、
前記送出制御手段は、前記高優先度のパケットとして2以上の送信元のパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、送信元が異なるパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットの送出制御を行う、
伝送装置である。
【0015】
他の発明として、
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体から送信され、当該移動体を送信元とする伝送情報が格納されたパケットを中継する制御を行う伝送制御方法であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けて記憶手段に区別して記憶させる仕分け制御と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する送出制御と、
を含み、
前記仕分け制御は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に送信元別に区別して前記記憶手段に記憶させる制御を行い、
前記送出制御は、前記高優先度のパケットとして2以上の送信元のパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、送信元が異なるパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットを送出する制御を行う、
伝送制御方法を構成してもよい。
【0016】
第3の発明等によれば、所定の時刻表に沿って運行される移動体をパケットの送信元とする交通機関に係る伝送ネットワークの優先制御において、移動体毎のパケットの処理数の偏りを抑制することができる。つまり、移動体を送信元とするパケットを当該パケットに定められた優先度別に仕分け・区別して記憶するが、高優先度のパケットについては、更に送信元別に区別して記憶しておき、高優先度のパケットとして2以上の送信元のパケットが記憶されている場合には、送信元が異なるパケットを順に取り出して高優先度のパケットの送出制御を行う。これにより、高優先度のパケットの処理に関して、送信元である移動体別の送出数、すなわち処理数の偏りを抑制することができる。
【0017】
第4の発明は、
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体から送信され、当該移動体を送信元とする伝送情報が格納されたパケットを中継する制御を行う伝送装置であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
前記移動体は、グループが対応付けられており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分ける仕分け制御手段と、
前記仕分け制御手段により仕分けられたパケットを前記優先度別に区別して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する制御を行う送出制御手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に、当該パケットの送信元に係る前記グループ別に区別して記憶し、
前記送出制御手段は、前記高優先度のパケットの送信元として2以上の前記グループのパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、前記グループが異なる送信元のパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットの送出制御を行う、
伝送装置である。
【0018】
他の発明として、
所定の時刻表に沿って運行される複数の移動体から送信され、当該移動体を送信元とする伝送情報が格納されたパケットを中継する制御を行う伝送制御方法であって、
前記伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められており、
前記移動体は、グループが対応付けられており、
パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る前記優先度別に仕分けて記憶手段に区別して記憶させる仕分け制御と、
前記記憶手段に記憶されたパケットを、前記優先度の順に取り出して送出する送出制御と、
を含み、
前記仕分け制御は、前記優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に、当該パケットの送信元に係る前記グループ別に区別して前記記憶手段に記憶させる制御を行い、
前記送出制御は、前記高優先度のパケットの送信元として2以上の前記グループのパケットが前記記憶手段に記憶されている場合には、前記グループが異なる送信元のパケットを順に取り出して前記高優先度のパケットを送出する制御を行う、
伝送制御方法を構成してもよい。
【0019】
第4の発明によれば、所定の時刻表に沿って運行される移動体をパケットの送信元とする交通機関に係る伝送ネットワークの優先制御において、移動体毎のパケットの処理数の偏りを抑制することができる。つまり、移動体を送信元とするパケットを当該パケットに定められた優先度別に仕分け・区別して記憶するが、高優先度のパケットについては、更に送信元に係るグループ別に区別して記憶しておき、高優先度のパケットとして2以上のグループのパケットが記憶されている場合には、グループが異なる送信元のパケットを順に取り出して高優先度のパケットの送出制御を行う。これにより、高優先度のパケットの処理に関して、送信元に係る移動体のグループ別の送出数、すなわち移動体別の処理数の偏りを抑制することができる。
【0020】
第5の発明は、上述の発明において、
前記送出制御手段は、所定の単位時間毎に、前記優先度の順のパケットの取り出し及び送出を区切って繰り返し行う、
伝送装置である。
【0021】
第5の発明によれば、優先度の順のパケットの取り出し及び送出が所定の単位時間毎に区切って繰り返し行われる。これにより、高優先度のパケットについての単位時間毎の送出数の偏りを抑制することが可能となる。
【0022】
第6の発明は、上述の発明において、
前記送出制御手段は、今回の前記単位時間における高優先度のパケットの順次の取り出し及び送出を、前回の前記単位時間における当該高優先度のパケットの取り出し及び送出の続きから実行する制御を行う、
伝送装置である。
【0023】
第6の発明によれば、単位時間毎に区切った高優先度のパケットの順次の取り出し及び送出は、前回の単位時間における当該パケットの取り出し及び送出の続きから実行される。これにより、高優先度のパケットについての単位時間毎の送出数の偏りの更なる抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】伝送ネットワークの一例の模式図。
図2】優先度の設定例。
図3】ルータ(伝送装置)の機能構成例。
図4】パケットの取り出しの一例。
図5】パケットの取り出しの一例。
図6】パケットの取り出しの一例。
図7】パケット伝送処理のフローチャート。
図8】シミュレーション結果の一例。
図9】シミュレーション結果の一例
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。また、理解を容易にするために、正確に言うと、移動体に設置された車上装置又は通信装置がパケットの宛先/送信元になるところを、移動体(本実施形態では列車)がパケットの宛先/送信元になるとして説明する。
【0026】
図1は、本実施形態における伝送ネットワークの一例を模式的に示す図である。本実施形態の伝送ネットワークNは、鉄道システムに用いられ、指令所に設置される地上制御装置20から、所定の時刻表に従って所定の経路(本実施形態ではレールR)に沿って運行される移動体である列車40に搭載される車上装置42へ、列車運行に関する情報を伝送するためのネットワークである。伝送ネットワークNはIP(Internet Protocol)ネットワークで実現され、地上制御装置20、ルータ10、および、車上装置42との間で直接無線通信を行う無線基地局30、を有する。無線基地局30の機能を、当該無線基地局30と通信を行う地上制御装置20に含めて一体とする構成としてもよい。また、無線基地局30は外部システムを利用して、伝送ネットワークNとしては無線基地局30を含まない構成としてもよい。
【0027】
ルータ10は、パケットを発信又は中継する制御を行う伝送装置である。パケットには、地上制御装置20から列車40(車上装置42)へ向けた伝送情報が格納されるとともに、送信元である地上制御装置20のIDや、送信先(宛先)である列車40(車上装置42)のIDといった各種の情報が格納されている。
【0028】
パケットに格納される伝送情報は、情報種別に応じた優先度が定められている。図2は、伝送情報に定められる優先度の一例である。本実施形態では、伝送情報を種類や用途に応じて複数のクラスに分け、そのクラスに応じて優先度を定めている。具体的には、列車運行において重要であり、列車40(車上装置42)への確実かつ速やかな伝送が要求される種類や用途の情報を、優先度が高い情報として定めている。図2の例では、伝送情報を4段階のクラス(クラス1~4)に分け、クラスの値が小さいほど優先度を高く設定している。つまり、クラス1が最も優先度が高く、クラス4が最も優先度が低い。伝送情報のクラスは、当該伝送情報に付加されてパケットに格納される。
【0029】
図3は、ルータ10の機能的な構成を示す例である。図3に示すように、ルータ10は、機能部として、仕分け制御部102と、送出制御部104と、記憶部110とを備える。
【0030】
仕分け制御部102は、パケットを当該パケットに格納された伝送情報に係る優先度別に仕分けて記憶部110に記憶させる。また、優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に宛先別に区別して記憶部110に記憶させる。
【0031】
具体的には、受信したパケットに格納されている伝送情報に付加されているクラスから、当該伝送情報の優先度を判断する。優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、当該パケットのヘッダから宛先である列車を判断する。そして、当該パケットを、判断した優先度及び宛先である列車に対応する記憶エリア112に記憶させる。図3の例では、最も高い優先度を高優先度条件としているため、優先度1のパケットが高優先度のパケットとなっている。
【0032】
記憶部110は、仕分け制御部102により仕分けられたパケットを優先度別に区別して記憶する。また、優先度が所定の高優先度条件を満たす高優先度のパケットについては、更に宛先別に区別して記憶する。具体的には、記憶部110には、パケットを記憶するための優先度別の記憶エリア112が形成されているとともに、高優先度の記憶エリア112については、更に、パケットの宛先である列車別に区別して形成されている。これらの記憶エリア112は、例えば、キューとして実現される。図3の例では、4段階の優先度(優先度1~4)別の記憶エリア112-1~112-4(112)が形成されている。そして、これらのうち、高優先度である優先度1の記憶エリア112-1については、更に、列車別(宛先別)の記憶エリア112-1a,112-1b,・・に区別して形成されている。
【0033】
なお、各記憶エリア112に格納できるパケットの最大数は、固定としてもよいし可変としてもよい。また、高優先度についての列車別(宛先別)の記憶エリア112は、想定される全ての宛先別(列車別)の記憶エリア112が予め形成されているとしてもよいし、発信する又は受信したパケットの宛先(列車)に対応する記憶エリア112が必要に応じて随時形成されるようにしてもよい。
【0034】
送出制御部104は、記憶部110に記憶されたパケットを、優先度の順に取り出して送出する制御を行う。また、高優先度のパケットとして2以上の宛先のパケットが記憶部110に記憶されている場合には、宛先が異なるパケットを順に取り出して高優先度のパケットの送出制御を行う。また、所定の単位時間毎に、優先度の順のパケットの取り出し及び送出を区切って繰り返し行う。今回の単位時間における高優先度のパケットの順次の取り出し及び送出を、前回の単位時間における当該高優先度のパケットの取り出し及び送出の続きから実行する制御を行う。
【0035】
具体的には、送出制御部104は、所定の単位時間の経過毎に、記憶部110からのパケットの取り出し及び送出を繰り返し行う。パケットの取り出しは、優先度が高い順に、当該優先度の記憶エリア112に記憶されている全てのパケットを取り出した後に、次の優先度のパケットの取り出しに移行することで行う。このとき、高優先度のパケットについては、列車別(宛先別)に区別して記憶されているから、各列車(宛先)を巡回して列車(宛先)が異なるパケットを順に取り出すように、各列車(宛先)の記憶エリア112からパケットを1つずつ取り出してゆく。
【0036】
また、新たな単位時間に係るパケットの取り出しは、優先度別のパケットについては、最も高い優先度からパケットの取り出しを開始するが、高優先度における列車別(宛先別)のパケットについては、前回の単位時間において当該優先度について最後に取り出したパケットに対応する列車(宛先)の次の列車(宛先)から、今回のパケットの取り出しを開始する。
【0037】
したがって、単位時間において取り出し及び送出の処理ができるパケット数には限りがあることから、記憶部110に多数のパケットが格納されている場合、優先度が低いパケットについては当該単位時間において処理されず、記憶部110に記憶されたまま次回の単位時間における処理に持ち越されることになる。
【0038】
図4は、送出制御部104によるパケットの取り出し及び送出の一例である。図4には、ある時点での記憶部110におけるパケットの格納状態の一例を示している。また、パケットに付した丸数字は、当該パケットの取り出し順を示している。すなわち、パケットの取り出しは優先度が高い順になされるから、図4の例では、“優先度1,2,3,4”の順にパケットが取り出される。また、高優先度である“優先度1”については、列車(宛先)が異なるパケットを順に取り出すようになされるから、図4の例では、“列車A,B,C”の順にパケットが1つずつ取り出される。
【0039】
つまり、先ず、“優先度1”の“列車A”に対応する記憶エリア112-1aから、最も古い(最も過去に記憶された)1つのパケット(“パケットA1”)が取り出され、次いで、同じ“優先度1”の“列車B”に対応する記憶エリア112-1bから最も古い1つのパケット(“パケットB1”)が取り出され、続いて、同じ“優先度1”の“列車C”に対応する記憶エリア112-1cから最も古い1つのパケット(“パケットC1”)が取り出されるといった順に、“優先度1”の各列車に対応する記憶エリアそれぞれから順に1つずつパケットが取り出される。そして、“優先度1”に対応する記憶エリア112-1に格納されている全てのパケットが取り出されると、次に、“優先度2”に対応する記憶エリア112-2からパケットが順に取り出される。“優先度2”に対応する記憶エリア112-2は列車別に区別されていないので、記憶された順序が古い順に1つずつパケットが取り出される。続く“優先度3,4”についても同様である。
【0040】
単位時間において処理(取り出し及び送出)ができるパケット数には限りがあり、処理されないパケットは、記憶部110に記憶されたまま次回の単位時間における処理に持ち越されることになる。例えば、1つの単位時間で10個のパケットを処理できる場合には、図4では、“優先度3”の“パケット33”までを当該単位時間内で処理し、“優先度4”の“パケット41”以降次回の単位時間に持ち越しとなる。但し、新たなパケットが受信されて仕分け制御部102によって追加・記憶更新の制御がなされるため、次回の単位時間で“優先度4”の“パケット41”から処理が開始されるとは限らない。つまり、新たな単位時間に係るパケットの取り出しは最も高い優先度から開始されるから、新たに記憶された“優先度1,2,3”のパケットが処理された後に、この“優先度4”の“パケット41”以降のパケットが処理されることになる。
【0041】
図5は、送出制御部104によるパケットの取り出し及び送出の他の例であり、高優先度である“優先度1”のパケットとして、1つの単位時間で処理できるパケット数を超える数のパケットが記憶されている場合の例である。この場合も同様に、“優先度1”から“列車A,B,C”の順にパケットが1つずつ順に取り出されてゆく。つまり、1つの単位時間で10個のパケットを処理できるならば、“優先度1”の“列車A”の“パケットA4”までの10個のパケットが処理され、それ以外のパケットは、記憶部110に記憶されたまま次回の単位時間に持ち越しとなる。
【0042】
次回の単位時間では、最も高い“優先度1”からパケットの取り出しが開始されるが、高優先度における列車別(宛先別)のパケットについては、前回の単位時間において当該優先度について最後に取り出したパケットに対応する列車(宛先)の次の列車(宛先)から今回のパケットの取り出しを開始する。前回の単位時間において最後に処理した“優先度1”のパケットは“列車A”のパケットであるから、図6に示すように、次回の単位時間では、その次の“列車B”の最も古いパケットである“パケットB4”から取り出しを開始する。
【0043】
[処理の流れ]
図7は、ルータ10において実行されるパケット伝送処理の流れを説明するフローチャートである。図7に示すパケット伝送処理は、1回の単位時間の処理の流れを示している。従って、ルータ10は、この図7に示すパケット伝送処理を単位時間毎に繰り返し行う。なお、図7において、i、jは変数である。また、各優先度の記憶エリア112をキューQと称し、例えば優先度2のキューQをキューQ[2]として示す。本実施例における高優先度の優先度1のキューQ[1]には、列車別(宛先別)のキューである列車別キュー[j]があることとする。例えば、列車3の列車別キューは、列車別キュー[j]として示す。また、高優先度(本実施形態では、優先度1)については、パケットを取り出す毎に、その取り出した列車を前回対象列車Si(すなわち、最後にパケットを取り出した列車)として記憶・更新する。
【0044】
図7において、先ず、仕分け制御部102が、現時点までに受信したパケットを、優先度別に仕分けして記憶部110の対応する記憶エリア112(キューQ)に記憶させる(ステップS1)。次いで、送出制御部104が、初期設定として、対象優先度iを「1」と設定する(ステップS3)。そして、記憶部110に記憶されているパケットの取り出し及び送出を開始する。
【0045】
対象優先度iが“高優先度条件”を満たす高優先度であるかを判断し、高優先度ならば(ステップS5:YES)、記憶部110の対象優先度iに対応する記憶エリア112-i(キューQ[i])にパケットが記憶されているかを判断する。対象優先度iの記憶エリア112-i(キューQ[i])にパケットが記憶されていないならば(ステップS7:NO)、対象優先度iが処理対象となる最後の優先度であって全ての優先度の処理が終了したかどうかを判断する(ステップS17)。全ての優先度の処理が終了したならば(ステップS17:YES)、今回の単位時間での処理を完了と判断して、今回の単位時間のパケット伝送処理を終了とする。全ての優先度の処理が終了していなければ(ステップS17:NO)、対象優先度iを次の優先度に更新した後(ステップS19)、ステップS5に戻る。
【0046】
ステップS7において、対象優先度iの記憶エリア112-i(キューQ[i])にパケットが記憶されているならば(ステップS7:YES)、対象列車jを、対象優先度iについて最後にパケットを取り出した列車(前回対象列車)Siの次の列車を示す「Si+1」を列車台数nで除算した剰余の値(=(Si+1)%n)に更新する(ステップS9)。列車台数nで除算した剰余の値とすることで、対象列車jの値が列車台数nを超えないようにしている。そして、当該対象優先度iの記憶エリア112-i(キューQ[i])のうちの、対象列車jに対応する記憶エリア112-ij(列車別キュー[j])にパケットが記憶されているかを判断する。記憶されているならば(ステップS11:YES)、その記憶エリア112-ij(列車別キューQ[j])から最も古い1つのパケットを取り出し、宛先の列車40(車上装置42)に向けて送出する制御を行う(ステップS13)。パケットが取り出されて送出されたため、取り出して送出した列車でもって、前回対象列車Siが更新される。
【0047】
続いて、今回の単位時間が経過したかを判断し、経過していないならば(ステップS15:NO)、ステップS7に戻る。単位時間が経過したならば(ステップS15:YES)、本処理を終了する。
【0048】
一方、ステップ5において、対象優先度iが高優先度でないならば(ステップS5:NO)、対象優先度iの記憶エリア112-i(キューQ[i])にパケットが記憶されているかを判断する(ステップS23)。パケットが記憶されていないならば(ステップS23:NO)、ステップS17に移行する。
【0049】
対象優先度iの記憶エリア112-i(キューQ[i])にパケットが記憶されているならば(ステップS23:YES)、その記憶エリア112-i(キューQ[i])から最も古い1つのパケットを取り出し、宛先の列車40(車上装置42)に向けて送出する制御を行う(ステップS25)。続いて、所定の単位時間が経過したかを判断し、経過していないならば(ステップS29:NO)、ステップS23に戻る。単位時間が経過したならば(ステップS29:YES)、今回の単位時間での処理を完了と判断して、本処理を終了する。
【0050】
図8図9は、シミュレーション結果の一例である。このシミュレーションは、1つのルータ10について、受信パケットとして10000単位時間分のパケットをランダムに生成し、各単位時間について生成させたパケットに対する処理(仕分け・記憶・送出など)を行った。パケットは、宛先となる列車数(つまり、単位時間当たりの生成されるパケット数)を「2~5」とし、優先度を「1~4」の4段階とすることを生成条件としてランダムに生成した。また、ルータ10の単位時間当たりの処理可能な最大パケット数を「3」とした。
【0051】
そして、ルータ10の記憶部110に形成するパケットの記憶エリア112(キュー)として、(a)優先度別にのみ設けるケース(以下、“単純QoS”という)と、(b)優先度別かつ、各優先度について更に列車別(宛先別)に区別し、宛先である列車が異なるパケットを順に取り出して送出するケース(以下、“提案QoS”という)と、の2つのケースについてシミュレーションを行った。なお、どちらのケースについても、優先度が高い順に全てのパケットを取り出して送出することは同じである。
【0052】
そして、この2つのケースそれぞれのシミュレーション結果から、優先度(優先度1~4)それぞれについて、列車数別のパケットの処理時間の標準偏差を求めた。パケットの生成条件とした列車数(2~5)は単位時間当たりに生成されたパケット数に相当する。また、パケットの処理時間とは、当該パケットのルータ10での受信(つまり、生成)から送出までに要する時間である。
【0053】
図8図9では、横軸を列車数、縦軸を標準偏差として、2つのケース(“単純QoS”及び“提案QoS”)それぞれについての列車数別の標準偏差のグラフを示している。図8は、生成したパケットのうちの優先度1のパケットについてのグラフであり、図9は、優先度2のパケットについてのグラフである。
【0054】
図8図9によれば、2つのケースを比較すると、列車数が多いほど、従来QoSに比較して、提案QoSのほうが、列車数の増加に対する処理時間の標準偏差の増加の度合が小さくなっている。特に、列車数、つまり単位時間当たりのパケット数がルータ10の処理可能なパケット数である「3」以上では、従来QoSでは、列車数の増加に伴って処理時間の標準偏差も大幅に増加しているが、提案QoSでは、列車数が増加しても処理時間の標準偏差は僅かにしか増加していない。
【0055】
本実施形態では高優先度の記憶エリア112(キュー)についてのみ列車別に区別してキューを設けることとしたのに対して、図8図9のシミュレーションにおける提案QoSは、全ての優先度の記憶エリア(キュー)について列車別に区別してキューを設けることとした点で相違する。しかし、特定の優先度に対して、列車別に区別してキューを設けることが有効であることは、この図8図9のシミュレーション結果から明らかである。特に、優先度が高いパケットは優先して処理されるため、高優先度の記憶エリア(キュー)について列車別に区別してキューを設けることは特に効果的であると判断できる。したがって、本実施形態のように、ルータ10の記憶部110に設ける記憶エリア112(キュー)のうち、高優先度の記憶エリア112(キュー)について列車別(宛先別)に区別してパケットを記憶させること、および、優先度に従ってパケットを処理するが、高優先度のパケットについては宛先である列車が異なるパケットを順に取り出すことは、列車数の増加に伴うパケットの処理時間の標準偏差、つまり列車毎のパケットの処理数の偏り抑制に効果的であるといえる。
【0056】
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、伝送ネットワークの優先制御において、移動体である列車毎のパケットの処理数の偏りを抑制することができる。つまり、移動体である列車を宛先とするパケットを当該パケットに定められた優先度別に仕分け・区別して記憶するが、高優先度のパケットについては、更に列車別(宛先別)に区別して記憶しておき、高優先度のパケットとして2以上の列車(宛先)のパケットが記憶されている場合には、列車(宛先)が異なるパケットを順に取り出して高優先度のパケットの送出制御を行う。これにより、優先度の高い順に取り出して送出制御を行うといった優先制御において、高優先度のパケットについては、宛先である列車別の送出数、すなわち処理数の偏りを抑制することができる。
【0057】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0058】
(A)送信元の移動体
上述の実施形態では、地上制御装置20から移動体である列車40(車上装置42)への一方方向の伝送について説明したが、これとは逆に、移動体である列車40(車上装置42)から地上制御装置20への逆方向の伝送を行う場合であっても同様に適用可能である。この場合、ルータ10の記憶部110に設ける高優先度のパケットの記憶エリアを宛先別(列車別)ではなく送信元別(列車別)に区別して設け、パケットを送信元別に区別して記憶するようにすればよい。高優先度のパケットについて取り出して送出する場合は、送信元別(列車別)に順に取り出せばよい。
【0059】
(B)移動体のグループ
また、上述の実施形態では、受信したパケットを列車別(宛先別)に記憶することとして説明したが、これを、場所(現在位置や運行エリア)や種別(優等列車や普通列車など)などに応じて複数の列車を1つのグループとして、グループ別に記憶するようにしてもよい。この場合、ルータ10の記憶部110に設ける高優先度のパケットの記憶エリアを宛先別(列車別)ではなくグループ別に区別して設け、パケットを宛先又は送信元別の列車のグループ別に区別して記憶するようにすればよい。高優先度のパケットについて取り出して送出する場合は、宛先又は送信元別に順に取り出せばよい。
【0060】
(C)移動体
上述の実施形態では、鉄道システムを例として説明したが、バスや飛行機など、所定の時刻表に沿って所定の経路で運行される他の移動体のシステムであっても本実施形態を同様に適用可能である。
【0061】
(D)高優先度条件
上述の実施形態では、高優先度条件を、優先度が最も高い優先度1であるとして説明したが、優先度が所定の閾値より高いことを条件(閾値条件)として、複数の優先度が満たされ得る条件としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
N…伝送ネットワーク
10…ルータ(伝送装置)
102…仕分け制御部
104…送出制御部
110…記憶部
112…記憶エリア(キュー)
20…地上制御装置
30…無線基地局
40…列車
42…車上装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9