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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102496
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20240724BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A47K3/28
B05B1/18 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006416
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】埋金 祐三
【テーマコード(参考)】
2D132
4F033
【Fターム(参考)】
2D132FA01
2D132FA02
2D132FA17
2D132FB02
2D132FC04
2D132FD01
2D132FJ17
2D132FJ26
2D132FK03
4F033AA11
4F033BA04
4F033CA13
4F033DA05
4F033EA01
4F033GA04
4F033LA09
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】各種薬液の混合効果に優れ取り扱いの容易なシャワーヘッドの提供。
【解決手段】原水供給部及び薬液供給部を持つヘッド本体と、原水供給部に通じる第1ポートP1と薬液供給部に通じる第2ポートP2を持つ基部と、吐水状態を変える切替板Kと、シャワー吐水口及びミスト吐水口を持つ吐水板と、を備え、切替板Kには、第1,第2ポートP1,P2に向く一対のシャワーポートPsと、反対面にて一対のシャワーポートPsと通じるシャワー流路Rsが形成され、第1,第2ポートP1,P2に向く一対のミストポートPmと、反対面にて一対のミストポートPmと通じるミスト流路Rmが形成され、シャワー流路Rs・ミスト流路Rmの双方で、第2ポートP2に対向するシャワーポートPs又はミストポートPmにて薬液と原水との混合部Pxが形成され、混合部Pxにて混合水がシャワー吐水口又はミスト吐水口に変向するシャワーヘッド。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水供給部および薬液供給部を備えたヘッド本体と、
前記ヘッド本体に設けられ、前記原水供給部に連通する第1ポート、および、前記薬液供給部に連通する第2ポートを備えた基部と、
前記基部に対向しつつ相対移動して吐水状態を切り替える切替板と、
前記切替板に対向しシャワー吐水口およびミスト吐水口を有する吐水板と、を備えており、
前記切替板には、
前記第1ポートと前記第2ポートとに各別に対向可能であり前記切替板を前記基部の側から反対側に貫通する一対のシャワーポートと、前記切替板の反対面において一対の前記シャワーポートが連通するシャワー流路が形成され、さらに、
前記第1ポートと前記第2ポートとに各別に対向可能であり前記切替板を前記基部の側から反対側に貫通する一対のミストポートと、前記切替板の反対面において前記一対のミストポートが連通するミスト流路が形成され、
前記シャワー流路および前記ミスト流路の何れにおいても、前記第2ポートに対向する状態の前記シャワーポートあるいは前記ミストポートにおいて薬液が原水に混合されて混合水が生成される混合部が形成され、前記混合部において前記混合水の流通方向が、前記吐水板のうち多数のシャワー吐水口が設けられた領域に、あるいは、前記吐水板のうち多数のミスト吐水口が設けられた領域に変向されるように構成してあるシャワーヘッド。
【請求項2】
前記シャワー流路および前記ミスト流路の夫々が少なくとも二つ形成されており、前記混合部が、夫々の前記シャワー流路が交差する位置および夫々の前記ミスト流路が交差する位置に設けられている請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
前記第2ポートに対向する前記シャワーポートおよび前記第2ポートに対向する前記ミストポートにおける前記薬液の流通方向が、少なくとも一つの前記シャワー流路の軸心方向あるいは少なくとも一つの前記ミスト流路の軸心方向に直交するように構成してある請求項2に記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
前記切替板が前記基部に対して回転軸を介して支持されており、前記第1ポートと前記第2ポートが前記回転軸を挟んで対向配置され、前記シャワー流路が一対の半円弧状の流路に形成され、前記ミスト流路が一対の半円弧状の流路であって前記シャワー流路の内周側に設けられている請求項3に記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
前記第1ポートおよび前記第2ポートに加えて、共に前記原水供給部に連通する第3ポートおよび第4ポートが前記ヘッド本体に設けられ、前記切替板の回転により、一対の前記シャワーポートが前記第3ポートおよび前記第4ポートに対向する状態と、一対の前記ミストポートが前記第3ポートおよび前記第4ポートに対向する状態とに切り替え可能に構成してある請求項1から4の何れか一項に記載のシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド本体に取り付けられた切替板の回転により、原水のシャワー吐水と薬液を含む混合水のミスト吐水とを切り替えるシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなシャワーヘッドに関連する技術としては、例えば以下の特許文献1(明細書第〔0005〕,〔0009〕~〔0011〕段落、図1,2,6等参照)に示すものがある。
【0003】
特許文献1に係る技術では、シャワーノズルの根元側に筒状の化粧剤溶出器が取り付けられる。化粧剤溶出器の内部は、中央の主通水路と外側の副通水路とに仕切られており、主通水路は単なる流水用の空間であるが、副通水路には例えば香水剤が配置されている。化粧剤溶出器の内部には配水板7と制御板9が相対回転できるように配置されており、つまみを操作して制御板9を回転させることで副通水路の水導入側注入口を開閉することができる。
【0004】
具体的には、通常のシャワーとして使用するときは、配水板7の通水孔8と制御板9の通水孔10とが非連通状態となるよう制御板9を回転させる。これにより、ホース18からの水は主通水路4のみを通ってシャワーノズル19へ流れ、水のみのシャワー水として使用できる。
【0005】
一方、香水をシャワー水に溶け込ませる場合は、制御板9の通水孔10と配水板7の通水孔8とを連通させる。これにより、水の一部が通水孔8,10を通って副通水路5に流入する。水は球状の固形の香水剤20に接触し、水に溶出した香水成分が主通水路4に合流し、シャワーノズル19に流れて香水が入ったシャワー水を使用できる。シャワー水に溶出させる香水成分の量は制御板9の回転調整により行う。
【0006】
従来の構成によれば、シャワー水に対する香水・せっけん・シャンプー等の混入を手軽な操作で迅速に行えるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6-81389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の装置にあっては、筒状の化粧剤溶出器がシャワーノズルの根元側に延長配置されている。化粧剤溶出器の内部に於いては、主通水路と副通水路が平行に形成されており、化粧剤が溶出した水は主通水路から出た水の流れに沿うように合流する。その後、双方の水はシャワーノズルのハンドル部分を流通しつつ混合されシャワー吐水される。
【0009】
従来技術ではシャワーノズルのハンドル部分が、化粧剤が溶出した水と原水との混合領域となる。しかし、双方の水はシャワーノズルの根元側で会合したのちシャワーノズル内部の流路に沿って流通するに過ぎない。異なる流体どうしが寄り添いつつ流通する場合、両者が積極的に混合されることはない。よって、ノズル先端から吐出されるシャワー吐水にあっては、化粧剤の濃度が不均一なものとならざるを得ない。
【0010】
また、本構成の場合、シャワーノズル全体の寸法が長くなり、また、化粧剤溶出器を端部に付加するため重量も増加するからシャワーノズルの取り扱いが煩雑となる。
【0011】
このように、従来のシャワーヘッドにあっては未だ改善されるべき余地があり、各種薬液の混合効果に優れ取り扱いの容易なシャワーヘッドが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(特徴構成)
本発明に係るシャワーヘッドの特徴構成は、
原水供給部および薬液供給部を備えたヘッド本体と、
前記ヘッド本体に設けられ、前記原水供給部に連通する第1ポート、および、前記薬液供給部に連通する第2ポートを備えた基部と、
前記基部に対向しつつ相対移動して吐水状態を切り替える切替板と、
前記切替板に対向しシャワー吐水口およびミスト吐水口を有する吐水板と、を備えており、
前記切替板には、
前記第1ポートと前記第2ポートとに各別に対向可能であり前記切替板を前記基部の側から反対側に貫通する一対のシャワーポートと、前記切替板の反対面において前記一対のシャワーポートが連通するシャワー流路が形成され、さらに、
前記第1ポートと前記第2ポートとに各別に対向可能であり前記切替板を前記基部の側から反対側に貫通する一対のミストポートと、前記切替板の反対面において前記一対のミストポートが連通するミスト流路が形成され、
前記シャワー流路および前記ミスト流路の何れにおいても、前記第2ポートに対向する状態の前記シャワーポートあるいは前記ミストポートにおいて前記薬液が前記原水に混合されて混合水が生成される混合部が形成され、
前記混合部において前記混合水の流通方向が、前記吐水板のうち多数のシャワー吐水口が設けられた領域に、あるいは、前記吐水板のうち多数のミスト吐水口が設けられた領域に変向されるように構成してある点にある。
【0013】
(効果)
本構成にあっては、原水に薬液を混合して生成される混合水をシャワー水形あるいはミスト水形にてシャワーヘッドから吐水する際に、原水が流通するシャワー流路およびミスト流路の流通方向が変化する位置で原水に薬液が混合される。原水が流通方向を変える部位においては幾分の乱流が生じる。その位置で薬液を混合することで、薬液は原水に短時間で確実に混合され、混合水をシャワー形状あるいはミスト形状にて吐水することができる。
【0014】
このため、薬液を収納した容器を比較的体格の大きなヘッド本体に設置した場合に、薬液が流通する流路が短いものであっても、薬液と原水を均一に混合した状態で吐水することができる。よって、シャワーヘッドのコンパクト化が可能となる。
【0015】
本発明に係るシャワーヘッドにあっては、前記シャワー流路および前記ミスト流路の夫々が少なくとも二つ形成されており、前記混合部が、夫々の前記シャワー流路が交差する位置および夫々の前記ミスト流路が交差する位置に設けられていると好都合である。
【0016】
(効果)
本構成では、原水が流通するシャワー流路およびミスト流路を少なくとも二つ備えており、シャワー流路どうしあるいはミスト流路どうしが交差する位置に混合部が設けられる。つまり、シャワー流路およびミスト流路の何れにおいても複数の流路が交差する混合部で原水の流通方向が変化する。
【0017】
本構成であれば、混合部に到達した原水どうしが衝突して流通方向が急激に変化し、原水の乱流発生程度が高まる。これにより、原水に対する薬液の混合効果がさらに高まる。
【0018】
また、シャワー流路およびミスト流路の夫々を少なくとも二つ備えることで原水の流量を確保することができる。原水の流量を薬液の流量よりも十分に多くすることで薬液の混合割合を適切に設定し易くなる。また、原水の流量増加により吐水勢力の強いシャワーヘッドを得ることができる。
【0019】
本発明に係るシャワーヘッドにあっては、前記第2ポートに対向する前記シャワーポートおよび前記第2ポートに対向する前記ミストポートにおける前記薬液の流通方向が、少なくとも一つの前記シャワー流路の軸心方向あるいは少なくとも一つの前記ミスト流路の軸心方向に直交するように構成してあると好都合である。
【0020】
(効果)
シャワー流路あるいはミスト流路に対する薬液の流入方向は、原水と薬液を効率よく混合するための要素となる。本構成では、シャワー流路あるいはミスト流路として二つ以上設けられた原水の流路のうち少なくとも一つの流路方向に対して薬液を直交させつつ混合させるものである。本構成であれば、原水に対する薬液の混合効率が更に向上する。
【0021】
本発明に係るシャワーヘッドにあっては、前記切替板が前記基部に対して回転軸を介して支持されており、前記第1ポートと前記第2ポートが前記回転軸を挟んで対向配置され、前記シャワー流路が一対の半円弧状の流路に形成され、前記ミスト流路が一対の半円弧状の流路であって前記シャワー流路の内周側に設けられた構成とすることができる。
【0022】
(効果)
本構成の如く、シャワー流路およびミスト流路が一対の半円弧状の流路として形成されていれば、原水の流通に際して圧力損失が少なく、当該一対の流路を流通した原水どうしが正対方向に衝突して激しい乱流が形成される。よって、薬液の混合効率がより高まる。
【0023】
また、切替板が回転操作可能であれば吐水状態の切り替えが容易となり、使用感に優れたシャワーヘッドを得ることができる。
【0024】
本発明に係るシャワーヘッドにあっては、前記第1ポートおよび前記第2ポートに加えて、共に前記原水供給部に連通する第3ポートおよび第4ポートを前記ヘッド本体に設けておき、前記切替板の回転により、前記一対の前記シャワーポートが前記第3ポートおよび前記第4ポートに対向する状態と、前記一対の前記ミストポートが前記第3ポートおよび前記第4ポートに対向する状態とに切り替え可能に構成することができる。
【0025】
(効果)
本構成のごとく、第3ポートおよび第4ポートの双方を原水供給部に連通させておき、切替板を回転させて一対のシャワーポート或は一対のミストポートが第3ポートおよび第4ポートに対向できる状態を設けることで、薬液を混合しない状態でのシャワー吐水およびミスト吐水が可能となる。これにより、吐水の種類および形状の組み合わせが増え、利便性の高いシャワーヘッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係るシャワーヘッドの構成を示す分解斜視図
図2】本実施形態に係る基部の構成を示す平面図
図3】本実施形態に係る切替板の構成を示す斜視図
図4】本実施形態に係る原水および薬液の流通態様を示す説明図
図5】本実施形態に係るシャワー吐水板の構成を示す斜視図
図6】本実施形態に係るミスト吐水板の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔概要〕
本発明に係るシャワーヘッドSは、例えば浴室で使用されるものであり、シャワー水の吐水に際して吐水形状をシャワー形状とより水滴の小さなミスト形状とに切り替えることができる。さらに、シャワー形状およびミスト形状の何れにおいても水道水などの原水に対して所定量の薬液を混合することができる。当該シャワーヘッドSの実施形態につき図1乃至図6に基づいて説明する。
【0028】
本実施形態のシャワーヘッドSは、図1に示すように、ハンドルh1などを備えたヘッド本体Hに、水道水などの原水の供給ポートと各種の薬液の供給ポートとが備えられた基部Bが取り付けられている。ヘッド本体Hの内部には薬液等を貯留したカートリッジh2が収納されている。基部Bには、当該基部Bと相対回転可能であって相対回転位置の違いに応じて、原水や薬液の混合水をシャワー吐水口thsやミスト吐水口thmに誘導する切替板Kが取り付けられている。さらに、切替板Kに対向する位置には、シャワー形状やミスト形状を形成するべく多数の吐水口thが形成された吐水板Tが設けられている。吐水板Tは、シャワー吐水板Tsとミスト吐水板Tmとで構成されている。これらの部材の詳細は以下のとおりである。
【0029】
〔ヘッド本体〕
図1に示すように、シャワーヘッドSのベースとなる部位がヘッド本体Hである。ヘッド本体Hのハンドルh1には図外のホースが接続され、ハンドルh1の内部には水道水などが供給される原水供給部h3と薬液供給部h4が備えられている。原水供給部h3としては所定形状の流路が形成されている。一方の薬液供給部h4は、脱塩素作用のある亜硫酸カルシウムやビタミンC(アスコルビン酸)などの薬剤を原水の一部に混合する部位であり、通常は薬剤を保持するカートリッジh2が装着される。尚、薬液としては、石鹸水や洗剤などの洗浄剤とすることもできる。
【0030】
〔基部〕
図1および図2に示すように、ヘッド本体Hには円盤状の基部Bが取り付けられる。基部Bには例えば原水供給部h3に連通する第1ポートP1と薬液供給部h4に連通する第2ポートP2とが設けられている。ヘッド本体Hの内部においては、第1ポートP1に通じる原水供給部h3の流路形状と第2ポートP2に通じる薬液供給部h4の流路形状とが調整され、原水の流速が薬液の流速よりも大きくなるように設定されている。
【0031】
原水供給部h3からの原水および薬液供給部h4からの薬液が、これら第1ポートP1および第2ポートP2以外の部位から基部Bの手前側に漏れ出ないように、基部Bは複数本のねじb1や図外のパッキンを用いて密封性を維持した状態に取り付けられる。尚、図1および図2には第3ポートP3および第4ポートP4が示されているが、これらは省略されても良い。尚、第3ポートP3および第4ポートP4については後述する。
【0032】
図1図3に示すように、第1ポートP1および第2ポートP2は、ばね付勢されたポート部材Vを備えている。ポート部材Vは筒状の当接片v1を備え、内部を原水あるいは薬液が流通可能である。当接片v1の外周面および先端部には先端シールリングv2,外面シールリングv3が配置されている。また、当接片v1の内部にはコイルスプリングからなる第1ばねv4が装着されており、常時、当接片v1が後述の切替板Kの裏面に設けた摺接面k3に当接付勢される。外面シールリングv3は当接片v1と基部Bとの隙間をシールし、先端シールリングv2は当接片v1と切替板Kの摺接面k3との隙間をシールする。
【0033】
また、基部Bの周辺部には、切替板Kの相対回転角度を規制する一対のストッパb2が形成されている。このストッパb2に当接する凸片k1は切替板Kに設けてある。ストッパb2の近傍には、切替板Kの相対回転位置にクリック感を生じさせる出退片b3が設けられている。出退片b3は、凹状の受部b5に挿入配置され、コイルスプリングからなる第2ばねb4により切替板Kに向けて常時付勢されている。出退片b3の先端が嵌まり込む複数の凹部k2が切替板Kの裏面に円弧状に分散して設けられている。
【0034】
〔切替板〕
図1および図3に示すように、切替板Kが基部Bに対してねじb6を用いて装着されている。切替板Kは、凸片k1およびストッパb2により回転角度を規制された状態で基部Bと相対回転する。
【0035】
図3(b)に示すように、切替板Kの裏面には、第1ポートP1や第2ポートP2が摺接可能な環状の摺接面k3が設けられている。摺接面k3には、回転軸Zを挟んで対称な位置に一対のシャワーポートPsと一対のミストポートPmが設けられている。これらシャワーポートPsとミストポートPmは円周方向に沿って隣接している。切替板Kの摺接面k3にあってはシャワーポートPsとミストポートPmとは略同じ円周上に開口している。ただし、切替板Kの反対面においては、シャワーポートPsは環状の仕切壁k4の外側に開口し、ミストポートPmは仕切壁k4の内側に開口している。
【0036】
図3および図4に示すように、切替板Kの反対面つまり表面に於いては仕切壁k4の外側の環状空間がシャワー流路Rsとなり、仕切壁k4の内側の環状空間がミスト流路Rmとなる。シャワー流路Rsおよびミスト流路Rmは切替板Kの切替姿勢により択一的に切替稼働する。
【0037】
図4(a)には、一対のシャワーポートPsが基部Bの第1ポートP1および第2ポートP2に対向する状態を示す。このときシャワー流路Rsにあっては、一方のシャワーポートPsから原水が供給され、実線矢印で示すように左右のシャワー流路Rsを流通して反対側の位置で合流する。この合流位置には他方のシャワーポートPsが開口しており、ここからは第2ポートP2を介して薬液が供給される。つまり、この合流位置が原水および薬液の混合部Pxとなる。シャワー流路Rsに係る混合部Pxを特に第1混合部Px1とする。
【0038】
第1混合部Px1においては原水の流通方向が急変する。つまり、切替板Kの円周方向に沿って流通して来た原水が第1混合部Px1において衝突する。図5に示すように、シャワー吐水板Tsの裏面には、シャワー流路Rsの外側壁部と対向する状態に環状の第3仕切壁t1が形成されている。第3仕切壁t1の一部には、第1混合部Px1に隣接する位置に切欠部t1aが形成されている。
【0039】
図4に示すように、第1混合部Px1で衝突した原水および薬液は、切欠部t1aを介して切替板Kの径外方向に変向したのち後述のシャワー吐水口thsに向かう。ここでは原水に乱流が生じる。本実施形態では、この位置において薬液を混合する。薬液は原水に短時間で確実に混合される。これにより、薬液を収納したカートリッジh2をヘッド本体Hに設置した場合に、薬液供給部h4の流路が短いものであっても、薬液と原水を均一に混合した状態で吐水することができる。
【0040】
一方、図4(b)に示すように、切替板Kの一対のミストポートPmが基部Bの第1ポートP1と第2ポートP2に対向している状態では、第1ポートP1に対向するミストポートPmから仕切壁k4の内側のミスト流路Rmに原水が供給される。ミスト流路Rmの内周側には環状の第2仕切壁k5が形成されている。原水は、左右の半円弧状のミスト流路Rmを流通して反対側の位置で合流する。この合流位置には他方のミストポートPmが開口しており、ここからは第2ポートP2を介して薬液が供給される。上記と同様にこの合流位置が原水および薬液の混合部Px、特には第2混合部Px2となる。
【0041】
半円弧状のミスト流路Rmを流通してきた原水は互いに衝突し、第2仕切壁k5のうち第2混合部Px2に隣接する位置に設けた切欠部k5aを介して切替板Kの径内方向に変向され後述のミスト吐水口thmに向かう。第2混合部Px2でも原水に乱流が生じることとなり、この位置において薬液が効率よく混合される。
【0042】
〔吐水板〕
図1および図5図6に示すように、吐水板Tは切替板Kを覆い、多数のシャワー吐水口thsおよびミスト吐水口thmを備えている。本実施形態の吐水板Tは、外周側に配置される環状のシャワー吐水板Tsと、中央に配置されるミスト吐水板Tmとが組み合わせて構成される。シャワー吐水板Tsの外縁部には回転操作用のつまみt2が形成されている。
【0043】
シャワー吐水板Tsの中央の孔部にはミスト吐水板Tmが嵌め込まれる。当該嵌合部には切替板Kに向けて突出する環状の第3仕切壁t1が形成されている。一体となった吐水板Tが切替板Kに取り付けられることで、切替板Kの仕切壁k4がシャワー吐水板Tsの第3仕切壁t1に当接してシャワー流路Rsが形成される。
【0044】
図5にはシャワー吐水板Tsの裏面を示す。第3仕切壁t1の外周部の一部に、周方向に沿った切欠部t1aが形成されている。この切欠部t1aにおいてシャワー流路Rsと多数のシャワー吐水口thsとが連通し、原水あるいは薬液を含む混合水がシャワー吐水板Tsの全領域に向かって流通する。切欠部t1aは周方向に沿って一定の長さを備え、シャワーポートPsは切欠部t1aのうち周方向に沿った略中央に位置する。これにより、原水あるいは混合水が環状のシャワー吐出領域に広がり易くなる。
【0045】
図6(a)(b)に示すように、ミスト吐水板Tmは、原水或いは混合水の流通方向に沿って上手側から順に第1ミスト板Tm1と第2ミスト板Tm2とを組み合わせて構成される。第1ミスト板Tm1には中央側において環状二列に配置された内側孔部thaと、その外周側に於いて環状一列に配置され第2ミスト板Tm2の外周側に向けて開口する外側孔部thbとが形成されている。
【0046】
第2ミスト板Tm2に於いては、内側孔部thaを貫通した混合水等の多くは、第2ミスト板Tm2のうち内側孔部thaに対向して環状に配置形成された複数の内側ミスト吐水口th1に流入する。内側ミスト吐水口th1は円錐形状の貫通凹部である。
【0047】
第1ミスト板Tm1のうち内側ミスト吐水口th1に対向する位置には、内側ミスト吐水口th1に突入する略円錐状の突起Tm1aが形成されている。さらに、第2ミスト板Tm2の裏面に於いて内側ミスト吐水口th1の外縁部には、混合水等を内側ミスト吐水口th1に向けて螺旋状に導くべく接線状の誘導溝th3が形成されている。これらにより、第1ミスト板Tm1と第2ミスト板Tm2とを組み合わせた際には、内側ミスト吐水口th1の内面と突起Tm1aの外面との間に円錐形状の隙間が形成される。これにより、内側ミスト吐水口th1を通過する混合水等は高速の旋回流となり、極めて微細なミストとなって第2ミスト板Tm2から吐出される。
【0048】
また、第2ミスト板Tm2のうち外側孔部thbに対向する位置には、例えば環状二列に形成された外側ミスト吐水口th2が形成されている。外側ミスト吐水口th2も略円錐状の貫通凹部を備える。ただし、外側ミスト吐水口th2は内側ミスト吐水口th1よりも小径であり、ここには他の突起などは侵入しない。外側ミスト吐水口th2には、主に外側孔部thbを通過した混合水等が流入し、内側ミスト吐水口th1によって形成された極微細なミストを包囲する状態に別のミストが形成される。
【0049】
〔切替板の詳細構造〕
本発明のシャワーヘッドSにおいては、以下に示すように切替板Kをより詳細に構成することで原水と薬液との混合効率をさらに高めることができる。具体的には、図4に示すように、シャワーポートPsあるいはミストポートPmが第2ポートP2に対向する状態となり、薬液がシャワーポートPsあるいはミストポートPmを通過する際、通過後の薬液の流通方向がシャワー流路Rsの軸心方向に直交するように構成する。
【0050】
薬液は、半円弧状の二つのシャワー流路Rsの後端部が交差する位置において切替板Kを貫通する。これにより薬液は切替板Kの回転軸Zと平行な方向に供給される。つまり、切替板Kの平面に沿って半円弧状に形成されたシャワー流路Rsあるいはミスト流路Rmに対して、薬液は常に直交する方向に混合される。
【0051】
シャワー流路Rsあるいはミスト流路Rmに対する薬液の流入方向は、原水と薬液を効率よく混合するための要素となる。本構成では、シャワー流路Rsあるいはミスト流路Rmとして二つ以上設けられた原水の流路のうち少なくとも一つの流路方向に対して薬液を直交させつつ混合させる。これにより、原水に対する薬液の混合効率が更に向上する。
【0052】
図3および図4に示すように、本実施形態の切替板Kにあっては、シャワー流路Rsおよびミスト流路Rmとしては、夫々、半円弧状の流路が二つ形成されている。二つのシャワー流路Rsが交差する位置および二つのミスト流路Rmが交差する位置には混合部Pxが設けられる。尚、シャワー流路Rsおよびミスト流路Rmは三つ以上設けられるものであっても良い。
【0053】
本構成であれば、シャワー流路Rsおよびミスト流路Rmの何れにおいても複数の流路が交差する混合部Pxで原水どうしが衝突し、流通方向が急激に変化する。これにより、原水の乱流発生程度が高まり、原水に対する薬液の混合効果がさらに高まる。
【0054】
また、シャワー流路Rsおよびミスト流路Rmの夫々を少なくとも二つ備えることで原水の流量を確保することができる。この結果、原水の流量が薬液の流量よりも多くなり、薬液の混合割合を適切に設定し易くなる。さらに、原水の流量が増えることで吐水勢力の強いシャワーヘッドSを得ることができる。尚、原水と薬液との混合割合としては、希釈程度が高い場合であれば、例えば、原水:薬剤=10:1程度である。
【0055】
本実施形態のシャワーヘッドSにあっては、切替板Kが基部Bに対して回転軸Zを介して支持されており、第1ポートP1と第2ポートP2が回転軸Zを挟んで対向配置してある。この構成において、特に第1ポートP1および第2ポートP2に連通するシャワー流路Rsおよびミスト流路Rmが一対の半円弧状の流路として形成されている。
【0056】
本構成のように半円弧状の流路であれば、一対のシャワー流路Rsあるいは一対のミスト流路Rmを流通する原水の圧力損失が少なくなる。その結果、混合部Pxに到達した原水どうしが正対方向に衝突して激しい乱流が形成され薬液の混合効率が高まる。
【0057】
また、切替板Kが吐水板Tに設けたつまみt2によって回転操作可能であれば、吐水状態の切り替えが容易となり、使用感に優れたシャワーヘッドSを得ることができる。
【0058】
本発明に係るシャワーヘッドSにあっては、図2に示すように、第1ポートP1および第2ポートP2に加えて、共に原水供給部h3に連通する第3ポートP3および第4ポートP4をヘッド本体Hに設けておいてもよい。これにより、切替板Kを回転させることで、一対のシャワーポートPsが第3ポートP3および第4ポートP4に対向する状態と、一対のミストポートPmが第3ポートP3および第4ポートP4に対向する状態とに切り替え可能となる。
【0059】
この場合、切替板KのシャワーポートPsとミストポートPmが、例えば第1ポートP1~第4ポートP4に対して4種類の対応で切り替わる。即ち、二つのシャワーポートPsが第1ポートP1と第2ポートP2に連通し、二つのミストポートPmが第1ポートP1と第2ポートP2に連通し、二つのシャワーポートPsが第3ポートP3と第4ポートP4に連通し、二つのミストポートPmが第3ポートP3と第4ポートP4に連通する場合である。特に、本構成では、シャワーポートPsとミストポートPmが第3ポートP3と第4ポートP4に対して対向可能となり、この場合、流通するのは原水だけである。つまり、シャワー吐水口ths或はミスト吐水口thmの何れからも原水が吐水される。
【0060】
本構成であれば、薬液を混合しない状態でのシャワー吐水およびミスト吐水が可能となるから、吐水の種類および形状の組み合わせが増え、利便性の高いシャワーヘッドSを得ることができる。
【0061】
さらに図示は省略するが、第4ポートP4に第2の薬液を保持するカートリッジh2を接続することもできる。この場合には、第2ポートP2に係る第1の薬液の混合態様と同様に、切替板Kの回転位相を切り替えることで、原水に係るシャワー吐水と第2の薬液に係るミスト吐水とを選択することができる。
【0062】
尚、シャワーヘッドSを構成する基部Bや切替板K、シャワー吐水板Ts、ミスト吐水板Tm等は、POM(polyacetal)で構成することができる。POMであれば必要な強度や耐摩擦性能を備え、係合爪などの形成にも優れている。また、樹脂成形時の湯じわ等の成形不良も少ないうえコストも合理的である。ただし、これに限られるものではなく、例えば耐摩擦性能の要求が低い場合にはABS樹脂(Acrylonitrile-Styrene-Acrylate resin)やPPS(Poly Phenylene Sulfide)等を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るシャワーヘッドSは、原水と薬液との混合が可能でありシャワー吐水とミスト吐水とを切り替え選択できるものに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
B 基部
H ヘッド本体
h3 原水供給部
h4 薬液供給部
K 切替板
P1 第1ポート
P2 第2ポート
P3 第3ポート
P4 第4ポート
Pm ミストポート
Ps シャワーポート
Px 混合部
Rm ミスト流路
Rs シャワー流路
S シャワーヘッド
T 吐水板
thm ミスト吐水口
ths シャワー吐水口
図1
図2
図3
図4
図5
図6