IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-包装袋および紙製シート 図1
  • 特開-包装袋および紙製シート 図2
  • 特開-包装袋および紙製シート 図3
  • 特開-包装袋および紙製シート 図4
  • 特開-包装袋および紙製シート 図5
  • 特開-包装袋および紙製シート 図6
  • 特開-包装袋および紙製シート 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102500
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】包装袋および紙製シート
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20240724BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006422
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】武士田 満
(72)【発明者】
【氏名】多久島 七重
(72)【発明者】
【氏名】若松 元子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文彦
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064AD14
3E064BA01
3E064BA27
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC20
3E064HM01
3E064HN06
3E064HN12
3E064HP01
3E064HP02
(57)【要約】
【課題】開封方向を限定せずに左右両方向から包装袋を開封できるようにする。
【解決手段】包装袋は表面シート11および裏面シートを備えるもので,上記表面シート11および裏面シートが紙層を備え,同じ箇所に,包装袋の幅方向にのびるミシン目が表面シート11および裏面シートの紙層に形成されている。表面シート11のミシン目20は,包装袋の幅方向に対して線対称に傾斜したハ字形切れ目21を,幅方向に所定間隔をあけて断続的に複数形成することによって構成され,幅方向の一方側がわを拡開側,他方側がわを縮閉側とするハ字形切れ目列22a,22bを備えている。表面シート11はさらに包装袋の幅方向と垂直な方向にハ字形切れ目列22bと間隔をあけて形成され,ハ字形切れ目列22bとの間で,包装袋の幅方向の一方側がわを縮閉側,他方側がわを拡開側とする逆ハ字形切れ目列を構成する複数の切れ目21の列を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートおよび裏面シートを備える包装袋であって,
上記表面シートおよび裏面シートが紙層を備え,同じ箇所に,上記包装袋の幅方向にのびるミシン目が上記表面シートおよび裏面シートの紙層に形成されており,
上記表面シートおよび裏面シートの少なくともいずれか一方に形成されているミシン目が,
包装袋の幅方向に対して線対称に傾斜したハ字形切れ目を,幅方向に所定間隔をあけて断続的に複数形成することによって構成される,幅方向の一方側がわを拡開側,他方側がわを縮閉側とするハ字形切れ目列,ならびに
上記包装袋の幅方向と垂直な方向に上記ハ字形切れ目列と間隔をあけて形成され,隣り合うハ字形切れ目列との間で,上記包装袋の幅方向の一方側がわを縮閉側,他方側がわを拡開側とする逆ハ字形切れ目列を構成する複数の半ハ字形切れ目を備えている,
包装袋。
【請求項2】
複数の上記ハ字形切れ目列が,上記包装袋の幅方向と垂直な方向に間隔をあけて並んで形成されている,
請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
上記表面シートおよび裏面シートが紙層およびシーラント層の多層構造を備えている,
請求項1に記載の包装袋。
【請求項4】
上記紙層の紙坪量が40~125g/mの範囲である,
請求項1に記載の包装袋。
【請求項5】
上記表面シートと上記裏面シートの両方に同一形状の上記ハ字形切れ目列および上記半ハ字形切れ目列が形成されている,
請求項1に記載の包装袋。
【請求項6】
上記表面シートおよび上記裏面シートの一方に,上記ハ字形切れ目列および上記半ハ字形切れ目列が形成されており,
上記表面シートおよび上記裏面シートの他方に,直線状の複数の切れ目が幅方向に所定間隔をあけて断続的に複数形成された直線状切れ目列が形成されている,
請求項1に記載の包装袋。
【請求項7】
上記直線状切れ目列が,他方のシートに形成されたハ字形切れ目列を構成するハ字形切れ目の間に位置している,
請求項6に記載の包装袋。
【請求項8】
上記紙層が紙目を備え,上記紙目と上記包装袋の幅方向とが一致している,
請求項1に記載の包装袋。
【請求項9】
紙層を備え,紙層の紙目に沿う方向にミシン目が形成されており,
上記ミシン目が,
紙目方向に対して線対称に傾斜したハ字形切れ目を,紙目方向に所定間隔をあけて断続的に複数形成することによって構成される,紙目方向の一方側がわを拡開側,他方側がわを縮閉側とするハ字形切れ目列,ならびに上記紙目方向と垂直な方向に上記ハ字形切れ目列と間隔をあけて形成され,隣り合うハ字形切れ目列との間で,上記紙目方向の一方側がわを縮閉側,他方側がわを拡開側とする逆ハ字形切れ目列を構成する複数の半ハ字形切れ目を備えている,
紙製シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は包装袋および紙製シートに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋プラスチック問題や地球温暖化などの環境問題を発端にしてプラスチック使用量の削減が求められている。プラスチックに代えて持続可能な原料としての紙の活用が近年増加している。
【0003】
プラスチックフィルムとは異なり紙はまっすぐに切ることが難しい。意図しない箇所で紙製包装袋が開封されるとカット部の外観が悪くなり,開封性も劣ることがある。
【0004】
特許文献1は,略ハ字形をなすように傾斜した対をなす2つの切目が間隔をあけて開封ラインに沿って断続状に形成された包装袋を開示する。略ハ字形の切目の拡開した側から包装袋を引裂くことで,開封ラインに沿って包装袋を引裂き開封することできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第2566444号公報
【0006】
特許文献1の包装袋は開封方向が限定される。すなわち,略ハ字形に形成された切目の拡開した側から引裂かなければならない。拡開した側と反対側から包装袋を引裂くと開封ラインを外れてしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は,開封方向が限定されず,左右両方向から包装袋を開封することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による包装袋は,表面シートおよび裏面シートを備えるもので,上記表面シートおよび裏面シートが紙層を備え,同じ箇所に(表面シートと裏面シートを重ねたときの同じ箇所に)上記包装袋の幅方向にのびるミシン目が上記表面シートおよび裏面シートの紙層に形成されており,上記表面シートおよび裏面シートの少なくともいずれか一方に形成されているミシン目が,包装袋の幅方向に対して線対称に傾斜したハ字形切れ目を,幅方向に所定間隔をあけて断続的に複数形成することによって構成される,幅方向の一方側がわを拡開側,他方側がわを縮閉側とするハ字形切れ目列,ならびに上記包装袋の幅方向と垂直な方向に上記ハ字形切れ目列と間隔をあけて形成され,隣り合うハ字形切れ目列との間で,上記包装袋の幅方向の一方側がわを縮閉側,他方側がわを拡開側とする逆ハ字形切れ目列を構成する複数の半ハ字形切れ目を備えている。
【0009】
ミシン目に沿って包装袋を幅方向に引き裂こうとする場合,ハ字形切れ目の拡開側から縮閉側に向かって包装袋は引裂きやすい。この発明によると,包装袋には幅方向の一方側がわを拡開側,他方側がわを縮閉側とするハ字形切れ目列に加えて,幅方向の一方側がわを縮閉側,他方側がわを拡開側とする逆ハ字形切れ目列を備えるので,左から右向きにも,右から左向きにも両方向から引裂きやすい。開封方向が限定されない包装袋が提供される。
【0010】
複数のハ字形切れ目列を包装袋の幅方向と垂直な方向に間隔をあけて並べて形成してもよい。
【0011】
一実施態様では,上記表面シートおよび裏面シートが紙層およびシーラント層の多層構造を備えている。水密性,バリア性等の機能を包装袋に与えることができる。
【0012】
表面シートと裏面シートの両方に同一形状の上記ハ字形切れ目列および上記半ハ字形切れ目列を形成してもよいし,表面シート(または裏面シート)に上記ハ字形切れ目列および上記半ハ字形切れ目列を形成し,裏面シート(表面シート)には直線状の複数の切れ目が幅方向に所定間隔をあけて断続的に複数形成された直線状切れ目列を形成してもよい。上記直線状切れ目列は,他方のシートに形成されたハ字形切れ目列を構成するハ字形切れ目の間(「ハ」形状の左線と右線の間)に位置させると,所望の位置において表面シートおよび裏面シートを引き裂くことができる。
【0013】
一実施態様では,上記紙層が紙目を備え,上記紙目と上記包装袋の幅方向とが一致している。包装袋が引き裂かれる向きに紙目を揃えておくことによって包装袋を引き裂いたときの紙剥けを少なくすることができる。紙層にはたとえば紙坪量が40~125g/mの範囲のものが用いられる。
【0014】
この発明は,紙層を備え,紙層の紙目に沿う方向にミシン目が形成されており,上記ミシン目が,紙目方向に対して線対称に傾斜したハ字形切れ目を,紙目方向に所定間隔をあけて断続的に複数形成することによって構成される,紙目方向の一方側がわを拡開側,他方側がわを縮閉側とするハ字形切れ目列,ならびに上記紙目方向と垂直な方向に上記ハ字形切れ目列と間隔をあけて形成され,隣り合うハ字形切れ目列との間で,上記紙目方向の一方側がわを縮閉側,他方側がわを拡開側とする逆ハ字形切れ目列を構成する複数の半ハ字形切れ目を備えている紙製シートも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】紙製包装袋の正面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】切れ目が形成されている範囲の表面シートの一部拡大断面図である。
図4】表面シートに形成されるミシン目を拡大して示す。
図5】他の実施例のミシン面を拡大して示す。
図6】裏面シートに形成されるミシン目を拡大して示す。
図7】比較評価試験の試験結果を示す。
【実施例0016】
図1は,紙製包装袋1の正面図である。図1において紙製包装袋1の周縁部における細かいハッチング模様で示す範囲はシール範囲である。図2図1のII-II線に沿う断面図である。図2において,分かりやすくするために,上部が開口しており,後述する表面,裏面シートの間隔が少し広げられた状態が示されている。
【0017】
紙製包装袋1は,正面から見て,全体的には四隅の角が丸められた方形の形状を備える筒状の包装袋本体10を含む。包装袋本体10は,その表裏面を形成する表面シート11および裏面シート12と,底部に襠部を形成する底部シート13とを備える,いわゆるスタンディング・タイプのものである。包装袋本体10を構成する表面,裏面および底部シート11,12,13は,それぞれ1枚の紙製シート(詳細は後述する)によって構成されており,包装袋本体10の両側部において表,裏面シート11,12の外縁部分が互いにシールされ,包装袋本体10の下部では底部シート13の外縁部分と表,裏面シート11,12の外縁部分とが互いにシールされている。シールはシート同士の接着(溶着を含む)により行なわれる。包装袋本体10の上部が開口可能であり,内容物を充填する前では,底部シート13はその中央部で山折りに折り畳まれて,表面シート11と裏面シート12との間に挟まれる。
【0018】
包装袋本体10の形状は,正面から見て方形のものに限られず,円形,楕円形,三角形その他の形状であってもよい。また,自立性が要求されない場合には,包装袋本体10の形態として平パウチ・タイプであってもよい。また,包装袋本体10の下部を立方体状に形成し,上部を立方体の天面に沿わせて折り畳む形態のボックスパウチ・タイプであってもよい。シールについても,三方シール・タイプ,背シール・タイプ,四方シール・タイプその他の形態を採用することができる。三方シール・タイプ,背シール・タイプでは1枚のシートを折ることで袋状にすることができる。包装袋本体10が1枚のシートにより形成される場合であっても,包装袋本体10の形態は,表面および裏面(正面および背面と言ってもよい)の両面のシートによって構成されると見ることができる。四方シール・タイプ(平パウチ・タイプ)は表面シート11と裏面シート12の2枚のシートから形成することができる。
【0019】
包装袋本体10の上部開口から内容物が充填される。後述するように,包装袋本体10を構成する表面,裏面および底部シート11,12,13は紙製であるため,一般には,比較的水分の少ない食料品,薬品,その他の物品が充填される。粉状物または粒状物を充填することもできる。包装袋本体10内に粉状物または粒状物を直接に充填してもよいし,個包装した粉状物または粒状物を包装袋本体10内に収納してもよい。もっとも表面,裏面および底部シート11,12,13に水密機能を付与する機能層を付加することによって液状物を内容物とすることもできる。
【0020】
内容物が充填されると,底部シート13はその折り畳み状態が解消されて下向きに下がりつつ次第に広がっていく。表面シート11,裏面シート12は次第にその間隔が広がり内部空間が大きくなる。内容物を充填した後,開口している包装袋本体10の上端部がシールされることで開口が閉じられ,これにより包装袋本体10内に内容物が密封される。表面シート11および裏面シート12の下端縁部によって,内容物が充填された紙製包装袋1を自立させることができる。
【0021】
包装袋本体10の上部に,包装袋本体10の両側部を結ぶ向き(幅方向,開封方向)にのびるミシン目20およびチャック部材30が設けられている。ミシン目20の方が包装袋本体10の上縁に近く,ミシン目20のすぐ下側にチャック部材30が位置する。
【0022】
ミシン目20は,包装袋本体10の両側部を結ぶ向き(幅方向,開封方向)に並んで形成された複数の切れ目21から構成される。ミシン目20よりも下側の包装袋本体10の左側シール部を左手で摘まみ,かつミシン目20よりも上側の包装袋本体10の左側シール部を右手で摘まみ,右手で摘まんだ包装袋本体10の左側シール部を右方向に移動させると,ミシン目20に沿って包装袋本体10を引き裂くことができる。逆に,ミシン目20よりも下側の包装袋本体10の右側シール部を右手で摘まみ,かつミシン目20よりも上側の包装袋本体10の右側シール部を左手で摘まみ,左手で摘まんだ包装袋本体10の右側シール部を左方向に移動させても,ミシン目20に沿って包装袋本体10を引き裂くことができる。ミシン目20は,上述した左右の両方向から包装袋本体10を引き裂きやすくする構造を備えており,その詳細については後述する。
【0023】
ミシン目20がのびる左右の両端部に位置する包装袋本体10の両側シール部分にノッチ16が形成されている。ノッチ16を契機にすることで,ミシン目20に沿って,包装袋本体10を容易に引き裂くことができる。
【0024】
チャック部材30は,包装袋本体10の両側部を結ぶ向きにのびる,表面シート11の内面に設けられる雌部30Aと,裏面シート12の内面に設けられる雄部30Bと,から構成されている。雌部30Aおよび雄部30Bはいずれも表,裏面シート11,12のそれぞれの内面に接着されて固定されており,外側からは見えない。図2を参照して,雄部30Bの先端部分には拡径部が形成されており,対向する雌部30Aには雄部30Bの拡径部が係合する凹部が形成されている。拡径部を凹部に係合させることによって,包装袋本体10の開口を閉鎖することができる。表面シート11の上部および裏面シート12の上部を互いに離れる向きに引っ張ると雌部30Aと雄部30Bの係合は外れ,包装袋本体10の上端部は再び開口する。チャック部材30を用いることで包装袋本体10は何度でもリクローズすることができる。
【0025】
図3は,ミシン目20を構成する切れ目21が形成されている範囲の表面シート11の一部拡大断面図である。裏面および底部シート12,13も同様の層構造を備えている。なお,ミシン目20を構成する切れ目21については,裏面シート12にも形成されるが,底部シート13には形成されない。
【0026】
表面シート11は紙層11Aとシーラント層11Bとを備える積層シートから構成される。紙層11Aが表面シート11の表面であり,包装袋本体10の外面となる。シーラント層11Bが表面シート11の裏面であり,包装袋本体10の内面となる。
【0027】
紙層11Aにはたとえば40~125g/mの坪量のものが用いられる。シーラント層11Bには,ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。紙層11Aおよびシーラント層11Bの間には,必要に応じて,接着層,バリア層など(ポリエチレンテレフタレート(PET),エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMAA)など)をさらに積層することもできる。また,紙層11Aの外面さらに内面には印刷を施す(インクを積層する)こともできる。図2に示す断面図では,分かりやすくするために,表面シート11,裏面シート12および底部シート13が単層のものとして図示されていることを理解されたい。
【0028】
表面シート11の最外層を構成する紙層11Aに,上述したミシン目20を構成する切れ目21が形成される。ミシン目20(切れ目21)は紙層11Aのみに形成され,紙層11Aに積層されるシーラント層11Bその他の層には形成されない。
【0029】
図4は表面シート11に形成されるミシン目20(切れ目パターン)の一部を拡大して示している。
【0030】
ミシン目20は上述したように紙層11Aにあけられた複数の切れ目21によって構成されるもので,複数の切れ目21によって所定のパターンが形成される。
【0031】
図4に示すミシン目20は,いわゆるハ字形を形成するようにして包装袋の幅方向(開封方向)に対して線対称に傾斜した1対の切れ目21を,幅方向に沿って所定間隔をあけて断続的に複数形成することによって構成される切れ目の列(以下,切れ目列という)を,2.5列分(0.5列はハ字形の一方のみの列(半列)を意味する)を形成したものである。ハ字形は,幅方向(開封方向)と垂直な方向に間隔をあけて並ぶ1対(2つ)の所定長の切れ目21によって構成され,幅方向の一方に向かって互いに離れ,かつ幅方向の他方に向かって互いに近づくように傾斜した,幅方向に対して線対称の短い直線状の切れ目21から構成される。以下,1対のハ字形切れ目21が互いに離れる側を「拡開側」と呼び,1対の切れ目21が互いに近づく側を「縮閉側」と呼ぶ。
【0032】
ミシン目20は,第1のハ字形の切れ目列22aと,第2のハ字形の切れ目列22bと,第3の切れ目列(半ハ字形切れ目列)22cが,幅方向に垂直な方向に所定間隔をあけて並んで形成されたものである。第1の切れ目列22aおよび第2の切れ目列22bはハ字形の1対の切れ目21によって構成され,第3の半ハ字形切れ目22cはハ字形の一方の切れ目21の列のみによって構成されている。第2の切れ目列22bの下段(第3の半ハ字形切れ目列22cに近いがわ)と第3の半ハ字形切れ目列22cによって,第1の切れ目列22aとは拡開側および縮閉側を逆にするハ字形(逆ハ字形)の切れ目列が形成される。
【0033】
ハ字形を形成する1対の切れ目21が互いになす角度はたとえば50°である。また,一例として,切れ目21の長さは1.25mm,ハ字形を形成する1対の切れ目21同士の間隔は1.34mm,第1の切れ目列22aと第2の切れ目列22bの間,第2の切れ目列22bと第3の半ハ字形切れ目列22cの間は,0.5mmとされる。
【0034】
ミシン目20に沿って包装袋本体10を引き裂こうとする場合,ハ字形を形成する1対の切れ目21の拡開側からその反対の縮閉側に向かう方向に包装袋本体10は引裂きやすい。図4に示すミシン目20の左端を参照して,ミシン目20の左端には,第1の切れ目列22aおよび第2の切れ目列22bのそれぞれに拡開側から縮閉側に向かう列が形成されているので,これらの2つの拡開側から縮閉側に向かう列のいずれか(両方にまたがってもよい)に沿って,包装袋本体10を左端側から引き裂きやすい。
【0035】
図4に示すミシン目20の右端を参照して,ミシン目20の右端にも,2つの拡開側から縮閉側に向かう列が形成されている。すなわち,第1の切れ目列22a(の下段の半列)と第2の切れ目列22b(の上段の半列)の間,そして第2の切れ目列22b(の下段の半列)と第3の半ハ字形切れ目列22cの間に,拡開側から縮閉側に向かう列が形成されている。図4に示すミシン目20は,右端からでも,これらの2つの拡開側から縮閉側に向かう列のいずれかに沿って包装袋本体10を引き裂きやすい。
【0036】
図5は他の実施例のミシン目20Aを示すもので,図4に示すミシン目20とは,第1の切れ目列22aおよび第2の切れ目列22bと第3の半ハ字形切れ目列22cの間に,互いに間隔をあけて幅方向(開封方向)に直線状に並ぶ直線状切れ目23が形成されている点が異なる。直線状切れ目23によって,ミシン目20Aが形成されている範囲を逸脱する(はみ出る)ことなく,包装袋本体10の上端部分を一方の端部から他方の端部に至る全体にわたって,両方向から正確に引裂くことができる。
【0037】
裏面シート12にも,表面シート11と同様のミシン目20,20Aを形成することができる。裏面シート12に形成されるミシン目20,20Aは,表面シート11に形成されるミシン目20,20Aと重なる位置(対応する箇所,同じ箇所)に形成されるのは言うまでもない。
【0038】
表面シート11と異なるパターンのミシン目を裏面シート12に形成してもよい。たとえば,表面シート11にはミシン目20(図4)またはミシン目20A(図5)を形成し,裏面シート12には,図6に示すような,互いに間隔をあけて幅方向に直線状に並ぶ複数の切れ目25から構成されるミシン目20Bを形成してもよい。裏面シート12に形成されるミシン目20Bを構成する切れ目25は,好ましくは,表面シート11に形成されるミシン目20,20Aが形成されている範囲内であって,かつミシン目20,20Aを構成する切れ目21が形成されていない列に沿う位置に形成するのが好ましい。
【0039】
図7は比較評価試験の試験結果を示している。
【0040】
比較評価試験では,以下に説明する積層体1~3の3種類の積層体を作成し,3種類の積層体のそれぞれを用いて,ミシン目の形状を異ならせた包装袋本体10(100mm×100mmの寸法を持つもの)を作成し(比較例2のみ積層体2を用いた包装袋本体のみを作成),それらの「切れ性」を評価した。切れ性の評価では左側部から右側部に向けて包装袋本体10を幅方向に引き裂いたときの結果(20個のサンプルのうちまっすぐに引き裂くことができたサンプルの個数)と,右側部から左側部に向けて包装袋本体10を引き裂いたときの結果とが示されている。
【0041】
[積層体1]
紙(坪量50g/m)/LDPE(低密度ポリエチレン)(厚さ15μm)/透明蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)(厚さ12μm)/ポリエチレンフィルム(厚さ40μm)
【0042】
[積層体2]
紙(坪量80g/m)/LDPE(厚さ15μm)/透明蒸着PET(厚さ12μm)/ポリエチレンフィルム(厚さ40μm)
【0043】
[積層体3]
紙(坪量120g/m)/EMAA(厚さ15μm)/透明蒸着PET(厚さ12μm)/LDPE(厚さ40μm)
【0044】
ミシン目は,紙層の紙目(繊維の向き)に沿ってミシン目が形成されるようにミシン刃を紙に押し付けて貫通させることによって作成した。
【0045】
包装袋本体10は,積層体1~3のシーラント面(積層体1~3における紙層と反対側の面)を向かい合わせにして四方をヒートシールすることによって作成した。
【0046】
図7を参照して,比較例1-1,1-2および1-3は,積層体1~3から構成される表面シート11および裏面シート12にミシン目を形成せず,ミシン目のない表面,裏面シート11,12を用いて作成した包装袋本体である。「切れ性」を参照して,20個のサンプルのすべてについてまっすぐに開封することができなかった(紙剥けが発生した)。
【0047】
比較例2は,積層体1~3から構成される表面シート11および裏面シート12に2列分のミシン目を形成し,この表面,裏面シート11,12を用いて作成した包装袋本体である(図4に示すミシン目20を参照して,第1および第2の切れ目列22a,22bを備え,第3の半ハ字形切れ目列22cを持たないものである)。比較例2については,左端から右端に向かう向きに包装袋本体10を引き裂いたときにまっすぐに開封することができた数が20個のサンプル中18個であったのに対し,右端から左端に向かう向きに包装袋本体10を引き裂くと,まっすぐに開封することができたサンプルは20個中11個と,約半減した。開封方向によって開封性にばらつきがあることが分かる。
【0048】
実施例1-1~1-3は,積層体1~3から構成される表面シート11および裏面シート12の両方にミシン目20(図4)を作成した包装袋本体10についての評価試験結果を示している。実施例2-1~2-3は積層体1~3から構成される表面シート11にミシン目20(図4)を作成し,かつ積層体1~3から構成される裏面シート12に直線ミシン目20B(図6)を作成したものである。実施例3-1~3-3は,積層体1~3から構成される表面シート11および裏面シート12の両方に,ハ字形切れ目21および直線状切れ目23から構成されるミシン目20A(図5)を作成したものである。いずれの実施例についても,左右両方向からまっすぐに包装袋本体を引き裂くことができたものが多く,開封方向が限定されない(ばらつきがない)ことが分かる。
【符号の説明】
【0049】
1 紙製包装袋
10 包装袋本体
11 表面シート
11A 紙層
11B シーラント層
12 裏面シート
13 底部シート
16 ノッチ
20,20A,20B ミシン目
21,25 切れ目
22a,22b 切れ目列
22c 半ハ字形切れ目列
23 直線状切れ目
30 チャック部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7