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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102501
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】フィルタ及びそれを使用したマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
A41D13/11 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006423
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】514293008
【氏名又は名称】株式会社東亜産業
(72)【発明者】
【氏名】劉 凱鵬
(57)【要約】
【課題】
この発明は、呼吸やその他の体調の改善を可能とするシート状のフィルタとそれを使用したマスクを提供することを目的とする。
【解決手段】
通気性を有するシート形状をしたマスク本体部と、その輪郭に向かい合って一対に接合された2個のリング状の耳掛け部と、を備えるマスクであって、マスク本体は、1または2以上の層状構造をなし、そのいずれか1以上の層に呼吸等改善剤が付着されているフィルタが使用されている。呼吸等改善剤は、清肺湯、葛根湯、銀翹散、小青竜湯、葛根湯加川きゅう辛夷、荊芥連翹湯の1または2種以上、またはそのエキス、またはエキスを顆粒状またはペースト状にしたものを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有するシートに、呼吸等改善剤が付着されている、
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記呼吸等改善剤は、清肺湯、葛根湯、銀翹散、小青竜湯、葛根湯加川きゅう辛夷、荊芥連翹湯の1または2種以上、またはそのエキス、またはエキスを顆粒状またはペースト状にしたものを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
通気性を有するシート形状をしたマスク本体部と、前記マスク本体部の輪郭に向かい合って一対に接合された2個のリング状の耳掛け部と、を備えるマスクであって、
前記マスク本体は、1または2以上の層状構造をなし、そのいずれか1以上の層に請求項1または2のいずれか一項に記載の前記フィルタが使用されている、
ことを特徴とするマスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタとそれを使用したマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイルス性感染症をはじめとした、感染症の予防対策としてマスクの着用が推奨されている。また、粉塵が多い場所や花粉が舞う環境から呼吸器官を保護するためにもマスク着用が有用である。
【0003】
しかし、従来のマスクでは、予防に対してはある程度の効果はあるものの、ウイルスや菌に感染したり、粉塵や花粉を吸引したりして発症した場合にそれを改善することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、呼吸やその他の体調の改善を可能とするシート状のフィルタとそれを使用したマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、通気性を有するシートに、呼吸等改善剤が付着・吸収されている、ことを特徴とするフィルタ。
請求項2に記載の発明は、前記呼吸等改善剤は、清肺湯、葛根湯、銀翹散、小青竜湯、葛根湯加川きゅう辛夷、荊芥連翹湯の1または2種以上、またはそのエキス、またはエキスを顆粒状またはペースト状にしたものを含む、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、通気性を有するシート形状をしたマスク本体部と、前記マスク本体部の輪郭に向かい合って一対に接合された2個のリング状の耳掛け部と、を備えるマスクであって、前記マスク本体は、1または2以上の層状構造をなし、そのいずれか1以上の層に請求項1または2のいずれか一項に記載の前記フィルタが使用されている、ことを特徴とするマスクである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、フィルタに呼吸等改善剤が付着されているため、そのフィルタを備えたマスクを装着して呼吸することで、異物や病原体の体内への侵入防止だけでなく、呼吸器を清浄させたり呼吸を楽にしたりすることが可能となる。また、塵埃や花粉を吸引したり、喫煙や受動喫煙後の呼吸や体調の改善に効果がある。さらに、付着させる呼吸等改善剤の種類を変えることで、様々な症状を改善することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施の形態について説明する。なお、理解の助けのために、実際に比べて大幅に簡略化して表現している。
【0008】
本実施の形態に係るマスクは、通気性を有し、口と鼻を覆うシート形状をしたマスク本体部と、前記マスク本体部の輪郭に向かい合って一対に接合された2個のリング状の耳掛け部と、を備えるものである。これは現状一般に市販されている衛生用マスク(家庭用マスク)の他に、サージカルマスク、N95マスクといわれる医療用マスク、さらに産業用マスクでもよい。また、マスクの性能もその種類に応じて花粉や飛沫、粉塵などの比較的大きな異物を補足するものや、細菌やウイルスといった、比較的微小なものの体内への侵入を防止できるものでもよい。さらに、形状も平型、プリーツ型、立体型、カップ型などを使用できる。
【0009】
また、マスク本体は、1層のシートからなっていてもよいが、2以上のシートを積層した層状構造をなすことがより効果的である。シートの素材は特に限定されず、前述のマスクに一般に使用されているものが使用可能である。例えば不織布、ガーゼ、ウレタン、綿糸、樹脂織布等が使用できる。
【0010】
また、本実施の形態では、マスク本体に使用されるシートのうち、1以上の層に、呼吸等改善剤が付着されていることが好ましい。ここで、本実施の形態では、呼吸等改善剤とは、例えば吸引することで気管、気管支や肺といった呼吸器に作用して痰などの呼吸器内の異物を除去して清浄化したり、爽快感を得て呼吸をしやすくしたりする効果を有する薬物を含む。ここで、付着には、呼吸等改善剤をシートの単に接触させる以外に、塗り込んだり、吸着させたり、吸収させたりといった物理的に接触している状態を含むものとする。
【0011】
呼吸等改善剤としては、例えば清肺湯を使用することが好ましい。清肺湯は、黄ごん(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、五味子(ゴミシ)、桔梗(キキョウ)、杏仁(キョウニン)、山梔子(サンシシ)、生姜(ショウキョウ)、桑白皮(ソウハクヒ)、大棗(タイソウ)、竹じょ(チクジョ)、陳皮(チンピ)、天門冬(テンモンドウ)、当帰(トウキ)、貝母(バイモ)、麦門冬(バクモンドウ)、茯苓(ブクリョウ)の16種類の生薬で構成される漢方薬であり、肺や気道の血流に働き、気道組織の潤滑・再生をして咳を鎮め、痰を切りやすくする効能を有する。ここで、本特許で呼吸等改善剤は、それぞれの生薬や成分及びそれらを組み合わせて構成した薬物を包含するものとする。
【0012】
ここで、黄ごんは、コガネバナの周皮を除いた根を乾燥させたものであり、消炎解熱の効能があるとされる。甘草は、マメ科カンゾウ属の根や根茎を乾燥させたもので、消炎の効能があるとされる。五味子は、チョウセンゴミシの果実を乾燥させたもので、滋養、強壮、鎮咳に効果があるとされる。桔梗は、キキョウの根を乾燥させたもので、鎮咳、去痰、排膿に効果があるとされる。杏仁は、アンズの種子の中にある仁(さね)であり、鎮咳効果があるとされる。山梔子は、クチナシの果実を乾燥させたもので、消炎排膿薬、消炎、利尿、止血、鎮静、鎮痙に効果があるとされる。生姜は、ショウガ科ショウガ属の根茎部を乾燥させたもので、鎮嘔,鎮痛,止瀉に効果があるとされる。桑白皮は、クワの根皮を乾燥させたもので、鎮咳、去痰に効果があるとされる。大棗は、ナツメまたはその近縁植物ナツメの果実を乾燥させたもの、または種子であり、強壮、鎮静効果があるとされる。竹じょは、イネ科のハチその他同属植物の竹竿の上皮を薄く剥ぎ去り、皮下の帯緑白色部を薄く削ったものであり、清熱、鎮吐、除煩の効果があるとされる。陳皮は、ミカン科のマンダリンオレンジの果皮を干したもので、鎮咳効果があるとされる。天門冬は、クサスギカズラのコルク化した外層を除いた根を湯通しまたは蒸したものであり、鎮咳、利尿、滋養強壮効果があるとされる。当帰は、セリ科シシウド属のトウキの根を掘り採って乾燥させたもので、補血、強壮、鎮痛、鎮静効果があるとされる。貝母は、アミガサユリの鱗茎を乾燥させたもので、鎮咳、去痰、清熱効果があるとされる。麦門冬は、ジャノヒゲのひげ根の紡錘形の部分であり、潤肺、止咳の効果があるとされる。茯苓は、サルノコシカケ科の菌類の菌核の外層を取り除いたものであり、鎮静効果があるとされる。
【0013】
また、呼吸等改善剤は、清肺湯に限らず、上記の生薬のうち、1または2種以上を配合したものでもよい。すなわち、使用する生薬や、そのエキス、またはエキスを顆粒状またはペースト状にしたものをシートに付着させる。
【0014】
この発明によれば、フィルタに呼吸等改善剤が付着されているため、そのフィルタを備えたマスクを装着して呼吸することで、異物や病原体の体内への侵入防止だけでなく、呼吸器を清浄させたり呼吸を楽にしたりすることが可能となる。また、塵埃や花粉を吸引したり、喫煙や受動喫煙後の呼吸や体調の改善に効果がある。さらに、付着させる呼吸等改善剤の種類を変えることで、様々な症状を改善することが可能である。
【0015】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本願発明の範囲は以上の実施の形態に
限られるものではなく、これと同視しうる他の形態に対しても及ぶ。
【0016】
例えば、呼吸等改善剤に使用される生薬は、上記のものに限られず、呼吸器系に効果があるとされる既知の物質を使用できる。例えば、ペパーミントを使用しても良い。また、葛根湯(カッコントウ)を使用した場合、風邪症状の改善に対する効果も期待できる。葛根湯は、葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)を配合して得られる。また、これらの生薬のうち1または2種類以上を混合して使用しても良い。
【0017】
また、銀翹散(キンギョウサン)を使用することで、喉の痛みを改善することに効果がある。ここで、銀翹散は、連翹(レンギョウ)、金銀花(キンギンカ)、甘草(カンゾウ)、牛蒡子(ゴボウシ)、桔梗 (キキョウ)、淡豆子(タンズシ)、薄荷(ハッカ)、淡竹葉(タンチクヨウ)、荊芥(ケイガイ)、羚羊角(レイヨウカク)を配合して得られる。また、これらの生薬のうち1または2種類以上を混合して使用しても良い。
【0018】
また、麻黄湯(マオウトウ)を使用することで、風邪症状の改善に効果がある。麻黄湯は、桂皮、麻黄(マオウ)、甘草を配合して得られる。また、これらの生薬のうち1または2種類以上を混合して使用しても良い。
【0019】
また、花粉症の症状には小青竜湯(ショウセイリュウトウ)、葛根湯加川きゅう辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)、荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)を使用することが効果的である。ここで、小青竜湯は、麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、半夏(ハンゲ)、五味子(ゴミシ)、細辛(サイシン)、乾姜(カンキョウ)、甘草(カンゾウ)を配合して得られる。また、葛根湯加川きゅう辛夷は、葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、辛夷(シンイ)、川きゅう(センキュウ)、生姜(ショウキョウ)を配合して得られる。また、荊芥連翹湯は、黄ごん(オウゴン)、黄柏(オウバク)、黄連(オウレン)、桔梗(キキョウ)、枳実(キジツ)、荊芥(ケイガイ)、柴胡(サイコ)、山梔子(サンシシ)、地黄(ジオウ)、芍薬(シャクヤク)、川きゅう(センキュウ)、当帰(トウキ)、薄荷(ハッカ)、白し(ビャクシ)、防風(ボウフウ)、連翹(レンギョウ)、甘草(カンゾウ)を配合して得られる。また、これらの生薬のうち1または2種類以上を混合して使用しても良い。
【0020】
なお、上記の呼吸等改善剤は、生薬や漢方薬そのものだけでなく、そのエキスやエキスを顆粒状にしたもの、ペースト状にしたものも含む。
【0021】
また、マスク本体が複数のシートからなる多層構造であるとき、各シートに別種の呼吸等改善剤を付着させてもよい。さらに、一枚のシートに複数種の呼吸等改善剤を付着させてもよい。また、一枚のシート上でも、呼吸等改善剤が付着している部位が異なったり、シートに含まれる付着量が異なっていたりしてもよい。
【0022】
また、呼吸等改善剤が口腔内と呼吸器内に吸引されるのは、基本的には吸気による気流により口内に導かれることだが、これとは別に呼吸による湿度(水分)により、成分が溶解(成分とフィルタとの接合材)し、フィルタから分離したり、成分を含有させたマイクロカプセルをフィルタに付着させ、呼吸に含まれる水蒸気で溶解させて成分を吸引したりしてもよい。