(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102509
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】舗装構造および舗装方法
(51)【国際特許分類】
E01C 3/00 20060101AFI20240724BHJP
E01C 5/02 20060101ALI20240724BHJP
E01C 5/04 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
E01C3/00
E01C5/02
E01C5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006433
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】300082335
【氏名又は名称】太平洋プレコン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 宏始
(72)【発明者】
【氏名】石渡 明日翔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AB03
2D051AC04
2D051AF01
2D051AF07
2D051AG01
2D051AG15
2D051AH03
2D051CA01
2D051CA10
2D051DA01
(57)【要約】
【課題】60mm厚の自然石を乾式工法で施工する。
【解決手段】粒度調整砕石、クラッシャラン若しくはこれらの再生材またはこれらの混合物により、路床上に形成された下層路盤5aと、瀝青系材料、セメント系材料、またはセメント・乳剤安定処理および水硬性粒度調整スラグにより、下層路盤5a上に形成された上層路盤5bと、上層路盤5b上に形成された敷砂層7と、上層路盤5b上または敷砂層7上の少なくとも一方に敷設され、縦ストランドおよび横ストランド並びに前記縦ストランドおよび前記横ストランドの結節点から構成された二方向延伸型のジオグリッド9と、敷砂層7上またはジオグリッド9上に形成され、舗装用ブロック11および隣接する舗装用ブロック11の間隙に充填された目地砂からなるブロック層と、を備え、舗装用ブロック11は、60mmを超えない厚さを有していることを特徴とする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装用ブロックを用いた舗装構造であって、
粒度調整砕石、クラッシャラン若しくはこれらの再生材またはこれらの混合物により、路床上に形成された下層路盤と、
瀝青系材料、セメント系材料、またはセメント・乳剤安定処理および水硬性粒度調整スラグにより、前記下層路盤上に形成された上層路盤と、
前記上層路盤上に形成された敷砂層と、
前記上層路盤上または前記敷砂層上の少なくとも一方に敷設され、縦ストランドおよび横ストランド並びに前記縦ストランドおよび前記横ストランドの結節点から構成された二方向延伸型のジオグリッドと、
前記敷砂層上または前記ジオグリッド上に形成され、舗装用ブロックおよび隣接する前記舗装用ブロックの間隙に充填された目地砂からなるブロック層と、を備え、
前記舗装用ブロックは、60mmを超えない厚さを有していることを特徴とする舗装構造。
【請求項2】
Aを前記舗装用ブロックの全側面積を上面積で除した値とし、
式(1)を用いて算出される荷重伝達率E
LTが0.74以上となるように、前記舗装用ブロックの縦および横の寸法が定められたことを特徴とする請求項1記載の舗装構造。
【数1】
【請求項3】
Fを荷重の大きさとし、
αを載荷半径とし、
δをたわみ量とし、
E
sgを下層の変形係数(MPa)とし、
v
sgを下層のポアソン比(0.35)とし、
E
fを、前記敷砂層、前記少なくとも一つのジオグリッドおよび前記ブロック層から構成される第1層の変形係数(MPa)とし、
v
fを前記第1層のポアソン比(0.35)とし、
E
bを、前記第1層および前記上層路盤以下の第2層から構成される2層系地盤を単層としたときの変形係数(MPa)とし、
v
bを前記単層のポアソン比とし、
F
dを変位係数とし、
fを変位係数とし、
h
bを前記第1層の厚さ(cm)とし、
aを小型FWD(Falling Weight Deflectometer)の接地半径(cm)とし、
式(2)から式(5)を用いて算出される前記第1層の弾性係数E
fが1000MPa以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の舗装構造。
【数2】
【請求項4】
舗装用ブロックを用いた舗装方法であって、
粒度調整砕石、クラッシャラン若しくはこれらの再生材またはこれらの混合物により、路床上に下層路盤を形成する工程と、
瀝青系材料、セメント系材料、またはセメント・乳剤安定処理および水硬性粒度調整スラグにより、前記下層路盤上に形成された上層路盤を形成する工程と、
前記上層路盤上に敷砂層を形成する工程と、
前記上層路盤上または前記敷砂層上の少なくとも一方に、縦ストランドおよび横ストランド並びに前記縦ストランドおよび前記横ストランドの結節点から構成された二方向延伸型のジオグリッドを敷設する工程と、
前記敷砂層上または前記ジオグリッド上に、舗装用ブロックおよび隣接する前記舗装用ブロックの間隙に充填された目地砂からなるブロック層を形成する工程と、を含み、
前記舗装用ブロックは、
60mmを超えない厚さを有していると共に、
Aを全側面積を上面積で除した値とし、式(6)を用いて算出される荷重伝達率E
LTが0.74以上となるように、縦および横の寸法が定められたことを特徴とする舗装方法。
【数3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装用ブロックを用いる舗装構造および舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者、自転車、一般車両が通行する住宅地内や商店街等の軽交通の車道舗装(交通量区分でN3以下)にブロック系舗装を適用する場合、その工法は、目地砂・敷砂で施工する「乾式工法」と、目地モルタルと敷モルタルでブロックを貼り付ける「湿式工法」とに分類される。乾式工法で施工する場合には、「一般社団法人インターロッキングブロック舗装技術協会」が発刊しているインターロッキングブロック舗装設計施工要領(以下、「要領」と呼称する。)に準拠することになる。この要領によれば、適用できるブロックの「ブロック厚」は80mmに規定されており、60mm厚のブロックは、車両が通行しない歩道、広場、公園等に限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】一般社団法人インターロッキングブロック舗装技術協会:インターロッキングブロック舗装設計施工要領、平成29年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、神社仏閣のある参道(例えば、浅草)、歴史的背景や地域特性を重視した道造り(例えば、大田区、宇治市)、景観との調和を考慮した商店街(例えば、自由が丘)では、重厚感やエージング効果のある自然石舗装の適用が増えている。自然石舗装の場合、厚さが20mm異なるとコストが「2000円/m2」以上かかるため、コスト高となってしまう。また、60mm厚のブロックを「湿式工法」で施工する場合には、60mm厚のブロックは化粧材としてのみ機能することから、路盤を強化しなければならず、工期が伸びると共に、コスト高となってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、60mm厚の自然石を乾式工法で施工することができる舗装構造および舗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の舗装構造は、舗装用ブロックを用いた舗装構造であって、粒度調整砕石、クラッシャラン若しくはこれらの再生材またはこれらの混合物により、路床上に形成された下層路盤と、瀝青系材料、セメント系材料、またはセメント・乳剤安定処理および水硬性粒度調整スラグにより、前記下層路盤上に形成された上層路盤と、前記上層路盤上に形成された敷砂層と、前記上層路盤上または前記敷砂層上の少なくとも一方に敷設され、縦ストランドおよび横ストランド並びに前記縦ストランドおよび前記横ストランドの結節点から構成された二方向延伸型のジオグリッドと、前記敷砂層上または前記ジオグリッド上に形成され、舗装用ブロックおよび隣接する前記舗装用ブロックの間隙に充填された目地砂からなるブロック層と、を備え、前記舗装用ブロックは、60mmを超えない厚さを有していることを特徴とする。
【0008】
このように、上層路盤上または敷砂層上の少なくとも一方にジオグリッドを敷設するため、舗装用ブロックに荷重(例えば、交通荷重)がかかった場合、等分布荷重によってジオグリッドは重力方向に押し下げられ、この時に引張り応力が発生し、敷砂(および目地砂)の砂粒子との間に、摩擦力とインターロッキング効果、すなわち、砂粒子の移動がジオグリッドによって拘束される効果が発揮される。その結果、舗装用ブロック、敷砂(および目地砂)、ジオグリッドが一体化して、荷重に耐えることが可能となる。また、ジオグリッドが広範囲に敷設されるため、ジオグリッドが無い構造や他の補強工法に比べて、荷重の分布範囲を広くすることが可能となる。これにより、舗装面のたわみが減少し、敷砂層や路盤層に発生する応力が低減されるため、舗装用ブロックによる段差や沈下の抑制を図ることが可能となる。その結果、従来よりも薄い60mmを超えない舗装用ブロックを、N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の交通量区分の道路に適用することが可能となる。
【0009】
(2)また、本発明の舗装構造において、Aを前記舗装用ブロックの全側面積を上面積で除した値とし、式(1)を用いて算出される荷重伝達率E
LTが0.74以上となるように、前記舗装用ブロックの縦および横の寸法が定められたことを特徴とする。
【数1】
【0010】
この構成により、荷重伝達率ELTが0.74以上となるように、舗装用ブロックの縦および横の寸法が定めることが可能となる。
【0011】
(3)また、本発明の舗装構造において、Fを荷重の大きさとし、αを載荷半径とし、δをたわみ量とし、E
sgを下層の変形係数(MPa)とし、v
sgを下層のポアソン比(0.35)とし、E
fを、前記敷砂層、前記少なくとも一つのジオグリッドおよび前記ブロック層から構成される第1層の変形係数(MPa)とし、v
fを前記第1層のポアソン比(0.35)とし、E
bを、前記第1層および前記上層路盤以下の第2層から構成される2層系地盤を単層としたときの変形係数(MPa)とし、v
bを前記単層のポアソン比とし、F
dを変位係数とし、fを変位係数とし、h
bを前記第1層の厚さ(cm)とし、aを小型FWD(Falling Weight Deflectometer)の接地半径(cm)とし、式(2)から式(5)を用いて算出される前記第1層の弾性係数E
fが1000MPa以上であることを特徴とする。
【数2】
【0012】
この構成により、敷砂層、少なくとも一つのジオグリッドおよびブロック層を第1層としたときに、第1層の弾性係数Efを1000MPa以上に規定することが可能となる。その結果、従来よりも薄い60mmを超えない舗装用ブロックを、N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の交通量区分の道路に適用することが可能となる。なお、式(3)は試験機によって適用する式が異なる。
【0013】
(4)また、本発明の舗装方法は、舗装用ブロックを用いた舗装方法であって、粒度調整砕石、クラッシャラン若しくはこれらの再生材またはこれらの混合物により、路床上に下層路盤を形成する工程と、瀝青系材料、セメント系材料、またはセメント・乳剤安定処理および水硬性粒度調整スラグにより、前記下層路盤上に形成された上層路盤を形成する工程と、前記上層路盤上に敷砂層を形成する工程と、前記上層路盤上または前記敷砂層上の少なくとも一方に、縦ストランドおよび横ストランド並びに前記縦ストランドおよび前記横ストランドの結節点から構成された二方向延伸型のジオグリッドを敷設する工程と、前記敷砂層上または前記ジオグリッド上に、舗装用ブロックおよび隣接する前記舗装用ブロックの間隙に充填された目地砂からなるブロック層を形成する工程と、を含み、前記舗装用ブロックは、60mmを超えない厚さを有していると共に、Aを全側面積を上面積で除した値とし、式(6)を用いて算出される荷重伝達率E
LTが0.74以上となるように、縦および横の寸法が定められたことを特徴とする。
【数3】
【0014】
このように、上層路盤上または敷砂層上の少なくとも一方にジオグリッドを敷設するため、舗装用ブロックに荷重(例えば、交通荷重)がかかった場合、等分布荷重によってジオグリッドは重力方向に押し下げられ、この時に引張り応力が発生し、敷砂(および目地砂)の砂粒子との間に、摩擦力とインターロッキング効果、すなわち、砂粒子の移動がジオグリッドによって拘束される効果が発揮される。その結果、舗装用ブロック、敷砂(および目地砂)、ジオグリッドが一体化して、荷重に耐えることが可能となる。また、ジオグリッドが広範囲に敷設されるため、ジオグリッドが無い構造や他の補強工法に比べて、荷重の分布範囲を広くすることが可能となる。これにより、舗装面のたわみが減少し、敷砂層や路盤層に発生する応力が低減されるため、舗装用ブロックによる段差や沈下の抑制を図ることが可能となる。その結果、従来よりも薄い60mmを超えない舗装用ブロックを、N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の交通量区分の道路に適用することが可能となる。また、荷重伝達率ELTが0.74以上となるように、舗装用ブロックの縦および横の寸法が定めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上層路盤上または敷砂層上の少なくとも一方にジオグリッドを敷設するため、舗装用ブロックに荷重(例えば、交通荷重)がかかった場合、等分布荷重によってジオグリッドは重力方向に押し下げられ、この時に引張り応力が発生し、敷砂(および目地砂)の砂粒子との間に、摩擦力とインターロッキング効果、すなわち、砂粒子の移動がジオグリッドによって拘束される効果が発揮される。その結果、舗装用ブロック、敷砂(および目地砂)、ジオグリッドが一体化して、荷重に耐えることが可能となる。また、ジオグリッドが広範囲に敷設されるため、ジオグリッドが無い構造や他の補強工法に比べて、荷重の分布範囲を広くすることが可能となる。これにより、舗装面のたわみが減少し、敷砂層や路盤層に発生する応力が低減されるため、舗装用ブロックによる段差や沈下の抑制を図ることが可能となる。その結果、従来よりも薄い60mmを超えない舗装用ブロックを、N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の交通量区分の道路に適用することが可能となる。また、荷重伝達率ELTが0.74以上となるように、舗装用ブロックの縦および横の寸法が定めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本実施形態に係る舗装構造の概略構成を示す断面図である。
【
図1B】ジオグリッドを上層路盤の上(敷砂層の下)に敷設した舗装構造の概略構成を示す断面図である。
【
図1C】ジオグリッドを上層路盤の上および敷砂層の上に敷設した舗装構造の概略構成を示す断面図である。
【
図3】ジオグリッドと砂粒子とが荷重を受けてインターロッキング効果を生ずる様子を示す概念図である。
【
図4】本実施形態に係る舗装構造が荷重を受ける様子を示す概念図である。
【
図5】強化工法がなされていない舗装構造における荷重分散効果を示す図である。
【
図6】強化板13を用いた舗装構造における荷重分散効果を示す図である。
【
図9A】ストレッチャボンド(STB)の敷設パターンを示す図である。
【
図9B】ヘリンボンボンド(HBB90度型)の敷設パターンを示す図である。
【
図9C】ヘリンボンボンド(HBB45度型)の敷設パターンを示す図である。
【
図11A】路床上でのたわみ量の測定結果を示すグラフである。
【
図11B】路床上でのたわみ量の測定結果を示すグラフである。
【
図11C】路床上でのたわみ量の測定結果を示すグラフである。
【
図13】自然石舗装上でのたわみ量の経時変化を示す図である。
【
図14】自然石舗装の弾性係数の経時変化を示す図である。
【
図15】各工区の目地幅の測定結果を示す表である。
【
図16】各工区の目地幅の平均値の推移を示すグラフである。
【
図18】各工区の段差の平均値の推移を示すグラフである。
【
図19】各工区の目地幅消失深さの測定結果を示す表である。
【
図20】各工区の目地砂消失深さの平均値の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、長大斜面や急勾配盛土に敷設され、それらの強度を高める効果を有するジオグリッドに着目し、敷砂層の上または下の少なくとも一方にジオグリッドを敷設することによって、従来よりも薄いブロックを用いる乾式工法で、N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の交通量区分の道路に適用できるブロック舗装ができることを見出し、本発明に至った。
【0018】
すなわち、本発明の舗装構造は、舗装用ブロックを用いた舗装構造であって、粒度調整砕石、クラッシャラン若しくはこれらの再生材またはこれらの混合物により、路床上に形成された下層路盤と、瀝青系材料、セメント系材料、またはセメント・乳剤安定処理および水硬性粒度調整スラグにより、前記下層路盤上に形成された上層路盤と、前記上層路盤上に形成された敷砂層と、前記上層路盤上または前記敷砂層上の少なくとも一方に敷設され、縦ストランドおよび横ストランド並びに前記縦ストランドおよび前記横ストランドの結節点から構成された二方向延伸型のジオグリッドと、前記敷砂層上または前記ジオグリッド上に形成され、舗装用ブロックおよび隣接する前記舗装用ブロックの間隙に充填された目地砂からなるブロック層と、を備え、前記舗装用ブロックは、60mmを超えない厚さを有していることを特徴とする。
【0019】
これにより、本発明者らは、従来よりも薄い60mmを超えない舗装用ブロックを、N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の交通量区分の道路に適用することを可能とした。以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
[本発明の概要について]
本発明では、目地砂・敷砂で施工する乾式工法で施工可能とした。また、ブロック厚が80mmより20mm薄くなることによる荷重分散性能の低下を、敷砂上にジオグリッドを布設することで補強した。ジオグリッドとは、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)を素材とした合成樹脂製の網目状の補強材で、土壁の補強や盛土に敷設して強度を高める効果を持つ材料である。本発明の適用可能な交通量区分をN3(大型車交通量100台未満/日・方向)迄とした。
【0021】
[舗装構造について]
図1Aは、本実施形態に係る舗装構造の概略構成を示す断面図である。本実施形態に係る舗装構造1は、路床3と、路床3上に形成された下層路盤5aと、下層路盤5aの上に形成された上層路盤5bと、上層路盤5bの上に形成された敷砂層7と、敷砂層7上に敷設されたジオグリッド9と、ジオグリッド9上に敷設されたブロック系舗装材としてのインターロッキングブロック11と、から構成される。なお、
図1Bに示すように、ジオグリッド9を上層路盤5bの上に敷設しても良く、また、
図1Cに示すように、ジオグリッド9を上層路盤5bの上に敷設すると共に、敷砂層7の上に敷設しても良い。
【0022】
下層路盤5aには、粒度調整砕石、クラッシャラン若しくはこれらの再生材またはこれらの混合物(例えば、RM-30、RC-30)を適用する。その厚さは、路床のCBRと交通量区分に応じ70mm~150mmとする。上層路盤5bには、瀝青安定処理を初め、密粒度アスファルト、粗粒度アスファルト等の瀝青系混合物を適用する。その厚さは、路床のCBRと交通量区分に応じ、50mm~100mmとする。セメント系材料、またはセメント・乳剤安定処理および水硬性粒度調整スラグにより、上層路盤5bを形成しても良い。敷砂層7には、砂粒子周りをアスファルトでコーティングしたブロックサンドを適用する。その厚さは20mm~30mmとする。なお、目地砂にもブロックサンドを適用する。なお、ジオグリッド9は、ジオテキスタイルとも呼称される樹脂製網であり、従来から、補強土壁、補強盛土、地盤補強等に使用されている。
【0023】
[ジオグリッドについて]
図2は、ジオグリッド9の平面図である。ジオグリッド9は、二方向延伸型であって、2次元平面上で縦ストランド9aおよびこれに直交する横ストランド9b、並びに縦ストランド9aと横ストランド9bとの交点である結節点9cから構成されている。本実施形態に係るジオグリッド9は、以下のように定めることができる。
【0024】
(1)形状は二方向延伸型とする。
(2)目合い(縦ストランド9aの長さa×横ストランド9bの長さb)は、「a=19~38mm、b=28.5~47.5mm」とする。これは、ブロック系舗装に適用される敷砂の品質として、最大粒径が4.75mm以下を考慮した寸法から定められる。すなわち、目合いの横と縦は、砂粒子の最大粒径と網目の大きさとの関係から、4.75mmの倍数として定めた。
(3)ジオグリッド9の厚みが増すと、ブロック舗装に発生するたわみが大きくなって、目地砂や敷砂が噴出する“ポンピング現象”が発生する可能性があるため、縦・横のストランドの厚みは1.0~3.0mm以内とした。
(4)ジオグリッド9の格子構造を維持するため、縦・横ストランドの結節点9cは、ストランドよりも厚くする(2.0~4.0mm)。また、十分な結節点強度(ストランド1本)が必要であるため、縦・横ともに結節点強度は0.5kN以上とする。
(5)ジオグリッド9とインターロッキングブロック11との層間すべりを防ぐために、結節点9cの形状は、縦・横ストランド9a、9bよりも厚くすると共に、凸型とする。
(6)インターロッキングブロック11に対して繰り返される交通荷重に耐えるために、高い引張強度が必要となるため、ジオグリッド9の引張強度を、縦10.0kN/m以上、横20.0kN/m以上とする。
(7)ジオグリッド9による荷重分散効果を発揮するためには、高い伸び剛性と最大引張力が必要となることから、伸び剛性は20kgf以上、最大引張力は0.5kgf/cm以上とする。
(8)ジオグリッド9の素材は、ポリプロピレン、ポリエチレン等とする。
(9)ジオグリッド9の幅や長さは、施工性を考慮して定めるものとする。例えば、幅が2~4m以内、延長で100~200m以内、または、ある一定の寸法(縦・横ともに100~200cm以内)に予め裁断したものとする。
(10)ジオグリッド9は、目地砂・敷砂(空練りモルタル含む)で施工するブロック系舗装全般に適用することが可能である。
(11)なお、インターロッキングブロックの敷砂側の面(インターロッキングブロックの下面)に、予めジオグリッドを貼付しておき、施工時に、敷砂層7を形成した後、ジオグリッド付きのインターロッキングブロックを敷設しても良い。これにより、敷砂層7の上にジオグリッド9を敷設する場合と同等の効果を得ることが可能である。
【0025】
[ジオグリッドの作用]
図3は、ジオグリッドと砂粒子とが荷重を受けてインターロッキング効果を生ずる様子を示す概念図であり、
図4は、本実施形態に係る舗装構造が荷重を受ける様子を示す概念図である。ジオグリッド9を敷砂層7の上面に敷設することによって、
図4に示すように、交通荷重による等分布荷重によって、ジオグリッド9は下方に押し下げられ、この時に引張応力(σt)が発生する。その結果、砂粒子(敷砂と目地砂)との間に摩擦力によるインターロッキング効果、すなわち、砂粒子がジオグリッドによって拘束され、移動しなくなる効果を発揮する。これにより、インターロッキングブロック、敷砂、目地砂、ジオグリッドが一体化して交通荷重に対抗することが可能となる。
【0026】
このように、ジオグリッドが有ることによって、ジオグリッドが無い構造や、他の補強工法に比べて荷重の分散範囲が広くなる。その結果、舗装面のたわみが減少し、敷砂層7や路盤層(5a、5b)に発生する応力が低減されるため、段差や沈下の抑制効果が得られる。
【0027】
[ジオグリッドの荷重分散効果]
本実施形態に係る舗装構造における荷重分散効果に対し、強化工法がなされていない舗装構造および強化板を用いた舗装構造の荷重分散効果を比較する。
図5は、強化工法がなされていない舗装構造における荷重分散効果を示す図である。
図5に示すように、荷重が敷砂層7および路盤層(5a、5b)を介して、路床3に狭い範囲で分散し、これによって発生する鉛直方向の圧縮ひずみ(εZ
1)が大きくなる。
図6は、強化板13を用いた舗装構造における荷重分散効果を示す図である。
図6に示すように、荷重が、強化板13を介して、敷砂層7および路盤層(5a、5b)に広く分散し、路床3にも広く分散して、これによって発生する鉛直方向の圧縮ひずみ(εZ
2)が小さくなる。従って、強化工法がなされていない舗装構造よりも、強化板13を用いた舗装構造の方が、荷重分散効果が高いと考えられる。
【0028】
これらの舗装構造に対し、
図4に示す本実施形態に係る舗装構造では、ジオグリッド9が設けられているため、荷重はジオグリッド9によって敷砂層7の広い範囲に加わる。そして、路盤層5を介して、路床3に広い範囲で分散し、これによって発生する鉛直方向の圧縮ひずみ(εZ
3)が小さくなる。すなわち、荷重分散効果の大きさは、
図4に示す本実施形態に係る舗装構造、
図6に示す強化板13を用いた舗装構造、
図5に示す強化工法がなされていない舗装構造の順で大きくなる。また、敷砂層7、路盤層(5a、5b)および路床3に発生する応力や圧縮ひずみ(εZ)の大きさは、
図5に示す強化工法がなされていない舗装構造、
図6に示す強化板13を用いた舗装構造、
図4に示す本実施形態に係る舗装構造の順で大きくなる。鉛直方向の圧縮ひずみ(εZ)が小さいことは、車両通行によって発生する“わだち掘れ”も小さくなる効果もある。従って、ブロック舗装を施工した後に、車両の通行等の支障となる段差や沈下等が、最も発生しにくいのは、本実施形態に係る舗装構造であると言える。
【0029】
[適用可能なブロックについて]
適用可能なブロック形状は、
図7Aおよび
図7Bに示すように、長方形と正方形とした。なお、
図8Aおよび
図8Bに示すように、各辺を直線と曲線とを組み合わせた波型に形成してもよい。さらに、図示していないが、曲線だけで構成される波型に形成しても良い。適用可能なブロックの寸法は、次の式から算出する理論上の荷重伝達率で、0.74以上とした。ここで、E
LTを理論上の荷重伝達率とし、Aをブロックの全測面積と上面積との比とする。
E
LT=(A-0.47)/1.79 …(1)
適用可能なブロック系舗装は、自然石、インターロッキングブロック、レンガとする。
【0030】
[ブロックの敷設パターンについて]
敷設パターンは、
図9Aに示すようなストレッチャボンド(STB)、
図9Bに示すようなヘリンボンボンド(HBB90度型)、
図9Cに示すようなヘリンボンボンド(HBB45度型)を適用することが可能である。また、イモ貼り、乱張り等を適用することも可能である。
【0031】
[本発明の特徴]
本発明では、ジオグリッドを敷砂層の上または下のすくなくとも一方に敷設することによって、60mm厚のブロック系舗装を、N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の交通量区分の道路への適用を可能とした。また、敷砂層に細粒化に対する抵抗性に優れ、目地部等からの浸透水による砂粒子の支持力低下を防ぎ、ブロックの再利用を可能とした「ブロックサンド」を適用した。なお、目地砂にもブロックサンドを適用する。また、上層路盤には、粒状材料(粒度調整砕石やクラッシャラン等)よりも剛性に富み、わだち掘れに対する抵抗性の強い瀝青系混合物を舗設した。また、「100mm×200mm」以外のブロック寸法については、自然石「100mm×200mm×60mm」と同等の「荷重伝達率(0.74以上)」を有すれば、理論上適用できると考えられる。なお、「荷重伝達率」は、次式により算出することができる。
【0032】
A=ブロックの全側面積/上面積=(200×6×2+100×6×2)/(100×200)=1.80
ELT=(A-0.47)/1.79=(1.80-0.47)/1.79=0.74
【実施例0033】
60mm厚の自然石を、乾式工法により交通量区分N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の車道に適用する工法を開発することを目的に、ILB舗装の強化工法として効果が確認されているジオグリッドを自然石に用いた試験舗装を、非公開条件の下で、東京農業大学世田谷キャンパス構内に施工した。
【0034】
[試験施工の概要]
(1)施工時期と使用材料
試験施工は、2022年5月26日(木)~28日(土)において、東京農業大学世田谷キャンパス構内に実施した。施工規模は2.2m×11.2m=24.7m2とした。自然石には、歩車道で施工実績の多い100mm×200mmサイズの御影石とし、その厚さについては60mmと80mmを使用した。敷砂と目地砂には砂粒子周りをアスファルトでコーティングしたブロックサンドを使用した。
【0035】
(2)舗装構造
図10Aは、試験舗装の舗装構造の断面図であり、
図10Bは、試験舗装の舗装構造の平面図である。
図10Aに示されるように、この試験舗装の舗装構造は、下層から路床、敷砂、自然石で構成し、既設の地盤を80mm~100mm掘削し、20mmのブロックサンド上に自然石を敷設した。ここで、路盤層を築造しないのは、路盤層の効果を考慮しないで解析することによるものである。すなわち、通常の舗装では、強度を確保するために、路盤を作るのであるが、この試験舗装では、あえて路盤を作っていない。これは、通常の舗装よりも厳しい条件下であっても本願発明に係る舗装構造が十分に耐えうることを明確に示すためである。また、舗装端部の拘束には、いわゆる「等辺山形鋼のL型アングル」を設置した。ブロックの敷設パターンは、
図9Bに示した「へリンボンボンド90度型」で施工した。試験舗装は、「60mm厚の自然石にジオグリッドを適用した工区A」、「ジオグリッドを適用しない工区B」、「従来工法である80mm厚の自然石(ジオグリッド未使用)を用いる工区C」の3工区に分けて、施工を行った。各工区の施工規模は2.2m×3.6m=7.92m
2とした。
【0036】
[測定概要]
(1)小型FWD(Falling Weight Deflectometer)によるたわみ測定
ジオグリッドを適用した強化工法の支持力効果を検証するため、小型FWDを用いた「たわみ測定」を実施した。小型FWD試験機は、載荷板上に重錘を自由落下させることによって衝撃荷重を加えた時の衝撃荷重の値と載荷位置で発生したたわみ量を測定するものである。得られたたわみ量が小さいほど、舗装の支持力が大きいことを示す。
【0037】
路床上では小型FWDの重錘の落下高さを5段階に設定し、載荷板に加える衝撃荷重を変化させてたわみ量を測定した。また、自然石上ではたわみ量の経時変化を確認するため、施工時~139日間測定した。
【0038】
(2)路面性状の測定
試験舗装の路面性状の経時変化を確認するために、ブロック間の目地幅・段差・目地砂消失深さの測定を実施した。「目地幅」は、自然石間の幅をデジタル式ノギスによって測定した。「段差」は、段差の高いほうの自然石に定規を当て、低い石と定規の間をデジタル式ノギスによって測定した。「目地砂消失深さ」は、目視により目地砂の消失が確認された箇所を対象に、目地砂の位置する最深部までの深さをデジタル式ノギスによって測定した。
【0039】
[測定結果]
(1)小型FWDによるたわみ測定
(1-1)路床上でのたわみ測定
図11A~
図11Cは、路床上でのたわみ量の測定結果を示すグラフである。たわみ測定の結果から、次式を用いて各工区の「路床の弾性係数E
sg1~E
sg3」を算出し、各工区の支持力比較を行った。各工区の弾性係数を
図12に示す。これより、以下のことが確認された。
【数4】
ここで、Fは荷重、V
sgはポアソン比(=0.4)、αは載荷半径、δは「たわみ」である。
【0040】
路床の弾性係数は、工区Aが10.1MPaと最も小さく(地盤の支持力が最も悪い)、工区Bが14.2MPa、工区Cが16.4MPaと最も大きい値を示した。工区によって、路床に支持力差のあることが確認された。
【0041】
(1-2)自然石舗装上でのたわみ測定
図13は、自然石舗装上でのたわみ量の経時変化を示す図である。
図13から、以下のことが確認された。すなわち、施工直後のたわみ量は、路床の支持力が小さい工区Aが最も大きい値を示したが、供用139日後には工区B、工区Cのたわみ量と同程度の値となった。たわみ量の経時変化を比較すると、全ての工区でたわみ量は増加傾向にあるものの、ジオグリッドを適用した工区Aでは路床の支持力が低いにも係わらず、供用に伴う「たわみ量」の増加が小さくなる傾向にある。このことは、ジオグリッドを敷設したことにより広範囲に小型FWDの荷重を分散していることを示している。供用に伴い「たわみ量」が増加する要因としては、雨水などの影響によって路床の含水比が変化することに伴って支持力も変動していることなどが考えられる。その上で、工区Aはたわみ量の増加を抑えている。従って、ジオグリッドを敷設する強化工法はブロック舗装の支持力向上に効果があるといえる。
【0042】
次に、たわみ量の測定結果から式(2)~式(5)のBurmister理論を用いて、自然石層(自然石+ジオグリッド有無+ブロックサンド)の弾性係数(変形係数)を算出した。
図14は、その算出結果を示すグラフである。ここでは、上層路盤上(今回の試験の場合は路床上)の面上変形係数(E
sg)と、ブロック舗装上の面上変形係数(E
b)を用いて、両層の間に位置する第1層(ブロック層+敷砂・目地砂+ジオグリッド)の変形係数(E
f)をBurmisterの2層系弾性体の理論を適用して算出する。この理論は、舗装構造を、路盤以下の層と第1層の2層系モデルとして、式(2)から(5)より第1層(ブロック層+敷砂・目地砂+ジオグリッド)の変形係数(Ef)を算出するものである。なお、式(3)については、試験機によって適用する式が異なる。
【数5】
ここで、Fを荷重の大きさとし、αを載荷半径とし、δをたわみ量とし、E
sgを下層の変形係数(MPa)とし、v
sgを下層のポアソン比(0.35)とし、E
fを、敷砂層、少なくとも一つのジオグリッドおよびブロック層から構成される第1層の変形係数(MPa)とし、v
fを第1層のポアソン比(0.35)とし、E
bを、第1層および上層路盤以下の第2層から構成される2層系地盤を単層としたときの変形係数(MPa)とし、v
bを単層のポアソン比とし、F
dを変位係数とし、fを変位係数とし、h
bを第1層の厚さ(cm)とし、aを小型FWD(Falling Weight Deflectometer)の接地半径(cm)とする。これにより、以下のことが確認された。
【0043】
施工時の各工区の弾性係数は、工区B、工区A、工区Cの順で高い値を示し、工区間の差異が小さかったものの、139日経過時点では、工区A、工区B、工区Cの順で高い値を示し、工区間の差異も施工時と比べて増加した。ジオグリッドを使用した工区Aの弾性係数は、供用70日当りで3工区の中で高い値を示し、以降値が安定する傾向にある。また、工区Aの弾性係数は、最も低くて1000MPaを示していた。路盤の無い工区Aであっても1000MPa以上の弾性係数を有するということは、路盤を有し、強度がより高い本願発明の構成を採ることにより、1000MPa以上の弾性係数を有することは明らかである。これに対して、ジオグリッド未使用の工区Bと工区Cでは施工時以降変動が大きく、工区Bが90日以降、工区Cが70日以降に低下傾向を示した。ジオグリッドを敷設することで、路床支持力が低い地盤上に施工した自然石がジオグリッド未使用の自然石と比べて安定した挙動を示した。このことは、交通荷重が作用した場合、荷重によってジオグリッドが下方に押し下げられた時に発生する引張り応力によって自然石の変形が抑制され、荷重分散性能や荷重支持性能を発揮すると考えられる。
【0044】
(2)路面性状の調査
(2-1)ブロック間の目地幅
図15は、各工区の目地幅の測定結果を示す表である。
図16は、各工区の目地幅の平均値の推移を示すグラフである。これらにより、以下のことが確認された。目地幅の平均値の推移は、各工区とも供用に伴い増加する傾向を示している。この中で、工区Bが工区Aと工区Cに比べて経過日数に伴う変動が大きい。インターロッキングブロック舗装設計施工要領(以下、「要領」と呼称する。)に示されているIL1(歩行者系道路)の維持管理基準値である7mmを超える値はすべての工区で0個となった。139日経過時の目地幅は、工区Bの平均値、最大値、および標準偏差が工区Aと工区Cに比べ大きく、目地砂が雨水などによって流出しやすくなる5.0mmを超える割合も26%と最も大きい値を示した。目地幅は、工区Cが工区Aと比べて平均値、標準偏差、5mm以上の割合で幾分良好な値を示した。一方、工区Bは他の2工区と比べて目地幅が広い傾向にある。
【0045】
(2-2)ブロック間の段差
図17は、各工区の段差の測定結果を示す表である。
図18は、各工区の段差の平均値の推移を示すグラフである。これらにより、以下のことが確認された。段差の平均値の推移は、各工区で供用に伴い増加する傾向を示している。供用に伴う工区毎の平均値の変動量は工区Aが0.19mm、工区Bが0.35mm、工区Cが0.23mmとなり、工区Aは他の2工区と比べて平均値が小さく、その変動量も小さい。「要領」に示されているIL1(歩行者系道路)の維持管理基準値である5mmを超える値はすべての工区で0個となった。段差は、工区Aが最も良好な値を示した。
【0046】
(2-3)目地砂消失深さ
図19は、各工区の目地幅消失深さの測定結果を示す表である。
図20は、各工区の目地砂消失深さの平均値の推移を示すグラフである。これらにより、以下のことが確認された。目地幅消失深さの平均値の推移は、各工区とも供用に伴い増加する傾向を示している。目地砂消失深さの最大値、平均値、標準偏差、および5mm以上の割合は工区A、工区C、工区Bの順で小さい。これより、工区Aが最も良好な値を示した。
【0047】
供用139日経過時点における調査から以下のことが確認された。ジオグリッドを使用した工区Aの弾性係数は供用70日当りで3工区の中で高い値を示し、以降値が安定する傾向にある。これに対して、ジオグリッド未使用の工区Bと工区Cは施工時以降変動が大きく、工区Bが90日以降、工区Cが70日以降に低下傾向を示した。
【0048】
ジオグリッドを敷設することで、路床支持力が低い地盤上に施工した自然石がジオグリッド未使用の自然石と比べて安定した挙動を示したことは大きな効果である。このことは、交通荷重が作用した場合、荷重によってジオグリッドが下方に押し下げられた時に発生する引張り応力によって自然石の変形が抑制され、荷重分散性能や荷重支持性能を発揮すると考えられる。
【0049】
供用に伴いたわみ量が増加する要因としては、雨水などの影響によって路床の含水比が変化することに伴って支持力も変動していることなどが考えられる。その上で工区Aはたわみ量の増加を抑えている。従って、ジオグリッドを敷設する強化工法はブロック舗装の支持力向上に効果があるといえる。
【0050】
ブロック系舗装の路面性状で重要な因子である目地幅、段差、および目地砂消失深さについて、目地幅は幾分工区Cが工区Aと比べて良好な値を示したものの、段差と目地砂消失深さでは工区Aが他の2工区と比べて良好な値を示した。このことは、ジオグリッドを適用することにより、大型車交通量が少ない車道部に適用した場合にがたつきなどの発生を抑制し、良好な路面性状を維持する上でも効果があると考えられる。
【0051】
この調査結果から、ジオグリッドによる補強工法は試験に用いた自然石と形状・寸法が同じILBやレンガ(目地キープが必須)等にも適用できると考えられる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来よりも薄い60mmを超えない舗装用ブロックを、N3(大型車交通量100台未満/日・方向)以下の交通量区分の道路に適用することが可能となる。また、荷重伝達率ELTが0.74以上となるように、舗装用ブロックの縦および横の寸法が定めることが可能となる。