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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102518
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】車両用充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240724BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20240724BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240724BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240724BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240724BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H02J7/02 E
B60R16/04 S
H02J7/00 P
H02J7/04 F
H02J7/00 Y
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006455
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 順也
(72)【発明者】
【氏名】古田 拓
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503BB02
5G503DA12
5G503EA08
5G503FA06
5G503GB03
5H030AA09
5H030AS08
5H030BB06
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】蓄電部において、サルフェーションで生じた非導電性の結晶被膜の除去を容易に行うことができる車両用充電システムを提供する。
【解決手段】車両用充電システム1は、第1蓄電部10と、第2蓄電部20と、第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知可能な検知部31と、検知部31が第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した際に運転者に対してサルフェーションを検知した旨の通知を行う通知部32と、第1蓄電部10及び第2蓄電部20に接続され、第1蓄電部10に対して第2蓄電部20からの電流をパルス電流として出力可能なパルス充電部33と、を含むパルス充電ユニット30と、サルフェーションを検知した旨の通知の後であって車両のエンジンが停止状態のときに、運転者の操作に応じてパルス充電部33から第1蓄電部10にパルス電流を出力させるスイッチ40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、充放電が可能な第1蓄電部と、
前記車両に搭載され、充放電が可能な第2蓄電部と、
前記第1蓄電部におけるサルフェーションを検知可能な検知部と、前記検知部が前記第1蓄電部における前記サルフェーションを検知した際に前記車両の運転者に対して前記サルフェーションを検知した旨の通知を行う通知部と、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部に接続され、前記第1蓄電部に対して前記第2蓄電部からの電流をパルス電流として出力可能なパルス充電部と、を含むパルス充電ユニットと、
前記サルフェーションを検知した旨の通知の後であって前記車両のエンジンが停止状態のときに、前記運転者の操作に応じて前記パルス充電部から前記第1蓄電部に前記パルス電流を出力させるスイッチと、
を備えることを特徴とする車両用充電システム。
【請求項2】
車両に搭載された負荷と前記第1蓄電部との間に介在するリレーと、
前記リレー及び前記パルス充電ユニットを収容する筐体と、を更に備え、
前記リレーは、前記パルス充電部から前記第1蓄電部に前記パルス電流が出力される際に前記第1蓄電部と前記負荷との間の接続を遮断する、
請求項1に記載の車両用充電システム。
【請求項3】
前記通知部は、前記車両のメータ部に設けられた表示部に前記サルフェーションを検知したことを示す表示を行うことにより、前記運転者に対して前記サルフェーションを検知した旨の通知を行う
請求項1又は2に記載の車両用充電システム。
【請求項4】
前記スイッチは、前記車両のステアリングホイールに設けられている
請求項1又は2に記載の車両用充電システム。
【請求項5】
前記スイッチは、前記車両のステアリングホイールに設けられている
請求項3に記載の車両用充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、エアコン、ルームランプ、及びナビゲーションシステム等の車両補器(負荷)に電力を供給するための鉛蓄電池が搭載されている。鉛蓄電池においては、サルフェーションによって、負極板に非導電性の結晶被膜が形成されることにより、鉛蓄電池の劣化が進行することがある。例えば、特許文献1には、鉛電池に充電を行う充電部と、鉛電池の電圧値を検出する電圧検出部と、充電部からの充電電流値と電圧検出部によって検出された電圧値との電流電圧特性に基づいて、鉛電池のサルフェーションを検出するサルフェーション検出部と、サルフェーションの有無に応じて、鉛電池をリフレッシュ充電するか否かを切り替える制御部と、を具備する充電制御装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-053826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、充電部は、車両外部の電源から充電コネクタを介して供給される電力を用いて、鉛電池の充電やサルフェーションによって生じた非導電性の結晶被膜の除去の除去を行う。したがって、鉛電池の充電やサルフェーションによって生じた非導電性の結晶被膜の除去を行うためには、車両をコンセントの近くに駐車する必要があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、蓄電部において、サルフェーションで生じた非導電性の結晶被膜の除去を容易に行うことができる車両用充電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用充電システムは、車両に搭載され、充放電が可能な第1蓄電部と、前記車両に搭載され、充放電が可能な第2蓄電部と、前記第1蓄電部におけるサルフェーションを検知可能な検知部と、前記検知部が前記第1蓄電部における前記サルフェーションを検知した際に前記車両の運転者に対して前記サルフェーションを検知した旨の通知を行う通知部と、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部に接続され、前記第1蓄電部に対して前記第2蓄電部からの電流をパルス電流として出力可能なパルス充電部と、を含むパルス充電ユニットと、前記サルフェーションを検知した旨の通知の後であって前記車両のエンジンが停止状態のときに、前記運転者の操作に応じて前記パルス充電部から前記第1蓄電部に前記パルス電流を出力させるスイッチと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用充電システムは、蓄電部においてサルフェーションで生じた非導電性の結晶被膜の除去を容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る車両用充電システムの概略構成を示す回路図である。
図2図2は、実施形態における車両のメータ部を示す模式図である。
図3図3は、実施形態における車両のステアリングホイールを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用充電システムにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から図3を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両用充電システムに関する。図1は、実施形態に係る車両用充電システムの概略構成を示す回路図、図2は、実施形態における車両のメータ部を示す模式図、図3は、実施形態における車両のステアリングホイールを示す模式図である。
【0011】
鉛蓄電池において、放充電を繰り返し行ったり、放電状態を長時間に亘って維持したりすると、サルフェーションが起こることがある。サルフェーションとは、鉛蓄電池の負極板の表面に硫酸鉛の結晶が析出し、非導電性の結晶被膜(硫酸鉛の結晶被膜)が形成されることをいう。この非導電性の結晶被膜によって、負極板の表面の一部が覆われると、鉛蓄電池の充電スピードが鈍化する等の鉛蓄電池の機能の劣化が生じる。
【0012】
車両用充電システム1は、第2蓄電部20からの電流をパルス充電ユニット30によってパルス電流として、鉛蓄電池である第1蓄電部10に出力することで、第1蓄電部10の負極板の表面に形成された非導電性の結晶被膜(硫酸鉛の結晶被膜)を除去するものである。車両用充電システム1は、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の車両に適用される。
【0013】
図1に示すように、実施形態に係る車両用充電システム1は、第1蓄電部10、第2蓄電部20、パルス充電ユニット30、及びスイッチ40を含む。第1蓄電部10は、車両に搭載され、充放電が可能な鉛蓄電池である。実施形態において、第1蓄電部10は、定格電圧が12Vの鉛蓄電池である。第2蓄電部20は、車両に搭載され、充放電が可能な蓄電池である。実施形態において、第2蓄電部20は、定格電圧が288Vのリチウムイオン蓄電池である。
【0014】
パルス充電ユニット30は、検知部31、通知部32、及びパルス充電部33を含む。検知部31は、第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知するように構成されている。例えば、検知部31は、第1蓄電部10に接続された、電流計、電圧計、及び温度計(図示せず)から、第1蓄電部10の出力電流の実測値、出力電圧の実測値、及び電解液温度の実測値を取得し、これらの実測値から得られる実測内部抵抗と、予め検知部31に記憶されている理論内部抵抗との関係に基づいて、第1蓄電部10におけるサルフェーションの発生の有無を検知するように構成されている。
【0015】
通知部32は、検知部31が第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した際に車両の運転者に対してサルフェーションを検知した旨の通知を行うように構成されている。実施形態において、通知部32は、検知部31に接続されている。検知部31は、第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した場合、通知部32に対して、第1蓄電部10におけるサルフェーションが検知されたとの検知結果を出力する。通知部32は、検知部31から第1蓄電部10におけるサルフェーションが検知されたとの検知結果が入力された場合、車両の運転者に対して第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した旨の通知を行う。
【0016】
実施形態において、通知部32は、車両に設けられた表示部50と接続されている。実施形態の表示部50は、車両のメータ部101に設けられた液晶表示部である。図2に示すように、表示部50は、メータ部101における速度計101aと回転計101bとの間に設けられている。通知部32は、表示部50にサルフェーションを検知したことを示す表示を行わせることにより、車両の運転者に対して、第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した旨の通知を行う。例えば、通知部32は、表示部50に「バッテリのサルフェーションを検知しました」や「サルフェーションの除去をおこなってください」等の文言を表示させることにより、車両の運転者に対して、第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した旨の通知を行う。また、通知部32は、第1蓄電部10におけるサルフェーションが検知されたことを示すアイコンを表示部50に表示させることで、車両の運転者に対して、第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した旨の通知を行ってもよい。
【0017】
実施形態の表示部31は、マルチインフォメーションディスプレイであり、通知部32の他にも、GPS(Global Positioning System)受信機、及び車載カメラ等が接続されており、各種様々な情報であるマルチメディア情報を画像表示できるように構成されている。例えば、表示部31は、サルフェーションを検知した旨の表示以外にも、ナビゲーション情報、車外の映像、エンターテイメント動画、オーディオ情報等をマルチメディア情報として画像表示する。
【0018】
パルス充電部33は、第2蓄電部20からの電流をパルス電流に変換して、第1蓄電部10に対して出力可能に構成されている。図1に示すように、第1蓄電部10の正極端子10aは、パルス充電部33の一方の端子(第1端子)と電気的に接続されており、第1蓄電部10の負極端子10bは、接地されている。第2蓄電部20の正極端子は、パルス充電部33の他方の端子(第2端子)と電気的に接続されており、第2蓄電部20の負極端子は、接地されている。つまり、パルス充電部33は、第1蓄電部10の正極端子10aと第2蓄電部20の正極端子との間に介在するように第1蓄電部10及び第2蓄電部20と電気的に接続されている。
【0019】
実施形態の車両用充電システム1は、第1DC/DCコンバータ61を含む。第1DC/DCコンバータ61は、第2蓄電部20の正極端子とパルス充電部33の第1端子との間に介在している。つまり、第1DC/DCコンバータ61の一方の端子は、第2蓄電池20の正極端子と電気的に接続されており、第1DC/DCコンバータ61の他方の端子は、パルス充電部33の第1端子と電気的に接続されている。第1DC/DCコンバータ61は、電圧を降圧するものである。第1DC/DCコンバータ61は、第2蓄電部20から供給される直流電力の電圧を降圧し、降圧された電圧で直流電力をパルス充電部33に出力する。実施形態において、第1DC/DCコンバータ61は、第2蓄電部20から出力される288Vの電力を15V程度まで降圧して、パルス充電部33に出力する。
【0020】
第1DC/DCコンバータ61から電力を供給されたパルス充電部33は、電流波形がパルス形状の電流であるパルス電流を第1蓄電池10の正極端子10aに対して出力する。サルフェーションによって第1蓄電部10の負極板の表面に形成された非導電性の結晶被膜は、第1蓄電池10の正極端子10aにパルス電流が入力されることで除去される。ここで、パルス充電部33による第1蓄電池10へのパルス電流の出力は、車両のエンジンが停止状態のときに行われる。なお、以下の説明では、「パルス充電部33による第1蓄電池10へのパルス電流の出力」を単に「パルス充電」と称する場合がある。
【0021】
スイッチ40は、運転者の操作に応じてパルス充電部33から第1蓄電部10にパルス電流を出力させるものである。スイッチ40は、パルス充電部40に接続されている。図3に示すように、スイッチ40は、車両のステアリングホイール102に設けられている。スイッチ40は、車両の運転席に着座した運転者と対向する位置に配置されている。実施形態においては、スイッチ40は2つ設けられている。2つのスイッチ40は、運転者から見て、ステアリングホイール102におけるスポーク部分の右側部分と左側部分とにそれぞれ1つずつ配置されている。スイッチ40は、それぞれ、運転者がステアリングホイール102を握ったまま。親指等で押下できる位置に配置されている。
【0022】
スイッチ40は、サルフェーションを検知した旨の通知の後であって車両のエンジンが停止状態のときに車両の運転者がスイッチ40を押下することで、押下信号をパルス充電部33に出力する。パルス充電部33は、押下信号が入力されることでパルス充電を開始する。車両のエンジンが稼働状態のとき、及び、車両のエンジンが停止状態であってもサルフェーションを検知した旨の通知が行われていない状態のときには、スイッチ40は、運転者の操作を受け付けないように構成されている。すなわち、スイッチ40は、車両のエンジンが稼働状態のとき、及び、車両のエンジンが停止状態であってもサルフェーションを検知した旨の通知が行われていない状態のときに、押下されたとしても、押下信号をパルス充電部33に出力しないように構成されている。
【0023】
例えば、サルフェーションを検知した旨の通知は、車両のエンジンが稼働状態のときに行われる。このとき、サルフェーションを検知した旨の通知が行われると、パルス充電ユニット30は、車両のエンジンが停止状態になった際にスイッチ40への押下操作を受付可能とするように設定される。この設定により、運転者が車両を駐車してエンジンを停止状態とすると、パルス充電ユニット30は、スイッチ40の押下操作によりパルス充電を開始させることが可能な状態となる。そして、運転者がスイッチ40を押下すると、パルス充電部33によってパルス充電が開始され、第1蓄電部10において、サルフェーションで生じた非導電性の結晶被膜の除去が行われる。ここで、パルス充電ユニット30は、パルス充電が開始された際にスイッチ40への再度の押下操作を受け付けないように設定される。
【0024】
実施形態において、車両のイグニッションスイッチは、パルス充電が行われている状態のときにON状態とならないように構成されている。例えば、パルス充電ユニット30は、パルス充電を行う際に、車両のイグニッションスイッチに対して、ロック信号を出力する。イグニッションスイッチは、ロック信号が入力された場合、OFF状態でロックされるように構成されている。この構成により、イグニッションスイッチは、パルス充電中に車両のエンジンが始動することを防止する。
【0025】
なお、パルス充電ユニット30は、パルス充電が行われている状態のときに、車両のエンジンが始動しないように車両のECUに対してロック信号を出力してもよい。車両のECUにロック信号が入力された場合、車両のECUは、イグニッションスイッチがON状態となっても車両のエンジンを始動させず、停止状態を維持させる。
【0026】
実施形態において、通知部32は、パルス充電中に運転者が車両のエンジンを始動させようとした場合、パルス充電中である旨の警告を行う。例えば、通知部32は、車両のエンジンが停止状態のときに運転者がブレーキペダルを踏むと、パルス充電中である旨の警告を行う。通知部32は、例えば、表示部50に「パルス充電中です」や「パルス充電を停止してください」等の文言を表示させることにより、パルス充電中である旨の警告を行う。また、通知部32は、表示部50にパルス充電中であることを示すアイコンを表示させることで、パルス充電中である旨の警告を行ってもよい。
【0027】
運転者は、パルス充電中であって、パルス充電中である旨の警告が行われた後、スイッチ40を押下することで、パルス充電を停止することができる。実施形態では、パルス充電中である旨の警告が行われた際に、パルス充電ユニット30は、スイッチ40への押下操作を受付可能に設定される。この設定により、車両用充電システム1は、スイッチ40の押下操作によりパルス充電を停止させることが可能な状態となる。この状態のときに、運転者がスイッチ40を押下すると、パルス充電部33によるパルス充電が停止される。そして、パルス充電が停止された際に、パルス充電ユニット30は、スイッチ40への押下操作を受付不可の状態に設定される。パルス充電が停止されることで、運転者は、車両のエンジンを始動させることが可能となる。実施形態のパルス充電ユニット30は、パルス充電が停止された際に、車両のイグニッションスイッチに対して、アンロック信号を出力する。イグニッションスイッチにアンロック信号が入力されると、イグニッションスイッチのロックが解除され、運転者は、車両のエンジンを始動させることが可能となる。
【0028】
第1蓄電部10には、負荷51がヒューズ53を介して電気的に接続されている。実施形態において、負荷51及びヒューズ53は複数設けられている。各ヒューズ53は、各負荷51と1対1で電気的に接続されており、複数の負荷51は、それぞれに対応するヒューズを介して第1蓄電部10の正極端子10aに電気的に接続されている。
【0029】
実施形態に係る車両用充電システム1は、リレー52及び筐体JBを含む。リレー52は、第1蓄電部10と複数の負荷51との間に介在している。図1に示すように、リレー52の一方の端子は、第1蓄電部10とパルス充電部33との間の第1接続ノードN1を介して、第1蓄電部10の正極端子10aに電気的に接続されており、リレー52の他方の端子は、各負荷51に対応するヒューズ53を介して、各負荷51と電気的に接続されている。実施形態において、筐体JBは、パルス充電ユニット30、負荷51、リレー52、及びヒューズ53を収容し、電気接続箱を構成している。実施形態の負荷51は、筐体JB内に設けられた電子制御ユニット等の電子機器である。なお、負荷51は、筐体JBの外に設けられていてもよく、例えば、エアコン、ルームランプ、及びナビゲーションシステム等の車両補器を含んでいてもよい。
【0030】
リレー52は、パルス充電部33から第1蓄電部10にパルス電流が出力される際に第1蓄電部10と負荷51との間の電気的な接続を遮断するように構成されている。この構成により、パルス充電中に、負荷51に対して、当該負荷51の許容電圧を上回る電圧が印加されることを防止することができる。実施形態のリレー52は、電磁作用により機械的に接点を開閉させることができるメカニカルリレーである。
【0031】
例えば、パルス充電部33は、パルス充電を行う際にリレー52に対して、遮断信号を出力する。リレー52に遮断信号が入力された場合、リレー52は、第1蓄電部10と負荷51との間の電気的な接続を遮断する。また、パルス充電部33は、パルス充電を停止する際にリレー52に対して、接続信号を出力する。リレー52に接続信号が入力された場合、リレー52は、第1蓄電部10と負荷51との間を電気的に接続させる。
【0032】
負荷51は、第2蓄電部20の正極端子とも電気的に接続されている。実施形態の第2蓄電部20は、第2DC/DCコンバータ62、及びヒューズ53を介して負荷51と電気的に接続されている。図1に示すように、第2DC/DCコンバータ62の一方の端子は、第2蓄電部20と第1DC/DCコンバータ61との間の第2接続ノードN2に接続されており、第2DC/DCコンバータ62の他方の端子は、リレー52と各ヒューズ53との間の第3接続ノードN3に接続されている。つまり、第2蓄電部20は、第2接続ノードN2、第2DC/DCコンバータ62、及び第3接続ノードN3を介してヒューズ53及びヒューズ53の先の負荷51に電気的に接続されている。
【0033】
第2DC/DCコンバータ62は、電圧を降圧するものである。第2DC/DCコンバータ62は、第2蓄電部20から供給される直流電力の電圧を降圧し、ヒューズ53を介して、降圧された電圧で直流電力を各負荷51に出力する。実施形態において、第2DC/DCコンバータ62は、第2蓄電部20から出力される288Vの電力を12V程度まで降圧し、ヒューズ53を介して負荷51に出力する。
【0034】
実施形態の第2蓄電部20は、第1蓄電部10のバックアップバッテリとして機能する蓄電池である。例えば、第2蓄電部20は、第1蓄電部10に短絡等の異常が発生した場合に、第1蓄電部10の代わりに各負荷51に電力を供給する。例えば、第2DC/DCコンバータ62は、図示しないバックアップ制御部が第1蓄電部10の異常を検知した際に、バックアップ制御部により、第2蓄電部20の電力の電圧を降圧して、各負荷51に出力するように制御される。
【0035】
以上説明したように、実施形態に係る車両用充電システム1は、車両に搭載され、充放電が可能な第1蓄電部10と、車両に搭載され、充放電が可能な第2蓄電部20と、第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知可能な検知部31と、検知部31が第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した際に車両の運転者に対してサルフェーションを検知した旨の通知を行う通知部32と、第1蓄電部10及び第2蓄電部20に接続され、第1蓄電部10に対して第2蓄電部20からの電流をパルス電流として出力可能なパルス充電部33と、を含むパルス充電ユニット30と、サルフェーションを検知した旨の通知の後であって車両のエンジンが停止状態のときに、運転者の操作に応じてパルス充電部33から第1蓄電部10にパルス電流を出力させるスイッチ40と、を備える。
【0036】
実施形態に係る車両用充電システム1は、サルフェーションを検知した旨の通知の後であって車両のエンジンが停止状態のときに運転者のスイッチ40への操作に応じてパルス充電部33から第1蓄電部10にパルス電流を出力させるため、例えば、車両外部の電源を利用することなく、パルス充電を行うことができ、第1蓄電部10において、サルフェーションによって生じた非導電性の結晶被膜を除去することができる。ここで、車両外部の電源を利用するパルス充電器を用いる場合、蓄電部とパルス充電器との接続を車両の利用者が行う場合が考えられる。蓄電部とパルス充電器との接続を車両の利用者が行う場合、パルス充電器と接続する端子を間違えると車両の機器やパルス充電器が故障する可能性がある。一方で、実施形態に係る車両用充電システム1においては、車両の利用者(運転者)による第1蓄電部10とパルス充電部33との接続作業が不要であり、運転者のスイッチ40への操作に応じてパルス充電を行うことが可能である。したがって、第1蓄電部10におけるサルフェーションで生じた非導電性の結晶被膜の除去を容易に行うことができる。また、通知部32は、検知部31が第1蓄電部10におけるサルフェーションを検知した際に、運転者に対してサルフェーションを検知した旨の通知を行う。この構成により、運転者は、サルフェーションによって生じた非導電性の結晶被膜の除去が必要な場合にパルス充電を行うことができる。つまり、実施形態に係る車両用充電システム1は、適切な時期に、サルフェーションによって生じた非導電性の結晶被膜の除去を容易に行うことができる。適切な時期にパルス充電を行うことにより、第1蓄電部10の劣化を抑制し、第1蓄電部10の交換までの期間を延ばすことができる。したがって、車両の維持コストを削減することができる。また、第1蓄電部10の廃棄量を削減できるため、環境への影響を抑制することができる。
【0037】
また、実施形態に係る車両用充電システム1は、車両に搭載された負荷51と第1蓄電部10との間に介在するリレー52と、リレー52及びパルス充電ユニット30を収容する筐体JBと、を更に備え、リレー52は、パルス充電部33から第1蓄電部10にパルス電流が出力される際に第1蓄電部10と負荷51との間の接続を遮断する。
【0038】
実施形態に係る車両用充電システム1は、パルス充電部33から第1蓄電部10にパルス電流が出力される際に、リレー52によって第1蓄電部10と負荷51との間の接続を遮断する。この構成により、パルス充電中に、許容電圧を上回る電圧が負荷51に印加されて、負荷51が故障することを防止することができる。
【0039】
また、実施形態に係る車両用充電システム1において、通知部32は、車両のメータ部101に設けられた表示部50にサルフェーションを検知したことを示す表示を行うことにより、運転者に対してサルフェーションを検知した旨の通知を行う。
【0040】
通知部32が、サルフェーションを検知したことを示す表示をメータ部101の表示部50に表示させることにより、運転者に視認されやすい位置に通知内容を表示することができ、運転者が通知部32からの通知を見落とすことを抑制することができる。
【0041】
また、実施形態に係る車両用充電システム1において、スイッチ40は、車両のステアリングホイール102に設けられている。
【0042】
スイッチ40を運転者が操作しやすい位置に設けることにより、運転者は、パルス充電をより容易に行うことができる。
【0043】
なお、上述の実施形態において、スイッチ40がステアリングホイール102に設けられている例を用いて説明したが、本発明は、この構成に限られない。例えば、スイッチ40は、車両のダッシュボードの中央部のスイッチパネルに設けられていてもよい。
【0044】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:車両用充電システム、10:第1蓄電部、20:第2蓄電部、30:パルス充電ユニット、31:検知部、32:通知部、33:パルス充電部、40:スイッチ、50:表示部
図1
図2
図3