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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102519
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/533 20210101AFI20240724BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20240724BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20240724BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240724BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240724BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240724BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240724BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20240724BHJP
【FI】
H01M50/533
H01G11/06
H01G11/70
H01G11/78
H01M50/103
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M50/55 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006456
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100194777
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 憲治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清司
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩司
(72)【発明者】
【氏名】古川 一揮
(72)【発明者】
【氏名】大塚 拓海
(72)【発明者】
【氏名】増田 俊平
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078AB02
5E078AB06
5E078FA05
5E078FA07
5E078FA23
5E078HA22
5E078HA23
5H011AA01
5H011CC05
5H011EE04
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AK07
5H029AL03
5H029AL07
5H029AM11
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029DJ02
5H043AA01
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA13
5H043EA22
5H043HA04E
5H043JA03E
5H043JA06E
5H043JA13E
5H043KA06E
5H043KA33D
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な電気的接続を維持できる電気化学素子を提供する。
【解決手段】電気化学素子1は、底部111及び側壁部112を有する凹状容器11と凹状容器11の開口を覆う蓋材12とを有するケース10と、電極層21と電極層22と固体電解質層23とを積層した積層体を有し、底部111と電極層21とが対向するようにケース11の内部空間に収容される発電要素20と、凹状容器11の開口側において、電極層22と蓋材12との間に配置される導電板30とを備える。導電板30は、発電要素20に対向する対向部32と、対向部の縁端に形成された係止部31とを有する。係止部31は、側壁部112の内周面に圧接されて導電板30を固定する。対向部32は、発電要素20に向かって湾曲して発電要素20を押圧する内湾曲部321と、内湾曲部321とは反対方向に湾曲する外湾曲部322とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び側壁部を有する凹状容器と前記凹状容器の開口を覆う蓋材とを有するケースと、
前記ケース内に封止され、前記底部側に配置された第1電極層と前記蓋材側に配置された第2電極層と前記第1電極層及び前記第2電極層の間に配置された隔離層とを有する発電要素と、
前記発電要素と前記蓋材との間に配置された導電板とを備え、
前記第1電極層は、前記ケースの内部から外部に通じる第1導通経路と電気的に接続されており、
前記第2電極層は、前記導電板を介して前記ケースの内部から外部に通じる第2導通経路と電気的に接続されており、
前記導電板は、前記発電要素に対向する対向部と、前記対向部の縁端に形成され、前記側壁部の内周面に圧接されて前記導電板を固定する係止部とを含み、
前記対向部は、前記発電要素に向かって湾曲して前記発電要素を押圧する内湾曲部と、前記内湾曲部とは反対方向に湾曲する外湾曲部とを含む、電気化学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学素子であって、
前記側壁部は、前記係止部の蓋材方向への移動を制止する制止部を有する、電気化学素子。
【請求項3】
請求項1に記載の電気化学素子であって、
前記対向部は、平面視で前記係止部の圧接方向に対して線対称に形成された第1スリット及び第2スリットを有し、
前記内湾曲部及び外湾曲部のいずれか一方は、前記第1スリット及び第2スリットの間に形成され、
前記内湾曲部及び外湾曲部のいずれか他方は、前記第1スリット及び第2スリットの外方に形成されている、電気化学素子。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学素子であって、
前記対向部は、前記電気化学素子の組立時において前記係止部の圧接方向とは反対方向に前記導電板を撓ませるためのピンを挿入するピン挿入孔を有する、電気化学素子。
【請求項5】
請求項4に記載の電気化学素子であって、
前記対向部は、平面視で前記係止部の圧接方向に対して線対称に形成された第1スリット及び第2スリットを有し、
前記内湾曲部及び外湾曲部のいずれか一方は、前記第1スリット及び第2スリットの間に形成され、
前記内湾曲部及び外湾曲部のいずれか他方は、前記第1スリット及び第2スリットの外方に形成され、
前記ピン挿入孔は、電気化学素子の組立完了時において、前記第1スリット及び第2スリットの対称軸上で、かつ、前記第1スリット及び第2スリットの端部同士を結ぶ線よりも外方に形成されている、電気化学素子。
【請求項6】
底部及び側壁部を有する凹状容器と前記凹状容器の開口を覆う蓋材とを有するケースと、
前記ケース内に封止され、前記底部側に配置された第1電極端子及び前記蓋材側に配置された第2電極端子を含む外装材と、前記外装材の内部に封入され、第1電極層と第2電極層と前記第1電極層及び前記第2電極層の間に配置された隔離層とを含む発電要素とを有する扁平形素子と、
前記扁平形素子と前記蓋材との間に配置された導電板とを備え、
前記第1電極端子は、前記ケースの内部から外部に通じる第1導通経路と電気的に接続されており、
前記第2電極端子は、前記導電板を介して前記ケースの内部から外部に通じる第2導通経路と電気的に接続されており、
前記導電板は、前記発電要素に対向する対向部と、前記対向部の縁端に形成され、前記側壁部の内周面に圧接されて前記導電板を固定する係止部とを含み、
前記対向部は、前記発電要素に向かって湾曲して前記発電要素を押圧する内湾曲部と、前記内湾曲部とは反対方向に湾曲する外湾曲部とを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケース内に発電要素を封止した電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹状容器及び凹状容器の開口を覆う蓋材によって形成された内部空間に発電要素が収容された電池が種々開示されている。
【0003】
特開2012-69508号公報(特許文献1)は、電気化学特性が安定した電気化学セルを開示している。電気化学セルは、密封容器を有する。密封容器は、ベース部材とリッド部材とからなる。両部材の間には電気化学素子(電極体)が収納される収納空間が形成されている。リッド部材と電気化学素子との間には、電気化学素子を押圧する弾性部材が配設されている。特許文献1は、弾性部材として断面視においてV字形に屈曲した板バネ、よじれに起因する弾性復元力を利用するトーションバーユニット、又は、中央部から外周縁部に向かうにしたがって反った凹曲面状に形成されたダイヤフラム状バネなどを用いた実施態様を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-69508号公報
【特許文献2】特開2010-56067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電気化学セルにおいて、弾性部材がリッド部材により位置規制された状態で電極体を押圧する実施態様では、電気化学セルを封止する時に、リッド部材が弾性部材を押圧した状態でリッド部材とベース部材とを接合する必要がある。そのため、リッド部材が弾性部材からの反力を受けて傾きやすくなり、リッド部材とベース部材との接合が不均一になるおそれがある。また、弾性部材がリッド部材や電極体に固定されていない場合は、封止時に弾性部材が位置ズレし、良好な電気的接続を維持しにくくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、良好な電気的接続を維持することができる電気化学素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は次のように構成した。すなわち、本開示に係る電気化学素子は、底部及び側壁部を有する凹状容器と凹状容器の開口を覆う蓋材とを有するケースと、ケース内に封止され、底部側に配置された第1電極層と蓋材側に配置された第2電極層と第1電極層及び第2電極層の間に配置された隔離層とを有する発電要素と、発電要素と前記蓋材との間に配置された導電板とを備える。第1電極層は、前記ケースの内部から外部に通じる第1導通経路と電気的に接続されている。第2電極層は、導電板を介してケースの内部から外部に通じる第2導通経路と電気的に接続されている。導電板は、発電要素に対向する対向部と、対向部の縁端に形成され、側壁部の内周面に圧接されて導電板を固定する係止部とを含む。対向部は、発電要素に向かって湾曲して発電要素を押圧する内湾曲部と、内湾曲部とは反対方向に湾曲する外湾曲部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電気化学素子によれば、良好な電気的接続を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る電気化学素子を示す断面図である。
図2図2は、図1の電気化学素子(蓋材を除く。)を示す平面図である
図3図3は、図1に示す導電板の取付工程を示す断面図である。
図4図4は、図1に示す導電板の取付工程を示す断面図である。
図5図5は、図1に示す導電板の取付工程を示す断面図である。
図6図6は、図1に示す導電板の取付工程を示す断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る電気化学素子を示す断面図である。
図8図8は、第3実施形態に係る電気化学素子を示す断面図である。
図9図9は、第4実施形態に係る電気化学素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(構成1)
本開示の実施形態に係る電気化学素子は、底部及び側壁部を有する凹状容器と凹状容器の開口を覆う蓋材とを有するケースと、ケース内に封止され、底部側に配置された第1電極層と蓋材側に配置された第2電極層と第1電極層及び第2電極層の間に配置された隔離層とを有する発電要素と、発電要素と前記蓋材との間に配置された導電板とを備える。第1電極層は、前記ケースの内部から外部に通じる第1導通経路と電気的に接続されている。第2電極層は、導電板を介してケースの内部から外部に通じる第2導通経路と電気的に接続されている。導電板は、発電要素に対向する対向部と、対向部の縁端に形成され、側壁部の内周面に圧接されて導電板を固定する係止部とを含む。対向部は、発電要素に向かって湾曲して発電要素を押圧する内湾曲部と、内湾曲部とは反対方向に湾曲する外湾曲部とを含む。
【0011】
このように、係止部が凹状容器の側壁部に圧接されて固定されおり、かつ、内湾曲部が発電要素を凹状容器の底部側へと押圧することにより、導電板は振動等により位置ズレすることなく、発電要素を第1導通経路および第2導通経路とより安定的に導通させることができる。これにより、電気化学素子は、良好な電気的接続を維持させることができる。
【0012】
(構成2)
構成1の電気化学素子において、側壁部は、係止部の蓋材方向への移動を制止する制止部を有してよい。これにより、電気化学素子は、より安定的に良好な電気的接続を維持させることができる。
【0013】
(構成3)
構成1又は2の電気化学素子において、対向部は、平面視で前記係止部の圧接方向に対して線対称に形成された第1スリット及び第2スリットを有してよい。内湾曲部及び外湾曲部のいずれか一方は、第1スリット及び第2スリットの間に形成されてよい。内湾曲部及び外湾曲部のいずれか他方は、第1スリット及び第2スリットの外方に形成されてよい。これにより、内湾曲部及び外湾曲部を容易に形成することができる。
【0014】
(構成4)
構成1~3のいずれかの電気化学素子において、対向部は、前記電気化学素子の組立時において係止部の圧接方向とは反対方向に導電板を撓ませるためのピンを挿入するピン挿入孔を有してよい。これにより、電気化学素子の組立工程において、導電板の取付け時に内湾曲部及び外湾曲部を適切に撓ませて容易に導電板を取り付けることができる。
【0015】
(構成5)
構成4の電気化学素子において、ピン挿入孔は、電気化学素子の組立完了時において、第1スリット及び第2スリットの対称軸上で、かつ、第1スリット及び第2スリットの端部同士を結ぶ線よりも外方に形成されてよい。これにより、電気化学素子の組立工程において、導電板の取付け時に内湾曲部及び外湾曲部をより適切に撓ませて容易に導電板を取り付けることができる。
【0016】
(構成6)
本開示の他の実施形態に係る電気化学素子は、底部及び側壁部を有する凹状容器と凹状容器の開口を覆う蓋材とを有するケースと、ケース内に封止され、底部側に配置された第1電極端子及び蓋材側に配置された第2電極端子を含む外装材と、外装材の内部に封入され、第1電極層と第2電極層と第1電極層及び第2電極層の間に配置された隔離層とを含む発電要素とを有する扁平形素子と、扁平形素子と蓋材との間に配置された導電板とを備えている。第1電極端子は、ケースの内部から外部に通じる第1導通経路と電気的に接続されている。第2電極端子は、導電板を介してケースの内部から外部に通じる第2導通経路と電気的に接続されている。導電板は、発電要素に対向する対向部と、対向部の縁端に形成され、側壁部の内周面に圧接されて導電板を固定する係止部とを含む。対向部は、発電要素に向かって湾曲して発電要素を押圧する内湾曲部と、内湾曲部とは反対方向に湾曲する外湾曲部とを含む。これにより、電気化学素子は、振動等により導電板に位置ズレが生じることなく、良好な電気的接続を維持させることができる。
【0017】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態について、電気化学素子が全固体電池である場合を例にして、図1図6を用いて具体的に説明する。まず、図1及び図2に示すように、電気化学素子1は、ケース10と、ケース10に収容される発電要素20及び導電板30と、ケース10の外表面に配置される外部端子13及び外部端子14とから構成されている。
【0018】
ケース10は、凹状容器11と蓋材12とを有する。凹状容器11は、セラミックス製である。凹状容器11は、四角形状の底部111と、底部111の外周から連続して形成され、内部に発電要素20を収容するための円筒形状の空間を有する四角筒形状の側壁部112とを含んでいる。側壁部112は、縦断面視で、底部111に対して略垂直に延びるように設けられている。底部111の内部には、導体部113が形成されている。導体部113は、発電要素20に導電接続されるように発電要素20と底部111との間に延設されており、電極層21に対応する導通経路を形成している。側壁部112の内部には、導体部114が形成されている。導体部114の一部は、図1に示すように、側壁部112の内周面及び後述する制止部115の下面に露出して形成されており、電極層22に対応する導通経路を形成している。なお、凹状容器11の材質は、特に限定されず、樹脂、ガラス(硼珪酸ガラス、ガラスセラミックスなど)、金属及びセラミック等、種々のものを例示することができ、或いは、樹脂中にセラミックスやガラスの粉末が分散された複合材であってもよい。凹状容器11を金属材料で構成する場合は、凹状容器11と発電要素20との絶縁、或いは、凹状容器11と後述する扁平形素子50(図9を参照。)との絶縁を確保するため、凹状容器11の底部111の内面及び側壁部112の内周面を樹脂材料又はガラス等の絶縁材で被覆することが好ましい。また、凹状容器11は、平面視において四角形状に限られず、円形状、楕円形状及び多角形状などであってもよい。発電要素20を収容するための内部の空間は、円筒形状に限られず、発電要素20の形状に応じて楕円筒形状、四角筒形状など多角筒形状に形成されてもよい。また、導体部114は、側壁部112の内部ではなく、側壁部112の内面に形成し、さらに底部111の内部を貫通させて外部端子14と導通させてもよい。この場合、発電要素20の外周面と導体部114とが接触しないように、発電要素20の外周面と導体部114との間、例えば、導体部114の内表面に絶縁層を形成するのが好ましい。
【0019】
側壁部112は、後述する導電板30の係止部31を圧接させて導電板30を固定する。本実施形態において、側壁部112は、側壁部112の内周面及び上端面を連続的に切欠いた窪み1121を有する。導電板30の係止部31は、窪み1121の嵌め込まれるようにして窪み1121の内周面に圧接される。本開示において、係止部31が圧接される窪み1121の内周面は、側壁部112の内周面であると言うことができる。このように、窪み1121を設けることにより、電気化学素子1の組立時に係止部31の位置決めが容易になる。また、係止部31が圧接される側壁部112(窪み1121)の上端には、制止部115が形成されている。制止部115は、図1に示すように、径方向内方に向かって張り出した張出部(天壁)である。制止部115は、平面視で発電要素20よりも径方向の外方において、導電板30の係止部31が蓋材12方向へ移動することを制止する。これにより、導電板30の大きな位置ズレを抑制でき、より安定的に良好な電気的接続を維持させることができる。なお、本実施形態では、図1に示すように、2つの係止部31に対応するように2つの窪み1121が設けられている。また、制止部115は、係止部31の蓋材12方向への移動を制止できれば上述の張出部であることに限られるものではない。
【0020】
蓋材12は、凹状容器11の開口を覆う四角形状の金属製薄板である。蓋材12は、図1及び図2に示すように、その外周端部の下面と凹状容器11の上端との間に配された四角枠状のシールリング15によって凹状容器11に接合(シーム溶接)されている。これにより、ケース10の内部空間は完全に密閉される。ケース10の内部空間は、発電要素20への影響を考慮して真空雰囲気或いは窒素等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。なお、蓋材12は、凹状容器11の開口を覆うことができれば、金属製薄板に限られるものではない。蓋材12は、四角形状に限られず、凹状容器11の平面視における形状に応じて、円形状、楕円形状及び多角形状等に種々変更することができる。また、蓋材12は、平板以外の形状であってもよい。また、蓋材12は、接着剤によって凹状容器11と接着されてもよく、ケース10の内部空間を密閉できれば蓋材12と凹状容器11との接合方法は特に限定されない。
【0021】
外部端子13は、凹状容器11の底部111の外面に配置されている。外部端子13は、導体部113を介して電極層21に電気的に接続されている。電極層21は、後述するように正極層として機能する。したがって、導体部113は、外部端子13と正極層とを導通させる導通経路となり、外部端子13は、正極の端子として機能する。
【0022】
外部端子14は、凹状容器11の底部111の外面に外部端子13から離れて配置されている。外部端子14は、導体部114を介して後述する導電板30の係止部31と電気的に接続されている。後述するように、導電板30は、負極層として機能する電極層22に電気的に接続される。したがって、導体部114は、外部端子14と負極層とを導通させる導通経路となり、導電板30は、この導通経路と電極層22とを導通させる接続端子となるため、外部端子14は、負極の端子として機能する。なお、外部端子13及び外部端子14の配置は、上記に限定されず、凹状容器11の側壁部112の外面に配置されてもよく、蓋材12を導体部114として機能させ、外部端子14を蓋材12の外面に形成することも可能である。ただし、これら両端子を凹状容器11の底部111の外面に一定の間隔を設けて配置することにより、回路基板の表面への実装が容易になる。
【0023】
ここで、凹状容器11の製造方法について説明する。まず、セラミックのグリーンシートに金属ペーストを印刷塗布して導体部113及び導体部114となる印刷パターンを形成する。次に、これらの印刷パターンを形成したグリーンシートを複数積層し、焼成する。形状の異なる複数のグリーンシートを積層することにより、上述した窪み1121及び制止部115が形成される。これにより、内部に導体部113及び導体部114を有し、且つ、側壁部112の内周面に上述した窪み1121及び制止部115を有する凹状容器11を作製することができる。なお、側壁部112の内周面に窪み1121及び制止部115を形成できれば、このような製法に限定されるものではない。また、窪み1121を設けずに側壁部112の内周面に係止部31を圧接させる場合は、窪み1121を形成する必要はない。なお、外部端子13及び外部端子14は、この金属ペーストの印刷パターンによって形成してもよい。
【0024】
発電要素20は、電極層(正極層)21と電極層(負極層)22と固体電解質層23とを積層した積層体を含んでいる。固体電解質層23は、隔離層として電極層21と電極層22との間に配置されている。すなわち、本実施形態において、隔離層は、固体電解質層23である。発電要素20は、円柱形状に形成されている。発電要素20は、凹状容器11の底部111側(図示の下方)から電極層21、固体電解質層23、電極層22の順で積層されている。すなわち、発電要素20は、その一方の端部である電極層21が凹状容器11の底部111側となるように配置され、且つ、その他方の端部である電極層22が蓋材12側となるように配置され、ケース10の内部空間に収容されている。なお、発電要素20は、円柱形状に限られず、直方体形状や多角柱形状等、種々変更することができる。また、発電要素20は、複数の積層体を有していてもよい。複数の積層体は、直列に接続されるように積層されていてもよい。
【0025】
電極層21は、正極活物質として、コバルト酸リチウムと、硫化物系固体電解質と、導電助剤であるグラフェンとを質量比で65:30:5の割合で含有した正極合剤を円柱形状に成形した正極ペレットである。なお、電極層21の正極活物質は、発電要素20の正極層として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、オリビン型複合酸化物等であってもよく、これらを適宜混合したものであってもよい。他の構成材や割合についても、特に限定されるものではない。また、電極層21のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、電気化学素子1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0026】
電極層22は、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質として、LTO(LiTi12、チタン酸リチウム)と、硫化物系固体電解質と、グラフェンとを重量比で50:40:10の割合で含有した負極合剤を円柱形状に成形した負極ペレットである。なお、電極層22の負極活物質は、発電要素20の負極層として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属リチウム、リチウム合金のほか、黒鉛、低結晶カーボンなどの炭素材料や、SiOなどの酸化物等であってもよく、これらを適宜混合したものであってもよい。他の構成材や割合についても、特に限定されるものではない。また、電極層22のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、電気化学素子1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0027】
固体電解質層(隔離層)23は、硫化物系固体電解質を含む。固体電解質層23は、円柱形状に成形されている。なお、電極層21、電極層22及び固体電解質層23に含まれる固体電解質は、特に限定はされないが、イオン伝導性の点から硫化物系固体電解質、特にアルジロダイト型の硫化物系固体電解質が好ましく用いられる。硫化物系固体電解質を用いる場合には、正極活物質との反応を防ぐために、正極活物質の表面をニオブ酸化物などのリチウムイオン伝導性材料で被覆することが好ましい。また、固体電解質層23、電極層21および電極層22に含まれる固体電解質は、水素化物系固体電解質や酸化物系固体電解質等であってもよい。また、固体電解質層23のサイズや形状は、円柱形状に限定されるものではなく、電気化学素子1のサイズや形状に応じて種々変更可能である。
【0028】
導電板30は、図1及び図2に示すように、係止部31と発電要素20に対向する対向部32とを有する。
【0029】
係止部31は、対向部32の縁端に一対形成され、凹状容器11の側壁部112(窪み1121)の内周面に圧接されて導電板30を固定し、導電板30の位置ズレを抑制する。係止部31の先端は、側壁部112の内周面への圧接方向とは反対方向に折り返されている。これにより、圧接による係止部31又は側壁部112の損傷等を抑制できる。ここで、圧接方向とは、係止部31から側壁部112(窪み1121)の内周面へ径方向外方に向かう方向である。なお、係止部31は、導体部114に接触する。また、係止部31は、対向部32の縁端から圧接方向に延設されている。すなわち、係止部31は、対向部32と面一に形成され、電極層21に向かって折り曲げられていない。これにより、係止部31と電極層21との接触を防止して短絡リスクを低減することができ、その結果、良好な電気的接続を維持することができる。
【0030】
対向部32は、平面視において、係止部31よりも幅広に形成されている。すなわち、対向部32から係止部31に向かって平面視における幅が徐々に狭くなっている。対向部32は、内湾曲部321と外湾曲部322とを有する。内湾曲部321は、発電要素20(負極層)に向かって湾曲している。内湾曲部321は、発電要素20を凹状容器11の底部111に向かって押圧する。外湾曲部322は、内湾曲部321とは反対方向、すなわち、蓋材12に向かって湾曲している。図2に示すように、対向部32は、さらに、スリット323とスリット324を有する。スリット323とスリット324とは、図2に示す一対の係止部31を結ぶ線L1、すなわち、平面視における圧接方向に対して線対称に形成されている。したがって、線L1は、スリット323とスリット324の対称軸と言い換えてもよい。スリット323及びスリット324は、対向部32の外縁に沿うように平面視弧状に形成されており、各々の端部は、係止部31に向かって曲率半径が大きくなるように延びている。内湾曲部321は、平面視でスリット323とスリット324との間に形成されている。外湾曲部322は、平面視でスリット323とスリット324の外方に形成されている。すなわち、外湾曲部322は、スリット323とスリット324の各々の外方に一対形成されている。スリット323及びスリット324を形成したことにより、内湾曲部321及び外湾曲部322を容易に形成することができる。また、内湾曲部321の外方に一対の外湾曲部322を形成したことにより、内湾曲部321が発電要素20を押圧した状態から蓋材12に向かって反り返ることを抑制することができる。なお、内湾曲部321と外湾曲部322の位置は入れ替えてもよい。すなわち、外湾曲部322が平面視でスリット323とスリット324との間に形成され、内湾曲部321が平面視でスリット323とスリット324の外方に形成されてもよい。また、スリット323及びスリット324の形状はこれに限られず、平行に形成される等、後述する導電板30の取付け手順において、内湾曲部321及び外湾曲部322を適切に撓ませることができれば種々の変更が可能である。
【0031】
対向部32は、さらに、一対のピン挿入孔325を有する。ピン挿入孔325は、電気化学素子1の組立時において係止部31の圧接方向とは反対方向に導電板30を撓ませるためのピンPが挿入される。以下、電気化学素子1の組立工程において、導電板30を取付ける手順を図3図6を用いて詳細に説明する。
【0032】
図3に示すように、凹状容器11の内部空間に発電要素20が収容された状態で、導電板30を準備する。そして、導電板30の一対のピン挿入孔325に各々のピンPを挿入する。
【0033】
次に、図4に示すように、矢印Aが示す内側への方向、すなわち、上述の圧接方向とは反対方向に各々のピンPを移動させる。これにより、内湾曲部321が図示下方に向かって大きく湾曲し、かつ、外湾曲部322が図示上方に向かって大きく湾曲する。その結果、導電板30の径方向の長さが短くなる。このとき、導電板30の径方向の長さは、一対の制止部115間の幅よりも僅かに短くなるようにピンPを移動させる。
【0034】
次に、図5に示すように、矢印Bが示す下方への方向、すなわち、発電要素20に向かう方向へ、導電板30を移動させ、導電板30を凹状容器11の内部空間へ挿入する。
【0035】
最後に、図6に示すように、導電板30の係止部31が制止部115の下面よりも図示下方となるように移動させ、ピンPをピン挿入孔325から取り外す。そうすると、導電板30がその反発力(図中、矢印Cで示す。)によって径方向外方に伸び、これにより、係止部31が側壁部112(窪み1121)の内周面に圧接される。このとき、係止部31は、必ずしも制止部115に当接する必要はなく、側壁部112(窪み1121)の内周面への圧接によって導電板30を固定できればよい。また、内湾曲部321は、取り付け前の状態(図3を参照。)に比べて撓みを大きくすることができる。すなわち、凹状容器11への取付け前の導電板30の径方向の長さは、取付け後の導電板30の径方向の長さよりも大きくすることができる。これにより、導電板30の対向部32は、十分に発電要素20を押圧することができる。また、内湾曲部321は、例えば片持ち支持された平面的な板バネに比べて比較的高いバネ定数を有する。そのため、内湾曲部321は、片持ち支持された板バネに比べ、同じ変位量であっても大きい押圧力を得ることができる。変位量とは、発電要素20を押圧している状態と発電要素20を押圧していない状態との比較において、内湾曲部321及び板バネの位置の変化から算出される軸方向の変位である。これにより、凹状容器11の形状のバラつき又は発電要素20の厚みのバラつきによって内湾曲部321の撓みが多少小さくなった場合であっても、内湾曲部321は、発電要素20を十分に押圧して固定することができる。
【0036】
図2に示すように、ピン挿入孔325は、電気化学素子1の組立完了時において、スリット323とスリット324との対称軸(線L1)上に形成される。また、ピン挿入孔325は、スリット323とスリット324の端部同士を結ぶ線L2よりも外方に形成される。これにより、適切に内湾曲部321及び外湾曲部322をより適切に撓ませることができ(図4を参照。)、かつ、ピン挿入孔325にピンPを挿入した状態で導電板30を凹状容器11の内部空間へ容易に挿入することができる。
【0037】
導電板30を構成する金属は、ニッケル、鉄、銅、クロム、コバルト、チタン、アルミニウム及びこれらの合金等が例示され、板バネとしての機能を発揮させやすくするため、SUS301-CSP、SUS304-CSP、SUS316-CSP、SUS420J2-CSP、SUS631-CSP及びSUS632J1-CSP等のバネ用ステンレス鋼が好ましく用いられる。
【0038】
また、導電板30の板材の厚みは、発電要素20への押圧力を一定以上とするために、0.05mm以上とすることが好ましく、0.07mm以上とすることがより好ましく、0.1mm以上とすることが特に好ましい。一方、導電板30の厚みが厚くなり過ぎてケース10内の収容容積が大きくなるのを防ぎ、また、導電板30を変形しやすくして側壁部112に容易に係止できるようにするため、導電板30の厚みは、0.5mm以下とすることが好ましく、0.4mm以下とすることがより好ましく、0.3mm以下とすることが特に好ましい。
【0039】
導電板30と蓋材12との間には隙間を形成してもよい。すなわち、導電板30と蓋材12とを非接触にしてもよい。これにより、発電要素20の体積変化によって導電板30が蓋材12側へと押された場合であっても、蓋材12の変形を抑制することができる。また、蓋材12と凹状容器11とは、上述の通りシールリング15を介して溶接される。導電板30と蓋材12との間に隙間を設けたことにより、発電要素20への溶接熱の影響を抑制することができる。さらに、導電板30と蓋材12とが接触しないため、凹状容器11の側壁部112の上端面に蓋材12を接合する際に導電板30からの押圧の影響を受けなくなり、ケース10の封止性を向上させることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電気化学素子1について、図7を用いて具体的に説明する。本実施形態の電気化学素子1において、第1実施形態の電気化学素子1と同じ構成については基本的には説明を省略し、第1実施形態の電気化学素子1とは異なる構成についてのみ説明する。
【0041】
本実施形態の電気化学素子1において、発電要素20は、多孔質金属層24を有する。多孔質金属層24は、電極層22の表面に配置されており、対向部32と接触することにより、電極層22と導電板30とを導通させている。
【0042】
多孔質金属層24は、発泡状金属多孔質体のように、空隙率が高く、一方の面から他方の面に貫通する空孔を有する多孔質の金属基体であり、押圧して圧縮することができ、集電体として機能するものである。多孔質金属層24は、電極層22の表面を被覆している。電気抵抗を低下させるためには、多孔質金属層24は、電極層22と接触しているだけでなく、その一部が電極層22の負極合剤に埋設されて電極層22と一体化していることが好ましい。なお、図7に示すように、電極層21の下面、すなわち、底部111側において、電極層21の表面に多孔質金属層24を配置してもよく、その一部が電極層21の正極合剤に埋設されて電極層21と一体化するように多孔質金属層24を設けてもよい。
【0043】
多孔質金属層24の空隙率は、圧縮による発電要素20の厚みのばらつきなどを調整しやすくするため、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。一方、良好な導電性を確保するために、多孔質金属層24の空隙率は、99%以下であることが好ましい。電気化学素子1を組み立てる前の多孔質金属層24の厚みは、0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることが特に好ましく、一方、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることが特に好ましい。
【0044】
このように多孔質金属層24を設けたことにより、発電要素20の厚み又はケース10の高さ等のばらつきを十分に吸収することができ、その結果、内部抵抗の値のばらつきを抑制することができる。或いは、多孔質金属層24が予め第2電極層と一体化されている場合には、対向部32と発電要素20との導通箇所の電気抵抗を低減することができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の電気化学素子1について、図8を用いて具体的に説明する。本実施形態の電気化学素子1において、第1実施形態の電気化学素子1と同じ構成については基本的には説明を省略し、第1実施形態の電気化学素子1とは異なる構成についてのみ説明する。
【0046】
本実施形態の電気化学素子1は、電極層22と導電板30との間に導電シート40を有する。導電シート40は、本実施形態において、膨張黒鉛により構成された導電性のカーボンシート、すなわち、黒鉛シートである。黒鉛シートは、以下のように製造される。まず、天然黒鉛に酸処理を施した酸処理黒鉛の粒子を加熱する。そうすると、酸処理黒鉛は、その層間にある酸が気化して発泡することによって膨張する。この膨張化した黒鉛(膨張黒鉛)をフェルト状に成型し、さらに、ロール圧延機を用いて圧延することによりシート体を形成する。導電シート40は、この膨張黒鉛のシート体を円形状にくり抜くことにより製造される。上述の通り、膨張黒鉛は、酸が気化して酸処理黒鉛が発泡することによって形成される。そのため、黒鉛シートは、多孔質形状に形成されている。したがって、黒鉛シートは、黒鉛自体がもつ導電性とともに、従来の黒鉛製品にはない柔軟性をも有する。なお、黒鉛シートの製造方法はこれに限られず、膨張黒鉛以外の材料で構成されてもよく、どのような方法で黒鉛シートを製造してもよい。
【0047】
黒鉛シートのみかけ密度は、0.3g/cm以上が好ましく、より好ましくは0.7g/cm以上であり、1.5g/cm以下が好ましく、より好ましくは1.3g/cm以下とするのがよい。黒鉛シートのみかけ密度が低すぎると黒鉛シートが破損しやすくなり、みかけ密度が高すぎると柔軟性が低下するためである。なお、みかけ密度は、黒鉛シートに限られるものではなく、導電性テープなど他の素材によって形成された導電シート40においても適用可能である。
【0048】
黒鉛シートの厚みは、0.05mm以上が好ましく、より好ましくは0.07mm以上とするのがよく、0.5mm以下が好ましく、より好ましくは0.2mm以下とするのがよい。黒鉛シートの厚みが小さすぎると黒鉛シートが破損しやすくなり、厚みが大きすぎると黒鉛シートが発電要素20を収容するケース10の内部空間を狭め、収容できる発電要素20の容積(厚み)が減少するためである。
【0049】
このように、導電板よりも柔軟性の高い、すなわち変形容易な導電シート40を設けたことにより、上述した導電板30の対向部32の押圧力がより均一に発電要素20に伝わり、発電要素20の破損を抑制するとともに、電気的接続の安定化を図ることができる。なお、導電シート40は、図8に示すように、電極層21と凹状容器11の底部111との間に配置されてもよい。これにより、さらに発電要素20の破損の抑制及び電気的接続の安定化を図ることができる。
【0050】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の電気化学素子1について、図9を用いて具体的に説明する。本実施形態の電気化学素子1において、第1実施形態及び第2実施形態の電気化学素子1と同じ構成については基本的には説明を省略し、第1実施形態及び第2実施形態の電気化学素子1とは異なる構成についてのみ説明する。
【0051】
本実施形態の電気化学素子1は、ケース10の内部空間に扁平形素子50を収容している。扁平形素子50は、図9に示すように、外装缶(電極端子)51、封口缶(電極端子)52、上述の発電要素20及びガスケット53を有している。
【0052】
外装缶51は、円形状の平面部511と、平面部511の外周から連続して形成される円筒状の筒状側壁部512とを備える。筒状側壁部512は、縦断面視で、平面部511に対して略垂直に延びるように設けられている。外装缶51は、ステンレスなどの金属材料によって形成されている。外装缶51は、凹状容器11の底部111側に配置されている。
【0053】
封口缶52は、円形状の平面部521と、平面部521の外周から連続して形成される円筒状の周壁部522とを備える。封口缶52の開口は、外装缶51の開口と対向している。封口缶52は、ステンレスなどの金属材料によって形成されている。封口缶52は、蓋材12側に配置されている。外装缶51と封口缶52との間には、発電要素20が収容される。したがって、外装缶51は、導体部113に接続される電極端子として機能し、封口缶52は、導電板30に接続されるもう一方の電極端子として機能する。
【0054】
外装缶51と封口缶52とは、発電要素20を内部空間に収容したのち、外装缶51の筒状側壁部512と封口缶52の周壁部522との間にガスケット53を介してカシメられる。より具体的には、外装缶51と封口缶52とは、外装缶51と封口缶52の互いの開口を対向させ、外装缶51の筒状側壁部512の内側に封口缶52の周壁部522を挿入したのち、筒状側壁部512と周壁部522との間にガスケット53を介してカシメられる。これにより、外装缶51と封口缶52によって形成された内部空間は、密閉状態となる。すなわち、外装缶51及び封口缶52は、その内部空間に発電要素20を封入する外装材である。なお、外装缶51及び封口缶52は各々、平面視において円形状に限られず、楕円形状又は多角形状等、種々変更することができる。
【0055】
ガスケット53は、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂等の樹脂材料によって構成されている。なお、外装缶51と封口缶52によって形成された内部空間を密閉状態とする方法は、ガスケット53を介したカシメに限られず、他の方法によってなされるのであってもよい。例えば、外装缶51の筒状側壁部512と封口缶52の周壁部522との間に熱溶融性樹脂や接着剤などを介在させて接合し、封止するものであってもよい。
【0056】
導電板30は、凹状容器11の内部に扁平形素子50が収容されたのち、上述の取付け手順と同様に取り付けられ、扁平形素子50を押圧する。これにより、導電板30は、振動等によって位置ズレすることなく、扁平形素子50とより安定的に接触し、上述の第1実施形態の電気化学素子1と同様に、良好な電気的接続を維持することができる。
【0057】
本実施形態の電気化学素子1においても、特に図示しないが、扁平形素子50と導電板30との間に上述した多孔質金属層24或いは導電シート40を配置してもよい。また、扁平形素子50と凹状容器11の底部111との間に多孔質金属層24或いは導電シート40を配置してもよい。
【0058】
扁平形素子50は、固体電解質層を有する全固体電池に限られるものではなく、リチウムイオン二次電池などの非水電解質電池や、その他扁平形状を有する電池、或いは、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタであってもよい。
【0059】
上述の第1~4の実施形態において、電極層21を正極層として機能させ、電極層22を負極層として機能させたが、電極層21を負極層として機能させ、電極層22を正極層として機能させてもよい。この場合、外部端子13が負極の端子として機能し、外部端子14が正極の端子として機能する。
【0060】
上述の第4実施形態において、扁平形素子50は、外装缶51が凹状容器11の底部111側に配置されるようにケース10の内部空間に収容したが、封口缶52が凹状容器11の底部111側に配置されるように収容してもよい。すなわち、扁平形素子50は、図9に示す扁平形素子50の天地を反転させた状態で、ケース10の内部空間に収容されてもよい。
【0061】
上述の第1~4の実施形態では、発電要素20を、電極層21と電極層22と固体電解質層23とを積層した積層体で構成したが、隔離層として、固体電解質層23に代えてセパレータ(図示せず。)を設け、ケース10の内部空間に発電要素20とともに電解液を収容することにより、電気化学素子1をリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等とすることができる。この場合、セパレータ及び電解液は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ又は電気二重層キャパシタ等で通常に用いられるものである。また、電極層21と電極層22は、各種の電気化学素子1で通常に用いられる正極及び負極の合剤層に置き換えればよい。
【0062】
なお、本発明によれば、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」および目標12「つくる責任 つかう責任」に寄与することができる。
【0063】
以上、実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 電気化学素子、 10 ケース、11 凹状容器、12 蓋材、13 外部端子、14 外部端子、15 シールリング、111 底部、112 側壁部、1121 窪み、113 導体部、114 導体部、115 制止部、20 発電要素、30 導電板、31 係止部、32 対向部、321 内湾曲部、322 外湾曲部、323 スリット、324 スリット、325 ピン挿入孔、40 導電シート、50 扁平形素子、51 外装缶、511 平面部、52 封口缶、521 平面部、53 ガスケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9