(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010252
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】パーキンソン病治療のための組合せ医薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/661 20060101AFI20240117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240117BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240117BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K31/661
A61P43/00 121
A61P25/00
A61P25/16
A61K31/198
A61K31/351
【審査請求】未請求
【請求項の数】42
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037959
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】諸熊 賢治
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086NA05
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA19
4C206GA37
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206NA05
4C206NA14
4C206NA15
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】パーキンソン病の治療に有用な組合せ医薬を提供することを課題とする。
【解決手段】レボドパプロドラッグ化合物およびカルビドパプロドラッグ化合物を含む組合せ医薬を含有する、パーキンソン病の予防または治療剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のA群およびB群からそれぞれ一つずつ選ばれる化合物またはその薬理的に許容し得る塩を含む組合せ医薬。
<A群>式(I)で表される化合物および式(II)で表される化合物からなる群より 選ばれる化合物またはその薬理的に許容し得る塩
式(I);
【化87】
(式中、R
10aは、アミノ酸側鎖またはそのO-リン酸化アミノ酸側鎖であり、
R
11aおよびR
12aは、同一または異なって、それぞれ、水素、アルキル、シクロアル キル、フェニル、P(=O)(OR’)
2、S(=O)(OH)または置換されていて もよいグリコシルであり、
R
13aおよびR
14aは、同一または異なって、それぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、フェニル、-O-C(=O)-R’、-C(=O)-OR’、-C(=O)-R’、-C(=S)-R’、-O-C(=O)-NR’ R’’、-O-C(=S)-NR’R’’、またはO-C(=O)-R’’ ’であり、
R
15aは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはフェニルであり、
R’およびR’’は、同一または異なって、それぞれ、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキルもしくはフェニルであるか、またはR’およびR’’が隣接する窒素原子と一緒になって、ヘテロアリールを形成する基であり、
R’’ ’は、水素、アルキル、アルケニルまたはアルキニルである。)で表される化合物、および
式(II);
【化88】
(式中、R
20aは、置換されていてもよいアミノ酸側鎖であり、
R
21aおよびR
22aは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、アルカノイル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
23a、R
24a、R
25aは、同一または異なって、それぞれ水素またはアルキルである。)で表される化合物
<B群>式(III)~式(IX)のいずれかで表される化合物からなる群より選ばれ る化合物またはその薬理的に許容し得る塩
式(III);
【化89】
(式中、R
10bは、アミノ酸側鎖であり、
R
11bおよびR
12bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
13bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
式(IV);
【化90】
(式中、R
20bは、アミノ酸側鎖であり、
R
21bおよびR
22bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
23bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
式(V);
【化91】
(式中、R
30bは、アミノ酸側鎖であり、
R
31bおよびR
32bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
33bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
式(VI);
【化92】
(式中、R
41bおよびR
42bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
43bおよびR
44bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
43bおよびR
44bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
45bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
式(VII);
【化93】
(式中、R
51bおよびR
52bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
53bおよびR
54bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
53bおよびR
54bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
55bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
式(VIII);
【化94】
(式中、R
61bおよびR
62bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
63bおよびR
64bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
63bおよびR
64bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
65bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、および
式(IX);
【化95】
(式中、R
71bおよびR
72bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
73bおよびR
74bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
73bおよびR
74bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
75bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物。
【請求項2】
前記A群の化合物が式(I)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1に記載の組合せ医薬。
【請求項3】
前記A群の化合物が式(II)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1に記載の組合せ医薬。
【請求項4】
前記B群の化合物が式(III)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【請求項5】
前記B群の化合物が式(IV)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【請求項6】
前記B群の化合物が式(V)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【請求項7】
前記B群の化合物が式(VI)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【請求項8】
前記B群の化合物が式(VII)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【請求項9】
前記B群の化合物が式(VIII)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【請求項10】
前記B群の化合物が式(IX)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、請求項1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【請求項11】
式(I)のR10aが、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、O-リン酸化されたチロシン、トリプトファン、オルニチン、ランチオニン、3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンおよび1個または2個でO-リン酸化された3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸のアミノ酸側鎖またはO-リン酸化アミノ酸側鎖である、請求項1または2に記載の組合せ医薬。
【請求項12】
式(I)のR10aが、リジン、バリン、チロシン、O-リン酸化されたチロシンおよび3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸のアミノ酸側鎖またはO-リン酸化アミノ酸側鎖である、請求項1または2に記載の組合せ医薬。
【請求項13】
式(I)のR11aおよびR12aが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R13a、R14a、R15aが、水素である、請求項1、2、11または12に記載の組合せ医薬。
【請求項14】
式(I)のR11aおよびR12aが、一方が水素、一方がP(=O)(OH)2であり、
R13a、R14a、R15aが、水素である、請求項1、2、11または12に記載の組合せ医薬。
【請求項15】
式(II)のR20aが、グルタミン酸、バリン、アラニン、リジン、3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンおよびチロシンからなる群より選択されるアミノ酸のアミノ酸側鎖である、請求項1または3に記載の組合せ医薬。
【請求項16】
式(II)のR21aおよびR22aが、同一または異なって、それぞれ水素、アセチルまたはP(=O)(OH)2であり、
R23a、R24a、R25aが、水素である、請求項1、3または15に記載の組合せ医薬。
【請求項17】
式(II)のR21aおよびR22aが、一方が水素、一方が-P(=O)(OH)2であり、
R23a、R24a、R25aが、水素である、請求項1、3または15に記載の組合せ医薬。
【請求項18】
式(III)のR11bおよびR12bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R13bが、水素である、請求項1または4に記載の組合せ医薬。
【請求項19】
式(IV)のR21bおよびR22bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R23bが、水素である、請求項1または5に記載の組合せ医薬。
【請求項20】
式(V)のR31bおよびR32bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R33bが、水素である、請求項1または6に記載の組合せ医薬。
【請求項21】
式(VI)のR41bおよびR42bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R45bが、水素である、請求項1または7に記載の組合せ医薬。
【請求項22】
式(VII)のR51bおよびR52bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R55bが、水素である、請求項1または8に記載の組合せ医薬。
【請求項23】
式(VIII)のR61bおよびR62bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R65bが、水素である、請求項1または9に記載の組合せ医薬。
【請求項24】
式(IX)のR71bおよびR72bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R75bが、水素である、請求項1または10に記載の組合せ医薬。
【請求項25】
式(III);
【化96】
(式中、R
10bは、アミノ酸側鎖であり、
R
11bおよびR
12bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
13bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項26】
R11bおよびR12bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R13bが、水素である、請求項25に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項27】
式(IV);
【化97】
(式中、R
20bは、アミノ酸側鎖であり、
R
21bおよびR
22bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
23bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項28】
R21bおよびR22bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R23bが、水素である、請求項27に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項29】
式(V);
【化98】
(式中、R
30bは、アミノ酸側鎖であり、
R
31bおよびR
32bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(O)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
33bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項30】
R31bおよびR32bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R33bが、水素である、請求項29に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項31】
式(VI);
【化99】
(式中、R
41bおよびR
42bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
43bおよびR
44bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
43bおよびR
44bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
45bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項32】
R41bおよびR42bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R45bが、水素である、請求項31に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項33】
式(VII);
【化100】
(式中、R
51bおよびR
52bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
53bおよびR
54bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
53bおよびR
54bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
55bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項34】
R51bおよびR52bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R55bが、水素である、請求項33に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項35】
式(VIII);
【化101】
(式中、R
61bおよびR
62bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
63bおよびR
64bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
63bおよびR
64bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
65bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項36】
R61bおよびR62bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R65bが、水素である、請求項35に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項37】
式(IX);
【化102】
(式中、R
71bおよびR
72bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
73bおよびR
74bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
73bおよびR
74bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
75bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項38】
R71bおよびR72bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R75bが、水素である、請求項37に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項39】
式(I-1);
【化103】
(式中、R
10aは、アミノ酸側鎖であり、
R
11aおよびR
12aは、同一または異なって、それぞれ、水素、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
15aは、水素またはアルキルであり、
ただし、R
11aおよびR
12aは、同時に水素ではない。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【請求項40】
前記A群から選ばれる化合物およびB群から選ばれる化合物を含む組合せ医薬を含有する液状医薬組成物。
【請求項41】
前記A群から選ばれる化合物およびB群から選ばれる化合物を含む組合せ医薬を含有する神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状の治療剤。
【請求項42】
神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状が、パーキンソン病である、請求項41に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)レボドパプロドラッグ化合物およびカルビドパプロドラッグ化合物を含有する組合せ医薬、その医薬組成物およびその医薬用途、(b)新規カルビドパプロドラッグ化合物ならびに(c)新規レボドパプロドラッグ化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質であるドパミンが欠乏する進行性の神経変性疾患である。本疾患における第一選択薬であるレボドパは、ドパミンの直接前駆体であり、ドパミンとは異なり、血液脳関門を通過し中枢へと移行することができる。レボドパは、通常、末梢での代謝を抑制し高い治療効果を得るために、末梢芳香族L―アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害薬、例えばカルビドパと併用投与される。
【0003】
パーキンソン病治療を目的としたプロドラッグとしては、アミノ酸を付加したプロドラッグ(特許文献1)や、それとは構造が異なるリン酸エステルを有するプロドラッグ(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第3803120号
【特許文献2】国際公開第2017/184871号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パーキンソン病の治療初期では、レボドパ経口薬の服用のみで比較的長く薬効を維持することができる。しかしながら、レボドパの長期投与および疾患進行に伴って、次第に有効治療域は狭くなり、多くの患者で運動症状の日内変動(オンオフ現象)や、不随意運動(ジスキネジア)といった運動合併症が見られるようになる。このような病態の進行期において、運動合併症を回避し、レボドパの有効血中濃度を脳内で維持するためには、体内への持続投与が必要であり、その投与形態に適した製剤開発が必要となる。
【0006】
体内へ持続投与するためには、液状組成物での投与が考えられる。レボドパおよびカルビドパは難溶解性を示すため、各化合物の溶解性を増大させる手段が必要となる。有効な手段の一つとしては、製剤中に溶解補助剤を添加することが考えられるが、所望の有効成分量を溶解させられない場合もある。一方、有効成分をプロドラッグ化し、高い溶解性を示す新規化合物を創製することは、所望の濃度の液状組成物を得るためには、より有効な手段となる。
【0007】
本発明は、レボドパおよびカルビドパの溶解性を向上させ、溶液中の安定性が高く、かつ、体内で活性本体へ変換されるプロドラッグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、式(I)または式(II)で表されるレボドパプロドラッグ化合物および式(III)から式(IX)のいずれかで表されるカルビドパプロドラッグ化合物が、体内で活性本体へ変換されると共に、それぞれ高い溶解性および高い溶液安定性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0009】
1.以下のA群およびB群からそれぞれ一つずつ選ばれる化合物またはその薬理的に許容し得る塩を含む組合せ医薬。
<A群>式(I)で表される化合物および式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物またはその薬理的に許容し得る塩
式(I);
【化1】
(式中、R
10aは、アミノ酸側鎖またはそのO-リン酸化アミノ酸側鎖であり、
R
11aおよびR
12aは、同一または異なって、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキル、フェニル、P(=O)(OR’)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
13aおよびR
14aは、同一または異なって、それぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、フェニル、-O-C(=O)-R’、-C(=O)-OR’、-C(=O)-R’、-C(=S)-R’、-O-C(=O)-NR’ R’’ 、-O-C(=S)-NR’ R’’、またはO-C(=O)-R’’ ’であり、
R
15aは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはフェニルであり、
R’およびR’’は、同一または異なって、それぞれ、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキルもしくはフェニルであるか、またはR’およびR’’が隣接する窒素原子と一緒になって、ヘテロアリールを形成する基であり、
R’’ ’は、水素、アルキル、アルケニルまたはアルキニルである。)で表される化合物、および
【0010】
式(II);
【化2】
(式中、R
20aは、置換されていてもよいアミノ酸側鎖であり、
R
21aおよびR
22aは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、アルカノイル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
23a、R
24a、R
25aは、同一または異なって、それぞれ水素またはアルキルである。)で表される化合物
【0011】
<B群>式(III)~式(IX)のいずれかで表される化合物からなる群より選ばれる化合物またはその薬理的に許容し得る塩
式(III);
【化3】
(式中、R
10bは、アミノ酸側鎖であり、
R
11bおよびR
12bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
13bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
【0012】
式(IV);
【化4】
(式中、R
20bは、アミノ酸側鎖であり、
R
21bおよびR
22bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
23bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
【0013】
式(V);
【化5】
(式中、R
30bは、アミノ酸側鎖であり、
R
31bおよびR
32bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
33bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
【0014】
式(VI);
【化6】
(式中、R
41bおよびR
42bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
43bおよびR
44bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
43bおよびR
44bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
45bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
【0015】
式(VII);
【化7】
(式中、R
51bおよびR
52bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
53bおよびR
54bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
53bおよびR
54bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
55bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、
【0016】
式(VIII);
【化8】
(式中、R
61bおよびR
62bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
63bおよびR
64bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
63bおよびR
64bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
65bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物、および
【0017】
式(IX);
【化9】
(式中、R
71bおよびR
72bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
73bおよびR
74bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
73bおよびR
74bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
75bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物。
【0018】
2.前記A群の化合物が式(I)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1に記載の組合せ医薬。
【0019】
3.前記A群の化合物が式(II)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1に記載の組合せ医薬。
【0020】
4.前記B群の化合物が式(III)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【0021】
5.前記B群の化合物が式(IV)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【0022】
6.前記B群の化合物が式(V)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【0023】
7.前記B群の化合物が式(VI)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【0024】
8.前記B群の化合物が式(VII)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【0025】
9.前記B群の化合物が式(VIII)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【0026】
10.前記B群の化合物が式(IX)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩である、前記1~3のいずれかに記載の組合せ医薬。
【0027】
11.式(I)のR10aが、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、O-リン酸化されたチロシン、トリプトファン、オルニチン、ランチオニン、3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンおよび1個または2個でO-リン酸化された3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸のアミノ酸側鎖またはO-リン酸化アミノ酸側鎖である、前記1または2に記載の組合せ医薬。
【0028】
12.式(I)のR10aが、リジン、バリン、チロシン、O-リン酸化されたチロシンおよび3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸のアミノ酸側鎖またはO-リン酸化アミノ酸側鎖である、前記1または2に記載の組合せ医薬。
【0029】
13.式(I)のR11aおよびR12aが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R13a、R14a、R15aが、水素である、前記1、2、11または12に記載の組合せ医薬。
【0030】
14.式(I)のR11aおよびR12aが、一方が水素、一方がP(=O)(OH)2であり、
R13a、R14a、R15aが、水素である、前記1、2、11または12に記載の組合せ医薬。
【0031】
15.式(II)のR20aが、グルタミン酸、バリン、アラニン、リジン、3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンおよびチロシンからなる群より選択されるアミノ酸のアミノ酸側鎖である、前記1または3に記載の組合せ医薬。
【0032】
16.式(II)のR21aおよびR22aが、同一または異なって、それぞれ水素、アセチルまたはP(=O)(OH)2であり、R23aおよびR24aが、水素である、前記1、3または15に記載の組合せ医薬。
【0033】
17.式(II)のR21aおよびR22aが、一方は水素、一方は-P(=O)(OH)2であり、
R23a、R24a、R25aが、水素である、前記1、3または15に記載の組合せ医薬。
【0034】
18.式(III)のR11bおよびR12bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R13bが、水素である、前記1または4に記載の組合せ医薬。
【0035】
19.式(IV)のR21bおよびR22bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R23bが、水素である、前記1または5に記載の組合せ医薬。
【0036】
20.式(V)のR31bおよびR32bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R33bが、水素である、前記1または6に記載の組合せ医薬。
【0037】
21.式(VI)のR41bおよびR42bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R45bが、水素である、前記1または7に記載の組合せ医薬。
【0038】
22.式(VII)のR51bおよびR52bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R55bが、水素である、前記1または8に記載の組合せ医薬。
【0039】
23.式(VIII)のR61bおよびR62bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R65bは水素である、前記1または9に記載の組合せ医薬。
【0040】
24.式(IX)のR71bおよびR72bは、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R75bが、水素である、前記1または10に記載の組合せ医薬。
【0041】
25.式(III);
【化10】
(式中、R
10bは、アミノ酸側鎖であり、
R
11bおよびR
12bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
13bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0042】
26.R11bおよびR12bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R13bが、水素である、前記25に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0043】
27.式(IV);
【化11】
(式中、R
20bは、アミノ酸側鎖であり、
R
21bおよびR
22bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
23bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0044】
28.R21bおよびR22bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R23bが、水素である、前記27に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0045】
29.式(V);
【化12】
(式中、R
30bは、アミノ酸側鎖であり、
R
31bおよびR
32bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OR’)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
33bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0046】
30.R31bおよびR32bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R33bが、水素である、前記29に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0047】
31.式(VI);
【化13】
(式中、R
41bおよびR
42bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
43bおよびR
44bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
43bおよびR
44bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
45bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0048】
32.R41bおよびR42bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R45bが、水素である、前記31に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0049】
33.式(VII);
【化14】
(式中、R
51bおよびR
52bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
53bおよびR
54bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
53bおよびR
54bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
55bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0050】
34.R51bおよびR52bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R55bが、水素である、前記33に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0051】
35.式(VIII);
【化15】
(式中、R
61bおよびR
62bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
63bおよびR
64bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
63bおよびR
64bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
65bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0052】
36.R61bおよびR62bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R65bが、水素である、前記35に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0053】
37.式(IX);
【化16】
(式中、R
71bおよびR
72bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
R
73bおよびR
74bは、同一または異なって、それぞれ水素、アルキル、P(=O)(OH)
2、S(=O)(OH)もしくは置換されていてもよいグリコシルであるか、またはR
73bおよびR
74bが一緒になって、置換されていてもよいアルキレンを形成する基であり、
R
75bは、水素またはアルキルである。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0054】
38.R71bおよびR72bが、同一または異なって、それぞれ水素またはP(=O)(OH)2であり、
R75bが、水素である、前記37に記載の化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0055】
39.式(I-1);
【化17】
(式中、R
10aは、アミノ酸側鎖であり、
R
11aおよびR
12aは、同一または異なって、それぞれ、水素、S(=O)(OH)または置換されていてもよいグリコシルであり、
ただし、R
11aおよびR
12aは、同時に水素ではない。)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩。
【0056】
40.前記A群から選ばれる化合物およびB群から選ばれる化合物を含む組合せ医薬を含有する液状医薬組成物。
【0057】
41.前記A群から選ばれる化合物およびB群から選ばれる化合物を含む組合せ医薬を含有する神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状の治療剤。
【0058】
42.神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状がパーキンソン病である、前記41に記載の治療剤。
【発明の効果】
【0059】
本発明のレボドパおよびカルビドパの各プロドラッグを含む組合せ医薬は、神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状、例えばパーキンソン病の予防または治療薬として有用である。
また、前述のA群およびB群に記載の本発明化合物(I)~(IX)およびその組合せ医薬は、高い溶解性および高い溶液安定性を示すため、液状組成物の形態で使用することができ、例えば、前述の神経変性疾患等の予防または治療薬に適した低侵襲性の持続皮下投与用製剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本開示の特徴について、以下に詳細を説明する。本明細書における各基の定義は、特に明記しない限り、自由に組み合わせることができる。
【0061】
本明細書で使用される「治療」という用語は、一般に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。ここで使用される治療という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の治療を含み、(a)疾患を抑制すること、すなわち疾患の重症度または範囲の増大を予防することを含み、(b)疾患の軽減、すなわち疾患の部分的または完全な改善を含み、または(c)疾患の再発を予防する、すなわち、疾患もしくは症状に対する治療が奏効した後に再び罹患することを防ぐことを意味する。
【0062】
本明細書で使用される「予防」という用語は、被験者が罹患している、または罹患しやすい状態、障害、疾患、もしくは病態の臨床的症状、合併症、または生化学的指標の発現を遅延させることを含むが、それらの状態、障害、疾患、もしくは病態の臨床的症状または無症候性症状をまだ経験していないまたは示すことは含まれない。「予防」 には、被験者の状態、障害、疾患または状態に対する予防的治療が含まれ、臨床症状、合併症、または被験者の状態、障害、疾患または状態に対する生化学的指標に対する予防的治療が含まれる。
【0063】
本明細書で使用される「患者」または「被験者」という用語は、哺乳類、マウス、ラット、その他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたはヒト以外の霊長類及びヒトを含むあらゆる動物が含まれる。いくつかの態様において、本発明の方法で治療される哺乳動物は、パーキンソン病などの神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状に罹患しているヒトである。
【0064】
本明細書で使用される「約」という用語は、特に言及されていない限り、記載されている値の±10%の範囲を含む意味で用いられる。「約」 という用語を使用しなくても、提示された値がその値の±10%の範囲を網羅していると考えられる場合もある。
【0065】
本明細書で使用される「安定」という用語は、特に言及されていない限り、溶液中で分解しない、または分解しにくい物質の状態を指す。従って、本明細書における「安定」という用語は、例えば、その物質の溶液を調製し、溶液調整直後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の面積百分率法で測定したときの物質のピーク面積比と、25℃約1日放置後の物質のピーク面積比を比較した場合に、ピーク面積比の低下が見られない、または低下の度合いが低いことを意味する。
【0066】
本明細書で使用される「液体」という用語は、特に言及されていない限り、ゲル、水性及び非水性組成物等を含むあらゆる種類の液体を意味する。
【0067】
本明細書で使用される「併用」という用語は、特に言及されていない限り、別々のまたは同じ組成で、同時にこれらの有効成分を投与することを含む、2つ以上の有効成分を組み合わせて投与することを意味し、また、2つ以上の有効成分を連続して同日に投与し、有効成分の投与を互いに所定の時間分離して行うことを含み、さらに2つ以上の有効成分を異なる日に投与することも含む。
【0068】
本明細書で使用される「持続」という用語は、特に言及されていない限り、組成物を全時間にわたって投与する期間を指し、約24時間未満、例えば、約12時間、約5時間、約3時間、約1時間、約30分、約15分、約5分または約1分間の休憩を伴う。本剤を投与する期間は、少なくとも約6時間、約8時間、約12時間、約15時間、約18時間、約21時間、約24時間、3日間、7日間、2週間、1箇月、3箇月、6箇月、1年間、2年間、3年間、5年間、 10年間などとすることができる。
【0069】
本発明において、アルキルとは、炭素数1~6(C1~6)の直鎖または分岐鎖状の飽和炭化水素基をいう。とりわけ炭素数1~4(C1~4)の基が好ましい。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられる。
【0070】
本発明において、アルコキシとは、前記のアルキルが1個の酸素原子と結合した1価基をいい、炭素数1~6(C1~6)の直鎖または分岐鎖状のアルキル-O-が挙げられる。具体的には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシなどが挙げられる。
【0071】
本発明において、アルケニルとは、1つの炭素-炭素二重結合を有する炭素数2 ~6の直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素鎖を意味し、例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、およびこれらの各種分枝鎖異性体が挙げられ、好ましくは、炭素数2~4の直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素鎖を意味する。
【0072】
本発明において、アルキニルとは、1つ以上の三重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖の1価基を指称し、例えば、炭素数2~6の直鎖または分枝鎖のアルキニルを意味する。具体的には2-プロピニル、3-ブチニル、2-ブチニル、4-ペンチニル、3-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、2-ヘプチニル、3-ヘプチニル、4-ヘプチニル、3-オクチニル、3-ノニニル、4-デシニル、3-ウンデシニル、4-ドデシニル等が挙げられる。
【0073】
本発明において、アルキレンとは、炭素数1~6(C1~6)の直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素2価基をいい、具体的には、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレンなどが挙げられる。
ここで、R43bおよびR44bにおけるアルキレン、R53bおよびR54bにおけるアルキレン、R63bおよびR64bにおけるアルキレンおよびR73bおよびR74bにおけるアルキレンは、好ましくは、メチレン、エチレンが挙げられ、当該アルキレンは、それぞれ置換されていてもよい。そのような置換基としては、アルキル、アルコキシ等が挙げられ、同一または異なる1~3個の置換基で置換されていてもよい。
【0074】
本発明において、アルカノイルとは、前記のアルキルがカルボニルと結合した1価基をいい、炭素数1~6(C1~6)の直鎖または分岐鎖状のアルキル-CO-が挙げられる。具体的には、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイルなどが挙げられる。
【0075】
本発明において、シクロアルキルとは、炭素数3~8(C3~8)の単環式飽和炭化水素基をいう。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
【0076】
本発明において、アミノ酸側鎖とは、天然、合成、非天然または非タンパク質生成アミノ酸のアミノ酸側鎖をいい、当該アミノ酸は、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ランチオニン、セレノシステイン、ピロリジン、ADDAアミノ酸((2S,3S,4E,6E,8S,9S)-3-アミノ-9-メトキシ-2,6,8トリメチル-10-フェニルデカ-4,6-ジエン酸)、β-アラニン、4-アミノ安息香酸、γ-アミノ酪酸、S-アミノエチル-L-システイン、2-アミノイソ酪酸、アミノレブリン酸、アゼチジン-2-カルボン酸、カナリン、カナバニン、カルボキシグルタミン酸、クロロアラニン、シスチン、デヒドロアラニン、ジアミノピメリン酸、ジヒドロキシフェニルグリシン、エンドウラシジン、ホモセリン、4-フェニルグリシン、ヒドロキシプロリン、ヒプシン、β-ロイシン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、ペニシラミン、プラコヒパホリン、ピログルタミン酸、キスカル酸、サルコシン、テアニン、トラネキサム酸、トリクロミック酸、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンなどが挙げられる。R10aとして、好ましくは、アルギニン、リジン、アラニン、バリン、チロシンまたは3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンのアミノ酸側鎖が挙げられる。R20aとして、好ましくは、グルタミン酸、バリン、アラニン、リジン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンまたはチロシンのアミノ酸側鎖が挙げられる。R10bとして、好ましくは、チロシンまたはリジンのアミノ酸側鎖が挙げられる。R20bとして、好ましくは、アラニンまたはリジンのアミノ酸側鎖が挙げられる。R30bとして、好ましくは、アラニンまたはリジンのアミノ酸側鎖が挙げられる。
【0077】
例えば、R
10a、R
20a、R
10b、R
20b、R
30bで表されるアミノ酸側鎖は、以下で表される。
【化18-1】
【化18-2】
(プロリンのアミノ酸側鎖であって、式中、R
10a、R
20a、R
10b、R
20b、R
30bの各々は、各化合物の隣接するペプチド結合の窒素原子と一緒になって環を形成している);
【化19-1】
【化19-2】
【0078】
ここで、本発明におけるアミノ酸側鎖は置換されていてもよく、-P(O)(OR6)2(R6は水素またはアルキル等を示す)もしくはグルコシル基([(2R,3S,4R,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-2-イル]等)、または隣接する他の基と結合して置換されていてもよいアルキレン基を形成する基(置換基としては、アルキル基またはアルコキシ基等)などが挙げられる。置換されたアミノ酸側鎖としては、例えば、チロシン側鎖、セリン側鎖、スレオニン側鎖、(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチル等のヒドロキシを有するアミノ酸側鎖が置換されたものが挙げられ、具体的には、ホスホノオキシメチル、(4-ホスホノオキシフェニル)メチル、[4-[(2S,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-2-イル]オキシフェニル]メチル、(2,2-ジメチル-1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)メチル、(2-エトキシ-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)メチル等が挙げられる。
【0079】
本発明において、グリコシルの元となる単糖とは、グルコース(ブドウ糖)、リボース、エリトロース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース等のアルドースの他、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース及びタガトース等のケトースも含まれる。これらの単糖は、d体、l体またはdl体のいずれでもよい。
ここで、本発明における単糖は置換されていてもよく、置換基としてはカルボニル基、アセチルアミノ基、スルフィノオキシ基、ホスホノオキシ基などが挙げられ、具体的には、グルクロン酸、N-アセチルグルコサミン、グルコピラノシド―6―(ハイドロゲン サルフェート)などが挙げられる。
【0080】
本発明において、R’およびR’’が一緒になって、窒素原子と共にヘテロアリールを形成する基とは、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群より独立して選ばれる1~4の異項原子を含む5~10員の芳香族性複素環式基をいい、単環または二環式のヘテロアリールが好ましい。より好ましくは、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群より独立して選ばれる1~3の異項原子を含む5~10員単環式のヘテロアリールである。具体的には、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、キノリル、イソキノリル、イミダゾピリジル、ベンゾピラニルなどが挙げられる。ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアジニル、トリアジニルなどが好ましく、とりわけ、ピロリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニルなどが好ましい。
【0081】
本発明の化合物は、分子内に不斉炭素原子を有する場合、当該不斉炭素原子に基づく複数の立体異性体(すなわち、ジアステレオマー異性体、光学異性体)として存在し得るが、本発明はこれらの内のいずれか1個の立体異性体及びその混合物をいずれも包含するものである。
【0082】
本発明の化合物は、同位元素(例えば、3H、13C、14C、15N、18F、32P、35S、125I等)等で標識された化合物および重水素変換体を包含する。
【0083】
本発明化合物の薬理的に許容し得る塩としては、無機酸付加塩(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等との塩)、有機酸付加塩(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p―トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、マンデル酸、リンゴ酸、パントテン酸、メチル硫酸等との塩)、無機塩基付加塩(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等との塩)、アミノ酸との塩(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン等との塩)等が挙げられる。
本発明化合物またはその薬理的に許容し得る塩は、その分子内塩や付加物、それらの溶媒和物或いは水和物等をいずれも含むものである。
【0084】
以下に好ましい一般式(I)または式(I-1)の化合物を挙げる。
【表1】
【0085】
以下に好ましい一般式(II)の化合物を挙げる。
【表2】
【0086】
本発明の一般式(I)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩は、例えば、次のようにして製造することができる。
合成法A
【化20】
[式中、Bnはベンジルを、Cbzはカルボベンゾキシを示し、他の記号は前記と同一意味を表す。]
【0087】
本発明の目的化合物[I]のうち、一般式[Ia]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[a]と化合物[b]を縮合反応に付し、化合物[c]を得た後、亜リン酸エステル化および酸化するか、またはリン酸エステル化することにより、化合物[f]が得られる。一方、化合物[e]と化合物[b]を縮合することにより、化合物[f]を得ることもできる。このようにして得られた化合物[f]を脱保護することにより、化合物[Ia]を製造することができる。
【0088】
工程1
化合物[a]またはその塩と化合物[b]またはその塩の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基の存在下または非存在下、縮合剤の存在下、活性化剤の存在下または非存在下、実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、およびジアザビシクロウンデセン等があげられる。縮合剤としては、例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。活性化剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、および4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0089】
化合物[b]の使用量は、化合物[a]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0090】
塩基の使用量は、化合物[a]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0091】
縮合剤の使用量は、化合物[a]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0092】
活性化剤の使用量は、化合物[a]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0093】
工程2
化合物[c]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、活性化剤の存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。亜リン酸エステル化剤としては、例えば、ジベンジル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイトがあげられる。活性化剤としては、例えば、1-テトラゾールが挙げられる。
【0094】
亜リン酸エステル化剤の使用量は、化合物[c]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0095】
活性化剤の使用量は、化合物[c]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0096】
本反応は、氷冷下~加熱下、例えば0℃~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0097】
工程3
化合物[d]の酸化反応は、常法に従い、適当な溶媒中、酸化剤の存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。酸化剤としては、例えば、過酸化水素水、tert-ブチル ヒドロペルオキシド、およびメタクロロ過安息香酸等があげられる。
【0098】
酸化剤の使用量は、化合物[d]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0099】
本反応は、氷冷下~室温、好ましくは氷冷下で実施することができる。
【0100】
工程4
化合物[c]とリン酸エステル化剤の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基の存在下、実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。リン酸エステル化剤としては、例えば、ジベンジルホスホリルクロリド、ピロリン酸テトラベンジル等があげられる。塩基としては、例えば、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアルキルアミン類等が挙げられる。
【0101】
リン酸エステル化剤の使用量は、化合物[c]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0102】
塩基の使用量は、化合物[c]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0103】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~100℃、好ましくは室温~70℃で実施することができる。
【0104】
工程5
化合物[e]またはその塩と化合物[b]またはその塩の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基の存在下または非存在下、縮合剤の存在下、活性化剤の存在下または非存在下、実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、およびジアザビシクロウンデセン等があげられる。縮合剤としては、例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。活性化剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、および4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0105】
化合物[b]の使用量は、化合物[e]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0106】
塩基の使用量は、化合物[e]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0107】
縮合剤の使用量は、化合物[e]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0108】
活性化剤の使用量は、化合物[e]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0109】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0110】
工程6
化合物[f]の脱保護は、常法に従い、適当な溶媒中、水素雰囲気下、触媒で処理することにより、実施することができる。
溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、水、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0111】
触媒としては、例えば、パラジウム炭素等を挙げることができる。
【0112】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0113】
合成法B
【化21】
[式中、R-OHは、セリン、チロシン等のアミノ酸側鎖であり、他の記号は前記と同一意味を表す。]
【0114】
本発明の目的化合物[I]のうち、一般式[Ib]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[g]と化合物[b-1]を縮合反応に付し、化合物[h]が得られる。化合物[h]を亜リン酸エステル化して、化合物[i]とした後、酸化することにより化合物[j]を得るか、または化合物[h]をリン酸エステル化することにより、化合物[j]を得た後、脱保護することにより、化合物[Ib]を製造することができる。
【0115】
工程1
化合物[g]またはその塩と化合物[b-1]またはその塩の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[a]またはその塩と化合物[b]またはその塩の反応と同様にして実施することができる。
【0116】
工程2
化合物[h]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[c]と亜リン酸エステル化剤の反応と同様にして実施することができる。
【0117】
工程3
化合物[i]の酸化反応は、合成法Aにおける化合物[d]の反応と同様にして実施することができる。
【0118】
工程4
化合物[h]とリン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[c]とリン酸エステル化剤の反応と同様にして実施することができる。
【0119】
工程5
化合物[j]の脱保護は、合成法Aにおける化合物[f]の反応と同様にして実施することができる。
【0120】
本発明の一般式(II)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩は、例えば、次のようにして製造することができる。
合成法C
【化22】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
【0121】
本発明の目的化合物[II]のうち、一般式[IIa]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[k-1]と化合物[l-1]を縮合反応に付し、化合物[m]を得た後,亜リン酸エステル化および酸化するか、またはリン酸エステル化することにより、化合物[p]が得られる。一方,化合物[o]と化合物[l-1]を縮合することにより、化合物[p]を得ることもできる。このようにして得られた化合物[p]を脱保護するか,または加水分解ののち脱保護することにより、化合物[IIa]を製造することができる。
【0122】
工程1
化合物[k-1]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩との縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基の存在下または非存在下、縮合剤の存在下または非存在下、活性化剤の存在下または非存在下、実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等があげられる。縮合剤としては、例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。活性化剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、および4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0123】
化合物[l-1]または[l-2]の使用量は、化合物[k-1]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0124】
塩基の使用量は、化合物[k-1]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0125】
縮合剤の使用量は、化合物[k-1]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0126】
活性化剤の使用量は、化合物[k-1]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0127】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0128】
工程2
化合物[m]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、活性化剤の存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。亜リン酸エステル化剤としては、例えば、ジベンジル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイトがあげられる。活性化剤としては、例えば、1-テトラゾールが挙げられる。
【0129】
亜リン酸エステル化剤の使用量は、化合物[m]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0130】
活性化剤の使用量は、化合物[m]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0131】
本反応は、氷冷下~加熱下、例えば0℃~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0132】
工程3
化合物[n]の酸化反応は、常法に従い、適当な溶媒中、酸化剤の存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。酸化剤としては、例えば、過酸化水素水、tert-ブチル ヒドロペルオキシド、およびメタクロロ過安息香酸等があげられる。
【0133】
酸化剤の使用量は、化合物[n]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0134】
本反応は、氷冷下~加熱下、例えば0℃~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0135】
工程4
化合物[m]とリン酸エステル化剤の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基の存在下、実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。リン酸エステル化剤としては、例えば、ジベンジルホスホリルクロリド, ピロリン酸テトラベンジル等があげられる。塩基としては、例えば、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン,1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等のアルキルアミン類等が挙げられる。
【0136】
リン酸エステル化剤の使用量は、化合物[m]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0137】
塩基の使用量は、化合物[m]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0138】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~100℃、好ましくは室温~70℃で実施することができる。
【0139】
工程5
化合物[o]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩との縮合反応は、合成法Cにおける化合物[k-1]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩の縮合と同様にして実施することができる。
【0140】
工程6
化合物[p]の脱保護は、常法に従い、適当な溶媒中、水素雰囲気下、触媒で処理することにより、実施することができる。
溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、水、またはこれらの混合物等が挙げられる。
触媒としては、例えば、パラジウム/炭素等を挙げることができる。
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0141】
工程7
化合物[q]の加水分解は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基及び水の存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類、水,またはこれらの混合物等があげられる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類等があげられる。本反応は、氷冷下~加熱下、例えば0℃~50℃、好ましくは室温で実施することができる。
【0142】
塩基の使用量は、化合物[q]に対して1.0~10.0当量、好ましくは1.0~4.0当量とすることができる。
【0143】
工程8
化合物[q]の脱保護は、合成法Cにおける化合物[p]の脱保護と同様にして実施することができる。
【0144】
合成法D
【化23】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
【0145】
本発明の目的化合物[II]のうち、一般式[IIb]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[k-2]と化合物[l-3]を縮合反応に付し、化合物[r]を得た後,亜リン酸エステル化および酸化するか、またはリン酸エステル化することにより、化合物[t]が得られる。これを脱保護することにより、化合物[IIb]を製造することができる。
【0146】
工程1
化合物[k-2]またはその塩と化合物[l-3]またはその塩の縮合反応は、合成法Cにおける化合物[k-1]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩の縮合反応と同様にして実施することができる。
【0147】
工程2
化合物[r]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Cにおける化合物[m]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応と同様にして実施することができる。
【0148】
工程3
化合物[s]の酸化反応は、合成法Cにおける化合物[n]の酸化反応と同様にして実施することができる。
【0149】
工程4
化合物[r]とリン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Cにおける化合物[m]とリン酸エステル化剤の縮合反応と同様にして実施することができる。
【0150】
工程5
化合物[t]の脱保護は、合成法Cにおける化合物[p]の脱保護と同様にして実施することができる。
【0151】
合成法E
【化24】
〔式中、Acはアセチルを示し、他の記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[II]のうち、一般式[IIc]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[k-3]と化合物[l-1]を縮合反応に付し、化合物[u]を得た後,これを脱保護することにより、化合物[IIc]を製造することができる。
【0152】
工程1
化合物[k-3]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩の縮合反応は、合成法Cにおける化合物[k-1]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩の縮合反応と同様にして実施することができる。
【0153】
工程2
化合物[u]の脱保護は、合成法Cにおける化合物[p]の脱保護と同様にして実施することができる。
【0154】
合成法F
【化25】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[II]のうち、一般式[IId]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[k-2]と化合物[l-1]を縮合反応に付し、化合物[v]を得た後、これを脱保護することにより、化合物[IId]を製造することができる。
【0155】
工程1
化合物[k-2]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩の縮合反応は、合成法Cにおける化合物[k-1]と化合物[l-1]またはその塩の縮合反応と同様にして実施することができる。
【0156】
工程2
化合物[v]の脱保護は、合成法Cにおける化合物[p]の脱保護と同様にして実施することができる。
【0157】
本発明の一般式(III)で表される化合物またはその薬理的に許容し得る塩は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0158】
合成法G
【化26】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[III]のうち、一般式[IIIa]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[w]と化合物[x-1]を縮合反応に付し、化合物[y]を得た後,脱保護することにより、化合物[IIIa]を製造することができる。
【0159】
工程1
化合物[w]と化合物[x-1]またはその塩の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基の存在下または非存在下、縮合剤の存在下、活性化剤の存在下または非存在下、実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、および1,8ージアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等があげられる。縮合剤としては、例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。活性化剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、および4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0160】
化合物[x-1]の使用量は、化合物[w]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0161】
塩基の使用量は、化合物[w]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0162】
縮合剤の使用量は、化合物[w]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0163】
活性化剤の使用量は、化合物[w]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0164】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0165】
工程2
化合物[y]の脱保護は、常法に従い、適当な溶媒中、水素雰囲気下、触媒で処理することにより、実施することができる。
溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、水、またはこれらの混合物等が挙げられる。
触媒としては、例えば、パラジウム/炭素等を挙げることができる。
【0166】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0167】
合成法H
【化27】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[III]のうち、一般式[IIIb]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[z]と化合物[x-1]を縮合反応に付し、化合物[aa]を得た後,脱保護することにより、化合物[IIIb]を製造することができる。
【0168】
工程1
化合物[z]と「x-1」またはその塩の縮合反応は、合成法Gおける化合物[w]と化合物[x-1]またはその塩の縮合反応と同様にして実施することができる。
【0169】
工程2
化合物[aa]の脱保護反応は、合成法Gにおける化合物[y]の脱保護反応と同様に実施することができる。
【0170】
合成法I
【化28】
〔式中、t-Buはtert-ブチルを示し、他の記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[IV]のうち、一般式[IVa]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[bb]と化合物[x-2]を縮合反応に付し、化合物[cc]を得た後,亜リン酸エステル化および酸化するか、またはリン酸エステル化することにより、化合物[ee]が得られる。これを脱保護することにより、化合物[IVc]を製造することができる。別法として,化合物[ff]と化合物[x-2]あるいはその塩を縮合することにより、化合物[gg]を得ることができる。二段階の脱保護ののち,化合物[IVa]を製造することもできる。
【0171】
工程1
化合物[bb]またはその塩と化合物[x-1]またはその塩の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基の存在下または非存在下、縮合剤の存在下、活性化剤の存在下または非存在下、実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等があげられる。縮合剤としては、例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。活性化剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、および4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0172】
化合物[x-1]の使用量は、化合物[bb]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0173】
塩基の使用量は、化合物[bb]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0174】
縮合剤の使用量は、化合物[bb]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0175】
活性化剤の使用量は、化合物[bb]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.0~2.5当量とすることができる。
【0176】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0177】
工程2
化合物[cc]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、活性化剤の存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。亜リン酸エステル化剤としては、例えば、ジベンジル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイトがあげられる。活性化剤としては、例えば、1-テトラゾールが挙げられる。
【0178】
亜リン酸エステル化剤の使用量は、化合物[cc]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0179】
活性化剤の使用量は、化合物[cc]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0180】
本反応は、氷冷下~加熱下、例えば0℃~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0181】
工程3
化合物[dd]の酸化反応は、常法に従い、適当な溶媒中、酸化剤の存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。酸化剤としては、例えば、過酸化水素水、tert-ブチル ヒドロペルオキシド、およびメタクロロ過安息香酸等があげられる。
【0182】
酸化剤の使用量は、化合物[dd]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0183】
本反応は、氷冷下~加熱下、例えば0℃~80℃、好ましくは室温~50℃で実施することができる。
【0184】
工程4
化合物[cc]とリン酸エステル化剤の縮合反応は、常法に従い、適当な溶媒中、塩基の存在下または非存在下、実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合物があげられる。リン酸エステル化剤としては、例えば、ジベンジルホスホリルクロリド, ピロリン酸テトラベンジル等があげられる。塩基としては、例えば、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン,1,8ージアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等のアルキルアミン類等が挙げられる。
【0185】
リン酸エステル化剤の使用量は、化合物[y]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0186】
塩基の使用量は、化合物[y]に対して、モル比で1.0~5.0当量、好ましくは1.5~3.0当量とすることができる。
【0187】
本反応は、室温~加熱下、例えば室温~100℃、好ましくは室温~70℃で実施することができる。
【0188】
工程5
化合物[ee]の脱保護反応は、合成法Gにおける化合物[y]の脱保護反応と同様にして実施することができる。
【0189】
工程6
化合物[ff]またはその塩と「x-2」またはその塩の縮合反応は、合成法Gにおける化合物[bb]またはその塩と化合物[x-2]またはその塩の縮合反応と同様に実施することができる。
【0190】
工程7
化合物[gg]の脱保護は、常法に従い、適当な溶媒中、添加剤の存在下または非存在下で、酸またはLewis酸の存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に影響を与えないものであればよく、例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸イソプロピル等のエステル類,1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジクロロメタン,クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル、またはこれらの混合物があげられる。添加剤としては、水、テトラエチルシラン等があげられる。酸としては、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等があげられる。Lewis酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル等があげられる。
【0191】
添加剤の使用量は、化合物[gg]に対して、1.0~10.0当量、好ましくは1.0~2.0当量とすることができる。
【0192】
酸またはLewis酸の使用量は化合物[gg]に対して、1.0~10.0当量、好ましくは1.0~5.0当量とすることができる。
【0193】
本反応は、0℃~加熱下、例えば,室温~80℃,好ましくは室温~60℃で実施することができる。
【0194】
工程8
化合物[hh]の脱保護反応は、合成法Gにおける化合物[y]の脱保護反応と同様に実施することができる。
【0195】
合成法J
【化29】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[V]のうち、一般式[Va]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[ii]と化合物[x-1]を縮合反応に付し、化合物[jj]が得られる。化合物[jj]を亜リン酸エステル化して、化合物[kk]とした後、酸化することにより化合物[ll]を得るか、または化合物[jj]をリン酸エステル化することにより、化合物[ll]を得た後、脱保護することにより、化合物[Va]を製造することができる。
【0196】
工程1
化合物[ii]またはその塩と化合物[x-3]またはその塩の縮合反応は、合成法Cにおける化合物[k-1]と化合物[l-1]の反応と同様にして実施することができる。
【0197】
工程2
化合物[jj]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[c]と亜リン酸エステル化剤の反応と同様にして実施することができる。
【0198】
工程3
化合物[kk]の酸化反応は、合成法Aにおける化合物[d]の反応と同様にして実施することができる。
【0199】
工程4
化合物[jj]とリン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[c]とリン酸エステル化剤の反応と同様にして実施することができる。
【0200】
工程5
化合物[ll]の脱保護は、合成法Aにおける化合物[f]の反応と同様にして実施することができる。
【0201】
合成法K
【化30】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[VI]のうち、一般式[VIa]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[w]と化合物[x-4]を縮合反応に付し、化合物[mm]を得た後、脱保護することにより、化合物[VIa]を製造することができる。
【0202】
工程1
化合物[w]またはその塩と化合物[x-4]またはその塩の縮合反応は、合成法Gにおける化合物[w]またはその塩と化合物[x-1]またはその塩の反応と同様にして実施することができる。
【0203】
工程2
化合物[mm]の脱保護は、合成法Aにおける化合物[f]の反応と同様にして実施することができる。
【0204】
合成法L
【化31】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[VII]のうち、一般式[VIIa]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[w]と化合物[x-5]を縮合反応に付し、化合物[nn]を得た後、脱保護することにより、化合物[VIIa]を製造することができる。
【0205】
工程1
化合物[w]またはその塩と化合物[x-5]またはその塩の縮合反応は、合成法Gにおける化合物[w]またはその塩と化合物[x-1]またはその塩の反応と同様にして実施することができる。
【0206】
工程2
化合物[nn]の脱保護は、合成法Aにおける化合物[f]の反応と同様にして実施することができる。
【0207】
合成法M
【化32】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[VIII]のうち、一般式[VIIIa]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[oo]と化合物[x-6]を縮合反応に付し、化合物[pp]が得られる。化合物[pp]を亜リン酸エステル化して、化合物[qq]とした後、酸化することにより化合物[rr]を得るか、または化合物[pp]をリン酸エステル化することにより、化合物[rr]を得た後、脱保護することにより、化合物[VIIIa]を製造することができる。
【0208】
工程1
化合物[oo]またはその塩と化合物[x-6]またはその塩の縮合反応は、合成法Cにおける化合物[k-1]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩の反応と同様にして実施することができる。
【0209】
工程2
化合物[pp]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[c]と亜リン酸エステル化剤の反応と同様にして実施することができる。
【0210】
工程3
化合物[qq]の酸化反応は、合成法Aにおける化合物[d]の反応と同様にして実施することができる。
【0211】
工程4
化合物[pp]とリン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[c]とリン酸エステル化剤の反応と同様にして実施することができる。
【0212】
工程5
化合物[rr]の脱保護は、合成法Aにおける化合物[f]の反応と同様にして実施することができる。
【0213】
合成法N
【化33】
〔式中、各記号は前記と同一意味を有する。〕
本発明の目的化合物[IX]のうち、一般式[IXa]で示される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。化合物[ss]と化合物[x-7]を縮合反応に付し、化合物[tt]が得られる。化合物[tt]を亜リン酸エステル化して、化合物[uu]とした後、酸化することにより化合物[vv]を得るか、または化合物[tt]をリン酸エステル化することにより、化合物[vv]を得た後、脱保護することにより、化合物[IXa]を製造することができる。
【0214】
工程1
化合物[ss]またはその塩と化合物[x-7]またはその塩の縮合反応は、合成法Cにおける化合物[k-1]またはその塩と化合物[l-1]またはその塩の反応と同様にして実施することができる。
【0215】
工程2
化合物[tt]と亜リン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[c]と亜リン酸エステル化剤の反応と同様にして実施することができる。
【0216】
工程3
化合物[uu]の酸化反応は、合成法Aにおける化合物[d]の反応と同様にして実施することができる。
【0217】
工程4
化合物[pp]とリン酸エステル化剤の縮合反応は、合成法Aにおける化合物[c]とリン酸エステル化剤の反応と同様にして実施することができる。
【0218】
工程5
化合物[vv]の脱保護は、合成法Aにおける化合物[f]の反応と同様にして実施することができる。
【0219】
上記方法における原料化合物は、既知方法及び/または後記実施例に記載の方法と同様にして製造できる。
なお、官能基への保護基の導入及び官能基保護基の除去は、既知の方法(PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS(Theodora W. Greene,Peter G.M.Wuts著)等)を参照して実施することができる。
【0220】
上記のようにして製造される本発明の化合物もしくはその原料化合物は、その遊離形態のままあるいはその塩として単離され、精製される。塩は、通常用いられる造塩処理に付すことにより製造できる。単離精製は、抽出、濃縮、結晶化、ろ過、再結晶、各種クロマトグラフィーなどの通常の化学的操作を適用して実施できる。
【0221】
本発明の化合物またはその薬理的に許容し得る塩が不斉炭素に基づく光学異性体として存在する場合、通常の光学分割手段(例えば、分別結晶法、キラルカラムを用いた分割法)により個々の光学異性体に分離することができる。また、光学的に純粋な出発物質を用いて、光学異性体を合成することもできる。さらに、不斉補助基や不斉触媒を利用して各反応を立体選択的に行うことによっても、光学異性体を合成することができる。
【0222】
本発明の化合物〔I〕または〔II〕あるいはその薬理的に許容し得る塩は、単独で、或いはこれと薬理的に許容し得る担体とを含有する医薬組成物として、経口的または非経口的に投与することができる。また、本発明の化合物〔I〕または〔II〕あるいはその薬理的に許容し得る塩と、本発明の化合物〔III〕~〔IX〕のいずれかまたはその薬理的に許容し得る塩とを組合せ、それ自体で、或いはこれと薬理的に許容し得る担体とを含有する医薬組成物として、経口的にも非経口的にも投与することができる。
【0223】
そのような薬理的に許容し得る担体としては、注射剤、点滴剤等の液状医薬組成物として製造する場合、当分野で慣用の担体でよく、例えば、水性溶媒(注射用水、精製水など)、等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコール等)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等)、保存剤(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等)、無痛化剤(塩酸リドカイン、プロカイン塩酸塩、ベンジルアルコール、クロロブタノール等)、粘調剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等)、安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等)またはpH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等)等があげられ、これらを適宜添加した溶液に、前述の本発明の化合物または組合せ医薬を溶解または分散することによって製造することができる。このような薬学上許容される添加剤は、当業者が目的に応じて適宜選択することができ、また、添加量等の条件も適宜設定することができる。また必要に応じて溶解補助剤などを使用してもよい。
また、このような液状医薬組成物を皮下送達用装置(ポンプ)に適用することもできる。
【0224】
本発明の化合物〔I〕または〔II〕あるいはその薬理的に許容し得る塩の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態等によって異なるが、液状医薬組成物として投与する場合、通常、1日当たり1~200mg/kgである。
一方、本発明化合物〔III〕~〔IX〕のいずれかあるいはその薬理的に許容し得る塩の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態等によって異なるが、液状医薬組成物として投与する場合、通常、1日当たり0.02~100mg/kgである。
【0225】
本発明化合物またはその薬理的に許容しうる塩および本発明の組合せ医薬は、液体医薬組成物の形態で、例えば、ボーラス投与または持続投与等の非経口投与により、あらゆる適切な投与経路に対して適用可能な製剤として製剤化することができる。具体的には、本発明の液状医薬組成物は、皮下投与用、経皮投与用、皮内投与用、経粘膜投与用、静脈内投与用、動脈内投与用、筋肉内投与用、腹腔内投与用、気管内投与用、髄腔内投与用、十二指腸内投与用、胸膜内投与用、鼻腔内投与用、舌下投与用、口腔内投与用、腸管内投与用、十二指腸内投与用、直腸内投与用、眼内投与用または経口投与用に製剤化することができる。また、本組成物は、吸入用または粘膜組織を介した直接吸収用に製剤化することもできる。
【0226】
本発明は、有効量の式(I)または式(II)のレボドパプロドラッグ化合物またはその薬理的に許容し得る塩および式(III)~式(IX)のいずれかのカルビドパプロドラッグ化合物またはその薬理的に許容し得る塩を含む組合せ医薬を患者に投与することを含む、神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状、例えば、パーキンソン病および関連症状の治療方法を提供する。また、本発明は、有効量の式(I)または式(II)のレボドパプロドラッグ化合物またはその薬理的に許容し得る塩および式(III)~式(IX)のいずれかのカルビドパプロドラッグ化合物またはその薬理的に許容し得る塩を一緒に製剤化するか、または、別々に製剤化して、医薬組成物の形態で患者に投与することができる。そのような医薬組成物を同時に患者に投与することもできるし、別々に患者に投与することもできる。
したがって、「組合せ医薬」という用語は、有効量の式(I)または式(II)のレボドパプロドラッグ化合物またはその薬理的に許容し得る塩および式(III)~式(IX)のいずれかのカルビドパプロドラッグ化合物またはその薬理的に許容し得る塩とすることができ、レボドパプロドラッグまたはその薬理的に許容し得る塩とカルビドパプロドラッグまたはその薬理的に許容し得る塩とは、単一の製剤または別々の製剤に調製することができる。別々の製剤は、同時に、または規定の時間間隔内など、異なる時間に患者に投与しても良く、例えば患者の状態に基づいて、患者、介護者または医師が規定した間で患者に投与しても良い。
【0227】
本発明では、式(I)または式(II)のレボドパプロドラッグ化合物またはその薬理的に許容し得る塩および式(III)~式(IX)のいずれかのカルビドパプロドラッグ化合物またはその薬理的に許容し得る塩に加えて、パーキンソン病治療のために、さらに1つ以上の追加の治療薬(例えば抗パーキンソン病薬)を併用することもできる。そのような治療薬の具体的としては、例えば、デカルボキシラーゼ阻害剤(例えば、ベンセラジド)、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(「COMT」)阻害剤(例えば、エンタカポンおよびトルカポン)、およびモノアミンオキシダーゼA(「MAO-A」)またはモノアミンオキシダーゼB(「MAO-B」)阻害剤(例えば、モクロベミド、ラサギリン、セレギリンおよびサフィナミド)等が挙げられる。
【0228】
本発明の組合せ医薬は、前述の併用可能な追加の治療薬と同時に投与することができ、また、別々に投与することもできる。また、本発明の組合せ医薬を前述の併用可能な追加の治療薬とともに治療に用いる場合、非経口投与などの同じ投与形態で投与することができ、また、一方は非経口投与で、他方が経口投与のような異なる投与形態で投与してもよい。
【0229】
本発明の化合物および組合せ医薬は、神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状の予防または治療に有用である。具体的には、パーキンソン病、二次性パーキンソニズム、ハンチントン病、パーキンソン病様症候群、進行性核上性麻痺(PSP)、多系統萎縮症(MSA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、シャイ・ドレーガー症候群、ジストニア、アルツハイマー病、レビー小体型認知症(LBD)、無動症、動作緩慢、および運動機能低下症の予防または治療に有用であり、好ましくはパーキンソン病の予防または治療に有用である。また、本発明の化合物および組合せ医薬は、一酸化炭素中毒もしくはマンガン中毒を含む脳損傷に起因する疾患もしくは症状またはアルコール症、麻薬依存症もしくは勃起不全を含む神経疾患もしくは神経障害に関連する疾患もしくは症状の予防または治療に有用である。
【0230】
後述の実施例で記載されたレボドパプロドラッグ1もしくは2の化合物またはその薬理的に許容し得る塩およびカルビドパプロドラッグの化合物またはその薬理的に許容し得る塩を含む組合せ医薬も、本発明に包含される。
【実施例0231】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、マススペクトル(MS)は液体クロマトグラフィー質量分析法を用い、正イオンモードで測定した。
〔レボドパプロドラッグ1〕(式(I)の化合物)
【0232】
実施例1:レボドパアミノ酸(LDAA)の調製
初期スクリーニングのために10種のLDAAコンジュゲートをトリフルオロ酢酸(TFA)塩として調製した。
レボドパアルギニンTFA塩(LD-Arg TFA塩)の調製
【化34】
【0233】
レボドパグリシンTFA塩(LD-Gly TFA塩)の調製
【化35】
【0234】
レボドパリジンTFA塩(LD-Lys TFA塩)の調製
【化36】
【0235】
レボドパアスパラギン酸TFA塩(LD-Asp TFA塩)の調製
【化37】
【0236】
レボドパグルタミン酸TFA塩(LD-Glu TFA塩)の調製
【化38】
【0237】
レボドパグルタミンTFA塩(LD-Gln TFA塩)の調製
【化39】
【0238】
レボドパアスパラギンTFA塩(LD-Asn TFA塩)の調製
【化40】
【0239】
レボドパチロシンTFA塩(LD-Tyr TFA塩)の調製
【化41】
【0240】
レボドパトリプトファンTFA塩(LD-Trp TFA塩)の調製
【化42】
【0241】
レボドパ-ランチオニンTFA塩(LD-LA TFA塩)の調製
工程1:ハロゲン化
【化43】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
工程6:脱保護(Fmoc除去)およびジアステレオマー分離
【化48】
【0247】
工程7a:LDの脱保護およびレボドパランチオニンピーク1TFA塩(LD-LA1 TFA塩)の単離
【化49】
【0248】
工程7b:LDの脱保護およびレボドパランチオニンピーク2TFA塩(LD-LA2 TFA塩)の単離
【化50】
【0249】
なお、本文章を通して、LD-LA 1(レボドパランチオニンピーク1またはレボドパランチオニン1とも称される)が(S)(S)(R)異性体であると実証され、そして、LD-LA 2(レボドパランチオニンピーク1またはレボドパランチオニン1とも称される)が(S)(R)(R)異性体であると実証されているが、2つの調製された異性体は、完全に同定されておらず、それゆえ、これらの異性体は、本文章を通して実証されかつ描写されているものと反対であり得る。
【0250】
実施例2:レボドパアミノ酸(LDAA)遊離塩基形態の調製
L-DOPAのCBz保護
CBz-ClおよびNaOHを塩基として使用して合成を実施した。L-DOPA(200 g、1.014 mol)を水(600 mL)に懸濁し、窒素下で0℃に冷却した。NaOH(81.3 g、2.033 mol)/水(600 mL)の混合物を0℃で加え、CBz-Cl(211.4 g、 1.239 mol)/ジオキサン(800 mL)を0℃で1時間かけて加えた。混合物を室温まで放温した。約1時間後、73%の変換が観察された。別分量のNaOH(4.9 g、0.123 mol)/水(60 mL)およびCBz-Cl(20.8 g、0.122 mol)/ジオキサン(80 mL)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。83%の変換が観察された。別分量のNaOH(8.1 g、0.203 mol)/水(50 mL)およびCBz-Cl(35 g、0.205 mol)/ジオキサン(50 mL)を加えた。94%の変換が得られたら(添加の1.5時間後)、3M NaOHでpHを10に調整し、混合物をMTBE(1 L)で洗浄した。6M HClを使用して水相のpHを2に調整し、水相をMTBE(2×1L)で抽出した。合わせた有機相を水(1 L)および25% NaCl水溶液(1 L)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で留去させ、真空中で乾燥させて、448.3 g(135%)を褐色の粘体として得た(純度(280 nm)は82.5%であった)。
【0251】
CBz-L-DOPA-(CBz/Bn)-Lysの脱保護
CBz-L-DOPA-(CBz/Bn)-Lys(93.4 g)をメタノール(4.2 L)に溶解させた。雰囲気を窒素(3回)に交換し、その後、10% パラジウム/炭素(18.8 g)を加え、雰囲気を再度窒素(2回)、続いて、水素(3回)に交換した。反応容器に水素を減圧/充填した。4.5時間後、反応が完了したことをHPLC分析により推定した。反応混合物をCelite(登録商標)でろ過し、40℃の水浴温度で減圧留去した。約400 mLが残った時点で、懸濁液をろ過し、ろ過残渣をメタノール(50 mL)で洗浄した。固体を真空中25℃で一晩乾燥し、LD-Lys遊離塩基33.1 g(75%)を灰白色固体として得た(純度は99.0%であった)。
【0252】
実施例2.2:LD-Tyr遊離塩基形態の調製
H-Tyr-OBzlとのカップリング
EDC-Cl(46.3 g、242 mmol)を、0℃で、DMF(863.2 g、0.9 L)中のBnO-Tyr(64.9 g、239 mmol)、HOBt(36.8 g、88 w/w%、240 mmol)およびCBz-L-DOPA(363.1 g、20.1 w/w%DMF溶液、220 mmol)の溶液に10分間かけて少量ずつ加えた。反応物を0℃で4時間撹拌した後、水(1.7 kg)を30分間かけて加え、反応混合物を室温まで放温した。EtOAc(2.6 kg、2.8 L)を反応容器に投入し、相を分離した。有機相を、水で3回(1.5L、1.4Lおよび1.4L)洗浄した。粗残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラム、3.2 kg EtOAc/ジクロロメタン1:1(v/v)を充填)にて精製し、Celite(登録商標)混合物をカラムにロードし、EtOAc/ジクロロメタン1:1(v/v)で溶出した。得られた画分(12 L)を、水浴温度45℃にて減圧下で濃縮し、さらに真空中で一晩乾燥させた。L-DOPA-BnOTyrをわずかに褐色の固体(44.7 g、35%)として純度96.4%で単離した。フラッシュカラムクロマドグラフィー(溶媒:20% メタノール/CH2Cl2(10 L))にて分画し、L-DOPA-Bn-OTyrを含有するすべての画分を収集した。得られた画分を、水浴温度45℃にて減圧下で濃縮した。混合物を75℃に加熱することによって、粗精製物(60.2 g)を2-PrOH(432.1 g、550 mL)に溶解させた。溶液を熱時ろ過し、室温まで放冷し、一晩撹拌して、沈殿物を得た。懸濁液をろ過し、ろ物を2-PrOH(166 g、211 mL)で洗浄し、真空中30℃で一晩乾燥させて、CBz-L-DOPA-Tyr(OBn)を白色の固体(34.9 g、27%)として純度95.1%で得た。
【0253】
CBz-L-DOPA-Tyr(OBn)の脱保護
メタノール(2051 g、2.6 L)中のL-DOPA-BnOTyr(60.4 g、103 mmol)の溶液を窒素で3回置換した(減圧(<250 mbar)、続いて、窒素を充填)。10% パラジウム/炭素(12.0 g)を反応容器に加え、続いて、水素を充填した(減圧(>250 mbar)、続いて、水素を充填)。反応容器を1時間20分後に排気/水素で満たし、さらに30分放置してから排気/窒素で満たし、Celite(登録商標)でろ過した。ろ物を、メタノール(418.9 g、529 mL)で洗浄し、合わせたろ液を減圧下で濃縮した。体積約500mLで、溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過し、ろ液を減圧濃縮乾固した。油状固体を真空中で一晩乾燥し、LD-Tyr遊離塩基を灰白色固体(36.5 g、98%)として95.4%の純度で得た。
【0254】
実施例3:LD-Lys HCl塩、LD-Tyr HCl塩およびLD-Arg HCl塩の合成
実施例3.1:LD-Arg HCl塩の合成-方法1
H-アルギニン(NO
2
)-OBnとのカップリング
CBz-L-DOPA(342.9 g、20.1 w/w%DMF溶液、208 mmol)をDMF(690 mL)に溶解させた。HOBt.H2O(35.2 g、228 mmol(88% w/w))およびH-Arg(NO2)OBn,p-トシル酸塩(110.0 g、228 mmol)を加えた。溶液を0℃に冷却した。トリエチルアミン(23.2 g、228 mmol)を加え、次いで、温度を0℃で維持しながらEDC.HCl(43.7 g、228 mmol)を少量ずつ加えた。反応液を2.5時間撹拌し、次いで、水(1400 mL)でクエンチした。混合物をEtOAcで3回(1400 mLおよび2×700 mL)抽出した。
有機相を40℃の水浴温度で減圧留去後、残渣を8倍量の蒸留THFに溶解し、8倍量の水を加えてエマルジョンとした。エマルジョンを逆相カラム(26当量のPhenomenex Sepra C-18-T(50μm、135A)をTHFとともに充填し、700 mLの20%蒸留THF/水で調整した)に適用した。カラムは40%蒸留THF水溶液で溶出した。純粋な画分を、主に水が残るまで減圧下留去した。懸濁液を冷ましてろ過した。ろ物を乾燥させ、湿った固体(259 g)を得た。次の処理工程までその固体は冷凍庫にて保管した。
【0255】
CBz-L-DOPA-Arg(NO
2
)-(OBn)
CBz-L-DOPA-Arg(NO2)-(OBn)(湿った固体230.4 g、乾燥約68.6 g、110 mmol)を、メタノール(6.45 L)および水(1.29 L)に懸濁し、HCl(36%水溶液、43 mL)を加えた。反応フラスコ内を250mbarまで減圧し、窒素充填の上、同様の操作を3回繰り返した。混合物を40℃に加熱した。
10% パラジウム/炭素(14.0 g)を加え、雰囲気を窒素(3回)、次いで、水素(3回)に交換した。反応混合物を遮光した。雰囲気を水素に交換した。3時間後、雰囲気を窒素(3回)に交換した。懸濁液をCelite(登録商標)に通してろ過し、ろ物を、20%水/メタノール(600 mL)で洗浄した。イオン交換樹脂(Dowex 1x8 塩化物形態、1M NaOHで事前に活性化し、水で洗浄してpH 7にした)を使用して、ろ液をpH 6に調整した。4分割したろ液各々をろ過し、20%水/メタノール(250 mL)で洗浄した後、pHを調整した。ろ液を、水浴温度50℃にて体積約500 mLまで減圧下留去した。残渣を活性炭(5.0 g)で40分間処理した。懸濁液をCelite(登録商標)でろ過し、ろ物を水(150 mL)で洗浄し、合わせたろ液および洗浄物を、水浴温度50℃にて減圧下で濃縮乾固した。固体残渣を真空中で一晩乾燥させて、48.1 gを明褐色の固体(純度95.6%)として得た。調製したLD-Arg HCl塩は、1当量のHClを含む。
【0256】
実施例3.2:LD-Arg HCl塩の合成-方法2
N-Boc-L-Dopaの合成
【化51】
【0257】
2,5-ジオキソピロリジン-1-イル(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパノアートの合成
【化52】
【0258】
(2S)-2-[(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパンアミド]-5-カルバミミダミドペンタン酸の合成
【化53】
【0259】
【0260】
実施例3.3:LD-Tyr HCl塩の合成
ベンジル (2S)-2-[(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパンアミド]-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノアートの合成
【化55】
【0261】
(2S)-2-[(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパンアミド]3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸の合成
【化56】
【0262】
【0263】
実施例3.4:LD-Lys HCl塩の合成
ベンジル (2S)-6-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-2-[(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパンアミド]ヘキサノアートの合成
【化58】
【0264】
(2S)-6-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-2-[(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパンアミド]ヘキサン酸の合成
【化59】
【0265】
【0266】
実施例4:
(2S)-6-アミノ-2-[[(2S)-2-アミノ-3-(3-ヒドロキシ-4-ホスホノオキシフェニル)プロパノイル]アミノ]ヘキサン酸の製造
【化61】
ベンジル (2S)-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]-6-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサノアト(3.29 g)をテトラヒドロフラン(13 mL),エタノール(13 mL),水(13 mL)の混合溶媒に溶解し、パラジウム/炭素(含水)(106 mg)を加え、水素雰囲気下室温で18時間撹拌した。テトラヒドロフラン(20 mL),水(26 mL)を追加し、水素雰囲気下室温で4時間撹拌した。反応混合物に水(57 mL)を加え,65℃で析出物を溶解させ,セライトろ過により不溶物を除いた。不溶物を水で洗浄し、ろ液の体積がおよそ半分になるまで減圧下留去し,凍結乾燥した後、粗精製物の標題化合物(1.41 g)を得た。
MS(ESI);m/z 406.2[M+H]+
【0267】
実施例5~18:
対応する原料化合物を実施例4と同様にして処理して下記表3に記載の化合物を得た。
【表3-1】
【表3-2】
【0268】
実施例19:
(2S)-2-[[(2S)-2-アミノ-3-(3-ヒドロキシ-4-ホスホノオキシフェニル)プロパノイル]アミノ]-3-(3-ヒドロキシ-4-ホスホノオキシフェニル)プロパン酸の製造
【化62】
(1)ベンジル (2S)-3-(4-ヒドロキシ-3-フェニルメトキシフェニル)-2-[[(2S)-3-(4-ヒドロキシ-3-フェニルメトキシフェニル)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパノエート(430 mg)のジクロロメタン(9 mL)溶液に、ジベンジル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト(615 uL)、1H-テトラゾール(115 mg)のアセトニトリル(3 mL)懸濁液を加え、室温で13.5時間攪拌した。ジベンジル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト(205 uL)、1H-テトラゾール(35 mg)を追加し、室温で1時間攪拌した。反応混合物を氷冷し,tert-ブチル ヒドロペルオキシド水溶液(70%)(0.39 mL)を加え、室温で1時間攪拌した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=60/40~35/65)で精製することにより、ベンジル (2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパノエートの粗精製物(565 mg)を得た。
【0269】
(2)ベンジル(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパノエートの粗精製物(290 mg)をテトラヒドロフラン(4 mL),酢酸(1 mL)、水(0.5 mL)の混合溶媒に溶解し、パラジウム/炭素(含水)(50 mg)を加え、水素雰囲気下室温で25.5時間撹拌した。水(10 mL)を追加し、水素雰囲気下室温で1.5時間撹拌した。反応混合物をメンブレンフィルター(セルロースアセテート)でろ過し、不溶物を除いた。不溶物を水(20 mL)で洗浄した。凍結乾燥した後、標題化合物(112 mg)を得た。
MS(ESI);m/z 537.3 [M+H]+
【0270】
実施例20、21:
対応する原料化合物を実施例4と同様にして処理して下記表4に記載の化合物を得た。
【表4】
【0271】
〔レボドパプロドラッグ2〕(式(II)の化合物)
実施例22:
(2S)-2-[[(2S)-2-アミノプロパノイル]アミノ]-3-(3-ヒドロキシ-4-ホスホノオキシフェニル)プロパン酸の製造
【化63】
(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-[[(2S)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸ベンジル(551 mg)をエタノール(2 mL),テトラヒドロフラン(2 mL)の混合溶媒に溶解させ,パラジウム/炭素(含水)(69 mg)を加え,水素雰囲気下室温で7時間撹拌した。反応混合物をメンブレンフィルター(セルロースアセテート)でろ過し,不溶物を除いた。不溶物を水/エタノール(2:1,12 mL)で洗浄し,ろ液がおよそ1mLになるまで減圧下留去し,凍結乾燥した後,標題化合物(214 mg,収率100%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 349.1 [M+H]+
【0272】
実施例23~40:
対応する原料化合物を実施例21と同様にして処理して下記表5に記載の化合物を得た。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【0273】
実施例41:
(2S)-2-[[(2S)-2-アミノ-5-カルバミミダミドペンタノイル]アミノ]-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸; ヒドロクロリドの製造
【化64】
(2S)-3-[3,4-ビス(フェニルメトキシ)フェニル]-2-[[(2S)-5-[(N-ニトロカルバムイミドイル)アミノ]-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ペンタノイル]アミノ]プロパン酸ベンジル(257 mg)をテトラヒドロフラン(2 mL),2-プロパノール(3 mL)および2M 塩酸(0.80 mL)の混合溶媒に溶解し,パラジウム/炭素(含水)(341 mg)を加え,水素雰囲気下室温で24時間撹拌した。反応混合物に2-プロパノール(4 mL),水(6 mL)を加え,メンブレンフィルターにより不溶物を除いた。不溶物を水(6 mL)で洗浄し,2-プロパノール(25 mL)を加えて減圧下留去した。残渣にジイソプロピルエーテルを加え,析出した固体をろ取し,減圧乾燥し,標題化合物(144 mg,収率100%)を黄茶色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 354.2[M+H]+
【0274】
〔カルビドパプロドラッグ〕(式(III)~式(IX)の化合物)
実施例42:
(2S)-6-アミノ-2-[[(2S)-2-ヒドラジニル-3-(3-ヒドロキシ-4-ホスホノオキシフェニル)-2-メチルプロパノイル]アミノ]ヘキサン酸の製造
【化65】
(2S)-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-メチル-2-[フェニルメトキシカルボニル(フェニルメトキシカルボニルアミノ)アミノ]プロパノイル]アミノ]-6-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸ベンジル(89 mg)をテトラヒドロフラン(1 mL),水(0.2 mL)の混合溶媒に溶解させ,パラジウム/炭素(含水)(10 mg)を加え,水素雰囲気下,室温で2.5時間撹拌した。水(0.2 mL)を追加し,水素雰囲気下室温で2.5時間撹拌した。反応混合物をメンブレンフィルター(セルロースアセテート)でろ過し,不溶物を除いた。不溶物を水(4 mL)で洗浄し,ろ液の体積がおよそ3/4になるまで減圧下留去し,凍結乾燥した後,標題化合物(30 mg, 収率97%)を得た。
MS(ESI);m/z 435.4[M+H]+
【0275】
実施例43―45:
対応する原料化合物を実施例42と同様にして処理して下記表6に記載の化合物を得た。
【表6】
【0276】
実施例46:
(2S)-2-[[(2S)-2-ヒドラジニル-3-(3-ヒドロキシ-4-ホスホノオキシフェニル)-2-メチルプロパノイル]アミノ]-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸の製造
【化66】
(1)(2S)-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-メチル-2-[フェニルメトキシカルボニル(フェニルメトキシカルボニルアミノ)アミノ]プロパノイル]アミノ]-3-(4-フェニルメトキシフェニル)プロパン酸ベンジル(209 mg)とN,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)の混合物に,1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)(40 mg),1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCI)(57 mg),(2S)-2-アミノ-3-(4-ベンジルオキシフェニル)プロパン酸ベンジル;ヒドロクロリド(108 mg)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.047 mL)を加えて,室温で25.5時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を水,飽和食塩水で洗浄し,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=75/25~50/50)で精製することにより,(2S)-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-メチル-2-[フェニルメトキシカルボニル(フェニルメトキシカルボニルアミノ)アミノ]プロパノイル]アミノ]-3-(4-フェニルメトキシフェニル)プロパン酸ベンジルの粗精製物(168 mg)を得た。
【0277】
(2)(1)で得られた粗精製物(168 mg)をテトラヒドロフラン(2 mL),水(0.5 mL)の混合溶媒に溶解させ,パラジウム/炭素(含水)(20 mg)を加え,水素雰囲気下室温で1.5時間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し,不溶物を除いた。不溶物を水(15 mL)で洗浄し,ろ液の体積がおよそ7/8になるまで溶媒を減圧下留去し,凍結乾燥した後,標題化合物(67 mg,収率2工程57%)を得た。
MS(ESI);m/z 470.1[M+H]+
【0278】
実施例47~82:
上記実施例と同様にして、以下化合物を得ることができる。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【0279】
〔レボドパプロドラッグ1〕(式(I)の化合物)
参考例1:
ベンジル (2S)-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]-6-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサノアトの製造
【化67】
ベンジル (2S)-2-[[(2S)-3-(4-ヒドロキシ-3-フェニルメトキシフェニル)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]-6-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサノアト(4.57 g)のジクロロメタン(45 mL)とアセトニトリル(18 mL)の懸濁液に,氷冷下でジベンジル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト(3.28 mL),1H-テトラゾール(0.62 g)を加え,室温で1時間攪拌した。反応混合物を氷冷し,tert-ブチル ヒドロペルオキシド水溶液(70%)(1.2mL)を加え、室温で19時間攪拌した。反応混合物の溶媒を減圧下留去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=67/33~40/60)で精製することにより、標題化合物(5.38 g, 85%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 1034.4[M+H]+
【0280】
参考例2~9:
対応する原料化合物を参考例1と同様にして処理して下記表8に記載の化合物を得た。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【0281】
参考例2’:
ベンジル (2S)-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]-3-(4-フェニルメトキシフェニル)プロパノエートの製造
【化68】
(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパン酸(352 mg)とN,N-ジメチルホルムアミド(4 mL)の混合物に、ベンジル(2S)-2-アミノ-3-(4-ベンジルオキシフェニル)プロパン酸;ヒドロクロリド(277 mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.35 mL)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCI)(115 mg)及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)(82 mg)を加え室温で16時間撹拌した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=75/25~45/55)で精製することにより、標題化合物(250 mg, 52%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 1025.6 [M+H]+
【0282】
参考例14~29:
対応する原料化合物を参考例2’と同様にして処理して下記表9に記載の化合物を得た。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【0283】
参考例30:(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-3-(3-ベンジルオキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸の製造
【化69】
(1)化合物A-1(8.0 g, 74wt%)をジクロロメタン(75 mL)に溶解し、氷冷下でN-カルボベンゾキシ-2-ホスホノグリシントリメチル(7.98 g)、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(3.6mL)を加え、室温で16.5時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=85/15~65/35)で精製することにより、化合物A-2(8.58 g, 82%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 476.4 [M+H]+
【0284】
(2)化合物A-2(5.90 g、92wt%)をテトラヒドロフラン(80 mL)に溶解し、(+)-1,2-ビス((2S,5S)-2,5-ジエチルホスホラノ)ベンゼン(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート((S,S)-Et-DUPHOS-Rh)(295 mg)を加え、加圧水素雰囲気下(600 kPa)室温で4時間撹拌した.反応混合物の溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=85/15~55/45)で精製することにより、化合物A-3(5.71 g, 78%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 478.4 [M+H]+
【0285】
(3)化合物A-3(1.73 g)をテトラヒドロフラン(18 mL)、メタノール(9 mL)、蒸留水(7 mL)に溶解し、水酸化リチウム1水和物 (608 mg)を加え,室温で30分間撹拌した.反応混合物に1M 塩酸 (30 mL) を加えて,クロロホルム(50 mL) で抽出した.有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去し、標題化合物(1.69 g、100%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 422.4 [M+H]+
【0286】
参考例31:(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-3-(3-ベンジルオキシ-4-ジベンジルオキシホスホリルオキシフェニル)プロパン酸の製造
【化70】
(1)化合物B-1(R=Me、2.30 g)をテトラヒドロフラン(36 mL)、メタノール(4 mL)の混合溶媒に溶解し、2M水酸化リチウム水溶液(4.0 mL)を加え、室温で10分撹拌した。反応混合物を氷冷し、0.5M硫酸水素カリウム水溶液(20 mL)を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をメチルtert-ブチルエーテルに懸濁させ、析出した固体をろ取し、減圧乾燥し、標題化合物(2.30 g、100%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 682.6 [M+H]+
【0287】
(1)’ 化合物B-1(R=Bn、0.57 g)をメタノール(2 mL)に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液(0.37 mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物に1M塩酸を加えて酸性としたのち、酢酸エチルで抽出した。有機層を水,飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去し、標題化合物(0.53 g、104%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 638.1 [M+H-CO2]+
【0288】
参考例32: (2S)-2-アミノ-3-(3-ベンジルオキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸 ベンジル;ヒドロクロリドの製造
【化71】
(1)活性化した亜鉛 (923 mg) のN,N-ジメチルホルムアミド(7 mL)懸濁液に,窒素雰囲気下5℃でヨウ素(153 mg)を加えた。20℃まで昇温し、10分間撹拌した。反応混合物を再度6℃に冷却し、N-(tert-ブトキシカルボニル)-3-ヨード-L-アラニン ベンジルエステル(1890 mg)を20℃以下で分割添加し、20℃で30分間撹拌し、化合物C-2の溶液を得た。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(31 mg),2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニルジシクロヘキシル(2’,6’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)ホスフィン(30 mg),化合物C-1(1309 mg)を順次加え室温で16時間撹拌した.反応混合物にヘキサン/酢酸エチル(1:1)を加え、セライトろ過により不溶物を除いた。不溶物をヘキサン/酢酸エチル(1:1)と水で洗浄し、ろ液を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=80/20~67/33)で精製することにより、化合物C-3(1733 mg, 90%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 378.2[M+H-Boc]
【0289】
(2)化合物C-3(1.625 g)の1,4-ジオキサン(15 mL)溶液に、3℃で4M塩化水素ジオキサン溶液(6 mL)を加え、室温で1時間撹拌した。4M塩化水素ジオキサン溶液(6 mL)を追加し、17時間撹拌した。反応混合物の体積がおよそ1/10になるまで減圧濃縮した.残渣を酢酸エチルに懸濁させ、析出した固体をろ取し、減圧乾燥し、標題化合物(1271 mg、90%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 378.4[M+H]+
【0290】
〔レボドパプロドラッグ2〕(式(II)の化合物)
参考例33:
(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-[[(2S)-3-(2-エトキシ-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸の製造
【化72】
(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-[[(2S)-3-(2-エトキシ-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸ベンジル(208 mg)を水(0.41 mL),テトラヒドロフラン(1.0 mL)の混合溶媒に溶解させ,氷浴下で水酸化リチウム一水和物(9.4 mg)を加えた後,室温で2時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルを加えた後、飽和クエン酸水溶液をpH6になるまで加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去し,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=70/30~0/100,酢酸エチル/メタノール=100/0~85/15)で精製することにより,標題化合物(179 mg, 収率94%)を無色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 929.3 [M-H]-
【0291】
参考例34:
(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-[[(2S)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸ベンジルの製造
【化73】
(2S)-3-(4-ヒドロキシ-3-フェニルメトキシフェニル)-2-[[(2S)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸ベンジル(387 mg)とジクロロメタン(4 mL)とアセトニトリル(1.6 mL)の混合物に,氷冷下で1H-テトラゾール(72 mg)とジベンジル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト(0.38 mL)を加え,室温で3時間攪拌した。反応混合物を氷冷し,tert-ブチル ヒドロペルオキシド デカン溶液(5.5 M)(0.18 mL)を加え,室温で1時間攪拌した。反応混合物の溶媒を減圧下留去した後,トルエンを加えて不溶物をPhase-separator(登録商標)で除いた。ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=67/33~40/60)で精製することにより,標題化合物(551 mg, 収率90%)を無色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 843.7[M+H]+
【0292】
参考例35~48:
対応する原料化合物を参考例34と同様にして処理して下記表10に記載の化合物を得た。
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【0293】
参考例49:
(2S)-3-(4-ヒドロキシ-3-フェニルメトキシフェニル)-2-[[(2S)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]アミノ]プロパン酸ベンジルの製造
【化74】
(2S)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシ-3-フェニルメトキシフェニル)プロパン酸ベンジル;ヒドロクロリド(1.87 g)とN,N-ジメチルホルムアミド(18 mL)の混合物に,(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロパン酸(1.02 g),1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)(712 mg),1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCI)(1.03 g)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.750 mL)を加えて,室温で18時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を水,飽和食塩水で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去し,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=67/33~45/55)で精製することにより,標題化合物(2.56 g, 収率99%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 583.6[M+H]+
【0294】
参考例50~66:
対応する原料化合物を参考例49と同様にして処理して下記表11に記載の化合物を得た。
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【0295】
参考例67:
(2S)-2-アセトアミド-3-(3,4-ジアセチルオキシフェニル)プロパン酸ベンジルの製造
【化75】
(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸ベンジル; ヒドロクロリド(253 mg)のピリジン(1 mL)の混合物に,氷冷下で無水酢酸(0.291 mL)を加え,室温で18時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え,クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸ナトリウムで乾燥し,不溶物をろ過後,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=80/20~0/100)で精製することにより,標題化合物(280 mg, 収率72%)を無色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 414.2 [M+H]+
【0296】
参考例68、69:
対応する原料化合物を参考例67と同様にして処理して下記表12に記載の化合物を得た。
【表12】
【0297】
参考例70:
(2S)-2-アミノ-3-[3,4-ビス(フェニルメトキシ)フェニル]プロパン酸ベンジル; ヒドロクロリドの製造
【化76】
(2S)-3-[3,4-ビス(フェニルメトキシ)フェニル]-2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]プロパン酸ベンジル(13.2 g)に,氷冷下で4M 塩化水素ジオキサン溶液(43 mL)を加え,室温で3時間撹拌した。4M 塩化水素酢酸エチル溶液(3 mL)を追加し,2時間撹拌した。反応混合物の溶媒を減圧下留去した。残渣をジイソプロピルエーテルに懸濁させ,析出した固体をろ取し,減圧乾燥し,標題化合物(10.4 mg, 収率96%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 468.3 [M+H]+
【0298】
参考例71:
対応する原料化合物を参考例70と同様にして処理して下記表13に記載の化合物を得た。
【表13】
【0299】
参考例72:(2S)-2-アミノ-3-(3-ベンジルオキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸ベンジル;ヒドロクロリドの製造
【化77】
(1)化合物D-1(8.31 g)とジクロロメタン(90 mL)の混合物に,氷冷下でN-(tert-ブトキシカルボニル)-ホスホノグリシントリメチルエステル(10 g)および1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(5 mL)を加えて,室温で24時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル)に通し,ろ液の溶媒を減圧下留去した。残渣をエタノールに懸濁させ,析出した固体をろ取し,減圧乾燥し,化合物D-2(10.7 g, 収率79%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 440.3 [M-H]-
【0300】
(2)化合物D-2(9.65 g)とテトラヒドロフラン(80 mL)の混合物に、(+)-1,2-ビス((2S,5S)-2,5-ジエチルホスホラノ)ベンゼン(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート((S,S)-Et-DUPHOS-Rh)(144 mg)を加え,加圧水素雰囲気下(800 kPa)35℃で3時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=50/50)に通し,ろ液の溶媒を減圧下留去した。残渣をエタノールに懸濁させ,析出した固体をろ取し,減圧乾燥し,化合物D-3(9.00 g, 収率93%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 442.2 [M-H]-
【0301】
(3)化合物D-3(7.52 g)をテトラヒドロフラン(40 mL)とメタノール(20 mL)および蒸留水(15 mL)の混合溶媒に溶解させ,氷冷下で4M 水酸化リチウム水溶液(20 mL)を加え,0℃で7時間撹拌した。反応混合物に1M 塩酸(60 mL)を加えて,酢酸エチル(100 mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後,溶媒を減圧下留去し,化合物D-4(7.52 g, 88wt%, 収率100%)を黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 386.2 [M-H]-
【0302】
(4)―1 化合物D-4(7.46 g, 88wt%)とN,N-ジメチルホルムアミド(4 mL)の混合物に,室温で炭酸セシウム(3.97 g)と臭化ベンジル(2.40 mL)を加え,同温で4時間撹拌した。反応混合物に飽和食塩水,水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を水,飽和食塩水で洗浄し,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=80/20~67/33)で精製することにより,化合物D-5(8.81 g,90wt%, 98%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 476.2 [M-H]-
【0303】
(4)―2(化合物D-5の別合成法)活性化した亜鉛(923 mg)とN,N-ジメチルホルムアミド(7 mL)の混合物に,窒素雰囲気下5℃でヨウ素(153 mg)を加えた。20℃まで昇温し,10分間撹拌した。反応混合物を再度6℃に冷却し、化合物D-6(1890 mg)を20℃以下で分割添加し,20℃で30分間撹拌し,化合物D-7の溶液を得た。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加体(31 mg),2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニルジシクロヘキシル(2’,6’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)ホスフィン(30 mg),化合物D-8(1309 mg)を順次加え室温で16時間撹拌した.反応混合物にヘキサン/酢酸エチル(1:1)を加え,セライトろ過により不溶物を除いた。不溶物をヘキサン/酢酸エチル(1:1)と水で洗浄し,ろ液を飽和塩化アンモニウム水溶液,飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=80/20~67/33)で精製することにより化合物D-5(1.84 g, 収率90%)を黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 378.2 [M+H-Boc]+
【0304】
(5)化合物D-5(1.63 g)と1,4-ジオキサン(15 mL)の混合物に,氷冷下で4M 塩化水素ジオキサン溶液(6 mL)を加えて室温で1時間攪拌した。4M 塩化水素ジオキサン溶液(6 mL)を追加して室温で16時間撹拌した。反応混合物の体積がおよそ1/10になるまで減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルに懸濁させ,析出した固体をろ取し,減圧乾燥し,標題化合物(1288 mg、収率90%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 378.4[M+H]+
【0305】
参考例73: (2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジアセトキシフェニル)プロパン酸ベンジル;ヒドロクロリドの製造
【化78】
(1)化合物E-1(2.0 g)とN,N-ジメチルホルムアミド(19 mL)の混合物に,炭酸セシウム(1.43 g)と臭化ベンジル(0.58 mL)を加え,室温で2時間撹拌した。反応混合物に飽和食塩水,水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を水,飽和食塩水で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより,化合物E-2(1.68 g, 収率75%)を無色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 372.1 [M+H-Boc]+
【0306】
(2)化合物E-2(515 mg)の酢酸エチル(5 mL)溶液に,氷冷下で4M 塩化水素酢酸エチル溶液(0.5 mL)を加え,室温で4時間撹拌した。4M 塩化水素酢酸エチル溶液(3 mL)を追加し,室温で2.5時間撹拌した。反応混合物の溶媒を減圧下留去した。残渣を酢酸エチルに懸濁させ,析出した固体をろ取し,減圧乾燥し,標題化合物(409 mg, 収率98%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 372.1 [M+H]+
【0307】
参考例74:(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-3-(2,2-ジメチル-1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)プロパン酸の製造
【化79】
(1)化合物F―1(3.66 g)とトルエン(102 mL)の混合物に,p-トルエンスルホン酸(175 mg)と2,2-ジメトキシプロパン(12.5 mL)を加え,ディーン・スターク装置で14時間加熱還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去し,化合物
2の粗精製物を黄色粘体として得た。
【0308】
(2)化合物F―2の粗精製物をメタノール(25 mL)と水(20 mL)およびテトラヒドロフラン(51 mL)の混合溶媒に溶解させ,氷浴下で水酸化リチウム一水和物(855 mg)を加え,同温で40分撹拌した後,室温で1時間撹拌した.反応混合物を水で希釈し,ジエチルエーテルで洗浄した。水層に酢酸エチルを加え,飽和クエン酸水溶液をpH6になるまで加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去し,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル)で精製することにより,標題化合物(2.40 g, 収率2工程63%)を黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 370.2 [M-H]-
【0309】
参考例75:(2S)-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)-3-(2-エトキシ-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)プロパン酸の製造
【化80】
(1)化合物G―1(1.35 g)を1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロリン酸塩(7.51 mL)に溶解させ,オルト酢酸トリエチル(1.38 mL)を加え,80℃で3時間撹拌した。反応混合物に水を加えた後,酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去し,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=85/15~70/30)で精製することにより,化合物G―2(1.41 g, 収率87%)を無色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 430.0 [M+H]+
【0310】
(2)化合物G―2(1.35g)をメタノール(3.9 mL),水(6.3 mL),テトラヒドロフラン(6.3 mL)の混合溶媒に溶解させ,氷浴下で水酸化リチウム一水和物(264 mg)を加えた後,室温で10時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルを加えた後、飽和塩化アンモニウム水溶液をpH6になるまで加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し,不溶物をろ過後、溶媒を減圧下留去し,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/メタノール=100/0~95/5)で精製することにより,標題化合物(816 mg, 収率65%)を無色固体として得た。
MS(ESI);m/z 400.2 [M-H]-
【0311】
〔カルビドパプロドラッグ〕(式(III)~式(IX)の化合物)
参考例76:
(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-メチル-2-[2-[(2S)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]ヒドラジニル]プロパン酸ベンジルの製造
【化81】
(2S)-3-(4-ヒドロキシ-3-フェニルメトキシフェニル)-2-メチル-2-[2-[(2S)-2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイル]ヒドラジニル]プロパン酸ベンジル(190 mg)とアセトニトリル(2 mL)の混合物に,氷冷下,1,8ージアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(0.036 mL),テトラベンジルジホスフェイト(123 mg)を加えて徐々に室温に昇温し,9時間撹拌した。1,8ージアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(0.017 mL),テトラベンジルジホスフェイト(57 mg)を追加し,室温で14.5時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=55/45~34/66)で精製することにより,標題化合物(172 mg, 収率71%)を無色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 870.5[M-H]-
【0312】
参考例77:(2S)-2-[2-[(2S)-2,6-ビス(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサノイル]ヒドラジニル]-3-(3-ヒドロキシ-4-ホスホノオキシフェニル)-2-メチルプロパン酸;2,2,2-トリフルオロ酢酸の製造
【化82】
(2S)-3-[4-[ビス[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシ]ホスホリルオキシ]-3-ヒドロキシフェニル]-2-[2-[(2S)-2,6-ビス(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサノイル]ヒドラジニル]-2-メチルプロパン酸tert-ブチル(137 mg)とジクロロメタン(2 mL)の混合物に,トリフルオロ酢酸 (0.20 mL)を加え室温で16時間撹拌した。トリフルオロ酢酸 (2.0 mL)を追加し,室温で4時間撹拌した。反応混合物の溶媒を減圧下留去した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え,酢酸エチルで洗浄した。水層に1M
塩酸をpH1になるまで加えた後,酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。残渣をジイソプロピルエーテルに懸濁させ,析出した固体をろ取し,減圧乾燥し,標題化合物(113 mg、収率88%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 703.2[M+H]+
【0313】
参考例78:
(2S)-2-[[(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-メチル-2-[フェニルメトキシカルボニル(フェニルメトキシカルボニルアミノ)アミノ]プロパノイル]アミノ]-6-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸ベンジルの製造
【化83】
(2S)-3-[4-ビス(フェニルメトキシ)ホスホリルオキシ-3-フェニルメトキシフェニル]-2-メチル-2-[フェニルメトキシカルボニル(フェニルメトキシカルボニルアミノ)アミノ]プロパン酸(105 mg)とN,N-ジメチルホルムアミド(1 mL)の混合物に,1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)(20 mg),1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCI)(33 mg),(2S)-2-アミノ-6-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸ベンジル;ヒドロクロリド(56 mg)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.023 mL)を加えて室温で2.5時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を水,飽和食塩水で洗浄し,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=67/33~45/55)で精製することにより,標題化合物(89 mg, 収率57%)を無色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 1215.1[M+H+H2O]+
【0314】
参考例79~81:
対応する原料化合物を参考例78と同様にして処理して下記表14に記載の化合物を得た。
【表14】
【0315】
参考例82:(2S)-2-(2-ベンジルオキシカルボニルヒドラジノ)-3-(3,4-ジベンジルオキシフェニル)-2-メチルプロパン酸の製造
【化84】
(1)WO 2004/052841に従い,化合物H-1(10.0 g)から化合物H-2(13.6 g)を淡黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 241.0 [M+H]+
【0316】
(2)WO 2004/052841化合物H-2(13.6 g)から化合物H-3(13.8 g,収率2工程93%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 339.1 [M-H]-
【0317】
(3)WO 2020/115753に従い,化合物H-3(13.8 g)から化合物H-4(15.4 g,収率73%)を無色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 465.0 [M+H-C4H8]+
【0318】
(4)化合物H-4(15.4 g)のメタノール(75 mL)溶液に,氷冷下でトリエチルシラン(10.3 g),4M 塩化水素ジオキサン溶液(150 mL)を加えて室温で2時間撹拌した。反応混合物の溶媒を減圧下留去し,化合物H-5の粗精製物(17.5 g)をベージュ色の粉体として得た。
MS(ESI);m/z 421.1 [M+H]+
【0319】
(5)化合物H-5(18.0 g)をジクロロメタン(340 mL)に懸濁させ,氷冷下でクロロギ酸ベンジル(5.76 g),トリエチルアミン(13.7 g)を加えて室温で1時間撹拌した。反応混合物に水を加えて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=80/20~60/40)で精製することにより,化合物H-6(12.6 g, 収率2工程74%)を黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 555.1 [M+H]+
【0320】
(6)化合物H-6(3.0 g)をテトラヒドロフラン(41 mL)と蒸留水(4 mL)のに溶解させ,4M 水酸化リチウム水溶液(4.1 mL)を加え,60℃で4時間撹拌した。反応混合物に1M 塩酸(17 mL)を加えて,酢酸エチル(200 mL×1,100 mL×1)で抽出した。有機層を飽和食塩水(30 mL)で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。残渣をジイソプロピルエーテルに懸濁させ,析出した固体をろ取し,減圧乾燥し,標題化合物(2.27 g, 収率77%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 541.1 [M+H]+
【0321】
参考例83:(2S)-3-(3-ベンジルオキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドラジド-2-メチルプロパン酸ベンジル;ヒドロクロリドの製造
【化85】
(1)WO 2004/052841を参考に,化合物I-1(25.0 g)から化合物I-2(30.2 g,収率80%)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 325.2 [M-H]-
【0322】
(2)化合物I-2(8.0 g)とN,N-ジメチルホルムアミド(40 mL)の混合物に,炭酸セシウム(2.23 g)を加えた。反応混合物を氷冷し,N,N-ジメチルホルムアミド(40 mL)に溶解させた臭化ベンジル(4.04 g)を加え,室温で94時間撹拌した。反応混合物に水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を0.5規定塩酸で洗浄し,水,飽和食塩水で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=65/35~45/55)で精製することにより,化合物I-3(2.89 g, 収率28%)を淡黄色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 415.3 [M-H]-
【0323】
(3)化合物I-3(2.59 g)をN,N-ジメチルホルムアミド(20 mL)に溶解させ,炭酸セシウム(2.23 g)を加えた。N,N-ジメチルホルムアミド(1 mL)に溶解させた臭化ベンジル(1.07 g)を加え,室温で24時間撹拌した。反応混合物に水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を水,飽和食塩水で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=70/30~45/55)で精製することにより,化合物I-4(738 mg, 収率23%)を淡黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 507.0 [M+H]+
【0324】
(4)化合物I-4(415mg)と酢酸エチル(2mL)の混合物に,4M 塩化水素酢酸エチル溶液(1.9 mL)を加えて,室温で18.5時間撹拌した。反応混合物の溶媒を減圧下留去した。残渣を酢酸エチルに溶解させ,再度溶媒を減圧下留去し,減圧乾燥することで,標題化合物(385 mg、 収率97%)を赤色粘体として得た。
MS(ESI)z;m/z 407.1[M+H]+
【0325】
参考例84: (2S)-3-(4-ジtert-ブトキシホスホリルオキシ-3-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドラジノ-2-メチルプロパン酸tert-ブチル
の製造
【化86】
(1)化合物J-1(4.91 g)とアセトニトリル(35 mL)混合物に,室温でジベンジルアゾカルボキシレート(7.82 g)と(R)‐5‐(ピロリジン‐2‐イル)‐1H‐テトラゾール(380 mg)とトリフルオロ酢酸(0.206 mL)を加え,室温で18時間撹拌した。ジベンジルアゾカルボキシレート(3.02 g)と(R)‐5‐(ピロリジン‐2‐イル)‐1H‐テトラゾール(105 mg)とトリフルオロ酢酸(0.070 mL)を加え,室温で10時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸ナトリウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=80/20~60/40)で精製することにより,化合物J-2(6.87 g, 収率64%, 51.2%ee)を白色粉体として得た。
MS(ESI);m/z 569.3 [M+H]+
【0326】
(2)化合物J-2(2.74 g)とジクロロメタン(24 mL)とアセトニトリル(6 mL)の混合物に,室温で1H-テトラゾール(679 mg)とジベンジル N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト(2.00 mL)を加え,室温で3時間攪拌した。反応混合物にtert-ブチル ヒドロペルオキシド デカン溶液(5.5 M)(1.10 mL)を加え,室温で6時間30分攪拌した。反応混合物に水を加え,酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸ナトリウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=75/25~50/50)で精製することにより,化合物J-3(2.69 g, 収率70%)を黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 759.3 [M+H]+
【0327】
(3)化合物J-3(2.69 g)とアセトニトリル(35 mL)の混合物に,室温でジメチルスルホキシド(0.577 mL)とリン酸二水素ナトリウム(891 mg)の水溶液(2 mL)と亜塩素酸ナトリウム(1.76 g)の水溶液(2.5 mL)を加え,室温で2時間撹拌した。反応混合物に亜硫酸ナトリウム(939 mg)と水を加えて撹拌し,酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸ナトリウムで乾燥後,溶媒を減圧下留去した。減圧乾燥し,化合物J-4(2.78 g, 収率97%)を黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 775.2 [M‐H]‐
【0328】
(4)化合物J-4(1.71 g)とジクロロメタン(10 mL)の混合物に室温で2‐tert-ブチル1,3‐ジイソプロピルイソウレア(2.1 mL)を加えて室温で20時間撹拌した。不溶物をろ去し,ろ液を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=75/25~50/50)で精製することにより,化合物J-5(1.35 g, 収率83%)を黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 833.3 [M+H]+
【0329】
(5)化合物J-5(1.35 g)とテトラヒドロフラン(8 mL)の混合物に,パラジウム/炭素(含水)(487 mg)を加え,水素雰囲気下,室温で2.5時間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し,不溶物を除いた。不溶物をテトラヒドロフランで洗浄し,溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム/メタノール=100/0~95/5)で精製することにより,標題化合物(0.513 g, 収率64%)を黄色粘体として得た。
MS(ESI);m/z 475.3 [M+H]+
【0330】
試験例1:ヒト肝細胞を用いたin vitro変換効率の評価
プロドラッグからレボドパへの変換効率について、ヒト肝細胞を用いた代謝試験で評価した。プロドラッグをヒト肝細胞と37℃で4時間インキュベートした。各所定時間に反応溶液の一部を採取し、有機溶媒と混合して反応を停止させた。反応停止溶液を遠心分離し、得られた上清をLC-MS/MSで測定した。レボドパへの変換効率は反応開始後4時間におけるレボドパ産生量として、評価した。本発明のいくつかの実施例化合物のレボドパ産生量を表15および表16に示す。
【0331】
【0332】
【0333】
上記試験の結果に示すように、全ての化合物おいてレボドパを産生することが確認された。本結果から、生体内においても効率的なレボドパ産生が期待され、パーキンソン病の治療剤として特に有用と考えられた。
【0334】
試験例2:溶液安定性の評価
各化合物にリン酸緩衝液、pH7.4を加えて溶かし、必要に応じてNaOH溶液を加えてpH調整して約1mg/mL溶液を調製した。この溶液を25℃約1日間保存後、HPLC純度(面積百分率、%)を測定した。25℃約1日間保存後のHPLC純度から調製直後の溶液のHPLC純度、または化合物のHPLC純度を引きHPLC純度差とした。本発明のいくつかの実施例化合物の溶液安定性を表17、表18および表19に示す。
【0335】
【0336】
【0337】
【0338】
表17~表19の結果に示すように、本発明の化合物は、中性付近の水溶液中で安定であることが確認され、中でも実施例4、実施例5、実施例22、実施例29、実施例42および実施例44が安定だった。
以上の結果から、本発明の化合物は、pH6~8での高い溶液安定性が期待され,それらを組み合わせた本発明の組合せ医薬においても、高い溶液安定性を有する溶液製剤として有用と考えられた。
【0339】
試験例3:溶解度の評価
各化合物に水を加えて懸濁液を調製し、25℃一昼夜振とう後フィルターろ過してろ液を得た。このろ液中の化合物濃度を、HPLCを用いて定量し、溶解度とした。また、ろ液のpHを測定した。本発明のいくつかの実施例化合物の溶解度を表20および表21に示す。
【0340】
【0341】
【0342】
上記試験の結果に示すように、全ての化合物おいて,等電点付近のpHで良好な溶解度を示すことが確認された。
以上の結果からpH6~8での高い溶解性が期待され、溶液製剤として特に有用と考えられた。
本発明は、レボドパプロドラッグ化合物およびカルビドパプロドラッグ化合物を含む組合せ医薬が神経変性疾患および/または脳内ドパミン濃度の低下に起因する疾患もしくは症状、例えば、パーキンソン病および関連症状の予防または治療に有用であることから、医薬品産業において高い利用価値を有する。