(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102522
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】車載検出器
(51)【国際特許分類】
G01S 17/894 20200101AFI20240724BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G01S17/894
G02B26/10 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006462
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】内海 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】小西 俊介
(72)【発明者】
【氏名】野田 周作
【テーマコード(参考)】
2H045
5J084
【Fターム(参考)】
2H045AA01
2H045BA12
2H045BA24
2H045CB65
2H045DA12
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB16
5J084AC02
5J084BA03
5J084BA50
5J084BB26
5J084BB28
(57)【要約】
【課題】車両周囲の外界状況を認識する処理の負荷を軽減すること。
【解決手段】自車両の周囲に電磁波を走査照射して外界状況を検出する車載検出器5は、モータを用いた第1の方式により電磁波を第1の方向に走査照射する第1の走査部53と、モータを用いない第2の方式により電磁波を第1の方向と交差する第2の方向に走査照射する第2の走査部52と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲に電磁波を走査照射して外界状況を検出する車載検出器であって、
モータを用いた第1の方式により前記電磁波を第1の方向に走査照射する第1の走査部と、
前記モータを用いない第2の方式により前記電磁波を前記第1の方向と交差する第2の方向に走査照射する第2の走査部と、
を備えることを特徴とする車載検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の車載検出器において、
前記第1の走査部は、前記電磁波を前記第1の方向としての水平方向に走査照射し、
前記第2の走査部は、前記電磁波を前記第2の方向としての鉛直方向に走査照射し、
前記電磁波を走査照射する際、前記第2の走査部による前記第2の方向の走査ピッチを可変制御する制御部をさらに備えることを特徴とする車載検出器。
【請求項3】
請求項2に記載の車載検出器において、
前記制御部は、前記電磁波の照射位置が前記自車両から遠くなるほど前記第2の方向の走査ピッチを密に設定することを特徴とする車載検出器。
【請求項4】
請求項3に記載の車載検出器において、
前記制御部は、前記電磁波の照射位置が前記自車両で走行する道路の路面から高くなるほど前記第2の方向の走査ピッチを粗く設定することを特徴とする車載検出器。
【請求項5】
請求項3に記載の車載検出器において、
前記制御部は、前記電磁波の照射位置が前記自車両から近くなるほど前記第2の方向の走査ピッチを粗く設定することを特徴とする車載検出器。
【請求項6】
請求項2に記載の車載検出器において、
前記自車両で走行する道路の路面勾配を検出する勾配検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記路面勾配に応じて前記第2の方向の走査ピッチの粗密を設定することを特徴とする車載検出器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の車載検出器において、
前記車載検出器は、前記自車両で走行する道路を走行する先行車両または前記道路の路面に存在する障害物を前記外界状況として検出することを特徴とする車載検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の検知や物体までの距離等を計測する車載検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転技術を支えるキーデバイスとしてLiDAR(Light Detection And Ranging)が知られている。ライダは、照射するレーザ光の照射角度を二軸方向にそれぞれ変化させてスキャンを行い、各検出点の位置情報に基づいて物体の検知や物体までの距離等を計測する。ライダは、そのスキャン方式により機械式とソリッドステート(solid state)式とに大別される。機械式は、例えばポリゴンミラーやガルバノミラー等を駆動してレーザの照射方向を制御する。ソリッドステート式は、ソリッドステートタイプの素子を用いてレーザの照射方向を制御する。後者の例として、液晶パネルおよび偏光回析フィルムを多層化したソリッドステートスキャナー技術が実現されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では車載検出器としてのニーズ(例えば、コスト、スキャン速度および視野角(Field of View))をバランスよく実現することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である車載検出器は、自車両の周囲に電磁波を走査照射して外界状況を検出する車載検出器であって、モータを用いた第1の方式により電磁波を第1の方向に走査照射する第1の走査部と、モータを用いない第2の方式により電磁波を第1の方向と交差する第2の方向に走査照射する第2の走査部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車載検出器としてのニーズをバランスよく実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1B】ライダによる検出データの一例を示す模式図。
【
図2】車両制御装置の要部構成を概略的に示すブロック図。
【
図3A】3次元座標系を用いて3次元空間の点群データの位置を表す図。
【
図3B】3次元空間から2次元のX-Z空間への点群データの写像を説明する図。
【
図3C】グリッド別に分けられた点群データを示す模式図。
【
図5A】奥行距離と鉛直方向の投光角度との関係の一例を示す模式図。
【
図5B】奥行距離と鉛直方向の角度分解能との関係の一例を示す模式図。
【
図6A】ライダの照射光がラスタ走査方式で照射される場合の照射点の一例を示す模式図。
【
図6B】ライダの照射光が検出領域内に格子状に配列した所定の格子点にのみ照射される場合の照射点の一例を示す模式図。
【
図7】
図6Bに例示した照射点へ照射光を照射する場合の照射順の一例を示す図。
【
図9】
図2のコントローラのCPUで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】
図9のS20の処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して発明の実施の形態について説明する。
はじめに、発明の実施の形態に係るライダ装置(以下、ライダと呼ぶ)を用いた外界認識装置およびこの外界認識装置を搭載する車両について説明する。
外界認識装置は、自動運転機能を有する車両、すなわち自動運転車両に搭載することができる。なお、実施の形態では、外界認識装置が搭載される車両を、他車両と区別して自車両と呼ぶことがある。自車両は、内燃機関(エンジン)を走行駆動源として有するエンジン車両、走行モータを走行駆動源として有する電気自動車、エンジンと走行モータとを走行駆動源として有するハイブリッド車両のいずれであってもよい。自車両は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0009】
自動運転車両は、自動運転モードでの走行(以下、自動走行または自律走行と呼ぶ)時に、ライダやカメラ等の車載検出器の検出データに基づき自車両の周囲の外界状況を認識する。自動運転車両は、その認識結果に基づいて、現時点から所定時間より先の走行軌道(目標軌道)を生成し、目標軌道に沿って自車両が走行するように走行用アクチュエータを制御する。
【0010】
図1Aは、自動運転車両である自車両101が道路RDを走行する様子を示す図である。
図1Bは、自車両101に搭載され、自車両101の進行方向に向けられたライダにより得られた検出データの一例を示す模式図である。ライダによる計測点(検出点と呼んでもよい)は、照射したレーザが物体の表面のある1点で反射して戻ってくる点情報である。点情報は、レーザ源からその点までの距離と、反射して戻ってきたレーザの強度と、レーザ源とその点との相対速度とを含む。また、
図1Bに示すような複数の検出点で構成されるデータを、点群データと呼ぶ。
図1Bには、
図1Aの物体のうち、ライダの視野(Field of view;以下FOVと呼ぶ)に含まれる物体の表面の検出点に基づく点群データが示されている。FOVは、例えば、自車両101の水平方向(道路幅方向と呼んでもよい)に120 deg、鉛直方向(上下方向と呼んでもよい)に40 degとしてもよい。FOVの値は、外界認識装置の仕様に基づいて適宜変更して構わない。自車両101は、
図1Bに示すような点群データに基づいて車両周囲の外界状況、より具体的には車両周囲の道路構造および物体等を認識し、その認識結果に基づいて目標軌道を生成する。
【0011】
ところで、車両周囲の外界状況を十分に認識する方法として、ライダ等の車載検出器から照射する電磁波の照射点の数を増やす(換言すると、電磁波の照射点密度を高めて点群データを構成する検出点の数を増やす)ことが考えられる。一方で、電磁波の照射点の数を増やす(検出点の数を増やす)と、車載検出器を制御するための処理負荷が増えたり、車載検出器により得られる検出データ(点群データ)の容量が増大して点群データに対する処理負荷が増えたりするおそれがある。特に、道路上や道路脇に多くの物体が存在する状況では、点群データの容量がさらに増大する。
そのため、上記の点を考慮して、実施の形態では以下のような外界認識装置を構成する。
【0012】
<概要>
実施の形態に係るライダを備える外界認識装置は、道路RDを走行する自車両101のライダから自車両101の進行方向に電磁波の一例としての照射光を間欠的に照射し、道路RD上の異なる位置で離散的に点群データを取得する。ライダから照射する照射光の照射範囲は、前回の照射によりライダで取得された前フレームの点群データと、今回の照射によりライダで取得される次フレームの点群データとで、道路RDの進行方向にデータの空白区間が生じないように設定する。
照射範囲内の検出点密度は、例えば自車両101から遠い路面に対して高く、自車両101に近い路面に対して低く設定することにより、照射範囲内の全ての路面に対して高い検出点密度を設定する場合と比べて、認識処理に用いる検出点の総数を抑制する。これにより、点群データに基づいて認識する物体等の位置(自車両101からの距離)や大きさの認識精度を低下させることなく、認識処理に用いる検出点の数を低減することが可能になる。
このような外界認識装置について、さらに詳細に説明する。
【0013】
<車両制御装置の構成>
図2は、外界認識装置を含む車両制御装置100の要部構成を示すブロック図である。この車両制御装置100は、コントローラ10と、通信ユニット1と、測位ユニット2と、内部センサ群3と、カメラ4と、ライダ5と、走行用のアクチュエータACとを有する。また、車両制御装置100は、車両制御装置100の一部を構成する外界認識装置50を有する。外界認識装置50は、カメラ4やライダ5等の車載検出器の検出データに基づいて、車両周囲の外界状況を認識する。
【0014】
通信ユニット1は、インターネット網や携帯電話網等に代表される無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報、走行履歴情報および交通情報等を定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。ネットワークには、公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域毎に設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等も含まれる。取得した地図情報は、記憶部12に出力され、地図情報が更新される。測位ユニット(GNSSユニット)2は、測位衛星から送信された測位用の信号を受信する測位センサを有する。測位衛星は、GPS衛星や準天頂衛星等の人工衛星である。測位ユニット2は、測位センサが受信した測位情報を利用して、自車両101の現在位置(緯度、経度、高度)を測定する。
【0015】
内部センサ群3は、自車両101の走行状態を検出する複数のセンサ(内部センサ)の総称である。例えば内部センサ群3には、自車両101の車速(走行速度)を検出する車速センサ、自車両101の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、走行駆動源の回転数を検出する回転数センサ、自車両101の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサ等が含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングホイールの操作等を検出するセンサも内部センサ群3に含まれる。
【0016】
カメラ4は、CCDやCMOS等の撮像素子を有して自車両101の周辺(前方、後方および側方)を撮像する。ライダ5は、照射光に対する散乱光を受信して自車両101から周辺の物体までの距離、物体の位置、形状等を測定する。
【0017】
アクチュエータACは、自車両101の走行を制御するための走行用アクチュエータである。走行駆動源がエンジンである場合、アクチュエータACには、エンジンのスロットルバルブの開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータが含まれる。走行駆動源が走行モータである場合、走行モータがアクチュエータACに含まれる。自車両101の制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータと転舵装置を駆動する転舵用アクチュエータもアクチュエータACに含まれる。
【0018】
コントローラ10は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。より具体的には、コントローラ10は、CPU(マイクロプロセッサ)等の演算部11と、ROM、RAM等の記憶部12と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。なお、エンジン制御用ECU、走行モータ制御用ECU、制動装置用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、
図2では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ10が示される。
【0019】
記憶部12は、高精度の詳細な地図情報(高精度地図情報と呼ぶ)を記憶することが可能である。高精度地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率等)の情報、道路の勾配の情報、交差点や分岐点の位置情報、車線(走行レーン)数の情報、車線の幅員および車線毎の位置情報(車線の中央位置や車線位置の境界線の情報)、地図上の目印としてのランドマーク(信号機、標識、建物等)の位置情報、路面の凹凸等の路面プロファイルの情報が含まれる。また、記憶部12は、後述する2次元マップ情報の他、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報、ライダ5等の車載検出器に対する設定情報(後述する照射点情報等)を記憶することも可能である。
なお、実施の形態では高精度の詳細な地図情報を必ずしも必要としないため、詳細な地図情報については記憶部12に記憶しなくてもよい。
【0020】
演算部11は、機能的構成として、認識部111と、設定部112と、決定部113と、走行制御部114とを有する。なお、
図2に示すように、認識部111、設定部112、および決定部113は外界認識装置50に含まれる。外界認識装置50は、上述したように、カメラ4やライダ5等の車載検出器の検出データに基づいて車両周囲の外界状況を認識する。外界認識装置50に含まれる認識部111、設定部112、および決定部113の詳細については後述する。
【0021】
走行制御部114は、自動運転モードにおいて、外界認識装置50で認識された車両周囲の外界状況に基づいて目標軌道を生成し、その目標軌道に沿って自車両101が走行するようにアクチュエータACを制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部114は、内部センサ群3により取得されたドライバからの走行指令(ステアリング操作等)に応じてアクチュエータACを制御する。
【0022】
ライダ5について、さらに説明する。
<検出領域>
ライダ5は、走行時に注視すべき領域をFOVに含むように、自車両101の前方に向けて取付けられている。ライダ5は、照射光を照射した立体物等で散乱された光を受信するので、ライダ5のFOVが照射光の照射範囲および検出領域に対応する。つまり、照射範囲内の照射点が検出領域内の検出点に対応する。
実施の形態では、路面の凹凸、段差、うねり等を含む路面形状と、道路RD上に位置する立体物(道路RDに関連する設備等(信号機、標識、溝、壁、柵、ガードレール等))と、道路RD上の物体(他車両および路面の障害物を含む)と、路面に設けられた区画線と、を含めて立体物等と呼ぶ。区画線は、白線(黄色等の色違いの線を含む)、縁石線、道路鋲等を含むものとし、レーンマーク(Lane mark)と呼んでもよい。また、立体物等のうちあらかじめ検出対象として設定されたものを検出対象と呼ぶ。
【0023】
<座標系の例示>
図3Aは、3次元座標系を用いて3次元空間の点群データの位置を表す図である。
図3Aにおいて、x軸プラス方向が自車両101の進行方向に、y軸プラス方向が自車両101の水平方向左方に、z軸プラス方向が鉛直方向上方に、それぞれ対応する。
また、データPの位置のx軸成分を奥行距離Xと呼び、データPの位置のy軸成分を水平距離Yと呼び、データPの位置のz軸成分を高さZと呼ぶ。
ライダ5で計測される距離、換言すると、ライダ5から検出対象としての物体上の点までの距離をDとすると、データPの位置を示す座標(X,Y,Z)は以下の式で算出される。
X=D×cosθ×cosφ (1)
Y=D×sinθ×cosφ (2)
Z=D×sinφ (3)
なお、角度θを水平投光角度と呼び、角度φを鉛直投光角度と呼ぶ。水平投光角度θおよび鉛直投光角度φは、設定部112によってライダ5に設定される。
【0024】
図3Bは、3次元空間から2次元のX-Z空間への点群データの写像を説明する図である。実施の形態では、道路RDの路面勾配を算出するため、点群データを構成するデータ毎に3次元空間のデータPからX-Z空間のデータP´へ写像する。この写像により、3次元の点群データがX-Z空間の2次元の点群データへ変換される。X-Z空間では水平距離Yを示す情報が省かれ、奥行距離Xおよび高さZの情報が残る。
次に、X-Z空間を所定のサイズ(例えば50cm四方)のグリッドで区切り、各グリッドに含まれているデータP´の数をカウントする。
図3Cは、グリッド別に分けられた点群データを示す模式図である。なお、実際のデータP´に基づくグリッド数は、図示した数よりもはるかに多い。
図3Cにより、グリッド毎の位置データ(奥行距離X)と、グリッド毎の高さZと、各グリッドに入っているデータP´の数が示される。実施の形態では、事前に立体物のデータを分離、除外しているため、主に路面のデータに対してのXとZのグリッドデータとなる。そのため、グリッド内のデータP´の数が最大になるグリッドを奥行距離X方向に順次抽出することにより、
図3Dに示すような路面の高さZを示すグリッドの列、すなわち奥行距離X方向の路面勾配が得られる。
各グリッドに注目すると、そのグリッドの路面点(上述した照射点に対応)に対する鉛直方向の投光角度α、その路面点の奥行距離Xおよび路面の高さZの間には次式(4)が成立する。また、ライダ5からその路面点までの距離DL、その路面点の奥行距離Xおよび路面の高さZの間には次式(5)が成立する。
tanα=Z/X (4)
DL=(X
2+Z
2)
1/2 (5)
【0025】
<投光角度と奥行距離>
図4Aは、ライダ5の鉛直方向の投光角度α(水平方向に対する照射光の角度)と奥行距離Xを示す模式図である。外界認識装置50は、投光角度αを変化させることにより、照射光の照射方向を上下に変化させて、照射点の位置を鉛直方向に移動させる。
図4Aにおいて、例えば奥行距離X2が10mの地点の道路RD上に照射光が照射される場合は、入射角α
2で路面が照射される。また、例えば奥行距離X1が40mの地点の道路RD上に照射光が照射される場合は、入射角α
1で路面が照射される。さらに、例えば奥行距離X0が100mの地点の道路RD上に照射光が照射される場合は、入射角α
0で路面が照射される。
一般に、路面に対する入射角が大きくなるほど路面からライダ5へ戻る散乱光が小さくなる。そのため、多くの場合は奥行距離X0の地点への照射光に対する散乱光の受信レベルが一番低くなる。
【0026】
図4Bは、ライダ5で計測される距離DLを示す模式図である。
図3A~3Dを参照して上述したように、外界認識装置50は、ライダ5に設定した投光角度α、ライダ5で計測された距離DL(照射光の光路長)および上式(4)、(5)を用いて、照射光を照射した路面点までの奥行距離Xと、その路面点の高さZとを算出する。
【0027】
外界認識装置50は、奥行距離を現在の値よりも長くしたい場合に投光角度αを小さくし、奥行距離を現在の値よりも短くしたい場合に投光角度αを大きくする。例えば、奥行距離が70mの地点に照射光が照射されている状態から奥行距離を100mに変更する場合、外界認識装置50は、投光角度αを現在の値よりも小さくして奥行距離が100mの地点に照射光が照射されるようにする。また、例えば道路RDが下り勾配等の場合で照射光が道路RD上に照射されていない場合には、外界認識装置50は、投光角度αを現在よりも大きくして照射光が道路RD上に照射されるようにする。
【0028】
図5Aは、奥行距離Xと鉛直方向の投光角度αとの関係の一例を示す模式図である。横軸は奥行距離X(単位m)を示し、縦軸は鉛直方向の投光角度α(単位deg)を示す。投光角度αを鉛直方向角度と呼んでもよい。外界認識装置50は、
図5Aに例示したように、奥行距離Xを短くしたい場合は投光角度αをマイナス側に大きくし、奥行距離Xを長くしたい場合は投光角度αを小さくする。符号Nについては後述する。
【0029】
<FOVと奥行距離>
実施の形態では、ライダ5のFOV下端に対応する奥行距離(例えば
図4AのX2)から、FOV上端に対応する奥行距離(例えば
図4AのX0)までの路面状況を検出する。FOV下端に対応する奥行距離を第1の所定距離と呼び、FOV上端に対応する奥行距離を第2の所定距離と呼ぶことにする。
一般に、カメラ4は近距離においてライダ5よりも分解能の点において優れており、ライダ5はカメラ4に比べて距離計測精度、相対速度計測精度の点において優れている。そのため、外界認識装置50は、ライダ5のFOVよりもカメラ4の画角が鉛直方向に広角である場合は、ライダ5のFOV下端よりも下側(換言すると、第1の所定距離よりも自車両101に近い路面)についてはカメラ4に路面状況を検出する役割を担わせてもよい。
【0030】
<照射光の照射点数>
外界認識装置50は、ライダ5のFOV内に、ライダ5の照射光を照射する照射点の位置を算出する。より具体的には、外界認識装置50は、あらかじめ指定された検出対象の最小サイズ(例えば鉛直方向、水平方向ともに15cm)と、必要奥行距離(例えば100m)と、に基づいて算出される角度分解能に応じて照射点を算出する。必要奥行距離は、車速により変化する自車両101の制動距離に対応する。実施の形態では、走行中の自車両101が進行方向の道路の路面状況を少なくとも制動距離より先まで検出すべきという考え方に基づき、制動距離に所定の余裕を加えた値を必要奥行距離と呼ぶ。自車両101の車速は、内部センサ群3の車速センサにより検出される。車速と必要奥行距離との関係は、あらかじめ記憶部12に記憶されている。
図5Aにおける符号Nは、車速が例えば100km/hの場合における必要奥行距離を示す。
必要奥行距離として100m先の15cmの検出対象を検出する場合の角度分解能を例示すると、
図5Bを参照して後述するように、鉛直方向および水平方向にそれぞれ0.05 degが必要である。なお、15cmよりも小さなサイズの検出対象を検出する場合、および、100mよりも長い奥行距離Xにおいて15cmの検出対象を検出する場合には、角度分解能を上げることによってFOV内の照射点数をさらに増やす必要がある。
【0031】
外界認識装置50は、例えば、FOV内に格子状に配列するように照射点の位置を算出し、格子点の鉛直方向および水平方向の間隔を、それぞれ鉛直方向および水平方向の角度分解能に対応させる。鉛直方向の角度分解能を上げる場合は、FOVを角度分解能に基づく数で鉛直方向に分割し、鉛直方向の格子間隔を狭くして照射点の数を増やす。換言すると、照射点の間隔を密にする。反対に、鉛直方向の角度分解能を下げる場合は、FOVを角度分解能に基づく数で鉛直方向に分割し、鉛直方向の格子間隔を広くして照射点の数を減らす。換言すると、照射点の間隔を粗くする。水平方向についても同様とする。
外界認識装置50は、角度分解能に応じて算出した照射点の位置を示す情報(以下、照射点情報と呼ぶ)を生成し、自車両101の現在の走行位置を示す位置情報に対応付けて記憶部12に記憶する。
【0032】
<角度分解能と奥行距離>
図5Bは、奥行距離Xと鉛直方向の角度分解能との関係の一例を示す模式図であり、上述したサイズ(縦横ともに15cm)の検出対象を認識するために必要な角度分解能(必要角度分解能と呼んでもよい)を示す。横軸は奥行距離X(単位m)を示し、縦軸は鉛直方向の角度分解能(単位deg)を示す。一般に、奥行距離Xが短い(換言すると、検出対象が自車両101に近い)ほど、検出対象に対する視角が大きくなるので、角度分解能が低くても検出対象を検出することが可能となる。反対に、奥行距離Xが長い(換言すると、検出対象が自車両101から遠い)ほど、検出対象に対する視角が小さくなるので、検出対象の検出には高い角度分解能が必要となる。そのため、外界認識装置50は、
図5Bに例示したように、奥行距離Xが短いほど角度分解能を下げ(数値を大きくする)、奥行距離Xが長いほど角度分解能を上げる(数値を小さくする)。
なお、図示を省略するが、奥行距離Xと水平方向の角度分解能との関係についても同様である。
図5Bにおける符号Nは、車速が例えば100km/hの場合における必要奥行距離を示す。
【0033】
外界認識装置50は、自車両101が自動運転モードで走行しているとき、FOV内に所定の照射点(検出点)を設定するとともに照射光を照射するようにライダ5を制御する。これにより、ライダ5からの照射光は、設定された照射点(検出点)に向けて照射される。
【0034】
なお、ライダ5の照射光は、FOV内に格子状に配列した全ての照射点(検出点)にラスタ走査方式で照射されてもよいし、所定の照射点(検出点)にのみ照射光が照射されるように断続的に照射光が照射されてもよいし、その他の態様で照射されてもよいものとする。
【0035】
図6Aは、ライダ5の照射光がラスタ走査方式で照射される場合の照射点の一例を示す模式図である。外界認識装置50は、ライダ5から照射光を照射する際、FOV内の全域に対し、必要奥行距離Nにおいて必要とされる角度分解能を設定して照射光の照射方向を制御する。
例えば、道路RD上の必要奥行距離Nの地点に存在する検出対象を認識するための必要角度分解能が縦(鉛直方向)、横(水平方向)ともに0.05 degである場合、外界認識装置50は、FOV内の全域で照射光の照射方向を縦横それぞれ0.05 deg間隔でずらすように制御する。つまり、
図6Aでは格子点の各黒丸が照射点(検出点)に対応しており、縦および横の照射点(検出点)の間隔はそれぞれ0.05 degの角度分解能に対応する。
FOV内における実際の照射点の数は、
図6Aに図示した黒丸の数よりもはるかに多い。具体例として、ライダ5のFOVが水平方向に120 degの場合、照射点(検出点)に対応する黒丸は、水平方向に0.05 deg間隔で2400個並ぶ。同様に、FOVが鉛直方向に25 degの場合、照射点(検出点)に対応する黒丸は、鉛直方向に0.05 deg間隔で500個並ぶ。
【0036】
外界認識装置50は、FOVに対して1フレーム分の照射光の走査を行う毎に
図6Aの照射点に対応する検出点の検出データを取得し、これらの検出データの中から、検出対象の認識に必要な角度分解能に基づく検出点のデータを抽出する。より具体的には、FOVのうちの奥行距離Xが必要奥行距離Nよりも短い領域であって、必要角度分解能が0.05 degではなく0.1 degで足りる領域については、縦および横のデータの間隔を0.05 deg間隔よりも広くするようにデータを抽出する。また、FOVのうちの空に対応する領域についても、道路RDが存在しないことから縦および横のデータの間隔を広くするようにデータを抽出する。このように抽出した検出点の間隔は、後述する
図6Bに黒丸で示される検出点の間隔と同様である。
外界認識装置50が検出点のデータを抽出することにより、認識処理に用いる検出データの総数を抑制することが可能になる。
【0037】
図6Bは、ライダ5の照射光がFOV内に格子状に配列した所定の照射点(検出点)にのみ照射される場合の照射点の一例を示す模式図である。外界認識装置50は、ライダ5から照射光を照射する際、FOV内の照射点(検出点)の間隔を、必要とされる角度分解能に応じた間隔に設定して、照射光の照射方向を制御する。
例えば、道路RD上の必要奥行距離Nの地点に存在する検出対象を認識するための必要角度分解能が縦(鉛直方向)、横(水平方向)ともに0.05 degである場合、外界認識装置50は、必要奥行距離Nに対応する領域(左右方向に長い帯状領域)において照射光の照射方向を縦横それぞれ0.05 deg間隔でずらすように制御する。
また、FOVのうちの奥行距離Xが必要奥行距離Nよりも短い領域であって、必要角度分解能が0.1 degで足りる領域については、縦および横の検出点の間隔を広くするように照射光の照射方向を制御する。さらに、FOVのうちの空に対応する領域についても、道路RDが存在しないことから縦および横の検出点の間隔を広くするように照射光の照射方向を制御する。
外界認識装置50が検出点の間隔を制御したことにより、認識処理に用いる検出データの総数を抑制することが可能になる。
なお、FOV内における実際の照射点の数は、
図6Bに図示した黒丸の数よりもはるかに多い。
【0038】
図7は、
図6Bに例示した照射点へ照射光を照射する場合の照射順の一例を示す図である。
図7において、FOVの左上から右下の照射点に向かって、それぞれ矢印の向きに照射光の照射方向が制御される。また、縦方向の矢印に併記したP1~P3の文字は照射点(検出点)の間隔の大小を示す、P1は、例えば角度分解能が0.05 degに対応する照射点(検出点)の間隔を示す。P2は、例えば角度分解能が0.1 degに対応する照射点(検出点)の間隔を示す。P3は、例えば角度分解能が0.2 degに対応する照射点(検出点)の間隔を示す。
図7では、角度分解能を3段階に切り替える例を図示したが、3段階に限らず、2段階以上の角度分解能を適宜切り替えるように構成して構わない。
【0039】
<ライダ5による照射光のステアリング>
図7に例示したように照射方向は、投光角度が鉛直方向および水平方向にそれぞれ制御される。実施の形態では、投光角度を水平方向に変化させるための水平方向のスキャン機構として機械式のスキャン機構を備えるとともに、投光角度を鉛直方向に変化させるための鉛直方向のスキャン機構としてソリッドステート式のスキャン機構を備える。
【0040】
図8は、ライダ5の構成を例示する模式図である。実施の形態では、例えばFMCW(周波数変調連続波)方式の送受信器51と、鉛直方向のスキャン機構52と、水平方向のスキャン機構53と、制御部54とを含めてライダ5と呼ぶ。制御部54は、ライダ5およびコントローラ10の間の信号の授受と、送受信器51、鉛直方向のスキャン機構52および水平方向のスキャン機構53に対する制御とを行う。
送受信器51は、光源511および検出器512を含む。また、ライダ5において実線矢印は送光路を示し、破線矢印は受光路を示す。
なお、送受信器51および鉛直方向のスキャン機構52を一体に構成してもよい。
【0041】
<水平方向のスキャン機構>
水平方向のスキャン機構53は、一例として、照射光をモータにより回転させたポリゴンミラーで反射させることにより、照射光の出射方向を制御する。
車載検出器としてのライダ5に要求される水平方向の視野角は、例えば120 degである。そして、120 degの範囲を角度分解能0.1 deg、かつ一定の所定速度でスキャンすることが求められる。そのため、実施の形態ではソリッドステート式よりも広範囲の振れ角を安定してスキャン可能な機械式のスキャン機構を水平方向のスキャン機構53として採用し、照射光を水平方向に変化させる。
照射点数の具体例をあげると、視野角120 degを0.1 degの角度分解能でスキャンする場合、水平方向に1200個の照射点へ照射光を照射し、各照射点からの散乱光を受信する。
【0042】
<鉛直方向のスキャン機構>
鉛直方向のスキャン機構52は、一例として、半導体技術および光学技術を用いて照射光の出射方向を制御する。
車載検出器としてのライダ5に要求される鉛直方向の視野角は、例えば25 degである。この視野角は、水平方向の視野角(120 deg)よりも狭い上に、視野角25 degの中で実際に角度分解能0.1 degより細かい分解能が必要とされる範囲はさらに狭い(例えば約10 deg)。そのため、実施の形態では機械式に比べて振動や衝撃に対する耐久性が優れるソリッドステート式のスキャン機構を鉛直方向のスキャン機構52として採用し、照射光を鉛直方向に変化させる。
照射点数の具体例をあげると、視野角25 degを0.05 degの角度分解能でスキャンする場合、鉛直方向に500個の照射点へ照射光を照射し、各照射点からの散乱光を受信する。
上述したように、鉛直方向については必要な範囲のみ高い角度分解能で照射光を照射すればよいため、照射点数を上記500個よりも少なくすることが可能である。また、水平方向のスキャン機構によって照射光が水平方向に制御されている間は、鉛直方向のスキャン機構は停止させておいてよいので、鉛直方向のスキャン速度は水平方向のスキャン速度より遅くしても構わない。
【0043】
<ソリッドステート式のスキャン機構>
照射光を鉛直方向に制御するソリッドステート式のスキャン機構としては、いずれも公知の液晶マルチポール方式、スローライト方式、FPA方式、OPA方式、波長可変光源とプリズムまたは回折格子を組み合わせる方式のうちから採用する。FPA方式には、上面から出射する上面FPA方式と端面(横)から出射する端面FPA方式とがある。なお、実施の形態ではアンテナを2D元的(面上)に配置する場合だけでなく、1D元的(ライン上)に配置するものについてもFPAと呼ぶこととする。
【0044】
(1)液晶マルチポール方式は、液晶パネルおよび偏光回析フィルムを多層化して構成することにより、照射光の出射方向を制御する。
【0045】
(2)スローライト方式は、光の半波長程度の微細で周期的なナノ構造を持つフォトニック結晶を用いて、この結晶中を進む光のエネルギーの速度を光の速度に比べて遅くすることにより、光の出射方向を制御する。
【0046】
(3)一般的な上面FPA(Focal Plane Array)方式は、プロジェクションレンズの焦点面に光を放射する光アンテナをアレイ状に配置し、光を放つ光アンテナを切り替えることにより、プロジェクションレンズから出射するビーム方向を制御する。上述したように、この例ではアンテナを面上に配置する場合だけでなく、ライン上に配置するものについてもFPAと呼ぶ。
【0047】
(4)端面FPA方式は、プロジェクションレンズの焦点面に、光源からの光を切り替える導波路スイッチをアレイ状に配置し、光を放つスイッチを切り替えることにより、プロジェクションレンズから出射するビーム方向を制御する。
【0048】
(5)OPA(Optical Phased Array)方式は、複数の光位相変調器をアレイ状に配置し、それぞれに異なる位相を与えることで、干渉によりある方向は強め合い、他の方向は弱め合う性質を利用して出射するビーム方向を制御する。
【0049】
(6)波長可変光源およびプリズムまたは回折格子の組み合わせ方式は、光源の発光波長を変化させることにより、プリズムまたは回折格子で回折される光のビーム方向を制御する。
【0050】
以上説明したように、鉛直方向のスキャン機構としてソリッドステート式を採用することは、ROI(Region of Interest)として視野内に指定した所定範囲の照射光の出力を上げて、その所定範囲の検知距離を延ばしたり、その所定範囲の角度分解能を高くして物体等に対する検知性能を上げたり、その所定範囲の角度分解能を低くして物体等に対する検知性能を下げたりする処理との親和性を高くすることが可能となる。
また、液晶マルチポール方式、スローライト方式、上面FPA方式、端面FPA方式は、例えばガルバノミラーを用いる機械式のスキャン機構に比べて安価に作製することが可能である。
【0051】
<外界認識装置の構成>
外界認識装置50の詳細について説明する。
上述したように、外界認識装置50は、認識部111、設定部112および決定部113と、ライダ5を含む。
<認識部>
認識部111は、ライダ5のFOVにおいて検出される時系列の検出データを用いて3次元の点群データを生成する。
また、認識部111は、ライダ5で測定された検出データに基づいて、自車両101が走行する道路RDの進行方向の道路構造と、進行方向の道路RD上の検出対象とを認識する。道路構造は、例えば直線路、カーブ路、分岐路、トンネルの出入口等をいう。
さらに、認識部111は、例えば平坦な路面を示すデータに対して輝度フィルタリング処理等を施すことによって区画線を検知する。この場合において、認識部111は、輝度が所定の閾値を超えている路面の高さが、超えていない路面の高さと略同じである場合に、区画線であると判定してもよい。
【0052】
<道路構造の認識>
認識部111による道路構造の認識の一例について説明する。認識部111は、生成した点群データに含まれる、進行方向である前方の道路RDの縁石、壁、溝、ガードレールまたは区画線を道路RDの境界線RL、RB(
図1A)として認識し、境界線RL、RBで示される進行方向の道路構造を認識する。上述したように、区画線は白線(色違いの線を含む)、縁石線、道路鋲等を含み、これら区画線による標示によって道路RDの走行レーンが規定される。実施の形態では、上記標示によって規定される道路RDの境界線RL、RBを、区画線と呼ぶ。
【0053】
認識部111は、境界線RL、RBで挟まれた領域について、道路RDに対応する領域として認識する。なお、道路RDに対する認識方法はこれに限らず、他の方法により認識してもよい。
また、認識部111は、生成した点群データを、平坦な路面を示す点群データと、立体物等を示す点群データとに分離する。例えば、点群データに含まれる、進行方向の路上の立体物等のうち、サイズが15cmを超える凹凸、段差、うねり等の路面形状と、縦横15cmを超える物体とを検出対象として認識する。15cmは、検出対象のサイズの一例であり、適宜変更して構わない。
【0054】
<設定部>
設定部112は、照射光の鉛直投光角度φをライダ5に設定する。ライダ5のFOVが鉛直方向に25 degの場合、鉛直投光角度φは0~25 degの範囲で0.05 deg間隔で設定される。同様に、設定部112は、照射光の水平投光角度θをライダ5に設定する。ライダ5のFOVが水平方向に120 degの場合、水平投光角度θは0~120 degの範囲で0.1 deg間隔で設定される。
設定部112は、後述するように決定部113で決定された角度分解能に基づいて、FOV内の照射点数(
図6Aおよび
図6Bの黒丸の数に対応し、照射点密度を示す)をライダ5に設定する。上述したように、FOV内に格子状に配列する照射点(検出点)の鉛直方向および水平方向の間隔を、それぞれ鉛直方向および水平方向の角度分解能に対応させる。
【0055】
<決定部>
決定部113は、設定部112が設定する走査角度分解能を決定する。先ず、決定部113は、各奥行距離Xにおける鉛直方向の投光角度αと、各奥行距離Xにおける路面点までの距離DLとをそれぞれ算出する。具体的には、
図3Dを参照して説明したように、ライダ5で計測された路面点までの距離DLと、計測時にライダ5に設定した投光角度αとに基づいて奥行距離Xを算出する。決定部113は、算出した奥行距離Xと、鉛直方向角度との関係を算出する(
図5A)。また、決定部113は、奥行距離Xと、距離DLとの関係を算出する。さらにまた、決定部113は、
図5Bに例示したように、検出対象のサイズと奥行距離Xとに基づいて、奥行距離Xと、鉛直方向角度分解能との関係を算出する。このように、検出対象のサイズと距離DLとに基づいて鉛直方向角度分解能を算出し、距離DLと奥行距離Xとに基づいて、奥行距離Xと鉛直方向角度分解能との関係を算出する。
【0056】
次に、決定部113は、上記サイズの検出対象を認識するために必要な、鉛直方向の角度分解能を決定する。例えば、
図5Bにおいて鉛直方向の角度分解能が0.1 deg未満となる奥行距離Xでは、0.1 degより小さな0.05 degを必要角度分解能として決定する。また、鉛直方向の角度分解能が0.1 deg以上で0.2 deg未満となる奥行距離Xでは、0.2 degより小さな0.1 degを必要角度分解能として決定する。以下同様に、鉛直方向の角度分解能が0.2 deg以上で0.3 deg未満となる奥行距離X、および、鉛直方向の角度分解能が0.3 deg以上で0.4 deg未満となる奥行距離Xに対しても、それぞれにおいてより小さな0.2 degおよび0.3 degを、必要角度分解能として決定する。
【0057】
決定した鉛直方向の必要角度分解能は、次フレームの3次元点群データを取得する際の検出点の鉛直方向の間隔として反映させることができる。
また、決定部113は、検出対象のサイズおよび奥行距離Xに応じて、検出対象を認識するための水平方向の必要角度分解能を決定してもよい。水平方向の必要角度分解能も、次フレームの3次元点群データを取得する際の検出点の水平方向の間隔として反映させることができる。
なお、水平方向の必要角度分解能については、先に決定した鉛直方向の必要角度分解能と一致させてもよい。換言すると、鉛直方向の必要角度分解能を0.05 degと決定した検出点と同じ水平ライン上では、水平方向の必要角度分解能を0.05 degと決定する。同様に、鉛直方向の必要角度分解能を0.1 degと決定した検出点と同じ水平ライン上では、水平方向の必要角度分解能を0.1 degと決定する。さらに、他の必要角度分解能についても、鉛直方向の必要角度分解能を決定した検出点と同じ水平ライン上では、水平方向の必要角度分解能を鉛直方向の必要角度分解能と同じ値に決定する。
【0058】
<位置データの生成>
外界認識装置50は、ライダ5でリアルタイムに測定された時系列の点群データに基づいて検出した検出対象の位置を示すデータを、例えばX-Yの2次元マップ上にマッピングして一続きとなる位置データを生成することができる。X-Y空間では高さZを示す情報が省かれ、奥行距離Xおよび水平距離Yの情報が残る。
認識部111は、記憶部12に記憶されている2次元マップ上の立体物等の位置情報を取得し、自車両101の移動速度と移動方向(例えば方位角)から上記立体物等の相対位置を自車両101の位置を中心に座標変換して算出する。認識部111は、測定により点群データがライダ5で取得される毎に、取得された点群データに基づく立体物等の相対位置を自車両101の位置を中心に座標変換して2次元マップ上に記録する。
【0059】
<フローチャートの説明>
図9は、あらかじめ定められたプログラムに従い
図2のコントローラ10の演算部11が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図9のフローチャートに示す処理は、例えば、自車両101が自動運転モードで走行中に所定周期毎に繰り返される。
【0060】
まず、ステップS10において、演算部11は、ライダ5に3次元の点群データを取得させてステップS20へ進む。
ステップS20において、演算部11は、ライダ5で取得される点群データに基づいて道路RDの進行方向の路面勾配および最大奥行距離Lを算出し、ステップS30へ進む。ステップS20の処理の詳細については
図10を参照して後述する。
【0061】
ステップS30において、演算部11は、各奥行距離Xにおける、鉛直方向の投光角度αと路面点までの距離DLとをそれぞれ算出してステップS40へ進む。鉛直方向角度と奥行距離Xの関係は、
図5Aに例示した通りである。また、奥行距離X、路面の高さZおよび路面までの距離DLの関係は、
図4Bに例示した通りである。
【0062】
ステップS40において、演算部11は、各奥行距離Xにおける必要角度分解能を算出してステップS50へ進む。必要角度分解能は、あらかじめ指定されたサイズの検出対象を検出するために必要な角度分解能である。奥行距離Xと角度分解能との関係は、
図5Bに例示した通りである。
【0063】
ステップS50において、演算部11は、決定部113により、鉛直方向の角度分解能を必要角度分解能に決定してステップS60へ進む。実施の形態では、鉛直方向の角度分解能を水平方向の角度分解能よりも先に決定する。
【0064】
ステップS60において、演算部11の決定部113は、水平方向の角度分解能を必要角度分解能に決定してステップS70へ進む。水平方向の角度分解能を鉛直方向の角度分解能よりも後に決定することで、水平方向の角度分解能を鉛直方向の角度分解能と一致させることが容易となる。
【0065】
ステップS70において、演算部11は、検出点の座標を確定する。より具体的には、
図6Bにおいて黒丸で例示したような検出点の位置を示す座標を決定する。認識部111は、ステップS70で確定した検出点の位置で検出された検出データに基づいて、自車両101が走行する道路RDの進行方向の立体物等を認識する。
【0066】
なお、演算部11は、ステップS10で点群データが取得される毎に、点群データに基づく立体物等の相対位置をX-Yの2次元マップ上にマッピングすることにより、2次元状に一続きとなる位置データを生成する。そして、点群データに基づく立体物等の相対位置を自車両101の位置を中心に座標変換して2次元マップ上に記録しておくことができる。
【0067】
ステップS80において、演算部11は、処理を終了するか否かを判定する。演算部11は、自車両101が自動運転モードでの走行を継続中の場合は、ステップS80を否定判定してステップS10へ戻り、上述した処理を繰り返す。ステップS10へ戻ることにより、自車両101の走行中に点群データに基づく立体物等の測定が周期的に繰り返し行われることとなる。一方、演算部11は、自車両101が自動運転モードでの走行を終了した場合は、ステップS80を肯定判定して
図9による処理を終了する。
【0068】
図10は、演算部11が実行するステップS20(
図9)の処理の詳細を説明するフローチャートである。演算部11は、決定部113で決定された検出点の点群データに対して
図10による処理を行う。
ステップS210において、演算部11は、点群データに対する分離処理を行ってステップS220へ進む。より具体的には、点群データから道路RD上の立体物等のデータを検出して分離することにより、平坦な路面を示す点群データと、立体物等を示す点群データとを得る。立体物等には、路上の障害物、道路RDの左右端に設けられた、例えば縁石、壁、溝、ガードレール等の他、走行中の二輪車等の他車両が含まれている。
【0069】
分離処理の一例を説明する。演算部11は、点群データの相対位置を自車両101の位置を中心とする位置に座標変換し、道路RDを例えば上空から俯瞰したような、奥行方向および道路幅方向に対応するX-Yの2次元マップ上に表すとともに、2次元マップを所定サイズにグリッド化する。各グリッドにおいてグリッド内のデータの最大値と最小値との差があらかじめ定めた閾値よりも小さい場合に、演算部11は、そのグリッドのデータが平坦な路面を示すと判定する。一方、グリッド内のデータの最大値と最小値との差があらかじめ定めた閾値よりも大きい場合に、演算部11は、そのグリッドのデータが立体物等を示すと判定する。
なお、点群データが路面のデータに対応するか、立体物等に対応するかの判定手法は、他の手法を用いてもよい。
【0070】
ステップS220において、演算部11は、処理対象のデータが路面のデータか否かを判定する。演算部11は、データが路面のデータとして分離されたグリッドのデータである場合に、ステップS220を肯定判定してステップS230へ進む。一方、演算部11は、データが立体物等のデータとして分離されたグリッドのデータである場合に、ステップS220を否定判定してステップS250へ進む。
【0071】
ステップS250へ進む場合、演算部11の認識部111は、そのグリッドの点群データに基づく立体物等の相対位置を自車両101の位置を中心に座標変換して2次元マップ上に記録する。そして
図10による処理を終了して
図9のステップS30へ進む。
【0072】
ステップS230へ進む場合、演算部11は、道路RDの路面勾配を算出する。路面勾配の算出処理の一例は、
図3A~
図3Dを参照して説明したとおりである。
なお、路面勾配の算出手法は、他の手法を用いてもよい。
【0073】
ステップS240において、演算部11は、最大奥行距離Lを取得し、
図10による処理を終了して
図9のステップS30へ進む。
最大奥行距離Lは、ライダ5で検出可能な最遠の奥行距離である。演算部11は、路面勾配の算出処理時に抽出したグリッドのうち自車両101の位置から最遠のグリッドのデータに対応する奥行距離を最大奥行距離Lとして取得する。
【0074】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
(1)自車両101の周囲に電磁波としての照射光を走査照射して外界状況を検出する車載検出器としてのライダ5は、モータを用いた第1の方式としての機械式のスキャン機構により照射光を第1の方向(例えば水平方向)に走査照射する水平方向のスキャン機構53と、モータを用いない第2の方式としてのソリッドステート式のスキャン機構により照射光を第1の方向と交差する第2の方向(例えば鉛直方向)に走査照射する鉛直方向のスキャン機構52と、を備える。
このように構成したので、第1および第2の方向のうち広い視野角を高い角度分解能、かつ一定の所定速度でスキャンすることが求められる方向については、機械式のスキャン機構を採用して広範囲の振れ角を安定した速度でスキャンすることが可能になる。一方、第1および第2の方向のうち狭い視野角を高い角度分解能でスキャンすることが求められる方向については、ソリッドステート式のスキャン機構を採用して機械式に比べて振動や衝撃に対して優れた耐久性を得ることが可能になる。
また、機械式のスキャン機構によって照射光が広範囲に制御されている間に、ソリッドステート式のスキャン機構を停止させておく場合は、ソリッドステート式のスキャン機構によるスキャン速度を機械式のスキャン機構によるスキャン速度より遅くすることが可能になる。
さらに、ソリッドステート式のスキャン機構は、機械式のスキャン機構に比べて安価でコスト面でメリットが得られる。
以上のように、実施の形態によるライダ5によれば、車載検出器としての耐久性、コスト、スキャン速度および視野角をバランスよく実現することが可能になる。
【0075】
(2)上記(1)のライダ5において、水平方向のスキャン機構53は、照射光を第1の方向としての水平方向に走査照射し、鉛直方向のスキャン機構52は、照射光を第2の方向としての鉛直方向に走査照射し、照射光を走査照射する際、鉛直方向のスキャン機構52による鉛直方向の走査ピッチを可変制御する制御部54をさらに備える。
このように構成したので、例えば視野角120 degの範囲を角度分解能0.1 deg、かつ一定の所定速度でスキャンすることが求められる水平方向については、機械式のスキャン機構を採用してソリッドステート式よりも広範囲の振れ角を安定した速度でスキャンすることが可能になる。一方、水平方向の視野角よりも狭い視野角(例えば25 deg)でよい上に、実際に角度分解能0.05 degが必要とされる範囲がさらに狭い(約10 deg)鉛直方向については、ソリッドステート式のスキャン機構を採用して機械式に比べて振動や衝撃に対して優れた耐久性を得ることが可能になる。
また、例えば水平方向のスキャン機構によって照射光が水平方向に制御されている間に、鉛直方向のスキャン機構を停止させておく場合は、鉛直方向のスキャン速度を水平方向のスキャン速度より遅くすることが可能になる。
さらに、決定部113で決定した鉛直方向の走査角度分解能により、認識部111で認識処理に用いる3次元点群データの検出点の鉛直方向の間隔が適切に制御されることで、認識処理に用いる検出データの総数を抑制することが可能になる。すなわち、外界認識装置50の検出対象とする物体等の鉛直方向の位置や大きさの認識精度を低下させることなく、演算部11の処理負荷を低減することができる。
【0076】
(3)上記(2)のライダ5において、制御部54は、照射光の照射位置(照射点の位置)が自車両101から遠くなるほど鉛直方向の走査ピッチとしての照射点の間隔を密に設定する。
このように構成したので、例えば、自車両101から遠い領域でのみ高い認識精度が得られるように照射点の間隔を密にすることで、全ての領域で照射点の間隔を細かくする場合と比べて、認識部111で認識処理に用いる検出データの総数を抑制することが可能になる。
【0077】
(4)上記(3)のライダ5において、制御部54は、照射光の照射位置(照射点の位置)が自車両101で走行する道路RDの路面から高くなるほど鉛直方向の走査ピッチとしての照射点の間隔を粗く設定する。
このように構成したので、例えば、道路RDの路面よりも上方の空の領域では認識精度が低くても構わないため照射点の間隔を粗くすることで、全ての領域で照射点の間隔を細かくする場合と比べて、認識部111で認識処理に用いる検出データの総数を抑制することが可能になる。
【0078】
(5)上記(3)のライダ5において、制御部54は、照射光の照射位置が自車両101から近くなるほど鉛直方向の走査ピッチとしての照射点の間隔を粗く設定する。
このように構成したので、例えば、自車両101から近い領域では認識精度が低くても構わないため照射点の間隔を粗くすることで、全ての領域で照射点の間隔を細かくする場合と比べて、認識部111で認識処理に用いる検出データの総数を抑制することが可能になる。
【0079】
(6)上記(2)のライダ5において、自車両101で走行する道路RDの路面勾配を検出する勾配検出部としての演算部11をさらに備え、制御部54は、演算部11で検出された路面勾配に応じて鉛直方向の走査ピッチとしての照射点の粗密を設定する。
このように構成したので、自車両101に近い第1の所定距離から第2の所定距離(必要奥行距離N)までの路面に照射光を適切に照射するように、勾配に応じて鉛直方向の投光角度を変化させた上で、鉛直方向の照射点の粗密を設定することが可能になる。
【0080】
(7)上記(1)から(6)のライダ5は、自車両101で走行する道路RDを走行する先行車両または道路RDの路面に存在する障害物を外界状況として検出する。
このように構成したので、外界認識装置50の検出対象とする先行車両または路上の障害物の水平方向および鉛直方向の位置や大きさを適切に認識することが可能になる。
【0081】
上記実施の形態は、種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。
(変形例1)
照射光を鉛直方向に制御するソリッドステート式のスキャン機構として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー方式を採用してもよい。送受信器51としてToF(Time of Flight)式を採用する場合には、ミラー、コイル、磁石等を用いた電磁式のMEMSミラーを用いることにより、照射光の出射方向を制御することが可能である。
【0082】
(変形例2)
上述した実施の形態では、外界認識装置50が、カメラ4で不得手な第1の所定距離よりも遠方の路面状況をライダ5に検出させる例を説明した。この代わりに、カメラ4の有無またはカメラ4の性能にかかわらず、自車両101の近傍から第2の所定距離(必要奥行距離N)までの路面状況をライダ5に検出させる構成にしてもよい。
【0083】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施の形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施の形態と変形例の一つあるいは複数を任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 通信ユニット、2 測位ユニット、3 内部センサ群、4 カメラ、5 ライダ、10 コントローラ、11 演算部、12 記憶部、50 外界認識装置、51 送受信器、52 鉛直方向のスキャン機構、53 水平方向のスキャン機構、54 制御部、100 車両制御装置、101 自車両、111 認識部、112 設定部、113 決定部、114 走行制御部、AC アクチュエータ